(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002792
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】真空ポンプシステム、及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20231228BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F04D19/04 H
F04D27/00 E
F04D27/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102207
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋悟
【テーマコード(参考)】
3H021
3H131
【Fターム(参考)】
3H021AA02
3H021AA08
3H021BA21
3H021CA08
3H021EA05
3H021EA20
3H131AA02
3H131BA09
3H131BA15
3H131BA16
3H131CA02
3H131CA13
3H131CA35
(57)【要約】
【課題】アラームを発報する異常の発生回数を定める所定の閾値を適切に設定する。
【解決手段】真空ポンプシステム100は、記憶部61と、ポンプ制御部62と、設定部102と、を備える。記憶部61は、アラームを出力する異常の発生回数を定める第1閾値TH1を記憶する。ポンプ制御部62は、真空ポンプ1で発生した異常の発生回数を計数し、異常の発生回数が第1閾値TH1以上であるか否かを判断し、異常の発生回数が第1閾値以上である場合、アラームを出力する。設定部102は、真空ポンプ1の動作状態に基づいて、第1閾値TH1を設定または変更する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータをモータにより回転駆動してガスを排気する真空ポンプを含む真空ポンプシステムであって、
アラームを出力する異常の発生回数を定める第1閾値を記憶する記憶部と、
前記真空ポンプで発生した異常の発生回数を計数し、前記異常の発生回数が前記第1閾値以上であるか否かを判断し、前記異常の発生回数が前記第1閾値以上である場合、アラームを出力する制御部と、
前記真空ポンプの動作状態に基づいて、前記第1閾値を設定または変更する設定部と、
を備える、真空ポンプシステム。
【請求項2】
前記設定部は、前記異常の発生の履歴に基づいて、前記第1閾値を設定または変更する、 請求項1に記載の真空ポンプシステム。
【請求項3】
前記設定部は、
前記真空ポンプの運転時間が第1時間に達したときの前記異常の発生回数に基づいて、前記真空ポンプの運転時間が前記第1時間よりも長い第2時間に達したときの前記異常の発生回数を予測発生回数として予測し、
前記予測発生回数に基づいて前記第1閾値を設定または変更する、
請求項1に記載の真空ポンプシステム。
【請求項4】
前記予測発生回数が前記記憶部に記憶されている第1閾値よりも小さい場合、前記設定部は、前記予測発生回数を新たな第1閾値として設定する、請求項3に記載の真空ポンプシステム。
【請求項5】
前記予測発生回数が前記記憶部に記憶されている第1閾値以上である場合、前記設定部は、前記記憶部に記憶されている第1閾値を維持すると決定する、請求項3に記載の真空ポンプシステム。
【請求項6】
前記真空ポンプは、前記真空ポンプの動作状態を測定する測定部を有し、
前記設定部は、
前記測定部により検知された測定値の大きさが第2閾値以上であるか否かに基づいて、前記真空ポンプに破損が生じるリスクがあるか否かを判断し、
前記予測発生回数と、前記真空ポンプに破損が生じるリスクがあるか否かと、に基づいて前記第1閾値を設定または変更する、
請求項3に記載の真空ポンプシステム。
【請求項7】
前記設定部は、
前記測定値の大きさが第2閾値よりも小さく前記真空ポンプに破損が生じるリスクがなく、前記予測発生回数が前記記憶部に記憶されている第1閾値よりも大きいと判断した場合、前記予測発生回数を新たな第1閾値として設定する、請求項6に記載の真空ポンプシステム。
【請求項8】
前記設定部は、
前記測定値の大きさが第2閾値以上であり前記真空ポンプに破損が生じるリスクがあり、前記予測発生回数が前記記憶部に記憶されている第1閾値より小さいと判断した場合、前記予測発生回数を新たな第1閾値として設定する、請求項6に記載の真空ポンプシステム。
【請求項9】
前記異常は、真空ポンプの振動に関する異常、前記真空ポンプの負荷に関する異常から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の真空ポンプシステム。
【請求項10】
ロータをモータにより回転駆動してガスを排気する真空ポンプを制御する制御方法であって、
前記真空ポンプで発生した異常の発生回数を計数するステップと、
前記真空ポンプの動作状態に基づいて、アラームを出力する異常の発生回数を定める第1閾値を設定または変更するステップと、
前記異常の発生回数が前記第1閾値以上である場合、アラームを出力するステップと、
を備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプシステム、及び、真空ポンプの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプには、ロータをモータにより回転駆動してガスを排気するものがある。特許文献1に記載の真空ポンプでは、ロータシャフトの軸変位を検出し、検出した回数を積算し、積算回数が所定回数を超えた場合、あるいは積算回数が所定時間内で所定回数を超えた場合に警報を発することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の真空ポンプなどの従来の真空ポンプでは、上記の所定回数(閾値)は、異常発生の積算回数がどの回数になると真空ポンプが破損するリスクが高まるかとの経験等に基づいて決められた固定値である。
【0005】
しかしながら、異常の発生回数がどの回数で警報を発報する必要があるかとの実績がほとんどない真空ポンプの場合には、警報を発報するための閾値を経験等に基づいて設定することは難しい。また、閾値を固定値とした場合には、例えば、異常の発生回数が想定より少ない真空ポンプにおいて、真空ポンプの運転時間が真空ポンプのメンテナンスが必要な時期となっても警報が発報されないことがある。すなわち、閾値を固定値とした場合には、適切な時期に警報を発報できないことがある。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、異常の発生回数が所定の閾値を超えたか否かを判断する真空ポンプにおいて、当該所定の閾値を真空ポンプの特性に応じて適切に設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る真空ポンプシステムは、ロータをモータにより回転駆動してガスを排気する真空ポンプを含むシステムである。真空ポンプシステムは、記憶部と、制御部と、設定部と、を備える。記憶部は、アラームを出力する異常の発生回数を定める第1閾値を記憶する。制御部は、真空ポンプで発生した異常の発生回数を計数し、異常の発生回数が第1閾値以上であるか否かを判断し、異常の発生回数が第1閾値以上である場合、アラームを出力する。設定部は、真空ポンプの動作状態に基づいて、第1閾値を設定または変更する。
【発明の効果】
【0008】
異常の発生回数が第1閾値以上のときにアラームを出力する上記の真空ポンプシステムでは、設定部が、真空ポンプの実際の動作状態に基づいて第1閾値を設定または変更している。従って、真空ポンプの実際の運転状態を参照することにより個々の真空ポンプに適した第1閾値に設定することができるので、適切な時期にアラームを出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】アラーム発報動作を示すフローチャートである。
【
図6】第1閾値の設定動作例1を示すフローチャートである。
【
図7】第1閾値の設定動作例2を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<真空ポンプシステム>
図1を用いて、真空ポンプシステム100を説明する。
図1は、真空ポンプシステム100の構成を示す図である。真空ポンプシステム100は、例えば、プロセスチャンバー(図示せず)内で各種プロセスを実行することで、半導体素子等を製造する半導体工場に設けられる。真空ポンプシステム100は、複数の真空ポンプ1と、設定装置10と、を備える。
【0011】
複数の真空ポンプ1は、プロセスチャンバーなどの排気対象の真空排気を行う。なお、真空ポンプシステム100において、1つの排気対象が1台の真空ポンプ1で真空排気されてもよいし、1つの排気対象が複数の真空ポンプ1のうちのいくつかの真空ポンプ1で真空排気されてもよい。真空ポンプ1は、当該真空ポンプで異常が発生した場合に、その発生回数が第1閾値を超えたときにアラームを出力する。アラームの出力とは、アラームの発報、アラームを記憶装置に記憶、及び/又は、真空ポンプの運転を停止する等の処理の総称である。以下において、アラームの出力として、アラームを発報する場合を例に説明する。アラームが発報された場合、ユーザは、例えば、アラームを発報した真空ポンプをメンテナンスのためにオーバーホールし、必要に応じて当該真空ポンプの部品を交換できる。
【0012】
設定装置10は、ネットワークNを介して、複数の真空ポンプ1に接続され、複数の真空ポンプ1の各種設定を行う。設定装置10は、真空ポンプ1に記憶されている各種情報を参照し、参照した各種情報に基づいて設定動作を実行できる。
【0013】
設定装置10は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、HDD、SSDなど)、通信インタフェースなどの各種インタフェースにて構成されたコンピュータシステムである。設定装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、携帯端末である。その他、設定装置10は、例えば、クラウドサーバなどのサーバであってもよい。ネットワークNは、例えば、無線LAN、有線LAN、WANなどのネットワーク回線、真空ポンプ1に備わる独自の通信線などである。
【0014】
ここで、真空ポンプ1で発生する「異常」とは、真空ポンプ1に設けられたセンサの測定値が、通常の値からはずれていることを意味する。
【0015】
<真空ポンプ>
図2を用いて、真空ポンプシステム100に備わる真空ポンプ1を説明する。
図2は、真空ポンプ1の構成を示す図である。真空ポンプ1は、ハウジング2と、ベース3と、ロータ4と、ステータ5と、ポンプ制御装置6と、を含む。
【0016】
ハウジング2は、第1端部11と、第2端部12と、第1内部空間SP1とを含む。第1端部11には吸気口13が設けられている。第1端部11は、排気対象(図示せず)に取り付けられる。第1内部空間SP1は、吸気口13に連通している。第2端部12は、ロータ4の軸線A1の延長方向において、第1端部11の反対に位置している。第2端部12は、ベース3に接続される。ベース3は、ベース端部14を含む。ベース端部14は、ハウジング2の第2端部12に接続される。
【0017】
ロータ4は、シャフト21に接続されている。シャフト21は、軸線A1の延長方向に延びている。シャフト21は、ベース3に回転可能に収納されている。ロータ4は、複数段のロータ翼22と、ロータ円筒部23と、を含む。複数段のロータ翼22は、それぞれシャフト21に接続されている。複数のロータ翼22は、軸線A1の延長方向に互いに間隔をおいて配置されている。図示を省略するが、複数段のロータ翼22は、それぞれシャフト21を中心として放射状に延びている。なお、図面においては、複数段のロータ翼22の1つのみに符号が付されており、他のロータ翼22の符号は省略されている。ロータ円筒部23は、複数段のロータ翼22の下方に配置されている。ロータ円筒部23は、軸線A1の延長方向に延びている。
【0018】
ステータ5は、複数段のステータ翼31と、ステータ円筒部32と、を含む。複数段のステータ翼31は、ハウジング2の内面に接続されている。複数段のステータ翼31は、軸線A1の延長方向において、互いに間隔をおいて配置されている。複数段のステータ翼31は、それぞれ複数段のロータ翼22の間に配置されている。図示を省略するが、複数段のステータ翼31は、それぞれシャフト21を中心として放射状に延びている。なお、図面においては、複数段のステータ翼31の2つのみに符号が付されており、他のステータ翼31の符号は省略されている。ステータ円筒部32は、ベース3に熱的に接触した状態で固定されている。ステータ円筒部32は、ロータ円筒部23の径方向において、わずかな隙間を空けてロータ円筒部23と向かい合って配置されている。ステータ円筒部32の内周面には、らせん状溝が設けられている。
【0019】
図2に示すように、ロータ円筒部23とステータ円筒部32の排気下流側の端部のさらに下流側には、第2内部空間SP2が形成されている。第2内部空間SP2には、取付対象から排気されたガスが排気される。第2内部空間SP2は、排気口16に連通している。排気口16は、ベース3に設けられる。排気口16には、他の真空ポンプ(図示せず)が接続される。
【0020】
ポンプ制御装置6は、ベース3の下部に設けられた筐体33の内部に収納され、真空ポンプ1を制御する。また、ポンプ制御装置6は、後述する変位センサ44A~44Cにて測定されたシャフト21の浮上位置、電流値測定装置にて測定されたモータ42に供給される電流値、回転数センサ43にて測定されたロータ4の回転数が正常値の範囲にない場合に、真空ポンプ1にて異常が発生したことを通知するアラーム又はウォーニングを発報する。ポンプ制御装置6は、CPU、ROMなどの記憶装置、各種インタフェース等を備えるコンピュータシステムである。
【0021】
真空ポンプ1は、複数の軸受41A~41Eと、モータ42と、回転数センサ43を含む。複数の軸受41A~41Eは、ベース3のシャフト21を収納した位置に取り付けられている。複数の軸受41A~41Eは、ロータ4を回転可能に支持する。軸受41A、41Eは、例えば、ボールベアリングである。一方、他の軸受41B~41Dは、磁気軸受である。磁気軸受である軸受41B~41Dは、それぞれ、軸受電磁石と変位センサ44A~44C(
図3)とを備えおり、変位センサ44A~44Cによりシャフト21の浮上位置等が検出される。
【0022】
モータ42は、ロータ4を回転駆動する。モータ42は、モータロータ42Aとモータステータ42Bとを含む。モータロータ42Aは、シャフト21に取り付けられている。モータステータ42Bは、ベース3に取り付けられている。モータステータ42Bは、モータロータ42Aと向かい合って配置されている。モータ42には、モータ42に供給される電流値を測定するモータ電流測定装置45(
図3)が接続されている。回転数センサ43は、シャフト21(すなわち、ロータ4)の回転数を測定する。
【0023】
ベース3の外壁には、ベース3の温度を制御するためのヒータ51および不図示の冷却水配管が設けられている。ベース3の温度は温度センサ52によって検出される。温度センサ52によって検出された温度に基づいて、ヒータ51によるベース3の加熱と冷却水配管を流れる冷却水による冷却とのバランスにより、ベース3の温度が制御される。また、ヒータ51には、ヒータ51に供給される電流を測定するヒータ電流測定装置53(
図3)が接続されている。
【0024】
真空ポンプ1では、複数段のロータ翼22と複数段のステータ翼31とは、ターボ分子ポンプ部を構成する。また、ロータ円筒部23とステータ円筒部32とは、ネジ溝ポンプ部を構成する。真空ポンプ1では、モータ42によってロータ4が回転することで、吸気口13から第1内部空間SP1へガスが流入する。第1内部空間SP1のガスは、ターボ分子ポンプ部とネジ溝ポンプ部を通過して、第2内部空間SP2に排気される。第2内部空間SP2のガスは、排気口16から排気される。この結果、吸気口13に取り付けられた取付対象の内部が、高真空状態となる。
【0025】
<ポンプ制御装置の構成>
図3を用いて、ポンプ制御装置6の構成を説明する。
図3は、ポンプ制御装置6の構成を示す図である。ポンプ制御装置6は、記憶部61と、ポンプ制御部62と、を有する。記憶部61は、ポンプ制御装置6を構成する記憶装置に設けられた記憶領域の一部又は全部である。記憶部61は、真空ポンプ1に関する各種パラメータ、真空ポンプ1を制御するためのプログラム等を記憶する。詳細には、記憶部61は、異常発生履歴HISと、異常発報条件CONと、異常発生カウンタCNTと、運転時間カウンタTIMと、第1閾値TH1と、センサ測定値MEAと、を記憶している。
【0026】
異常発生履歴HISは、真空ポンプ1で発生した異常の発生履歴を記憶する。異常発生履歴HISは、発生した異常の種類と、当該異常が発生した時刻と、を関連付けて記憶する。
【0027】
異常発報条件CONは、真空ポンプ1にて発生した異常を発報する条件を定める。詳細には、異常発報条件CONは、以下の異常を発報することを定める。
【0028】
異常発報条件CONは、回転数センサ43にて測定されたロータ4の回転数が所定の回転数以下となったときに、ロータ4の回転数の異常を発報することを定める。この回転数の異常は、真空ポンプ1の負荷に関する異常であり、真空ポンプ1が過負荷状態であることを示している。「過負荷状態」とは、ロータ4を決められた回転数まで回転するために必要なモータ42のトルクが通常よりも過大となっている状態を意味する。真空ポンプ1が過負荷状態であることは、例えば、真空ポンプ1の内部に生成物が多く堆積している状態であることを示している。この状態が長期間継続すると、堆積した生成物が真空ポンプ1のロータ翼22に接触してロータ翼22を破損する故障が発生する可能性がある。
【0029】
異常発報条件CONは、変位センサ44A~44Cにて測定されたシャフト21の位置が所定の変動幅以上で変動しているとき、又は、シャフト21の位置が軸線A1から所定の範囲でずれているときに、シャフト21(ロータ4)の位置の異常を発報することを定める。シャフト21の位置の異常は、真空ポンプ1の振動に関する異常であり、真空ポンプ1が振動している状態であることを意味する。真空ポンプ1に振動が生じている場合、例えば、真空ポンプ1のロータ翼22が他の部品(例えば、ステータ翼31)などに接触する可能性がある。この結果、真空ポンプ1に振動が生じていると、ロータ翼22(及びステータ翼31)が破損する可能性がある。
【0030】
異常発報条件CONは、モータ電流測定装置45にて測定されたモータ42の電流値が所定の値以上となったときに、モータ42の電流の異常を発報することを定める。このモータ42の電流の異常は、モータ42が過大なトルクを発生した状態で動作していることを示している。すなわち、モータ42の電流の異常は、真空ポンプ1の負荷に関する異常であり、真空ポンプ1が過負荷状態であることを示している。
【0031】
異常発報条件CONは、温度センサ52にて測定されたベース3の温度が所定の温度以下であり、及び/又は、ヒータ電流測定装置53にて測定されたヒータ51の電流値が所定の値以下であるときに、真空ポンプ1の温度に関する異常を発報する。真空ポンプ1の温度に関する異常は、真空ポンプ1の温度調節が適切にできていない状態を示している。真空ポンプ1の温度調節が適切にできていないと、真空ポンプ1の内部に生成物が堆積し、この生成物がロータ翼22に接触してロータ翼22が破損する可能性がある。温度に関する異常は、例えば、ヒータ51の断線、ヒータ51の接続忘れ、温度センサ52の故障などに起因することが多い。
【0032】
異常発生カウンタCNTは、異常の発生回数を表す情報である。詳細には、異常発生カウンタCNTは、真空ポンプ1の負荷に関する異常(すなわち、ロータ4の回転数に関する異常、モータ42の電流に関する異常)、真空ポンプ1の振動に関する異常、真空ポンプ1の温度に関する異常のそれぞれの発生回数を表す。運転時間カウンタTIMは、真空ポンプ1が最初に運転を開始してからの経過時間を記録する。
【0033】
第1閾値TH1は、真空ポンプ1においてアラームを発報する特定の異常の発生回数を定める。すなわち、特定の異常の発生回数が第1閾値TH1を超えたときに、アラームが発報される。上記の特定の異常は、例えば、真空ポンプ1の振動に関する異常、モータ42の電流に関する異常、真空ポンプ1の温度に関する異常、及び/又は、ロータ4の回転数に関する異常等である。
【0034】
センサ測定値MEAは、真空ポンプ1に設けられたセンサの測定値を記録する。詳細には、センサ測定値MEAは、回転数センサ43にて測定されたロータ4の回転数、変位センサ44A~44Cにて測定されたシャフト21の位置、モータ電流測定装置45にて測定されたモータ42の電流値、温度センサ52にて測定されたベース3の温度、及び/又は、ヒータ電流測定装置53にて測定されたヒータ51の電流値である。
【0035】
ポンプ制御部62は、ポンプ制御装置6を構成するCPUと各種インタフェースにより構成されるハードウェア部分であり、真空ポンプ1の制御を実行する。ポンプ制御部62は、真空ポンプ1の制御に関する機能を、記憶部61に記憶されたプログラムを実行することにより実現する。また、一部の機能は、ポンプ制御部62に含まれるハードウェアにより実現されてもよい。
【0036】
<設定装置>
以下、
図4を用いて、設定装置10の構成を説明する。
図4は設定装置10の構成を示す図である。設定装置10は、記憶部101と、設定部102と、を有する。記憶部101は、設定装置10を構成する記憶装置に設けられた記憶領域の一部又は全部である。記憶部101は、設定部102を動作させるためのプログラム等を記憶する。記憶部101は、第2閾値TH2を記憶する。
【0037】
第2閾値TH2は、真空ポンプ1に破損のリスクがあると判断するためのセンサによる測定値を定める。すなわち、いずれかのセンサによる測定値が第2閾値TH2以上となった場合に、真空ポンプ1に破損が生じるリスクがあると判断する。第2閾値TH2は、例えば、変位センサ44A~44Cにて測定されたシャフト21の位置の変動値(すなわち、ロータ4の振動の大きさ)に対して定められる。つまり、変位センサ44A~44Cにて測定されたロータ4の振動の大きさが第2閾値TH2以上となったときに、真空ポンプ1に破損が生じるリスクがあると判断される。その他、第2閾値TH2は、他のセンサの測定値に対して定められてもよい。
【0038】
設定部102は、設定装置10を構成するCPUと各種インタフェースにより構成されるハードウェア部分であり、真空ポンプ1の設定に関する機能を実現する。設定部102は、真空ポンプ1の設定に関する機能を、記憶部101に記憶されたプログラムを実行することにより実現する。また、一部の機能は、設定部102に含まれるハードウェアにより実現されてもよい。
【0039】
設定部102は、ポンプ制御装置6の記憶部61に記憶されている異常発生履歴HIS、異常発生カウンタCNTのカウンタ値、運転時間カウンタTIM、センサ測定値MEAなどを参照できる。また、設定部102は、参照したこれら情報を設定装置10の出力装置(例えば、ディスプレイ、プリンタなど)に出力できる。
【0040】
このように、上記の機能を有する設定装置10が、真空ポンプ1のポンプ制御装置6とは別個に設けられることで、複数の真空ポンプ1の管理がしやすくなるとともに、複数の真空ポンプ1の運転実績を集約しやすくなる。この結果、複数の真空ポンプ1のそれぞれに対して効率よく第1閾値TH1を設定または変更できるとともに、より多くの運転実績に基づいてより適切な第1閾値TH1を設定または変更できる。
【0041】
<アラーム発報動作>
以下、
図5を用いて、真空ポンプ1のアラームの発報動作を説明する。
図5は、アラーム発報動作を示すフローチャートである。このアラーム発報動作は、真空ポンプシステム100に含まれる各真空ポンプ1のポンプ制御装置6で実行される。
【0042】
真空ポンプ1が起動されると、ポンプ制御部62が、回転数センサ43にて測定されたロータ4の回転数、変位センサ44A~44Cにて測定されたシャフト21の位置、モータ電流測定装置45にて測定されたモータ42の電流値、温度センサ52にて測定されたベース3の温度、及び、ヒータ電流測定装置53にて測定されたヒータ51の電流値、を取得する(ステップS1)。
【0043】
次に、ポンプ制御部62が、ステップS1で取得したロータ4の回転数、シャフト21の位置、モータ42の電流値、ベース3の温度、及びヒータ51の電流値と、異常発報条件CONに示された異常発報の条件となる各測定値と、を比較する(ステップS2)。
【0044】
この比較の結果、上記の全てのセンサの測定値が、異常発報条件CONに示された異常発報の条件となる測定値と一致せず、かつ、異常発報の条件となる測定値の範囲内にも含まれない場合(ステップS2で「No」)、アラーム発報動作は、ステップS1に戻る。すなわち、ポンプ制御部62は、真空ポンプ1の運転を継続する。
【0045】
一方、上記のいずれかのセンサの測定値が、異常発報条件CONに示された異常発報の条件となる測定値と一致するか、又は、異常発報の条件となる測定値の範囲内に含まれている場合(ステップS2で「Yes」)、ポンプ制御部62は、異常発報の条件と合致する測定値を示している項目(ロータ4の回転数、シャフト21の振動、モータ42の電流値、ベース3の温度、ヒータ51の電流値)に関する異常を発報する(ステップS3)。すなわち、異常の発報は、上記のいずれかのセンサの測定値が異常発報の条件と一致したときになされる。
【0046】
異常を発報した場合、ポンプ制御部62は、発報した異常を、異常発生履歴HISに記憶する。詳細には、ポンプ制御部62は、発報した異常の種類と、当該異常を発報した時刻と、を関連付けて異常発生履歴HISに記憶する。
【0047】
また、異常を発報した場合には、ポンプ制御部62は、例えば、ポンプ制御装置6から音を発する、警報灯を点灯させる、ポンプ制御装置6のディスプレイに異常を発報した旨を表示する、などの方法により異常の発報を通知してもよい。あるいは、発報が行われずに異常の発生が記憶されるのみであってもよい。
【0048】
その後、ポンプ制御部62は、異常の発生回数を計数する(ステップS4)。詳細には、ポンプ制御部62は、異常発生カウンタCNTのうち、ステップS3で発報した種類の異常の発生カウンタの値を1増加させる。
【0049】
異常の発生回数を計数した後、ポンプ制御部62は、ステップS3で発報した異常の発生回数が、当該異常に関するアラームを発報する第1閾値TH1以上となったか否かを判断する(ステップS5)。ステップS3で発報した異常の発生回数が第1閾値TH1よりも小さい場合(ステップS5で「No」)、アラーム発報動作は、ステップS1に戻る。すなわち、ポンプ制御部62は、真空ポンプ1の運転を継続する。
【0050】
一方、ステップS3で発報した異常の発生回数が第1閾値TH1以上である場合(ステップS5で「Yes」)、ポンプ制御部62は、ステップS3で発報した異常に関連するアラームを発報する(ステップS6)。すなわち、アラームの発報は、異常(センサの測定値が異常発報の条件に一致したとき)の発生回数(発報回数)が第1閾値TH1となったときになされる。ポンプ制御部62は、例えば、ポンプ制御装置6から音を発する、警報灯を点灯させる、ポンプ制御装置6のディスプレイにアラームを発報した旨を表示する、などの方法によりアラームを発報できる。
【0051】
アラームを発報する場合、ポンプ制御部62は、どの種類の異常に関するアラームを発報したかにより、ポンプ制御装置6から発する音、点灯させる警報灯の色を変更してもよい。また、ディスプレイにどの種類の異常に関するアラームを発報したかを表示してもよい。
【0052】
アラームを発報後、ポンプ制御部62は、アラームを発報したタイミング、又は、アラームを発報してから所定の時間が経過したタイミングで真空ポンプ1を停止させてもよい。または、ポンプ制御部62は、アラームの発報後にユーザの操作により、真空ポンプ1を停止させてもよい。これにより、アラームの発報後に、真空ポンプ1に発生している異常に対して、部品の交換、修理、クリーニングなどの対応をすることができる。アラームの発報に対して何らかの対応を行った後に、異常発生カウンタCNTのカウンタ値をリセット(例えば、0とする)してもよい。
【0053】
上記のステップS1~S6を実行することにより、真空ポンプ1においては、真空ポンプ1に設けられたセンサの測定値に異常がある場合には異常を発報し、異常の発生回数が多くなり第1閾値TH1を超えた場合には、アラームを発報して、ユーザに対して異常が多く発生していることを通知できる。
【0054】
<第1閾値の設定動作>
以下、真空ポンプシステム100における、第1閾値TH1の設定または変更の動作を説明する。第1閾値TH1の設定または変更の動作は、主に、真空ポンプシステム100に含まれる設定装置10で実行される。
【0055】
例えば、新製品などの運転実績が少ない真空ポンプ1においては、異常の発生回数がどの回数でアラームを発報する必要があるかとの実績がほとんどないため、経験等に基づいて、当該真空ポンプ1のための第1閾値TH1を決定することは難しい。また、第1閾値TH1を、他の真空ポンプの実績等に基づいて決定した固定値とした場合には、適切な時期にアラームを発報できないことがある。例えば、異常の発生回数が想定より少ない真空ポンプ1において、真空ポンプ1の運転時間が真空ポンプ1のメンテナンス(オーバーホール)が必要な時間となってもアラームが発報されないことがある。すなわち、メンテナンス時期を過ぎても、メンテナンスされることなく真空ポンプ1が運転されてしまうことがある。
【0056】
これを解決するために、設定装置10は、真空ポンプの動作状態に基づいて第1閾値TH1を設定または変更する必要があるか否かを判断し、必要があると判断した場合、第1閾値TH1を設定または変更する。真空ポンプの動作状態とは、真空ポンプに設けられた任意のセンサや測定装置の測定値を意味し、一例としては、回転数センサ43にて測定されたロータ4の回転数、変位センサ44A~44Cにて測定されたシャフト21の位置、モータ電流測定装置45にて測定されたモータ42の電流値、温度センサ52にて測定されたベース3の温度、及び/又は、ヒータ電流測定装置53にて測定されたヒータ51の電流値である。具体的には、設定装置10は、真空ポンプの異常の発生履歴に基づいて第1閾値TH1を設定または変更する必要があるか否かを判断し、必要があると判断した場合、第1閾値TH1を設定または変更する。さらに、具体的には、設定装置10は、アラームを発報する適切な時期の前における真空ポンプ1の実際の異常の発生回数から、アラームを発報する適切な時期における異常の発生回数の予測値(予測発生回数と呼ぶ)を算出し、算出された予測発生回数に基づいて第1閾値TH1を設定または変更する。
【0057】
アラームを発報する時期は、真空ポンプ1の運転時間を基準に決定できる。詳細には、例えば、アラームを発報する時期を、真空ポンプ1の運転時間が第2時間かそれに近い時間に達した時期とできる。第2時間は、例えば、40000時間と設定できるが、これに限られず、真空ポンプ1に応じて任意の時間を適宜設定できる。
【0058】
一方、第1閾値TH1の設定または変更の動作は、例えば、真空ポンプ1の運転時間が上記の第2時間よりも短い第1時間に達したときに実行される。つまり、予測発生回数は、真空ポンプ1の運転時間が第1時間に達したときの異常の発生回数に基づいて算出される。第1時間は、例えば、第2時間の半分の時間とできる。
【0059】
以下、いくつかの第1閾値TH1の設定または変更の動作例を説明するが、これらは例示に過ぎず、以下に説明する動作例に基づいて、様々な種類の異常に対し、以下に説明する条件とは異なる条件を用いて、適宜、第1閾値TH1を設定または変更できる。
【0060】
<第1閾値の設定または変更の動作例1>
図6を用いて、第1閾値TH1の設定動作の一例を説明する。
図6は、第1閾値の設定または変更の動作例1を示すフローチャートである。以下に説明する設定または変更の動作例1は、例えば、真空ポンプ1の負荷に関する異常(ロータ4の回転数に関する異常)についてアラームを発報するための第1閾値TH1を設定するときに用いることができる。なお、他の異常に関するアラームについても同様の処理を実行可能である。また、設定または変更の動作例1は、真空ポンプシステム100に含まれる1台の真空ポンプ1に対して実行される。
【0061】
設定装置10の設定部102は、最初に、ポンプ制御装置6の記憶部61に記憶されている運転時間カウンタTIMを参照し、第1閾値TH1の設定対象である真空ポンプ1の現在の運転時間が第1時間に達しているか否か(すなわち、現在が第1閾値TH1の設定動作を実行するタイミングであるか否か)を確認する。真空ポンプ1の運転時間が第1時間に達していない場合、設定部102は、設定動作を実行することなく、他の動作を実行するなどして待機する。一方、真空ポンプ1の運転時間が第1時間に達している場合、設定部102は、第1閾値TH1の設定または変更の動作を開始する。
【0062】
設定または変更の動作を開始すると、設定部102は、まず、運転時間が第1時間に達したときの異常(例えば、真空ポンプ1の負荷に関する異常)の発生回数を算出する(ステップS11)。詳細には、設定部102は、ポンプ制御装置6の記憶部61に記憶されている異常発生履歴HISを参照して、第1閾値TH1を設定または変更する対象の異常について、真空ポンプ1の運転開始から現在までの当該異常の発生回数を計数する。
【0063】
運転時間が第1時間までの異常の発生回数を算出後、設定部102は、第1時間までの異常の発生回数に基づいて、運転時間が第2時間に達したときの(すなわち、アラームを発報する時期における)異常の発生回数を、予測発生回数として予測する(ステップS12)。詳細には、例えば、設定部102は、(第1時間までの異常の発生回数)×(第2時間/第1時間)との式から予測発生回数を算出できる。より詳細には、例えば、第1時間を第2時間の半分の時間とした場合には、第1時間までの異常の発生回数を2倍した回数を予測発生回数として算出できる。
【0064】
次に、設定部102は、ステップS12で算出した予測発生回数に基づいて、第1閾値TH1を設定または変更する。詳細には、以下のようにして第1閾値TH1を設定または変更する。設定部102は、まず、予測発生回数と、ポンプ制御装置6の記憶部61に記憶されている現在の第1閾値TH1と、を比較して、予測発生回数が現在の第1閾値TH1よりも小さいか否かを判断する(ステップS13)。すなわち、設定部102は、第1閾値TH1を変更する必要があるか否かを判断する。
【0065】
予測発生回数が現在の第1閾値TH1よりも小さい場合(ステップS13で「Yes」)、設定部102は、新たに設定する第1閾値TH1を、記憶部61に記憶されている現在の第1閾値TH1よりも減少させる。詳細には、設定部102は、予測発生回数を新たな第1閾値TH1として設定する(ステップS14)。より詳細には、設定部102は、予測発生回数を新たな第1閾値TH1としてポンプ制御装置6に送信する。予測発生回数を受信したポンプ制御装置6のポンプ制御部62は、受信した予測発生回数を、新たな第1閾値TH1として記憶部61に記憶する。
【0066】
一方、予測発生回数が現在の第1閾値TH1以上である場合(ステップS13で「No」)、設定部102は、現在の第1閾値TH1を維持すると決定する(ステップS15)。すなわち、記憶部61に記憶されている第1閾値TH1を更新しない。
【0067】
運転時間が第2時間に達したときの異常の発生回数の予測値(予測発生回数)が現在の第1閾値TH1よりも小さいことは、異常の発生頻度が想定よりも低く、アラームを発報すると決定した時期になっても異常の発生回数が現在の第1閾値TH1に達しない可能性があることを意味する。従って、上記のように、異常の発生回数の予測値(予測発生回数)が現在の第1閾値TH1よりも小さい場合に、予測発生回数(すなわち、現在の第1閾値TH1よりも小さい回数)を新たな第1閾値TH1とすることで、アラームを発報すると決定した適切な時期(すなわち、運転時間が第2時間に達した時期)又はそれに近い時期に、異常の発生回数が第1閾値TH1となる。この結果、適切な時期にアラームを発報して、メンテナンス等の対応をとるようユーザを促すことができる。
【0068】
一方、予測発生回数が現在の第1閾値TH1以上であることは、異常の発生頻度が想定よりも高く、アラームを発報すると決定した時期よりも前に異常の発生回数が現在の第1閾値TH1に達し、アラームを発報すると決定した時期よりも前にアラームが発報される可能性があることを意味する。従って、異常の発生回数の予測値(予測発生回数)が現在の第1閾値TH1以上である場合に現在の第1閾値TH1を更新しないことで、アラームを発報すると決定した時期よりも前にアラームを発報して、より早い段階でメンテナンス等の対応をとるようユーザを促すことができる。
【0069】
<第1閾値の設定または変更の動作例2>
図7を用いて、第1閾値TH1の設定または変更の動作の他の例を説明する。
図7は、第1閾値TH1の設定または変更の動作例2を示すフローチャートである。以下に説明する設定または変更の動作例2は、例えば、真空ポンプ1の振動に関する異常についてアラームを発報するための第1閾値TH1を設定するときに用いることができる。なお、他の異常に関するアラームについても同様の処理を実行可能である。また、設定動作例2は、真空ポンプシステム100に含まれる複数台の真空ポンプ1に対して実行される。
【0070】
設定又は変更の動作例2では、設定部102は、まず、第1閾値TH1の設定対象である複数の真空ポンプ1のうち、破損が生じるリスクがある真空ポンプ1が存在しているか否かを判断する(ステップS21)。ここで、「破損が生じるリスクがある真空ポンプ」とは、他の真空ポンプ1と比べて破損する可能性が高い真空ポンプ1をいう。具体的には、センサの測定値が、他の真空ポンプ1における測定値よりも大きい真空ポンプ1をいう。
【0071】
詳細には、設定部102は、複数台の真空ポンプ1のそれぞれから、変位センサ44A~44Cにて測定されたシャフト21の位置の変動値を取得し、この変動値が第2閾値TH2以上である真空ポンプ1については破損が生じるリスクがあると判断する。シャフト21の位置の変動値が大きいことは、シャフト21が大きく振動していることを意味する。シャフト21が大きく振動している場合には、例えば、ロータ4等に堆積した生成物が他の部品に当たりやすくなるので、真空ポンプ1に破損が生じるリスクが高くなる。また、シャフト21の振動が大きい場合には、真空ポンプ1全体の振動も大きくなるので、破損が生じるリスクは高くなる。
【0072】
シャフト21の位置の変動値が第2閾値TH2以上である真空ポンプ1が存在する場合、すなわち、破損が生じるリスクを有する真空ポンプ1が存在する場合(ステップS21で「Yes」)、第1閾値TH1の設定動作は、ステップS22に進む。ステップS22においては、シャフト21の位置の変動値が他の真空ポンプ1よりも大きく破損のリスクがある一方で、平均予測発生回数が現在の第1閾値TH1よりも小さく、異常の発生回数が平均値よりも小さい真空ポンプ1については、他の真空ポンプ1よりも小さな第1閾値TH1を設定する。この第1閾値TH1の設定動作を、「第1設定動作」と呼ぶ。第1設定動作の具体的な処理フローは、後ほど詳しく説明する。
【0073】
一方、シャフト21の位置の変動値が第2閾値TH2以上である真空ポンプ1が存在しない場合(ステップS21で「No」)、すなわち、破損が生じるリスクを有する真空ポンプ1が存在しない場合、第1閾値TH1の設定動作は、ステップS23に進む。ステップS23においては、平均予測発生回数が現在の第1閾値TH1以上であり、異常の発生回数が平均値以上である真空ポンプ1について、他の真空ポンプ1よりも大きな第1閾値TH1を設定する。この第1閾値TH1の設定動作を、「第2設定動作」と呼ぶ。第2設定動作の具体的な処理フローは、後ほど詳しく説明する。
【0074】
上記のように、複数の真空ポンプ1から得られた運転実績に基づいて第1閾値TH1を設定することで、より適切な第1閾値TH1を設定できる。なぜなら、複数の真空ポンプ1から運転実績を得られることは、1台の真空ポンプ1から得られる運転実績と比較すると、より多くの情報を含んだ運転実績を得られることを意味する。真空ポンプ1につきより多くの情報を含んだ運転実績を得られれば、真空ポンプ1の特性(例えば、異常の発生傾向など)を反映した適切な第1閾値TH1を設定できるからである。
【0075】
また、破損が生じるリスクを有する真空ポンプ1が存在するか否かにより第1閾値TH1の設定方法を変更することにより、より適切な時期にアラームを発報できるような第1閾値TH1を設定できる。
【0076】
<第1設定動作>
以下、
図8を用いて、破損が生じるリスクがある真空ポンプ1が存在する場合の第1閾値TH1の設定動作(第1設定動作)を説明する。
図8は、第1設定動作を示すフローチャートである。
【0077】
設定部102は、運転時間が第1時間に達したときの異常の発生回数の平均値を算出する(ステップS31)。詳細には、設定部102は、複数の真空ポンプ1のそれぞれについて、ポンプ制御装置6の記憶部61に記憶されている異常発生履歴HISを参照し、第1閾値TH1を設定する対象の異常について、当該真空ポンプ1の運転開始から現在までの異常の発生回数を計数する。その後、設定部102は、複数の真空ポンプ1に対して計数された複数の異常の発生回数を合計し、合計した複数の異常の発生回数を真空ポンプ1の台数で除算することで、異常の発生回数の平均値を算出する。
【0078】
異常の発生回数の平均値を算出後、設定部102は、ステップS31で計数された異常の発生回数の平均値に基づいて、運転時間が第2時間に達したときの異常の発生回数の平均値を、平均予測発生回数として予測する(ステップS32)。詳細には、設定部102は、(第1時間までの異常の発生回数の平均値)×(第2時間/第1時間)との式から、平均予測発生回数を算出できる。
【0079】
次に、設定部102は、複数の真空ポンプ1のそれぞれについて、平均予測発生回数と、各真空ポンプ1のポンプ制御装置6の記憶部61に記憶されている現在の第1閾値TH1と、を比較して、平均予測発生回数が現在の第1閾値TH1よりも小さいか否かを判断する(ステップS33)。
【0080】
平均予測発生回数が第1閾値TH1以上である真空ポンプ1の場合(ステップS33で「No」)、設定部102は、当該真空ポンプ1の現在の第1閾値TH1を維持すると決定する(ステップS34)。すなわち、記憶部61に記憶されている第1閾値TH1を更新しない。
【0081】
一方、平均予測発生回数が第1閾値TH1よりも小さい真空ポンプ1の場合(ステップS33で「Yes」)、設定部102は、当該真空ポンプ1については、平均予測発生回数を新たな第1閾値TH1として設定する(ステップS35)。
【0082】
その後、設定部102は、平均予測発生回数が記憶部61に記憶されている第1閾値TH1よりも小さい真空ポンプ1のうち、シャフト21の位置の変動値が第2閾値TH2以上であり(すなわち、破損が生じるリスクがあり)、かつ、異常の発生回数がステップS31で算出した異常の発生回数の平均値よりも小さい真空ポンプ1が存在するか否かを判断する(ステップS36)。
【0083】
破損が生じるリスクがあり、かつ、異常の発生回数が平均値よりも小さい真空ポンプ1が存在する場合(ステップS36で「Yes」)、設定部102は、当該真空ポンプ1については、当該真空ポンプ1の異常の発生回数に基づいて算出された予測発生回数を、新たな第1閾値TH1として設定する(ステップS37)。
【0084】
一方、破損が生じるリスクがあり、かつ、異常の発生回数がステップS31で算出した異常の発生回数の平均値よりも小さい真空ポンプ1が存在しない場合(ステップS36で「No」)、設定部102は、上記のステップS31~S35を実行することにより設定した第1閾値TH1を維持すると決定する。
【0085】
上記のように、破損が生じるリスクを有し、異常の発生回数が平均値よりも小さい真空ポンプ1については、当該真空ポンプ1の異常の発生回数に基づいて算出された予測発生回数(すなわち、現在の第1閾値TH1よりも小さく、平均予測発生回数よりも小さい予測発生回数)を新たな第1閾値TH1とすることで、適切な時期にアラームを発報できる。
【0086】
例えば、仮に、異常の発生回数が平均値よりも小さい真空ポンプ1について、上記の平均予測発生回数を新たな第1閾値TH1と設定した場合、破損が生じるリスクがあるにもかかわらず、アラーム発報に適切な時期になっても異常の発生回数が第1閾値TH1とならず、アラームが発報されないことがある。この結果、適切な時期にメンテナンス等の対応がなされることなく、真空ポンプ1の運転が継続される可能性がある。
【0087】
その一方、異常の発生回数が平均値よりも小さい真空ポンプ1については、平均予測発生回数よりも小さい閾値を新たな第1閾値TH1とすることで、アラーム発報に適切な時期に異常の発生回数が第1閾値TH1となる。この結果、当該真空ポンプ1について、適切な時期にアラームが発報され、適切な時期にメンテナンス等の対応をとることができる。
【0088】
<第2設定動作>
以下、
図9を用いて、真空ポンプ1に破損が生じるリスクがない場合の第1閾値TH1の設定又は変更動作(第2設定動作)を説明する。
図9は、第2設定動作を示すフローチャートである。設定部102は、まず、運転時間が第1時間に達したときの異常の発生回数の平均値を算出し(ステップS41)、算出された異常の発生回数の平均値に基づいて、運転時間が第2時間に達したときの異常の発生回数の平均値を、平均予測発生回数として予測する(ステップS42)。ステップS41~S42の動作は、上記にて説明したステップS31~S32と同様であるので、ステップS41~S42の処理内容の詳細な説明は省略する。
【0089】
平均予測発生回数を予測後、設定部102は、平均予測発生回数と、各真空ポンプ1のポンプ制御装置6の記憶部61に記憶されている現在の第1閾値TH1と、を比較して、平均予測発生回数が現在の第1閾値TH1より大きいか否かを判断する(ステップS43)。
【0090】
平均予測発生回数が第1閾値TH1以下である真空ポンプ1の場合(ステップS43で「No」)、設定部102は、当該真空ポンプ1の現在の第1閾値TH1を維持すると決定する(ステップS44)。すなわち、記憶部61に記憶されている第1閾値TH1を更新しない。
【0091】
一方、平均予測発生回数が第1閾値TH1よりも大きい真空ポンプ1の場合(ステップS43で「Yes」)、設定部102は、当該真空ポンプ1については、平均予測発生回数を新たな第1閾値TH1として設定する(ステップS45)。
【0092】
上記のステップS45を実行後、設定部102は、平均予測発生回数が記憶部61に記憶されている第1閾値TH1よりも大きい真空ポンプ1のうち、異常の発生回数が平均値よりも大きい真空ポンプ1が存在するか否かを判断する(ステップS46)。
【0093】
異常の発生回数が平均値よりも大きい真空ポンプ1が存在する場合(ステップS46で「Yes」)、設定部102は、当該真空ポンプ1については、当該真空ポンプ1の異常の発生回数に基づいて算出された予測発生回数(すなわち、現在の第1閾値TH1以上であり、平均予測発生回数よりも大きい予測発生回数)を、新たな第1閾値TH1として設定する(ステップS47)。
【0094】
一方、異常の発生回数が平均値よりも大きい真空ポンプ1が存在しない場合(ステップS46で「No」)、設定部102は、上記のステップS41~S45を実行することにより設定した第1閾値TH1を維持すると決定する。
【0095】
上記のように、破損が生じるリスクがなく、異常の発生回数が平均値よりも大きい真空ポンプ1については、当該真空ポンプ1の異常の発生回数に基づいて算出された予測発生回数を新たな第1閾値TH1とすることで、適切な時期にアラームを発報できる。これは、当該真空ポンプ1の異常の発生回数に基づいて算出された予測発生回数が、平均予測発生回数よりも大きくなることに起因する。
【0096】
例えば、仮に、異常の発生回数が平均値よりも大きい真空ポンプ1について、上記の平均予測発生回数を新たな第1閾値TH1と設定した場合、破損が生じるリスクがないにもかかわらず、アラーム発報に適切な時期が到来する前に異常の発生回数が第1閾値TH1となる。この結果、アラーム発報に適切な時期よりも前にアラームが発報されることがある。すなわち、当該真空ポンプ1につきメンテナンス等の対応が不要であるにもかかわらず、アラームが発報されてしまう可能性がある。
【0097】
その一方、異常の発生回数が平均値よりも大きい真空ポンプ1については、当該真空ポンプ1の異常の発生回数に基づいて算出された予測発生回数(平均予測発生回数よりも大きい)を新たな第1閾値TH1とすることで、アラーム発報に適切な時期に異常の発生回数が第1閾値TH1となる。この結果、当該真空ポンプ1について、適切な時期にアラームが発報され、適切な時期にメンテナンス等の対応をとることができる。
【0098】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0099】
上記の設定動作例では、予め決められた第1閾値TH1が存在し、当該第1閾値TH1を設定動作により必要に応じて変更することで、第1閾値TH1の設定を行っていた。これに限られず、設定部102は、異常の発生傾向、真空ポンプ1に設けられたセンサによる測定値の増減の傾向等を学習し、この学習結果に基づいて、第1閾値TH1の設定を実行してもよい。
【0100】
例えば、設定部102は、異常の発生傾向、センサの値の増減の傾向等から、運転時間が第2時間となったときの異常の発生回数を予測発生回数として予測し、この予測発生回数を第1閾値TH1として設定できる。
【0101】
上記の設定動作例では、真空ポンプ1の運転時間が第2時間となる前に1回だけ第1閾値TH1の設定動作が実行されていた。すなわち、第1時間を1種類の時間(例えば、第2時間の半分の時間)としていた。しかし、これに限られず、真空ポンプ1の運転時間が第2時間となる前に第1閾値TH1の設定動作を複数回実行してもよい。すなわち、第1時間を複数種類の時間としてもよい。例えば、第1閾値TH1の設定動作を実行後に、異常の発生傾向(例えば、発生頻度など)が変化した場合に、第1閾値TH1の設定動作を再度実行できる。
【0102】
上記の設定動作例1を複数の真空ポンプ1に対して実行することもできる。また、上記の設定動作例2を1台の真空ポンプ1に対して実行することもできる。
【0103】
上記の設定動作例1は、例えば、真空ポンプ1の負荷に関する異常以外の異常(真空ポンプ1の振動に関する異常、真空ポンプ1の温度に関する異常など)に対しても実行できる。また、設定動作例2は、例えば、真空ポンプ1の振動に関する異常以外の異常(真空ポンプ1の負荷に関する異常、真空ポンプ1の温度に関する異常など)に対しても実行できる。
【0104】
上記にて説明した設定装置10の機能は、各真空ポンプ1のポンプ制御装置6において実現されていてもよい。この場合、設定装置10は無くてもよい。
【0105】
上記の実施形態に係る真空ポンプ1において、ターボ分子ポンプ部は省略されてもよい。すなわち、真空ポンプ1は、ネジ溝ポンプであってもよい。
【0106】
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0107】
(第1態様)真空ポンプシステムは、ロータをモータにより回転駆動してガスを排気する真空ポンプを含むシステムである。真空ポンプシステムは、記憶部と、制御部と、設定部と、を備える。記憶部は、アラームを出力する異常の発生回数を定める第1閾値を記憶する。制御部は、真空ポンプで発生した異常の発生回数を計数し、異常の発生回数が第1閾値以上であるか否かを判断し、異常の発生回数が第1閾値以上である場合、アラームを出力する。設定部は、真空ポンプの動作状態に基づいて、第1閾値を設定または変更する。
【0108】
第1態様に係る真空ポンプでは、異常の発生回数が第1閾値以上のときにアラームが出力される。第1態様に係る真空ポンプでは、真空ポンプの実際の運転状態を参照することにより個々の真空ポンプに適した第1閾値に設定することができるので、適切な時期にアラームを出力できる。
【0109】
(第2態様)第1態様に係る真空ポンプシステムにおいて、設定部は、異常の発生の履歴に基づいて、第1閾値を設定または変更してもよい。この場合、真空ポンプの実際の異常の発生の履歴を参照することにより個々の真空ポンプに適した第1閾値に設定することができるので、適切な時期にアラームを出力できる。
【0110】
(第3態様)第1態様又は第2態様に係る真空ポンプシステムにおいて、設定部は、真空ポンプの運転時間が第1時間に達したときの異常の発生回数に基づいて、真空ポンプの運転時間が第1時間よりも長い第2時間に達したときの異常の発生回数を予測発生回数として予測してもよい。また、設定部は、上記の予測発生回数に基づいて、第1閾値を設定又は変更してもよい。この場合に、設定部が、真空ポンプの運転時間が第1時間となったときの異常の発生回数に基づいて、第1時間より後の第2時間における異常の発生回数の予測値(すなわち、予測発生回数)を予測し、この予測値に基づいて第1閾値を設定している。予測発生回数は、真空ポンプにおいて発生している異常の実際の発生回数に基づいて予測されたものである。このため、予測発生回数は、運転時間が第2時間となったときの異常の実際の発生回数に近いものとして予測される。従って、予測発生回数に基づいて第1閾値を設定することで、適切な時期にアラームを出力できる。
【0111】
(第4態様)第3態様に係る真空ポンプシステムにおいて、予測発生回数が記憶部に記憶されている第1閾値よりも小さい場合、設定部は、予測発生回数を新たな第1閾値とし設定してもよい。第4態様に係る真空ポンプシステムでは、真空ポンプにおいて異常の発生頻度が想定よりも低い場合であっても、適切な時期にアラームを出力できる。
【0112】
(第5態様)第3態様に係る真空ポンプシステムにおいて、予測発生回数が記憶部に記憶されている第1閾値以上である場合、設定部は、記憶部に記憶されている第1閾値を維持すると決定してもよい。第5態様に係る真空ポンプシステムでは、異常の発生頻度が高い真空ポンプ1については、より早い段階でアラームを発報し、より早い段階でメンテナンス等の対応をとるようユーザを促すことができる。
【0113】
(第6態様)第3態様に係る真空ポンプシステムにおいて、真空ポンプは、真空ポンプの動作状態を測定する測定部を有してもよい。この場合、設定部は、測定部により検知された測定値の大きさが第2閾値以上であるか否かに基づいて、真空ポンプに破損が生じるリスクがあるか否かを判断し、予測発生回数と、真空ポンプに破損が生じるリスクがあるか否かと、に基づいて第1閾値を設定してもよい。第6態様に係る真空ポンプシステムでは、より適切な時期にアラームを出力できるような第1閾値を設定できる
【0114】
(第7態様)第6態様に係る真空ポンプシステムにおいて、設定部は、測定値の大きさが第2閾値よりも小さく真空ポンプに破損が生じるリスクがなく、予測発生回数が記憶部に記憶されている第1閾値よりも大きいと判断した場合、予測発生回数を新たな第1閾値として設定してもよい。第7態様に係る真空ポンプシステムでは、破損が生じるリスクはないが異常の発生頻度が高い真空ポンプについて、適切な時期にアラームを出力できる。
【0115】
(第8態様)第6態様又は第7態様に係る真空ポンプシステムにおいて、設定部は、測定値の大きさが第2閾値以上であり真空ポンプに破損が生じるリスクがあり、予測発生回数が記憶部に記憶されている第1閾値より小さいと判断した場合、予測発生回数を新たな第1閾値として設定してもよい。第8態様に係る真空ポンプシステムでは、破損が生じるリスクはあるが異常の発生頻度が低い真空ポンプについて、適切な時期にアラームを出力できる。
【0116】
(第9態様)第1態様~第8態様のいずれかに係る真空ポンプシステムにおいて、異常は、真空ポンプの振動に関する異常、真空ポンプの負荷に関する異常から選択される少なくとも1つであってもよい。第9態様に係る真空ポンプシステムでは、真空ポンプの破損に繋がりやすい異常について、適切な第1閾値を設定できる。
【0117】
(第10態様)第10態様に係る制御方法は、ロータをモータにより回転駆動してガスを排気する真空ポンプを制御する制御方法である。制御方法は、真空ポンプで発生した異常の発生回数を計数するステップと、真空ポンプの動作状態に基づいてアラームを出力する異常の発生回数を定める第1閾値を設定するステップと、異常の発生回数が第1閾値以上である場合、アラームを出力するステップと、を備える。
【0118】
第10態様に係る制御方法では、真空ポンプの実際の運転状態を参照することにより個々の真空ポンプに適した第1閾値に設定することができるので、適切な時期にアラームを出力できる。
【0119】
上記では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
100 :真空ポンプシステム
1 :真空ポンプ
2 :ハウジング
3 :ベース
4 :ロータ
5 :ステータ
6 :ポンプ制御装置
61 :記憶部
CNT :異常発生カウンタ
CON :異常発報条件
HIS :異常発生履歴
TIM :運転時間カウンタ
MEA :センサ測定値
62 :ポンプ制御部
11 :第1端部
12 :第2端部
13 :吸気口
14 :ベース端部
16 :排気口
21 :シャフト
22 :ロータ翼
23 :ロータ円筒部
31 :ステータ翼
32 :ステータ円筒部
33 :筐体
41A~41E :軸受
42 :モータ
42A :モータロータ
42B :モータステータ
43 :回転数センサ
44A~44C :変位センサ
45 :モータ電流測定装置
51 :ヒータ
52 :温度センサ
53 :ヒータ電流測定装置
SP1 :第1内部空間
SP2 :第2内部空間
A1 :軸線
N :ネットワーク
10 :設定装置
101 :記憶部
102 :設定部
TH1 :第1閾値
TH2 :第2閾値