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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027900
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】長尺ゴム部材の切断方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/52 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
B29D30/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131076
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉原 優史
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP11
4F215AR08
4F215VA11
4F215VD03
4F215VK32
4F215VL02
4F215VL32
4F215VM02
4F215VM04
4F215VP17
4F215VP29
4F215VQ01
(57)【要約】
【課題】滑らかな切断面が得られる長尺ゴム部材の切断方法を提供する。
【解決手段】長尺ゴム部材1の切断方法は、押し出し機11から押し出された長尺ゴム部材1を切断してトレッド用ゴム部材2を切り出す長尺ゴム部材1の切断方法において、前記切断が、超音波カッターの刃37を長尺ゴム部材1の横方向の一方から他方へ移動させることにより行われ、刃37の移動速度が、切断し始めのときは遅く、その後速くなることを特徴とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺ゴム部材を切断してトレッド用ゴム部材とする長尺ゴム部材の切断方法において、
前記切断が、超音波カッターの刃を前記長尺ゴム部材の横方向の一方から他方へ移動させることにより行われ、
前記刃の移動速度が、切断し始めのときは遅く、その後速くなることを特徴とする、長尺ゴム部材の切断方法。
【請求項2】
前記刃の前記移動速度が、切断開始位置から前記長尺ゴム部材の所定位置までにおいて一定の遅い速度で、前記所定位置から切断終了位置までにおいて一定の速い速度である、請求項1に記載の長尺ゴム部材の切断方法。
【請求項3】
前記切断開始位置から前記所定位置までの長さが、前記切断開始位置から前記切断終了位置までの長さの20~40%である、請求項2に記載の長尺ゴム部材の切断方法。
【請求項4】
前記の遅い速度が250~350mm/分で、前記の速い速度が450~550mm/分である、請求項2又は3に記載の長尺ゴム部材の切断方法。
【請求項5】
前記長尺ゴム部材の底面と、前記切断により形成される切断面とのなす角度が、25±4°である、請求項1又は2に記載の長尺ゴム部材の切断方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺ゴム部材の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのトレッドは、所定長さのトレッド用ゴム部材がリング状に成型されることにより形成される。トレッド用ゴム部材の製造の際、まず、押し出し機から長尺ゴム部材が押し出される。長尺ゴム部材は、空気入りタイヤのトレッドに近い幅及び厚みを有すると共に、押し出し方向に長いゴム部材である。押し出された長尺ゴム部材は、リールやボビン等と呼ばれる巻き取り筒に巻き取られる。
【0003】
巻き取り筒に巻き取られた長尺ゴム部材は、ドラムのある成型場所へ搬送される。そして、成型場所において、長尺ゴム部材が巻き取り筒から引き出されて切断され、タイヤ1本分の長さのトレッド用ゴム部材が切り出される。長尺ゴム部材の切断は、長尺ゴム部材の横方向の一方から他方へ刃を移動させることによって行われる。
【0004】
切り出されたトレッド用ゴム部材は、ドラムに巻き付けられ、ドラム上で前端と後端が接合されてリング状になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-62296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トレッド用ゴム部材はタイヤを構成する各種ゴム部材の中でも特に厚みがあり、その素となる長尺ゴム部材も厚みがある。そのため、長尺ゴム部材の切断し始めのときに刃がゴムから大きな抵抗力を受けることになり、ゴムが焼けたり、切断面が粗くなったりすることがあった。その結果、ドラム上でトレッド用ゴム部材の前端と後端が綺麗に接合できず、完成する空気入りタイヤのユニフォミティに悪影響が出ることがあった。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、滑らかな切断面が得られる長尺ゴム部材の切断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0009】
[1]長尺ゴム部材を切断してトレッド用ゴム部材とする長尺ゴム部材の切断方法において、前記切断が、超音波カッターの刃を前記長尺ゴム部材の横方向の一方から他方へ移動させることにより行われ、前記刃の移動速度が、切断し始めのときは遅く、その後速くなることを特徴とする、長尺ゴム部材の切断方法。
【0010】
[2]前記刃の前記移動速度が、切断開始位置から前記長尺ゴム部材の所定位置までにおいて一定の遅い速度で、前記所定位置から切断終了位置までにおいて一定の速い速度である、[1]に記載の長尺ゴム部材の切断方法。
【0011】
[3]前記切断開始位置から前記所定位置までの長さが、前記切断開始位置から前記切断終了位置までの長さの20~40%である、[2]に記載の長尺ゴム部材の切断方法。
【0012】
[4]前記の遅い速度が250~350mm/分で、前記の速い速度が450~550mm/分である、[2]又は[3]に記載の長尺ゴム部材の切断方法。
【0013】
[5]前記長尺ゴム部材の底面と、前記切断により形成される切断面とのなす角度が、25±4°である、[1]~[4]のいずれかに記載の長尺ゴム部材の切断方法。
【発明の効果】
【0014】
上記の長尺ゴム部材の切断方法によれば、滑らかな切断面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】長尺ゴム部材を斜め上から見た斜視図。
図2】(a)はトレッド用ゴム部材を斜め上から見た斜視図。(b)はトレッド用ゴム部材を横から見た図。(c)は(b)の切断面近傍の拡大図。
図3】リング状トレッドを斜め横から見た斜視図。
図4】リング状トレッド製造装置を横から見た図。
図5】長尺ゴム部材の巻き取り筒への巻き取りの様子を示す図。
図6】巻き取り筒を図5の左から見た図。
図7】リング状トレッド製造装置のブロック図。
図8】リング状トレッド製造装置を横から見た図。長尺ゴム部材の切断時の図。
図9】切断装置の一部を上から見た図。長尺ゴム部材の切断時の図。
図10】切断装置の一部を横から見た図。長尺ゴム部材の切断時の図。
図11】長尺ゴム部材の切断における刃の位置と移動速度との関係を示す図。
図12】リング状トレッド製造装置を横から見た図。トレッド用ゴム部材の加熱時の図。
図13】リング状トレッド製造装置を横から見た図。トレッド用ゴム部材のドラムへの巻き付け時の図。
図14】変更例における刃の位置と移動速度との関係を示す図。
図15】別の変更例における刃の位置と移動速度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0017】
本実施形態は、長尺ゴム部材1(図1参照)をその長手方向の複数個所で切断して複数のトレッド用ゴム部材2(図2参照)とし、それぞれのトレッド用ゴム部材2をリング状のリング状トレッド3(図3参照)とする方法に関する。
【0018】
ここで、長尺ゴム部材1は、一方向へ長いゴム部材である。この「一方向」が長尺ゴム部材1の長手方向である。長尺ゴム部材1は、最終的に完成する空気入りタイヤ(以下単に「タイヤ」とする)におけるトレッドに近い幅及び厚みを有している。
【0019】
また、トレッド用ゴム部材2は、タイヤ1本分のトレッドとなるゴム部材である。トレッド用ゴム部材2の長手方向は長尺ゴム部材1の長手方向と一致する。トレッド用ゴム部材2の長手方向の長さは、最終的に完成するタイヤにおけるトレッドのタイヤ周方向の長さとほぼ一致する。トレッド用ゴム部材2は、長尺ゴム部材1から切り出されたものであるため、長尺ゴム部材1と同じ幅及び厚みを有している。トレッド用ゴム部材2の底面2aは、もともと長尺ゴム部材1の底面1a(図10参照)であった面である。トレッド用ゴム部材2の前端及び後端は、長尺ゴム部材1を切断したときの切断面2bである。この切断面2bは底面2aに対して傾斜している。
【0020】
なお、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の「幅」及び「厚み」は、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の長手方向に直交する断面において測定される長さのことである。「幅」は、底面1a、2aの横方向の長さである。「厚み」は、底面1a、2aに直交する方向の長さである。また、「横方向」とは、上から見て長手方向に直交する方向のことである。図1及び図2に「長手方向」及び「横方向」を示す。
【0021】
また、リング状トレッド3は、トレッド用ゴム部材2の前端と後端が接合されてリング状となったゴム部材である。トレッド用ゴム部材2の底面2aがリング状トレッド3の内面となる。なお、「前端」は、トレッド用ゴム部材2の長手方向両端のうち、後述するようにトレッド用ゴム部材2がドラム34に巻き付けられるときに先にドラム34に貼り付く方である。
【0022】
図4に、リング状トレッド製造装置40を示す。リング状トレッド製造装置40は、切断装置31、第1コンベア32、第2コンベア33及びドラム34が、この順で配置されて構成されている。切断装置31は長尺ゴム部材1を切断してトレッド用ゴム部材2とする装置である。第1コンベア32及び第2コンベア33は、切断装置31において切り出されたトレッド用ゴム部材2を、ドラム34へ向かって搬送する装置である。ドラム34は、トレッド用ゴム部材2が巻き付けられリング状トレッド3とされる装置である。
【0023】
図4において、切断装置31側が物の流れの上流側で、ドラム34側が物の流れの下流側である。上流側から下流側への方向が、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の搬送方向である。長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の搬送方向は、それらの長手方向と一致する。
【0024】
切断装置31より上流側の場所は、巻き取り筒12を載せた台車13が配置される場所である。巻き取り筒12にはあらかじめ長尺ゴム部材1が巻き取られている。
【0025】
詳細には、リング状トレッド製造装置40とは別の場所において、図5に示すように押し出し機11から長尺ゴム部材1が押し出される。このときの押し出し機11からの押し出し方向が、長尺ゴム部材1の長手方向となる。図6に示すように、巻き取り筒12は、長尺ゴム部材1が巻き取られる部分である円筒状の本体18と、本体18の軸方向両側のフランジ19とを有している。押し出された長尺ゴム部材1は、巻き取り筒12の本体18に巻き取られる。
【0026】
台車13には移動のための車輪16が付いている。長尺ゴム部材1を巻き取った巻き取り筒12は、台車13に載ったまま台車13と共に移動して、切断装置31より上流側の所定場所に配置される。そして所定場所に配置された台車13上の巻き取り筒12から長尺ゴム部材1が引き出される。その長尺ゴム部材1が切断装置31へ送られる。
【0027】
切断装置31は、テーブル30及びテーブル30上の構造物からなる。テーブル30上には、2つの受け部材35が搬送方向に並べて設けられている。長尺ゴム部材1を切断するための刃37は、2つの受け部材35の間に設けられている。また、2つの受け部材35より上において上昇及び下降する押さえ部材36が設けられている。押さえ部材36は、下降して受け部材35との間に長尺ゴム部材1を挟むことにより、長尺ゴム部材1を押さえ付ける。
【0028】
2つの押さえ部材36が長尺ゴム部材1を押さえ付けた状態で、刃37が長尺ゴム部材1の横方向の一方から他方へ移動して長尺ゴム部材1を切断する(図9参照)。刃37の移動方向は横方向である。切断速度である刃37の移動速度は、後述する制御部44(図7参照)によって制御される。
【0029】
ここで使用される刃37は、超音波カッターの刃である。超音波カッターは、刃37、振動子、圧電素子、発振器等からなる既知の構成のものである。圧電素子が組み込まれた振動子に刃37が取り付けられている。発振器が交流電圧を圧電素子に印加することで、振動子及び刃37が超音波領域の振動数で振動する。
【0030】
刃37は、長尺ゴム部材1の底面1aに対して傾斜している(図10参照)。そのため、刃37によって切断された切断面1b、2bは、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2の底面1a、2aに対して傾斜した面となる。長尺ゴム部材1の底面1aに対する刃37の傾斜角度θは、25±4°である。そのため、長尺ゴム部材1及びトレッド用ゴム部材2において、底面1a、2aに対する切断面1b、2bの傾斜角度θは25±4°となる。なお、長尺ゴム部材1の底面1aは、長尺ゴム部材1の切断時には、長尺ゴム部材1が横たわる面である2つの受け部材35を結ぶ面と一致する。
【0031】
テーブル30上において、受け部材35のない場所には、複数のローラ38が搬送方向に並べて設けられている。フィードローラのような駆動装置(不図示)が駆動すると、長尺ゴム部材1がローラ38上を上流側から下流側へ搬送される。
【0032】
第1コンベア32及び第2コンベア33はそれぞれトレッド用ゴム部材2を下流側へ搬送するコンベアである。第2コンベア33より上の場所に、加熱装置である第1ヒータ41が設けられている。また、第1コンベア32と第2コンベア33の間には、別の加熱装置である第2ヒータ42が設けられている。第1ヒータ41から第2ヒータ42までの搬送方向の長さは、トレッド用ゴム部材2の長さとほぼ一致する。第2コンベア33における上流側の場所にトレッド用ゴム部材2が停止したとき、第1ヒータ41がトレッド用ゴム部材2の前端を、第2ヒータ42がトレッド用ゴム部材2の後端を、それぞれ加熱することができる。
【0033】
さらに、第1コンベア32の上には測長センサ43が設けられている。測長センサ43は、第1コンベア32上にあるトレッド用ゴム部材2の長手方向の長さを測定するセンサである。後述する制御部44は、測長センサ43による測定結果に基づき、第2コンベア33による搬送速度を制御する。
【0034】
ドラム34は、トレッドリングを成型するための既知の構造のドラムである。あらかじめドラム34上に複数枚のベルトが積層されている。そのベルトの上に、第2コンベア33から搬送されてきたトレッド用ゴム部材2が巻き付けられる。巻き付けられたトレッド用ゴム部材2は前端と後端が接合されてリング状トレッド3となる。リング状トレッド3が完成すると同時に、複数枚のベルトとリング状トレッド3とが積層されたトレッドリングも完成する。
【0035】
リング状トレッド製造装置40には制御部44が設けられている。図7に示すように、制御部44には、押さえ部材36、刃37を横方向へ移動させる移動装置39、第1コンベア32、第2コンベア33、第1ヒータ41、第2ヒータ42、ドラム34等が接続されている。制御部44は、接続されている機器等を制御する。
【0036】
タイヤ製造方法においては、まず、カーカスプライやインナーライナー等が積層されたカーカスバンドと、複数のベルトの外周面にリング状トレッド3が積層されたトレッドリングとが、別々に成型される。次に、カーカスバンドに対してシェーピング及びターンアップが行われる。次に、シェーピングにより膨張したカーカスバンドの外周面にトレッドリングが張り付けられ、さらにカーカスバンドの側面にサイドウォールが張り付けられて、グリーンタイヤとされる。次に、グリーンタイヤに対して加硫成型が行われて、タイヤが完成する。
【0037】
このタイヤ製造方法におけるリング状トレッド3の製造においては、まず、巻き取り筒12から長尺ゴム部材1が引き出される。引き出された長尺ゴム部材1は、テーブル30のローラ38の上を搬送される。この搬送中、長尺ゴム部材1の底面1aが下になってローラ38と接触している。そして、長尺ゴム部材1の前端が刃37よりも所定距離だけ下流側にまで搬送された時点で、長尺ゴム部材1の搬送が停止する。
【0038】
次に、2つの押さえ部材36が下降して、刃37の両側で長尺ゴム部材1を押さえる。そして、図8図10に示すように、刃37が、2つの押さえ部材36の間で長尺ゴム部材1を切断する。具体的には、長尺ゴム部材1に入った刃37が振動しながら長尺ゴム部材1の横方向の一方から他方に(すなわち図9における矢印A、Bの方向に)移動することにより、長尺ゴム部材1を切断する。
【0039】
切断のとき、制御部44は、刃37の移動速度を、切断し始めのときは遅く、その後速くなるように制御する。詳細には、刃37の移動経路における所定位置が、速度変化位置Pc(図9参照)としてあらかじめ設定されている。なお、刃37の移動経路は、長尺ゴム部材1の横方向に延びている。そして、制御部44は、刃37の移動速度を、切断開始位置Psから速度変化位置Pcまでにおいて一定の遅い速度Vsとし、速度変化位置Pcから切断終了位置Peまでにおいて一定の速い速度Vfとする。図9において、矢印Aは遅い速度Vsでの刃37の移動を、矢印Bは速い速度Vfでの刃37の移動を、それぞれ表している。また、切断中の刃37の位置と速度との関係を図11に示す。
【0040】
速度Vsは速度Vfよりも遅い。遅い速度Vsは、250~350mm/分であることが望ましい。また、速い速度Vfは、450~550mm/分であることが望ましい。また、切断開始位置Psから速度変化位置Pcまでの長さは、切断開始位置Psから切断終了位置Peまでの長さの20~40%であることが望ましく、1/3(約33%)であることがさらに望ましい。また、切断中の刃37の振動数は例えば35kHz~45kHzである。
【0041】
長尺ゴム部材1の切断中、刃37は速度変化位置Pcで一旦停止しても良いし、速度変化位置Pcで停止することなく切断開始位置Psから速度変化位置Pcまで移動しても良い。
【0042】
上記の通り刃37が傾斜しているため、図10に示すように、切断面1b、2bは長尺ゴム部材1の底面1a及びトレッド用ゴム部材2の底面2aに対して傾斜した面となる。長尺ゴム部材1における底面1aと切断面1bとのなす角の角度θは25±4°となる。また、トレッド用ゴム部材2における底面2aと切断面2bとのなす角(ただし、長手方向両側に形成される角のうち角度の小さい方)の角度θも25±4°となる。
【0043】
長尺ゴム部材1の1回の切断により、1つのトレッド用ゴム部材2が切り出される。切り出されたトレッド用ゴム部材2は第1コンベア32へ送られる。
【0044】
トレッド用ゴム部材2の全体が第1コンベア32に載ると、第1コンベア32が一旦停止する。そして、測長センサ43によってトレッド用ゴム部材2の長さ(長手方向の長さ)が測定される。測定結果は制御部44へ送られる。測定が完了すると、第1コンベア32によるトレッド用ゴム部材2の搬送が再開される。
【0045】
次に、トレッド用ゴム部材2が第1コンベア32から第2コンベア33へ搬送される。そして、トレッド用ゴム部材2の前端が第1ヒータ41の下に到達した時点で、トレッド用ゴム部材2の搬送が停止する。図12に示すように、この時点において、トレッド用ゴム部材2の後端は第2ヒータ42の上にある。
【0046】
搬送が停止している間に、それらのヒータ41、42によってトレッド用ゴム部材2の前端及び後端が加熱される。加熱によってトレッド用ゴム部材2の切断面2bの温度が40~60℃になる。このような温度になることによって、トレッド用ゴム部材2の前端及び後端が軟化し粘着性が増す。
【0047】
次に、第1コンベア32によるトレッド用ゴム部材2の搬送が再開される。そして、トレッド用ゴム部材2が、第1コンベア32から第2コンベア33へ搬送される。
【0048】
次に、トレッド用ゴム部材2が、図13に示すように第2コンベア33からドラム34へ搬送され、ドラム34に巻き付けられる。この巻き付けは、第2コンベア33が回転することによりトレッド用ゴム部材2を送り出し、送り出されたトレッド用ゴム部材2を回転するドラム34が巻き取ることにより行われる。
【0049】
この巻き付けの際、ドラム34は予め設定された一定の回転速度で回転する。一方、第2コンベア33の回転速度は、測長センサ43によるトレッド用ゴム部材2の長さの測定結果次第で変更される。例えば、測長センサ43による測定の結果、トレッド用ゴム部材2の長さが狙い値より長いことが判明した場合は、制御部44は、第2コンベア33の回転速度を基準値よりも速くし、トレッド用ゴム部材2の送り出し速度を速くする。また、測長センサ43による測定の結果、トレッド用ゴム部材2の長さが狙い値より短いことが判明した場合は、制御部44は、第2コンベア33の回転速度を基準値よりも遅くし、トレッド用ゴム部材2の送り出し速度を遅くする。この制御によって、トレッド用ゴム部材2の長さが狙い値と若干異なっても、ドラム34上でトレッド用ゴム部材2の前端と後端を一致させることができる。
【0050】
上記のようにトレッド用ゴム部材2の前端及び後端が軟化し粘着性が増しているので、ドラム34上でトレッド用ゴム部材2の前端と後端が一致すると、これらが接合される。前端と後端が接合されることにより、リング状トレッド3が完成する。
【0051】
なお、ドラム34にはあらかじめ複数のベルトが巻き付けられている。トレッド用ゴム部材2はそのベルトの上に巻き付けられてリング状トレッド3となる。リング状トレッド3の完成と同時に、ベルトにリング状トレッド3が貼り付いたトレッドリングも完成する。
【0052】
上記の方法で、切断装置31において、1本の長尺ゴム部材1から複数個(例えば10個以上16個以下)のトレッド用ゴム部材2が次々と切り出される。そして、それらのトレッド用ゴム部材2が1つずつ次々とドラム34に搬送され、ドラム34においてそれぞれリング状トレッド3に成型される。
【0053】
本実施形態の切断方法によれば、トレッド用ゴム部材2の切断面2bが滑らかなものとなる。
【0054】
詳細に説明すると、まず、長尺ゴム部材1の切断が超音波カッターを用いて行われるが、超音波カッターの刃37は超音波領域の振動数で振動しながら長尺ゴム部材1を切断するため、切断面1b、2bが滑らかになる。そのため、長尺ゴム部材1から切り出されたトレッド用ゴム部材2の切断面2bが滑らかなものとなる。また、切断面2bに焼けが生じにくい。
【0055】
また、長尺ゴム部材1の切断は、超音波カッターの刃37を長尺ゴム部材1の横方向の一方から他方へ移動させることにより行われる。そのため、カッターの刃を上から下へ降ろすことにより切断する場合と比べて、切断面1b、2bが滑らかになる。
【0056】
ところで、長尺ゴム部材1の切断中、超音波カッターの刃37は長尺ゴム部材1のゴムから抵抗力を受ける。通常、抵抗力は、切断し始めのときに大きい。しかし、本実施形態においては、切断し始めのときに刃37の移動速度が遅いために刃37の受ける抵抗力が小さくなり、切断面1b、2bが滑らかなものとなる。また、切断面2bに焼けが生じにくい。また、刃37の受ける抵抗力が大きすぎてアンプエラー等が発生して設備が停止してしまうことを防ぐこともできる。また、切断の途中から刃37の移動速度が速くなるため、生産性の低下を防ぐこともできる。
【0057】
このようにトレッド用ゴム部材2の切断面2bが滑らかで焼けの少ないものとなるため、トレッド用ゴム部材2をリング状トレッド3とするときに、トレッド用ゴム部材2の前端と後端が綺麗に接合できる。そのため、前端と後端の接合部分に段差ができる等して完成する空気入りタイヤのユニフォミティに悪影響が出ることを防ぐことができる。
【0058】
また、刃37の移動速度が、切断開始位置Psから速度変化位置Pcまでにおいて一定の遅い速度Vsで、速度変化位置Pcから切断終了位置Peまでにおいて一定の速い速度Vfであるため、制御が容易となっている。
【0059】
また、切断開始位置Psから速度変化位置Pcまでの長さが、切断開始位置Psから切断終了位置Peまでの長さの20%以上であるため、刃37が、ゴムから受ける抵抗力が比較的大きい領域全体を遅い速度Vsで移動することになる。そのため、切断面1b、2bの焼け等を防ぐことができ、また、刃37の受ける抵抗力が大きすぎて設備が停止してしまうことも防ぐことができる。
【0060】
また、切断開始位置Psから速度変化位置Pcまでの長さが、切断開始位置Psから切断終了位置Peまでの長さの40%以下であるため、刃37が速い速度Vfで移動する距離が十分に確保される。そのため、生産性の低下を防ぐことができる。
【0061】
また、刃37の移動速度が、切断し始めのときは250~350mm/分で、その後450~550mm/分となる。この範囲であることにより、切断面1b、2bが滑らかで焼けの少ないものとなり、生産性の低下を防ぐこともできる。
【0062】
また、長尺ゴム部材1を切断するときの長尺ゴム部材1の底面1aと切断面1bとのなす角の角度θが21°(25°-4°)以上であることにより、厚みのある長尺ゴム部材1に上から入った刃37が底面1aまで到達することができる。また、角度θが21°以上であることにより、刃37がゴムから受ける抵抗力が過大にならない。
【0063】
また、長尺ゴム部材1を切断するときの長尺ゴム部材1の底面1aと切断面1bとのなす角の角度θが29°(25°+4°)以下であることにより、トレッド用ゴム部材2の切断面2bの面積を十分に確保でき、トレッド用ゴム部材2の前端と後端の接合がしやすい。また、角度θが29°以下であることにより、刃37の入る位置や角度が若干ずれたとしても、トレッド用ゴム部材2の前端と後端の接合部分に段差が生じにくい。
【0064】
また、上記の通り、ドラム34への巻き付けの前にトレッド用ゴム部材2の長さが測定され、その測定結果に基づき、トレッド用ゴム部材2のドラム34への巻き付けの際の、第2コンベア33からのトレッド用ゴム部材2の送り出し速度が調整される。そのため、ドラム34上でトレッド用ゴム部材2の前端と後端を一致させることができる。
【0065】
以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができる。例えば、長尺ゴム部材1を切断するときの刃37の移動速度が2回以上変化しても良い。例えば、刃37の移動速度が2回変化する場合、図14に示すように、刃37の移動速度が2つの速度変化位置Pc1、Pc2で変化して段々と速くなる。また、図15に示すように、刃37が切断開始位置Psから切断終了位置Peへ移動するにつれ、刃37の移動速度が徐々に変化しても良い。
【符号の説明】
【0066】
1…長尺ゴム部材、1a…底面、1b…切断面、2…トレッド用ゴム部材、2a…底面、2b…切断面、3…リング状トレッド、11…押し出し機、12…巻き取り筒、13…台車、16…車輪、18…本体、19…フランジ、30…テーブル、31…切断装置、32…第1コンベア、33…第2コンベア、34…ドラム、35…受け部材、36…押さえ部材、37…刃、38…ローラ、39…移動装置、40…リング状トレッド製造装置、41…第1ヒータ、42…第2ヒータ、43…測長センサ、44…制御部
図1
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