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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027847
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240222BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130988
(22)【出願日】2022-08-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (公開1) 発行日 令和4年3月7日 刊行物 2022年3月10日―2022年3月11日電力技術/電力系統技術/半導体電力変換合同研究会―3,PE-22-047,PSE-22-067,SPC-22-095,一般社団法人電気学会 (公開2) 掲載日 令和4年3月11日 ウェブサイトアドレス http://itohserver01.nagaokaut.ac.jp/itohlab/jp/member/kondo.html http://itohserver01.nagaokaut.ac.jp/itohlab/paper/2022/20220310-11_SPC壱岐/kondo.pdf (公開3) 開催日 令和4年3月11日 集会名 一般社団法人電気学会 電力技術/電力系統技術/半導体電力変換合同研究会 開催場所 壱岐文化ホール(長崎県壱岐市郷ノ浦町本村触445番地)及びWeb開催(Zoom開催)
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 健二
(72)【発明者】
【氏名】平島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】村田 彩
(72)【発明者】
【氏名】伊東 淳一
(72)【発明者】
【氏名】日下 佳祐
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA13
5H770CA02
5H770CA04
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA22
5H770EA01
5H770EA30
5H770HA02Y
5H770HA03Y
5H770JA10X
5H770LB02
(57)【要約】
【課題】並列接続された電力変換装置間の循環電流を抑制する。
【解決手段】並列接続された他の電力変換装置とともに、共通の負荷に自立運転出力を供給可能な電力変換装置であって、直流電力を交流電力に変換するインバータ部と、電力変換装置から出力される有効電力及び無効電力に基づいてドループ制御を行い、第1電圧値を出力する第1電圧値生成部と、電力変換装置から出力される出力電流に基づいて仮想インピーダンス制御を行い、第1電圧値を調整する第2電圧値を生成する仮想インピーダンス制御部と、第1電圧値と第2電圧値に基づいて出力電圧指令値を出力する出力電圧指令値出力部と、出力電圧指令値が入力され、出力電圧指令値に一致するようにインバータ部を制御するインバータ電圧制御部と、を備え、仮想インピーダンス制御部は、無効電力に応じて変化する仮想リアクタンスを出力電流に掛けることにより第2電圧値を生成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された他の電力変換装置とともに、共通の負荷に自立運転出力を供給可能な電力変換装置であって、
直流電力を交流電力に変換するインバータ部と、
前記電力変換装置から出力される有効電力及び無効電力に基づいてドループ制御を行い、第1電圧値を出力する第1電圧値生成部と、
前記電力変換装置から出力される出力電流に基づいて仮想インピーダンス制御を行い、前記第1電圧値を調整する第2電圧値を生成する仮想インピーダンス制御部と、
前記第1電圧値と前記第2電圧値に基づいて出力電圧指令値を出力する出力電圧指令値出力部と、
前記出力電圧指令値が入力され、該出力電圧指令値に一致するように前記インバータ部を制御するインバータ電圧制御部と、
を備え、
前記仮想インピーダンス制御部は、前記無効電力に応じて変化する仮想リアクタンスを前記出力電流に掛けることにより前記第2電圧値を生成することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記無効電力の増加に応じて減少する前記電力変換装置からの出力電圧実効値の、前記無効電力に対する変化の傾きが、定格電圧を含む所定範囲において該所定範囲外よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記仮想インピーダンス制御部は、仮想抵抗を含むことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電力変換装置が複数並列に接続されたことを特徴とする電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力系統に連系するととともに自立運転時に並列運転可能な電力変換装置及び該電力変換装置を複数含む電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用電力系統と連系するとともに、自立運転時には、複数の電力変換装置により、複数の蓄電池や太陽電池等の分散型電源を並列で運転するシステムが提案されている。
このように、複数の電力変換装置を並列運転する場合に、複数の電力変換装置が接続された母線と、各電力変換装置との間の配線インピーダンスが、各電力変換装置でアンバランスすることにより、電力変換装置間に循環電流が生じる。電力変換装置間の循環電流が増加すると、特定の電力変換装置が過電流によって停止する等の不具合が生じる可能性がある。
【0003】
このような、並列運転される電力変換装置間において循環電流を抑制するために、仮想インピーダンス制御を用いる手法が提案されている。仮想インピーダンス制御を用いる手法として、例えば、非特許文献1には、出力電流に応じて仮想インピーダンスを変化させる技術が紹介されている。
【0004】
もっとも、このような手法では、出力フィルタを小型化すると、電力変換装置間の無効電流が増加し、循環電流の抑制効果が低減してしまっていた。
【0005】
また、商用電力系統と連系して運転するためには、系統連系規定により電圧変動が制限される。しかし、上述のような、無効電力によっては仮想インピーダンスを変化させない手法では、定格電圧付近で調整可能な無効電力量が小さいため、循環電流を抑制するために電圧変動量が増加してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wei Yao et al., ”Design and Analysis of the Droop Control Method for Parallel Inverters Considering the Impact of the Complex Impedance on the Power Sharing,” IEEE Transactions on Industrial Electronics, Vol. 58. No. 2, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、並列接続された複数の電力変換装置間における循環電流を抑制可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、
並列接続された他の電力変換装置とともに、共通の負荷に自立運転出力を供給可能な電力変換装置であって、
直流電力を交流電力に変換するインバータ部と、
前記電力変換装置から出力される有効電力及び無効電力に基づいてドループ制御を行い、第1電圧値を出力する第1電圧値生成部と、
前記電力変換装置から出力される出力電流に基づいて仮想インピーダンス制御を行い、前記第1電圧値を調整する第2電圧値を生成する仮想インピーダンス制御部と、
前記第1電圧値と前記第2電圧値に基づいて出力電圧指令値を出力する出力電圧指令値出力部と、
前記出力電圧指令値が入力され、該出力電圧指令値に一致するように前記インバータ部を制御するインバータ電圧制御部と、
を備え、
前記仮想インピーダンス制御部は、前記無効電力に応じて変化する仮想リアクタンスを前記出力電流に掛けることにより前記第2電圧値を生成することを特徴とする。
【0009】
これによれば、仮想インピーダンス制御により、並列に接続された各電力変換装置を負荷に接続する配線による配線インピーダンスを含むインピーダンスのアンバランスを低減し、ドループ制御による無効電力の偏差を抑制できる。また、出力電流に掛ける仮想リアクタンスを無効電力に応じて変化させることにより、並列に接続された各電力変換装置の無効電力をバランスさせることが可能となる。このように、各電力変換装置間で無効電力をバランスさせることにより、各電力変換装置間における無効電力の授受とみなすことができる循環電流を抑制することができる。
【0010】
また、本発明において、
前記無効電力の増加に応じて減少する前記電力変換装置からの出力電圧実効値の、前記無効電力に対する変化の傾きが、定格電圧を含む所定範囲において該所定範囲外よりも小さいようにしてもよい。
【0011】
これによれば、定格電圧の近傍において、無効電力が変化しても出力電圧実効値が大きく変化しない。従って、ドループ制御及び仮想インピーダンス制御によって、無効電力が変化しても、出力電圧実効値が定格電圧から大きくはずれることがないので、系統連系規定のように電圧の変動幅に制限がある場合でも、このような制限を満足しつつ、循環電流を抑制することができる。
【0012】
また、本発明において、
前記仮想インピーダンス制御部は、仮想抵抗を含むようにしてもよい。
【0013】
これによれば、仮想インピーダンス制御において抵抗を模擬することにより、各電力変換装置間の循環電流に含まれる直流電流を抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、前記電力変換装置が複数並列に接続されたことを特徴とする電力変換システムである。
【0015】
これによれば、仮想インピーダンス制御により、並列に接続された各電力変換装置を負荷に接続する配線による配線インピーダンスを含むインピーダンスのアンバランスを低減し、ドループ制御による無効電力の偏差を抑制できる。また、出力電流に掛ける仮想リアクタンスを無効電力に応じて変化させることにより、並列に接続された電力変換装置を含む電力変換システムを構成する各電力変換装置間の無効電力をバランスさせることが可能となる。このように、電力変換システムを構成する各電力変換装置間で無効電力をバランスさせることにより、各電力変換装置間における無効電力の授受とみなすことができる循環電流を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、並列接続された複数の電力変換装置間における循環電流を抑制可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る電力変換システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例に係るパワーコンディショナの制御系の概略構成を示す図である。
図3】本発明の実施例1に係る制御系の一部を示すブロック線図である。
図4】本発明の実施例1に係る制御系の一部を示すブロック線図である。
図5】本発明の実施例1に係る制御系のゲインと無効電力の関係を示すグラフ(図5(A))並びに仮想インピーダンス制御の特性を示すグラフ(図5(B))である。
図6】従来の仮想インピーダンス制御による有効電力及び無効電力を示すグラフ(図6(A))並びに出力電流を示すグラフ(図6(B))である。
図7】本発明の実施例1に係る仮想インピーダンス制御による有効電力及び無効電力を示すグラフ(図7(A))並びに出力電流を示すグラフ(図7(B))である。
図8】本発明の実施例1に係る仮想インピーダンス制御による効果を説明するグラフである。
図9】本発明の実施例2に係る制御系の一部の構成を示すブロック線図である。
図10】本発明の比較例に係る制御系の一部の構成を示すブロック線図である。
図11】本発明の比較例と実施例2に係る仮想インピーダンス制御との実験結果を示すグラフである。
図12】本発明の比較例と実施例2に係る仮想インピーダンス制御との効果を比較して説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本発明が適用される電力変換システム1の概略構成図である。電力変換システム1は、複数のパワーコンディショナ100等が並列接続され、通常時は商用電力系統300と連系して運転されるが、商用電力系統300からの電力供給が停止されると、負荷400に電力を供給する自立運転が可能である。
【0020】
本発明は、上述のような電力変換システム1を構成する第1パワーコンディショナ100に含まれる第1インバータ101の制御部102において実現される制御系に好適に適用することができる。
【0021】
図4は、本発明の適用例である制御系の一部の構成を示す。図4は、図2に示す第1パワーコンディショナ100の制御系のうち、仮想インピーダンス制御部121及びドループ制御部123を含む部分を示す。ここでは、各インバータ101、201間の電力分担に、P-ω及びQ-Vドループ制御を適用する。ゲインmはP-ωドループのゲイン、ゲインnはQ-Vドループのゲインである。
【0022】
電力演算部122から出力される無効電力Qは減算器36に入力され、無効電力指令値Qから減算される。ただし、ここでは、無効電力指令値Q =0となるように制御される。減算器36の出力は、ゲインKqの比例制御器37に入力される。この仮想インピーダンス制御における仮想リアクタンスXviriは、後述する(5)式によって表され、比例制御器37におけるゲインKは無効電力Qに応じて変化する。このように、仮想リアクタンスXviriを無効電力Qに応じて変化させることで、並列接続された各インバータ101及び201等がそれぞれ異なる比例ゲインを有することとなる。具体的には、無効電力Qが小さくなったインバータのゲインを弱め、無効電力Qが大きくなったインバータのゲインを強めることにより、無効電力Qのバランスを行う。
【0023】
図5(A)に示すように、無効電力が大きいほど、ゲインKが大きくなるように、ゲ
インKの傾きKqdを設定している。ゲインKの最大値が、無効電力1.0p.u.時に仮想リアクタンスXvirによる電圧降下が系統連系規定を満足するように傾きKqdを決めた。図5(B)に示すように、従来法のドループ制御では、無効電力と交流電圧実効値は比例する。ドループゲインnは無効電力が1.0p.u.で系統連系規定182Vを満足するように設定した。ここでは、無効電力と出力電圧実効値との関係は3次曲線となる。このとき、軽負荷ではゲインKは小さく、重負荷ではゲインKは大きくなる。無効電力と出力電圧実効値との関係を示す3次曲線は、定格電圧付近では傾きが大きくないため、仮想リアクタンスのみで出力電圧実効値VCiを調整することで無効電力のアンバランスを抑制できる。このため、ドループゲインnを0にし、仮想リアクタンスXviriのみで出力電圧実効値V Ciを調整することにより、特に定格電圧付近で、各インバータ101等間での無効電力の偏差を小さくすることができる。すなわち、定格電圧付近での電圧変動を抑制しつつ循環電流を抑制することができる。
【0024】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例1に係るインバータを含む電力変換システム1について、図面を用いて、より詳細に説明する。ただし、この実施例に記載されている装置及びシステムの構成は各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0025】
図1は、複数のパワーコンディショナを含む電力変換システム1の概略構成図である。図1には第1パワーコンディショナ100及び第2パワーコンディショナ200を含む電力変換システム1を示しているが、電力変換システム1を構成する、複数並列に接続されるパワーコンディショナの台数はこれに限られず、並列接続された3台以上の適宜の台数のパワーコンディショナを含んで電力変換システム1を構成することができる。図1では、第1パワーコンディショナ100について、第1インバータ101を含む内部構成の概略を示している。第2パワーコンディショナ200も同様にインバータその他の構成を有するが詳細な説明は省略する。ここでは、第1パワーコンディショナ100及び第2パワーコンディショナ200がそれぞれ本発明の電力変換装置に対応し、電力変換システム1が本発明の電力変換システムに相当する。
【0026】
第1パワーコンディショナ100及び第2パワーコンディショナ200は接続線(母線)500a及び500bにより並列に接続され、通常の連系運転時には、商用電力系統300に連系して運転され、商用電力系統300からの電力供給が停止した自立運転時には、負荷400に対して電力を供給する。電力変換システム1から電力の供給を受ける負荷400の構成は特に限定されず、線形負荷及び非線形負荷のいずれか又は両方を含んでもよい。第1インバータ101は、直流電源Sd1から入力された直流電力を交流電力に変換して出力する。第1パワーコンディショナ100及び第2パワーコンディショナ200に直流電力を入力する直流電源Sd1及びSd2は、蓄電池、太陽電池、燃料電池等の直流電力を出力可能な分散型電源であってもよいし、交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換装置であってもよい。第1インバータ101は、スイッチング素子のオンオフを制御することにより、直流電源Sd1から入力された直流電力を交流電力に変換して出力する。スイッチング素子を直列に接続したレグを組み合わせて構成されるスイッチング回路の構成は特に限定されない。スイッチング素子の半導体材料としては、ガリウムナイトライド(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)等を用いることができるが、これらに限定されない。また、スイッチング素子としては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等を用いることができる。ここでは、第1インバータ101が本発明のインバータ部に対応する。
【0027】
第1インバータ101の出力は、出力線101a及び101bにより商用電力系統30
0に供給され、また、接続線500a及び500bを介して負荷400に供給される。第1インバータ101の出力線101aにはリアクトルLが直列に接続され、一端が第1インバータ101に接続されたリアクトルLの他端側では、出力線101aと101bとの間にコンデンサCが接続されている。リアクトルL及びコンデンサCの出力端側には、出力線101aに直列にリアクトルLが接続されている。リアクトルLの負荷側において、出力線101a及び101bには、接続線500a及び500bを介して、第2インバータ201の出力線201a及び201bが並列に接続される。第1パワーコンディショナ100と接続線500a及び500bと間の配線インピーダンスをZline1、第2パワーコンディショナ200と接続線500a及び500bと間の配線インピーダンスをZline2で表している。電力変換システム1には、リアクトルLのリアクトル電流iを計測する電流センサ103、コンデンサCの電圧である出力電圧vを計測する電圧センサ104、リアクトルLに流れる出力電流ioutを計測する電流センサ105が設けられている。リアクトルL、リアクトルL及びコンデンサCは、第1インバータ101から出力される電力を平滑化するフィルタ部106を構成する。
【0028】
ここでは、第1インバータ101から出力線101a及び101bを介して出力されるインバータ電圧をvinv、リアクトルLの電圧であるリアクトル電圧をv、リアクトルLの電流であるリアクトル電流をi、コンデンサCの電圧であるコンデンサ電圧(出力電圧)をv、リアクトルLの電流である出力電流をioutと表記している。並列に接続される第2パワーコンディショナ200等も同様に構成されるため、特に言及する場合を除き、第1パワーコンディショナ100及び第1インバータ101を代表させ、各パワーコンディショナを区別するための添え字を省略して説明する。
【0029】
図2に、第1インバータ101制御系のブロック図を含む電力変換システム1の概略構成を示す。具体的には、第1インバータ101及びこれを制御する制御部102によって構成される。制御部102は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含むコ
ンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含んで構成することができる。各部の機能の一部又は全部は、
ハードウェアにおいてソフトウェアを実行することにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0030】
制御部102は、仮想インピーダンス制御部121、電力演算部122、ドループ制御部123、電圧指令値生成部124、電圧制御オープンループ125、PWM信号生成部126を含む。
【0031】
垂下制御部1021は、電力演算部122、ドループ制御部123及び電圧指令値生成部124を含み、並列接続された各インバータ101、201の負荷バランスを調整する垂下制御を行う機能ブロックである。各インバータ101、201間の電力分担には、P-ω及びQ-Vドループ制御を適用する。電力演算部122が出力電圧v及び出力電流ioutの計測値から有効電力P及び無効電力Qを計算する。ドループ制御部123は、所定のドループ特性に基づき、有効電力の変動分に応じて出力電圧指令値の周波数ω、無効電流の変動分に応じて出力電圧指令値の振幅Vを決定する。電圧指令値生成部124は、このように決定された周波数ω及び振幅Vに基づいて、出力電圧指令値v を生成する。
【0032】
仮想インピーダンス制御部121は、出力電流iout及び無効電力Qに基づいて垂下制御の性能を改善する機能ブロックであり、後述する仮想インピーダンス制御を行う。
【0033】
電圧制御系1022は、電圧制御オープンループ125、PWM信号生成部126、第1インバータ101、リアクトルL、コンデンサC、リアクトルLを含む。所望の電
圧を出力する制御系である。電圧制御系1022では、垂下制御部1021と仮想インピーダンス制御部121により生成された電圧指令値に追従するように、第1インバータ101を構成するスイッチング素子を駆動するPMW波形のデューティを決定する。以下に説明する制御系は、この電圧制御系1022の電圧制御オープンループ125の構成を具体化したものである。電圧制御系1022が、本発明のインバータ電圧制御部に相当する。
【0034】
図3のブロック線図において、上側の破線で囲まれた領域は、インバータ(例えば、図1に示す第1インバータ101)の動作を表すモデルである。減算器10において、入力されたインバータ電圧指令値vinv から、デッドタイム誤差電圧vTdが減算され、インバータ電圧vinvが出力される。ここで、デッドタイムは、例えば第1インバータ101を構成するレグにおいて、上側アームのスイッチング素子と直列に接続された下側アームのスイッチング素子とを交互にオンオフする際に、両スイッチング素子が同時にオンするのを防止するために、一方のスイッチング素子がオフされてから他方のスイッチング素子がオンされるまでに設けられる両スイッチング素子がオフとなる期間である。デッドタイム誤差電圧vTdはこのようなデッドタイムにより生じるインバータ電圧に生じる誤差電圧であり、例えば、図1の出力線101aに接続される等価抵抗RTdによって表すことができる。入力されたインバータ電圧vinvから、減算器11において出力電圧vが減算され、リアクトル電圧vが出力される。積分器12においてこのリアクトル電圧vを積分し積分ゲイン1/Lを掛けることによりリアクトル電流iを出力する。積分器12から出力されるリアクトル電流iは減算器13に入力される。減算器13において、リアクトル電流iから出力電流ioutが減算される。積分器14において減算器13から出力される出力電流ioutを積分し積分ゲイン1/Cを掛けることにより出力電圧vが出力される。
【0035】
このような構成のインバータに対して、出力電流ioutを補償する外乱オブザーバと、デッドタイム誤差電圧vTdを補償する外乱オブザーバと統合した外乱オブザーバ2を備えた制御系の一部を図3に示す。制御系のうち、仮想インピーダンス制御部121及び垂下制御部1021を含む部分については後述する。ここでは、インバータ電圧指令値vinv に対して、伝達関数ω /(s+2ξωs+ω )で表される2次ローパスフィルタ23によりフィルタ処理を行う。そして、出力電圧vは、微分ゲインLCによる2階の微分制御と比例ゲイン1の比例制御を含む演算器24に入力される。すなわち、演算器24では、出力電圧vに対して微分ゲインLCによる2階微分と、比例ゲイン1による比例演算が行われる。演算器24の出力に対して、さらに、伝達関数ω /(s+2ξωs+ω )で表される2次フィルタ25によるフィルタ処理が行われる。そして、減算器46において、2次ローパスフィルタ23から出力されるvinv から、2次フィルタ25から出力されるvinv -vTd est-sLiout estを減算し、出力されたvTd est+sLiout estが加算器28に入力され、出力電圧指令値v と加算される。
【0036】
ここで、2次ローパスフィルタ23及び25の伝達関数をGで表したとき、電流外乱抑圧特性は以下の(1)式で表される。
【数1】
【0037】
(1)式に具体的な伝達関数Gを代入して整理すると、以下に示す(2)式となる。
【数2】
【0038】
また、電圧外乱抑圧特性は以下の(3)式で表される。
【数3】
【0039】
(3)式に具体的な伝達関数Gを代入して整理すると、以下に示す(4)式となる。
【数4】
【0040】
このようにして、制御系では、デッドタイム誤差電圧vTdと出力電流に起因する電圧sLioutが外乱として補償される。本制御系では、1次ローパスフィルタと2次ローパスフィルタを必要とする構成に比して、2次ローパスフィルタ23及び25のみで構成されるので、設計項目及び計算回数を低減することができる。また、ゼロクロス付近を含め安定した電圧波形の出力が可能な第1インバータ101を含む第1パワーコンディショナ100と同様の制御系を有するパワーコンディショナを複数台並列接続して構成された電力変換システム1では、各パワーコンディショナから安定した電圧波形が出力されるので、商用電力系統300から解列されて負荷に電力を供給する自立運転時においても、ゼロクロス付近の無効電流(横流)の発生を抑制・低減することができ、直流電源の電力を効率よく利用することができる。
【0041】
図4は、本実施例に係る制御系の一部の構成を示すブロック線図である。図4は、図1に示した概略構成のうち、仮想インピーダンス制御部121及び垂下制御部1021の構成を示す。第1インバータ101を含む第1パワーコンディショナ100、及び、第2インバータ201を含む第2パワーコンディショナ200に共通する構成については、添え字iを付している。図1及び図2に示す電力変換システム1では、具体的にはi=1,2となる。
【0042】
ここでは、電力演算部122から出力される有効電力Pに対してゲインmの比例制御が行われる。比例制御器31の出力は減算器33に入力される。そして、減算器33において、周波数指令値ωから、mが減算される。減算器33の出力に対して積分制御35が行われ、電圧指令値生成部124に入力される。すなわち、減算器33の出力ω-mがゲイン1で積分され、得られた周波数ωが電圧指令値生成部124に入力される。ゲインmは、P-ωドループのゲインである。
【0043】
電力演算部122から出力される無効電力Qに対しては、比例制御器32においてゲインnの比例制御が行われる。そして、減算器34において、実効電圧指令値Vから、nが減算される。減算器34から出力される振幅Vは電圧指令値生成部124に入力される。ゲインnはQ-Vドループのゲインである。
【0044】
また、電力演算部122から出力される無効電力Qは減算器36に入力され、無効電
力指令値Qから減算される。ただし、ここでは、無効電力指令値Q =0となるように制御される。減算器36の出力は、ゲインKqの比例制御器37に入力される。この仮想インピーダンス制御における仮想リアクタンスXviriは、以下の(5)式によって表され、比例制御器37におけるゲインKは無効電力Qに応じて変化する。
【数5】

ここで、Kqdは、ゲインKの傾きである。このように、仮想リアクタンスXviriを無効電力Qに応じて変化させることで、並列接続された各インバータ101及び201等がそれぞれ異なる比例ゲインを有することとなる。具体的には、無効電力Qが小さくなったらインバータのゲインを弱め、無効電力Qが大きくなったらインバータのゲインを強めることにより、無効電力Qのバランスを行う。なお、上述のように、ここでは、無効電力指令値Q を0とすることで、各インバータ101等は自身の出力する無効電力Qを抑制するように動作する。ここでは、仮想リアクタンスXviriが本発明の仮想リアクタンスに相当する。
【0045】
上述のようにして得られた仮想リアクタンスXviriは、乗算器39において、伝達関数(sω)/(s+ω)で表されるハイパスフィルタ38でフィルタ処理された出力電流ioutiと乗算され、仮想電圧vviriが出力される。仮想電圧vviriは、減算器15において、電圧指令値生成部124から出力される電圧指令値vdroopiから減算され、得られた出力電圧指令値v Ciが電圧制御系1022に出力される。ここでは、電圧指令値vdroopiが本発明の第1電圧値に相当し、電圧指令値生成部124が本発明の第1電圧値生成部に相当する。また、仮想電圧vviriが本発明の第2電圧値に相当し、仮想インピーダンス制御部121が本発明の仮想インピーダンス制御部に相当する。また、出力電圧指令値v Ciが本発明の出力電圧指令値に相当し、減算器15が本発明の出力電圧指令値出力部に相当する。
【0046】
上述のQ-Vドループ制御及び仮想インピーダンス制御によって、各インバータ101等の電圧振幅が変化する。このとき、系統連系規定により、交流電圧実効値は202V±20V以内である必要がある。図4に示す制御系によって得られる出力電圧実効値V Ciは、以下の(6)式によって示される。
【数6】

ここでは、φは出力電圧と出力電流の位相差である。出力電圧実効値V Ciは、ドループゲインnと仮想インピーダンス制御のゲインKの傾きKqdによって決定される。ここでは、出力電圧実効値V Ciが本発明の出力電圧実効値に相当する。
【0047】
図5(A)に仮想リアクタンスXviriのゲインKと無効電力との関係を示し、図5(B)に無効電力-出力電圧実効値の特性を示す。このとき、有効電力2kW、力率0.85を定格とした。図5(A)に示すように、無効電力が大きいほど、ゲインKが大きくなるように傾きKqdを設けている。ゲインKの最大値が、無効電力1.0p.u.時に仮想リアクタンスXvirによる電圧降下が系統連系規定を満足するように傾きKqdを決めた。図5(B)に示すように、従来法のドループ制御(比較例1)では、無効電力と交流電圧実効値は比例する。ドループゲインnは無効電力が1.0p.u.で系統連系規定182Vを満足するように設定した。本実施例では、無効電力が増加すると出力電圧実効値は減少するが、無効電力と出力電圧実効値との関係は3次曲線となる。このとき、軽負荷ではゲインKは小さく、重負荷ではゲインKは大きくなる。定格電圧の
近傍では傾きが大きくない、すなわち図5(B)に灰色で示し定格電圧を含む範囲Rnでは、この範囲Rn外に比べて傾きが小さいため、仮想リアクタンスのみで出力電圧実効値V Ciを調整することで無効電力のアンバランスを抑制できる。このため、ドループゲインnを0にし、仮想リアクタンスXviriのみで出力電圧実効値V Ciを調整することにより、特に定格電圧近傍で、各インバータ101等間での無効電力の偏差を小さくすることができる。ここでは、範囲Rnが本発明の定格電圧を含む所定範囲に相当する。
【0048】
(シミュレーション)
以下の表1及び表2にシミュレーション条件を示す。表1が回路パラメータに関するシミュレーション条件、表2が制御系パラメータに関するシミュレーション条件を示す。ここでは、各インバータ101、201と接続線500a及び500bとの間の配線インピーダンスZline1及びZline2を抵抗とインダクタで模擬し、第2インバータ201の配線インピーダンスZline2を第1インバータ101の配線インピーダンスZline1の2倍とした場合の検証をシミュレーションによって行った。ここでは、負荷は誘導性として、有効電力2kW、力率0.85の定格で検証する。また、第1インバータ101及び第2インバータ201の電圧制御には、図2に示したセミオープンループ制御を適用している。
【表1】

【表2】
【0049】
図6に比較例1を適用した場合の有効電力・無効電力(図6(A))及び出力電流波形
図6(B))を示す。図6(A)から、有効電力Pは各インバータ101、201間で均等に分配されているのに対して、無効電力Qはアンバランスが生じている。これは、配線インピーダンスのアンバランスにより、各インバータ101、201の出力電圧が不平衡になったことによるものである。そのため、図6(B)に示すように、各インバータ101、201間で、iout1-iout2、すなわち循環電流icirが流れる。循環電流icirは0.9A程度流れており、第2インバータ201の出力電流3.7Aに対して約25%の割合を占めている。
【0050】
図7に本実施例に係る仮想インピーダンス制御を適用した場合の、有効電力・無効電力(図7(A))及び出力電流波形(図7(B))を示す。図7(A)から、仮想リアクタンスXvirを無効電力Qに応じて変化させることで、比較例と比べて無効電力の差が抑制されることがわかる。図7(B)から、循環電流icirは0.3Aとなり、第2インバータ201の電流3.7Aに対して約8%の割合まで低減した。このように、本実施例に係る仮想インピーダンス制御を適用することにより、無効電力の分配が良好になり、循環電流icirが抑制されていることがシミュレーションによっても確認できる。
【0051】
図8は、比較例2として仮想インピーダンスを一定に設定した場合と、本実施例のように仮想インピーダンスを無効電力に応じて変化させる場合におけるインバータ出力電圧の電圧降下を比較したものである。このとき、比較のために、両者において循環電流icirが同じ値に抑制されるようなゲインに設定している。図8(A)に示すように、定格動作時(1p.u.)には仮想インピーダンスを一定値にした場合で17%、本実施例では8%電圧降下している。このように、仮想インピーダンスを一定値とした場合には、出力電圧が系統連系規定の下限を下回ることとなる。同様に、インバータが0.5p.u.で動作している場合にも、本実施例では電圧降下率が抑制されている。図8(B)は本実施例と比較例2による出力電圧波形を示している。本実施例のように、仮想インピーダンスを無効電力によって変化させることにより、電圧降下が系統連系規定を満足する範囲内に循環電流icirを抑制することができる。
【0052】
〔実施例2〕
図9に、実施例2に係る仮想インピーダンス制御部121a及びドループ制御部123を含む制御系の一部の構成を示すブロック線図を示す。実施例1と共通の構成については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。制御系のうち、図9では省略している構成については実施例1と同様である。
【0053】
ドループ制御部123の構成は、図4に示した実施例1と同様である。本実施例では、仮想インピーダンス制御部121aが抵抗に関する構成を含む点が、実施例1と異なる。
【0054】
仮想インピーダンス制御部121aでは、伝達関数(s+ω )/(s+2ξωs+ω )で表されるバンドエリミネーションフィルタ43に、出力電流ioutiが入力され、フィルタ処理された後に、ゲインRの比例制御器44に入力される。バンドエリミネーションフィルタ43により、出力電流ioutiの系統周波数成分を除去し、基本波成分の電圧降下を防止することができる。ゲインRは仮想抵抗を表し(以下、単に、仮想抵抗Rともいう)、各インバータ101、201間の直流電流を抑制することを目的とする。比例制御器44の出力は加算器45に入力される。ここでは、ゲインRの比例制御器44が本発明の仮想抵抗に相当する。
【0055】
電力演算部122から出力される無効電力Qは、本実施例では、伝達関数ω/(s+ω)で表されるローパスフィルタ40によりフィルタ処理される。ローパスフィルタ40からの出力は、絶対値演算器41に入力される一方で、ゲインKqの比例制御器37に入力される。絶対値演算器41は、無効電力Qの絶対値を算出し、比例制御器37に
出力する。比例制御器37における処理は、実施例1と同様であり、上述の(5)式によって表される仮想リアクタンスXviriを算出する。
上述したように、Kqdは、ゲインKの傾きであり、ゲインKは無効電力Qに応じて変化する。このように、仮想リアクタンスXviriを無効電力Qに応じて変化させることで、並列接続された各インバータ101及び201等がそれぞれ異なる比例ゲインを有することとなる。具体的には、無効電力Qが小さくなったらインバータのゲインを弱め、無効電力Qが大きくなったらインバータのゲインを強めることにより、無効電力Qのバランスを行う。
【0056】
比例制御器37の出力は、乗算器39において、伝達関数(sω)/(s+ω)で表されるハイパスフィルタ42によりフィルタ処理された出力電流ioutiと乗算される。そして、乗算器39の出力と、上述の比例制御器44からの出力が加算器45において加算され、仮想電圧vviriが出力される。仮想電圧vviriは、減算器15において、電圧指令値生成部124から出力される電圧指令値vdroopiから減算され、得られた出力電圧指令値v Ciが電圧制御系1022に出力される。
【0057】
このように、本実施例に係る仮想インピーダンス制御部121aでは、仮想インピーダンスは、仮想抵抗Rと仮想インダクタによって構成される。仮想抵抗によって各インバータ101、201間の直流電流を抑制するとともに、仮想インダクタを無効電力に応じて変化させることにより、以下の(7)式によって表される無効電力アンバランスの差分を小さくすることで循環電流icirを抑制している(各インバータ101、201間の循環電流icirは無効電力の授受とみなすことができる。)。
【数7】

ここで、ZLfは商用電力系統側のフィルタインピーダンス、Voutは負荷電圧である。
【0058】
図10に比較のために従来の仮想インピーダンス制御を適用した仮想インピーダンス制御部121b及びドループ制御部123を含む制御系(比較例3ともいう)の一部の構成を示す。実施例1及び実施例2と共通の構成については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0059】
図10に示す制御系では、仮想インピーダンスは、仮想抵抗Rと仮想インダクタLによって構成される。ここでは、ドループ制御によって生成された電圧指令値vdroopiから仮想インピーダンスに起因する電圧降下vviriを減算し、出力電圧指令値v としている。
【0060】
配線インピーダンスZlineiは誘導性であるため、循環電流icirを抑制するために、インバータ出力に対して直列に仮想インダクタLを設ける。このとき、配線インピーダンスZlineiのアンバランスに対して、十分大きな仮想インダクタンスを設けることで、仮想分が支配的になり、各インバータ101、201の配線インピーダンスZline1及びZline2のバラつきが相対的に減少し、循環電流icirが抑制される。
【0061】
ここで説明した従来の仮想インピーダンス制御では、小型フィルタがインバータに用いられた場合には、(7)式により、フィルタインピーダンスと配線インピーダンスとを合
わせた合成インピーダンスが小さくなることで、無効電力のアンバランスが残存し、循環電流抑制効果が低減する。
【0062】
(実機検証)
以下に、従来の仮想インピーダンス制御(比較例3)と実施例2に係る仮想インピーダンス制御の循環電流について、実機検証による比較結果を説明する。表3は回路パラメータに関する実験条件を示し、表4はコントローラパラメータに関する実験条件を示す。配線インピーダンスZline1及びZline2の差異を模擬するために、第1インバータ101には第2インバータ201の2倍のインダクタを外付けした。また、負荷は誘導性(力率0.86)とし、インバータ1台の定格有効電力は1kW(負荷は2kW)とした。
【表3】

【表4】
【0063】
図11(A)に従来の仮想インピーダンス制御において仮想抵抗Rを設けていな場合
の実験結果を示す。小型フィルタを適用することで循環電流icirに直流が重畳している。これは、従来の仮想インピーダンス制御では、電圧検出オフセット等に起因する外乱を抑制できないためである。
【0064】
図11(B)に従来の仮想インピーダンス制御及び図11(C)に本実施例に係る仮想インピーダンス制御の実験結果を示す。仮想抵抗を設けることにより、循環電流icirの直流重畳が抑制できることが分かる。また、出力電圧実効値は202V±20V以内、出力電圧ひずみ率(THD)は5%以下となり、連系点電圧voutは高調波抑制対策技術指針(JEAG9702)を満足していると考えられる。さらに、循環電流icirのピーク値は、従来の仮想インピーダンス制御では1.4A、本実施例に係る仮想インピーダンス制御では1.1Aとなり、20%低減できることが確認できた。
【0065】
図12に従来の仮想インピーダンス制御及び本実施例に係る仮想インピーダンス制御の有効電力及び無効電力を示す。負荷の無効電力に対するアンバランスの割合は、従来の仮想インピーダンス制御では2.0%(負荷の無効電力976var、差分20var)であるのに対し、本実施例に係る仮想インピーダンス制御では、0.50%(負荷の無効電力993var、差分5.0var)まで抑制することができ、75%の改善結果が得られた。
【0066】
<付記1>
並列接続された他の電力変換装置(200)とともに、共通の負荷(400)に自立運転出力を供給可能な電力変換装置(100)であって、
直流電力を交流電力に変換するインバータ部(101)と、
前記電力変換装置(100)から出力される有効電力及び無効電力に基づいてドループ制御を行い、第1電圧値(vdoop)を出力する第1電圧値生成部(123、124)と、
前記電力変換装置(100)から出力される出力電流(iout)に基づいて仮想インピーダンス制御を行い、前記第1電圧値(vdoop)を調整する第2電圧値(vvir)を生成する仮想インピーダンス制御部(121)と、
前記第1電圧値と前記第2電圧値に基づいて出力電圧指令値(v )を出力する出力電圧指令値出力部(15)と、
前記出力電圧指令値(v )が入力され、該出力電圧指令値(v )に一致するように前記インバータ部(101)を制御するインバータ電圧制御部(1022)と、
を備え、
前記仮想インピーダンス制御部(121)は、前記無効電力に応じて変化する仮想リアクタンスを前記出力電流に掛けることにより前記第2電圧値を生成することを特徴とする電力変換装置(100)。
【符号の説明】
【0067】
15 :減算器
100 :第1パワーコンディショナ
101 :第1インバータ
121 :仮想インピーダンス制御部
123 :ドループ制御部
124 :電圧指令値生成部
200 :第2パワーコンディショナ
201 :第2インバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12