(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027918
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 81/00 20060101AFI20240222BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240222BHJP
C08G 75/0268 20160101ALI20240222BHJP
【FI】
C08L81/00
C08K3/22
C08G75/0268
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131111
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】石川 知紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 潤一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光
(72)【発明者】
【氏名】深田 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】伊勢野 隼也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J030
【Fターム(参考)】
4J002CN061
4J002DE136
4J002FD206
4J002GP00
4J030BA03
4J030BA08
4J030BA49
4J030BB45
4J030BC02
4J030BC13
4J030BE02
4J030BG23
4J030BG25
(57)【要約】
【課題】 透明性に優れ、屈折率の高い膜を得ることができる組成物を提供する。
【解決手段】 格子面(101)に垂直方向の結晶子径Dc(101)が5.0~40nmであり、結晶化度が80%以上である二酸化チタン粒子(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位(U1)を有する硫黄含有重合体(B)とを含むことを特徴とする組成物。
【化1】
(式中、X
1は、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子面(101)に垂直方向の結晶子径Dc(101)が5.0~40nmであり、結晶化度が80%以上である二酸化チタン粒子(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位(U1)を有する硫黄含有重合体(B)とを含むことを特徴とする組成物。
【化1】
(式中、X
1は、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の組成物を含む膜。
【請求項3】
二酸化チタン粒子と下記一般式(1)で表される構成単位(U1)を有する硫黄含有重合体(V)とを含み、NaD線に対する屈折率が1.90~2.15であり、ヘイズが5.00%以下であることを特徴とする膜。
【化2】
(式中、X
1は、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。より詳しくは、特定の二酸化チタン粒子と、特定の硫黄含有重合体とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明で屈折率の高い樹脂材料は、撮像用レンズやディスプレイ用フィルム等の光学用途など幅広い用途に使用されている。近年、屈折率に対する要求は高まり、酸化チタン、酸化ジルコニム等の高屈折率を有する金属酸化物を含む粒子と樹脂成分とを含む樹脂組成物やその製造方法が提案されている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-169318号公報
【特許文献2】特開2007-314773号公報
【特許文献3】特開2007-270097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を製造するためのコーティング組成物の製造方法が提案されており、実施例では、全光線透過率が89~93%の範囲、532nm光に対する屈折率が1.721~1.789の範囲であるフィルムが示されている。特許文献2には、表面処理剤で被覆された平均粒径10nm以下の粒子、及び重合性モノマーを含む重合性組成物を重合して得られる高屈折率樹脂組成物であって、該組成物の屈折率と表面処理剤を除いた粒子の含有量との関係が特定の関係式で示される、高屈折率樹脂組成物が提案されている。好ましい形態として、粒子としては酸化チタン、酸化ジルコニウム、表面処理剤としては高屈折率部分を有する化合物、重合性モノマーとして高屈折率(メタ)アクリルモノマーをそれぞれ用いることが記載され、実施例ではこれら好ましい形態の重合性組成物を調製し、得られた重合性組成物より樹脂組成物(2mm厚の板、硬化物)を得ているが、硬化後屈折率として示される屈折率の値は最も高い例で1.73である。特許文献3には、屈折率が1.5~2.8であるルチル型結晶構造の酸化チタンを含有する無機酸化物超微粒子を核(A)とし、ケイ素酸化物を含む被覆層(B)から構成される無機酸化物被覆層を有する被覆型無機酸化物超微粒子を含有してなる樹脂組成物が提案され、実施例においては樹脂としてアクリレートモノマーを用いた樹脂組成物より光硬化により2mm厚のフィルムを得ている。得られたフィルムの屈折率は1.76または1.81であることが表1に示されている。
【0005】
以上のように、屈折率は高くても1.8程度であり、十分とは言い難く、改善の余地があった。よって、本発明は、透明性に優れ、屈折率の高い膜を得ることができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。すなわち本開示の組成物は、格子面(101)に垂直方向の結晶子径Dc(101)が5.0~40nmであり、結晶化度が80%以上である二酸化チタン粒子(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位(U1)を有する硫黄含有重合体(B)とを含むことを特徴とする組成物である。
【0007】
【0008】
(式中、X1は、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、透明性に優れ、屈折率の高い膜を得ることができる。そのため、撮像レンズや高屈折率膜等の光学薄膜をはじめとする各種の光学部材を製造する組成物として好ましく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」または「メタクリロイル」を意味する。また(メタ)アクリレートを(メタ)アクリル酸エステルということもある。
【0011】
[本開示の組成物]
本開示の組成物は、格子面(101)に垂直方向の結晶子径Dc(101)が5.0~40nmであり、結晶化度が80%以上である二酸化チタン粒子(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位(U1)を有する硫黄含有重合体(B)とを含むことを特徴とする。
【0012】
【0013】
(式中、X1は、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。)
<二酸化チタン粒子(A)>
本開示の組成物は、格子面(101)に垂直方向の結晶子径Dc(101)が5.0~40nmであり、結晶化度が80%以上である二酸化チタン粒子(A)を含む。
結晶子径Dc(101)は、本開示の組成物に含まれる二酸化チタン粒子(A)の格子面(101)に垂直方向の結晶子径を意味する。
上記二酸化チタン粒子(A)における結晶子径Dc(101)は、5.0~40nmである。上記結晶子径Dc(101)を40nm以下とすることにより、本開示の組成物の光透過性を優れたものとすることができ、上記結晶子径Dc(101)を5nm以上とすることにより、本開示の組成物の屈折率を高いものとすることができる。
上記結晶子径Dc(101)が30nm以下であることが好ましく、より好ましくは25nm以下である。下限値は、より好ましくは7.0nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上である。
【0014】
上記二酸化チタン粒子(A)における結晶化度は、80%以上である。上記結晶化度は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、94%以上がさらに好ましい。
上記結晶子径Dc(101)、上記結晶化度はいずれも粉末X線回折測定により求めることができ、粉末X線回折測定により測定した値を採用することができる。
測定試料としては、本開示の組成物が粉末等の固体である場合はそれを試料として用いることが好ましく、本開示の組成物が溶媒等の揮発成分を含む場合は乾燥等により揮発成分を除去したものを試料として用いることが好ましい。本開示の組成物を試料とすることが難しい場合等、組成物を調製するために用いた二酸化チタン粒子(A)を試料として代用することができる。
【0015】
結晶子径Dc(101)は、格子面(101)の回折線の半値全幅を測定しScherrerの式を用いて求めることができる。具体的には、粉末X線回折測定により得られるX線回折パターンのうち、格子面(101)の回折線の半値全幅を測定し、得られた値より解析ソフト(リガク社製、PDXL2)を用いて算出することができる。
【0016】
結晶化度は、全パターンフィッティング法により求めることができ、測定対象試料の二酸化チタンに混合試料として既知量の酸化アルミニウム(コランダム)を加えることで各回折ピークの角度および強度が精密化され、含有結晶相の回折パターンのスケール因子を求めることができる。算出されたスケール因子とデータベースのRIR(Reference Intensity Ratio)値から、各結晶相の重量比を算出することができ、このようにして得られた値を採用する。全パターンフィッティング法による各結晶相のパラメーターの精密化およびスケール因子の算出は、解析ソフト(リガク社製、PDXL2)の指示によって行い、RIR(Reference Intensity Ratio)値は、二酸化チタン(アナターゼ)では5.01、酸化アルミニウム(コランダム)では1.02の値を参照することで二酸化チタンと酸化アルミニウムの重量比を求めることができる。
上記結晶子径、結晶化度の測定に用いる装置は、粉末X線回折測定が可能な装置であれば、特に制限されないが、たとえば、SmartLab(リガク社製)を好ましく用いることができる。
【0017】
上記二酸化チタン粒子(A)の結晶構造は、特に制限されない。たとえば、ルチル型、アナターゼ型、およびブルッカイト型からなる群から選択される少なくとも1種の結晶構造を有することが好ましい。工業的に製造し易い観点から、より好ましくはルチル型、アナターゼ型であり、さらに好ましくはアナターゼ型である。上記二酸化チタン粒子(A)の結晶構造は粉末X線回折測定によるX線回折パターンを測定することにより確認することができる。
【0018】
上記二酸化チタン粒子(A)の平均1次粒子径は、特に制限されないが、光学的な均質性に優れるものとなり易い観点から、平均1次粒子径が1~50nmであることが好ましい。より好ましくは20nm以下であり、さらに好ましくは15nm以下である。下限値は、より好ましくは3nm以上であり、さらに好ましくは5nm以上である。
上記平均1次粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)観察で得られたTEM像を解析することにより求めることができる。具体的には、上記TEM像における、個々の二酸化チタン粒子の投影面積に等しい円の直径(円相当径)を求め、これを上記個々の二酸化チタン粒子の1次粒子径とする。通常10~500個、好ましくは100個の二酸化チタン粒子の1次粒子径を求め、得られた1次粒子径の個数平均を算出し、これを上記二酸化チタン粒子(A)の平均1次粒子径として採用することができる。上記TEM像における倍率は特に制限されないが、通常50,000~1,000,000倍、好ましくは500,000倍である。
上記平均1次粒子径の測定に用いるTEM装置は、特に制限されないが、たとえば、S-4800(日立ハイテクノロジーズ社製)を好ましく用いることができる。
【0019】
TEM観察用の測定試料の調製方法は、特に制限されないが、たとえば以下を採用することができる。
(TEM観察用測定試料の調製方法)
本開示の組成物が液状である場合は該組成物もしくはそれを溶媒で希釈した液状物を試料用分散液として用いることが好ましく、本開示の組成物が粉末等の固体である場合は、溶媒に分散させ、それを試料用分散液として用いることが好ましい。本開示の組成物を試料とすることが難しい場合等、組成物を調製する前の酸化チタン粒子(A)粉末を溶媒に分散させたものを試料用分散液として代用することもできる。上記のようにして調製した試料用分散液をTEM試料用マイクログリッドに滴下したものを測定試料とする。必要であればグリッドにはカーボン支持膜を使用することができる。
【0020】
上記二酸化チタン粒子(A)の平均分散粒子径は、特に制限されないが、光学的な均質性に優れるものとなり易い観点から、平均分散粒子径が1~100nmであることが好ましい。より好ましくは50nm以下である。下限値は、より好ましくは6nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上である。
上記平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた粒子径測定により得られる、体積基準の粒子径分布における平均粒子径を採用する。測定試料としては、本開示の組成物が液状である場合は該組成物もしくはそれを溶媒で希釈した液状物を試料用分散液として用いることが好ましく、本開示の組成物が粉末等の固体である場合は、溶媒に分散させ、それを試料用分散液として用いることが好ましい。本開示の組成物を試料とすることが難しい場合等、組成物を調製する前の酸化チタン粒子(A)粉末を溶媒に分散させたものを試料用分散液として代用することもできる。上記のようにして調製した試料用分散液は、おおよその平均分散粒子径よりも十分に細孔径の大きいフィルターを用いて濾過したものを測定試料とする。上記平均分散粒子径の測定に用いる動的光散乱方式の粒子径測定装置は、特に制限されないが、たとえば、FPAR-1000(大塚電子株式会社)を好ましく用いることができる。
【0021】
上記二酸化チタン粒子(A)の粒子形状は、特に制限されないが、不定形、粒状、板状、柱状、針状等のいずれであってもよいが、粒状が好ましく、粒状の中でも球状が好ましい。なお、上記粒状とは、アスペクト比が1.5以下の偏りのない形状を意味する。上記粒子形状は電子顕微鏡観察により確認することができる。
【0022】
上記二酸化チタン粒子(A)は、その表面に有機基が導入されたものであってもよい。有機基の有無、導入する有機基の種類により、本開示の組成物における硫黄含有重合体(B)との親和性や反応性を制御することが可能となる。有機基としては、特に制限されないが、たとえば、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基等の炭化水素基、(メタ)アクリル基、ビニル基等の不飽和二重結合基を有する有機基等があげられる。上記表面に有機基を導入する方法としては、特に制限されないが、上記有機基を有するシランカップリング剤、リン酸基を有する化合物、アルコール、カルボン酸を二酸化チタン粒子の表面に反応させる方法、好ましくは、二酸化チタン粒子の表面に存在する水酸基等に反応させる方法が挙げられる。上記二酸化チタン粒子(A)は、その表面にシリカ、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物膜で被覆されてなるものであってもよい。
【0023】
上記二酸化チタン粒子(A)における、TiO2換算の含有量は、特に制限されないが、40~100質量%であることが好ましい。より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。上記TiO2換算の含有量は、以下のようにしても求めることができる。
(TiO2換算の含有量)
二酸化チタンの含有量は、蛍光X線分析測定により得られるチタン原子質量の割合から求めることができる。具体的には、二酸化チタン粒子(A)の蛍光X線分析測定によりチタン原子の含有量(質量%)を求め、得られた含有量をTiO2としての含有量に換算し、得られた値を二酸化チタン粒子(A)におけるTiO2換算の含有量とする。上記蛍光X線分析測定に用いる装置は、特に制限されないが、たとえば、ZSXPrimusIII(リガク社製)を好ましく用いることができる。
【0024】
上記二酸化チタン粒子(A)における、無機酸化物含有量は、特に制限されないが、40~100質量%であることが好ましい。より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。上記無機酸化物含有量は、以下のようにしても求めることができる。
(無機酸化物含有量)
二酸化チタン粒子(A)を、空気中、室温より10℃/分の昇温速度で昇温し、900℃で2時間加熱保持した後、室温まで冷却する、という加熱処理を行う。加熱処理に供した二酸化チタン粒子(A)の質量をSb(g)、加熱処理後の残分(灰分)の質量をSa(g)としたとき、無機酸化物含有量は下記式により求めることができる。
無機酸化物含有量(質量%)={Sa(g)/Sb(g)}×100
二酸化チタン粒子(A)を含む本開示の組成物、あるいは二酸化チタン粒子(A)が溶媒に分散してなる分散液等の二酸化チタン粒子(A)を含有する各種組成物についても、上記と同様の方法により、無機酸化物含有量を評価することができる。
【0025】
上記二酸化チタン粒子(A)の製造方法は、特に制限されない。たとえば、以下の方法により製造することができる。
(二酸化チタン粒子(A)の製造方法例)
上記二酸化チタン粒子(A)の製造方法は、特に制限されず、従来公知の湿式法、乾式法等により製造することもできるが、チタンアルコキシドの加水分解生成物を含水アルコール中または有機酸中で水熱処理する方法、TiCl4の加熱蒸気を加熱酸素と反応させ、高温気相でTiO2粒子を形成させる塩素法、TiOSO4の水溶液を熱加水分解して得られる沈殿であるAnatase型のTiO2微粒子を800-1000℃で焼成し成長させる硫酸法等が好ましくあげられる。
【0026】
上記二酸化チタン粒子(A)としては、市販品を用いることもできる。たとえば、日本アエロジル株式会社製;P-25、P-90、テイカ株式会社製;MT-05、MT-100SA、MT-100HD、MT-500B、石原産業株式会社製;PT-601A、TTO-51(A)、堺化学工業株式会社製;SSP-M、富士チタン工業株式会社製;TAF-1500Jなどの二酸化チタン粒子が挙げられる。
【0027】
<硫黄含有重合体(B)>
本開示の組成物における硫黄含有重合体(B)は、上記一般式(1)で表される構成単位(U1)を有する硫黄含有重合体である。
上記硫黄含有重合体(B)は、構成単位(U1)を1つ以上有すればよいが、複数有することが好ましく、また、構成単位(U1)を繰り返し単位として含むことがより好ましく、繰返し単位として複数含むことがより好ましい。
【0028】
上記一般式(1)で表される構成単位(U1)において、式中、X1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。上記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、トリフェニレン基、ビフェニレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。なかでも、重合体の光分散がより小さくなる点で、上記2価の芳香族炭化水素基は、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ビフェニレン基、トリフェニレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0029】
上記X1で表される上記2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基(「置換基A」とも称する)としては、特に制限されないが、好ましくは、反応性官能基、ハロゲン原子、又は、置換基(「置換基B」とも称する。)を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、もしくは硫黄含有炭化水素基が挙げられる。
【0030】
上記反応性官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基、硬化性官能基、およびこれらの官能基を含む基等があげられる。上記酸性官能基としては、カルボキシ基(-COOH)、リン酸基(-OPO(OH)2)、水酸基(-OH)、スルホ基(-SO3H)、ホスホン酸基(-PO(OH)2)、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、等があげられる。上記塩基性官能基としてはアミノ基、アンモニウム基、イミノ基、アミド基、イミド基、マレイミド基等の塩基性官能基等があげられる。上記硬化性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、メタリル基等の反応性二重結合を有する基等の反応性不飽和結合を有する基;エポキシ基、オキセタン基等の反応性環状エーテル基を有する基等の反応性イオン結合を有する基、メルカプト基(-SH)等があげられる。
【0031】
上記これらの官能基を含む基としては、例えば、上述した酸性官能基、塩基性官能基、又は硬化性官能基と、炭化水素鎖や結合基とを有する基等が挙げられる。すなわち、本発明においては、上記反応性官能基には、上述した酸性官能基、塩基性官能基や硬化性官能基だけでなく、これらの官能基と結合鎖を含む基も含まれる。上記結合鎖としては、アルキレン基、アリーレン基等の2価の炭化水素基や、エーテル、エステル、カルボニル、アミド等の結合基や、これらの組み合わせ等が挙げられる。例えば、上記反応性官能基としてカルボキシ基が好ましいという場合、上記反応性官能基として、カルボキシ基、及び/又は、カルボキシ基を含む基が好ましいことを意味する。
【0032】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、なかでも、臭素原子が好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基等が挙げられる。上記アルキル基としては、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0033】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
上記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基等が挙げられる。なかでも、フェニル基が好ましい。上記アリール基の炭素数は、6~30であることが好ましく、6~18であることがより好ましく、6~12であることが更に好ましい。
【0034】
上記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルオクチル基等が挙げられる。上記アラルキル基の炭素数は、7~14であることが好ましく、7~9であることが好ましい。
上記硫黄含有炭化水素基としては、例えば、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。上記硫黄含有炭化水素基の炭素数は、1~8であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。
【0035】
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、及び、硫黄含有炭化水素基は、更に置換基(置換基B)を有していてもよい。上記置換基Bとしては、アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられ、これらの好ましい形態は、上記置換基Aとしてのアルキル基、ハロゲン原子等と同様である。
【0036】
上記置換基Aの中でも、後述する有機溶媒や重合性化合物に対する硫黄含有重合体(B)の親和性が優れるものとなり易い観点から、アルキル基が好ましく、炭素数1~18のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
また、上記置換基Aとしては、上記硬化性官能基が好ましく、中でもメルカプト基が好ましい。これらの官能基もしくはこれらの官能基を含む基を置換基として有する硫黄含有重合体(B)を含む組成物は、耐熱性や耐溶剤性に優れる硬化物膜が得られ易い傾向がある。メルカプト基を含む基としては、チオアルキル基、チオアリール基が好ましく、チオアルキル基がより好ましい。
【0037】
X1で表される上記2価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基Aの数は、特に限定されない。本開示の組成物を調製する際に用いる溶媒に対する硫黄含有重合体(B)の溶解性等の加工性を調整したり、屈折率等を微妙に制御する等の目的で適宜選択すればよい。上記置換基の数は、たとえば、1~6であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記2価の芳香族炭化水素基において、上記置換基Aが結合する位置は特に制限されない。
上記構成単位(U1)において置換基Aが2個以上ある場合、置換基Aの種類は同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
上記硫黄含有重合体(B)が構成単位(U1)を複数有する場合、各構成単位(U1)における、上記2価の芳香族炭化水素基の種類、上記2価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基Aの種類、数、結合位置等は、同じであっても異なっていてもよい。
上記構成単位(U1)において、2価の芳香族炭化水素基にスルフィニル基(-S(=O)-)が結合する位置、2価の芳香族炭化水素基に対する他方の主鎖の結合位置、これらの位置関係はいずれも特に制限されない。
【0039】
また上記硫黄含有重合体(B)が構成単位(U1)を複数有する場合、各構成単位(U1)における、スルフィニル基(-S(=O)-)が上記2価の芳香族炭化水素基に結合する位置は同じであっても異なっていてもよいし、2価の芳香族炭化水素基に対する他方の主鎖の結合位置は同じであっても異なっていてもよい。また各構成単位(U1)における、2価の芳香族炭化水素基にスルフィニル基が結合する位置と、2価の芳香族炭化水素基に対する他方の主鎖の結合位置との位置関係は、同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
上記構成単位(U1)の好ましい実施形態の一つとして、たとえば、上記X1で表される2価の芳香族炭化水素基がフェニレン基である形態があげられる。X1で表される2価の芳香族炭化水素基がフェニレン基である構成単位(U1)を構成単位(U1-1)とも称する。
上記フェニレン基は置換基(「置換基A-1」とも称する)を有していてもよいし、有していなくてもよい。上記置換基A-1の種類は、上記置換基Aと同様であり、好ましい形態も同様である。
【0041】
上記フェニレン基に結合する置換基A-1の総数は0~4の整数であり、好ましくは1~3であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。上記置換基A-1の位置は特に制限されず、スルフィニル基が結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、置換基A-1の位置はフェニレン基の2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、4位または2位が好ましく、4位がより好ましい。
【0042】
上記構成単位(U1-1)において、スルフィニル基が結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、フェニレン基に対する他方の主鎖の結合位置は特に制限されない。フェニレン基の2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、2位または3位が好ましく、3位がより好ましい。
【0043】
上記硫黄含有重合体(B)は、上記構成単位(U1-1)を複数含むことが好ましく、また、繰返し単位として含むことが好ましく、繰返し単位として複数含むことがより好ましい。上記硫黄含有重合体(B)が上記構成単位(U1-1)を複数含む場合、各構成単位(U1-1)における、X1で表されるフェニレン基に結合する置換基A-1の種類、数、結合位置、フェニレン基におけるスルフィニル基の結合位置、他方の主鎖の結合位置等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
上記硫黄含有重合体(B)は、構成単位として上記構成単位(U1)を少なくとも1個有すればよい。よって、上記硫黄含有重合体(B)は、1個または複数の構成単位(U1)のみからなる重合体であってもよいし、上記構成単位(U1)と、上記構成単位(U1)以外の構成単位を含む重合体であってもよい。上記構成単位(U1)以外の構成単位を、他の構成単位とも称する。上記他の構成単位は1種でもよいし2種以上であってもよい。
【0045】
上記硫黄含有重合体(B)における上記構成単位(U1)の含有割合は、特に制限されないが、硫黄含有重合体(B)中の全構成単位の合計含有量100モルに対して、構成単位(U1)の含有量が1~100モルであることが好ましい。より好ましくは5モル以上であり、さらに好ましくは10モル以上である。一方、上限は、より好ましくは98モル以下であり、さらに好ましくは95モル以下であり、特に好ましくは90モル以下である。上記硫黄含有重合体(B)の好ましい一実施形態における構成単位(U1-1)の含有量についても同様である。
【0046】
上記他の構成単位としては、特に制限されないが、下記一般式(2)で表される構成単位(U2)および/または下記一般式(3)で表される構成単位(U3)であることが好ましい。
【0047】
【0048】
(式中、X2は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。)
【0049】
【0050】
(式中、X3は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。)
すなわち、上記硫黄含有重合体(B)が、上記構成単位(U1)を含み、さらに上記構成単位(U2)および/または上記構成単位(U3)を含む重合体であることは、上記硫黄含有重合体(B)における好ましい実施形態の一つである。
【0051】
上記構成単位(U2)におけるX2、上記構成単位(U3)におけるX3で各々表される2価の芳香族炭化水素基の種類、2価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基の種類、数、結合位置等は、これらの好ましい形態を含め、上記構成単位(U1)におけるX1で表される2価の芳香族炭化水素基の種類、2価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基Aの種類、数、結合位置等と同様であり、構成単位(U1)における説明を準用することができる。
【0052】
上記構成単位(U2)、上記構成単位(U3)においても、好ましい実施形態の一つとして、上記X2、上記X3で各々表される2価の芳香族炭化水素基がフェニレン基である形態があげられる。X2、X3でそれぞれ表される2価の芳香族炭化水素基がフェニレン基である構成単位を構成単位(U2-1)、構成単位(U3-1)とも称する。構成単位(U2-1)、構成単位(U3-1)における、フェニレン基に結合する置換基の種類、数、結合位置、フェニレン基におけるスルフィド基、スルホニル基の結合位置、他方の主鎖の結合位置等はこれらの好ましい形態を含め、構成単位(U1-1)における、フェニレン基に結合する置換基A-1の種類、数、結合位置、フェニレン基におけるスルフィニル基の結合位置、他方の主鎖の結合位置等と同様であり、構成単位(U1―1)における説明を準用することができる。
【0053】
上記硫黄含有重合体(B)は、上記構成単位(U2-1)および/または上記構成単位(U3-1)を複数含んでいてもよいし、また、繰返し単位として含んでいてもよいし、繰返し単位として複数含んでいてもよい。上記硫黄含有重合体(B)が上記構成単位(U2-1)および/または上記構成単位(U3-1)を複数含む場合、各構成単位(U2-1)、(U3-1)における、X2、X3でそれぞれ表されるフェニレン基に結合する置換基の種類、数、結合位置、フェニレン基におけるスルフィド基、スルホニル基の結合位置、他方の主鎖の結合位置等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
上記硫黄含有重合体(B)において、上記構成単位(U1)、上記構成単位(U2)、および上記構成単位(U3)の合計含有量は、特に制限されないが、全構成単位の合計含有量100モルに対する上記合計含有量が、1~100モルであることが好ましい。より好ましくは30モル以上であり、さらに好ましくは50モル以上であり、さらに好ましくは80モル以上である。
【0055】
上記硫黄含有重合体(B)における、全構成単位の合計含有量100モルに対する上記構成単位(U1)含有量の好ましい範囲は、上述したとおりであるが、残部が上記構成単位(U2)および(U3)の合計含有量であることが好ましい。
【0056】
上記硫黄含有重合体(B)において構成単位(U1)、(U2)、(U3)が各々構成単位(U1-1)、(U2-1)、(U3-1)である場合、全構成単位の合計含有量100モルに対する、上記構成単位(U1-1)、上記構成単位(U2-1)、および上記構成単位(U3-1)の合計含有量の好ましい範囲は、上記の構成単位(U1)、上記構成単位(U2)、および上記構成単位(U3)の合計含有量の場合と同様である。
【0057】
上記硫黄含有重合体(B)において、上記構成単位(U2)の含有量は、特に制限されないが、上記構成単位(U1)の含有量100モルに対し、0~9900モルであることが好ましい。より好ましくは0.01モル以上であり、さらに好ましくは1.0モル以上であり、特に好ましくは5モル以上である。一方、上限は、より好ましくは900モル以下であり、さらに好ましくは500モル以下であり、さらにより好ましくは100モル以下であり、特に好ましくは95モル以下である。上記硫黄含有重合体(B)において構成単位(U2)が構成単位(U2-1)である場合、上記構成単位(U2-1)の含有量の好ましい範囲は、上記の構成単位(U2)の含有量の場合と同様である。
【0058】
上記硫黄含有重合体(B)において、上記構成単位(U3)の含有量は、特に制限されないが、上記構成単位(U1)の含有量100モルに対し、0~9900モルであることが好ましい。より好ましくは0.01モル以上であり、さらに好ましくは1.0モル以上であり、特に好ましくは5モル以上である。一方、上限は、より好ましくは900モル以下であり、さらに好ましくは500モル以下であり、さらにより好ましくは100モル以下であり、特に好ましくは95モル以下である。上記硫黄含有重合体(B)において構成単位(U3)が構成単位(U3-1)である場合、上記構成単位(U3-1)の含有量の好ましい範囲は、上記の構成単位(U3)の含有量の場合と同様である。
【0059】
上記硫黄含有重合体(B)の製造方法は、特に制限されない。たとえば、芳香族ジスルフィド化合物および/または芳香族チオール化合物を含む単量体成分を酸化重合する重合工程を含む製造方法が好ましく、中でも、該重合工程を行った後に、該重合工程により得られた重合体を酸化する酸化工程を含む製造方法がより好ましい。上記製造方法により上記構成単位(U1)を有する硫黄含有重合体(B)を効率よく製造することができる。
【0060】
上記重合工程は、芳香族ジスルフィド化合物および/または芳香族チオール化合物を含む単量体成分を酸化重合する工程である。該工程により、少なくとも構成単位(U2)を繰返し単位として複数含む重合体を得ることができる。
【0061】
上記酸化重合は、単量体成分を加熱溶融した状態で行うこともできるが、単量体成分を溶媒に分散または溶解した組成物中で行うことが好ましい。なお、上記組成物、すなわち、単量体成分と溶媒とを含む組成物を原料組成物とも称し、重合反応が開始してから重合反応が終了するまでの組成物を反応組成物とも称する。また重合反応により得られた組成物を重合体組成物とも称する。
【0062】
上記単量体成分としては、芳香族ジスルフィド化合物および/または芳香族チオール化合物を含む。これらの中でも、芳香族ジスルフィド化合物を含むことが好ましい。
上記芳香族ジスルフィド化合物としては、下記一般式(4)で表されるジアリールジスルフィド化合物がより好ましく、上記芳香族チオール化合物としては下記一般式(5)で表されるチオアリール化合物がより好ましい。
【0063】
【0064】
【0065】
(式(4)及び(5)中、A1及びA2は、同一又は異なって、置換基を有してもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。)
A1及びA2で表される上記1価の芳香族炭化水素基としては、たとえば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリフェニル基、ビフェニル基、フェナントリル基等である。なかでも、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、又は、トリフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。A1及びA2で表される上記1価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては上記一般式(1)中のX1で表される2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基Aと同様の基をあげることができ、置換基の数や芳香族炭化水素基への結合位置は上記一般式(1)中のX1で表される2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基の場合に準じる。
【0066】
上記ジアリールジスルフィド化合物としては、ジフェニルジスルフィド化合物が好ましく、上記チオアリール化合物としてはベンゼンチオール化合物が好ましい。中でもジフェニルジスルフィド化合物が好ましい。これらの化合物は、置換基を有していてもよく、置換基の種類は上記ジアリールジスルフィド化合物、上記チオアリール化合物における置換基と同様である。
【0067】
上記ジフェニルジスルフィド化合物が有することができる置換基の数は0~10個であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。上記ジフェニルジスルフィド化合物におけるフェニル基に対する置換基の結合位置は特に制限されないが、ジスルフィド基が結合した炭素原子(1位)に対し、パラ位(4位)を含むことが好ましい。
上記ベンゼンチオール化合物が有することができる置換基の数は0~5個であり、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1~2である。上記ベンゼンチオール化合物におけるフェニル基に対する置換基の結合位置は特に制限されないが、チオール基が結合した炭素原子(1位)に対し、パラ位(4位)を含むことが好ましい。
【0068】
上記ジフェニルスルフィド化合物の具体的としては、例えば、3,3’-ジメチルジフェニルジスルフィド、2,2’-ジメチルジフェニルジスルフィド、4,4’-ジメチルジフェニルジスルフィド(ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド)、2,2’,3,3’-テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’-テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’-テトラメチルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタメチルジフェニルジスルフィド、2,2’-ジエチルジフェニルジスルフィド、3,3’-ジエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’-テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’-テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’-テトラエチルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’-テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタエチルジフェニルジスルフィド、2,2’-ジプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’-ジプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’-テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’-テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’-テトラプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’-テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’-ジイソプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’-ジイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’-テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’-テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’-テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’-テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタイソプロピルジフェニルジスルフィド等が挙げられる。
【0069】
上記ベンゼンチオール化合物の具体的としては、例えば、3-メチルベンゼンチオール、2-メチルベンゼンチオール、4-メチルベンゼンチオール、チオフェノール(ベンゼンチオール)、2,3-ジメチルベンゼンチオール、2,5-ジメチルベンゼンチオール、2,6-ジメチルベンゼンチオール、3,5-ジメチルベンゼンチオール等が挙げられる。
【0070】
上記ジスルフィド化合物は、チオール化合物の酸化によっても調製することができる。そのため、上記重合工程においては、上記ジスルフィド化合物の前駆体として、チオール化合物を使用することもできる。チオール化合物2分子を酸化的に結合させることにより、ジスルフィド化合物を得ることができる。上記酸化的に結合させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0071】
上記酸化重合は、特に限定されないが、キノン系化合物を用いる酸化重合や、触媒を用いる酸化重合が好ましい。廃液量が少なくて済む観点より、触媒を用いる酸化重合がより好ましい。触媒を用いる酸化重合としては、たとえば、溶媒に上記単量体成分および触媒を溶解または分散させた組成物を加熱することにより、重合反応を行うことがより好ましい。上記触媒としては、特に限定されないが、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)等の金属元素を含む物質が好ましく、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
上記金属元素を含む物質の中でも、酸化重合に対する触媒活性が高い点で、金属元素としてバナジウム、鉄をそれぞれ含む物質(これらをそれぞれバナジウム含有物質、鉄含有物質とも称する)が好ましく、鉄含有物質がより好ましい。上記バナジウム含有物質としては、バナジウムを含む金属、バナジウム化合物分子内にV=O結合を有するオキソバナジウム化合物が好ましい。上記オキソバナジウム化合物としては、例えば、バナジルアセチルアセトナート、オキソバナジウムサレン錯体、N,N’-ビスサリチリデンエチレンジアミンオキソバナジウム、フタロシアニンオキソバナジウム、テトラフェニルポルフィリンオキソバナジウム等が挙げられる。上記鉄含有物質としては、分子内に塩素を有する鉄化合物が好ましい。また酸化数が3以上の鉄を含む化合物が好ましい。そのような鉄含有物質としては、たとえば、塩化第二鉄(Fe(Cl)3)、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン塩化鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)等があげられる。
【0073】
上記重合において用いる上記触媒の量は、特に制限されないが、上記単量体成分100モル%に対する、上記触媒に含まれる金属元素の合計含有量が、0.001~50モル%の範囲であることが好ましく、触媒残差による物性への影響が小さくなる傾向がある観点から、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、分子量が高い硫黄含有重合体が得られ易いと観点から0.01モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がさらに好ましく、1モル%以上が特に好ましい。
【0074】
上記重合は、酸素存在下で行うことが好ましい。酸素存在下で行うことにより、酸化重合反応が促進される。よって上記重合は、酸素含有ガスの供給下で行うことが好ましい。たとえば、重合反応中、気相部分に酸素含有ガスを供給する方法、重合反応中の反応組成物に酸素含有ガスをバブリングする方法等が採用される。酸化重合を促進し易い観点から、重合反応中の反応組成物に酸素含有ガスを連続的に供給する方法が好ましく、中でもバブリングする方法が好ましい。
【0075】
酸素含有ガスは酸素分子(O2)を含有するガスであることが好ましい。酸素含有ガスは酸素分子(O2)以外のガス成分を含んでいてもよい。酸素含有ガスに含まれる酸素分子(O2)以外のガス成分としては、特に制限されないが、好ましくは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)等の希ガス類;窒素(N2)などの不活性ガスがあげられる。上記不活性ガス以外に炭酸ガス(CO2)、水蒸気等が含まれていてもよい。
【0076】
酸素含有ガスにおける酸素分子(O2)の含有率は、特に制限されないが、常温(25℃)、1気圧下において、酸素含有ガスにおける酸素分子(O2)の体積割合が酸素含有ガス100体積%に対し0.1~100体積%であることが好ましい。より好ましくは、1~60体積%であり、さらに好ましくは10~30体積%である。酸素含有ガスにおける残分は、たとえば不活性ガスである。
【0077】
酸素含有ガスとしては、特に制限されないが、たとえば、酸素ガス、酸素と窒素との混合ガス、空気等があげられる。経済性に優れる観点から、空気を用いることが好ましい。酸素含有ガス中の水蒸気濃度は、特に制限されないが、1000g/m3以下が好ましく、10g/m3以下がより好ましく、1g/m3以下が更に好ましく、0.1g/m3以下が最も好ましく、乾燥空気が好ましい。
【0078】
酸素含有ガスの供給量は、反応速度を促進でき且つ制御し易い観点から、反応組成物の総容積1m3あたり、1分間当たりの酸素(O2)の供給量(供給速度)として、0.00002m3/分~2m3/分であることが好ましく、より好ましくは0.0001~0.2m3/分以上であり、さらに好ましくは0.0002~0.02m3/分以上である。
【0079】
上記重合工程において、さらに酸および/またはその塩を用いることが好ましい。上記触媒と共に酸および/またはその塩を併用することにより、重合反応により得られる重合体の分子量を高い範囲まで制御し易くなり、短時間でも、高分子量の硫黄含有重合体が得られ易くなる。
【0080】
上記酸としては、ブレンステッド酸が好ましく、中でも、酸解離定数が-19~4である酸が好ましい。より好ましくは酸解離定数が3以下であり、また-8以上である。酸解離定数が-19~4の酸としては、たとえば、リン酸、硝酸、硫酸、過硫酸、亜硫酸、塩酸、臭化水素酸等の無機酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸等のスルホン酸;クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸等のクロロカルボン酸;フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロプロピオン酸、パーフルオロ酪酸、4-フルオロ安息香酸等のフルオロカルボン酸等があげられる。なかでも、10-カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過硫酸が好ましい。
【0081】
上記酸の塩としては、上記酸の塩であれば特に制限されないが、たとえば、ナトリウム、カリウム等の周期律表第1族金属元素、マグネシウム、カルシウム等の周期律表第2族金属元素、アンモニウム等と上記酸との塩が好ましい。中でも、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム等が好ましい。上記酸および/またはその塩は、1種のみ使用してもよいし、2種以上使用してもよい。酸および/またはその塩の使用量は、単量体成分100モル%に対し、0.01~100モル%であることが好ましく、0.1~10モル%であることがより好ましく、0.5~5モル%であることが更に好ましい。
【0082】
上記重合においては、溶媒を使用してもよい。上記溶媒は特に制限されないが、好ましい溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。上記溶媒の使用量は特に制限されないが、原料である上記単量体成分100質量部に対し、1~10000質量部であることが好ましく、より好ましくは10~1000質量部である。上記溶媒の中でも、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル等の非ハロゲン系溶媒を使用することが好ましい。
【0083】
上記重合は、溶媒の沸点以下の温度で常圧で重合を行ってもよいし、リフラックス条件で重合を行ってもよいし、沸点以上の温度に加熱しながら加圧状態で重合を行ってもよい。上記重合において、重合温度は酸化重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、安価な設備で酸化重合反応を行いやすい点で、0~250℃であることが好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましく、一方上限は、200℃以下がより好ましく、180℃以下が更に好ましい。重合時間は、特に限定されないが、通常、0.1~100時間であり、1~80時間であることが好ましく、5~50時間であることがより好ましく、10~24時間であることが更に好ましい。
【0084】
上述した酸化重合により、単量体成分として、上記一般式(4)で表されるジアリールジスルフィド化合物および/または上記一般式(5)で表されるチオアリール化合物を用いた場合には、通常、上記主鎖が、上記A1、A2で表される芳香族炭化水素基がスルフィド基(-S-)等により結合した構造の重合体、すなわち、上記構成単位(U1)、(U2)および(U3)からなる群から選択される1種または2種以上を構成単位とする重合体を含む組成物(重合体組成物)を得ることができる。
【0085】
上記重合工程において上述した好ましい条件で酸化重合を行った場合、上記構成単位(U2)の含有割合が相対的に高い重合体が得られ易い。
同様に、単量体成分として、上記のジフェニルジスルフィド化合物および/またはベンゼンチオール化合物を用いた場合には、主な構成単位として上記構成単位(U2-1)を主な構成単位として含む重合体を得ることができる。
【0086】
上記重合工程により得られた重合体が、構成単位(U1-1)等の構成単位(U1)を有する重合体であれば、該重合体を上記硫黄含有重合体(B)として用いることができる。
上記重合工程により得られた上記重合体における構成単位(U1)、(U1-1)の割合を高くする目的で、酸化工程に供することが好ましい。上記酸化工程は、上記重合工程で得られた重合体を酸化する工程である。
【0087】
上記酸化工程は、酸化剤を使用した酸化反応を行う工程である。上記酸化剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、キノン系化合物、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、四酢酸鉛、酸酢酸タリウム、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、セリウム(IV)アセチルアセトネート、マンガン(III)アセチルアセトネート、過酸化物、塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸を発生し得る化合物等が挙げられる。
【0088】
なかでも、主鎖上に含まれる硫黄原子(スルフィド基、-S-)を適度に酸化して、スルフィニル基(-S(=O)-)を形成することができる点で、過酸化物、塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、および次亜塩素酸を発生し得る化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用することがより好ましい。上記過酸化物としては、例えば、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸、t-ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられる。上記酸化剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記酸化剤の添加量は、重合体(P)中の硫黄原子1モルに対し、0.01~1000モルであることが好ましく、0.05~500モルであることがより好ましく、0.1~100モルであることがより好ましく、0.2~20モルであることが更に好ましい。
【0089】
上記酸化反応の反応温度は、上記酸化反応が進行し易い観点から、0~200℃あることが好ましく、10℃以上がより好ましく、15℃以上が更に好ましく、副反応を抑制し易い観点から180℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。上記酸化反応の反応時間は、通常、0.1~100時間であり、1~80時間であることが好ましく、5~50時間であることがより好ましく、10~24時間であることが更に好ましい。
【0090】
スルホニル基(-S(-O)2-)の含有量を高くしたい場合は、上述した反応時間よりも長時間で反応させればよい。また、この場合の酸化剤の添加量は、所望の硫黄原子の酸化反応が進行するのであれば特に限定されないが、通常、重合体中の硫黄原子1モルに対し、0.01~1000モルであることが好ましく、0.05~500モルであることがより好ましく、0.1~100モルであることがより好ましく、0.5~20モルであることが更に好ましい。
【0091】
上記酸化反応においては、溶媒を使用してもよい。使用する溶媒としては、上記重合工程において使用する溶媒と同様の溶媒が好ましく挙げられる。
上記酸化工程により、重合工程で得られた重合体に比べ、構成単位(U1)の割合が高い重合体を得ることができ、これを上記硫黄含有重合体(B)として用いることができる。
【0092】
上記製造方法により、本開示の組成物に用いる硫黄含有重合体(B)を得ることができるが、上記重合工程で得られた重合体組成物は、上記重合工程で用いた溶媒の他、用いた触媒の残差(触媒残差)等の物質、いわゆる不純物を含む。また上記酸化工程により得られた重合体または重合体を含む組成物は、酸等が残存している可能性がある。これらの不純物は硫黄含有重合体、さらには本開示の組成物の耐熱性等に影響することがあるため、重合体を単離するとともに、これらの不純物を低減することが好ましい。よって、本発明の硫黄含有重合体の製造方法は、精製工程をさらに含むことが好ましい。
【0093】
上記精製工程において用いる精製方法としては、従来公知の精製方法を用いることができる。たとえば、再沈殿法を用いることが好ましい。再沈殿法としては、特に限定されないが、たとえば、上記重合体組成物を、塩酸酸性メタノール中に滴下して重合体を沈殿させ、これをろ過して沈殿物を得て、得られた沈殿物を水やメタノール等の低級アルコールで洗浄する方法等が挙げられる。上記精製工程としては、上記酸化工程で用いた酸化剤由来の成分や重合工程由来の不純物成分等を除去するために従来公知の吸着材を用いた方法を用いることもできる。上記再沈殿法と吸着材を用いる方法を併用することも好ましい。
【0094】
上記硫黄含有重合体の製造方法においては、重合工程、酸化工程、精製工程の他に、さらに他の工程を有していてもよい。上記他の工程としては、例えば、熟成工程、中和工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、溶媒置換工程、溶解工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。上述した製造方法により、本開示の組成物に好ましく用いることができる硫黄含有重合体(B)を得ることができる。
【0095】
<組成>
本開示の組成物における、上記二酸化チタン(A)の含有量は特に制限されないが、本開示の組成物100質量部に対し、10~99質量部であることが好ましい。より好ましくは25質量部以上であり、さらに好ましくは50質量部以上である。上限のより好ましくは95質量部以下であり、さらに好ましくは90質量部以下である。
【0096】
本開示の組成物における、上記硫黄含有重合体(B)の含有量は特に制限されないが、本開示の組成物に含まれる上記二酸化チタン(A)の含有量100質量部に対し、0.1~500質量部であることが好ましい。より好ましくは1.0質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上である。上限のより好ましくは200質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下である。
【0097】
本開示の組成物における、上記二酸化チタン(A)および上記硫黄含有重合体(B)の合計含有量は特に制限されないが、本開示の組成物100質量部に対し、20~100質量部であることが好ましい。より好ましくは40質量部以上であり、さらに好ましくは60質量部以上である。上限のより好ましくは95質量部以下であり、さらに好ましくは90質量部以下である。
【0098】
また本開示の組成物は、上記二酸化チタン粒子(A)および上記硫黄含有重合体(B)以外の成分(他の成分とも称する)を含んでいてもよい。
上記他の成分としては、溶媒、重合性化合物等があげられる。本開示の組成物においてさらに他の成分として溶媒を含む組成物を溶媒含有組成物、重合性化合物を含む組成物を重合性組成物とも称する。本開示の組成物は種々の形態を含むが、好ましい形態として、粉末組成物、被覆粒子、溶媒含有組成物、重合性組成物等があげられ、これらについては後述する。
【0099】
本開示の組成物は、上述したように、二酸化チタン(A),硫黄含有重合体(B)を含み、さらに他の成分として溶媒、重合性化合物等を含むことができるが、これらの成分以外に、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、樹脂、反応性希釈剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等の成分を含有してもよい。これらの成分は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの成分は、公知のものから適宜選択して使用することができる。また、これらの配合量は、適宜設定することができる。
【0100】
本開示の組成物が光学材料用である場合は、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、具体的には、紫外線吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、消泡剤等が好適に挙げられる。
【0101】
<本開示の組成物の製造方法>
本開示の組成物の製造方法は特に制限されない。上記二酸化チタン粒子(A)および上記硫黄含有重合体(B)を任意の形態で混合することにより本開示の組成物を得ることができる。
たとえば、上記二酸化チタン粒子(A)の粉末と、上記硫黄含有重合体(B)の粉末とを混合する方法(1)、上記二酸化チタン粒子(A)の粉末と、上記硫黄含有重合体(B)を溶媒に溶解した溶液とを混合する方法(2)、上記二酸化チタン粒子(A)を溶媒に分散した分散液と、上記硫黄含有重合体(B)とを混合する方法(3)、上記二酸化チタン粒子(A)を溶媒に分散した分散液と、上記硫黄含有重合体(B)を溶媒に溶解した溶液とを混合する方法(4)等があげられる。中でも混合均一性の高い組成物が得られ易い点から、方法(4)が好ましい。
【0102】
上記混合には、例えば、一般的な撹拌羽根や超音波ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星撹拌装置、3本ロール、ボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミル、ビーズミル、ペイントシェーカー等の混合又は撹拌できる装置を用いることができる。
上記混合により、本開示の組成物は得られるが、必要に応じて、用いた溶媒等を、加熱蒸発、遠心分離、ろ過等の従来公知の分離方法を適用して除去することができる。また上記他の成分を上記混合と同時にあるいは上記混合後に添加混合することもできる。
上記溶媒については後述する溶媒含有組成物に用いることのできる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0103】
<本開示の組成物における好ましい実施形態例>
本開示の組成物は、上記二酸化チタン粒子(A)および上記硫黄含有重合体(B)を含むものを全て包含する。上記二酸化チタン粒子(A)と上記硫黄含有重合体(B)との物理的な混合物であってもよいし、上記二酸化チタン粒子(A)と上記硫黄含有重合体(B)とが化学結合により複合した複合体であってもよいし、上記混合物と複合体が混在する形態であってもよい。また、粉末、フィルム等の固体であってもよいし、液状であってもよい。
本開示の組成物における好ましい実施形態の幾つかを説明する。
【0104】
<<粉末組成物>>
本開示の組成物における粉末組成物とは、上記した本開示の組成物からなる粉末である。
上記粉末組成物の製造方法は特に制限されない。本開示の組成物の製造方法として説明した上記方法(1)~(4)を用いることにより、上記二酸化チタン粒子(A)および上記硫黄含有重合体(B)とを含む組成物が得られ、得られた組成物が粉末の場合(方法(1)の場合)はこれが本開示の粉末組成物である。一方、得られた組成物が溶媒を含む場合(方法(2)~(4)の場合)は、加熱により溶媒を蒸発することにより、あるいは遠心分離、ろ過等の従来公知の分離方法と加熱による乾燥を組合せることにより、粉末組成物を得ることができる。
【0105】
特に好ましい製造方法の一例を以下に示す。すなわち、上記二酸化チタン粒子(A)を有機溶媒(たとえば、テトラヒドロフラン、トルエン)に分散した分散液、並びに、上記硫黄含有重合体(B)を有機溶媒(たとえば、テトラヒドロフランおよびN-メチルピロリドン)に溶解した溶液をそれぞれ調製する。上記分散液と上記溶液を混合、攪拌することにより、上記二酸化チタン粒子(A)と上記硫黄含有重合体(B)とが均質に混合した分散体が得られる。得られた分散体に貧溶媒(たとえば、ヘキサン)を混合することにより、沈殿物が生成する。ろ過により該沈殿物を捕集し、乾燥することにより、上記二酸化チタン粒子(A)と上記硫黄含有重合体(B)とを含む粉末組成物が得られる。
【0106】
上記粉末組成物において、上記二酸化チタン粒子(A)と上記硫黄含有重合体(B)との物理的な混合物であってもよいし、上記二酸化チタン粒子(A)と上記硫黄含有重合体(B)とが化学結合により結合した複合体であってもよいし、上記混合物と上記複合体が混在する形態であってもよい。
【0107】
上記粉末組成物における上記二酸化チタン粒子(A)の含有量、上記二酸化チタン粒子(A)に対する上記硫黄含有重合体(B)の含有量は、特に制限されず、各々の好ましい含有量は、本開示の組成物における各成分の含有量として説明したとおりである。
【0108】
<<被覆粒子>>
本開示の組成物における被覆粒子とは、上記二酸化チタン粒子(A)の表面の一部または全部が上記硫黄含有重合体(B)により被覆されてなる粒子を意味する。言い換えれば上記被覆粒子は、上記二酸化チタン粒子(A)の表面の少なくとも一部に上記硫黄含有重合体(B)からなる被覆層が連続または断続的に形成されてなる粒子である。
【0109】
上記二酸化チタン粒子(A)の表面に対する硫黄含有重合体(B)の結合の種類は特に制限されない。二酸化チタン粒子(A)の表面と硫黄含有重合体(B)分子との間のファンデルワールス相互作用等による物理吸着であってもよいし、上記二酸化チタン粒子(A)の表面に上記硫黄含有重合体(B)の分子の一部が共有結合、配位結合、およびイオン結合からなる群から選択される少なくとも一種の結合で化学結合(化学吸着)している形態であってもよい。被覆粒子の化学的安定性の観点から、化学結合している形態が好ましい。
【0110】
上記被覆粒子における上記二酸化チタン粒子(A)の含有量、上記二酸化チタン粒子(A)に対する上記硫黄含有重合体(B)の含有量は、特に制限されず、各々の好ましい含有量は、本開示の組成物における各成分の含有量として説明したとおりである。上記硫黄含有重合体(B)が上記二酸化チタン(A)100質量部に対し、10~100であることが特に好ましい。
【0111】
上記被覆粒子の製造方法は特に制限されない。本開示の組成物の製造方法として説明した上記方法(1)~(4)を採用することができるが、上記方法(1)~(4)において上記二酸化チタン粒子(A)と上記硫黄含有重合体(B)とを混合時または混合後に、粒子間の凝集を上回る高い分離力を付与する処理を行うことが好ましい。該処理を行える装置としては、たとえば、ビーズミル、ペイントシェーカー等があげられる。
【0112】
上記方法により、被覆粒子を含む組成物が得られる。上記方法(1)を用いた場合は、被覆粒子を含む粉末組成物が得られるが、遊離の硫黄含有重合体(B)を含み、これを除去したい場合には、上記粉末組成物を、硫黄含有重合体(B)が溶解し得る溶媒に混合し遊離の硫黄含有重合体(B)を溶解する操作と、遠心分離、ろ過等の従来公知の分離方法による分離操作とを1回または数回繰り返して行えばよい。上記方法(2)~(4)の場合、少なくとも被覆粒子および溶媒を含む組成物が得られる。該組成物より加熱等により溶媒を除去することにより、粉末状の被覆粒子を得ることができる。また上記の少なくとも被覆粒子および溶媒を含む組成物が遊離の硫黄含有重合体(B)を含み、これを除去したい場合には、遠心分離、ろ過等の従来公知の分離方法による分離操作を行うか、あるいは該分離操作と硫黄含有重合体(B)が溶解し得る溶媒への混合による遊離の硫黄含有重合体(B)の溶解操作とを1回または数回繰り返して行えばよい。
【0113】
上述した方法により被覆粒子のみあるいは被覆粒子の含有率の高い組成物を得ることができ、必要に応じて乾燥することにより、粉末状の被覆粒子が得られる。
【0114】
特に好ましい製造方法の一例を以下に示す。すなわち、上記二酸化チタン粒子(A)を有機溶媒(たとえば、シクロヘキサノン、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)に分散した分散液、並びに、上記硫黄含有重合体(B)を有機溶媒(たとえば、シクロヘキサノン、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)に溶解した溶液をそれぞれ調製する。若しくは、上記二酸化チタン粒子(A)を上記硫黄含有重合体(B)を有機溶媒(たとえば、シクロヘキサノン、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)に溶解した溶液に添加する。上記分散液と上記溶液に、解砕用のビーズを添加し、ビーズミルまたはペイントシェーカーを用いて解砕処理することにより、上記二酸化チタン粒子(A)の表面に上記硫黄含有重合体(B)からなる被覆層が形成された被覆粒子が分散した分散体が得られる。得られた分散体に対し、上記分離操作を行うことにより、あるいは上記分離操作と上記溶解操作とを1回または複数回行うことにより、被覆粒子のみあるいは被覆粒子の含有率の高い組成物を得ることができ、必要に応じて乾燥することにより、粉末状の被覆粒子が得られる。
【0115】
上記被覆粒子における被覆層を構成する硫黄含有重合体(B)としては、本開示の組成物に用いることのできる硫黄含有重合体(B)であれば、特に制限されないが、構成単位(U1)を繰返し単位として複数有する硫黄含有重合体(B)であることが好ましい。
【0116】
<<溶媒含有組成物>>
上記溶媒含有組成物は、本開示の組成物において、さらに溶媒を含む組成物を意味する。
上記溶媒は、特に制限されないが、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼン、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、スルホラン等の非ハロゲン系溶媒等があげられ、1種または2種以上を用いることができる。中でも、非ハロゲン系溶媒が好ましく、中でも、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフレン、N-メチルピロリドン等からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含むことがより好ましい。
【0117】
上記溶媒含有組成物における、上記溶媒の含有量は、特に限定されないが、上記溶媒の含有量が、溶媒含有組成物に含まれる二酸化チタン粒子(A)および硫黄含有重合体(B)の合計含有量100質量部に対して、10~10000質量部であることが好ましく、20~1000質量部であることがより好ましく、50~500質量部であることがさらに好ましい。
上記溶媒含有組成物は、さらに上記重合性化合物等を含むことができ、これらの成分を含む溶媒含有組成物もまた、本開示の組成物における好ましい実施形態の一つである。
【0118】
<<重合性組成物>>
上記重合性組成物は、本開示の組成物において、さらに重合性化合物を含む組成物を意味する。上記重合性化合物としては、重合性基を分子内に1個または2個以上有する化合物であれば、特に制限されない。上記重合性基としては、エチレン性不飽和二重結合基、開環重合性基、イソシアネート基、およびオキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0119】
上記エチレン性不飽和二重結合基を有する重合性化合物(1)としては、たとえば、(メタ)アクリル基、アリル基、ビニル基、マレイミド基等のラジカル重合性基及び/又は付加重合性基を有する化合物が挙げられる。
上記エチレン性不飽和二重結合基を分子内に1個有する重合性化合物(1)としては
スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等の単官能ビニル系モノマー;アリルアルコール等の単官能アリル系モノマー;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2‐ナフチル、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリル系モノマー等があげられる。
【0120】
分子内に上記エチレン性不飽和二重結合基を分子内に少なくとも1個含み且つ重合性基を2個以上有する重合性化合物(1)としては、たとえば、ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル系モノマー;ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の多官能芳香族アリル系モノマー;ポリ酢酸ビニル等の多官能ビニルエステルモノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート、トリス[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリアジン等の多官能(メタ)アクリル系モノマー;トリアリルシアヌレート等があげられる。また多官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合基と、エチレン性不飽和二重結合基以外のチオール基と反応し得る基を有する化合物も好ましい。そのような化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4―エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。
【0121】
上記開環重合性基を有する重合性化合物(2)としては、たとえば、エポキシ基、オキセタン基、エチレンスルフィド基、アジリジン基等の開環重合性基を有する化合物が挙げられる。
【0122】
上記開環重合性基を分子内に1個有する重合性化合物(2)としては、たとえば、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX‐145)等の単官能エポキシ化合物;3‐エチル‐3‐ヒドロキシメチルオキセタン、2‐エチルヘキシルオキセタン等の単官能オキセタン化合物;ベンジル[(R)‐チイラン‐2‐イルメチル]エーテル等の単官能エチレンスルフィド化合物;等があげられる。
【0123】
上記開環重合性基を分子内に2個以上有する重合性化合物(2)としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等の芳香族エポキシ化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等の脂肪族エポキシ化合物、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等の水添エポキシ化合物等の多官能エポキシ化合物;1,2-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等の脂肪族オキセタン化合物、フェノールノボラックオキセタン、ビフェニル骨格を有するジオキセタン化合物(宇部興産社製、ETERNACOLL(登録商標)OXBP)、フェニル骨格を有するジオキセタン化合物(宇部興産社製、ETERNACOLL(登録商標)OXTP)、フルオレン骨格を有するジオキセタン化合物等の芳香族オキセタン化合物等の多官能オキセタン化合物;ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン等の脂肪族エピスルフィド化合物;1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン等の芳香族エピスルフィド化合物;3-メルカプトプロピレンスルフィド、4-メルカプトブテンスルフィド等のメルカプト基含有エピチオ化合物等があげられる。
【0124】
上記イソシアネート基を分子内に1個有する重合性化合物(3)としては、たとえば、イソシアン酸ベンジル、4-メトキシベンジルイソシアナート等があげられる。上記イソシアネート基を分子内に2個以上有する重合性化合物(3)としては、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物; ビス(イソチオシアナトエチル)ジスルフィド等の脂肪族ポリイソチオシアネート化合物;3,9-ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソチオシアネート化合物;トリレンジイソチオシアネート等の芳香族ポリイソチオシアネート化合物;2,5-ジイソチオシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)チオフェン等の含硫複素環ポリイソチオシアネート化合物等があげられる。
【0125】
上記オキサゾリン基を分子内に1個有する重合性化合物(4)としては、たとえば、4,5‐ジヒドロ‐β‐メチル‐2‐オキサゾールエタノール等があげられる。上記オキサゾリン基を分子内に2個以上有する重合性化合物(4)としては、分子内にオキサゾリン基を2個以上含む化合物が好ましく、たとえば、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス-(2-オキサゾリン)、日本触媒製、エポクロス(登録商標)等のオキサゾリン基含有ポリマー等があげられる。
【0126】
上記重合性化合物として、重合性基を分子内に1個有する重合性化合物と、重合性基を分子内に2個以上有する重合性化合物とを併用することが好ましい。すなわち、上記重合性組成物は、上記重合性化合物として、重合性基を分子内に1個有する重合性化合物(単官能化合物とも称する)と、重合性基を分子内にまたは2個以上有する重合性化合物(多官能化合物とも称する)とを含むことが好ましい。
【0127】
単官能化合物と、多官能化合物との好ましい組合せとししては、単官能(メタ)アクリル系モノマーと、多官能(メタ)アクリル系モノマーとの組合せ、単官能エポキシ化合物と、多官能(メタ)アクリル系モノマーとの組合せ、単官能エポキシ化合物と、多官能エポキシ化合物との組合せ等があげられ、より好ましくは、単官能(メタ)アクリル系モノマーと多官能(メタ)アクリル系モノマーとの組合せである。
【0128】
上記重合性組成物における、上記重合性化合物の含有量は、特に制限されないが、上記重合性化合物の含有量が、重合性組成物に含まれる二酸化チタン粒子(A)および硫黄含有重合体(B)の合計含有量100質量部に対して、0.1~10000質量部であることが好ましく、1~1000質量部であることがより好ましく、10~100質量部であることがさらに好ましい。
【0129】
上記重合性組成物が、上記重合性化合物として、単官能化合物と多官能化合物とを含む場合、これらの含有比率は特に制限されないが、単官能化合物100質量部に対する多官能化合物の割合が0.1~1000質量部であることが好ましく、1~500質量部であることがより好ましく、10~200質量部であることがさらに好ましい。
【0130】
上記重合性組成物は、重合開始剤をさらに含むことが好ましい。該重合開始剤としては従来公知の熱重合開始剤、光重合開始剤の中から適宜選択して用いることができる。たとえば、好ましい重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等があげられる。上記重合開始剤の含有量は特に制限されないが、たとえば、上記重合性化合物100質量部に対して、0.01~20質量部の範囲であることが好ましく、0.05~10質量部であることが更に好ましく、0.1~5質量部であることが更により好ましい。
【0131】
上記重合性組成物に含まれる重合性化合物を重合させることにより重合性化合物が重合した重合体を含む組成物となるが、本明細書では、該組成物を硬化物、重合性組成物から硬化物を得る反応を硬化または硬化反応と各々称することとする。
【0132】
上記重合性組成物に含まれる硫黄含有重合体(B)は上述したとおりであるが、上記重合性化合物と反応し得る基を有する硫黄含有重合体(B)を含むことにより、重合性化合物および/または重合性化合物が重合した重合体が、硫黄含有重合体(B)を架橋する架橋剤として作用する結果、耐熱性等に優れる硬化物が得られ易い傾向があるため、好ましい。さらに、上記重合性組成物が、上記重合性化合物として少なくとも上記多官能化合物を含み、該多官能化合物と反応し得る基を有する硫黄含有重合体(B)を含むものであることがより好ましく、上記重合性化合物として上記多官能化合物と単官能化合物とを含み、該多官能化合物と反応し得る基を有する硫黄含有重合体(B)を含むものであることがさらに好ましい。
【0133】
上記重合性化合物と反応し得る基としては、上記重合性化合物が有する重合性基と反応し得る基であることが好ましい。上記重合性化合物が多官能化合物である場合も同様である。
【0134】
上記重合性化合物が有する重合性基は上述したとおりである。硫黄含有重合体(B)が有することが好ましい、上記反応し得る基としては、置換基Aとして示した反応性官能基が好ましく、中でも硬化性官能基がより好ましく、特にメルカプト基、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基等が好ましい。
【0135】
上記重合性化合物が有する重合性基がエチレン性不飽和二重結合基である場合、硫黄含有重合体(B)が有することが好ましい、上記反応し得る基としては、メルカプト基、水酸基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基等があげられる。上記重合性化合物が有する重合性基が開環重合性基である場合、硫黄含有重合体(B)が有することが好ましい、上記反応し得る基としては、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基等があげられる。上記重合性化合物が有する重合性基がイソシアネート基である場合、硫黄含有重合体(B)が有することが好ましい、上記反応し得る基としては、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基等があげられる。上記重合性化合物が有する重合性基がオキサゾリン基である場合、硫黄含有重合体(B)が有することが好ましい、上記反応し得る基としては、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基等があげられる。上記の各重合性基と反応し得る基との好ましい組合せは、上記重合性化合物が多官能化合物である場合も同様である。
【0136】
上記重合性組成物を硬化する方法は、特に制限されず、たとえば、加熱による方法(熱硬化)、活性エネルギー線を用いる方法など従来公知の方法を用いることができる。加熱による方法の場合、加熱温度は、特に制限されないが、50~400℃が好ましく、100~300℃がより好ましい。また加熱時間は、特に制限されないが、0.01~10時間が好ましく、0.1~2時間がより好ましい。上記活性エネルギー線を用いる方法の場合、活性エネルギー線としては紫外線、または電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。紫外線照射を行う場合、紫外線照射量(積算露光量)は特に制限されないが、0.001~100J/cm2の範囲となるよう照射することが好ましく、より好ましくは、0.01~50J/cm2、さらに好ましくは0.05~10J/cm2である。光源としては、LED、各種水銀灯等を用いることができるが、LED、超高圧水銀ランプ、またはメタルハライドランプが好ましい。
上記硬化方法を用いて重合性組成物より硬化物を得ることができる。
【0137】
上記重合性組成物は、さらに溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては上記溶媒含有組成物を構成する溶媒と同様のものを好ましく用いることができ、重合性化合物との相溶性や蒸発速度等から目的に応じて適宜選択することができる。上記重合性組成物が、さらに上記溶媒を含む形態もまた、本開示の組成物の好ましい実施形態の一つである。
上記重合性組成物を硬化して得られる硬化物の形態は、特に制限されないが、膜状、繊維状、シート状、粒子状等があげられる。
【0138】
<<塗布用組成物、成形用組成物>>
本開示の組成物は、塗布用組成物、成形用組成物として好適に用いることができる。上記塗布用組成物としては、上記溶媒含有組成物または上記重合性組成物が好ましく、耐熱性等に優れる硬化物からなる膜が得られ易い観点から、上記重合性組成物がより好ましく、成膜性に優れる膜が得られ易いことから、溶媒を含む重合性組成物がさらに好ましい。
【0139】
塗布方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用することができる。中でも、スピン塗布、バーコート塗布、スキージ塗布、インクジェット塗布等が好ましい。塗布する厚みは、特に制限されず、得られる膜の用途等に応じて適宜選択すればよい。たとえば光学材料として用いる場合、得られる膜の厚みが0.1~1000μmとなるよう塗布厚みを調整することが好ましい。上記塗布厚みは、より好ましくは0.5~100μmであり、さらに好ましくは1~10μmである。
【0140】
塗布した膜(塗膜)に対し、加熱および/または活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。塗膜に含まれる溶媒を、加熱することにより蒸発除去することができる。上記塗布用組成物として重合性組成物を用いた場合、加熱することにより、あるいは活性エネルギー線照射を行うことにより、塗膜に含まれる重合性化合物の重合による硬化反応が進み、硬化物よりなる膜を得ることができる。また上述した好ましい形態の重合性組成物を用いた場合、重合性化合物の重合による硬化反応と、重合性化合物と硫黄含有重合体(B)との架橋反応とが進み、耐熱性等に優れる硬化物よりなる膜を得ることができる。
【0141】
加熱する場合、加熱温度は、特に制限されないが、50~400℃が好ましく、100~300℃がより好ましい。また加熱時間は、特に制限されないが、0.01~10時間が好ましく、0.1~2時間がより好ましい。上記活性エネルギー線としては紫外線、または電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。紫外線照射を行う場合、紫外線照射量(積算露光量)は特に制限されないが、0.001~100J/cm2の範囲となるよう照射することが好ましく、より好ましくは、0.01~50J/cm2、さらに好ましくは0.05~10J/cm2である。光源としては、各種水銀灯等を用いることができるが、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプが好ましい。
【0142】
塗布する基材は、特に制限されないが、たとえば、ガラス板、石英板、有機樹脂フィルム、有機樹脂成形物、これらの表面に透明無機酸化物層を有するフィルム、シート、板等の光透過性基板;Si半導体基板、InGaAs等の化合物半導体基板等の受光基板;LED、有機EL、レーザーダイオード(半導体レーザー)等の発光基板等が好ましい。
上述した方法により、上記塗布用組成物を用いて、膜を製造することができる。
【0143】
また、上記膜の製造方法において、塗布した膜(塗膜)に対し、インプリント成形法、ナノインプリント成形法等の金型、樹脂型を用いた成形法を用いて、凹凸形状に加工する等の加工処理を行うこともできる。塗布用組成物として上記重合性組成物を用いて塗膜を形成し、上記加工処理を行い、上記加熱および/または活性エネルギー線照射を行うことにより、表面形状が制御された硬化物膜を得ることができる。
【0144】
本開示の組成物を成形用組成物として用いる場合、成形用組成物としては、上述した各種の好ましい実施形態の組成物はいずれも好ましいが、中でも上記重合性組成物がより好ましい。成形方法としては、従来公知の方法、たとえば、射出成形法、Tダイ法、インフレーション法、インプリント成形法、ナノインプリント成形法等の金型、樹脂型を用いた成形法、キャスト法等があげられる。上記成形方法においても、成形用組成物として上記重合性組成物を用いる場合、硬化反応を促進する等の目的で、成形した後に、加熱および/または活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。加熱する場合の加熱温度、時間は、採用する成形方法において適宜選択すればよい。活性エネルギー線照射に関する好ましい態様、条件についても同様である。上記方法により、所望の形状、たとえば、レンズ、シート、フィルム等の形状に成形された硬化物材料が得られる。
【0145】
<<熱可塑性材料>>
本開示の組成物は、熱可塑性材料として用いることもできる。その場合の成形方法としては、特に限定されず、射出成形、押出成形、Tダイ法、インフレーション法等の、一般に熱可塑性樹脂の加工方法として公知の方法が挙げられる。また、キャスト法や塗布等の方法によって、所望の形状に成形してもよい。上記形状としては、特に限定されず、レンズ、シート、フィルム等の公知の種々の形状が挙げられる。
【0146】
<<本開示の組成物を含む膜>>
本開示の組成物を含む膜について、説明する。本開示の組成物を含む膜は、たとえば、上記塗布用組成物を用いて得ることができる。上記塗布用組成物として上記重合性組成物を用い、硬化した場合には硬化物からなる膜(硬化物膜とも称する)を得ることができる。
上記膜について、屈折率、透明性(ヘイズ)、アッベ数、可視光透過率、膜厚について説明する。上記膜が上記硬化物膜である場合も、これらの物性の好ましい範囲は同様である。
【0147】
上記膜の屈折率は、特に制限されないが、1.90~2.15であることが好ましい。屈折率が上述の範囲であると、光学材料等として好適に適用できる。上記屈折率は、2.00以上であることがより好ましく、2.10以上であることが更に好ましい。上限は2.15以下であることがより好ましい。
上記屈折率は、NaD線(589nm)に対する屈折率である。上記膜の屈折率は、具体的には、反射スペクトルを測定することにより求めることができる。
反射率の測定は、スライドガラスなどの基材にコーティングした膜を測定対象試料とし、下記の装置を用い、測定した薄膜干渉による反射率からフレネルの式に基づいて薄膜の反射率シュミレーションを行うことで、589nmにおける屈折率の値を算出する方法を採用する。
装置:フィルメトリクス社製膜厚測定システムF-20。
標準ファイバーステージSS-1(スポット径1.5mm)。
【0148】
上記膜の透明性は、特に制限されないが、ヘイズで表して、0~5%であることが好ましい。ヘイズが上述の範囲であると、光学材料等として好適に適用できる。上記ヘイズは、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが特に好ましいい。下限値は、より好ましくは0.001%以上であり、さらに好ましくは0.01%以上である。上記ヘイズは、スライドガラスなどの基材にコーティングした膜を測定対象試料とし、たとえば、日本電色工業社製濁度計HAZE METER NDH5000により測定した値を採用することができる。
【0149】
上記膜のアッベ数(νD)は、特に制限されないが、10以上であることが好ましい。アッベ数が上述の範囲であると、光分散が小さく、レンズ等に適した光学材料となりうる。上記アッベ数は、15以上であることがより好ましく、18以上であることが更に好ましく、20以上であることが更により好ましい。上記アッベ数は、光分散性を調整するという観点で、60以下であることがより好ましく、55以下であることが更に好ましい。
上記アッベ数は、フィルメトリクス社製膜厚測定システムF-20を用い、D線、F線、C線の屈折率を測定することにより求めることができる。
【0150】
上記膜の可視光透過率は、特に制限されないが、60%以上であることが好ましい。上記可視光透過率が上述の範囲であると、光学材料用途に好適に使用できる。上記可視光透過率は、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。上限値は、より好ましくは92%以下であり、さらに好ましくは90%以下である。上記可視光透過率は、平行線透過率であり、膜厚1μmの膜における値を採用する。上記可視光透過率は、スライドガラスなどの基材にコーティングして作製した、膜厚1μmの膜を測定試料として、紫外可視赤外分光光度計UV-3600(島津製作所製)により、積分球を使用せずに、空気対象で400nm~700nmの範囲を測定し、透過率の平均値を評価することで求めることができる。
【0151】
上記膜の厚みは特に制限されないが、0.01~1000μmであることが好ましい。上記膜厚が上述の範囲であると、光学材料用途に好適に使用できる。上記膜厚は、より好ましくは0.1~100μmであり、さらに好ましくは0.5~20μmである。上記膜厚は、薄膜干渉測定器または、膜厚計を用いて測定することにより求めることができる。10μm以下の膜厚の測定については、スライドガラスなどの基材にコーティングした膜を測定対象試料とし、下記の装置を用い、測定した薄膜干渉による反射スペクトルから膜厚を算出することができる。
装置:フィルメトリクス社製膜厚測定システムF-20。
標準ファイバーステージSS-1(スポット径1.5mm)。
【0152】
上記膜のうち、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が1.90~2.15であり、ヘイズが5.00%以下である膜は、光学材料として特に有用である。さらに、該膜が上記硬化物膜である形態は、耐熱性等にも優れる点からより好ましい。
【0153】
[本開示の高屈折率膜]
本発明者らは、さらに、無機粒子と樹脂成分とを含む膜において透明性と屈折率がともに高い膜が得られないか鋭意検討した結果、無機粒子として二酸化チタン粒子、樹脂成分として特定の硫黄含有重合体を選択することにより、屈折率と透明性がともに高い膜を得ることに成功した。よって、本発明者らは、二酸化チタン粒子と特定の硫黄含有重合体を含み、屈折率が所定値以上に高く且つ透明性に優れる膜をも提供することができる。該膜を高屈折率膜と称する。
すなわち、本開示の高屈折率膜は、二酸化チタン粒子と下記一般式(1)で表される構成単位(U1)を有する硫黄含有重合体(V)とを含み、NaD線に対する屈折率が1.90~2.15であり、ヘイズが5.00%以下であることを特徴とする膜である。
【0154】
【0155】
(式中、X1は、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。)
本開示の高屈折率膜は、屈折率が高くおよび透明性に優れるために、高屈折率および高透明性が要求される各種の光学材料に好ましく用いることができる。
【0156】
本開示の高屈折率膜における上記硫黄含有重合体(V)は、上記一般式(1)で表される構成単位(U1)を有するものである限り、特に制限されない。なお、本開示の高屈折率膜における上記一般式(1)におけるX1は、その好ましい形態も含め、上記本開示の組成物における一般式(1)におけるX1と同様であり、上記本開示の組成物における一般式(1)におけるX1に関する説明をすべて準用することができる。また本開示の高屈折率膜における上記一般式(1)で表される構成単位(U1)は、その好ましい形態も含め、上記本開示の組成物における一般式(1)で表される構成単位(U1)と同様であり、上記本開示の組成物における一般式(1)で表される構成単位(U1)に関する説明をすべて準用することができる。よってここでは省略する。
【0157】
上記硫黄含有重合体(V)の好ましい実施形態の一つとしては、上記本開示の組成物における硫黄含有重合体(B)と同様の形態(形態1)があげられる。上記形態1の硫黄含有重合体(V)としては、その好ましい形態およびその好ましい製造方法も含め、上述した本開示の組成物における硫黄含有重合体(B)と同様であり、上記硫黄含有重合体(V)に関する説明としては、上記硫黄含有重合体(B)に関する説明をすべて準用することができる。よってここでは省略する。
【0158】
上記硫黄含有重合体(V)として形態1の硫黄含有重合体を有する高屈折率膜は、たとえば、二酸化チタン粒子と、上記形態1の硫黄含有重合体、必要に応じて溶媒成分を含む組成物を、基材上に塗布し、必要に応じて加熱等により溶媒成分を除去する製造方法により得ることができる。上記組成物としては、上記本開示の組成物、中でもその一形態である上記溶媒含有組成物を用いることが好ましい。硫黄含有重合体(V)として形態1の硫黄含有重合体を有する高屈折率膜はさらに他の樹脂成分を含んでいてもよい。例えば、上記製造方法において、上記本開示の組成物の一形態である重合性組成物を用い、基材に塗布した後、熱または光により、上記重合性組成物に含まれる上記重合性化合物の重合反応を行わせることにより、樹脂成分として形態1の硫黄含有重合体(V)と上記重合性化合物の重合体とを含む高屈折率膜を得ることができる。上記重合性化合物としては上記重合性化合物(1)として示した化合物、すなわちエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物が好ましく、中でも(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。(メタ)アクリル系モノマーを用いた場合、樹脂成分として形態1の硫黄含有重合体(V)と、上記(メタ)アクリル系重合体とを含む高屈折率膜となり、これもまた本開示の高屈折率膜の好ましい一形態である。
【0159】
また、本開示の高屈折率膜における上記硫黄含有重合体(V)の別の好ましい形態としては、上記形態1の硫黄含有重合体の少なくとも一部が架橋成分により架橋された構造を有する形態(形態2)があげられる。上記形態2の硫黄含有重合体は、上記形態1の硫黄含有重合体の一形態であるということができる。上記形態2の硫黄含有重合体において、架橋成分により架橋された点を除いては重合体の構造等は形態1の硫黄含有重合体と同様である。
【0160】
上記硫黄含有重合体(V)として形態2の硫黄含有重合体を有する高屈折率膜は、たとえば、二酸化チタン粒子と、上記形態1の硫黄含有重合体(上記硫黄含有重合体(B))、架橋成分となる反応性単量体および重合開始剤を含む組成物を、基材上に塗布し、熱または光により反応性単量体と硫黄含有重合体(B)との反応を行わせる製造方法により得ることができる。上記組成物としては、以下に説明するように、本開示の組成物、中でも上記重合性組成物を用いることが好ましい。
【0161】
すなわち、上記製造方法において、用いる形態1の硫黄含有重合体(上記硫黄含有重合体(B))としては、上記反応性単量体と反応し得る基を有するものを用いることが好ましい。上記反応し得る基としては、上記硫黄含有重合体(B)の説明において上記置換基Aとして示した置換基のなかでも、反応性官能基が好ましく、硬化性官能基がより好ましく、メルカプト基(-SH)、水酸基(-OH)、およびスルホ基(-SO3H)からなる群から選択される少なくとも1種の基を含むことがさらに好ましい。反応性単量体として重合性化合物(1)を用いる場合は、上記反応し得る基としてメルカプト基(-SH)、水酸基(-OH)、スルホ基(-SO3H)、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、およびメタリル基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含むことが好ましい。
【0162】
また上記製造方法において、架橋成分となる反応性単量体としては、本開示の組成物の一形態である重合性組成物における重合性化合物と同様の化合物を用いることができ、その好ましい形態を含め、該重合性化合物に関する記載をすべて準用することができる。
上記反応性単量体としては、重合性基を分子内に2個以上有する化合物を用いることが好ましく、重合性基を分子内に2個以上有する化合物と重合性基を分子内に1個以上有する化合物とを併用することが好ましい。また反応性単量体としては、上記重合性化合物の中でも、重合性化合物(1)が好ましく、中でも、分子内にエチレン性不飽和二重結合基を少なくとも1個含み且つ重合性基を2個以上有する化合物とエチレン性不飽和二重結合基を分子内に1個有する化合物とを併用することが好ましい。重合性化合物(1)の中でも(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、単官能(メタ)アクリル系モノマーと多官能(メタ)アクリル系モノマーとを併用することがより好ましい。
【0163】
上記反応性単量体として重合性化合物(1)を用い、硫黄含有重合体としてメルカプト基等を有する硫黄含有重合体を用いた場合には、重合性化合物(1)の重合生成物である重合体を架橋成分として、硫黄含有重合体のメルカプト基を有する部分が架橋された構造を含む膜が得られる。
【0164】
上記硫黄含有重合体(V)として形態2の硫黄含有重合体を有する高屈折率膜は、耐熱性、耐溶剤性に優れる硬化物膜となる傾向があり好ましい。
上述したように、本開示の高屈折率膜の好ましい形態として、上記硫黄含有重合体(V)が、上記形態2の硫黄含有重合体を含む形態があげられ、より好ましい形態として上記形態2の硫黄含有重合体が形態1の硫黄含有重合体(上記硫黄含有重合体(B))が(メタ)アクリル重合体を架橋成分として架橋された構造である形態があげられる。
なお、硫黄含有重合体(V)として形態2の硫黄含有重合体を有する高屈折率膜は形態2以外の形態1の硫黄含有重合体をさらに含んでいてもよい。
【0165】
本開示の高屈折率膜における、上記二酸化チタン粒子としては、特に制限されない。
上記二酸化チタン粒子の結晶構造は、特に制限されないが、ルチル型、アナターゼ型、およびブルッカイト型からなる群から選択される少なくとも1種の結晶構造を有することが好ましく、より好ましくはルチル型、アナターゼ型であり、さらに好ましくはアナターゼ型である。上記結晶構造は粉末X線回折測定によるX線回折パターンを測定することにより確認することができる。
【0166】
上記二酸化チタン粒子の結晶子径は特に制限されないが、たとえば、格子面(101)に垂直方向の結晶子径Dc(101)が5.0~40nmであることが好ましい。結晶子径Dc(101)が30nm以下であることが好ましく、より好ましくは25nm以下である。下限値は、より好ましくは7.0nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上である。
上記二酸化チタン粒子(A)における結晶化度は、80%以上である。上記結晶化度は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、94%以上がさらに好ましい。
上記結晶子径、結晶化度の測定方法は、上記本開示の組成物における二酸化チタン粒子(A)における結晶子径、結晶化度の測定方法と同様であり、それらの説明を準用することができる。
【0167】
上記二酸化チタン粒子の平均1次粒子径は、特に制限されないが、光学的な均質性に優れるものとなり易い観点から、平均1次粒子径が1~50nmであることが好ましく、より好ましくは20nm以下であり、さらに好ましくは15nm以下である。下限値は、より好ましくは3nm以上であり、さらに好ましくは5nm以上である。1次粒子径の定義、上記平均1次粒子径の具体的な測定方法は、上記本開示の組成物における二酸化チタン粒子(A)における1次粒子径の定義、平均1次粒子径の測定方法等と同様であり、それらの説明を準用することができる。
【0168】
上記二酸化チタン粒子の平均分散粒子径は、特に制限されないが、光学的な均質性に優れるものとなり易い観点から、平均分散粒子径が1~100nmであることが好ましい。より好ましくは50nm以下である。下限値は、より好ましくは6nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上である。上記平均分散粒子径の定義および測定方法は、上記本開示の組成物における二酸化チタン粒子(A)における平均分散粒子径の定義および測定方法と同様であり、それらの説明を準用することができる。
【0169】
上記二酸化チタン粒子の粒子形状は、特に制限されず、不定形、粒状、板状、柱状、針状等のいずれであってもよいが、粒状が好ましく、粒状の中でも球状が好ましい。なお、上記粒状とは、アスペクト比が1.5以下の偏りのない形状を意味する。上記粒子形状は電子顕微鏡観察により確認することができる。
【0170】
上記二酸化チタン粒子は、その表面に有機基が導入されたものであってもよい。上記有機基としては、特に制限されないが、たとえば、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基等の炭化水素基、(メタ)アクリル基、ビニル基等の不飽和二重結合基を有する有機基等があげられる。上記表面に有機基を導入する方法としては、特に制限されないが、上記有機基を有するシランカップリング剤、リン酸基を有する化合物、アルコール、カルボン酸を二酸化チタン粒子の表面に反応させる方法、好ましくは、二酸化チタン粒子の表面に存在する水酸基等に反応させる方法が挙げられる。上記二酸化チタン粒子は、その表面にシリカ、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物膜で被覆されてなるものであってもよい。
【0171】
上記二酸化チタン粒子における、TiO2換算の含有量は、特に制限されないが、80~100質量%であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。TiO2換算の含有量は、上記本開示の組成物における二酸化チタン粒子(A)におけるTiO2換算の含有量の測定法と同様にして求めることができ、その説明を準用することができる。
【0172】
上記二酸化チタン粒子における、無機酸化物含有量は、特に制限されないが、80~100質量%であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。上記無機酸化物含有量は、上記本開示の組成物における二酸化チタン粒子(A)における無機酸化物含有量の測定法と同様にして求めることができ、その説明を準用することができる。
上記二酸化チタン粒子が、上記本開示の組成物における二酸化チタン粒子(A)と同様の形態であることもまた好ましい。
【0173】
本開示の高屈折率膜における、二酸化チタン粒子の含有量は、特に制限されないが、本開示の高屈折率膜100質量部に対し、10~99質量部であることが好ましい。より好ましくは25質量部以上であり、さらに好ましくは50質量部以上であり、さらにより好ましくは60質量部以上であり、特に好ましくは65質量部以上である。一方、上限は、より好ましくは95質量部以下であり、さらに好ましくは90質量部以下である。
【0174】
本開示の高屈折率膜における、上記硫黄含有重合体(V)の含有量は、特に制限されないが、上記二酸化チタン粒子100質量部に対し、0.1~500質量部であることが好ましい。上記硫黄含有重合体(V)の含有量を上記範囲とすることにより、膜中における二酸化チタン粒子を強固に分散、保持することができる傾向がある。より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上である。一方、上限は、より好ましくは200質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下であり、さらにより好ましくは50質量部以下であり、特に好ましくは30質量部以下である。
【0175】
本開示の高屈折率膜における、上記硫黄含有重合体(V)と二酸化チタンの合計含有量は、特に制限されないが、本開示の高屈折率膜100質量部に対し、20~100質量部であることが好ましい。より好ましくは40質量部以上であり、さらに好ましくは60質量部以上である。一方、上限は、より好ましくは95質量部以下であり、さらに好ましくは90質量部以下である。
【0176】
本開示の高屈折率膜は、NaD線(589nm)に対する屈折率が1.90~2.15であり、ヘイズが5.00%以下である。
上記屈折率は、より好ましくは1.95以上であり、さらに好ましくは2.00以上である。上限は、より好ましくは2.14以下であり、さらに好ましくは2.10以下である。上記屈折率の測定方法は、本開示の組成物を含む膜における屈折率の測定方法と同様であり、上述した本開示の組成物を含む膜における屈折率の測定方法を準用することができる。
【0177】
上記ヘイズは、より好ましくは2.00%以下であり、さらに好ましくは0.50%以下である。下限は、好ましくは、0.01%以上であり、より好ましくは0.05%以上である。上記ヘイズの測定方法は、本開示の組成物を含む膜におけるヘイズの測定方法と同様であり、上述した本開示の組成物を含む膜におけるヘイズの測定方法を準用することができる。
【0178】
本開示の高屈折率膜において、その可視光透過率は、特に制限されないが、70%以上であることが好ましい。上記可視光透過率が上述の範囲であると、光学材料用途に好適に使用できる。上記可視光透過率は、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがより好ましく、88%以上であることが更に好ましい。上記可視光透過率は、平行線透過率であり、分光光度計(例えば、日本分光製紫外可視赤外分光光度計V-700 series)により、積分球を使用せずに、空気対象で400nm~700nmの範囲を測定し、透過率の最低値を評価することで求めることができる。
【0179】
本開示の高屈折率膜においてアッベ数は、特に制限されないが、10以上であることが好ましい。アッベ数が上述の範囲であると、光分散が小さく、レンズ等に適した光学材料となりうる。上記アッベ数は、15以上であることがより好ましく、18以上であることが更に好ましく、20以上であることが更により好ましい。上記アッベ数は、光分散性を調整するという観点で、60以下であることがより好ましく、55以下であることが更に好ましい。
上記アッベ数の測定方法は、本開示の組成物を含む膜におけるアッベ数の測定方法と同様であり、上述した本開示の組成物を含む膜におけるアッベ数の測定方法を準用することができる。
【0180】
本開示の高屈折率膜において、その膜厚は、特に制限されないが、0.01~20μmであることが好ましい。上記膜厚が上述の範囲であると、光学材料用途に好適に使用できる。上記膜厚は、より好ましくは0.1~10μmであり、さらに好ましくは0.5~5μmである。上記膜厚の測定方法は、本開示の組成物を含む膜における膜厚の測定方法と同様であり、上述した本開示の組成物を含む膜における膜厚の測定方法を準用することができる。
【0181】
本開示の高屈折率膜は、上記二酸化チタン粒子および上記硫黄含有重合体(V)以外に、他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、上記硫黄含有重合体(V)以外の樹脂成分があげられる。上記硫黄含有重合体(V)以外の樹脂成分としては、たとえば、ポリアミド類;ポリイミド類;ポリウレタン類;ポリオレフィン類;ポリエステル類;ポリ塩化ビニル類;ポリ塩化ビニリデン類;ポリ酢酸ビニル類;ポリスチレン類;ポリエーテルスルホン類;ポリフェニレンスルフィド類;(メタ)アクリル樹脂系ポリマー;ABS樹脂;フッ素樹脂;フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂などのフェノール樹脂;エポキシ樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂などを挙げることができる。上記他の成分の含有量は、本開示の高屈折率膜100質量部に対し、0~20質量部であることが好ましい。より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以下である。一方、上限は、より好ましくは0.01質量部以上であり、さらに好ましくは0.1質量部以上である。
【0182】
本開示の高屈折率膜の製造方法は、特に制限されないが、上述したように、例えば、本開示の組成物、中でも上記溶媒含有組成物、上記重合性組成物等を上記塗布用組成物として用いて製造することができる。形態1の硫黄含有重合体(V)を有する高屈折率膜、形態2の硫黄含有重合体(V)を有する高屈折率膜の製造方法については上述したとおりである。中でも上記反応性単量体を含み、反応性単量体と反応し得る基を有する硫黄含有重合体(V)を含む重合性組成物を用いることにより、耐熱性、耐溶剤性に優れる硬化物からなる、本開示の高屈折率膜を得ることができる。
【0183】
<用途>
本開示の組成物(各種の好ましい実施形態を含む)、本開示の組成物を用いて得られる膜、硬化物、成形材料等(これらをまとめて「本開示の組成物等」とも称する)は、光学材料、オプトデバイス部材、表示デバイス部材等に好適に使用される。このような用途として具体的には、例えば、眼鏡レンズ、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)を可能とするデジタル眼鏡・ゴーグル・ディスプレイ、(デジタル)カメラや携帯電話用カメラや車載カメラ等のカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光学用粘接着材、光伝送用接合材料、フィルター、回折格子、回折光学素子、プリズム、光案内子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;フォトセンサー(光学センサー(CMOSセンサー、TOFセンサー等))、フォトスイッチ、LED、マイクロLED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光ファイバー接着剤等のオプトデバイス用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、タッチパネル等に使用するインデックスマッチング材、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム、防曇フィルム、LED・有機EL等光取出し向上剤等の表示デバイス用途等が挙げられる。
【0184】
これらの中でも撮像レンズ、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)を可能とするデジタル眼鏡・ゴーグル・ディスプレイ、フィルター、回折格子、回折光学素子、プリズム、光案内子、LED、マイクロLED、発光素子、カラーフィルター、タッチパネルがより好ましい。また、本開示の組成物等は、通常、可視域、赤外域に吸収を持たない領域が広いものとなり易い。このような重合体は、可視域、赤外域の光学材料としても、好適に使用される。
【0185】
本開示の組成物等は光学用途以外でも、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に使用される。たとえば、本開示の組成物等は、通常、耐熱性に優れるものとなり易く、耐熱材料、強誘電材料、放熱材料、電池材料のセパレータ、ガス分離膜や液分離膜等のフィルター、燃料電池、Li電池等の電極材料、電解質材料等の電池部材等にも使用可能である。また、低誘電性を利用した絶縁材料、アンテナ材料等としても好適に使用することができる。
【0186】
本開示の高屈折率膜は、本開示の組成物等と同様の用途に用いることができ、特に光学材料、オプトデバイス部材、表示デバイス部材等に好適に使用することができる。なかでも撮像レンズ、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)を可能とするデジタル眼鏡・ゴーグル・ディスプレイ、フィルター、回折格子、回折光学素子、プリズム、光案内子、LED、マイクロLED、発光素子、カラーフィルター、タッチパネルに用いることが好ましい。
【実施例0187】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0188】
<二酸化チタン粒子に関する評価>
各実施例、比較例で用いた二酸化チタン粒子(各合成例で得られた二酸化チタン粒子を含む)、各実施例、比較例で得られた組成物に含まれる二酸化チタン粒子等の二酸化チタン粒子の結晶構造、結晶化度、結晶子径Dc(101)、平均1次粒子径、平均分散粒子径、無機酸化物の含有量等は以下のようにして測定した。各評価方法の説明において、単に「二酸化チタン粒子」と表記した場合は各実施例、比較例で用いた二酸化チタン粒子(各合成例で得られた二酸化チタン粒子を含む)を意味し、単に「組成物中の二酸化チタン粒子」と表記した場合は各実施例、比較例で得られた組成物に含まれる二酸化チタン粒子を意味し、単に「組成物」と表記した場合は各実施例、比較例で得られた組成物を意味するものとする。単に「試料」と記載した場合は、各実施例、比較例で用いた二酸化チタン粒子(各合成例で得られた二酸化チタン粒子を含む)、各実施例、比較例で得られた組成物を包含するものとする。
【0189】
1)結晶構造、結晶化度、結晶子径の評価方法
二酸化チタン粒子、組成物中の二酸化チタン粒子の結晶構造、結晶化度および結晶子径Dc(101)は、X線回折装置SmartLab(リガク社製)を用いて測定した。測定条件は以下のとおりである。
X線源: CuKα(0.154nm)。
X線出力設定: 45kV、200mA。
サンプリング幅: 0.0200°。
スキャンスピード: 5.0000°/min。
測定範囲: 5~90°。
測定温度: 25℃。
【0190】
二酸化チタン粒子、組成物中の二酸化チタン粒子の結晶構造は、得られたX線回折パターンにより判定した。
二酸化チタン粒子、組成物中の二酸化チタン粒子の結晶子径Dc(101)については、得られたX線回折チャートの二酸化チタンの格子面(101)の回折線の半値全幅を測定し、得られた値より解析ソフト(PDXL2)を用いて結晶子径Dc(101)の値を算出した。
二酸化チタン粒子、組成物中の二酸化チタン粒子の結晶化度については、酸化アルミニウム(コランダム)を内部標準とし、全パターンフィッティング法により得られたX線回折チャートの各結晶相の重量比を解析ソフト(PDXL2)を用いて算出することにより求めた。
(結晶化度測定試料の調製方法)
二酸化チタン粒子と酸化アルミニウム(コランダム)とを1:3の重量比になるように、二酸化チタン粒子と酸化アルミニウム(コランダム)とを乳鉢で均一になるまで混合したものを測定試料とした。組成物の場合は、組成物中の二酸化チタン粒子と酸化アルミニウム(コランダム)とが1:3の重量比になるように、組成物と酸化アルミニウム(コランダム)とを乳鉢で均一になるまで混合したものを測定試料とした。
【0191】
2)平均1次粒子径の評価方法
二酸化チタン粒子、組成物中の二酸化チタン粒子の平均1次粒子径は、透過型電子顕微鏡観察S-4800(日立ハイテクノロジーズ社製)で得られたTEM像を解析することにより求めた。
(TEM観察用測定試料の調製方法)
二酸化チタン粒子をテトラヒドロフランに分散させTEM試料用マイクログリッドに滴下したものを測定試料とした。組成物の場合は、組成物をテトラヒドロフランに混合し、組成物中の二酸化チタン粒子が分散した分散液をTEM試料用マイクログリッドに滴下したものを測定試料とした。
【0192】
3)平均分散粒子径の評価方法
二酸化チタン粒子、組成物中の二酸化チタン粒子の平均分散粒子径は、粒子径測定装置FPAR-1000(大塚電子株式会社)により得られた体積基準の粒子径分布における平均粒子径を平均分散粒子径とした。
(平均分散粒子径測定試料の調製方法)
二酸化チタン粒子については、テトラヒドロフラン溶媒、ベンジルアルコール溶媒等の粒子が凝集しない溶媒で粒子重量が1.0%になるよう希釈調整し、各実施例で得られた粒子組成物については、シクロヘキサノン溶媒、ベンジルアルコール溶媒等の粒子が凝集しない溶媒で粒子組成物重量が1.0%になるよう粒子分散液を希釈調整し、十分な散乱光量が得られることと多重散乱が無いことを確認した。さらに調製した試料用分散液を0.22μmフィルターで濾過したものを測定用試料とした。
組成物中の二酸化チタン粒子の場合も同様である。
【0193】
4)無機酸化物の含有量(二酸化チタン含有量)等の分析
組成物(粉末組成物)における無機酸化物の含有量等については、示差熱-熱重量同時測定装置TG-DTA2000SR(Bruker社製)の測定によって得られる重量減少率から求めることができ、この重量減少率から揮発成分の割合、硫黄含有重合体の割合、及び無機酸化物の割合を算出した。測定後の灰分を二酸化チタンを含む無機酸化物とし、測定前の試料の質量に対する測定後の灰分の質量の割合(質量%)を、測定試料における無機酸化物の含有量とした。なお、測定試料がチタン以外の金属元素を含まない場合、無機酸化物の含有量を二酸化チタン含有量とした。試料がチタン以外の金属元素を含む場合、無機酸化物中の二酸化チタン含有量は、蛍光X線分析(XRF)、及び、X線光電子分光法(XPS)を用い評価した。
測定条件は以下の通りである。
測定温度: 25~900℃。
昇温速度: 10℃/min。
測定雰囲気: 窒素雰囲気下(200℃以下)、空気雰囲気下(200℃以上)。
流量: 10mL/min。
(重量減少率測定試料の調製方法)
組成物(粉末組成物)を白金パン(測定用試料容器)に数mg~数十mg計量したものを測定用試料とした。
各合成例において得られた二酸化チタンナノ粒子の分散液における無機酸化物の含有量(二酸化チタン含有量)等についても同様の方法で分析した。
【0194】
<各合成例で得られた硫黄含有重合体に関する評価>
各合成例で得られた硫黄含有重合体の平均分子量等は以下のようにして測定した。
1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定して、各合成例で得られた硫黄含有重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
装置1:SHIMAZU、CBM-20A。
装置2:アジレント・テクノロジー 1260 Infinity。
検出器:示差屈折率検出器(RI)(SHIMAZU、SPD-20MA)、及び、紫外可視赤外分光光度計(SHIMAZU、SPD-20MA)。
カラム:TOSOH、TSKgel SuperHM-N。
カラム温度:40℃。
流速:0.3ml/min。
検量線:Polystyrene Standards。
溶離液:クロロホルム、テトラヒドロフラン。
【0195】
2)MALDI(飛行時間型質量分析)
各合成例で得られた硫黄含有重合体について、下記の条件でMALDI測定を行った。
装置:飛行時間型質量分析装置(Bruker AutoflexIII)
サンプル調製:1.0gのテトラヒドロフランに約2mgの測定試料、マトリックス剤として、20mgの2,5-ジヒドロキシ安息香酸、イオン化剤として、2.0mgのヨウ化ナトリウムを溶解させ、調整した溶液を測定用ターゲットプレートに塗布後、室温で100分程乾燥した。
【0196】
3)1H-NMR
各合成例で得られた硫黄含有重合体について、下記の条件で1H-NMR測定を行った。
装置:日本電子株式会社製、核磁気共鳴装置(400MHz)。
測定溶媒:重ジクロロメタン、重クロロホルム。
サンプル調製:得られた重合体の数mg~数十mgを測定溶媒に溶解した。
【0197】
4)13C-NMR
各合成例で得られた硫黄含有重合体について、下記の条件で13C-NMR測定を行った。
装置:日本電子株式会社製、核磁気共鳴装置(400MHz)。
測定溶媒:重クロロホルム。
サンプル調製:各合成例で得られた硫黄含有重合体の数十mg~数百mgを測定溶媒に溶解した。
【0198】
5)IR
各合成例で得られた硫黄含有重合体について、下記の条件でIR測定を行った。
装置:JASCO社製フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-6100)。
サンプル調製:約2mgのサンプルを約300mgの乾燥臭化カリウム(KBr)で希釈した。混合物を乳鉢および乳棒ですりつぶし、成型した。
【0199】
6)元素含有比率O/S比
各合成例で得られた硫黄含有重合体が10%濃度になるようにシクロヘキサノン溶媒に溶解し、重合体溶液を調製した。該重合体溶液0.25mlを、シリコンウェハ上にスピンコートすることにより製膜した試料を用いて、JEOL社製光電子分光装置(JPS-9010TR、XPS装置、光源:Mg、X線出力:400W)を用い、硫黄原子の2p軌道由来のピーク強度と酸素原子の1s軌道由来のピーク強度を測定し、その積分比を計算することでO/S比を算出した。必要に応じて、炭素原子の1s軌道由来のピーク強度も測定し、その結果も考慮してO/S比を算出した。また、硫黄原子ピークについては、スルフィドとジスルフィドのピークにピーク分離できるものに関して、スルフィド/ジスルフィド比も算出した。なお、測定方法及び結合エネルギーの位置等は、Handbook of X-ray Photoelectron Spectroscopy(JEOL社、1991年3月発行)を参考とした。1H-NMR測定により、スルフィドとスルホキシドのピーク分離が可能であるものに関しては、それぞれの積分比を計算することでO/S比を算出した。
【0200】
7)結合エネルギー
各合成例で得られた硫黄含有重合体が10%濃度になるようにシクロヘキサノン溶媒に溶解し、重合体溶液を調製した。該重合体溶液0.25mlを、シリコンウェハ上にスピンコートすることにより製膜した試料を用いて、JEOL社製光電子分光装置(JPS-9010TR、XPS装置)を用い、硫黄原子の2p3/2軌道のピーク位置より結合エネルギーを計測した。
【0201】
8)有機元素分析
各合成例で得られた硫黄含有重合体について、下記の装置で元素分析測定を行った。
装置:ジェイ・サイエンス・ラボJM10。
【0202】
<各実施例、比較例で作製したコーティング膜の評価>
各実施例、比較例で作製したコーティング膜に関する各評価は以下のようにして行った。
1)UV照射によるコーティング膜の硬化方法
各実施例、比較例で作製したコーティング膜付きスライドガラスにおける硬化膜の作製は、エリアUV照射器を用いてコーティング膜付きスライドガラスのコーティング膜にUV照射することでコーティング膜の硬化を行い成膜した。装置は以下の通りである。
装置:エリアUV照射システム(シーシーエス株式会社製)。
電源:PSCC-60048-NL(シーシーエス株式会社製)。
照射波長:385nm。
照射強度:599mW/cm2。
【0203】
2)膜の屈折率の評価方法
各実施例、比較例で得られたコーティング膜の屈折率は、各実施例、比較例で作製したコーティング膜付きスライドガラスにおけるコーティング膜の反射スペクトルより求めた。屈折率は下記の装置を用い、測定した反射率から算出した589nmにおける屈折率の値を評価した。
装置:フィルメトリクス社製膜厚測定システムF-20。
標準ファイバーステージSS-1 (スポット径1.5mm)。
【0204】
3)膜の透明性(ヘイズ)の評価方法
透明性は、ヘイズの測定により判定した。
各実施例、比較例で作製したコーティング膜付きスライドガラスのヘイズ測定を行い、得
られた測定値より、基板として用いたスライドガラス基板のヘイズ測定値を差引いたもの
を、コーティング膜のヘイズとした。
ヘイズは下記の装置を用いた。
装置:日本電色工業社製濁度計HAZE METER NDH5000。
【0205】
(二酸化チタンナノ粒子分散液の合成)
[合成例1]
100mLのオートクレーブ容器に、チタン原料のチタン2-エチルヘキシルオキシド(15.00g、26.56mmol)、オレイルアルコール(8.82g、32.85mmol)、ベンジルアルコール(25.00g)、水(1.20g)を加え、室温で10分程攪拌後にオートクレーブ容器を密閉した。次いで、容器の内温を30分かけて270℃になるまで昇温し、3時間加熱した。反応終了後、加熱を停止し、容器が十分に冷めたことを確認した後に容器から酸化チタンの懸濁液を回収した。得られた懸濁液は、ヘキサンに添加することで酸化チタン粒子を沈殿させ、沈殿した粒子を濾過し、濾過後にヘキサンで洗浄した。濾過した得られた粒子を、テトラヒドロフラン(15g)に加えることで完全に再分散させテトラヒドロフラン溶液の分散液(T1)を得た。得られた二酸化チタンナノ粒子の分散液(T1)は、X線回折測定によって結晶構造がアナターゼと確認でき、全パターンフィッティング法によって、二酸化チタンの結晶化度は94%と算出でき、その結晶子径Dc(101)は8.8nmであった。また、得られた分散液は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が12.1%、揮発成分が87.9%と算出でき、DLSより平均分散粒子径が17nmであった。
【0206】
[合成例2]
100mLのオートクレーブ容器に、チタン原料のチタン2-エチルヘキシルオキシド(15.00g、26.56mmol)、ステアリン酸(1.76g、6.20mmol)、ベンジルアルコール(25.00g)、水(0.96g)を加え、室温で10分程攪拌後にオートクレーブ容器を密閉した。次いで、容器の内温を30分かけて270℃になるまで昇温し、3時間加熱した。反応終了後、加熱を停止し、容器が十分に冷めたことを確認した後に容器から酸化チタンの懸濁液を回収した。得られた懸濁液は、ヘキサンに添加することで酸化チタン粒子を沈殿させ、沈殿した粒子を濾過し、濾過後にヘキサンで洗浄した。濾過した得られた粒子を、テトラヒドロフラン(15g)に加えることで完全に再分散させテトラヒドロフラン溶液の分散液(T2)を得た。得られた二酸化チタンナノ粒子の分散液(T2)は、X線回折測定によって結晶構造がアナターゼと確認でき、全パターンフィッティング法によって、二酸化チタンの結晶化度は88%と算出でき、その結晶子径Dc(101)は7.4nmであった。また、得られた分散液は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が11.5%と算出でき、DLSより平均分散粒子径が45nmであった。
【0207】
[合成例3]
100mLのオートクレーブ容器に、チタン原料のチタンブトキシド(9.00g、29.38mmol)、ステアリン酸(1.76g、6.20mmol)、ベンジルアルコール(25.00g)、水(0.95g)を加え、室温で10分程攪拌後にオートクレーブ容器を密閉した。次いで、容器の内温を30分かけて240℃になるまで昇温し、2時間加熱した。反応終了後、加熱を停止し、容器が十分に冷めたことを確認した後に容器から酸化チタンの懸濁液を回収した。得られた懸濁液は、ヘキサンに添加することで酸化チタン粒子を沈殿させ、沈殿した粒子を濾過し、濾過後にヘキサンで洗浄した。濾過した得られた粒子を、テトラヒドロフラン(15g)に加えることで完全に再分散させテトラヒドロフラン溶液の分散液(T3)を得た。得られた二酸化チタンナノ粒子の分散液(T3)は、X線回折測定によって結晶構造がアナターゼと確認でき、全パターンフィッティング法によって、二酸化チタンの結晶化度は94%と算出でき、その結晶子径Dc(101)は10.1nmであった。また、得られた分散液は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が12.0%と算出でき、DLSより平均分散粒子径が50nmであった。
【0208】
[比較合成例1]
100mLのオートクレーブ容器に、チタン原料のチタン2-エチルヘキシルオキシド(15.00g、26.56mmol)、ステアリン酸(1.76g、6.20mmol)、ベンジルアルコール(25.00g)、水(0.96g)を加え、室温で10分程攪拌後にオートクレーブ容器を密閉した。次いで、容器の内温を20分かけて210℃になるまで昇温し、5時間加熱した。反応終了後、加熱を停止し、容器が十分に冷めたことを確認した後に容器から酸化チタンの懸濁液を回収した。得られた懸濁液は、ヘキサンに添加することで酸化チタン粒子を沈殿させ、沈殿した粒子を濾過し、濾過後にヘキサンで洗浄した。濾過した得られた粒子を、テトラヒドロフラン(15g)に加えることで完全に再分散させテトラヒドロフラン溶液の分散液(cT1)を得た。得られた二酸化チタンナノ粒子の分散液(cT1)は、X線回折測定によって結晶構造がアナターゼと確認でき、全パターンフィッティング法によって、二酸化チタンの結晶化度は60%と算出でき、その結晶子径Dc(101)は4.7nmであった。また、得られた分散液は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が10.2%と算出でき、DLSより平均分散粒子径が15nmであった。
【0209】
各合成例および比較合成例1で用いたチタン原料、反応温度、反応時間、各合成例で得られた二酸化チタンナノ粒子の分散液に含まれる二酸化チタンナノ粒子の結晶化度、結晶子径Dc(101)、分散平均粒子径を表1に示す。
【0210】
(硫黄含有重合体の合成)
[合成例4]
<硫黄含有重合体(Po1a)の製造>
3.0Lの三口フラスコに、ジフェニルジスルフィド(218.33g、1.00mol)、ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド(49.21g、0.20mol)、塩化鉄(III)(9.73g、60.00mmol)、(+)-CSA((+)-10-カンファースルホン酸)(2.79g、12.00mmol)、Na2S2O8(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)(2.57g、12.00mmol)を加えた。次いで、三口フラスコを160℃に加熱しながら窒素フロー(20mL/分)を10分間行った後、空気バブリング(150mL/分)に切り替え、40時間攪拌することで酸化重合を行った。重合終了後、空気バブリングを停止し、N-メチルピロリドンを240mL加えて10分間撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却し、さらに溶媒としてTHF(2.2L)を加え、10分間攪拌後、純水を192mL加え、5分間攪拌した。次いで、ナスフラスコを氷冷バスで氷冷しながら、トリクロロイソシアヌル酸(122.11g、0.66mol)を添加し、2時間攪拌後、亜鉛粉末(31.53g、0.48mol)を加え、室温で14時間攪拌した。反応終了後、反応液にメタノール(12L)を加えることで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、白色の硫黄含有重合体(Po1a)粉末を得た。収率は92%であった。得られた硫黄含有重合体(Po1a)の構造は、1H-NMR、XPS、ICP、IR、GPC、元素分析、MALDI測定により同定した。その結果、1H-NMR(CD2Cl2,400MHz,ppm):δ=7.56(m,17H),δ=7.19(m,6H),2.35(m,3H)、XPSよりスルフィド基:スルホキシド基:スルホン酸基=45:55:0mol%であることが確認され、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、GPCより、Mw=2400、Mn=1150と確認され、末端構造を-SHと確認した。Mn=1150より、末端の芳香環(構成単位)の割合は、全芳香環(全構成単位)100モル%に対して9.5モル%であることが確認された。
【0211】
<硫黄含有重合体(Po1)の製造>
2.0Lの三口フラスコに、上記硫黄含有重合体(Po1a)を200.0g加え、スルホランを溶媒として1.1L添加した。次いで、三口フラスコを130℃に加熱しながら窒素フロー(0.5L/分)を10分間行った後、室温になるまで放冷した。放冷後、水冷バスに三口フラスコを浸し、窒素フロー(0.25L/分)を行いながら、クロロ硫酸98.3g.を徐々に滴下した。滴下完了後、室温で2時間撹拌し、再び、三口フラスコを水冷バスで冷却しながら亜鉛16.6gを添加し、14時間攪拌した。反応終了後、得られた反応溶液をメタノール溶液5.5Lに滴下することで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、重合体(Po1)粉末を得た。収率は90%であった。得られた重合体(Po1)の構造は、1H-NMR、ICP、GPC、IR、元素分析、より同定した。その結果、1H-NMR(CDCl3,600MHz,ppm):δ=7.53(m,10H),δ=7.24(m,12H),2.34(m,3H)、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、GPCより、Mw=2370、Mn=1150と確認でき、全芳香環に対して27.7mol%のチオール(-SH)基が存在することを確認した。重合体(Po1a)のチオール(-SH)基の含有量が全芳香環(全構成単位)100モル%に対して9.5モル%であると考えられることから、本反応で導入されたチオール基の量は18.2mol%であると考えられる。元素分析により反応前の硫黄含有重合体(Po1a)よりも重合体(Po1)は、硫黄原子重量比が増加していることを確認した。
【0212】
<硫黄含有重合体(Po1)のSH基の定量>
20mLの試験管に、硫黄含有重合体(Po1)を2.0g加えた後、1,2-エポキシシクロヘキサンを5.0g添加し、80℃で2時間撹拌した。反応終了後、THF(5mL)を加え、得られた溶液を塩酸酸性メタノール溶液50mLに滴下することで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、重合体(Po1t)粉末を得た。収率は89%であった。得られた重合体(Po1t)の構造は、1H-NMR、ICP、GPC、IR、元素分析により同定した。その結果、1H-NMR(CDCl3,600MHz,ppm):δ=7.53(m,6H),δ=7.24(m,8H)、3.16(m,1H)、2.69(m,1H)、2.34(m,2H)、1.79(m,4H)、1.32(m,4H)、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、GPCより、Mw=2410、Mn=1150と確認でき、元素分析により重合体中の塩素原子含有量は検出限界以下であり、反応前の硫黄含有重合体(Po1)よりも重合体(Po1t)は、硫黄原子の重量比が増加していることを確認した。1H-NMRより、重合体(Po1t)中に全芳香環中の27.7mol%にチオール基が導入されたことを確認した。ことから、重合体(Po1)は、全芳香環の27.7mol%にチオール基が導入されていることが分かり、GPCのMnより全構成単位に対して末端に9.5mol%のチオール基が存在することが算出でき、側鎖に18.2mol%のチオール基導入されたことを確認した。
【0213】
[実施例1]
50mLの三口フラスコに、硫黄含有重合体(Po1)を0.60g、テトラヒドロフランとN-メチルピロリドンを3:2の重量比で6.00g加え、10分程攪拌した。次いで、合成例1で得られた二酸化チタンナノ粒子分散液(T1)を15.00g添加し、室温で14時間攪拌した。攪拌後、得られた混合分散溶液をヘキサン150mLに滴下することで混合物粒子を沈殿させ、沈殿した混合物粒子を濾過後、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥することにより粉末組成物(TP1)を得た。得られた粉末組成物(TP1)は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が75%、硫黄含有重合体(Po1)が25%と算出でき、二酸化チタンと硫黄含有重合体(Po1)との重量比が75:25であった。
【0214】
得られた粉末組成物(TP1)2.40gは、シクロヘキサノン(7.60g)に再分散させることで透明性の高い組成物(TP1s)(溶媒含有組成物)となり、TEMにより一次粒子径を評価した結果、10.5nmであり、DLSにより分散状態を評価した結果、平均分散粒子径が18nmであった。得られた組成物(TP1s)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥し、コーティング膜(1―1)を得た。得られたコーティング膜(1-1)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が2.02であり、ヘイズは0.14%であった。組成物(TP1s)、コーティング膜(1―1)の評価結果を含め粉末組成物(TP1)について行った各種の評価結果を表2に示す。
【0215】
また、得られた上記組成物(TP1s)に対して、UV硬化性モノマーおよび光重合開始剤を混合することでナノインプリント成形可能な組成物(重合性組成物)となる。UV硬化性モノマーとしてベンジルメタアクリレートとグリセロールジメタクリレートの2:1混合液を組成物(TP1s)100質量部に対して22質量部を加え、更に光重合開始剤としてOmnirad907(IGM Resins B.V.社製)を組成物(TP1s)100質量部に対して0.8質量部を加えて混合した。得られた組成物(重合性組成物)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥した。次いで、乾燥したコーティング膜に対してUV照射を120秒間行うことでコーティング膜を硬化させ、UV硬化した硬化膜を予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することによりコーティング膜(1―2)を得た。作成したコーティング膜(1―2)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が1.94であり、ヘイズは0.05%であった。コーティング膜(1-2)についての各種評価結果を表3に示す。
【0216】
[実施例2]
50mLの三口フラスコに、硫黄含有重合体(Po1)を0.50g、テトラヒドロフランとN-メチルピロリドンを3:2の重量比で5.00g加え、10分程攪拌した。次いで、合成例2で得られた二酸化チタンナノ粒子分散液(T2)を15.00g添加し、室温で14時間攪拌した。攪拌後、得られた混合分散溶液をヘキサン150mLに滴下することで混合物粒子を沈殿させ、沈殿した混合物粒子を濾過後、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥することにより粉末組成物(TP2)を得た。得られた粉末組成物(TP2)は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が78%、硫黄含有重合体(Po1)が22%と算出でき、二酸化チタンと硫黄含有重合体(Po1)との重量比が78:22であった。
【0217】
得られた粉末組成物(TP2)2.20gは、シクロヘキサノン(7.80g)に再分散させることで透明性の高い組成物(TP2s)(溶媒含有組成物)となり、TEMにより一次粒子径を評価した結果、10.9nmであり、DLSにより分散状態を評価した結果、平均分散粒子径が30nmであった。得られた組成物(TP2s)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥しコーティング膜(2-1)を得た。得られたコーティング膜(2-1)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が2.00であり、ヘイズは0.12%であった。組成物(TP2s)、コーティング膜(2―1)の評価結果を含め粉末組成物(TP2)について行った各種の評価結果を表2に示す。
【0218】
また、得られた上記組成物(TP2s)に対して、UV硬化性モノマーおよび光重合開始剤を混合することでナノインプリント成形可能な組成物(重合性組成物)となる。UV硬化性モノマーとしてベンジルメタアクリレートとグリセロールジメタクリレートの2:1混合液を組成物(TP2s)100質量部に対して22質量部を加え、更に光重合開始剤としてOmnirad907(IGM Resins B.V.社製)を組成物(TP2s)100質量部に対して0.8質量部を加えて混合した。得られた組成物(重合性組成物)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥した。次いで、乾燥したコーティング膜に対してUV照射を120秒間行うことでコーティング膜を硬化させ、UV硬化した硬化膜を予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することによりコーティング膜(2-2)を得た。得られたコーティング膜(2-2)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が1.91であり、ヘイズは0.08%であった。コーティング膜(2-2)についての各種評価結果を表3に示す。
【0219】
[実施例3]
50mLの三口フラスコに、硫黄含有重合体(Po1)を0.60g、テトラヒドロフランとN-メチルピロリドンを3:2の重量比で6.00g加え、10分程攪拌した。次いで、合成例3で得られた二酸化チタンナノ粒子分散液(T3)を15.00g添加し、室温で14時間攪拌した。攪拌後、得られた混合分散溶液をヘキサン150mLに滴下することで混合物粒子を沈殿させ、沈殿した混合物粒子を濾過後、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥することにより粉末組成物(TP3)を得た。得られた粉末組成物(TP3)は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が75%、硫黄含有重合体(Po1)が25%と算出でき、二酸化チタンと硫黄含有重合体(Po1)との重量比が75:25であった。
【0220】
得られた粉末組成物(TP3)2.40gを、シクロヘキサノン(7.60g)に再分散させることで透明性の高い組成物(TP3s)(溶媒含有組成物)となり、TEMにより一次粒子径を評価した結果、11.8nmであり、DLSにより分散状態を評価した結果、平均分散粒子径が25nmであった。得られた組成物(TP3s)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥しコーティング膜(3-1)を得た。得られたコーティング膜(3-1)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が2.01であり、ヘイズは0.20%であった。組成物(TP3s)、コーティング膜(3―1)の評価結果を含め粉末組成物(TP3)について行った各種の評価結果を表2に示す。
【0221】
また、得られた上記組成物(TP3s)に対して、UV硬化性モノマーおよび光重合開始剤を混合することでナノインプリント成形可能な組成物(重合性組成物)となる。UV硬化性モノマーとしてベンジルメタアクリレートとグリセロールジメタクリレートの2:1混合液を組成物(TP3s)100質量部に対して22質量部を加え、更に光重合開始剤としてOmnirad907(IGM Resins B.V.社製)を組成物(TP3s)100質量部に対して0.8質量部を加えて混合した。得られた組成物(重合性組成物)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥した。次いで、乾燥したコーティング膜に対してUV照射を120秒間行うことでコーティング膜を硬化させ、UV硬化した硬化膜を予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することによりコーティング膜(3-2)を得た。得られたコーティング膜(3-2)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が1.92であり、ヘイズは0.10%であった。コーティング膜(3-2)についての各種評価結果を表3に示す。
【0222】
[実施例4]
アイメックス株式会社製バッチ式レディーミルRMBの02型ベッセル(呼び容量200mL)を用い、株式会社ニッカトー製ジルコニアボールYTZ(0.05mm)を365g、日本アエロジル株式会社製チタニア粒子P-25(気相合成品、凝集粉体、XRDによって結晶構造がアナターゼとルチルが積分比で95:5と確認でき、全パターンフィッティング法によって、二酸化チタンの結晶化度は100%と算出でき、その結晶子径Dc(101)は22.9nmであった。)を23.20g、前記含硫黄重合体(Po1)を10.00g、シクロヘキサノンを49.80g投入した。冷却水10℃にて、2500rpmで5時間解砕した。解砕終了後、分散液組成物が得られ、分散液組成物中に含まれるジルコニアボールYTZ(0.05mm)を濾過によって分離することで、乳白色の組成物(TP4s)(溶媒含有組成物)を得た。TEMにより一次粒子径を評価した結果、24.1nmであり、DLSにより分散状態を評価した結果、平均分散粒子径が41nmであった。また、得られた組成物(TP4s)をヘキサンに滴下し、生成した沈殿物を、濾過後、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥することにより溶媒(シクロヘキサノン)を除いた粉末組成物(TP4)を得た。得られた粉末組成物(TP4)は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が70%、硫黄含有重合体(Po1)が30%と算出でき、二酸化チタンと硫黄含有重合体(Po1)との重量比が70:30の粉末組成物(TP4)であった。
【0223】
得られた上記組成物(TP4s)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥し、コーティング膜(4-1)を得た。得られたコーティング膜(4-1)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が2.14であり、ヘイズは0.45%であった。組成物(TP4s)、コーティング膜(4―1)の評価結果を含め粉末組成物(TP4)について行った各種の評価結果を表2に示す。
【0224】
また、得られた組成物(TP4s)に対して、UV硬化性モノマーおよび光重合開始剤を混合することでナノインプリント成形可能な組成物(重合性組成物)となる。UV硬化性モノマーとしてベンジルメタアクリレートとグリセロールジメタクリレートの2:1混合液を組成物(TP4s)100質量部に対して12重量部を加え、更に光重合開始剤としてOmnirad907(IGM Resins B.V.社製)を組成物(TP4s)100質量部に対して0.4質量部を加えて混合した。得られた組成物(重合性組成物)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥した。次いで、乾燥したコーティング膜に対してUV照射を120秒間行うことでコーティング膜を硬化させ、UV硬化した硬化膜を予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することによりコーティング膜(4-2)を得た。得られたコーティング膜(4-2)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が2.04であり、ヘイズは0.14%であった。コーティング膜(4-2)についての各種評価結果を表3に示す。
【0225】
[比較例1]
50mLの三口フラスコに、硫黄含有重合体(Po1)を0.60g、テトラヒドロフランとN-メチルピロリドンを3:2の重量比で6.00g加え、10分程攪拌した。次いで、比較合成例1で得られた二酸化チタンナノ粒子分散液(cT1)を15.00g添加し、室温で14時間攪拌した。攪拌後、得られた混合分散溶液をヘキサン150mLに滴下することで粉末組成物を沈殿させ、沈殿した粉末組成物を濾過後、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥することにより粉末組成物(cTP1)を得た。得られた粉末組成物(cTP1)は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が70%、硫黄含有重合体(Po1)が30%と算出でき、二酸化チタンと硫黄含有重合体(Po1)との重量比が70:30であった。
【0226】
得られた粉末組成物(cTP1)2.10gを、シクロヘキサノン(7.90g)に再分散させることで透明性の高い分散液(cTP1s)となり、TEMにより一次粒子径を評価した結果、9.3nmであり、DLSにより分散状態を評価した結果、平均分散粒子径が20nmであった。得られた分散液(cTP1s)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥し、コーティング膜(c1-1)を得た。得られたコーティング膜(c1-1)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が1.88であり、ヘイズは0.18%であった。分散液(cTP1s)、コーティング膜(c1―1)の評価結果を含め粉末組成物(cTP1)について行った各種の評価結果を表2に示す。
【0227】
また、UV硬化性モノマーとしてベンジルメタアクリレートとグリセロールジメタクリレートの2:1混合液を分散液(cTP1s)100質量部に対して22質量部を加え、更に光重合開始剤としてOmnirad907(IGM Resins B.V.社製)を分散液(cTP1s)100質量部に対して0.8質量部を加えて混合した。得られた組成物を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥した。次いで、乾燥したコーティング膜に対してUV照射を120秒間行うことでコーティング膜を硬化させ、UV硬化した硬化膜を予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することによりコーティング膜(c1-2)を得た。得られたコーティング膜(c1-2)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が1.83であり、ヘイズは0.10%であった。コーティング膜(c1-2)についての各種評価結果を表3に示す。
【0228】
[比較例2]
50mLの三口フラスコに、合成例1で得られた二酸化チタンナノ粒子分散液(T1)を15.00g加え、3-メタクリノキシプロピルトリメトキシシランを0.60g添加し、室温で14時間攪拌した。攪拌後、得られた混合分散溶液をヘキサン150mLに滴下することで混合物粒子を沈殿させ、沈殿した粉末組成物を濾過後、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥することにより粉末組成物(cTP2)を得た。得られた粉末組成物(cTP2)は、重量減少率測定(TG-DTA)によって無機酸化物含有量(二酸化チタン含有量)が72%、上記3-メタクリノキシプロピルトリメトキシシランの有機分が28%と算出でき、二酸化チタンと上記3-メタクリノキシプロピルトリメトキシシランの有機分との重量比が72:28であった。
【0229】
得られた粉末組成物(cTP2)2.40gは、シクロヘキサノン(7.60g)に再分散させることで透明性の高い分散液(cTP2s)となり、TEMにより一次粒子径を評価した結果、10.5nmであり、DLSにより分散状態を評価した結果、平均分散粒子径が18nmであった。得られた分散液(cTP2s)を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することにより乾燥しコーティング膜(c2-1)を得た。得られたコーティング膜(c2-1)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が1.87であり、ヘイズは0.15%であった。分散液(cTP2s)、コーティング膜(c2―1)の評価結果を含め粉末組成物(cTP2)について行った各種の評価結果を表2に示す。
【0230】
UV硬化性モノマーとしてベンジルメタアクリレートとグリセロールジメタクリレートの2:1混合液を分散液(cTP2s)100質量部に対して22質量部を加え、更に光重合開始剤としてOmnirad907(IGM Resins B.V.社製)を分散液(cTP2s)100質量部に対して0.8質量部を加えて混合した。得られた組成物を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜を、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することによりコーティング膜を乾燥した。次いで、乾燥したコーティング膜に対してUV照射を120秒間行うことでコーティング膜を硬化させ、UV硬化した硬化膜を予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、2分間加熱保持することによりコーティング膜(c2-2)を得た。得られたコーティング膜(c2-2)の屈折率およびヘイズを評価した結果、屈折率(NaD線(589nm)に対する屈折率)が1.82であり、ヘイズは0.10%であった。コーティング膜(c2-2)についての各種評価結果を表3に示す。
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
表2および表3に示すように、本開示の組成物は二酸化チタン粒子の分散性に優れ、本開示の組成物を用いることにより、屈折率が高く、透明性に優れる膜を容易に得ることができ、好ましい形態においては屈折率が高く、透明性に優れる硬化物膜をも容易に得ることができることが明らかである。