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  • 特開-防振連結具、及び防振連結ユニット 図1
  • 特開-防振連結具、及び防振連結ユニット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027862
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】防振連結具、及び防振連結ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240222BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20240222BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F16F15/04 A
F16B5/02 G
F16F15/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131027
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勝顕
【テーマコード(参考)】
3J001
3J048
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GB01
3J001JA03
3J001KA22
3J001KB06
3J048AA01
3J048BA01
3J048EA07
(57)【要約】
【課題】防振対象物の様々な方向への振動を抑制しやすい防振連結具及び防振連結ユニットの提供。
【解決手段】防振対象物が取り付けられるベース部材に配置される防振部材と、防振部材とベース部材と振動し得る取付対象物とを一体にする連結部材とを備え、 防振部材は、ベース部材の取付対象物側の近位面に接する近位側防振部と、ベース部材の近位面とは反対側の遠位面に接する遠位側防振部と、ベース部材に貫設される貫通孔に挿入される中間防振部とを有し、保持部は近位側防振部と遠位側防振部と中間防振部とに挿通される保持柱部を有し、保持柱部の外周面には近位側防振部の内周面に当接する近位側当接領域と、該内周面に非当接の近位側非接触領域と、遠位側防振部の内周面に当接する遠位側当接領域と、該内周面に非当接の遠位側非接触領域とが含まれる防振連結具。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振対象物を振動し得る取付対象物に対して防振した状態で固定する防振連結具であって、
前記防振対象物が取り付けられるベース部材に配置される防振部材と、
前記防振部材を前記ベース部材に固定し且つ前記ベース部材を前記取付対象物に連結する連結部材とを備え、
前記防振部材は、
前記ベース部材のうちの前記取付対象物側に向いた近位面に当接する近位側防振部であって、環状であり且つ弾性を有する近位側防振部と、
前記ベース部材のうちの前記取付対象物側とは反対側に向けて配置される遠位面に当接する遠位側防振部であって、環状であり且つ弾性を有する遠位側防振部と、
前記ベース部材の前記近位面と前記遠位面とに亘って貫通する貫通孔に挿入される中間防振部であって、環状であり且つ弾性を有する中間防振部と、を有し、
前記連結部材は、
前記近位側防振部と前記遠位側防振部と前記中間防振部を保持する保持部と、
前記保持部を前記取付対象物に固定する固定部と、を有し、
前記保持部は、
前記近位側防振部と前記遠位側防振部と前記中間防振部とに挿通された状態で、前記近位側防振部と前記遠位側防振部と前記中間防振部のそれぞれの内周面に当接する保持柱部と、
前記保持柱部につながり、且つ前記遠位側防振部に重ねて配置する保持蓋部と、を有し、
前記保持柱部の外周面には、
前記近位側防振部の内側に配置された状態で前記近位側防振部の内周面に当接する近位側当接領域と、
前記近位側防振部の内側に配置された状態で前記近位側防振部の内周面に対して前記近位側防振部の径方向内側に離間する近位側非接触領域と、
前記遠位側防振部の内側に配置された状態で前記遠位側防振部の内周面に当接する遠位側当接領域と、
前記遠位側防振部の内側に配置された状態で前記遠位側防振部の内周面に対して前記遠位側防振部の径方向内側に離間する遠位側非接触領域とが含まれる、
防振連結具。
【請求項2】
前記ベース部材は、
前記近位面における前記貫通孔の開口周りに形成される近位側位置決め部と、
前記遠位面における前記貫通孔の開口周りに形成される遠位側位置決め部と、を有し、
前記近位側防振部の軸線方向における一端部は、外周面が前記近位側位置決め部に対向し且つ内周面が近位側非接触領域に対向するように配置され、
前記近位側防振部の軸線方向における他端部は、内周面が前記近位側当接領域に当接するように配置され、
前記遠位側防振部の軸線方向における一端部は、外周面が前記遠位側位置決め部に対向し且つ内周面が遠位側非接触領域に対向するように配置され、
前記遠位側防振部の軸線方向における他端部は、内周面が前記遠位側当接領域に当接するように配置される、
請求項1に記載の防振連結具。
【請求項3】
前記保持柱部の軸線方向における一端部は、前記取付対象物に当接し、
前記保持柱部の軸線方向における他端部には、前記保持蓋部が固定され、
前記固定部は、前記保持柱部を前記取付対象物に押し付けた状態で固定する、
請求項1に記載の防振連結具。
【請求項4】
前記防振対象物が取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材を振動し得る取付対象物に対して防振した状態で取り付ける請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の防振連結具と、を備え、
前記ベース部材は、放熱性を有する放熱部を有する、
防振連結ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振対象物を振動し得る取付対象物に対して防振した状態で取り付ける防振連結具、及び防振連結ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記防振連結具として、例えば特許文献1の図5(a)、図5(b)に図示されているような、防振対象物(電子部品が搭載された回路基板)を取付対象物(ベース筐体)に対して防振した状態で取り付ける取付構造が知られている。
【0003】
かかる取付構造は、取付対象物に形成されている穴に対して防振対象物側から挿し込まれる雄ゴム部と、取付対象物の穴の周縁部に防振対象物側とは反対側に配置される雌ゴム部と、を有しており、雄ゴム部や雌ゴム部の弾性変形により、防振対象物の振動が抑制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-138474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、取付対象物は様々な方向に振動するが、取付対象物が振動する方向によっては、雄ゴム部や雌ゴム部が十分に弾性変形せず、防振対象物の振動を十分に抑制できないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、防振対象物の様々な方向への振動を抑制しやすい防振連結具及び防振連結ユニットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防振連結具は、
防振対象物を振動し得る取付対象物に対して防振した状態で固定する防振連結具であって、
前記防振対象物が取り付けられるベース部材に配置される防振部材と、
前記防振部材を前記ベース部材に固定し且つ前記ベース部材を前記取付対象物に連結する連結部材とを備え、
前記防振部材は、
前記ベース部材のうちの前記取付対象物側に向いた近位面に当接する近位側防振部であって、環状であり且つ弾性を有する近位側防振部と、
前記ベース部材のうちの前記取付対象物側とは反対側に向けて配置される遠位面に当接する遠位側防振部であって、環状であり且つ弾性を有する遠位側防振部と、
前記ベース部材の前記近位面と前記遠位面とに亘って貫通する貫通孔に挿入される中間防振部であって、環状であり且つ弾性を有する中間防振部と、を有し、
前記連結部材は、
前記近位側防振部と前記遠位側防振部と前記中間防振部を保持する保持部と、
前記保持部を前記取付対象物に固定する固定部と、を有し、
前記保持部は、
前記近位側防振部と前記遠位側防振部と前記中間防振部とに挿通された状態で、前記近位側防振部と前記遠位側防振部と前記中間防振部のそれぞれの内周面に当接する保持柱部と、
前記保持柱部につながり、且つ前記遠位側防振部に重ねて配置する保持蓋部と、を有し、
前記保持柱部の外周面には、
前記近位側防振部の内側に配置された状態で前記近位側防振部の内周面に当接する近位側当接領域と、
前記近位側防振部の内側に配置された状態で前記近位側防振部の内周面に対して前記近位側防振部の径方向内側に離間する近位側非接触領域と、
前記遠位側防振部の内側に配置された状態で前記遠位側防振部の内周面に当接する遠位側当接領域と、
前記遠位側防振部の内側に配置された状態で前記遠位側防振部の内周面に対して前記遠位側防振部の径方向内側に離間する遠位側非接触領域とが含まれる。
【0008】
上記構成の防振連結具によれば、近位側防振部の内側と保持柱部との間に空間が形成され、遠位側防振部の内側と保持柱部との間にも空間が形成されるため、近位側防振部や遠位側防振部が圧縮されることによって径方向に広がるように変形した際に、近位側防振部や遠位側防振部が保持柱部に接触しにくくなる。
【0009】
従って、前記防振連結具では、近位側防振部や遠位側防振部の圧縮された際に生じる変形が阻害されにくくなるため、取付対象物の振動を近位側防振部や遠位側防振部の変形によって吸収する性能が損なわれにくくなり、これにより、防振対象物の様々な方向への振動が抑制されやすくなる。
【0010】
本発明の防振連結具において、
前記ベース部材は、
前記近位面における前記貫通孔の開口周りに形成される近位側位置決め部と、
前記遠位面における前記貫通孔の開口周りに形成される遠位側位置決め部と、を有し、
前記近位側防振部の軸線方向における一端部は、外周面が前記近位側位置決め部に対向し且つ内周面が近位側非接触領域に対向するように配置され、
前記近位側防振部の軸線方向における他端部は、内周面が前記近位側当接領域に当接するように配置され、
前記遠位側防振部の軸線方向における一端部は、外周面が前記遠位側位置決め部に対向し且つ内周面が遠位側非接触領域に対向するように配置され、
前記遠位側防振部の軸線方向における他端部は、内周面が前記遠位側当接領域に当接するように配置される構成であってもよい。
【0011】
上記構成の防振連結具では、近位側防振部の位置決め箇所が一端部と他端部とで内外が異なり、遠位側防振部の位置決め箇所もまた、一端部と他端部とで内外が異なっている。
【0012】
このようにすると、近位側防振部や遠位側防振部が内側及び外側の少なくとも何れか一方が開放される状態になるため、近位側防振部や遠位側防振部の圧縮された際に生じる変形が阻害されにくくなる。従って、前記防振連結具では、近位側防振部や遠位側防振部の変形によって取付対象物の振動を吸収する性能が損なわれにくくなっている。
【0013】
本発明の防振連結具において、
前記保持柱部の軸線方向における一端部は、前記取付対象物に当接し、
前記保持柱部の軸線方向における他端部には、前記保持蓋部が固定され、
前記固定部は、前記保持柱部を前記取付対象物に押し付けた状態で固定するようにしてもよい。
【0014】
固定部によって保持柱部を取付対象物に固定する際、保持柱部は固定部によって押され、保持蓋部は保持柱部とともに取付対象物側に動き、これにより、近位側防振部や、遠位側防振部、中間防振部が圧縮される。
【0015】
前記防振連結具では、保持蓋部が保持柱部の他端部に固定されているため、保持蓋部を所定の位置に配置しやすくなり、これにより、近位側防振部や、遠位側防振部、中間防振部が過剰に圧縮されてしまうことを抑止できるようになる。
【0016】
従って、前記防振連結具は、近位側防振部や、遠位側防振部、中間防振部の変形代が失われてしまわないようにすることによって、近位側防振部や、遠位側防振部、中間防振部の変形による取付対象物の振動を吸収する性能が損なわれにくくすることができる。
【0017】
本発明の防振連結ユニットは、
前記防振対象物が取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材を振動し得る取付対象物に対して防振した状態で取り付ける請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の防振連結具と、を備え、
前記ベース部材は、放熱性を有する放熱部を有する。
【0018】
上記構成の防振連結ユニットによれば、防振対象物の振動を抑制できると共に防振対象物を放熱することもできる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の防振連結具、及び防振連結ユニットは、防振対象物の様々な方向への振動を抑制しやすいという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る防振連結具を備える防振連結ユニットの斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係る防振連結ユニットの分解斜視図である。
図3図3は、同実施形態に係る防振連結ユニットの天板部を除いた状態の平面図である。
図4図4は、図3の領域IVの断面拡大図である。
図5図5は、同実施形態に係る防振連結ユニットの使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態にかかる防振連結具、及び防振連結具を備える防振連結ユニットについて、添付図面を参照しつつ説明する。防振連結具や、防振連結ユニットは、防振対象物を取付対象物に対して防振した状態で取り付ける際に用いられるものである。
【0022】
本実施形態に係る防振連結ユニット1は、図1に示すように、防振対象物O1が取り付けられるベース部材2と、ベース部材2を振動し得る取付対象物O2(図5参照)に対して防振した状態で連結する防振連結具3と、を備えている。
【0023】
ベース部材2は、防振連結具3によって取付対象物O2に取り付けられる基台部4と、基台部4に重ねて配置される天板部5と、を備えている。
【0024】
基台部4は、図2に示すように、取付対象物O2に対向配置される底部40と、底部40の外周縁部に立設されている立壁部41と、底部40に形成され、防振連結具3が取り付けられる被取付部42と、を有する。
【0025】
底部40には、取付対象物O2側に向けて距離をおいて配置される近位面400と、取付対象物O2側とは反対側に向けて配置される遠位面401と、が含まれている。
【0026】
被取付部42は、図4に示すように、底部40の近位面400と遠位面401とで開口するように形成された貫通孔420と、近位面400における貫通孔420の開口周りに形成される近位側取付部421と、遠位面401における貫通孔420の開口周りに形成される遠位側取付部422と、を有する。
【0027】
近位側取付部421は、貫通孔420の近位面400側の開口周り全周から外方(貫通孔420の径方向における外方)に広がる近位側配置部421aと、近位側配置部421aの外周縁部から立ち上がる近位側位置決め部421bとを有する。
【0028】
近位側位置決め部421bは、近位面400における貫通孔420の開口を取り囲んでいる。
【0029】
なお、本実施形態の近位側取付部421は、貫通孔420の近位面400側の開口周りに座繰りを形成することによって構成されている。
【0030】
遠位側取付部422は、貫通孔420の遠位面401側の開口周り全周から外方(貫通孔420の径方向における外方)に広がる遠位側配置部422aと、遠位側配置部422aの外周縁から立ち上がる遠位側位置決め部422bとを有する。
【0031】
遠位側位置決め部422bは、遠位面401における貫通孔420の開口を取り囲んでいる。
【0032】
なお、本実施形態の遠位側取付部422は、貫通孔420の遠位面401側の開口周りに座繰りを形成することによって構成されている。
【0033】
天板部5は、図2に示すように、立壁部41の先端部(上端部)に重ねて配置されている。また、天板部5は、外向きに配置される一面に防振対象物O1が取り付けられるように構成されている。
【0034】
天板部5には、両面で開口する操作孔50が形成されている。操作孔50は、被取付部42に対向する位置に形成されており、操作孔50に工具(棒状の工具)を通して被取付部42に配置されている防振連結具3を操作できるようになっている。
【0035】
天板部5は、放熱性を有する放熱部でもある。そのため、防振連結ユニット1は、防振対象物O1に生じた熱やベース部材2に伝わった熱を放熱部である天板部5から放散することができるようになっている。なお、放熱部は、宇宙空間のような真空中では、防振対象物O1の熱を放射伝熱により放散することになる。
【0036】
ここで、本実施形態の防振連結ユニット1は、図3に示すように、4つの防振連結具3を備えている。そして、天板部5には、防振連結具3の数に合わせて4つの操作孔50が形成されており、底部40には4つの被取付部42が形成されている。
【0037】
さらに、本実施形態の防振連結ユニット1では、底部40への4つの防振連結具3の取付箇所、すなわち、取付対象物への4つの固定箇所が縦横に整列しているため、底部40の防振連結具3を中心とする回転が抑制されるようになっている。
【0038】
防振連結具3は、図2に示すように、防振対象物O1が取り付けられるベース部材2に配置される防振部材6と、防振部材6をベース部材2に固定し且つベース部材2を取付対象物O2に連結する連結部材7とを備えている。
【0039】
防振部材6は、ベース部材2の近位面400に当接する近位側防振部60と、ベース部材2の遠位面401に当接する遠位側防振部61と、ベース部材2の貫通孔420に挿入される中間防振部62と、を有する。
【0040】
近位側防振部60と、遠位側防振部61と、中間防振部62とは、何れも環状(筒状)である。また、近位側防振部60と、遠位側防振部61と、中間防振部62とは、何れも弾性を有している。なお、近位側防振部60と、遠位側防振部61と、中間防振部62とは、例えば、ゴム等によって構成されていればよい。
【0041】
近位側防振部60は、図4に示すように、軸線方向における一端(図4において上方側に位置する一端)が近位側配置部421aに当接し、軸線方向における他端(図4において下方側に位置する他端)が取付対象物O2に当接するように配置される。なお、近位側防振部60の軸線方向における一端面と他端面は平面であり、近位側防振部60の軸線方向における断面形状は長方形状である。
【0042】
近位側防振部60の軸線方向における一端部では、径方向における外周面が近位側位置決め部421bに対向し、且つ径方向における内周面が後述する近位側非接触領域702cに対向するように配置される。
【0043】
本実施形態の近位側防振部60では、一端部の外周面と近位側位置決め部421bとの間に隙間が形成されているため、近位側防振部60が径方向で動いた際に一端部の外周面が近位側位置決め部421bに当接すると、近位側防振部60の動きが規制されるようになっている。
【0044】
近位側防振部60の軸線方向における他端部では、径方向における内周面が後述する近位側当接領域702bに当接し、且つ径方向における外周面が開放されている。
【0045】
遠位側防振部61は、軸線方向における一端(図4において下方側に位置する一端)が遠位側配置部422aに当接し、軸線方向における他端(図4において上方側に位置する他端)が後述する保持蓋部701に当接するように配置される。
【0046】
遠位側防振部61の軸線方向における一端部では、径方向における外周面が遠位側位置決め部422bに対向し、且つ径方向における内周面が後述する遠位側非接触領域703cに対向するように配置される。
【0047】
本実施形態の遠位側防振部61では、一端部の外周面と遠位側位置決め部422bとの間に隙間が形成されているため、遠位側防振部61が径方向で動いた際に一端部の外周面が遠位側位置決め部422bに当接すると、遠位側防振部61の動きが規制されるようになっている。
【0048】
遠位側防振部61の軸線方向における他端部では、径方向における内周面が後述する遠位側当接領域703bに当接し、且つ径方向における外周面が開放されている。
【0049】
中間防振部62は、貫通孔420内に配置され、また、近位側防振部60と遠位側防振部61の間に配置された状態になっている。中間防振部62の外周面は全体に亘って貫通孔420の内周面に当接している。
【0050】
近位側防振部60の内径と遠位側防振部61の内径は、中間防振部62の外径よりも小さくなっている。そのため、中間防振部62の径方向における外周部は、近位側防振部60の径方向における内周部と遠位側防振部61の径方向における内周部とに挟まれている。
【0051】
すなわち、中間防振部62の径方向における外周部は、軸線方向における一方の端面が近位側防振部60の径方向における内周部に当接し、軸線方向における他方の端面が遠位側防振部61の径方向における内部に当接している。
【0052】
連結部材7は、近位側防振部60と遠位側防振部61と中間防振部62を保持する保持部70と、保持部70を取付対象物O2に固定する固定部71と、を有する。
【0053】
保持部70は、近位側防振部60と遠位側防振部61と中間防振部62とに挿通された状態で、近位側防振部60と遠位側防振部61と中間防振部62のそれぞれの内周面に当接する保持柱部700と、保持柱部700に固定され、遠位側防振部61に重ねて配置される保持蓋部701と、を有する。
【0054】
保持柱部700は、近位側防振部60の内側に配置される近位側保持部702と、遠位側防振部61の内側に配置される遠位側保持部703と、中間防振部62の内側に配置される中間保持部704と、を有する。
【0055】
本実施形態の保持柱部700では、近位側保持部702と、遠位側保持部703、中間保持部704のうち、近位側保持部702と中間保持部704のみが一体的に形成されているが、近位側保持部702と、遠位側保持部703、中間保持部704とをすべて一体的に形成してもよいし、全て別体で形成してもよいし、遠位側保持部703と中間保持部704とを一体的に形成してもよい。
【0056】
近位側保持部702は、保持柱部700の長手方向における一端部を構成している。近位側保持部702は、取付対象物O2に当接する近位側当接面702aを有する。この近位側当接面702aは、取付対象物O2の表面に一致する形状であり、本実施形態では、平面である。
【0057】
また、近位側保持部702の外周面には、近位側防振部60の内周面に当接する近位側当接領域702bと、近位側防振部60の内周面から径方向(近位側防振部60の径方向)における内側に離れた場所に位置する近位側非接触領域702cとが含まれている。
【0058】
近位側当接領域702bは近位側防振部60の一端(取付対象物O2側)の内周面と横並びになる位置に配置され、近位側非接触領域702cは近位側防振部60の内周面と横並びになる位置に配置される。
【0059】
そのため、近位側非接触領域702cと近位側防振部60との間にはスペースS1が形成されている。
【0060】
本実施形態に係る近位側保持部702は、中間保持部704側に向かうにつれて外径が徐々に小さくなるテーパー状に形成されており、これにより、近位側当接領域702bと、近位側非接触領域702cとが形成されている。
【0061】
遠位側保持部703は、保持柱部700の長手方向における他端部を構成している。遠位側保持部703は、遠位面401側とは反対側に向けて配置される遠位側受面703aを有する。遠位側受面703aは、平面である。
【0062】
また、遠位側保持部703の外周面には、遠位側防振部61の内周面に当接する遠位側当接領域703bと、遠位側防振部61の内周面から径方向(遠位側防振部61の径方向)における内側に離れた場所に位置する遠位側非接触領域703cとが含まれている。
【0063】
遠位側当接領域703bは遠位側防振部61の他端(保持蓋部701側)と横並びになる位置に配置され、遠位側非接触領域703cは遠位側防振部61の内周面と横並びになる位置に配置される。
【0064】
そのため、遠位側非接触領域703cと遠位側防振部61との間にはスペースS2が形成されている。
【0065】
本実施形態に係る遠位側保持部703は、中間保持部704側に向かうにつれて外径が徐々に小さくなるテーパー状に形成されており、これにより、遠位側当接領域703bと、遠位側非接触領域703cとが形成されている。
【0066】
中間保持部704は、保持柱部700の長手方向における中央部を構成している。
【0067】
中間保持部704の外周面は、全体に亘って中間防振部62の内周面に当接する。
【0068】
本実施形態の保持柱部700では、近位側保持部702、遠位側保持部703、中間保持部704に、軸線方向(保持柱部700の軸線方向)において連通する挿通孔702d、挿通孔703d、挿通孔704dが形成されている。
【0069】
保持蓋部701は、保持柱部700(より具体的には、遠位側保持部703)に対して一体的に形成されている。また、保持蓋部701は、保持柱部700から径方向外方向に向かって広がるように形成されており、円板状になっている。保持蓋部701の一方の板面(遠位側防振部61側に向けて配置される板面)は平面であり、この一方の板面が遠位側防振部61の他端に重ねて配置される。
【0070】
固定部71は、保持柱部700を取付対象物O2に押し付けた状態で固定するように構成されている。
【0071】
本実施形態の固定部71は、ボルトによって構成されている。そのため、固定部71は、外周面にねじ山が形成されている軸部710と、頭部711と、を有する。
【0072】
固定部71は、軸部710が近位側保持部702の挿通孔702d、遠位側保持部703の挿通孔703d、中間保持部704の挿通孔704dが挿通され、頭部711が遠位側保持部703の遠位側受面703aに重ねて配置される。 この状態で、軸部710を取付対象物O2に形成されているねじ孔に締め込むと、保持柱部700が取付対象物O2側に押された状態で固定される。
【0073】
固定部71がねじ孔に締め込まれるに伴って、遠位側防振部61と当接している保持蓋部701が遠位面401側に動く。 これにより、遠位側防振部61が保持蓋部701によって遠位面401側に押し付けられる。
【0074】
また、底部40も固定部71から力を受けて取付対象物O2側に動くため、近位側防振部60は底部40の近位面400 によって取付対象物O2側に押し付けられる。
【0075】
本実施形態に係る防振連結ユニット1の構成は、以上の通りである。続いて、防振連結ユニット1の使用状態を説明する。
【0076】
防振連結具3によってベース部材2が取付対象物O2に取り付けられている状態で(図5参照)、取付対象物O2が動くと、連結部材7は取付対象物O2とともに動くが、ベース部材2からみると取付対象物O2の動きは防振部材6の変形によって吸収されるため、
ベース部材2は動かずにその場に留まるようになっている。
【0077】
具体的に説明すると、取付対象物O2がベース部材2に接近する方向に動く場合は、近位側防振部60が取付対象物O2と近位面400とに挟み込まれて縦方向に圧縮されるため、ベース部材2は、取付対象物O2によって押し上げられずにその場に留まり続ける。
【0078】
また、近位側防振部60は、取付対象物O2と近位面400とに挟み込まれて圧縮されるに伴って、径外方向の両側に広がるように変形するが、近位側防振部60の一端側の内周面が面する領域(スペースS1)と、近位側防振部60の他端側の外周面が面する領域とが開放されているため、径外方向の両側に広がりやすくなっている。そのため、取付対象物O2の動きを近位側防振部60によって有効に吸収できるようになっている。
【0079】
取付対象物O2がベース部材2から離間する方向に動く場合は、遠位側防振部61が保持蓋部701と遠位面401とに挟み込まれて縦方向に圧縮されるため、ベース部材2は、取付対象物O2によって引き寄せられずにその場に留まり続ける。
【0080】
遠位側防振部61は、保持蓋部701と遠位面401とに挟み込まれて圧縮されるに伴って、径外方向の両側に広がるように変形するが、遠位側防振部61の一端側の内周面に面する領域(スペースS2)と、遠位側防振部61の他端側の外周面に面する領域とが開放されているため、径外方向の両側に広がりやすくなっている。そのため、取付対象物O2の動きを遠位側防振部61によっても有効に吸収できるようになる。
【0081】
さらに、取付対象物O2が水平方向(ベース部材2に接離する方向に対して直交する方向)に動く場合は、中間防振部62が水平方向において、中間保持部704と貫通孔420の内周面とに挟み込まれて圧縮されるため、ベース部材2は、取付対象物O2とともに水平方向に動かずその場に留まり続ける。
【0082】
中間防振部62は、中間保持部704と貫通孔420の内周面とに挟み込まれて圧縮されるに伴って、縦方向(軸線方向)における両側に広がるように変形するが、中間防振部62の軸線方向における一端面が面する領域(スペースS1)と、中間防振部62の軸線方向における他端面が面する領域(スペースS2)とが開放されているため、縦方向の両側に広がりやすくなっている。そのため、取付対象物O2の動きを中間防振部62によって有効に吸収できるようになる。
【0083】
なお、中間防振部62の外周部は、弾性を有する近位側防振部60と遠位側防振部61とに挟まれているため、縦方向の両側により広がりやすくなっている。
【0084】
また、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62は、互いに分離したものであるため、互いの変形を拘束しあうこともない。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る防振連結具3によれば、近位側防振部60の内側と保持柱部700(近位側保持部702)との間に空間が形成され、遠位側防振部61の内側と保持柱部700(遠位側保持部703)との間にも空間が形成されるため、近位側防振部60や遠位側防振部61が圧縮されることによって径方向に広がるように変形した際に、近位側防振部60や遠位側防振部61が保持柱部700に接触しにくくなる。
【0086】
従って、防振連結具3では、近位側防振部60や遠位側防振部61の圧縮された際に生じる変形が阻害されにくくなるため、取付対象物O2の振動を近位側防振部60や遠位側防振部61の変形によって吸収する性能が損なわれにくくなり、これにより、防振連結具3は、防振対象物O1の様々な方向への振動を抑制しやすくなるという優れた効果を奏し得る。特に、防振連結具3がロケット等に用いられる場合は、取付対象物O2が様々な方向に動きやすい無重力の宇宙空間で使用されることになるため、防振対象物O1の様々な方向への振動を抑制する効果をより顕著に得ることができる。
【0087】
さらに、本実施形態の防振連結具3では、近位側防振部60の位置決め箇所が一端部と他端部とで内外が異なり、遠位側防振部61の位置決め箇所もまた、一端部と他端部とで内外が異なっている。
【0088】
このようにすると、近位側防振部60や遠位側防振部61が内側及び外側の少なくとも何れか一方が開放される状態(すなわち、軸線方向の各位置において、径方向における両側(内側と外側)から挟み込まれている部分がない状態)になるため、近位側防振部60や遠位側防振部61の圧縮された際に生じる変形が阻害されにくくなる。従って、防振連結具3では、近位側防振部60や遠位側防振部61の変形によって取付対象物O2の振動を吸収する性能が損なわれにくくなっている。
【0089】
さらに、本実施形態の防振連結具3では、固定部71によって保持柱部70を取付対象物O2に固定する際、保持柱部70は固定部71によって押され、保持蓋部701は保持柱部700とともに取付対象物O2側に動き、これにより、近位側防振部60や、遠位側防振部61、中間防振部62が圧縮されるようになっている。
【0090】
防振連結具3では、保持蓋部701が保持柱部700の他端部に固定されているため、保持蓋部701を所定の位置に配置しやすくなり、これにより、近位側防振部60や、遠位側防振部61、中間防振部62が過剰に圧縮されてしまうことを抑止できるようになる。
【0091】
従って、防振連結具3は、近位側防振部60や、遠位側防振部61、中間防振部62の変形代が失われてしまわないようにすることによって、近位側防振部60や、遠位側防振部61、中間防振部62の変形による取付対象物O2の振動を吸収する性能が損なわれにくくすることができる。
【0092】
また、上記実施形態の防振連結具3では、振動した取付対象物O2が防振対象物O1から離れる方向に動いた際に圧縮される遠位側防振部61 と、振動した取付対象物O2が防振対象物O1に接近する方向に動いた際に圧縮される近位側防振部60 と、振動した取付対象物O2が防振対象物O1に接近する方向と直交する方向に動いた際に圧縮される中間防振部62が、それぞれ別体で構成されている(分離している)ため、近位側防振部60は、圧縮された際に隣接する中間防振部62の拘束を受けずに変形できる状態になり、遠位側防振部61と中間防振部62もまた、圧縮された際に隣接する防振部の拘束を受けずに変形できる状態になる。
【0093】
従って、防振連結具3では、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62が独立して変形しやすい状態になっているため、取付対象物O2の動き(振動)が近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62の変形によって吸収されやすくなり、これにより、防振対象物O1の様々な方向への振動が抑制されやすくなっている。
【0094】
また、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62が分離していると、本実施形態の近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62のように、一か所に並べて配置しても、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62によって取付対象物O2の様々な動きを吸収しやすいため、防振対策を施す場所を分散させずに一か所に集約することができる。従って、防振連結具3は、防振連結ユニット1を小型化しやすくなる。
【0095】
防振連結具3を備える防振連結ユニット1も、上記の効果を奏することができる。また、本実施形態の防振連結ユニット1は、防振対象物O1が取り付けられるベース部材2が放熱性を有する放熱部を有するように構成されているため、防振対象物O1の振動を抑制し、防振対象物O1を放熱することもできるようになっている。
【0096】
なお、本発明に係る防振連結具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0097】
上記実施形態のベース部材2は、天板部5のみが放熱性を有していたが、この構成に限定されない。例えば、ベース部材2は、天板部5と基台部4が放熱性を有していてもよいし、基台部4のみが放熱性を有するように構成されていてもよい。すなわち、ベース部材2は、放熱部が天板部5と基台部4とで構成されていてもよいし、基台部4のみで構成されていてもよい。
【0098】
なお、放熱部は、基台部4以外の部材で構成することも可能である。
【0099】
上記実施形態において、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62は筒状に形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62は筒状に形成されていたが、C環状に形成されていてもよい。
【0100】
上記実施形態において、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62は、円筒状に形成されていたが、例えば、角筒状に形成されていてもよい。
【0101】
また、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62は、軸線方向における断面形状が長方形状となるように形成されていたが、別の形状となるように形成されていてもよい。
【0102】
上記実施形態において、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62は、それぞれが一つの部材によって構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、近位側防振部60、遠位側防振部61、中間防振部62は、複数の部材を組み合わせて筒状にするように構成されていてもよい。
【0103】
上記実施形態の防振部材6では、近位側防振部60と遠位側防振部61と中間防振部62とが別体になっていたが、この構成に限定されない。例えば、近位側防振部60と遠位側防振部61を一体にしたり、遠位側防振部61と中間防振部62を一体にしたり、近位側防振部60と遠位側防振部61と中間防振部62を一体にしてもよい。
【0104】
上記実施形態において、近位側保持部702は、テーパー状に形成されていたが、近位側防振部60の一端側の内周面に当接でき、且つ近位側防振部60の他端側の内周面との間にスペースS1を形成で切るように構成されていれば、他の形状であってもよい。
【0105】
上記実施形態において、遠位側保持部703は、テーパー状に形成されていたが、遠位側防振部61の一端側の内周面との間にスペースS2を形成でき、且つ近位側防振部60の他端側の内周面に当接できるように構成されていれば、他の形状であってもよい。
【0106】
上記実施形態の説明では、固定部71が取付対象物O2のねじ孔に締め込まれることを一例に挙げて説明を行ったが、例えば、固定部71は、取付対象物O2に形成されている丸孔(内周面に雌ねじが形成されていない貫通孔)に挿通された状態で、ナットに締め込まれるように構成されていてもよい。
【0107】
上記実施形態において特に言及しなかったが、近位側防振部60は、一端部の外周面が近位側位置決め部421bに当接した状態で近位側配置部421aに配置されるように構成されていてもよい。
【0108】
上記実施形態において特に言及しなかったが、遠位側防振部61は、一端部の外周面が遠位側位置決め部422bに当接した状態で遠位側配置部422aに配置されるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…防振連結ユニット、2…ベース部材、3…防振連結具、4…基台部、5…天板部、6…防振部材、7…連結部材、40…底部、41…立壁部、42…被取付部、50…操作孔、60…近位側防振部、61…遠位側防振部、62…中間防振部、70…保持部、71…固定部、400…近位面、401…遠位面、420…貫通孔、421…近位側取付部、421a…近位側配置部、421b…近位側位置決め部、422…遠位側取付部、422a…遠位側配置部、422b…遠位側位置決め部、700…保持柱部、700b…近位側当接領域、700c…近位側非接触領域、701…保持蓋部、702…近位側保持部、702a…近位側当接面、702b…近位側当接領域、702c…近位側非接触領域、702d…挿通孔、703…遠位側保持部、703a…遠位側受面、703b…遠位側当接領域、703c…遠位側非接触領域、703d…挿通孔、704…中間保持部、704d…挿通孔、710…軸部、710b…遠位側当接領域、710c…遠位側非接触領域、711…頭部、O1…防振対象物、O2…取付対象物、S1…スペース、S2…スペース
図1
図2
図3
図4
図5