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特開2024-27868人工食塊圧延装置、人工食塊圧延キット及びこれを用いた人工食塊圧延方法並びに咀嚼機能評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027868
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】人工食塊圧延装置、人工食塊圧延キット及びこれを用いた人工食塊圧延方法並びに咀嚼機能評価システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/22 20060101AFI20240222BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240222BHJP
   G01N 15/0205 20240101ALI20240222BHJP
   G01N 15/02 20240101ALI20240222BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240222BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61B5/22 200
G01N1/28 U
G01N15/02 A
G01N15/02 D
A61B5/11 300
A61C19/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131035
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】507184591
【氏名又は名称】株式会社エグザマスティカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早船 康二
【テーマコード(参考)】
2G052
4C038
4C052
【Fターム(参考)】
2G052AA24
2G052AA28
2G052AD12
2G052AD29
2G052AD32
2G052AD49
2G052DA05
2G052DA23
2G052EB11
2G052FA01
2G052GA09
2G052GA32
2G052HB04
2G052HB06
2G052JA03
2G052JA04
4C038VA04
4C038VB08
4C038VC20
4C052NN07
4C052NN14
4C052NN15
4C052NN16
(57)【要約】
【課題】人工食塊を圧延する際に微粒子の破損を防ぐとともに、環境の温度によらずに安定して圧延することができ、正確に微粒子の計数を行うことができる人工食塊圧延装置、人工食塊圧延キット及びこれを用いた人工食塊圧延方法並びに咀嚼機能評価システムを提供する。
【解決手段】咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないときは球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊を用いた咀嚼効率の測定のために、該人工食塊を圧延するために用いられる人工食塊圧延装置であって、人工食塊を挟持した微粒子計数用プレパラートを挟み込むプレス板と、プレス板によって人工食塊を挟圧する方向の力を付加する挟圧手段と、人工食塊を微粒子計数用プレパラートに挟持した状態で、人工食塊を加熱する発熱手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないときは球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊を用いた咀嚼効率の測定のために、該人工食塊を圧延するために用いられる人工食塊圧延装置であって、
前記人工食塊を挟持した微粒子計数用プレパラートを挟み込むプレス板と、
前記プレス板によって前記人工食塊を挟圧する方向の力を付加する挟圧手段と、
前記人工食塊を前記微粒子計数用プレパラートに挟持した状態で、前記人工食塊を加熱する発熱手段と、
を備えることを特徴とする人工食塊圧延装置。
【請求項2】
前記発熱手段は、該発熱手段の発熱温度を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、前記発熱温度を45℃~60℃に制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の人工食塊圧延装置。
【請求項3】
前記発熱手段は、フィルムヒーターまたは電熱線を有することを特徴とする請求項1に記載の人工食塊圧延装置。
【請求項4】
咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないときは球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊を用いた咀嚼効率の測定のために、該人工食塊を圧延するために用いられる人工食塊圧延キットであって、
透光性材料からなる微粒子計数用プレパラートと、
請求項1から3のいずれかに記載の人工食塊圧延装置と、
を備えることを特徴とする人工食塊圧延キット。
【請求項5】
前記微粒子計数用プレパラートに塗布する潤滑オイルをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の人工食塊圧延キット。
【請求項6】
前記微粒子計数用プレパラートは、非晶性ポリエチレンテレフタレートにより形成されることを特徴とする請求項4に記載の人工食塊圧延キット。
【請求項7】
前記微粒子計数用プレパラートは、識別子を備えることを特徴とする請求項4に記載の人工食塊圧延キット。
【請求項8】
前記プレス板は、前記微粒子計数用プレパラートに比べて硬い硬質材料により形成されることを特徴とする請求項4に記載の人工食塊圧延キット。
【請求項9】
請求項4に記載の人工食塊圧延キットを用いて人工食塊を圧延する人工食塊圧延方法であって、
前記人工食塊を被験者に所定回数咀嚼させる工程と、
咀嚼された前記人工食塊を丸める工程と、
丸めた前記人工食塊を、前記微粒子計数用プレパラートの内面中央部に載置し、該微粒子計数用プレパラートを閉じて挟持するとともに、前記人工食塊を前記微粒子計数用プレパラートの上から押圧して略円形となるように押し広げる工程と、
前記プレス板によって前記微粒子計数用プレパラートを挟み込み、前記発熱手段によって加熱した状態で、前記挟圧手段を用いて、前記プレス板によって前記人工食塊を挟圧する方向の力を所定時間だけ付加する工程と、
を備えることを特徴とする人工食塊圧延方法。
【請求項10】
請求項5に記載の人工食塊圧延キットを用いて人工食塊を圧延する人工食塊圧延方法であって、
前記微粒子計数用プレパラートの内面中央部に前記潤滑オイルを塗布する工程と、
前記人工食塊を被験者に所定回数咀嚼させる工程と、
咀嚼された前記人工食塊を丸める工程と、
丸めた前記人工食塊を、前記微粒子計数用プレパラートの内面中央部に載置し、該微粒子計数用プレパラートを閉じて挟持するとともに、前記人工食塊を前記微粒子計数用プレパラートの上から押圧して略円形となるように押し広げる工程と、
前記プレス板によって前記微粒子計数用プレパラートを挟み込み、前記発熱手段によって加熱した状態で、前記挟圧手段を用いて、前記プレス板によって前記人工食塊を挟圧する方向の力を所定時間だけ付加する工程と、
を備えることを特徴とする人工食塊圧延方法。
【請求項11】
請求項4に記載の人工食塊圧延キットを用いて作成された人工食塊が挟圧された状態の評価用プレパラートを用いて、被験者の咀嚼機能の評価を行う咀嚼機能評価システムであって、
識別子読取手段と、入出力手段とを少なくとも備えた被験者用評価装置と、
利用可能な微粒子計数用プレパラートに割り振られた識別用文字列のデータベースが記憶されている管理用サーバーと、
を備え、
前記微粒子計数用プレパラートは、識別用文字列が記録された識別子をさらに備え、
前記被験者用評価装置は、撮影手段によって撮影された前記評価用プレパラートの評価用画像を解析するようことによって、前記人工食塊に残っている微細に粉砕、すり潰されていない微粒子の粒子数を計数するよう構成された微粒子計数手段を備え、
前記被験者用評価装置は、前記識別子読取手段によって読み取られた前記識別子に記録された前記識別用文字列を、前記管理用サーバーに送信し、
前記管理用サーバーは、前記データベースから、受信した識別用文字列を検索し、存在した場合には、利用許可データを前記被験者用評価装置に送信し、一方で、存在しない場合には、利用不可データを前記被験者用評価装置に送信し、
前記被験者用評価装置は、前記利用不可データを受信した場合には、前記微粒子計数手段の動作を停止し、一方で、前記利用許可データを受信した場合には、前記微粒子計数手段の動作を続行するように構成されることを特徴とする咀嚼機能評価システム。
【請求項12】
請求項5に記載の人工食塊圧延キットを用いて作成された人工食塊が挟圧された状態の評価用プレパラートを用いて、被験者の咀嚼機能の評価を行う咀嚼機能評価システムであって、
識別子読取手段と、入出力手段とを少なくとも備えた被験者用評価装置と、
利用可能な微粒子計数用プレパラートに割り振られた識別用文字列のデータベースが記憶されている管理用サーバーと、
を備え、
前記微粒子計数用プレパラートは、識別用文字列が記録された識別子をさらに備え、
前記被験者用評価装置は、撮影手段によって撮影された前記評価用プレパラートの評価用画像を解析するようことによって、前記人工食塊に残っている微細に粉砕、すり潰されていない微粒子の粒子数を計数するよう構成された微粒子計数手段を備え、
前記被験者用評価装置は、前記識別子読取手段によって読み取られた前記識別子に記録された前記識別用文字列を、前記管理用サーバーに送信し、
前記管理用サーバーは、前記データベースから、受信した識別用文字列を検索し、存在した場合には、利用許可データを前記被験者用評価装置に送信し、一方で、存在しない場合には、利用不可データを前記被験者用評価装置に送信し、
前記被験者用評価装置は、前記利用不可データを受信した場合には、前記微粒子計数手段の動作を停止し、一方で、前記利用許可データを受信した場合には、前記微粒子計数手段の動作を続行するように構成されることを特徴とする咀嚼機能評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼により微細に粉砕、すり潰される性質を有するほぼ均一な球形微粒子を含有する人工食塊を用いて咀嚼機能評価などを行う際に、人工食塊を圧延し、微粒子の計数のための画像撮影を行いやすくするための人工食塊圧延装置、人工食塊圧延キット及びこれを用いた人工食塊圧延方法並びに咀嚼機能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼、すなわち、食物をかみ砕き、唾液とよく混和させ、適当な大きさで水気のある食塊を作り、飲み込む準備をする行為は、ヒトが固形物を食べるために必要であるほか、覚醒効果やリラックス効果を得られたり、肥満,ぼけ,視力低下,姿勢悪化,むし歯,ガンなどを予防し、脳内の血液量の増加による加齢変化の抑制などの効果も得られるとされている。
【0003】
この咀嚼の能力(咀嚼効率)は、歯数,歯の健否,咬合面の形態,歯周組織の状態,顎型,咀嚼筋力,下顎運動様式,年齢,補綴物の状態など、無数の条件に影響されるものである。
【0004】
このような咀嚼効率を定量化するため、本発明者等は、「咀嚼により微細に粉砕、すり潰される性質を有するほぼ均一な球形微粒子」を含有した人工食塊、および、この人工食塊を用いて咀嚼機能を評価するシステムを開発した(特許文献1)。
【0005】
この咀嚼機能評価システムは、咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないときは球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊をヒトに咀嚼させる工程と、この咀嚼された人工食塊を2枚のプレパラートの間に挟んで微粒子を押し潰さない程度の適切な厚みに圧延する工程と、この2枚のプレパラートの間に圧延された人工食塊中の残存する球形の形状を有する微粒子を計数する工程を含んでいる。
【0006】
この咀嚼機能評価システムで用いられる人工食塊は、例えば、ポリイソブチレンからなる基材に、天然ワックスの一種であるカルナバワックスをほぼ均一な球形微粒子に調整したものが練和、含有されている。
【0007】
一般的に、咀嚼の時には、上下の歯が各々100μm程度変異することが知られている。このため、「咀嚼により微細に粉砕、すり潰される微粒子」とするため、微粒子の直径は約100~500μmとしている。
【0008】
このような大きさの微粒子を含有する人工食塊をヒトに咀嚼させ、この咀嚼させた人工食塊を2枚のプレパラートの間に挟んで微粒子を押し潰さない程度の適切な厚みに圧延して、この2枚のプレパラートの間に圧延された人工食塊中の残存する球形の形状を有する微粒子を計数することによって咀嚼効率を定量化している。
【0009】
なお、咀嚼効率を精度良く検査するために、人工食塊には約2000個の微粒子が含有されており、人工食塊中に微粒子が均一に分散している。これによって、人工食塊の個体差(例えば、人工食塊中に含まれる微粒子の数など)により生じる検査結果の誤差を抑制することができる。
【0010】
しかしながら、このような大きさの微粒子では、目視によって正確に計数することは困難であり、通常は、撮影装置やコンピュータなどから構成される専用の計数システムを用いて、パターンマッチング等により計数を行う必要があった。
【0011】
このため、本発明者等は、圧延した人工食塊を、例えば、スマートフォンなどのユーザー端末によって撮影した画像データを用いて、簡便に計数を行うことができるシステムを開発した。
【0012】
近年、スマートフォンに搭載されるカメラの性能が向上しており、例えば、直径が約300μm~1000μm程度の微粒子であっても、コンピュータによる画像解析によって球形微粒子の計数が可能な程度に鮮明な画像を撮影することができるようになっている。
【0013】
スマートフォンで人工食塊を撮影する場合には、例えば、特許文献2に開示されるようなプレパラートを用いて、微粒子を押し潰さない程度の厚みに圧延することで、微粒子を撮影しやすくすることを行っていた。
【0014】
また、本発明者等は、特許文献3に開示されるように、構造を簡略化してプレパラートの低コスト化を図ったり、また、ユーザーによって撮影された画像を、球形微粒子の計数をしやすい画像へと補正することで、ユーザーの撮影の仕方や、ユーザーが用いるスマートフォンなどの種類によらず、ほぼ均質な画像を用いて、コンピュータにより球形微粒子の計数を行うことが可能となるプレパラートも開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開公報第2008/020588号
【特許文献2】特開2018-089146号公報
【特許文献3】特開2021-000261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このようなプレパラートを用いて人工食塊を圧延する際には、人工食塊をプレパラートの略中央に載置した状態でプレパラートによって挟み込み、樹脂製のローラーなどを用いて圧延していた。
【0017】
しかしながら、特許文献2に開示される三つ折りプレパラートを用いた場合であっても、ローラーによる圧延の際に、プレパラート基板が撓んでしまい、微粒子にまでも圧力がかかり、微粒子が破損してしまうようなことがあった。
【0018】
また、人工食塊の基材は、環境の温度によって硬さが変動してしまい、例えば、冬期など気温が低い場合には、プレパラートを用いて人工食塊を圧延しても、十分に人工食塊が広がらずに、計数精度が低下してしまうことがあった。
【0019】
本発明では、このような現状に鑑み、人工食塊を圧延する際に微粒子の破損を防ぐとともに、環境の温度によらずに安定して圧延することができ、正確に微粒子の計数を行うことができる人工食塊圧延装置、人工食塊圧延キット及びこれを用いた人工食塊圧延方法並びに咀嚼機能評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上述するような従来技術における課題を解決するために発明されたものであって、本発明は、少なくとも、以下のように構成されたものを含む。
【0021】
[1] 咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないときは球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊を用いた咀嚼効率の測定のために、該人工食塊を圧延するために用いられる人工食塊圧延装置であって、
前記人工食塊を挟持した微粒子計数用プレパラートを挟み込むプレス板と、
前記プレス板によって前記人工食塊を挟圧する方向の力を付加する挟圧手段と、
前記人工食塊を前記微粒子計数用プレパラートに挟持した状態で、前記人工食塊を加熱する発熱手段と、
を備えることを特徴とする人工食塊圧延装置。
【0022】
[2] 前記発熱手段は、該発熱手段の発熱温度を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、前記発熱温度を45℃~60℃に制御するように構成されることを特徴とする[1]に記載の人工食塊圧延装置。
【0023】
[3] 前記発熱手段は、フィルムヒーターまたは電熱線を有することを特徴とする請求項[1]または[2]に記載の人工食塊圧延装置。
【0024】
[4] 咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないときは球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊を用いた咀嚼効率の測定のために、該人工食塊を圧延するために用いられる人工食塊圧延キットであって、
透光性材料からなる微粒子計数用プレパラートと、
[1]から[3]のいずれかに記載の人工食塊圧延装置と、
を備えることを特徴とする人工食塊圧延キット。
【0025】
[5] 前記微粒子計数用プレパラートに塗布する潤滑オイルをさらに備えることを特徴とする[4]に記載の人工食塊圧延キット。
【0026】
[6] 前記微粒子計数用プレパラートは、非晶性ポリエチレンテレフタレートにより形成されることを特徴とする[4]または[5]に記載の人工食塊圧延キット。
【0027】
[7] 前記微粒子計数用プレパラートは、識別子を備えることを特徴とする[4]から[6]のいずれかに記載の人工食塊圧延キット。
【0028】
[8] 前記プレス板は、前記微粒子計数用プレパラートに比べて硬い硬質材料により形成されることを特徴とする[4]から[7]のいずれかに記載の人工食塊圧延キット。
【0029】
[9] [4]に記載の人工食塊圧延キットを用いて人工食塊を圧延する人工食塊圧延方法であって、
前記人工食塊を被験者に所定回数咀嚼させる工程と、
咀嚼された前記人工食塊を丸める工程と、
丸めた前記人工食塊を、前記微粒子計数用プレパラートの内面中央部に載置し、該微粒子計数用プレパラートを閉じて挟持するとともに、前記人工食塊を前記微粒子計数用プレパラートの上から押圧して略円形となるように押し広げる工程と、
前記プレス板によって前記微粒子計数用プレパラートを挟み込み、前記発熱手段によって加熱した状態で、前記挟圧手段を用いて、前記プレス板によって前記人工食塊を挟圧する方向の力を所定時間だけ付加する工程と、
を備えることを特徴とする人工食塊圧延方法。
【0030】
[10] [5]に記載の人工食塊圧延キットを用いて人工食塊を圧延する人工食塊圧延方法であって、
前記微粒子計数用プレパラートの内面中央部に前記潤滑オイルを塗布する工程と、
前記人工食塊を被験者に所定回数咀嚼させる工程と、
咀嚼された前記人工食塊を丸める工程と、
丸めた前記人工食塊を、前記微粒子計数用プレパラートの内面中央部に載置し、該微粒子計数用プレパラートを閉じて挟持するとともに、前記人工食塊を前記微粒子計数用プレパラートの上から押圧して略円形となるように押し広げる工程と、
前記プレス板によって前記微粒子計数用プレパラートを挟み込み、前記発熱手段によって加熱した状態で、前記挟圧手段を用いて、前記プレス板によって前記人工食塊を挟圧する方向の力を所定時間だけ付加する工程と、
を備えることを特徴とする人工食塊圧延方法。
【0031】
[11] [4]から[8]のいずれかに記載の人工食塊圧延キットを用いて作成された人工食塊が挟圧された状態の評価用プレパラートを用いて、被験者の咀嚼機能の評価を行う咀嚼機能評価システムであって、
識別子読取手段と、入出力手段とを少なくとも備えた被験者用評価装置と、
利用可能な微粒子計数用プレパラートに割り振られた識別用文字列のデータベースが記憶されている管理用サーバーと、
を備え、
前記微粒子計数用プレパラートは、識別用文字列が記録された識別子をさらに備え、
前記被験者用評価装置は、撮影手段によって撮影された前記評価用プレパラートの評価用画像を解析するようことによって、前記人工食塊に残っている微細に粉砕、すり潰されていない微粒子の粒子数を計数するよう構成された微粒子計数手段を備え、
前記被験者用評価装置は、前記識別子読取手段によって読み取られた前記識別子に記録された前記識別用文字列を、前記管理用サーバーに送信し、
前記管理用サーバーは、前記データベースから、受信した識別用文字列を検索し、存在した場合には、利用許可データを前記被験者用評価装置に送信し、一方で、存在しない場合には、利用不可データを前記被験者用評価装置に送信し、
前記被験者用評価装置は、前記利用不可データを受信した場合には、前記微粒子計数手段の動作を停止し、一方で、前記利用許可データを受信した場合には、前記微粒子計数手段の動作を続行するように構成されることを特徴とする咀嚼機能評価システム。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、人工食塊を透光性材料により形成される微粒子計数用プレパラートで挟持するとともに、挟圧手段を用いて、人工食塊が徐々に平たくなるように挟圧することができるため、人工食塊に含まれる微粒子が破損することを防止できる。
【0033】
さらには、発熱手段によって人工食塊を加熱しながら挟圧することができるため、環境の温度によらずに、安定して人工食塊を薄く、均一に広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本実施形態における人工食塊圧延キットの構成を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す人工食塊圧延キットに含まれる微粒子計数用プレパラートの概要を示す模式図である。
図3図3は、図1に示す人工食塊圧延キットに含まれる人工食塊圧延装置の構成を示す概略図である。
図4図4は、微粒子計数用プレパラートを用いて評価用プレパラートを作成する流れを説明するための模式図である。
図5図5は、微粒子計数用プレパラートを用いて評価用プレパラートを作成する流れを説明するための模式図である。
図6図6は、微粒子計数用プレパラートを用いて評価用プレパラートを作成する流れを説明するための模式図である。
図7図7は、本実施形態における咀嚼機能評価システムの概要を説明するための模式図である。
図8図8は、本実施形態における保持具を説明するための模式図であって、図8(a)は、上面側から視た斜視図、図8(b)は、底面側から視た斜視図である。
図9図9は、図8の保持具を用いて評価用プレパラートを撮影する方法を説明するための模式図である。
図10図10は、実施例1において作製した評価用プレパラート20’(圧延した人工食塊70)の部分拡大写真である。
図11図11は、実施例2において作製した評価用プレパラート20’(圧延した人工食塊70)の部分拡大写真である。
図12図12は、比較例において作製した評価用プレパラート20’(圧延した人工食塊70)の部分拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1は、本実施形態における人工食塊圧延キットの構成を示す概略図、図2は、図1に示す人工食塊圧延キットに含まれる微粒子計数用プレパラートの概要を示す模式図、図3は、図1に示す人工食塊圧延キットに含まれる人工食塊圧延装置の構成を示す概略図である。
【0036】
図1に示すように本実施形態の人工食塊圧延キット10は、微粒子計数用プレパラート20と、人工食塊圧延装置30と、潤滑オイル40とを含む。
【0037】
微粒子計数用プレパラート20は、図2に示すように、透光性樹脂などの透光性材料からなる1枚の平板を所定の形状に成形することによりなる。このような透光性材料としては、例えば、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A-PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET-G)、軟質塩化ビニル樹脂(軟質PVC)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエステル樹脂(PEs)などを用いることができ、また、これらの樹脂により形成されたフィルムを積層した複合フィルムとすることもできる。
【0038】
図2(a)に示すように、微粒子計数用プレパラート20は、上板部22と、下板部24とからなる。
下板部24には、被験体である「球形微粒子を含有する人工食塊」を配置する目安となる中心枠24a及び外枠24bが設けられている。中心枠24a及び外枠24bの大きさは、人工食塊の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、1g~1.5gの人工食塊を用いる場合、中心枠24aは直径15mmの円形、外枠24bは1辺65mmの正方形とすることができる。
【0039】
また、本実施形態においては、中心枠24aを円形、外枠24bを正方形としているが、中心枠24a及び外枠24bの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、中心枠24aを方形、外枠24bを円形としても構わない。
【0040】
微粒子計数用プレパラート20の上板部22及び下板部24は、上述するように、透光性を有していることが求められるが、人工食塊をカメラによって撮影することを考慮すると、無色透明であることが好ましい。
【0041】
なお、上板部22及び下板部24の外径は、略同一であることが好ましい。このように成形することにより、図2(b)に示すように、綺麗に折りたたむことができ、人工食塊を均一に圧延しやすくなる。
【0042】
また、図2(a)に示すように、上板部22及び下板部24の境界部23には、図2(b)のように折りたたむ際に、折りやすくするため、脆弱加工がなされている。具体的には、所定間隔で切り込みを入れるようにしたり(ミシン目加工)、溝を入れることで境界部23の厚みを薄くしたりすることができる。
【0043】
また、微粒子計数用プレパラート20には、識別子26を設けることが好ましい。このような識別子26を設けることによって、後述する咀嚼機能評価システムにおいて、微粒子計数用プレパラート20の個体識別を行うことができる。これにより、咀嚼機能評価の不具合に繋がる微粒子計数用プレパラート20の使い回しなどを防止することができる。なお、本実施形態において、識別子26は、微粒子計数用プレパラート20の識別用文字列が含まれるQRコード(登録商標)を用いているが、これに限定されるものではなく、他の二次元コードやバーコード、NFC(Near Field Communication)タグなどのRFID(radio frequency identifier)などを利用することもできる。
【0044】
人工食塊圧延装置30は、図3に示すように、プレス板32と、挟圧手段34と、発熱手段36とを有する。
プレス板32は、微粒子計数用プレパラート20に比べて硬い硬質材料により形成された平板である。このような硬質材料としては、例えば、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、AS樹脂(SAN)、硬質塩化ビニル樹脂(硬質PVC)などを用いることができる。また、プレス板32は、後述する圧延作業時において、人工食塊の状態を確認できるようにするため、無色透明であることが好ましい。
【0045】
挟圧手段34は、後述するように、人工食塊を微粒子計数用プレパラート20に挟持し、さらに、プレス板32,32によって挟み込んだ状態で、このプレス板32,32によって人工食塊を挟圧する方向の力を付加する。このような挟圧手段34としては、例えば、いわゆるターンクリップや目玉クリップ、山形クリップ、もしくはバイスなどを用いることができる。
【0046】
発熱手段36は、後述するように、人工食塊を微粒子計数用プレパラート20に挟持した際に、人工食塊を加熱するためのものであり、例えば、フィルムヒーターや電熱線などを用いることができる。
【0047】
なお、発熱手段36は、制御装置38を有しており、制御装置38によって発熱手段36の発熱温度が制御される。なお、制御装置38には、不図示の電源が接続されており、発熱手段36に制御装置38を介して電流が流されることにより、発熱手段36が発熱するように構成される。発熱手段36の発熱温度は、人工食塊の基材の材料などにもよるが、45℃~60℃程度とすることが好ましく、特に50℃~55℃程度とすることがより好ましい。このような発熱温度とすることによって、人工食塊の微粒子に影響を与えることなく、基材のみを柔らかくすることができる。
【0048】
潤滑オイル40は、人工食塊に含まれる微粒子を溶かしてしまうなどの悪影響を与えないものであれば、特に限定されるものではなく、鉱物油であっても植物油であってもよい。
【0049】
このように構成される人工食塊圧延キット10を用いて、被験者が検査に用いた「球形微粒子を含有する人工食塊」を圧延することにより、圧延する際の微粒子の破損を防ぎ、正確に微粒子の計数を行うことができる微粒子画像を撮影することができる。
【0050】
なお、本実施形態において、「球形微粒子を含有する人工食塊」として、例えば、チューインガムに、カルナバワックスやシームレスカプセルなどの微粒子を所定数含有させた人工食塊を用いているが、微粒子の種類や人工食塊の基材の種類としては、特に限定されるものではない。また、微粒子の大きさとしては、特に限定されるものではないが、例えば、1g~1.5gの人工食塊を用いる場合、100μm~2mm程度とすることができる。なお、人工食塊に含有させる微粒子の数としては、特に限定されるものではないが、例えば、1g~1.5gの人工食塊であって微粒子の大きさを500μm程度とした場合、110個~130個程度とすることが好ましい。
【0051】
以下、このような本実施形態における人工食塊圧延キット10を用いて、人工食塊70を圧延し、人工食塊70に含まれる微粒子を計数する方法を説明する。
まず、被験者の口腔内を、歯磨きやうがいなどにより洗浄する。
【0052】
次いで、微粒子計数用プレパラート20の内面中央部の中心枠24a内に潤滑オイル40を塗布する。
その後、被験者に、人工食塊70を所定回数咀嚼してもらう。なお、被験者に咀嚼させる回数としては、特に限定されるものではないが、20回~30回程度が好ましい。咀嚼した人工食塊70を口腔内若しくは手によって丸める。
【0053】
丸めた人工食塊70を、図4(a)に示すように、微粒子計数用プレパラート20の内面中央部の中心枠24a内に載置し、微粒子計数用プレパラート20を閉じて挟持する。その状態で、図4(b)に示すように、人工食塊70を微粒子計数用プレパラート20の上から指などによって略円形になるように軽く押し広げる。
【0054】
次いで、図5に示すように、プレス板32,32によって微粒子計数用プレパラート20を挟み込み、発熱手段36によって加熱した状態で、挟圧手段34を用いて、プレス板32,32によって人工食塊を挟圧する方向の力を付加する。この状態で、所定時間だけ人工食塊を挟圧することによって、人工食塊が圧延される。なお、本実施形態では、図示するように、2つの挟圧手段34,34を用いているが、挟圧手段の数は、特に限定されるものではない。また、人工食塊を挟圧する時間は、人工食塊の大きさや硬さ、挟圧手段34の挟圧力の大きさなどに応じて適宜変更することが好ましい。
【0055】
本発明では、このように、微粒子計数用プレパラート20によって人工食塊70を挟持した状態で、発熱手段36によって人工食塊70を加熱しながら、挟圧手段34によって人工食塊70に対して均一に挟圧する方向の力が付加される。このため、従来のようにローラーで圧延させる場合と異なり、微粒子に直接的な力が付加されることがないため、微粒子の破損を防止することができる。さらに、発熱手段36によって、人工食塊70が加熱された状態で挟圧されることになるため、環境の温度によらず、安定して人工食塊70を薄く、均一に広げることができる。
【0056】
所定時間挟圧後、挟圧手段34,34及びプレス板32,32を取り外すことによって、図6に示すように、人工食塊70が挟圧された状態の微粒子計数用プレパラート20を得ることができる。
【0057】
このようにして得られた、人工食塊70が挟圧された状態の微粒子計数用プレパラート20(以下、単に「評価用プレパラート20’」とも呼ぶ。)を用いて、咀嚼機能評価システムによって、被験者の咀嚼機能の評価を行う。
【0058】
なお、本実施形態では、微粒子計数用プレパラート20の内面に潤滑オイル40を塗布しているが、潤滑オイル40を塗布せずとも、人工食塊70を薄く広げることは可能である。
【0059】
図7は、本実施形態における咀嚼機能評価システムの概要を説明するための模式図である。
図7に示すように、本実施形態の咀嚼機能評価システム100は、上述するような人工食塊圧延キット10と、被験者用評価装置としてのスマートフォン110を後述するように動作させる微粒子計数手段としてのプログラム120と、管理用サーバー130と、によって実現される。
【0060】
なお、被験者用評価装置としては、演算手段、記憶手段、識別子読取手段、入出力手段を備えたコンピュータシステムであればよく、スマートフォン110の代わりに、例えば、ノートパソコンなどを利用し、デジタルカメラなどの撮影手段で撮影した画像をノートパソコンで評価するようにしてもよい。
【0061】
管理用サーバー130は、利用可能な微粒子計数用プレパラートに割り振られた識別用文字列のデータベース132が記憶されている。
また、スマートフォン110と管理用サーバー130とは、例えば、インターネットなどのネットワーク140を介して接続されている。
【0062】
まず、被験者は、スマートフォン110にインストールされているプログラム120を起動するとともに、識別子読取手段であるスマートフォン110のカメラを用いて、微粒子計数用プレパラート20に設けられた識別子26であるQRコードを撮影する。なお、識別子26としてNFCタグを用いた場合には、識別子読取手段であるスマートフォン110のNFCリーダーを用いるように構成することができる。
【0063】
これにより、スマートフォン110は、識別子26に記録された識別用文字列を認識する。スマートフォン110は、識別用文字列を管理用サーバー130に送信する。管理用サーバー130は、データベース132から、受信した識別用文字列を検索し、存在した場合、すなわち、利用可能な場合には、管理用サーバー130は、利用許可データをスマートフォン110に送信する。一方で、データベース132に受信した識別用文字列が存在しない場合、すなわち、利用不可の場合には、管理用サーバー130は、利用不可データをスマートフォン110に送信する。
【0064】
スマートフォン110は、利用不可データを受信した場合には、入出力手段であるスマートフォン110のディスプレイに当該微粒子計数用プレパラート20が利用不能であることを表示し、動作を停止する。一方で、利用許可データを受信した場合には、以下の動作を続行する。
【0065】
ユーザーは、上述するように人工食塊圧延キット10を用いて、評価用プレパラート20’を作成する。次いで、ユーザーは、スマートフォン110のカメラによって、評価用プレパラート20’を撮影する。
【0066】
このとき、手ぶれなどによって発生するピンボケや画角中心ズレ(撮影範囲のズレ)などを防止するために、評価用プレパラート20’とスマートフォン110のカメラとの相対的位置を一定に保つ為の保持具80を用いることが好ましい。
【0067】
保持具80としては、例えば、図8に示すように、評価用プレパラート配置用窓82及び撮影用窓84を有する箱とすることができる。このような保持具80を用い、例えば、図9に示すように、机などの水平面状に評価用プレパラート20’を載置し、評価用プレパラート配置用窓82内に評価用プレパラート20’が収まるように、保持具80を重ねて載置する。そして、撮影用窓84にスマートフォン110のカメラを配置するように、保持具80の上にスマートフォン110を載置する。この状態で、スマートフォン110のカメラによって、評価用プレパラート20’の撮影を行うことによって、カメラと評価用プレパラート20’との距離を一定に保つことができるとともに、手ぶれなどを防止することができ、撮影した画像のピンボケや画角中心ズレなどを防ぎ、後述するような画像解析による微粒子の計数において悪影響が生じないようにすることができる。なお、このような保持具80は、撮影のために必要十分な光量を取り込むために、例えば、透光性材料を用いて形成したり、採光窓を設けたりすることが好ましい。
【0068】
スマートフォン110のカメラによる評価用プレパラート20’の撮影の際には、評価用プレパラート20’の上板部22側から撮影することが好ましい。
スマートフォン110は、このように撮影された評価用プレパラート20’の画像(以下、「評価用画像」と呼ぶ。)を解析することによって、人工食塊に残っている「微細に粉砕、すり潰されていない微粒子」の粒子数Rを計数する。
【0069】
なお、ここで、画像解析による粒子数Rの計数は、例えば、パターンマッチングやエッジ検出、ブロブ検知などを用いて行うことができる。
【0070】
咀嚼される前の人工食塊70に含まれる球形微粒子の総数をM、被験者が咀嚼した回数をnとすると、n回の咀嚼後に残った粒子の割合Nn(%)は、R×100/Mによって算出することができる。
【0071】
また、1回の咀嚼で残る粒子の割合N1(%)は、Nn/nによって算出することができる。これにより、被験者が1回の咀嚼によって破壊することができる粒子の割合(咀嚼効率値X)は、1-N1未満と定義することができる。
【0072】
スマートフォン110は、このように算出された咀嚼効率値Xをディスプレイ114に表示することで、被験者に自分の咀嚼効率値Xを知らせることができる。
【0073】
なお、スマートフォン110が利用許可データを受信した場合、スマートフォン110のディスプレイに、ユーザーが氏名、性別、年齢、生年月日などのユーザー情報を入力する画面を表示するようにしてもよい。入力されたユーザー情報及び咀嚼効率値Xは、管理用サーバー130に送信され、識別用文字列と関連付けて保存される。このように構成することによって、ユーザーが定期的に咀嚼能力の測定を行う場合に、咀嚼効率値Xの時間的変化を確認することができる。また、このように、ユーザー情報をスマートフォン110によって入力するように構成することで、ユーザー情報の保護を図ることができる。
【0074】
<実施例>
基材に対して1%重量のカルナバワックスの微粒子(806mg/1000個)を練和して1±0.04gに成形した人工食塊(概ね123個の微粒子を含む1gの人工食塊)を、口腔内で咀嚼せずに柔らかくした状態で丸めて、人工食塊圧延キット10を用いて評価用プレパラート20’を作製し、画像解析によって残留粒子数(微細に粉砕、すり潰されていない微粒子の数)を計数した。なお、室温は27℃であった。
【0075】
<実施例1>
人工食塊圧延キット10によって人工食塊70を挟圧する際に、微粒子計数用プレパラート20の内面に潤滑オイル40を塗布するとともに、発熱手段36によって人工食塊70を加熱しながら、評価用プレパラート20’を作製した。図10に、作製した評価用プレパラート20’(圧延した人工食塊70)の部分拡大写真を示す。
【0076】
圧延した人工食塊70は、縦32mm、横35mmの大きさに広がった。画像解析によって計数した残留粒子数は122個であった。
【0077】
人工食塊70を発熱手段36によって加熱しながら圧延することによって、人工食塊70を薄く広げることができた。また、潤滑オイル40を塗布したことにより、微粒子計数用プレパラート20が滑性を有し、微粒子に無理な圧力がかからず、人工食塊70の圧延の際に微粒子が破損することを防止できた。
【0078】
<実施例2>
人工食塊圧延キット10によって人工食塊70を挟圧する際に、微粒子計数用プレパラート20の内面に潤滑オイル40を塗布せずに、発熱手段36によって人工食塊70を加熱しながら、評価用プレパラート20’を作製した。図11に、作製した評価用プレパラート20’(圧延した人工食塊70)の部分拡大写真を示す。
【0079】
圧延した人工食塊70は、縦37mm、横34mmの大きさに広がった。画像解析によって計数した残留粒子数は91個であった。
【0080】
人工食塊70を発熱手段36によって加熱しながら圧延することによって、人工食塊70を薄く広げることができた。しかしながら、潤滑オイル40を塗布しなかったことにより、微粒子計数用プレパラート20の滑性が不足し、微粒子に割れが発生してしまっている。
【0081】
<比較例>
人工食塊圧延キット10によって人工食塊70を挟圧する際に、微粒子計数用プレパラート20の内面に潤滑オイル40を塗布せずに、かつ、発熱手段36を使用せずに人工食塊70を圧延し、評価用プレパラート20’を作製した。図12に、作製した評価用プレパラート20’(圧延した人工食塊70)の部分拡大写真を示す。
【0082】
圧延した人工食塊70は、縦30mm、横30mmの大きさに広がった。画像解析によって計数した残留粒子数は65個であった。
【0083】
人工食塊70を加熱しなかったため人工食塊70が十分に広がらず、微粒子が基材に隠れてしまって、画像解析によって計数できない残留粒子が存在した。また、潤滑オイル40を塗布しなかったことにより、微粒子計数用プレパラート20の滑性が不足し、微粒子に割れが発生してしまっている。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 人工食塊圧延キット
20 微粒子計数用プレパラート
20’ 評価用プレパラート
22 上板部
23 境界部
24 下板部
24a 中心枠
24b 外枠
26 識別子
30 人工食塊圧延装置
32 プレス板
34 挟圧手段
36 発熱手段
38 制御装置
40 潤滑オイル
70 人工食塊
80 保持具
82 評価用プレパラート配置用窓
84 撮影用窓
100 咀嚼機能評価システム
110 スマートフォン
114 ディスプレイ
120 プログラム
130 管理用サーバー
132 データベース
140 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12