(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027976
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】煙突管理装置及び煙突管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240222BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131225
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槇元 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】村本 純一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 英樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】煙突の劣化を適切に管理することが可能な煙突管理装置及び煙突管理方法を提供する。
【解決手段】煙突管理装置は、煙突における主要部ごとの点検情報を示す点検情報を取得する取得部と、取得部により取得された点検情報に基づいて、主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成する処理部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の主要部を有する煙突における前記主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記点検情報に基づいて、前記主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成する処理部と
を備える煙突管理装置。
【請求項2】
前記点検情報は、前記主要部の少なくとも一部を撮影した画像を含む
請求項1に記載の煙突管理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記点検情報と前記評価情報とを前記主要部ごとに対応付けて表示部に表示させる
請求項2に記載の煙突管理装置。
【請求項4】
前記主要部は、ライニングを含む筒身部と、前記煙突に設けられる鉄塔部と、前記煙突に付帯する付帯設備と、前記付帯設備とは異なる非付帯設備と、を少なくとも含む
請求項1に記載の煙突管理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記劣化の評価に必要な情報が前記点検情報に含まれるか否かを前記主要部ごとに判定し、前記劣化の評価に必要な情報が前記点検情報に含まれると判定した場合には、前記劣化の評価を行った結果としての前記評価情報を生成し、前記劣化の評価に必要な情報が前記点検情報に含まれないと判定した場合には、前記劣化の評価を行わない旨の前記評価情報を生成する
請求項1に記載の煙突管理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記劣化の評価を行わない旨の前記評価情報を生成する場合、前記劣化の評価に必要な情報を提供すべき旨の案内を前記評価情報に含める
請求項5に記載の煙突管理装置。
【請求項7】
前記処理部は、複数の前記主要部のうち第1主要部について前記劣化の評価に必要な情報が前記点検情報に含まれると判定し、前記第1主要部とは異なる第2主要部について前記劣化の評価に必要な情報が前記点検情報に含まれないと判定した場合には、前記第1主要部については前記劣化の評価を行った結果としての第1評価情報を生成し、前記第2主要部については前記第1評価情報に基づいて前記劣化の評価を推定した第2評価情報を生成する
請求項1に記載の煙突管理装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記評価情報に基づいて前記主要部ごとに補修のタイミングを算出する
請求項1に記載の煙突管理装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記劣化の度合いを複数段階で評価した前記評価情報を生成し、前記評価情報において前記劣化の度合いが最も高いと評価した前記主要部について前記評価を行った時点を前記補修のタイミングとして算出する
請求項8に記載の煙突管理装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記評価情報を生成した時点から最も近い前記煙突の稼働停止期間を前記補修のタイミングとして算出する
請求項8に記載の煙突管理装置。
【請求項11】
前記処理部は、補修を行う際の補修費用に基づいて前記補修のタイミングを算出する
請求項8に記載の煙突管理装置。
【請求項12】
前記処理部は、複数の前記主要部についてまとめて補修可能な前記補修のタイミングを算出する
請求項8に記載の煙突管理装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記評価情報に基づいて、前記主要部ごとに前記劣化の経時的な進行状況を示す進行情報を生成する
請求項1に記載の煙突管理装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記煙突の定期点検において補修可能な前記主要部については、前記定期点検の実施時における前記劣化の状況を前記進行状況としてとして生成する
請求項13に記載の煙突管理装置。
【請求項15】
前記処理部は、前記劣化の度合いを複数段階で評価した前記評価情報を生成し、前記劣化の度合いに基づいて前記進行情報を生成し、前記進行情報において前記劣化の度合いが最も高くなると判定される時点を前記主要部ごとの補修のタイミングとして算出する
請求項13に記載の煙突管理装置。
【請求項16】
前記処理部は、前記補修のタイミングと、前記補修のタイミングで補修を行う際の補修費用とを含む中期保全計画を表示部に表示させる
請求項8又は請求項15に記載の煙突管理装置。
【請求項17】
複数の主要部を有する煙突における前記主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得することと、
取得した前記点検情報に基づいて、前記主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成することと
を含む煙突管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、煙突管理装置及び煙突管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガスを排出する煙突においては、排ガスにより腐食等の劣化が発生するため、適宜点検が行われ、必要に応じて補修等が行われる。例えば、特許文献1には、道路系社会インフラの補修等に利用可能な劣化予測モデルのパラメータ推定を用いるアセットマネジメントシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
煙突を長期的に使用する場合、点検及び点検結果の評価により、煙突の劣化を適切に管理することが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、煙突の劣化を適切に管理することが可能な煙突管理装置及び煙突管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る煙突管理装置は、複数の主要部を有する煙突における前記主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記点検情報に基づいて、前記主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成する処理部とを備える。
【0007】
本開示に係る煙突管理方法は、複数の主要部を有する煙突における前記主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得することと、取得した前記点検情報に基づいて、前記主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成することとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、煙突の劣化を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る煙突管理装置100の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、煙突の築年数と劣化度との関係の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、煙突管理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、表示部に表示される評価情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、表示部に表示される評価情報の他の例を示す図である。
【
図6】
図6は、表示部に表示される中長期保全計画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る煙突管理装置及び煙突管理方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る煙突管理装置100の一例を示す機能ブロック図である。
図1に示す煙突管理装置100は、煙突の劣化を管理する。煙突管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶装置を有する。
【0012】
図1に示すように、煙突管理装置100は、取得部10と、処理部20と、記憶部30とを備える。煙突管理装置100は、例えば外部の入力部40及び表示部50に接続される。
【0013】
取得部10は、各種情報を取得する。取得部10は、点検対象となる煙突の基本情報及び点検情報を取得する。基本情報は、点検対象となる煙突の煙突諸元(建設年・場所含む)、補修履歴等の情報を含む。
【0014】
点検情報は、煙突の所有者等によって行われる点検結果についての情報であり、煙突における主要部ごとの点検結果を示す情報である。煙突の主要部は、例えばライニングを含む筒身部と、煙突に設けられる鉄塔部と、煙突に付帯する付帯設備と、付帯設備とは異なる非付帯設備と、を少なくとも含む。各主要部には、劣化の点検の対象となる複数の要素が設定される。例えばボルト腐食・脱落、穴あき・割れ、塗装・発錆、歩廊設備、昇降階段・梯子、マンホール、電気配管、クラウンプレート、航空障害灯、等の要素が設定される。点検情報は、これら筒身部、鉄塔部、付帯設備及び非付帯設備の各主要部についてそれぞれ個別の点検結果を示している。点検情報は、一部の主要部の点検結果が含まれなくてもよい。点検情報としては、例えば煙突の主要部の少なくとも一部を撮影した画像であってもよいし、画像に限定されず、例えば劣化の位置を基準位置に対する座標等として示す情報、劣化の種類及び状態を示すテキスト情報等であってもよい。
【0015】
取得部10は、例えば外部記憶装置等の外部機器に記憶される基本情報及び点検情報を所定のフォームで取得し、取得した基本情報及び点検情報を記憶部30にデータベースとして記憶させることができる。この場合、取得部10は、外部機器との間で有線又は無線による通信を行う通信部を含む。取得部10は、外部機器との間の通信により基本情報及び点検情報を取得することができる。
【0016】
なお、取得部10は、入力部40により入力される情報を取得することができる。上記の基本情報及び点検情報の少なくとも一方は、入力部40により入力されてもよい。また、入力部40により入力される情報としては、例えば主要部ごとに劣化を評価する後述の劣化度等であってもよい。
【0017】
処理部20は、取得された点検情報に基づいて、主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成する。評価情報は、主要部の劣化の評価結果を示す情報である。評価情報として、劣化の程度を段階的に評価する劣化度を用いることができる。劣化度は、A:健全、B:将来的に損傷、C:計画的に補修が必要、D:早急に補修が必要、等のようにAからDまでの4段階の評価である。本実施形態において、処理部20は、例えば主要部ごとにAからDまでのいずれかの劣化度を評価情報として生成する。なお、評価情報は、他の基準に基づく評価結果であってもよい。
【0018】
処理部20は、入力部40により入力される情報に基づいて評価情報を生成することができる。例えば、オペレータが点検情報に基づいて劣化を評価し、評価結果として劣化の程度を段階的に評価する劣化度に基づくAからDまでのいずれかの劣化度を主要部に対応付けて入力部40から入力することができる。この場合、処理部20は、入力された劣化度を主要部ごとの評価情報として生成することができる。
【0019】
また、処理部20は、機械学習モデルを用いて評価情報を生成してもよい。このような機械学習モデルとしては、例えば点検対象となる煙突の点検情報を入力した場合に、評価結果を予測して出力する機械学習モデルが挙げられる。この場合、例えば過去に劣化の評価を行った煙突の主要部ごとの点検情報と評価情報とを対応付けて機械学習させた学習モデルを用いることができる。
【0020】
処理部20は、劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれるか否かを判定する。処理部20は、劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれると判定した場合には、劣化の評価を行った結果としての評価情報を生成する。
【0021】
処理部20は、劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれないと判定した場合には、劣化の評価を行わない旨の評価情報を生成することができる。劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれない場合としては、例えば上記したように、点検情報において一部の主要部の点検結果が含まれていない場合等が挙げられる。なお、処理部20は、劣化の評価を行わない旨の評価情報を生成する場合、劣化の評価に必要な情報を提供すべき旨の案内を評価情報に含めてもよい。
【0022】
また、処理部20は、複数の主要部のうち第1主要部(例えば、筒身部)について劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれると判定し、第1主要部とは異なる第2主要部(例えば、鉄塔部)について劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれないと判定した場合には、第1主要部については劣化の評価を行った結果としての第1評価情報を生成し、第2主要部については第1評価情報に基づいて劣化の評価を推定した第2評価情報を生成することができる。
【0023】
処理部20は、生成した評価情報に基づいて補修が必要か否かを判定する。処理部20は、例えば上記の劣化度が所定の値以上である場合、補修が必要であると判定することができる。具体的には、処理部20は、劣化度がC以上である場合に補修が必要であると判定することができる。
【0024】
処理部20は、補修が必要と判定した場合、補修箇所、適切な補修のタイミング等を含む補修情報を生成する。処理部20は、生成した評価情報に基づいて、主要部ごとに補修のタイミングを算出してもよい。この場合、処理部20は、評価情報を生成した時点から最も近い煙突の稼働停止期間を補修のタイミングとして算出することができる。煙突の稼働停止期間については、例えば補修のタイミングを算出する際に取得部10により取得してもよいし、予め取得して記憶部30に記憶しておいてもよい。
【0025】
処理部20は、生成した評価情報に基づいて、主要部ごとに劣化の経時的な進行状況を示す進行情報を生成してもよい。処理部20は、進行情報として、例えば劣化速度を算出することができる。劣化速度Vは、以下の式により算出することができる。
【0026】
V=平均劣化速度+偏差、又は、
V=最高劣化速度+偏差
ここで、劣化速度は、煙突の主要部ごとに算出され、評価情報に含まれる劣化度を築年数で割った値である。平均劣化速度は、評価対象となる煙突の主要部が複数存在する場合、複数の劣化速度の平均値である。最高劣化速度は、評価対象となる煙突の主要部が複数存在する場合、劣化速度のうち最も高い値である。また、劣化速度として平均劣化速度あるいは最高劣化速度を用いる場合、偏差として主要部ごとの劣化速度の標準偏差、あるいはこの標準偏差に所定の係数を乗じた数値を加えてもよい。標準偏差に乗じる係数としては、例えば2または3とすることが出来るが、この値に限定されない。
【0027】
処理部20は、同一の主要部について評価時点が異なる複数の評価情報が存在する場合、複数の評価情報に基づいて進行情報を生成することができる。
【0028】
処理部20は、生成した進行情報に基づいて、補修が必要なタイミングが存在するか否かを判定する。
図2は、煙突の築年数と劣化度との関係の一例を示す図である。
図2に示すように、煙突においては、築年数が経過するにつれて劣化度が直線的に高くなると推定することができる。
図2に示す直線の傾きが上記した劣化速度Vに相当する。
【0029】
図2に示すように、処理部20は、例えば評価情報を生成した時点t1から、当該評価情報に基づいて算出した劣化速度に従って所定の時点t2まで劣化が進むと想定した場合に、劣化度が所定値以上となるタイミングが存在する場合には、補修が必要であると判定することができる。所定の時点t2については、例えば評価情報を生成した時点から5年、7年、10年等のように適宜設定することができる。また、劣化度の所定値については、例えば劣化度がC以上である場合とすることができる。
図2の例では、築年数がt3の時点で劣化度がC以上となる。従って、この場合、処理部20は、補修が必要なタイミングが存在すると判定する。処理部20は、補修が必要なタイミングが存在すると判定した場合、補修箇所、適切な補修のタイミング等を含む補修情報を生成する。なお、処理部20は、定期点検において補修可能な主要部については、定期点検の実施時における劣化の状況を劣化進行状況として生成してもよい。つまり、所定の時点t2を次回の定期点検の時期に設定してもよい。
【0030】
記憶部30は、各種情報を記憶する。記憶部30は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等のストレージを有している。なお、記憶部として、リムーバブルディスク等の外部記憶媒体が用いられてもよい。記憶部30は、上記した取得部10及び処理部20における処理を行うためのプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部30は、例えば取得部10で取得された基本情報及び点検情報、処理部20により生成された評価情報、上記の機械学習モデル及び当該機械学習モデルを生成するための点検情報及び評価情報等を記憶する。
【0031】
入力部40は、情報を入力するための所定の入力操作が可能である。入力部40は、入力操作に応じて、煙突管理装置100に対する指示信号を出力する。入力部40としては、例えばタッチパネル等の入力装置が用いられる。なお、入力部40として、タッチパネルに加えて又はタッチパネルに代えて、ボタン、レバー、ダイヤル、スイッチ又は他の入力装置が用いられてもよい。入力部40は、所定の入力操作に応じた指示信号を出力する。
【0032】
表示部50は、文字及び画像を含む各種情報を表示する。表示部50は、液晶パネル等の表示パネルを有する。表示部50は、煙突管理装置100から出力される表示信号等に基づいて情報を表示する。
【0033】
次に、上記のように構成された煙突管理装置100を用いた煙突管理方法の一例を説明する。
図3は、煙突管理方法の一例を示すフローチャートである。
【0034】
図3に示すように、煙突管理装置100において、取得部10は、複数の主要部を有する煙突における主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得する(ステップS10)。
【0035】
処理部20は、取得した点検情報に基づいて、主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成する(ステップS20)。
【0036】
処理部20は、生成した評価情報に基づいて、劣化度の進行情報を生成する(ステップS30)。処理部20は、生成した進行情報に基づいて、補修情報を生成する(ステップS40)。ステップS40において、補修情報は、補修が必要な箇所(主要部)と、補修のタイミングとを含む。処理部20は、例えば各主要部について劣化度がDとなるタイミングを、補修が必要なタイミングとして算出することができる。処理部20は、生成した補修情報、評価情報を表示部50等に表示させる(ステップS50)。なお、処理部20は、補修情報に基づいて補修が行われた箇所については、補修が行われた時点の劣化度をAとして以降の進行情報を生成する。
【0037】
図4は、表示部50に表示される評価情報の一例を示す図である。
図4に示すように、評価情報は、主要部ごとの評価を示している。また、評価情報は、基部から頂部まで複数階層に区画された高さの区画ごとの評価を示している。例えば基部から1Gまでの区画にて、主要部Xの要素X1、X2の劣化度がそれぞれ、B、Aであり、主要部Yの要素Y1、Y2、Y3の劣化度がそれぞれ、C、C、Aであり、主要部Zの要素Z1、Z2の劣化度がそれぞれ、評価無し、Cである。また、6Gから5Gまでの区画にて、主要部Xの要素X1、X2の劣化度がそれぞれ、B、Aであり、主要部Yの要素Y1、Y2、Y3の劣化度がそれぞれ、D、評価無し、Bであり、主要部Zの要素Z1、Z2の劣化度がそれぞれ、評価無し、Cである。また、頂部から6Gまでの区画にて、主要部Xの要素X1、X2の劣化度がそれぞれ、B、Aであり、主要部Yの要素Y1、Y2、Y3の劣化度がそれぞれ、D、B、Bであり、主要部Zの要素Z1、Z2の劣化度がそれぞれ、A、Dである。なお、「評価無し」とは、点検情報に該当部分が示されておらず、評価できないことを示している。
【0038】
図5は、表示部50に表示される評価情報の他の例を示す図である。なお、
図5については、
図4と同様の劣化度である場合を例に挙げて示している。
図5に示すように、評価情報は、各主要部の要素ごとに点検時に撮影した写真等の画像IMが対応付けて表示されてもよい。また、
図5に示すように、6Gから5Gの区画について、主要部Yの要素Y2の画像IMと、主要部Zの要素Z1の画像IMとが含まれていない。また、1Gから基部の区画について、主要部Zの要素Z1の画像IMが含まれていない。画像IMが劣化の評価に必要な情報である場合、処理部20は、
図5に示すように、必要な情報が点検情報に含まれないと判定した場合には、劣化の評価を行わない旨の評価情報を生成することができる。また、処理部20は、劣化の評価を行わない旨の評価情報を生成する場合、劣化の評価に必要な情報を提供すべき旨の案内ALを評価情報に含めることができる。また、6Gから5Gの区画について、主要部Zの要素Z1の画像IMが含まれていない場合において、処理部20は、例えば頂部から6Gの主要部Zの要素Z1についての劣化度に基づいて劣化の評価を推定し、推定した評価情報を生成してもよい。この場合、処理部20は、推定値であることが外観上判別できるように、例えば括弧で示すなどの表示を行わせてもよい。
【0039】
図6は、表示部50に表示される中長期保全計画の一例を示す図である。
図6に示す中長期保全計画では、劣化の状況に応じて複数の主要部Y、Zについてまとめて補修可能な補修のタイミング(時期1、時期4)を算出している。また、
図4及び
図5に示す評価結果では、主要部Yの要素Y1及び主要部Zの要素Z2については、それぞれ頂部から6Gの区画と、6Gから5Gの区画とが補修対象となっている。この2つの区画は、煙突の上部に位置し、共通の足場を組んだ方が、補修を行う際の補修費用が低くなることから、まとめて補修可能なタイミング(時期1、時期4)とすることができる。なお、処理部20は、
図6に示す中長期保全計画において、例えば補修のタイミングと、補修費用とを含む各情報を表示部50に表示させることができる。この場合、補修費用については、評価項目ごとの費用の合計により算出することができる。なお、補修費用の算出に関して、例えば補修内容ごとに概算額を予め設定しておくことができる。
【0040】
以上のように、本開示の第1態様に係る煙突管理装置は、複数の主要部を有する煙突における主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得する取得部10と、取得部10により取得された点検情報に基づいて、主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成する処理部20とを備える煙突管理装置100である。
【0041】
この構成によれば、複数の主要部を有する煙突における主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得し、取得された点検情報に基づいて、主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成するため、煙突の劣化を適切に管理することができる。
【0042】
本開示の第2態様に係る煙突管理装置は、第1態様に係る煙突管理装置において、点検情報は、主要部の少なくとも一部を撮影した画像を含む。したがって、画像に基づいて適切に評価を行うことができる。
【0043】
本開示の第3態様に係る煙突管理装置は、第1態様又は第2態様に係る煙突管理装置において、処理部20は、点検情報と評価情報とを主要部ごとに対応付けて表示部50に表示させる。したがって、表示部50を確認するオペレータに対して、点検情報と評価情報とを対応付けて把握させることができる。
【0044】
本開示の第4態様に係る煙突管理装置は、第1態様から第3態様のいずれかに係る煙突管理装置において、主要部は、ライニングを含む筒身部と、煙突に設けられる鉄塔部と、煙突に付帯する付帯設備と、付帯設備とは異なる非付帯設備と、を少なくとも含む。したがって、煙突を構成する基本的な部分ごとに評価を行うため、適切に煙突の劣化を管理することができる。
【0045】
本開示の第5態様に係る煙突管理装置は、第1態様から第4態様のいずれかに係る煙突管理装置において、処理部20は、劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれるか否かを主要部ごとに判定し、劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれると判定した場合には、劣化の評価を行った結果としての評価情報を生成し、劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれないと判定した場合には、劣化の評価を行わない旨の評価情報を生成する。したがって、点検情報に沿った評価を行うことができる。
【0046】
本開示の第6態様に係る煙突管理装置は、第5態様に係る煙突管理装置において、処理部20は、劣化の評価を行わない旨の評価情報を生成する場合、劣化の評価に必要な情報を提供すべき旨の案内を評価情報に含める。したがって、点検を行う点検者に対して必要な情報を提供するよう案内することで、次回以降の点検情報を充実させることができる。
【0047】
本開示の第7態様に係る煙突管理装置は、第1態様から第5態様のいずれかに係る煙突管理装置において、処理部20は、複数の主要部のうち第1主要部について劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれると判定し、第1主要部とは異なる第2主要部について劣化の評価に必要な情報が点検情報に含まれないと判定した場合には、第1主要部については劣化の評価を行った結果としての第1評価情報を生成し、第2主要部については第1評価情報に基づいて劣化の評価を推定した第2評価情報を生成する。したがって、点検情報に含まれない主要部の評価を推定することにより、煙突の各主要部について漏れなく評価すること可能となる。
【0048】
本開示の第8態様に係る煙突管理装置は、第1態様から第7態様のいずれかに係る煙突管理装置において、処理部20は、評価情報に基づいて主要部ごとに補修のタイミングを算出する。したがって、効率的かつ低コストとなるタイミングで補修を行うことができる。
【0049】
本開示の第9態様に係る煙突管理装置は、第8態様に係る煙突管理装置において、処理部20は、劣化の度合いを複数段階で評価した評価情報を生成し、評価情報において劣化の度合いが最も高いと評価(本実施形態においては劣化度Dとの評価)した主要部については当該評価を行った時点を補修のタイミングとして算出する。したがって、劣化度に応じて適切な補修のタイミングを算出できる。
【0050】
本開示の第10態様に係る煙突管理装置は、第8態様に係る煙突管理装置において、処理部20は、評価情報を生成した時点から最も近い煙突の稼働停止期間を補修のタイミングとして算出する。したがって、煙突の稼働停止期間を補修のタイミングとすることで、効率的な補修が可能となる。
【0051】
本開示の第11態様に係る煙突管理装置は、第8態様に係る煙突管理装置において、処理部20は、補修を行う際の補修費用に基づいて補修のタイミングを算出する。したがって、効率的かつ低コストな補修が可能となる。
【0052】
本開示の第12態様に係る煙突管理装置は、第8態様に係る煙突管理装置において、処理部20は、複数の主要部についてまとめて補修可能な補修のタイミングを算出する。したがって、効率的な補修を行うことができる。
【0053】
本開示の第13態様に係る煙突管理装置は、第13態様に係る煙突管理装置において、処理部20は、評価情報に基づいて、主要部ごとに劣化の経時的な進行状況を示す進行情報を生成する。したがって、評価時点から将来の劣化の状況についても、適切に管理することができる。
【0054】
本開示の第14態様に係る煙突管理装置は、第1態様に係る煙突管理装置において、処理部20は、煙突の定期点検において補修可能な主要部については、定期点検の実施時における劣化の状況を劣化進行状況として生成する。したがって、定期点検時において補修可能な主要部の劣化の状況を適切に管理することができる。
【0055】
本開示の第15態様に係る煙突管理装置は、第8態様から第12態様のいずれか一項に係る煙突管理装置において、処理部20は、劣化の度合いを複数段階で評価した評価情報を生成し、劣化の度合いに基づいて進行情報を生成し、進行情報において劣化の度合いが最も高くなると判定される時点を主要部ごとの補修のタイミングとして算出する。したがって、劣化度の経時的な進行状況に応じて適切な補修のタイミングを算出できる。
【0056】
本開示の第16態様に係る煙突管理装置は、第8態様から第12態様、及び第15態様のいずれか一項に係る煙突管理装置において、処理部20は、補修のタイミングと、当該補修のタイミングで補修を行う際の補修費用とを含む中期保全計画を表示部50に表示させる。したがって、表示部50を確認するオペレータに対して、補修のタイミングと、当該補修のタイミングで補修を行う際の補修費用とを対応付けて把握させることができる。
【0057】
本開示の第15態様に係る煙突管理装置は、複数の主要部を有する煙突における主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得することと、取得した点検情報に基づいて、主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成することとを含む煙突管理方法である。
【0058】
したがって、複数の主要部を有する煙突における主要部ごとの点検結果を示す点検情報を取得し、取得された点検情報に基づいて、主要部ごとに劣化を評価して評価情報を生成するため、煙突の劣化を適切に管理することができる。
【0059】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 取得部
20 処理部
30 記憶部
40 入力部
50 表示部
100 煙突管理装置
AL 案内
IM 画像