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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027945
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】イオンビーム照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131162
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】西村 一平
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB03
5C101BB05
5C101DD03
5C101DD16
5C101DD22
5C101DD28
5C101DD40
(57)【要約】
【課題】イオン源に給電部材を接続する作業やイオン源から給電部材を取り外す作業を効率良く行えるようにする。
【解決手段】イオン源10と、イオン源10に電力を供給する複数の給電部材50と、複数の給電部材50を一括して保持する保持部材60とを備え、保持部材60が、イオン源10に給電部材50が接続される接続位置Pと、接続位置Pから退避して給電部材50とイオン源10とを非接続にする退避位置Qとの間を移動可能に設けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源と、
前記イオン源に電力を供給する複数の給電部材と、
前記複数の給電部材を一括して保持する保持部材とを備え、
前記保持部材が、前記イオン源に前記給電部材が接続される接続位置と、前記接続位置から退避して前記給電部材と前記イオン源とを非接続にする退避位置との間を移動可能に設けられている、イオンビーム照射装置。
【請求項2】
前記保持部材が、前記接続位置と前記退避位置との間を予め定められた軌道に沿って移動する、請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項3】
前記保持部材を水平な円軌道に沿って回転可能に支持する軸部材を備える、請求項2記載のイオンビーム照射装置。
【請求項4】
前記イオン源を装置本体に取り付ける又は前記イオン源を前記装置本体から取り外すためのイオン源搬送機構をさらに備え、
前記退避位置が、前記イオン源搬送機構により搬送される前記イオン源の搬送経路を避けた位置に設定されている、請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項5】
前記保持部材が、前記軸部材に支持される基端部とは反対側の先端部に設けられた被押圧部を有し、
前記軸部材から前記給電部材の給電用端子部までの距離よりも、前記軸部材から前記被押圧部までの距離の方が長い、請求項3記載のイオンビーム照射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビーム照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオンビーム照射装置の組み立て時やイオン源のメンテナンス後において、装置本体に取り付けられたイオン源には、特許文献1に示すようなフィラメントに電力を供給するべく、電気ケーブル等の給電部材が接続される必要がある。従来は、イオン源が装置本体に取り付けられた後、作業者が複数の給電部材を1本ずつイオン源に手作業で接続していた。
【0003】
近時では、処理対象となる基板が大型化するに伴い、イオン源も大型化している。従って、イオン源に使用されるフィラメントの数が多くなっていることから、接続しなければならない給電部材の数も従来よりも多くなっている。
【0004】
従って、これまでと同様、作業者が給電部材を手作業で1本ずつ接続するのでは、作業効率が悪く、接続ミスが発生する可能性が高くなる。
【0005】
また、イオン源が装置本体に取り付けられる作業では、イオン源は台車で装置本体の傍に運び込まれ、その後、昇降ユニットにより持ち上げられて装置本体に取り付ける。したがって、装置本体の近傍には、これらの作業スペースが確保されている必要がある。
【0006】
そのため、作業者は、イオン源を装置本体に取り付ける前に、給電部材を上述した作業スペースから退避させておく。その後、作業者は、イオン源を装置本体に取り付けた後に、その退避させてある給電部材をイオン源まで引き回し、給電部材をイオン源に接続する作業を行う。このように、作業者が給電部材を1本ずつ引き回すようでは、やはり作業効率が悪い。
【0007】
こうした種々の問題は、イオン源の取り付け時のみならず、装置本体からイオン源が取り外される際に、イオン源から給電部材が取り外される作業においても共通して生じるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-067488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、イオン源に給電部材を接続する作業やイオン源から給電部材を取り外す作業を効率良く行えるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係るイオンビーム照射装置は、イオン源と、前記イオン源に電力を供給する複数の給電部材と、前記複数の給電部材を一括して保持する保持部材とを備え、前記保持部材が、前記イオン源に前記給電部材が接続される接続位置と、前記接続位置から退避して前記給電部材と前記イオン源とを非接続にする退避位置との間を移動可能に設けられていることを特徴とするものである。
なお、本明細書において、「イオン源に給電部材が接続される接続位置」とは、保持部材を接続位置に移動させるのと同時にイオン源に給電部材が接続される位置のみならず、保持部材を接続位置に移動させた後に別の作業を介してイオン源に給電部材が接続される位置も含む概念である。
【0011】
このように構成されたイオンビーム照射装置によれば、複数の給電部材を一括して保持する保持部材が接続位置と退避位置との間を移動可能に設けられているので、従来のように、作業者が給電部材を1本ずつ引き回す作業を行う場合に比べて、作業効率の向上を図れ、イオン源の周囲における作業時間を短くすることもできる。
【0012】
ところで、保持部材が接続位置と退避位置との間を自由な経路で移動できてしまうと、給電部材が周辺の構造物に接触して傷つくなどの恐れがある。
そこで、前記保持部材が、前記接続位置と前記退避位置との間を予め定められた軌道に沿って移動することが好ましい。
このような構成であれば、給電部材が構造物に接触しないような軌道を定めておくことで、給電部材が傷ついてしまうことを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係るイオンビーム照射装置は、前記保持部材を水平な円軌道に沿って回転可能に支持する軸部材を備えることが好ましい。
このように保持部材が水平な円軌道に沿って回転し得る構成であれば、作業者が保持部材を持ち上げずに済むうえ、給電部材及び保持部材の荷重が軸部材に支持されているので、作業者が手作業でも保持部材を容易に移動させることができる。
【0014】
また、本発明に係るイオンビーム照射装置は、前記イオン源を装置本体に取り付ける又は前記イオン源を前記装置本体から取り外すためのイオン源搬送機構をさらに備え、前記退避位置が、前記イオン源搬送機構により搬送される前記イオン源の搬送経路を避けた位置に設定されていることが好ましい。
このような構成であれば、退避位置にある保持部材がイオン源の搬送の妨げにならず、イオン源の搬送作業における作業性を確保することができる。
【0015】
前記保持部材が、前記軸部材に支持される基端部とは反対側の先端部に設けられた被押圧部を有し、前記軸部材から前記給電部材の給電用端子部までの距離よりも、前記軸部材から前記被押圧部までの距離の方が長いことが好ましい。
このような構成であれば、作業者が被押圧部を押すことで、給電用端子部の近傍を押すよりも、保持部材を回転させるモーメントが大きくなるので、保持部材をより容易く移動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、イオン源に給電部材を接続する作業やイオン源から給電部材を取り外す作業における作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るイオンビーム照射装置の全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態のイオン源の構成を示す模式図。
図3】同実施形態のイオン源の周辺構造を示す模式図。
図4】同実施形態の給電部材及び保持部材の構成を示す模式図。
図5】同実施形態の保持部材の内部構成を示す模式図。
図6】同実施形態の保持部材の動作を示す模式図。
図7】同実施形態の保持部材の接続位置及び退避位置を示す模式図。
図8】その他の実施形態における保持部材の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態のイオンビーム照射装置100は、図1に示すように、基板Aの表面にイオンビームIBを照射して、イオンを基板A内に注入し、その基板Aの特性を所望のものにするために用いられるイオン注入装置である。基板Aは、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)用のものであり、具体的にはガラス基板や合成樹脂基板である。なお、イオンビーム照射装置100としては、イオン注入装置に限定されず、例えばイオンビームエッチング装置等であっても良い。
【0020】
このイオンビーム照射装置100は、イオン源10から引き出されたイオンビームIBを、質量分析器20により質量分析したのちに、基板ホルダ30に保持されている基板Aに対して照射し、所望のイオン種を基板Aに対して注入するものである。
【0021】
イオン源10は、図2に示すように、プラズマ生成容器11と、プラズマ生成容器11からイオンビームIBを引き出す複数の電極からなる引出し電極系12と、プラズマ生成容器11の内部にカスプ磁場を形成する複数の磁石13と、プラズマ生成容器11の内部に電子を放出する複数のフィラメント14とを具備したものである。
【0022】
このイオン源10は、イオンビーム照射時には、図3に示すように装置本体Xに取り付けられて使用されるとともに、メンテナンス時などには、図示は省略してあるが装置本体Xから取り外されるものである。
【0023】
そのため、本実施形態のイオンビーム照射装置100は、図3に示すように、イオン源10を装置本体Xに取り付ける又はイオン源10を装置本体Xから取り外すためのイオン源搬送機構40を備えている。
【0024】
イオン源10の取り付け作業及び取り外し作業について簡単に説明すると、イオン源10の取付時には、作業者は、まず倒伏姿勢にあるイオン源10を台車Zに載せて装置本体Xの傍まで運ぶ。
【0025】
次いで、作業者は、イオン源搬送機構40を駆動させることによって、台車Z上のイオン源10を起立させつつ、装置本体Xにおける所定の取付位置まで搬送し、起立姿勢にあるイオン源10を装置本体Xに締結する。
【0026】
一方、イオン源10の取り外し時には、作業者は、再びイオン源搬送機構40を駆動させ、起立姿勢にあるイオン源10をイオン源搬送機構40により吊り下げられるようにしながら、装置本体Xから外す。
【0027】
次いで、作業者は、装置本体Xから取り外したイオン源10をイオン源搬送機構40により台車Zの上方に搬送し、そのイオン源10を倒伏させながら台車Zに載せて装置本体Xから離れた場所に運ぶ。
【0028】
このような作業をするべく、イオン源搬送機構40は、イオン源10を吊り下げるとともに、そのイオン源10を昇降移動及び水平移動させるものである。
【0029】
より具体的に説明すると、イオン源搬送機構40は、図3に示すように、イオン源10を昇降移動させるための第1移動部材41と、イオン源10を水平移動させるための第2移動部材42と、これらの第1移動部材41及び第2移動部材42を支持する複数の支柱43と、第1移動部材41及び第2移動部材42を移動させる図示しない駆動源とを有している。
【0030】
本実施形態では、装置本体Xの近傍に上方から視て四辺形の各頂点に位置するように4本の支柱43が配置されており、これらの支柱43に囲まれた領域Sに上述した台車Zが出入りできるようにしてある。
【0031】
第1移動部材41は、イオン源10を直接又は間接的に支持するとともに、支柱43に沿って昇降移動するものである。
【0032】
この第1移動部材41は、例えばイオン源10を装置本体Xに対して進退させる方向(以下、進退方向ともいう)に沿って延びる長尺状をなすものであり、ここではイオン源10の幅方向に離間して設けられた一対の第1移動部材41それぞれが2本の支柱43に支持されている。
【0033】
第2移動部材42は、イオン源10を直接又は間接的に支持するとともに、そのイオン源10を少なくとも進退方向に沿って移動するものである。なお、第2移動部材42としては、イオン源10の幅方向に沿っても移動するものであっても良い。
【0034】
この第2移動部材42は、例えばイオン源10の幅方向に沿って延びる長尺状をなすものであり、ここでは上述した一対の第1移動部材41の間に架け渡されるとともに、これらの第1移動部材41に支持されている。
【0035】
かかる構成により、イオン源搬送機構40により搬送されるイオン源10の搬送経路の少なくとも一部は、4本の支柱43で囲まれた領域S内に設定されていることになる。
【0036】
さらに、本実施形態のイオンビーム照射装置100は、図3に示すように、装置本体Xに取り付けられたイオン源10を格納するとともに、放射線を遮断する部屋となるキャビネットCを備えている。なお、図3においては、説明の便宜上、キャビネットCを構成する1枚の壁面C1のみを記載してあり、その他の壁面の記載は省略してある。
【0037】
このキャビネットCは、上述したイオン源搬送機構40を構成する第1移動部材41、第2移動部材42、及び複数本の支柱43をも格納している。
【0038】
かかる構成において、本実施形態のイオンビーム照射装置100は、イオン源10に電力を供給するための構造及びその周辺構造に特徴があるので、以下に詳述する。
【0039】
本実施形態のイオンビーム照射装置100は、図3及び図4に示すように、複数の給電部材50と、これらの給電部材50を保持する保持部材60とをさらに備えている。
【0040】
給電部材50は、図4に示すように、イオン源10を構成する例えば上述した引出し電極系12やフィラメント14に電力を供給するためのものであり、一端部に電源からの電力を受ける受電用端子部T1が設けられるとともに、他端部にその電力をイオン源10に供給する給電用端子部T2が設けられている。
【0041】
より具体的に説明すると、図5に示すように、給電部材50は、配線部材51と、配線部材51の両端に電気的に接続された中間端子部52と、配線部材51の両端でそれぞれ中間端子部52と電気的に接続された受電端子部T1および給電用端子部T2とにより構成されている。
【0042】
本実施形態における配線部材51は電線であり、中間端子部52は配線部材51の両端部に圧着された丸端子である。受電端子部T1および給電用端子部T2はともに板状の導線性部材であり、一端部がオス端子として機能する。また、受電端子部T1および給電用端子部T2の他端部には、丸端子である中間端子部52とボルトである締結具53による共締めを可能とするための貫通孔が形成されている。
【0043】
保持部材60の両端部にはナットが埋設された端子台(不図示)が配置されている。当該端子台において、受電端子部T1の貫通孔と中間端子部52の孔部が、ナットの位置で重ね合わされた後、ボルトによって締結されることで受電端子部T1と中間端子部52が電気的に接続される。なお、当該端子台は、例えば、螺子溝を外部に露出するようにして埋設されたボルトが配置された構成であってもよい。この場合、当該ボルトを介して受電端子部T1と中間端子部52を共締めするためのナットが締結部53となる。
【0044】
なお、図5においては、給電部材50の受電用端子部T1側が図示されており、説明の便宜上、電線部材51、中間端子部52、及び締結具52は、それぞれの一部のみが示されている。また、給電端子部T2と中間端子部52とが電気的に接続される構成については、上述の受電端子部T1と中間端子部52とが電気的に接続される構成と同様である。
【0045】
また、給電部材50の構成は本実施形態の構成に限らない。例えば、配線部材51と中間端子部52の代わりに、両端部に締結孔が形成されたバスバーが使用されてもよい。この場合、例えば、当該バスバーの締結孔と受電端子部T1および給電用端子部T2の孔部を介して、締結具53により配線部材51と受電端子部T1および給電用端子部T2とが共締めされる。
【0046】
受電用端子部T1は、図6及び図7に示すように、電源に設けられた又は電源に接続されている電源側端子部T3に接続されるものである。この実施形態の電源側端子部T3は、キャビネットCの外側に設けられている。より具体的には、キャビネットCの壁面C1には、キャビネットC内と外部とを連通する窓Wが設けられており、この窓Wに臨むようにキャビネットCの外部に電源側端子部T3が設けられている。
【0047】
給電用端子部T2は、図7に示すように、プラズマ生成容器11に設けられたイオン源側端子部T4に接続されるものである。この実施形態のイオン源側端子部T4は、プラズマ生成容器11の装置本体Xとは反対を向く背面に設けられている。より具体的には、イオン源10を構成する引き出し電極系12や複数本のフィラメント14それぞれに対応する複数のイオン源側端子部T4が、プラズマ生成容器11の背面における例えば中央部の下方などに纏められて設けられている。このように、イオン源側端子部T4がプラズマ生成容器11の背面における中央部よりも下方に設けられていることで、作業者がより低い位置で作業をすることができ、作業性を担保することができる。
【0048】
保持部材60は、図4に示すように、複数の給電部材50を一括して保持するものであり、ここでは、複数の給電部材50を収容可能な筒状をなす。ただし、保持部材60の形状はこれに限らず、例えば板状や箱状のものなど、適宜変更して構わない。
【0049】
この実施形態では、複数の保持部材60を設けてあり、第1の保持部材60に一部(例えば半数)の給電部材50を保持させるとともに、第2の保持部材60に残りの給電部材50を保持させている。ただし、保持部材60は1つのみ設けても良いし、3つ以上設けても良い。
【0050】
然して、この保持部材60は、イオン源10に給電部材50が接続される接続位置Pと、接続位置Pから退避して給電部材50とイオン源10とを非接続にする退避位置Qとの間を移動可能に設けられている。なお、この実施形態では、複数の保持部材60が、一体的に移動するように連結されているが、複数の保持部材60が独立して移動するようにしても良い。
【0051】
接続位置Pは、給電部材50をイオン源10に対して電気的に接続可能な位置である。本実施形態では、受電用端子部T1及び給電用端子部T2として板状のオス端子を用いており、電源側端子部T3及びイオン源側端子部T4としてオス端子を挟み込むクリップ状のメス端子を用いている。そして、作業者が、保持部材60を接続位置Pに移動させることで、複数の給電部材50の受電用端子部T1それぞれが、対応する電源側端子部T3に一挙に挿し込まれるとともに、複数の給電部材50の給電用端子部T2それぞれが、対応するイオン源側端子部T4に一挙に挿し込まれる。
【0052】
かかる構成において、オス端子たる受電用端子部T1及び給電用端子部T2は、メス端子たる電源側端子部T3及びイオン源側端子部T4に挿し込まれる。したがって、受電用端子部T1及び給電用端子部T2は、イオン源10のメンテナンス作業に伴って挿抜が繰り返されることで、例えば表面のメッキが剥がれるなど、消耗するものであり、適時交換が必要となる。
【0053】
そこで、本実施形態では、図5及び図6に示すように、上述した保持部材60の受電用端子部T1側の基端部と、給電用端子部T2側の先端部とに、保持部材60の本体部に対して着脱可能な着脱カバー61を設けてある。
【0054】
そして、この着脱カバー61を取り外すことにより、保持部材60の内部にアクセスすることができ、上述した中間端子部52と受電用端子部T1及び給電用端子部T2との締結を解くことで、使用済みの受電用端子部T1及び給電用端子部T2を新たなものに交換することができる。
なお、本実施形態における着脱カバー61は、中間端子部52と受電用端子部T1及び給電用端子部T2が締結された位置の上方を開放し得る構成であるが、これに加えて、側方も開放し得る構成としてもよい。
【0055】
退避位置Qは、給電部材50の受電用端子部T1と電源側端子部T3とが非接続となり、且つ、給電部材50の給電用端子部T2とイオン源側端子部T4とが非接続となる位置である。この退避位置Qは、イオン源搬送機構40により搬送されるイオン源10の搬送経路を避けた位置に設定されており、より具体的には、上述した4本の支柱43で囲まれた領域Sの外部に設けられている。つまり、退避位置Qにある保持部材60は、イオン源搬送機構40により搬送されるイオン源10とは干渉しない位置に配置されており、ここでは上述したキャビネットCに格納されている。
【0056】
本実施形態の保持部材60は、図7に示すように、上述した接続位置Pと退避位置Qとの間を予め定められた軌道Lに沿って移動するものであり、ここでの軌道Lは部分円弧状である。
【0057】
より具体的に説明すると、イオンビーム照射装置100は、図7に示すように、保持部材60を水平な円軌道Lに沿って回転可能に支持する軸部材70をさらに備えている。
【0058】
軸部材70は、保持部材60とともに給電部材50を回転可能に支持するものであり、本実施形態では、この軸部材70を回転軸として保持部材60を手動で(手で押し引きすることで)回転できるようにしてある。
【0059】
この軸部材70は、図6及び図7に示すように、上述したキャビネットCの外部に設けられて、上述した受電用端子部T1の近傍において保持部材60を軸支している。
【0060】
かかる構成において、保持部材60の回転可能な角度範囲、言い換えれば、軸部材70を中心とした接続位置Pから退避位置Qまでの拡がり角度は、例えば90度或いは90度よりもやや大きい角度(例えば、92度)に設定されている。
【0061】
このように構成されたイオンビーム照射装置100によれば、複数の給電部材50を一括して保持する保持部材60が、接続位置Pと退避位置Qとの間を移動可能に設けられているので、従来のように給電部材50が1本ずつ引き回される場合に比べて、作業効率の向上を図れ、イオン源10の周囲における作業時間を短くすることもできる。その結果、イオン源10の装置本体Xに対する着脱作業にかかる作業時間が従来と比較して短縮される。
【0062】
また、保持部材60が接続位置Pと退避位置Qとの間を予め定められた軌道Lに沿って移動可能であるので、給電部材50が構造物に接触しないような軌道Lを取ることで、給電部材50が傷ついてしまうことを防ぐことができる。
【0063】
さらに、軸部材70が保持部材60を水平な円軌道に沿って回転可能に支持しているので、保持部材60を持ち上げずに済むうえ、給電部材50及び保持部材60の荷重を軸部材70に支持させているので、手作業でも容易に保持部材60を移動させることができる。
【0064】
そのうえ、退避位置Qが、イオン源搬送機構40により搬送されるイオン源10の搬送経路を避けた位置に設定されているので、退避位置Qにある保持部材60がイオン源10の搬送の妨げにならず、イオン源10の搬送作業における作業性を確保することができる。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0066】
例えば、保持部材60としては、図8に示すように、軸部材70に支持される基端部とは反対側の先端部に設けられた被押圧部80を有するものであっても良い。
かかる構成において、軸部材70から給電用端子部T2までの距離H1よりも、軸部材70から被押圧部80までの距離H2の方が長いことが好ましい。
このような構成であれば、被押圧部80を押すことで、給電用端子部T2の近傍を押すよりも、保持部材60を回転させるモーメントが大きくなる。これにより、保持部材60を移動させる際に作業者が保持部材60にかける力を低減させることができ、ひいてはイオン源10に対して給電部材50を挿抜する際の力を低減させることができる。
【0067】
また、前記実施形態では、保持部材60を接続位置Pに移動させた場合に、前記実施形態では受電用端子部T1が電源側端子部T3に挿し込まれるとともに、給電用端子部T2がイオン源側端子部T4に挿し込まれるように構成されている。これらの端子部は必ずしも挿し込まれる必要はなく、イオンビーム照射装置100は、受電用端子部T1が電源側端子部T3に近接配置されるとともに、給電用端子部T2がイオン源側端子部T4に近接配置される構成であってもよい。
この場合、例えば、イオンビーム照射装置100が、受電用端子部T1と電源側端子部T3、および、給電用端子部T2とイオン源側端子部T4が、それぞれ互いに対向するように位置付けられた後、別個に用意された電線やバスバー等の導電性部材によって電気的に接続される構成であってもよい。この場合であっても、従来のように給電部材50が1本ずつ引き回される場合に比べて、作業効率の向上が図られる。
【0068】
さらに、保持部材60を接続位置Pに移動させた後、受電用端子部T1に向かって電源側端子部T3が移動しても良いし、給電用端子部T2に向かってイオン源側端子部T4が移動して、これにより、受電用端子部T1と電源側端子部T3とが接続されるとともに、給電用端子部T2とイオン源側端子部T4とが接続されるようにしても良い。
【0069】
保持部材60を移動させる軌道Lは、前記実施形態の円軌道の他、例えばギア、カム、アーム部材などを用いて楕円軌道、湾曲した軌道、直線軌道、或いは、これら種々の軌道を組み合わせた軌道としても良い。
【0070】
また、保持部材60を移動させる軌道Lは、前記実施形態では水平方向に沿った軌道であったが、水平方向成分と鉛直方向成分とを含む軌道であっても良いし、鉛直方向に沿った軌道であっても良い。
【0071】
さらに、保持部材60を移動させる軌道Lは、予め定められている必要はなく、保持部材60を例えば手動で自由な軌道で移動できるようにしても良い。
【0072】
前記実施形態では、複数の保持部材60が、一体的に移動するように連結されていたが、複数の保持部材60が、別々に移動するように互いに独立して設けられていても良い。
これならば、複数の給電部材50を複数回に分けてイオン源10に接続する或いはイオン源10から取り外すことができるので、イオン源10に対して給電部材50を挿抜する一回一回の作業で必要な挿抜力は、イオン源10に対して複数の給電部材50を一挙に挿抜する作業で必要な挿抜力よりも少なくて済む。
【0073】
前記実施形態では、保持部材60は手動で回転できるように構成されているが、例えばモータなどを用いて自動で回転できるように構成されていても良い。
【0074】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
100・・・イオンビーム照射装置
10 ・・・イオン源
14 ・・・フィラメント
X ・・・装置本体
40 ・・・イオン源搬送機構
Z ・・・台車
41 ・・・第1移動部材
42 ・・・第2移動部材
43 ・・・支柱
S ・・・領域
C ・・・キャビネット
C1 ・・・壁面
W ・・・窓
50 ・・・給電部材
T1 ・・・受電用端子部
T2 ・・・給電用端子部
60 ・・・保持部材
T3 ・・・電源側端子部
T4 ・・・イオン源側端子部
P ・・・接続位置
Q ・・・退避位置
L ・・・軌道
70 ・・・軸部材
80 ・・・被押圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8