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特開2024-27961作業車両、及び、作業車両の速度制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027961
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】作業車両、及び、作業車両の速度制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240222BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20240222BHJP
   B60K 17/10 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E02F9/22 A
F15B11/08 C
B60K17/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131193
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【弁理士】
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【弁理士】
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 昂平
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
【テーマコード(参考)】
2D003
3D042
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003AB06
2D003AC01
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
3D042AA05
3D042AB07
3D042AB10
3D042BA02
3D042BA05
3D042BA08
3D042BA10
3D042BC03
3D042BC07
3D042BC08
3D042BC09
3D042BC12
3D042BC17
3D042BD03
3D042BD05
3D042BD08
3D042BD09
3H089AA60
3H089AA86
3H089BB15
3H089CC08
3H089CC12
3H089DA03
3H089DA13
3H089EE22
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】走行装置の負荷が増大しても、所望の車速に制御できるユーザの使用感が向上される作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両の速度制御方法は、車両本体に設けられる第1走行装置を駆動する第1油圧モータに第1油圧ポンプから作動油を送ることを含む。当該方法は、第1油圧モータの第1差圧を検出することを含む。当該方法は、第1差圧の絶対値に応じて、第1油圧ポンプの第1ポンプパイロットポートに印加される第1ポンプパイロット圧、及び、第1油圧ポンプを駆動するためのエンジンの回転速度とのうちの少なくとも1つを、車速が所定の目標速度を保つように制御することを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に設けられる第1走行装置を駆動する第1油圧モータに第1油圧ポンプから作動油を送り、
前記第1油圧モータの第1差圧を検出し、
前記第1差圧の絶対値に応じて、前記第1油圧ポンプの第1ポンプパイロットポートに印加される第1ポンプパイロット圧、及び、前記第1油圧ポンプを駆動するためのエンジンの回転速度とのうちの少なくとも1つを、車速が所定の目標速度を保つように制御する、
作業車両の速度制御方法。
【請求項2】
前記第1ポンプパイロット圧を制御することは、
前記第1ポンプパイロットポートに向けてパイロット油を吐出するためのパイロットポンプと、ユーザによる進行方向の指示が入力される走行指示入力装置への入力に応じて制御される操作弁とを接続する一次パイロット油路の油圧である一次パイロット圧を制御することと、
前記操作弁と、前記第1ポンプパイロットポートとを接続する二次パイロット油路の油圧である二次パイロット圧を制御することと、
前記走行指示入力装置の操作量を検出して、検出された操作量を前記第1差圧の絶対値に基づいてみなし操作量に変換し、前記みなし操作量に基づいて前記第1ポンプパイロット圧を制御することと、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、前記第1ポンプパイロット圧と、前記エンジンの回転速度とのうちの少なくとも1つを上昇させるように制御する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両本体の前記第1走行装置と反対側に設けられる第2走行装置を駆動する第2油圧モータに第2油圧ポンプから作動油を送り、
前記第2油圧モータの第2差圧を検出し、
前記第1差圧の絶対値が前記第2差圧の絶対値よりも大きいとき、前記第1差圧の絶対値に応じて、前記第2油圧ポンプの第2ポンプパイロットポートに印加される第2ポンプパイロット圧、及び、前記第2油圧ポンプを駆動するためのエンジンの回転速度とのうちの少なくとも1つを、車速が所定の目標速度を保つように制御する、
請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第2ポンプパイロット圧を制御することは、
前記第2ポンプパイロットポートに向けてパイロット油を吐出するためのパイロットポンプと、ユーザによる進行方向の指示が入力される走行指示入力装置への入力に応じて制御される操作弁とを接続する一次パイロット油路の油圧である一次パイロット圧を制御することと、
前記操作弁と、前記第2ポンプパイロットポートとを接続する追加二次パイロット油路の油圧である追加二次パイロット圧を制御することと、
前記走行指示入力装置の操作量を検出して、検出された操作量を前記第1差圧の絶対値に基づいてみなし操作量に変換し、前記みなし操作量に基づいて前記第2ポンプパイロット圧を制御することと、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、前記第2ポンプパイロット圧と、前記エンジンの回転速度とのうちの少なくとも1つを上昇させるように制御する、
請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
車両本体と、
前記車両本体に設けられる第1走行装置と、
第1モータパイロットポートを有し、前記第1モータパイロットポートに印加される第1モータパイロット圧に応じて前記第1走行装置を駆動するように構成される第1油圧モータと、
第1ポンプパイロットポートを有し、前記第1ポンプパイロットポートに印加される第1ポンプパイロット圧に応じて前記第1油圧モータに作動油を供給するように構成される第1油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプと前記第1油圧モータとを接続し、前記作動油が送られる第1油路及び第2油路と、
前記第1油路の第1油圧を検出するように構成される第1油圧センサと、
前記第2油路の第2油圧を検出するように構成される第2油圧センサと、
前記第1ポンプパイロットポートにパイロット油を送るように構成されるパイロットポンプと、
前記第1油圧ポンプ、及び、前記パイロットポンプを駆動するように構成されるエンジンと、
前記第1油圧と前記第2油圧との差である第1差圧の絶対値を求め、前記第1差圧の絶対値に応じて、前記第1ポンプパイロット圧、及び、前記エンジンの回転速度のうちの少なくとも1つを、車速が所定の目標速度を保つように制御するように構成されるコントローラと、
を備える、作業車両。
【請求項8】
前記第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、前記エンジンの回転速度を上昇させるように制御する、請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
ユーザによる進行方向の指示が入力される走行指示入力装置と、
前記走行指示入力装置によって前記第1ポンプパイロット圧を制御するように構成される操作弁と、
前記パイロットポンプと前記操作弁とを接続する一次パイロット油路と、
前記一次パイロット油路上に設けられ、前記一次パイロット油路内の前記パイロット油の油圧であって前記第1ポンプパイロット圧の上限である一次パイロット圧を制御する一次圧制御弁と、
をさらに含み、
前記コントローラは、前記一次圧制御弁を制御することによって、前記一次パイロット圧を制御して前記車速が前記目標速度を保つように制御するように構成される、
請求項7に記載の作業車両。
【請求項10】
前記第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、前記一次パイロット圧を上昇させるように制御する、請求項9に記載の作業車両。
【請求項11】
ユーザによる進行方向の指示が入力される走行指示入力装置と、
前記走行指示入力装置によって前記第1ポンプパイロット圧を制御するように構成される操作弁と、
前記操作弁と、前記第1ポンプパイロットポートとを接続する二次パイロット油路と、
前記二次パイロット油路内の前記パイロット油の油圧である二次パイロット圧を制御する二次圧制御弁と、
をさらに含み、
前記コントローラは、前記二次圧制御弁を制御することによって前記二次パイロット圧に対応する前記第1ポンプパイロット圧を制御して、前記車速が前記目標速度を保つように制御するように構成される、
請求項7に記載の作業車両。
【請求項12】
前記第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、前記二次パイロット圧を上昇させるように制御する、請求項11に記載の作業車両。
【請求項13】
ユーザによる進行方向の指示が入力される走行指示入力装置と、
前記走行指示入力装置の操作量を検出するように構成される操作検出センサと、
前記パイロットポンプと、前記第1ポンプパイロットポートとを接続するパイロット油供給回路と、
前記パイロット油供給回路上に設けられ、前記パイロット油の油圧を制御する少なくとも1つのパイロット圧制御弁と、
をさらに含み、
前記コントローラは、前記操作検出センサによって検出された前記操作量を前記第1差圧の絶対値に基づいてみなし操作量に変換し、前記みなし操作量に応じて前記少なくとも1つのパイロット圧制御弁を制御することによって前記第1ポンプパイロット圧を制御して、前記車速が前記目標速度を保つように制御する、
請求項7に記載の作業車両。
【請求項14】
前記第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、前記みなし操作量を上昇させるように制御する、請求項13に記載の作業車両。
【請求項15】
前記車両本体の前記第1走行装置の反対側に設けられる第2走行装置と、
第2モータパイロットポートを有し、前記第2モータパイロットポートに印加される第2モータパイロット圧に応じて前記第2走行装置を駆動するように構成される第2油圧モータと、
第2ポンプパイロットポートを有し、前記第2ポンプパイロットポートに印加される第2ポンプパイロット圧に応じて前記2油圧モータに作動油を供給するように構成される第2油圧ポンプと、
前記第2油圧ポンプと前記第2油圧モータとを接続し、前記作動油が送られる第3油路及び第4油路と、
前記第3油路の第3油圧を検出するように構成される第3油圧センサと、
前記第4油路の第4油圧を検出するように構成される第4油圧センサと、
をさらに備え、
前記エンジンは、前記第2油圧ポンプを駆動するように構成され、
前記パイロットポンプは、第2ポンプパイロットポートに前記パイロット油を送るように構成され、
前記コントローラは、前記第3油圧と前記第4油圧との差である第2差圧の絶対値を求め、前記第1差圧の絶対値が前記第2差圧の絶対値よりも大きいとき、前記第1差圧の絶対値に応じて、前記第2ポンプパイロット圧と、前記エンジンの回転速度とのうちの少なくとも1つを、車速が所定の目標速度を保つように制御するように構成される、請求項7から14のいずれかに記載の作業車両。
【請求項16】
前記第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、前記第2ポンプパイロット圧を上昇させるように制御する、請求項15に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両、及び、作業車両の速度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、作業車両の走行速度を制限する際に、パイロットポンプと走行レバーによって操作される操作弁との間の油路の一次パイロット圧を制限する技術を開示している。特許文献2は、作業車両の走行速度を制限する際に、その先の走行レバーによって操作される操作弁と走行用の油圧ポンプとの間の油路の二次パイロット圧を制限する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-053413号公報
【特許文献2】特許第6695791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2のいずれの方法でも、別途の設定部材によって設定されたパイロット圧によって走行用の油圧ポンプの斜板角を制御する。しかし、走行装置の負荷が増大すると、その負荷によって当該斜板角が押し戻され、アクセルレバー、インドアダイヤル、または、操作レバーをフルストロークに操作したとしても設定部材にて設定された速度に到達しない。これは、ユーザの使用感(user experience)を低下させる問題を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係る作業車両の速度制御方法は、車両本体に設けられる第1走行装置を駆動する第1油圧モータに第1油圧ポンプから作動油を送ることを含む。当該方法は、第1油圧モータの第1差圧を検出することを含む。当該方法は、第1差圧の絶対値に応じて、第1油圧ポンプの第1ポンプパイロットポートに印加される第1ポンプパイロット圧、及び、第1油圧ポンプを駆動するためのエンジンの回転速度とのうちの少なくとも1つを、車速が所定の目標速度を保つように制御することを含む。
【0006】
本開示の第2態様に係る作業車両は、車両本体と、第1走行装置と、第1油圧モータと、第1油路及び第2油路と、第1油圧センサと、第2油圧センサと、パイロットポンプと、エンジンと、コントローラと、を備える。第1走行装置は、車両本体に設けられる。第1油圧モータは、第1走行装置を駆動するように構成される。第1油圧ポンプは、第1ポンプパイロットポートを有し、第1ポンプパイロットポートに印加される第1ポンプパイロット圧に応じて第1油圧モータに作動油を供給するように構成される。第1油路及び第2油路は、第1油圧ポンプと第1油圧モータとを接続し、第1油路及び第2油路とを介して作動油が送られる。第1油圧センサは、第1油路の第1油圧を検出するように構成される。第2油圧センサは、第2油路の第2油圧を検出するように構成される。パイロットポンプは、第1ポンプパイロットポートにパイロット油を送るように構成される。エンジンは、第1油圧ポンプ、及び、パイロットポンプを駆動するように構成される。コントローラは、第1油圧と第2油圧との差である第1差圧の絶対値を求め、第1差圧の絶対値に応じて、第1ポンプパイロット圧、及び、エンジンの回転速度のうちの少なくとも1つを、車速が所定の目標速度を保つように制御するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される技術によれば、油圧モータと油圧ポンプとの間の油路の油圧の変動が走行用の油圧モータの実回転速度の目標回転速度からの乖離よりも早く生じることを利用して、第1差圧の絶対値に応じて、第1ポンプパイロット圧、または、エンジンの回転速度を決定する。このため、走行装置の負荷が増大しても、所望の車速に素早く制御できるユーザの使用感が向上される作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、作業車両の側面図である。
図2図2は、作業車両の上面図である。
図3図3は、第1実施形態における作業車両の走行系の油圧回路図である。
図4図4は、エンジン回転速度と一次パイロット圧と、設定線との関係を示す図である。
図5図5は、操作レバーの操作位置と、二次パイロット圧との関係を示す図である。
図6図6は、作業車両のブロック図である。
図7図7は、第1実施形態、第2実施形態における第3参照情報の一例を示す。
図8図8は、第1実施形態に係る作業車両の動作を示すフローチャートである。
図9図9は、第2実施形態における作業車両の走行系の油圧回路図である。
図10図10は、第2実施形態に係る作業車両の動作を示すフローチャートである。
図11図11は、第2実施形態の変形例における作業車両の走行系の油圧回路図である。
図12図12は、第3実施形態における第3参照情報の一例を示す。
図13図13は、第3実施形態における第4参照情報の一例を示す。
図14A図14Aは、第3実施形態に係る作業車両の動作を示すフローチャートである。
図14B図14Bは、第3実施形態に係る作業車両の動作を示すフローチャートである。
図15図15は、第4実施形態における作業車両の走行系の油圧回路図である。
図16図16は、第4実施形態における第3参照情報の一例を示す。
図17図17は、第4実施形態に係る作業車両の動作を示すフローチャートである。
【0009】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、図中において同じ符号は、対応するまたは実質的に同一の構成を示している。
<第1実施形態>
<全体構成>
【0010】
図1及び図2を参照すると、作業車両1、例えばコンパクトトラックローダは、車両本体2と、一対の走行装置3と、作業装置4とを備えている。車両本体2は、走行装置3、及び、作業装置4を支持する。図示の実施形態では、走行装置3は、車両本体2に設けられた履帯式の走行装置である。このため、一対の走行装置3のそれぞれは、油圧モータ装置30によって駆動される駆動輪31、従動輪32、33、及び、転輪34を含む。ただし、一対の走行装置3のそれぞれは、履帯式走行装置に限定されない。一対の走行装置3のそれぞれは、例えば、前輪/後輪走行装置であってもよいし、前輪と後部クローラとを有する走行装置であってもよい。作業装置4は、作業装置4の末端(distal end)に器具(work equipment)(バケット)41を含む。作業装置4の基端(proximal end)は、車両本体2の後部に取り付けられている。作業装置4は、バケットピボット軸43を介してバケット41を回転可能に支持するための一対のアーム組立体(arm assembly)42を含む。一対のアーム組立体42のそれぞれは、リンク44とアーム45を含む。
【0011】
リンク44は、支点軸(fulcrum shaft)46の周りで車両本体2に対して回転可能である。アーム45は、ジョイント軸(joint shaft)47の周りでリンク44に対して回転可能である。作業装置4は、複数のアームシリンダ48と少なくとも1つの器具シリンダ(equipment cylinder)49とをさらに含む。複数のアームシリンダ48のそれぞれは、車両本体2およびアーム45に回転可能に接続され、リンク44およびアーム45等を移動させて、バケット41を昇降させる。少なくとも1つの器具シリンダ49は、バケット41を傾けるように構成される。車両本体2は、キャビン5を含む。キャビン5は、開閉自在な前窓51を備え、キャブフレーム53によってその外形が定義される。前窓51は、省略されてもよい。作業車両1は、キャビン5内に運転席54および操作レバー55を含む。キャブフレーム53は、図2に示されるように、車両本体2上の回動軸(rotational shaft)RSL及びRSR周りに回転可能である。図1及び図2では、回動軸RSL及びRSRによって規定される共通の旋回軸(pivot)AXCを図示している。つまり、キャブフレーム53は、車両本体2に対して旋回軸AXC周りに回動可能に取り付けられている。
【0012】
なお、本願に係る実施形態において、前後方向DFB(前方向D/後方向D)とは、キャビン5の運転席54に着座したオペレータから見て前後方向(前方向/後方向)を意味する。左方向D、右方向D、幅方向Dとは、当該オペレータから見てそれぞれ、左方向、右方向、左右方向を意味する。上方向D、下方向D、高さ方向Dとは、当該オペレータから見て上方向、下方向、高さ方向を意味する。作業車両1の前後/左右(幅)/上下(高さ)方向とは、それぞれ、当該オペレータから見た前後/左右(幅)/上下(高さ)方向と一致するものとする。
【0013】
図1は、作業車両1の左側を示している。図2に示すように、車両本体2は、車体中央面Mに対して概ね面対称であり、左側側面である第1側面2Lと、右側側面である第2側面2Rとを含む。一対の走行装置3のうち、第1側面2Lに設けられた走行装置3が左走行装置3Lとして、第2側面2Rに設けられた走行装置3が右走行装置3Rとして示されている。一対のアーム組立体42のうち、車体中央面Mに対して左側に設けられるアーム組立体42が第1アーム組立体42Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるアーム組立体42が第2アーム組立体42Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるリンク44が第1リンク44Lとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるアーム45が第1アーム45Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるアーム45が第2アーム45Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられる支点軸46が第1支点軸46Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられる支点軸46が第2支点軸46Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるジョイント軸47が第1ジョイント軸47Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるジョイント軸47が第2ジョイント軸47Rとして示されている。油圧モータ装置30のうち、車体中央面Mに対して左側に設けられる油圧モータ装置30が左油圧モータ装置30Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられる油圧モータ装置30が右油圧モータ装置30Rとして示されている。
【0014】
図1及び図2を参照すると、作業車両1は、車両本体2の後部に設けられたエンジン6、並びに、左油圧ポンプ7L、及び、右油圧ポンプ7Rを含む複数の油圧ポンプ7をさらに備える。エンジン6は、複数の油圧ポンプ7を駆動する。左油圧ポンプ7L、及び、右油圧ポンプ7Rは、駆動輪31を駆動する油圧モータ装置30等)を駆動するために作動油を吐出するように構成されている。左油圧ポンプ7L、及び、右油圧ポンプ7Rを総称して、油圧ポンプ(7L、7R)と呼ぶ。左油圧ポンプ7L、及び、右油圧ポンプ7R以外の複数の油圧ポンプ7は、作業装置4に接続された油圧アクチュエータ(複数のアームシリンダ48、少なくとも1つの器具シリンダ49等)を駆動するために作動油を吐出するように構成されている。エンジン6は、作業車両1の幅方向Dにおいて、一対のアーム組立体42の間に設けられている。作業車両1は、エンジン6を覆うためのカバー8をさらに備える。作業車両1は、車両本体2の後端に設けられているボンネットカバー9をさらに備える。ボンネットカバー9は、開閉可能であり、保守員がエンジン6などの保守作業を行うことができる。
【0015】
図3は、第1実施形態における作業車両1の走行系の油圧回路図である。作業車両1は、油圧回路1Aを含む。油圧回路1Aは、作動油タンク70と、パイロットポンプ71とを含む。パイロットポンプ71は、エンジン6の動力によって駆動される定容量型のギヤポンプである。パイロットポンプ71は、作動油タンク70に貯留された作動油を吐出するように構成される。特に、パイロットポンプ71は、主に制御に用いる作動油を吐出するように構成される。説明の便宜上、パイロットポンプ71から吐出された作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧と呼称される。特に、パイロットポンプ71は、左油圧ポンプ7L及び右油圧ポンプ7Rにパイロット油を供給するように構成される。
【0016】
油圧回路1Aは、パイロットポンプ71の吐出ポートに接続されるパイロット供給油路PA1を含む。パイロット油は、パイロット供給油路PA1を流れる。油圧回路1Aは、パイロット供給油路PA1に接続される複数の切換弁(switching valve)(ブレーキ切換弁SV1、方向切換弁SV2)と、複数のブレーキ機構72とを含む。ブレーキ切換弁SV1は、パイロット供給油路PA1に接続されている。ブレーキ切換弁SV1は、複数のブレーキ機構72による制動及び制動の解除を行うための方向切換弁(電磁弁)である。ブレーキ切換弁SV1は、励磁によりその弁体を第1位置VP1aまたは第2位置VP1bに切り換えるように構成された二位置切換弁である。ブレーキ切換弁SV1の弁体の切換は、ブレーキペダル13(図6参照)によって行われる。ブレーキペダル13にはセンサ14が設けられている。センサ14で検出された操作量は、ECU(Electric Control Unit)から成るコントローラ10に入力される。コントローラ10のことを制御装置(Control Device)と呼称してもよい。
【0017】
複数のブレーキ機構72は、左走行装置3Lを制動するための第1ブレーキ機構72Lと、右走行装置3Rを制動するための第2ブレーキ機構72Rとを含む。第1ブレーキ機構72L及び第2ブレーキ機構72Rは、油路PA2を介してブレーキ切換弁SV1と接続されている。第1ブレーキ機構72L及び第2ブレーキ機構72Rは、パイロット油(作動油)の圧力に応じて走行装置3を制動するように構成される。ブレーキ切換弁SV1の弁体が第1位置VP1aに切り替えられた場合、ブレーキ切換弁SV1とブレーキ機構72との間における区間において油路PA2から作動油が抜け、ブレーキ機構72により、走行装置3が制動される。ブレーキ切換弁SV1の弁体が第2位置VP1bに切り替えられた場合、ブレーキ機構72による制動が解除される。なお、ブレーキ切換弁SV1の弁体が第1位置VP1aに切り替えられた場合、ブレーキ機構72による制動が解除され、ブレーキ切換弁SV1の弁体が第2位置VP1bに切り替えられた場合、ブレーキ機構72により走行装置3が制動されてもよい。
【0018】
方向切換弁SV2は、左油圧モータ装置30L及び右油圧モータ装置30Rの回転を変更する電磁弁である。方向切換弁SV2は、励磁によりその弁体を第1位置VP2aまたは第2位置VP2bに切り換えるように構成された二位置切換弁である。方向切換弁SV2の切換は、図示されない操作部材等によって行われる。なお、方向切換弁SV2は、二位置切換弁ではなく吐出する作動油の流量を調整可能な比例弁であってもよい。
【0019】
左油圧モータ装置30Lは、左走行装置3Lに設けられた駆動輪31に動力を伝達する装置である。左油圧モータ装置30Lは、左油圧モータ31Lと、第1斜板切換シリンダ32Lと、第1走行制御弁(油圧切換弁)SV4とを含む。左油圧モータ31Lは、左走行装置3Lを駆動するための斜板形可変容量アキシャルモータあって、車速(回転)を1速或いは2速に変更することができるモータである。第1斜板切換シリンダ32Lは、伸縮によって左油圧モータ31Lの斜板の角度を変更するように構成されたシリンダである。第1走行制御弁SV4は、第1斜板切換シリンダ32Lを伸縮させるための弁である。第1走行制御弁SV4は、その弁体を第1位置VP4a及び第2位置VP4bに切り換えるように構成された二位置切換弁である。
【0020】
第1走行制御弁SV4の切換えは、第1走行制御弁SV4に接続された上流側に位置する方向切換弁SV2によって行われる。具体的には、方向切換弁SV2と第1走行制御弁SV4とは、油路PA3により接続されており、油路PA3を流れる作動油により第1走行制御弁SV4の切換が行われる。例えば、操作部材の操作によって方向切換弁SV2の弁体が第1位置VP2aに切り替えられた場合、方向切換弁SV2と第1走行制御弁SV4との間における区間においてパイロット油が抜け、第1走行制御弁SV4の弁体が第1位置VP4aに切換えられる。その結果、第1斜板切換シリンダ32Lが縮み、左油圧モータ31Lの速度は1速に変更される。また、操作部材の操作によって方向切換弁SV2の弁体が第2位置VP2bに切り替えられた場合、方向切換弁SV2を通じて第1走行制御弁SV4にパイロット油が供給され、第1走行制御弁SV4の弁体が第2位置VP4bに切換えられる。その結果、第1斜板切換シリンダ32Lが延び、左油圧モータ31Lの速度は2速に変更される。
【0021】
右油圧モータ装置30Rは、右走行装置3Rに設けられた駆動輪31に動力を伝達する装置である。右油圧モータ装置30Rは、右油圧モータ31Rと、第2斜板切換シリンダ32Rと、第2走行制御弁(油圧切換弁)SV5とを含む。右油圧モータ装置30Rは、右走行装置3Rを駆動するための油圧モータであり、左油圧モータ装置30Lと同様に動作する。つまり、右油圧モータ31Rは、左油圧モータ31Lと同様に動作する。なお、左油圧モータ31Lと右油圧モータ31Rとを総称して、油圧モータ(31L、31R)と呼ぶ。第2斜板切換シリンダ32Rは、第1斜板切換シリンダ32Lと同様に動作する。第2走行制御弁SV5は、その弁体を第1位置VP5a及び第2位置VP5bに切り換えるように構成された二位置切換弁であり、第1走行制御弁SV4と同様に動作する。
【0022】
油圧回路1Aは、ドレイン油路DR1が接続されている。ドレイン油路DR1は、複数の切換弁(ブレーキ切換弁SV1、方向切換弁SV2)からパイロット油を作動油タンク70へ流す油路である。例えば、ドレイン油路DR1は、複数の切換弁(ブレーキ切換弁SV1、方向切換弁SV2)の排出ポートに接続されている。つまり、ブレーキ切換弁SV1が第1位置VP1aにある場合、ブレーキ切換弁SV1とブレーキ機構72との間における区間において油路PA2から作動油がドレイン油路DR1に排出される。方向切換弁SV2が、第1位置VP1aにある場合、油路PA3のパイロット油は、ドレイン油路DR1に排出される。
【0023】
油圧回路1Aは、第1チャージ油路PA4と、油圧駆動装置75とをさらに含む。第1チャージ油路PA4は、パイロット供給油路PA1から分岐され、油圧駆動装置75に接続される。油圧駆動装置75は、左油圧モータ装置30L及び右油圧モータ装置30Rを駆動する装置である。油圧駆動装置75は、左油圧モータ装置30Lの駆動用の第1駆動回路76Lと、右油圧モータ装置30Rの駆動用の第2駆動回路76Rとを有する。
【0024】
第1駆動回路76Lは、左油圧ポンプ7Lと、駆動用油路PA5L,PA6Lと、第2チャージ油路PA7Lとを有する。駆動用油路PA5L,PA6Lは、左油圧ポンプ7Lと左油圧モータ31Lとを接続する油路である。駆動用油路PA5L,PA6Lによって形成される油圧回路を左油圧回路CLと呼ぶ。第2チャージ油路PA7Lは、駆動用油路PA5L,PA6Lに接続され、パイロットポンプ71からの作動油を駆動用油路PA5L,PA6Lに補充する油路である。左油圧モータ31Lは、駆動用油路PA5Lと接続する第1接続口31P1と、駆動用油路PA6Lと接続する第2接続口31P2とを有する。第1接続口31P1を介して左走行装置3Lを前進方向に回転させる作動油が左油圧モータ31Lに入力され、第1接続口31P1を介して左走行装置3Lを後進方向に回転させる作動油が左油圧モータ31Lから吐出される。第2接続口31P2を介して左走行装置3Lを後進方向に回転させる作動油が左油圧モータ31Lに入力され、左走行装置3Lを前進方向に回転させる作動油が左走行装置3Lから吐出される。
【0025】
同様に、第2駆動回路76Rは、右油圧ポンプ7Rと、駆動用油路PA5R,PA6Rと、第3チャージ油路PA7Rとを有する。駆動用油路PA5R,PA6Rは、右油圧ポンプ7Rと右油圧モータ31Rとを接続する油路である。駆動用油路PA5R,PA6Rによって形成される油圧回路を右油圧回路CRと呼ぶ。第3チャージ油路PA7Rは、駆動用油路PA5R,PA6Rに接続され、パイロットポンプ71からの作動油を駆動用油路PA5R,PA6Rに補充する油路である。右油圧モータ31Rは、駆動用油路PA5Rと接続する第3接続口31P3と、駆動用油路PA6Rと接続する第4接続口31P4とを有する。第3接続口31P3を介して右走行装置3Rを前進方向に回転させる作動油が右油圧モータ31Rに入力され、第3接続口31P3を介して右走行装置3Rを後進方向に回転させる作動油が右油圧モータ31Rから吐出される。第4接続口31P4を介して右走行装置3Rを後進方向に回転させる作動油が右油圧モータ31Rに入力され、右走行装置3Rを前進方向に回転させる作動油が右走行装置3Rから吐出される。つまり、油圧モータ(31L、31R)は、走行装置(3L、3R)を駆動するように構成される。油圧ポンプ(7L、7R)は、油圧モータ(31L、31R)を駆動する作動油を吐出するように構成される。駆動用油路(PA5L、PA6L、PA5R、PA6R)は、油圧ポンプ(7L、7R)と油圧モータ(31L、31R)とを接続する油路である。
【0026】
左油圧ポンプ7L及び右油圧ポンプ7Rは、エンジン6の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。左油圧ポンプ7Lは、左油圧回路CLを介して左油圧モータ31Lに接続され、パイロット圧が作用する第1ポートPLaと第2ポートPLbとを有する。左油圧ポンプ7Lは、第1ポートPLaと第2ポートPLbとに作用するパイロット圧に応じて斜板の角度を変更し、左油圧モータ31Lに作動油を供給するように構成される。具体的には、左油圧ポンプ7Lは、第1ポートPLaにかかる油圧が第2ポートPLbにかかる油圧よりも高いとき、左走行装置3Lを前進駆動するように左油圧モータ31Lに左油圧回路CLを介して作動油を供給し、第2ポートPLbにかかる油圧が第1ポートPLaにかかる油圧よりも高いとき、左走行装置3Lを後退駆動するように左油圧モータ31Lに左油圧回路CLを介して作動油を供給するように構成される。
【0027】
右油圧ポンプ7Rは、右油圧回路CRを介して右油圧モータ31Rに接続され、パイロット圧が作用する第3ポートPRaと第4ポートPRbとを有する。右油圧ポンプ7Rは、第3ポートPRaと第4ポートPRbとに作用するパイロット圧に応じて斜板の角度を変更し、右油圧モータ31Rに作動油を供給するように構成される。具体的には、右油圧ポンプ7Rは、第3ポートPRaにかかる油圧が第4ポートPRbにかかる油圧よりも高いとき、右走行装置3Rを前進駆動するように右油圧モータ31Rに右油圧回路CRを介して作動油を供給し、第4ポートPRbにかかる油圧が第3ポートPRaにかかる油圧よりも高いとき、右走行装置3Rを後退駆動するように右油圧モータ31Rに右油圧回路CRを介して作動油を供給するように構成される。左油圧ポンプ7L及び右油圧ポンプ7Rは、斜板の角度に応じて、出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。
【0028】
左油圧ポンプ7L及び右油圧ポンプ7Rの出力や作動油の吐出方向の変更は、作業車両1の進行方向を操作するための操作装置56により行われる。具体的には、操作装置56が備える操作レバー55の操作に応じて、左油圧ポンプ7L及び右油圧ポンプ7Rの出力や作動油の吐出方向が変更される。つまり、操作装置56は、左走行装置3L及び右走行装置3Rの少なくとも一方の走行装置を選択し、少なくとも一方の走行装置の前進あるいは後進を指示することによって、作業車両の進行方向を操作するように構成される装置である。操作レバー55を介してユーザによる進行方向の指示が入力される。操作レバー55は、走行指示入力装置と呼称されてもよい。
【0029】
図3に示すように、油圧回路1Aは、パイロット供給油路PA1から分岐され、操作装置56に接続されるパイロット供給油路PA8と、パイロット供給油路PA8上に設けられる一次圧制御弁CV1とを含む。以降の実施形態において、パイロット供給油路PA1とパイロット供給油路PA8とを総称して、一次パイロット油路と呼ぶ。一次圧制御弁CV1は、ソレノイドを含む電磁比例弁でありソレノイドにかかる電流に応じて開度を調整することにより、操作装置56に供給されるパイロット圧を調整するように構成される。一次圧制御弁CV1の開度は、コントローラ10から送られる電流によって制御される。なお、当該電流の大きさが大きくなればなるほど、一次圧制御弁CV1から出力されるパイロット圧も増加する場合もあれば、当該電流の大きさが大きくなればなるほど、一次圧制御弁CV1から出力されるパイロット圧が減少する場合もある。以降の実施形態において一次圧制御弁CV1のことを油圧調整機構と呼称してもよい。一次圧制御弁CV1の詳細な動作については後述する。
【0030】
操作装置56は、前進用の操作弁OVAと、後進用の操作弁OVBと、右旋回用の操作弁OVCと、左旋回用の操作弁OVDと、操作レバー55とを備える。また、操作装置56は、第1~4シャトル弁SVa,SVb,SVc,SVdを有する。操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは、1本の操作レバー55によって操作される。操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは、操作レバー55の操作に応じて作動油の圧力を変化させ、且つ、変化後の作動油を左油圧ポンプ7Lの第1ポートPLa及び第2ポートPLbと右油圧ポンプ7Rの第3ポートPRa及び第4ポートPRbとに供給する。なお、この実施形態では、1本の操作レバー55で操作弁OVA,OVB,OVC,OVDが操作されるが、操作レバー55は複数本でもよい。以降の実施形態において、1本もしくは複数本の操作レバー55のことを第1操作装置と呼称してもよい。
【0031】
操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは入力ポート(一次側ポート)と排出ポートと出力ポート(二次側ポート)を有している。図3に示すように、入力ポートは、パイロット供給油路PA8に接続される。排出ポートは、作動油タンク70に至るドレイン油路DR2に接続される。操作レバー55は、中立位置から、前後、前後に直交する幅方向、斜め方向に傾動可能である。操作レバー55の傾動に応じて、操作装置56の操作弁OVA,OVB,OVC,OVDが操作される。それにより、操作レバー55の中立位置からの操作量に応じたパイロット圧が操作弁OVA,OVB,OVC,OVDの二次側ポートから出力される。なお、一次圧制御弁CV1から出力される一次側ポートにかかるパイロット圧と、二次側ポートにかかるパイロット圧との関係は後述する。
【0032】
操作弁OVAの二次側ポートと操作弁OVCの二次側ポートとは第1シャトル弁SVaの入力ポートに接続され、第1シャトル弁SVaの出力ポートは第1パイロット油路PA11を介して左油圧ポンプ7Lの第1ポートPLaに接続される。操作弁OVAの二次側ポートと操作弁OVDの二次側ポートとは第2シャトル弁SVbの入力ポートに接続され、第2シャトル弁SVbの出力ポートは第3パイロット油路PA13を介して右油圧ポンプ7Rの第3ポートPRaに接続される。操作弁OVBの二次側ポートと操作弁OVDの二次側ポートとは第3シャトル弁SVcの入力ポートに接続され、第3シャトル弁SVcの出力ポートは第2パイロット油路PA12を介して左油圧ポンプ7Lの第2ポートPLbに接続される。操作弁OVBの二次側ポートと操作弁OVCの二次側ポートとは第4シャトル弁SVdの入力ポートに接続され、第4シャトル弁SVdの出力ポートは第4パイロット油路PA14を介して右油圧ポンプ7Rの第4ポートPRbに接続される。つまり、パイロット供給油路PA8、第1パイロット油路PA11、及び、第4パイロット油路PA14は、パイロットポンプ71と左油圧ポンプ7Lとを接続する。パイロット供給油路PA8、第2パイロット油路PA12、及び、第3パイロット油路PA13は、パイロットポンプ71と右油圧ポンプ7Rとを接続する。
【0033】
操作レバー55が前側に傾動されると、前進用の操作弁OVAが操作されて該操作弁OVAからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、操作装置56と左油圧ポンプ7Lの第1ポートPLaとを接続する第1パイロット油路PA11を介して第1シャトル弁SVaから第1ポートPLaに作用すると共に、操作装置56と右油圧ポンプ7Rの第3ポートPRaとを接続する第3パイロット油路PA13を介して第2シャトル弁SVbから第3ポートPRaに作用する。これにより、左油圧ポンプ7Lの出力軸及び右油圧ポンプ7Rの出力軸が操作レバー55の傾動量に対応した速度で正転(前進回転)して作業車両1が前方に直進する。
【0034】
また、操作レバー55が後側に傾動されると、後進用の操作弁OVBが操作されて該操作弁OVBからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、操作装置56と第2ポートとを接続する第2パイロット油路PA12を介して第3シャトル弁SVcから左油圧ポンプ7Lの第2ポートPLbに作用すると共に、操作装置56と右油圧ポンプ7Rの第4ポートPRbとを接続する第4パイロット油路PA14を介して第4シャトル弁SVdから第4ポートPRbに作用する。これにより、左油圧ポンプ7Lの出力軸及び右油圧ポンプ7Rの出力軸が操作レバー55の傾動量に対応した速度で逆転(後進回転)して作業車両1が後方に直進する。
【0035】
また、操作レバー55が右側に傾動されると、右旋回用の操作弁OVCが操作されて該操作弁OVCからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁SVaから第1パイロット油路PA11を介して左油圧ポンプ7Lの第1ポートPLaに作用すると共に、第4シャトル弁SVdから第4パイロット油路PA14を介して右油圧ポンプ7Rの第4ポートPRbにも作用する。これにより、該操作レバー55の右方向への操作位置に対応した曲がり具合で右へ曲進する。
【0036】
また、操作レバー55が左側に傾動されると、左旋回用の操作弁OVDが操作されて該操作弁OVDからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2シャトル弁SVbから第3パイロット油路PA13を介して右油圧ポンプ7Rの第3ポートPRaに作用すると共に、第3シャトル弁SVcから第2パイロット油路PA12を介して左油圧ポンプ7Lの第2ポートPLbにも作用する。これにより、該操作レバー55の左方向への操作位置に対応した曲がり具合で左へ曲進する。
【0037】
すなわち、操作レバー55が左斜め前側に傾動操作されると、該操作レバー55の前後方向への操作位置に対応した速度で作業車両1が前進し、該操作レバー55の左方向への操作位置に対応した曲がり具合で左へ曲進する。操作レバー55が右斜め前側に傾動操作されると、該操作レバー55の操作位置に対応した速度で作業車両1が前進しながら右旋回する。操作レバー55が左斜め後側に傾動操作されると、該操作レバー55の操作位置に対応した速度で作業車両1が後進しながら左旋回する。操作レバー55が右斜め後側に傾動操作されると、該操作レバー55の操作位置に対応した速度で作業車両1が後進しながら右旋回する。
【0038】
つぎに、一次圧制御弁CV1の詳細な動作について説明する。作業車両1は、エンジン6の目標回転速度を設定する設定部材11(図6参照)を含む。設定部材11は、上述する操作装置56とは別の速度入力装置であるアクセルペダル、揺動自在に支持されるアクセルレバー、もしくは、回動可能なインドアダイヤルである。設定部材11にはセンサ12が設けられている。センサ12で検出された操作量は、コントローラ10に入力される。センサ12で検出された操作量に対応するエンジン回転速度が、エンジン6の目標回転速度である。言い換えると、設定部材11の操作量に基づいてエンジン6の目標回転速度が設定される。コントローラ10は、この決定されたエンジン6の目標回転速度になるように、例えば、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率が示された回転指令をインジェクタに出力する。あるいは、コントローラ10は、この決定されたエンジン6の目標回転速度になるように、燃料噴射圧等が示された回転指令を、サプライポンプやコモンレールに出力する。以降の実施形態において、上述する1本もしくは複数本の操作レバー55と設定部材11とを少なくとも1つの操作装置と呼称してもよい。コントローラ10には、実際のエンジン回転速度(エンジン6の実回転速度という)を検出する速度センサ6aが接続されていて、エンジン6の実回転速度が入力される。速度センサ6aは、例えば、エンジン6のクランクシャフトに接続される回転部材の回転速度を検出するように構成されたポテンショメータである。エンジン6に負荷がかかると、エンジン6の実回転速度は、エンジン6の目標回転速度から低下する。このエンジン29に負荷がかかったときにおける目標回転速度からの実回転速度の低下量(エンジン6の目標回転速度とエンジン6の実回転速度との差)を、エンジンのドロップ量という。
【0039】
一次圧制御弁CV1は、エンジン6の回転速度(エンジン回転速度E1)の低下量(ドロップ量)ΔE1に基づいて、複数の操作弁OVA、OVB、OVC、OVDの入力ポート(一次側ポート)に作用するパイロット圧(一次パイロット圧)を設定可能である。つまり、一次圧制御弁CV1は、パイロットポンプ71と操作弁OVA、OVB、OVC、OVDとの間に設けられ、パイロット油を操作弁OVA、OVB、OVC、OVDに送り、操作弁OVA、OVB、OVC、OVDに供給されるパイロット油の圧力を一次パイロット圧に変換するように構成される制御弁である。エンジン6の回転速度は、エンジン回転速度E1の速度センサ6aにより検出することができる。速度センサ6aで検出されたエンジン回転速度E1は、コントローラ10に入力される。速度センサ6aは、速度センサと呼称されてもよい。図4は、エンジン回転速度と、一次パイロット圧と、設定線L1、L2の関係を示している。設定線L1は、低下量ΔE1が所定未満(アンチストール判定値未満)である場合のエンジン回転速度E1と、一次パイロット圧との関係を示している。設定線L2は、低下量ΔE1がアンチストール判定値以上である場合のエンジン回転速度E1と、一次パイロット圧との関係を示している。設定部材11の操作量に基づいて決定される回転速度RS1とエンジン6の実回転速度との差が所定のストール判定速度差(アンチストール判定値)よりも小さいとき、回転速度RS1に対応する一次パイロット圧は設定線L1に示される第3の対応関係に応じて遷移する。回転速度RS1とエンジン6の実回転速度との差が所定のストール判定速度差(アンチストール判定値)以上であるとき、回転速度RS1に対応する一次パイロット圧は設定線L2に示される第4の対応関係に応じて遷移する。
【0040】
コントローラ10は、低下量ΔE1がアンチストール判定値未満である場合、エンジン回転速度E1と一次パイロット圧との関係が、設定線L1で示された基準パイロット圧に一致するように、一次圧制御弁CV1の開度を調整する。また、コントローラ10は、低下量ΔE1がアンチストール判定値以上である場合、エンジン回転速度E1と一次パイロット圧との関係が、基準パイロット圧よりも低い設定線L2に一致するように、一次圧制御弁CV1の開度を調整する。設定線L2では、所定のエンジン回転速度E1に対する一次パイロット圧が、設定線L1の一次パイロット圧よりも低い。即ち、同一のエンジン回転速度E1に着目した場合、設定線L2の一次パイロット圧は、設定線L1の一次パイロット圧よりも低く設定される。したがって、設定線L2に基づく制御によって、操作弁OVA、OVB、OVC、OVDに入る作動油の圧力(パイロット圧)が低く抑えられる。その結果、左油圧ポンプ7L、右油圧ポンプ7Rの斜板角が調整され、エンジン6に作用する負荷が減少し、エンジン6のストールを防止することができる。なお、図4では、1本の設定線L2を示しているが、設定線L2は複数であってもよい。例えば、エンジン回転速度E1毎に設定線L2が設定されていてもよい。また、設定線L1及び設定線L2を示すデータ、或いは、関数等の制御パラメータ等は、コントローラ10が有していることが好ましい。
【0041】
つぎに、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDの二次側ポートから出力されるパイロット圧(二次パイロット圧)について説明する。図5は、操作レバーの操作位置と、二次パイロット圧との関係を示す図である。図4を参照すると、レバー操作位置は原点がレバーストロークの始端位置である操作始端位置(中立位置、G0位置)であり、該原点から離れるにしたがってレバーストロークの終端位置である操作終端位置(G5位置)に近づく。操作レバー55の操作領域は、操作対象が動作しない(図例では、G0位置からG1位置に至るまでの)中立領域RA1と、操作終端付近の(図例では、G3位置からG5位置までの)フル操作付近領域RA2と、これら中立領域RA1とフル操作付近領域RA2との間(図例では、G1位置からG3位置に至るまで)の中間領域RA3とに分けられる。さらに、中間領域RA3は、G1位置からG2位置に至るまでの微速度領域RA3Aと、G2位置からG3位置に至るまでの中間速度領域RA3Bとに分けられる。
【0042】
中立領域RA1では、操作レバー55を操作しても二次パイロット圧が供給されない。一方、フル操作付近領域RA2では、操作対象の速度調整をすることはなく、したがって、操作レバー55は途中で止まることはなく操作終端位置(G5位置)まで操作される。中間領域RA3では、領域内の任意の位置で操作レバー55を止めたり、位置を変更したりして、操作対象の速度がオペレータの所望の速度になるように調整される。例えば、各操作領域RA1、RA3A、RA3B、RA2のレバーストロークに対する比率は、以下の通りである。
中立領域RA1 :0%以上15%未満
微速度領域RA3A :15%以上45%未満
中間速度領域RA3B :45%以上75%未満
フル操作付近領域RA2:75%から100%
【0043】
図5に示す特性図にあっては、操作レバー55をG0位置からG1位置に操作すると、二次パイロット圧(Pa)が発生し、G1位置からG4位置まで操作レバー55を操作すると、操作レバー55の操作量に比例して二次パイロット圧がPaからPbまで上昇する。また、G4位置において一次パイロット圧がショートカットされて二次側に流れ、二次パイロット圧がPbから一気に最高出力圧のPcに上昇する。そして、操作レバー55をG4位置からG5位置まで操作する間、二次パイロット圧は最高出力圧(Pc)で一定であり、一次パイロット圧と等しくなる。つまり、操作装置56は、左方向への移動を指示するための操作レバー55の中立位置からの変位が第1変位値(G0からG4までの変位)以上であるときに、第1ポートPLa及び第4ポートPRbに、操作装置56に入力される一次パイロット圧を出力する。以降の実施形態において、操作レバー55をG4位置とG5位置との間に操作することを、操作レバー55をフルストロークで操作すると呼ぶ。操作装置56は、右方向への移動を指示するための操作レバー55の中立位置からの変位が第1変位値(G0からG4までの変位)以上であるときに、第2ポートPLb及び第3ポートPRaに、操作装置56に入力される一次パイロット圧を出力する。操作装置56は、前方向への移動を指示するための操作レバー55の中立位置からの変位が第1変位値(G0からG4までの変位)以上であるときに、第1ポートPLa及び第3ポートPRaに、操作装置56に入力される一次パイロット圧を出力する。操作装置56は、後方向への移動を指示するための操作レバー55の中立位置からの変位が第1変位値(G0からG4までの変位)以上であるときに、第2ポートPLb及び第4ポートPRbに、操作装置56に入力される一次パイロット圧を出力する。なお、前後方向の二次パイロット圧の特性値は左右方向の二次パイロット圧の特性値と異なっていてもよい。G0~G5、Pa~Pcに対応する前後方向の二次パイロット圧の特性値をG0’~G5’、Pa’~Pc’とすれば、操作装置56は、前方向への移動を指示するための操作レバー55の中立位置からの変位が第2変位値(G0’からG4’までの変位)以上であるときに、第1ポートPLa及び第3ポートPRaに、操作装置56に入力される一次パイロット圧を出力するとしてもよい。操作装置56は、後方向への移動を指示するための操作レバー55の中立位置からの変位が第2変位値(G0’からG4’までの変位)以上であるときに、第2ポートPLb及び第4ポートPRbに、操作装置56に入力される一次パイロット圧を出力するとしてもよい。また、Pa及びPb(Pa’及びPb’)は、一次パイロット圧の大きさに依存しない値であるが、一次パイロット圧がPaまたはPb(Pa’またはPb’)よりも下回る場合、二次パイロット圧は一次パイロット圧の大きさで頭打ちとなる。つまり、操作弁(OVA、OVB、OVC、OVD)は、操作装置56の第1操作量(操作レバー位置)に応じて、パイロット油の圧力を一次パイロット圧から二次パイロット圧に変換して、パイロット油を出力するように構成される。二次パイロット圧のパイロット油が、油圧ポンプ(7L、7R)の斜板に油圧を提供するポート(PLa、PRa、PLb、PRb)に印加される。当該第1操作量が閾値量(第1変位値)以上であるとき、操作弁(OVA、OVB、OVC、OVD)は、一次パイロット圧と等しい二次パイロット圧に変換する。
【0044】
以上の操作弁OVA,OVB,OVC,OVDの特徴に基づき、操作レバー55の操作に対応する作業車両1の動きをより詳細に説明する。操作レバー55の前後方向の操作量が右方向の操作量よりも大きく、且つ、操作レバー55の右方向への操作位置がG1位置からG3位置まで操作される場合、左油圧ポンプ7Lの回転速度の大きさが右油圧ポンプ7Rの回転速度の大きさよりも大きい状態で同じ方向に回転することにより、作業車両1が大回りに右へ曲進する。該操作レバー55の右方向への操作位置が、前後方向への操作位置と同じ位置となると、右油圧ポンプ7Rの回転速度が0となり、左油圧ポンプ7Lのみが回転することによって、作業車両1が右信地旋回(右ピボットターン)を行う。さらに、該操作レバー55が右方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作されると、前後方向への操作位置よりも大きくなり、左油圧ポンプ7Lの出力軸が正転し且つ右油圧ポンプ7Rの出力軸が逆転して作業車両1が右側に旋回する。
【0045】
また、操作レバー55の前後方向の操作量が左方向の操作量よりも大きく、且つ、操作レバー55の左方向への操作位置がG1位置からG3位置まで操作される場合、右油圧ポンプ7Rの回転速度の大きさが左油圧ポンプ7Lの回転速度の大きさよりも大きい状態で同じ方向に回転することにより、作業車両1が大回りに左へ曲進する。該操作レバー55の左方向への操作位置が、前後方向への操作位置と同じ位置となると、左油圧ポンプ7Lの回転速度が0となり、右油圧ポンプ7Rのみが回転することによって、作業車両1が左信地旋回(左ピボットターン)を行う。さらに、該操作レバー55が左方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作されると、前後方向への操作位置よりも大きくなり、右油圧ポンプ7Rの出力軸が正転し且つ左油圧ポンプ7Lの出力軸が逆転して作業車両1が左側に旋回する。本実施形態では、旋回とは、右方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作される場合、もしくは、左方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作される場合の作業車両1の動作をいう。
【0046】
一方で、該操作レバー55が前方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作されると、左右方向への操作位置よりも大きくなり、左油圧ポンプ7L且つ右油圧ポンプ7Rの出力軸が正転して作業車両1が高速に前進する。該操作レバー55が後方向への操作位置がG4位置からG5位置の間に操作されると、左右方向への操作位置よりも大きくなり、左油圧ポンプ7L且つ右油圧ポンプ7Rの出力軸が反転して作業車両1が高速に後進する。なお、その他の操作レバー55の前後方向の操作は、左右方向と同様である。
【0047】
作業車両1には、上述するコントローラ10に接続する各種スイッチやセンサが設けられている。図6は、作業車両1のブロック図である。図6を参照すると、作業車両1は、運転席54の周囲に設けられるクリープ設定部材16を含む。クリープ設定部材16は、入力装置と呼称されてもよい。クリープ設定部材16は、例えば、タッチパネル、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、ダイヤルで構成されている。クリープとは、ユーザの速度変更操作が入力される少なくとも1つの操作装置(設定部材11、1本もしくは複数本の操作レバー55)の操作量に関わらず、作業車両1を上限速度以下で走行させる制御をいう。クリープ設定部材16によって上限速度が入力される。クリープ設定部材16は、通常モードと、クリープモードとを切り替えるように構成される。クリープ設定部材16によって上限速度が設定される状態をクリープモードと呼ぶ。クリープモード以外の状態を通常モードと呼ぶ。
【0048】
通常モードでは、設定部材11の操作によってエンジン6の目標回転速度が設定され、図4の設定線L1またはL2に基づいて目標回転速度に対応する一次パイロット圧が求められる。そして、1本もしくは複数本の操作レバー55の操作量に基づいて二次パイロット圧が設定され、油圧モータ(31L、31R)と油圧ポンプ(7L、7R)とが制御される。つまり、通常モードでは、少なくとも1つの操作装置の操作量に応じて作業車両1の速度を変更し、作業車両1を上限速度よりも大きい速度で走行させることが可能である。一方、クリープモードでは、一次パイロット圧を決定するのに、図4の設定線L1またはL2は使用されず、後述する第1参照情報10r1などを利用して通常モードの一次パイロット圧よりも小さくなるように決定される。クリープモードにおける二次パイロット圧以降の設定は、通常モードと同じであるが、二次パイロット圧は一次パイロット圧以下であるため、一次パイロット圧が制限されることによって、少なくとも1つの操作装置(設定部材11、1本もしくは複数本の操作レバー55)の操作量に関わらず、作業車両1の速度が上限速度以下となるように制限されることになる。
【0049】
図3図6とを参照すると、作業車両1は、第1パイロット油路PA11の油圧を検出するための油圧センサSP11、第2パイロット油路PA12の油圧を検出するための油圧センサSP12、第3パイロット油路PA13の油圧を検出するための油圧センサSP13、及び、第4パイロット油路PA14の油圧を検出するための油圧センサSP14を含む。上述のように、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDの二次側ポートから出力される二次パイロット圧は、操作レバー55の操作位置に対応して変化する。したがって、油圧センサSP11~SP14は、二次パイロット圧を検出するためのセンサである。油圧センサSP11~SP14は、追加油圧センサと呼称されてもよい。
【0050】
作業車両1は、駆動用油路PA5Lの油圧を検出するための油圧センサSP5L、駆動用油路PA6Lの油圧を検出するための油圧センサSP6L、駆動用油路PA5Rの油圧を検出するための油圧センサSP5R、及び、駆動用油路PA6Rの油圧を検出するための油圧センサSP6Rを含む。つまり、油圧センサ(SP5L、SP6L、SP5R、SP6R)は、駆動用油路(PA5L、PA6L、PA5R、PA6R)における作動油の油圧を検出するように構成される。油圧センサSP5Lと油圧センサSP6Lとの圧力差と、油圧センサSP5Rと油圧センサSP6Rとの圧力差から左油圧モータ31Lと右油圧モータ31Rの状態を検出することができる。
【0051】
図2図3、及び図6を参照すると、作業車両1は、左油圧モータ31Lの回転軸に接続し、左油圧モータ31Lの回転速度を検出する回転速度センサSR31L及び右油圧モータ31Rの回転速度を検出する回転速度センサSR31Rをさらに備えてもよい。回転速度センサSR31Lから検出される回転方向と回転速度の大きさと、回転速度センサSR31Rから検出される回転方向と回転速度の大きさから左油圧モータ31Lと右油圧モータ31Rの状態を検出することができる。作業車両1は、操作レバー55の操作位置を検出するように構成される操作検出センサ18を含んでもよい。操作検出センサ18は、後述するコントローラ10に接続されている。操作検出センサ18は、操作レバー55の位置を検出するポジションセンサなどである。
<コントローラ10の構成>
【0052】
コントローラ10は、上述するクリープモードにおける車速の制御を実現するために、図6に示すようなプロセッサ10aとメモリ10bを有している。プロセッサ10aは電子回路と呼称されてもよい。メモリ10bは揮発性メモリと不揮発性メモリを含む。メモリ10bは、上述する制御を実現するための走行制御プログラム10c1と、第1参照情報10r1と、第2参照情報10r2と、第3参照情報10r3とを少なくとも含んでいる。
【0053】
第1参照情報10r1は、通常モードにおいて、速度センサ6aによって検出されたエンジン6の回転速度RSと一次パイロット圧との第1の対応関係を表す。つまり、第1参照情報10r1は、図4の設定線L1によって表される第1の対応関係を表す。第2参照情報10r2は、通常モードにおいてエンジン6のドロップ量が大きいとき一次パイロット圧の制御のために使用される、速度センサ6aによって検出されたエンジン6の回転速度RSと一次パイロット圧との第2の対応関係を表す。つまり、第2参照情報10r2は、図4の設定線L2によって表される第2の対応関係を表す。
【0054】
第3参照情報10r3は、クリープモードにおける上述する上限速度と、第1差圧の絶対値と、上限速度及び第1差圧の絶対値に対応する、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDに入力されるパイロット油の一次パイロット圧を決定するための一次圧制御弁CV1から出力される圧力との第3の対応関係を表す。第1差圧とは、油圧センサSP5Lと油圧センサSP6Lとの差圧と、油圧センサSP5Rと油圧センサSP6Rとの差圧のうち、絶対値の大きい方の差圧である。第3の対応関係は、作業車両1のエンジン6の回転速度に依存しない。
【0055】
図7は、第1参照情報10r1の一例を示す。図7は、第3の対応関係を分かりやすく説明するために、第1差圧の絶対値を横軸、一次圧制御弁CV1から出力される圧力(出力圧)を縦軸として図示している。この出力圧は制御したい一次パイロット圧に対応する。図7では、上限速度1km/h、8km/h、及び、15km/hに対応する油圧モータの目標回転速度x[rpm]、y[rpm]、z[rpm]の場合の第1差圧の絶対値と出力圧との関係を折れ線グラフで示しているが、第3の対応関係として、モータの他の目標回転速度における第1差圧の絶対値と出力圧との関係を含んでもよい。ここで、第1差圧がP0までのときは、設定部材11(例えば、アクセルペダル)を所定の目標回転速度以上となるように操作し、二次パイロット圧が一次パイロット圧に等しくなり、且つ、走行装置3が無負荷である場合に、クリープモードの上限速度に到達するように決定された出力圧が第1参照情報10r1として記憶されている。第1差圧がP0よりも大きいときは、目標回転速度が大きくなればなるほど、出力圧が上昇する。具体的には、目標回転速度(上限速度)が大きければ大きいほど、傾きが大きくなるように出力圧は第1差圧の絶対値に対して線形的に変化する。なお、図7の例は一次関数的な変化であるが、単調増加であれば、他の変化であってもよい。図7に指定された上限速度の下限より下、また上限よりも上の範囲は、クリープ設定部材16によって設定できない速度範囲である。図7の下限として指定された1km/h、上限として指定された15km/hは一例であって他の値が設定されてもよい。上限、下限の間は複数の速度に対応する出力圧が設定されてもよい。設定されていない上限速度に対応する出力圧は線形補間などで推定されてもよい。クリープ設定部材16によって設定された上限速度が第3の対応関係で表される範囲から外れる場合、通常モードでの速度制御が行われる。また、第3の対応関係は、図4の設定線L2に示された一次パイロット圧以下であるため、アンチストールの効果も有している。
【0056】
プロセッサ10aは、第1参照情報10r1と、第2参照情報10r2と、第3参照情報10r3とを参照しながら、走行制御プログラム10c1を実行しながら以下の制御を実行する。まず、プロセッサ10aは、クリープ設定部材16によって通常モードが選択されると、エンジン6の回転速度RSを速度センサ6aから取得し、検出されたエンジン6の回転速度RSに対応する一次パイロット圧を第1参照情報10r1から求めて、求めた一次パイロット圧となるように一次圧制御弁CV1を制御するように構成される。通常モードが選択されているときにエンジン6のドロップ量が大きいとき、プロセッサ10aは、速度センサ6aによって検出されたエンジン6の回転速度RSに対応する一次パイロット圧を第2参照情報10r2から求めて、求めた一次パイロット圧となるように一次圧制御弁CV1を制御するように構成される。
【0057】
プロセッサ10aは、クリープ設定部材16によってクリープモードが選択されると、クリープ設定部材16によって入力された上限速度を取得することによって目標回転速度を決定し、油圧センサSP5L、SP6L、SP5R、SP6Rから得られた情報から第1差圧の絶対値を決定し、第3参照情報10r3から一次パイロット圧を求めるための情報を抽出し、抽出した情報に基づいて一次パイロット圧を決定する。そして、プロセッサ10aは、求められた一次パイロット圧となるように一次圧制御弁CV1を制御する。一次パイロット圧が制御されると、油圧ポンプ(7L、7R)の斜板に油圧を提供するポート(PLa、PRa、PLb、PRb)の上限が制御される。
【0058】
なお、以降の実施形態において、油圧モータ(31L、31R)のうち、差圧が大きい方の油圧モータを第1油圧モータとする。左走行装置3Lと右走行装置3Rのうち、第1油圧モータによって駆動される走行装置を第1走行装置とする。第1斜板切換シリンダ32Lと第2斜板切換シリンダ32Rとのうち、第1油圧モータに設けられるシリンダを第1モータパイロットポートと呼ぶ。第1モータパイロットポートに印加されるパイロット圧を第1モータパイロット圧と呼ぶ。油圧ポンプ(7L、7R)のうち、第1油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプを第1油圧ポンプとする。第1油圧ポンプのポート(PLa、PRa、PLb、PRb)のうち、一次パイロット圧によって入力されるパイロット圧が制限されるポートを第1ポンプパイロットポートと呼ぶ。第1ポンプパイロットポートに印加されるパイロット圧を第1ポンプパイロット圧と呼ぶ。駆動用油路(PA5L、PA6L、PA5R、PA6R)のうち、第1油圧モータと第1油圧ポンプとを接続する2つの油路のうち一方の油路を第1油路、他方の油路を第2油路と呼ぶ。第1油路のパイロット圧を第1油圧、第2油路のパイロット圧を第2油圧と呼ぶ。油圧センサ(SP5L、SP6L、SP5R、SP6R)のうち、第1油圧を検出するように構成される油圧センサを第1油圧センサと呼び、第2油圧を検出するように構成される油圧センサを第2油圧センサと呼ぶ。回転速度センサ(SR31L、SR31R)のうち第1油圧モータの回転速度を検出するように構成された回転速度センサを第1回転速度センサと呼ぶ。第1~第4パイロット油路PA11~PA14のうち、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDと、第1ポンプパイロットポートとを接続する油路を二次パイロット油路と呼ぶ。
【0059】
左走行装置3Lと右走行装置3Rのうち、車両本体2の第1油圧モータと反対側に設けられる走行装置を第2走行装置と呼ぶ。油圧モータ(31L、31R)のうち、第2走行装置を駆動するように構成される油圧モータを第2油圧モータとする。第1斜板切換シリンダ32Lと第2斜板切換シリンダ32Rとのうち、第2油圧モータに設けられるシリンダを第2モータパイロットポートと呼ぶ。第2モータパイロットポートに印加されるパイロット圧を第2モータパイロット圧と呼ぶ。油圧ポンプ(7L、7R)のうち、第2油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプを第2油圧ポンプとする。第2油圧ポンプのポート(PLa、PRa、PLb、PRb)のうち、一次パイロット圧によって入力されるパイロット圧が制限されるポートを第2ポンプパイロットポートと呼ぶ。第2ポンプパイロットポートに印加されるパイロット圧を第2ポンプパイロット圧と呼ぶ。駆動用油路(PA5L、PA6L、PA5R、PA6R)のうち、第2油圧モータと第2油圧ポンプとを接続する2つの油路のうち一方の油路を第3油路、他方の油路を第4油路と呼ぶ。第3油路のパイロット圧を第3油圧、第4油路のパイロット圧を第4油圧と呼ぶ。油圧センサ(SP5L、SP6L、SP5R、SP6R)のうち、第3油圧を検出するように構成される油圧センサを第3油圧センサと呼び、第4油圧を検出するように構成される油圧センサを第4油圧センサと呼ぶ。回転速度センサ(SR31L、SR31R)のうち第2油圧モータの回転速度を検出するように構成された回転速度センサを第2回転速度センサと呼ぶ。第1~第4パイロット油路PA11~PA14のうち、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDと、第2ポンプパイロットポートとを接続する油路を追加二次パイロット油路と呼ぶ。
【0060】
第1実施形態では、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、第1油圧と第2油圧との差である第1差圧の絶対値を求め、第1差圧の絶対値に応じて、第1ポンプパイロット圧と第2ポンプパイロット圧を、車速が所定の目標速度(上限速度)を保つように制御するように構成される。具体的には、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、一次圧制御弁CV1を制御することによって、一次パイロット圧を制御して車速が目標速度を保つように制御するように構成される。なお、図7の対応関係に示されるように、コントローラ10は、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、一次圧制御弁CV1から出力される出力圧、すなわち一次パイロット圧を上昇させるように制御する。
<第1実施形態に係る作業車両の動作>
【0061】
図8は、第1実施形態に係る作業車両1の動作を示すフローチャートである。本フローチャートでは、ステップS1からステップS11までの処理が所定のサンプリング間隔(例えば、20μs)ごとに実行される。ステップS1において、プロセッサ10aは、エンジン6を回転させて、車両本体2に設けられる第1走行装置を駆動する第1油圧モータに第1油圧ポンプから作動油を送る。そして、プロセッサ10aは、速度センサ6aによって検出されたエンジン6の回転速度RSを取得する。つまり、本実施形態に係る作業車両1の制御方法は、速度センサ6aによって検出されたエンジン6の回転速度RSを取得することを含む。ステップS2において、プロセッサ10aは、クリープ設定部材16によってクリープモードが選択されたか否かを判定する。つまり、本実施形態に係る制御方法は、クリープ設定部材16によってクリープモードが選択されたか否かを判定することを含む。クリープモードが設定されている、つまり上限速度が設定されているとき(ステップS2でYes)、ステップS3からS5に進む。通常モードが設定されている、つまり上限速度が設定されていない、もしくは第1の対応関係もしくは第2の対応関係を有さない有効でない上限速度が設定されているとき(ステップS2でNo)、ステップS6からS8に進む。
【0062】
クリープモードでは(ステップS2でYes)、ステップS3において、プロセッサ10aは、クリープ設定部材16によって入力された上限速度、すなわち、第1油圧モータの目標回転速度を取得する。つまり、本実施形態に係る制御方法は、クリープ設定部材16によって入力された上限速度、すなわち、第1油圧モータの目標回転速度を取得する。ステップS3では、プロセッサ10aは、油圧センサSP5L、油圧センサSP6L、油圧センサSP5R、及び、油圧センサSP6Rによって検出された油圧を取得し、これらから第1差圧を求める。つまり、本実施形態に係る制御方法は、作業車両1の走行用の油圧モータ(31L、31R)の差圧のうち大きい方の差圧である第1差圧を検出する。作業車両1の走行用の油圧モータ(31L、31R)の差圧のうち小さい方の差圧である第2差圧を検出する。
【0063】
ステップS5において、プロセッサ10aは、第3参照情報10r3を参照して、目標回転速度と第1差圧の絶対値に対応する一次圧制御弁CV1から出力される出力圧、すなわち、一次パイロット圧を求める。ステップS5の処理の終了後、ステップS9の処理が実行される。ステップS9において、プロセッサ10aは、ステップS6において求められた一次パイロット圧となるように、パイロット油を操作弁OVA,OVB,OVC,OVDに送る一次圧制御弁CV1を制御する。つまり、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値に応じて、第1油圧ポンプの第1ポンプパイロットポートと第2ポンプパイロットポートとに印加される第1ポンプパイロット圧を車速が所定の目標速度を保つように制御する。この第1ポンプパイロット圧と第2ポンプパイロットポートとを制御することは、第1ポンプパイロットポートと第2ポンプパイロットポートとに向けてパイロット油を吐出するためのパイロットポンプと、ユーザによる進行方向の指示が入力される走行指示入力装置への入力に応じて制御される操作弁とを接続する一次パイロット油路の油圧である一次パイロット圧を制御することを含む。具体的には、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、第1ポンプパイロット圧と第2ポンプパイロットポートとを上昇させるように制御する。
【0064】
通常モードでは(ステップS2でNo)、ステップS6において、プロセッサ10aは、エンジンドロップがあるか否かを判定する。つまり、ステップS6において、プロセッサ10aは、エンジン6の低下量ΔE1がアンチストール判定値以上であるか否かを判定する。エンジンドロップがないとき(ステップS6でNo)、ステップS7において、プロセッサ10aは、エンジン6の回転速度RSに基づいて第1参照情報10r1から一次パイロット圧を求める。エンジンドロップがあるとき(ステップS6でYes)、ステップS8において、プロセッサ10aは、エンジン6の回転速度RSに基づいて第2参照情報10r2から一次パイロット圧を求める。ステップS7またはステップS8の処理の終了後、ステップS9の処理が実行される。
【0065】
ステップS9において、プロセッサ10aは、ステップS8またはステップS9において求められた一次パイロット圧となるように、パイロット油を操作弁OVA,OVB,OVC,OVDに送る一次圧制御弁CV1を制御する。ステップS10において、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDは、操作レバー55(第1操作装置)のレバー位置(第1操作量)に基づき、一次パイロット圧を二次パイロット圧に変換する。ステップS11においてパイロット油の二次パイロット圧が、油圧ポンプ(7L、7R)の斜板に油圧を提供するポート(PLa、PRa、PLb、PRb)に印加され、油圧ポンプ(7L、7R)と油圧モータ(31L、31R)が制御される。
<第1実施形態の作用及び効果>
【0066】
第1実施形態に係る作業車両1の制御方法もしくは作業車両1では、プロセッサ10aは、クリープ設定部材16によって入力された上限速度(第1モータの目標回転速度)を取得し、第1差圧の絶対値を取得し、取得された目標回転速度と第1差圧の絶対値とに対応する一次圧制御弁CV1から出力される出力圧(一次パイロット圧)を第3参照情報10r3から求め、求められた一次パイロット圧となるように、パイロット油を操作弁OVA,OVB,OVC,OVDに送る一次圧制御弁CV1を制御する。第1差圧の変動を利用して一次パイロット圧を制御することによってクリープモードにおいてユーザの使用感の向上を実現することができる。
<第2実施形態>
【0067】
第1実施形態では、クリープモードを実現するために一次パイロット圧を制御する例を挙げたが二次パイロット圧を制御するものであってもよい。図9は、第2実施形態における作業車両の走行系の油圧回路図である。図9では、図3に追加される構成が示されている。図9では、図3と同じ構成には同じ符号が付されており、詳細な説明は省略される。第2実施形態では、作業車両1は、油圧回路1Bを含む。油圧回路1Bは、油圧回路1Aの構成に対し、リリーフ弁CV23、CV24と、比例弁CV21、CV22と、排出油路DR3~DR6と、チェック弁CK1~CK4と、絞りTH1~TH4とをさらに含む点で相違する。
【0068】
リリーフ弁CV23、CV24は、パイロット油の圧力に基づいて開放されるための設定圧が可変するバランス型のリリーフ弁であって、パイロット油を受圧する制御ポート23a、24aを有している。リリーフ弁CV23、CV24は、入力ポートに係る圧力が制御ポート23a、24aにかかる圧力よりも大きいときに開くように構成される。このとき、パイロット油が作動油タンク70に排出される。比例弁CV21、CV22には、制御ポート23a、24aに接続された作動油路21、22が接続されていて、パイロットポンプ71からのパイロット油が供給される。比例弁CV21、CV22は、ソレノイドを励磁することによって開度が変更可能な電磁比例弁であって、コントローラ10により制御される。
【0069】
比例弁CV21、CV22は、パイロット供給油路PA1に接続され、クリープモードのとき、第1実施形態における一次圧制御弁CV1にリリーフ弁CV23、CV24などからパイロット油が流出することを考慮したオフセットαを加えた圧力となるように二次圧制御弁CV2を制御し、通常モードのとき、アンチストール制御されていない場合に設定線L1にオフセットαを加えた値となるように、二次圧制御弁CV2を動作する。比例弁CV21、CV22のうち、二次パイロット油路内のパイロット油の油圧を制御する比例弁を二次圧制御弁CV2と呼称し、追加二次パイロット油路内のパイロット油を制御する比例弁を追加二次圧制御弁ACV2と呼称してもよい。すなわち、二次圧制御弁CV2は、二次パイロット油路内のパイロット油の油圧である二次パイロット圧を制御する。追加二次圧制御弁ACV2は、追加二次パイロット油路内のパイロット油の油圧である追加二次パイロット圧を制御する。設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、二次圧制御弁CV2を制御することによって二次パイロット圧に対応する第1ポンプパイロット圧を制御して、車速が目標速度を保つように制御するように構成される。つまり、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、第1油圧と第2油圧との差である第1差圧の絶対値を求め、第1差圧の絶対値に応じて、第1ポンプパイロット圧を、車速が所定の目標速度(上限速度)を保つように制御するように構成される。コントローラ10は、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、二次圧制御弁CV2から出力される出力圧、すなわち二次パイロット圧を上昇させるように制御する。設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、第3油圧と第4油圧との差である第2差圧の絶対値を求め、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値よりも大きいとき、第1差圧の絶対値に応じて、第2ポンプパイロット圧を、車速が所定の目標速度を保つように制御するように構成される。具体的には、コントローラ10は、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、第2ポンプパイロット圧を上昇させるように制御する。
【0070】
排出油路DR3は、第1パイロット油路PA11に接続される。排出油路DR4は、第2パイロット油路PA12に接続される。排出油路DR5は、第3パイロット油路PA13に接続される。排出油路DR6は、第4パイロット油路PA14に接続される。チェック弁CK1~CK4は、絞りTH1~TH4のある側の圧力がリリーフ弁CV23、CV24のある側の圧力よりも大きくならないと、排出油路DR3~DR6を遮断する。
【0071】
排出油路DR3と排出油路DR4は、左油圧ポンプ7Lがそれぞれ正転、逆転するときにパイロット圧が高くなるため、いずれか一方の片側のパイロット圧が一次パイロット圧と等しくなるとき、他方が一次パイロット圧に比べて大幅に小さくなる。排出油路DR5と排出油路DR6は、右油圧ポンプ7Rがそれぞれ正転、逆転するときにパイロット圧が高くなるため、いずれか一方の片側のパイロット圧が一次パイロット圧と等しくなるとき、他方が一次パイロット圧に比べて大幅に小さくなる。比例弁CV21、CV22が図7のような制御される場合、チェック弁CK1とCK2とは、いずれか一方しか開くことがなく、チェック弁CK1とCK2とは、いずれか一方しか開くことがない。このため、比例弁CV21、CV22は、第1実施形態に係る一次圧制御弁CV1の制御による圧力に対して、リリーフ弁CV23、CV24などからパイロット油が流出することによる圧力損失を加えた圧力とするように、比例弁CV21、CV22の圧力を制御することによって、上述の制御を実行可能である。
【0072】
絞りTH1は、第1シャトル弁SVaと排出油路DR3との間の第1パイロット油路PA11に設けられ、第1パイロット油路PA11のパイロット油の流量を低下させるように構成される。絞りTH2は、第2シャトル弁SVbと排出油路DR4との間の第2パイロット油路PA12に設けられ、第2パイロット油路PA12のパイロット油の流量を低下させるように構成される。絞りTH3は、第3シャトル弁SVcと排出油路DR5との間の第3パイロット油路PA13に設けられ、第3パイロット油路PA13のパイロット油の流量を低下させるように構成される。絞りTH4は、第4シャトル弁SVdと排出油路DR6との間の第4パイロット油路PA14に設けられ、第4パイロット油路PA14のパイロット油の流量を低下させるように構成される。
【0073】
図10は、第2実施形態に係る作業車両1の動作を示すフローチャートである。本フローチャートでは、ステップS1からステップS11までの処理が所定のサンプリング間隔(例えば、20μs)ごとに実行される。図10では、図8と同じ処理を同じステップ番号を付しており説明を省略する。通常モードでは(ステップS2でYes)、プロセッサ10aは、リリーフ弁CV23、CV24にかかる圧力を上述のように一次圧制御弁CV1が出力する圧力よりも高くなるように比例弁CV21、CV22を制御する。これによって、リリーフ弁CV23、CV24は閉じられる。
【0074】
クリープモードでは(ステップS2でYes)、ステップS4の後にステップS22において、プロセッサ10aは、第3参照情報10r3を参照して、目標回転速度と第1差圧の絶対値に対応する二次圧制御弁CV2、追加二次圧制御弁ACV2(比例弁CV21、CV22)から出力される出力圧、すなわち、二次パイロット圧を求める。ステップS23において、プロセッサ10aは、リリーフ弁CV23、CV24にかかる圧力が当該二次パイロット圧+チェック弁CK1~CK4の差圧となるように二次圧制御弁CV2、追加二次圧制御弁ACV2(比例弁CV21、CV22)を制御する。すなわち、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値に応じて、第1油圧ポンプの第1ポンプパイロットポートに印加される第1ポンプパイロット圧を車速が所定の目標速度を保つように制御する。第1ポンプパイロット圧を制御することは、操作弁と第1ポンプパイロットポートとを接続する二次パイロット油路の油圧である二次パイロット圧を制御することを含む。具体的には、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、第1ポンプパイロット圧を上昇させるように制御する。
【0075】
設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値よりも大きいとき、第1差圧の絶対値に応じて、第2油圧ポンプの第2ポンプパイロットポートに印加される第2ポンプパイロット圧を、車速が所定の目標速度を保つように制御する。第2ポンプパイロット圧を制御することは、操作弁と、第2ポンプパイロットポートとを接続する追加二次パイロット油路の油圧である追加二次パイロット圧を制御することを含む。具体的には、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、第2ポンプパイロット圧を上昇させるように制御する。ステップS23の後、ステップS6に進む。
<第2実施形態の作用及び効果>
【0076】
第2実施形態に係る作業車両1の制御方法もしくは作業車両1では、プロセッサ10aは、クリープ設定部材16によって入力された上限速度(第1モータの目標回転速度)を取得し、第1差圧の絶対値を取得し、取得された目標回転速度と第1差圧の絶対値とに対応する二次圧制御弁CV2、追加二次圧制御弁ACV2(比例弁CV21、CV22)から出力される出力圧(二次パイロット圧)を第3参照情報10r3から求め、求められた二次パイロット圧となるように、二次圧制御弁CV2、追加二次圧制御弁ACV2(比例弁CV21、CV22)を制御する。第1差圧の変動を利用して二次パイロット圧を制御することによってクリープモードにおいてユーザの使用感の向上を実現することができる。
<第2実施形態の変形例>
【0077】
図11は、第2実施形態における変形例に係る油圧回路図である。図11の例では、図9の例のチェック弁CK1~CK4に代えて、シャトル弁SV12,SV34が備えられている。シャトル弁SV12は、排出油路DR3と排出油路DR4のうち油圧が高い油路をリリーフ弁CV23に連通させる。シャトル弁SV34は、排出油路DR5と排出油路DR6のうち油圧が高い油路をリリーフ弁CV24に連通させる。この油圧回路の構成であっても、上述の制御を実行可能である。また、図9または図11の回路において、一次圧制御弁CV1を省略してもよい。また、二次圧制御弁CV2とバランス型のリリーフ弁との組み合わせと、追加二次圧制御弁ACV2とバランス型のリリーフ弁との組み合わせとの少なくとも1つが電磁比例式リリーフ弁にて実現されてもよい。
【0078】
第2実施形態では、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値よりも大きいとき、第1差圧の絶対値に応じて、第2油圧ポンプの第2ポンプパイロットポートに印加される第2ポンプパイロット圧を制御する例を示している。しかし、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値との差が所定の範囲内にあるとき、プロセッサ10aは、第2差圧の絶対値に応じて、第2油圧ポンプの第2ポンプパイロットポートに印加される第2ポンプパイロット圧を制御してもよい。その場合、図7の第1差圧の絶対値を第2差圧の絶対値と読み替えて、プロセッサ10aは、縦軸の出力圧が追加二次圧制御弁ACV2から出力されるように制御すればよい。このようにすれば、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値と大きく違わないときに、左右の走行装置を別々に制御することによってユーザの所望に近い旋回などの動作を実現することができる。
<第3実施形態>
【0079】
第1実施形態及び第2実施形態では、コントローラ10が第1差圧の絶対値に応じて第1ポンプパイロット圧と第2ポンプパイロット圧とを制御する例を示したが、これらのパイロット圧ばかりでなく、エンジン回転速度を制御してもよい。第3実施形態では、コントローラ10が、設定部材11によって設定された目標回転速度と、第1差圧と、クリープモードにおける上述する上限速度とを取得する。コントローラ10は、第1差圧と、クリープモードにおける上述する上限速度に基づいて上記目標回転速度から増加させる速度増加量を算出する。コントローラ10は、算出された回転速度増加量を目標回転速度に加えた修正目標回転速度に基づいた回転指令を、インジェクタ、サプライポンプ、またはコモンレールに出力する。第3実施形態においては、メモリ10bは、クリープモードにおける上限速度に対応する第1油圧モータの目標回転速度及び第1差圧の絶対値と、回転速度増加量との第4の対応関係を表す第4参照情報10r4をさらに含んでいる。第3実施形態の作業車両1が第1実施形態の油圧回路1Aを有しているとき、コントローラ10は、クリープモードにおける上限速度を実現するために、一次圧制御弁CV1から出力される出力圧を制限する。第3実施形態の作業車両1が第2実施形態の油圧回路1Bを有しているとき、コントローラ10は、クリープモードにおける上限速度を実現するために、第2実施形態の二次圧制御弁CV2及び追加二次圧制御弁ACV2から出力される出力圧を制限する。
【0080】
図12は、第3実施形態に係る第3参照情報10r3の一例を示す。図12に示すように、第3実施形態では、制御弁から出力される出力圧は、第1差圧の大きさに変わらず一定であり、上限速度に対応する第1油圧モータの目標回転速度が大きければ大きいほど大きくなるように設定されている。これは、目標回転速度に応じた第1油圧モータの第1パイロットポートに印加させる目標となる二次パイロット圧である。これは、第1実施形態に係る一次圧制御弁CV1の出力であってもよく、第2実施形態の二次圧制御弁CV2及び追加二次圧制御弁ACV2の出力であってもよい。図13は、第3実施形態に係る第4参照情報10r4の一例を示す。図13を参照すると、第1差圧がP0までのとき、エンジン6の目標回転速度は、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度r0である。第1差圧がP0よりも大きいとき、は、第1油圧モータの目標回転速度が大きくなればなるほど、エンジン6の目標回転速度が上昇する。具体的には、第1油圧モータの目標回転速度(上限速度)が大きければ大きいほど、傾きが大きくなるようにエンジン6の目標回転速度は第1差圧の絶対値に対して線形的に変化する。なお、図13の例は一次関数的な変化であるが、単調増加であれば、他の変化であってもよい。図13に指定された上限速度の下限より下、また上限よりも上の範囲は、クリープ設定部材16によって設定できない速度範囲である。第3参照情報10r3は、目標回転速度r0毎に設定されたマップ、もしくは、目標回転速度r0毎の第1油圧モータの目標回転速度に対するエンジン6の目標回転速度を求めるためのアルゴリズムのような情報である。図13の下限として指定された1km/h、上限として指定された15km/hは一例であって他の値が設定されてもよい。上限、下限の間は複数の速度が設定されてもよい。設定されていない上限速度に対応する目標回転速度は線形補間などで推定されてもよい。
【0081】
本実施形態では、コントローラ10は、設定部材11で設定されたエンジン回転速度でエンジン6が回転したときに無負荷状態で到達しうる車速から、負荷によって低下する速度分を補うようにエンジン6の目標回転数を増加するように構成される。つまり、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、第4参照情報10r4を参照してエンジン6の目標回転速度を制御することによって、車速が目標速度(上限速度)を保つように制御するように構成される。つまり、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、第1油圧と第2油圧との差である第1差圧の絶対値を求め、第1差圧の絶対値に応じて、エンジン6の回転速度を、車速が所定の目標速度(上限速度)を保つように制御するように構成される。コントローラ10は、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、エンジン6の回転速度を上昇させるように制御する。具体的には、コントローラ10は、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、エンジン6の回転速度を上昇させるように制御する。
【0082】
図14A及び図14Bは、第3実施形態に係る作業車両1の動作を示すフローチャートである。図14Aは、第1実施形態の油圧回路1Aを有する第3実施形態に係る作業車両1の動作を示すフローチャートである。図14Bは、第2実施形態の油圧回路1Bを有する第3実施形態に係る作業車両1の動作を示すフローチャートである。図14Aでは、第1実施形態と同じ動作については同一の符号を付しており、詳細な説明を省略する。図14Bでは、第2実施形態と同じ動作については同一の符号を付しており、詳細な説明を省略する。
【0083】
図14Aを参照すると、第1実施形態のステップS5に代わるステップS5Aにおいて、プロセッサ10aは、図12に示されるような第3参照情報10r3を参照して一次パイロット圧を求める。ステップS5Aの後に、ステップS31において、プロセッサ10aは、第4参照情報10r4を参照して、第1油圧モータの目標回転速度と第1差圧の絶対値に対応するエンジン6の目標回転速度を求める。ただし、ステップS5Aは、省略されてもよい。つぎに、ステップS32において、プロセッサ10aは、求められた目標回転速度に基づいて、エンジン6の回転速度を増加させるように、インジェクタ、サプライポンプ、及び、コモンレールを制御する。
【0084】
つまり、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値に応じて、第1油圧ポンプを駆動するためのエンジン6の回転速度を車速が所定の目標速度を保つように制御する。具体的には、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、エンジン6の回転速度を上昇させるように制御する。ステップS32以降は、ステップS9に進む。
【0085】
図14Bを参照すると、第2実施形態のステップS22に代わるステップS22Aにおいて、プロセッサ10aは、図12に示されるような第3参照情報10r3を参照して二次パイロット圧を求める。ステップS23の後に、上述するステップS31とステップS32とが実行される。ステップS32以降は、ステップS9に進む。ただし、ステップS22AとステップS23は、省略されてもよい。
<第3実施形態の作用及び効果>
【0086】
第3実施形態に係る作業車両1の制御方法もしくは作業車両1では、プロセッサ10aは、クリープ設定部材16によって入力された上限速度(第1モータの目標回転速度)を取得し、第1差圧の絶対値を取得し、取得された第1差圧の絶対値に対応するエンジン6の目標回転速度から求め、求められた目標回転速度となるように、インジェクタ、サプライポンプ、及び、コモンレールを制御する。第1差圧の変動を利用してエンジン6の目標回転速度を制御することによってクリープモードにおいてユーザの使用感の向上を実現することができる。
<第4実施形態>
【0087】
上述の実施形態に係る操作レバー55が直接操作弁OVA,OVB,OVC,OVDを制御していたが、作業車両1は、操作レバー55の操作量がポテンショメータなどの別途のセンサによって検出され、そのセンサから検出された操作量に基づいて第1ポンプパイロット圧と第2ポンプパイロット圧とを制御する制御弁を制御してもよい。その場合、センサから検出される操作量を調整することによって、第2実施形態と同様の制御を実現可能である。図15は、第4実施形態における作業車両1の走行系の油圧回路図である。図15では、図3と同じ構成には同じ符号が付されており、詳細な説明は省略される。第4実施形態では、作業車両1は、油圧回路1Cを含む。油圧回路1Cは、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDと第1~4シャトル弁SVa,SVb,SVc,SVdとの代わりに、ポート(PLa、PRa、PLb、PRb)のそれぞれにかかるパイロット圧を制御するパイロット制御弁CV31~CV34を含む。パイロット制御弁CV31~CV34は、ソレノイドを含む電磁比例弁である。
【0088】
本実施形態では、パイロット供給油路PA8は、パイロット制御弁CV31~CV34とパイロット供給油路PA8とを接続し、第1~第4パイロット油路PA11~PA14は、それぞれ、パイロット制御弁CV31~CV34に接続される。本実施形態では、パイロット供給油路PA1、PA8と第1~第4パイロット油路PA11~PA14とは、パイロットポンプと、第1ポンプパイロットポートまたは第2ポンプパイロットポートとを接続するパイロット油供給回路に相当する。本実施形態では、操作弁OVA,OVB,OVC,OVDがないため、一次パイロット圧、二次パイロット圧という相違が存在しない。よって、本実施形態では、これらを区別することなく単にパイロット圧と呼称する。
【0089】
通常モードのときは、操作検出センサ18によって検出される操作位置に対応して、図5に対応するパイロット圧を出力できるように、コントローラ10は、パイロット制御弁CV31~CV34を制御する。クリープモードのときは、車速を制限するために、実際には、操作レバー55がフルストロークで操作されたとしてもみなし操作位置Gaに操作したものとみなす。具体的には、操作位置がG0位置からGa位置の間であるときは、操作検出センサ18によって検出される操作位置に対応して図5の対応関係からパイロット圧が求められる。操作位置がGa位置以上のときは、みなし操作位置Gaに操作されたものとみなす。本実施形態では、G0位置からGa位置までの操作量をみなし操作量OAと呼ぶ。本実施形態では、メモリ10bは、第1、第2実施形態にかかる第3参照情報10r3に代えて第3参照情報10r3aを含む。
【0090】
図16は、第4実施形態における第3参照情報10r3aの一例を示す。第3参照情報10r3aは、第3参照情報10r3と比べて、縦軸がみなし操作量を表すことのみが相違する。設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、第3参照情報10r3aを参照し、操作検出センサ18によって検出された操作量を第1差圧の絶対値に基づいてみなし操作量に変換し、みなし操作量に応じて少なくとも1つのパイロット圧制御弁(パイロット制御弁CV31~CV34)を制御することによって第1ポンプパイロット圧を制御して、車速が目標速度を保つように制御する。つまり、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、第1油圧と第2油圧との差である第1差圧の絶対値を求め、第1差圧の絶対値に応じて、第1ポンプパイロット圧を、車速が所定の目標速度を保つように制御するように構成される。設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、コントローラ10は、第3油圧と第4油圧との差である第2差圧の絶対値を求め、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値よりも大きいとき、第1差圧の絶対値に応じて、第2ポンプパイロット圧を、車速が所定の目標速度を保つように制御するように構成される。図16に示されるように、コントローラ10は、第1差圧の絶対値が高くなればなるほど、みなし操作量を上昇させるように制御する。
【0091】
図17は、第4実施形態に係る作業車両1の動作を示すフローチャートである。図17では、第1実施形態と同じ動作については同一の符号を付しており、詳細な説明を省略する。本フローチャートでは、ステップS1からステップS11までの処理が所定のサンプリング間隔(例えば、20μs)ごとに実行される。ステップS1の終了後、プロセッサ10aは、操作検出センサ18から第1操作量を取得する。エンジンドロップがないとき(ステップS6でNo)、ステップS7Aにおいて、プロセッサ10aは、エンジン6の回転速度RSに基づいて第1参照情報10r1から図5の最高出力圧(Pc)を決定する。エンジンドロップがあるとき(ステップS6でYes)、ステップS8Aにおいて、プロセッサ10aは、エンジン6の回転速度RSに基づいて第2参照情報10r2から図5の最高出力圧(Pc)を決定する。ステップS7AまたはステップS8Aの終了後、ステップ10Aでは、プロセッサ10aは、最高出力圧(Pc)が制限された状態で第1操作量に応じてパイロット圧を決定し、決定したパイロット圧が印加されるようにパイロット制御弁CV31~CV34を制御する。
【0092】
ステップS4の終了後、ステップS5Aにおいて、プロセッサ10aは、第3参照情報10r3aを参照し、第1差圧の絶対値に基づいてみなし操作量を求める。その後、ステップS42において、プロセッサ10aは、第1操作量がみなし操作量以上であるか否か判定する。クリープモードにおいては通常第1操作量がみなし操作量以上となるように操作する。ステップS41,S5A,S42によって、プロセッサ10aは、走行指示入力装置(操作レバー)55の操作量を検出して、検出された操作量を第1差圧の絶対値に基づいてみなし操作量に変換する。第1操作量がみなし操作量以上であるとき(ステップS42でYes)、ステップ10Bにおいて、プロセッサ10aは、みなし操作量に応じてパイロット圧を決定し、決定したパイロット圧が印加されるようにパイロット制御弁CV31~CV34を制御する。つまり、プロセッサ10aは、みなし操作量に基づいて第1ポンプパイロット圧と第2ポンプパイロット圧とを制御する。以上によって、設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値に応じて、第1油圧ポンプの第1ポンプパイロットポートに印加される第1ポンプパイロット圧を車速が所定の目標速度を保つように制御する。設定部材11で設定されたエンジン6の目標回転速度がクリープ設定部材16によって設定された上限速度を達成可能な回転速度で、且つ、操作レバー55をフルストロークに操作した際に、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値よりも大きいとき、第1差圧の絶対値に応じて、第1差圧の絶対値に応じて、第2油圧ポンプの第2ポンプパイロットポートに印加される第2ポンプパイロット圧を車速が所定の目標速度を保つように制御する。
<第4実施形態の作用及び効果>
【0093】
第4実施形態に係る作業車両1の制御方法もしくは作業車両1では、プロセッサ10aは、クリープ設定部材16によって入力された上限速度(第1モータの目標回転速度)を取得し、第1差圧の絶対値を取得し、取得された目標回転速度と第1差圧の絶対値とに対応するみなし操作量から求め、それに基づくパイロット圧を第1ポンプパイロットポートに印加する。第1差圧の変動を利用してパイロット圧を制御することによってクリープモードにおいてユーザの使用感の向上を実現することができる。
<第4実施形態の変形例>
【0094】
第4実施形態では、プロセッサ10aは、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値よりも大きいとき、第1差圧の絶対値に応じて、第2油圧ポンプの第2ポンプパイロットポートに印加される第2ポンプパイロット圧を制御する例を示している。しかし、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値との差が所定の範囲内にあるとき、プロセッサ10aは、第2差圧の絶対値に応じて、第2ポンプパイロット圧を制御してもよい。その場合、図16の第1差圧の絶対値を第2差圧の絶対値と読み替えて、プロセッサ10aは、縦軸のみなし操作量に基づいて追加二次圧制御弁ACVが制御されるようにすればよい。このようにすれば、第1差圧の絶対値が第2差圧の絶対値と大きく違わないときに、左右の走行装置を別々に制御することによってユーザの所望に近い旋回などの動作を実現することができる。また、第2の実施形態において走行指示入力装置(操作レバー)55に操作検出センサ18が備えられ、操作検出センサ18の検出結果をもとに上述のみなし操作量を算出し、それに応じて二次圧制御弁CV2と追加二次圧制御弁ACV2とが上述の制御をされてもよい。この場合、みなし操作量を利用してリリーフ弁CV23、CV24を制御することになるため、図19のように電磁比例弁であるパイロット制御弁CV31~CV34によって制御するより、素早く所望の車速となるよう作業車両1を制御することができる。
<全実施形態にかかる変形例>
【0095】
各種閾値の値は、左油圧ポンプ7L、右油圧ポンプ7R、左油圧モータ31L、及び、右油圧モータ31Rの特性、左油圧モータ31Lに接続される減速機、及び、右油圧モータ31Rに接続される減速機の特性、各種制御弁の特性によって変更されてもよい。
【0096】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0097】
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
【0098】
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
【0099】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、実施形態に特段の説明がない限りにおいて、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0100】
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
【0101】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
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