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  • 特開-電圧調整装置及び電圧調整方法 図1
  • 特開-電圧調整装置及び電圧調整方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027824
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電圧調整装置及び電圧調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/16 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H02J3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130955
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 靖臣
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA04
5G066DA08
5G066FA02
5G066FB11
5G066FC11
(57)【要約】
【課題】配電系統の電力品質の低下を抑制する技術を提供する。
【解決手段】
電圧調整装置は、配電系統の電圧を検出する電圧検出部と、配電系統に無効電力を出力する電力出力部を備えている。電力出力部は、電圧検出部で検出される配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合(S12でYES)であって、前記配電系統の電圧が前記第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間以内のとき(S20でNO)は、第1の出力に制限する(S24)。電力出力部は、電圧検出部で検出される配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合(S12でYES)であって、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間を超えたとき(S20でYES)は、配電系統への無効電力の出力を停止する(S22)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統に接続され、前記配電系統の電圧を調整する電圧調整装置であり、
前記配電系統の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で検出される前記配電系統の電圧に基づいて、前記配電系統に無効電力を出力する電力出力部と、を備えており、
前記電力出力部は、
前記電圧検出部で検出される前記配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合であって、前記配電系統の電圧が前記第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間以内のときは、第1の出力に制限して電圧調整動作状態を維持し、
前記電圧検出部で検出される前記配電系統の電圧が前記第1設定電圧未満となる場合であって、前記配電系統の電圧が前記第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が前記設定時間を超えたときは、前記電圧調整動作状態を終了し、配電系統への無効電力の出力を停止する、電圧調整装置。
【請求項2】
前記電力出力部は、前記電圧検出部で検出される前記配電系統の電圧が前記第1設定電圧より大きな電圧となる場合に、前記第1の出力より大きな第2の出力で前記配電系統に無効電力を出力して前記配電系統の電圧を上昇又は下降させる、請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記電力出力部が前記第1の出力に制限するときの無効電力の最大値と、前記電力出力部が前記第2の出力で前記無効電力を出力するときの最大値との比は、0.085未満である、請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
配電系統の電圧を調整する電圧調整方法であり、
前記配電系統の電圧を検出する電圧検出工程と、
前記電圧検出工程で検出される前記配電系統の電圧に基づいて、前記配電系統に電力を出力する電力出力工程と、を備えており、
前記電力出力工程は、
前記電圧検出工程で検出される前記配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合であって、前記配電系統の電圧が前記第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間以内のときは、前記配電系統への無効電力の出力を第1の出力に制限して電圧調整動作状態を維持し、
前記電圧検出工程で検出される前記配電系統の電圧が前記第1設定電圧未満となる場合であって、前記配電系統の電圧が前記第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が前記設定時間を超えたときは、前記電圧調整動作状態を終了し、配電系統への無効電力の出力を停止する、電圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、配電系統の電圧を調整する電圧調整装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、配電系統に電圧変動が生じた際、配電系統に無効電力を供給し、配電系統の電圧変動を抑制する電圧調整装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-29433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電圧調整装置では、配電系統の事故により配電系統に瞬時電圧低下が生じると、配電系統から直ちに解列するようになっていた。近年、配電系統に多数の分散型電源(例えば、太陽光発電装置)が接続される(すなわち、配電系統に多数の電圧調整装置が接続される)ようになっている。このため、配電系統に瞬時電圧低下が生じると、配電系統に接続された多数の電圧調整装置が一斉に解列することとなり、配電系統の電力品質に大きな影響を与えるという問題が生じている。本明細書は、配電系統に瞬時電圧低下が生じたときに、配電系統の電力品質が低下することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する電圧調整装置は、配電系統に接続され、配電系統の電圧を調整する。この電圧調整装置は、配電系統の電圧を検出する電圧検出部と、電圧検出部で検出される配電系統の電圧に基づいて、配電系統に無効電力を出力する電力出力部と、を備える。電力出力部は、電圧検出部で検出される配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合であって、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間以内のときは、無効電力の出力を第1の出力に制限(第1の出力制限)して電圧調整動作状態を維持する。また、電力出力部は、電圧検出部で検出される配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合であって、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間を超えたときは、電圧調整動作状態を終了し、配電系統への無効電力の出力を停止する。
【0006】
上記の電圧調整装置では、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった場合でも、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間以内のときは、配電系統の電圧が第1設定電圧を超えて回復すると直ちに配電系統に無効電力を第1の出力制限を解除して出力することができる。すなわち、電圧調整装置は、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった場合でも、配電系統から直ちには解列されないため、瞬時電圧低下時の配電系統の電力品質の低下を抑制することができる。
【0007】
また、本明細書で開示する、配電系統の電圧を調整する電圧調整方法は、配電系統の電圧を検出する電圧検出工程と、電圧検出工程で検出される配電系統の電圧に基づいて、配電系統に無効電力を出力する電力出力工程と、を備えている。電力出力工程は、電圧検出工程で検出される配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合であって、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間以内のときは、無効電力の出力を第1の出力に制限して電圧調整動作状態を維持する。一方、電圧検出工程で検出される配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合であって、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間を超えたときは、電圧調整動作状態を終了し、配電系統への無効電力の出力を停止する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の電圧調整装置の概略構成を示す図。
図2】実施例の電圧調整装置において、系統電圧が低下したときに制御装置が実施する処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で開示する電圧調整装置では、電力出力部は、電圧検出部で検出される配電系統の電圧が第1設定電圧より大きくなる場合に、無効電力の出力を第1の出力より大きな第2の出力で配電系統に無効電力を出力して配電系統の電圧を上昇又は下降させてもよい。このような構成では、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合は、無効電力の出力を比較的に小さな第1の出力に制限し、配電系統の電圧が第1設定電圧より高くなる場合は、無効電力の出力を比較的に大きな第2の出力で配電系統に無効電力を出力して配電系統の電圧を上昇又は下降させる。このため、配電系統の電圧が大きく低下した場合は、電力出力部の無効電力の出力を制限することで、瞬時電圧低下時における電圧調整装置の運転継続時間を長くすることができる。
【0010】
本明細書で開示する電圧調整装置は、配電系統と電力出力部とを接続する配線に配置されたスイッチをさらに備えていてもよい。スイッチは、電圧検出部で検出される配電系統の電圧が第1設定電圧未満となる場合であって、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間を超えたときは、配電系統と電力出力部とを非接続としてもよい。このような構成では、配電系統の電圧が第1設定電圧未満となった状態で経過した時間が設定時間を超えた場合は、電圧調整装置の電力出力部が配電系統から切り離され、電圧調整装置の安全性が確保される。
【0011】
本明細書で開示する電圧調整装置では、電力出力部が無効電力の出力を第1の出力に制限するときの出力電力の最大値と、電力出力部が無効電力の出力を第2の出力で無効電力を出力するときの最大値との比は、0.085未満であってもよい。このような構成では、無効電力を出力するときにおける第2の出力の最大値に対する第1の出力の最大値の比が適切に設定され、瞬時電圧低下時における電圧調整装置の運転継続時間を好適に確保することができる。
【実施例0012】
図1、2を参照して、本実施例に係る電圧調整装置10について説明する。図1に示すように、電圧調整装置10は配電系統1に接続される。配電系統1は、電源(例えば、変電所)に接続されており、電源から配電系統1に電力が供給される。配電系統1には、負荷4が接続されており、負荷4は配電系統1から供給される電力により作動する。電圧調整装置10は、負荷4が接続された接続点より電源側において、配電系統1に接続されている。具体的には、電圧調整装置10は、開閉器2及び変圧器3を介して配電系統1に並列接続されている。電圧調整装置10は、負荷4等によって配電系統1の電圧(以下、系統電圧ということがある)が変動するときに、配電系統1に無効電力を供給することで系統電圧の変動を抑制する。系統電圧の変動が調整されることで、配電系統1の電力品質が維持される。
【0013】
電圧調整装置10は、インバータ11と、インバータ11を制御する制御装置15を備えている。インバータ11は、連系リアクトル12及び電磁接触器14(「スイッチ」の一例)を介して変圧器3に接続され、変圧器3が開閉器2を介して配電系統1に接続されている。また、インバータ11には、電位確立用のコンデンサ13が接続されている。なお、電磁接触器14と連系リアクトル12とコンデンサ13は電圧調整装置10に装備されており、変圧器3は電圧調整装置10とは別に設けられている。
【0014】
制御装置15は、開閉器2に装備される各種センサ5,6,7に接続されている。すなわち、開閉器2は、配電系統1の電流を検出する2つの電流センサ6,7と、配電系統1の電圧(すなわち、系統電圧)を検出する電圧センサ5を備えている。電圧センサ5は、電圧検出部を構成する。電流センサ6は、インバータ11が接続された接続点より電源側の配電系統1の電流を検出する。電流センサ7は、インバータ11が接続された接続点より負荷側の配電系統1の電流を検出する。電流センサ6,7及び電圧センサ5で検出された検出値は、制御装置15に入力される。制御装置15は、電流センサ6,7及び電圧センサ5で検出された検出値に基づいて、系統電圧の変動を抑制するようインバータ11を駆動する。すなわち、系統電圧が低下しているときは、系統電圧が上昇するようにインバータ11を駆動して連系リアクトル12に流れる電流を制御する。一方、系統電圧が上昇しているときは、系統電圧が下降するようにインバータ11を駆動して連系リアクトル12に流れる電流を制御する。これによって、系統電圧が予め設定された基準電圧(例えば、6600V)となるようにフィードバック制御する。
【0015】
また、制御装置15は、連系リアクトル12と変圧器3とを接続する配線を流れる交流電流を監視する交流監視部16と、コンデンサ13の直流電圧を監視する直流電圧監視部17を備えている。制御装置15は、交流監視部16で交流電流を監視することで、インバータ11から配電系統1への無効電力の供給量を制御する。なお、制御装置15は、CPU,ROM,RAMを備えたコンピュータによって構成することができる。インバータ11は、電力出力部を構成する。
【0016】
次に、配電系統1に電圧降下が生じたときの制御装置15の処理について説明する。図2に示すように、制御装置15は、まず、配電系統1の電圧を検出する(S10)。具体的には、電圧センサ5から入力される検出値によって、配電系統1の電圧、すなわち、系統電圧を取得する。
【0017】
次に、制御装置15は、S10で取得した系統電圧が予め設定された第1設定値未満となるか否かを判断する(S12)。ここで、第1設定値(請求項に記載した「第1設定電圧」の一例)は、配電系統1に停電が生じているか否かを判断するために設定された値である。本実施例において第1設定値は、配電系統1の基準電圧(例えば、6600V)の60%(6600×0.6=3960V)に設定される。したがって、S12では、S10で取得した系統電圧が第1設定値(例えば、3960V)未満となったか否かが判断される。
【0018】
系統電圧が第1設定値未満となる場合(S12でYES)、制御装置15はタイマーがスタートしているか否かを判断する(S14)。すなわち、本実施例の電圧調整装置10では、系統電圧が第1設定値未満となっても直ちに停電処理を行うことはせず、系統電圧が第1設定値未満となってから予め設定された設定時間(例えば、1秒)を経過したときに停電処理を行うようになっている。このため、制御装置15は、系統電圧が第1設定値未満となってからの時間を計時するためのタイマーを備えている。S14では、系統電圧が第1設定値未満となってからの時間を計時するためのタイマーがスタートしているか否かが判断される。
【0019】
タイマーがスタートしていない場合(S14でNO)、制御装置15はタイマーをスタートして(S18)、S20に進む。一方、タイマーがスタートしている場合(S14でYES)、制御装置15は、タイマーを更新して(S19)、S20に進む。
【0020】
S20では、制御装置15は、タイマーで計時された時間が設定時間以上となったか否かを判断する。タイマーで計時された時間(すなわち、系統電圧が第1設定値未満となった状態で経過した時間)が設定時間以上となった場合(S20でYES)、制御装置15は停電処理を行う(S22)。具体的には、制御装置15は、インバータ11の駆動を停止すると共に、電磁接触器14を開放する。これによって、配電系統1と電圧調整装置10のインバータ11とが切り離される。
【0021】
タイマーで計時された時間(すなわち、系統電圧が第1設定値未満となった状態で経過した時間)が設定時間未満の場合(S20でNO)、制御装置15は、コンデンサ13に蓄えられた電荷の消費を抑えるようにインバータ11からの無効電力の出力を第1の出力とする。すなわち、第1の出力に無効電力を制限する処理を行う(S24)。上記したように本実施例の電圧調整装置10は、系統電圧が第1設定値未満となっても直ちに停電処理(S22)を行わず、コンデンサ13の電荷が枯渇しないよう無効電力の出力制限の処理を実行する。すなわち、電圧調整装置10は、配電系統1から解列されず、電圧調整動作を実行可能な状態(すなわち、電圧調整動作状態)に維持される。
【0022】
一方、系統電圧が第1設定値未満となった状態で、無効電力の出力を第1の出力に制限しないと、コンデンサ13に蓄えられた電荷が消費されてコンデンサ13のインバータ側の直流電圧値が設定値以下となると、インバータ11の駆動が停止すると共に、制御装置15は停電処理を行うこととなり、配電系統1と電力出力部とが非接続となる。すなわち、系統電圧が第1設定値未満となった状態で経過した時間が設定時間となる前に、コンデンサ13に蓄えられた電荷が消費され、コンデンサ13のインバータ側の直流電圧値が設定値以下となると、インバータ11の駆動が停止すると共に、制御装置15は停電処理を行い、配電系統1と電力出力部とを非接続とするため、たとえ設定時間内に系統電圧が復帰しても、直ちに電圧調整動作を実行することができなくなる。
【0023】
そこで、本実施例の電圧調整装置10では、S24の第1出力制限処理においては、インバータ11から配電系統1に出力される無効電力を、通常時の無効出力(すなわち、後述するS26における第2の出力で無効電力を出力する処理)より小さな第1の出力に制限し、S24の電圧上昇処理が設定時間だけ実施できるように確保している。ここで、第1の出力は、コンデンサ13の容量と、S20の設定時間とに応じて適宜設定することができる。すなわち、S20の設定時間だけS24の第1出力制限処理が実行できるように、コンデンサ13の容量を考慮して第1の出力を設定することができる。第1の出力については、S26における第2の出力を説明する際にさらに説明する。
【0024】
上記したS12の判断においてNOとなる場合(すなわち、系統電圧が第1設定値未満とならない場合)であって、タイマーがスタートしている場合は、制御装置15は、タイマーをリセットする(S15)。これによって、配電系統1の電圧が第1設定値未満となってタイマーの計時を開始したとしても、設定時間内に配電系統1の電圧が第1設定値以上となった場合は、停電処理が実施されることはなく、電圧調整装置10は電圧調整動作を継続することとなる。また、S12の判断においてNOとなる場合、制御装置15は、タイマーのリセット(S15)と並行して第2の出力で無効電力の出力を行う(S26)。
【0025】
上述したように、系統電圧が第1設定値以上となる場合は、制御装置15は、インバータ11を駆動して配電系統1へ第2の出力で無効電力を出力し、配電系統1の電圧を上昇又は下降させる。ここで、第2の出力は、電圧調整装置10が通常運転するときの無効電力の出力であり、上述した第1の無効電力の出力より大きな出力に設定されている。具体的には、配電系統1の基準電圧とS10で検出した系統電圧との差分に応じて設定され、差分値が大きい場合は大きな出力となり、差分値が小さい場合は小さな出力となるように設定されている。
【0026】
ここで、S24の第1の無効電力の出力と、S26の第2の無効電力の出力との関係について説明する。本実施例において、第1の出力の最大値は、第2の出力の最大値よりも小さな値に設定される。具体的には、電圧調整装置10は、第1の出力に制限するものの、配電系統1側には無効電力が出力されることとなる。電圧調整装置10から無効電力を出力するときは、第2の出力の最大値に対する第1の出力の最大値の比が0.085未満となるように設定されている。例えば、第2の出力の最大値300kvarに対して第1の出力の最大値を25kvarとし、その比を8.33%に設定することができる。このような設定とすることで、コンデンサ13の容量を従来と比較して大きくすることなく、S20の設定時間(例えば、1秒)だけS24の第1出力制限処理を実行することが可能となる。
【0027】
なお、第1の出力に出力制限を行うときは、系統電圧が第1設定値未満となるような大きな電圧降下が生じているときであるため、第1の出力を一定値とすることができる。ただし、第2の出力と同様に、基準電圧と系統電圧の差分に基づいて第1の出力の大きさを最大値以下の範囲ならば変えてもよい。
【0028】
上述した図2に示す処理は、制御装置15によって所定の周期で繰り返し実行される。これによって、本実施例では、系統電圧が第1設定値(例えば、3960V)未満となった状態で経過した時間が設定時間(例えば、1秒)となると、電圧調整装置10が停電処理を実行し、電圧調整装置10は配電系統1から解列する。一方、系統電圧が第1設定値未満となった状態で経過した時間が設定時間以内のときは、電圧調整装置10は出力を制限した状態で電圧調整動作状態を継続し、配電系統1から解列されない。また、系統電圧が第1設定値未満となっても、設定時間が経過するまでに系統電圧が第1設定値以上まで復帰すれば、電圧調整装置10は通常の電圧調整動作に復帰する。これによって、配電系統1の電力品質を好適に維持することができる。
【0029】
また、本実施例の電圧調整装置10では、系統電圧が第1設定値未満となると、出力を制限して電圧調整動作を継続する。このため、電圧調整装置10に装備されるコンデンサ13の容量を大きくする必要がない。これによって、電圧調整装置10にコンデンサを大容量化するための増設空間がない場合にも対応でき、また、コンデンサを大容量化することによるコスト増も回避することができる。
【0030】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
1:配電系統
2:開閉器
3:変圧器
4:負荷
5:電圧センサ
6,7:電流センサ
10:電圧調整装置
11:インバータ
12:連系リアクトル
13:コンデンサ
14:電磁接触器
15:制御装置
16:交流監視部
17:直流電圧監視部
図1
図2