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特開2024-27952熱抵抗評価装置、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラム
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  • 特開-熱抵抗評価装置、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラム 図1
  • 特開-熱抵抗評価装置、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027952
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】熱抵抗評価装置、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G01N25/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131179
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000192383
【氏名又は名称】アドバンス理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】池内 賢朗
(72)【発明者】
【氏名】島田 賢次
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB08
2G040BA08
2G040BA14
2G040BA26
2G040BA27
2G040CB02
2G040CB04
2G040CB08
2G040CB09
2G040CB14
2G040DA02
2G040DA12
2G040DA16
2G040EA08
2G040EB02
2G040EC07
2G040HA02
2G040HA16
(57)【要約】
【課題】低熱抵抗を有する評価対象の熱抵抗を評価可能な放熱基板の熱抵抗を評価する熱抵抗評価装置、その方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】第一温度にほぼ保たれた高温ブロック11と、低温ブロック21と、低温ブロック21内を通る循環路23に第二温度にほぼ保たれた恒温水を循環させる循環装置22と、高温ブロック11および低温ブロック21の間に試料が配置された際の、恒温水の低温ブロック21の入口側温度および出口側温度の温度差と、恒温水の流速と、熱容量と、に基づいて、高温ブロック11側から低温ブロック21側への熱流量を算出する算出部41と、熱抵抗が既知の標準試料が配置された際に算出される熱流量から、標準試料の熱抵抗の熱流量依存性を示す評価関数を取得する。熱抵抗が未知の未知試料が配置された際に算出される熱流量を評価関数に当てはめて未知試料の熱抵抗を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱抵抗が未知の未知試料の前記熱抵抗を評価する熱抵抗評価装置であって、
第一温度にほぼ保たれた高温ブロックと、
低温ブロックと、
前記低温ブロック内を通る循環路に前記第一温度よりも低い第二温度にほぼ保たれた恒温水を循環させる循環装置と、
前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に試料が配置された際の、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出する算出部と、
前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に熱抵抗が既知の標準試料が配置された際に前記算出部により算出される前記熱流量から、前記標準試料の前記熱抵抗の前記熱流量依存性を示す評価関数を取得する取得部と、
前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に前記未知試料が配置された際に前記算出部により算出される前記熱流量を、前記評価関数に当てはめて前記未知試料の前記熱抵抗を算出する熱抵抗評価部と、を備える、熱抵抗評価装置。
【請求項2】
前記未知試料は、複数層が積層された複合材料である、請求項1記載の熱抵抗評価装置。
【請求項3】
熱抵抗が未知の未知試料の前記熱抵抗を評価する熱抵抗評価方法であって、
第一温度にほぼ保たれた高温ブロックと、低温ブロックと、前記低温ブロック内を通る循環路に前記第一温度よりも低い第二温度にほぼ保たれた恒温水を循環させる循環装置と、を準備する工程と、
前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に熱抵抗が既知の標準試料を配置し、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出し、算出された前記熱流量から、前記標準試料の前記熱抵抗の熱流量依存性を示す評価関数を取得する工程と、
前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に前記未知試料を配置し、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出し、算出された前記熱流量を前記評価関数に当てはめて前記未知試料の前記熱抵抗を算出する工程と、を備える、熱抵抗評価方法。
【請求項4】
熱抵抗が未知の未知試料の前記熱抵抗を、第一温度にほぼ保たれた高温ブロックと、低温ブロックと、前記低温ブロック内を通る循環路に前記第一温度よりも低い第二温度にほぼ保たれた恒温水を循環させる循環装置と、を備える熱抵抗評価装置から取得される情報に基づいて評価する熱抵抗評価プログラムであって、
前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に熱抵抗が既知の標準試料が配置された際に取得される、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出し、算出された前記熱流量から、前記標準試料の前記熱抵抗の熱流量依存性を示す評価関数を取得する手順と、
前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に前記未知試料が配置された際に取得される、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出し、算出された前記熱流量を前記評価関数に当てはめて前記未知試料の前記熱抵抗を算出する手順と、
をコンピュータに実行させる、熱抵抗評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱基板の熱抵抗を評価する熱抵抗評価装置、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料全体の熱抵抗を評価する方法として、温度傾斜法がある。この方法は、定常法に基づいており、JIS H7903やASTM D 5470として規格化されている。
【0003】
例えば、JIS H7903に記載された温度傾斜法(一方向熱流定常比較法)では、熱伝導率が既知の棒材からなる2個の標準ロッド、および2個の標準ロッドで挟んだ試験片に一方向に熱が流される。試験片および標準ロッドにおける定常時の温度分布から、有効熱伝導率が求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JIS H7903 「ポーラス金属の熱伝導率試験方法」 日本産業標準調査会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した方法は、評価対象が熱抵抗の小さい放熱基板などである場合、標準ロッドの熱抵抗の方が試験片の熱抵抗よりも大きくなり、試験片に温度差がつきにくく、評価に必要な温度分布が得られない。このため、試験片が熱抵抗の小さい放熱基板などである場合には、試験片および標準ロッドの熱抵抗の違いを熱流量として検知できず、温度傾斜法は利用できない。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、低熱抵抗を有する評価対象の熱抵抗を評価可能な放熱基板の熱抵抗を評価する熱抵抗評価装置、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱抵抗評価装置は、上述した課題を解決するために、熱抵抗が未知の未知試料の前記熱抵抗を評価する熱抵抗評価装置であって、第一温度にほぼ保たれた高温ブロックと、低温ブロックと、前記低温ブロック内を通る循環路に前記第一温度よりも低い第二温度にほぼ保たれた恒温水を循環させる循環装置と、前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に試料が配置された際の、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出する算出部と、前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に熱抵抗が既知の標準試料が配置された際に前記算出部により算出される前記熱流量から、前記標準試料の前記熱抵抗の前記熱流量依存性を示す評価関数を取得する取得部と、前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に前記未知試料が配置された際に前記算出部により算出される前記熱流量を、前記評価関数に当てはめて前記未知試料の前記熱抵抗を算出する熱抵抗評価部と、を備える。
また、本発明に係る熱抵抗評価方法は、熱抵抗が未知の未知試料の前記熱抵抗を評価する熱抵抗評価方法であって、第一温度にほぼ保たれた高温ブロックと、低温ブロックと、前記低温ブロック内を通る循環路に前記第一温度よりも低い第二温度にほぼ保たれた恒温水を循環させる循環装置と、を準備する工程と、前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に熱抵抗が既知の標準試料を配置し、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出し、算出された前記熱流量から、前記標準試料の前記熱抵抗の熱流量依存性を示す評価関数を取得する工程と、前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に前記未知試料を配置し、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出し、算出された前記熱流量を前記評価関数に当てはめて前記未知試料の前記熱抵抗を算出する工程と、を備える。
また、本発明に係る熱抵抗評価プログラムは、熱抵抗が未知の未知試料の前記熱抵抗を、第一温度にほぼ保たれた高温ブロックと、低温ブロックと、前記低温ブロック内を通る循環路に前記第一温度よりも低い第二温度にほぼ保たれた恒温水を循環させる循環装置と、を備える熱抵抗評価装置から取得される情報に基づいて評価する熱抵抗評価プログラムであって、前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に熱抵抗が既知の標準試料が配置された際に取得される、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出し、算出された前記熱流量から、前記標準試料の前記熱抵抗の熱流量依存性を示す評価関数を取得する手順と、前記高温ブロックおよび前記低温ブロックの間に前記未知試料が配置された際に取得される、前記恒温水の前記低温ブロックの入口側温度および出口側温度の温度差と、前記恒温水の前記循環路内の流速と、前記恒温水の熱容量と、に基づいて、前記高温ブロック側から前記低温ブロック側への熱流量を算出し、算出された前記熱流量を前記評価関数に当てはめて前記未知試料の前記熱抵抗を算出する手順と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る熱抵抗評価装置、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラムにおいては、低熱抵抗を有する評価対象の熱抵抗が評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態における熱抵抗評価装置の概略的な説明図。
図2】評価関数の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る熱抵抗評価装置1、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラムの実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
本実施形態における熱抵抗評価装置1、熱抵抗評価方法および熱抵抗評価プログラムは、熱抵抗が未知の未知試料の熱抵抗を評価するために用いられるものである。以下の説明においては、本発明の評価対象が、熱抵抗の小さい放熱基板である例を用いて説明する。本発明は、このような放熱基板に対して特に効果を奏するが、評価対象はこれに限らない。
【0012】
図1は、本実施形態における熱抵抗評価装置1の概略的な説明図である。
【0013】
熱抵抗評価装置1は、高温ブロック11と、ヒータ12と、高温側温度センサ13と、低温ブロック21と、循環装置22と、低温側温度センサ26と、流量計27と、演算装置40と、を有する。
【0014】
高温ブロック11は、熱伝導性のよい材料(例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni))で主に形成されるブロック状部材である。高温ブロック11は、図示下方を向く面が熱接合材30(後述)を介する試料2との接触面となる。
【0015】
ヒータ12は、高温ブロック11の内部に配置され、高温ブロック11をほぼ一定の第一温度(例えば50度)に保つよう、高温ブロック11の温度を制御する。
【0016】
高温側温度センサ13は、高温ブロック11の接触面近傍に配置され、高温ブロック11の温度を計測する。高温側温度センサ13は、例えば、白金抵抗温度計、熱電対である。高温側温度センサ13により計測された温度は、ヒータ12における高温ブロック11の温度制御に用いられる。
【0017】
低温ブロック21は、高温ブロック11同様の熱伝導性のよい材料で主に形成されるブロック状部材である。低温ブロック21は、図示上方を向く面が熱接合材30を介する試料2との接触面となる。
【0018】
高温ブロック11および低温ブロック21は、熱抵抗の評価中に、両者が相対的に高温および低温の関係に制御されるため、「高温」ブロックおよび「低温」ブロックと定義される。
【0019】
循環装置22は、循環路23に恒温水を循環させ、低温ブロック21を高温ブロック11よりも低い温度に制御する。循環装置22は、循環路23と、装置本体24と、を有する。
【0020】
循環路23は、低温ブロック21内を通り、低温ブロック21内と装置本体24とを循環する、恒温水の流路である。
【0021】
装置本体24は、恒温水を第一温度よりも低い第二温度(例えば20度)に保つ(冷却する)。装置本体24は、第二温度に制御された恒温水をポンプにより循環路23内に送り出す。これにより、恒温水は、低温ブロック21を冷却する。
【0022】
低温側温度センサ26は、循環路23の低温ブロック21の入口側および出口側に配置され、低温ブロック21の入口側温度および出口側温度を測定する。
【0023】
流量計27は、循環路23の所要の位置に配置され、恒温水の循環路23内の流量を計測することにより、恒温水の流速を取得する。
【0024】
熱接合材30は、高温ブロック11の接触面および低温ブロック21の接触面と、試料2とを熱的に接触させて熱伝導性を向上させる、一対の部材である。熱接合材30は、例えば熱伝導性に優れた(熱抵抗が小さい)シート状部材である。
【0025】
演算装置40は、CPU、ROM、RAMなどからなるコンピュータであり、熱抵抗評価プログラムを実行する。この熱抵抗評価プログラムは、評価対象の未知の熱抵抗を評価するために実行され、演算装置40を熱流量算出部41、関数取得部42および熱抵抗評価部43として機能させる。
【0026】
熱流量算出部41(算出部)は、高温ブロック11側から低温ブロック21側への熱流量を算出する。具体的には、熱流量算出部41は、低温側温度センサ26および流量計27と接続されており、各計測結果を取得する。熱流量算出部41は、高温ブロック11および低温ブロック21の間に試料2が配置された際に取得される、低温ブロック21の入口側温度Tin、出口側温度Tout(入口側温度Tinと出口側温度Toutとの温度差)と、流速vと、恒温水の体積比熱容量Cと、に基づいて、以下の式1から恒温水へ流れた熱量である熱流量Qを算出する。
【0027】
[式1]
熱流量Q = Cv(Tout - Tin)
【0028】
関数取得部42(取得部)は、高温ブロック11および低温ブロック21の間に、試料2として標準試料が配置された際の、熱流量算出部41から算出される熱流量Qsから、熱抵抗の熱流量依存性を示す評価関数を取得する。標準試料は、熱抵抗が既知の物質からなる試料であり、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、S50C(機械構造用炭素鋼)、SUS304(ステンレス鋼)、石英ガラス(SiO2)である。
【0029】
関数取得部42は、例えば2種類の標準試料を用いて熱流量を測定し、得られた熱抵抗との相関関係をフィッティングして任意の関数からなる評価関数を取得する。また、関数取得部42は、4、5種類の標準試料を用いるなどして、求めてもよく、評価対象の未知試料などに応じて、任意の標準試料、フィッティング(近似)方法を用いて、任意の評価関数を取得すればよい。関数取得部42は、取得された評価関数を、熱抵抗評価部43による熱抵抗の評価に先立って、予め記憶する。
【0030】
熱抵抗評価部43は、高温ブロック11および低温ブロック21の間に、試料2として未知試料が配置された際の、熱流量算出部41から算出される熱流量Quを、評価関数に当てはめて未知試料の熱抵抗を算出して、評価する。
【0031】
次に、熱抵抗評価装置1を用いた熱抵抗評価方法について説明する。
【0032】
まず、熱抵抗評価装置1の、高温ブロック11および低温ブロック21の間に、熱接合材30を介して熱抵抗が既知の標準試料を配置する。次に、ヒータ12は、高温側温度センサ13で温度を確認しながら、高温ブロック11を加熱し、高温ブロック11を第一温度に保つ。また、循環装置22は、第二温度に保たれた恒温水を循環路23に循環させることにより、低温ブロック21を恒温水で冷却する。
【0033】
演算装置40は、熱抵抗評価プログラムを実行することにより、以下に説明する手順を実行する。
【0034】
熱流量算出部41は、恒温水の低温ブロック21の入口側温度Tinおよび出口側温度Toutの温度差と、恒温水の循環路23内の流速vと、恒温水の体積比熱容量Cと、に基づいて、高温ブロック11側から低温ブロック21側への熱流量Qs(恒温水へ流れた熱量)を算出する(式1)。
【0035】
また、関数取得部42は、算出された標準試料の熱流量Qsから、標準試料の熱抵抗の熱流量依存性を示す評価関数を取得し、記憶する。ここで、図2は、評価関数の一例を示すグラフである。
【0036】
次に、熱抵抗評価装置1に配置されている標準試料を未知試料に差し替える。熱流量算出部41は、熱流量Qsと同様の手順で、未知試料に関する熱流量Quを計測する。熱抵抗評価部43は、算出された熱流量Quを評価関数に当てはめることにより、未知試料の熱抵抗を算出することで、未知試料の熱抵抗を評価することができる。以上で、熱抵抗評価方法は終了する。
【0037】
このような本実施形態における熱抵抗評価装置1、その方法およびプログラムは、評価対象が熱抵抗の小さい未知試料であっても、好適に熱抵抗の評価が可能である。すなわち、熱電変換素子などの熱伝導性の低い材料に適した温度傾斜法を用いた評価方法は、その測定原理上、放熱基板のような低熱抵抗を有する評価対象には適用が困難である。また、熱抵抗(放熱性)を評価する他の方法としては、フラッシュ法が知られている。しかしながら、評価対象が、一対の高熱伝導率を有する材料からなる層と、その間に配置された絶縁材料からなる層などの複数層が積層された複合材料である場合には、複数層の接合状況によっては、測定結果の精度が得られないおそれがある。このため、フラッシュ法も、複合材である放熱基板の熱抵抗を評価することに適していない。
【0038】
これに対し、本実施形態における熱抵抗評価装置1は、熱流量の計測を、低温ブロック21が兼ねて行うようにした。また、算出された未知試料の熱流量を、予め取得した熱抵抗の熱流量依存性に関する評価関数に当てはめることにより、未知試料の熱抵抗を評価した。これにより、本実施形態における熱抵抗評価装置1、その方法およびプログラムは、温度傾斜法を用いた熱抵抗の評価が困難な放熱基板であっても、好適に評価対象とすることができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、特許請求の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 熱抵抗評価装置
2 試料
11 高温ブロック
12 ヒータ
13 高温側温度センサ
21 低温ブロック
22 循環装置
23 循環路
24 装置本体
26 低温側温度センサ
27 流量計
30 熱接合材
40 演算装置
41 熱流量算出部
41 算出部
42 関数取得部
43 熱抵抗評価部
図1
図2