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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002782
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】会議システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/15 20060101AFI20231228BHJP
   H04N 21/61 20110101ALI20231228BHJP
【FI】
H04N7/15 170
H04N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102189
(22)【出願日】2022-06-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・ウェブサイトのアドレス https://www.itoki.jp/special/smart-campus-solution/floor4 掲載日 令和4年3月28日 公開者 株式会社イトーキ
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】秋山 恵
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 豊
(72)【発明者】
【氏名】福島 浩介
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA10
5C164TA14S
5C164UB88S
5C164VA07P
5C164VA36P
(57)【要約】
【課題】仮想空間を用いる会議を複数同時に開催することを可能にする。
【解決手段】複数の無線通信環境が提供されている現実空間内において複数の会議を実施するための会議システム(100)は、複数の無線通信環境を提供する通信手段(1)と、複数の無線通信環境のうち、同一の無線通信環境に接続する会議参加者に対し、共有される仮想空間内に共通のコンテンツを表示する表示手段(2)と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信環境が提供されている現実空間内において複数の会議を実施するための会議システムであって、
前記複数の無線通信環境を提供する通信手段と、
前記複数の無線通信環境のうち、同一の無線通信環境に接続する会議参加者に対し、共有される仮想空間内に共通のコンテンツを表示する表示手段と、を備えていることを特徴とする、会議システム。
【請求項2】
前記通信手段は、複数の通信チャネルを前記複数の無線通信環境のそれぞれに応じて用いることにより、前記複数の無線通信環境を提供するものである、請求項1に記載の会議システム。
【請求項3】
前記通信手段は、複数の無線通信アクセスポイントである、請求項1に記載の会議システム。
【請求項4】
前記表示手段は、前記現実空間内のオブジェクトに、前記仮想空間内の前記共通のコンテンツを重畳して表示することが可能である、請求項1に記載の会議システム。
【請求項5】
前記現実空間を複数の空間に仕切る仕切り部材をさらに備え、
前記仕切り部材によって区切られた複数の空間のそれぞれについて、前記無線通信環境が提供されている、請求項1に記載の会議システム。
【請求項6】
前記仕切り部材はパーティションである、請求項5記載の会議システム。
【請求項7】
前記仮想空間内における位置を前記現実空間における位置と同期させる同期部材が、前記現実空間に設けられている、請求項1記載の会議システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会議システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、仮想空間を用いて会議を行うことの必要性が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-170641号公報
【特許文献2】特開2021-81943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような現状において、建屋の限られた会議用のスペースを有効活用して、複数の参加者が参加する会議を複数同時に開催し、しかもそれぞれの会議について仮想空間を用いることができれば、非常に利便性が高い。しかしながら、そのような会議を実現するための技術を開示する文献は、存在しない。
【0005】
本発明の一態様は、仮想空間を用いる会議を複数同時に開催することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る会議システムは、複数の無線通信環境が提供されている現実空間内において複数の会議を実施するための会議システムであって、複数の無線通信環境を提供する通信手段と、複数の無線通信環境のうち、同一の無線通信環境に接続する会議参加者に対し、共有される仮想空間内に共通のコンテンツを表示する表示手段と、を備えている。
【0007】
上述の構成によれば、現実空間において、通信手段により複数の無線通信環境が提供され、無線通信環境ごとに、異なる仮想空間を構築できる。構築された仮想空間は、同一の無線通信環境を利用する会議参加者のそれぞれに対して、表示手段を介して提示され、同一の無線通信環境を利用する会議参加者間で共有される。これにより、現実空間において、異なる仮想空間を用いた会議を複数同時に実施することが可能となる。結果として、広さに限りのある現実空間を有効に活用し、仮想空間を用いる多様な会議を複数同時に開催することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、仮想空間を用いる会議を複数同時に開催することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る会議システムの概要を説明する模式図である。
図2】本発明の実施形態1に係る会議システムにおける、個別の会議空間の具体的な構成の一例を示す模式図である。
図3】会議参加者間で共有されている仮想空間の表示例を示す図である。
図4】会議空間に敷設されるトラッキングシートに施される模様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
<会議システム100の概略>
図1は、会議システム100の概略を示す図である。図1に示すように、会議システム100は、複数の会議空間を設けられた現実空間において、会議空間の各々で実施される会議を管理するシステムである。ここで、会議システム100が管理する会議は、複数の人が所定の目的または議題に応じてコミュニケーションするものであればよく、例えば、打合せ、ミーティング、ディスカッション、セミナー、講義等と呼ばれるものを含む。また、会議システム100が管理する会議は、教育機関において行われる会議であってもよい。
【0012】
現実空間としては、有限の広さを持つ施設または建屋等が想定されており、例えば、学校等の教育機関、企業、その他公共のスペースに設けられている。現実空間は、会議を開催する機能を備える複数の空間(以下、会議空間)を含む。各会議空間は、周囲全体に壁、窓、パーティション等の仕切りがあるクローズドな空間であってもよいし、周囲の少なくとも一部に仕切りがないオープンな空間であってもよい。また、会議空間は、常設の空間であってもよいし、仮設の空間であってもよい。また、会議空間は、屋内の空間であってもよいし、屋外の空間であってもよい。例えば、会議空間は、教育機関の敷地内に設けられてもよい。この場合、教育機関の敷地内には、複数の会議空間(例えば、図1に示す第1会議空間~第3会議空間)が設けられてもよい。会議空間の具体例としては、講義またはセミナー等が行われる教室、会議室、会議ブース等が挙げられる。また、会議空間は、仕切り位置の変更、仕切りの拡張、縮小などによって、空間の広さをフレキシブルに変更できるものであってもよい。
【0013】
<会議システム100の構成>
会議システム100は、複数の無線通信環境が提供されている現実空間内において複数の会議を実施するための会議システムである。図1に示すように、会議システム100は、複数の無線通信環境を提供する通信手段1と、複数の無線通信環境のうち、同一の無線通信環境に接続する会議参加者に対し、共有される仮想空間内に共通のコンテンツを表示する表示手段2とを備えている。
【0014】
上述の構成によれば、現実空間において、通信手段により複数の無線通信環境が提供される。そして、提供された無線通信環境ごとに、異なる仮想空間が構築されている。構築された仮想空間は、同一の無線通信環境を利用する会議参加者のそれぞれに対して、表示手段を介して提示され、同一の無線通信環境を利用する会議参加者間で共有される。
【0015】
これにより、現実空間(例えば、学校等の教育機関、企業、公共のスペースに設けられた会議のための施設)において、異なる仮想空間を用いた会議を複数同時に実施することが可能となる。すなわち、現実空間において、会議の規模または目的等に応じて、会議空間をフレキシブルに複数構築することができ、現実空間を有効に活用することができる。結果として、広さに限りのある会議のための施設において、仮想空間を用いる多様な会議を複数同時に開催することが可能となり、施設の利便性を高めることが可能となる。
【0016】
現実空間に提供される複数の無線通信環境は、例えば、WiFi(登録商標)通信環境であってもよい。通信手段1は、例えば、無線通信アクセスポイントであってもよく、より具体的には、WiFiアクセスポイント、または、WiFiアクセスポイントを備えたWiFiルータであってもよい。通信手段1は、1つの無線通信アクセスポイントで構成されていてもよいし、複数の無線通信アクセスポイントで構成されていてもよい。
【0017】
一例として、アンテナの向きによって指向性を持たせられるWiFiルータを通信手段1として適用してもよい。特定の位置にある会議空間に向けて電波を発信できるように通信手段1のアンテナの向きを調整することにより、複数の会議空間での無線電波の混線を避けることができる。
【0018】
図1に示すとおり、複数の会議空間に対応付けて、通信手段1として1つの無線通信アクセスポイントを設けてもよい。この場合、通信手段1は、複数の通信チャネルを複数の無線通信環境のそれぞれに応じて用いることにより、複数の無線通信環境を提供してもよい。一例として、通信手段1は、1chを第1会議空間に割り当てて、第1会議空間に対して、第1無線通信環境を提供し、11chを第2会議空間に割り当てて、第2会議空間に対して、第2無線通信環境を提供してもよい。そして、通信手段1は、6chを第3会議空間に割り当てて、第3会議空間に対して、第3無線通信環境を提供してもよい。
【0019】
上述の構成によれば、通信手段1は、1つの通信チャネルによって1つの無線通信環境を構築する。通信手段1が複数の通信チャネルを切り替えることによって、現実空間内に、複数の無線通信環境を提供することが可能となる。これにより、会議空間ごとに異なる通信チャネルを割り当てることができるため、異なる会議で使用される通信機器の混線、電波干渉等の問題を低減することができる。
【0020】
他の例では、通信手段1は、複数の無線通信アクセスポイントであってもよい。この場合、会議空間の各々には、1個以上の異なる無線通信アクセスポイントが対応付けられる。例えば、第1会議空間に対応付けられた第1無線通信アクセスポイントが、第1会議空間に対して第1無線通信環境を提供し、第2会議空間に対応付けられた第2無線通信アクセスポイントが、第2会議空間に対して第2無線通信環境を提供する。そして、第3会議空間に対応付けられた第3無線通信アクセスポイントが、第3会議空間に対して第3無線通信環境を提供する。
【0021】
上述の構成によれば、1つの会議に割り当てられる会議空間の各々に、1つの以上の異なる無線通信アクセスポイント(例えば、WiFiアクセスポイント)が対応付けられる。これにより、複数の無線通信環境を実現することができ、会議ごとに異なる無線通信環境を提供することができる。
【0022】
一例として、通信手段1が提供する無線通信環境の実現にあたっては、60Ghz帯のWiFiが活用されてもよい。60Ghz帯の電波は、直進性が高く、複数の会議空間に亘って広く届くことを抑制しやすいため、60Ghz帯の電波を採用することにより、混線、電波干渉等の問題を低減することができる。また、60Ghz帯のWiFiは、大容量通信が可能であり、仮想空間を用いた会議に適している。
【0023】
表示手段2は、会議空間に居る会議参加者に対し、会議において共有される仮想空間を視覚的に提示する出力装置である。表示手段2は、通信機能を備え、通信手段1を介して外部のデータ提供装置から仮想空間の描画に必要な各種のデータを受信し、当該仮想空間を可視化データとして会議参加者に提示する。あるいは、表示手段2は、内蔵の記憶装置にローカルに保存している、仮想空間の描画に必要な各種のデータを読み出し、可視化データに変換して会議参加者に提示してもよい。図1に示すとおり、表示手段2は会議参加者の各々に提供されてもよく、会議参加者は、自分が使用する表示手段2を介して仮想空間を視認することができる。
【0024】
図示の例では、第1会議空間にて第1無線通信環境を利用する各表示手段2には、仮想オブジェクトd1が配置された第1仮想空間が提供される。これにより、第1会議空間において表示手段2を使用する会議参加者間で、第1仮想空間および第1仮想空間内の仮想オブジェクトd1(共通のコンテンツ)が共有される。第2無線通信環境を利用する各表示手段2には、第2仮想空間が提供される。これにより、第2会議空間において表示手段2を使用する会議参加者間で、第2仮想空間および第2仮想空間内の仮想オブジェクトが共有される。第3無線通信環境を利用する各表示手段2には、第3仮想空間が提供される。これにより、第3会議空間において表示手段2を使用する会議参加者間で、第3仮想空間および第3仮想空間内の仮想オブジェクトが共有される。
【0025】
会議システム100は、通信手段1を介して、各会議参加者の表示手段2と通信する会議管理装置(不図示)を備えていてもよい。会議管理装置は、第1の機能として、会議ごとに使う仮想空間のデータと、構築されている無線通信環境(例えば、WiFiチャネル)との対応関係を管理する機能を有していてもよい。そして、会議管理装置は、表示手段2がどの無線通信環境を利用しているのかに応じて、表示手段2に提供するべき仮想空間のデータを特定してもよい。このような会議管理装置は、例えば、(1)仮想空間のデータ(会議で使用するデータ)を管理する処理と、(2)当該データに対応する会議空間に割り当てられたWiFiチャネルを自動で管理する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを、コンピュータに導入することにより実現される。
【0026】
一例として、表示手段2は、現実空間内のオブジェクトに、仮想空間内の共通のコンテンツを重畳して表示してもよい。共通のコンテンツとは、例えば、仮想空間に配置された仮想オブジェクトd1である。この場合、表示手段2としては、仮想現実(VR;Virtual Reality)、拡張現実(AR;Augmented Reality)、複合現実(MR;Mixed Reality)、代替現実(SR;Substitutional Reality)など、現実世界と仮想世界とを融合して会議参加者に対し新たな体験を作り出す技術において採用されているあらゆるユーザインタフェース機器を適用できる。例えば、表示手段2は、XR(Extended Reality)ゴーグル、XRヘッドセットなどのヘッドマウントディスプレイであってもよい。また、表示手段2は、ホログラムを表示するプロジェクタであってもよい。
【0027】
上述の構成によれば、会議で共有されるべき物理的資源の一部を、仮想オブジェクトに置き換えることができる。そのため、会議のための環境整備、準備等が一層容易になり、会議空間のデザインの自由度が向上する。また、仮想空間内の共通のコンテンツ、すなわち、仮想オブジェクトは、会議空間に現実に配備された物理的資源(現実空間内のオブジェクト)に重畳表示され得る。そのため、会議空間に居合わせた会議参加者は、共有されるべき資源のすべてがあたかも目の前に実在するかのように、当該資源を認知、知覚して、現実味を持って会議に参加することができる。
【0028】
他の例では、表示手段2は、液晶表示装置(LCD;Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどによって構成されていてもよい。具体的には、会議参加者が個々に操作するスマートフォン、タブレット端末、ノートPCなどであってもよい。会議参加者の各々は、自身が操作するスマートフォン、タブレット端末、ノートPC等の表示内容によって、仮想空間に仮想オブジェクトが配置されていることを認識することができる。
【0029】
<会議空間の構成例>
図2は、現実空間に複数設けられる会議空間の具体的な構成の一例を示す模式図である。図2に示すとおり、現実空間には、複数の会議空間11、会議空間12、・・・が設けられている。図示の例では、二点鎖線で示される現実空間において、会議空間11および会議空間12の2つの会議空間が設けられているが、これらの会議空間の背面にも、それぞれ、別の会議空間が設けられていてもよい。
【0030】
(仕切り部材)
本実施形態では、会議システム100は、現実空間を複数の会議空間(複数の空間)に仕切る仕切り部材をさらに備えていてもよい。そして、会議システム100において、仕切り部材によって区切られた複数の会議空間のそれぞれについて、無線通信環境が提供されていてもよい。
【0031】
上述の構成によれば、会議参加者は、仕切り部材によって、自身が参加する会議が実施される会議空間の範囲を視覚的に認識することができる。そして、会議参加者は、視覚的に認識した会議空間内に居ることにより、当該会議空間に割り当てられている無線通信環境を介して、自身が参加する会議に対応する仮想空間の映像の提供を受けられるということを直感的に理解することができる。また、仕切り部材によって1つの会議空間が視覚的に認識されることにより、仕切られた会議空間に属する会議参加者達が1つの会議を実施しているという一体感が醸成される。
【0032】
仕切り部材は、空間の上面境界、側面境界、および、床面境界の少なくとも1つを物理的に隔てるものに限らない。仕切り部材は、少なくとも1つの境界を会議参加者に視覚的に認識させることが可能なあらゆる部材を含み得る。
【0033】
他の例では、細長い棒状の部材を組み合わせて形成したフレームを天井面、壁面または床面に配置することにより、天井面、壁面または床面を視覚的に認識させてもよい。このような棒状部材およびこれらを組み合わせて形成したフレーム等も仕切り部材に含まれる。
【0034】
さらに他の例では、床面に、1つの会議空間領域を示す彩色または模様が施された敷物を配置してもよいし、会議空間領域の境界を示すマーキングを施してもよい。このような敷物およびマーキング等も仕切り部材に含まれる。さらに他の例では、天井からカーテンを吊り下げて、会議空間の側面境界としてもよい。カーテン等も仕切り部材に含まれる。
【0035】
一例として、仕切り部材はパーティション22であってもよい。仕切り部材として、空間の上面境界、側面境界、および、床面境界の少なくとも1つを物理的に隔てるパーティションを採用することにより、会議空間としてより明確に、閉じられた空間を実現することができる。
【0036】
図2に示す具体例によれば、仕切り部材は、会議空間の側面境界を隔てるパーティション22であってもよい。
【0037】
パーティション22には、隣接するマーク同士が所定のピッチを隔てるよう、複数のマークが形成されていてもよい。例えば、パーティション22は、壁面に等間隔で規則的に孔が配列された有孔パーティションであってもよく、空間認識の補助部材としても用いられ得る。例えば、会議空間内の映像をカメラ等の撮影機構で捕捉したとき、得られた画像にパーティション22の孔が写り込むので、会議参加者は、得られた画像に基づいて、自身、他の会議参加者、およびオブジェクトの位置関係などをより正確に把握することができる。また、パーティション22は、規則的に配列された孔に代えて、格子柄などの規則的な模様が施されていてもよい。このような模様も、遠近感把握のために有効である。
【0038】
パーティション22は、自由に組み換えて、位置、幅、高さなどを変更できるように構成されていてもよい。
【0039】
パーティション22には、会議参加者が閲覧できるディスプレイ24が設置可能なように構成されていてもよい。パーティション22は、ポスター、資料、メモなどの紙媒体が添付できるように構成されていてもよい。ディスプレイ24には、会議参加者が共有する資料を表示してもよいし、いずれか会議参加者、または、参加者全員の視点の映像を表示してもよい。
【0040】
また、パーティション22は、電波を遮蔽する素材で構成されていてもよい。これにより、パーティション22で囲われた会議空間に、近隣の他の会議空間で使われている異なる無線通信環境の電波が侵入することを防ぐことができる。すなわち、パーティション22を、後述する無線調整部材として適用し、それぞれの会議空間で異なる無線通信環境を利用できるように、電波を区画することができる。
【0041】
(同期部材)
本実施形態では、会議システム100において、仮想空間内における位置を現実空間における位置と同期させる同期部材が、現実空間に設けられていてもよい。
【0042】
同一のマークが等間隔で規則的に施された同期部材が、会議空間の上面、側面、床面などに設けられていることにより、仮想空間内における位置を現実空間における位置と同期させることができる。これにより、現実空間と仮想空間とが融合された、より臨場感または没入感のある会議体験を会議参加者に提供することができる。
【0043】
一例として、同期部材は、トラッキングシート23であってもよい。図4に示すとおり、トラッキングシート23の上面には、同一のマークまたは模様が等間隔で規則的に施されていてもよい。他の例では、同期部材は、例えば、パーティション22等の有孔ボードまたはグリッド付ウォールであってもよい。
【0044】
なお、床面に設置されるトラッキングシート23などの敷物は、1つの会議空間の領域を会議参加者に視覚的に示すための仕切り部材としても機能し得る。
【0045】
(無線調整部材)
さらに、本実施形態では、会議システム100は、無線通信環境を調整する無線調整部材としての無線電波照射パネル21を備えていてもよい。無線電波照射パネル21は、例えば、現実空間の天井面に設けられていてもよい。無線電波照射パネル21は、会議空間の真上から、下の会議空間に向かって、通信手段1が発信する無線電波を、当該会議空間に割り当てられたチャンネルにて発信する。これにより、無線電波の混線または減衰を抑制することが可能となる。
【0046】
例えば、無線電波照射パネル21は、平面に設置可能なシート状の無線調整部材であってもよい。より具体的には、無線電波照射パネル21は、特定の会議空間だけを狙ってWiFi環境を構築することが可能な二次元LANシステムである、LANSheet(登録商標)などの無線調整部材であってもよい。このような無線電波照射パネル21を採用することにより、それぞれの会議空間で異なる無線通信環境を利用できるように、電波を区画することができる。
【0047】
上述のとおり、二点鎖線で示される現実空間において、会議空間11および会議空間12の2つの会議空間に限らず、これらの会議空間の背面にも、それぞれ、会議空間が設けられていてもよい。したがって、例えば、1つの無線電波照射パネル21は、会議空間11および会議空間12の2つの会議空間と、それぞれの背面にある会議空間の計4つの会議空間を、電波を届ける範囲としてカバーするように構成されていてもよい。
【0048】
また、会議システム100は、パーティション22の組み換えによって、各会議空間の領域が変更された場合には、その変更に合わせて電波が届く範囲(メッシュ範囲)を変更することができる。
【0049】
例えば、1つの無線電波照射パネル21の中に、通信手段1として、4台のWiFiアクセスポイントが設置されており、各々のWiFiアクセスポイントが、上述した4つの会議空間のそれぞれに無線通信環境を提供している。
【0050】
ここで、会議空間11と会議空間12とを仕切っていたパーティション22を取り払い、2つの会議空間11および会議空間12を併合して1つの会議空間として取り扱うことになったとする。この場合、会議管理装置は、併合した会議空間で開催される会議に参加する会議参加者それぞれの表示手段2に対して、WiFiアクセスポイントのSSID((Service Set Identifier)を指定しなおしてもよい。具体的には、会議管理装置は、上述の4台のWiFiアクセスポイントのうち、会議空間11および会議空間12を担っていたすべてのWiFiアクセスポイント、または、いずれかのWiFiアクセスポイントのSSIDを、併合した会議空間における会議参加者の表示手段2に割り当てる。こうして、会議管理装置は、パーティション22の組み換えなどによる、会議空間のレイアウト変更に合わせて、電波の範囲を特定し、変更することができる。
【0051】
1台のWiFiアクセスポイントが通信チャネルを切り替えることにより、複数の会議空間をカバーしている場合、会議管理装置は、レイアウト変更後の各会議空間に対して、通信チャネルが重複しないように再割り当てを行う。そして、会議管理装置は、それぞれの会議の参加者の表示手段2に対して、再割り当て後の通信チャネルを使ってWiFiアクセスポイントに接続するように指示を送る。
【0052】
(変形例)
他の実施形態では、会議システム100は、上述した不図示の会議管理装置を含んでおり、当該会議管理装置は、第2の機能として、無線通信環境と、各会議参加者の表示手段2との対応関係を管理する機能を有していてもよい。会議管理装置は、表示手段2を装着した会議参加者がどの会議空間にいるのかを特定し、その表示手段2に対してどの無線通信環境を提供するのかを判断してもよい。
【0053】
例えば、会議管理装置は、各会議参加者に対して、仮想空間を利用した会議を立ち上げたり、立ち上げられた会議に参加したりするためのユーザインタフェース(UI)を提供することができる。
【0054】
まず、会議管理装置は、各会議参加者が、表示手段2(ヘッドセット等)を利用して、バーチャル会議の設定画面、または、一般的なウェブ会議の会議設定画面を操作できるようにグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供してもよい。これにより、各会議参加者は、表示手段2を操作して、立ち上げられたある会議(以下、会議体1と称する)に関して、開催前に事前にユーザ登録を行うことができる。会議管理装置は、ユーザ登録時に、当該ユーザが使用する表示手段2の登録を併せて受け付けてもよい。例えば、会議管理装置は、ユーザを識別するユーザIDと、当該ユーザが使用する表示手段2の端末IDとを紐付けて管理することができる。
【0055】
次に、会議体1において、会議参加者が表示手段2を用いて会議にログインする。会議管理装置は、ログイン操作を受け付けると、当該会議参加者の表示手段2が利用するべきWiFi通信環境の設定を、当該表示手段2にプッシュ送信し、WiFiのアクセスポイント(通信手段1)を切り替えさせてもよい。他の例では、会議管理装置は、会議参加者のログイン操作を受け付けると、当該会議参加者の表示手段2に対して、会議体1に対応するチャネルを通知し、チャネルを切り替えさせてもよい。
【0056】
<仮想空間の表示例>
図3は、それぞれの会議空間において、会議参加者間で共有されている仮想空間の表示例を示す図である。
【0057】
上述したとおり、例えば、会議参加者の各々は、表示手段2としてのXRゴーグルを装着することができる。具体例を挙げて説明すると、第1会議空間に居る会議参加者が装着しているXRゴーグルは、通信手段1から第1無線通信環境の提供を受けて、不図示のデータ提供装置から、第1仮想空間の描画に必要なデータを受信する。XRゴーグルは、第1会議空間に現実に配備されている物理オブジェクトに、第1仮想空間に配置された仮想オブジェクトを重畳して表示することができる。これにより、会議参加者は、会議空間に現実に存在する物理オブジェクトと、それに重畳して表示された仮想オブジェクトとがあたかも一緒に会議空間に存在しているかのようにこれらのオブジェクトを認識することができる。
【0058】
図3に示す例では、会議空間11には、現実の物理オブジェクトとして、車の座席シート13と、台車に載せられたエンジンの模型14とが配備されている。エンジンの模型14は、台車に載せられており、会議空間11内を自由に移動させることができてもよい。
【0059】
会議空間11に居る会議参加者の表示手段2には、会議空間11で構築されている第1無線通信環境が提供され、したがって、第1無線通信環境に対応する第1仮想空間のデータが通信手段1を介して提供される。
【0060】
表示手段2は、通信手段1を介して受信した第1仮想空間のデータを処理して、仮想オブジェクトとしての車体15を所定座標に配置した第1仮想空間を描画して、表示手段2に備えられた画面に出力する。これにより、表示手段2を装着した会議参加者は、図3に示すように、現実のオブジェクトである車の座席シート13に重なる仮想オブジェクトの車体15を視認できる。
【0061】
仮想オブジェクトには、車体15の他にも、テキスト情報が記載されたウィンドウまたは吹き出し等が含まれていてもよく、これらのウィンドウまたは吹き出しは、車体15ともに第1仮想空間に配置され、描画されてもよい。これにより、会議参加者は、車体15とともに、車体15に関連する詳しい情報を閲覧することができる。
【0062】
例えば、会議参加者が、会議空間11から会議空間12へ移動して、別の会議に参加するという利用方法も想定される。会議参加者が、今参加している会議体から別の会議体に参加したい場合、例えば、会議参加者は、表示手段2を操作して、会議管理装置にログインし直すことができる。会議参加者によって、新たに参加する別の会議体が選択されると、会議管理装置は、当該別の会議体に対応するWiFi通信環境の設定を、当該表示手段2にプッシュ送信する。これにより、会議管理装置は、表示手段2の接続を、当該別の会議体に対応するWiFiアクセスポイントに切り替えさせる。これにより、例えば、会議空間11にて、車体15を視認していた会議参加者は、会議空間12へ移動して会議空間12で開催されている会議に参加しなおして、会議空間12にて、キッチンの仮想オブジェクトを視認することができる。このように、本開示の会議システム100によれば、他の会議体と電波を取り合うことなく快適に会議が開催される。
【0063】
<効果>
以上のとおり、本実施形態に係る会議システム100の構成によれば、現実空間において、異なる仮想空間を用いた会議を複数同時に実施することが可能となる。すなわち、現実空間において、会議の規模または目的等に応じて、会議空間をフレキシブルに複数構築することができ、現実空間を有効に活用することができる。結果として、広さに限りのある会議のための施設において、仮想空間を用いる多様な会議を複数同時に開催することが可能となり、施設の利便性を高めることが可能となる。
【0064】
本実施形態に係る会議システム100を、例えば、学校等の教育機関に設けられた会議のための施設に適用すれば、より多くの教育関係者および学生達が、仮想空間を用いた多様な会議、講義、セミナー、レクチャ等に関わることができる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標4「質の高い教育をみんなに」等の達成にも貢献するものである。
【0065】
〔ソフトウェアによる実現例〕
通信手段1および表示手段2(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0066】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0067】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0068】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0069】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0070】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 通信手段
2 表示手段
21 無線電波照射パネル
22 パーティション(仕切り部材)
23 トラッキングシート(同期部材)
100 会議システム
図1
図2
図3
図4