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特開2024-27954結着樹脂中に分散したワックス粒子を有するトナー粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027954
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】結着樹脂中に分散したワックス粒子を有するトナー粒子
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240222BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131182
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】家田 修
(72)【発明者】
【氏名】寺田 明紀
(72)【発明者】
【氏名】團野 敬博
(72)【発明者】
【氏名】石川 恵一
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500CA06
2H500CA30
2H500EA13C
2H500EA16A
2H500EA40B
2H500EA40C
2H500EA42B
2H500EA44B
2H500EA52C
2H500EA58C
2H500EA61C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温定着性と耐熱保管性に優れたトナーの提供。
【解決手段】トナー粒子10であって、結着樹脂1と、トナー粒子10の断面において、アスペクト比が1.0~20.0である一又は複数のワックスドメインDを形成するワックス2と、を含有し、ドメインサイズ指標値が0.2~2.5μmである、トナー粒子10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子であって、
結着樹脂と、
前記トナー粒子の断面において、アスペクト比が1.0~20.0である一又は複数のワックスドメインを形成するワックスと、を含有し、
ドメインサイズ指標値が0.2~2.5μmである、トナー粒子。
【請求項2】
前記ワックスドメインの長さと幅との平均を各ワックスドメインのドメインサイズとすると、
前記トナー粒子のドメインサイズ指標値は、前記ワックスドメインの中で最大のドメインサイズを有するものとして選択される最大3つの前記ワックスドメインのドメインサイズの平均に対応し、
前記ドメインサイズ指標値を決定するために選択される前記ワックスドメインの数は、前記トナー粒子の前記断面が3つ以上の前記ワックスドメインを含む場合には3つに設定され、前記断面が3つ未満の前記ワックスドメインを含む場合には前記ワックスドメインの数に設定される、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項3】
前記結着樹脂が、モノマー単位として、テレフタル酸及びエチレングリコールを含む、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項4】
前記結着樹脂中にモノマー単位として含まれる前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールの合計の含有量が、前記結着樹脂の全量を基準として、27~73質量%である、請求項3に記載のトナー粒子。
【請求項5】
前記結着樹脂が、ポリエチレンテレフタレートに由来するモノマー単位として、テレフタル酸及びエチレングリコールを含む、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項6】
前記結着樹脂が、二種以上の樹脂を含み、
前記二種以上の樹脂のうちの少なくとも一種が、テレフタル酸及びエチレングリコールをモノマー単位として含む樹脂(I)である、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項7】
前記結着樹脂の溶解度パラメータ(SP)と前記ワックスの溶解度パラメータ(SP)との差(SP-SP)が2.00~3.65である、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項8】
前記ワックスの融点が63~100℃である、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項9】
10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)が90~138℃である、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項10】
前記結着樹脂が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)に対する、前記トナー粒子が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)の比(T/T)が、0.85~1.30である、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項11】
前記ワックスドメインのアスペクト比が1.0~18.0であり、
前記ドメインサイズ指標値が1.0~2.1μmである、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項12】
トナー粒子を含むトナーカートリッジであって、
前記トナー粒子が、
結着樹脂と、
前記トナー粒子の断面において、アスペクト比が1.0~20.0である一又は複数のワックスドメインを形成するワックスと、を含有し、
前記トナー粒子のドメインサイズ指標値が0.2~2.5μmである、トナーカートリッジ。
【請求項13】
前記ワックスドメインの長さと幅との平均を各ワックスドメインのドメインサイズとすると、
前記トナー粒子のドメインサイズ指標値は、前記ワックスドメインの中で最大のドメインサイズを有するものとして選択される最大3つの前記ワックスドメインのドメインサイズの平均に対応し、
前記ドメインサイズ指標値を決定するために選択される前記ワックスドメインの数は、前記トナー粒子の前記断面が3つ以上の前記ワックスドメインを含む場合には3つに設定され、前記断面が3つ未満の前記ワックスドメインを含む場合には前記ワックスドメインの数に設定される、請求項12に記載のトナーカートリッジ。
【請求項14】
トナー粒子を含む画像形成装置であって、
前記トナー粒子が、
結着樹脂と、
前記トナー粒子の断面において、アスペクト比が1.0~20.0である一又は複数のワックスドメインを形成するワックスと、を含有し、
前記トナー粒子のドメインサイズ指標値が0.2~2.5μmである、画像形成装置。
【請求項15】
前記ワックスドメインの長さと幅との平均を各ワックスドメインのドメインサイズとすると、
前記トナー粒子のドメインサイズ指標値は、前記ワックスドメインの中で最大のドメインサイズを有するものとして選択される最大3つの前記ワックスドメインのドメインサイズの平均に対応し、
前記ドメインサイズ指標値を決定するために選択される前記ワックスドメインの数は、前記トナー粒子の前記断面が3つ以上の前記ワックスドメインを含む場合には3つに設定され、前記断面が3つ未満の前記ワックスドメインを含む場合には前記ワックスドメインの数に設定される、請求項14に記載の画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子写真法などの静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、様々な分野で利用されている。電子写真法においては、感光体表面を均一に帯電させた後、この感光体表面に静電荷像を形成し、トナー粒子を含む現像剤で静電潜像を現像することで、トナー像として可視化する。そして、このトナー像が記録媒体表面に転写され、定着することにより、画像が形成される。ここで用いられる現像剤としては、トナー粒子及びキャリアからなる2成分現像剤と、磁性トナー又は非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤とが知られている。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】一例のトナー粒子の断面を示す模式図である。
図2】実施例及び比較例のトナー粒子の断面のTEM画像である。
図3】ドメインサイズ指標値と耐熱保管性(凝集度)との関係を示すグラフである。
図4】結着樹脂及びワックスのSP値差(ΔSP)とドメインサイズ指標値との関係を示すグラフである。
図5】結着樹脂中にモノマー単位として含まれるテレフタル酸及びエチレングリコールの合計の含有量(EG+TPA率)とドメインサイズ指標値との関係を示すグラフである。
図6】ドメインサイズ指標値と弾性変化度(T/T)との関係を示すグラフである。
図7】トナー粒子が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)と最低定着温度(MFT)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本開示について説明する。なお、図面に基づいて説明するにあたり、同一の要素又は同一の機能を有する類似の要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、各要素の寸法比率は図示の比率に限られない。また、本明細書中、「約」で表記した値は、当該値を含むとともに、当該値の近傍を含む範囲を示している。このため、「約」で表記した値は、「約」を削除した値そのものであってもよい。また、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0004】
図1に示されるように、一例のトナー粒子10は、結着樹脂1と、トナー粒子10の断面において、アスペクト比が1.0~20.0である一又は複数のワックスドメインDを形成するワックス2とを含有し、0.2~2.5μmのドメインサイズ指標値(domain size indicator value)を有する。ここで、アスペクト比とは、ワックスにより形成される領域の長さ(長径)d1と幅(短径)d2との比(長さd1/幅d2)を意味する。具体的には、透過電子顕微鏡(TEM)によりトナー粒子の断面を観察し、観察された断面に存在するワックスにより形成された領域の周縁上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを上記領域の長さ(長径)d1とし、上記領域の周縁上の2点を結び、上記長さd1の線分に垂直な線分のうち、最長い線分の長さを上記領域の幅(短径)d2とし、ワックスにより形成された領域のうち、長さ(長径)d1と幅(短径)d2との比(長さd1/幅d2)をアスペクト比とし、該アスペクト比が1.0~20.0である領域をワックスドメインDとする。
【0005】
トナー粒子10のドメインサイズ指標値は、トナー粒子10中の代表的なワックスドメインDのサイズを示す値である。トナー粒子10の断面に形成された一又は複数のワックスドメインDは、それぞれが、その長さ(長径)d1と幅(短径)d2との平均に対応するサイズ(ドメインサイズ)を有しており、各ワックスドメインのサイズ(ドメインサイズ)からドメインサイズ指標値を求めることができる。例えば、ワックスドメインの中で最大のドメインサイズを有するものとして選択されるいくつかのワックスドメインのドメインサイズの平均に対応する値をドメインサイズ指標値としてよい。この場合、ドメインサイズ指標値は、以下の工程(i)~(iii)により決定することができる。
(i)一つ以上のワックスドメインを最大サイズから最小サイズにソートし、ソートされたワックスドメインを得る
(ii)ソートされたワックスドメインの上位からいくつかのワックスドメインを選択する
(iii)選択されたワックスドメインのサイズの平均値を算出し、ドメインサイズ指標値を得る
【0006】
ドメインサイズ指標値を決定するために選択される上記ワックスドメインの数は、例えば最大3つであってよい。この場合、ドメインサイズ指標値を決定するために選択される上記ワックスドメインの数は、トナー粒子の断面が3つ以上のワックスドメインを含む場合には3つに設定されてよく、トナー粒子の断面が3つ未満のワックスドメインを含む場合にはワックスドメインの数に設定されてよい。
【0007】
トナー粒子10が複数集まってトナー粒子からなる粉体(トナー粉体)を構成する場合、例えば、上記方法で20個のトナー粒子のドメインサイズ指標値を測定し、これらの平均値を粉体におけるトナー粒子のドメインサイズ指標値とすることができる。
【0008】
トナー粒子10は、断面にアスペクト比が1.0~20.0であるワックスドメインDを有し、0.2~2.5μmのドメインサイズ指標値を有することから、低温定着性及び耐熱保管性に優れたトナー粒子であり得る。ワックスドメインDのアスペクト比は、1.0~18.0であってもよい。トナー粒子10のドメインサイズ指標値は、低温定着性及び耐熱保管性により優れる観点から、0.3μm以上、0.5μm以上、又は1.0μm以上であってもよく、2.4μm以下、2.3μm以下、2.2μm以下又は2.1μm以下であってもよい。したがって、トナー粒子10は、例えば、断面にアスペクト比が1.0~18.0であるワックスドメインDを有し、1.0~2.1μmのドメインサイズ指標値を有していてもよい。なお、上記上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0009】
結着樹脂1は、モノマー単位としてテレフタル酸及びエチレングリコールを含んでいてよい。換言すれば、結着樹脂1は、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位を含んでいてよい。ここで、テレフタル酸単位とは、[-C(O)-C-C(O)-]で表されるモノマー単位であり、エチレングリコール単位とは、[-OCHCHO-]で表されるモノマー単位である。
【0010】
テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位は、それぞれ、テレフタル酸単体及びエチレングリコール単体に由来するモノマー単位であってよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)に由来するモノマー単位であってもよい。ポリエチレンテレフタレート(PET)に由来するモノマー単位を有する結着樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む製品のリサイクルにより得られる樹脂であってよい。この場合、環境に配慮されたトナー粒子が提供され得る。
【0011】
トナー粒子10を構成する結着樹脂1中のテレフタル酸単位及びエチレングリコール単位の合計の含有量(EG+TPA率)、すなわち、結着樹脂1中にモノマー単位として含まれるテレフタル酸及びエチレングリコールの合計の含有量は、結着樹脂1の全量を基準として、27質量%以上、30質量%以上又は35質量%以上であってよく、73質量%以下、60質量%以下又は55質量%以下であってよく、27~73質量%であってよい。ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む製品のリサイクルにより得られる環境に配慮されたトナー粒子は、上記含有量(EG+TPA率)が高い傾向がある。結着樹脂1中の上記含有量(EG+TPA率)が27~73質量%であると、ドメインサイズ指標値が0.2~2.5μmに含まれるトナー粒子となり易く、低温定着性及び耐熱保管性により優れたトナー粒子となり易い。トナー粒子10を構成する結着樹脂1中のポリエチレンテレフタレートに由来するテレフタル酸単位及びエチレングリコール単位の合計の含有量が上記範囲であってもよい。
【0012】
結着樹脂1は、一種の樹脂で構成されてよく、二種以上の樹脂を含んでいてもよい。結着樹脂1が二種以上の樹脂を含む場合、該二種以上の樹脂のうちの少なくとも一種が、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位の両方を含んでいてよい。すなわち、結着樹脂1は、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位の両方を含む樹脂(以下、「樹脂(I)」ともいう。)を含んでいてよい。
【0013】
樹脂(I)は、例えばポリエステル樹脂である。樹脂(I)は非結晶性ポリエステル樹脂であってよい。樹脂(I)は、モノマー単位として、テレフタル酸以外のカルボン酸を更に含んでいてもよく、エチレングリコール以外のアルコールを更に含んでいてもよい。すなわち、樹脂(I)は、テレフタル酸単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位以外のカルボン酸単位と、を含む樹脂であってよく、テレフタル酸単位と、エチレングリコール単位と、エチレングリコール単位以外のアルコール単位と、を含む樹脂であってもよく、テレフタル酸単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位以外のカルボン酸単位と、エチレングリコール単位以外のアルコール単位と、を含む樹脂であってもよい。
【0014】
テレフタル酸以外のカルボン酸は、多価カルボン酸又はその無水物であってよい。多価カルボン酸は、ジカルボン酸を含んでいてよく、3価以上の多価カルボン酸を含んでいてよく、ジカルボン酸と3価以上の多価カルボン酸とを含んでいてよい。
【0015】
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニルアセト酸、p-フェニレン-2-アセト酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニルアセト酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0016】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、及びピレンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0017】
エチレングリコール以外のアルコールは、多価アルコールであってよい。多価アルコールは、ジオールであってよい。
【0018】
ジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環式ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。
【0019】
エチレングリコール以外のアルコールは、耐熱保管性をより向上させる観点では、芳香族ジオールを含んでいてよい。エチレングリコール以外のアルコールは、耐熱保管性を更に向上させる観点では、該アルコールの全量基準で、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、又は90モル%以上の芳香族ジオールを含んでいてよい。エチレングリコール以外のアルコールは、芳香族ジオールのみからなっていてもよい。
【0020】
樹脂(I)中のテレフタル酸単位の含有量(すなわち、樹脂(I)中にモノマー単位として含まれるテレフタル酸の含有量)は、樹脂(I)中のモノマー単位の全量を基準として、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、又は35モル%以上であってよく、65モル%以下、60モル%以下、又は55モル%以下であってよく、20~65モル%であってよい。
【0021】
樹脂(I)中のエチレングリコール単位の含有量(すなわち、樹脂(I)中にモノマー単位として含まれるエチレングリコールの含有量)は、樹脂(I)中のモノマー単位の全量を基準として、10モル%以上、15モル%以上、又は20モル%以上であってよく、55モル%以下、50モル%以下、又は45モル%以下であってよく、10~55モル%であってよい。
【0022】
樹脂(I)中のエチレングリコール単位の含有量は、樹脂(I)中のテレフタル酸単位の含有量100質量部に対して、17質量部以上、20質量部以上、23質量部以上、又は26質量部以上であってよく、37質量部以下、35質量部以下、33質量部以下、又は30質量部以下であってよく、17~37質量部であってよい。
【0023】
樹脂(I)中のテレフタル酸単位及びエチレングリコール単位の合計の含有量(すなわち、樹脂(I)中にモノマー単位として含まれるテレフタル酸及びエチレングリコールの合計の含有量)は、樹脂(I)の全量を基準として、27質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上であってよく、73質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよく、27~73質量%であってよい。
【0024】
樹脂(I)中のテレフタル酸単位以外のカルボン酸単位の含有量は、樹脂(I)中のモノマー単位の全量を基準として、0モル%以上、0.5モル%以上、又は1モル%以上であってよく、45モル%以下、40モル%以下、又は35モル%以下であってよく、0~45モル%であってよい。
【0025】
樹脂(I)中のエチレングリコール単位以外のアルコール単位の含有量は、樹脂(I)中のモノマー単位の全量を基準として、2モル%以上、5モル%以上、又は10モル%以上であってよく、80モル%以下、75モル%以下、又は70モル%以下であってよく、2~80モル%であってよい。
【0026】
樹脂(I)の溶解度パラメータは、9.00以上、9.20以上、又は9.40以上であってよく、13.00以下、12.80以下、又は12.60以下であってよく、9.00~13.00であってよい。樹脂(I)の溶解度パラメータは、モノマー単位の種類及び含有量により調整可能である。なお、本明細書中に記載された溶解度パラメータは、Fedors法で計算される値である。溶解度パラメータの単位は、(J/cm0.5である。
【0027】
樹脂(I)が10Paの貯蔵弾性率を示す温度は、80℃以上、85℃以上、又は90℃以上であってよく、140℃以下、130℃以下、又は120℃以下であってよく、80~140℃であってよい。樹脂(I)の貯蔵弾性率は、モノマー単位の種類及び含有量により調整可能である。なお、本明細書中に記載された貯蔵弾性率及び該貯蔵弾性率を示す温度は、実施例に記載の条件で測定される値である。
【0028】
樹脂(I)のガラス転移温度は、50℃以上であってよく、80℃以下であってよく、50~80℃であってよい。なお、本明細書中に記載されたガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0029】
結着樹脂1は、一種の樹脂(I)を含んでいてよく、二種以上の樹脂(I)を含んでいてもよい。結着樹脂1は、樹脂(I)に加えて、樹脂(I)以外の結着樹脂(以下、「樹脂(II)」ともいう。)を更に含有してもよい。この場合、トナー粒子は、一種の樹脂(II)を含有してよく、二種以上の樹脂(II)を含有してもよい。
【0030】
樹脂(II)は、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位の少なくとも一方を含まない樹脂であり、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位の両方を含まない樹脂であってもよい。樹脂(II)は、モノマー単位として、アルコール及びカルボン酸を含んでいてよい。すなわち、樹脂(II)は、アルコール単位及びカルボン酸単位を含んでいてよい。樹脂(II)は、アルコール単位及びカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(例えば非結晶性ポリエステル樹脂)であってよい。
【0031】
樹脂(II)にモノマー単位として含まれるアルコール及びカルボン酸の例は、上記樹脂(I)にモノマー単位として含まれるアルコール及びカルボン酸の例と同じである。また、樹脂(II)の溶解度パラメータ、樹脂(II)が10Paの貯蔵弾性率を示す温度、樹脂(II)のガラス転移温度のとり得る範囲は、それぞれ、樹脂(I)の溶解度パラメータとして例示した範囲、樹脂(I)が10Paの貯蔵弾性率を示す温度として例示した範囲、樹脂(I)のガラス転移温度として例示した範囲と同じであってよい。
【0032】
樹脂(I)の含有量は、結着樹脂1の全量を基準として、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってよく、99質量%以下、97質量%以下、又は95質量%以下であってよく、1~99質量%であってよい。
【0033】
樹脂(I)の含有量は、トナー粒子10の全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよく、5~95質量%であってよい。
【0034】
樹脂(II)の含有量は、結着樹脂1の全量を基準として、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってよく、99質量%以下、97質量%以下、又は95質量%以下であってよく、1~99質量%であってよい。
【0035】
樹脂(II)の含有量は、トナー粒子10の全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよく、5~95質量%であってよい。
【0036】
結着樹脂1の含有量(トナー粒子10を構成する全ての結着樹脂の合計の含有量)は、トナー粒子10の全量を基準として、73質量%以上、76質量%以上、又は79質量%以上であってよく、98質量%以下、95質量%以下、又は92質量%以下であってよく、73~98質量%であってよい。
【0037】
ワックス2は、例えば粒子状である。すなわち、トナー粒子10は、ワックス2で形成されたワックス粒子を含んでいてよい。この場合、一つのワックス粒子が一つのドメインを形成してよい。複数存在するワックス粒子は、結着樹脂1中に分散していてよい。
【0038】
ワックス2は、天然ワックスであっても合成ワックスであってもよい。ワックス2としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコンワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、カルナバワックス、蜜蝋、及びメタロセンワックスが挙げられる。ワックス2は、低温定着性と耐熱保管性をより良好に両立させる観点では、エステルワックス又はパラフィンワックスであってよく、ワックスの分散性を更に向上させる観点では、エステルワックスであってよい。
【0039】
エステルワックスは、例えば、炭素数15~30の脂肪酸と炭素数10~30の一価アルコールとのエステルであってよく、炭素数15~30の脂肪酸と炭素数3~30の多価アルコールとのエステルであってもよい。エステルワックスとしては、例えば、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル、及びモンタン酸グリセリドが挙げられる。
【0040】
ワックス2の融点は、63℃以上又は70℃以上であってよく、100℃以下、95℃以下又は90℃以下であってよく、63~100℃であってよい。ワックス2の融点が63℃以上であると、耐熱保管性により優れたトナー粒子となり易く、ワックス2の融点が100℃以下であると、低温定着性により優れたトナー粒子となり易い。ワックス2の融点は、示差走査熱量測定法(DSC)において観測される吸熱ピークのピークトップ温度であり、実施例に記載の方法により測定される。ワックス2の融点が二つ以上存在する場合、最も低温側の融点が63℃以上であると耐熱保管性により優れたトナー粒子となり易く、最も高温側の融点が100℃以下であると、低温定着性により優れたトナー粒子となり易い。
【0041】
ワックス2の含有量は、トナー粒子10の全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、15質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。
【0042】
結着樹脂1の溶解度パラメータ(SP)とワックス2の溶解度パラメータ(SP)との差(SP-SP)は、2.00以上、2.10以上、又は2.20以上であってよく、3.65以下、3.60以下、3.50以下、又は3.40以下であってよく、2.00~3.65であってよい。上記差(SP-SP)が2.00~3.65であると、ドメインサイズ指標値が0.2~2.5μmに含まれるトナー粒子となり易く、低温定着性及び耐熱保管性により優れたトナー粒子となり易い。
【0043】
結着樹脂1の溶解度パラメータ(SP)は、9.00以上、9.20以上、又は.9.40以上であってよく、13.00以下、12.80以下、又は12.60以下であってよく、9.00~13.00であってよい。結着樹脂1が二種以上の樹脂を含む場合、結着樹脂1の溶解度パラメータ(SP)は、結着樹脂1を構成する全ての樹脂の溶解度パラメータの質量加重平均値であり、各樹脂の溶解度パラメータと、結着樹脂1の全質量を基準とする各樹脂の含有量とから算出される。
【0044】
ワックス2の溶解度パラメータ(SP)は、7.00以上、7.80以上、7.90以上、又は8.00以上であってよく、9.50以下、9.40以下、又は9.30以下であってよく、7.00~9.50であってよい。ワックス2が二種以上のワックスを含む場合、ワックス2の溶解度パラメータ(SP)は、ワックス2を構成する全てのワックスの溶解度パラメータの質量加重平均値であり、各ワックスの溶解度パラメータと、ワックス2の全質量を基準とする各ワックスの含有量とから算出される。
【0045】
結着樹脂1が二種以上の樹脂を含む場合、溶解度パラメータが最も大きい樹脂(A)の該溶解度パラメータ(SP)と溶解度パラメータが最も小さい樹脂(B)の該溶解度パラメータ(SP)との差(SP-SP)は、溶解度パラメータが最も小さい樹脂(B)の該溶解度パラメータ(SP)とワックス2の溶解度パラメータ(SP)との差(SP-SP)よりも小さくてよい。
【0046】
図示しないが、トナー粒子10は、着色剤を更に含有してよい。着色剤は、例えば、ブラック着色剤、シアン着色剤、マゼンタ着色剤及びイエロー着色剤から選ばれる少なくとも一種の着色剤を含むことができる。着色剤は、色相、彩度、明度、耐候性、トナー内の分散性などを考慮して、一種を単独で又は二種以上を混合して用いられる。
【0047】
ブラック着色剤は、カーボンブラック又はアニリンブラックであってよい。イエロー着色剤は、縮合窒素化合物、イソインドリノン化合物、アントラキン化合物、アゾ金属錯体又はアリルイミド化合物であってよい。イエロー着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180などが挙げられる。
【0048】
マゼンタ着色剤は、縮合窒素化合物、アントラキン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物であってよい。マゼンタ着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254などが挙げられる。
【0049】
シアン着色剤は、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、又はアントラキン化合物などであってよい。シアン着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
【0050】
着色剤の含有量は、トナー粒子10の全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよく、1~10質量%であってよい。
【0051】
トナー粒子10は、必要に応じて、荷電制御剤を更に含有してもよい。荷電制御剤は、ネガ系荷電制御剤であってもポジ系荷電制御剤であってもよい。
【0052】
トナー粒子10は、必要に応じて、無機微粒子を更に含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、及び酸化アルミニウム微粒子が挙げられる。
【0053】
トナー粒子10は、ドメインサイズ指標値が0.2~2.5μmであることから、結着樹脂1の貯蔵弾性率とトナー粒子10の貯蔵弾性率に差が生じ難い。例えば、結着樹脂1が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)に対する、トナー粒子10が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)の比(T/T、弾性変化度)は、0.85以上、0.86以上、又は0.87以上であることができ、1.30以下、1.25以下、1.23以下、又は1.21以下であることができ、0.85~1.30であることができる。上記弾性変化度(T/T)が0.85~1.30であれば、トナー粒子10における上記温度(T)を結着樹脂1の変更により容易に調整可能である。なお、結着樹脂1が二種以上の樹脂を含む場合、結着樹脂1が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)は、結着樹脂1を構成する全ての樹脂について求めた上記温度(T)の質量加重平均値であり、各樹脂の温度(T)と、結着樹脂1の全質量を基準とする各樹脂の含有量とから算出される。
【0054】
トナー粒子10が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)は、90℃以上、92℃以上、又は94℃以上であってよく、138℃以下、130℃以下、128℃以下、又は126℃以下であってよく、90~138℃であってよい。上記温度(T)が90℃以上であると、耐熱保管性により優れたトナー粒子となり易く、上記温度(T)が138℃以下であると、低温定着性により優れたトナー粒子となり易い。
【0055】
トナー粒子10の粒子径は、3μm以上又は5μm以上であってよく、10μm以下又は8μm以下であってよく、3~10μmであってよい。トナー粒子10が複数集まってトナー粒子10からなる粉体(トナー粉体)を構成する場合、該粉体におけるトナー粒子10の平均粒子径は、3μm以上又は5μm以上であってよく、10μm以下又は8μm以下であってよく、3~10μmであってよい。トナー粒子10の平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定される体積中位粒子径D50を意味する。
【0056】
上述したトナー粒子10は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、カルボン酸、及びエチレングリコール以外のアルコールを反応させて樹脂(I)を得る工程(工程Aともいう)と、樹脂(I)を含む結着樹脂1と、ワックス2と、を含む原料からトナー粒子を形成する工程(工程Bともいう)と、を備える方法により製造することができる。
【0057】
工程Aにおいて樹脂(I)を得る方法は、ポリエチレンテレフタレートを含む重縮合成分と、エステル化触媒などとを一括で反応容器に仕込み、公知のエステル化反応によって、樹脂(I)を得る方法であってもよい。重縮合成分は、カルボン酸を更に含んでいてもよく、アルコールを更に含んでいてもよい。
【0058】
重縮合成分が、カルボン酸とエチレングリコール以外のアルコールとを含む場合、エステル化反応において、ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールとアルコールとの間でエステル交換反応が起こると共に、カルボン酸の重縮合も起こる。これにより、樹脂(I)が生成する。この場合、工程Aにおける方法は、先に、ポリエチレンテレフタレート及びアルコールとエステル化触媒などとを反応容器に仕込み、十分にエステル交換反応を進行させた後、カルボン酸を反応容器に仕込み、エステル化反応を進行させて、樹脂(I)を得る方法であってもよい。
【0059】
上記のようなエステル交換反応を利用した方法では、ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールの一部のみが、樹脂(I)中にモノマー単位として残存することになる。樹脂(I)にモノマー単位として含まれるエチレングリコールの含有量(EG残存率)は、ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールの含有量を基準として、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0060】
ポリエチレンテレフタレートの物性は特に制限されない。ポリエチレンテレフタレートは、リサイクルされたポリエチレンテレフタレートであってもよい。この場合、環境に配慮されたトナー粒子が提供され得る。
【0061】
ポリエチレンテレフタレートの仕込み量は、低温定着性と耐熱保管性をより良好に両立する観点では、重縮合成分の全量を基準として、20モル%以上、30モル%以上、又は35モル%以上であってよく、85モル%以下、70モル%以下、又は60モル%以下であってよい。ここで、ポリエチレンテレフタレートの仕込み量は、ポリエチレンテレフタレートの構成単位一つ(エチレングリコール1分子とテレフタル酸1分子とがエステル化して構成する単位)に相当する構造の分子量(=192=62+166-(18×2))をポリエチレンテレフタレートのモル質量として換算した値である。すなわち、ポリエチレンテレフタレートの仕込み量は、ポリエチレンテレフタレートの物質量が192g/molであるとして換算した値である。
【0062】
カルボン酸は、テレフタル酸以外のカルボン酸を含んでいてよい。テレフタル酸以外のカルボン酸の詳細は、上述したとおりである。テレフタル酸以外のカルボン酸の仕込み量は、重縮合成分の全量を基準として、0モル%以上、0.5モル%以上、又は1モル%以上であってよく、45モル%以下、40モル%以下、又は35モル%以下であってよい。
【0063】
カルボン酸は、テレフタル酸を含んでいてもよい。テレフタル酸の仕込み量は、重縮合成分の全量を基準として、0.3モル%以上、0.6モル%以上、又は1.0モル%以上であってよく、10モル%以下、7モル%以下、又は5モル%以下であってよい。
【0064】
エチレングリコール以外のアルコールの詳細は、上述したとおりである。エチレングリコール以外のアルコールの仕込み量は、重縮合成分の全量を基準として、2モル%以上、5モル%以上、又は10モル%以上であってよく、80モル%以下、75モル%以下、又は70モル%以下であってよい。
【0065】
エステル化触媒としては、例えば、アンチモン系、スズ系、チタン系、アルミニウム系の触媒を挙げることができる。エステル化触媒は、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシドなどの有機金属や、テトラブチルチタネートなどの金属アルコキシドなどであってもよい。エステル化触媒の仕込み量は、例えば、重縮合成分の全量100質量部に対して、0.05質量部以上又は0.2質量部以上であってよく、1質量部以下又は0.7質量部以下であってよい。
【0066】
工程Bでは、工程Aで得られた樹脂(I)と、ワックス2と、必要に応じて用いられるその他の成分(樹脂(II)、着色剤等)とを、例えばミキサーを用いて予備混合した後、例えば二軸混練機を用いて混練する。混練された混合物を微粉砕した後、分級して所望の粒子径を有するトナー粒子が得られる。必要に応じて、トナー粒子を例えば無機微粒子と更に混合することにより、表面に無機微粒子が付着したトナー粒子を得ることもできる。
【0067】
一例のトナーカートリッジは、上述したトナー粒子10を含む。カートリッジは、複数のトナー粒子10からなる粉体(トナー粉体)を含んでいてよい。トナー粒子10は、トナーカートリッジ中の容器内に収容されていてよい。すなわち、トナーカートリッジは、トナー粒子10を収容する容器を備えていてよい。
【0068】
一例の画像形成装置は、上述したトナー粒子10を含む。画像形成装置は、複数のトナー粒子10からなる粉体(トナー粉体)を含んでいてよい。トナー粒子10は、トナーカートリッジに収容されていてよい。すなわち、画像形成装置は、上述したトナー粒子10を含むトナーカートリッジを備えていてよい。トナー粒子10は、現像剤として、現像装置に収容されていてもよい。すなわち、画像形成装置は、上述したトナー粒子10を含む現像装置を備えていてよい。現像剤は、トナー粒子及びキャリアからなる2成分現像剤であってもよい。
【実施例0069】
以下、実施例によって本開示を更に詳細に説明するが、本開示は下記実施例に限定されない。まず、実施例で測定した各特性の測定方法について説明する。
【0070】
(結着樹脂のガラス転移温度)
結着樹脂0.01~0.02gをアルミパンに計量し、変調示差走査熱量計Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、室温から昇温速度20℃/分で140℃まで昇温し、そのまま1分間静止させた。その後、降温速度20℃/分で0℃まで冷却し、1分間静止させ、再び昇温速度10℃/分で140℃まで昇温し、熱流量を測定した。吸熱ピーク温度以下の温度におけるベースラインの延長線と、吸熱ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度を結着樹脂のガラス転移温度とした。
【0071】
(溶解度パラメータ:SP値)
結着樹脂のSP値及びワックスのSP値は、Fedors法で計算される値である。以下の実施例では、結着樹脂として複数種の樹脂を使用したことから、使用した複数種類の樹脂の各々のSP値の樹脂配合における質量加重平均値を結着樹脂のSP値(SP)とした。なお、ワックスのSP値(SP)はワックスそのもののSP値であり、ΔSPは、結着樹脂のSP値(SP)とワックスのSP値(SP)の差である。
【0072】
(10Paの貯蔵弾性率を示す温度)
結着樹脂が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)及びトナー粒子が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)は、結着樹脂及びトナー粒子の貯蔵弾性率G’(t)を測定することにより求めた。具体的には、測定装置として、回転平板型レオメーター「ARES」(TA INSTRUMEN TS社製)を用いた。測定試料として、錠剤成型器により、結着樹脂又はトナー粒子0.25gを20MPaで1分間、加圧成型した試料を用いた。そして、周波数10Hz、歪量制御モード(歪量0.01%-3%)、昇温速度2℃/分、の条件で20℃から180℃まで1℃間隔でG’(t)を測定し、G’(t)が10Paに到達したときの温度を求めた。以下の実施例では、結着樹脂として複数種の樹脂を使用したことから、使用した複数種の樹脂の各々の実測値の樹脂配合における加重平均値を、結着樹脂が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)とした。トナー粒子の10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)は、実測値そのものとした。
【0073】
(ワックスの融点)
ワックス0.01~0.02gをアルミパンに計量し、変調示差走査熱量計Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、室温から昇温速度20℃/分で140℃まで昇温し、そのまま1分間静止させた。その後、降温速度20℃/分で0℃まで冷却し、1分間静止させ、再び昇温速度10℃/分で140℃まで昇温し、熱流量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側に観測される吸熱ピークの頂点に対応する温度(ピークトップ温度)をワックスの融点とした。
【0074】
(トナー粒子の体積中位粒子径(D50))
トナー粒子の体積中位粒子径(D50)は、細孔電気抵抗法により測定した。具体的には、コールターカウンター(ベックマンコールター社製)を測定装置として使用し、ISOTON II(ベックマンコールター社製)を電解液として使用し、アパチャー径100μmのアパチャーチューブを使用して、測定粒子数:30000の条件で測定した。測定されたトナー粒子の粒度分布を基にして、分割された粒度範囲に含まれる粒子が占める体積を小粒子径側から累積していき、累積50%となる粒子径を体積中位粒子径D50とした。
【0075】
(ドメインサイズ指標値)
トナー粒子のドメインサイズ指標値は、TEMによりトナー粒子の断面を観察し、観察された断面に存在するワックスドメイン(ワックスで形成された領域のうち、アスペクト比が1.0~20.0である領域)のドメインサイズを測定することにより算出した。具体的には、まず、RuO 染色凍結超薄切片法によりトナー粒子の断面を露出させた。次いで、露出した断面を、TEM JEM-1400 Plus(日本電子社製)を用いて観察した。この際、TEMの加速電圧は100kVとした。観察された断面に存在するワックスドメインの長さ(長径)及び幅(短径)から各ワックスドメインのサイズを求め、最もサイズが大きい方から順に上位3つのワックスドメインを選択し、該3つのワックスドメインのドメインサイズの平均値を求め、得られた平均値を1個のトナー粒子のドメインサイズ指標値とした。上記操作を20個のトナー粒子について行い、20個のトナー粒子のドメインサイズ指標値の平均値を求め、得られた平均値を粉体(トナー粉体)におけるトナー粒子のドメインサイズ指標値とした。
【0076】
続いて、実施例で用いた結着樹脂、ワックス及びトナー粒子について説明する。
【0077】
(結着樹脂:樹脂1~5の製造)
表1に示すアルコール、カルボン酸及びポリエチレンテレフタレート(PET)と、エステル化触媒としてジブチルスズオキサイドとを、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、3時間常圧で反応を行った。エステル化触媒の配合量はアルコール、カルボン酸及びPETの合計量に対して1質量%とした。その後、8~100kPaの減圧下にて、エチレングリコールを所望の量留去させることでエステル交換反応を行った。続いて、210℃まで冷却を行い、表1に示すカルボン酸を添加し、235℃まで昇温し、3時間常圧で反応を行った。その後、8kPaにて所望の酸価まで反応を行い、非結晶性ポリエステル樹脂である樹脂1~5を得た。
【0078】
【表1】
【0079】
表1中、「BPA-PO」は、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(プロピレンオキサイド平均付加モル数=2)を表し、「BPA-EO」は、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均付加モル数=2)を表し、「DPG」は、ジプロピレングリコールを表し、「DSA」は、ドデセニルコハク酸無水物を表す。
【0080】
表1中、「EG+TPA率(質量%)」は、樹脂についてのプロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR法)により、以下の条件にて測定した。
測定装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置JNM-400A
試料温度:室温
測定溶媒:重クロロホルム
試料回転数:約15Hz
化学シフト基準:1H[TMS,0ppm]
具体的には、まず、得られたH-NMRチャートより、エチレングリコール及びテレフタル酸の構成要素に帰属されるピークの中から、他のアルコール及び他のカルボン酸の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、それぞれのピークの積分値を算出した。算出された積分値よりエチレングリコール及びテレフタル酸のモル比を算出し、さらに質量比に換算した。
【0081】
(結着樹脂:樹脂6~9の製造)
表2に示すアルコール及びカルボン酸を使用し、PETを使用しなかったこと、及び、エステル化触媒(ジブチルスズオキサイド)の配合量をアルコール及びカルボン酸の合計量に対して1質量%としたこと以外は、樹脂1~5と同様にして、樹脂6~9を得た。なお、表2中の「EG+TPA率(質量%)」は表1と同義である。
【0082】
【表2】
【0083】
(ワックス:ワックス1~4の準備)
表3に示すワックスを準備した。ワックス1は日油社製の商品名WE-8であり、ワックス2は日油社製の商品名WE-14であり、ワックス3及び4は市販のワックスである。
【0084】
【表3】
【0085】
(トナー粒子の製造)
表4及び表5に示す結着樹脂(樹脂1~9のいずれかの組合せ)計100質量部と、着色剤であるカーボンブラック「MA-100」(三菱化学(株)製)6質量部と、荷電制御剤「T-77」(保土谷化学製)1質量部と、表4及び表5に示すワックス(ワックス1~6のいずれか)6質量部とを、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。ついで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS-I]で分級し、表4及び表5に示す組成の粉体を得た。次いで、得られた粉体100質量部に、外添剤「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、平均粒子径16nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、実施例1~8及び比較例1~4のトナー粒子で構成される粉体(トナー粉体)を得た。得られたトナー粉体におけるトナー粒子の体積中位粒子径(D50)は6.8μmであった。
【0086】
参考までに、得られたトナー粒子のドメインサイズ指標値の測定に使用した断面画像(TEM画像)を図2に示す。図2の(a)が、実施例1のトナー粒子の断面画像であり、図2の(b)が、比較例2の断面画像であり、図2の(c)が、比較例3のトナー粒子の断面画像である。図2中のDは、ワックスドメインを示す。図2より、実施例のトナー粒子の断面には、適度な大きさのワックスドメインが略均一に分散していることが確認できる。なお、実施例のトナー粒子におけるワックスドメインのアスペクト比は、いずれも1.0~18.0の範囲内であった。
【0087】
(評価)
上記で得られたトナー粒子について、以下の評価を実施した。結果を表4及び表5に示す。また、ドメインサイズ指標値と各評価結果との関係を示すグラフ、及びドメインサイズ指標値とトナー粒子の各パラメータとの関係を示すグラフを図3図6に示す。また、トナー粒子が10Paの貯蔵弾性率を示す温度(T)と最低定着温度(MFT)との関係を示すグラフを図7に示す。なお、図3~7中の実線は、最小二乗法による近似式に基づき作成したものである。
【0088】
<最低定着温度(MFT)>
ベルトタイプ定着器(三星電子社製、カラーレーザ660モデル(商品名)の定着器)を使用して、100%ソリッドパターンのテスト用未定着画像を、60g紙(Boise社製、X-9(商品名))のテスト用紙に、定着速度160mm/秒、定着時間0.08秒の条件で定着させた。テスト用未定着画像の定着は、110℃から180℃の範囲における1℃間隔の各温度で行った。定着された画像の初期の光学密度を測定した。その後、画像部位に3M 810テープを付け、500gの錘を5回往復動させた後、テープを除去した。その後、テープ除去後の光学密度を測定した。以下の式で求められる定着性(%)が90%以上となる最も低い温度を最低定着温度(MFT)とした。
定着性(%)=(初期の光学密度/テープ除去後の光学密度)×100
MFTが160℃以下であれば低温定着性が優れているといえる。
【0089】
<耐熱保管性>
トナー粒子を温度50℃/湿度80RH%の環境下で100時間放置したときの凝集度の変化を測定した。凝集度は、POWDER TESTER(ホソカワミクロン社製、篩53,45,38μm)を使用した。上から53μm、45μm、38μmの順に篩を重ねてセットし、一番上の篩の上にトナー粒子2gを乗せ、篩を振動したときのそれぞれの篩に残ったトナー粒子の質量を測定し(振幅1mm、振動時間40秒間)、下記式に従って凝集度を算出した。
凝集度=(T/2+C/2×(3/5)+B/2×(1/5))/100
式中、T:上段の篩に残ったトナー粒子の質量、C:中断の篩に残ったトナー粒子の質量、B:下段の篩に残ったトナー粒子の質量を表す。
100時間放置した後の凝集度が30以下であれば、耐熱保管性が優れているといえる。
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
表4及び表5中、「ドメインサイズ指標値(μm)」は、粉体(トナー粉体)におけるトナー粒子のドメインサイズ指標値である。各実施例及び各比較例の粉体(トナー粉体)は、表4及び表5に記載された対応するドメインサイズ指標値に等しいドメインサイズ指標値を有するトナー粒子を少なくとも1個含んでいる。
【0093】
表4及び表5中、「EG+TPA率(質量%)」は、結着樹脂中のテレフタル酸単位及びエチレングリコール単位の合計の含有量であり、結着樹脂として用いた各樹脂について求めたEG+TPA率の質量加重平均値である。
【0094】
上記で示されているように、実施例のトナー粒子は、低温定着性及び耐熱保管性に優れたトナー粒子であり得る。
【0095】
以上、本開示に係るトナー粒子、トナーカートリッジ、画像形成装置等の様々な例について具体的に説明したが、特許請求の範囲の精神の範囲を逸脱しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは当業者にとって明らかである。すなわち、特許請求の範囲に記載した精神を逸脱しない範囲内において全ての変更が含まれることが意図される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7