(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002791
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】送液システム
(51)【国際特許分類】
B67D 7/02 20100101AFI20231228BHJP
F17D 1/12 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B67D7/02 Z
F17D1/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102205
(22)【出願日】2022-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】川北 賢
(72)【発明者】
【氏名】水越 直樹
【テーマコード(参考)】
3E083
3J071
【Fターム(参考)】
3E083AA20
3E083AE11
3E083AE15
3E083AH08
3J071AA11
3J071BB05
3J071DD01
3J071FF16
(57)【要約】
【課題】フィルター装置を挟んで接続された2台のタンク間における送液に際して気泡の発生を抑制し、送液路の残液を低減することができる送液システムを提供する。
【解決手段】調製タンク2と、貯留タンク3と、送液路4と、フィルター装置5と、調製タンク2及び貯留タンク3に貯留された液体に付与する圧力を調整可能な第1圧力調整手段6及び第2圧力調整手段7と、を備え、第1圧力調整手段6及び第2圧力調整手段7は、調製タンク2に付与する圧力及び貯留タンク3に付与する圧力を大気圧よりも高くし、調製タンク2の圧力から貯留タンク3の圧力を引いた差圧を制御して調製タンク2から貯留タンク3へ液体を送液させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タンクと、
第2タンクと、
前記第1タンクと前記第2タンクを接続する送液路と、
前記送液路に設けられたフィルター装置と、
前記第1タンク及び前記第2タンクに気体を供給して前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された液体に付与する圧力を調整可能な圧力調整手段と、を備え、
前記圧力調整手段は、
前記第1タンクに付与する第1タンク内圧力から前記第2タンクに付与する第2タンク内圧力を引いた差圧を制御して前記第1タンクから前記第2タンクへ液体を送液させる
ことを特徴とする送液システム。
【請求項2】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記第1タンク内圧力及び前記第2タンク内圧力を大気圧よりも高くする
ことを特徴とする送液システム。
【請求項3】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記圧力調整手段は、前記差圧を増加させる際には、前記第1タンク内圧力を増加させ、及び/又は前記第2タンク内圧力を減少させる
ことを特徴とする送液システム。
【請求項4】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記圧力調整手段は、前記差圧を減少させる際には、前記第1タンク内圧力を減少させ、及び/又は前記第2タンク内圧力を増加させる
ことを特徴とする送液システム。
【請求項5】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記圧力調整手段は、前記第1タンクから液体が前記第2タンクに送液された後に前記第2タンクの圧力を脱圧する
ことを特徴とする送液システム。
【請求項6】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記送液路の水平方向に延びる一部分から上方に延び、薬液が貯留される閉空間を有する退避管を備える
ことを特徴とする送液システム。
【請求項7】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記送液路の少なくとも一部は、液体が流通していない状態では流路が閉塞され、液体が流通している状態では流路が開放する管状部材である
ことを特徴とする送液システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクから別のタンクへ液体を送液する際に、液体に気泡が生じることを抑制し、送液路の残液を低減することができる送液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や液状の医薬品等を処理するプラントにおいては、調製タンクにおいて医薬品等の液体製品が調合され、空気により調製タンクから貯留タンクに液体製品を圧送している。(特許文献1参照)。
【0003】
液体製品を圧送する際には、液体製品に気泡を発生させず、また、途中の配管に残留しないようにすることが求められている。このような気泡の抑制及び残液の回収は、液体製品を圧送する際の圧力を適宜制御することにより行われている。
【0004】
しかしながら、プラントの構成によって様々な形状、形態のタンクや送液路があり、それら全てに適用できるような、気泡の発生を抑制し、残液を回収できる圧力値というものは存在しない。すなわち、個別の形状・形態のプラントに応じて適宜圧力値を定めているのが現状である。
【0005】
特許文献1に開示されるように、上流側のタンクに所定圧力の空気を注入し、送液路の途中から分岐した大気への連通路にバルブを設け、当該バルブの開度を調整することにより行うことが一般的である。つまり、送液や残液の回収を行うための圧力調整の手段は、大気圧を基準にして上流側のタンクに与える圧力を調整するという選択肢しかなく、圧力調整を困難にしている一因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、タンク間における送液に際して気泡の発生を抑制し、送液路の残液を低減するために柔軟に送液時の圧力調整を行うことができる送液システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、第1タンクと、第2タンクと、前記第1タンクと前記第2タンクを接続する送液路と、前記送液路に設けられたフィルター装置と、前記第1タンク及び前記第2タンクに気体を供給して前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された液体に付与する圧力を調整可能な圧力調整手段と、を備え、前記圧力調整手段は、前記第1タンクに付与する第1タンク内圧力から前記第2タンクに付与する第2タンク内圧力を引いた差圧を制御して前記第1タンクから前記第2タンクへ液体を送液させることを特徴とする送液システムにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンク間における送液に際して気泡の発生を抑制し、送液路の残液を低減するために柔軟に送液時の圧力調整を行うことができる送液システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る送液システムの概略構成を示す図である。
【
図4】初期送液工程及び送液工程における差圧について説明する図である。
【
図5】初期送液工程及び送液工程における差圧について説明する図である。
【
図8】実施形態2に係る送液システムの概略構成を示す図である。
【
図9】実施形態3に係る送液システムの概略構成を示す図である。
【
図10】実施形態3に係る送液システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る送液システムの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は送液システムの概略構成を示す図である。送液システム1は、液体の一例として液状の医薬品(以下、薬液)を製造するプラントの一部である。送液システム1は、調製タンク2、貯留タンク3、送液路4、フィルター装置5、第1圧力調整手段6、第2圧力調整手段7、及び送液システム1の送液処理を制御するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの制御装置(図示せず)を備えている。
【0013】
調製タンク2は、薬液を調製するタンクであり、請求項に記載の第1タンクに相当する。特に図示しないが、調製タンク2は、製造する薬液の原料が投入される投入口が設けられている。また、調製タンク2の底部には薬液を排出する排出口が設けられている。当該排出口には送液路4が接続されている。送液路4には調製タンク2の排出口近傍に開閉弁が設けられており、当該開閉弁は制御装置の制御信号により開閉可能となっている。
【0014】
調製タンク2には、第1圧力調整手段6により気体が内部に供給されるようになっている。また、調製タンク2には、内部に供給された気体の圧力を測定する圧力計(図示せず)が取り付けられている。この圧力計による測定値は制御装置により参照される。
【0015】
貯留タンク3は、調製タンク2から送液路4を経由して圧送された薬液を貯留するタンクであり、請求項に記載の第2タンクに相当する。貯留タンク3は、底部近傍に送液路4が接続されている。また、貯留タンク3の底部には薬液を排出する排出口が設けられている。当該排出口には排出路8が接続されている。排出路8には貯留タンク3の出口近傍に開閉弁が設けられており、当該開閉弁は制御装置の制御信号により開閉可能となっている。
【0016】
貯留タンク3には、第2圧力調整手段7により気体が内部に供給されるようになっている。また、貯留タンク3には、内部に供給された気体の圧力を測定する圧力計(図示せず)が取り付けられている。この圧力計による測定値は制御装置により参照される。
【0017】
送液路4は、調製タンク2と貯留タンク3とを接続する配管から構成され、薬液の流路を形成している。また、送液路4の途中にはフィルター装置5が設けられている。送液路4を構成する配管の本数や形状に特に限定はないが、本実施形態では、送液路4a-送液路4hから構成されている。
【0018】
送液路4aは、調製タンク2の排出口に接続され下方に向けて延びる配管である。
送液路4bは、送液路4aに接続され水平方向に向けて延びる配管である。
送液路4cは、送液路4bに接続され上方に向けて延びる配管である。
送液路4dは、送液路4cに接続され水平方向に向けて延び、フィルター装置5の一次側に接続する配管である。
送液路4eは、フィルター装置5の二次側に接続され、水平方向に向けて延びる配管である。
送液路4fは、送液路4eに接続され下方に向けて延びる配管である。
送液路4gは、送液路4fに接続され水平方向に向けて延びる配管である。
送液路4hは、送液路4gに接続され上方に向けて延び、貯留タンク3の底部に接続する配管である。
なお、水平方向とは厳密に水平で有る場合のみならず水平方向に傾斜していてもよい。上方、下方についても厳密に鉛直方向に沿っている場合のみならず鉛直方向に対して傾斜していてもよい。
【0019】
フィルター装置5は、薬液をフィルターで濾過する装置である。フィルターには特に限定はなく目的に応じてナノフィルター膜、精密フィルター膜、限外ろ過膜など公知のものを適用できる。また、フィルター装置5はいわゆる全量濾過方式(デッドエンド)であり、一次側に調製タンク2、二次側に貯留タンク3が送液路4を介して接続される。
【0020】
第1圧力調整手段6は、調製タンク2の内部に気体を供給し、又は調製タンク2の内部の気体を外部へ排出することで、調製タンク2の内部の圧力を調整する装置群である。具体的には気体(例えば空気や窒素ガス)を取り込んで所望の圧力に調整するレギュレータ、レギュレータから調製タンク2へ気体を送るための配管群、調製タンク2の上部に設けられたベントバルブなどから構成される。これらのレギュレータやベントバルブは制御装置により制御可能となっている。
【0021】
第2圧力調整手段7は、貯留タンク3の内部に気体を供給し、又は貯留タンク3の内部の気体を外部へ排出することで、貯留タンク3の内部の圧力を調整する装置群である。具体的な装置構成は第1圧力調整手段6と同様である。なお、第1圧力調整手段6、第2圧力調整手段7及びこれらを制御する制御装置は、請求項に記載の圧力調整手段に相当する。
【0022】
制御装置は、第1圧力調整手段6を制御することで、調製タンク2の内部の圧力を設定値に調整することが可能となっている。具体的には、制御装置は、調製タンク2の圧力計より得られた圧力の現在値が目標値となるように、レギュレータに気体を圧縮させ、その気体を調製タンク2に供給させることで調製タンク2の内部を与圧するか、又は、ベントバルブの開度を調整することで調製タンク2の内部を減圧する。制御装置は、貯留タンク3の圧力計より得られた圧力の現在値が目標値になるように、第1圧力調整手段6と同様に第2圧力調整手段7を制御する。
【0023】
ここで、上述した構成の送液システム1において、調製タンク2にて調製した薬液を貯留タンク3に圧送する動作について説明する。圧送動作の前に、送液路4及び貯留タンク3は定置洗浄(CIP)、定置滅菌(SIP)され、調製タンク2にて薬液が調整されたとする。圧送動作は、初期送液工程、送液工程、残液処理工程からなる。
【0024】
[初期送液工程]
図2を用いて初期送液について説明する。制御装置は、調製タンク2の排出口近傍の開閉弁を開き、調製タンク2から送液路4に薬液を排出させる。このとき、第1圧力調整手段6及び第2圧力調整手段7により調製タンク2及び貯留タンク3に圧力を付与する必要はなく、大気圧と同等とする。この結果、薬液は調製タンク2の液面と同等になるまで送液路4cの途中(液面L)まで達する。
【0025】
このような状態は、次のように検出することができる。まず、試験的に、調製タンク2の排出口を開放してから、送液路4cの液面と、調製タンク2の液面とが等しくなったことを目視で確認できるまでに要する時間を予め計測しておき、その時間(時間Aと称する)を制御装置に記憶させておく。制御装置は、調製タンク2から貯留タンク3に薬液を圧送する動作を開始するとき、調製タンク2の排出口を開放するとともに排出口の開放時点からの経過時間を計測する。その経過時間が時間Aに到達したことをもって、送液路4cの液面と調製タンク2の液面とが等しくなったことを検出することができる。
【0026】
[送液工程]
図3を用いて送液工程について説明する。制御装置は、第1圧力調整手段6及び第2圧力調整手段7を制御して、調製タンク2及び貯留タンク3に圧力を付与する。調製タンク2に付与する圧力である第1タンク内圧力を圧力P1、貯留タンク3に付与する圧力である第2タンク内圧力を圧力P2とする。圧力P1から圧力P2を引いた圧力差を差圧と称し、送液工程では差圧Δ1と称する。
【0027】
制御装置は、圧力P1及び圧力P2を何れも大気圧よりも高くし、差圧Δ1が正となるように、第1圧力調整手段6及び第2圧力調整手段7を制御する。すなわち、調製タンク2の内部の圧力を貯留タンク3の内部の圧力よりも高くする。このように差圧Δ1が生じるように調製タンク2及び貯留タンク3に圧力を付与することで、送液路4a-送液路4hを介して薬液を貯留タンク3に供給することができる。
【0028】
差圧Δ1は、送液工程の間において一定でもよいし、可変でもよい。好ましくは、差圧Δ1を連続的に大きくすることが望ましい。これにより、気泡の発生をより確実に抑えることができる。
【0029】
[残液処理工程]
図4を用いて残液処理工程について説明する。送液工程が進むと調製タンク2の薬液が空となる。調製タンク2の薬液が空になってからの送液を残液処理工程と称し、残液処理工程での差圧をΔ2と称する。残液処理工程においても、P1、P2は何れも大気圧以上とし、差圧Δ2を正とする。
【0030】
送液路4a-送液路4bに残留した薬液が送液路4cを上り、送液路4dに到達するように差圧Δ2が設定されている。制御装置はその差圧Δ2となるよう第1圧力調整手段6及び第2圧力調整手段7を制御する。送液路4cは比較的小口径であることが望ましい。このような残液処理工程により、調製タンク2から送液路4dまでが空になり、送液路4e以降に薬液が残留している状態となる。
【0031】
送液路4a-送液路4dに薬液がなくなった状態、すなわちフィルター装置5よりも下流側に薬液が残留している状態では、差圧Δ2をさらに大きくする。具体的には送液工程の差圧Δ1よりも大きくする。差圧Δ2を徐々に大きくすることで、残液をより早く送液することができる。
図5に示すように、このように差圧Δ2を掛けることで、送液路4e-送液路4hまでの残液を貯留タンク3に回収することができる。なお、差圧Δ2は、一定でもよいし、徐々に大きくしてもよい。
【0032】
残液処理工程の終了後は、貯留タンク3と送液路4hとの間の開閉弁を閉じ、貯留タンク3の圧力を開放する。例えば、第2圧力調整手段7に貯留タンク3の内部の圧力を大気圧又は負圧にする。このように貯留タンク3の内部を脱圧することで、薬液中に気泡が含まれていたとしても、その気泡を消滅させることができる。このようにして脱圧したのち、制御装置は貯留タンク3と排出路8との間の開閉弁を開け、貯留タンク3から下流の充填機等に薬液を送液する。
【0033】
以上に説明した送液システム1は、調製タンク2及び貯留タンク3のそれぞれに大気圧より高い圧力を付与し、差圧を設定することで調製タンク2から貯留タンク3へ送液する。すなわち、圧力調整の対象は調製タンク2と貯留タンク3の2つである。これにより、上流側の調製タンク2に対してのみ圧力調整する場合と比較して、気泡を抑制又は残液を回収するための圧力設定を柔軟に行うことができる。
【0034】
また、圧力P1及び圧力P2は常に大気圧より大きくしている。これにより、タンク間や送液路の無菌状態が破壊されること(無菌ブレイク)のリスクを低減することができる。
【0035】
図6を用いて、圧力設定のうち差圧を増加させる場合について説明する。横軸は時間であり、縦軸は圧力である。
図6(a)、
図6(b)に示すように、圧力P1、圧力P2は何れも大気圧よりも高く、圧力P1が圧力P2よりも大きい。
【0036】
例えば、T0で送液を開始して、T1で液体がフィルター装置5に到達したとする。液体がフィルター装置5を透過した後、T2までの間に差圧を増加させるとする。このとき、同じ差圧ΔPに設定するとしても、
図6(a)に示すように下流側の貯留タンク3の圧力P2を減少させることもできれば、
図6(b)に示すように上流側の調製タンク2の圧力P1を増加させることもできる。
【0037】
図6(a)及び
図6(b)の差圧ΔPが同じであれば、両者の結果は同じであるようにも思われるが、例えば、下流側の貯留タンク3の圧力を減少させた場合の方が、フィルター装置5を透過した薬液に気泡が生じにくいという知見がある。これは、フィルター装置5の上流側を加圧するか、下流側を減圧するかという相違が影響していると考えられる。このような気泡の抑制作用は、プラントの構成によって異なり、上流側の調製タンク2の圧力を増大させた場合の方が、フィルター装置5を透過した薬液に気泡が生じにくいということもあり得る。
【0038】
いずれにせよ、様々なプラント構成に応じて圧力P1の増加、又は圧力P2の減少という2つの選択肢を適宜選択して差圧ΔPを増加させることで、送液時の気泡の発生を抑制することができる。
【0039】
また、気泡の抑制の場合に限らず、残液の送液時における圧力についても同様のことが言える。例えば、残液を回収するために差圧ΔPを増加させる場合、下流側の貯留タンク3の圧力を減少させた場合の方が、調製タンク2の圧力を増加させる場合と比べてフィルター装置5の一次側から二次側へと速やかに回収できることがあるし、逆の場合もある。
【0040】
いずれにせよ、様々なプラント構成に応じて圧力P1の増加、又は圧力P2の減少という2つの選択肢を適宜選択して差圧ΔPを増加させることで、残液の回収を好適に行うことができる。
【0041】
なお、
図6(c)に示すように、従来では、T1の後に差圧ΔPを増加させるにしても、上流の調製タンク2の圧力P1のみが制御対象である。したがって、下流側の貯留タンク3の圧力を増加又は減少させることによる気泡の抑制効果を期待できない。
【0042】
図7を用いて、圧力設定のうち差圧を減少させる場合について説明する。
図7のグラフの見方は
図6と同様である。
【0043】
例えば、T0で送液を開始して、T1で液体がフィルター装置5に到達したとする。液体がフィルター装置5を透過した後、T2までの間に差圧を減少させるとする。このとき、同じ差圧ΔPに設定するとしても、
図7(a)に示すように下流側の貯留タンク3の圧力P2を増加させることもできれば、
図7(b)に示すように上流側の調製タンク2の圧力P1を減少させることもできる。
【0044】
図7(a)及び
図7(b)の差圧ΔPが同じ差圧ΔPであれば、両者の結果は同じであるようにも思われるが、例えば、下流側の貯留タンク3の圧力を増加させた場合の方が、フィルター装置5を透過した薬液に気泡が生じにくいという知見がある。これは、フィルター装置5の上流側を減圧するか、下流側を加圧するかという相違が影響していると考えられる。このような気泡の抑制作用は、プラントの構成によって異なり、上流側の調製タンク2の圧力を減少させた場合の方が、フィルター装置5を透過した薬液に気泡が生じにくいということもあり得る。
【0045】
いずれにせよ、様々なプラント構成に応じて圧力P1の減少、又は圧力P2の増加という2つの選択肢を適宜選択して差圧ΔPを減少させることで、送液時の気泡の発生を抑制することができる。
【0046】
なお、
図7(c)に示すように、従来では、T1の後に差圧ΔPを減少させるにしても、上流の調製タンク2の圧力P1のみが制御対象である。したがって、下流側の貯留タンク3の圧力を増加又は減少させることによる気泡の抑制効果を期待できない。
【0047】
さらに、
図6及び
図7に示したように、圧力P1と圧力P2との差圧ΔPを用いるので、大気圧の変動による影響を受けにくい。従来は、大気圧を基準とする圧力P1を用いることから大気圧の変動による影響を受けやすい。このようなことから、本発明の送液システムは、気泡の発生を抑制し、残液を回収するための圧力値の制御をより精度よく行うことができる。
【0048】
また、大気圧は、標高によって異なる。したがって、従来では、標高に応じた大気圧を元に圧力P1の調製を行わなければならない。一方、本発明では差圧を用いることから、標高の相違による大気圧の相違を意識することなく圧力調整を行うことができる。これにより、気泡の発生を抑制し、残液を回収することができる圧力調整を行うように一度設定した送液システムを、標高の異なる様々な場所で展開してそのまま適用することができる。
【0049】
また、残液処理工程の後、貯留タンク3の圧力を大気圧又は負圧に脱圧する。これにより、貯留タンク3の薬液に残存している気泡を除去することができる。
【0050】
〈実施形態2〉
図8を用いて、本発明の実施形態2に係る送液システム1について説明する。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
送液システム1は、送液路4の一部分に退避管9が設けられている。ここでは送液路4eに退避管9が設けられている。退避管9は、送液路4に対して上方に延びるように設けられ、少量の薬液が貯留できる程度の閉空間を有している。退避管9の形状や容積に限定はない。また、送液工程では満液にならないように退避管9の容積を設定しておくことが好ましい。
【0052】
送液工程においては、薬液の一部が送液路4から退避管9に流入する。退避管9は送液路4eよりも上方に延びているので、薬液に含まれる気泡が退避管9の空間部分に抜け、薬液中の気泡を消失させることができる。
【0053】
なお、退避管9は、送液路4に設ける位置に限定はない。また、設ける本数は一本に限らず複数箇所に設けてもよい。
【0054】
〈実施形態3〉
図9及び
図10を用いて、本発明の実施形態3に係る送液システム1について説明する。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0055】
図9に示すように、送液システム1は、フィルター装置5の二次側と貯留タンク3とを接続する送液路4iを備えている。送液路4iは閉塞チューブで構成されている。閉塞チューブとは、薬液が流通していない状態では流路が閉塞され、薬液が流通している状態では流路が開放する管状部材である。送液工程において薬液が送液路4iに到達するまで送液路4iは閉塞している。このような閉塞チューブは、ゴム系・樹脂系・金属系の材料から形成されたものを用いることができる。例えばシリコン、テフロン(登録商標)、ナイロンを材料とした閉塞チューブを用いることができる。
【0056】
図10に示すように、薬液が圧送されることで送液路4iに薬液が流れ込み、送液路4iが開放される。差圧Δ1は、少なくとも薬液によって送液路4iが開放される程度の圧力としておく。このようにして送液路4iが開放されるので、薬液を貯留タンク3まで送液することができる。なお、特に図示しないが、薬液の送液を終えて送液路4iが空になると、元の閉塞した状態に戻る。
【0057】
実施形態1では送液路4fは、閉塞チューブではない通常の配管であり、下り配管である。そのような送液路4fでは空気を巻き込んで気泡が発生する虞があるので、差圧Δ1を増加させないよう一定圧を維持して、送液路4fの側面を沿うように送液していた。一方、本実施形態の送液路4iは当初は閉塞していることから空気を巻き込んで気泡が発生する可能性は極めて低い。したがって本実施形態の送液システム1は、送液路4iにおける気泡の発生をより確実に抑制することができる。なお、閉塞チューブは、フィルター装置5の二次側に用いる場合に限定されず、送液路4の全体を閉塞チューブで構成してもよいし、通常の配管からなる送液路4の一部を閉塞チューブとしてもよい。
【0058】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
例えば、上述の実施形態では、薬液を送液する送液システムを一例として本発明を説明したが、本発明は、薬液以外の液体、例えば、化粧品、飲料、インク等を送液するための装置にも適用することができる。
【0060】
第1タンクの例として調製タンク2、第2タンクの例として貯留タンク3を説明したが、これらに限定されず、液体を貯留することができるタンク(容器)であれば特に用途は限定されない。
【0061】
また、
図6及び
図7に、差圧ΔPを増減させる際には、圧力P1又は圧力P2の何れか一方を増減させる例を示したが、これに限定されない。差圧ΔPを増減させるために圧力P1及び圧力P2の双方を増減させてもよい。
【0062】
圧力P1及び圧力P2は、何れも大気圧より大きく設定したがこれに限定されない。すなわち、圧力P1又は/及び圧力P2は大気圧と同等または負圧でもよい。
【0063】
圧力P1は常に大気圧より大きくてもよいし、常に大気圧以下であってもよい。圧力P2についても同様である。さらには、圧力P1は、当初は大気圧より大きいがその後に大気圧以下としてもよいし、または当初は大気圧以下であるがその後に大気圧より大きくしてもよい。圧力P2についても同様である。いずれにせよ、圧力P1が圧力P2よりも大きい、すなわち差圧が正であれば、圧力P1及び圧力P2はそれぞれ陽圧、大気圧、負圧のいずれでもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…送液システム、2…調製タンク(第1タンク)、3…貯留タンク(第2タンク)、4…送液路、4c…送液路、4f…送液路、5…フィルター装置、6…第1圧力調整手段、7…第2圧力調整手段、9…退避管
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タンクと、
第2タンクと、
前記第1タンクと前記第2タンクを接続する送液路と、
前記送液路に設けられたフィルター装置と、
前記第1タンクに気体を供給して前記第1タンクに貯留された液体に付与する第1タンク内圧力を調整可能な第1圧力調整手段と、
前記第2タンクに気体を供給して前記第2タンクに貯留された液体に付与する第2タンク内圧力を調整可能な第2圧力調整手段と、を備え、
前記第1圧力調整手段及び前記第2圧力調整手段は、
前記第1タンク内圧力及び前記第2タンク内圧力を大気圧よりも高くし、
前記第1タンク内圧力から前記第2タンク内圧力を引いた差圧を制御して前記第1タンクから前記第2タンクへ液体を送液させる
ことを特徴とする送液システム。
【請求項2】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記第1圧力調整手段及び前記第2圧力調整手段は、前記差圧を増加させる際には、前記第1タンク内圧力を増加させ、及び/又は前記第2タンク内圧力を減少させる
ことを特徴とする送液システム。
【請求項3】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記第1圧力調整手段及び前記第2圧力調整手段は、前記差圧を減少させる際には、前記第1タンク内圧力を減少させ、及び/又は前記第2タンク内圧力を増加させる
ことを特徴とする送液システム。
【請求項4】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記第2圧力調整手段は、前記第1タンクから液体が前記第2タンクに送液された後に前記第2タンクの圧力を脱圧する
ことを特徴とする送液システム。
【請求項5】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記送液路の水平方向に延びる一部分から上方に延び、薬液が貯留される閉空間を有する退避管を備える
ことを特徴とする送液システム。
【請求項6】
請求項1に記載の送液システムであって、
前記送液路の少なくとも一部は、液体が流通していない状態では流路が閉塞され、液体が圧送されることで流路が開放し、液体の送液を終えて流路が空になると閉塞する管状部材である
ことを特徴とする送液システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、第1タンクと、第2タンクと、前記第1タンクと前記第2タンクを接続する送液路と、前記送液路に設けられたフィルター装置と、前記第1タンクに気体を供給して前記第1タンクに貯留された液体に付与する第1タンク内圧力を調整可能な第1圧力調整手段と、前記第2タンクに気体を供給して前記第2タンクに貯留された液体に付与する第2タンク内圧力を調整可能な第2圧力調整手段と、を備え、前記第1圧力調整手段及び前記第2圧力調整手段は、前記第1タンク内圧力及び前記第2タンク内圧力を大気圧よりも高くし、前記第1タンク内圧力から前記第2タンク内圧力を引いた差圧を制御して前記第1タンクから前記第2タンクへ液体を送液させることを特徴とする送液システムにある。