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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027871
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】エレベータ装置および表示方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/02 20060101AFI20240222BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B66B3/02 N
B66B3/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131039
(22)【出願日】2022-08-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶泰
【テーマコード(参考)】
3F303
【Fターム(参考)】
3F303BA05
3F303CB24
3F303CB30
3F303CB31
3F303CB33
3F303DB11
3F303DC24
(57)【要約】
【課題】乗りかご内での立ち位置による階床情報の表示の見え難さを改善でき、特に、視覚障碍者の中でも弱視の利用者や難聴を患っている利用者にとっての利便性を向上し得るようにする。
【解決手段】複数の階床間を昇降運転される乗りかご15の内天井部分に設けられ、各種の案内情報や広告情報などを表示可能な階床表示器23と、かご内カメラ18からの映像に基づいて、乗りかご15の利用者が、弱視の視覚障碍者かどうかを認識する視覚障碍者判定部310 と、乗りかご15の着床時、視覚障碍者判定部310 によって弱視の視覚障碍者が認識されたことを条件に、階床表示器23で表示される情報を、当該弱視の視覚障碍者の目視による判読が可能な文字サイズとされた、前記乗りかご15が着床した階床の階床情報に切り替えるように制御する表示制御部312 と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階床間を昇降運転される乗りかごの内天井部分に設けられ、各種の情報を表示可能な表示部と、
前記乗りかごの利用者が、弱視の視覚障碍者かどうかを認識する認識部と、
前記乗りかごの着床時、前記認識部によって弱視の視覚障碍者が認識されたことを条件に、前記表示部で表示される情報を、当該弱視の視覚障碍者の目視による判読が可能な文字サイズとされた、前記乗りかごが着床した階床の階床情報に切り替えるように制御する制御部と、
を備えることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記表示部で表示される前記階床情報の大きさを、視覚障害等級1級の判定基準である視力0.01の利用者が確認可能なサイズ以上とすることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記表示部で表示される前記階床情報の態様を、前記弱視の視覚障碍者の前記乗りかご内での立ち位置に応じて制御可能としたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記認識部は、前記乗りかご内に設けられた監視用カメラにより撮影された前記利用者が白杖を所持するか否かにより、当該利用者が弱視の視覚障碍者であるかどうかを認識することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記認識部は、前記乗りかご内に設けられた点字表記に利用者が接触したことがセンサによって検知されたか否かにより、当該利用者が弱視の視覚障碍者であるかどうかを認識することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記乗りかごの天井照明としても兼用可能なディスプレイ装置によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
前記乗りかご内には、前記表示部とは別に、各種の情報を表示するモニタ装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のエレベータ装置の表示方法であって、
複数の階床間を昇降運転される乗りかごの着床時、当該乗りかごの利用者が弱視の視覚障碍者であると認識部によって認識されたことを条件に、前記乗りかごの内天井部分に設けられ、各種の情報を表示可能な表示部で表示される情報を、当該弱視の視覚障碍者の目視による判読が可能な文字サイズとされた、前記乗りかごが着床した階床の階床情報に切り替えるように、制御部によって制御することを特徴とするエレベータ装置の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ装置および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚障害を持つエレベータの利用者向けの技術として、従来より、点字表記が知られている。ところが、この点字表記は、主に、全盲などの重度の視覚障害を持った利用者向けのものであって、弱視などの視覚障碍者の大半は点字を読むことができないという現実がある。
【0003】
一方で、現在は、各階床への到着などを音声により案内するようにしたエレベータもある。しかし、視覚障碍者における高齢者の多くは難聴を併発している傾向が強く、音声案内さえあれば視覚障碍者に対する配慮として十分であるとは限らない。
【0004】
即ち、点字表記や音声案内だけでは、視覚障害を持ったエレベータの利用者向けの技術としては不十分であった。
【0005】
また、昨今のエレベータにおいては、表示モニタなどを用いて各階床の到着案内(着床階表示)などを行うようにしたものとして、乗りかご内の利用者の立ち位置によらず、表示の内容が確認しやすいように配慮された位置表示装置も提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1に開示のエレベータの位置表示装置は、乗りかご内の天井に設置された回動自在な表示器により、着床階表示の全周囲方向からの視認性を確保できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-264870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来は、基本的に健常者(一般利用者)のための着床階表示であり、仮に視認性を確保できるようにしたところで、例えば、視覚障碍者の大半を占める弱視の利用者にとっては表示内容を確認し難いという欠点があった。
【0009】
本発明の実施形態は、乗りかご内での立ち位置による階床情報の表示の見え難さを改善でき、特に、視覚障碍者の中でも弱視の利用者や難聴を患っている利用者にとっての利便性を向上し得るエレベータ装置および表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、複数の階床間を昇降運転される乗りかごの内天井部分に設けられ、各種の情報を表示可能な表示部と、前記乗りかごの利用者が、弱視の視覚障碍者かどうかを認識する認識部と、前記乗りかごの着床時、前記認識部によって弱視の視覚障碍者が認識されたことを条件に、前記表示部で表示される情報を、当該弱視の視覚障碍者の目視による判読が可能な文字サイズとされた、前記乗りかごが着床した階床の階床情報に切り替えるように制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の実施形態は、エレベータ装置の表示方法であって、複数の階床間を昇降運転される乗りかごの着床時、当該乗りかごの利用者が弱視の視覚障碍者であると認識部によって認識されたことを条件に、前記乗りかごの内天井部分に設けられ、各種の情報を表示可能な表示部で表示される情報を、当該弱視の視覚障碍者の目視による判読が可能な文字サイズとされた、前記乗りかごが着床した階床の階床情報に切り替えるように、制御部によって制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の第1の形態に係るエレベータ装置の乗りかごを例示するものであって、(a)は、乗りかごの内部を示す概略図、(b)は、(a)中の天井モニタでの表示例を示す拡大図。
図2】エレベータ装置の構成例を示す概略図。
図3】エレベータ装置の制御系を例示するブロック図。
図4】エレベータ装置の天井モニタでの表示の一例を示す図。
図5】エレベータ装置の天井モニタでの表示方法を説明するフローチャート。
図6】本実施の第2の形態に係るエレベータ装置の乗りかごの内部を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態に係るエレベータ装置および表示方法について、図面を参照して説明する。
【0014】
第1の形態
図1(a)は、第1の形態に係るエレベータ1 の乗りかご(かご室)15の内部を示す概略図であり、図1(b)は、乗りかご15内に配置された、表示部としての階床表示器(天井モニタ)23での表示例を示す拡大図である。
【0015】
ここでは、乗りかご15の内部を、かご扉17が設けられた正面に対向する背面側の壁を透過させた状態で示している。
【0016】
乗りかご15内には、例えば図1(a)に示すように、正面のかご扉17の一方の内側壁部分にかご操作盤パネル19が配置されている。かご操作盤パネル19には、例えば図3に示すように、行先階ボタン191 、着床階(到着階)に対応する階床情報などを音声により案内するためのスピーカなどからなるアナウンス装置192 、乗りかご15の乗客である利用者7 が点字表記部194 に接触したことを検知する人感センサ(接触検知センサ)194S、および、図示省略の扉開閉用ボタンなどが設けられている。
【0017】
図1(a)において、かご操作盤パネル19の上方には、館内などの各種の案内情報や広告情報などを表示するとともに、着床時に、乗りかご15の着床階を表示により案内するための表示モニタ(モニタ装置)193 が配設されている。表示モニタ193 としては、視認性を確保するために、例えば、乗りかご15の床面から1900mm以上の高さの位置(場所)に設けるのが望ましい。
【0018】
一方、乗りかご15の天井面(内天井部分)には、天井照明24や監視用のかご内カメラ18のほか、例えば図1(b)に示すように、天井モニタとしての階床表示器23が配設されている。この階床表示器23は、各種の案内情報や広告情報などを表示するとともに、着床時に、乗りかご15の到着階を表示により案内するためのものであって、例えば、天井面のほぼ中央の位置に配設されて、乗りかご15内のどの位置からも画面上の表示の内容を確認し易いように良好な視認性が確保されている。
【0019】
つまり、かご操作盤パネル19の近傍に他の利用者7 が立っている場合や、乗りかご15内が多くの利用者7 によって混雑し、表示モニタ193 に対する視線が遮られるような状況下においても、階床表示器23は、画面上の階床表示文字を目視により容易に確認できるように配慮されている。
【0020】
しかも、本実施の形態においては、階床表示器23で表示される階床表示文字のサイズを、各種の案内情報や広告情報などを表示する場合よりも大きくすることによって、視覚障碍者に対する有用性が考慮されている。
【0021】
即ち、階床表示器23は、詳細については後述するが、例えば、エレベータ1 の利用者7 として、当該乗りかご15内に視覚障碍者、特に、弱視の利用者が乗車している場合には、階床表示文字を拡大させて表示することが可能となっている。
【0022】
ここで、拡大表示される階床表示文字の大きさとしては、例えば、視覚障害等級1級の判定基準である視力0.01の利用者が確認可能なサイズ以上とすることが望ましい。つまり、一般的な身長の成人の視線距離で換算して、視力が0.01相当の利用者7 が乗りかご15内の壁際に立って階床表示器23の表示を視認した場合にも、その表示の内容を容易に判断できるサイズ以上とされる。
【0023】
例えば、階床表示器23で拡大表示される階床表示文字のサイズは、下記式(1)または式(2)により定義される。
【0024】
文字サイズ幅(b)/視線距離(a)≧75/500 … (1)
この式(1)では、視力0.01の利用者7 の床面からの視線位置を1500mmとし、その視線位置から階床表示器23までの視線距離(a)を500mmとした場合に、縦・横の文字サイズ幅(b)が75mm以上となるように規定される。
【0025】
文字サイズ幅(b)/視線距離(a)≧225/1500 … (2)
この式(2)では、視力0.01の利用者7 の、その視線位置から階床表示器23までの視線距離(a)を1500mmとした場合に、縦・横の文字サイズ幅(b)が225mm以上となるように規定される。
【0026】
なお、階床表示器23で拡大表示させる階床表示文字の態様としては、例えば、階床表示文字の画面上での位置や向き、角度などを、弱視の利用者7 の乗りかご15内での立ち位置などに応じて制御可能としたり、点滅や反転などさせたりすることも可能である。
【0027】
次に、本実施の形態に係るエレベータ1 について、簡単に説明する。
【0028】
本エレベータ1 は、例えば図2に示すように、商業施設などの建屋(館)内に設置されるものであって、ここではn階建てのビルに設置した場合を例示している。即ち、本実施の形態のエレベータ1 は、主に、当ビルの利用者7 が利用する一般的なエレベータ装置である。
【0029】
図2において、エレベータ1 は、昇降路11の上部の機械室12に配置された巻上機13にメインロープ14が掛け渡され、該ロープ14の一端には乗りかご15が、該ロープ14の他端には釣り合い錘16が、それぞれつるべ式に吊り下げられている。
【0030】
乗りかご15は、各階のホール扉22(22a ,22b ,…,22n )に対向するかご扉17を備えるとともに、例えば、かご扉17の近傍には、利用者7 の乗降などを監視するためのかご内カメラ18が設けられている。かご内カメラ18は、乗りかご15の天井面に取り付けられるかご内監視カメラなどを流用することも可能である。
【0031】
また、乗りかご15内には、例えば図3に示すような、かご扉17が設けられた乗降口の近傍に、利用者7 が行先階を設定するかご呼び操作などを行うための、かご操作盤パネル19が設けられている。
【0032】
図2に示すように、機械室12には、巻上機13のほか、図示省略のテールコードを介して、乗りかご15に接続されたエレベータ制御装置30などが配置されている。
【0033】
一方、各階床には、乗り場20(20a ,20b ,…,20n )ごとにホール扉22(22a ,22b ,…,22n )が設けられている。各ホール扉22a ,22b ,…,22n の近傍には、利用者7 が行先方向を設定する乗り場呼び操作を行うための乗り場操作盤21(21a ,21b ,…,21n )や、通知ランプ(図示省略)が設けられている。乗り場操作盤21a ,21b ,…,21n は、図示していないが、乗り場呼び登録ボタンや、利用者7 による乗り場呼び登録ボタンの操作をエレベータ制御装置30に伝え、後述する呼び登録部201 に対する乗り場呼び情報の登録を行うための操作盤無線通信部などを備えている。
【0034】
なお、乗り場呼び登録ボタンの操作によるエレベータ制御装置30との通信は、操作盤無線通信部に代えて、有線により行うようにしても良い。
【0035】
図3は、エレベータ1 の制御系(エレベータ制御装置30)の構成例を示すブロック図である。
【0036】
このエレベータ制御装置30は、例えば図3に示すように、登録部200 としての、利用者7 による呼び情報の登録のための呼び登録部201 や、着床階表示のための文字データや拡大表示用の文字データなどが予め登録される階床表示文字登録部202 などを備えている。
【0037】
階床表示文字登録部202 としては、例えば、着床階を表示させる際に、その階床表示文字の表示画面上での位置や角度や向きなどが変化するように、階床表示文字ごとに多様な文字パターンを予め記憶するようにしても良い。
【0038】
もしくは、階床表示文字登録部202 には、基本となる標準サイズの文字パターンを階床表示文字ごとに1種ずつ予め記憶させておき、後述する表示制御部(制御部)312 でのソフト処理によって、階床表示文字の画面上での大きさや位置、角度、向きなどが変化するように制御することも可能である。
【0039】
また、エレベータ制御装置30は、例えば、当該エレベータ1 の乗りかご15を制御する制御部130 を備えている。制御部130 は、視覚障碍者として、特に、弱視の利用者7 かどうかを判定する視覚障碍者判定部(認識部)310 、乗りかご15の運転状況などを管理する運転状況管理部311 、および、表示モニタ193 や階床表示器23などでの表示を制御する表示制御部312 などから構成されている。
【0040】
視覚障碍者判定部310 は、例えば、かご内カメラ18により撮影された映像に基づいて利用者7 が白杖WSを所持していることが認識された場合や、かご操作盤パネル19の行先階ボタン191 などに付された点字表記部194 への利用者7 の接触が人感センサ194Sにより検知された場合に、当該利用者7 は弱視の可能性が高い視覚障碍者であると判定する。
【0041】
なお、本実施の形態においては、利用者7 が白杖WSを所持しているか否か、および、利用者7 が点字表記部194 の点字を読み取ったか否かにより、その利用者7 が弱視の視覚障碍者かどうかを判定するようにしたが、これに限らず、例えば弱視の視覚障碍者が携行する証明書(障碍者パス)に発信器や通信器を設け、通信により弱視の利用者7 を特定するようにしても良い。
【0042】
また、この視覚障碍者判定部310 では、例えば、かご内カメラ18により撮影された映像に基づいて、利用者7 の立ち位置やどちら向きで立っているかなども判定可能とされている。
【0043】
運転状況管理部311 は、ホール扉22などの開閉動作や乗りかご15の運転状況などを管理するもので、例えば、呼び登録部201 に登録された呼び情報に基づいて、乗りかご15を昇降させる巻上機13などを制御して平常時には通常運転させるとともに、地震発生時などの異常時には管制運転させるようになっている。
【0044】
表示制御部312 は、表示モニタ193 および階床表示器23に対し、例えば、外部より提供される最新の案内情報や広告情報などを表示させるものであって、着床時には、乗りかご15の到着階(階床表示文字)を表示させるように制御するものである。
【0045】
また、この表示制御部312 は、視覚障碍者判定部310 によって乗りかご15内に弱視の利用者7 が確認されたことを条件に、例えば、階床表示器23の画面上に表示させる到着階に応じた着床階表示の文字サイズ幅が規定の75mm以上に拡大されるように制御する。
【0046】
さらに、この表示制御部312 は、詳細については後述するが、視覚障碍者判定部310 によって確認された乗りかご15内での弱視の利用者7 の立ち位置や、どちら向きで立っているかなどに応じて、階床表示器23の画面上での着床階表示の位置や、向き、角度などを変化させることも可能である(例えば、図4参照)。
【0047】
なお、着床時以外の昇降動作時においては、階床表示器23での、各種の案内情報や広告情報などの表示をオフさせるようにすることも可能である。
【0048】
ここで、表示制御部312 による、階床表示器23での着床階表示について、例えば到着階を「4階」とした場合を例に説明する。
【0049】
例えば、表示制御部312 は、階床表示文字登録部202 に予め記憶された着床階(4階)に対応する多様な文字パターンのうち、向きの異なる4種の文字パターンを順に読み出し、その4種の文字パターンを用いて、一定時間ごとに階床表示器23での表示を切り替えさせる。
【0050】
これにより、例えば図4中に矢印で示すように、階床表示器23にて拡大表示される着床階表示の向きを、表示モニタ193 側を正面とする「正位置」、「左横向き」、「逆位置」、「右横向き」の4段階により移動(回転)させることが可能となる。その結果、弱視の利用者7 が乗りかご15内のどこに乗車しているかによらず、他の利用者7 に視線を遮られることもなく、その表示の内容を、より容易に確認可能となる。
【0051】
図5は、上記したエレベータ1 の階床表示器23での着床階表示に係る処理の流れを説明するために示すフローチャートである。
【0052】
まずは、重量センサ(図示省略)などにより、乗りかご15内への利用者7 の搭乗が確認されると(ステップST01のYES )、エレベータ制御装置30では、制御部130 の視覚障碍者判定部310 において、例えばかご内カメラ18からの映像に基づいて、白杖WSの有無により、当該利用者7 が弱視の利用者かどうかが認識される。または、例えば人感センサ194Sの出力に基づいて、点字表記部194 ヘの接触(点字の読み取り)により、当該利用者7 が弱視の利用者かどうかが認識される(ステップST02)。
【0053】
弱視の利用者でないと認識された場合(ステップST02のNO)、例えば、乗りかご15内の表示モニタ193 や階床表示器23によって、各種の案内情報や広告情報などの表示が行われる(ステップST07)。
【0054】
一方、弱視の利用者であると認識された場合において(ステップST02のYES )、例えば、登録部200 の呼び登録部201 に登録された行先階に応じた階床への乗りかご15の着床が近づいたとする(ステップST03のYES )。
【0055】
すると、表示制御部312 によって、適宜、階床表示文字登録部202 に予め記憶された着床階に対応する文字パターンが読み出され(ステップST04)、階床表示器23の画面上での表示が着床階の表示に切り替えられる(ステップST05)。
【0056】
その際、階床表示器23の画面上に拡大表示される階床表示文字の位置を移動させたり、向きを変えたり、角度を変化させたり、反転させたり、点滅などさせることも可能である。
【0057】
これにより、たとえ利用者7 が弱視の視覚障碍者であるとしても、乗りかご15内のどこに乗車しているかによらず、しかも、他の利用者7 に視線を遮られることもなく、その表示から到着階をより容易に確認可能となる。
【0058】
また、弱視の視覚障碍者であって、しかも、難聴を患っており、アナウンス装置192 による到着階の音声案内を聞き取ることが難しい利用者7 や、たとえ健常者であっても、スマートフォンやおしゃべりなどに夢中で、到着階の音声案内を聞き逃した利用者7 などにとっても、天井面での着床階のモニタ表示は有用である。
【0059】
上記の、階床表示器23による着床階の表示は、例えば、かご扉17が閉じられるまで繰り返された後(ステップST06のNO,ST05)、再度、各種の案内情報や広告情報などに切り替えられる(ステップST06のYES ,ST07)。
【0060】
上述したように、本実施の形態によれば、乗りかご15内での利用者7 の立ち位置による階床表示文字の見え難さを改善でき、特に、視覚障碍者の中でも弱視の利用者7 や難聴を患っている利用者7 にとっての利便性を格段に向上し得る。
【0061】
即ち、乗りかご15の内天井部分に階床表示器23を配置するとともに、着床時の着床階表示として、該階床表示器23に弱視の利用者7 にも容易に判読可能なサイズの階床表示文字を優先的に表示させるようにしている。
【0062】
これにより、弱視の利用者7 が仮に難聴を患っており、アナウンス装置192 による到着階の音声案内を聞き取ることが難しい場合にも、他の利用者7 に視線を遮られることもなく、その表示から到着階を確実に把握することが可能となる。
【0063】
したがって、乗りかご15内での立ち位置による着床階表示の見え難さを解消でき、どの立ち位置からも階床表示文字を目視により認識可能となるなど、利用者7 の利便性を格段に向上し得るものである。
【0064】
第2の形態
図6は、第2の形態に係るエレベータ1 の乗りかご15の内部を例示する概略図であって、例えば、天井モニタとしての階床表示器23a を、天井照明としても兼用可能な、該天井照明と同程度の照度を有するディスプレイ装置により構成するようにした場合の例である。
【0065】
ここでは、第1の形態と同一部分には同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0066】
この第2の形態によれば、上述した第1の形態の場合と同様に利用者7 の利便性を向上できるとともに、さらには天井照明との一体化により、乗りかご15の内装デザインの簡略化が可能となる。
【0067】
乗りかご15には、例えば図6に示すように、天井モニタとは別に、各種の案内情報や広告情報などを表示するとともに、着床時の着床階表示を着床表示文字により拡大表示することが可能な、壁面モニタとしての階床表示器(モニタ装置)23b を設けることもできる。
【0068】
壁面モニタとしての階床表示器23b は、例えば、正面の壁面を除く、他の壁面において、それぞれ乗りかご15の床面から1900mm以上の高さの位置(場所)に設けるのが望ましい。
【0069】
このような構成によれば、着床階表示のためのモニタ数の増加に伴い、体勢を変えたりすることなく、利用者7 による階床表示文字の目視が容易で、かつ、より確実となり、さらなる利便性の向上が図れるようになるものである。
【0070】
なお、上記した各実施の形態においては、利用者7 の立ち位置などに応じて、拡大表示される階床表示文字のサイズを自動的に調整できるように構成することも可能であるし、表示画面上において、着床表示文字を移動させながら位置や大きさ、向きを変えるように制御することも容易に可能である。
【0071】
また、階床表示器23,23a ,23b においては、各種の案内情報や広告情報なども、弱視の利用者7 が判読し易いように拡大表示させるようにしても良い。
【0072】
また、緊急時などにおいては、避難情報や災害情報などを拡大表示させるようにしても良い。
【0073】
さらに、ビル内に設けられたエレベータ1 に限らず、例えば、ビル外に設けられたエレベータ装置にも適用可能である。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 …エレベータ、7 …利用者、15…乗りかご、18…かご内カメラ(監視用カメラ)、19…かご操作盤パネル、23,23a …階床表示器(表示部/天井モニタ)、30…エレベータ制御装置、192 …アナウンス装置、193 …表示モニタ、194 …点字表記部、194S…人感センサ、202 …階床表示文字登録部、310 …視覚障碍者判定部(認識部)、312 …表示制御部(制御部)、WS…白杖。
図1
図2
図3
図4
図5
図6