(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027866
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】励磁電流検出回路、半導体装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H02M3/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131032
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】麻生 真司
(72)【発明者】
【氏名】中野 利浩
(72)【発明者】
【氏名】吉永 充達
(72)【発明者】
【氏名】細谷 裕
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AA20
5H730BB43
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE58
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD24
5H730XX28
(57)【要約】
【課題】大きな容量のキャパシタを用いた積分回路を使用することなく、トランスの励磁電流を精度よく検出できる励磁電流検出回路を提供する。
【解決手段】補助巻線naに生じる補助巻線電圧Vnaの正電圧を検出する入力電圧検出部11と、補助巻線naに生じる補助巻線電圧Vnaの負電圧を検出する出力電圧検出部12と、正電圧に比例した周波数の第1クロックckupを補助巻線電圧Vnaが正電圧の期間に生成する第1電圧制御発振器13と、負電圧に比例した周波数の第2クロックckdwnを補助巻線電圧Vnaが負電圧の期間に生成する第2電圧制御発振器14と、第1クロックckupの周期で加算すると共に、第2クロックckdwnの周期で減算したカウンタ値CNTを励磁電流ILmの検出値として出力するカウンタ15と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側の一次巻線及び補助巻線と、二次側の二次巻線とを備えたトランスの励磁電流を検出する励磁電流検出回路であって、
前記補助巻線に生じる補助巻線電圧の正電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記補助巻線に生じる前記補助巻線電圧の負電圧を検出する第2電圧検出部と、
前記正電圧に比例した周波数の第1クロックを前記補助巻線電圧が前記正電圧の期間に生成する第1電圧制御発振器と、
前記負電圧に比例した周波数の第2クロックを前記補助巻線電圧が前記負電圧の期間に生成する第2電圧制御発振器と、
前記第1クロック及び前記第2クロックのいずれか一方の周期で加算すると共に、前記第1クロック及び前記第2クロックのいずれか他方の周期で減算したカウンタ値を前記励磁電流の検出値として出力するカウンタと、を具備することを特徴とする励磁電流検出回路。
【請求項2】
一次側の一次巻線及び補助巻線と、二次側の二次巻線とを備えたトランスの励磁電流を検出する励磁電流検出回路であって、
前記一次巻線に直列に接続されたスイッチ素子がオン状態に遷移してから予め設定された第1遅延時間後に前記補助巻線に生じる補助巻線電圧をサンプリングして検出する第1電圧検出部と、
前記スイッチ素子がオフ状態に遷移してから予め設定された第2遅延時間後に前記補助巻線に生じる前記補助巻線電圧をサンプリングして検出する第2電圧検出部と、
前記第1電圧検出部で検出された前記補助巻線電圧に比例した周波数の第1クロックを生成する第1電圧制御発振器と、
前記第2電圧検出部で検出された前記補助巻線電圧に比例した周波数の第2クロックを生成する第2電圧制御発振器と、
前記スイッチ素子が前記オン状態のときに前記第1クロックの周期で加算もしくは減算すると共に、前記スイッチ素子が前記オフ状態のときに前記第2クロックの周期で減算もしくは加算したカウンタ値を前記励磁電流の検出値として出力するカウンタと、を具備することを特徴とする励磁電流検出回路。
【請求項3】
前記カウンタは、リセット端子を備え、
前記カウンタの前記カウンタ値は、前記トランスへのエネルギーの蓄積が開始されるタイミングで「0」から始まるようにリセットされることを特徴とする請求項1又は2記載の励磁電流検出回路。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の励磁電流検出回路を備えることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスの励磁電流を検出する励磁電流検出回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1次側と2次側で絶縁されたフライバックコンバータにおいて、2次側へ電流を放出している期間のトランスの励磁電流を、補助巻線に生じる補助巻線電圧値を用いて検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、一次巻線に与えられた入力電圧値と補助巻線に生じる補助巻線電圧値との差電圧値を時間積分し、一次巻線に流れる電流に比例した電圧値を出力する積分回路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4831010号公報
【特許文献2】欧州特許第3726716号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、キャパシタを用いた積分回路で時間積分しているため、フライバックコンバータの制御ICを半導体集積回路で構成した場合、積分器で使用するキャパシタの静電容量は大きくできない。従って、キャパシタを用いた積分回路は、ノイズ耐性が低く、ばらつきも大きいため、精度をよくできない。
【0006】
特許文献2に示すようなアクティブクランプフライバックコンバータでは、トランスの励磁電流を検出したクランプスイッチを制御しているが、従来技術では、アクティブクランプフライバックコンバータの制御ICで要求される精度を実現することは困難である。
【0007】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大きな容量のキャパシタを用いた積分回路を使用することなく、トランスの励磁電流を精度よく検出できる励磁電流検出回路を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る励磁電流検出回路は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
本発明に係る励磁電流検出回路は、一次側の一次巻線及び補助巻線と、二次側の二次巻線とを備えたトランスの励磁電流を検出する励磁電流検出回路であって、前記補助巻線に生じる補助巻線電圧の正電圧を検出する第1電圧検出部と、前記補助巻線に生じる前記補助巻線電圧の負電圧を検出する第2電圧検出部と、前記正電圧に比例した周波数の第1クロックを前記補助巻線電圧が前記正電圧の期間に生成する第1電圧制御発振器と、前記負電圧に比例した周波数の第2クロックを前記補助巻線電圧が前記負電圧の期間に生成する第2電圧制御発振器と、前記第1クロック及び前記第2クロックのいずれか一方の周期で加算すると共に、前記第1クロック及び前記第2クロックのいずれか他方の周期で減算したカウンタ値を前記励磁電流の検出値として出力するカウンタと、を具備することを特徴とする。
また、本発明に係る励磁電流検出回路は、一次側の一次巻線及び補助巻線と、二次側の二次巻線とを備えたトランスの励磁電流を検出する励磁電流検出回路であって、前記一次巻線に直列に接続されたスイッチ素子がオン状態に遷移してから予め設定された第1遅延時間後に前記補助巻線に生じる補助巻線電圧をサンプリングして検出する第1電圧検出部と、前記スイッチ素子がオフ状態に遷移してから予め設定された第2遅延時間後に前記補助巻線に生じる前記補助巻線電圧をサンプリングして検出する第2電圧検出部と、前記第1電圧検出部で検出された前記補助巻線電圧に比例した周波数の第1クロックを生成する第1電圧制御発振器と、前記第2電圧検出部で検出された前記補助巻線電圧に比例した周波数の第2クロックを生成する第2電圧制御発振器と、前記スイッチ素子が前記オン状態のときに前記第1クロックの周期で加算もしくは減算すると共に、前記スイッチ素子が前記オフ状態のときに前記第2クロックの周期で減算もしくは加算したカウンタ値を前記励磁電流の検出値として出力するカウンタと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の励磁電流検出回路は、論理回路で構成でき、大きな容量のキャパシタを用いた積分回路を使用することなく、トランスの励磁電流を精度よく検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る励磁電流検出回路の第1の実施の形態を備えたフライバックコンバータの構成図である。
【
図2】
図1に示す励磁電流検出回路の構成図である。
【
図3】
図1に示すフライバックコンバータの各部の波形図である。
【
図4】
図2に示す励磁電流検出回路の各部の波形図である。
【
図6】本発明に係る励磁電流検出回路の第1の実施の形態を備えたフライバックコンバータの構成図である。
【
図7】
図6に示す励磁電流検出回路の構成図である。
【
図8】
図6に示す励磁電流検出回路の各部の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の励磁電流検出回路10は、トランスTを介して1次側から2次側に電力を送る方式の電源装置に適用可能であり、
図1に示す例では、フライバックコンバータ1の制御回路3に設けられている。
【0013】
フライバックコンバータ1は、トランスTと、スイッチ素子Qと、ダイオードDsと、出力キャパシタCoと、出力電圧検出回路2と、を備える。
【0014】
トランスTは、一次側の一次巻線Np及び補助巻線Naと、二次側の二次巻線Nsとを備える。一次巻線Npの巻始めと二次巻線Nsの巻始めとは、互いに逆相に巻回され、一次巻線Np側に励磁インダクタンスLmを有する。
図1において、補助巻線Naは、一次巻線Npと逆相としたが、補助巻線Naの極性を逆にしても良い。この場合、以下の説明において、補助巻線Naの発生する電圧の極性が逆になるだけであり、本発明の趣旨は、変わらない。
【0015】
直流電源(入力電圧Vin)の両端には、トランスTの一次巻線Npとスイッチ素子Qとの直列回路が接続されている。スイッチ素子Qは、MOSFETとして説明するが、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等でもよい。
【0016】
ダイオードDsは、アノードがトランスTの二次巻線Nsの一端に接続され、カソードが出力キャパシタCoを介してトランスTの二次巻線Nsの他端に接続されている。すなわち、ダイオードDsと出力キャパシタCoとの直列回路は、整流平滑回路として、トランスTの二次巻線Nsの両端に接続され、出力キャパシタCoの両端電圧が出力電圧Voとして出力される。
【0017】
出力電圧検出回路2は、出力電圧Voを検出し、検出した出力電圧Voを、図示しないフォトカプラ等を介して、フィードバック電圧Vfbとして制御回路3にフィードバックする。
【0018】
制御回路3は、出力電圧Voが所望の値になるようにスイッチ素子Qをオンオフ駆動するスイッチングレギュレータIC(半導体集積回路)等の半導体装置で構成される。制御回路3は、スイッチ素子Qを内蔵しても良い。
【0019】
制御回路3は、ゲート信号生成部4と、駆動回路5と、を備える。ゲート信号生成部4は、フィードバック電圧Vfbに応じたデューティーでスイッチ素子Qをオンオフ制御するゲート信号Gを生成する。駆動回路5は、ゲート信号Gに基づいてスイッチ素子Qのゲートに制御電圧を印加することによりスイッチ素子Qを駆動する。
【0020】
制御回路3は、励磁電流検出回路10を備える。励磁電流検出回路10は、補助巻線Naの電圧Vnaを入力とし、励磁電流検出値VLMを出力する。
【0021】
励磁電流検出回路10は、
図2を参照すると、入力電圧検出部11と、出力電圧検出部12と、第1電圧制御発振器(第1VCO)13と、第2電圧制御発振器(第2VCO)14と、カウンタ15と、を備える。
【0022】
入力電圧検出部11は、補助巻線Naに発生する入力電圧に比例した電圧Vsiを検出する。また、出力電圧検出部12は、補助巻線Naに発生する出力電圧に比例した電圧Vsoを検出する
【0023】
図3に示す励磁電流検出回路10の各部の波形図は、上から、(a)スイッチ素子Qのゲート電圧(ゲート信号G)、(b)スイッチ素子Qのドレインソース間電圧VQ、(c)スイッチ素子Qのドレイン電流IQ、(d)励磁インダクタンスLmの励磁電流ILm、(e)ダイオードDsの端子間電圧VDs、(f)ダイオードDsの順方向電流IDs、(g)補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vnaをそれぞれ示す。
【0024】
図3(a)において、時刻t0~t1のスイッチ素子Qのゲート電圧がHiレベルの期間T1がスイッチ素子Qのオン期間であり、励磁電流ILmが流れ、一次巻線Npと二次巻線Nsにエネルギーが蓄積される。オン期間は、
図3(e)に示すように、ダイオードDsが逆バイアスされ、二次側には電流が流れない。励磁電流ILmは、スイッチ素子Qがオンしているオン期間において、
図3(c)に示すように、入力電圧Vinが印加され、Vin/Lm×tで増加する。
【0025】
図3(a)において、時刻t1でスイッチ素子Qのゲート電圧がLoレベルに遷移してスイッチ素子Qがオフされると、一次側から二次側にエネルギーが転送され、ダイオードDsに順方向バイアスがかかるため、
図3(f)に示すように、二次側に電流が流れる。
【0026】
時刻t1から一次側から二次側へのエネルギーの転送が終了する時刻t2までの期間T2は、ディスチャージ期間となる。励磁電流ILmは、スイッチ素子Qがオフして2次側に励磁電流を放出している期間(ディスチャージ期間)において、
図3(d)に示すように、N・Vo/Lm×tで減少する。Nは、一次巻線Npと二次巻線Nsとの巻線比(Np/Ns)である。
【0027】
時刻t2からスイッチ素子Qのゲート電圧がHiレベルに遷移してスイッチ素子Qがオンされる時刻t3までの期間T3は、エネルギーの移動がないオフ期間となる。
【0028】
図4に示す励磁電流検出回路10の各部の波形図は、上から、(a)補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vna、(b)入力電圧Vinに比例した電圧Vsi、(c)出力電圧Voに比例した電圧Vso、(d)第1電圧制御発振器13から出力される第1クロックckup、(e)第2電圧制御発振器14から出力される第2クロックckdwn、(f)カウンタ15のカウンタ値CNT、をそれぞれ示す。
【0029】
図4(a)を参照すると、補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vnaは、負の期間(期間T1と期間T3の一部)が入力電圧Vinに比例した電圧Vsiとなり、正の期間(期間T2と期間T3の一部)が出力電圧Voutに比例した電圧Vsoとなる。
【0030】
そこで、入力電圧検出部11は、補助巻線電圧Vnaを反転増幅すると共に、半波整流によって負電圧分を消去し、
図4(b)に示すように、正電圧のみを入力電圧Vinに比例した電圧Vsiとして出力する。また、出力電圧検出部12は、補助巻線電圧Vnaを入力電圧検出部11と同じ増幅率で非反転増幅すると共に、半波整流によって負電圧分を消去し、
図4(c)に示すように、正電圧のみを出力電圧Voutに比例した電圧Vsoとして出力する。
【0031】
第1電圧制御発振器13は、入力電圧検出部11から出力される電圧Vsiに比例した周波数を持つ第1クロックckupを生成する。第1クロックckupは、
図4(d)に示すように、補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vnaが負の期間(期間T1と期間T3の一部)に出力される。
【0032】
第2電圧制御発振器14は、出力電圧検出部12から出力される電圧Vsoに比例した周波数を持つ第2クロックckdwnを生成する。第2クロックckdwnは、
図4(e)に示すように、補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vnaが正の期間(期間T2と期間T3の一部)に出力される。
【0033】
カウンタ15は、2クロックアップダウンカウンタであり、第1クロック端子ck1に入力される第1クロックckupの周期でカウンタを加算し、第2クロック端子ck2に入力される第2クロックckdwnの周期でカウンタを減算する。そして、カウンタ15は、出力端子outからカウンタ値CNTを励磁電流ILmの検出値として出力する。
【0034】
第1クロックckupは、入力電圧Vin(電圧Vsi)に比例した周波数であるため、カウンタ15は、
図4(f)に示すように、オン期間に励磁電流ILmに比例して加算される。そして、第2クロックckdwnは、出力電圧Vout(電圧Vso)に比例した周波数であるため、カウンタ15は、
図4(f)に示すように、ディスチャージ期間に励磁電流ILmに比例して減算される。従って、カウンタ15から出力されるカウンタ値CNTは、励磁電流ILmに比例し、励磁電流ILmに相当する高精度の値となる。
【0035】
図5(a)に示すように、カウンタ15にリセット端子Rを設け、トランスTへのエネルギーの蓄積が開始される時刻t0、t3のタイミングでカウンタ値CNTが「0」から始まるようにリセットすると良い。リセット端子Rに入力するリセット信号は、ゲート信号Gを用いて、Hiレベルに遷移するタイミングでリセットしてもよい。また、カウンタ値CNTによる励磁電流ILmの検出を、アクティブクランプフライバックコンバータにおけるクランプスイッチの制御に用いる場合、クランプスイッチの制御回路でリセット信号を生成することもできる。
【0036】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の励磁電流検出回路10aは、
図6に示すように、フライバックコンバータ1の制御回路3aに設けられている。
【0037】
制御回路3aは、ゲート信号生成部4で生成されたゲート信号Gが制御回路3aに入力される点で、第1の実施の形態の制御回路3と異なっている。
【0038】
励磁電流検出回路10aは、
図7を参照すると、第1パルス生成器(第1pulse)16と、第2パルス生成器(第2pulse)17と、入力電圧検出部11aと、出力電圧検出部12aと、第1電圧制御発振器(第1VCO)13と、第2電圧制御発振器(第2VCO)14と、カウンタ15aと、を備える。
【0039】
図8は、励磁電流検出回路10aの各部の波形図は、上から、(a)スイッチ素子Qのゲート電圧(ゲート信号G)、(b)パルス信号shck1、(c)パルス信号shck2、(d)補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vna、(e)入力電圧Vinに比例した電圧Vsi、(f)出力電圧Voに比例した電圧Vso、(g)第1電圧制御発振器13から出力される第1クロックckup、(h)第2電圧制御発振器14から出力される第2クロックckdwn、(i)カウンタ15のカウンタ値CNT、をそれぞれ示す。
【0040】
第1パルス生成器16は、スイッチ素子Qのゲート信号Gの立ち上がりエッジを検出し、
図8(b)に示すように、予め設定された第1遅延時間delay1後に1ショットパルスP1を出力するパルス信号shck1を生成し、第1電圧制御発振器13へ出力する。第1遅延時間delay1は、ゲート信号Gの立ち上がりエッジによってスイッチ素子Qがオンされた後、補助巻線電圧Vnaが安定するまでの時間以上に設定されている。
【0041】
第2パルス生成器17は、スイッチ素子Qのゲート信号Gの立ち下がりエッジを検出し、
図8(c)に示すように、予め設定された第2遅延時間delay2後に1ショットパルスP2を出力するパルス信号shck2を生成し、第2電圧制御発振器14へ出力する。第2遅延時間delay2は、ゲート信号Gの立ち上がりエッジによってスイッチ素子Qがオフされた後、補助巻線電圧Vnaが安定するまでの時間以上に設定されている。
【0042】
入力電圧検出部11aは、反転増幅器111と、サンプルホールド回路112と、を備え、補助巻線電圧Vnaとパルス信号shck1を入力として、入力電圧Vinに比例した電圧Vsiを第1電圧制御発振器13へ出力する。反転増幅器111は、補助巻線電圧Vnaを反転増幅する。サンプルホールド回路112は、
図8(d)、(e)に矢印Aで示すパルス信号shck1における1ショットパルスP1のタイミングで、反転増幅器111によって反転増幅された補助巻線電圧Vnaをサンプルホールドし、補助巻線電圧Vnaの負電圧の絶対値の電圧を検出して入力電圧Vinに比例した電圧Vsiとして出力する。
【0043】
これにより、入力電圧検出部11aから出力される電圧Vsiは、スイッチ素子Qがオンされた直後のリンギング等で不安定な補助巻線電圧Vnaを避けて、安定した状態の補助巻線電圧Vnaに基づいた値となる。
【0044】
出力電圧検出部12aは、非反転増幅器121と、サンプルホールド回路122と、を備え、補助巻線電圧Vnaとパルス信号shck2を入力として、出力電圧Voutに比例した電圧Vsoを第2電圧制御発振器14へ出力する。非反転増幅器121は、入力電圧検出部11aの反転増幅器111と同一の増幅率で補助巻線電圧Vnaを増幅する。サンプルホールド回路122は、
図8(d)、(f)に矢印Bで示すパルス信号shck2における1ショットパルスP1のタイミングで、非反転増幅器121によって増幅された補助巻線電圧Vnaをサンプルホールドし、補助巻線電圧Vnaの正電圧を検出して出力電圧Voutに比例した電圧Vsoとして出力する。
【0045】
これにより、出力電圧検出部12aから出力される電圧Vsoは、スイッチ素子Qがオフされた直後のリンギング等で不安定な補助巻線電圧Vnaを避けて、安定した状態の補助巻線電圧Vnaに基づいた値となる。
【0046】
第1電圧制御発振器13は、入力電圧検出部11aから出力される電圧Vsiに比例した周波数を持つ第1クロックckupを生成する。第1クロックckupは、サンプルホールドされた補助巻線電圧Vnaに基づいて生成されるため、
図8(g)に示すように、補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vnaが負の期間(期間T1と期間T3の一部)と共に、補助巻線電圧Vnaが負の期間(期間T1と期間T3の一部)でも継続して出力される。
【0047】
第2電圧制御発振器14は、出力電圧検出部12aで検出した電圧Vsoに比例した周波数を持つ第2クロックckdwnを生成する。第2クロックckdwnは、サンプルホールドされた補助巻線電圧Vnaに基づいて生成されるため、
図8(h)に示すように、補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vnaが正の期間(期間T2と期間T3の一部)と共に、補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vnaが負の期間(期間T1と期間T3の一部)でも継続して出力される。
【0048】
カウンタ15aは、2クロックアップダウンカウンタであり、ゲート信号Gの状態に応じてカウンタの加算と減算を制御する制御端子contを備える。カウンタ15aは、
図8(i)に示すように、制御端子contに入力されるゲート信号GがHiレベルの時に、第1クロック端子ck1に入力される第1クロックckupの周期でカウンタを加算する。カウンタ15aは、
図8(i)に示すように、制御端子contに入力されるゲート信号GがLoレベルの時に、第2クロック端子ck2に入力される第2クロックckdwnの周期でカウンタを減算する。そして、カウンタ15は、出力端子outからカウンタ値CNTを励磁電流ILmの検出値として出力する。
【0049】
第1クロックckupは、負の期間の安定した補助巻線電圧Vnaに基づいて生成されるため、カウンタ15aのカウンタ値CNTは、スイッチ素子Qがオンされた直後の補助巻線電圧Vnaが不安定な期間でも励磁電流ILmに比例して加算される。そして、第2クロックckdwnは、正の期間の安定した補助巻線電圧Vnaに基づいて生成されるため、カウンタ15aのカウンタ値CNTは、スイッチ素子Qがオフされた直後の補助巻線電圧Vnaが不安定な期間でも励磁電流ILmに比例して減算される。従って、カウンタ15aから出力されるカウンタ値CNTは、励磁電流ILmに比例し、励磁電流ILmに相当するさらに高精度の値となる。
【0050】
図5(b)に示すように、カウンタ15aにリセット端子Rを設け、トランスTへのエネルギーの蓄積が開始される時刻t0、t3のタイミングでカウンタ値CNTが「0」から始まるようにリセットすると良い。リセット端子Rに入力するリセット信号は、ゲート信号Gを用いて、Hiレベルに遷移するタイミングでリセットしてもよい。また、カウンタ値CNTによる励磁電流ILmの検出を、アクティブクランプフライバックコンバータにおけるクランプスイッチの制御に用いる場合、クランプスイッチの制御回路でリセット信号を生成することもできる。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態は、一次側の一次巻線Np及び補助巻線naと、二次側の二次巻線Nsとを備えたトランスTの励磁電流ILmを検出する励磁電流検出回路10であって、補助巻線naに生じる補助巻線電圧Vnaの正電圧を検出する入力電圧検出部11(第1電圧検出部)と、補助巻線naに生じる補助巻線電圧Vnaの負電圧を検出する出力電圧検出部12(第2電圧検出部)と、正電圧に比例した周波数の第1クロックckupを補助巻線電圧Vnaが正電圧の期間に生成する第1電圧制御発振器13と、負電圧に比例した周波数の第2クロックckdwnを補助巻線電圧Vnaが負電圧の期間に生成する第2電圧制御発振器14と、第1クロックckup及び第2クロックckdwnのいずれか一方の周期で加算すると共に、第1クロックckup及び第2クロックckdwnのいずれか他方の周期で減算したカウンタ値CNTを励磁電流ILmの検出値として出力するカウンタ15と、を備える。
この構成により、励磁電流検出回路10を論理回路で構成でき、大きな容量のキャパシタを用いた積分回路を使用することなく、トランスTの励磁電流ILmを精度よく検出できる。また、励磁電流検出回路10は、論理回路で構成されているため、集積化が容易であり、アクティブクランプフライバックコンバータの制御ICに適用できる。
【0052】
さらに、本実施形態において、一次側の一次巻線Np及び補助巻線naと、二次側の二次巻線Nsとを備えたトランスTの励磁電流ILmを検出する励磁電流検出回路10aであって、一次巻線Npに直列に接続されたスイッチ素子Qがオン状態に遷移してから予め設定された第1遅延時間delay1後に補助巻線Naに生じる補助巻線電圧Vnaをサンプリングして検出する入力電圧検出部11a(第1電圧検出部)と、スイッチ素子Qがオフ状態に遷移してから予め設定された第2遅延時間delay2後に補助巻線naに生じる補助巻線電圧Vnaをサンプリングして検出する出力電圧検出部12a(第2電圧検出部)と、入力電圧検出部11aで検出された補助巻線電圧Vnaに比例した周波数の第1クロックckupを生成する第1電圧制御発振器13と、出力電圧検出部12aで検出された補助巻線電圧に比例した周波数の第2クロックckdwnを生成する第2電圧制御発振器14と、スイッチ素子Qがオン状態のときに第1クロックckupの周期で加算もしくは減算すると共に、スイッチ素子Qがオフ状態のときに第2クロックckdwnの周期で減算もしくは加算したカウンタ値CNTを励磁電流ILmの検出値として出力するカウンタ15aと、を備える。
この構成により、励磁電流検出回路10aを論理回路で構成でき、大きな容量のキャパシタを用いた積分回路を使用することない。そして、カウンタ15aのカウンタ値CNTは、スイッチ素子Qがオンもしくはオフされた直後の補助巻線電圧Vnaが不安定な期間でも励磁電流ILmに比例して加算もしくは減算されるため、トランスTの励磁電流ILmをさらに精度よく検出できる。
【0053】
さらに、本実施形態において、カウンタ15、15aは、リセット端子Rを備え、カウンタ15、15aのカウンタ値CNTは、トランスTへのエネルギーの蓄積が開始されるタイミングで「0」から始まるようにリセットされる。
この構成により、カウンタ値CNTの誤差を除去できる。
【0054】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、同一構成要素には、各図において、同一符号を付している。
【符号の説明】
【0055】
1 フライバックコンバータ
2 出力電圧検出回路
3、3a 制御回路
4 ゲート信号生成部
5 駆動回路
10、10a 励磁電流検出回路
11、11a 入力電圧検出部
12、12a 出力電圧検出部
13 第1電圧制御発振器(第1VCO)
14 第2電圧制御発振器(第2VCO)
15、15a カウンタ
16 第1パルス生成器(第1pulse)
17 第2パルス生成器(第2pulse)
111 反転増幅器
112 サンプルホールド回路
121 非反転増幅器
122 サンプルホールド回路
【手続補正書】
【提出日】2023-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
【
図1】本発明に係る励磁電流検出回路の第1の実施の形態を備えたフライバックコンバータの構成図である。
【
図2】
図1に示す励磁電流検出回路の構成図である。
【
図3】
図1に示すフライバックコンバータの各部の波形図である。
【
図4】
図2に示す励磁電流検出回路の各部の波形図である。
【
図6】本発明に係る励磁電流検出回路の第
2の実施の形態を備えたフライバックコンバータの構成図である。
【
図7】
図6に示す励磁電流検出回路の構成図である。
【
図8】
図6に示す励磁電流検出回路の各部の波形図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
制御回路3aは、ゲート信号生成部4で生成されたゲート信号Gが励磁電流検出回路10aに入力される点で、第1の実施の形態の制御回路3と異なっている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
第2パルス生成器17は、スイッチ素子Qのゲート信号Gの立ち下がりエッジを検出し、
図8(c)に示すように、予め設定された第2遅延時間delay2後に1ショットパルスP2を出力するパルス信号shck2を生成し、第2電圧制御発振器14へ出力する。第2遅延時間delay2は、ゲート信号Gの立ち
下がりエッジによってスイッチ素子Qがオフされた後、補助巻線電圧Vnaが安定するまでの時間以上に設定されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
出力電圧検出部12aは、非反転増幅器121と、サンプルホールド回路122と、を備え、補助巻線電圧Vnaとパルス信号shck2を入力として、出力電圧Voutに比例した電圧Vsoを第2電圧制御発振器14へ出力する。非反転増幅器121は、入力電圧検出部11aの反転増幅器111と同一の増幅率で補助巻線電圧Vnaを増幅する。サンプルホールド回路122は、
図8(d)、(f)に矢印Bで示すパルス信号shck2における1ショットパルスP
2のタイミングで、非反転増幅器121によって増幅された補助巻線電圧Vnaをサンプルホールドし、補助巻線電圧Vnaの正電圧を検出して出力電圧Voutに比例した電圧Vsoとして出力する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
第1電圧制御発振器13は、入力電圧検出部11aから出力される電圧Vsiに比例した周波数を持つ第1クロックckupを生成する。第1クロックckupは、サンプルホールドされた補助巻線電圧Vnaに基づいて生成されるため、
図8(g)に示すように、補助巻線Naに発生する補助巻線電圧Vnaが
正の期間(期間T
2と期間T3の一部)と共に、補助巻線電圧Vnaが負の期間(期間T1と期間T3の一部)でも継続して出力される。