(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027907
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】無人飛行体、および、風力発電設備の点検システム、並びに、風力発電設備の点検方法
(51)【国際特許分類】
F03D 17/00 20160101AFI20240222BHJP
F03D 80/50 20160101ALI20240222BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20240222BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240222BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20240222BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240222BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F03D17/00
F03D80/50
B64C27/04
B64C39/02
B64D47/08
H04N7/18 D
F03D1/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131087
(22)【出願日】2022-08-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】513005280
【氏名又は名称】株式会社amuse oneself
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨井 隆春
【テーマコード(参考)】
3H178
5C054
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA24
3H178AA43
3H178BB56
3H178BB79
3H178CC02
3H178DD52Z
3H178DD70X
5C054CA04
5C054CC02
5C054CE01
5C054DA07
5C054HA19
(57)【要約】
【課題】風車のブレードの回転を停止させたり回転を制限したりすることなく風力発電設備の点検を行うことができる無人飛行体、および、風力発電設備の点検システム、並びに、風力発電設備の点検方法を提供する。
【解決手段】無人飛行体2に備えられた広角カメラ25によるブレードの撮影によって当該ブレードの回転速度を認識した上で、点検対象であるブレードが望遠カメラ26の正面位置に達するタイミングで当該望遠カメラ26によってブレードを撮影し、この撮影された画像の情報をブレードの損傷の有無等を認識するための情報として利用する。このため、ブレードの回転を停止させたり、ブレードの回転を制限したりすることなく、ブレードの点検を行うことができる。その結果、点検中であっても風力発電設備の発電を継続して行うことができ、風力発電設備の稼働率を高く維持することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電設備の点検に供される無人飛行体において、
前記風力発電設備の風車における少なくともブレードの回転範囲を撮影可能な広角カメラと、
前記ブレードの一部を拡大して撮影可能な望遠カメラと、
前記広角カメラで撮影された前記ブレードの回転位置の時間的変化に基づいて当該ブレードの回転速度を認識するブレード回転速度認識部と、
前記ブレード回転速度認識部によって認識された前記ブレードの回転速度の情報に基づいて、点検対象である前記ブレードが前記望遠カメラの正面位置に達するタイミングを判定し、当該タイミングで前記望遠カメラに前記ブレードの撮影を行わせる撮影指令部と、
前記望遠カメラで撮影された前記点検対象である前記ブレードの画像の情報を出力可能な画像情報出力部と、
を備えていることを特徴とする無人飛行体。
【請求項2】
請求項1記載の無人飛行体において、
前記風車の周辺を飛行している状態において前記風車の向きを認識する風車向き認識部と、
前記認識された前記風車の向きに基づいて当該風車に正対する基準位置まで飛行制御を行う基準位置飛行制御部とを更に備え、
前記ブレード回転速度認識部は、前記基準位置飛行制御部によって前記基準位置での飛行制御が行われている状態で前記ブレードの回転速度を認識するようになっていることを特徴とする無人飛行体。
【請求項3】
請求項1記載の無人飛行体において、
前記タイミングにおける前記点検対象である前記ブレードの延在方向に沿うように飛行制御を行う撮影位置変更制御部を更に備え、
前記撮影指令部は、前記撮影位置変更制御部によって前記ブレードの延在方向に沿った飛行制御によって飛行位置が所定の撮影位置まで変更された状態で、前記点検対象である前記ブレードが前記望遠カメラの正面位置に達するタイミングで当該望遠カメラに前記ブレードの撮影を行わせるようになっていることを特徴とする無人飛行体。
【請求項4】
請求項3記載の無人飛行体において、
前記ブレードの正面、背面および側面のうちの一つの面に対して前記望遠カメラでの撮影が完了した後、他の一つの面に対して前記望遠カメラが対向する位置まで飛行制御を行う撮影方向変更制御部を備え、
前記撮影位置変更制御部は、前記撮影方向変更制御部による前記飛行制御が完了した後、前記他の一つの面に対し、前記ブレードの延在方向に沿った飛行制御を行うことを特徴とする無人飛行体。
【請求項5】
請求項1~4のうち何れか一つに記載の無人飛行体において、
前記風力発電設備が洋上風力発電設備である場合に当該風力発電設備の点検に供される無人飛行体であり、
前記風車の移動周期および移動量を推定する移動推定部と、
前記移動推定部によって推定された前記風車の移動周期および移動量に同期するように飛行位置を変更する飛行制御を行う同期飛行制御部とを備えていることを特徴とする無人飛行体。
【請求項6】
無人飛行体を利用して風力発電設備の点検を行う点検システムにおいて、
前記無人飛行体は、
前記風力発電設備の風車における少なくともブレードの回転範囲を撮影可能な広角カメラと、
前記ブレードの一部を拡大して撮影可能な望遠カメラと、
前記広角カメラで撮影された前記ブレードの回転位置の時間的変化に基づいて当該ブレードの回転速度を認識するブレード回転速度認識部と、
前記ブレード回転速度認識部によって認識された前記ブレードの回転速度の情報に基づいて、点検対象である前記ブレードが前記望遠カメラの正面位置に達するタイミングを判定し、当該タイミングで前記望遠カメラに前記ブレードの撮影を行わせる撮影指令部と、
前記望遠カメラで撮影された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像の情報を出力可能な画像情報出力部と、を備えており、
前記画像情報出力部から出力された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像の情報から当該ブレードの点検用画像を生成する点検用画像生成部を備えていることを特徴とする風力発電設備の点検システム。
【請求項7】
請求項6記載の風力発電設備の点検システムにおいて、
前記点検用画像生成部は、前記画像情報出力部から出力された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像のステッチ処理を行うことにより、前記ブレード全体の画像を前記点検用画像として生成することを特徴とする風力発電設備の点検システム。
【請求項8】
請求項7記載の風力発電設備の点検システムにおいて、
前記風車は複数の前記ブレードを備えており、
前記点検用画像生成部は、前記望遠カメラによって撮影された前記各ブレードそれぞれの複数箇所の画像の取得時間に基づいて前記各画像それぞれが前記複数のブレードのうちの何れのブレードを対象とした画像であるかを紐付けし、当該紐付けされた複数の画像に対して前記ステッチ処理を行うことを特徴とする風力発電設備の点検システム。
【請求項9】
無人飛行体を利用して風力発電設備の点検を行う点検方法において、
前記無人飛行体に備えられた広角カメラによって、前記風力発電設備の風車における少なくともブレードの回転範囲を撮影し、この撮影された前記ブレードの回転位置の時間的変化に基づいて当該ブレードの回転速度を認識するブレード回転速度認識ステップと、
前記認識された前記ブレードの回転速度の情報に基づいて、点検対象である前記ブレードが、前記無人飛行体に備えられた望遠カメラの正面位置に達するタイミングを判定し、当該タイミングで前記望遠カメラが前記ブレードの撮影を行う撮影ステップと、
前記望遠カメラで撮影された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像の情報を前記無人飛行体から出力する画像情報出力ステップと、
前記出力された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像の情報から当該ブレードの点検用画像を生成する画像生成ステップとを含んでいることを特徴とする風力発電設備の点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備の点検に供される無人飛行体、および、風力発電設備の点検システム、並びに、風力発電設備の点検方法に係る。特に、本発明は、風力発電設備の稼働率の低下を招くことなしに当該風力発電設備の点検を行うための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電設備における風車のブレード(風車翼)の損傷の有無等を点検する場合、一般的には、ブレードの回転を停止させた状態で、風車のハブから垂下させたロープやゴンドラを使用して作業員がブレードの位置まで移動し、目視検査や打音検査を行っていた。このため、風力発電設備の点検(以下、ブレードの点検という場合もある)には多大な労力と時間を要していた。
【0003】
この点に鑑み、これまで、無人飛行体(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を利用して風力発電設備の点検を行うことが提案されている。
【0004】
特許文献1には、点検対象であるブレードが水平方向となるように当該ブレードの回転角度を調整すると共に、そのブレードの腹部または背部が地面と平行となるようにピッチ角度(ブレードの長手方向に沿う軸心周りの角度)を調整し、この点検対象であるブレード上に無人飛行体を着陸させ、当該無人飛行体によってブレードの点検(打音検査等)を行うことが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、風力発電設備が緊急停止した場合の点検に関し、ブレードの現時点の回転角度を判定し、当該回転角度に基づいて無人飛行体をブレードの点検開始位置に移動(飛行)させ、ブレードの長手方向に沿って無人飛行体を移動させながらブレードの各部を撮影していき点検用画像を取得することが開示されている。また、この特許文献2には、点検中の風速が比較的低い場合にはブレーキ装置によってブレードの回転を完全に停止させて点検を行い、点検中の風速が比較的高い場合には、風車の破損の防止を目的として、風からの揚力を殆ど受けないようにブレードのピッチ角度を調整し、ブレードが僅かに回転した状態で点検を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-20410号公報
【特許文献2】特開2022-108420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでの無人飛行体を利用した風力発電設備の点検にあっては、ブレードの回転を停止させた状態(特許文献1における点検状態)や、ブレードの回転を制限した状態(ピッチ角度を調整することで風からの揚力を殆ど受けないようにして回転を制限した状態:特許文献2における点検状態)で行っていた。このため、この点検中にあっては風力発電設備の発電が行われなかったり、発電量が大幅に低減してしまったりすることになり、風力発電設備の稼働率が大幅に低下してしまうといった課題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ブレードの回転を停止させたり回転を制限したりすることなく風力発電設備の点検を行うことができる無人飛行体、および、風力発電設備の点検システム、並びに、風力発電設備の点検方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、風力発電設備の点検に供される無人飛行体を前提とする。そして、この無人飛行体は、広角カメラと、望遠カメラと、ブレード回転速度認識部と、撮影指令部と、画像情報出力部とを備えていることを特徴とする。広角カメラは、前記風力発電設備の風車における少なくともブレードの回転範囲を撮影可能である。望遠カメラは、前記ブレードの一部を拡大して撮影可能である。ブレード回転速度認識部は、前記広角カメラで撮影された前記ブレードの回転位置の時間的変化に基づいて当該ブレードの回転速度を認識する。撮影指令部は、前記ブレード回転速度認識部によって認識された前記ブレードの回転速度の情報に基づいて、点検対象である前記ブレードが前記望遠カメラの正面位置に達するタイミングを判定し、当該タイミングで前記望遠カメラに前記ブレードの撮影を行わせる。画像情報出力部は、前記望遠カメラで撮影された前記点検対象である前記ブレードの画像の情報を出力可能である。
【0010】
この特定事項により、風力発電設備の点検を行うに際し、無人飛行体は、広角カメラで撮影されたブレードの回転位置の時間的変化に基づいてブレード回転速度認識部がブレードの回転速度を認識する。そして、撮影指令部が、点検対象であるブレードが望遠カメラの正面位置(正対する位置)に達するタイミングを判定し、当該タイミングで望遠カメラにブレードの撮影を行わせる。この撮影されたブレードの画像の情報は画像情報出力部から出力され、ブレードの損傷の有無等を認識するための情報として利用される。例えば管理者がこの画像を目視すること、または、この画像に対するAIによって自動判断すること等によりブレードの損傷の有無等を点検することになる。
【0011】
このように本解決手段では、ブレードの回転速度の情報に基づいて、点検対象であるブレードが望遠カメラの正面位置に達するタイミングで当該望遠カメラによってブレードの撮影が行われるため、ブレードの回転を停止させたり、ブレードの回転を制限したりすることなく、ブレードの点検を行うことができる。このため、点検中であっても風力発電設備の発電を継続して行うことができ(点検を行っていない場合と同等の発電量を得ることができ)、風力発電設備の稼働率を高く維持することができる。
【0012】
また、前記風車の周辺を飛行している状態において前記風車の向きを認識する風車向き認識部と、前記認識された前記風車の向きに基づいて当該風車に正対する基準位置まで飛行制御を行う基準位置飛行制御部とをさらに備え、前記ブレード回転速度認識部は、前記基準位置飛行制御部によって前記基準位置での飛行制御が行われている状態で前記ブレードの回転速度を認識するようになっている。
【0013】
この構成によれば、風車に正対する基準位置でブレードの回転速度を認識するため、ブレードの回転速度を高い精度で認識することができる。
【0014】
また、前記タイミングにおける前記点検対象である前記ブレードの延在方向に沿うように飛行制御を行う撮影位置変更制御部をさらに備え、前記撮影指令部は、前記撮影位置変更制御部によって前記ブレードの延在方向に沿った飛行制御によって飛行位置が所定の撮影位置まで変更された状態で、前記点検対象である前記ブレードが前記望遠カメラの正面位置に達するタイミングで当該望遠カメラに前記ブレードの撮影を行わせるようになっている。
【0015】
この構成によれば、ブレードの延在方向に沿った飛行制御によって飛行位置が所定の撮影位置まで変更された状態でブレードの撮影を行うようになっているため、撮影位置を変更しながらブレードの撮影を行うといった一連の撮影動作によってブレード全体に亘る各箇所の画像を取得することができ、ブレードの損傷等の見落としを抑制することができて、風力発電設備の点検の信頼性を高めることができる。
【0016】
また、前記ブレードの正面、背面および側面のうちの一つの面に対して前記望遠カメラでの撮影が完了した後、他の一つの面に対して前記望遠カメラが対向する位置まで飛行制御を行う撮影方向変更制御部を備え、前記撮影位置変更制御部は、前記撮影方向変更制御部による前記飛行制御が完了した後、前記他の一つの面に対し、前記ブレードの延在方向に沿った飛行制御を行うようになっている。
【0017】
これによれば、ブレードの正面、背面および側面それぞれに対して、順に、ブレードの延在方向に沿って撮影位置を変更しながらブレード全体の画像を取得することができる。つまり、ブレードの全周囲および延在方向の全体の画像を取得することができる。これにより、ブレードの損傷等の見落としを防止することができて、風力発電設備の点検の信頼性をいっそう高めることができる。
【0018】
また、洋上風力発電設備の点検に供される無人飛行体である場合、前記風車の移動周期および移動量を推定する移動推定部と、前記移動推定部によって推定された前記風車の移動周期および移動量に同期するように飛行位置を変更する飛行制御を行う同期飛行制御部とを備えていることが好ましい。
【0019】
洋上風力発電設備は、波の影響によって上下に周期的に移動することが想定され、その移動周期および移動量も波の影響によって変動する。本解決手段では、この点に鑑み、移動推定部によって風車の移動周期および移動量を推定し、この移動周期および移動量に同期するように、同期飛行制御部によって無人飛行体の飛行位置を変更する飛行制御を行うようにしている。これにより、各カメラの視野内でブレードが上下に移動してしまって、ブレード回転速度の認識精度が低下してしまったり、望遠カメラによるブレードの撮影位置にズレが生じたり撮影画像が不鮮明になってしまったりすることを抑制できる。その結果、洋上風力発電設備に対しても高い精度でブレードの点検を行うことができる。
【0020】
また、前記無人飛行体を利用した点検システムも本発明の技術的思想の範疇である。つまり、無人飛行体を利用して風力発電設備の点検を行う点検システムを前提とする。そして、この風力発電設備の点検システムは、前記無人飛行体が、広角カメラと、望遠カメラと、ブレード回転速度認識部と、撮影指令部と、画像情報出力部とを備えている。広角カメラは、前記風力発電設備の風車における少なくともブレードの回転範囲を撮影可能である。望遠カメラは、前記ブレードの一部を拡大して撮影可能である。ブレード回転速度認識部は、前記広角カメラで撮影された前記ブレードの回転位置の時間的変化に基づいて当該ブレードの回転速度を認識する。撮影指令部は、前記ブレード回転速度認識部によって認識された前記ブレードの回転速度の情報に基づいて、点検対象である前記ブレードが前記望遠カメラの正面位置に達するタイミングを判定し、当該タイミングで前記望遠カメラに前記ブレードの撮影を行わせる。画像情報出力部は、前記望遠カメラで撮影された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像の情報を出力可能である。また、本点検システムは、前記画像情報出力部から出力された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像の情報から当該ブレードの点検用画像を生成する点検用画像生成部を備えていることを特徴とする。
【0021】
この特定事項により、前述した場合と同様に、点検対象であるブレードが望遠カメラの正面位置に達するタイミングで当該望遠カメラによってブレードが撮影される。そして、ブレードの複数箇所の画像は画像情報出力部から点検用画像生成部へ出力され、点検用画像生成部では、このブレードの複数箇所それぞれの画像の情報から点検対象であるブレードの点検用画像が生成される。これにより、この点検用画像を管理者が目視すること、または、点検用画像に対しAIによって自動判断すること等によりブレードの損傷の有無等を点検することになる。このため、本解決手段によっても、ブレードの回転を停止させたり、ブレードの回転を制限したりすることなく、ブレードの点検を行うことができる。このため、点検中であっても風力発電設備の発電を継続して行うことができ、風力発電設備の稼働率を高く維持することができる。
【0022】
また、前記点検用画像生成部は、前記画像情報出力部から出力された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像のステッチ処理を行うことにより、前記ブレード全体の画像を前記点検用画像として生成するようになっている。
【0023】
例えば管理者が画像を目視することでブレードの損傷の有無等を点検したり、または、画像に対するAIによる自動判断によってブレードの損傷の有無等を点検したりするに当たり、ブレードの複数箇所それぞれの画像のステッチ処理を行うことによってブレード全体の画像を点検用画像として生成する(1つの画像として生成する)ようにしているので、点検(管理者の目視による点検やAIの自動判断による点検)の高効率化を図ることができる。特に、ブレードの複数箇所それぞれの画像を管理者が個別に目視して点検する場合には点検作業が煩雑になるが、本解決手段では、点検作業の高効率化によって管理者の負担軽減を図ることができる。
【0024】
また、前記風車は複数の前記ブレードを備えており、前記点検用画像生成部は、前記望遠カメラによって撮影された前記各ブレードそれぞれの複数箇所の画像の取得時間に基づいて前記各画像それぞれが前記複数のブレードのうちの何れのブレードを対象とした画像であるかを紐付けし、当該紐付けされた複数の画像に対して前記ステッチ処理を行うようになっている。
【0025】
これにより、各画像それぞれが何れのブレードのものであるのかを把握することができ、同一ブレードの画像を特定してステッチ処理による点検用画像を生成することができる。その結果、各ブレードそれぞれにおける点検用画像を正確に生成することが可能になる。
【0026】
また、前記無人飛行体を使用した点検システムにおいて実施される風力発電設備の点検方法も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、無人飛行体を利用して風力発電設備の点検を行う点検方法を前提とする。そして、この風力発電設備の点検方法は、前記無人飛行体に備えられた広角カメラによって、前記風力発電設備の風車における少なくともブレードの回転範囲を撮影し、この撮影された前記ブレードの回転位置の時間的変化に基づいて当該ブレードの回転速度を認識するブレード回転速度認識ステップと、前記認識された前記ブレードの回転速度の情報に基づいて、点検対象である前記ブレードが、前記無人飛行体に備えられた望遠カメラの正面位置に達するタイミングを判定し、当該タイミングで前記望遠カメラが前記ブレードの撮影を行う撮影ステップと、前記望遠カメラで撮影された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像の情報を前記無人飛行体から出力する画像情報出力ステップと、前記出力された前記点検対象である前記ブレードの複数箇所それぞれの画像の情報から当該ブレードの点検用画像を生成する画像生成ステップとを含んでいることを特徴とする。
【0027】
この特定事項によっても、前述した場合と同様に、ブレードの回転を停止させたり、ブレードの回転を制限したりすることなく、ブレードの点検を行うことができる。このため、点検中であっても風力発電設備の発電を継続して行うことができ、風力発電設備の稼働率を高く維持することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、無人飛行体に備えられた広角カメラによるブレードの撮影によって当該ブレードの回転速度を認識した上で、点検対象であるブレードが望遠カメラの正面位置に達するタイミングで当該望遠カメラによってブレードを撮影し、この撮影された画像の情報をブレードの損傷の有無等を認識するための情報として利用するようにしている。このため、ブレードの回転を停止させたり、ブレードの回転を制限したりすることなく、ブレードの点検を行うことができる。その結果、点検中であっても風力発電設備の発電を継続して行うことができ、風力発電設備の稼働率を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態における風力発電設備の風車を示す正面図である。
【
図2】実施形態に係る風力発電設備の点検システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る無人飛行体を示す斜視図である。
【
図4】無人飛行体の飛行制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】風車の上方を無人飛行体が飛行している状態を示し、
図5(a)は風車の平面図であり、
図5(b)は風車の正面図である。
【
図6】風車の上方を無人飛行体が飛行している状態において取得された下方の画像の一例を示す図である。
【
図7】無人飛行体が基準位置を飛行している状態を示し、
図7(a)は風車の平面図であり、
図7(b)は風車の側面図である。
【
図8】無人飛行体がブレード回転上端位置に達したブレードの上端に対向した位置で飛行している状態を示す風車の側面図である。
【
図9】撮影方向を変更するための無人飛行体の飛行経路を示す風車の平面図である。
【
図10】風力発電設備の点検システムに備えられた情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11(a)~(f)はブレード正面の撮影動作によって取得された各撮影箇所の画像の一例を示す図である。
【
図12】
図11(a)~(f)の画像をステッチ処理して得られるブレード正面全体の点検用画像の一例を示す図である。
【
図13】
図13(a)~(f)はブレード側面の撮影動作によって取得された各撮影箇所の画像の一例を示す図である。
【
図14】
図13(a)~(f)の画像をステッチ処理して得られるブレード側面全体の点検用画像の一例を示す図である。
【
図15】ブレード点検動作の手順を説明するためのフローチャート図である。
【
図16】変形例1に係る洋上風力発電設備の風車を示す正面図である。
【
図17】変形例1における無人飛行体の飛行制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図18】変形例2において各ブレードの側面の撮影動作を説明するための風車の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、地上に設置された風力発電設備を対象とし、該風力発電設備に備えられた風車のブレードの損傷の有無等の点検に供される無人飛行体(ドローンや自律飛行ロボットとも呼ばれる)、および、点検システム、並びに、点検方法として本発明を適用した場合について説明する。
【0031】
-風車の構成-
風力発電設備の点検システムについて説明する前に、点検対象である風力発電設備の風車について簡単に説明する。
【0032】
図1は、風力発電設備の風車100を示す正面図である。この
図1に示すように、風車100は、タワー101の上部に搭載されたナセル102と、ハブ103と、該ハブ103に取り付けられた3枚のブレード104a~104cとを備えている。
【0033】
ナセル102は、鉛直軸周りの角度(ヨー角度)が調整可能となっている。このヨー角度は風向きに応じて自動調整される。ブレード104a~104cは、当該ブレード104a~104cの長手方向に沿う軸心周りの角度(ピッチ角度)が調整可能となっている。このピッチ角度は風速に応じて自動調整される。
【0034】
ナセル102の内部には、ハブ103に連結されたロータ軸、ロータ軸の回転を加速する増速機、増速機に連結された発電機等が収容されている。これにより、風力を受けて回転するブレード104a~104cの回転力が、ハブ103、ロータ軸、増速機を経て発電機に伝達されて交流電力が生成されるようになっている。そして、この生成された交流電力は、変圧器によって昇圧された後、電力ケーブルによって電力設備に送電されることになる。
【0035】
-風力発電設備の点検システム-
次に、風力発電設備の点検システムについて説明する。
図2は、本実施形態に係る風力発電設備の点検システム(以下、単に点検システムという)1の概略構成を示すブロック図である。この
図2に示すように、点検システム1は、無人飛行体2、操縦者が操縦するコントローラ3、風力発電設備を管理する管理事務所等に設置された情報処理装置4を含んで構成されており、無人飛行体2とコントローラ3との間、および、無人飛行体2と情報処理装置4との間で各種の情報の送受信が可能となっている。これら情報の送受信の形態としては、LTE(Long Term Evolution)、4G(第4世代)、5G(第5世代)等のマルチキャリアの基地局を介した無線通信による通信が採用可能である。その他の通信形態を利用するようにしてもよい。この通信により、無人飛行体2の飛行状態の制御や、無人飛行体2から情報処理装置4への画像情報の送信等が行われる。尚、前記情報処理装置4は、コントローラ3に搭載されていてもよい。以下、点検システム1の各構成要素について具体的に説明する。
【0036】
(無人飛行体の構成)
図3は、本実施形態に係る無人飛行体2を示す斜視図である。この
図3に示すように無人飛行体2は、複数のロータ(回転翼)24a~24dが飛行体本体21の周りに均等に配設されたマルチコプタである。具体的には、4つのロータ24a~24dを有するクアッドコプタで構成されている。尚、6つのロータを有するヘキサコプタ、8つのロータを有するオプトコプタ等の無人飛行体であってもよい。また、ロータが1つのシングルロータ型の小型無人ヘリコプタであってもよい。
【0037】
以下、本実施形態に係る無人飛行体2の構成について説明する。以下の説明では、
図3におけるX方向を無人飛行体2の左右方向と呼び、図中のX1方向側を左側(無人飛行体2における左側)、X2方向側を右側(無人飛行体2における右側)とそれぞれ呼ぶこととする。また、
図3におけるY方向を無人飛行体2の前後方向と呼び、図中のY1方向側を前側、Y2方向側を後側とそれぞれ呼ぶこととする。また、
図3におけるZ方向を無人飛行体2の上下方向と呼び、図中のZ1方向側を上側、Z2方向側を下側とそれぞれ呼ぶこととする。
【0038】
図3に示すように、無人飛行体2は、飛行体本体21を備え、該飛行体本体21の各側面の前側部分および後側部分それぞれから外側に延在する複数(
図3に示すものでは4本)のアーム22a~22dを備えている。これらアーム22a~22dの外側端それぞれには、鉛直軸周りに回転可能な回転軸を有するモータ23a~23dが設けられており、これらモータ23a~23dの回転軸にロータ24a~24dが取り付けられている。本実施形態に係る無人飛行体2にあっては、前側のモータ23a,23bの回転軸の上端にロータ24a,24bが取り付けられており、後側のモータ23c,23dの回転軸の下端にロータ24c,24dが取り付けられている。飛行体本体21の周方向において互いに隣り合うロータ24a~24dは互いに反対方向に回転可能となっている。これにより、モータ23a~23dの作動に伴ってロータ24a~24dが回転することにより揚力が発生して無人飛行体2が飛行可能となっている。また、各モータ23a~23dの回転速度を個別に制御することによって、無人飛行体2の鉛直方向の上昇および下降、任意の斜め方向の上昇および下降、空中停止、前進、後退、右移動、左移動、右回転、左回転等が可能となっている。
【0039】
また、飛行体本体21の前面には、複数のカメラ25,26が設けられている。複数のカメラ25,26としては、飛行体本体21の前面における右寄りの位置(X2方向寄りの位置:無人飛行体2の正面視にあっては左寄りの位置)に配置された広角カメラ25と、左寄りの位置(X1方向寄りの位置:無人飛行体2の正面視にあっては右寄りの位置)に配置された望遠カメラ26とが備えられている。
【0040】
広角カメラ25は、視野角度が例えば80°程度に設定されており、前方の比較的広い範囲の撮影が可能となっている。これにより、無人飛行体2が風車100に正対した飛行状態となった場合には、広角カメラ25によって、風力発電設備の風車100のブレード104a~104cの全体またはブレード104a~104cの回転が認識できる比較的広範囲を撮影し(本発明でいうブレードの回転範囲を撮影し)、この撮影した画像の情報がブレード104a~104cの回転速度の算出に利用可能となっている。尚、この広角カメラ25の視野角度としては前述したものには限定されず、任意に設定可能である。但し、前述したように風車100のブレード104a~104cの全体またはブレード104a~104cの回転が認識できる比較的広範囲を撮影する必要があることから、無人飛行体2の飛行位置がブレード104a~104cから離れ過ぎないようにするためにはある程度の大きさの視野角度が必要である。
【0041】
望遠カメラ26は、例えば15倍程度の光学ズームおよび200倍程度のハイブリッドズーム(光学ズームとデジタルズームとを組み合わせたズーム)が可能となっている。これにより、ブレード104a~104cの点検時にあっては、無人飛行体2をブレード104a~104cに正対した飛行状態とし、ブレード104a~104cの一部(望遠カメラ26に正対する部分)を拡大して撮影することで、ブレード104a~104cの表面に存在する僅かなクラック等の損傷が認識可能な画像を取得できるようになっている(具体的なブレード104a~104cの撮影動作については後述する)。尚、この望遠カメラ26のズーム倍率についても前述したものには限定されず、任意に設定可能であるが、ブレード104a~104cの点検の精度を十分に確保できる程度のズーム倍率としておくことが必要である。
【0042】
各カメラ25,26の配設位置としては前述のものには限定されず任意に設定可能である。
【0043】
(無人飛行体の制御系)
次に、無人飛行体2の制御系について説明する。以下で説明する無人飛行体2の制御系は一例であって、本発明に係る無人飛行体2の制御系は以下のものには限定されない。無人飛行体2は、操縦者が操縦するコントローラ3から送信される飛行指令情報を受信し、その飛行指令情報に従ってモータ23a~23dの回転速度が制御されて飛行し、また、所定の飛行位置で停止(所謂ホバリング)するように制御される。
【0044】
また、無人飛行体2は、風車100のブレード104a~104cの点検時にあっては、コントローラ3から送信される飛行指令情報に従った飛行に加えて、所定の飛行経路(コンピュータプログラムによって規定された飛行経路)を飛行しながら、前記望遠カメラ26によって点検対象であるブレード104a~104cを撮影し、この撮影によって取得した画像の情報を情報処理装置4に送信するようになっている(このブレード104a~104cの点検時における無人飛行体2の飛行、望遠カメラ26によるブレード104a~104cの撮影、および、画像の情報の送信の各動作の詳細については後述する)。
【0045】
図2に示すように、無人飛行体2の制御系としては、位置・姿勢センサ210、通信部220、記憶部230、制御部240を備えている。
【0046】
<位置・姿勢センサ>
位置・姿勢センサ210は、無人飛行体2の現在の位置(飛行位置)および姿勢(飛行姿勢)を算出するための情報を取得するセンサである。位置・姿勢センサ210は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の航法衛星(人工衛星)から送信される電波(航法信号)を受信する受信機、加速度を計測する加速度センサ、方位を計測する電子コンパス、および角速度を計測するジャイロセンサ等を備えている。具体的には、位置・姿勢センサ210において、受信機が複数の航法衛星から送信される航法信号を受信して制御部240に出力すると共に電子コンパスおよびジャイロセンサによる計測信号を制御部240に出力する。これらの信号に基づいて制御部240は、無人飛行体2の現在の飛行位置および飛行姿勢を算出する。特に、本実施形態では、無人飛行体2の現在の飛行位置の検出精度を高めるためにRTK(Real Time Kinematic)による測位が行われるようになっている。
【0047】
<通信部>
通信部220は、コントローラ3および情報処理装置4との間で通信するための通信モジュールである。前述したように、コントローラ3からは、操縦者の操縦による飛行指令情報が送信されており、この飛行指令情報を通信部220が受信して制御部240に出力する。これにより、飛行指令情報に従ってモータ23a~23dの回転速度が制御されて無人飛行体2が飛行することになる。また、通信部220は、望遠カメラ26によって撮影された画像の情報を当該望遠カメラ26から受信し、この画像の情報を情報処理装置4に送信する。また、その他の情報(例えば点検作業完了情報や、点検作業が正常に行われなかった場合の異常情報等)を情報処理装置4に送信するようになっていてもよい。
【0048】
<記憶部>
記憶部230は、HDD(Hard Disk Drive)等の情報記憶装置である。この記憶部230は、各種プログラム(コンピュータプログラム)や各種データを記憶し、制御部240との間でこれらの情報を入出力する。
【0049】
各種プログラムとしては、ブレード104a~104cの点検時における無人飛行体2の飛行経路や飛行姿勢を規定するためのプログラムが含まれる。各種データとしては、位置・姿勢情報、経路情報等といった制御部240の各処理に用いられる情報が含まれる。位置・姿勢情報は、位置・姿勢センサ210によって取得された情報から算出された無人飛行体2の飛行位置および飛行姿勢を予め定められた所定時間間隔で循環記憶した履歴(飛行位置および飛行姿勢の履歴)である。経路情報は、ブレード104a~104cの点検時における無人飛行体2の飛行経路の情報であって、この点検時に無人飛行体2が移動する予定である飛行経路に関する情報である。具体的には、飛行経路上における座標列(x,y,z)と、各飛行位置(座標)における速度や加速度を対応付けた情報となっている。
【0050】
<制御部>
制御部240は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータであり、記憶部230からプログラムやデータを読み出す。制御部240は、このプログラムによって実現される機能部として、位置・姿勢算出部241、飛行制御部242、ブレード回転速度認識部243、撮影タイミング決定部244、撮影指令部245、画像情報出力部246を備えている。
【0051】
位置・姿勢算出部241は、位置・姿勢センサ210の出力から飛行空間における無人飛行体2の現在の飛行位置および飛行姿勢を算出し、位置・姿勢情報として記憶部230に記憶させる。また、この位置・姿勢算出部241は、例えば、位置・姿勢センサ210から出力された航法信号から緯度・経度・高度を求め、予め記憶した変換規則を用いて飛行空間の座標系における飛行位置に変換する。更に、この位置・姿勢算出部241は、位置・姿勢センサ210から出力された加速度センサおよびジャイロセンサの計測信号から、飛行空間の座標系における現在の飛行姿勢を求める。尚、位置・姿勢センサ210から出力された電子コンパスの計測信号から、飛行空間の座標系における方位を求め、他のセンサからの計測信号を更に用いて現在の飛行姿勢を算出するようになっていてもよい。
【0052】
飛行制御部242は、経路情報(ブレード104a~104cの点検時における無人飛行体2の飛行経路や飛行姿勢を規定した情報等)、位置・姿勢情報を参照し、無人飛行体2を経路情報に記された飛行経路に追従して移動するように各モータ23a~23dの回転速度を制御する。具体的には、飛行制御部242は、位置・姿勢情報に基づいた無人飛行体2の現在の(現在の飛行位置における)速度、加速度および飛行姿勢に基づき、これらの値が経路情報に記された現在の飛行位置における速度、加速度および飛行姿勢との誤差が小さくなるように各モータ23a~23dの回転速度を制御する。
【0053】
図4は、飛行制御部242の概略構成を示すブロック図である。この
図4に示すように、飛行制御部242は、ブレード104a~104cの点検時における無人飛行体2の飛行経路を自動制御するためのプログラムによって実現される機能部として、風車向き認識部242a、基準位置飛行制御部242b、撮影位置変更制御部242c、撮影方向変更制御部242dを備えている。以下、これらの機能部の機能を、前述のブレード回転速度認識部243、撮影タイミング決定部244、撮影指令部245および画像情報出力部246の機能と併せて説明する。
【0054】
風車向き認識部242aは、風車100の上方を無人飛行体2が飛行している状態においてナセル102の向き(ブレード104a~104cの回転軸心の延在方向)を認識する機能部である。具体的には、
図5(風車100の上方を無人飛行体2が飛行している状態を示し、
図5(a)は風車100の平面図であり、
図5(b)は風車100の正面図である:これらの図では無人飛行体2を単に四角形で表している)に示すように、風車100の上方を無人飛行体2が飛行している状態において、下方の画像(風車100を上側から見た画像)を撮影し、この画像からナセル102の向きを認識する。より具体的に、
図6は、この場合に取得される画像を示しており、図中に一点鎖線で囲んだ範囲をブレード104a~104cと認識し、このブレード104a~104cの延在方向に直交する方向をナセル102の向きとして認識することになる。また、ナセル102を画像認識し、このナセル102の延在方向を当該ナセル102の向きとして認識するようにしてもよい。このようにブレード104a~104cやナセル102を認識する具体的な手法としては、例えば、周知の画像マッチング処理によって認識する手法や、予めアノテーションされたデータ(ラベルが付けられたブレード104a~104cやナセル102のデータ;深層学習によってブレード104a~104cやナセル102を認識するための教師データ)を利用してナセル102の向きを認識する手法(AIを利用してナセル102の向きを認識する手法)が挙げられる。尚、前述した下方の画像を取得するための手段としては特に限定されるものではないが、例えば広角カメラ25を支持するジンバルを備えさせ、このジンバルを利用して広角カメラ25を下向きにすることや、飛行体本体21の下部に、下方の画像を取得するための専用のカメラを設けること等が挙げられる。
【0055】
基準位置飛行制御部242bは、無人飛行体2を、風車100に正対する飛行位置まで飛行させる飛行制御を行う機能部である。具体的には、ハブ103の高さの情報を予め登録しておくと共に、前記風車向き認識部242aによって認識されたナセル102の向きの情報を利用してハブ103の中心位置の座標(ナセル102の向きに応じて決定されるハブ103の水平座標位置と、ハブ103の高さによって決まる鉛直座標位置)を把握し、
図7に示すように(この
図7は、無人飛行体2が基準位置を飛行している状態を示し、
図7(a)は風車100の平面図であり、
図7(b)は風車100の側面図である)、この座標から所定距離だけ離れた飛行位置(ハブ103の中心位置からブレード104a~104cの回転軸心の延在方向に沿う方向に所定距離だけ後退した飛行位置)を基準位置として設定し、当該基準位置に向けて無人飛行体2を飛行させるように各モータ23a~23dの回転速度を制御する。この基準位置におけるハブ103からの距離(前記所定距離:
図7(b)における距離L1を参照)としては任意に設定可能であるが、前述した広角カメラ25の視野角度に応じ、風車100のブレード104a~104cの全体またはブレード104a~104cの回転が認識できる比較的広範囲を広角カメラ25によって撮影することが可能な距離として予め設定されている。また、無人飛行体2からハブ103までの距離は、前記位置・姿勢算出部241によって算出された飛行位置の情報と、風車100の位置情報(例えばハブ103の先端の位置情報)との偏差に基づいて算出される。
【0056】
ブレード回転速度認識部243(
図2を参照)は、無人飛行体2を基準位置で飛行(ホバリング)させている状態で、広角カメラ25によって風車100を撮影(回転しているブレード104a~104cを撮影)し、ブレード104a~104cの回転位置の時間的変化に基づいて当該ブレード104a~104cの回転速度(ブレード104a~104cの回転角速度)を認識する。この回転しているブレード104a~104cを撮影して当該ブレード104a~104cの回転速度を算出する手法としては、単位時間当たりのブレード104a~104cの位置の変化を画像処理によって取得する手法や、前述したAIを利用した手法が挙げられる。尚、後述するように本実施形態では、ブレード104a~104cの左右の各側面の画像も取得するようになっている。このため、ブレード104a~104cの側面視における当該ブレード104a~104cの回転速度も認識する必要がある。このブレード104a~104cの側面視において回転速度を認識する手法としては、この側面視においてブレード104a~104cの先端が最も高い位置(または最も低い位置)に達したタイミングが、何れかのブレード104a(104b,104c)がハブ103の上側(または下側)に位置して鉛直方向に延在する位置になったと認識し、同一のブレード104a(104b,104c)が再び同一位置に達したタイミングをブレード104a~104cの一回転の周期(1回目に認識されたタイミングと4回目に認識されたタイミングとの時間間隔)として認識して回転速度を算出することになる。尚、前述したAIを利用して回転速度を求めるようにしてもよい。
【0057】
撮影タイミング決定部244は、ブレード回転速度認識部243によって認識されたブレード104a~104cの回転速度から、同一のブレード104a(104b,104c)が再び同一位置に回転してくるまでの周期(時間間隔)を算出する。例えば、ブレード104aが、ハブ103の上側に位置して鉛直方向に延在する位置(以下、この位置をブレード回転上端位置という:
図5(b)で示したブレード104aの位置を参照)となる周期を算出する。この周期は、ブレード104a~104cの回転角速度の逆数として求めることができる。このため、同一のブレード104aを周期的に撮影する場合には、この算出された周期毎のタイミングで撮影を実行することになる。また、3枚のブレード104a~104cそれぞれを順に撮影していく場合には、これらブレード104a~104cが周方向で等角度間隔で配設されているため、前記周期の1/3の時間間隔で望遠カメラ26によって撮影を実行することにより、各ブレード104a~104cが望遠カメラ26の正面位置を通過する度に各ブレード104a~104cが順に撮影されていくことになる。
【0058】
撮影位置変更制御部242c(
図4を参照)は、風車100に正対する飛行位置(ハブ103の中心に対向する飛行位置:基準位置)で飛行していた無人飛行体2を、ブレード104a~104cの撮影位置まで飛行制御を行う機能部である。例えば、前記ブレード回転上端位置に達したブレード104aを撮影する場合には、無人飛行体2を、基準位置から鉛直方向に上昇させ、
図8に示すように、無人飛行体2を、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端に対向させ、望遠カメラ26の視野内にブレード104aの上端が入るように各モータ23a~23dの回転速度を制御する。この場合における無人飛行体2の上昇移動量は、ブレード104a~104cの正面の画像を認識しながら、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端を認識し、この上端に無人飛行体2を対向させて、望遠カメラ26の視野内にブレード104aの上端が入る位置となるまでの距離である。また、予めブレード104aの長さ寸法を登録しておき、この長さ寸法に相当する距離だけ、無人飛行体2を基準位置から鉛直方向に上昇させることで、望遠カメラ26の視野内にブレード104aの上端が入るようにしてもよい。
【0059】
撮影指令部245(
図2を参照)は、このように撮影位置変更制御部242cによって無人飛行体2の飛行位置が制御された状態で望遠カメラ26に対して撮影指令信号を出力する。これにより、望遠カメラ26によってブレード104aの上端およびその周辺が撮影されることになる。また、本実施形態における撮影指令部245は、無人飛行体2の飛行位置を維持したまま各ブレード(3枚のブレード)104a~104cを順に撮影していくようになっている。つまり、前記周期(ブレード104aが一回転する周期)の1/3の時間間隔で望遠カメラ26に対して撮影指令信号を出力することにより、第1のブレード104a、第2のブレード104b、および、第3のブレード104cが順に撮影されるようにしている。
【0060】
そして、この撮影が行われた後、撮影位置変更制御部242cは、無人飛行体2を鉛直方向に所定距離だけ下降させ、前述の撮影位置とは異なる位置(ブレード104aの上端よりもハブ103に近い位置)が望遠カメラ26の視野内に入るように各モータ23a~23dの回転速度を制御する。撮影位置変更制御部242cは、ブレード104a~104cの撮影が行われる度に、無人飛行体2を鉛直方向に所定距離だけ下降させていく。この場合の下降量としては、前回の撮影における望遠カメラ26の視野の範囲と今回の撮影における望遠カメラ26の視野の範囲(下降することで変更された視野の範囲)とが一部オーバラップ(例えば鉛直方向の寸法で30%程度オーバラップ)するように予め設定されている。このようにして、無人飛行体2が鉛直方向に所定距離だけ下降されて望遠カメラ26の視野が変更された状態で、撮影指令部245は、望遠カメラ26に対して撮影指令信号を出力する。これにより、各ブレード104a~104cにおける前回とは異なる範囲の画像が取得されるようになっている。尚、前記オーバラップの範囲は前述した値には限定されず、任意に設定可能である。
【0061】
画像情報出力部246は、望遠カメラ26によって撮影されたブレード104a~104cの画像の情報を望遠カメラ26から受け取り、通信部220に出力するようになっている。例えば望遠カメラ26による撮影が行われる度に該望遠カメラ26から画像の情報を受け取り、この画像の情報を通信部220に出力するようになっている。これにより、この画像の情報は通信部220から情報処理装置4に送信されることになる。
【0062】
撮影方向変更制御部242dは、ブレード104a~104cの正面、背面、右側面および左側面のうちの一つの面に対して望遠カメラ26での撮影が完了した後、他の一つの面に対して望遠カメラ26が対向する飛行位置まで飛行制御を行う機能部である。例えば、
図9(撮影方向を変更するための無人飛行体2の飛行経路を示す風車100の平面図)に示すように、無人飛行体2を図中のA位置で飛行させてブレード104a~104cの正面の撮影を行い(各ブレード104a~104cの正面の外周端周辺から内周端周辺に亘る各部の撮影を行い)、この撮影が完了した後、無人飛行体2を図中のB位置まで飛行させてブレード104a~104cの右側面の撮影を行う。そして、この右側面の撮影が完了した後、無人飛行体2を図中のC位置まで飛行させてブレード104a~104cの背面の撮影を行う。更に、この背面の撮影が完了した後、無人飛行体2を図中のD位置まで飛行させてブレード104a~104cの左側面の撮影を行うようにする。このようにして、各ブレード104a~104cの全周囲の画像が取得されるようにしている。前記B位置~D位置それぞれにおいて撮影を開始するに当たっても、無人飛行体2を、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端に対向させ、望遠カメラ26の視野内にブレード104aの上端が入るように各モータ23a~23dの回転速度を制御することになる。この場合、C位置において、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端に無人飛行体2を対向させるに際しては、前述したA位置で撮影を開始した位置情報(ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端の位置情報)を流用するようにしてもよいし、ブレード104a~104cの背面の画像を認識しながら、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端を認識し、この上端に無人飛行体2を対向させて、望遠カメラ26の視野内にブレード104aの上端が入るように各モータ23a~23dの回転速度を制御するようにしてもよい。同様に、B位置およびD位置において、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端に無人飛行体2を対向させるに際しては、前述したA位置で撮影を開始した位置情報(ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端の位置情報)を流用するようにしてもよいし、ブレード104a~104cの側面の画像を認識しながら、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端(側面視においてブレード104aの先端が最も高い位置に達したタイミングにおける当該位置)を認識し、この上端に無人飛行体2を対向させ、望遠カメラ26の視野内にブレード104aの上端が入るように各モータ23a~23dの回転速度を制御するようにしてもよい。
【0063】
(情報処理装置)
次に、情報処理装置4について説明する。以下で説明する情報処理装置4の構成は一例であって、本発明に係る情報処理装置4は以下のものには限定されない。
図10は、情報処理装置4を示すブロック図である。この
図10に示すように、情報処理装置4は、通信部41、点検用画像生成部42、画像表示部43、および、記憶部44を備えている。
【0064】
<通信部>
通信部41は、無人飛行体2との間で通信するための通信モジュールである。この通信部41は、無人飛行体2の画像情報出力部246から出力されたブレード104a~104cの画像の情報を通信部220を経て受信する。この受信した画像の情報は、点検用画像生成部42に出力される。
【0065】
<点検用画像生成部>
点検用画像生成部42は、通信部41が受信した画像(望遠カメラ26によって撮影されたブレード104a~104cの複数の画像)に対してステッチ処理を行うことにより、各ブレード104a~104cの各面それぞれの全体の画像を点検用画像として生成するものである。前述したように、各画像は鉛直方向(ブレード104a~104cの延在方向)で一部がオーバラップした画像となっているので、このオーバラップ量を考慮してステッチ処理を行い、ブレード全体を一つの画像とする点検用画像を生成する。
【0066】
図11(a)~(f)はブレード104aの正面の撮影動作によって取得された各撮影箇所の画像の一例を示す図である。
図11(a)~(f)の順で、ブレード104aの外周端から内周端に亘る画像となっている。点検用画像生成部42は、これら画像に対してステッチ処理を行うことにより、
図12に示すようなブレード104aの正面の全体の画像を点検用画像として生成する。同様に、
図13(a)~(f)はブレード104aの左側面の撮影動作によって取得された各撮影箇所の画像の一例を示す図である。この
図13にあっても、
図13(a)~(f)の順で、ブレード104aの外周端から内周端に亘る画像となっている。点検用画像生成部42は、これら画像に対してステッチ処理を行うことにより、
図14に示すようなブレード104aの左側面の全体の画像を点検用画像として生成する。ブレード104aにおける背面および右側面の画像に対しても同様の処理が行われて点検用画像が生成される。また、他のブレード104b,104cそれぞれにおける各面に対しても同様の処理が行われて点検用画像が生成される。
【0067】
尚、各ブレード104a~104cそれぞれの各面における複数の画像を取得した場合、同一ブレードの同一面を対象とした画像を集約して(画像毎の紐付けを行って)ステッチ処理を実施する必要がある。このため、本実施形態では、点検用画像生成部42が、以下の処理によって画像毎の紐付けを行うようにしている。つまり、1つの風力発電設備の点検時間(撮影に要する時間)は比較的短く、この点検時間中におけるブレード104a~104cの回転速度は殆ど変化しない。このことを利用し、各画像それぞれが取得された時刻の情報を取得して、各画像それぞれに対して取得時刻情報を割り当てておき、この取得時刻情報に基づいて画像毎の紐付けを行う。これによって、同一ブレードの同一面を対象とした画像を集約してステッチ処理を実施し、各ブレード104a~104cの各面それぞれの点検用画像を生成することになる。例えば各ブレード104a~104cの正面の画像を取得する場合、等時間間隔で、第1のブレード104aの画像の取得、第2のブレード104bの画像の取得、第3のブレード104cの画像の取得が順に繰り返されることになるので、各画像の取得時刻情報を認識することにより、各画像それぞれが何れのブレード104a(104b,104c)のものであるのかを把握することができる。つまり、画像毎の紐付けを行うことができる。これにより、同一ブレードの画像を特定することができ、各ブレード104a~104cそれぞれの点検用画像を生成することが可能である。
【0068】
また、各ブレード104a~104cにおける撮影対象である面を変更する場合(撮影対象を正面、背面、右側面および左側面の間で変更する場合)、広角カメラ25によるブレード104a~104cの連続撮影が可能となるように無人飛行体2の飛行位置および飛行姿勢を制御し、これによって、ブレード104a~104cの回転位置を継続して認識することにより、その後の撮影動作によって取得される画像が何れのブレード104a(104b,104c)のものであるのかを把握できるようにしてもよい。これによっても、画像毎の紐付けを行うことが可能である。
【0069】
<画像表示部>
画像表示部43は、点検用画像生成部42によって生成された点検用画像を表示するモニタであって、例えば液晶ディスプレイで構成されている。
【0070】
<記憶部>
記憶部44は、点検用画像生成部42によって生成された点検用画像を記憶する。一般的にブレード104a~104cの点検は所定期間毎(例えば数ヶ月毎)に実施されるので、各点検で生成された点検用画像を記憶部44に記憶していき、各点検用画像を比較することで(例えば画像表示部43に表示させて比較すること、または、AIによる比較を行うことで)、ブレード104a~104cの経年劣化の度合いを把握することができるようになっている。
【0071】
-風力発電設備の点検動作-
次に、前述の如く構成された点検システム1による風力発電設備の点検動作(ブレード104a~104cの点検動作)について説明する。
【0072】
図15は、ブレード104a~104cの点検動作の手順を説明するためのフローチャート図である。
【0073】
この点検動作にあっては、点検対象である風車100が、初回の点検動作であった場合(これまで一度も点検が行われなかった場合)には、先ず、操縦者がコントローラ3を操縦することによる風車100の位置の登録動作が行われる。一方、位置の登録が行われた風車100に対する以後の点検動作(2回目以降の点検動作)では、点検が指定された風車100の位置まで無人飛行体2の自動飛行が行われることになる。例えば、複数の風車100を管理している場合に、特定の風車100に対して点検を行う場合には、その点検対象である風車100の個体情報(ID)を指定することにより、当該風車100の位置まで無人飛行体2の自動飛行が行われることになる。
【0074】
先ず、ステップST1において、操縦者が操縦するコントローラ3から、風車位置登録指示情報を受信したか否かを判定する。前述したように、初回の点検動作にあっては、操縦者がコントローラ3を操縦することによる風車100の位置の登録動作が行われる。この場合、操縦者は無人飛行体2が風車100の上方まで飛行するようにコントローラ3を操縦する。そして、無人飛行体2が風車100の真上に達したタイミングでコントローラ3を操作し(例えば、風車位置登録指示スイッチを押下し)、これによって風車位置登録指示情報が無人飛行体2に送信される。この風車位置登録指示情報を受信した無人飛行体2は、現在の位置を風車100の位置として、無人飛行体2の記憶部230または情報処理装置4の記憶部44に登録することになる。このようにして風車位置登録指示情報を受信した場合には、ステップST1でYES判定されてステップST4に移る。
【0075】
一方、風車位置登録指示情報が送信されておらず、ステップST1でNO判定されている場合には、ステップST2に移り、ブレード点検指示情報を受信したか否かを判定する。つまり、既に位置の登録が行われている風車100を点検する場合には、この風車100の位置をコントローラ3の操作によって登録する必要がないので、無人飛行体2にブレード点検指示情報が送信されることになる。例えば、情報処理装置4からブレード点検指示情報が送信され、この情報を無人飛行体2が受信することになる。
【0076】
このブレード点検指示情報を受信しておらず、ステップST2でNO判定されている場合には、そのままENDされる。一方、ブレード点検指示情報を受信し、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、無人飛行体2が風車100の真上に達するように飛行制御が行われる。つまり、
図5に示すように、無人飛行体2は自動で風車100の真上まで飛行することになる。
【0077】
このようにしてブレード点検指示情報を受信したことに伴って無人飛行体2が風車100の真上に達するように飛行制御が行われた後、ステップST4に移る。
【0078】
ステップST4では、ナセル102の向きを認識することによる風車向き認識処理が行われる(前記風車向き認識部242aによる認識処理)。この風車向き認識処理では、前述したように、風車100を上側から見た画像からブレード104a~104cを認識し、このブレード104a~104cの延在方向に直交する方向をナセル102の向きとして認識する(前述した
図6を参照)。または、ナセル102を画像認識し、このナセル102の延在方向を当該ナセル102の向きとして認識する。
【0079】
ステップST5では、無人飛行体2を前記基準位置まで飛行させる飛行制御を実施する(前記基準位置飛行制御部242bによる飛行制御)。つまり、
図7に示すように、ハブ103の中心位置からブレード104a~104cの回転軸心の延在方向に沿う方向に所定距離だけ後退した飛行位置を基準位置として設定して、当該基準位置に向けて無人飛行体2を飛行させる。
【0080】
ステップST6では、無人飛行体2を基準位置で飛行させている状態でブレード回転速度認識処理を実施する(前記ブレード回転速度認識部243による認識処理:本発明でいうブレード回転速度認識ステップの実施)。つまり、広角カメラ25によって風車100を撮影し、ブレード104a~104cの回転位置の時間的変化に基づいて当該ブレード104a~104cの回転速度を認識する。
【0081】
ステップST7では、ステップST6で認識されたブレード回転速度に基づいた撮影タイミング決定処理を実施する(前記撮影タイミング決定部244による決定処理)。つまり、ブレード回転速度から、同一のブレード104a(104b,104c)が再び同一位置に回転してくるまでの周期を算出することにより、望遠カメラ26の撮影タイミングを決定する。
【0082】
ステップST8では、望遠カメラ26の撮影方向として変数Lを、ブレード104a~104cにおける撮影位置として変数Mを、撮影対象であるブレード104a~104cとして変数Nを設定した上で、これら変数を初期値として「L=1」「M=1」「N=1」に設定する。例えば、「L=1」は、望遠カメラ26の撮影方向としてブレード104a~104cの正面に向く方向に設定するものである。「M=1」は、ブレード104a~104cにおける撮影位置として、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端(外周端)およびその周辺を撮影位置に設定するものである。「N=1」は、撮影対象としてブレード104a(第1のブレード104a)に設定するものである。
【0083】
ステップST9では、無人飛行体2に対する飛行指令情報として現在の「L(L=1)」および「M(M=1)」を与える。これにより、無人飛行体2は、望遠カメラ26の撮影方向がブレード104a~104cの正面に向く方向となるように、また、望遠カメラ26が、ブレード回転上端位置に達したブレード104aの上端およびその周辺に対向するように飛行制御されることになる(
図8を参照)。
【0084】
そして、「N=1」と設定されているため、ステップST10では、ブレード104aが望遠カメラ26の正面位置に達するタイミングで該望遠カメラ26による撮影が実行される(前記撮影指令部245からの撮影指令信号の出力による撮影の実行:本発明でいう撮影ステップの実施)。つまり、ブレード104aの正面における上端およびその周辺の画像が取得され、この画像が、画像情報出力部246を経て通信部220から情報処理装置4に送信される(本発明でいう画像情報出力ステップの実施)。
【0085】
その後、ステップST11では、「N」に「1」が加算され「N=2」となる。これにより、撮影対象としてブレード104b(第2のブレード104b)に設定される。ステップST12では、「N」が「3」を超えたか否かを判定している。「N=2」である場合には、ステップST12でNO判定され、ステップST10に戻る。「N=2」と設定されているため、ステップST10では、ブレード104bが望遠カメラ26の正面位置に達するタイミングで該望遠カメラ26による撮影が実行される。つまり、ブレード104bの正面における上端およびその周辺の画像が取得され、この画像が、画像情報出力部246を経て通信部220から情報処理装置4に送信される。
【0086】
同様に、ステップST11では、「N」に更に「1」が加算され「N=3」となる。これにより、撮影対象としてブレード104c(第3のブレード104c)に設定される。この場合もステップST12でNO判定され、ステップST10に戻る。「N=3」と設定されているため、ステップST10では、ブレード104cが望遠カメラ26の正面位置に達するタイミングで該望遠カメラ26による撮影が実行される。つまり、ブレード104cの正面における上端およびその周辺の画像が取得され、この画像が、画像情報出力部246を経て通信部220から情報処理装置4に送信される。
【0087】
この状態で、ステップST11で「N」に「1」が加算されると、ステップST12でYES判定され、ステップST13に移る。このステップST13では、「M」に「1」が加算され「M=2」となる。これにより、ブレード104a~104cにおける撮影位置を変更する。つまり、無人飛行体2を鉛直方向に所定距離だけ下降させ、「M=1」であった場合とは異なる位置(「M=2」に該当する位置:前述したオーバラップ量を存した下側の位置)が望遠カメラ26の視野内に入るようにする。ステップST14では、「M」が所定の最大値「Mmax」を超えたか否かを判定している。この「Mmax」はブレード104a~104cの延在方向における撮影箇所の数であり、例えばブレード104a~104cの延在方向に沿って撮影箇所を6分割した場合には「Mmax=6」となる。このMmaxの値はこれに限定されるものではなく、望遠カメラ26の視野角度や前述したオーバラップ量等に応じて設定される。
【0088】
「M=2」である場合には、ステップST14でNO判定され、ステップST15で「N=1」に設定した後、ステップST9に戻る。これにより、ステップST9では、無人飛行体2に対する飛行指令情報として「L=1」「M=2」「N=1」を与える。これにより、無人飛行体2は、鉛直方向に所定距離だけ下降され、ステップST10で、ブレード104aが望遠カメラ26の正面位置に達するタイミングで該望遠カメラ26による撮影が実行される。この際におけるステップST10~ステップST12の動作は前述した場合と同様であり、各ブレード104a~104cの正面における上端から所定距離だけハブ103寄りの画像(「M=2」に該当する位置での画像)が画像情報出力部246を経て通信部220から情報処理装置4に順次送信されることになる。
【0089】
ステップST12でYES判定されると、ステップST13では、「M」に「1」が加算され「M=3」となる。これにより、ブレード104a~104cにおける撮影位置が変更される。つまり、無人飛行体2を鉛直方向に所定距離だけ更に下降させ、「M=2」であった場合とは異なる位置(「M=3」に該当する位置:前述したオーバラップ量を存した下側の位置)が望遠カメラ26の視野内に入るようにする。「M」が所定の最大値「Mmax」を超えてステップST14でYES判定されるまで、ステップST9~ステップST15の動作が繰り返され、各ブレード104a~104cの正面の全体に亘って望遠カメラ26による撮影が行われていき、取得された画像の情報が情報処理装置4に順次送信されていく。
【0090】
「M」が所定の最大値「Mmax」を超えると、ステップST14でYES判定され、ステップST16に移る。このステップST16では、「L」に「1」が加算され「L=2」となる。これにより、ブレード104a~104cに対する望遠カメラ26の撮影方向を変更する。本実施形態の場合には、
図9で示したように、風車100の平面視において時計回り方向に無人飛行体2の飛行位置を変更する。つまり、「L=1」はブレード104a~104cの正面を撮影する位置(図中におけるA位置)、「L=2」はブレード104a~104cの右側面を撮影する位置(図中におけるB位置)、「L=3」はブレード104a~104cの背面を撮影する位置(図中におけるC位置)、「L=4」はブレード104a~104cの左側面を撮影する位置(図中におけるD位置)となっている。
【0091】
ステップST17では、「L」が「4」を超えたか否かを判定している。「L=2」である場合には、ステップST17でNO判定され、ステップST18で「N=1」「M=1」に設定した後、ステップST9に戻る。これにより、ステップST9では、無人飛行体2に対する飛行指令情報として「L=2」「M=1」「N=1」を与える。これにより、無人飛行体2は、ブレード104a~104cの右側面を撮影する位置まで飛行される。そして、ステップST10で、ブレード104aが望遠カメラ26の正面位置に達するタイミング(ブレード104aがブレード回転上端位置に達したタイミング)で該望遠カメラ26による撮影が実行される。この撮影の実行に先立ち、ブレード104a~104cの正面を撮影した場合と同様に、前述したブレード回転速度認識処理および撮影タイミング決定処理(ブレード104a~104cの側面視におけるブレード回転速度認識処理および撮影タイミング決定処理)を実施するようにしておくことがより好ましい。この際におけるステップST9~ステップST15の動作は前述した場合と同様である。つまり、ブレード104a~104cそれぞれの右側面の各部の画像(外周端から内周端に亘る各画像)が情報処理装置4に順次送信されていく。
【0092】
ブレード104a~104cそれぞれの左側面の各部の画像の取得(
図9におけるD位置での画像の取得)が終了し、「L」が「4」を超えたことでステップST17でYES判定されると、各ブレード104a~104cの全周囲および延在方向の全体の画像が取得されて該画像の情報が情報処理装置4に送信されたことになるので、ブレード点検動作を終了する。
【0093】
以上の動作によって取得された各ブレード104a~104cのそれぞれの各面の画像がステッチ処理されることでブレード104a~104cそれぞれの各面に対して全体を一つの画像とする点検用画像が生成されて(本発明でいう画像生成ステップの実施)、画像表示部43に表示され、管理者がこの画像を目視することでブレード104a~104cの損傷の有無等を点検することになる。また、ブレード104a~104cの損傷の有無等の点検としては、管理者が画像を目視することによって行うことに限らず、点検用画像に対するAIによる自動判断によって行われるようになっていてもよい。
【0094】
以上の動作がブレード点検動作の度に繰り返されることになる。
【0095】
-実施形態の効果-
以上説明したように、本実施形態では、無人飛行体2に備えられた広角カメラ25によるブレード104a~104cの撮影によって当該ブレード104a~104cの回転速度を認識した上で、点検対象であるブレード104a(104b,104c)が望遠カメラ26の正面位置に達するタイミングで当該望遠カメラ26によってブレード104a(104b,104c)を撮影し、この撮影された画像の情報をブレード104a~104cの損傷の有無等を認識するための情報として利用するようにしている。このため、ブレード104a~104cの回転を停止させたり、ブレード104a~104cの回転を制限したりすることなく、ブレード104a~104cの点検を行うことができる。その結果、点検中であっても風力発電設備の発電を継続して行うことができ、風力発電設備の稼働率を高く維持することができる。
【0096】
また、本実施形態では、風車100に正対する基準位置でブレード104a~104cの回転速度を認識するようにしているため、ブレード104a~104cの回転速度を高い精度で認識することができる。
【0097】
また、本実施形態では、各ブレード104a~104cの延在方向に沿った飛行制御によって飛行位置が所定の撮影位置まで変更された状態で望遠カメラ26によるブレード104a~104cの撮影を行うようになっていると共に、各ブレード104a~104cの正面、背面および各側面それぞれに対向するように飛行位置を変更しながらブレード104a~104cの撮影を行うようになっているため、ブレード104a~104cの全周囲および延在方向の全体の画像を取得することができる。これにより、ブレード104a~104cの損傷等の見落としを防止することができて、風力発電設備の点検の信頼性を高めることができる。
【0098】
-変形例1-
次に変形例1について説明する。本変形例は、洋上風力発電設備を点検するものとして本発明を適用したものである。
【0099】
本変形例に係る風力発電設備(洋上風力発電設備)の点検システムについて説明する前に、洋上風力発電設備の風車について簡単に説明する。
【0100】
図16は、洋上風力発電設備の風車100’を示す正面図である。この
図16に示すように、洋上風力発電設備の風車100’は、タワー101の下部にフロートFが設けられており、海上に浮遊した状態で設置されている。このため、波の影響によるフロートFの周期的な上下移動に伴って風車100’も上下移動するものとなっている。尚、この移動周期および移動量は波の影響によって変動するものである。
【0101】
本変形例では、この周期的に上下移動する風車100’に同期するように無人飛行体2の飛行制御を行うことによって、広角カメラ25の視野内や望遠カメラ26の視野内でブレード104a~104cが相対的に上下移動してしまうことを抑制しながらブレード104a~104cを撮影して画像を取得するようにしている。
【0102】
図17は、本変形例に係る点検システム1に利用される無人飛行体2の飛行制御部242の概略構成を示すブロック図である。この
図17では、前記実施形態に係る点検システム1における無人飛行体2の飛行制御部242の構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
図17に示すように、本変形例に係る点検システム1に利用される無人飛行体2の飛行制御部242は、無人飛行体2の飛行経路を自動制御するためのプログラムによって実現される機能部として、移動推定部242eおよび同期飛行制御部242fを備えている。
【0104】
移動推定部242eは、風車100’の移動周期および移動量を推定する機能部である。この移動量の推定手法としては、公知のものが利用可能であり、例えば再帰型ニューラルネットワーク等を利用することができる。
【0105】
また、同期飛行制御部242fは、移動推定部242eによって推定された風車100’の移動周期および移動量に同期するように(フロートFの周期的な上下移動に伴う風車100’の上下移動に追従するように)無人飛行体2の飛行位置を変更する(モータ23a~23dの回転速度を制御する)飛行制御を行う機能部である。
【0106】
本変形例の構成によれば、各カメラ25,26の視野内でブレード104a~104cが上下に移動してしまって、ブレード回転速度の認識精度が低下してしまったり、望遠カメラ26によるブレード104a~104cの撮影位置にズレが生じたり撮影画像が不鮮明になってしまったりすることを抑制できる。その結果、洋上風力発電設備に対しても高い精度でブレード104a~104cの点検を行うことができる。
【0107】
-変形例2-
次に変形例2について説明する。本変形例は、各ブレード104a~104cの側面の撮影動作が前述した実施形態のものと異なっている。その他の構成および動作は前述した実施形態のものと同様であるので、ここでは、各ブレード104a~104cの側面の撮影動作についてのみ説明する。
【0108】
図18は、本変形例において各ブレード104a~104cの側面の撮影動作を説明するための風車100の平面図である。また、この
図18では、各ブレード104a~104cの側面の撮影タイミングでの無人飛行体2の飛行位置(図中に実線または二点鎖線で表す無人飛行体2の飛行位置を参照)を併せて示している。
【0109】
本変形例における各ブレード104a~104cの側面の撮影動作は、無人飛行体2を風車100の上方で飛行させた状態(ブレード回転上端位置に達したブレード104bの上端位置よりも高い位置で飛行させた状態)で下方の画像(各ブレード104a~104cを上側から見た画像)を取得するものである。尚、この下方の画像を取得するための手段としては特に限定されるものではないが、例えば望遠カメラ26を支持するジンバルを備えさせ、このジンバルを利用して望遠カメラ26を下向きにすることや、飛行体本体21の下部に、下方の画像を取得するための専用の望遠カメラを設けること等が挙げられる。そして、前述した
図9のD位置で無人飛行体2を飛行させてブレード104a~104cの撮影を行った場合に取得される側面の画像と同等の画像を取得可能な第1の撮影動作と、前述した
図9のB位置で無人飛行体2を飛行させてブレード104a~104cの撮影を行った場合に取得される側面の画像と同等の画像を取得可能な第2の撮影動作とが連続して行われる。以下、それぞれの撮影動作について説明する。
【0110】
第1の撮影動作では、
図18においてハブ103よりも左側に位置する(回転位置がハブ103よりも左側にある)ブレード104a(104b,104c)が水平姿勢となった各タイミングで、図中に実線で示す飛行位置から順次ハブ103の上方に近付く側(
図18における右側)に向けて無人飛行体2を移動させながら望遠カメラ26によってブレード104a~104cを撮影していく(
図18における矢印Iを参照)。つまり、各ブレード104a~104cが水平姿勢となる度に当該水平姿勢となっているブレード104a~104cを撮影していく。風車100の平面視においてブレード104a(104b,104c)が水平姿勢となったタイミングを得るためには、この平面視における当該ブレード104a~104cの回転速度を認識した上で当該タイミングを決定する必要がある。このブレード104a~104cの平面視において回転速度を認識する手法としては、この平面視においてブレード104a~104cの先端が最も外側(例えば最も左側)に達したタイミングが、何れかのブレード104a(104b,104c)が水平姿勢になったと認識し、同一のブレード104a(104b,104c)が再び同一位置(水平姿勢となる位置)に達したタイミングをブレード104a~104cの一回転の周期として認識して回転速度を算出することになる。尚、前述したAIを利用して回転速度を求めるようにしてもよい。この回転速度を認識することにより、ブレード104a(104b,104c)が水平姿勢となるタイミング(水平姿勢となる周期)を得ることができる。
【0111】
第1の撮影動作における具体的な動作としては、第1のブレード104aが水平姿勢となったタイミングで当該第1のブレード104aの側面(上側を向いている側面:無人飛行体2が
図18に実線で示す飛行位置にある場合にはブレード104aの先端およびその周辺の側面)が撮影され、その後、風車100が所定角度(120°)回転して第2のブレード104bが水平姿勢となったタイミングで当該第2のブレード104bの側面が撮影され、その後、更に風車100が所定角度回転して第3のブレード104cが水平姿勢となったタイミングで当該第3のブレード104cの側面が撮影されることになる。
【0112】
このような撮影動作が、無人飛行体2の飛行位置をハブ103の上方に近付く側(風車100の中央側)に移動させながら行っていくことにより(
図18における矢印Iを参照)、水平姿勢にあるブレード104a~104cの側面(上側を向いている側面)の画像が取得されていき、
図9のD位置で無人飛行体2を飛行させてブレード104a~104cの撮影を行った場合に取得される側面の画像と同等の画像が得られることになる。
【0113】
第2の撮影動作では、
図18においてハブ103よりも右側に位置する(回転位置がハブ103よりも右側にある)ブレード104a(104b,104c)が水平姿勢となった各タイミングで、ハブ103の上方に近い位置から順次ブレード104a(104b,104c)の先端側(
図18における右側)に向けて無人飛行体2を移動させながら望遠カメラ26によってブレード104a~104cを撮影していく(
図18における矢印IIを参照)。つまり、この場合にも、各ブレード104a~104cが水平姿勢となる度に当該水平姿勢となっているブレード104a~104cを撮影していく。
【0114】
このような撮影動作によっても、水平姿勢にあるブレード104a~104cの側面(上側を向いている側面)の画像が取得されていき、
図9のB位置で無人飛行体2を飛行させてブレード104a~104cの撮影を行った場合に取得される側面の画像と同等の画像が得られることになる。
【0115】
尚、本変形例では、無人飛行体2を風車100の上方で飛行させた状態で下方の画像(各ブレード104a~104cを上側から見た画像)を取得するものであったが、無人飛行体2を風車100の下方で飛行させた状態で上方の画像(各ブレード104a~104cを下側から見た画像)を取得するものとしてもよい。この場合、第1の撮影動作(
図18においてハブ103よりも左側に位置するブレード104a~104cの撮影動作)によって、
図9のB位置で無人飛行体2を飛行させてブレード104a~104cの撮影を行った場合に取得される側面の画像と同等の画像が得られ、第2の撮影動作(
図18においてハブ103よりも右側に位置するブレード104a~104cの撮影動作)によって、
図9のD位置で無人飛行体2を飛行させてブレード104a~104cの撮影を行った場合に取得される側面の画像と同等の画像が得られることになる。尚、無人飛行体2を風車100の下方で飛行させた状態で各ブレード104a~104cを撮影していくに当たっては、無人飛行体2がタワー101に干渉しないように飛行経路を決定する必要がある。上方の画像を取得するための手段としては、例えば望遠カメラ26を支持するジンバルを備えさせ、このジンバルを利用して望遠カメラ26を上向きにすることや、飛行体本体21の上部に、上方の画像を取得するための専用の望遠カメラを設けること等が挙げられる。
【0116】
また、本変形例に係る各ブレード104a~104cの側面の撮影動作は、地上に設置された風力発電設備だけでなく、洋上風力発電設備に対しても適用することが可能である。洋上風力発電設備に適用して各ブレード104a~104cの側面を撮影する場合、波の影響による風車100の上下移動に伴って各ブレード104a~104cの側面と無人飛行体2との間の距離が変動する。このため、風車100の上下移動に同期するように無人飛行体2の飛行制御(昇降制御)を行うことが好ましい。また、変動する各ブレード104a~104cの側面と無人飛行体2との間の距離に応じて望遠カメラ26の焦点距離を変化させるようにしてもよい。この焦点距離の指示情報は、前記撮影指令部245から出力される撮影指令信号と共に無人飛行体2に送信されることになる。
【0117】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態および前記各変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0118】
例えば、前記実施形態および前記各変形例では、望遠カメラ26によるブレード104a~104cの撮影は、無人飛行体2の飛行位置を維持(ホバリング)させて実行するようにしていた。本発明はこれに限らず、望遠カメラ26のシャッタ速度を高速度化することにより、無人飛行体2を移動させながら(飛行位置を維持させることなく)ブレード104a~104cの撮影を行うようにしてもよい。
【0119】
また、前記実施形態および前記各変形例では、操縦者によるコントローラ3の操縦または飛行制御部242による飛行制御によって、一旦、 無人飛行体2を風車100の真上で飛行させてナセル102の向きを認識した後に、無人飛行体2を基準位置まで飛行させるようにしていた。本発明はこれに限らず、無人飛行体2を風車100の真上で飛行させることなく(ナセル102の向きを認識する行程を経ることなく)、画像認識によってハブ103の中心位置を認識し、このハブ103の中心位置に対向する基準位置まで無人飛行体2を飛行制御し、この状態でブレード104a~104cの回転速度を認識するようにしてもよい。
【0120】
また、前記実施形態および前記変形例1では、ブレード回転上端位置に達したブレード104a~104cを撮影するようにしていた。また、前記変形例1では、ブレード104a~104cの正面および背面を撮影する際にはブレード回転上端位置に達したブレード104a~104cを撮影し、ブレード104a~104cの側面を撮影する際には水平姿勢となったブレード104a~104cを撮影するようにしていた。本発明はこれに限らず、ブレード104a~104cが、ハブ103の下側に位置して鉛直方向に延在する位置に達した際に撮影するようにしてもよいし、その他の位置に達した際に撮影するようにしてもよい。また、各ブレード104a~104cの内周端周辺から外周端周辺に亘って順次撮影を行うようにしてもよい。
【0121】
また、無人飛行体2に公知のLiDAR(Light Detection and Ranging)センサを搭載しておき、前述した無人飛行体2からハブ103までの距離を該LiDARセンサによって計測するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、ブレードの回転を停止させることのない風力発電設備の点検に供される無人飛行体、および、風力発電設備の点検システム、並びに、風力発電設備の点検方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 点検システム
2 無人飛行体
25 広角カメラ
26 望遠カメラ
100 風車
104a~104c ブレード
240 制御部
242 飛行制御部
242a 風車向き認識部
242b 基準位置飛行制御部
242c 撮影位置変更制御部
242d 撮影方向変更制御部
242e 移動推定部
242f 同期飛行制御部
243 ブレード回転速度認識部
245 撮影指令部
246 画像情報出力部