(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024027992
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】帽子用内装材、帽子
(51)【国際特許分類】
A42B 3/08 20060101AFI20240222BHJP
A42B 3/14 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A42B3/08
A42B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131273
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】595047651
【氏名又は名称】株式会社イエロー
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 法勝
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107AA01
3B107BA07
3B107BA08
3B107CA02
3B107DA05
3B107DA18
3B107DA19
(57)【要約】
【課題】使用時に、指先の細かい作業を要することなく迅速かつ的確に頭部に固定できる帽子用内装材、及び帽子を提供する。
【解決手段】ヘルメットを装着者の頭部に固定する内装材2は、ヘルメットを構成するヘルメット帽体を、装着者の少なくとも頭部の周囲に締結させるヘッドバンド31と、ヘッドバンド31に連結されて、頭部の耳部周辺から顎部に締結される紐部2bと、顎紐用バックル48とを備え、ヘッドバンド31は前側部材36と後側部材37とを備え、隣接して左側頭部側間隙部、右側頭部側間隙部39が形成され、紐部2bの弾性部材の耳紐46は前側部材36と後側部材37とに掛け渡され、顎紐用バックル48の位置で紐部2bの長さを調節し、ヘルメット帽体1を頭部に被せて紐部2bを下方に引き下ろすと、紐部2bの張力と弾性変形でヘルメット帽体が頭部に固定される。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の帽子を装着者の頭部に固定するための帽子用内装材であって、
前記帽子を構成する、前記頭部を保護するための帽子本体部を、装着者の少なくとも頭部の周囲に締結させるためのヘッドバンドと、
該ヘッドバンドに連結されて、前記頭部の少なくとも耳部周辺から顎部に締結される紐部と、
該紐部に装着されて該紐部の長さを調節する調節具とを備え、
前記ヘッドバンドは、前記装着者の前記頭部の周囲方向に装着される一又は複数の部材からなる周囲部材を備え、
該周囲部材に隣接して、前記頭部の周囲方向に間隙部が形成され、
前記紐部は、
少なくとも一部が弾性部材で形成され、
前記間隙部を介して前記周囲部材に掛け渡されて配設され、
前記紐部に対する前記調節具の配設位置を、前記紐部が前記頭部に締結される長さとなるように調節した状態としたときに、前記帽子本体部を前記頭部に被せた状態で前記紐部を下方に引き下ろすと、前記紐部の張力で前記周囲部材が前記間隙部において近接方向に引き寄せられて前記頭部に固定され、前記紐部の弾性変形によって該紐部を前記頭部の顎部を通過させて、前記頭部の耳部から顎部にかけて固定させることで、前記帽子本体部を前記頭部に固定させることを特徴とする帽子用内装材。
【請求項2】
前記紐部は、前記頭部の耳部に装着される一対の耳紐と、それぞれの前記耳紐に連結されて前記頭部の顎部に装着される顎紐とを備え、
該顎紐、及び/又は、前記耳紐が前記弾性部材で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の帽子用内装材。
【請求項3】
前記顎紐は一対設けられてそれぞれの前記顎紐が左側の前記耳紐と右側の前記耳紐に連結され、
前記左側の前記顎紐の端部と前記右側の前記顎紐の端部とには、それぞれが連結されてそれぞれの前記顎紐を連結させると共に該顎紐の長さを調節する調節具が設けられ、
それぞれの前記調節具で前記顎紐の長さを調節してそれぞれの前記調節具を連結させることで、前記一対の前記顎紐を連結させて前記頭部の顎部に固定させることを特徴とする請求項2に記載の帽子用内装材。
【請求項4】
前記帽子本体部を前記頭部の頭頂部に締結させるためのハンモックを備え、
前記紐部の張力により、前記ハンモックが前記頭部の頭頂部に押し付けられて固定されることを特徴とする請求項1に記載の帽子用内装材。
【請求項5】
前記帽子本体部と、
該帽子本体部の内部に配設された、請求項1乃至4の何れか一つに記載の帽子用内装材とを備えた帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメット、作業帽をはじめとする帽子に用いられる帽子用内装材、及び、帽子用内装材を備える帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメット、作業帽をはじめとする各種の帽子は、装着者の頭部に固定された状態で使用される場合が多い。特に、ヘルメット等、落下物や飛来物から頭部を保護するための帽子は、頭部保護という使用目的上、装着者の頭部に固定される必要性が高い。
【0003】
従来、ヘルメット等の帽子を装着者の頭部に固定するものとして、帽子の左右のあごひもを各々掛装するためのひも掛穴を左右に形成したあごひも用後部掛け具本体を備え、ヘルメットの後部内側に取り付けるための2本のスライド片または保持片をあごひも用後部掛け具本体に傾動自在に設けたあごひも用後部掛け具、及びこのあごひも用後部掛け具を備えた帽子が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ヘッドバンドを構成する非伸縮性樹脂成形体からなるバンド本体の一部に伸縮性バンドを介設した帽子用内装材が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-88414号公報
【特許文献2】特開2006-138039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ヘルメット等の帽子を地震や火災等の災害発生時や避難時に使用する場合、装着者の頭部を保護するために、装着者の頭部に帽子の帽体を固定する必要がある。この帽体の固定は、災害発生時や避難時には迅速さと的確さが求められる。しかし、特許文献1、及び特許文献2に記載の発明に係る帽子は、装着時に頭部に帽子の帽体を被ったのちに顎紐の長さを調節したり、調節した顎紐を固定することで帽体を装着者の頭部に固定するため、装着作業が煩雑である。特に、幼児や老人や身体障がい者等、指先での細かい作業が不得意な者、あるいは、それらの者に帽子を装着させる保護者や介助者にとって、この装着作業は大きな負担になり得る。そのため、特許文献1、特許文献2に記載の発明においては、災害発生時や避難時に、被災者の頭部保護や避難を迅速かつ的確に行うことが難しくなり得るという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、使用時に、指先の細かい作業を要することなく迅速かつ的確に頭部に固定できる帽子用内装材、及び帽子を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、各種の帽子を装着者の頭部に固定するための帽子用内装材であって、前記帽子を構成する、前記頭部を保護するための帽子本体部を、装着者の少なくとも頭部の周囲に締結させるためのヘッドバンドと、該ヘッドバンドに連結されて、前記頭部の少なくとも耳部周辺から顎部に締結される紐部と、該紐部に装着されて該紐部の長さを調節する調節具とを備え、前記ヘッドバンドは、前記装着者の前記頭部の周囲方向に装着される一又は複数の部材からなる周囲部材を備え、該周囲部材に隣接して、前記頭部の周囲方向に間隙部が形成され、前記紐部は、少なくとも一部が弾性部材で形成され、前記間隙部を介して前記周囲部材に掛け渡されて配設され、前記紐部に対する前記調節具の配設位置を、前記紐部が前記頭部に締結される長さとなるように調節した状態としたときに、前記帽子本体部を前記頭部に被せた状態で前記紐部を下方に引き下ろすと、前記紐部の張力で前記周囲部材が前記間隙部において近接方向に引き寄せられて前記頭部に固定され、前記紐部の弾性変形によって該紐部を前記頭部の顎部を通過させて、前記頭部の耳部から顎部にかけて固定させることで、前記帽子本体部を前記頭部に固定させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記紐部は、前記頭部の耳部に装着される一対の耳紐と、それぞれの前記耳紐に連結されて前記頭部の顎部に装着される顎紐とを備え、該顎紐、及び/又は、前記耳紐が前記弾性部材で形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記顎紐は一対設けられてそれぞれの前記顎紐が左側の前記耳紐と右側の前記耳紐に連結され、前記左側の前記顎紐の端部と前記右側の前記顎紐の端部とには、それぞれが連結されてそれぞれの前記顎紐を連結させると共に該顎紐の長さを調節する調節具が設けられ、それぞれの前記調節具で前記顎紐の長さを調節してそれぞれの前記調節具を連結させることで、前記一対の前記顎紐を連結させて前記頭部の顎部に固定させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記帽子本体部を前記頭部の頭頂部に締結させるためのハンモックを備え、前記紐部の張力により、前記ハンモックが前記頭部の頭頂部に押し付けられて固定されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、帽子であって、前記本体部と、該帽子本体部の内部に配設された、請求項1乃至4の何れか一つに記載の帽子用内装材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、帽子用内装材を構成する、頭部の少なくとも耳部周辺から顎部に締結される紐部の少なくとも一部が弾性部材で形成されていることにより、帽子本体部を装着者の頭部に被せた状態で、紐部を装着者の耳部周辺から顎部にかければ、紐部の弾性変形でただちに紐部は耳部周辺から顎部に固定される。また、調節具によって紐部を装着者の頭部に締結できる長さに予め調節しておけば、災害時や避難時などの緊急時に紐部や調節具に細かい調節作業や設定作業を行うことなく、ただちに紐部を装着者の頭部に固定できる。さらに、紐部がヘッドバンドの周囲部材に間隙部を介して掛け渡されて配設されていることにより、紐部を装着者の耳部周辺から顎部にかければ、紐部に下方に引き下ろす張力が働き、この張力で周囲部材が間隙部において近接方向に引き寄せられて、ただちにヘッドバンドが装着者の頭部に固定される。さらに、ただちに帽体本体部が装着者の頭部に固定される。そのため、装着者自身が帽子を被る場合も、幼児や老人や身体障がい者なども含む他の装着者に保護者や介助者などが帽子を被せる場合も含め、多様な装着者の頭部に迅速かつ容易に帽子用内装材と帽体本体部を固定できる。そして、平常時はもとより、災害時などの緊急時であっても、帽子を使用する多様な装着者の頭部に帽子用内装材を迅速かつ容易に固定できる。これにより、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、帽子用内装材を迅速かつ的確に頭部に固定できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、紐部を構成する、顎紐、及び/又は、耳紐が弾性部材で形成されたことにより、使用時に紐部を耳部周辺から顎部に装着すれば、紐部の弾性変形と張力によってただちに紐部が装着者の耳部周辺から顎部に固定され、また、ただちに帽体本体部が装着者の頭部に固定される。これにより、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、帽子用内装材を確実に頭部に固定できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、顎紐は一対設けられてそれぞれの顎紐が左側の耳紐と右側の耳紐に連結されていることにより、顎紐を左側と右側に分離できるので、紐部を嵩張らせることなく帽子を保管したり移送したりできる。また、左側の顎紐の端部と右側の顎紐の端部とには、それぞれが連結されてそれぞれの顎紐を連結させると共に顎紐の長さを調節する調節具が設けられ、調節具で顎紐の長さを調節してそれぞれの調節具を連結させることで、一対の顎紐を連結させて頭部の顎部に固定させることにより、顎紐の長さを装着者の頭部にフィットする長さに自在に調節して頭部に装着できる。そのため、個々の装着者の頭部の大きさの違いに関わらず、帽子用内装材を装着者の頭部にフィットさせることができる。そして、予め、調節具によって顎紐の長さを調節しておけば、平常時はもとより、災害時などの緊急時であっても、一層迅速かつ容易に、帽子用内装材を装着者の頭部にフィットさせることができる。また、装着者自身が帽子を被る場合も、幼児や老人や身体障がい者なども含む他の装着者に保護者や介助者などが帽子を被せる場合も含め、多様な装着者の頭部に帽子用内装材をフィットさせることができる。これにより、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、帽子用内装材を一層確実に頭部に固定できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、帽子本体部を頭部の頭頂部に締結させるためのハンモックが、紐部の張力により、頭部の頭頂部に押し付けられて固定されることにより、帽子用内装材を、装着者の頭頂部に固定させることができる。これにより、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、帽子用内装材を頭頂部を含めた装着者の頭部に確実に固定できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、迅速かつ的確に頭部に固定できる帽子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この実施の形態のヘルメットの底面方向から見た斜視図である。
【
図3】同上ヘルメットの上面方向から見た斜視図である。
【
図4】この実施の形態のヘルメットに用いるヘルメット帽体の平面図である
【
図9】この実施の形態のヘルメット装着具の正面図である。
【
図12】この実施の形態のヘルメットの顎紐を下方に引く前の状態における左側面図である。
【
図13】同上ヘルメットの顎紐を下方に引く前の状態におけるA-A線断面図である。
【
図14】同上ヘルメットの顎紐を下方に引いた後の状態における左側面図である。
【
図15】同上ヘルメットの顎紐を下方に引いた後の状態におけるA-A線断面図である。
【
図16】同上ヘルメットを複数積み重ねた状態における左側面図である。
【
図17】同上ヘルメットを複数積み重ねた状態におけるA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の一の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
【0020】
図1に示す、この実施の形態の「帽子」としてのヘルメット1Aは、工事用ヘルメットや各種作業用ヘルメット、あるいは防災用ヘルメットであり、落下物等の衝撃から装着者の頭部を保護するために用いられるものである。なお、ここでの装着者は、ヘルメット1Aを自ら被って使用する者、例えば健常者である子供や成人等であってもよい。また、ここでの装着者は、保護者や介助者の介助によりヘルメット1Aを装着する者、例えば幼児や高齢者や身体障がい者等であってもよい。
【0021】
このヘルメット1Aは、
図1に示す通り、「帽子本体部」としてのヘルメット帽体1と、このヘルメット帽体1の内部に配設された「帽子用内装材」としての内装材2とから成る。
【0022】
ヘルメット帽体1は、ABS等、剛性が高い樹脂により一体成形されている。ヘルメット帽体1は、有色不透明、有色透明、無色透明にすることができる。
【0023】
図4乃至
図8に示す通り、ヘルメット帽体1は、多角形の形状に形成された複数の平板状の部分の組み合わせによって頭部を覆う形状に形成されている。この実施の形態においては、それぞれの平板状の部分は、三角形乃至六角形に形成され、形状や面積がそれぞれ異なっている。例えば、装着者の額の部分を被う前頭部保護部材3や前端部の庇部4は略六角形又は略四角形で比較的大きな面積に形成され、前側頭部保護部材5,6,7,8は略三角形で比較的大きな面積に形成され、頭頂部付近を保護する頭頂部保護部材9,10,11,12,13は略三角形で比較的小さな形状に形成されている。一方、保護を強化したい箇所、例えば頭頂部保護部材9,10,11,12,13で囲まれた頭頂部に配設される部分には、頂点14が形成されている。なお、
図4及び
図5に示す通り、ヘルメット帽体1は左右対称に形成されている。
【0024】
図3、
図4、
図6に示すように、ヘルメット帽体1の前側頭部保護部材6,8と、その直下に位置する側頭部保護部材15,16とに跨った部分には、前側載置用突起部17,18が突設されている。
図4、
図5、
図7に示す通り、後側頭側保護部材19,20には、後側載置用突起部21,22が突設されている。
図8に示す通り、前側載置用突起部17,18は正面視略矩形であり、
図4に示す通り、上面が前方に向けて下降方向に傾斜がつけられた平面形状に形成されている。一方、
図4及び
図8に示す通り、後側載置用突起部21,22は正面視略三角形の三角錐形状に形成されており、
図4に示す通り上面が略水平面の平面形状に形成されている。後述する通り、前側載置用突起部17,18、及び後側頭側保護部材19,20には、同一のヘルメット1Aを複数積み重ねた際に、上に積み重ねられた他のヘルメット1Aのヘルメット装着具2aを形成するヘッドバンド本体部(後述)の下部が載置される。
【0025】
また、
図5に示す通り、ヘルメット帽体1の内部には、4箇所に、被嵌合部23,24,25,26が設けられている。この被嵌合部23,24,25,26には、ヘルメット装着具2aに設けられた4つの嵌合片部35,35,35,35(
図2参照、後述)がそれぞれ嵌合される。
【0026】
なお、載置用突起部17,18,21,22の数は、複数のヘルメット1Aの積み重ね(
図17参照)に適していれば4つより多くても少なくてもよい。
【0027】
一方、
図9及び
図11に示す通り、内装材2はヘルメット装着具2aと紐部2bとから成る。
【0028】
図9、
図10、
図11に示すとおり、ヘルメット装着具2aは、ハンモック30とヘッドバンド31とを備えている。
【0029】
ハンモック30は、柔軟性と剛性とを有し、繰り返しの使用や長期間の使用によっても伸びや剛性の低下が生じにくい合成樹脂、例えばポリエチレンによって形成されている。但し同様の性質を有するものであればどのような材質で形成されていてもよい。そして、ハンモック30は、装着者の頭頂部を抑える頭頂抑え部33と、この頭頂抑え部33から複数延長された計4本の略帯状の延長片部34とを有し、これら各延長片部34の先端部には、延長片部34の幅方向に張り出した嵌合片部35が設けられている。これら4つの嵌合片部35,35,35,35は、
図5に示すヘルメット帽体1の内部の被嵌合部23,24,25,26にそれぞれ嵌合されて、これにより
図2に示すようにヘルメット装着具2aがヘルメット帽体1の内部に配設された状態が形成されることになる。
【0030】
一方、ヘッドバンド31は、頭部の周囲方向に連続する帯状のヘッドバンド本体部32とヘッドバンド本体部32の間の二箇所に形成された間隙部(後述)とから成る。
【0031】
ヘッドバンド本体部32は、ハンモック30と同じ素材によって形成されている。ヘッドバンド本体部32は、装着者の頭部の前側に配設される「周囲部材」としての前側部材36と、装着者の頭部の後側に配設される「周囲部材」としての後側部材37とから成る。
【0032】
また、ヘッドバンド本体部32は、頭部に装着された際に装着者の頭部の周囲を囲繞するように配設されている。具体的には、
図2に示す通り、前側部材36と、後側部材37とは、ヘルメット1Aが装着者の頭部に装着された際における頭部の周囲方向、即ち装着者の額部から両側頭部にかけて、並びに装着者の後頭部から両側頭部にかけてそれぞれ当接されるように帯状に連続している。
【0033】
なお、前側部材36の両端部側の下部は下方に向けて凸となる略円弧状を形成しており(
図11、
図15参照)、後側部材37の両端部側の下部は略直線状となっている(
図11、
図15参照)。
【0034】
そして、前側部材36と後側部材37との間の2箇所には間隙部が形成されている。即ち、
図2に示すように前側部材36の一端部と後側部材37の他端部との間に隣接して、装着者の左側頭部の位置に「間隙部」としての左側頭部側間隙部38が形成されている。また、前側部材36の他端部と後側部材37の一端部との間に隣接して、装着者の右側頭部の位置に「間隙部」としての右側頭部側間隙部39が形成されている。
【0035】
前側部材36の一端部側と他端部側とから、及び、後側部材37の一端部側と他端部側とからは、上方に向けて前側接合片部40,40、後側接合片部41,41がそれぞれ設けられている。これら接合片部40,40,41,41とそれぞれの延長片部34,34,34,34とはビス(図示せず)によって回動自在に連結されている。これによってヘッドバンド31がハンモック30の一部に連続した状態が形成されている。なお、この実施の形態の態様に代えて、ヘッドバンド31とハンモック30とを一体形成することでヘッドバンド31がハンモック30の一部に連続した状態を形成してもよい。
【0036】
前側部材36の両端部側、及び後側部材37の両端部側には、それぞれ縦長の挿通穴42,42、挿通穴43,43が貫通形成されている。挿通穴42,42、挿通穴43,43には、耳紐46,46が挿通される。
【0037】
図1、
図9、
図10等に示すとおり、紐部2bは、一対の耳紐46,46と一対の顎紐47,47とを備えている。左側の耳紐46は左側の挿通穴42,43に、右側の耳紐46は右側の挿通穴42,43に、それぞれ挿通されることで、ヘッドバンド31の前側部材36と後側部材37とを左側と右側とで連結している。
【0038】
この実施の形態において、耳紐46,46は弾力性のある紐状の部材、たとえばゴム紐等によって形成されている。
【0039】
それぞれの耳紐46は、前側部材36の挿通穴42に挿通され、更に後側部材37の挿通穴43に挿通されている。そして、耳紐46の両端部は耳紐用バックル44に結合されている。そして、耳紐46は全体として略環状となり、装着者の耳部に装着される。装着時に、耳紐46は装着者の耳に接触してもしなくてもよい。また、耳紐46の少なくとも一部が装着者の耳の表面側に装着される構成や耳を覆う構成であってもよい。これにより、
図11に示す通り、耳紐46によって前側部材36と後側部材37の端部同士(前側部材36の一端部と後側部材37の他端部と、及び、前側部材36の他端部と後側部材37の一端部と)が連結された状態となっている。
【0040】
一方、顎紐47,47は、ポリプロピレン等剛性の高い繊維で帯状に形成されている。顎紐47は、基端部側の端部が折り返されてリベット54で固着され、環部55を形成する。この環部55の内部には耳紐46が挿通されて、顎紐47と耳紐46とが連結されている。
【0041】
顎紐47,47の先端部には、それぞれ、「調節具」としての顎紐用バックル48を構成する係合部材49と被係合部材50がそれぞれ連結されている。
図1に示すように、顎紐用バックル48は、一方の顎紐47が挿通された紐通し部51を備える。顎紐用バックル48は、紐通し部51において顎紐47に対する顎紐用バックル48の配設位置を移動させて、顎紐47の長さを調節できる。
【0042】
なお、紐部2bは、全体として弾性変形する弾性力とヘルメット1Aを頭部に固定できる剛性とを備えていればよい。従って、この実施の形態とは逆に、顎紐47,47をゴム紐等の弾性体で構成して耳紐46,46を剛性の高い繊維で形成してもよい。また、耳紐46,46と顎紐47,47の双方を弾性体で形成してもよい。さらに、一方側たとえば右側の耳紐46と顎紐47とを弾性体で形成し他方側たとえば左側の耳紐46と顎紐47とを剛性の高い繊維で形成してもよい。さらに、耳紐46,46や顎紐47,47を、一部が弾性体、別の一部が剛性の高い繊維で形成してもよい。さらにまた、上記以外のどのような構成で、耳紐46,46と顎紐47,47に弾性力と剛性とを併有させてもよい。
【0043】
また、この実施の形態の「調節具」は、顎紐47,47の一方又は双方の長さを調節して紐部2bを装着者の頭部に固定できる構成であればどのようなものでもよい。例えば、この実施の形態の顎紐用バックル48に替えて、コードストッパ、テープアジャスタ、ナスカン、DリングやОリング等を設けてもよい。
【0044】
次に、この実施の形態のヘルメット1Aの使用前の準備手順と、使用手順とについて説明する。
【0045】
まず、使用前の準備手順を説明する。
【0046】
このヘルメット1Aを使用する装着者は、まず、ヘルメット1Aを頭部に装着する。この状態で、装着者は、顎紐47の一方側の先端部において、顎紐用バックル48の紐通し部51に挿通された顎紐47をスライドさせる。そして、装着者は、紐部2bが装着者の耳元から顎部にかけて固定される長さとなるように顎紐用バックル48の位置を調節する。このように、装着者がヘルメット1Aのヘルメット帽体1を頭部に被り、耳元から顎部に紐部2bをかけた際、紐部2bによってヘルメット帽体1が装着者の頭部に固定される状態を予め形成しておく。
【0047】
なお、装着者が他人の介助によりヘルメット1Aを頭部に装着する者である場合は、介助者が装着者の頭部にヘルメット1Aを被せて顎紐用バックル48の位置を調節することで、ヘルメット帽体1が装着者の頭部に固定される状態を予め形成してもよい。
【0048】
次に、使用時の手順を説明する。
【0049】
使用の一例として、準備手順で紐部2bの長さを調節したヘルメット1Aを、災害時や災害避難時等に装着者が使用する場合を考える。
【0050】
まず装着者は、顎紐用バックル48の係合部材49と被係合部材50とが係合した状態のヘルメット1Aの、ヘルメット帽体1の前頭部保護部材3及び庇部4を前にして頭部に被る。そして、装着者は、頭頂部がハンモック30に当接した状態で、ヘルメット1Aの両方の耳紐46,46がそれぞれ形成する略三角形の空間(
図11参照)の中に耳を挿通させる。
【0051】
この状態で、装着者が指の力で顎紐47を下方(
図11、
図12、
図13の矢印P方向)に引き下ろすと、顎紐47に連結されたそれぞれの耳紐46,46にも下方に引き下ろす力が働く。これにより、ヘッドバンド31の前側部材36と後側部材37の端部同士(前側部材36の一端部と後側部材37の他端部と、及び、前側部材36の他端部と後側部材37の一端部と)には、
図11、
図13の矢印Q1及び矢印Q2に示す方向の張力が働く。耳紐46の張力により、前側部材36と後側部材37とは、それぞれ近接方向に引き寄せられる。その結果、前側部材36と後側部材37とは、
図11、
図12に示す離間した状態から、
図13、
図14に示す近接方向に引き寄せられた状態となる。具体的には、
図11に実線で示す、前側部材36と後側部材37との間の、幅の広い右側頭部側間隙部39(及び
図2に示す左側頭部側間隙部38)から、
図11の二点鎖線で示す右側頭部側間隙部39aのように、(及び左側頭部側間隙部38)の幅が狭められた状態となる。なお、図示しないが、このとき左側頭部側間隙部38の幅も狭められる。そして、ヘッドバンド31は装着者の頭の額部から両側部を経て後頭部まで、頭部の周方向に締結されて固定される。さらに、ハンモック30は装着者の頭頂部に押圧されて固定される。なお、この状態で、耳紐46,46は装着者の指で下方に引っ張られて弾性変形し、
図11に二点鎖線で示すように、下方に引き伸ばされた状態となる。
【0052】
さらに、装着者は、引き下ろした顎紐47を顎部にかける。そして、装着者が顎紐47から指を離すと、下方に引き伸ばされた耳紐46,46には上方への復元力が働く。そして、紐部2bの耳紐46,46と顎紐47とは上方に引っ張られる。
【0053】
このように、紐部2bは、装着者の頭部一方の耳部から顎部を通過して、他方の耳部にから顎部にかけて固定される。
【0054】
なお、装着者が他人の介助によりヘルメット1Aを頭部に装着する者である場合は、介助者が装着者の頭部にヘルメット1Aを被せ、顎紐47を下方に引き伸ばしたのちに顎部にかけることで、紐部2bを装着者の耳部から顎部にかけて固定してもよい。
【0055】
紐部2bが装着者の耳元から顎部に固定されても、耳紐46,46の弾性力はハンモック30とヘッドバンド31に継続的に作用する。この作用により、ハンモック30が装着者の頭頂部に押圧される。また、この作用により、ヘッドバンド31の前側部材36と後側部材37の間に形成されたたとえば右側頭部側間隙部39は
図11に二点鎖線で示す右側頭部側間隙部39aのような狭い状態が持続する。そして、ヘッドバンド31は装着者の頭部の周囲に締結された状態が持続する。そして、内装材2が装着者の頭部に固定されて、ヘルメット1Aのヘルメット帽体1も装着者の頭部に固定される。
【0056】
これにより、装着者がヘルメット帽体1を頭部に被って紐部2bを耳元から顎部にかければ、ヘルメット帽体1を頭部に固定させた状態を迅速かつ的確に形成できる。そして、ヘルメット1Aを迅速かつ的確に装着できる。しかも、ヘルメット1Aの装着時に紐部2bの顎紐47,47同士を結合させたり、顎紐47の長さ調節を行ったりせずに、ヘルメット1Aを頭部に固定させることができる。
【0057】
更に、装着者が紐部2bを頭部にかけた状態のままで顎紐用バックル48の紐通し部51に挿通された顎紐47をスライドさせれば、顎紐47の長さを自在に調節できる。顎紐47の長さを調節すれば、それに伴って装着者の頭部に装着された紐部2bの張力の強弱を自在に調節できる。紐部2bの張力の調節により、装着者は右側頭部側間隙部39及び左側頭部側間隙部38の幅や、ハンモック30の頭頂部への押圧力を自在に調節できる。これにより、装着者は、ヘルメット1Aを頭部に被った状態のままで、ヘルメット1Aの固定状態を容易に調節できる。
【0058】
一方、ヘルメット1Aを頭部から離脱させる際は、装着者は指で顎紐47を下方に引き下ろして耳紐46を下方に弾性変形させ、紐部2bの顎紐47を装着者の顎部から、耳紐46を装着者の耳元から、それぞれ離脱させる。これにより、紐部2b全体に加わっていた張力は緩む。
【0059】
紐部2bの張力が緩むことで、前側部材36と後側部材37とはそれぞれの弾性によって前側部材36と後側部材37の端部同士を離間させる方向(即ち、
図15の矢印Q3及び矢印Q4に示す方向)に移動する。そして、ヘッドバンド31の前側部材36と後側部材37を近接方向に引き寄せる張力は弱まり、前側部材36と後側部材37との間の狭い右側頭部側間隙部39a(
図15、
図11参照)は広い右側頭部側間隙部39(
図11参照)に広がる。
図11等に図示しないが、左側頭部側間隙部38もこのとき同様に広がる。さらに、ハンモック30を装着者の頭頂部に押圧する押圧力も弱まる。
【0060】
紐部2bによる頭部への張力、ヘッドバンド31による頭部への締結力、ハンモック30による頭部への押圧力が弱まり、装着者はヘルメット1Aを頭部から離脱できる。
【0061】
なお、ヘルメット1Aの顎紐用バックル48の係合を解除させて、ヘルメット1Aを装着者の頭部から離脱させることもできる。
【0062】
また、装着者が他人の介助によりヘルメット1Aを頭部に装着する者である場合は、介助者が装着者の頭部から紐部2bを離脱させてヘルメット1Aを離脱させてもよい。
【0063】
ヘッドバンド本体部32は繰り返しの使用や長期間の使用によっても伸びや剛性の低下が生じにくい材質で形成されているため、繰り返し使用したり、長期間にわたって使用を続けてもヘルメット1Aを頭部にしっかり固定させることができる。
【0064】
また、顎紐用バックル48の紐通し部51において顎紐47をスライドさせれば、予め顎紐47の長さを調節できる。そのため、ヘルメット1Aは、装着者の頭部に紐部2bをフィットさせた状態、さらに装着者の頭部にヘッドバンド31やハンモック30をフィットさせた状態を、使用時に先立って予め形成しておくことができる。そのため、使用時における装着者のヘルメット1Aの着脱は容易に行える。
【0065】
そして、平常時はもとより、装着の緊急性が求められる地震や火事や各種紛争などの緊急事態発生時であっても、装着者は、迅速かつ的確に、ヘルメット1Aを頭部にしっかり固定させることができる。
【0066】
また、装着者が幼児や老人や身体障がい者など、ヘルメット1Aの装着時に保護者や介助者などの介助が必要な者である場合であっても、保護者や介助者などがヘルメット1Aを装着者の頭部にフィットした状態を予め形成し、保護者や介助者などがヘルメット1Aを迅速かつ的確に装着者の頭部にフィットさせて被せることができる。そのため、介助が必要な者が災害等から身を守ったり避難したりする際の行動を円滑かつ迅速に行うことが可能になる。
【0067】
次に、ヘルメット1Aを複数積み重ねて保管したり流通させる場合、
図16に示すように、下側のヘルメット1Aのヘルメット帽体1の前側載置用突起部18、及び後側載置用突起部22の上面にそれぞれ形成された平面形状の部分の上に、前側部材36、後側部材37の端部の下部をそれぞれ載置させる。
図16には図示しないが、同様に、前側載置用突起部17、及び後側載置用突起部21の上面にも前側部材36、後側部材37の端部の下部をそれぞれ載置させる。
【0068】
下側のヘルメット1Aの前側載置用突起部17,18及び後側載置用突起部21,22の上面に設けられた平面形状の上に上側のヘルメット1Aの前側部材36、後側部材37の端部の下部を載置させることにより、ヘルメット1Aを複数積み重ねたときの個々のヘルメット1Aの載置位置が固定され、積み重ねられたヘルメット1Aの位置ずれを防止できる。即ち、
図17に示す通り、前方に向けて下降方向に傾斜がつけられた前側載置用突起部18(及び
図17に図示せぬ前側載置用突起部17)の上面に、下方に向けて凸となった前側部材36の両端部が載置され、更に、略水平面に形成された後側載置用突起部22(及び
図17に図示せぬ後側載置用突起部21)の上面に略直線状の後側部材37の端部の下部が接触した状態で載置されることにより、前側載置用突起部17,18と前側部材36との当接位置、及び後側載置用突起部21,22と後側部材37との当接位置には強い摩擦力が働き、他のヘルメット1Aの上に積み重ねられたヘルメット1Aの積載位置が前後方向(
図16、
図17の左右方向)にずれてしまう事態を防止できる。これにより、ヘルメット1Aを多数積み重ねても、他のヘルメット1Aの上に積み重ねられたヘルメット1Aがぐらついたり、荷崩れを起こす事態が生じにくくなる。
【0069】
更に、ヘルメット1Aを積み重ねる際には、右側頭部側間隙部39及び左側頭部側間隙部38の幅が広がった状態となっているので(
図17参照)、
図16の矢印Tに示す、積み重ねた際の積層方向の大きさを抑え、かさばりを抑えることができる。
【0070】
なお、ヘルメット1Aを積み重ねる際に、顎紐用バックル48の係合を解除させることもできる。これにより、ヘルメット1Aの
図16の矢印Tに示す、積み重ねた際の積層方向の大きさを一層抑え、かさばりを一層抑えることもできる。
【0071】
以上、この実施の形態においては、内装材2を構成する、頭部の少なくとも耳部周辺から顎部に締結される紐部2bの少なくとも一部である耳紐46が弾性部材で形成されていることにより、ヘルメット帽体1を装着者の頭部に被せた状態で、紐部2bの耳紐46や顎紐47を装着者の耳部周辺から顎部にかければ、紐部2bの耳紐46の弾性変形でただちに紐部2bは装着者の耳部周辺から顎部に固定される。また、顎紐用バックル48によって顎紐47の長さを調節し、紐部2bを装着者の頭部に締結できる長さに予め調節しておけば、災害時や避難時などの緊急時に紐部2bや顎紐用バックル48に細かい調節作業や設定作業を行うことなく、ただちに紐部2bを装着者の頭部に固定できる。さらに、紐部2bがヘッドバンド31の前側部材36と後側部材37とに左側頭部側間隙部38と右側頭部側間隙部39とを介して掛け渡されて配設されていることにより、紐部2bを装着者の耳部周辺から顎部にかければ、紐部2bに下方に引き下ろす張力が働き、この張力で前側部材36と後側部材37とが左側頭部側間隙部38と右側頭部側間隙部39とにおいて近接方向に引き寄せられて、ただちにヘッドバンド31が装着者の頭部に固定される。さらに、ただちにヘルメット帽体1が装着者の頭部に固定される。そのため、装着者自身がヘルメット1Aを被る場合も、幼児や老人や身体障がい者なども含む他の装着者に保護者や介助者などがヘルメット1Aを被せる場合も含め、多様な装着者の頭部に迅速かつ容易に内装材2とヘルメット帽体1を固定できる。そして、平常時はもとより、災害時などの緊急時であっても、ヘルメット1Aを使用する多様な装着者の頭部に内装材2を迅速かつ容易に固定できる。これにより、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、内装材2を迅速かつ的確に頭部に固定できる。
【0072】
この実施の形態においては、紐部2bを構成する耳紐46,46が弾性部材で形成されたことにより、使用時に紐部2bの耳紐46と顎紐47を耳部周辺から顎部に装着すれば、耳紐46の弾性変形と張力によってただちに紐部2bが装着者の耳部周辺から顎部に固定され、また、ただちにヘルメット帽体1が装着者の頭部に固定される。これにより、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、内装材2を確実に頭部に固定できる。
【0073】
この実施の形態においては、紐部2bを構成する耳紐46と顎紐47とは一対設けられてそれぞれの顎紐47,47が左側の耳紐46と右側の耳紐46に連結されていることにより、顎紐47,47を左側と右側に分離できるので、紐部2bを嵩張らせることなくヘルメット1Aを保管したり移送したりできる。また、左側の顎紐47の端部と右側の顎紐47の端部とには、それぞれが連結されてそれぞれの顎紐47,47を連結させると共に顎紐47,47の長さを調節する顎紐用バックル48が設けられ、顎紐用バックル48で顎紐47,47の長さを調節してそれぞれの顎紐用バックル48を連結させることで、一対の顎紐47,47を連結させて頭部の顎部に固定させることにより、顎紐47,47の長さを装着者の頭部にフィットする長さに自在に調節して頭部に装着できる。そのため、個々の装着者の頭部の大きさの違いに関わらず、内装材2を装着者の頭部にフィットさせることができる。そして、予め、顎紐用バックル48によって顎紐47の長さを調節しておけば、平常時はもとより、災害時などの緊急時であっても、一層迅速かつ容易に、内装材2を装着者の頭部にフィットさせることができる。また、装着者自身がヘルメット1Aを被る場合も、幼児や老人や身体障がい者なども含む他の装着者に保護者や介助者などがヘルメット1Aを被せる場合も含め、多様な装着者の頭部に内装材2をフィットさせることができる。これにより、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、内装材2を一層確実に頭部に固定できる。
【0074】
この実施の形態においては、ヘルメット帽体1を頭部の頭頂部に締結させるためのハンモック30が、紐部2bの張力により、頭部の頭頂部に押し付けられて固定されることにより、内装材2を、装着者の頭頂部に固定させることができる。これにより、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、内装材2を頭頂部を含めた装着者の頭部に確実に固定できる。
【0075】
この実施の形態においては、使用時に、指先の細かい作業を要することなく、迅速かつ的確に頭部に固定できるヘルメット1Aを提供できる。
【0076】
なお、この実施の形態においては、ヘッドバンド本体部32が「周囲部材」としての前側部材36と後側部材37という二つの部材を備え、紐部2bが、ヘッドバンド31の前側部材36と後側部材37とに「間隙部」としての左側頭部側間隙部38と右側頭部側間隙部39とを介して掛け渡されて配設されている構成としたが、これに代えて、「周囲部材」を連続する一本の部材で形成し、間隙部が一つだけ形成され、この間隙部を介して「周囲部材」に紐部2bが掛け渡された構成としてもよい。また、この実施の形態においては、左側頭部側間隙部38と右側頭部側間隙部39とは装着者の両側頭部の位置に形成されているが、これに限定されず、装着者の両側頭部に位置して「周囲部材」が配設されると共に頭部の前側や後側に位置して「間隙部」が形成され、この「間隙部」を介して「周囲部材」に紐部2bが掛け渡されてもよい。さらには、「周囲部材」を装着者の少なくとも頭部の周囲に配設される3つ以上の部材で形成したり、「間隙部」を3つ以上形成し、これらの「間隙部」を介して「周囲部材」に紐部2bが掛け渡された構成としてもよい。
【0077】
また、この実施の形態においては、複数の多角形の組み合わせによって頭部を覆う形状に形成されたヘルメット帽体1を備えた構成としたが、これに限定されず、他の構成の「帽子本体部」としてのヘルメット帽体を備えたヘルメットにおいてこの実施の形態と同様の効果を得ることもできる。
【0078】
具体的には、例えば、平板状態で形状が安定する部材で成形された複数枚の板材を備え、折畳んだ状態ではこれらの板材が略扁平形状となった状態(以下「扁平状態」と称する。)と、これらの板材が内部に頭部を収容できる立体的な形状に展開されて頭部に被れる形状となった状態(以下「展開状態」と称する。)とに(使用時と不使用時とで)形状を変化させることのできる折畳み式ヘルメットに本発明を適用できる。
【0079】
本発明を適用する折り畳み式ヘルメットとしては、例えば、複数枚の板材をヒンジで連結させて、扁平状態と展開状態とに変形させることのできる「帽子本体部」としての帽体に、この実施の形態と同様の「帽子用内装材」としての内装材2や内装材2と同様の構成を設け、この実施の形態のヘルメット1Aと同様に迅速かつ的確に頭部に固定できるヘルメットを提供できる。
【0080】
また例えば、複数の円環状や椀状の板材を備え、これらの板材を折り畳んだり一部の板材の内部に他の一部の板材を収容して扁平状態とし立体的に組み立てて展開状態とすることのできる「帽子本体部」としての帽体に、この実施の形態と同様の「帽子用内装材」としての内装材2や内装材2と同様の構成を設け、この実施の形態のヘルメット1Aと同様に迅速かつ的確に頭部に固定できるヘルメットを提供できる。
【0081】
また、略半球型及びそれに類する外形を有する、防災用、工事用、スポーツ用、登山用、乗車用、警察用、消防用、戦闘用等各種用途用の「帽子本体部」としてのヘルメット帽体に、この実施の形態と同様の「帽子用内装材」としての内装材2や内装材2と同様の構成を設け、この実施の形態のヘルメット1Aと同様に迅速かつ的確に頭部に固定できるヘルメットを提供することもできる。
【0082】
また、この実施の形態においては、ヘルメット以外の各種の帽子、たとえばスポーツキャップ、ワークキャップ、ハット、農作業帽子、麦わら帽子等、「帽子本体部」としての各種の帽子に、この実施の形態と同様の「帽子用内装材」としての内装材2や内装材2と同様の構成を設け、この実施の形態のヘルメット1Aと同様に迅速かつ的確に頭部を直射日光や埃から守ることのできる帽子を提供することもできる。
【0083】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態に限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1A・・・ヘルメット(帽子)
1・・・ヘルメット帽体(帽子本体部)
2・・・内装材(帽子用内装材)
2b・・・紐部
30・・・ハンモック
31・・・ヘッドバンド
36・・・前側部材(周囲部材)
37・・・後側部材(周囲部材)
38・・・左側頭部側間隙部(間隙部)
39,39a・・・右側頭部側間隙部(間隙部)
46,46・・・耳紐
47,47・・・顎紐
48・・・顎紐用バックル(調節具)