(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028032
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240222BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240222BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240222BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652D
H01L29/78 652S
H01L29/78 658A
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131337
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】木下 明将
(57)【要約】
【課題】セルピッチを短くし高耐圧、低抵抗化を実現できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置10は、第1導電型の炭化珪素半導体基板11と、第1導電型の第1半導体層12と、第2導電型の第2半導体層13と、第1導電型の第1半導体領域14と、トレンチ16と、ゲート絶縁膜17と、ゲート電極18と、トレンチ16と深さ方向に対向する位置に設けられた第2導電型の第1高濃度領域21と、トレンチ16間に選択的に設けられた、第1半導体領域14と接し、上面が第2半導体層13の表面に露出し、下面の一部が第1高濃度領域21の上面と接する第2導電型の第2高濃度領域15、22と、第1電極44と、第2電極45と、を備える。第2高濃度領域15、22は、トレンチ16の奥行き方向に周期的に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素半導体基板と、
前記炭化珪素半導体基板のおもて面に設けられた、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチと、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記第1半導体層の内部に、前記トレンチと深さ方向に対向する位置に設けられた第2導電型の第1高濃度領域と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層の内部の前記トレンチ間に選択的に設けられた、前記第1半導体領域と接し、上面が前記第2半導体層の表面に露出し、下面の一部が前記第1高濃度領域の上面と接する第2導電型の第2高濃度領域と、
前記第2高濃度領域および前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記炭化珪素半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
を備え、
前記第2高濃度領域は、前記トレンチの奥行き方向に周期的に配置されていることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2高濃度領域は、前記第1電極側の上部第2高濃度領域と前記第2電極側の下部第2高濃度領域とから構成され、前記上部第2高濃度領域は、前記下部第2高濃度領域よりも不純物濃度が高いことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第2高濃度領域の幅は、隣り合う前記第1高濃度領域間の距離よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第2高濃度領域は、前記トレンチから離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1高濃度領域は、前記トレンチの底部と接し、不純物濃度のピークが中心部分にあり、
前記トレンチの底部は、前記第1高濃度領域の不純物濃度のピークより、前記第1電極側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第2高濃度領域が設けられていない領域で、隣り合う前記第1高濃度領域を接続する第2導電型の第3高濃度領域が選択的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第2高濃度領域が設けられていない領域で、隣り合う前記第1高濃度領域間の前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第4高濃度領域が選択的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程と、
前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第1導電型の第2半導体層を形成する第2工程と、
前記第1半導体層の内部に、第2導電型の第1高濃度領域を形成する第3工程と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層の内部に選択的に、上面が前記第2半導体層の表面に露出し、下面の一部が前記第1高濃度領域の上面と接する第2導電型の第2高濃度領域を形成する第4工程と、
前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第5工程と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチを形成する第6工程と、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第6工程と、
前記第2高濃度領域および前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第7工程と、
前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極を形成する第8工程と、
を含み、
前記第3工程では、前記第1高濃度領域を前記トレンチと深さ方向に対向する位置に形成し、
前記第4工程では、前記第2高濃度領域を、前記第1半導体領域と接し、前記トレンチ間に、前記トレンチの奥行き方向に周期的に形成することを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に代わる次世代の半導体材料として期待されている。炭化珪素を半導体材料に用いた半導体素子(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを半導体材料に用いた従来の半導体素子と比較して、オン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、より高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。これは、炭化珪素のバンドギャップがシリコンに対して3倍程度大きく、シリコンよりも絶縁破壊電界強度が1桁近く大きいという材料自体の特長による。
【0003】
炭化珪素半導体装置としては、現在までに、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)、プレーナゲート構造やトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が製品化されている。
【0004】
プレーナゲート構造は、半導体基板のおもて面上に平板状にMOSゲートを設けたMOSゲート構造である。トレンチゲート構造は、半導体基板(半導体チップ)のおもて面に形成したトレンチ内にMOSゲートを埋め込んだMOSゲート構造であり、トレンチの側壁に沿って半導体基板のおもて面と直交する方向にチャネル(反転層)が形成される。このため、半導体基板のおもて面に沿ってチャネルが形成されるプレーナゲート構造と比べて、単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。
【0005】
図14は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す
図16のA-A’断面図である。
図15は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す
図16のB-B’断面図である。
図16は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す平面図である。
図14および
図15に示す従来の炭化珪素半導体装置110は、炭化珪素からなる半導体基板(半導体チップ)140上にトレンチゲート構造を備えた縦型MOSFETである。
図14および
図15では、活性領域のみを示し、エッジ終端領域は省略している。
【0006】
半導体基板140は、炭化珪素からなるn+型出発基板141のおもて面上にn-型ドリフト領域112となるn-型炭化珪素層142をエピタキシャル成長させてなる。半導体基板140は、n-型炭化珪素層142側の主面をおもて面とし、n+型出発基板141側の主面を裏面とする。半導体基板140の裏面(n+型出発基板141の裏面)の全域に、ドレイン電極145が設けられている。n+型出発基板141は、n+型ドレイン領域111である。
【0007】
n-型ドリフト領域112のn+型炭化珪素基板111側に対して反対の表面側は、n型電流拡散領域120が設けられている。n型電流拡散領域120の表面層には、トレンチ116間に、p+型領域の下部123およびp+型領域の上部124から構成されるp+型領域122が選択的に設けられている。また、n型電流拡散領域120内には、トレンチ116の底部と深さ方向に対向する位置にp+型領域121が選択的に設けられている。トレンチゲート構造のMOSゲートは、p型ベース領域113、n+型ソース領域114、p++型コンタクト領域115、トレンチ116、ゲート絶縁膜117およびゲート電極118で構成される。
【0008】
また、ゲート電極118上に層間絶縁膜119が設けられ、層間絶縁膜119の開口部に、n+型ソース領域114およびp++型コンタクト領域115と接するオーミック電極143が設けられる。オーミック電極143および層間絶縁膜119上に、ゲート電極118側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル138が設けられている。バリアメタル138上にソース電極144が設けられる。
【0009】
p
+型領域121、122は、ソース電極144の電位に固定されており、MOSFET(炭化珪素半導体装置110)のオフ時に空乏化して(もしくはn型電流拡散領域120を空乏化させて、またはその両方)、トレンチ116下のゲート絶縁膜117にかかる電界を緩和させる機能を有する。p
+型領域121は、p型ベース領域113と離れて設けられ、深さ方向にトレンチ116の底面に対向する。これにより、p
+型領域121は、p
++型コンタクト領域115下にトレンチ116とは離れた位置に深いp型構造を作りアバランシェ発生時にトレンチ116下に電流が流れないようにしてトレンチ116下の電位が持ち上がらないようにする。また、
図16に示すように、p
+型領域121は、p
+型領域123に奥行き方向で周期的に連結されることで、ソース電極144に電気的に接続されている。
図14は、p
+型領域121とp
+型領域123が連結されない部分の断面図であり、
図15は、p
+型領域121とp
+型領域123が連結される部分の断面図である。p
+型領域122は、上面でp型ベース領域113に接し、p型ベース領域113を介してソース電極144に電気的に接続されている。
【0010】
また、トレンチ下にトレンチと直交する電界ブロック層を設け、電界ブロック層をp型ディープ層でp型ベース領域と電気的に接続する半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。また、トレンチ下にトレンチの長手方向に対して45度傾斜する第1方向に延設された複数本の直線状のp型ディープ層が等間隔に並べられると共に、トレンチの長手方向に対して45度傾斜し、かつ、第1方向に対して直交する第2方向に延設された複数本の直線状のp型ディープ層が等間隔に並べられ、p型ディープ層がp型ベース領域と電気的に接続する半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献2参照)。また、ストライプ状の平面パターンを有するトレンチを備え、ベース領域はトレンチと平行な方向に周期的に設けられ、トレンチの下部で、ベース領域の一部は、トレンチと平行な方向に延在し、ベース領域同士が接続される半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献3参照)。また、第1導電型の担体輸送層と、担体輸送層の上面に設けた第2導電型の注入制御領域と、注入制御領域の上部に設けた第1導電型の担体供給領域と、注入制御領域の上部に設けた第2導電型のベースコンタクト領域と、注入制御領域を貫通し担体輸送層に達するトレンチと、注入制御領域の下面に接する第2導電型の上側埋込領域と、上側埋込領域の下面及びトレンチの底面に接する第2導電型の下側埋込領域を備え、トレンチ間で下側埋込領域が担体輸送層を介して互いに離間する半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2020-120072号公報
【特許文献2】特許第4640439号公報
【特許文献3】特許第6848382号公報
【特許文献4】国際公開第2022/137789号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の炭化珪素半導体装置の構造では、1セルあたりの構造が多いため、セルピッチを短くすることが難しい。そのため、特にチャネル移動度が低いSiCでは低抵抗化が困難である。また、構造が複雑なためpn接合部のp型領域が細くなり、電界集中が起こりやすくなり耐圧が下がるという課題がある。
【0013】
一方、低抵抗化のために奥行方向のp+型領域121とp+型領域122との接続数を減らすと、トレンチ116下のp+型領域121で、ソース電極144と接続するp++型コンタクト領域115から遠い部分ができ、内蔵pnダイオードに高電流を流す動作をさせるとゲート絶縁膜117に大きな負荷がかかる虞がある。
【0014】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、セルピッチを短くし高耐圧、低抵抗化を実現できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチが設けられる。前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記第1半導体層の内部に、前記トレンチと深さ方向に対向する位置に第2導電型の第1高濃度領域が設けられる。前記第1半導体層と前記第2半導体層の内部の前記トレンチ間に選択的に、前記第1半導体領域と接し、上面が前記第2半導体層の表面に露出し、下面の一部が前記第1高濃度領域の上面と接する第2導電型の第2高濃度領域が設けられる。前記第2高濃度領域および前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。前記第2高濃度領域は、前記トレンチの奥行き方向に周期的に配置されている。
【0016】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2高濃度領域は、前記第1電極側の上部第2高濃度領域と前記第2電極側の下部第2高濃度領域とから構成され、前記上部第2高濃度領域は、前記下部第2高濃度領域よりも不純物濃度が高いことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2高濃度領域の幅は、隣り合う前記第1高濃度領域間の距離よりも広いことを特徴とする。また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2高濃度領域は、前記トレンチから離間して配置されていることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1高濃度領域は、前記トレンチの底部と接し、不純物濃度のピークが中心部分にあり、前記トレンチの底部は、前記第1高濃度領域の不純物濃度のピークより、前記第1電極側に設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2高濃度領域が設けられていない領域で、隣り合う前記第1高濃度領域を接続する第2導電型の第3高濃度領域が選択的に設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2高濃度領域が設けられていない領域で、隣り合う前記第1高濃度領域間の前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第4高濃度領域が選択的に設けられていることを特徴とする。
【0021】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程を行う。次に、前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第1導電型の第2半導体層を形成する第2工程を行う。次に、前記第1半導体層の内部に、第2導電型の第1高濃度領域を形成する第3工程を行う。次に、前記第1半導体層と前記第2半導体層の内部に選択的に、上面が前記第2半導体層の表面に露出し、下面の一部が前記第1高濃度領域の上面と接する第2導電型の第2高濃度領域を形成する第4工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第5工程を行う。次に、前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチを形成する第6工程を行う。次に、前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第6工程を行う。次に、前記第2高濃度領域および前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第7工程を行う。次に、前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極を形成する第8工程を行う。前記第3工程では、前記第1高濃度領域を前記トレンチと深さ方向に対向する位置に形成し、前記第4工程では、前記第2高濃度領域を、前記第1半導体領域と接し、前記トレンチ間に、前記トレンチの奥行き方向に周期的に形成する。
【0022】
上述した発明によれば、トレンチ下のp+型領域(第2導電型の第1高濃度領域)と同じ深さに設けられたトレンチ間のp+型領域を無くし、下面がp+型領域の上面の一部と接し、上面がp++型コンタクト領域(上部第2高濃度領域)と接するp+型領域(下部第2高濃度領域)を設け、p+型領域とp++型コンタクト領域とを接続している。これにより、1セルあたりの構造を簡略化しセルピッチを短くすることができ、チャネル移動度が低いSiCMOSFETの低抵抗化を実現することができる。さらに、トレンチ下にあるp+型領域の幅を広くすることができ、pn接合の平坦部分が広くなることで電界集中を緩和して耐圧を上げることができる。p+型領域の幅を広くすることで、電流の流れるJFETの経路が長くなり、飽和電流を抑え短絡耐量を向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、セルピッチを短くし高耐圧、低抵抗化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図3AのA-A’断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図3AのB-B’断面図である。
【
図3A】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す斜視図である。
【
図3B】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置でp
+型領域およびp
++型コンタクト領域を交互に配置した場合の上面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図5】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図6】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図7】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図8】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図9のA-A’断面図である。
【
図9】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の不純物濃度分布を示す斜視図である。
【
図11】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の不純物濃度分布を示す斜視図である。
【
図12】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図13】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の不純物濃度分布を示す斜視図である。
【
図14】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す
図16のA-A’断面図である。
【
図15】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す
図16のB-B’断面図である。
【
図16】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0026】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図3AのA-A’断面図である。
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図3AのB-B’断面図である。
図3Aは、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す斜視図である。
図1~
図3Aに示す実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)40にトレンチゲート構造を備えた縦型MOSFETである。
【0027】
図1~
図3Aには、オン状態の時に電流の流れる活性領域のみを記載し、活性領域の周囲を略矩形状に囲み、耐圧構造が設けられているエッジ終端領域の記載を省略している。耐圧構造は、活性領域とエッジ終端領域との境界付近の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。耐圧とは、pn接合でアバランシェ降伏が起きたことでドレイン・ソース間電流が増加してもそれ以上ドレイン・ソース間電圧が増加しない限界の電圧である。
【0028】
半導体基板40には、MOSFETの同一構造(素子構造)の複数の単位セル(素子の機能単位)が隣接して配置されている。半導体基板40は、炭化珪素からなるn+型出発基板(第1導電型の炭化珪素半導体基板)41のおもて面上にn-型ドリフト領域(第1導電型の第1半導体層)12となるn-型炭化珪素層42をエピタキシャル成長させてなる。半導体基板40は、n-型炭化珪素層42側の主面をおもて面(第1主面)とし、n+型出発基板41側の主面を裏面(第2主面)とする。
【0029】
n+型出発基板41はn+型ドレイン領域11である。半導体基板40は、活性領域の各部を形成する際に、n-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層42を順に多段にエピタキシャル成長されてなる。n-型ドリフト領域12は、n-型炭化珪素層42の、イオン注入による拡散領域が形成されずにエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残る部分である。n-型ドリフト領域12は、n+型出発基板41に接し、活性領域からチップ端部にわたって設けられている。n-型炭化珪素層42は、一段のエピタキシャル成長で形成し、p型ベース領域13、n+型ソース領域14、p++型コンタクト領域15、n型電流拡散領域20およびp+型領域21、22をイオン注入で形成してもよい。
【0030】
実施の形態1の活性領域には、トレンチゲート構造が設けられている。トレンチゲート構造は、p型ベース領域(第2導電型の第2半導体層)13、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)14、p++型コンタクト領域(第2導電型の第2高濃度領域、上部第2高濃度領域)15、トレンチ16、ゲート絶縁膜17およびゲート電極18で構成される。p型ベース領域13、n+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15は、n-型炭化珪素層42の内部にイオン注入により形成された拡散領域である。p型ベース領域13は、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間の全域に設けられている。
【0031】
n+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15は、半導体基板40のおもて面とp型ベース領域13との間にそれぞれ選択的に設けられ、底部(下面:半導体基板40の裏面側端部)でp型ベース領域13に接する。n+型ソース領域14は、p++型コンタクト領域15に接して設けられている。n+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15は、上面(半導体基板40のおもて面側端部)でオーミック電極43にオーミック接触する。
【0032】
n-型ドリフト領域12とp型ベース領域13との間において、トレンチ16の底面よりもn+型ドレイン領域11側(半導体基板40の裏面側)に深い位置に、n型電流拡散領域20およびp+型領域(第2導電型の第1高濃度領域)21、p+型領域(第2導電型の第2高濃度領域、下部第2高濃度領域)22がそれぞれ選択的に設けられている。n型電流拡散領域20およびp+型領域21、22は、n-型炭化珪素層42の内部にイオン注入により形成された拡散領域である。n型電流拡散領域20は、p+型領域21、22よりもn+型ドレイン領域11側に深い位置に達することがよい。
【0033】
n型電流拡散領域20は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(CSL:Current Spreading Layer)である。n型電流拡散領域20は、p+型領域21、22間においてこれらの領域に接し、かつ半導体基板40のおもて面に平行な方向に延在してトレンチ16まで達し、ゲート絶縁膜17に接する。n型電流拡散領域20は、上面でp型ベース領域13に接し、底部でn-型ドリフト領域12に接する。
【0034】
n型電流拡散領域20は設けられていなくてもよい。n型電流拡散領域20を設けない場合、n型電流拡散領域20に代えて、n-型ドリフト領域12がp型ベース領域13まで達してp型ベース領域13およびp+型領域21、22に接し、かつ半導体基板40のおもて面に平行な方向にトレンチ16まで達して、ゲート絶縁膜17に接する。
【0035】
p
+型領域21、22は、後述するソース電極44の電位に固定されており、MOSFET(炭化珪素半導体装置10)のオフ時に空乏化して(もしくはn型電流拡散領域20を空乏化させて、またはその両方)、ゲート絶縁膜17にかかる電界を緩和させる機能を有する。p
+型領域21は、p型ベース領域13と離れて設けられ、深さ方向にトレンチ16の底面に対向する。p
+型領域21は、p
+型領域22に部分的に連結されることで、ソース電極44に電気的に接続されている。
図1は、p
+型領域22が設けられていない部分の断面を示し、
図2は、p
+型領域22が設けられ、p
+型領域22とp
+型領域21とが連結される部分の断面を示す。
【0036】
p+型領域21は、トレンチ16の底面でゲート絶縁膜17に接してもよいし、トレンチ16の底面から離れていてもよい。p+型領域21の幅は、トレンチ16の幅と同じか、またはトレンチ16の幅よりも広い。例えば、p+型領域21の幅は、トレンチ16の幅の2倍以上広いことが好ましい。p+型領域21の幅をトレンチ16の幅よりも広くすることで、p+型領域21は深さ方向にトレンチ16の底面コーナー部(側壁と底面との境界)にも対向する。これによって、p+型領域21によるトレンチ16の底面付近の電界緩和効果がさらに高くなる。
【0037】
p+型領域22は、p+型領域21とp++型コンタクト領域15とを接続する領域であり、互いに隣り合うトレンチ16間の中央に、トレンチ16と離れて設けられている。p+型領域22は、上面でp++型コンタクト領域15に接し、p++型コンタクト領域15を介してソース電極44に電気的に接続されている。p+型領域22は、接続のために設けられているため、p+型領域21より不純物濃度は低くてもよい。
【0038】
p+型領域22は、p++型コンタクト領域15と同じ幅を有している。p+型領域22の深さは、p+型領域21より浅く、p+型領域22の下面は、p+型領域21の上面(半導体基板40のおもて面側端部)と同じ深さで、p+型領域22の下面(半導体基板40の裏面側端部)はp+型領域21の上面の一部と接している。
【0039】
このように、本発明では、p
+型領域21と同じ深さに設けられたトレンチ16間のp
+型領域(従来構造のp
+型領域122、
図14、
図15参照)を無くし、1セルあたりのJFET構造(トレンチ16とトレンチ16の間で電流が抜ける部分の構造)を1本化している。さらに、p
+型領域21とp
++型コンタクト領域15との接続は、トレンチ16間の中央に深いp
+型領域22を作ることで実現している。
【0040】
図3Aでは、トレンチ16間に1つのみ記載されているが、p
++型コンタクト領域15は、トレンチ16の奥行き方向に、周期的にストライプ構造で配置され、p
+型領域22は、p
++型コンタクト領域15が配置された領域に周期的にストライプ構造で配置される。
図3Aでは、B-B’断面にp
+型領域22およびp
++型コンタクト領域15が配置されているが、配置は交互に配置されていてもよい。
図3Bは、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置でp
+型領域およびp
++型コンタクト領域を交互に配置した場合の上面図である。
図3Bのように、B-B’断面のトレンチ16間にp
+型領域22Bおよびp
++型コンタクト領域15Bが配置され、A-A’断面のトレンチ16間にp
+型領域22A、Cおよびp
++型コンタクト領域15A、Cが配置されてもよい。
【0041】
例えば、p+型領域21の幅L1は、1.1~2.3μmであり、p+型領域21の間の距離L2は、0.3~1.5μmであり、p+型領域21の上面とp型ベース領域13の下面との距離L3は、0.1~0.5μmである。また、p型ベース領域13の厚さL4は、0.2~0.5μmであり、n+型ソース領域14の厚さL5は、0.1~0.5μmである。セルピッチL6(トレンチ16間の中央とトレンチ16間の中央との距離)は、2.6μm程度である。また、p+型領域22の幅L7は、1.0~1.6μmであり、p+型領域22の奥行き方向の長さL8は、0.8~4.5μmであり、p+型領域22の奥行き方向の間隔L9は、1.0μm以上である。
【0042】
また、
図3Aでは、p
+型領域22およびp
++型コンタクト領域15は、立方体の形状であるが、円柱の形状であってもよい。円柱の形状とすることで、p
+型領域22およびp
++型コンタクト領域15の位置がずれた場合に、チャネルが形成される領域が無くなることを防止することができる。p
+型領域22およびp
++型コンタクト領域15は、トレンチ16と離れているが、トレンチ16と接していてもよい。
【0043】
このように、1セルあたりの構造を簡略化することでセルピッチを短くすることができ、セルピッチを短くすることでチャネル移動度が低いSiCMOSFETの低抵抗化を実現することができる。さらに、トレンチ16間の構造に余裕ができ、従来構造より、トレンチ16下にあるp+型領域21の幅を広くすることができ、pn接合の平坦部分が広くなることで電界集中を緩和して耐圧を上げることができる。例えば、p+型領域21の幅L1は、JFET領域の幅、つまり、隣り合うp+型領域21の間の距離L2よりも広くすることができる。この場合、電流の流れるJFETの経路Lj(p型ベース領域13の下面からp+型領域21の下面までの距離)が長くなることで飽和電流を抑え短絡耐量を向上することができる。
【0044】
図2および
図3Aでは、p
+型領域21とソース電極44を接続するp型領域は、p
+型領域22とp
++型コンタクト領域15の2層構造であるが、1層構造であってもよい。この場合、p
+型領域22のみを設けて、p
+型領域21とソース電極44を接続してもよいし、p
++型コンタクト領域15のみを設けて、p
+型領域21とソース電極44を接続してもよい。
【0045】
また、p
+型領域21は、深さ方向の不純物濃度のピークが中心部分にあってもよい(
図10および
図11参照)。この場合、トレンチ16の底部は、p
+型領域21の不純物濃度のピーク位置よりもソース電極44側に設けられている。このようにすることが、空乏層が広がった場合、p
+型領域21の中心部分より深い部分に電界強度のピークが形成される。すなわち、電界強度のピークをゲート絶縁膜17から離すことができる。このため、電界強度の最大ピーク値を低減させることができ、高耐圧化を図ることができる。
【0046】
トレンチ16は、深さ方向にn+型ソース領域14およびp型ベース領域13を貫通してn型電流拡散領域20(n型電流拡散領域20を設けない場合はn-型ドリフト領域12)に達する。トレンチ16は、p+型領域21の内部で終端していてもよい。トレンチ16は、例えば、半導体基板40のおもて面に平行な方向にストライプ状に延在して、活性領域の外周部(不図示)に達する。トレンチ16の内部には、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極18が設けられている。
【0047】
層間絶縁膜19は、半導体基板40のおもて面の全面に設けられ、ゲート電極18を覆う。オーミック電極(第1電極)43は、半導体基板40のおもて面の、層間絶縁膜19のコンタクトホールに露出する部分上に設けられている。オーミック電極43は、層間絶縁膜19のコンタクトホールにおいて、半導体基板40のおもて面においてn+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15にオーミック接触する。オーミック電極43は、例えばニッケルシリサイド(NixSiy、x,yは任意の整数)膜である。
【0048】
ソース電極(第1電極)44は、層間絶縁膜19のコンタクトホールを埋め込むように、層間絶縁膜19上に設けられている。ソース電極44は、活性領域の中央部の略全域に設けられ、ソース電極44は、オーミック電極43を介してn+型ソース領域14、p++型コンタクト領域15、p型ベース領域13、およびp+型領域21、22に電気的に接続されている。
【0049】
オーミック電極43および層間絶縁膜19上に、ゲート電極18側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル38が設けられていてもよい。バリアメタル38は、例えば、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)から構成される。バリアメタル38は、Tiが半導体基板40側のTi、TiNの2層構造であってもよい。この場合、バリアメタル38上にソース電極44が設けられる。
【0050】
ドレイン電極(第2電極)45は、半導体基板40の裏面(n+型出発基板41の裏面)全面に設けられて、n+型ドレイン領域11(n+型出発基板41)にオーミック接触し、n+型ドレイン領域11に電気的に接続されている。
【0051】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図4~
図7は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、n
+型出発基板(n
+型出発ウエハ)41のおもて面に、n
-型ドリフト領域12となるn
-型炭化珪素層42aをエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が、
図4に記載される。次に、n型不純物のイオン注入により、n
-型炭化珪素層42aにn型電流拡散領域20の下部を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、n
-型炭化珪素層42aの表面領域に、p
+型領域21を選択的に形成する。
【0052】
次に、n
-型炭化珪素層42a上に、n
-型ドリフト領域12となるn
-型炭化珪素層42bをエピタキシャル成長させる。次に、n型不純物のイオン注入により、n
-型炭化珪素層42bにn型電流拡散領域20の上部を形成する。ここまでの状態が、
図5に記載される。次に、n
-型炭化珪素層42b上に、n
-型ドリフト領域12となるn
-型炭化珪素層42cをエピタキシャル成長させる。ここまでの工程で、n
+型出発基板41上にn
-型炭化珪素層42(42a~42c)を積層した所定厚さの半導体基板(半導体ウエハ)40が完成する。
【0053】
次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、n
-型炭化珪素層42cの内部に、p型ベース領域13を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、n
-型炭化珪素層42cの表面領域にn
+型ソース領域14を選択的に形成する。ここまでの状態が、
図6に記載される。
【0054】
次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、n
-型炭化珪素層42bおよびn
-型炭化珪素層42cの内部に、下面がp
+型領域21と接するようにp
+型領域22を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、n
-型炭化珪素層42cの表面領域に、p
++型コンタクト領域15を選択的に形成する。ここまでの状態が、
図7に記載される。このように、p
+型領域22を深く形成することでp
++型コンタクト領域15とトレンチ16下のp
+型領域21を接続する。p
+型領域22とp
++型コンタクト領域15は、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入の同一工程で形成でき、従来必要であったp
+型領域21間のp
+型領域を形成する工程が無くなり工程を減らすことでコストを下げることができる。
【0055】
ここでは、p+型領域22を1回のイオン注入により形成したが、複数回のイオン注入により形成してもよい。例えば、n-型炭化珪素層42b形成後、p+型領域22の下部領域を形成し、n-型炭化珪素層42c形成後、p+型領域22の上部領域を形成してもよい。また、n-型炭化珪素層42cの表面領域に、p+型領域22を形成し、p+型領域22の表面にp型不純物をイオン注入することで、p++型コンタクト領域15を形成してもよい。また、p型ベース領域13およびn+型ソース領域14のどちらか一方または両方をエピタキシャル成長で形成し、p+型領域22およびp++型コンタクト領域15をイオン注入で形成してもよい。
【0056】
n-型炭化珪素層42(42a~42c)のイオン注入されずにエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残る部分がn-型ドリフト領域12となる。次に、炭化珪素層42にイオン注入した不純物を活性化させるための熱処理を行う。この不純物活性化のための熱処理は、炭化珪素層42a~42cに不純物をイオン注入するごとに行ってもよい。次に、一般的な方法により、トレンチ16、ゲート絶縁膜17およびゲート電極18を形成する。
【0057】
次に、半導体基板40のおもて面の全面に層間絶縁膜19を形成する。次に、一般的な方法により、ソース電極44、ゲートパッド(不図示)、パッシベーション膜(表面保護膜:不図示)およびドレイン電極45を形成する。ソース電極44の、パッシベーション膜の開口部に露出する部分がソースパッドとなる。その後、半導体ウエハをダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、
図1~
図3Aの炭化珪素半導体装置10が完成する。
【0058】
以上、説明したように、実施の形態1の炭化珪素半導体装置によれば、トレンチ下のp+型領域と同じ深さに設けられたトレンチ間のp+型領域を無くし、下面がp+型領域の上面の一部と接し、上面がp++型コンタクト領域と接するp+型領域を設け、p+型領域とp++型コンタクト領域とを接続している。これにより、1セルあたりの構造を簡略化しセルピッチを短くすることができ、チャネル移動度が低いSiCMOSFETの低抵抗化を実現することができる。さらに、トレンチ下にあるp+型領域の幅を広くすることができ、pn接合の平坦部分が広くなることで電界集中を緩和して耐圧を上げることができる。p+型領域の幅を広くすることで、電流の流れるJFETの経路が長くなり、飽和電流を抑え短絡耐量を向上することができる。
【0059】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図8は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図9のA-A’断面図である。
図9は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す斜視図である。
図9のB-B’断面図は、実施の形態1と同じであるため、記載を省略する(
図2参照)。
【0060】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置では、p
+型領域22とp
++型コンタクト領域15が設けられていない領域に、p
+型保護領域(第2導電型の第3高濃度領域)23が選択的に設けられている。p
+型保護領域23は、p
+型領域21と同程度の不純物濃度で、隣り合うp
+型領域21とp
+型領域21とを電気的に接続している。p
+型保護領域23は、例えば、
図8および
図9に示すように、p
+型領域21と同程度の厚さで、p
+型領域21より浅い位置に設けられ、p
+型保護領域23の側面の一部がp
+型領域21の側面の一部と接している。また、p
+型保護領域23は、p
+型領域21と同程度の厚さで、p
+型領域21と同じ深さに設けられてもよい。
【0061】
図10は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の不純物濃度分布を示す斜視図である。
図11は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の不純物濃度分布を示す斜視図である。実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置では、
図10に示すように、p
+型領域22とp
++型コンタクト領域15が設けられていない領域では、幅の広いJFET領域24がある。この場合、幅の広いJFET領域24の直上の薄いp型ベース領域13でパンチスルーを起こしやすくなり耐圧の低下が起こる虞がある。このため、実施の形態2では、
図11に示すように、p
+型領域21と接するp
+型保護領域23を設けることで、耐圧低下を回避している。
図11では、p
+型保護領域23が、p
+型領域21と同程度の厚さで、p
+型領域21と同じ深さに設けられている場合を示す。また、
図11に示すように、p
+型保護領域23は、p
+型領域21と同様に、不純物濃度のピークが中心部分にあってもよい。
【0062】
(実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法において、n
-型炭化珪素層42bをエピタキシャル成長させた後(
図5参照)、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、n
-型炭化珪素層42bの表面領域に、p
+型保護領域23を選択的に形成することにより製造することができる。
【0063】
以上、説明したように、実施の形態2の炭化珪素半導体装置によれば、実施の形態1と同じ効果を有する。さらに、p+型領域とp++型コンタクト領域が設けられていない領域に、トレンチ下のp+型領域を接続するp+型保護領域が選択的に設けられている。これにより、直上の薄いp型ベース領域でパンチスルーが起こることを防止し、耐圧低下を回避することができる。
【0064】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図12は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態3では、斜視図は実施の形態1とほぼ同じであるため、記載を省略する(
図3A参照)。
図12は、
図1のA-A’断面に対応する断面図である。B-B’断面に対応する断面図は、実施の形態1と同じであるため、記載を省略する(
図2参照)。
【0065】
実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置では、p+型領域22とp++型コンタクト領域15が設けられていない領域上のp型ベース領域13に、高濃度p+型ベース領域(第2導電型の第4高濃度領域)25を選択的に設けている。高濃度p+型ベース領域25は、不純物濃度がp型ベース領域13よりも2倍程度高く、幅は、JFET領域の幅、つまり、隣り合うp+型領域21の間の距離L2と同じ程度で、厚さはp型ベース領域13と同程度の厚さである。高濃度p+型ベース領域25の厚さはp型ベース領域13より厚くてもよい。
【0066】
図13は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の不純物濃度分布を示す斜視図である。実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置と同様にp
+型保護領域23を備えていてもよい。
図13は、高濃度p
+型ベース領域25と同様にp
+型保護領域23を備えている場合の不純物濃度分布を示す。実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置では、
図10に示すように、p
+型領域22とp
++型コンタクト領域15が設けられていない領域では、幅の広いJFET領域24がある。この場合、幅の広いJFET領域24の直上の薄いp型ベース領域13でパンチスルーを起こしやすくなり耐圧の低下が起こる虞がある。このため、実施の形態3では、
図13に示すように、JFET領域24の直上のp型ベース領域13に不純物濃度を高くした高濃度p
+型ベース領域25を設けることで、炭化珪素半導体装置の特性を悪化させず、耐圧低下を回避している。
【0067】
(実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する。実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法において、n
-型炭化珪素層42cの内部に、p型ベース領域13を形成した後(
図6参照)、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、p型ベース領域13の一部の不純物濃度を高くすることで、高濃度p
+型ベース領域25を選択的に形成することにより製造することができる。
【0068】
以上、説明したように、実施の形態3の炭化珪素半導体装置によれば、実施の形態1と同じ効果を有する。さらに、p+型領域とp++型コンタクト領域が設けられていない領域上のp型ベース領域に、高濃度p+型ベース領域25を選択的に設けている。これにより、直上の薄いp型ベース領域13でパンチスルーが起こることを防止し、耐圧低下を回避することができる。
【0069】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した各実施の形態では、トレンチ構造を有するMOSFETを例に説明してきたが、トレンチ構造を有する他の半導体装置、IGBT等にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0071】
10、110 炭化珪素半導体装置
11、111 n+型ドレイン領域(n+型炭化珪素基板)
12、112 n-型ドリフト領域
13、113 p型ベース領域
14、114 n+型ソース領域
15、115 p++型コンタクト領域
16、116 トレンチ
17、117 ゲート絶縁膜
18、118 ゲート電極
19、119 層間絶縁膜
20、120 n型電流拡散領域
21、121 トレンチ下のp+型領域
22 互いに隣り合うトレンチ間の中央のp+型領域
23 p+型保護領域
24 幅の広いJFET領域
25 高濃度p+型ベース領域
38、138 バリアメタル
40、140 半導体基板
41、141 n+型出発基板
42、142 n-型炭化珪素層
43、143 オーミック電極
44、144 ソース電極
45、145 ドレイン電極
122 互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域
123 互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域の下部
124 互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域の上部