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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028030
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/537 20060101AFI20240222BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61F13/537 210
A61F13/512
A61F13/537 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131334
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彩
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA04
3B200CA11
3B200DA14
3B200DB01
3B200DB12
3B200DC01
3B200DC04
3B200DC06
(57)【要約】
【課題】吸収性物品において、ろ過シートを有し、開孔シートの開孔から軟便の固形分が厚さ方向Dの内面側に露出するのを抑制する。
【解決手段】軟便パッド100(吸収性物品)は、厚さ方向Dにおいて、着用者の肌に近い側から順に、トップシート10、ろ過シート20、吸収体30が積層され、トップシート10は、多数の開孔11が形成され、ろ過シート20は、平面視で開孔11に重なる部分に、トップシート10に対向する面の側から吸収体30の側に向けて凹んだ窪み21が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、トップシート、ろ過シート、吸収体が積層され、
前記トップシートは、多数の開孔が形成され、
前記ろ過シートは、平面視で前記開孔に重なる部分に、前記トップシートに対向する面の側から前記吸収体の側に向けて凹んだ窪みが形成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記厚さ方向における前記ろ過シートと前記吸収体との間に配置された、高吸収性樹脂を液透過性シートで厚さ方向に挟んで形成された吸水シートを備え、
前記吸水シートは、前記平面視で前記開孔に重なる部分よりも前記開孔に重ならない部分に、前記高吸収性樹脂が相対的に多く配置されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記平面視で前記窪みに重なる部分に、前記ろ過シートに対向する面の側から前記厚さ方向に凹んだ凹みが形成されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記窪みは、前記平面視で一定の方向に延び、前記ろ過シートに前記吸収体が積層された厚さ方向に沿った切込みによって形成されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記窪みは、前記平面視で一定の方向に延び、前記ろ過シートに前記吸収体が積層された厚さ方向に沿った切込みによって形成されている、請求項3に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつの内側に重ねて使用される補助的な吸収性物品であるインナーパッドとして、主に軟便の吸収を目的とした軟便パッドが知られている。一般的なインナーパッドは、水分である尿を主に吸収することを目的として構成されている。一方、軟便は固形分を含むため、軟便パッドは、固形分による目詰まりを防ぎつつ、軟便の液状成分を適切に吸収させる必要がある。
【0003】
そこで、軟便パッドは、着用者の肌に直接触れるトップシートに、軟便の固形分を、下層に移行させるための大きな孔が複数形成された開孔シートが使用されている。これにより、軟便の固形分がトップシート上に留まるのを抑制して、トップシート上に留まった固形分と肌との接触の継続による肌のトラブルが発生する機会を低減することができる(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-023442号公報
【特許文献2】特開2016-137211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した軟便パッドは、開孔シートの下層に、軟便の液状成分を吸収する吸収体が配置されるが、開孔シートと吸収体の間に、軟便の固形分を濾しつつ液状成分を下層の吸収体に移行させるためのろ過シートが積層されているものもある。したがって、このような軟便パッドは、開孔シート、ろ過シート、吸収体が、この順に積層された構造となっている。
【0006】
しかし、開孔シートは、開孔を通して軟便の固形分を通すことはできるが、ろ過シートの表面上で留まり易く、したがって、固形分が開孔から厚さ方向の内面側(着用者の肌面側)に露出して、固形分と肌との接触が継続し易い。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ろ過シートを有し、軟便の固形分が開孔シートの開孔から厚さ方向の内面側に露出するのを抑制することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、厚さ方向において、着用者の肌に近い側から順に、トップシート、ろ過シート、吸収体が積層され、前記トップシートは、多数の開孔が形成され、前記ろ過シートは、平面視で前記開孔に重なる部分に、前記トップシートに対向する面の側から前記吸収体の側に向けて凹んだ窪みが形成されている、吸収性物品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る吸収性物品によれば、ろ過シートを有し、軟便の固形分が開孔シートの開孔から厚さ方向の内面側に露出するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】軟便パッドの内面側の平面視を示す平面図である。
図2図1に示した軟便パッドのA-A線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
図3図2に示した軟便パッドの断面の詳細を示す模式図である。
図4】ろ過シートに窪みを形成する方法の一例を示す、図3相当の模式図である。
図5】軟便パッドの作用を説明する図3相当の模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態(実施形態2)の軟便パッドの断面の詳細を示す、図3相当の模式図である。
図7】本発明の第3の実施形態(実施形態3)の軟便パッドの断面の詳細を示す、図3相当の模式図である。
図8】本発明の第4の実施形態(実施形態4)の軟便パッドにおけるろ過シートを示す平面図である。
図9図8に示したろ過シートを備えた軟便パッドの断面の詳細を示す、図6相当の模式図である。
図10】本発明の第5の実施形態(実施形態5)の軟便パッドの断面の詳細を示す、図6相当の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る吸収性物品の実施形態は、以下において、図面を参照して説明される。
【0012】
<実施形態1>
[構成]
図1は軟便パッド100の内面側の平面視を示す平面図、図2図1に示した軟便パッド100のA-A線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図、図3図2に示した軟便パッド100の断面の詳細を示す模式図である。
【0013】
図示の軟便パッド100は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したものである。軟便パッド100は、使い捨ておむつ(以下、おむつという。)に重ねて使用され、おむつが着用者に着用された状態において、おむつの、着用者の肌面に近い側である内面側に、重ねて使用される。軟便パッド100は、特に、着用者の軟便を吸収するのに適したインナーパッドである。なお、軟便パッド100は、使い捨ておむつに重ねて使用されるものに限定されず、使い捨てではないおむつ、例えば布タイプのおむつ、に重ねて使用されてもよい。
【0014】
軟便パッド100は、腹側部110と股部120と背側部130とが長さ方向Lに連なって形成されている。図1に示した平面図において、長さ方向(前後方向)Lに直交する方向を幅方向Wとする。腹側部110は、おむつの着用者の前面である腹側の主に下腹部を覆う部分に相当し、股部120は着用者の主に股間部を覆う部分に相当し、背側部130は着用者の主に臀部を覆う部分に相当する。
【0015】
なお、軟便パッド100は、背側部130と股部120との間や、腹側部110と股部120との間に、境界や構造的な差異があるわけではなく、軟便パッド100の領域を特定して説明する便宜上、おおまかな3つの部分として、背側部130、股部120及び腹側部110に分けているに過ぎない。
【0016】
軟便パッド100は、図2に示すように、厚さ方向Dにおいて、トップシート10、ろ過シート20、吸収体30及びバックシート40が、この順序で積層して形成されている。トップシート10は厚さ方向Dにおいて着用者の肌面に最も近い側(以下、内側又は肌面側ということもある。)に配置され、バックシート40は厚さ方向Dにおいて着用者の肌面から最も遠い側(以下、外側又は非肌面側ということもある。)に配置されている。
【0017】
また、軟便パッド100は、幅方向Wの両側部において、トップシート10の幅方向Wの両側部を、トップシート10の図2の上方(内面側)から覆う立体ギャザー60がそれぞれ設けられている。立体ギャザー60は幅方向Wの外側端部がバックシート40に接合され、幅方向Wの内側端部に糸ゴム61が固定されていて、糸ゴム61の弾性力によって、幅方向Wの内側、厚さ方向Dの内面側に立ち上がるように形成されている。立体ギャザー60は液不透過性である。
【0018】
(トップシート)
トップシート10は、液透過性のシートであり、図1に示すように、厚さ方向Dに貫通した多数の開孔11が形成されている。開孔11は、トップシート10上に排出された軟便のうち固定状の成分(固形分)を、厚さ方向Dにおいてトップシート10の下層に通過させる。開孔11は、例えば、幅方向Wの寸法に比べて長さ方向Lの寸法が長い長円状に形成されている。開孔11の長円は、一例として、幅方向Wの寸法が3[mm]、長さ方向Lの寸法が4[mm]である。開孔11の具体的な寸法は、この例に限定するものではなく、軟便の固形分を、ある程度、通過し得る程度の寸法であれば、他の寸法で形成されてもよい。
【0019】
また、開孔11は、長さ方向Lに長い長円状に限定するものでもなく、幅方向Wに長い長円であってもよいし、長さ方向Lと幅方向Wとの寸法が等しい真円であってもよいし、また、円に限定されず、ひし形や矩形やその他の多角形であってもよい。
【0020】
トップシート10は、開孔11が、長さ方向Lと幅方向Wとに対してそれぞれ傾いた斜め方向に並んで形成されている。つまり、多数の開孔11は、図1に示すように、千鳥状に配列されている。なお、トップシート10は、開孔11が千鳥状に配列されたものに限定されず、長さ方向Lと幅方向Wとに並ぶ格子状に配列されたものであってもよい。
【0021】
なお、開孔11が千鳥状に配列されたトップシート10は、開孔11が格子状に配列されたトップシートに比べて、開孔11を形成する密度を高めることができ、軟便を開孔11に導き易くすることができる。
【0022】
(ろ過シート)
ろ過シート20は、トップシート10の直下に配置されている。ろ過シート20は、液透過性である。ろ過シート20は、トップシート10の開孔11を通過した軟便の固形分及びトップシート10の開孔11及び開孔11以外の部分12(図3参照)を通過した軟便の液状成分のうち、固形分を絡めとることで濾し取り、液状成分を下層に通過させるろ過作用を有する。ろ過シート20は、厚さ方向Dの寸法であるかさ高が、例えば10~20[mm]程度に形成されている。
【0023】
ろ過シート20は、図3に示すように、平面視でトップシート10の開孔11にそれぞれ重なる部分に、トップシート10に対向する面の側から吸収体30に向けて厚さ方向Dに凹んだ窪み21が形成されている。一方、ろ過シート20は、平面視でトップシート10の開孔11以外の部分12に重なる部分には、窪み21が形成されていない。窪み21は、厚さ方向Dに沿った寸法が、例えば5~10[mm]の深さで形成されている。なお、窪み21の深さは、5~10[mm]に限定されるものではなく、5[mm]より浅くてもよいが、少なくとも1[mm]以上であり、また、10[mm]より深くてもよいが、少なくともろ過シート20の厚さ方向Dの全長(全厚さ寸法)よりも短い必要がある。
【0024】
窪み21は、窪み21に対応した位置に凸部が形成された型を、ろ過シート20に押し付けることで押圧の荷重や熱による塑性変形で形成してもよいし、窪み21を埋めていたろ過シート20の組成物を除去することで形成してもよい。
【0025】
図4はろ過シート20に窪み21を形成する方法の一例を示す、図3相当の模式図である。ろ過シート20の窪み21は、上述した形成方法の他、例えば図4に示すように、ろ過シート20を、上層のろ過シート25と下層のろ過シート26との2層を厚さ方向Dに積層した2層構造で形成し、図4の上段に示すように、積層する以前の上層のろ過シート25の、トップシート10の開孔11に対応する部分に、厚さ方向Dに貫通する貫通孔22を形成し、図4の下段に示すように、上層のろ過シート25に、孔や窪みの形成されていない平坦な下層のろ過シート26を積層することで、貫通孔22の底部を下層のろ過シート26の上面26aで塞いで窪み21を形成してもよい。なお、ろ過シート20は、上述した2層構造の他、3層以上の構造であってもよい。
【0026】
トップシート10とろ過シート20とは、トップシート10の幅方向Wの両端部において接合されているだけでなく、平面視において分布した複数の部位において、ヒートシールエンボスによって接合されて、開孔11と窪み21とが位置ずれしないように形成されている。トップシート10とろ過シート20との接合は、ヒートシールエンボスの他、超音波エンボスなどの他の熱溶着であってもよい。
【0027】
(吸収体)
吸収体30は、図2に示すように、吸収部材31と包装体32とを備えている。吸収部材31は、繊維質のパルプに、粒状の高吸収性樹脂(SAP;SUPERABSORBENT POLYMERS)を絡めて配置したものであり、SAPが、接した水分を吸収して膨潤することで、水分を保持する。包装体32は吸収部材31を包み、例えばクレープ紙等の液透過性の材料で形成されている。なお、吸収体30は、吸収部材31のみで形成され、包装体32で包まれていなくてもよい。
【0028】
(バックシート)
バックシート40は液不透過性であり、軟便パッド100の内面側に排出された尿や、軟便の液状成分が、厚さ方向Dにおいてバックシート40よりも外面側に浸透して漏れるのを防止する。
【0029】
[作用]
図5は軟便パッド100の作用を説明する図3相当の模式図である。軟便パッド100は、使い捨ておむつの内側に、トップシート10を着用者の肌に向けた状態(バックシート40を使い捨ておむつの内面に向けた状態)で装着される。これにより、軟便パッド100は、着用者に装着された状態で、トップシート10が着用者の肌に接した状態で使用される。
【0030】
着用者が排泄した軟便は、最初、トップシート10が受け止めるが、図5に示すように、トップシート10に形成された開孔11を通過し、下層のろ過シート20に移行する。ここで、ろ過シート20は、トップシート10の開孔11に対応する位置、つまり、図1に示した平面視において、開孔11と重なる部分に、厚さ方向Dに凹んだ窪み21が形成されているため、開孔11を通過した軟便は、ろ過シート20の窪み21に落とし込まれる。
【0031】
そして、窪み21に落とし込まれた軟便のうち固形分210はろ過シート20のろ過作用によって窪み21に留められた状態となり、軟便の液状成分は図5の破線矢印で示すように、ろ過シート20を通過して下層の吸収体30に移行し、吸収体30に吸収して保持される。
【0032】
このように、本実施形態の軟便パッド100は、トップシート10の開孔11を通過した軟便の固形分210を窪み21に落とし込んだ状態とするため、窪み21に落とし込まれて留められた固形分210が、開孔11から厚さ方向Dの内面側に露出しないか、又は露出するのを抑制される。この結果、軟便パッド100は、軟便の固形分210を着用者の肌に接しない状態とすることができ、軟便が肌に継続的に接することによって起こり得るスキントラブルを防止又は抑止することができる。
【0033】
<実施形態2>
[構成]
図6は本発明の第2の実施形態(実施形態2)の軟便パッド300の断面の詳細を示す、図3相当の模式図である。
【0034】
図示の軟便パッド300は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したものである。軟便パッド300は実施形態1の軟便パッド100に対して、図6の上段に示すように、厚さ方向Dにおけるろ過シート20と吸収体30との間に、吸水シート50(以下、SAPシート50という)を積層して配置した点が異なる以外は、軟便パッド100と同じである。したがって、実施形態2の軟便パッド300については、SAPシート50を除いた構成、効果の説明を省略する。
【0035】
(SAPシート)
SAPシート50は、粒状のSAPを、厚さ方向Dの内面側及び外面側からそれぞれ、液透過性の材料で形成された液透過性シートで挟んで、シート状に形成したものである。そして、軟便パッド300に用いられているSAPシート50は、軟便パッド300の平面視(図1相当)において、トップシート10の開孔11以外の部分12に重なる部分52にSAPが配置され、開孔11に重なる部分51にSAPが配置されていない構成となっている。
【0036】
[作用]
着用者が排泄した軟便は、トップシート10に形成された開孔11を通過し、下層のろ過シート20に移行し、開孔11を通過した軟便は、ろ過シート20の窪み21に落とし込まれる。
【0037】
そして、窪み21に落とし込まれた軟便のうち固形分210はろ過シート20のろ過作用によって窪み21に留められた状態となり、軟便の液状成分は、図6の下段において破線矢印で示すように、ろ過シート20の内部で拡散し、SAPシート50に到達する。
【0038】
ここで、SAPシート50のうち開孔11に重なる部分51には、SAPが配置されていないため、開孔11に重なる部分51に到達した液状成分は、SAPシート50の液透過性シートを透過して、下層の吸収体30に移行し、吸収体30に吸収して保持される。
【0039】
一方、開孔11以外の部分12に重なる部分52に到達した液状成分は、SAPシート50に配置されたSAPによって吸収されて保持される。このとき、SAPシート50のSAPは、水分の吸収によって、図6の下段に示すように膨潤し、膨潤による体積の増大によって、ろ過シート20の、開孔11以外の部分12に重なった部分を、厚さ方向Dの内面側に押し上げる。
【0040】
これにより、押し上げられたろ過シート20の部分に重なったトップシート10の部分、つまり、トップシート10の開孔11以外の部分12が、厚さ方向Dの内面側に押し上げられ、軟便の固形分210が留められている窪み21に重なった開孔11に対して、厚さ方向Dの内面側の方向への位置が高くなる。
【0041】
この結果、軟便パッド300は実施形態1の軟便パッド100に比べて、軟便を着用者の肌から、より一層離した状態とすることができる。
【0042】
なお、本実施形態の軟便パッド300におけるSAPシート50は、トップシート10の開孔11以外の部分12に重なる全域に亘って、SAPが配置されているものでなくてもよい。
【0043】
また、本実施形態の軟便パッド300におけるSAPシート50は、開孔11に重なる部分51にSAPが全く配置されてなくてもよく、開孔11に重なる部分51よりも開孔11以外の部分12に重なる部分(開孔11に重ならない部分)52に、SAPが相対的に多く配置されていればよい。
【0044】
<実施形態3>
[構成]
図7は本発明の第3の実施形態(実施形態3)の軟便パッド400の断面の詳細を示す、図3相当の模式図である。
【0045】
図示の軟便パッド400は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したものである。軟便パッド400は実施形態1の軟便パッド100に対して、図7に示すように、吸収体30の表面30a(ろ過シート20と接する面)のうち、平面視で、ろ過シート20の窪み21と重なる部分に、ろ過シート20に対向する面の側から厚さ方向Dに凹んだ凹み33を形成した点が異なる以外は、軟便パッド100と同じである。したがって、実施形態3の軟便パッド400については、凹み33を除いた構成、効果の説明を省略する。
【0046】
なお、図7において、ろ過シート20の窪み21の底部27が、吸収体30の凹み33に向かって下方(外面側)に突出したように記載されているが、ろ過シート20の単独で、ろ過シート20の窪み21の底部27が突出して形成されているのではなく、ろ過シート20が吸収体30に重ねられていることにより、ろ過シート20の窪み21の底部27が、底部27の自重により、凹み33に突入したように垂れ下がった状態であるに過ぎない。ただし、ろ過シート20の単独で、ろ過シート20の窪み21の底部27を吸収体30に向けて突出して形成してもよい。
【0047】
[作用]
着用者が排泄した軟便は、トップシート10に形成された開孔11を通過し、下層のろ過シート20に移行し、開孔11を通過した軟便は、ろ過シート20の窪み21に落とし込まれる。
【0048】
そして、窪み21に落とし込まれた軟便のうち固形分210はろ過シート20のろ過作用によって窪み21に留められた状態となるが、窪み21に重なる吸収体30の部分には、凹み33が形成されているため、固形分210の重量が作用した窪み21の底部27が、凹み33に突入するように伸ばされる。
【0049】
これにより、軟便パッド400は、窪み21の厚さ方向Dの全長(深さ)を長くすることができ、実施形態1の軟便パッド100に比べて、軟便を着用者の肌から、より一層離した状態とすることができる。
【0050】
本実施形態の軟便パッド400における吸収体30の凹み33は、ろ過シート20の窪み21と同様に、他の凹み33とは独立して点在したものとして形成されたものであってもよいし、隣接する他の凹み33と繋がった溝状のスリットとして形成されたものであってもよい。なお、軟便パッド400における吸収体30の凹み33を、他の凹み33とは独立して点在したものとして形成する場合は、例えばエンボス加工によって形成することができる。
【0051】
<実施形態4>
[構成]
図8は本発明の第4の実施形態(実施形態4)の軟便パッド500におけるろ過シート20′を示す平面図、図9図8に示したろ過シート20′を備えた軟便パッド500の断面の詳細を示す、図6相当の模式図である。
【0052】
図示の軟便パッド500は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したものである。軟便パッド500は、実施形態1の軟便パッド100に対して、図9の上段に示すように、ろ過シート20′がろ過シート20と異なる以外は、軟便パッド100と同じである。したがって、実施形態4の軟便パッド500については、ろ過シート20′を除いた構成、効果の説明を省略する。
【0053】
ろ過シート20′は、ろ過シート20に形成されていた窪み21として、トップシート10に接する側の表面20aに、厚さ方向Dに沿った切込み24が形成されている。切込み24は、図9の上段に示すように、ろ過シート20′の厚さ方向Dの全長よりも短い深さで形成されている。切込み24は、図8に示す平面視で、例えば、軟便パッド500の長さ方向Lに沿って直線状に延びて形成されている。なお、軟便パッド500の長さ方向Lは、図1に示した軟便パッド100の長さ方向Lと同じである。
【0054】
図8において、ろ過シート20′には、7本の切込み24が形成されているように記載されているが、これは、切込み24の一部のみを表示したものであり、ろ過シート20′の切込み24は、軟便パッド500における、幅方向Wに沿った開孔11の間隔に対応した本数だけ形成され、平面視において、全ての開孔11に重なるように形成されている。
【0055】
[作用]
着用者が排泄した軟便は、トップシート10に形成された開孔11を通過し、下層のろ過シート20′に移行する。このとき、軟便が到達する以前は、図9の上段に示すように、ろ過シート20′の切込み24は閉じているが、開孔11を通じて到達した軟便の自重により、切込み24が、図9の下段に示すように開いて窪み21として機能し、軟便は窪み21に落とし込まれる。そして、窪み21に落とし込まれた軟便のうち固形分210はろ過シート20′のろ過作用によって窪み21に留められた状態となり、液状成分は吸収体30に吸収される。
【0056】
これにより、軟便パッド500は、実施形態1の軟便パッド100と同様に、軟便を着用者の肌から離した状態とすることができる。
【0057】
本実施形態の軟便パッド500におけるろ過シート20′の切込み24は、図8に示すように、長さ方向Lに沿って形成されているが、切込み24は幅方向Wに沿って形成されてもよいし、長さ方向L及び幅方向Wにそれぞれ傾いた斜め方向に延びて形成されてもよい。この場合、切込み24は、開孔11の千鳥状の配置に対応した斜め方向に延びて形成されていることが、開孔11との対応付けの観点で好ましい。なお、切込み24の上述した各態様については、以下の実施形態5においても同様に適用可能である。
【0058】
<実施形態5>
[構成]
図10は本発明の第5の実施形態(実施形態5)の軟便パッド600の断面の詳細を示す、図6相当の模式図である。図示の軟便パッド600は、本発明に係る吸収性物品の一実施形態であり、特に、軟便の吸収に適したものである。
【0059】
軟便パッド600は、実施形態2の軟便パッド300において、ろ過シート20に代えて、上述した実施形態4の軟便パッド500におけるろ過シート20′を適用したものである。したがって、軟便パッド600は、軟便パッド300と軟便パッド500との組み合わせによる構成であるため、これら軟便パッド300、軟便パッド500と同じ構成、効果については、説明を省略する。
【0060】
[作用]
着用者が排泄した軟便は、トップシート10に形成された開孔11を通過し、下層のろ過シート20′に移行する。このとき、軟便が到達する以前は、図10の上段に示すように、切込み24は閉じているが、開孔11を通じて到達した軟便の自重や、ろ過シート20′を通過した軟便の液状成分がSAPシート50の部分52に設けられたSAPに吸収されてSAPの膨潤により、切込み24が、図10の下段に示すように開いて窪み21として機能し、軟便は窪み21に落とし込まれる。そして、窪み21に落とし込まれた軟便のうち固形分210はろ過シート20′のろ過作用によって窪み21に留められた状態となり、液状成分はSAPシート50を透過して吸収体30に吸収される。
【0061】
これにより、軟便パッド600は、実施形態2の軟便パッド100と同様に、軟便を着用者の肌から、より一層離した状態とすることができる。
【0062】
上述した本発明に係る吸収性物品の各実施形態1~5については、2つ以上の形態を組み合わせて構成してもよく、そのように2つ以上の形態が組み合わされた実施形態も、本発明に係る吸収性物品の実施形態である。
【符号の説明】
【0063】
10 トップシート
11 開孔
20 ろ過シート
21 窪み
30 吸収体
100,300,400,500,600 軟便パッド(吸収性物品)
L 長さ方向
W 幅方向
D 厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10