(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027815
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】COD低減効果を有する廃水処理剤
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20240222BHJP
C02F 1/56 20230101ALI20240222BHJP
C08F 251/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B01D21/01 107Z
C02F1/56 K
C08F251/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130942
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄貴
【テーマコード(参考)】
4D015
4J026
【Fターム(参考)】
4D015BA06
4D015BA10
4D015BA19
4D015BB05
4D015BB09
4D015BB12
4D015CA18
4D015DA04
4D015DA05
4D015DA13
4D015DA16
4D015DB04
4D015DB15
4D015DB19
4D015DC02
4D015DC03
4J026AA04
4J026BA25
4J026BA32
4J026BA39
4J026DB02
4J026DB08
4J026DB15
4J026DB32
4J026FA07
4J026GA01
(57)【要約】
【課題】
廃水の凝集処理として使用される廃水処理剤に関するものであり、凝集処理性能だけではなく処理水のCOD低減ができる廃水処理剤及びそれを用いた廃水処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
シクロデキストリン存在下、一般式(1)で表されるカチオン性単量体及び/又は一般式(2)で表わされるアニオン性単量体を含有する単量体成分を重合して得られる高分子からなる廃水処理剤を適用することで、処理水のCOD低減を達成することができる。又、シクロデキストリンは、全単量体に対して、2~15質量%存在下、重合して得られる高分子であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン存在下、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体及び/又は下記一般式(2)で表わされるアニオン性単量体を含有する単量体成分を重合して得られる高分子からなる廃水処理剤。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、R
4は水素又は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X
1
-は陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
R
5は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO
3
-、C
6H
4SO
3
-、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3
-、C
6H
4COO
-あるいはCOO
-、R
6は水素またはCOOY
2、Y
1あるいはY
2は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記シクロデキストリンが、全単量体に対して、2~15質量%存在することを特徴とする請求項1に記載の廃水処理剤。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載の廃水処理剤をCOD含有廃水に添加することを特徴とする廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理剤及び廃水処理方法に関するものであり、詳しくは、凝集処理による懸濁物質除去だけでなく、COD低減できる廃水処理剤及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃水処理として、凝結剤や凝集剤により水中の懸濁物質の凝結、凝集作用により水を浄化する方法が適用されている。その中でも、特にポリアクリルアミド系(PAM系)凝集剤が汎用されており、有効な組成、物性の提案や凝結剤と組み合わせた処方が提案されている。
例えば、特許文献1には、高塩類濃度の廃水にアニオン基比率が55モル%以上85モル%以下であるポリアクリルアミド系アニオン性高分子凝集剤を添加する処理方法が開示されている。
しかし、これらの多くは懸濁物質の凝集処理を主目的としており、処理水質の良化、特にCOD(化学的酸素要求量)成分の除去については述べられていない。CODは、廃水中の有機物の指標となり、特定施設を有する事業場から海域および湖沼等に排出するには、COD濃度を基準値以下に低減する必要があり、凝集処理によりできるだけCODを低減させることが要望されている。
特許文献2には、廃水にPAM系有機凝結剤を添加後、高分子凝集剤を添加する廃水処理方法、特許文献3には、廃水に無機凝集剤を添加した後、PAM系有機凝結剤を添加、更に高分子凝集剤を添加する廃水の凝集処理方法が開示されており、それぞれCOD低減効果が得られることが記載されている。
しかし、これら処方は二液以上を用いる必要があり、懸濁物質に由来するCODの低減には一定の効果が認められるものの溶解性CODについては満足な効果が得られていないのが実情である。
そのため懸濁物質の凝集処理のみではなく、COD低減、特に溶解性COD低減効果に優れる廃水処理剤が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開2017-119240号公報
【特許文献2】特開2005-213343号公報
【特許文献3】特開2011-131166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、廃水を凝集処理するための廃水処理剤及びそれを用いた廃水処理方法に関するものであり、懸濁物質の凝集処理のみならず処理水のCOD低減、特に溶解性COD成分が低減できる廃水処理剤及び廃水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、シクロデキストリン存在下、特定の単量体組成を有する単量体混合物を重合して得られる高分子からなる廃水処理剤を使用することで懸濁物質の凝集処理のみならずCOD低減効果の向上を達成することができることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明における廃水処理剤及び廃水処理方法を使用することで、懸濁物質の凝集処理及び処理水のCOD低減を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における廃水処理剤は、シクロデキストリン存在下、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体及び/又は下記一般式(2)で表わされるアニオン性単量体を含有する単量体成分を重合して得た高分子からなる。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、R
4は水素又は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X
1
-は陰イオンをそれぞれ表わす
一般式(2)
R
5は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO
3
-、C
6H
4SO
3
-、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3
-、C
6H
4COO
-あるいはCOO
-、R
6は水素またはCOOY
2、Y
1あるいはY
2は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
一般式(1)で表わされるカチオン性単量体のうち三級アミノ基含有カチオン性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ-ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ-ト、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの塩等が挙げられる。
又、四級アンモニウム塩基含有カチオン性単量体の例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
【0009】
一般式(2)で表わされるアニオン性単量体として、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。アニオン性単量体は水酸化ナトリウム等で適宜、中和して使用することができる。
【0010】
本発明における高分子は単量体成分として更に、非イオン性単量体を含むことができる。非イオン性単量体としては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等がある。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
【0011】
単量体の組合せとしては、一般式(1)で表わされるカチオン性単量体と非イオン性単量体を重合して得られるカチオン性高分子、一般式(2)で表わされるアニオン性単量体と非イオン性単量体を重合して得られるアニオン性高分子、一般式(1)で表わされるカチオン性単量体と一般式(2)で表わされるアニオン性単量体を重合して得られる両性高分子、一般式(1)で表わされるカチオン性単量体と一般式(2)で表わされるアニオン性単量体と非イオン性単量体を重合して得られる両性高分子の何れを使用しても良い。カチオン性高分子の場合、カチオン性単量体は全単量体に対し、20~100モル%が好ましい。アニオン性高分子の場合、アニオン性単量体は全単量体に対し、10~80モル%が好ましい。
【0012】
更に、単量体成分に架橋性単量体を含んでもよい。架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン、トリアリルアミン等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。架橋性単量体の添加率は全単量体に対し100ppm以下が好ましい。
【0013】
本発明における廃水処理剤は、製品形態は特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合等によって重合した後、水溶液、油中水型エマルジョン、塩水中分散液あるいは粉末等、任意の製品形態にすることができる。これら前記の種々の重合は、常法により実施する。例えば、窒素雰囲気下にて、重合開始剤を添加し、撹拌下あるいは無攪拌下ラジカル重合を行う。重合開始剤として、例えば、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩、2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2、2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系の重合開始剤が挙げられる。又、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルヒドロペルオキシド、硝酸第二セリウムアンモニウム、硫酸第二セリウムアンモニウム等も挙げられる。これらは単独でも使用できるが、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の還元剤と組合せてレドックス系重合開始剤としても使用できる。重合開始剤の添加率は全単量体に対し0.001質量%~1質量%である。
【0014】
又、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸及びそのエステル類、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、アリルアミン、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。
又、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウム、メタリルスルホン酸アンモニウム等のメタリルスルホン酸塩等の単量体が挙げられる。
【0015】
重合濃度としては、単量体濃度として5質量%~60質量%であるが、好ましくは10質量%~40質量%である。重合反応は、通常温度30℃~100℃、時間は0.5時間~20時間で行う。
【0016】
本発明における高分子からなる廃水処理剤は、前記単量体成分をシクロデキストリン存在下重合して製造する。シクロデキストリンは、予め単量体成分混合物に添加しても良く、重合中に連続又は間欠に添加しても良い。操作の簡便さから重合前の単量体成分混合物に添加する方が好ましい。本発明におけるシクロデキストリンとして、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、メチル-α-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、メチル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、モノクロロトリアジノ-β-シクロデキストリン等が挙げられる。又、これらを併用しても良い。これらの中でもβ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが好ましい。シクロデキストリンの添加率は、全単量体に対して、2~15質量%が好ましい。2質量%より低いとCOD成分の除去作用が低く、15質量%より高くても大きな改善効果が得られ難くコスト高になるためである。
【0017】
本発明における高分子は、4質量%塩化ナトリウム水中に高分子濃度0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(0.5質量%塩水溶液粘度)を分子量の指標とすることができる。0.5質量%塩水溶液粘度20~200mPa・sが好ましい。粘度がこれより小さいと凝集処理効果が不十分となる。又、粘度がこれより大きいと溶解性が低下し取扱いが困難となる。
粘度はB型粘度計で回転数60rpm、25℃で測定したものである。又、水中に高分子濃度0.2質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(0.2質量%水溶液粘度)が、500mPa・s以下であることが好ましい。B型粘度計として、東機産業株式会社製B8M型、TVB-10M型等の汎用品が適宜に使用される。粘度が100mPa・sを超える場合は2号ローター、100mPa・s以下の場合は、1号ローターを用いる。
【0018】
本発明における高分子は、前記単量体成分を重合時にシクロデキストリンにグラフト化して得られた高分子であることが推察される。シクロデキストリンは、その分子内の空洞中に別の物質を包み込んで包接錯体と呼ばれる複合体を形成する。シクロデキストリンにグラフト化している高分子を廃水に添加することで、高分子による廃水中の懸濁物質の凝集処理と同時にシクロデキストリンの包接作用により水中のCOD成分を捕捉し、COD成分が除去されると考えられる。従来の凝集処理では廃水中の懸濁物質に由来するCODを低減することは可能であるが、溶解性COD成分は殆ど低減できないか、十分とは言えなかった。一方、本発明における廃水処理では溶解性CODを低減することができる。溶解性CODが50ppm以上含有する廃水が本発明における廃水処理剤の効果を発揮するため好ましく、80ppm以上がより好ましく、100ppm以上がより一層好ましい。ここで、溶解性CODとは、廃水を濾紙(No.5C)で濾過後の濾過液のCODのことである。
COD(CODMn)は、工場排水試験法(JISK0102)に基づいて測定したものである。
尚、本発明における高分子が、シクロデキストリンにグラフト化して得られていると推測されるが、その構造は微細であり、高分子の構造又は特性により直接特定することは不可能であるか、又はおおよそ実際的ではない。
【0019】
本発明における廃水処理剤は、COD成分を含有する廃水に適用できるが、例えば、化学工場廃水、紙パルプ製造工場廃水、石油化学工業廃水、プラスチック製品製造工場廃水、染色廃水、精錬廃水、印刷工場廃水、機械製造工場廃水、食品工場廃水、産業廃棄物浸出水等のCOD含有廃水に適用できる。
【0020】
本発明における廃水処理剤は任意の濃度に水で希釈して添加される。0.01~1.0質量%の範囲が好ましい。廃水に対する添加率は、廃水液量に対し1~1000ppmである。又、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄等の無機系凝集剤やその他の高分子凝集剤と併用しても良い。
【実施例0021】
以下に本発明における廃水処理剤及びそれを用いた廃水処理方法について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
(廃水処理剤試料)
本発明における高分子からなる廃水処理剤試料及び比較試料を水溶液重合の常法により製造した。これら高分子の単量体組成及び物性は、PAM系凝集剤として汎用されている組成範囲のものである。又、シクロデキストリンとしてβ-シクロデキストリン(富士フィルム和光純薬社製)を用いた。
【0023】
(実施例1)
300mLのガラスビーカーに純水236.03g、80質量%アクリル酸7.58gを加え、撹拌下で48質量%水酸化ナトリウム7.02gをゆっくり滴下し、アクリル酸を中和した。次に撹拌下で50質量%アクリルアミド47.87g、β-シクロデキストリン1.50gを加え均一溶液とし、50℃の油浴に浸し温度を安定化させた。窒素導入管を刺したビニール袋でビーカー上部を覆い密閉状態とした。窒素雰囲気下で0.2質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド0.38gを重合開始剤として添加し、窒素曝気下50℃で18時間重合することで、水溶性高分子溶液を得た。この溶液を純水に0.2質量%濃度に溶かした時の粘度は425mPa・sであり、4質量%塩化ナトリウム水溶液に0.5質量%濃度に溶かした時の粘度は141mPa・sであった。これを実施例1として表1に示す。
【0024】
(実施例2)
300mLのガラスビーカーに純水234.53g、80質量%アクリル酸7.58gを加え、撹拌下で48質量%水酸化ナトリウム7.02gをゆっくり滴下し、アクリル酸を中和した。次に撹拌下で50質量%アクリルアミド47.87g、β-シクロデキストリン3.00gを加え均一溶液とし、50℃の油浴に浸し温度を安定化させた。窒素導入管を刺したビニール袋でビーカー上部を覆い密閉状態とした。窒素雰囲気下で0.2質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド0.38gを重合開始剤として添加し、窒素曝気下50℃で18時間重合することで、水溶性高分子溶液を得た。この溶液を純水に0.2質量%濃度に溶かした時の粘度は471mPa・sであり、4質量%塩化ナトリウム水溶液に0.5質量%濃度に溶かした時の粘度は164mPa・sであった。これを実施例2として表1に示す。
【0025】
(実施例3)
300mLのガラスビーカーに純水232.07g、80質量%アクリル酸15.13gを加え、撹拌下で48質量%水酸化ナトリウム14.01gをゆっくり滴下し、アクリル酸を中和した。次に撹拌下で50質量%アクリルアミド35.80g、β-シクロデキストリン3.00gを加え均一溶液とし、50℃の油浴に浸し温度を安定化させた。窒素導入管を刺したビニール袋でビーカー上部を覆い密閉状態とした。窒素雰囲気下で0.2質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド0.38gを重合開始剤として添加し、窒素曝気下50℃で18時間重合することで、水溶性高分子溶液を得た。この溶液を純水に0.2質量%濃度に溶かした時の粘度は416mPa・sであり、4質量%塩化ナトリウム水溶液に0.5質量%濃度に溶かした時の粘度は183mPa・sであった。これを実施例3として表1に示す。
【0026】
(実施例4)
300mLのガラスビーカーに撹拌下で純水194.02g、50質量%アクリルアミド12.60g、80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物85.87g、β-シクロデキストリン7.50gを加え均一溶液とし、50℃の油浴に浸し温度を安定化させた。窒素導入管を刺したビニール袋でビーカー上部を覆い密閉状態とした。窒素雰囲気下で0.2質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド0.94gを重合開始剤として添加し、窒素曝気下50℃で18時間重合することで、水溶性高分子溶液を得た。この溶液を純水に0.2質量%濃度に溶かした時の粘度は162mPa・sであり、4質量%塩化ナトリウム水溶液に0.5質量%濃度に溶かした時の粘度は24.2mPa・sであった。これを実施例4として表1に示す。
【0027】
(比較例1)
300mLのガラスビーカーに純水234.53g、80質量%アクリル酸7.58gを加え、撹拌下で48質量%水酸化ナトリウム7.02gをゆっくり滴下し、アクリル酸を中和した。次に撹拌下で50質量%アクリルアミド47.87gを加え均一溶液とし、50℃の油浴に浸し温度を安定化させた。窒素導入管を刺したビニール袋でビーカー上部を覆い密閉状態とした。窒素雰囲気下で0.2質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド0.38gを重合開始剤として添加し、窒素曝気下50℃で18時間重合することで、水溶性高分子溶液を得た。この溶液を純水に0.2質量%濃度に溶かした時の粘度は375mPa・sであり、4質量%塩化ナトリウム水溶液に0.5質量%濃度に溶かした時の粘度は143mPa・sであった。これを比較例1として表1に示す。
【0028】
(比較例2)
比較例1で得られた水溶性高分子溶液にβ-シクロデキストリン1.50gを加え撹拌混合し、均一な水溶性高分子溶液を得た。これを比較例2として表1に示す。
【0029】
(比較例3)
比較例1で得られた水溶性高分子溶液にβ-シクロデキストリン3.00gを加え撹拌混合し、均一な水溶性高分子溶液を得た。これを比較例3として表1に示す。
【0030】
(比較例4)
300mLのガラスビーカーに純水235.07g、80質量%アクリル酸15.13gを加え、撹拌下で48質量%水酸化ナトリウム14.01gをゆっくり滴下し、アクリル酸を中和した。次に撹拌下で50質量%アクリルアミド35.80gを加え均一溶液とし、50℃の油浴に浸し温度を安定化させた。窒素導入管を刺したビニール袋でビーカー上部を覆い密閉状態とした。窒素雰囲気下で0.2質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド0.38gを重合開始剤として添加し、窒素曝気下50℃で18時間重合することで、水溶性高分子溶液を得た。この溶液を純水に0.2質量%濃度に溶かした時の粘度は248mPa・sであり、4質量%塩化ナトリウム水溶液に0.5質量%濃度に溶かした時の粘度は139mPa・sであった。これを比較例4として表1に示す。
【0031】
(比較例5)
300mLのガラスビーカーに撹拌下で純水201.52g、50質量%アクリルアミド12.60g、80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物85.87gを加え均一溶液とし、50℃の油浴に浸し温度を安定化させた。窒素導入管を刺したビニール袋でビーカー上部を覆い密閉状態とした。窒素雰囲気下で0.2質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド0.94gを重合開始剤として添加し、窒素曝気下50℃で18時間重合することで、水溶性高分子溶液を得た。この溶液を純水に0.2質量%濃度に溶かした時の粘度は181mPa・sであり、4質量%塩化ナトリウム水溶液に0.5質量%濃度に溶かした時の粘度は24.9mPa・ sであった。これを比較例5として表1に示す。
【0032】
(表1)
単量体;AAM:アクリルアミド、AAC:アクリル酸、DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
0.2質量%水溶液粘度:水中に高分子濃度が0.2質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
0.5質量%塩水溶液粘度:4質量%塩化ナトリウム水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
【0033】
(実施試験例1)
廃水としてプラスチック洗浄廃水(pH6.3、SS分1,850mg/L、濁度>1,000NTU、COD680mg/L)を用いてジャーテスト試験を実施した。廃水200mLをガラスビーカーに採取し、ポリ塩化アルミニウム対廃水2000ppmを添加して、150rpm、60秒の条件で撹拌混合した。続いて苛性ソーダ対廃水240ppmを添加して、150rpm、60秒の条件で撹拌混合した。続いて0.1質量%濃度に溶解した表1の本発明における廃水処理剤試料を対廃水15ppm添加して、150rpm、30秒、80rpm、30秒、40rpm、30秒の条件で撹拌混合し、フロック径、5分間静置後の溶解性CODをJISK0102法に則り測定した。フロック径は凝集性能の指標とできる。これらの結果を表2に示す。
【0034】
(比較試験例1)実施試験例1と同じ廃水を用い、表1の比較例の廃水処理剤試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表2に示す。
【0035】
【0036】
(実施試験例2)
廃水として化学製品製造廃水(pH6.6、SS分2,150mg/L、濁度>1,000NTU、COD956mg/L)を用いてジャーテスト試験を実施した。廃水200mLをガラスビーカーに採取し、0.1質量%濃度に溶解した表1の本発明における廃水処理剤試料を対廃水10ppm添加して、150rpm、30秒、80rpm、30秒、40rpm、30秒の条件で撹拌混合し、フロック径、5分静置後の溶解性CODをJISK0102法に則り測定した。この結果を表3に示す。
【0037】
(比較試験例2)実施試験例2と同じ廃水を用い、表1の比較例の廃水処理剤試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
【0038】
【0039】
(実施試験例3)
廃水として廃棄物浸出廃水(pH9.2、SS分17mg/L、濁度9.1NTU、COD95mg/L)を用いてジャーテスト試験を実施した。廃水200mLをガラスビーカーに採取し、硫酸バンド対廃水8,000ppmを添加して、150rpm、60秒の条件で撹拌混合した。続いて0.1質量%濃度に溶解した表1の本発明における廃水処理剤を対廃水10ppm添加して、150rpm、30秒、80rpm、30秒、40rpm、30秒の条件で撹拌混合し、フロック径、5分間静置後の溶解性CODをJISK0102法に則り測定した。これらの結果を表4に示す。
【0040】
(比較試験例3)実施試験例3と同じ廃水を用い、表1の比較例の廃水処理剤試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表4に示す。
【0041】
【0042】
(実施試験例4~6)
SS分としてカオリン100,000mg/L、溶解性COD成分としてタンニン酸1,000mg/Lを水に添加した模擬廃水(pH3.7、SS分100,000mg/L、濁度>1,000NTU、COD790mg/L)を用いてジャーテスト試験を実施した。廃水200mLをガラスビーカーに採取し、1.0質量%濃度に溶解した表1の本発明における廃水処理剤を対廃水250ppmあるいは150ppm添加して、150rpm、30秒、80rpm、30秒、40rpm、30秒の条件で撹拌混合し、フロック径、5分間静置後の溶解性CODをJISK0102法に則り測定した。これらの結果を表5に示す。
【0043】
(比較試験例4~6)実施試験例4~6と同じ廃水を用い、表1の比較例の廃水処理剤試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0044】
【0045】
本発明における廃水処理剤試料を添加した実施試験例では、単量体組成が同じ高分子からなる比較試料の廃水処理剤を添加した比較試験例に比べて、懸濁物質のフロック径が同程度以上で溶解性CODが低下を示した。従来の廃水処理剤に比べて本発明における廃水処理剤では、各種COD含有廃水に対して凝集処理と同時に溶解性CODを低減できることが確認できた。