(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027935
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240222BHJP
E02F 9/08 20060101ALI20240222BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20240222BHJP
B62D 25/10 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E02F9/00 N
E02F9/08 Z
B66C15/00 K
B62D25/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131136
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 晃一郎
【テーマコード(参考)】
2D015
3D004
3F204
【Fターム(参考)】
2D015CA03
3D004AA15
3D004BA04
3D004CA14
3D004CA16
3D004DA03
3F204CA05
3F204FB20
(57)【要約】
【課題】限られたスペースに設置された昇降装置を安定した姿勢で使用可能とする作業機械を提供する。
【解決手段】走行体11と、旋回体13と、作業装置14と、を備え、旋回体13は、左右側方において前後方向に延在するデッキ34L,34Rと、作業装置14の一側方に設けられた運転室31と、運転室31の後方に設けられた機械室33と、を有する油圧ショベル1において、機械室33の一側部には、機械室33の内部にアクセスするための開口部33Cが形成され、かつ、水平方向に回動して開口部33Cを開閉する開閉ドア331が設けられ、開閉ドア331の外表部331Aには、開閉ドア331と共に水平方向に回動可能であって、デッキ34L,34Rと機械室33の上面部33Tとの間を昇降するための昇降装置5が設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な走行体と、
前記走行体に対して旋回可能に設けられた旋回体と、
前記旋回体に取り付けられた作業装置と、を備え、
前記旋回体は、
左右側方において前後方向に延在するデッキと、
前記作業装置の一側方に設けられた運転室と、
前記運転室の後方に設けられた機械室と、を有する
作業機械において、
前記機械室の一側部には、
前記機械室の内部にアクセスするための開口部が形成され、かつ、水平方向に回動して前記開口部を開閉する開閉ドアが設けられ、
前記開閉ドアの外表部には、
前記開閉ドアと共に水平方向に回動可能であって、前記デッキと前記機械室の上面部との間を昇降するための昇降装置が設けられている
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記昇降装置は、
前記デッキおよび前記機械室の前記上面部のそれぞれに対して締結可能である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記開閉ドアと前記昇降装置とは、
前記機械室の前記一側部に対してヒンジ部材を介して水平方向に回動し、
前記ヒンジ部材は、
前記昇降装置に設けられたリンク部と、
前記機械室の前記一側部における前記開口部の前後一側に設けられたブラケット部と、
前記開閉ドアおよび前記昇降装置の回動中心であって、前記リンク部と前記ブラケット部とを接続する軸状の接続ピンと、を有し、
前記接続ピンの軸方向において、前記リンク部と前記ブラケット部との間には隙間が形成されている
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記昇降装置は、
前記開閉ドアの前記外表部に沿って鉛直方向に延び、かつ、水平方向に所定の間隔を空けて並ぶ一対の支柱と、前記一対の支柱の間を連結する複数段の踏桟と、を有する梯子で構成され、
前記開閉ドアの前記外表部には、
前記梯子を支持する複数の支持ブラケットが、前記複数の踏桟の位置に対応して接合されており、
前記複数の踏桟と前記複数の支持ブラケットとは、
締結部材により締結されている
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記一対の支柱の下端部にはそれぞれ、
前記デッキに沿って張り出された取付板が設けられ、
前記デッキ上には、
前記取付板が取り付けられる取付台座が一対設けられ、
前記取付台座は、
前記開閉ドアが前記開口部を閉塞している状態での前記取付板の下面と対向する上面と、
前記上面から前記機械室とは反対側に向かって斜め下方に傾斜する傾斜面と、を含み、
一対の前記取付板と一対の前記取付台座とが、それぞれ締結される
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記走行体と前記旋回体との間で上下方向に延びる円筒状のポストと、
前記ポストの少なくとも前後一側に設けられて、地上と前記旋回体との間を昇降するための階段と、をさらに備え、
前記開閉ドアおよび前記昇降装置は、
前記機械室の前記運転室側の側部に設けられている
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の側面部に昇降装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械では、例えば、メンテナンス作業時に、作業員が旋回体の建屋カバーの上面部に昇って作業を行う場合があるため、ステップや梯子といった昇降装置が旋回体の側面部に設けられていることがある。また、旋回体にデッキを備えた中型あるいは大型の作業機械の中には、オペレータが運転室に出入りする際に、建屋カバーの上面部とデッキとを経由する仕様になっているものがあり、このような作業機械においても、建屋カバーの上面部とデッキとの間を昇降するための昇降装置が、旋回体の側面部に設けられている。
【0003】
作業機械には多種多様な機器類が複数搭載されるため、各機器類の配置スペースは限られており、昇降装置についても、限られたスペースに設置することが求められる。例えば、特許文献1には、旋回体の側面に対向可能に配置される梯子から成る昇降装置が、旋回体の建屋カバーを保持する建屋フレームに回動可能に取り付けられた側面カバーによって被覆可能に設けられた作業機械が開示されている。昇降装置の梯子は、側面カバーが取り付けられた建屋フレームの前方に配置された別の建屋フレームに取り付けられ、側面カバーが開かれた状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の昇降装置は、側面カバーの内側、すなわち建屋カバーの内部に梯子が配置されているため、手摺りなどを設置することが難しい。また、建屋カバーの上面部から降りる場合には、作業員やオペレータは、建屋カバーの上面部側から不安定な姿勢で側面カバーを開けなければならない。
【0006】
本発明の目的は、限られたスペースに設置された昇降装置を安定した姿勢で使用可能とする作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、自走可能な走行体と、前記走行体に対して旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体に取り付けられた作業装置と、を備え、前記旋回体は、左右側方において前後方向に延在するデッキと、前記作業装置の一側方に設けられた運転室と、前記運転室の後方に設けられた機械室と、を有する作業機械において、前記機械室の一側部には、前記機械室の内部にアクセスするための開口部が形成され、かつ、水平方向に回動して前記開口部を開閉する開閉ドアが設けられ、前記開閉ドアの外表部には、前記開閉ドアと共に水平方向に回動可能であって、前記デッキと前記機械室の上面部との間を昇降するための昇降装置が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、限られたスペースに設置された昇降装置を安定した姿勢で使用することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの一構成例を示す外観側面図である。
【
図2】
図1に示す油圧ショベルにおいて、作業装置を除いた部分を拡大して示す側面図である。
【
図3】
図2を前方から見た場合における正面図である。
【
図4】
図2を上方から見た場合における平面図である。
【
図5】昇降装置およびその周辺部の一構成例を示し、機械室の開閉ドアが閉じた状態の斜視図である。
【
図6】昇降装置およびその周辺部の一構成例を示し、機械室の開閉ドアが開いた状態の斜視図である。
【
図7】支持ブラケットの一構成例を示す斜視図である。
【
図8】昇降装置および開閉ドアを拡大して示す拡大斜視図である。
【
図9】
図8を旋回体の後方から見た場合の図である。
【
図10】昇降装置と機械室の上面部との固定部分の一構成例を示す斜視図である。
【
図11】
図8を旋回体の左方から見た場合の図である。
【
図12】
図8を旋回体の上方から見た場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械の一態様として、例えば、港湾において荷物を移動させたり、スクラップヤードにおいてスクラップを分別したりする際などに用いられる、いわゆるハイポスト型のクローラ式油圧ショベルについて説明する。
【0011】
<油圧ショベル1の全体構成>
まず、油圧ショベル1の全体構成について、
図1~4を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベル1の一構成例を示す外観側面図である。
図2は、
図1に示す油圧ショベル1において、作業装置14を除いた部分を拡大して示す側面図である。
図3は、
図2を前方から見た場合における正面図である。
図4は、
図2を上方から見た場合における平面図である。
【0013】
油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の走行体11と、走行体11上に立設されたポスト12と、ポスト12の上端部に旋回可能に設けられた旋回体13と、旋回体13の前部中央に取り付けられて各種作業を行う作業装置14と、を備えている。
【0014】
走行体11は、ベースフレームとなる走行フレーム111と、走行フレーム111の左右に取り付けられた一対のクローラ112L,112Rと、一対のクローラ112L,112Rを駆動する一対の走行モータ113と、を備え、一対の走行モータ113の駆動力により一対のクローラ112L,112Rを地面に接触させた状態で回転させることで、機体を移動させる。
【0015】
一対の走行モータ113は、一対のクローラ112L,112Rのそれぞれに対応して走行体11に搭載され、互いに独立して駆動することで一対のクローラ112L,112Rをそれぞれ独立して正逆回転させることができる。なお、
図1および
図2では、一対のクローラ112L,112Rのうち、左側のクローラ112Lのみが示されている。なお、走行体11は、一対のクローラ112L,112Rが正回転している場合が「前進」となり、一対のクローラ112L,112Rが逆回転している場合が「後進」となる。
【0016】
ポスト12は、走行体11と旋回体13との間で上下方向に延び、旋回体13の旋回および停止に伴って生じる回転モーメントに耐えるべく円筒状(横断面が円形状)に形成されている。油圧ショベル1では、このポスト12を備えることにより、ポスト12を備えていない機種よりも旋回体13が高所に配置されている。なお、旋回体13の高さ、すなわちポスト12の延伸方向の長さは、油圧ショベル1が用いられる作業現場の環境などにより適宜設定することが可能である。
【0017】
旋回体13は、ベースフレームとなる旋回フレーム30と、オペレータが搭乗する運転室31と、機体が傾倒しないように作業装置14とのバランスを保つカウンタウェイト32と、各種機器類を内部に収容する機械室33と、旋回フレーム30の左右両側において前後方向に延在する一対のデッキ34L,34Rと、を備える。
【0018】
なお、旋回体13は、ポスト12の中心軸を旋回中心として水平方向に360度旋回することから、旋回体13の旋回位置によって前後左右が変化することになるが、「旋回体13が前方を向いている状態」とは、運転室31の正面が走行体11の前進方向を向いている状態であり(
図1~
図4に示す状態)、「旋回体13が後方を向いている状態」とは、運転室31の正面が走行体11の後進方向を向いている状態である(
図1~4に示す状態から180度旋回した状態)。
【0019】
さらに、旋回体13における前後左右の方向は、旋回体13が前方を向いている状態を基準に定義する。具体的には、旋回体13が前方を向いている状態において、運転室31内の運転席に着座したオペレータの前側を旋回体13の「前方」とし、オペレータの後側を旋回体13の「後方」とし、オペレータの左手側を旋回体13の「左方」とし、オペレータの右手側を旋回体13の「右方」とする。
【0020】
旋回フレーム30上において、運転室31は前部左側に、カウンタウェイト32は後端部に、機械室33は運転室31とカウンタウェイト32との間に、それぞれ設けられている。なお、本実施形態では、運転室31は、旋回フレーム30における前部左側、すなわち旋回フレーム30の前部中央に取り付けられた作業装置14の左側方に設けられているが、油圧ショベル1の仕様によっては、作業装置14の右側方に設けられていてもよい。
【0021】
図4に示すように、旋回フレーム30の左側のデッキ34L(以下、「左デッキ34L」とする)は、運転室31の前方から機械室33の後端部に亘って延在している。また、旋回フレーム30の右側のデッキ34R(以下、「右デッキ34R」とする)は、機械室33の前方から後端部に亘って延在している。一対のデッキ34L,34Rはそれぞれ、旋回体13の左右方向に沿った幅がオペレータや作業員などが通行可能な寸法に設定され、また、通行人の落下を防止するための柵340を有している。
【0022】
旋回体13は、前述したように、ポスト12上に設けられており、運転室31が高所に位置することから、例えば、油圧ショベル1が、港湾での輸送船の船倉に対する船積みや陸揚げ、産廃処理現場のスクラップヤードでのスクラップの分別や搬出入を行う際に、運転室31内のオペレータは、作業現場を俯瞰することが可能であり、視認性が良好となっている。
【0023】
オペレータが、地上から運転室31に搭乗する際、および、運転室31から地上に降りる際には、
図1および
図2に示すように、ポスト12を挟んで走行フレーム111の前後に設けられた一対の階段114A,114Bが用いられる。
【0024】
ポスト12の前側に配置された階段114A(以下、「前階段114A」とする)は、旋回体13が前方を向いている場合に使用される。他方、ポスト12の後側に配置された階段114B(以下、「後階段114B」とする)は、旋回体13が後方を向いている場合に使用される。
【0025】
前階段114Aは、
図3に示すように、走行体11の左右方向の中央から右デッキ34R側(旋回体13における作業装置14を挟んで運転室31の反対側)に向かって斜め上に延在している。他方、後階段114Bは、走行体11の左右方向の中央から左デッキ34L側(旋回体13における機械室33の左側部)に向かって斜め上に延在している。すなわち、前階段114Aと後階段114Bとは、旋回体13の旋回中心に対して点対称となっている。したがって、旋回体13が旋回して後方を向いた場合には、後階段114Bが、走行体11の左右方向の中央から右デッキ34R側に向かって斜め上に延在することになる。
【0026】
図4において矢印で示すように、オペレータは、旋回体13が前方を向いている状態で運転室31に搭乗する際には、まず、地上から前階段114Aを登る。続けて、オペレータは、作業装置14の右側に設けられた機械室33のステップを使って機械室33の上面部33Tに上がり、そのまま、機械室33の上面部33T上を右から左に向かって歩く。そして、オペレータは、機械室33の左側部に設けられた昇降装置5を使って左デッキ34L上に降り、そのまま左デッキ34L上を前方に向かって運転室31に至るまで歩く。
【0027】
なお、オペレータは、運転室31から地上に降りる場合には、登る場合と反対の経路を辿れば良い。また、旋回体13が後方を向いている状態で、地上から運転室31に搭乗する場合、および、運転室31から地上に降りる場合についても、オペレータの経路は、旋回体13が前方を向いている状態での経路と同様である。
【0028】
このように、油圧ショベル1では、オペレータが地上から運転室31に搭乗する際および運転室31から地上に降りる際にはいずれも、機械室33の上面部33Tを経由することから、左デッキ34Lと機械室33の上面部33Tとの間を昇降するための昇降装置5が機械室33の左側部に設けられている。
【0029】
なお、運転室31が作業装置14の右側方に設けられている場合は、昇降装置5は、機械室33の右側部に設けられる。すなわち、昇降装置5は、機械室33における運転室31側の側部に設けられていればよい。昇降装置5の具体的な構成については、後述する。
【0030】
作業装置14は、油圧駆動式であって、
図1に示すように、基端部が旋回フレーム30の前部中央に回動可能に取り付けられたブーム41と、ブーム41の先端部に回動可能に取り付けられたアーム42と、アーム42の先端部に回動可能に取り付けられたグラップル43と、を備える。
【0031】
ブーム41は、ブームシリンダ41Aにより駆動される。ブームシリンダ41Aは、一端側が旋回フレーム30に、他端側がブーム41に、それぞれ接続され、作動油が流出入してロッドが伸縮することにより、ブーム41を旋回体13に対して上下方向に回動(俯仰)させる。
【0032】
アーム42は、アームシリンダ42Aにより駆動される。アームシリンダ42Aは、一端側がブーム41に、他端側がアーム42に、それぞれ接続され、作動油が流出入してロッドが伸縮することにより、アーム42をブーム41に対して前後方向に回動させる。
【0033】
グラップル43は、複数(
図1では2本)の爪430を有し、例えば木材や岩石、スクラップなどを掴んで所定の場所に移動させる作業具である。グラップル43は、グラップルシリンダ43Aにより駆動される。グラップルシリンダ43Aは、一端側がアーム42に、他端側がグラップル43に、それぞれ接続され、作動油が流出入してロッドが伸縮することにより、グラップル43をアーム42に対して前後方向に回動させる。また、グラップル43には、爪開閉シリンダ(不図示)が内蔵されている。爪開閉シリンダは、作動油が流出入してロッドが伸縮することにより、爪430を開閉する。
【0034】
なお、このグラップル43は、例えば、土砂などを掬い上げて所定の場所に下ろすバケットや、岩盤を掘削するブレーカといった他の作業具に変更することが可能である。これにより、油圧ショベル1は、作業内容に適した作業具を用いて、掘削作業や破砕作業などを含む様々な作業を行うことができる。
【0035】
<昇降装置5およびその周辺部の構成>
次に、昇降装置5およびその周辺部の構成について、
図5~13を参照して説明する。
【0036】
まず、昇降装置5が設けられている機械室33の左側部33Lの構成について、
図5~7を参照して説明する。
【0037】
図5は、昇降装置5およびその周辺部の一構成例を示し、機械室33の開閉ドア331が閉じられた状態の斜視図である。
図6は、昇降装置5およびその周辺部の一構成例を示し、機械室33の開閉ドア331が開いた状態の斜視図である。
図7は、支持ブラケット6の一構成例を示す斜視図である。
【0038】
図5および
図6に示すように、機械室33の左側部33Lには、機械室33の内部にアクセスするための開口部33Cが形成され、水平方向に回動して開口部33Cを開閉する開閉ドア331が設けられている。
【0039】
本実施形態では、開閉ドア331は、
図6に示すように、機械室33の左側部33Lにおける開口部33Cの前側に取り付けられたヒンジ部材9を介して、旋回体13の前方に向かって回動することにより開き、旋回体13の右方に向かって回動することにより閉じる。なお、開閉ドア331の横幅は、回動に際して左デッキ34Lの柵340に衝突しない寸法に設定されている。
【0040】
また、本実施形態では、機械室33の左側部33Lの上端部分が上面部33Tに向かって湾曲しているため、開閉ドア331は、上端部分が湾曲して形成されているが、これに限られず、開口部33Cの形状に合った形状に形成されていればよい。
【0041】
昇降装置5は、この開閉ドア331の外表部331Aに複数(本実施形態では、4つ)の支持ブラケット6を介して取り付けられ、開閉ドア331と共に水平方向に回動可能となっている。4つの支持ブラケット6は、
図5および
図7に示すように、開閉ドア331の外表部331Aに対し、矩形状をなすように縦横に2つずつ並んで接合されている。
【0042】
4つの支持ブラケット6はそれぞれ、
図7に示すように、外表部331Aから左デッキ34Lに沿って張り出した第1板部61と、第1板部61の幅方向の両端部から左デッキ34L側に向かって垂下する一対の第2板部62と、第1板部61の張り出し方向の先端部から左デッキ34L側に向かって垂下して一対の第2板部62を連結する第3板部63と、を有する。
【0043】
第3板部63は、外表部331Aと対向して位置しており、
図5に示す一対のボルト81が挿通される2つのボルト孔630が厚み方向に貫通して形成されている。2つのボルト孔630は、一対の第2板部62の並び方向(開閉ドア331の横幅方向)に所定の間隔を空けて並んでいる。なお、4つの支持ブラケット6の構成はいずれも同様であることから、
図7では、左上に示される支持ブラケット6のみに、第1板部61、第2板部62、第3板部63、およびボルト孔630の符号を付している。
【0044】
このように、昇降装置5は、開閉ドア331の外表部331Aに対し、開閉ドア331と共に水平方向に回動可能に取り付けられていることから、例えば、油圧ショベル1が中型の油圧ショベルであって、機器類を設置するスペースが限られているような場合であっても、昇降装置5を搭載するためのスペースを確保する必要がない。
【0045】
さらに、昇降装置5は、開閉ドア331が取り付けられた場所という限られたスペースに設置されているが、例えば、使用時に開閉ドア331を開いて取り出すなどの準備動作が不要であり、開閉ドア331が閉じられた状態であれば常時昇降可能であり、オペレータや作業員は安定した姿勢で使用することができる。
【0046】
続いて、昇降装置5の具体的な構成について、
図5および
図6に加えて、
図8~13を参照して説明する。
【0047】
図8は、昇降装置5および開閉ドア331を拡大して示す拡大斜視図である。
図9は、
図8を旋回体13の後方から見た場合の図である。
図10は、昇降装置5と機械室33の上面部33Tとの固定部分の一構成例を示す斜視図である。
【0048】
昇降装置5は、開閉ドア331の外表部331Aに沿って鉛直方向に延び、かつ、水平方向に所定の間隔を空けて並ぶ一対の支柱51A,51Bと、一対の支柱51A,51Bの間を連結する複数段(本実施形態では、3段)の踏桟52A,52B,52Cと、一対の支柱51A,51Bのそれぞれから連続して形成された手摺り53A,53Bと、を有する梯子で構成されている。
【0049】
なお、一対の支柱51A,51Bのうち、ヒンジ部材9の側に配置されている一方の支柱を「支柱51A」とし、他方の支柱を「支柱51B」とする。これに伴い、一方の支柱51A側の手摺りを「手摺り53A」とし、他方の支柱51B側の手摺りを「手摺り53B」とする。
【0050】
また、一方の支柱51Aおよび手摺り53Aと他方の支柱51Bおよび手摺り53Bとは、同様の構成を有していることから、以下では、主に、一方の支柱51Aおよび手摺り53Aを例に挙げて説明し、他方の支柱51Bおよび手摺り53Bの説明については割愛する。
【0051】
図5、
図6、
図8、および
図9に示すように、一方の支柱51Aおよび手摺り53Aは、例えば、円形パイプを屈曲加工してなり、一体に形成されている。手摺り53Aは、支柱51Aの上端から開閉ドア331側に傾斜して延びる傾斜部531と傾斜部531から水平方向に延びる水平部532と、水平部532から開閉ドア331側に垂下する垂下部533と、を有する。
【0052】
支柱51Aと手摺り53Aの垂下部533とは、上下方向に所定の間隔を空けて並ぶ一対の連結部材501,502によって連結されている。一対の連結部材501,502は、本実施形態では、支柱51Aおよび手摺り53Aと同様の円形パイプで形成されている。なお、一対の連結部材501,502は、必ずしも支柱51A、手摺り53Aと同じ部材で形成されている必要はない。
【0053】
一対の連結部材501,502のうち、下側に配置された下側連結部材502は、垂下部533の下端に位置しており、垂下部533よりも突出している。そして、下側連結部材502の突出方向の先端には、機械室33の上面部33T上の取付ブラケット334Aに取り付けられる上側取付板54が設けられている。
【0054】
図10に示すように、上側取付板54は、短辺方向が支柱51Aおよび手摺り53Aの垂下部533の延伸方向に、長辺方向が開閉ドア331の横幅方向に、それぞれ沿った略長方形状の板部材である。上側取付板54には、短辺方向に細長く形成されて一対のボルト(不図示)が挿通される長孔540が、長辺方向に下側連結部材502を挟んで一対並んで形成されている。
【0055】
図6および
図8に示すように、機械室33の上面部33Tには、開閉ドア331が閉じられている状態(開閉ドア331が開口部33Cを閉塞している状態)での一対の手摺り53A,53Bの位置に対応する位置に、一対の取付ブラケット334A,334Bが固定されている。一対の取付ブラケット334A,334Bはそれぞれ、
図10に示すように、矩形状の板部材を屈曲加工して形成され、機械室33の上面部33Tに対向する基板部334αと、基板部334αの開閉ドア331側の端部から立設した立板部334βと、基板部334αと立板部334βとの間を補強する補強板部334γと、を含む。
【0056】
図10において破線で示すように、立板部334βには、上側取付板54の一対の長孔540に対応する位置に、厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。一対のボルト(不図示)が長孔540と貫通孔とに挿通され、上側取付板54と立板部334βとが締結されることにより、昇降装置5が機械室33の上面部33Tに対して固定される。
【0057】
昇降装置5は、オペレータや作業員などが繰り返し昇降することによって下方向への負荷が大きく掛かることから、上下方向の歪みや位置ずれが生じやすい。そこで、本実施形態では、上側取付板54に長孔540を形成することにより、昇降装置5における上下方向の歪みや位置ずれを吸収して、昇降装置5と機械室33の上面部33Tとの固定をより確実なものとしている。
【0058】
また、
図5、
図8、および
図11に示すように、支柱51Aの下端部には、左デッキ34Lに沿って張り出された下側取付板55が設けられている。下側取付板55は、短辺方向が手摺り53の水平部532および一対の連結部材501,502の延伸方向に、長辺方向が開閉ドア331の横幅方向に、それぞれ沿った略長方形状の板部材である。下側取付板55には、一対のボルトが挿通されるボルト孔が、長辺方向に支柱51Aを挟んで一対並んで形成されている。
【0059】
図5および
図6に示すように、左デッキ34Lには、開閉ドア331が閉じられている状態での一対の支柱51A,51Bの位置に対応する位置に、一対の取付台座7A,7Bが設けられている。
【0060】
図6に拡大して示すように、取付台座7Bは、6面を有した直方体を変形して7つの面を有した形状に形成され、開閉ドア331が閉じられている状態での下側取付板55の下面と対向する上面71と、上面71から機械室33とは反対側に向かって斜め下方(左デッキ34L側)に傾斜する傾斜面72と、を含む。なお、取付台座7A,7Bはいずれも、同様の構成を有しているため、取付台座7A側の具体的な構成の説明は割愛する。
【0061】
上面71には、下側取付板55の一対のボルト孔に対応する位置に、挿通孔71Aが形成されている。一対のボルトが下側取付板55のボルト孔と挿通孔71Aとに挿通され、下側取付板55と取付台座7A,7Bとが締結されることにより、昇降装置5が左デッキ34Lに対して固定される。
【0062】
このように、昇降装置5は、左デッキ34Lおよび機械室33の上面部33Tのそれぞれに対して締結可能である。これにより、昇降装置5が開閉ドア331のみに取り付けられている場合と比べて、昇降時に開閉ドア331に掛かる負荷を低減することができ、また、昇降装置5がよりしっかりと固定された状態となる。
【0063】
なお、機械室33の内部にアクセスすべく開閉ドア331を開く場合には、上側取付板54と取付ブラケット334A,334Bとの固定および下側取付板55と取付台座7A,7Bとの固定を外すことにより、昇降装置5は、開閉ドア331のみに取り付けられた状態となって開閉ドア331と共に水平方向に回動可能となる。
【0064】
そして、開けた開閉ドア331を閉じる場合において、本実施形態では、取付台座7A,7Bが傾斜面72を含んでいることから、下側取付板55が取付台座7A,7Bに衝突しにくくなって、取付台座7A,7Bの上面71上までスムーズに移動することができる。
【0065】
図5、
図8、および
図9に示すように、3段の踏桟52A,52B,52Cは、上下方向(一対の支柱51A,51Bの延伸方向)に等間隔に並んで配置されている。3段の踏桟52A,52B,52Cのうち、中央段の踏桟52Bが4つの支持ブラケット6のうちの上段2つの支持ブラケット6に、最下段の踏桟52Cが4つの支持ブラケット6のうちの下段2つの支持ブラケット6に、それぞれ締結部材としてのボルト81およびナット82によって締結されている。
【0066】
図9に拡大して示すように、ボルト81は、踏桟52B,52Cおよび支持ブラケット6の第3板部63に対して、踏桟52B,52C側から直交する方向に挿し込まれ、第3板部63の裏側からナット82で締められている。すなわち、踏桟52B,52Cと4つの支持ブラケット6とは、開閉ドア331の外表部331Aに対して直交(交差)する方向に締結されている。これにより、昇降によって昇降装置5に対して下方向の荷重が掛かっても、開閉ドア331との固定が外れにくい。
【0067】
なお、本実施形態では、昇降装置5を構成する梯子は、3段の踏桟52A,52B,52Cを有しているが、踏桟の段数は、必ずしも3段である必要はなく、機械室33の仕様などに合わせて適宜変更することが可能である。
【0068】
次に、ヒンジ部材9の構成について、主に、
図11~13を参照して説明する。
【0069】
図11は、
図8を旋回体13の左方から見た場合の図である。
図12は、
図8を旋回体13の上方から見た場合の図である。
図13は、
図6を上方から見た場合の図である。
【0070】
ヒンジ部材9は、昇降装置5の一方の支柱51Aに設けられたリンク部91と、機械室33の左側部33Lにおける開口部33Cの前側に設けられたブラケット部92と、リンク部91とブラケット部92とを接続する軸状の接続ピン93と、を有する。開閉ドア331および昇降装置5は、接続ピン93を回動中心として水平方向に回動する。
【0071】
リンク部91は、
図11に示すように、一方の支柱51Aから他方の支柱51Bとは反対側に向かって張り出した一対のプレート91A,91Bを含んで構成されている。一対のプレート91A,91Bは、接続ピン93の軸方向(上下方向)に所定の距離L1だけ離れており、上側のプレート91Aは中央段の踏桟52Bの下端位置に、下側のプレート91Bは最下段の踏桟52Cの上端位置に、それぞれ配置されている。上側のプレート91Aおよび下側のプレート91Bにはそれぞれ、接続ピン93が挿通される挿通孔が形成されている。
【0072】
ブラケット部92は、内部を接続ピン93が挿通する中空の筒部920を含んで構成されている。
図11において拡大して示すように、筒部920は、延伸方向の長さL2が一対のプレート91A,91Bの間の距離L1よりも短く設定され(L2<L2)、一対のプレート91A,91Bの間に配置されている。上側のプレート91Aと筒部920との間、および、下側のプレート91Bと筒部920との間にはそれぞれ、隙間Sが形成されている。
【0073】
このように、リンク部91とブラケット部92との間に隙間Sが形成されていることにより、昇降装置5を機械室33の上面部33Tや左デッキ34に固定する際に上下方向の位置ずれを微調整することが可能であると共に、昇降時に昇降装置5に掛かる下方向の荷重がブラケット部92に直接伝達しないため、昇降装置5における繰り返しの昇降に伴うブラケット部92の破損を防ぐことができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態では、ヒンジ部材9は、機械室33の左側部33Lにおける開口部33Cの前側に設けられ、旋回体13の前方に向かって開閉ドア331を開いたが、これに限られず、旋回体13の仕様によっては、ヒンジ部材9を機械室33の左側部33Lにおける開口部33Cの後側に設け、旋回体13の後方に向かって開閉ドア331を開いてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、昇降装置5は、開閉ドア331の外表部331A、機械室33の上面部33T、および左デッキ34Lのそれぞれに固定されていたが、これに限られず、少なくとも開閉ドア331の外表部331Aに固定されていればよい。
【0077】
また、上記実施形態では、昇降装置5は、開閉ドア331の外表部331Aに設けられた4つの支持ブラケット6に、ボルト81およびナット82を用いて取り付けられていたが、これに限られず、開閉ドア331の外表部331Aに対して、例えば溶接などによって直接的に接合されて一体に設けられていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、昇降装置5は、梯子で構成されていたが、必ずしも梯子である必要はなく、機械室33の上面部33Tと左デッキ34Lとの間を昇降することが可能な機構を有したものであればよい。
【0079】
また、上記実施形態では、左デッキ34L上に設けられた取付台座7A,7Bは、傾斜面72を含んでいたが、必ずしも傾斜面72を含んでいる必要はなく、一対の支柱51A,51Bが取り付け可能な形状であればよい。
【0080】
また、上記実施形態では、作業機械の一態様として、いわゆるハイポスト型のクローラ式の油圧ショベル1について説明したが、これに限られず、ポスト12を有しない通常の油圧ショベル1やその他の作業機械であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1:油圧ショベル(作業機械)
5:昇降装置
6:支持ブラケット
7A,7B:取付台座
9:ヒンジ部材
11:走行体
12:ポスト
13:旋回体
14:作業装置
31:運転室
33:機械室
33C:開口部
33L:左側部(一側部)
33T:上面部
34L:左デッキ
34R:右デッキ
51A,51B:支柱
52A,52B,52C:踏桟
55:下側取付板(取付板)
71:上面
72:傾斜面
81:ボルト(締結部材)
82:ナット
91:リンク部
92:ブラケット部
93:接続ピン
114A:前階段(階段)
114B:後階段(階段)
331:開閉ドア331
331A:外表部
S:隙間