(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002798
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材に中空部を形成するための内型枠
(51)【国際特許分類】
B28B 7/30 20060101AFI20231228BHJP
B28B 7/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B28B7/30
B28B7/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102218
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 慶太
(72)【発明者】
【氏名】蓮尾 孝一
【テーマコード(参考)】
4G053
【Fターム(参考)】
4G053AA07
4G053BC03
4G053BC08
4G053CA23
4G053EA04
4G053EA26
4G053EA44
4G053EB06
(57)【要約】
【課題】コッターが設けられた中空部を有するプレキャストコンクリート(PCa)部材を製造するための内型枠であって、コッターを形成する部分を安定して支持でき、容易に取り外すことのできる内型枠を提供する。
【解決手段】
内型枠1は、コア部材12と、コア部材12に配置される板部13と、コア部材12及び板部13に対して周方向に囲むように伸長した状態で取り付けられる弾性バンド14とを備える。板部13は、取り外す向きに向かって先太となる第1板部材17と、第1板部材17を補完する形状の第2板部材18とを含む。脱型時には、板部13を引き抜くことによって生じた隙間を利用して、コア部材12を引き抜き、収縮した弾性バンド14を中空部5から取り出す。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート部材に所定の軸線方向に沿って延在する中空部を形成するための内型枠であって、
前記軸線方向に沿って延在して、外側面を有するコア部材と、
前記外側面の少なくとも一部を構成する配置面に主面が当接するように配置される板部と、
前記軸線方向回りの周方向に弾性を有し、前記コア部材及び前記板部を前記周方向に囲むように、前記周方向に伸長した状態で配置され、かつ前記軸線方向に互いに離間して配置された複数の弾性バンドとを備え、
前記板部は、
前記軸線方向に直交して前記配置面に平行な方向に延在する幅を有し、前記幅が、前記軸線方向における、前記プレキャストコンクリート部材から取り外す向きに向かって先太となる第1板部材と、
前記第1板部材と協働して前記配置面の全体を覆う第2板部材とを含み、
前記コア部材及び前記板部は、脱型時に、前記板部が取り外されることによって、前記コア部材が前記軸線方向に直交する方向に変位可能となるように構成された、内型枠。
【請求項2】
前記外側面は、各々が略平面形状をなす1つ又は互いに前記周方向に連続して隣接する複数の前記配置面を含み、
前記板部は、前記配置面の各々に対して、前記第1板部材と前記第2板部材とを含み、
(i)前記外側面は、前記配置面に隣接して前記板部が配置されない少なくとも1つの非配置面を有し、前記非配置面は前記配置面の前記周方向の両端部から延出するにつれて互いに近づくように構成され、又は、(ii)前記外側面は複数の前記配置面のみからなる、請求項1に記載の内型枠。
【請求項3】
前記コア部材は、前記軸線方向に直交する断面において矩形の外形を有するように、主面が矩形をなす4つの矩形の平板が互いに端部において連結した筒形状を含み、
前記外側面は、少なくとも2つの前記配置面を含み、
前記板部は、平板形状をなす、請求項2に記載の内型枠。
【請求項4】
前記コア部材は、前記軸線方向に直交する断面において隅部が湾曲した略矩形の外形を有し、
前記外側面は、少なくとも2つの前記配置面を含み、
(i)前記板部が平板形状をなし、前記内型枠が、前記コア部材の前記隅部と前記板部との空隙を埋める補填部材を更に備え、又は(ii)前記板部が、前記コア部材の前記隅部に当接するように湾曲している、請求項2に記載の内型枠。
【請求項5】
前記第2板部材は、対応する前記第1板部材に対して、前記幅の方向において前記第1板部材を挟むように1対設けられた、請求項2~4の何れか1項に記載の内型枠。
【請求項6】
前記コア部材の前記配置面、及び前記板部における前記コア部材に当接する表面は、ポリテトラフルオロエチレンを有する、請求項1に記載の内型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材(以下、「PCa部材」と記す)に中空部を形成するための内型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物又は土木構造物の構築において、PCa部材を使用する場合がある。例えば、建物においては、工期の短縮及び品質の向上を図るために、柱や梁をPCa部材とすることがある。PCa部材は、工場で製造され、建築現場まで運搬され、クレーン等の揚重機を用いて所定の位置に配置される。
【0003】
物流施設のように、柱間のスパンが大きい建物だと、揚重機からPCa部材の設置位置までの距離が長くなり、揚重機を大型化するか、PCa部材を軽量化する必要が生じる。PCa部材に中空部を設けることにより、PCa部材を軽量化でき、揚重機大型化を抑制できる。中空部を有するPCa部材は、建築現場において、揚重機を用いて所定の位置に設置された後、中空部にコンクリートが打設される。PCa部材と後から打設されるコンクリートとの接合を向上させるため、中空部を画成する内周面にはコッターが設けられる。従来、コッターを形成しても取り外せることができる内型枠が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、筒状のコッター形成型枠と、コッター形成型枠の内部に配置されたコア部材と、両者の間に配設されたマット状のエアパネルとを備える内型枠が記載されている。この内型枠は、エアパネルに空気を充填した状態でPCa部材を構成するためのコンクリートが打設され、脱型時には、エアパネルの空気を抜いてコッター形成型枠とコア部材との間に隙間が設けられ、エアパネルとコア部材が抜き取られ、その後、コッター形成型枠が取り外される。
【0005】
また、特許文献2には、先端に向かうに従って細くなる四角錐台形状の中抜き型枠と、中抜き型枠の表面に接着されたコッター型枠とを備える型枠装置が記載されている。コンクリートの硬化後に中抜き型枠が引き抜かれると、コッター型枠が中抜き型枠から剥がれ、その後、コッター型枠が取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-191320号公報
【特許文献2】特開2022-46053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の内型枠では、エアパネルによるコッター形成型枠の支持が不安定となるおそれがあった。また、特許文献2に記載の内型枠では、中抜き型枠を取り除いた後もコッター形成型枠がコッター(凹部)内に残り易いため、柱のように比較的長いPCa部材の場合、PCa部材における延在方向の中央部に残存するコッター型枠を取り出すことが困難であった。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑み、PCa部材にコッターが設けられた中空部を形成するための内型枠であって、コッターを形成する部分を安定して支持でき、容易に取り外すことのできる内型枠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、プレキャストコンクリート部材(3)に所定の軸線方向に沿って延在する中空部(5)を形成するための内型枠(1)であって、前記軸線方向に沿って延在して、外側面を有するコア部材(12)と、前記外側面の少なくとも一部を構成する配置面(15)に主面が当接するように配置される板部(13)と、前記軸線方向回りの周方向に弾性を有し、前記コア部材及び前記板部を前記周方向に囲むように前記周方向に伸長した状態で配置され、かつ前記軸線方向に互いに離間して配置された複数の弾性バンド(14)とを備え、前記板部は、前記軸線方向に直交して前記配置面に平行な方向に延在する幅を有し、前記幅が、前記軸線方向における、前記プレキャストコンクリート部材から取り外す向きに向かって先太となる第1板部材(17)と、前記第1板部材と協働して前記配置面の全体を覆う第2板部材(18)とを含み、前記コア部材及び前記板部は、脱型時に、前記板部が取り外されることによって、前記コア部材が前記軸線方向に直交する方向に変位可能となるように構成される。
【0010】
この態様によれば、コア部材及び板部によって、弾性バンドが安定して支持される。また、コア部材及び板部を取り除くことにより、弾性バンドが収縮しようとするため、弾性バンドがコッターから少なくとも部分的に外れるか、外れやすくなっており、弾性バンドの中空部からの取り出しが容易である。
【0011】
上記の態様において、前記外側面は、各々が略平面形状をなす1つ又は互いに前記周方向に連続して隣接する複数の前記配置面(15)を含み、前記板部(13)は、前記配置面の各々に対して、前記第1板部材(17)と前記第2板部材(18)とを含み、(i)前記外側面は、前記配置面に隣接して前記板部が配置されない少なくとも1つの非配置面(16)を有し、前記非配置面は前記配置面の前記周方向の両端部から延出するにつれて互いに近づくように構成され、又は、(ii)前記外側面は複数の前記配置面のみからなっても良い。ここで、配置面について「略平面形状」とは、完全に平面形状になっている場合だけでなく、鋼板をプレス成形等によって屈曲させた結果、2つの平面形状が交差する隅部が湾曲している場合のように、加工する上で端部が湾曲してしまう形状も含むことを意味している。
【0012】
この態様によれば、主面において配置面に当接する板部を略平面形状とすることができるため、板部の成形が容易になる。
【0013】
上記の態様において、前記コア部材(12)は、前記軸線方向に直交する断面において矩形の外形を有するように、主面が矩形をなす4つの矩形の平板(12a)が互いに端部において連結した筒形状を含み、前記外側面は、少なくとも2つの前記配置面(15)を含み、前記板部は、平板形状をなしても良い。
【0014】
この態様によれば、コア部材の隅部が直角に交差する平板形状をなすため、板部を成型が容易な平板形状としても、コア部材と板部との間に空隙が生じない。
【0015】
上記の態様において、前記コア部材(12)は、前記軸線方向に直交する断面において隅部が湾曲した略矩形の外形を有し、前記外側面は、少なくとも2つの前記配置面(15)を含み、(i)前記板部(13)が平板形状をなし、前記内型枠が、前記コア部材の前記隅部と前記板部との空隙を埋める補填部材(20)を更に備え、又は(ii)前記板部が、前記コア部材の前記隅部に当接するように湾曲していても良い。
【0016】
この態様によれば、コア部材として市販の角形鋼管を使用しても、コア部材の隅部と板部との間の空隙へのコンクリートのノロの回り込みが抑制される。
【0017】
上記の態様において、前記第2板部材(18)は、対応する前記第1板部材(17)に対して、前記幅の方向において前記第1板部材を挟むように1対設けられても良い。
【0018】
この態様によれば、第2板部材が1つの場合に比べて、各々の第2板部材のコア部材及びコンクリート部との摩擦力が小さくなり、脱型時の取り出しが容易になる。
【0019】
上記の態様において、前記コア部材(12)の前記配置面(15)、及び前記板部(13)における前記コア部材に当接する表面は、ポリテトラフルオロエチレンを有する。
【0020】
この態様によれば、ポリテトラフルオロエチレンによって摩擦力が低減されるため、脱型時における第1板部材及び第2板部材の取り出しが容易になる。
【発明の効果】
【0021】
以上の態様によれば、PCa部材にコッターが設けられた中空部を形成するための内型枠であって、コッターを形成する部分を安定して支持でき、容易に取り外すことのできる内型枠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る内型枠を建て込んだ状態を示す一部断面側面図
【
図2】第1実施形態に係る内型枠の延在方向に直交する断面(横断面)を示す図(
図3におけるII-II線に沿った内型枠の断面図)
【
図3】第1実施形態に係る内型枠を用いたPCa部材の製造過程を示す一部断面側面図(コンクリート打設後であり、鉄筋の図示を省略している。)
【
図4】第1実施形態に係る内型枠を用いたPCa部材の製造過程を示す一部断面側面図(平板部の引き抜き中の状態であり、鉄筋の図示を省略している。)
【
図5】第1実施形態に係る内型枠を用いたPCa部材の製造過程を示す一部断面側面図(コア部材の引き抜き中の状態であり、鉄筋の図示を省略している。)
【
図6】第1実施形態に係る内型枠の変形例を示す横断面図
【
図7】第1実施形態に係るコア部材の変形例を示す横断面図
【
図8】第2実施形態に係る内型枠の延在方向に直交する断面(
図9のVIII-VIII断面)を示す図
【
図9】第2実施形態に係る内型枠の用いたPCa部材の製造過程を示す一部断面側面図(コンクリート打設後)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る内型枠1を含む型枠2を建て込んだ状態を示す一部断面側面図である。
図2は、内型枠1の横断面図であり、
図3~
図5は、内型枠1を用いたPCa部材3の製造過程を示す一部断面側面図である。
【0024】
図5に示すように、製造されるPCa部材3は、コッター4が設けられた中空部5を有する。PCa部材3は、例えば、建物の柱を構築するための部材である。PCa部材3は、所定の軸線方向に沿って延在するが、PCa部材3の製造時における軸線方向は、建物に配置された時の軸線方向(鉛直方向)と異なっても良く、図示する例では、水平方向である。中空部5は、軸線方向に沿って延在し、軸線方向の両端部で開口している。コッター4は、中空部5の内周面に設けられた凹部であり、軸線方向に互いに離間して複数設けられ、各々のコッター4は、軸線方向に対する周方向の全周に渡って延在する。
図1及び
図5に示すように、PCa部材3は、鉄筋6と、コンクリート部7とを含む。
【0025】
図1に示すように、型枠2は、コンクリート部7(
図5参照)の外形を画成するための外型枠8と、中空部5(
図5参照)を画成するための内型枠1とを備える。なお、
図1では、外型枠8のみ縦断面で示し、その他の部材を側面で示している。外型枠8は、例えば、上面の全体が開口された、直方体の箱形状をなす鋼製型枠である。鉄筋6は、軸線方向に延在する主筋9と、主筋9に交差するように周方向に延在する帯筋10とを含む。主筋9における軸線方向の一端部は、外型枠8内に位置する機械式継手11に接合されており、他端部は、外型枠8から突出している。
【0026】
図2及び
図3に示すように、内型枠1は、軸線方向に沿って延在するコア部材12と、コア部材12の外側面の少なくとも一部に主面が当接するように配置される板部13と、周方向に弾性を有し、コア部材12及び板部13に対して周方向に囲むように取り付けられた弾性バンド14とを備える。
【0027】
コア部材12は、鋼製であることが好ましく、例えば、軸線方向に直交する断面において矩形の外形をなすように、主面が矩形をなす4つの平鋼板12aを溶接等により互いの端部において連結した筒形状の部材である。コア部材12は、板部13が配置される2つの配置面15と、板部13が配置されない2つの非配置面16とを含む側面を有する。2つの配置面15は互いに隣接している。コア部材12は、軸線方向に互いに隣接するように2つ設けられることが好ましく(
図1参照)、板部13及び弾性バンド14は、各々の前記コア部材12に対して配置される。
【0028】
なお、コア部材12の軸線方向に直交する断面における外形は、矩形以外の多角形や、部分的に曲線を含んでも良いが、配置面15及び非配置面16は、軸線方向に平行であることが好ましく、各々の配置面15は、平面状であることが好ましい。
【0029】
板部13は、配置される配置面15毎に、1つの第1板部材17と、第1板部材17を挟むように配置された1対の第2板部材18とを含む。第1板部材17及び第2板部材18は、軸線方向に直交して、配置される配置面15に平行な方向に延在する幅と、配置される配置面15に直交する方向に延在する厚さとを有し、軸線方向に延在する平板状の部材である。第1板部材17及び第2板部材18は、鋼板によって構成されることが好ましい。互いに隣り合う配置面15に配置された2つの板部13は、端部において互いに衝当するように配置される。
【0030】
第1板部材17及び第2板部材18は、協働して、対応する配置面15の全体を覆う。第1板部材17の幅は、軸線方向における脱型時に第1板部材17を取り出す向きに向かって、先太になっている。第1板部材17及び1対の第2板部材18は、互いに等しい延在方向の長さを有する。1対の第2板部材18は、第1板部材17を補完して配置面15を覆う。第1板部材17の厚さ方向から見た外形は、軸線方向の端部に底辺を有する台形又は三角形であることが好ましく、各々の第2板部材18の厚さ方向から見た外形は、第1板部材17に当接する斜辺と、軸線方向に平行な辺とを有する台形又は三角形であることが好ましい。
【0031】
コア部材12の配置面15と、第1板部材17及び第2板部材18の厚さ方向の両表面は、摩擦係数が低下するように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を有することが好ましい。更に、コア部材12の非配置面16、並びに/又は、第1板部材17及び第2板部材18の他の表面が、ポリテトラフルオロエチレンを有しても良い。
【0032】
弾性バンド14は、コア部材12及び板部13を周方向に囲むように、周方向に伸長した状態で、互いに軸線方向に離間した状態で配置される。弾性バンド14の周方向の弾発力によって、板部13がコア部材12に分離可能に固定されるとともに、弾性バンド14自体がコア部材12及び板部13に分離可能に固定される。弾性バンド14は、例えば、ゴムを含む。
【0033】
内型枠1を利用したPCa部材3の製造方法について説明する。
【0034】
図1示すように、作業員は、鉄筋6を組み立て、鉄筋6の筒状の組立体内に、コア部材12、板部13及び弾性バンド14を互いに組み合わせた状態で内型枠1を配置し、外型枠8を組み立てる。内型枠1は、軸線方向から鉄筋6の組立体内に挿入されても良く、帯筋10の上部を主筋9に取り付ける前に上方から挿入後、帯筋10の上部を主筋9に取り付けても良い。
【0035】
次に、
図3に示すように、作業員は、内型枠1が埋設されるように、外型枠8内にコンクリートを打設する。
【0036】
次に、コンクリート部7が脱型可能な程度まで硬化したら、作業員は、外型枠8を取り外し、
図4に示すように、第1板部材17を引き抜き、次いで、第2板部材18を引き抜く。
【0037】
次に、
図5に示すように、作業員は、コア部材12を引き抜き、次いで、弾性バンド14を中空部5から取り除く。
【0038】
図3~
図5を参照して、内型枠1の作用効果について説明する。
【0039】
コア部材12の配置面15及び非配置面16が軸線方向に平行であるため、コア部材12として、市販の鋼管を利用でき、材料コストを抑制できる。また、第1板部材17及び第2板部材18は、平板形状であるため、市販の鋼板等を加工することにより容易に作成できる。
【0040】
弾性バンド14が、鋼製のコア部材12及び板部13に取り付けられるため、コア部材12及び板部13による弾性バンド14の支持が安定する。
【0041】
板部13が、第1板部材17と第2板部材18とに分割されているため、板部13が1枚に板部材で構成される場合に比べて、コア部材12及びコンクリート部7との摩擦力が小さくなり、脱型時の引き抜きが容易になる。同様に、1つの第1板部材17に対して第2板部材18が2つ設けられているため、第2板部材18が1つの場合に比べて、各々の第2板部材18のコア部材12及びコンクリート部7との摩擦力が小さくなり、脱型時の引き抜きが容易になる。
【0042】
また、第1板部材17が、軸線方向における引き抜く向きに向かって先太になっているため、第2板部材18は、第1板部材17の引き抜きを阻害しない。
【0043】
第1板部材17及び第2板部材18の表面、並びにコア部材12の配置面15が、ポリテトラフルオロエチレンを有する場合には、コア部材12及びコンクリート部7との摩擦量が低減するため、第1板部材17及び第2板部材18の引き抜きが更に容易になる。
【0044】
コア部材12は、板部13を引き抜いたことによって生じたコンクリート部7との隙間を利用して引き抜くため、容易に引き抜くことができる。
【0045】
コア部材12を引き抜くと、弾性バンド14は、その弾性によって縮もうとするため、凹部であるコッター4から、少なくとも部分的に外れるか、外れやすくなっている。このため、弾性バンド14の中空部5からの取り出しが容易である。
【0046】
なお、板部13は、コア部材12とコンクリート部7との間にコア部材12が変位可能な隙間を設けるためのものである。従って、軸線方向に直交する断面において、矩形の外形を有するコア部材12に対しては、4つの側面の内、3つ又は4つを配置面15としても良い。なお、4つの側面の内、配置面15が1つの場合や、互いに平行な2つの面のみが配置面15の場合、隙間が生じても、配置面15に直交して互いに平行な2つの非配置面16とコンクリート部7との付着力及び摩擦力によって、コア部材12の変位が困難となる。このため、軸線方向に直交する断面において矩形の外形を有するコア部材12の場合、互いに隣接する2つ以上の側面が配置面15であることが必要である。
【0047】
また、軸線方向に直交する断面において、コア部材12の外形が矩形以外の多角形の場合や、非配置面16が湾曲していている場合は、(i)コア部材12の外側面は、少なくとも1つの非配置面16を含み、非配置面16は配置面15の周方向の両端部から延出するにつれて互いに近づくように構成され、又は、(ii)コア部材12の外側面は、非配置面16を含まず、配置面15のみからなる。ここで、「互いに近づく」という用語は、互いに平行な場合を含まない。この条件を満たすことによって、コア部材12が、板部13の引き抜きによって生じたコア部材12とコンクリート部7との隙間に向かって変位でき、コア部材12の引き抜きが容易になる。例えば、軸線方向に直交する断面におけるコア部材12の外形が正n角形の場合(nは3以上の整数)、少なくとも互いに連続して隣接するn/2個(小数点以下切り捨て)の配置面15が設けられる。
【0048】
上記の条件(i)について具体例を用いて説明する。
図6(A)は、コア部材12が軸線方向に直交する断面において正三角形の外形を有する変形例であって、板部13(
図4参照)を引き抜いた後の状態の軸線方向に直交する断面を示す。同様に、
図6(B)は、コア部材12が軸線方向に直交する断面において正五角形の外形を有する変形例を示す。板部13を引き抜いたことにより、コア部材12とコンクリート部7との間に隙間19が生じている。図示されるように、非配置面16は、配置面15の両端部から延出するにつれて互いに近づくように配置されている。コア部材12の隙間19に向かう方向(図中の矢印の方向)は、非配置面16がコンクリート部7から剥がれる方向である。従って、コア部材12が、コンクリート部7から剥がれるため、コア部材12の引き抜きが容易になる。仮に、非配置面16に、配置面15の両端部から延出するにつれて互いに遠ざかる部分があれば、その部分がコンクリート部7に引っ掛かってしまい、コア部材12は隙間19に向かって変位できない。また、非配置面16に、配置面15の両端部から延出するにつれて互いに平行となる部分があれば(例えば、コア部材12が軸線方向に直交する断面において矩形の外形を有し、1つの配置面15と3つの非配置面16を有する場合)、その部分とコンクリート部7の付着力及び摩擦力によって、コア部材12の隙間19に向かう変位が困難となる。従って、非配置面16を設ける場合に、コア部材12を容易に引き抜くためには、上記条件(i)が必要となる。
【0049】
図7は、コア部材12の変形例を示す。コア部材12は、軸線方向に直交する断面において隅部が湾曲した略矩形の外形を有する。例えば、コア部材12は、1つの鋼板をプレス成形して周方向の両端部を互いに溶接等により連結することによって製造された角形鋼管である。このように、プレス成形によって鋼板を屈曲させると、隅部が湾曲する。この場合、
図7(A)に示すように、配置面15及び非配置面16が互いに交差する箇所と、1つの配置面15が互いに交差する箇所とにおいて、コア部材12の湾曲した隅部と、平板形状の板部13との空隙を埋める補填部材20が配置される。補填部材20として、例えば、市販のR面木(所定の方向に直線状に延在して、延在方向に直交する断面の形状が直角三角形の斜辺を内側に凹むように湾曲させた形状の部材)を用いても良い。このように、コア部材12の湾曲した隅部と、平板形状の板部13の第2板部材18との空隙が、補填部材20によって埋められるため、コンクリートのノロが空隙に回り込んで硬化して脱型を阻害することが抑制される。また、
図7(B)に示すように、板部13の第2板部が、コア部材12の湾曲した隅部に当接するように湾曲していることによって、コア部材12の湾曲した隅部と板部13との間にノロが回り込む空隙が生じないようにしても良い。
【0050】
また、コア部材12が円筒形状の鋼管によって構成される場合のように、軸線方向に直交する断面において、コア部材12の外形が円形の場合は、配置面15は、軸線方向に直交する断面において、中心角が180°以上の円弧をなすように設けられ、板部13は、主面が全体としてコア部材12に当接するように湾曲している。
【0051】
次に、
図8及び
図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る内型枠21を説明する。説明に当たって、第1の実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。
【0052】
内型枠21は、軸線方向に沿って延在し、凹凸を有する外側面を有する筒形状のコッター形成部材22と、コッター形成部材22内に挿通され、軸線方向に沿って延在するコア部材23と、コッター形成部材22及びコア部材23の間に挿通された複数のエアチューブ24とを備える。
【0053】
コッター形成部材22は、四角形の角筒形状を形成するように配置された4つのせき板25と、各々のせき板25の外面に固定された、複数の突条26とを含む。せき板25は、平板形状をなし、例えば、鋼板によって形成される。互いに隣接する2つのせき板25は、解除可能に連結されている。複数の突条26は、互いに軸線方向に離間して配置され。各々の突条26は、軸線方向に直交する方向に、せき板25の表面に沿って配置される。突条26の各々は、せき板25の幅方向の全体に渡って延在しても良く、部分的に延在しても良い。また、図示する例では、互いに異なるせき板25に設けられた突条26が周方向に整合しているが、整合しなくても良い。図示するように、突条26が各々のせき板25の幅方向の中間部に延在する場合は、PCa部材3のコッター4は、中空部5の内周面の隅部以外の部分に形成される。突条26は、例えば、所定の厚さを有する鋼板によって形成される。平面状のせき板25の表面に突条26が固定されることにより、コッター形成部材22の外側面に凹凸が形成される。コッター形成部材22は、軸線方向に互いに隣り合うように2つ設けられることが好ましく、コア部材23及びエアチューブ24は、各々のコッター形成部材22に対して設けられる。
【0054】
コア部材23は、所定の剛性を有する筒状又は柱状の部材であって、鋼製であることが好ましく、例えば、角形鋼管によって構成される。コア部材23の外側面は、互いに隣接して、コッター形成部材22の内側面に隙間を置いて対向する2つの対向面27と、互いに隣接して、コッター形成部材22の内側面に当接する2つの配置面28とを含む。
【0055】
エアチューブ24は、軸線方向に延在し、空気を注入すると径方向に膨張し、空気を排出すると径方向に収縮する部材である。エアチューブ24の空気を注入した状態の外径は、他部材に拘束されない状態において、コア部材23の対向面27とこれに対向するコッター形成部材22の内側面との隙間以上の長さである。エアチューブ24は、コア部材23の対向面27の各々とこれに対向するコッター形成部材22の内側面との間に、空気が充填された状態で互いに密接するように複数配置される。
【0056】
なお、第2実施形態のコア部材23の対向面27は、第1実施形態のコア部材12の配置面15(
図2参照)と異なり、湾曲していても良い。また、エアチューブ24は、第1実施形態の板部13(
図2参照)と同様に、取り除くことによってコア部材23が変位できる隙間を作るための部材である。従って、軸線方向に直交する断面において、コア部材23の外形が矩形以外の多角形の場合や、湾曲していている場合は、(i)(a)配置面28は対向面27から遠ざかるにつれて互いに近づくように構成され、若しくは(b)配置面28は、1つの平面のみによって構成され、又は(ii)コア部材23の外側面は対向面27のみからなる。
【0057】
内型枠21を使用したPCa部材3の製造方法について説明する。
【0058】
作業員は、まず、鉄筋6(
図1参照)及び内型枠21を組み立てる。内型枠21は、コッター形成部材22内に、コア部材23と脱気した状態のエアチューブ24とを挿入した後、エアチューブ24に空気を注入することにより組み立てられる。その後、作業員は、第1実施形態と同様に、鉄筋6の筒状の組立体内に内型枠21を配置し、外型枠8を組み立てる。
【0059】
次に、作業員は、内型枠21が埋設されるように、外型枠8内にコンクリートを打設する。
【0060】
コンクリート部7が脱型可能な程度まで硬化したら、作業員は、外型枠8を取り外し、エアチューブ24内から空気を排出し、コッター形成部材22からエアチューブ24及びコア部材12を引き抜く。次いで、作業員は、コッター形成部材22におけるせき板25同士の連結を解除し、PCa部材3の中空部5から各々のせき板25を取り外す。突条26は、せき板25に固定されているため、せき板25とともに中空部5から取り外される。
【0061】
内型枠21の作用効果について説明する。
【0062】
コア部材23として、市販の鋼管を利用できる。また、コッター形成部材22は、市販の鋼板等を加工することにより容易に作成できる。
【0063】
コア部材23は、エアチューブ24が脱気されて収縮したこと又は収縮したエアチューブ24を取り除いたことによって、コッター形成部材22との間に隙間が生じるため、容易にコッター形成部材22内から引き抜くことができる。
【0064】
各々のせき板25とコア部材23との間に複数のエアチューブ24が配置されるため、1つの板状の大きなエアチューブ24が配置される場合に比べて、エアチューブ24の変形が小さく、エアチューブ24を介したコア部材23によるせき板25の支持が安定する。
【0065】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。PCa部材3は、柱以外の建築又は土木構造物の一部、例えば梁等を構成するものであっても良い。第2実施形態のエアチューブ24は、内型枠21を組み立てた状態において、コッター形成部材22及びコア部材23に当接しているのみで固定されていないが、コッター形成部材22及びコア部材23の何れか一方にのみ固定されていても良い。コア部材12,23、第1板部材17及び第2板部材18は、引き抜くことに代えて反対側から押し出すことにより取り出しても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 :内型枠
3 :プレキャストコンクリート部材(PCa部材)
4 :コッター
5 :中空部
8 :外型枠
12 :コア部材
13 :板部
14 :弾性バンド
15 :配置面
16 :非配置面
17 :第1板部材
18 :第2板部材
20 :補填部材