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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027980
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H01H33/59 D
H01H33/59 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131243
(22)【出願日】2022-08-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,航空機用先進システム実用化プロジェクト/次世代電動推進システム研究開発の委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】岩田 明彦
【テーマコード(参考)】
5G028
【Fターム(参考)】
5G028AA08
5G028AA24
5G028FB02
5G028FB06
5G028FC01
5G028FD04
(57)【要約】
【課題】軽量化しつつ、故障率を低くできる遮断器を提供する。
【解決手段】遮断器1は、第1双方向半導体スイッチS1を含む第1回路C1と、第2双方向半導体スイッチS2を含む第2回路C2と、を備える。第1回路C1において、第1双方向半導体スイッチS1に直列に接続される第1機械式スイッチM1が設けられる。正常動作時は、第1双方向半導体スイッチS1及び第1機械式スイッチM1をオンして、第1回路C1に常時電流を流す。負荷2が故障した場合は、第1双方向半導体スイッチS1をオフにして過電流を遮断する。第1双方向半導体スイッチS1が故障した場合は、第1機械式スイッチM1を開放動作して、負荷2の常時電流を第2回路C2に流す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に接続される遮断器であって、
第1双方向半導体スイッチを含む第1回路と、
前記第1回路に並列に接続され、第2双方向半導体スイッチを含む第2回路と、を備え、
前記第1回路又は前記第2回路のうち少なくとも前記第1回路において、前記第1双方向半導体スイッチに直列に接続される第1機械式スイッチが設けられ、
正常動作時は、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第1機械式スイッチをオンして、前記第1回路に常時電流を流し、
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチをオフにして過電流を遮断し、
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路に流す、遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の遮断器であって、
前記第2回路は、前記第2双方向半導体スイッチに直列に接続される機械式スイッチを含まない、
正常動作時は、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第1機械式スイッチをオンし、且つ、前記第2双方向半導体スイッチをオフして、前記第1回路に常時電流を流し、
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチをオフにして過電流をオフし、
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路へ流し、前記第1機械式スイッチの絶縁が回復した後に、当該第2双方向半導体スイッチをオフにする、遮断器。
【請求項3】
請求項1に記載の遮断器であって、
前記第1回路は、前記第1双方向半導体スイッチに直列に接続された前記第1機械式スイッチを含み、
前記第2回路は、前記第2双方向半導体スイッチに直列に接続された第2機械式スイッチを含む、遮断器。
【請求項4】
請求項3に記載の遮断器であって、
正常動作時は、前記第1機械式スイッチ及び前記第2機械式スイッチをオンし、且つ、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第2双方向半導体スイッチをオンして、常時電流を前記第1回路及び前記第2回路に流し、
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第2双方向半導体スイッチをオフにして過電流をオフし、
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路に流し、その後、正常動作を継続するか、又は、前記第1機械式スイッチの絶縁が回復した後に、前記第2双方向半導体スイッチをオフにし、
前記第2双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第2機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第1回路に流し、その後、正常動作を継続するか又は、前記第2機械式スイッチの絶縁が回復した後に、前記第1双方向半導体スイッチをオフにする、遮断器。
【請求項5】
請求項1に記載の遮断器であって、
前記第1回路は、前記第1双方向半導体スイッチに直列に接続された前記第1機械式スイッチを含み、
前記第2回路は、前記第2双方向半導体スイッチに直列に接続された第3双方向半導体スイッチを含み、
正常動作時は、前記第1機械式スイッチ及び前記第1双方向半導体スイッチをオンし、且つ、前記第2双方向半導体スイッチ及び前記第3双方向半導体スイッチをオンして、常時電流を前記第1回路及び前記第2回路に流し、
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチ、前記第2双方向半導体スイッチ及び前記第3双方向半導体スイッチをオフにし、
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路に流し、その後、正常動作を継続するか又は、前記第1機械式スイッチの絶縁が回復した後に、前記第2双方向半導体スイッチ及び前記第3双方向半導体スイッチの少なくとも1つをオフにし、
前記第2双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第3双方向半導体スイッチをオフして、前記負荷の常時電流を前記第1回路に流し正常動作を継続するか、又は、前記第3双方向半導体スイッチ及び前記第1双方向半導体スイッチをオフにし、
前記第3双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第2双方向半導体スイッチをオフして、前記負荷の常時電流を前記第1回路に流して正常動作を継続するか、又は、前記第2双方向半導体スイッチ及び前記第1双方向半導体スイッチをオフにする、遮断器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の遮断器であって、
前記負荷の故障率と前記第1双方向半導体スイッチの故障率の積が、10^-9/hour未満であり、
前記負荷の故障率と前記第2双方向半導体スイッチの故障率の積が、10^-9/hour未満となるよう設計された、遮断器。
【請求項7】
請求項6に記載の遮断器であって、
前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第2双方向半導体スイッチの故障診断処理を定期的に実行する故障診断部を、さらに備える、遮断器。
【請求項8】
請求項7に記載の遮断器であって、
前記負荷の故障率と前記第1双方向半導体スイッチの故障率の公称値と1/K1の積が、10^-9/hour未満であり、
前記負荷の故障率と前記第2双方向半導体スイッチの故障率の公称値と1/K2の積が、10^-9/hour未満であり、
前記K1は、前記第1双方向半導体スイッチの1時間当たりの前記故障診断処理の回数であり、
前記K2は、前記第2双方向半導体スイッチの1時間当たりの前記故障診断処理の回数である、遮断器。
【請求項9】
請求項5に記載の遮断器であって、
前記第1双方向半導体スイッチ、前記第2双方向半導体スイッチ、及び、前記第3双方向半導体スイッチの故障診断処理を定期的に実行する故障診断部を、さらに備える、遮断器。
【請求項10】
請求項7に記載の遮断器であって、
前記故障診断部は、正常動作時に、前記第1双方向半導体スイッチをオン、前記第2双方向半導体スイッチをオフにして、前記常時電流を前記第1回路に流す動作と、前記第1双方向半導体スイッチをオフ、前記第2双方向半導体スイッチをオンにして、前記常時電流を前記第2回路に流す動作とを順次実行して、前記動作時の前記第1回路の電流又は前記第2回路の電流の少なくとも一方に基づいて、前記故障診断処理を実行する、遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子で構成されたスイッチを含む遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源グリッドに関する研究開発の代表的なものとしては、例えば、NASAのN3-Xがある(非特許文献1)。N3-Xのような電動航空機のグリッドシステムは一部の機器が故障した場合でも、残った健全な機器で運航継続ができるよう、事故点を速やかに切り離し、接続切替えができるように構成されている。このような切替え構成を有するグリッドシステムでは、故障電流を抑制して切り離す限流・遮断器がキーパーツとなる。例えば、電動航空機のグリッドシステムでは、DC(直流)配電が検討されているから、DCの遮断器であるDC回路ブレーカは重要なパーツと位置付けられる。DC電流の波形は、ACと異なり、ゼロ点を通らないため、DC電流の遮断は、ACに比べて、困難を伴うことが多い。
【0003】
DCの限流・遮断器の研究は、主に再生可能エネルギーを活用したマイクログリッドの分野が先行している(非特許文献2)。非特許文献2では、DC回路ブレーカの7つの方式が紹介されている。そのうちの1つとして、Fig.4には、機械式スイッチと、半導体ブランチと、バリスタとを並列に接続した従来型ハイブリッド回路ブレーカが記載されている。この回路ブレーカでは、正常動作時には、機械式スイッチに電流が流れる。故障が検出されると、機械式スイッチが開放動作して、そのアーク電圧により、電流が機械式スイッチから半導体ブランチへ転流する。半導体は、機械式スイッチが、全システム電圧をブロックするまで電流を導通する。その後、半導体がオフになり、バリスタが導通して、回路ブレーカで生じる電圧を一定レベルに保持する。この方式では、切り替え速度は、機械式スイッチに強く依存する。
【0004】
また、非特許文献2のFig.6には、プロアクティブハイブリッドDC回路ブレーカが記載されている。このDC回路ブレーカは並列に接続された2つのブランチを備える。1つ目のブランチは、正常動作時の電流パスである機械式スイッチとLCS(Load Commutation Switch)である半導体スイッチ群とが直列に接続されたブランチである。2つ目のブランチは、メインブレーカである半導体スイッチ群が直列に接続されたブランチである。正常動作時は、機械式スイッチとLCSがオンとなり、メインブレーカの半導体スイッチ群はオフとなる。故障が検出されると、LCSがオフされ、メインブレーカの半導体スイッチ群はオンとなる。LCSの電圧抑制回路が、機械式スイッチからメインブレーカへ電流を流すための電圧を充電し生成する。全ての電流がメインブレーカに流れると、機械式スイッチが開放される。機械式スイッチは、電流がほぼゼロなので高速に開放される。その後、メインブレーカの半導体スイッチ群がオフになる。この方式では、LCSにより、メインブレーカの半導体スイッチ群への転流(commutation)が先取りして(すなわちプロアクティブに)行われるため、機械式スイッチの遅延が補われる。なお、同様の構成の回路ブレーカが、国際公開第2011/057675号(特許文献1)にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/057675号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Stability, Transient Response, Control, and Safety of a High-Power Electric Grid for Turboelectric Propulsion of Aircraft”, NASA/CR-2013-217865
【非特許文献2】X. Pei, et al, “A review of technologies for MVDC circuit breakers”, IECON 2016 - 42nd Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遮断器の故障は、システムに壊滅的な影響を及ぼす場合がある。例えば、電動航空機では、遮断器は、推進系のように運航に関わる重要な部分に用いられる。そのため、遮断器は、故障発生時の航空機への影響度が「Catastrophic」となり、設計保証レベル(Design Assurance Level:DAL)として、レベルAが要求される可能性がある。この場合、遮断器による遮断機能の故障率が10^-9/hour未満であることが求められる。すなわち、遮断器が、1時間当たりの負荷の短絡電流を遮断できない確率が、10^-9/hour未満であることが求められる。上記の文献では、限流・遮断器の故障についてはほとんど触れられていない。
【0008】
例えば、上記従来型ハイブリッド回路ブレーカにおいて、遮断機能の故障率を10^-9/hour未満にするためには、機械式スイッチの故障率と負荷の故障率との積、及び、半導体の故障率と負荷の故障率との積を、いずれも、10^-9/hour未満とする必要がある。負荷では、半導体が多数使用されるため、負荷の故障率は、10^-4/hour未満程度となることが多い。この場合、機械式スイッチ及び半導体の故障率を、10^-5/hour未満に設定する必要がある。機械式スイッチの故障率を10^-5/hour未満にするためには、可動部を堅牢する、及び、接点部の消耗を抑制する等の構成が必要になる。この場合、機械式スイッチは、大型で重量の大きなものになってしまう。
【0009】
また、上記従来型ハイブリッド回路ブレーカでは、負荷の故障を検出してから半導体をオフにするまでの遮断時間は、機械式スイッチの動作時間と絶縁までの回復時間の合計によって決まる。文献等から、遮断時間は、500μ秒程度である。遮断時間が、500μ秒程度である場合、上昇する負荷短絡電流を抑えるため、遮断器の上流又は下流に大きな限流インダクタが必要となる。その結果、システム全体の重量が大きくなってしまう。
【0010】
そこで、本開示は、軽量化しつつ、遮断機能の故障率を低くできる遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態における遮断器は、負荷に接続される遮断器である。前記遮断器は、第1双方向半導体スイッチを含む第1回路と、前記第1回路に並列に接続され、第2双方向半導体スイッチを含む第2回路と、を備える。
前記第1回路又は前記第2回路のうち少なくとも前記第1回路において、前記第1双方向半導体スイッチに直列に接続される第1機械式スイッチが設けられる。
正常動作時は、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第1機械式スイッチをオンして、前記第1回路に常時電流を流す。
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチをオフにして過電流を遮断する。
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路に流す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1における遮断器の構成例を示す図。
図2】実施形態2における遮断器の構成例を示す図。
図3】実施形態3における遮断器の構成例を示す図。
図4】実施形態4における遮断器の構成例を示す図。
図5図4に示す遮断器の動作例を説明するための図。
図6】実施形態5における遮断器の構成例を示す図。
図7図6に示す遮断器の動作例を説明するための図。
図8】実施形態におけるDCグリッドシステムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(構成1)
本発明の実施形態における遮断器は、負荷に接続される遮断器である。前記遮断器は、第1双方向半導体スイッチを含む第1回路と、前記第1回路に並列に接続され、第2双方向半導体スイッチを含む第2回路と、を備える。
前記第1回路又は前記第2回路のうち少なくとも前記第1回路において、前記第1双方向半導体スイッチに直列に接続される第1機械式スイッチが設けられる。
正常動作時は、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第1機械式スイッチをオンして、前記第1回路に常時電流を流す。
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチをオフにして過電流を遮断する。
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路に流す。
【0014】
上記構成1では、並列に接続された双方向半導体スイッチの少なくとも一方である第1双方向半導体スイッチに、第1機械式スイッチが直列に接続される。正常動作時の常時電流は、第1機械式スイッチを流れる。負荷の故障が検出された場合は、第1機械式スイッチに直列に接続された第1双方向半導体スイッチをオフにすることで、負荷の故障による過電流(例えば、短絡電流)を遮断する。これにより、機械式スイッチによる遮断に比べて、遮断時間を短くできる。その結果、上流又は下流に設けられる限流のためのインダクタを小型化且つ軽量化できる。さらに、この構成では、負荷と第1機械式スイッチが同時に故障した場合であっても、第1双方向半導体スイッチをオフにすることで過電流をオフにできる。また、第1双方向半導体スイッチが単独で故障した場合は、第1機械式スイッチの開放動作により、常時電流を第2回路に流すことができる。このように、構成1では、第1機械式スイッチと負荷の同時故障、第1機械式スイッチの単独故障、第1双方向半導体スイッチの単独故障に対して、フェールセーフ機能を有する。これにより、遮断器に求められる遮断機能の故障率を達成するために必要な第1機械式スイッチの故障率のレベルを低くできる。そのため、第1機械式スイッチの軽量化が可能になる。結果として、遮断器を軽量化しつつ、遮断機能の故障率を低くすることが可能になる。
【0015】
双方向半導体スイッチは、例えば、半導体スイッチ素子により構成される双方向スイッチとすることができる。半導体スイッチ素子には、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IGCT(Integrated gate-commutated thyristor)、又は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等を用いることができる。例えば、2つの半導体トランジスタのソース同士を接続したものを双方向半導体スイッチとすることができる。
【0016】
(構成2)
上記構成1において、前記第2回路は、前記第2双方向半導体スイッチに直列に接続される機械式スイッチを含まないように構成されてもよい。この場合、正常動作時は、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第1機械式スイッチをオンし、且つ、前記第2双方向半導体スイッチをオフして、前記第1回路に常時電流を流す。
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチをオフにして過電流をオフする。
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路へ流し、前記第1機械式スイッチの絶縁が回復した後に、当該第2双方向半導体スイッチをオフにする。
【0017】
第1双方向半導体スイッチが故障した場合の常時電流の第2回路への転流時には、第1機械式スイッチにアークが発生する電圧は印加されない。そのため、第1機械式スイッチは、アーク電圧が印加される機械式スイッチに比べて、小型で軽量にできる。
【0018】
(構成3)
本発明の実施形態における遮断器は、負荷に接続される遮断器である。前記遮断器は、第1双方向半導体スイッチを含む第1回路と、前記第1回路に並列に接続され、第2双方向半導体スイッチを含む第2回路と、を備える。
前記第1回路は、前記第1双方向半導体スイッチに直列に接続された第1機械式スイッチを含み、前記第2回路は、前記第2双方向半導体スイッチに直列に接続された第2機械式スイッチを含んでもよい。
【0019】
構成3では、遮断器は、双方向半導体スイッチと機械式スイッチを直列に接続したブランチが並列に接続される構成である。この構成により、正常動作時に、常時電流を、並列に接続された2つの双方向半導体スイッチに分配することができる。そのため、半導体の導通損失を小さくできる。また、構成3は、負荷が故障した場合の、2つの双方向半導体スイッチによる過電流のオフに加え、負荷と機械式スイッチの同時故障、機械式スイッチの単独故障、双方向半導体スイッチの単独故障のいずれにも対してフェールセーフ動作が可能な構成である。そのため、構成3の遮断器によれば、軽量化及び故障率の低減に加えて、損失を小さくして効率を高めることができる。
【0020】
上記構成3の遮断器は、
正常動作時は、前記第1機械式スイッチ及び前記第2機械式スイッチをオンし、且つ、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第2双方向半導体スイッチをオンして、常時電流を前記第1回路及び前記第2回路に流してもよい。
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第2双方向半導体スイッチをオフにして過電流をオフしてもよい。
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路に流し、その後、正常動作を継続するか、又は、前記第1機械式スイッチの絶縁が回復した後に、前記第2双方向半導体スイッチをオフにすることができる。
前記第2双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第2機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第1回路に流し、その後、正常動作を継続するか又は、前記第2機械式スイッチの絶縁が回復した後に、前記第1双方向半導体スイッチをオフにすることができる。
【0021】
構成1の遮断器において、前記第1回路は、前記第1双方向半導体スイッチに直列に接続された前記第1機械式スイッチを含み、前記第2回路は、前記第2双方向半導体スイッチに直列に接続された第3双方向半導体スイッチを含んでもよい。この場合、正常動作時は、前記第1機械式スイッチ及び前記第1双方向半導体スイッチをオンし、且つ、前記第2双方向半導体スイッチ及び前記第3双方向半導体スイッチをオンして、常時電流を前記第1回路及び前記第2回路に流してもよい。
前記負荷が故障した場合は、前記第1双方向半導体スイッチ、前記第2双方向半導体スイッチ及び前記第3双方向半導体スイッチをオフにすることができる。
前記第1双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第1機械式スイッチを開放動作して、前記負荷の常時電流を前記第2回路に流し、その後、正常動作を継続するか又は、前記第1機械式スイッチの絶縁が回復した後に、前記第2双方向半導体スイッチ及び前記第3双方向半導体スイッチの少なくとも1つをオフにすることができる。
前記第2双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第3双方向半導体スイッチをオフして、前記負荷の常時電流を前記第1回路に流し正常動作を継続するか、又は、前記第3双方向半導体スイッチ及び前記第1双方向半導体スイッチをオフにすることができる。
前記第3双方向半導体スイッチが故障した場合は、前記第2双方向半導体スイッチをオフして、前記負荷の常時電流を前記第1回路に流して正常動作を継続するか、又は、前記第2双方向半導体スイッチ及び前記第1双方向半導体スイッチをオフにすることができる。
【0022】
構成5において、正常動作時に、常時電流を、第1双方向半導体スイッチと、第2及び第3双方向半導体スイッチとに分配することができる。そのため、半導体の導通損失を小さくできる。また、構成5では、負荷が故障した場合に、第1~第3双方向半導体スイッチをオフにすることで過電流がオフされる。負荷と第1機械式スイッチが同時故障した場合、及び、第1機械式スイッチが故障した場合も、同様に、第1~第3双方向半導体スイッチをオフすることで、フェールセーフ動作を実行できる。また、第1~第3双方向半導体スイッチのいずれかが単独故障した場合もフェールセーフ動作が可能である。そのため、構成5の遮断器によれば、軽量化及び故障率の低減に加えて、損失を小さくして効率を高めることができる。
【0023】
(構成6)
本発明の実施形態における遮断器は、負荷に接続される遮断器であって、第1双方向半導体スイッチを含む第1回路と、前記第1回路に並列に接続され、第2双方向半導体スイッチを含む第2回路と、を備える。前記負荷の故障率と前記第1双方向半導体スイッチの故障率の積が、10^-9/hour未満であり、前記負荷の故障率と前記第2双方向半導体スイッチの故障率の積が、10^-9/hour未満となるよう設計される。
【0024】
これにより、遮断器を軽量化しつつ、遮断機能の故障率を低くすることができる。例えば、第1回路又は第2回路の少なくとも一方に、双方向半導体スイッチと直列に接続された機械式スイッチを含む構成において、遮断機能の故障率を10^-9/hour未満にするための機械式スイッチの故障率の要件が緩和される。一例として、負荷の故障率を10^-4/hour未満とし、第1及び第2双方向半導体スイッチそれぞれの故障率を10^-5/hour未満とした場合、第1及び第2双方向半導体スイッチそれぞれと機械式スイッチとの同時故障の故障率を10^-9/hour未満とするためには、機械式スイッチの故障率は10^-4/hour未満とすればよい。機械式スイッチの故障率は、10^-5/hour未満にしなくてもよいため、機械式スイッチの大型化及び重量増大を抑えることができる。なお、構成6と、上記構成1~5のいずれかを組み合わせた構成の遮断器も、本発明の実施形態に含まれる。
【0025】
なお、前記負荷の故障率と前記第1双方向半導体スイッチの故障率の積が、10^-9/hour未満とすることは、前記負荷と前記第1双方向半導体スイッチが同時に故障する確率が、10^-9/hour未満となるよう設計することと同じである。
(構成7)
上記構成1~6のいずれかにおいて、前記第1双方向半導体スイッチ及び前記第2双方向半導体スイッチの故障診断処理を定期的に実行する故障診断部と、を備えてもよい。
【0026】
故障診断部により、第1及び第2双方向半導体スイッチの故障が早期に検出できる。そのため、故障した第1又は第2双方向半導体スイッチが、故障していない他の構成要素と滞在する時間が減る。そのため、故障率を実質的に低減することができる。故障診断部の追加は、大幅な重量の増加を伴わない。結果として、遮断器を軽量化しつつ、故障率を低くすることが可能になる。故障診断処理は、例えば、双方向半導体スイッチの故障の有無を判断する処理である。
【0027】
(構成8)
上記構成7において、前記負荷の故障率と前記第1双方向半導体スイッチの故障率の公称値と前記1/K1の積が、10^-9/hour未満であり、前記負荷の故障率と前記第2双方向半導体スイッチの故障率の公称値と前記1/K2の積が、10^-9/hour未満とすることができる。
ここで、前記K1は、前記第1双方向半導体スイッチの1時間当たりの前記故障診断処理の回数である。前記K2は、前記第2双方向半導体スイッチの1時間当たりの前記故障診断処理の回数である。
【0028】
上記構成8では、負荷の故障率と第1双方向半導体スイッチの故障率との積、及び、負荷の故障率と第2双方向半導体スイッチの故障率との積のいずれも、10^-9/hour未満と見なせる。上記構成8は、上記構成7の一例である。
【0029】
(構成9)
上記構成5の遮断器は、前記第1双方向半導体スイッチ、前記第2双方向半導体スイッチ、及び、前記第3双方向半導体スイッチの故障診断処理を定期的に実行する故障診断部を、さらに備えてもよい。これにより、遮断機能の故障率を実質的に低減することができる。
【0030】
(構成10)
上記構成7又は8において、前記故障診断部は、正常動作時に、前記第1双方向半導体スイッチをオン、前記第2双方向半導体スイッチをオフにして、前記常時電流を前記第1回路に流す動作と、前記第1双方向半導体スイッチをオフ、前記第2双方向半導体スイッチをオンにして、前記常時電流を前記第2回路に流す動作とを、順次実行し、前記動作時の前記第1回路の電流又は前記第2回路の電流の少なくとも一方に基づいて、前記故障診断処理を実行する構成であってもよい。これにより、効率よく、故障診断処理を実行できる。
【0031】
上記構成9において、前記故障診断部は、正常動作時に、前記第1双方向半導体スイッチをオン、前記第2双方向半導体スイッチをオフにして、前記常時電流を前記第1回路に流す動作と、前記第1双方向半導体スイッチをオン、前記第3双方向半導体スイッチをオフにして、前記常時電流を前記第1回路に流す動作と、前記第1双方向半導体スイッチをオフ、前記第2双方向半導体スイッチをオンにして、前記常時電流を前記第2回路に流す動作とを、順次実行し、前記動作時の前記第1回路の電流又は前記第2回路の電流の少なくとも一方に基づいて、前記故障診断処理を実行する構成であってもよい。これにより、効率よく、故障診断処理を実行できる。
【0032】
故障診断部は、回路によって構成されてもよい。故障診断部は、例えば、第1双方向半導体スイッチ及び第2双方向半導体スイッチのオン/オフを制御する制御部(コントローラ)に含まれてもよい。また、遮断器は、第1双方向半導体スイッチ及び第2双方向半導体スイッチを流れる電流を検出するセンサを有してもよい。故障診断部は、検出した電流を基に故障の有無を判断してもよい。
【0033】
上記構成6~10のいずれかにおいて、前記第1双方向半導体スイッチの故障率と、前記第2双方向半導体スイッチの故障率との積が、10^-9/hour未満に設計されてもよい。これにより、第1双方向半導体スイッチと、前記第2双方向半導体スイッチとの同時故障の故障率を実質的に10^-9/hour未満にすることができる。
【0034】
ここで、故障率は、1時間あたりの故障する確率とする。故障率は、FIT(Failure In Time)すなわち、10^9時間あたりの平均故障回数の1/10^9とする。ここで、双方向半導体スイッチ、機械式スイッチ、負荷、及びその他の部品の故障率は、部品の提供元(例えば、メーカー)が提供する公称値と、その駆動設計及び配線設計そのた設計事項に基づいて決められる設計値とする。なお、「10^-9」は、「10の-9乗」、「1.0e-9」、「1.0E-9」、又は「10-9」、と表記されることもある。
【0035】
上記構成6~10のいずれかにおいて、前記第1双方向半導体スイッチの故障率と、前記第1機械式スイッチの故障率との積は、10^-9/hour未満に設計されてもよい。これにより、第1双方向半導体スイッチと、前記第1機械式スイッチとの同時故障の故障率を実質的に10^-9/hour未満にすることができる。
【0036】
上記構成6~10のいずれかにおいて、前記第2双方向半導体スイッチの故障率と、前記第2機械式スイッチの故障率との積は、10^-9/hour未満に設計されてもよい。これにより、第2双方向半導体スイッチと、前記第2機械式スイッチとの同時故障の故障率を実質的に10^-9/hour未満にすることができる。
【0037】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態1における遮断器の構成例を示す図である。遮断器1は、負荷2に接続される。遮断器1は、例えば、直流電源と負荷2の間に接続されてもよい。遮断器1は、負荷が故障した場合に、負荷に流れる過電流を遮断する。遮断器1は、一例として、DC回路ブレーカである。
【0038】
図1に示す遮断器1は、第1回路C1と第2回路C2を含む。第1回路C1と、第2回路C2は、並列に接続される。第1回路C1は、第1双方向半導体スイッチS1と、これに直列に接続される第1機械式スイッチM1とを有する。第2回路C2は、第2双方向半導体スイッチS2を有する。
【0039】
図1の例では、遮断器1が接続される線上に、遮断器1と直列にインダクタLsと、開閉器Esが接続される。インダクタLsは、過電流の上昇率を抑えるための限流インダクタである。開閉器Esは、遮断器1による遮断が完了した後に、負荷を切り離し、絶縁を確保するためのスイッチである。なお、インダクタLs及び開閉器Esは、遮断器1の上流側(電源側、一次側)、又は下流側(負荷型、二次側)のいずれに設けられてもよい。
【0040】
図1に示す例では、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2の各々は、半導体スイッチ素子を有する。半導体スイッチ素子は、直列に接続された2つの半導体トランジスタを有する。この例では、2つの半導体トランジスタのソース同士が接続される。2つの半導体トランジスタの各々には、逆流防止のためのダイオードが並列に接続される。2つの半導体トランジスタのゲートの電圧を制御することにより、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2のオン/オフが制御される。半導体トランジスタは、例えば、IGBT、IGCT、又は、MOS-FET等であってもよい。また、半導体トランジスタの半導体として、例えば、Si又はSiC等が用いられてもよい。
【0041】
第1機械式スイッチM1は、機械的に接点の接触と離間を切り替えることで、開状態(オン)と閉状態(オフ)を切り替える。第1機械式スイッチM1は、例えば、高速遮断器であってもよい。機械式スイッチの機構は、例えば、可動接点と、固定接点と、可動接点を動かして、固定接点に対して接触及び離間させる作動機構を備えてもよい。作動機構には、例えば、トムソンドライブ等の高速開閉機構が用いられてもよい。
【0042】
第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2は、負荷への配電経路に設けられたセンサbs(電流センサ)で検出された電流に応じてオン/オフすなわち導通/遮断が制御される。センサbsで検出される電流は、負荷電流であり、遮断器1を流れる電流でもある。第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2は、負荷電流以外、例えば、遮断器1の構成部品の状態に応じてオン/オフが制御されてもよい。第1機械式スイッチM1も、センサbsで検出される電流に応じてオン/オフが制御される。負荷電流以外、例えば、遮断器1の構成部品の状態に応じて、第1機械式スイッチM1のオン/オフが制御されてもよい。図示しないが、遮断器1は、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2及び第1機械式スイッチM1を制御するコントローラを有してもよい。コントローラは、例えば、回路で形成される。
【0043】
正常動作時は、第1双方向半導体スイッチS1及び第1機械式スイッチM1がオンになる。これにより、常時電流が、第1回路C1、すなわち、第1双方向半導体スイッチS1及び第1機械式スイッチM1に流れる。なお、正常動作時は、負荷に電流が供給され、負荷が正常に動作している時とする。正常動作時に負荷に供給される電流すなわち遮断器1を流れる電流を、常時電流とする。正常動作時は、第2双方向半導体スイッチS2をオフにしてもよい。
【0044】
負荷2の故障が検出されると、第1双方向半導体スイッチS1がオフになる。これにより、負荷の過電流を遮断できる。例えば、負荷2の故障は、センサbsで検出される負荷電流に基づいて検出される。例えば、負荷電流又はその変化率の少なくとも1つが過電流の条件を満たす場合に、負荷2と故障と判断される。この判断は、遮断器1に内蔵される回路で行われてもよいし、遮断器1の外部の回路で行われてもよい。負荷2の故障時には、半導体スイッチにより過電流を遮断するため、例えば、機械式スイッチで遮断する場合に比べて遮断時間を短くできる。例えば、過電流の遮断時間を100μ秒程度とすることができる。これにより、過電流の上昇率を抑えるためのインダクタLsを小型化且つ軽量化できる。なお、負荷2の故障が検出された場合、第1双方向半導体スイッチS1をオフにした後、電流がゼロになった後に第1機械式スイッチM1をオフにしてもよい。
【0045】
第1双方向半導体スイッチS1が故障した場合は、第1機械式スイッチM1を開放動作して、負荷2の常時電流を第2回路に流す。これにより、第1双方向半導体スイッチS1が故障した場合であっても、遮断器1が過電流を遮断できない状況を避けることができる。
【0046】
図1に示す遮断器1では、軽量化しつつ、遮断機能の故障率を小さくすることが可能である。以下にその例を説明する。一例として、図1に示すように、負荷2の故障率、第1機械式スイッチM1の故障率を10^-4/hour未満に設定し、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2の故障率を10^-5/hour未満に設定する。この場合、第1双方向半導体スイッチS1と負荷2の同時故障の故障率は、10^-9/hour未満となる。同様に、第2双方向半導体スイッチS2と負荷2の同時故障の故障率も、10^-9/hour未満となる。故障率が、10^-9/hour未満を満たさないケースは、第1機械式スイッチM1と負荷2の同時故障、第1機械式スイッチM1の単独故障、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2のそれぞれの単独故障となる。これらのケースは、いずれも、遮断器1による、下記のようなフェールセーフ動作によって、遮断器1が、事故電流を遮断できなくなる状況を回避できる。
【0047】
第1機械式スイッチM1と負荷2の同時故障の場合、第1双方向半導体スイッチS1をオフにする。これにより、負荷の過電流を遮断できる。
【0048】
第1機械式スイッチM1の単独故障の場合、第1双方向半導体スイッチS1をオフにすることで、常時電流をオフにする。例えば、機械式スイッチがオープン破壊した場合、又は、導通電圧が、想定される導通電圧より高くなった場合に、機械式スイッチの故障が検出される。第1機械式スイッチM1の故障が検出されると、第1双方向半導体スイッチS1がオフになるよう構成される。
【0049】
第1双方向半導体スイッチS1の単独故障の場合、第1機械式スイッチM1をオフにして、且つ、第2双方向半導体スイッチS2をオンにして、第2回路C2に常時電流を転流する。この後、そのまま、正常動作を継続してもよい。又は、第1機械式スイッチM1の絶縁が確保された以降に、第2双方向半導体スイッチS2をオフにし、常時電流をオフにしてもよい。この場合、転流時に第1機械式スイッチM1には、アークを発生させる電圧は印加されない。そのため、第1機械式スイッチM1は、過電流を想定した構成に比べて、小型で軽量にできる。
【0050】
第2双方向半導体スイッチS2の単独故障の場合、負荷2の動作を停止させる。双方向半導体スイッチの故障は、例えば、双方向半導体スイッチがオープン破壊した場合や、導通電圧が、想定される導通電圧より高くなった場合に、検出される。第2双方向半導体スイッチS2の故障が検出された場合、第2双方向半導体スイッチS2をオンの状態で、第1双方向半導体スイッチS1をオフにする。
【0051】
上記のような各部品の故障率の設定及びフェールセーフ機能によって、遮断器1が、事故電流を遮断できなくなる故障の故障率(すなわち、遮断機能の故障率)を、10^-9/hour未満にすることができる。なお、開閉器Esの故障率は、開閉器Esを複数直列化する等により、10^-9/hour未満とすることができる。また、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2は、故障率の公称値が10^-5/hour未満のものを用いてもよい。又は、故障率の公称値が10^-5/hour以上の半導体スイッチを、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2として、自己診断機能を追加することにより、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2の故障率を実質的に、10^-5/hourと見なせる構成としてもよい(実施形態4参照)。
【0052】
(実施形態2)
図2は、実施形態2における遮断器の構成例を示す図である。図2に示す遮断器1は、第2回路において、第2機械式スイッチM2が設けられる点で、図1の遮断器1と異なっている。第2機械式スイッチM2は、第2双方向半導体スイッチS2と直列に接続される。第2機械式スイッチM2は、第1機械式スイッチM1と同じ構成の機械式スイッチとすることができる。
【0053】
図2の遮断器1は、正常動作時に、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2と、第1及び第2機械式スイッチM1、M2がオンになる。常時電流は、第1回路C1及び第2回路C2に並列に流れる。常時電流が、第1回路C1及び第2回路C2に分配されるため、正常動作時の導通損失が小さくなる。
【0054】
負荷2の故障が検出された場合、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2がオフになる。これにより、負荷2の故障による過電流が遮断される。このように、半導体スイッチで過電流を遮断するため、遮断時間を短くできる。例えば、遮断時間を、100μ秒程度にできる。そのため、限流のためのインダクタLsを小型で軽量にできる。なお、負荷2の故障が検出された場合、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2をオフにした後、電流がゼロになった後に第1及び第2機械式スイッチM1、M2をオフにしてもよい。
【0055】
第1双方向半導体スイッチS1が故障した場合は、第1機械式スイッチM1を開放動作して、負荷2の常時電流を第2回路C2に流す。第2双方向半導体スイッチS2が故障した場合は、第2機械式スイッチM2を開放動作して、負荷2の常時電流を第1回路C1に流す。これにより、第1双方向半導体スイッチS1又は第2双方向半導体スイッチS2のいずれかが故障した場合に、遮断器1が過電流を遮断できない状況が発生するのを避けることができる。
【0056】
図2に示す遮断器1では、軽量化しつつ、遮断機能の故障率を小さくすることが可能である。一例として、図2に示すように、負荷2の故障率、第1機械式スイッチM1の故障率を10^-4/hour未満に設定し、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2の故障率を10^-5/hour未満に設定する。この場合、第1双方向半導体スイッチS1と負荷2の同時故障の故障率、第2双方向半導体スイッチS2と負荷2の同時故障の故障率は、及び、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2の同時故障の故障率は、いずれも、10^-9/hour未満となる。故障率が、10^-9/hour未満を満たさないケースは、第1機械式スイッチM1と負荷2の同時故障、第1機械式スイッチM1及び第2機械式スイッチM2それぞれの単独故障、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2のそれぞれの単独故障となる。これらのケースは、いずれも、遮断器1による、下記のようなフェールセーフ動作によって、遮断器1が、事故電流を遮断できなくなる状況を回避できる。
【0057】
第1機械式スイッチM1と負荷2の同時故障の場合、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2をオフにする。これにより、負荷2の過電流を遮断できる。第1機械式スイッチM1の故障が検出され、且つ、負荷2の故障が検出された場合に、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2がオフになる。
【0058】
第1機械式スイッチM1の単独故障の場合、第1双方向半導体スイッチS1をオフにして、常時電流を第2回路C2に転流する。その後、正常動作を継続してもよい。又は、第2双方向半導体スイッチS2をオフにし、常時電流をオフにしてもよい。第2機械式スイッチM2の単独故障の場合、第2双方向半導体スイッチS2をオフにして、常時電流を第1回路C1に転流する。その後、正常動作を継続してもよい。又は、第1双方向半導体スイッチS1をオフにし、常時電流をオフにしてもよい。
【0059】
第1及び第2機械式スイッチM1、M2の同時故障の場合、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2をオフにして、常時電流をオフにする。すなわち、第1機械式スイッチM1の故障が検出され、且つ、第2機械式スイッチM2の故障も検出された場合、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2をオフする。例えば、第1機械式スイッチM1の故障が検出され、第1双方向半導体スイッチS1をオフにして第2回路C2で常時電流を流している状態で、第2機械式スイッチM2の故障が検出された場合、第2双方向半導体スイッチS2もオフにして常時電流をオフにする。
【0060】
第1双方向半導体スイッチS1の単独故障の場合、第1機械式スイッチM1をオフにして、常時電流を第2回路C2に転流する。その後、正常動作を継続してもよい。又は、第1機械式スイッチM1に加えて、第2双方向半導体スイッチS2又は第2機械式スイッチM2の少なくとも一方をオフにすることで、常時電流をオフにしてもよい。第1機械式スイッチM1をオフにして、常時電流を第2回路C2に転流する際に、第1機械式スイッチM1にアークを発生させる電圧は印加されない。そのため、第1機械式スイッチM1は、過電流を想定した構成に比べて、小型で軽量にできる。
【0061】
第2双方向半導体スイッチS2の単独故障の場合、第2機械式スイッチM2をオフにして、常時電流を第1回路C1に転流する。その後、正常動作を継続してもよい。又は、第2機械式スイッチM2に加えて、第1双方向半導体スイッチS1又は第1機械式スイッチM1の少なくとも一方をオフにすることで、常時電流をオフにしてもよい。第2機械式スイッチM2をオフにして、常時電流を第1回路C1に転流する際に、第2機械式スイッチM2にアークを発生させる電圧は印加されない。そのため、第2機械式スイッチM2は、過電流を想定した構成に比べて、小型で軽量にできる。
【0062】
上記のような各部品の故障率の設定及びフェールセーフ機能によって、遮断器1が、事故電流を遮断できなくなる故障の故障率(すなわち、遮断機能の故障率)を、10^-9/hour未満にすることができる。
【0063】
(実施形態3)
図3は、実施形態3における遮断器の構成例を示す図である。図3に示す遮断器1は、第2回路において、第2機械式スイッチM2の代わりに第3双方向半導体スイッチS3が設けられる点で、図2の遮断器1と異なっている。第3双方向半導体スイッチS3は、第2双方向半導体スイッチS2と直列に接続される。第3双方向半導体スイッチS3は、第1又は第2双方向半導体スイッチS1、S2と同じ構成の双方向半導体スイッチとすることができる。
【0064】
図3の遮断器1は、正常動作時に、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3と、第1機械式スイッチM1がオンになる。常時電流は、第1回路C1及び第2回路C2に並列に流れる。常時電流が、第1回路C1及び第2回路C2に分配されるため、正常動作時の導通損失が小さくなる。
【0065】
負荷2の故障が検出された場合、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3がオフになる。これにより、負荷2の故障による過電流が遮断される。このように、半導体スイッチで過電流を遮断するため、遮断時間を短くできる。例えば、遮断時間を、100μ秒程度にできる。そのため、限流のためのインダクタLsを小型で軽量にできる。
【0066】
第1双方向半導体スイッチS1が故障した場合は、第1機械式スイッチM1を開放動作して、負荷2の常時電流を第2回路C2に流す。第2双方向半導体スイッチS2又は第3双方向半導体スイッチS3のいずれかが故障した場合は、第2機械式スイッチM2を開放動作して、負荷2の常時電流を、第1回路C1に流す。これにより、第1双方向半導体スイッチS1、第2双方向半導体スイッチS2又は第3双方向半導体スイッチS3のいずれかが故障しても、遮断器1が過電流を遮断できない状況を避けることができる。
【0067】
図3に示す遮断器1では、軽量化しつつ、遮断機能の故障率を小さくすることが可能である。一例として、図3に示すように、負荷2の故障率、第1機械式スイッチM1の故障率を10^-4/hour未満に設定し、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3の故障率を10^-5/hour未満に設定する。この場合、S1と負荷2の同時故障、S2と負荷2の同時故障、S3と負荷2の同時故障、S1とS2の同時故障、S2とS3の同時故障、S1とS3の同時故障のそれぞれの故障率は、いずれも、10^-9/hour未満となる。故障率が、10^-9/hour未満を満たさないケースは、第1機械式スイッチM1と負荷2の同時故障、第1機械式スイッチM1の単独故障、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3のそれぞれの単独故障となる。これらのケースは、いずれも、遮断器1による、下記のようなフェールセーフ動作によって、遮断器1が、事故電流を遮断できなくなる状況を回避できる。
【0068】
第1機械式スイッチM1と負荷2の同時故障の場合、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3をオフにする。これにより、負荷2の過電流を遮断できる。第1機械式スイッチM1の故障が検出され、且つ、負荷2の故障が検出された場合に、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3がオフになる。
【0069】
第1機械式スイッチM1の単独故障の場合、第1双方向半導体スイッチS1をオフにして、常時電流を第2回路C2に転流する。その後、正常動作を継続してもよい。又は、第2双方向半導体スイッチS2及び第3双方向半導体スイッチS3をオフにし、常時電流をオフにしてもよい。
【0070】
第1双方向半導体スイッチS1の単独故障の場合、第1機械式スイッチM1をオフにして、常時電流を第2回路C2に転流する。その後、正常動作を継続してもよい。又は、第1機械式スイッチM1に加えて、第2双方向半導体スイッチS2又は第3双方向半導体スイッチS3の少なくとも一方をオフにすることで、常時電流をオフにしてもよい。第1機械式スイッチM1をオフにして、常時電流を第2回路C2に転流する際に、第1機械式スイッチM1にアークを発生させる電圧は印加されない。そのため、第1機械式スイッチM1は、過電流を想定した構成に比べて、小型で軽量にできる。
【0071】
第2双方向半導体スイッチS2の単独故障の場合、第3双方向半導体スイッチS3をオフにし、常時電流を第1回路C1に転流する。その後、正常動作を継続してもよい。又は、第3双方向半導体スイッチS3に加えて、第1双方向半導体スイッチS1又は第1機械式スイッチM1の少なくとも1つをオフにすることで、常時電流をオフにしてもよい。
【0072】
第3双方向半導体スイッチS3の単独故障の場合、第2双方向半導体スイッチS2をオフにし、常時電流を第1回路C1に転流する。その後、正常動作を継続してもよい。又は、第2双方向半導体スイッチS2に加えて、第1双方向半導体スイッチS1又は第1機械式スイッチM1の少なくとも1つをオフにすることで、常時電流をオフにしてもよい。
【0073】
上記のような各部品の故障率の設定及びフェールセーフ機能によって、遮断器1が、事故電流を遮断できなくなる故障の故障率(すなわち、遮断機能の故障率)を、10^-9/hour未満にすることができる。
【0074】
(実施形態4)
図4は、実施形態4における遮断器の構成例を示す図である。図4に示す遮断器1は、故障診断部3をさらに備える点で、図1に示す遮断器1と異なる。すなわち、実施形態4の遮断器1は、実施形態1に故障診断の機能を追加したものである。故障診断部3は、第1機械式スイッチM1、第1及び第2双方向半導体スイッチのオン/オフを制御するコントローラCtの一部である。故障診断部3は、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2の故障診断処理を定期的に実行する。
【0075】
故障診断部3は、第1回路C1の電流i1、及び、第2回路C2の電流i2に基づいて、双方向半導体スイッチの故障の有無を判断することができる。一例として、故障診断部3は、正常動作時において、S1をオン、S2をオフにした場合の第2回路C2の電流i2、及び、S1をオフ、S2をオンにした場合の第1回路C1の電流i1を用いて、第1双方向半導体スイッチS1及び第2双方向半導体スイッチS2の故障の有無を判断することができる。この場合、遮断器1は、第1回路C1の電流i1を検出するセンサ、及び、第2回路C2の電流i2を検出するセンサを備えてもよい。
【0076】
図5は、図4に示す遮断器1における故障診断処理の例を説明するための図である。図5は、第1回路C1の電流i1、第2回路C2の電流i2、第1双方向半導体スイッチS1のオン/オフ状態、及び、第2双方向半導体スイッチS2のオン/オフ状態の時間変化を示す。図5に示す例では、故障診断部3は、常時電流が流れている間に、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2のオン/オフを制御して、S1及びS2のうち一方をオフ、他方をオンとなる期間を実現させる。故障診断部3は、この期間において、検出される第1回路C1の電流i1、及び第2回路C2の電流i2を基に、S1及びS2の故障の有無を判断することができる。この期間では、双方向半導体スイッチをオンにした方の回路に全ての常時電流が流れ、オフにした方の回路の常時電流は遮断される。この現象が検出された場合、故障診断部3は、故障がないと判断できる。
【0077】
例えば、図5に示すように、故障診断部3が、正常動作時のS1及びS2の両方ともオンの状態では電流i1、i2のレベルはいずれもILaである。この状態から、S1をオフにすると、常時電流は、全て第2回路C2に流れるため、電流i2のレベルはILb(ILa<ILb)に、電流i1のレベルは0になる。また、正常動作時のS1及びS2の両方ともオンの状態から、S2をオフにすると、電流i1のレベルはILbに、電流i2のレベルは0になる。このS1又はS2のオン/オフの切り替えによる電流i1、i2の変化を確認することで、故障診断部3は、S1及びS2の故障の有無を判断できる。例えば、S1をオンからオフにした場合に、電流i1のレベルが、ILaから0になれば、故障診断部3は、S1のオフ機能は正常と判断できる。電流i1のレベルが、ILaのままで0にならなければ、故障診断部3は、S1のオフ機能が故障していると判断できる。S1をオフからオンにした場合に、電流i1のレベルが0からILaに戻れば、S1のオン機能は正常と判断できる。電流i1のレベルが0のままでILaに戻らなければ、S1のオン機能が故障していると判断できる。S2についても同様にして故障の有無を判断できる。
【0078】
このように、故障診断部3は、第1双方向半導体スイッチS1及び第2双方向半導体スイッチS2のオン/オフを制御して、正常動作時に、常時電流を、第1回路C1及び第2回路C2に交互に一時的に転流させ、転流時の第1回路C1の電流i1又は第2回路C2の電流i2の少なくとも一方を検出する。故障診断部3は、検出した電流を基に第1双方向半導体スイッチS1又は第2双方向半導体スイッチS2の故障の有無を判断する。
【0079】
故障診断部3により、第1双方向半導体スイッチS1、又は、第2双方向半導体スイッチS2の故障が検出された場合、上記の実施形態1と同様に、遮断器1は、フェールセーフ動作を実行する。
【0080】
例えば、第1双方向半導体スイッチS1の故障診断処理を、1時間あたりK1回繰り返すとことにより、第1双方向半導体スイッチS1の故障率が、実質的に1/K1低下するとみなすことができる。例えば、第1双方向半導体スイッチS1の故障診断処理を、1時間あたりK1回繰り返すことにより、第1双方向半導体スイッチS1の故障が生じてから、故障を特定し、経路を遮断するまでの時間が、1/10時間となる。すなわち、故障が生じていない要素が、故障した第1双方向半導体スイッチS1と同じく滞在する時間が、1/10時間に短縮される。そのため、第1双方向半導体スイッチS1の故障率が、実質的に1/10低下したとみなすことができる。例えば、第1双方向半導体スイッチS1の故障率の公称値が10^-4/hour未満の場合、1時間当たり10回(K1=10)の第1双方向半導体スイッチS1の故障診断処理を実行することで、第1双方向半導体スイッチS1の故障率を、10^-5/hourと見なすことが可能になる。
【0081】
同様に、第2双方向半導体スイッチS2の故障診断処理を、1時間あたりK2回繰り返すとことにより、第1双方向半導体スイッチS1の故障率が、実質的に1/K2低下するとみなすことができる。
【0082】
この観点から、負荷2の故障率と第1双方向半導体スイッチS1の故障率の公称値と1/K1との積が、10^-9/hour未満となるように、負荷2の故障率、第1双方向半導体スイッチS1の故障率の公称値、及び、1時間当たりの第1双方向半導体スイッチS1の故障診断回数K1を設定することができる。これにより、遮断器1の故障率を低くすることが容易になる。
【0083】
同様に、負荷2の故障率と第1双方向半導体スイッチの故障率の公称値と1/K2との積が、10^-9/hour未満となるように、負荷2の故障率、第2双方向半導体スイッチS2の故障率の公称値、及び、1時間当たりの第2双方向半導体スイッチS2の故障診断回数K2を設定することができる。これにより、遮断器1の遮断機能の故障率を低くすることがより容易になる。
【0084】
なお、K1、K2は、特に限定されないが、例えば、故障診断部3は、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2のそれぞれに対して、1時間に少なくとも1回、故障診断処理を実行してもよい(1≦K1、1≦K2)。
【0085】
故障診断部3は、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2のそれぞれの故障診断を、例えば、一定の周期で実行してもよい。これにより、効率よく、故障診断処理を実行できる。なお、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2のそれぞれの故障診断処理の周期は、厳密に一定でなくてもよい。例えば、1時間内で、偏らずにある程度分散したタイミングで故障診断処理が実行されてもよい。このように、故障診断処理を定期的に実行する形態には、一定の周期、又は故障率の低下に貢献できる程度に時間的に分散して故障診断処理を実行する場合が含まれる。
【0086】
本例において、故障診断部3は、S1及びS2の両方をオンにして第1回路C1及び第2回路C2に常時電流を流す動作、S1をオン、S2をオフにして第1回路C1に常時電流を流す第1回路転流動作、及び、S1をオフ、S2をオンにして、第2回路C2に常時電流を流す第2回路転流動作を、順次実行する。故障診断部3は、第1回路転流動作時に検出される第2回路C2の電流i2に基づいて第2双方向半導体スイッチS2の故障の有無を判断し、第2回路転流動作時に検出される第1回路C1の電流i1に基づいて第1双方向半導体スイッチS1の故障の有無を判断する。この判断処理が、定期的に繰り返し実行される。これにより、効率よく故障診断処理を実行できる。なお、第1回路転流動作と、第2回路転流動作の順番は、図5に示す場合に限定されない。また、第1回路転流動作時に検出される第1回路C1の電流i1に基づいてS2の故障の有無を判断してもよい。同様に、第2回路転流動作時に検出される第2回路C2の電流i2に基づいてS1の故障の有無を判断してもよい。
【0087】
第1回路転流動作及び第2回路転流動作のそれぞれの期間の長さは、S1及びS2の両方をオンにして常時電流を並列に流す期間よりも短くすることが好ましい。これにより、常時電流を並列に流すことによる損失低減の度合いが高くなる。
【0088】
上記実施形態2における遮断器1にも、故障診断部3を追加することができる。実施形態2の遮断器1に、上記故障診断部3と同様の構成及び動作の故障診断部3を追加することができる。この場合、例えば、図2に示す構成において、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2の故障率の公称値にそれぞれ、1/K1、1/K2を掛けた値が、10^-9/hour未満となるように、負荷2の故障率、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2の故障率の公称値、及び、1時間当たりの第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2のそれぞれの故障診断回数K1、K2を設定することができる。
【0089】
(実施形態5)
図6は、実施形態5における遮断器の構成例を示す図である。図6に示す遮断器1は、故障診断部3をさらに備える点で、図3に示す遮断器1と異なる。すなわち、実施形態5の遮断器1は、実施形態3に故障診断の機能を追加したものである。故障診断部3は、第1機械式スイッチM1、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3のオン/オフを制御するコントローラCtの一部である。故障診断部3は、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3の故障診断処理を定期的に実行する。
【0090】
故障診断部3は、正常動作時において、S1をオフ、S2及びS3をオンにした場合の第1回路C1の電流i1、S1及びS3をオン、S2をオフにした場合の第2回路C2の電流i2、並びに、S1及びS2をオン、S3をオフにした場合の第2回路C2の電流i2を用いて、第1双方向半導体スイッチS1、第2双方向半導体スイッチS2及び第3双方向半導体スイッチS3の故障の有無を判断する。この場合、遮断器1は、第1回路C1の電流i1を検出するセンサ、及び、第2回路C2の電流i2を検出するセンサを備えてもよい。
【0091】
図7は、図5に示す遮断器1における故障診断処理の例を説明するための図である。図7は、第1回路C1の電流i1、第2回路C2の電流i2、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3それぞれのオン/オフ状態を示す。図7に示す例では、故障診断部3は、常時電流が流れている間に、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3のオン/オフを制御して、S1、S2、S3のうち1つがオフ、残りがオンとなる期間を実現させる。故障診断部3は、この期間において、検出される第1回路C1の電流i1、及び第2回路C2の電流i2を基に、S1、S2、S3の故障の有無を判断することができる。この期間では、双方向半導体スイッチをオフにした方の回路の常時電流が遮断され、他方の回路に全ての常時電流が流れる。この現象が検出された場合、故障診断部3は、故障がないと判断できる。
【0092】
例えば、図7に示すように、故障診断部3が、正常動作時のS1、S2及びS3が全てオンの状態では電流i1、i2のレベルはいずれもILaである。この状態から、S1をオフにすると、常時電流は、全て第2回路C2に流れるため、電流i2のレベルはILb(ILa<ILb)に、電流i1のレベルは0になる。また、正常動作時のS1及びS2の両方ともオンの状態から、S2又はS3のいずれか1つをオフにすると、電流i1のレベルはILbに、電流i2のレベルは0になる。このS1、S2、S3のオン/オフの切り替えによる電流i1、i2の変化を確認することで、故障診断部3は、S1及びS2の故障の有無を判断できる。例えば、S2をオンからオフにした場合に、電流i2のレベルが、ILaから0になれば、故障診断部3は、S2のオフ機能は正常と判断できる。電流i2のレベルが、ILaのままで0にならなければ、故障診断部3は、S2のオフ機能が故障していると判断できる。S2をオフからオンにした場合に、電流i2のレベルが0からILaに戻れば、S2のオン機能は正常と判断できる。電流i2のレベルが0のままでILaに戻らなければ、S2のオン機能が故障していると判断できる。S1、S3についても同様にして故障の有無を判断できる。
【0093】
このように、故障診断部3は、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3のオン/オフを制御して、正常動作時に、常時電流を、第1回路C1及び第2回路C2に交互に一時的に転流させ、転流時の第1回路C1の電流i1又は第2回路C2の電流i2の少なくとも一方を検出する。故障診断部3は、検出した電流を基に第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3の故障の有無を判断する。
【0094】
故障診断部3により、第1双方向半導体スイッチS1、第2双方向半導体スイッチS2又は、第3双方向半導体スイッチS3のいずれかの故障が検出された場合、上記の実施形態3と同様に、遮断器1は、フェールセーフ動作を実行する。
【0095】
例えば、第3双方向半導体スイッチS3の故障診断処理を、1時間あたりK3回繰り返すとことにより、第3双方向半導体スイッチS3の故障率が、実質的に1/K3低下するとみなすことができる。これは、第1双方向半導体スイッチS1、及び、第2双方向半導体スイッチS2についても同様である。
【0096】
この観点から、負荷2の故障率と第3双方向半導体スイッチS3の故障率の公称値と1/K3との積が、10^-9/hour未満となるように、負荷2の故障率、第3双方向半導体スイッチS3の故障率の公称値、及び、1時間当たりの第3双方向半導体スイッチS3の故障診断回数K3を設定することができる。これにより、遮断器1の遮断機能の故障率を低くすることが容易になる。なお、負荷2の故障率と第1双方向半導体スイッチS1の故障率の公称値と1/K1との積、及び、負荷2の故障率と第2双方向半導体スイッチS2の故障率の公称値と1/K2との積が、10^-9/hour未満となるように、負荷2の故障率、第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2それぞれの故障率の公称値、及び、1時間当たりの第1及び第2双方向半導体スイッチS1、S2それぞれの故障診断回数K1、K2を設定することができる。
【0097】
なお、K1、K2、K3は、特に限定されないが、例えば、故障診断部3は、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3のそれぞれに対して、1時間に少なくとも1回、故障診断処理を実行してもよい(1≦K1、1≦K2、1≦K3)。
【0098】
故障診断部3は、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3のそれぞれの故障診断を、例えば、一定の周期で実行してもよい。これにより、効率よく、故障診断処理を実行できる。なお、第1、第2、第3双方向半導体スイッチS1、S2、S3のそれぞれの故障診断処理の周期は、厳密に一定でなくてもよい。
【0099】
本例において、故障診断部3は、S1、S2、S3を全てオンにして第1回路C1及び第2回路C2に並列に常時電流を流す動作、S1、S3をオン、S2をオフにして第1回路C1に常時電流を流すS2オフによる第1回路転流動作、S1、S2をオン、S3をオフにして第1回路C1に常時電流を流すS3オフによる第1回路転流動作、及び、S1をオフ、S2及びS3をオンにして、第2回路C2に常時電流を流す第2回路転流動作を、順次実行する。故障診断部3は、S2オフによる第1回路転流動作時に検出される第2回路C2の電流i2に基づいて第2双方向半導体スイッチS2の故障の有無を判断する。故障診断部3は、S3オフによる第1回路転流動作時に検出される第2回路C2の電流i2に基づいて第3双方向半導体スイッチS3の故障の有無を判断する。さらに、故障診断部3は、第2回路転流動作時に検出される第1回路C1の電流i1に基づいて第1双方向半導体スイッチS1の故障の有無を判断する。これらの判断処理が、定期的に繰り返し実行される。これにより、効率よく故障診断処理を実行できる。なお、S2オフによる第1回路転流動作と、S3オフによる第1回路転流動作、及び、第2回路電流動作の順番は、図7に示す場合に限定されない。
【0100】
S2オフによる第1回路転流動作、S3オフによる第1回路転流動作、及び、第2回路転流動作のそれぞれの期間の長さは、S1、S2、S2の全てをオンにして常時電流を並列に流す期間よりも短くすることが好ましい。これにより、常時電流を並列に流すことによる損失低減の度合いが高くなる。
【0101】
本発明の遮断器は、上記の実施形態に限定されない。例えば、遮断器は、上記構成に加えてさらに構成要素を有してもよい。例えば、第1、第2双方向半導体スイッチS1、S2に対して、エネルギー吸収回路が並列に接続されてもよい。エネルギー吸収回路は、例えば、コンデンサ又は電圧クランプ素子を含んでもよい。電圧クランプ素子は、例えば、バリスタ、ツェナーダイオード、又は、その他半導体を用いた電圧クランプ回路によって構成される。
【0102】
また、第1回路において、第1双方向半導体スイッチに加えて、さらに、他の1以上の双方向半導体スイッチが、直列に接続されてもよい。第2回路においても、同様に、さらに直列接続の1以上の双方向半導体スイッチが追加で設けられてもよい。
【0103】
負荷の故障率と第1双方向半導体スイッチの故障率の積、及び、負荷の故障率と第2双方向半導体スイッチの故障率の積を10^-9/hour未満に設計する態様は、上記実施形態に限られない。例えば、負荷の故障率は、半導体などを含むため、一般に、10^-4/hour未満と設定される。この場合、上記の双方向半導体スイッチS1、S2、S3と負荷の故障が同時に起こる確率を、10^-9/hour未満にするためには、双方向半導体スイッチS1、S2、S3の故障率を、10^-5/hour未満にすることが必要である。双方向半導体スイッチS1、S2、S3の故障率の公称値が、10^-4/hourの場合、上記実施形態4、5のように、故障診断部を設けることで、双方向半導体スイッチS1、S2、S3の故障率が実質的に10^-5/hour未満になるよう設計することができる。この変形例として、故障診断を用いずに、双方向半導体スイッチS1、S2、S3の故障率を10^-5/hour未満に設計することもできる。
【0104】
例えば、双方向半導体スイッチS1、S2、S3の故障の原因は、(1)半導体自体の劣化、及び、(2)駆動回路を含む信号系の不具合である。後者の(2)については、例えば、電子回路により2重系を構成することにより、1重系の故障率を、10^-2.5/hour未満まで緩和することが可能である。前者(1)の半導体の劣化の原因は、定常電流(常時電流)の発熱でヒートサイクルが生じ各接合部に疲労が起こることによる。従って、各部の温度上昇を抑えることにより疲労を低減することができる。例えば、定格電流に対する定常電流(常時電流)の比率を十分に下げて設計すればよい。これにより、半導体の劣化による故障の確率を低減できる。
【0105】
また、上記の実施形態における遮断器を含むDCグリッドシステムも本発明の実施形態に含まれる。図8は、遮断器を含むDCグリッドシステムの構成例を示す図である。DCグリッドシステムは、直流電源Btに接続されるバス4と、バス4に並列に接続された複数の負荷2と、バス4と、複数の負荷2のそれぞれとの間に接続されたインダクタLs及び遮断器1を備える。遮断器1のそれぞれは、上記実施形態における遮断器1と同様に構成することができる。遮断器1は、軽量化しつつ、遮断機能の故障率を低くできる。これは、DCグリッドシステム全体の軽量化及び信頼性の向上に大きく貢献する。
【符号の説明】
【0106】
1:遮断器、2:負荷、3:故障診断部、C1:第1回路、C2:第2回路、S1:第1双方向半導体スイッチ、S2:第2双方向半導体スイッチ、S3:第3双方向半導体スイッチ、M1:第1機械式スイッチ、M2:第2機械式スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8