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  • 特開-経糸糊付装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027987
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】経糸糊付装置
(51)【国際特許分類】
   D06B 3/04 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
D06B3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131259
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥 純一
(72)【発明者】
【氏名】向出 充希
【テーマコード(参考)】
3B154
【Fターム(参考)】
3B154AB12
3B154BA05
3B154BA18
3B154BB32
3B154BC01
3B154BC22
3B154BD04
3B154DA28
(57)【要約】
【課題】
本発明は、糊付け槽、経糸シートが巻き掛けられる第1ロール、第1ロールに外接する第2ロール、第1ロールと第2ロールとの外接位置に糊液を供給する糊液供給装置を含み、糊付け槽の後側の端壁が第2ロールの軸心よりも前側に位置している経糸糊付装置に関する。そして、本発明は、その糊液供給装置及び小型の糊付け槽を備える経糸糊付装置において、後方へ飛散する糊液によって装置周辺が汚れるのを可及的に防止できる構成を提供することを目的とする。
【解決手段】
経糸糊付装置が、第2ロールの下方で幅方向に関し第2ロールの存在範囲を含むように設けられて上方を向く受け面を有する受け部と、受け部で受けた糊液を回収する回収部とを備え、受け部は、受け面の前端で糊付け槽の後側の端壁に接すると共に、受け面の後端が第2ロールよりも後方に位置するような大きさを有し、受け面が回収部へ向けて下向きに傾斜している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊液が貯留される糊付け槽と、経糸シートが巻き掛けられる第1ロールと、前記経糸シートの進行方向における上流側で前記第1ロールに外接するように前記第1ロールに対する後側に設けられる第2ロールと、前記第1ロール及び前記第2ロールの外接位置に糊液を供給する糊液供給装置とを含み、前記糊付け槽の後側の端壁が前記第2ロールの軸心よりも前側に位置するように構成された経糸糊付装置において、
上下方向に関し前記第2ロールの下方で幅方向に関し前記第2ロールの存在範囲を含むように設けられる板状の受け部であって上方を向く受け面を有する受け部と、前記受け部で受けた糊液を回収する回収部とを備え、
前記受け部は、前記受け面の前端において糊付け槽の後側の端壁に接するように設けられ、前記受け面の後端が前記第2ロールよりも後方に位置するような大きさを有すると共に、前記受け面が前記回収部へ向けて下向きに傾斜するように構成されている
ことを特徴とする経糸糊付装置。
【請求項2】
前記受け部は、前記受け面の前記後端から上方へ伸びる規制面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の経糸糊付装置。
【請求項3】
前記回収部は、前記幅方向に関し前記糊付け槽の存在範囲を含むように延在すると共に前後方向に関し前記糊付け槽の前側の端壁に接する位置に設けられる回収路であって外部に連通する回収孔が形成された回収路、及び前記糊付け槽の両側方の少なくとも一方で前記前後方向に延在すると共に前記幅方向に関し前記糊付け槽の側壁に接する位置に設けられる誘導路であって前記受け部と前記回収路とを連続させると共に前記回収路に向けて下向きに傾斜する誘導路を含む
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経糸糊付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糊液が貯留される糊付け槽と、経糸シートが巻き掛けられる第1ロールと、経糸シートの進行方向における上流側で第1ロールに外接するように第1ロールに対する後側に設けられる第2ロールと、第1ロール及び第2ロールの外接位置に糊液を供給する糊液供給装置とを含み、糊付け槽の後側の端壁が第2ロールの軸心よりも前側に位置するように構成された経糸糊付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、糊液が貯留される糊付け槽と、経糸シートが巻き掛けられるサイジングロール(第1ロール)とを備えた経糸糊付装置が開示されている。また、その経糸糊付装置においては、そのサイジングロールの前側及び後側に、サイジングロールに外接するスクイズロールがそれぞれ設けられている。さらに、経糸糊付装置は、サイジングロール及び後側のスクイズロール(第2ロール)の外接位置に上方から糊液を供給する糊液供給装置を備えている。そして、その経糸糊付装置では、糊液供給装置から前記外接位置に糊液が供給され、第1ロール及び第2ロールの間を経糸シートが通過することで、経糸シートから余分な糊液が搾り出されつつ経糸シートに対する糊付けが行われるようになっている。
【0003】
また、その経糸糊付装置においては、糊付け槽は、前後方向に関し、サイジングロール及び2つのスクイズロールの存在範囲よりも大きい寸法を有している。したがって、その経糸糊付装置においては、糊付け槽のサイズが大きく、貯留される糊液の量が多いものとなっている。そのため、そのような経糸糊付装置では、糊液の使用量が多くなることから、糊付けのためのコストが高くなってしまう。
【0004】
一方で、特許文献2に開示された経糸糊付装置では、その糊付け槽は、前後方向における大きさがロールの直径よりも若干大きい程度の、小型のものとなっている。したがって、その経糸糊付装置では、特許文献1の装置と比べ、貯留される糊液が少ないものとなるため、糊液の使用量が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-96657号公報
【特許文献2】特開2013-2029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、その特許文献2の経糸糊付装置も、サイジングロールと後側のスクイズロールとの外接位置に上方から糊液を供給する糊液供給装置を備えている。なお、特許文献1の装置も含め、そのような糊液供給装置を備えた経糸糊付装置の場合には、その上方から供給された糊液が、ロールの回転に伴い、後側のスクイズロールの下方において後方へ向けて飛び散ることとなる。その上で、特許文献2の経糸糊付装置のように前後方向における糊付け槽の大きさが小さい場合には、その飛び散る糊液が糊付け槽の後方へ飛散し、経糸糊付装置の周辺が汚れてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、前記した糊液供給装置を備えると共に糊付け槽が小型である経糸糊付装置において、後方へ飛散する糊液によって装置周辺が汚れてしまうのを可及的に防止することができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明は、糊液が貯留される糊付け槽と、経糸シートが巻き掛けられる第1ロールと、経糸シートの進行方向における上流側で第1ロールに外接するように第1ロールに対する後側に設けられる第2ロールと、第1ロール及び第2ロールの外接位置に糊液を供給する糊液供給装置とを含み、糊付け槽の後側の端壁が第2ロールの軸心よりも前側に位置するように構成された経糸糊付装置を前提とする。その上で、その経糸糊付装置が、上下方向に関し第2ロールの下方で幅方向に関し第2ロールの存在範囲を含むように設けられる板状の受け部であって上方を向く受け面を有する受け部と、受け部で受けた糊液を回収する回収部とを備え、受け部は、受け面の前端において糊付け槽の後側の端壁に接するように設けられ、受け面の後端が第2ロールよりも後方に位置するような大きさを有すると共に、受け面が回収部へ向けて下向きに傾斜するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、受け部は、受け面の後端から上方へ伸びる規制面を有するように構成されても良い。さらに、回収部は、前記幅方向に関し糊付け槽の存在範囲を含むように延在すると共に前後方向に関し糊付け槽の前側の端壁に接する位置に設けられる回収路であって外部に連通する回収孔が形成された回収路、及び糊付け槽の両側方の少なくとも一方で前記前後方向に延在すると共に前記幅方向に関し側壁に接する位置に設けられる誘導路であって受け部と回収路とを連続させると共に回収路に向けて下向きに傾斜する誘導路を含むように構成されても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、後側の端壁が第2ロールの軸心よりも前側に位置するように糊付け槽が設けられた経糸糊付装置、すなわち、そのような小型の糊付け槽を備えた経糸糊付装置を前提とする。そして、その経糸糊付装置が、第2ロールの下方で幅方向における第2ロールの存在範囲を含むように設けられる受け部を備えている。また、その受け部は、上方を向く受け面の前端において糊付け槽の後側の端壁に接するように設けられている。さらに、その受け部は、受け面の後端が第2ロールよりも後方に位置するような大きさを有している。
【0011】
それにより、糊液供給装置から第1ロールと第2ロールとの外接位置に供給された糊液が前記したようにロールの回転によって糊付け槽の後方に飛散したとしても、その飛散した糊液(飛散糊液)が受け部の受け面で受けられることとなる。したがって、その飛散糊液によって経糸糊付装置の周辺が汚れてしまうのが可及的に防止される。しかも、前記のように受け面の前端において糊付け槽(後側の端壁)と接する、すなわち、受け面の前端が上下方向に関し糊付け槽の存在範囲に位置するように受け部が設けられているので、上下方向における経糸糊付装置全体の大型化を避けることができる。
【0012】
なお、本発明では、その経糸糊付装置は、受け部で受けた糊液を回収する回収部を更に備え、また、受け部は、受け面が回収部へ向けて下向きに傾斜するように構成されている。それにより、前記のように受け面で受けられた飛散糊液は、傾斜する受け面上を流れて回収部に至り、回収部において回収されることとなる。
【0013】
さらに、その本発明において、受け部を、受け面の後端から上方へ伸びる規制面を有するように構成すれば、上方を向く受け面のみで飛散糊液を受けるような経糸糊付装置の構成と比べ、飛散糊液が規制面でも受けられることとなる。したがって、前後方向における受け面の長さをより短いものとすることができ、受け部の前後方向の大きさをよりコンパクトなものとすることができる。
【0014】
また、一般的な経糸糊付装置においては、糊付け槽内に糊液が供給されるのに伴って糊付け槽から溢れ出る糊液(溢流糊液)を回収するための構成が備えられている。その上で、本発明において、前記した回収部を、前記のような糊付け槽の前方に設けられる回収路、及び糊付け槽の両側方の少なくとも一方に設けられる誘導路を含むように構成し、その誘導路で受け部と回収路とを連続させると共に誘導路を回収路に向けて下向きに傾斜させるように構成すれば、飛散糊液を回収するための回収部が溢流糊液を回収するための構成としても機能することとなる。すなわち、飛散糊液と溢流糊液とが共通の回収部において回収されることとなる。したがって、飛散糊液の回収と溢流糊液の回収とを別の箇所で行うように経糸糊付装置が構成される場合と比べ、経糸糊付装置全体の構成をよりシンプルなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る一実施形態における経糸糊付装置の側面図である。
図2】本発明に係る一実施形態における経糸糊付装置の平面図である。
図3】本発明に係る一実施形態における経糸糊付装置の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下では、図1図3に基づき、本発明が適用された経糸糊付装置の一実施形態(実施例)について説明する。
【0017】
経糸糊付装置1は、糊液Sを貯留する糊付け槽3と、経糸シートTが巻き掛けられると共に糊液Sに浸されるサイジングロール11と、サイジングロール11に外接する第1のスクイズロール13及び第2のスクイズロール15とを備えている。但し、そのサイジングロール11、第1のスクイズロール13及び第2のスクイズロール15は、その軸線方向における寸法が略同じロールである。また、経糸糊付装置1は、サイジングロール11と第1のスクイズロール13との外接位置に上方から糊液Sを供給する糊液供給装置20も備えている。なお、本実施例では、サイジングロール11が本発明で言う第1のロールに相当し、第1のスクイズロール13が第2のロールに相当する。
【0018】
サイジングロール11は、経糸シートTが巻き掛けられるロールである。そして、サイジングロール11は、その両端に取り付けられた支軸12、12により、経糸糊付装置1におけるフレーム(図示略)に対し回転可能に支持されている。また、サイジングロール11は、その下部が糊付け槽3内に貯留された糊液Sに浸された状態となるように設けられている。
【0019】
なお、経糸糊付装置1は、サイジングロール11を回転駆動する駆動機構(図示略)を備えている。それにより、サイジングロール11は、経糸シートTの進行に合わせて積極的に回転駆動される。そして、経糸シートTは、サイジングロール11に巻き掛けられるかたちで案内されており、そのように案内される過程で糊液Sに浸されて糊液Sが含浸された状態となる。
【0020】
第2のスクイズロール15は、その経糸シートTに含浸された糊液Sを搾るためのものであって、サイジングロール11に対する前側に位置する配置で設けられている。また、、第2のスクイズロール15は、その軸線方向をサイジングロール11の軸線方向(経糸糊付装置1の幅方向)と一致させた向きで、その両端に取り付けられた支軸16、16によって前記フレームに対し回転可能に支持されている。なお、第2のスクイズロール15は、押圧機構(図示略)を介して前記フレームに対し支持されており、サイジングロール11に対し押圧された状態で外接するように設けられている。したがって、第2のスクイズロール15は、前記のようにサイジングロール11が回転駆動されるのに伴い、従動回転するようになっている。
【0021】
そして、前記のようにサイジングロール11に巻き掛けられた経糸シートTは、前記のように外接するサイジングロール11と第2のスクイズロール15との間を通過した後、外部へ向けて引き出される。また、そのようにサイジングロール11と第2のスクイズロール15との間を通過する際に、前記のように糊液Sが含浸された経糸シートTから余分な糊液Sが搾られる。
【0022】
第1のスクイズロール13は、サイジングロール11に対する後側に位置する配置で設けられている。そして、第1のスクイズロール13も、その軸線方向を前記幅方向と一致させた向きで、その両端に取り付けられた支軸14、14によって前記フレームに対し回転可能に支持されている。また、第1のスクイズロール13も、第2のスクイズロール15と同様に、前記押圧機構を介して前記フレームに対し回転可能に支持され、サイジングロール11に対し押圧された状態で外接している。したがって、第1のスクイズロール13も、サイジングロール11が回転駆動されるのに伴い、従動回転するようになっている。
【0023】
なお、糊付け槽3は、上面が開放された筐体であって、底板4、前後の端壁5、6及び左右の側壁7、7とで形成されている。また、その糊付け槽3は、経糸糊付装置1の前後方向に関し、前側の端壁5がサイジングロール11と第2のスクイズロール15との外接位置よりも僅かに前方に位置するように設けられている。その上で、糊付け槽3は、後側の端壁6がサイジングロール11と第1のスクイズロール13との外接位置よりも僅かに後方に位置するような前記前後方向における大きさとなっている。したがって、その糊付け槽3は、後側の端壁6が第1のスクイズロール13(第2ロール)の軸心よりも前側に位置するように構成された糊付け槽であり、サイジングロール11のみを浸すことが可能な小型の糊付け槽となっている。
【0024】
また、その経糸糊付装置1においては、前記のようにサイジングロール11に対し第1のスクイズロール13が外接することで、サイジングロール11と第1のスクイズロール13との間(外接位置の上側)に楔状の間隙である楔状領域が形成されている。その上で、その楔状領域の上方には、楔状領域に向けて糊液Sを供給するための糊液供給装置20が設けられている。
【0025】
その糊液供給装置20は、サイジングロール11の軸線方向に沿って延在する糊液供給パイプ22と、糊液供給パイプ22に対し取り付けられるノズル24とを備えるように構成されている。また、糊液供給パイプ22の一方の端部には供給管26が接続されており(図示略)、その供給管26を介して供給源28から糊液Sが供給されるようになっている。それにより、経糸糊付装置1では、その糊液供給装置20を介して楔状領域に糊液Sが供給されることで、その楔状領域において、糊液Sが溜められた糊液溜まり18が形成される。
【0026】
その上で、経糸シートTは、第1のスクイズロール13に巻き掛けられるかたちで案内され、前記のように外接するサイジングロール11と第1のスクイズロール13との間を通過した後、前記のようにサイジングロール11に巻き掛けられる。そして、そのように両ロール間に形成された糊液溜まり18を経糸シートTが通過することで、その経糸シートTに対し糊液Sが含浸された状態となる。そして、そのように糊液Sが含浸された経糸シートTがサイジングロール11と第1のスクイズロール13との間を通過する際に、経糸シートTから余分な糊液Sが搾られる。
【0027】
以上のような経糸糊付装置1において、本発明では、経糸糊付装置が、上下方向に関し第2ロールの下方で前記幅方向に関し第2ロールの存在範囲を含むように設けられる板状の受け部であって上方を向く受け面を有する受け部と、受け部で受けた糊液を回収する回収部とを備える。そして、その受け部は、受け面の前端において糊付け槽の後側の端壁に接するように設けられ、受け面の後端が第2ロールよりも後方に位置するような大きさを有すると共に、受け面が回収部へ向けて下向きに傾斜するように構成される。その上で、本実施例は、受け部30の受け面32aで受けた糊液Sを回収する回収部40が、糊付け槽3から溢れ出る糊液(溢流糊液)を回収するための構成としても機能するように構成された例である。そのような本実施例の経糸糊付装置1について、以下で詳しく説明する。
【0028】
経糸糊付装置1は、第1のスクイズロール13の回転によって糊付け槽3の後方に飛散する糊液(飛散糊液)を受ける受け部30と、受け部30で受けた飛散糊液を回収する回収部40とを備えている。
【0029】
先ず、受け部30について、本実施例の受け部30は、前述のような受け面32aに加え、その受け面32aの後端から上方へ伸びる規制面34aを有するように構成されている。また、受け部30は、板状の部材で形成されている。したがって、その受け部30は、受け面32aを有する板状の部分である受け部分32と、規制面34aを有する規制部分34とから成っている。なお、受け面32aと規制面34aとの関係から、規制部分34は、受け部分32に対しその板厚方向に角度を成すように連続している。それにより、受け部30は、全体として略L字形に形成されている。その上で、受け部30は、受け面32aを上方へ向けるかたちで、その受け面32a(受け部分32)における前端(規制部分34側とは反対側の端縁)において糊付け槽3の後側の端壁6に接するように設けられている。因みに、本実施例では、受け部30と糊付け槽3とは、その互いに接する部分において溶接等で固定されている。
【0030】
その受け部30について、より詳しくは、受け部分32は、平面視において、矩形状を成すと共に、受け面32aの前端(後端)が長辺となるような形状を有している。そして、受け部分32は、その長辺方向(平面視における前記前端と平行な方向)に関し、糊付け槽3の前記幅方向における大きさと略同じ大きさを有している。また、受け部分32は、平面視における前記長辺方向と直交する方向である短辺方向に関しては、前記のように設けられた状態で、受け面32aの後端が第1のスクイズロール13よりも後方に位置するような大きさを有している。
【0031】
規制部分34は、その板厚方向に見て、略矩形状を成すと共に、受け部分32に連続する端縁が長辺となるような形状を有している。すなわち、規制部分34(規制面34a)は、その長辺の方向を受け部分32(受け面32a)に関する前記長辺方向と一致させたかたちとなっている。その上で、規制部分34(規制面34a)のその長辺方向の大きさは、その両側縁の位置が後述する回収部40の両側縁の位置と一致するように、受け部分32の前記長辺方向の大きさよりも大きくなっている。但し、受け部分32と規制部分34とは、前記長辺方向に関し、両者の中央が一致するような位置関係となっている。その上で、規制部分34は、受け部分32に対して一体的に形成されている。なお、受け部分32の前記長辺方向及び規制部分34の前記長辺方向は、経糸糊付装置1の前記幅方向と一致している。したがって、以下では、その前記長辺方向を前記幅方向に言い換えて説明する。
【0032】
そして、そのように構成された受け部30が前記のようなかたちで糊付け槽3に対し設けられるが、前記幅方向の配置に関しては、受け部30は、その中央を糊付け槽3の中央に一致させて設けられている。なお、受け部分32(受け面32a)の前記幅方向における大きさは、前記のように糊付け槽3の前記幅方向における大きさと略同じである。したがって、前記幅方向における受け部30の存在範囲は、第1のスクイズロール13の存在範囲を含むものとなっている。また、前記前後方向の配置に関しては、受け部30は、前記のように受け部分32の前端で糊付け槽3に接すると共に、受け部分32の後端が第1のスクイズロール13よりも後方に位置するように設けられている。したがって、前記前後方向における受け部30の存在範囲も、第1のスクイズロール13の存在範囲を含むものとなっている。
【0033】
また、受け部30(受け部分32)は、本実施例では、その受け面32aが後方から前方へ向けて下向きに傾斜するように設けられている。さらに、受け部分32は、前記幅方向に関し、その中央から両側縁に向けて下向きに傾斜するように、その中央において若干屈曲されたかたちに形成されている。
【0034】
次に、回収部40について、本実施例の回収部40は、糊付け槽3の前方で前記幅方向に延在するように設けられる回収路42と、糊付け槽3の両側方で前記前後方向に延在すると共に前記した受け部30と回収路42とを連続させる一対の誘導路44、44とを有するように構成されている。
【0035】
各誘導路44は、板状を成し、前記のように糊付け槽3の両側方において、受け部30における規制部分34の下端から前方へ向けて延びるように設けられている。また、各誘導路44は、受け部分32と同じ角度で後方から前方へ向けて傾斜するように設けられている。さらに、各誘導路44は、前記幅方向に関しては、糊付け槽3の側壁7に接するように設けられている。したがって、各誘導路44は、その内側の側縁を受け部30における受け部分32の側縁に突き合わせるかたちで設けられた状態となっている。
【0036】
なお、各誘導路44は、前記幅方向に関し、その外側の側縁が規制部分34の側縁と略一致するような大きさとなっている。また、各誘導路44は、前記前後方向に関し、その前端が糊付け槽3の前側の端壁5と略一致するような大きさとなっている。すなわち、各誘導路44の前端の位置は、前記前後方向に関し、糊付け槽3の前側の端壁5と略同じ位置となっている。
【0037】
また、回収路42は、矩形板状の底壁及び両縦壁から成り、その断面がコの字形の樋状を成すように形成されている。また、回収路42のその長手方向(底壁、縦壁の長辺方向)の大きさは、受け部30における規制部分34のその長辺方向(前記幅方向)の大きさと略同じであり、糊付け槽3の前記幅方向における大きさよりも大きいものとなっている。その上で、回収路42は、その長手方向を前記幅方向に一致させると共に、その前記幅方向に関し、中央を糊付け槽3の中央に一致させるかたちで設けられている。それにより、前記幅方向における回収路42の存在範囲は、糊付け槽3の存在範囲を含むものとなっている。さらに、回収路42の両端縁の位置は、前記幅方向に関し、規制部分34の側縁及び誘導路44の外側の側縁と略同じ位置となっている。
【0038】
そして、回収路42は、前記前後方向の配置に関しては、後側の縦壁の上縁で糊付け槽3の前側の端壁5に接すると共に、その上縁で各誘導路44の前端と連続するように設けられている。したがって、回収路42は、両誘導路44、44を介して受け部分32に連続するかたちとなっている。因みに、本実施例では、回収路42と両誘導路44、44とは、一体的に形成されている。また、両誘導路44、44は、受け部30(受け部分32、規制部分34)に対しても一体的に形成されている。
【0039】
また、回収路42の底壁は、前記長手方向(前記幅方向)に関し、その両端縁から中央へ向けて下向きに傾斜するように、その中央で若干屈曲されたかたちに形成されている。そして、回収路42は、前記長手方向における底壁の中央の位置に、その底壁を前記上下方向に貫通する貫通孔42aを有している。なお、その貫通孔42aは、外部に設けられた糊液Sの回収装置70に対しパイプ等(図示略)を介して接続されている。それにより、その貫通孔42aは、糊液Sを回収する回収孔として機能するようになっている。
【0040】
因みに、図示の例では、経糸糊付装置1は、回収路42における前側の縦壁の上縁から前方に向けて延びると共に、第2のスクイズロール15よりも前方の位置で上方へ向けて延びる板状の壁部50を有している。また、壁部50の前記幅方向における大きさは、回収路42の前記長手方向の大きさと略同じとなっている。それにより、経糸糊付装置1は、前記前後方向に関し、その壁部50と受け部30における規制部分34とで画定される空間であって、サイジングロール11、第1のスクイズロール13、及び第2のスクイズロール15の一部が存在する空間が形成されたものとなっている。
【0041】
その上で、経糸糊付装置1は、前記空間の両側を閉塞するかたちで設けられた一対のサイドフレーム60、60を備えている。なお、各サイドフレーム60は、前記上下方向に関しては、規制部分34の上縁から回収路42の底壁までの距離よりも大きく、前記前後方向に関しては、規制部分34の上縁から壁部50の上縁までの距離よりも若干大きいものとなっている。そして、両サイドフレーム60、60は、その内側の側面において、前記のように前記幅方向に関し同じ位置となっている規制部分34の側縁、誘導路44の外側の側縁、回収路42の端縁、及び壁部50の側縁と当接するかたちで設けられている。
【0042】
以上のように構成された本実施例の経糸糊付装置1の作用は、以下の通りである。先ず、経糸糊付装置1の作動中(経糸糊付け中)においては、糊液供給装置20からサイジングロール11と第1のスクイズロール13との外接位置に供給された糊液Sは、前記したように、第1のスクイズロール13の回転によって糊付け槽3の後方に飛散する。但し、その経糸糊付装置1においては、その飛散した糊液Sは、糊付け槽3に連続するかたちで糊付け槽3の後方に設けられた受け部30(受け部分32、規制部分34)によって受けられる。そして、その受け部30における受け部分32が前記のように前記幅方向に傾斜するように形成されていることから、その受けられた糊液Sは、受け部分32の受け面32a上を前記幅方向における側縁側へ向けて流れる。
【0043】
また、その受け部分32(受け面32a)の側縁に突き合わされるかたちで(連続するかたちで)回収部40における誘導路44が設けられると共に、その誘導路44が前方へ向けて傾斜するように形成されていることから、その受け面32a上を流れた糊液Sは、対応する誘導路44に達した後、前方へ向けて流れ落ちる。なお、サイドフレーム60が前記のように設けられていることから、前記幅方向へ向けた糊液Sの流れは、そのサイドフレーム60で堰き止められる。
【0044】
そして、誘導路44の前端に連続するかたちで回収路42が設けられていることから、誘導路44上を流れた糊液Sは、回収路42の底壁上に流れ落ちる。また、回収路42の底壁が前記のように前記幅方向に(貫通孔42aに向けて)傾斜するように形成されていることから、その底壁上の糊液Sは、貫通孔42aへ向けて流れ、パイプ等を介して回収装置70で回収される。
【0045】
このように、本実施例の経糸糊付装置1によれば、第1のスクイズロール13の回転によって糊付け槽3の後方に飛散する糊液(飛散糊液)が、受け部30の受け面32aで受けられるため、その飛散糊液によって経糸糊付装置の周辺が汚れてしまうのが可及的に防止される。しかも、前記のように受け面32aの前端において糊付け槽3(後側の端壁6)と接する、すなわち、受け面32aの前端が前記上下方向に関し糊付け槽3の存在範囲に位置するように受け部30が設けられているため、前記上下方向における経糸糊付装置全体の大型化が回避されたものとなる。
【0046】
また、受け部30が、前記のような規制部分34(規制面34a)を有するように構成されていることで、受け面32aよりも高い位置を飛散する糊液が、その規制面34aによって受けられることとなる。それにより、受け面32aのみで飛散糊液を受ける構成と比べ、前記前後方向における受け面32aの長さをより短いものとすることができ、受け部30の前記前後方向の大きさがよりコンパクトなものとなる。
【0047】
さらに、回収部40が前述のように構成されていることで、糊付け槽3から溢流する糊液(溢流糊液)もその回収部40によって回収される、すなわち、その回収部40が溢流糊液を回収する構成としても機能することとなるため、経糸糊付装置全体の構成がよりシンプルなものとなる。
【0048】
より詳しくは、経糸糊付装置においては、糊付け槽に対し新しい糊液が常時或いは定期的に供給されるのが一般的である。そして、そのように糊液が供給されると、糊付け槽から糊液が溢れ出ることとなる。それに対し、本実施例の経糸糊付装置1においては、回収部40(誘導路44、回収路42)は、糊付け槽3の側方及び前方で糊付け槽3に接するように設けられたものとなっている。それにより、溢流糊液は、その回収部40における誘導路44及び回収路42で受けられ、受け部30(受け面32a)で受けられた飛散糊液と同様に、貫通孔42aへ向けて流れることとなる。したがって、その構成においては、回収部40が溢流糊液を回収するための構成としても機能することとなり、溢流糊液を回収するための構成をその回収部40とは別に設ける必要がないため、経糸糊付装置全体の構成がよりシンプルなものとなる。
【0049】
以上では、本発明が適用された経糸糊付装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0050】
(1)受け部について、前記実施例では、受け部30は、全体として略L字形に形成されており、上方を向く受け面32aを含む受け部分32と、受け面32aの後端から上方へ伸びる規制面34aを含む規制部分34とで構成されている。しかし、本発明においては、受け部は、その規制面(規制部分)を含まず、受け部分のみで構成されても良い。但し、その場合には、その受け部分の前記前後方向の大きさは、前述のように後方へ飛散する糊液(飛散糊液)をその受け面で可及的に受けることができるような大きさとする必要がある。また、受け部分の端面(受け面)については、前記実施例のように受け面が平面であるように受け部分が形成されるのには限られず、受け面が曲面であるように受け部分が形成されても良い。
【0051】
(2)受け部における受け部分(受け面)の傾斜及び回収部について、前記実施例では、受け部分32は、前記幅方向に関し、その中央から両側縁に向けて下向きに傾斜するように、その中央において(逆V字形に)屈曲されるかたちに形成されている。その上で、受け部分32の両側方には、その両側縁に連続するかたちで、回収部40における一対の誘導路44、44が設けられている。さらに、前記実施例では、受け部30(受け部分32)は、前記前後方向に関し、その受け面32aが後方から前方へ向けて下向きに傾斜するように設けられている。しかし、本発明において、受け部分(受け面)の構成及びそれに伴う回収部の構成は、前記実施例のものには限られない。
【0052】
例えば、受け部分が、受け部が経糸糊付装置に設置された状態(設置状態)で、前記幅方向に関し、一方の側縁から他方の側縁へ向けて下向きに傾斜するように形成されても良い。そして、その場合には、回収部における誘導路は、受け部分における他方の側縁側のみに設けられるかたちとなる。
【0053】
また、受け部分は、前記幅方向に関し、両側縁から中央へ向けて下向きに傾斜するようにその中央で(V字形に)屈曲されるかたちに形成されても良い。その場合には、その受け部分(受け面)で受けられた前記飛散糊液を回収する構成として、受け部分の中央に上下方向に貫通する貫通孔を形成し、その貫通孔と糊液の回収装置とをパイプ等で接続するようにすれば良い。そして、その場合には、その貫通孔が回収部に相当することとなる。なお、前記実施例やこのように受け部分を一部で屈曲させる場合において、その屈曲位置は、前記幅方向における中央には限られず、中央よりも側縁側の位置であっても良い。
【0054】
さらに、受け部(受け部分)は、前記前後方向に関し、受け面が前方から後方へ向けて下向きに傾斜するように設けられても良い。なお、その場合において、回収部を前記実施例と同様に誘導路を介して前方の回収路へ前記飛散糊液を流すようなかたちに構成する場合には、前記幅方向において受け部分と隣接する誘導路の範囲に、その誘導路上を流れる前記飛散糊液が前記幅方向における内側へ流れ落ちるのを規制する部分が回収部に設けられるようにすれば良い。また、受け部(受け部分)は、前記幅方向に関し受け面が傾斜するように形成されている場合には、前記前後方向に関し受け面が傾斜していないかたちに設けられても良い。
【0055】
(3)回収部について、前記実施例では、回収部40は、糊付け槽3から溢れ出る糊液(溢流糊液)を回収する構成としても機能している。しかし、本発明において、回収部は、前記飛散糊液のみを回収するように設けられたものであっても良い。
【0056】
例えば、受け部が前記実施例のように構成されている場合において、その受け部分(受け面)の両側方へ向けて流れる前記飛散糊液を、糊付け槽の後方で回収するように回収部を設けるようにしても良い。具体的には、受け部分の両側方に、前記実施例の誘導路と同様に形成された流路であって、前端が前記前後方向における糊付け槽3の後端と略同じ位置となるように形成された流路を設ける。さらに、その流路の前端部にその板厚方向に貫通する貫通孔を形成する。その上で、その貫通孔と糊液の回収装置とをパイプ等で接続するようにすれば良い。そして、その場合には、その受け部分の両側方に設けられた流路であって貫通孔が形成された流路が回収部に相当することとなる。
【0057】
また、前述のように、受け面が前方から後方へ向けて下向きに傾斜するように受け部(受け部分)を設けるものとする場合において、受け部が規制部分を備えていない構成とした上で、受け部分(受け面)の後端から後方へ流れる(流れ落ちる)前記飛散糊液を回収するように回収部を設けるようにしても良い。その場合には、例えば、受け部分の後端付近に、前記幅方向の受け部分の存在範囲に亘って延在する樋部材を設ける。そして、その樋部材を回収装置に接続し、前記飛散糊液を回収装置で回収するものとすれば良い。また、その場合には、その樋部材が回収部に相当することとなる。
【0058】
(4)前提となる経糸糊付装置について、前記実施例の経糸糊付装置1は、サイジングロール11が糊付け槽3内の糊液Sに浸され、第1、第2の2つのスクイズロール13、15が経糸シートTの経路を挟むようにサイジングロール11に外接するかたちで設けられるように構成されたものとなっている。しかし、本発明が適用される経糸糊付装置は、そのように構成されたものに限られない。
【0059】
例えば、経糸糊付装置は、サイジングロールに加え、第2のスクイズロールも糊付け槽の糊液Sに浸されるように構成されていても良い。但し、その場合の糊付け槽は、前記前後方向においてサイジングロール及び第2のスクイズロールを包含するような大きさのものとされる。また、経糸糊付装置は、第2のスクイズロールのみが糊付け槽の糊液Sに浸されるように構成されていても良い。
【0060】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 経糸糊付装置
3 糊付け槽
4 底板
5 前側の端壁
6 後側の端壁
7 側壁
11 サイジングロール
12 支軸
13 第1のスクイズロール
14 支軸
15 第2のスクイズロール
16 支軸
18 糊液溜まり
20 糊液供給装置
22 糊液供給パイプ
24 ノズル
26 供給管
28 供給源
30 受け部
32 受け部分
32a 受け面
34 規制部分
34a 規制面
40 回収部
42 回収路
42a 貫通孔
44 誘導路
50 壁部
60 サイドフレーム
70 回収装置
S 糊液
T 経糸シート
図1
図2
図3