(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028002
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】災害時用物資の管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240222BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131293
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】514140779
【氏名又は名称】益本 秀則
(71)【出願人】
【識別番号】522332294
【氏名又は名称】井植 敏彰
(71)【出願人】
【識別番号】522332308
【氏名又は名称】今井 大造
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】益本 秀則
(72)【発明者】
【氏名】井植 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】今井 大造
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓之
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】災害時物資の管理が容易に行えるようにするとともに、災害時に必要な情報を適切なタイミングで提供可能にする。
【解決手段】災害時用物資の管理システム1は、各防災倉庫20、30、40に収容されている災害時用物資を特定する物資特定情報を取得する物資情報取得部と、各防災倉庫20、30、40の位置情報を取得する位置情報取得部とを備えている。管理コンピュータ10は、各防災倉庫20、30、40の通信部から送信された物資特定情報と位置情報とを関連付けて物資データベースを作成するとともに、物資特定情報と位置情報とに基づく災害時物資の提供場所に関する情報をインターネットN上に配信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の品目の災害時用物資が収容される複数の防災倉庫と、管理コンピュータとを備えた災害時用物資の管理システムであって、
各防災倉庫に設けられ、収容されている災害時用物資を特定する物資特定情報を取得する物資情報取得部と、
各防災倉庫に設けられ、位置情報を取得する位置情報取得部と、
各防災倉庫に設けられ、前記管理コンピュータと通信可能な通信部とを備え、
前記通信部は、前記物資情報取得部で取得された物資特定情報と、前記位置情報取得部で取得された位置情報とを前記管理コンピュータに送信し、
前記管理コンピュータは、前記通信部から送信された前記物資特定情報と前記位置情報とを関連付けて物資データベースを作成するとともに、前記物資特定情報と前記位置情報とに基づく災害時物資の提供場所に関する情報をインターネット上に配信可能に構成されていることを特徴とする災害時用物資の管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の災害時用物資の管理システムにおいて、
各防災倉庫に設けられ、災害に関する情報を表示する情報表示部を備え、
前記管理コンピュータは、災害時物資の提供場所に関する情報を各防災倉庫に配信し、
前記情報表示部は、前記管理コンピュータから配信された災害時物資の提供場所に関する情報を表示するように構成されていることを特徴とする災害時用物資の管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の災害時用物資の管理システムにおいて、
前記管理コンピュータは、避難所の開設に関する情報を各防災倉庫に配信し、
前記情報表示部は、前記管理コンピュータから配信された避難所の開設に関する情報を表示するように構成されていることを特徴とする災害時用物資の管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の災害時用物資の管理システムにおいて、
各防災倉庫に設けられ、収容されている災害時物資の雰囲気に関する情報を取得する雰囲気情報取得部を備え、
前記通信部は、前記雰囲気情報取得部で取得された災害時物資の雰囲気に関する情報を送信することを特徴とする災害時用物資の管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の災害時用物資の管理システムにおいて、
前記物資情報取得部には、各災害時物資に付与されているICタグを非接触で読み取るリーダが含まれていることを特徴とする災害時用物資の管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の災害時用物資の管理システムにおいて、
前記物資特定情報には、災害時用物資の消費期限に関する情報が含まれていることを特徴とする災害時用物資の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、災害時に必要となる災害時用物資を管理する災害時用物資の管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、地震や水害などの災害時には被災者に供給する災害時用物資が必要になることがある。災害時用物資としては、例えば、アルファー米(乾燥米)、飲料水、乾パン、缶詰などの食料品や、薬品、毛布、衣類、日用品、電灯、発電機、浄水機、燃料など多くの品目がある。近年の防災意識の高まりから、災害時用物資のうち、少なくとも一部は、地方公共団体、官公庁、公的機関、一般法人などの備蓄者が地域単位で備蓄しており、具体的には、備蓄者が地方公共団体(県、市、町、区など)の場合には、小学校や中学校の敷地内に設置された防災倉庫に備蓄していることがある。
【0003】
防災倉庫としては、例えば特許文献1、2に開示されているものが知られている。特許文献1の防災倉庫は、防災用に備えた蓄電池が、災害時に寿命切れになっていることを防ぐため、蓄電池の電圧降下率が基準値より大きくなっている場合にそのことを報知するように構成されている。また、特許文献2の防災倉庫は、初期消火を必要とする災害レベルであることが検知された場合には、防災倉庫に収容されている消火装置セットを外部へ積み出し可能に構成されている。
【0004】
一方、地方公共団体は、災害時において、避難所の開設情報などの緊急情報をインターネット上で情報発信しているが、停電などが発生している被災地においてリアルタイムな情報を収集する手段は、地方公共団体が庁舎に設置する屋外スピーカーを用いた防災無線放送などに頼らなければならず、可聴エリアは庁舎付近に限定される。
【0005】
特に、大都市における地震時の公共交通機関の停止時においては、災害時物資や休憩場所などに係る情報が重要であるが、被災地において直接得ることができる情報は不足している場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-206809号公報
【特許文献2】特許第4945535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、災害時用物資は、上述したように膨大な品目がある。さらに、品目ごとに異なる消費期限が設定されており、災害時用物資があったとしても、消費期限が過ぎていれば使用することができない。また、各品目の数量も様々である。つまり、災害時用物資は、災害時に被災者が必要とする数量を速やかに供給する必要があるが、どの品目がどこの倉庫にどれぐらいの数量があり、各品目の消費期限がいつまでかについて把握することは、すべての品目の情報をデータベース化する必要があり、膨大な入力作業、管理作業、監視作業が必要となっている。
【0008】
また、災害発生時において、各避難所では被災者への提供が必要な物資について、どの品目がどれぐらいの数量不足する見込みであるかどうかを把握することについても、膨大な事務作業が発生しており、避難所の運営業務の負担は大きい。
【0009】
また、非常時にニーズの高い避難所の開設情報は、パソコンやスマートフォンを用いてインターネット上の情報にアクセスしないと取得できないものであり、被災地においてインターネットへのアクセスなしに直接住民が取得できる情報は不足している。
【0010】
また、非常時にニーズの高い災害時物資の情報は、避難所において取得可能であるが、直接住民が取得する仕組みがなく、公共交通機関が停止した際に発生する帰宅困難者などが利用できなかった。
【0011】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、災害時物資の管理が容易に行えるようにするとともに、災害時に必要な情報を適切なタイミングで提供可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、複数の品目の災害時用物資が収容される複数の防災倉庫と、管理コンピュータとを備えた災害時用物資の管理システムを前提とすることができる。災害時用物資の管理システムは、各防災倉庫に設けられ、収容されている災害時用物資を特定する物資特定情報を取得する物資情報取得部と、各防災倉庫に設けられ、当該防災倉庫の位置情報を取得する位置情報取得部と、各防災倉庫に設けられ、前記管理コンピュータと通信可能な通信部とを備えている。前記通信部は、前記物資情報取得部で取得された物資特定情報と、前記位置情報取得部で取得された位置情報とを前記管理コンピュータに送信する。前記管理コンピュータは、前記通信部から送信された前記物資特定情報と前記位置情報とを関連付けて物資データベースを作成するとともに、前記物資特定情報と前記位置情報とに基づく災害時物資の提供場所に関する情報をインターネット上に配信可能に構成されている。
【0013】
この構成によれば、各防災倉庫に収容されている災害時物資がどのような物であるかが、物資情報取得部で取得された物資特定情報によって取得される。取得された物資特定情報と、防災倉庫の位置情報とは、管理コンピュータに送信された後、互いに関連付けられて物資データベース化されるので、どこの防災倉庫にどのような災害時用物資が収容されているかを容易に把握できる。物資データベースは、物資特定情報と位置情報とが関連付けられているので、災害時物資をどこで提供可能か、災害時物資の提供場所に関する情報を物資特定情報と位置情報とに基づいて取得できる。この災害時物資の提供場所に関する情報をインターネット上に配信することで、災害時に必要な情報を適切なタイミングで被災者等に提供することが可能になる。また、各防災倉庫で提供可能な各品目の数量についても物資データベース化することができ、被災者等に提供できる。情報の提供先は、被災者だけでなく、管理者や地方公共団体、警察署、消防署等であってもよい。
【0014】
本開示の第2の態様では、各防災倉庫に設けられ、災害に関する情報を表示する情報表示部を備えていてもよい。この場合、前記管理コンピュータは、災害時物資の提供場所に関する情報を各防災倉庫に配信可能に構成することができる。また、前記情報表示部は、前記管理コンピュータから配信された災害時物資の提供場所に関する情報を表示するように構成することができる。
【0015】
すなわち、各防災倉庫の情報表示部に、災害時物資の提供場所に関する情報を表示させることができるので、被災者は、どこに行けば、どのような物資を受け取ることができるかを簡単に把握できる。
【0016】
本開示の第3の態様に係る管理コンピュータは、避難所の開設に関する情報を各防災倉庫に配信可能に構成されていてもよい。この場合、前記情報表示部は、前記管理コンピュータから配信された避難所の開設に関する情報を表示するように構成することができる。すなわち、各防災倉庫の情報表示部に、避難所の開設に関する情報を表示させることができるので、被災者は開設されている避難所がどこにあるかを簡単に把握できる。
【0017】
本開示の第4の態様では、各防災倉庫に設けられ、収容されている災害時物資の雰囲気に関する情報を取得する雰囲気情報取得部を備えていてもよい。この場合、前記通信部は、前記雰囲気情報取得部で取得された災害時物資の雰囲気に関する情報を送信可能に構成することができる。
【0018】
すなわち、災害時物資には、例えば燃料のように雰囲気温度や湿度によって変質するおそれのある品目が含まれていることがある。このような場合に、災害時物資の雰囲気に関する情報を取得して管理コンピュータに送信することで、各品目の品質や、危険度を判定し、必要に応じて点検することができる。
【0019】
本開示の第5の態様に係る物資情報取得部には、各災害時物資に付与されているICタグを非接触で読み取るリーダが含まれていてもよい。この構成によれば、多数かつ多品目の災害時物資の物資特定情報を素早く取得できる。また、各品目の数量も正確に取得できる。
【0020】
本開示の第6の態様に係る物資特定情報には、災害時用物資の消費期限に関する情報が含まれていてもよい。この構成によれば、各品目の消費期限を管理コンピュータ側で把握できるので、災害時物資の交換準備や交換作業を効率良く行うことができる。消費期限は、製造年月日に基づいて算出可能なので、製造年月日も消費期限に関する情報の一つである。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、各防災倉庫から送信された物資特定情報と位置情報とを関連付けて物資データベースを作成できるので、災害時物資の管理を容易に行うことができ、さらに、物資特定情報と位置情報とに基づく災害時物資の提供場所に関する情報をインターネット上に配信することができるので、災害時に必要な情報を適切なタイミングで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る災害時用物資の管理システムの概略構成図である。
【
図6】各防災倉庫に収容されている災害時用物資をリスト形式でモニタに表示した場合を示す図である。
【
図7】各防災倉庫の緯度及び経度情報と現在値情報とをリスト形式でモニタに表示した場合を示す図である。
【
図8】各防災倉庫内の温度及び湿度をリスト形式でモニタに表示した場合を示す図である。
【
図9】モニタに表示された管理画面の一例を示す図である。
【
図10】災害時物資の提供場所に関する情報の提供例を示す図である。
【
図11】避難所の開設に関する情報の提供例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る災害時用物資の管理システム1の概略構成図である。災害時用物資の管理システム1は、管理コンピュータ10と、複数の防災倉庫20、30、40、…とを備えている。災害時用物資の管理システム1は、例えば都道府県ごと、市町村ごと、区ごと、区よりも小さな地域ごとに導入することができ、導入した地域ごとに災害時用物資を管理するためのシステムである。災害時用物資の管理システム1で管理可能な災害時用物資は、例えば、アルファー米(乾燥米)、飲料水、乾パン、缶詰などの食料品や、薬品、毛布、衣類、日用品、電灯、発電機、浄水機、燃料、消火器などを挙げることができるが、これら以外の品目が災害時用物資に含まれていてもよい。災害とは、例えば地震、豪雨、台風、津波などを挙げることができ、災害に起因して電力、水道、ガス等の供給が広範囲で停止したり、公共交通機関が停止することがあり、このような場合に、災害時用物資の管理システム1が有効に機能する。
【0025】
管理コンピュータ10は、災害時用物資を管理する者や、災害時用物資の管理システム1の運用者が所有するパーソナルコンピュータ等で構成されている。災害時用物資を管理する者、災害時用物資の管理システム1の運用者としては、一般法人であってもよいし、個人であってもよいし、国や、地方公共団体(県、市、町、区など)であってもよい。地方公共団体の場合、例えば庁舎、役所等に管理コンピュータ10を設置することができる。
【0026】
図1では、災害時用物資の管理システム1を構成する防災倉庫が第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40の3つで構成されている場合について示しているが、これに限らず、防災倉庫の数は2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40の設置場所は、特に限定されるものではないが、例えば学校(小学校や中学校など)、公園、役場、公民館、商業施設等を挙げることができる。第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40は同様に構成することができ、互いに異なる場所に設置されている。第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40の設置間隔は、その地域の人口密度等に応じて設定することができ、例えば数十mおき(10m以上離れている)、数百mおき(100m以上離れている)に設置することができる。第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40の大きさや構造は互いに異なっていてもよい。以下、第1防災倉庫20の具体的な構造について詳細に説明する。
【0027】
図2及び
図3に示すように、第1防災倉庫20は、倉庫本体21と、太陽電池パネル22と、表示パネル23と、制御ユニット24とを備えている。倉庫本体21は、底板21a、天板21b、一対の側板21c、前面扉21d、背面板21e等が組み合わされて構成されている。天板21bの上に太陽電池パネル22が搭載されている。太陽電池パネル22は、光起電力効果を利用して光エネルギを電気エネルギに変換する機器であり、太陽電池モジュールと呼ぶこともできる。太陽電池パネル22の設置場所は天板21bの上に限られるものではなく、任意の場所に設置することができる。また、太陽電池パネル22を省略し、商用電源から供給される電力で制御ユニット24を動作させてもよい。また、側板21cには、例えば液晶ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置等からなる表示パネル23が取り付けられている。表示パネル23は、側板21c以外の前面扉21dに取り付けられていてもよい。
【0028】
前面扉21dは平常時(非災害時)には施錠されている。一方、災害時には、前面扉21dが解錠される。解錠は、例えば消防署員や警察官等が行ってもよいし、防災倉庫を管理している特定の管理者が行ってもよい。また、後述する管理コンピュータ10から送信される解錠信号に基づいて前面扉21dを自動解錠することもできる。この場合、図示しない電気錠を防災倉庫に搭載しておけばよく、この電気錠は制御ユニット24で制御することができる。
【0029】
倉庫本体21の内部には、必要に応じて棚板21fが設けられている。棚板21fの上や、底板21aの上に災害時用物資A~Dが載置されている。つまり、第1防災倉庫20には、複数の品目の災害時用物資A~Dが収容される。災害時用物資A~Dは例示であり、災害時用物資の品目数はいくつであってもよい。また、各災害時用物資A~Dが1つのみ収容されていてもよいし、各災害時用物資A~Dが複数個ずつ収容されていてもよい。尚、第1防災倉庫20には、1つの品目の災害時用物資Aのみが収容されてもよい。
【0030】
各災害時用物資A~Dには、ICタグA1、B1、C1、D1が付与されている。ICタグA1、B1、C1、D1は、災害時用物資そのものに付与されていてもよいし、災害時用物資を収容する箱や容器、カバー、パッケージ等に付与されていてもよい。ICタグA1には、災害時用物資Aを特定するための物資特定情報が記憶されている。物資特定情報には、災害時用物資Aの名称、災害時用物資Aの製造年月日、災害時用物資Aの消費期限、災害時用物資Aの数量、災害時用物資Aの容量、災害時用物資Aの品番、災害時用物資Aの型式、災害時用物資AのID番号等が含まれている。災害時用物資Aが食品の場合には、消費期限や賞味期限を物資特定情報に含ませることができ、災害時用物資Aが燃料の場合には、使用期限を物資特定情報に含ませることができる。災害時用物資の消費期限に関する情報は、災害時用物資の消費期限であってもよいし、災害時用物資の製造年月日であってもよい。災害時用物資の製造年月日に基づいて、災害時用物資の消費期限を特定できるので、災害時用物資の製造年月日は災害時用物資の消費期限に関する情報となり得る。
【0031】
ICタグA1には、第1防災倉庫20に収容する前に、物資特定情報を予め記憶させておけばよい。同様に、ICタグB1には、災害時用物資Bを特定するための物資特定情報が記憶され、また、ICタグC1には、災害時用物資Cを特定するための物資特定情報が記憶され、また、ICタグD1には、災害時用物資Dを特定するための物資特定情報が記憶されている。ICタグは、物資特定情報を災害時用物資に付与するための手段の一例であり、他の器具や機器等を用いて物資特定情報を災害時用物資に付与してもよい。
【0032】
倉庫本体21の内部には、制御ユニット24も収容されている。制御ユニット24は、制御部24Aを備えている。制御部24Aは、例えばCPU、RAM、ROM等を含むマイクロコンピュータで構成されている。制御ユニット24は、太陽電池パネル22で発生した電力を蓄える蓄電池24aも備えている。また、制御ユニット24には、商用電源を接続することもでき、この場合、蓄電池24aには、商用電源から供給された電力を蓄えることもできる。蓄電池24aは、制御部24A、GPS受信機24b、RFIDリーダ24c、温度センサ24d、湿度センサ24e、通信部24f及び表示パネル23に電力を供給する。これにより、災害発生時に停電しても、蓄電池24aの電池残量がある限り、各機器を作動させることができる。また、太陽光による発電が可能な時間帯では、太陽電池パネル22で発電した電力を蓄電池24aに蓄えておき、その他の時間帯では、蓄電池24aの電力を利用することで、数日間以上、各機器を作動させることができる。
【0033】
制御ユニット24は、GPS受信機24b、RFIDリーダ24c、温度センサ24d、湿度センサ24e及び通信部24fも備えている。GPS受信機24bは、全地球測位システム(Global Positioning System)用の受信機であり、人工衛星からの電波を受信して地球上における現在位置を取得し、取得した位置情報を制御部24Aに出力するように構成されていて、従来から周知のものである。GPS受信機24bは、第1防災倉庫20の設置時に一度だけ位置情報を出力するように構成されていてもよいし、例えば、1日に一度、数日に一度、定期的に位置情報を出力するように構成されていてもよい。また、位置情報は、後述する物資特定情報の送信時にのみ送信してもよい。位置情報は、例えば経度及び緯度等である。GPS受信機24bから出力される位置情報は、第1防災倉庫20の位置情報であり、第1防災倉庫20の現在位置(現在地)でもある。
【0034】
制御部24Aは、GPS受信機24bから出力された位置情報を一時的に記憶する。GPS受信機24bによって取得された位置情報は、第1防災倉庫20の現在位置、即ち、第1防災倉庫20の位置情報である。従って、GPS受信機24bは、第1防災倉庫20の位置情報を取得する位置情報取得部である。第1防災倉庫20の位置情報は、例えばWiFiルータを介して取得してもよい。
【0035】
RFIDリーダ24cは、第1防災倉庫20に収容されている災害時用物資A~Dに付与されている各ICタグA1、B1、C1、D1に記憶されている情報を、例えば電波や電磁波を用いた近距離無線通信によって非接触で読み取るための機器である。RFIDリーダ24cは、第1防災倉庫20内であれば、災害時用物資がどこに収容されていても、その災害時用物資に付与されているICタグの情報を読み取ることができるようになっている。RFIDリーダ24cは、外部からの読み取り指示に基づいてICタグの情報を読み取るように構成されている。例えば、前面扉21dの開閉センサ(図示せず)を設けておき、開閉センサによって前面扉21dが開状態または閉状態になったことが検出されると、制御部24Aは、RFIDリーダ24cに対してICタグの情報を読み取るように指示する。これにより、制御部24Aは、物資特定情報を短時間で取得できる。
【0036】
RFIDリーダ24cで読み取った情報は制御部24Aに出力され、制御部24AはRFIDリーダ24cから出力された情報を一旦記憶する。RFIDリーダ24cが有するアンテナの設置範囲や設置位置等を工夫することで、第1防災倉庫20内の全てのICタグの情報を漏れなく読み取ることができる。従って、RFIDリーダ24cは、収容されている災害時用物資を特定する物資特定情報を取得する物資情報取得部である。
【0037】
温度センサ24dは、第1防災倉庫20内の温度を検出するセンサである。また、湿度センサ24eは、第1防災倉庫20内の湿度を検出するセンサである。温度センサ24d及び湿度センサ24eは、ほぼリアルタイムで第1防災倉庫20内の温度及び湿度を検出するように構成されている。温度センサ24dから出力された温度に関する情報及び湿度センサ24eから出力された湿度に関する情報は、それぞれ制御部24Aに入力される。制御部24Aは、入力された温度に関する情報及び湿度に関する情報を一旦記憶する。第1防災倉庫20内の温度及び湿度は、第1防災倉庫20内に収容されている災害時物資A~Dの雰囲気に関する情報である。第1防災倉庫20は、殆どが屋外に設置されているので、第1防災倉庫20内の温度及び湿度は大きく変化する。例えば災害時物資が燃料である場合、第1防災倉庫20内の温度が上昇しすぎると変質や劣化が早まったり、危険な状況になるおそれがあり、このような状況を第1防災倉庫20まで行かなくても遠隔で監視することが可能になる。従って、温度センサ24d及び湿度センサ24eは、第1防災倉庫20内に収容されている災害時物資A~Dの雰囲気に関する情報を取得する雰囲気情報取得部である。
【0038】
通信部24fは、管理コンピュータ10と通信可能な通信モジュールで構成されている。具体的には、通信部24fは、
図1に示すインターネットNに接続可能に構成されており、管理コンピュータ10から送信された情報を、インターネットNを介して通信部24fで受信したり、通信部24fから送信した情報を、インターネットNを介して管理コンピュータ10で受信することが可能になっている。通信部24fを構成する機器の例としては、例えばWiFiルータや、公衆電話回線に接続可能な機器等を挙げることができる。
【0039】
通信部24fは、RFIDリーダ24cで取得された物資特定情報と、GPS受信機24bで取得された位置情報と、温度センサ24dから出力された温度に関する情報と、湿度センサ24eから出力された湿度に関する情報とを管理コンピュータ10に送信する。各情報の送信は定期的に行ってもよいし、管理コンピュータ10側からの送信指示を制御部24Aが受信することによって各情報を送信してもよい。
【0040】
送信時には、制御部24Aが、第1防災倉庫20の識別情報を、物資特定情報、位置情報、温度に関する情報及び湿度に関する情報のそれぞれに付与する。これにより、物資特定情報、位置情報、温度に関する情報及び湿度に関する情報が、第1防災倉庫20から送信されたものであることが管理コンピュータ10側で特定できる。第1防災倉庫20の識別情報としては、第1防災倉庫20の記号、番号等を挙げることができる。
【0041】
物資特定情報、位置情報、温度に関する情報及び湿度に関する情報を同じタイミングで送信してもよいし、異なるタイミングで送信してもよい。例えば、位置情報は第1防災倉庫20の設置後に変化する可能性が極めて低いので、位置情報の送信頻度を、物資特定情報の送信頻度より低くしてもよい。また、温度に関する情報及び湿度に関する情報は、変化が大きく、変化の頻度も高いので、物資特定情報の送信頻度より高くしてもよく、例えば数時間おき、1時間おきに送信する。また、物資特定情報は、RFIDリーダ24cが読取処理を実行して取得した都度、送信してもよい。
【0042】
次に、管理コンピュータ10の構成について説明する。
図5に示すように、管理コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、モニタ12と、操作部13と、記憶装置14と、管理側通信部15とを備えており、その他にもインターネットNに接続可能なネットワークサーバ等も備えている。コンピュータ本体11は、例えばCPU、ROM及びRAMを有しており、所定のプログラムに従って動作し、後述する各処理を実行するようになっている。モニタ12は、例えば液晶ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置等で構成されており、コンピュータ本体11に接続されている。
【0043】
操作部13は、コンピュータ本体11を操作するための機器であり、キーボード13a、マウス13b等が含まれている。モニタ12がタッチパネル式のディスプレイである場合には、タッチパネルも操作部13に含まれる。
【0044】
記憶装置14は、各種プログラムや情報等が記憶される装置であり、コンピュータ本体11に接続されている。記憶装置14は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等で構成されている。記憶装置14は、コンピュータ本体11に内蔵されていてもよいし、ネットワークサーバで構成されていてもよい。
【0045】
管理側通信部15は、
図1に示すインターネットNに接続可能に構成されており、第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40から送信された情報を、インターネットNを介して受信したり、管理側通信部15から送信した情報を、インターネットNを介して第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40で受信することが可能になっている。管理側通信部15が情報を送信する際には、送信先の指定が可能になっており、全ての第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40のうち、特定の防災倉庫へのみ情報を送信すること、または、全ての第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40に一斉に情報を送信することができる。管理側通信部15は、第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40の制御信号も送信可能である。
【0046】
管理コンピュータ10は、第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40の各通信部24fから送信された物資特定情報、位置情報、温度に関する情報及び湿度に関する情報を記憶装置14に記憶させる。このとき、物資特定情報、位置情報、温度に関する情報及び湿度に関する情報は、防災倉庫ごとに異なる識別情報が付与されているので、どの防災倉庫の情報であるかを識別可能な状態で記憶装置14に記憶させる。
【0047】
コンピュータ本体11は、例えば第1防災倉庫20の通信部24fから送信された物資特定情報と位置情報とを関連付けて物資データベースを作成する。まず、
図6に示すように、第1防災倉庫20、第2防災倉庫30、第3防災倉庫40の各通信部24fから送信された物資特定情報に基づいて、各防災倉庫に収容されている災害時用物資をまとめて、リスト形式でモニタ12に表示させることができる。
【0048】
第1防災倉庫20の物資特定情報として品目コードと、数量と、期限(製造年月日、消費期限)とが含まれていた場合、管理コンピュータ10では、送信されてきた品目コードに基づいて物資名を特定する。すなわち、管理コンピュータ10には、品目コードと、物資名とが関連付けられたデータベースが保持されており、送信されてきた品目コードに対応した物資名を読み込んで
図6に示すように、品目コードと物資名とを並べた状態でリストを作成できる。このリストはモニタ12に表示してもよいし、表示しなくてもよい。また、物資特定情報に基づいて数量を特定することができる。例えば品目コード「0001」の物資特定情報が1000個分送信された場合には、品目コード「0001」に対応する物資名「マスク」が、第1防災倉庫20内に1000個収容されていると特定でき、これにより、数量をモニタ12に表示できる。また、物資特定情報には製造年月日が含まれているので、製造年月日もモニタ12に表示できる。物資特定情報に消費期限が含まれていた場合、消費期限もモニタ12に表示できる。
【0049】
図7は、各防災倉庫20、30、40の緯度及び経度情報と現在値情報とをリスト形式で取得した場合を示している。このリストはモニタ12に表示してもよいし、表示しなくてもよい。緯度及び経度情報は、GPS受信機24bで取得された位置情報である。各防災倉庫20、30、40の緯度及び経度情報に基づいて、各防災倉庫20、30、40の所在地(現在地)を例えば番地まで細かく特定することができる。このとき、各防災倉庫20、30、40を含む周辺の地図情報を取得することもできる。
【0050】
図8は、各防災倉庫20、30、40内の温度及び湿度をリスト形式でモニタ12に表示した場合を示す図である。温度及び湿度は、それぞれ温度センサ24d及び湿度センサ24eで取得された情報に基づくものである。温度センサ24d及び湿度センサ24eで取得された情報をすぐに送信することで、ほぼリアルタイムで、各防災倉庫20、30、40内の温度及び湿度を把握できる。
【0051】
図9は、コンピュータ本体11が作成した物資データベース200の一例を示す図である。物資データベース200には、防災倉庫を特定するための情報として倉庫名が表示される倉庫名表示部201とともに、温度センサ24d及び湿度センサ24eで取得された情報に基づく温度及び湿度が表示される雰囲気情報表示部202が設けられている。
【0052】
さらに、物資データベース200には、庫名表示部201で特定された防災倉庫に収容されている災害時用物資の「物資名」、「製造年月日」、「現在地」、「管理者」、「交換期限」、「搬送日」、「搬送先」、「状況」等が表示されるリスト表示部203が設けられている。これら情報は、記憶装置14に記憶させることができる。この例では、第1防災倉庫20に「マスク」、「消毒薬」、「飲料水」、「毛布」が収容されている場合を示しており、それぞれの製造年月日も表示される。リスト表示部203の「製造年月日」は、ICタグに記憶されているので、RFIDリーダ24cで読み取った情報に含まれている。
【0053】
リスト表示部203の「現在地」は、
図7に示すようにGPS受信機24bで取得された経度緯度情報に基づいて取得されている。リスト表示部203の「管理者」は、災害時用物資を管理する者であり、法人であってもよいし、個人であってもよい。災害時用物資の「マスク」、「消毒薬」、「飲料水」、「毛布」の全てが同じ管理者であってもよいし、災害時用物資ごとに異なる管理者であってもよい。管理者に関する情報も、ICタグに記憶させておくことができる。また、管理者に関する情報は、操作部13を使用してユーザが入力してもよい。
【0054】
リスト表示部203の「交換期限」は、災害時用物資を交換すべき時期である。交換期限は、災害時用物資の消費期限と同じ期限としてもよいし、消費期限よりも前に設定してもよい。コンピュータ本体11は、災害時用物資の消費期限を取得すると、それを交換期限としてリスト表示部203に表示させるか、消費期限よりも所定日数だけ前に設定した期限を交換期限としてリスト表示部203に表示させる。このようにして、コンピュータ本体11が交換期限を設定し、記憶する。
【0055】
リスト表示部203の「搬送日」は、災害時用物資の交換期限が近づいた場合に、交換用の災害時用物資を搬送する日である。コンピュータ本体11は、交換期限を設定すると、交換期限の前に交換用の災害時用物資が届くように、搬送日を設定する。搬送日は、例えば交換期限の1ヶ月前、1週間前等に設定する。ユーザは、リスト表示部203の搬送日を見ることで、いつまでに交換用の災害時用物資を準備する必要があるか、容易に把握できる。
【0056】
リスト表示部203の「搬送先」は、例えば管理者としてもよいし、防災倉庫の所在地としてもよい。管理者は、交換用の災害時用物資を受領すると、防災倉庫まで持っていき、防災倉庫内の古い災害時用物資を取り出して、交換用の災害時用物資を防災倉庫に収容することで交換作業を実施できる。また、交換用の災害時用物資を搬送した搬送者が防災倉庫内の古い災害時用物資を取り出して、交換用の災害時用物資を防災倉庫に収容することで交換作業を実施できる。
【0057】
リスト表示部203の「状況」は、災害時用物資の交換が完了したか否か、及び災害時用物資の消費期限が切れているか否かを表示する部分である。交換用の災害時用物資が防災倉庫に収容されると、ICタグの情報が更新されて消費期限が先になるので、これに基づいてコンピュータ本体11は、災害時用物資の交換が完了したか否かを判定する。災害時用物資の交換が完了したと判定されると、「状況」に「完了」と表示する。コンピュータ本体11は、災害時用物資の消費期限と現在日時とを比較して、災害時用物資の消費期限が現在日時を超えると、当該災害時用物資の消費期限が切れていると判定する。期限が切れている場合は、「状況」に「期限切れ」と表示する。これにより、早急に交換する必要のある災害時用物資をすぐに把握できる。
【0058】
コンピュータ本体11は、
図9に示すような物資データベース200を防災倉庫ごとに作成して記憶装置14に記憶させる。コンピュータ本体11は、各防災倉庫から送信された物資特定情報と位置情報とに基づく災害時物資の提供場所に関する情報をインターネットN上に配信可能に構成されている。具体的には、コンピュータ本体11は、例えば
図10に示すように、防災倉庫名と、防災倉庫の住所と、防災倉庫に収容されている災害時用物資のリストとで構成された災害時物資の提供場所に関する情報を生成する。防災倉庫に収容されている災害時用物資は、被災者に提供可能な災害時物資であり、防災倉庫の住所は、災害時物資を提供する場所である。被災者には、例えば帰宅困難者等も含まれる。
【0059】
コンピュータ本体11は、生成した災害時物資の提供場所に関する情報を管理側通信部15によってインターネットN上に配信する。被災者は、例えばスマートフォンやタブレット端末等を利用し、インターネットNを介してコンピュータ本体11(ネットワークサーバ)にアクセスすることで、災害時物資の提供場所に関する情報を取得できる。
【0060】
災害時には、防災倉庫内の災害時物資が被災者に供給されるので、災害時物資の数量が時間の経過とともに減少していく。例えば所定時間ごとに防災倉庫内の災害時物資の物資特定情報を送信するように、防災倉庫の制御ユニット24に要求することで、防災倉庫内の災害時物資の在庫状況を把握できる。この情報に基づいて、災害時物資の提供場所に関する情報を更新することで、被災者はどの防災倉庫に行けば所望の災害時物資があるかを適切に把握できる。
【0061】
(情報提供機能)
各防災倉庫20、30、40には、外部に情報を提示可能な表示パネル23が設けられている。表示パネル23には、災害に関する情報を表示させることができる。すなわち、管理コンピュータ10は、上述のようにして生成した災害時物資の提供場所に関する情報を各防災倉庫20、30、40に配信する。各防災倉庫20、30、40の制御ユニット24の通信部24fで災害時物資の提供場所に関する情報を受信すると、制御部24Aは、災害時物資の提供場所に関する情報を表示パネル23に表示させる。例えば第1防災倉庫20が災害時物資の提供場所に関する情報を受信して表示パネル23に表示させると、当該第1防災倉庫20に収容されている災害時用物資の品目と数量を外部の被災者に提示できる。また、
図10に示すように、他の防災倉庫30、40に収容されている災害時用物資の品目と数量も被災者に提示できるので、第1防災倉庫20に行った被災者は、内部を見なくても、所望の災害時物資があるか否かを外から判断できるとともに、どの防災倉庫に所望の災害時物資があるかを把握できる。
【0062】
また、管理コンピュータ10は、避難所の開設に関する情報や休憩所の開設に関する情報を各防災倉庫20、30、40に配信することも可能である。避難所の開設に関する情報は、例えばユーザが管理コンピュータ10の操作部13を使用してコンピュータ本体11に入力する。避難所の開設に関する情報には、避難所名、避難所の住所、避難所の収容可能な人数、避難所の空き状況等が含まれている。さらに、避難所の開設に関する情報には、避難所までの道順が含まれていてもよく、この場合、避難所までの地図も含むことができる。
【0063】
各防災倉庫20、30、40の制御ユニット24の通信部24fで避難所の開設に関する情報を受信すると、制御部24Aは、避難所の開設に関する情報を表示パネル23に表示させる。これにより、避難所の開設に関する情報を被災者に提示できるので、防災倉庫20、30、40に行った被災者は、通信手段を持ち合わせていなくても、避難所の開設状況を把握できる。避難所の開設に関する情報は、インターネットNを介して被災者に直接送信してもよい。
【0064】
また、災害時物資の提供場所に関する情報、避難所の開設に関する情報は、電子メール等の形式で地域住民に提供することもできる。情報提供の許可を受けている住民については、電子メールアドレスを登録してもらっておき、管理コンピュータ10は上記情報を適宜、電子メールで送信する。災害時物資の提供場所に関する情報は、災害時だけでなく、平常時に提供してもよい。
【0065】
管理側通信部15には、例えばBluetooth(登録商標)のような近距離無線通信機が含まれていてもよい。この場合、被災者のスマートフォンと管理側通信部15とが通信可能になるので、被災者のスマートフォンに、災害に関する情報を送信できる。
【0066】
平常時には、表示パネル23に広告を表示させることもできる。広告主から動画や静止画データなどからなる広告データを取得し、管理コンピュータ10からインターネットNを介して各防災倉庫20、30、40に送信すると、各防災倉庫20、30、40の制御ユニット24の通信部24fで広告データを受信する。通信部24fが広告データを受信すると、制御部24Aは、広告データに含まれる動画や静止画を表示パネル23に表示させる。これにより、広告料収入が得られるので、災害時用物資の管理システム1の運用経費を抑えることができる。つまり、平常時には広告表示部として利用されている表示パネル23を、災害時には、災害に関連する情報を表示し、その情報を被災者に伝達する手段として利用できる。広告表示部として利用されている表示パネル23は、例えばデジタルサイネージ装置と呼ぶこともできる。また、地方公共団体の行政に関する情報を表示パネル23に表示させてもよい。
【0067】
防災倉庫20、30、40は、図示しないスピーカーを備えていてもよい。これにより、災害情報や広告を音声によっても周囲に伝達できる。
【0068】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る災害時用物資の管理システム1によれば、各防災倉庫20、30、40に収容されている災害時物資がどのような物であるかを、管理コンピュータ10側で取得できるので、管理者やユーザが災害時物資の確認のために各防災倉庫20、30、40まで行く必要が無くなる。
【0069】
管理コンピュータ10では、災害時物資と各防災倉庫20、30、40の位置情報とが互いに関連付けられて物資データベース化されるので、どこの防災倉庫20、30、40にどのような災害時用物資が収容されているかを容易に把握できる。物資データベースは、災害時物資と各防災倉庫20、30、40の位置情報とが関連付けられているので、災害時物資をどこで提供可能か、災害時物資の提供場所に関する情報も取得できる。この災害時物資の提供場所に関する情報をインターネット上に配信することで、災害時に必要な情報を適切なタイミングで提供することが可能になる。
【0070】
また、例えば燃料のように雰囲気温度や湿度によって変質するおそれのある品目が災害時物資に含まれているか否かを管理コンピュータ10で判断できる。雰囲気温度や湿度によって変質するおそれのある品目が含まれている場合には、災害時物資の雰囲気温度や湿度を取得して管理コンピュータ10に送信することで、各品目の品質や、危険度を判定し、必要に応じて点検することができる。
【0071】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。防災倉庫20、30、40は、例えば住宅地の一部、マンションの敷地の一部等に設置することができる。また、防災倉庫20、30、40が通信部24fを備えているので、防災倉庫20、30、40間の通信を実行可能にすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明に係る災害時用物資の管理システムは、例えば地方公共団体、官公庁、公的機関、一般法人などで利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 災害時用物資の管理システム
10 管理コンピュータ
20、30、40 防災倉庫
23 表示パネル(情報表示部)
24b GPS受信機(位置情報取得部)
24c RFIDリーダ(物資情報取得部)
24d 温度センサ(雰囲気情報取得部)
24e 湿度センサ(雰囲気情報取得部)
24f 通信部
A 災害時用物資
A1 ICタグ