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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027986
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/46 20180101AFI20240222BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20240222BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20240222BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240222BHJP
   F24F 110/70 20180101ALN20240222BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240222BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20240222BHJP
   F24F 140/60 20180101ALN20240222BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/62
F24F11/70
G06N20/00
F24F110:70
F24F110:10
F24F110:20
F24F140:60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131257
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 康佑
(72)【発明者】
【氏名】小松 正佳
(72)【発明者】
【氏名】中満 達也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA42
3L260BA75
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA17
3L260CA32
3L260CA33
3L260CB61
3L260CB63
3L260DA11
3L260EA03
3L260EA04
3L260EA07
3L260EA22
3L260FA03
(57)【要約】
【課題】空調電力の消費削減を図りやすくする制御装置を提供する。
【解決手段】空調機の動作状況の情報および設定温度の情報を含む空調機情報を少なくとも取得する取得部11と、室内の室温の情報、湿度の情報および二酸化炭素情報の少なくとも1つを含む室内環境情報を推定するための機械学習を行った学習済みの第1学習モデルに、少なくとも取得部11が取得した空調機情報を入力することで室内環境情報を推定する第1推定部12と、消費エネルギ量を推定するための機械学習を行った学習済みの第2学習モデルに、少なくとも取得部11が取得した空調機情報、および、第1推定部12により推定された室内環境情報入力することで空調機の消費エネルギ量を推定する第2推定部13と、が設けられたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機の制御を行う制御装置であって、
前記空調機の動作状況の情報および設定温度の情報を含む空調機情報を少なくとも取得する取得部と、
室内の室温の情報、湿度の情報および二酸化炭素情報の少なくとも1つを含む室内環境情報を推定するための機械学習を行った学習済みの第1学習モデルに、少なくとも前記取得部が取得した前記空調機情報を入力することで前記室内環境情報を推定する第1推定部と、
消費エネルギ量を推定するための機械学習を行った学習済みの第2学習モデルに、少なくとも前記取得部が取得した前記空調機情報、および、前記第1推定部により推定された前記室内環境情報入力することで前記空調機の消費エネルギ量を推定する第2推定部と、が設けられたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記設定温度は異なる複数の値を有し、
前記第1推定部および前記第2推定部は、値の異なる複数の前記設定温度ごとに前記室内環境情報および前記消費エネルギ量を推定することを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1推定部により推定された前記室内環境情報に含まれる前記室温が予め定められた室温の範囲に含まれ、前記第2推定部により推定された前記消費エネルギ量が最も少ない前記設定温度の値を選択する選択部を更に有することを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築業界において消費電力の削減に対するニーズが高まっている。ビルディングなどの建築物における消費電力の約4割は、空調機に関連する機器において消費されている。そのため、空調機に関連する機器に対する消費電力を削減する技術への期待が大きくなっている。
【0003】
上述のビルにおける空調を行う電力の消費削減を推進する技術として、シミュレーション技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、機械学習を行ったシミュレーションモデルを用いて空調に用いられる電力の消費量をシミュレーションし、電力消費の削減を推進する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-149839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように電力の消費量をシミュレーションするには、高度なスキルが求められるとともに、演算に用いられる時間が膨大となっていた。その結果、シミュレーション技術の導入や普及を図りにくくなり、空調電力の消費削減を図りにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、空調電力の消費削減を図りやすくする制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の制御装置は、空調機の制御を行う制御装置であって、前記空調機の動作状況の情報および設定温度の情報を含む空調機情報を少なくとも取得する取得部と、室内の室温の情報、湿度の情報および二酸化炭素情報の少なくとも1つを含む室内環境情報を推定するための機械学習を行った学習済みの第1学習モデルに、少なくとも前記取得部が取得した前記空調機情報を入力することで前記室内環境情報を推定する第1推定部と、前記消費エネルギ量を推定するための機械学習を行った学習済みの第2学習モデルに、少なくとも前記取得部が取得した前記空調機情報、および、前記第1推定部により推定された前記室内環境情報入力することで前記空調機の消費エネルギ量を推定する第2推定部と、が設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明の制御装置によれば、2つの学習モデルを用いて空調機の消費エネルギ量を推定するため、1つの学習モデルを用いて推定する場合と比較して演算に求められるスキルを低くしやすく、演算に用いられる時間を短縮しやすい。
【0009】
上記発明において前記設定温度は異なる複数の値を有し、前記第1推定部および前記第2推定部は、値の異なる複数の前記設定温度ごとに前記室内環境情報および前記消費エネルギ量を推定することが好ましい。
【0010】
このように値の異なる複数の設定温度ごとに室内環境情報および消費エネルギ量を推定することにより、消費エネルギ量が少なくなる設定値を求めやすくなる。
【0011】
上記発明においては、前記第1推定部により推定された前記室内環境情報に含まれる前記室温が予め定められた室温の範囲に含まれ、前記第2推定部により推定された前記消費エネルギ量が最も少ない前記設定温度の値を選択する選択部を更に有することが好ましい。
【0012】
このように選択部を設けることにより、予め定められた範囲に含まれる設定温度であって、消費エネルギ量が最も少なくなる設定温度を選択することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の制御装置によれば、2つの学習モデルを用いて空調機の消費エネルギ量を推定するため、1つの学習モデルを用いて推定する場合と比較して、シミュレーションの演算処理が行いやすくなり、シミュレーション技術を用いた空調を行う電力の消費削減を図りやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置の構成を説明するブロック図である。
図2】建物管理システムにおける情報収集の処理を説明するフローチャートである。
図3】制御装置における機械学習の処理を説明するフローチャートである。
図4】制御装置における制御の処理を説明するフローチャートである。
図5図4における室内環境の推定の処理を説明するフローチャートである。
図6図4における消費エネルギ量の推定の処理を説明するフローチャートである。
図7】設定案と推定室内温度および消費エネルギ量との対応を説明する表である。
図8】空調機により消費されるエネルギ量の計算値を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る制御装置10について、図1から図8を参照しながら説明する。本実施形態の制御装置10は空調機A,Bを制御する装置であって、空調機A,Bにおいて消費される空調電力および処理熱量の少なくとも一方(以下「消費エネルギ量」とも表記する。)の削減を図りやすくする装置である。空調機A,Bは、ビルディングなどの建築物に設置されるものを例示することができる。なお、空調機A,Bはビルディング以外の建築物に設置されてもよい。また、空調機A,Bは建築物以外の交通手段などに設置されてもよい。
【0016】
制御装置10は、図1に示すように、複数の空調機A,Bと、建物管理システム50と、情報通信可能に接続されている。図1では制御装置10が2台の空調機A,Bと情報通信可能に接続されている例が示されている。制御装置10が接続される台数は1台でもよいし、3台以上でもよい。
【0017】
建物管理システム50は、空調機A,Bが設置された建築物の管理に用いられるシステムである。図1では、建物管理システム50が外気温度センサ61、外気湿度センサ62、室内温度センサ63、および、二酸化炭素濃度センサ(CO濃度センサとも表記する。)64から測定情報を取得して記憶する例が示されている。なお、建物管理システム50は、建築物の管理に用いられる他の情報を取得してもよいし、建築物に設置された空調機A,B以外の機器の制御を行ってもよい。
【0018】
外気温度センサ61は、空調機A,Bが設置された建築物の外部の気温を測定するセンサである。外気湿度センサ62は、空調機A,Bが設置された建築物の外部の湿度を測定するセンサである。室内温度センサ63は、空調機A,Bによる気温の制御が行われる室内の気温を測定するセンサである。CO濃度センサ64は、空調機A,Bによる気温の制御が行われる室内の二酸化炭素濃度を測定するセンサである。外気温度センサ61、外気湿度センサ62、室内温度センサ63、および、CO濃度センサ64としては、公知の形式のセンサを用いることができる。
【0019】
建物管理システム50は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するサーバやコンピュータ等の情報処理装置である。建物管理システム50のROM等の記憶装置には、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させて、少なくとも取得部51と、記憶部52と、出力部53と、として機能させるプログラムが記憶されている。
【0020】
取得部51は、予め定められた所定の取得タイミングで各種の情報を取得する機能を有する。また取得した各種の情報を記憶部52に出力する機能を有する。予め定められた所定の取得タイミングとしては、同じ時間間隔で繰り返されるタイミングを例示することができる。
【0021】
各種の情報には、外気温度センサ61により測定される外気温度の情報、外気湿度センサ62により測定される外気湿度の情報、室内温度センサ63により測定される室内温度の情報、および、CO濃度センサ64により測定される室内の二酸化炭素濃度の情報が含まれる。
【0022】
また、各種の情報には、空調機A,Bにおける消費エネルギ量の情報、空調機A,Bの動作状況の情報、空調機A,Bの設定値の情報が含まれる。動作状況の情報には、空調機A,Bの発停の情報が含まれる。空調機A,Bの発停の情報には、空調機A,Bの圧縮機が駆動しているか停止しているかの情報や、空調機A,Bの送風部が駆動しているか停止しているかの情報や、空調機A,Bが供給している温度の計測情報が含まれる。設定値の情報は、空調機A,Bが設置された室内温度を制御する際の目標温度の情報である。
【0023】
記憶部52は、取得部51により取得された各種の情報を記憶する機能を有する。各種の情報を記憶する際には、取得したタイミングを示す情報が各種の情報に紐付けられる。タイミングの情報は、日時および時刻の情報であってもよいし、情報を取得する際に割り当てられる通し番号等の識別情報であってもよい。また、制御装置10からの要求に応じて記憶した各種の情報を出力する機能を有する。
【0024】
出力部53は、記憶部52から出力された各種の情報を制御装置10に向けて出力する機能を有する。
【0025】
制御装置10は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するサーバやコンピュータ等の情報処理装置である。制御装置10のROM等の記憶装置には、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させて、少なくとも取得部11と、第1推定部12と、第2推定部13と、記憶部14と、選択部15と、制御部16と、表示部17と、として機能させるプログラムが記憶されている。
【0026】
取得部11は、建物管理システム50から各種の情報を取得する機能を有する。各種の情報には、取得室内環境情報と、空調機情報とが含まれる。また、各種の情報には、第1推定部12により推定された推定室内環境情報が含まれる。
取得室内環境情報には、外気温度センサ61により測定される外気温度の情報、外気湿度センサ62により測定される外気湿度の情報、および、室内温度センサ63により測定される室内温度の情報が含まれる。
【0027】
空調機情報には、空調機A,Bの動作状況の情報、および、設定温度の情報が含まれる。
推定室内環境情報には、第1推定部12により推定された室内温度の情報、室内湿度の情報および室内CO濃度の情報の少なくとも1つが含まれる。本実施形態の推定室内環境情報には、室内温度の情報、室内湿度の情報および室内CO濃度の情報が含まれる。
【0028】
第1推定部12は、第1学習モデルを用いて推定室内環境情報を推定する演算処理を行う機能を有する。第1推定部12における推定室内環境情報を推定する演算処理の詳細については後述する。
【0029】
第1推定部12において推定される推定室内環境情報は、演算処理から予め定められた所定時間後の情報である。本実施形態では1時間後の情報である例に適用して説明する。
【0030】
推定室内環境情報には、上述のように室内温度の情報、室内湿度の情報および室内CO濃度の情報の少なくとも1つが含まれる。本実施形態の推定室内環境情報には室内温度の情報、室内湿度の情報および室内CO濃度の情報が含まれる。
【0031】
第1学習モデルは、機械学習により学習済みのモデルである。機械学習としては公知の学習方法を用いることができる。機械学習は、アンサンブル学習であることが好ましい。また、機械学習が勾配ブースティング回帰木(XGBOOST, eXtreme Gradient Boosting)であることが更に好ましい。
【0032】
第2推定部13は、第2学習モデルを用いて消費エネルギ量を推定する演算処理を行う機能を有する。第2推定部13において推定される消費エネルギ量は、演算処理から予め定められた所定時間後の情報である。本実施形態では1時間後の情報である例に適用して説明する。第2推定部13における消費エネルギ量を推定する演算処理の詳細については後述する。
【0033】
第2学習モデルは、機械学習により学習済みのモデルである。機械学習としては公知の学習方法を用いることができる。機械学習は、ニューラルネットワークであることが好ましい。
【0034】
記憶部14は、第1推定部12により推定された推定室内環境情報、および、第2推定部13により推定された消費エネルギ量を記憶する機能を有する。記憶される推定室内環境情報、および、消費エネルギ量には、推定されたタイミングを示す情報が紐付けされる。タイミングの情報は、日時および時刻の情報であってもよいし、情報を取得する際に割り当てられる通し番号等の識別情報であってもよい。
【0035】
選択部15は、推定室内環境情報に含まれる室内温度が予め定められた室内温度の範囲に含まれる設定温度のうち、推定された消費エネルギ量が最も少ない設定温度を選択する機能を有する。選択の演算処理についての詳細は後述する。
【0036】
制御部16は、選択部15によって選択された設定温度に基づいて空調機A,Bの制御を行う機能を有する。制御は、選択された設定温度を空調機A,Bに出力することによって行われてもよい。この場合、空調機A,Bは出力された設定温度に基づいて動作する。選択された設定温度の情報は、制御部16から建物管理システム50を介して空調機A,Bに入力されてもよいし、制御部16から直接空調機A,Bに入力されてもよい。
【0037】
表示部17は、空調機A,Bにおける消費エネルギ量を表示する機能を有する。例えば、制御装置10により制御された空調機A,Bにおける消費エネルギ量と、制御が行われない空調機A,Bにおける消費エネルギ量と、を対比して示すグラフを表示する機能を有する。
【0038】
表示部17は、制御装置10に設けられたディスプレイなどの表示機器に上述のグラフ等を表示する演算処理を行ってもよいし、制御装置10と情報通信可能に接続された他の情報処理機器における表示機器に上述のグラフ等を表示する演算処理を行ってもよい。
【0039】
次に、上記の構成からなる制御装置10における制御について説明する。まず、建物管理システム50における情報を収集する処理について図2を参照しながら説明する。
【0040】
建物管理システム50は電源が投入されると、図2に示すように、予め定められた所定の取得タイミングになったか判定する処理を行う(S11)。取得タイミングではないと判定された場合(NOの場合)には、再びS11の処理を行う。
【0041】
ここでは、取得タイミングが1時間ごとに繰り返されるタイミングである例に適用して説明する。なお、取得タイミングは1時間よりも短い時間間隔で繰り返されてもよいし、1時間よりも長い時間間隔で繰り返されてもよい。また、取得タイミングは、後述する推定タイミングと同時のタイミングであってもよいし、異なるタイミングであってもよい。
【0042】
取得タイミングになったと判定された場合(YESの場合)には、建物管理システム50はセンサ情報を取得する処理を行う(S12)。具体的には、外気温度センサ61により測定される外気温度の情報、外気湿度センサ62により測定される外気湿度の情報、室内温度センサ63により測定される室内温度の情報、および、CO濃度センサ64により測定される室内の二酸化炭素濃度の情報を取得する処理を行う。
【0043】
センサ情報を取得する処理が行われると、建物管理システム50は空調機情報を取得する処理を行う(S13)。具体的には、空調機A,Bにおける測定された消費エネルギ量の情報、空調機A,Bの動作状況の情報、空調機A,Bの設定値の情報を取得する処理を行う。
【0044】
空調機情報を取得する処理が行われると、建物管理システム50は取得したセンサ情報および空調機情報を記憶する処理を行う(S14)。具体的には、取得したセンサ情報および空調機情報を記憶部52に記憶させる処理を行う。記憶させる処理には、取得したタイミングを示す情報を、センサ情報および空調機情報に紐づける処理が含まれる。
【0045】
センサ情報および空調機情報を記憶する処理が行われると、建物管理システム50は情報を収集する処理を終了するか判定する処理を行う(S15)。例えば、建物管理システム50を管理する管理者から当該処理を終了する指示が入力されたか判定する処理を行う。
【0046】
処理を終了しないと判定された場合(NOの場合)には、建物管理システム50はS11に戻り上述の処理を繰り返し行う。処理を終了すると判定された場合(YESの場合)には、一連の情報を収集する処理を終了する。
【0047】
次に、制御装置10における機械学習の処理について図3を参照しながら説明する。図3では、第1学習モデルおよび第2学習モデルの機械学習の処理が示されている。
制御装置10は電源が投入されると、図3に示すように、機械学習を開始するか判定する処理を行う(S21)。機械学習を開始しないと判定した場合(NOの場合)には、制御装置10は、再びS21の処理を行う。
【0048】
判定は種々の基準に基づいて行うことができる。例えば、制御装置10に機械学習を開始する指示が入力された場合に、機械学習を開始すると判定してもよい。また、前回の機械学習を行ってから予め定められた期間が経過した場合に、機械学習を開始すると判定してもよい。また、空調機A,Bにおける推定される消費エネルギ量と測定された消費エネルギ量との差が、予め定められた閾値以上になった場合に機械学習を開始すると判定してもよい。
【0049】
機械学習を開始すると判定した場合(NOの場合)には、制御装置10は学習用データを取得する処理を行う(S22)。学習用データは、建物管理システム50の記憶部52と、制御装置10の記憶部14と、から取得される。
【0050】
建物管理システム50の記憶部52から取得される学習用データには、外気温度センサ61により測定される外気温度の情報、外気湿度センサ62により測定される外気湿度の情報、室内温度センサ63により測定される室内温度の情報、CO濃度センサ64により測定される室内の二酸化炭素濃度の情報、空調機A,Bにおける測定された消費エネルギ量の情報、空調機A,Bの動作状況の情報、および、空調機A,Bの設定値の情報が含まれる。
【0051】
制御装置10の記憶部14から取得される学習用データには、第1推定部12が推定した推定室内環境情報、および、第2推定部13が推定した消費エネルギ量が含まれる。
【0052】
学習用データを取得すると、制御装置10は学習用データを記憶する処理を行う(S23)。学習用データは、制御装置10の記憶部14に記憶される。
【0053】
学習用データを記憶すると、制御装置10は第1学習モデルの機械学習の処理を行う(S24)。第1学習モデルの機械学習は、アンサンブル学習であることが好ましい。さらには、勾配ブースティング回帰木ことが好ましい。
【0054】
第1学習モデルの機械学習では、空調機A,Bの発停の情報、および、設定温度の情報と、外気温度センサ61により測定された外気温度の1次点前の情報、および、外気湿度センサ62により測定された外気湿度に1次点前の情報と、室内温度の情報、室内湿度の情報、および、室内CO濃度の情報と、が説明変数として入力される。また、室内温度の情報、室内湿度の情報、および、室内CO濃度の情報を含む推定室内環境情報が目的変数として入力される。
【0055】
第1学習モデルの機械学習が終わると、制御装置10は第2学習モデルの機械学習の処理を行う(S25)。第2学習モデルの機械学習は、ニューラルネットワークであることが好ましい。
【0056】
第2学習モデルの機械学習では、空調機A,Bの発停の情報、および、設定温度の情報と、外気温度センサ61により測定された外気温度の1次点前の情報、外気湿度センサ62により測定された外気湿度に1次点前の情報、および、第1学習モデルにより推定された推定室内環境情報と、が説明変数として入力される。また、空調機A,Bの消費エネルギ量が目的変数として入力される。
【0057】
第2学習モデルの機械学習が終わると、制御装置10は機械学習の処理を終了するか判定する処理を行う(S26)。例えば、制御装置10に機械学習の処理を終了する指示が入力されたか判定する処理を行う。
【0058】
処理を終了しないと判定された場合(NOの場合)には、制御装置10はS21に戻り上述の処理を繰り返し行う。処理を終了すると判定された場合(YESの場合)には、一連の機械学習の処理を終了する。
【0059】
次に、制御装置10における空調機A,Bの制御について図4から図6を参照しながら説明する。
制御装置10は電源が投入されると、図3に示すように、予め定められた所定の推定タイミングになったか判定する処理を行う(S31)。推定タイミングではないと判定された場合(NOの場合)には、制御装置10は、再びS31の処理を行う。
【0060】
ここでは、推定タイミングが1時間ごとに繰り返されるタイミングである例に適用して説明する。なお、推定タイミングは1時間よりも短い時間間隔で繰り返されてもよいし、1時間よりも長い時間間隔で繰り返されてもよい。また、推定タイミングは、前述した取得タイミングと同時のタイミングであってもよいし、異なるタイミングであってもよい。
【0061】
推定タイミングになったと判定された場合(YESの場合)には、制御装置10は室内環境を推定する処理を行う(S40)。室内環境を推定する処理が開始されると、図5に示すように、制御装置10の取得部11は、空調機情報を取得する処理を行う(S41)。空調機情報は、建物管理システム50の記憶部52から取得される。なお、空調機情報は建物管理システム50以外、例えば空調機A,Bから直接取得されてもよい。
【0062】
取得される空調機情報は、処理を行う推定タイミング(以降「次点」とも表記する。)における情報である。取得される空調機情報には、空調機A,Bの動作状況の情報、および、設定温度の情報が含まれる。空調機A,Bの動作状況の情報には、空調機A,Bの発停の情報や、空調機A,Bが供給している温度の計測情報が含まれる。
【0063】
空調機情報を取得すると、制御装置10の取得部11はセンサ情報を取得する処理を行う(S42)。センサ情報は、建物管理システム50の記憶部52から取得される。取得されるセンサ情報は、1つ前の推定タイミング(以降「1次点前」とも表記する。)における情報である。取得されるセンサ情報には、外気温度センサ61により測定された外気温度の情報、および、外気湿度センサ62により測定された外気湿度の情報が含まれる。
【0064】
センサ情報を取得すると、制御装置10の取得部11は推定室内環境情報を取得する処理を行う(S43)。推定室内環境情報は、制御装置10の記憶部14から取得される。取得される推定室内環境情報は1次点前の情報である。取得される推定室内環境情報には、室内温度の情報、室内湿度の情報および室内CO濃度の情報が含まれる。
【0065】
推定室内環境情報を取得すると、制御装置10の第1推定部12は第1学習モデルを用いて推定室内環境情報を推定する演算処理を行う(S44)。第1学習モデルには、S41において取得された空調機A,Bの発停の情報、および、設定温度の情報と、S42において取得された外気温度センサ61により測定された1次点前の外気温度の情報、および、外気湿度センサ62により測定された1次点前の外気湿度と、S43において取得された1次点前の室内温度の情報、1次点前の室内湿度の情報、および、1次点前の室内CO濃度の情報と、が説明変数として入力される。
【0066】
第1学習モデルからは、室内温度の情報、室内湿度の情報、および、室内CO濃度の情報を含む推定室内環境情報が目的変数として出力される。
【0067】
第1推定部12が推定室内環境情報を出力すると、制御装置10の記憶部14は推定室内環境情報を記憶する処理を行う(S45)。記憶される推定室内環境情報には、推定された次点を示す情報が紐付けされる。次点の情報は、日時および時刻の情報であってもよいし、次点に割り当てられる通し番号等の識別情報であってもよい。
【0068】
推定室内環境情報が記憶されると、図4に戻り、制御装置10は消費エネルギ量を推定する処理を行う(S50)。消費エネルギ量を推定する処理が開始されると、図6に示すように、制御装置10の取得部11は、空調機情報を取得する処理を行う(S51)。空調機情報は、建物管理システム50の記憶部52から取得される。なお、空調機情報は建物管理システム50以外、例えば空調機A,Bから直接取得されてもよい。
【0069】
取得される空調機情報は、処理を行う次点(以降「現次点」とも表記する。)における情報である。取得される空調機情報には、空調機A,Bの動作状況の情報、および、設定温度の情報が含まれる。空調機A,Bの動作状況の情報には、空調機A,Bの発停の情報が含まれる。
【0070】
空調機情報を取得すると、制御装置10の取得部11はセンサ情報を取得する処理を行う(S52)。センサ情報は、建物管理システム50の記憶部52から取得される。取得されるセンサ情報は1次点前の情報である。取得される1次点前のセンサ情報には、外気温度センサ61により測定された外気温度の情報、外気湿度センサ62により測定された外気湿度の情報、および、室内温度センサ63により測定された室内温度の情報が含まれる。
【0071】
センサ情報を取得すると、制御装置10の取得部11は推定室内環境情報を取得する処理を行う(S53)。推定室内環境情報は、制御装置10の記憶部14から取得される。取得される推定室内環境情報は現次点の情報である。取得される推定室内環境情報には室内温度の情報が含まれる。
【0072】
推定室内環境情報を取得すると、制御装置10の取得部11は消費エネルギ量を取得する処理を行う(S54)。消費エネルギ量は、制御装置10の記憶部14から取得される。取得される消費エネルギ量は、1次点前に空調機A,Bより取得し、記録・計測された情報である。
【0073】
1次点前の消費エネルギ量を取得すると、制御装置10の第2推定部13は第2学習モデルを用いて消費エネルギ量を推定する演算処理を行う(S55)。第2学習モデルには、S51において取得された空調機A,Bの発停の情報、および、設定温度の情報と、S52において取得された外気温度センサ61により測定された1次点前の外気温度の情報、外気湿度センサ62により測定された1次点前の外気湿度、および、室内温度センサ63により測定された1次点前の室内温度の情報と、S53において取得された現次点の室内温度の情報と、S54において取得された1次点前に空調機A,Bより取得し、記録・計測された消費エネルギ量と、が説明変数として入力される。
【0074】
第2学習モデルからは、空調機A,Bの消費エネルギ量が目的変数として出力される。
第2推定部13が推定室内環境情報を出力すると、制御装置10の記憶部14は消費エネルギ量を記憶する処理を行う(S56)。記憶される消費エネルギ量には、推定された次点を示す情報が紐付けされる。次点の情報は、日時および時刻の情報であってもよいし、次点に割り当てられる通し番号等の識別情報であってもよい。
【0075】
消費エネルギ量が記憶されると、図4に戻り、制御装置10は全ての設定案において推定の処理が終わったか判定するよりを行う(S32)。本実施形態では、図7に示すように設定案1から設定案4のそれぞれにおいて推定の処理が終わったか判定する処理を行う。なお、設定案の数は4よりも少なくてもよいし、4よりも多くてもよい。
【0076】
全ての設定案において推定の処理が終わっていないと判定された場合(NOの場合)には、制御装置10はS40に戻り、上述の処理を繰り返し行う。全ての設定案において推定の処理が終わったと判定された場合(YESの場合)には、制御装置10の選択部15は、設定案を選択する処理を行う(S33)。
【0077】
設定案の選択では、推定される室内温度が20℃以上28℃以下の条件を満たし、空調機A,Bの消費エネルギ量が最小となる設定案を選択する処理が行われる。図7に示す設定案4(設定温度A点が27℃、設定温度B点が27℃)は、測定点A点の推定される室内温度が28.3℃であって、28℃以下の条件を満たしていない。
【0078】
選択部15は、設定案4を除く設定案1から設定案3のうち、推定される消費エネルギ量が最も低い設定案3(設定温度A点が27℃、設定温度B点が25℃)を選択する処理を行う。
【0079】
なお、設定温度A点は空調機Aの設定温度であり、計測点A点は空調機Aにより室温が制御される空間における所定の測定点である。同様に、設定温度B点は空調機Bの設定温度であり、計測点B点は空調機Bにより室温が制御される空間における所定の測定点である。
【0080】
選択部15により設定案が選択されると、制御装置10の制御部16は空調機A,Bを制御する処理を行う(S34)。制御として、選択した設定案に含まれる設定温度の情報を、対応する空調機A,Bに出力する処理が行われる。設定温度の情報が入力された空調機A,Bは、自身に設けられた制御部により制御される。
【0081】
設定温度の情報は、建物管理システム50を介して空調機A,Bに出力されてもよいし、建物管理システム50を介することなく空調機A,Bに直接出力されてもよい。また、制御装置10の制御部16が、直接、空調機A,Bを制御してもよい。
【0082】
空調機A,Bを制御する処理が行われると、制御装置10は空調機A,Bを制御する処理を終了するか判定する処理を行う(S35)。例えば、制御装置10に空調機A,Bを制御する処理を終了する指示が入力されたか判定する処理を行う。
【0083】
処理を終了しないと判定された場合(NOの場合)には、制御装置10はS31に戻り上述の処理を繰り返し行う。処理を終了すると判定された場合(YESの場合)には、空調機A,Bを制御する処理を終了する。
【0084】
次に、空調機A,Bの消費エネルギ量の変化について図8を参照しながら説明する。図8には空調機A,Bにより消費されるエネルギ量の計算値が示されている。図8の横軸は時刻であり、縦軸は消費エネルギ量(kW)、または、処理熱量(MJ)である。図8では、消費エネルギ量(kW)が示されている。図8は、制御装置10の表示部17により作成され、表示されるグラフである。
【0085】
図8における白抜き丸(○)で示された点線グラフCは、制御装置10を用いない場合の空調機A,Bにおける消費エネルギ量を示す。黒塗り丸(●)で示された実線グラフPは、制御装置10により制御された空調機A,Bにおける消費エネルギ量を示す。
【0086】
点線グラフCと実線グラフPとの間のハッチングが施された領域は、実線グラフPが点線グラフCを下回る領域を示す。言い換えると、制御装置10によって空調機A,Bにおける消費エネルギ量が削減されたことを示す領域である。
【0087】
図8では、空調機A,Bが稼働する9時頃から12時頃まで、および、13時頃から17時頃までの間で、実線グラフPが点線グラフCを下回り、制御装置10によって空調機A,Bにおける消費エネルギ量が削減されたことが示されている。
【0088】
上記の構成の制御装置10によれば、2つの学習モデルを用いて空調機A,Bの消費エネルギ量を推定するため、1つの学習モデルを用いて推定する場合と比較して演算に求められるスキルを低くしやすく、演算に用いられる時間を短縮しやすい。
【0089】
値の異なる複数の設定温度ごとに室内環境情報および消費エネルギ量を推定することにより、消費エネルギ量が少なくなる設定値を求めやすくなる。
【0090】
選択部15を設けることにより、予め定められた範囲に含まれる設定温度であって、消費エネルギ量が最も少なくなる設定温度を選択することができる。
【符号の説明】
【0091】
10…制御装置、 11…取得部、 12…第1推定部、 13…第2推定部、 15…選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8