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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027899
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/52 20060101AFI20240222BHJP
   B29D 30/30 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B29D30/52
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131075
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉原 優史
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP11
4F215AR09
4F215VA11
4F215VD03
4F215VK32
4F215VL02
4F215VL32
4F215VM02
4F215VM04
4F215VM06
4F215VP17
4F215VP28
4F215VQ01
4F215VR03
(57)【要約】
【課題】ユニフォミティへの悪影響の小さいタイヤ製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ製造方法は、押し出し機から押し出された長尺ゴム部材1を円筒状の巻き取り筒12に巻き取る工程と、巻き取り筒12から長尺ゴム部材1を引き出して切断し、タイヤ1本分のトレッドとなるトレッド用ゴム部材2を切り出す工程と、切り出されたトレッド用ゴム部材2をドラム34に巻き付けてリング状トレッド3とする工程と、を含む空気入りタイヤの製造方法において、巻き取り筒12として、長尺ゴム部材1の巻き付く部分である本体18の直径がドラム34の直径以上のものを使用することを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し出し機から押し出された長尺ゴム部材を巻き取り筒に巻き取る工程と、
前記巻き取り筒から前記長尺ゴム部材を引き出して切断し、タイヤのトレッドとなるトレッド用ゴム部材を切り出す工程と、
切り出された前記トレッド用ゴム部材をドラムに巻き付けてリング状トレッドとする工程と、
を含む空気入りタイヤの製造方法において、
前記巻き取り筒として、前記長尺ゴム部材の巻き付く部分である円筒状の本体を有し、前記本体の直径が前記ドラムの直径以上のものを使用することを特徴とする、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記巻き取り筒に巻き取る前記長尺ゴム部材の長さが、10~16個の前記トレッド用ゴム部材の長さである、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
超音波カッターを用いて前記長尺ゴム部材を切断する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記長尺ゴム部材を切断するときに、前記長尺ゴム部材の底面と切断面とのなす角度を25±4°とする、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのトレッドは、トレッド用ゴム部材がリング状に成型されることにより形成される。トレッド用ゴム部材の製造の際、まず、押し出し機から長尺ゴム部材が押し出される。長尺ゴム部材は、空気入りタイヤのトレッドに近い幅及び厚みを有すると共に、押し出し方向に長いゴム部材である。押し出された長尺ゴム部材は、リールやボビン等と呼ばれる巻き取り筒に巻き取られる(例えば特許文献1参照)。巻き取り筒は直径の小さいものである。その巻き取り筒に、トレッド用ゴム部材数十個分の長さの長尺ゴム部材が巻き取られる。
【0003】
巻き取り筒に巻き取られた長尺ゴム部材は、ドラムのある成型場所へ搬送される。そして、成型場所において、長尺ゴム部材が巻き取り筒から引き出されて切断され、タイヤ1本分の長さのトレッド用ゴム部材が切り出される。切り出されたトレッド用ゴム部材はドラムに巻き付けられてリング状に成型される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-34936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の方法では、上記のようにトレッド用ゴム部材数十個分という非常に長い長尺ゴム部材が、直径の小さな巻き取り筒に何重にも巻き付けられるため、長尺ゴム部材が、巻き取られた状態において内径側になる部分ほど潰れてしまっていた。その結果、トレッド用ゴム部材の前端と後端で厚みが一致せず、ドラム上でのトレッド用ゴム部材の前端と後端の接合部分に段差が生じていた。このような段差は、空気入りタイヤのユニフォミティに悪影響を及ぼしていた。
【0006】
そこで本発明は、そのようなユニフォミティへの悪影響の小さい空気入りタイヤの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0008】
[1]押し出し機から押し出された長尺ゴム部材を巻き取り筒に巻き取る工程と、前記巻き取り筒から前記長尺ゴム部材を引き出して切断し、タイヤのトレッドとなるトレッド用ゴム部材を切り出す工程と、切り出された前記トレッド用ゴム部材をドラムに巻き付けてリング状トレッドとする工程と、を含む空気入りタイヤの製造方法において、前記巻き取り筒として、前記長尺ゴム部材の巻き付く部分である円筒状の本体を有し、前記本体の直径が前記ドラムの直径以上のものを使用することを特徴とする、空気入りタイヤの製造方法。
【0009】
[2]前記巻き取り筒に巻き取る前記長尺ゴム部材の長さが、10~16個の前記トレッド用ゴム部材の長さである、[1]に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【0010】
[3]超音波カッターを用いて前記長尺ゴム部材を切断する、[1]又は[2]に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【0011】
[4]前記長尺ゴム部材を切断するときに、前記長尺ゴム部材の底面と切断面とのなす角度を25±4°とする、[1]~[3]のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
上記の製造方法は、完成する空気入りタイヤのユニフォミティへの悪影響が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】長尺ゴム部材を斜め上から見た斜視図。
図2】(a)はトレッド用ゴム部材を斜め上から見た斜視図。(b)はトレッド用ゴム部材を横から見た図。(c)は(b)の切断面近傍の拡大図。
図3】リング状トレッドを斜め横から見た斜視図。
図4】長尺ゴム部材の巻き取り場所を横から見た図。
図5】巻き取り筒を図4の矢印A方向から見た図。
図6】成型場所のリング状トレッド製造装置を横から見た図。
図7】リング状トレッド製造装置のブロック図。
図8】長尺ゴム部材の巻き取りの様子を示す図。
図9】リング状トレッド製造装置を横から見た図。長尺ゴム部材の切断時の図。
図10】切断装置の一部を上から見た図。長尺ゴム部材の切断時の図。
図11】切断装置の一部を横から見た図。長尺ゴム部材の切断時の図。
図12】リング状トレッド製造装置を横から見た図。トレッド用ゴム部材の加熱時の図。
図13】リング状トレッド製造装置を横から見た図。トレッド用ゴム部材のドラムへの巻き付け時の図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0015】
本実施形態は、長尺ゴム部材1(図1参照)をその長手方向の複数個所で切断して複数のトレッド用ゴム部材2(図2参照)とし、それぞれのトレッド用ゴム部材2をリング状のリング状トレッド3(図3参照)とする方法に関する。
【0016】
ここで、長尺ゴム部材1は、一方向へ長いゴム部材である。この「一方向」が長尺ゴム部材1の長手方向である。長尺ゴム部材1は、最終的に完成する空気入りタイヤ(以下単に「タイヤ」とする)におけるトレッドに近い幅及び厚みを有している。
【0017】
また、トレッド用ゴム部材2は、タイヤ1本分のトレッドとなるゴム部材である。トレッド用ゴム部材2の長手方向は長尺ゴム部材1の長手方向と一致する。トレッド用ゴム部材2の長手方向の長さは、最終的に完成するタイヤにおけるトレッドのタイヤ周方向の長さとほぼ一致する。トレッド用ゴム部材2は、長尺ゴム部材1から切り出されたものであるため、長尺ゴム部材1と同じ幅及び厚みを有している。トレッド用ゴム部材2の底面2aは、もともと長尺ゴム部材1の底面1a(図11参照)であった面である。トレッド用ゴム部材2の前端及び後端は、長尺ゴム部材1を切断したときの切断面2bである。この切断面2bは底面2aに対して傾斜している。
【0018】
なお、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の「幅」及び「厚み」は、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の長手方向に直交する断面において測定される長さのことである。「幅」は、底面1a、2aの横方向の長さである。「厚み」は、底面1a、2aに直交する方向の長さである。また、「横方向」とは、上から見て長手方向に直交する方向のことである。図1及び図2に「長手方向」及び「横方向」を示す。
【0019】
また、リング状トレッド3は、トレッド用ゴム部材2の前端と後端が接合されてリング状となったゴム部材である。トレッド用ゴム部材2の底面2aがリング状トレッド3の内面となる。なお、「前端」は、トレッド用ゴム部材2の長手方向両端のうち、後述するようにトレッド用ゴム部材2がドラム34に巻き付けられるときに先にドラム34に到達する方である。
【0020】
図4図7に本実施形態のタイヤ製造装置を示す。タイヤ製造装置は、離れた2つの場所である、長尺ゴム部材1の巻き取り場所(図4)と、リング状トレッド3の成型場所(図6)とに配置されている。長尺ゴム部材1の巻き取り場所は、長尺ゴム部材1を巻き取り筒12に巻き取る場所である。リング状トレッド3の成型場所は、長尺ゴム部材1からリング状トレッド3を製造する場所である。
【0021】
図4に示す長尺ゴム部材1の巻き取り場所には、長尺ゴム部材1を押し出す押し出し機11が配置されている。押し出し機11は、口金11aから断面形状一定のゴムを押し出す既知の構造のものである。この押し出し機11から長尺ゴム部材1が押し出される。押し出し機11からの押し出し方向が、長尺ゴム部材1の長手方向となる。
【0022】
押し出し機11から長尺ゴム部材1が押し出されるとき、押し出し機11の前に巻き取り筒12が配置される。図5に示すように、巻き取り筒12は、円筒状の本体18と、本体18の軸方向両側に設けられたフランジ19とを有している。本体18は長尺ゴム部材1が巻き付く部分である。本体18の直径は、後述するドラム34(図6参照)の直径以上である。また、フランジ19の直径は、本体18の直径よりも大きい。なお、巻き取り筒12の本体18の直径は、実際に長尺ゴム部材1が接触する面において測定される直径である。
【0023】
図4に示すように、巻き取り筒12は台車13に載っている。台車13は、下フレーム14と、下フレーム14から上に向かって立ち上がった上フレーム15と、下フレーム14の下に取り付けられた車輪16と、上フレーム15に設けられた回転軸17とを有している。
【0024】
巻き取り筒12は、台車13の回転軸17に支持されている。それにより、巻き取り筒12は、台車13に載った状態で、回転軸17を中心に回転可能となっている。巻き取り筒12は回転しながら長尺ゴム部材1をロール状に巻き取る。また、上記の通り台車13には車輪16が付いるため、巻き取り筒12は台車13に載ったままで移動できる。
【0025】
図6に示すリング状トレッド3の成型場所には、リング状トレッド製造装置40が配置されている。リング状トレッド製造装置40は、切断装置31、第1コンベア32、第2コンベア33及びドラム34が、この順で配置されて構成されている。切断装置31は長尺ゴム部材1を切断してトレッド用ゴム部材2とする装置である。第1コンベア32及び第2コンベア33は、切断装置31において切り出されたトレッド用ゴム部材2を、ドラム34へ向かって搬送する装置である。ドラム34は、トレッド用ゴム部材2が巻き付けられリング状トレッド3とされる装置である。
【0026】
図6において、切断装置31側が物の流れの上流側で、ドラム34側が物の流れの下流側である。上流側から下流側への方向が、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の搬送方向である。長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の搬送方向は、それらの長手方向と一致する。
【0027】
切断装置31より上流側の場所は、巻き取り筒12を載せた台車13が配置される場所である。巻き取り筒12から引き出された長尺ゴム部材1が、切断装置31へ送られる。
【0028】
切断装置31は、テーブル30及びテーブル30上の構造物からなる。テーブル30上には、2つの受け部材35が搬送方向に並べて設けられている。長尺ゴム部材1を切断するための刃37は、2つの受け部材35の間に設けられている。また、2つの受け部材35より上において上昇及び下降する押さえ部材36が設けられている。押さえ部材36は、下降して受け部材35との間に長尺ゴム部材1を挟むことにより、長尺ゴム部材1を押さえ付ける。
【0029】
2つの押さえ部材36が長尺ゴム部材1を押さえ付けた状態で、刃37が長尺ゴム部材1の横方向の一方から他方へ移動して長尺ゴム部材1を切断する(図10参照)。刃37の移動方向は横方向である。
【0030】
ここで使用される刃37は、超音波カッターの刃である。超音波カッターは、刃37、振動子、圧電素子、発振器等からなる既知の構成のものである。圧電素子が組み込まれた振動子に刃37が取り付けられている。発振器が交流電圧を圧電素子に印加することで、振動子及び刃37が超音波領域の振動数で振動する。
【0031】
刃37は、長尺ゴム部材1の底面1aに対して傾斜している(図11参照)。そのため、刃37によって切断された切断面1b、2bは、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の底面1a、2aに対して傾斜した面となる。長尺ゴム部材1の底面1aに対する刃37の傾斜角度θは、25±4°である。そのため、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2において、底面1a、2aに対する切断面1b、2bの傾斜角度θは25±4°となる。なお、長尺ゴム部材1の底面1aは、長尺ゴム部材1の切断時には、長尺ゴム部材1が横たわる面である2つの受け部材35を結ぶ面と一致する。
【0032】
テーブル30上において、受け部材35のない場所には、複数のローラ38が搬送方向に並べて設けられている。フィードローラのような駆動装置(不図示)が駆動すると、長尺ゴム部材1がローラ38上を上流側から下流側へ搬送される。
【0033】
第1コンベア32及び第2コンベア33はそれぞれトレッド用ゴム部材2を下流側へ搬送するコンベアである。第2コンベア33より上の場所に、加熱装置である第1ヒータ41が設けられている。また、第1コンベア32と第2コンベア33の間には、別の加熱装置である第2ヒータ42が設けられている。第1ヒータ41から第2ヒータ42までの搬送方向の長さは、トレッド用ゴム部材2の長手方向の長さとほぼ一致する。第2コンベア33における上流側の場所にトレッド用ゴム部材2が停止したとき、第1ヒータ41がトレッド用ゴム部材2の前端を、第2ヒータ42がトレッド用ゴム部材2の後端を、それぞれ加熱することができる。
【0034】
さらに、第1コンベア32の上には測長センサ43が設けられている。測長センサ43は、第1コンベア32上にあるトレッド用ゴム部材2の長手方向の長さを測定するセンサである。後述する制御部44は、測長センサ43による測定結果に基づき、第2コンベア33による搬送速度を制御する。
【0035】
ドラム34は、トレッドリングを成型するための既知の構造のドラムである。あらかじめドラム34上に複数枚のベルトが積層されている。そのベルトの上に、第2コンベア33から搬送されてきたトレッド用ゴム部材2が巻き付けられる。巻き付けられたトレッド用ゴム部材2は前端と後端が接合されてリング状トレッド3となる。リング状トレッド3が完成すると同時に、複数枚のベルトとリング状トレッド3とが積層されたトレッドリングも完成する。
【0036】
なお、ドラム34の直径は、巻き取り筒12の本体18の直径以下である。ドラム34の直径は、ベルト等のタイヤ構成部材が接触する面において測定される直径である。通常のドラム34は、複数のセグメントが円筒を形成するように並べられ、それらのセグメントの表面にタイヤ構成部材が貼り付くように構成されている。そのような構成においては、ドラム34の直径は、セグメントの表面において測定される直径である。
【0037】
リング状トレッド製造装置40には制御部44が設けられている。図7に示すように、制御部44には、押さえ部材36、刃37を横方向へ移動させる移動装置39、第1コンベア32、第2コンベア33、第1ヒータ41、第2ヒータ42、ドラム34等が接続されている。制御部44は、接続されている機器等を制御する。
【0038】
本実施形態のタイヤ製造方法においては、まず、カーカスプライやインナーライナー等が積層されたカーカスバンドと、複数のベルトの外周面にリング状トレッド3が積層されたトレッドリングとが、別々に成型される。次に、カーカスバンドに対してシェーピング及びターンアップが行われる。次に、シェーピングにより膨張したカーカスバンドの外周面にトレッドリングが張り付けられ、さらにカーカスバンドの側面にサイドウォールが張り付けられて、グリーンタイヤとされる。次に、グリーンタイヤに対して加硫成型が行われて、タイヤが完成する。
【0039】
このタイヤ製造方法におけるリング状トレッド3の製造においては、まず、長尺ゴム部材1の巻き取り場所において、押し出し機11から長尺ゴム部材1が押し出される。図8に示すように、押し出された長尺ゴム部材1は巻き取り筒12に巻き取られる。長尺ゴム部材1は、その底面1aが径方向内側になる向きで巻き取られる。
【0040】
この巻き取りのとき、巻き取り筒12は台車13に載っている。巻き取りのための巻き取り筒12の回転は、不図示のモータにより自動的に行われても良いし、手動で行われても良い。巻き取り筒12に巻き取られる1本の長尺ゴム部材1の長さ(長手方向の長さ)は、トレッド用ゴム部材2の数にして10~16個分である。
【0041】
長尺ゴム部材1の巻き取りの完了後、台車13は、巻き取り筒12を載せたまま、リング状トレッド3の成型場所へ運ばれる。そして、台車13は、図6のように切断装置31の上流側の場所に配置される。
【0042】
リング状トレッド3の成型場所において、まず、巻き取り筒12から長尺ゴム部材1が引き出される。引き出された長尺ゴム部材1は、テーブル30のローラ38の上を搬送される。この搬送中、長尺ゴム部材1の底面1aが下になってローラ38と接触している。そして、長尺ゴム部材1の前端が刃37よりも所定距離だけ下流側にまで搬送された時点で、長尺ゴム部材1の搬送が停止する。
【0043】
次に、2つの押さえ部材36が下降して、刃37の両側で長尺ゴム部材1を押さえる。そして、図9図11に示すように、刃37が、2つの押さえ部材36の間で長尺ゴム部材1を切断する。詳細には、長尺ゴム部材1に入った刃37が振動しながら長尺ゴム部材1の横方向の一方から他方に(すなわち図10における矢印Bの方向に)移動することにより、長尺ゴム部材1を切断する。切断時の刃37の振動数は例えば35kHz~45kHzである。また、切断時の刃37の移動速度は例えば250~550mm/分である。
【0044】
上記の通り刃37が傾斜しているため、図11に示すように、切断面1b、2bは長尺ゴム部材1の底面1a及びトレッド用ゴム部材2の底面2aに対して傾斜した面となる。長尺ゴム部材1における底面1aと切断面1bとのなす角の角度θは25±4°となる。また、トレッド用ゴム部材2における底面2aと切断面2bとのなす角(ただし、長手方向両側に形成される角のうち角度の小さい方)の角度θも25±4°となる。
【0045】
長尺ゴム部材1の1回の切断により、1つのトレッド用ゴム部材2が切り出される。切り出されたトレッド用ゴム部材2は第1コンベア32へ送られる。
【0046】
トレッド用ゴム部材2の全体が第1コンベア32に載ると、第1コンベア32が一旦停止する。そして、測長センサ43によってトレッド用ゴム部材2の長さ(長手方向の長さ)が測定される。測定結果は制御部44へ送られる。測定が完了すると、第1コンベア32によるトレッド用ゴム部材2の搬送が再開される。
【0047】
次に、トレッド用ゴム部材2が第1コンベア32から第2コンベア33へ搬送される。そして、トレッド用ゴム部材2の前端が第1ヒータ41の下に到達した時点で、トレッド用ゴム部材2の搬送が停止する。図12に示すように、この時点において、トレッド用ゴム部材2の後端は第2ヒータ42の上にある。
【0048】
搬送が停止している間に、それらのヒータ41、42によってトレッド用ゴム部材2の前端及び後端がそれぞれ加熱される。加熱によってトレッド用ゴム部材2の切断面2bの温度が40~60℃になる。このような温度になることによって、トレッド用ゴム部材2の前端及び後端が軟化し粘着性が増す。
【0049】
次に、第1コンベア32によるトレッド用ゴム部材2の搬送が再開される。そして、トレッド用ゴム部材2が、第1コンベア32から第2コンベア33へ搬送される。
【0050】
次に、トレッド用ゴム部材2が、図13に示すように第2コンベア33からドラム34へ搬送され、ドラム34に巻き付けられる。この巻き付けは、第2コンベア33が回転することによりトレッド用ゴム部材2を送り出し、送り出されたトレッド用ゴム部材2を回転するドラム34が巻き取ることにより行われる。
【0051】
この巻き付けの際、ドラム34は予め設定された一定の回転速度で回転する。一方、第2コンベア33の回転速度は、測長センサ43によるトレッド用ゴム部材2の長さの測定結果次第で変更される。例えば、測長センサ43による測定の結果、トレッド用ゴム部材2の長さが狙い値より長いことが判明した場合は、制御部44は、第2コンベア33の回転速度を基準値よりも速くし、トレッド用ゴム部材2の送り出し速度を速くする。また、測長センサ43による測定の結果、トレッド用ゴム部材2の長さが狙い値より短いことが判明した場合は、制御部44は、第2コンベア33の回転速度を基準値よりも遅くし、トレッド用ゴム部材2の送り出し速度を遅くする。この制御によって、トレッド用ゴム部材2の長さが狙い値と若干異なっても、ドラム34上でトレッド用ゴム部材2の前端と後端を一致させることができる。
【0052】
上記のようにトレッド用ゴム部材2の前端及び後端が軟化し粘着性が増しているので、ドラム34上でトレッド用ゴム部材2の前端と後端が一致すると、これらが接合される。前端と後端が接合されることにより、リング状トレッド3が完成する。
【0053】
なお、ドラム34にはあらかじめ複数のベルトが巻き付けられている。トレッド用ゴム部材2はそのベルトの上に巻き付けられてリング状トレッド3となる。リング状トレッド3の完成と同時に、ベルトにリング状トレッド3が貼り付いたトレッドリングも完成する。
【0054】
上記の方法で、1本の長尺ゴム部材1から10個以上16個以下のトレッド用ゴム部材2が切り出される。それらのトレッド用ゴム部材2が1つずつ次々とドラム34に搬送され、ドラム34においてそれぞれリング状トレッド3に成型される。
【0055】
このようなリング状トレッド3が使用されたタイヤは、例えば、トラック・バス用のラジアルタイヤとして使用される。
【0056】
本実施形態のタイヤ製造方法によれば、タイヤのユニフォミティに悪影響が生じにくい等の効果が生じる。
【0057】
具体的には、本実施形態においては、長尺ゴム部材1を巻き取る巻き取り筒12として、長尺ゴム部材1の巻き付く部分である本体18の直径が、ドラム34の直径以上のものが使用される。そのため、巻き取り筒12が1周する間に巻き取ることのできる長尺ゴム部材1の長さが長く、長尺ゴム部材1全体を巻き取っても巻き取り筒12上での長尺ゴム部材1の巻き数が少なくて済む。このように長尺ゴム部材1の巻き数が少ないため、長尺ゴム部材1の巻き取りの内側の部分が潰れにくい。
【0058】
このように長尺ゴム部材1が潰れにくいため、トレッド用ゴム部材2の前端と後端で厚みが一致しやすく、ドラム34上でのトレッド用ゴム部材2の前端と後端の接合部分に段差が生じにくい。そのため、そのような段差に起因するタイヤのユニフォミティへの悪影響が生じにくい。
【0059】
また、巻き取り筒12に巻き取る長尺ゴム部材1の長さが、トレッド用ゴム部材2の数にして16個以下の長さであるため、巻き取り筒12上での長尺ゴム部材1の巻き数が少なく、長尺ゴム部材1が潰れにくい。また、巻き取り筒12に巻き取る長尺ゴム部材1の長さが、トレッド用ゴム部材2の数にして10個以上の長さであるため、タイヤの生産のために準備すべき巻き取り筒12及び台車13の数を抑えることができるし、生産性も悪化しない。
【0060】
また、長尺ゴム部材1の切断が超音波カッターを用いて行われるが、超音波カッターの刃37は超音波領域の振動数で振動しながら長尺ゴム部材1を切断するため、切断面1b、2bが滑らかになる。そのため、長尺ゴム部材1から切り出されたトレッド用ゴム部材2の前端と後端の接合部分に段差等が生じにくく、タイヤのユニフォミティへの悪影響が生じにくい。
【0061】
ここで、長尺ゴム部材1の切断は、超音波カッターの刃37を長尺ゴム部材1の横方向に移動させることにより行われる。そのため、カッターの刃を上から下へ降ろすことにより切断する場合と比べて、切断面1b、2bが粗くなりにくい。
【0062】
また、長尺ゴム部材1を切断するときの長尺ゴム部材1の底面1aと切断面1bとのなす角の角度θが21°(25°-4°)以上であることにより、厚みのある長尺ゴム部材1に上から入った刃37が底面1aまで到達することができる。また、角度θが21°以上であることにより、刃37がゴムから受ける抵抗が過大にならない。
【0063】
また、長尺ゴム部材1を切断するときの長尺ゴム部材1の底面1aと切断面1bとのなす角の角度θが29°(25°+4°)以下であることにより、トレッド用ゴム部材2の切断面2bの面積を十分に確保でき、トレッド用ゴム部材2の前端と後端の接合がしやすい。また、角度θが29°以下であることにより、刃37の入る位置や角度が若干ずれたとしても、トレッド用ゴム部材2の前端と後端の接合部分に段差が生じにくい。
【0064】
また、上記の通り、ドラム34への巻き付けの前にトレッド用ゴム部材2の長さが測定され、その測定結果に基づき、トレッド用ゴム部材2のドラム34への巻き付けの際に、第2コンベア33からのトレッド用ゴム部材2の送り出し速度が調整される。そのため、ドラム34上でトレッド用ゴム部材2の前端と後端を一致させることができる。
【0065】
実施例及び比較例について表1に示す。実施例1は上記実施形態の方法で製造したタイヤについての実施例である。また、実施例2は、長尺ゴム部材を切断するときに、超音波カッターを使用せず、長尺ゴム部材の上から刃を降ろして切断した点で、実施例1と相違する。また、比較例は、本体の直径がドラムの直径より小さい巻き取り筒を使用した点と、実施例2と同じく上から降ろした刃で長尺ゴム部材を切断した点で、実施例1と相違する。これらの相違点について、表1の「製造条件」の欄に示す。
【0066】
表1に示すように、試験の項目は、トレッドの場所による厚み差、タイヤの場所による厚み差及びユニフォミティである。
【0067】
トレッドの場所による厚み差の試験においては、まず、トレッド用ゴム部材の長手方向の3か所の厚みを測定した。厚みの測定は、トレッドのショルダーとなる位置において行った。測定後、一番厚い部分(トレッド用ゴム部材の長手方向の一端側の部分であり、巻き取り筒上で一番外径側にあった部分)の厚みから、一番薄い部分(トレッド用ゴム部材の長手方向の他端側の部分であり、巻き取り筒上で一番内径側にあった部分)の厚みを引いて、トレッドの場所による厚み差を求めた。
【0068】
タイヤの場所による厚み差の試験においては、まず、完成したタイヤの周方向の3か所においてタイヤ内面からタイヤ外面までの厚みを測定した。厚みの測定は、トレッドのショルダーにおいて行った。測定後、一番厚い部分(巻き取り筒上で一番外径側にあったトレッドの部分)の厚みから、一番薄い部分(巻き取り筒上で一番内径側にあったトレッドの部分)の厚みを引いて、タイヤの場所による厚み差を求めた。
【0069】
ユニフォミティとしてRFV(ラジアル・フォース・バリエーション)の試験を行った。試験方法はJIS D4233(2001)に準拠した。
【0070】
試験結果は表1の通りであった。比較例においては、トレッドにおいて場所による厚み差が生じており、その厚み差がタイヤになっても残り、そのことがユニフォミティに影響していることがわかった。しかし、実施例2と比較例の比較から、巻き取り筒の本体の直径をドラム直径より大きくすることにより、トレッド及びタイヤにおいて場所による厚み差が小さくなり、ユニフォミティも良くなることが確認できた。さらに、実施例1と実施例2の比較から、超音波カッターで長尺ゴム部材を切断することによりユニフォミティがさらに良くなることが確認できた。ユニフォミティに関しては、実施例2は比較例に対して20.5%減、実施例1は比較例に対して27.3%減となることがわかった。
【0071】
【表1】
【符号の説明】
【0072】
1…長尺ゴム部材、1a…底面、1b…切断面、2…トレッド用ゴム部材、2a…底面、2b…切断面、3…リング状トレッド、11…押し出し機、11a…口金、12…巻き取り筒、13…台車、14…下フレーム、15…上フレーム、16…車輪、17…回転軸、18…本体、19…フランジ、30…テーブル、31…切断装置、32…第1コンベア、33…第2コンベア、34…ドラム、35…受け部材、36…押さえ部材、37…刃、38…ローラ、39…移動装置、40…リング状トレッド製造装置、41…第1ヒータ、42…第2ヒータ、43…測長センサ、44…制御部

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