(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028035
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】矯正装置および矯正方法
(51)【国際特許分類】
B21D 3/02 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
B21D3/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131344
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 最威
(72)【発明者】
【氏名】須藤 克弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 高志
(72)【発明者】
【氏名】塚本 学
(57)【要約】
【課題】管の矯正装置および矯正方法を提供する
【解決手段】矯正装置(1)は、制御部(13)、管回転部(22)によって回転している状態の管(100)の所定位置に対し、接触ローラー(22,42)を接触させて前記所定位置に所定の大きさの荷重が加わるよう、矯正機構(12)の位置を制御する制御部(13)を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の変形を矯正する矯正装置であって、
前記管を管軸を中心として回転させる管回転部と、
前記管の外周面の所定位置に接触可能であり、前記管の前記回転に従動して回転可能な接触ローラーを具備した矯正機構と、
前記矯正機構の位置を移動制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記管回転部によって回転している状態の前記管の前記所定位置に対し、前記接触ローラーを接触させて前記所定位置に所定の大きさの荷重が加わるよう、前記矯正機構の位置を制御するものである、
ことを特徴とする矯正装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記矯正機構の位置を移動させる速度を調整する移動速度調整部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の矯正装置。
【請求項3】
前記管は、一方の管端に受口を有し、前記受口と他方の管端との間に直管部を有しており、
前記矯正機構は、前記接触ローラーとして第1接触ローラーを具備した第1矯正部材と、前記第1矯正部材とは前記管の管軸方向に沿って異なる箇所に設けられ、前記第1接触ローラーとは異なる第2接触ローラーを前記接触ローラーとして具備した第2矯正部材とを有し、
前記第1矯正部材は、前記管の管軸方向における中央部分を前記所定位置として、前記中央部分に前記第1接触ローラーを接触させ、
前記第2矯正部材は、前記受口と前記直管部との境界部分を前記所定位置として、前記境界部分に前記第2接触ローラーを接触させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の矯正装置。
【請求項4】
管を管軸を中心として回転させる工程と、
回転中の前記管の外周面の所定位置に矯正機構を接触させて、前記矯正機構を所定方向に移動させることによって、前記所定位置に所定の大きさの荷重を加える第1工程と、
前記第1工程の後に、前記矯正機構を前記所定方向とは反対方向に移動させることによって、前記荷重を徐々に減少させる第2工程と、
を含み、
前記第2工程の前記矯正機構の前記移動の速度を、前記第1工程の前記矯正機構の前記移動の速度よりも遅くする、
ことを特徴とする矯正方法。
【請求項5】
前記管は、一方の管端に受口を有し、前記受口と他方の管端との間に直管部を有しており、
前記第1工程は、前段工程と、前記前段工程の後に行われる後段工程とを含み、
前記前段工程では、前記受口と前記直管部との境界部分を前記所定位置として、前記境界部分に前記矯正機構を接触させ、
前記後段工程では、前記管の管軸方向における中央部分を前記所定位置として、前記中央部分に前記矯正機構を接触させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の変形を矯正する矯正装置および矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄管などの管の曲がりおよび楕円変形を矯正する設備として様々な機構を備えた設備が知られている。例えば特許文献1には、矯正が必要な管を、曲がり検査装置を用いて検出し、検出した管を矯正装置に設置した後、曲がり量を測定する機構が開示されている。この機構では、曲がり量が大きい箇所を矯正するように管を位置決めし、固定した状態、つまり管を回転させない状態で矯正を行う。また、この機構では、曲がり量を確認しながら矯正を繰り返し行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、矯正が必要な箇所を特定する必要があることから、曲がりがある管を特定し、その管の曲がり箇所を特定するための設備が必要となり、矯正設備全体が大型化する。また、これら特定のための時間も必要であり、矯正時間が長く、作業効率が低い。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、従前の矯正機構よりも作業効率を高めた管の矯正装置および矯正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る矯正装置は、管の変形を矯正する矯正装置であって、前記管を管軸を中心として回転させる管回転部と、前記管の外周面の所定位置に接触可能であり、前記管の前記回転に従動して回転可能な接触ローラーを具備した矯正機構と、前記矯正機構の位置を移動制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記管回転部によって回転している状態の前記管の前記所定位置に対し、前記接触ローラーを接触させて前記所定位置に所定の大きさの荷重が加わるよう、前記矯正機構の位置を制御するものである。
【0007】
前記の構成によれば、前記接触ローラーの位置を制御し、回転している管の外周面の所定位置に前記接触ローラーによって荷重をかける。これにより、管には外周面に沿って均等な荷重がかかり、変形している管を全長にわたって矯正することができる。
【0008】
また前記の構成によれば、管の前記所定位置に前記接触ローラーによって荷重をかけることで管の全長にわたって変形を矯正することから、変形箇所を矯正前に特定する検査や、変形の有無を判断する検査を省略できる。そのため、そのような検査機構を設置する必要がなく、矯正を行う設備を従前よりも縮小化することができる。また、管の矯正工程内におけるそのような検査に要する時間を省略できるため、管矯正の作業効率の向上を図ることができる。
【0009】
更に、従来の矯正方法においては、変形箇所の検査結果に基づき管(を回転させて)の矯正位置を調整する必要があったが、前記の構成によれば、管を回転させながら矯正するため、従来のような管の矯正位置の調整作業が不要となり、作業時間が大幅に削減することができる。
【0010】
また前記の構成によれば、前記所定位置に接触する構造が管の回転に従動して回転する接触ローラーであるため、荷重を加える際に管の外周面を傷つけずに荷重を加えることができる。
【0011】
また本発明の一態様に係る矯正装置は、前記の構成において、前記制御部は、前記矯正機構の位置を移動させる速度を調整する移動速度調整部を有する。
【0012】
前記の構成によれば、前記移動速度調整部を具備することによって、前記管の前記所定位置に対して前記所定の大きさの荷重をかける位置にある前記接触ローラーが、荷重をかけ終わって前記管の前記所定位置から離れる際に、前記所定位置に対して加えていた荷重を緩慢に減少させることができる。このように荷重をゆっくり減少させることにより、管の変形に伴う残留応力が連続的に打ち消しあって残留応力をゼロに導くことができ、管をより全長にわたって真っ直ぐに矯正することができる。一方で、前記管の前記所定位置に対して荷重をかける段階では急速に、すなわち荷重を減少させる際の移動速度より速く、前記接触ローラーを押し付けることが可能である。そのため、工程によって適した移動速度に調整することで、矯正に要する処理時間を最短にすることができる。
【0013】
また本発明の一態様に係る矯正装置は、前記の構成において、前記管は、一方の管端に受口を有し、前記受口と他方の管端との間に直管部を有しており、前記矯正機構は、前記接触ローラーとして第1接触ローラーを具備した第1矯正部材と、前記第1矯正部材とは前記管の管軸方向に沿って異なる箇所に設けられ、前記第1接触ローラーとは異なる第2接触ローラーを前記接触ローラーとして具備した第2矯正部材とを有し、前記第1矯正部材は、前記管の管軸方向における中央部分を前記所定位置として、前記中央部分に前記第1接触ローラーを接触させ、前記第2矯正部材は、前記受口と前記直管部との境界部分を前記所定位置として、前記境界部分に前記第2接触ローラーを接触させる。
【0014】
前記の構成によれば、受口を有する管において曲がり量が比較的大きい前記境界部分(首部と称されることもある)に対して第2矯正部材が効果的に荷重をかけることができる。また、長さのある管においては管軸方向における中央部分が撓みやすいため、前記中央部分に対して第1矯正部材が効果的に荷重をかけることができる。第1矯正部材および第2矯正部材によって、受口を有する管の変形を管の全長にわたって効果的に矯正することができる。
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る矯正方法は、管を管軸を中心として回転させる工程と、回転中の前記管の外周面の所定位置に矯正機構を接触させて、前記矯正機構を所定方向に移動させることによって、前記所定位置に所定の大きさの荷重を加える第1工程と、前記第1工程の後に、前記矯正機構を前記所定方向とは反対方向に移動させることによって、前記荷重を徐々に減少させる第2工程と、を含み、前記第2工程の前記矯正機構の前記移動の速度を、前記第1工程の前記矯正機構の前記移動の速度よりも遅くする。
【0016】
前記の方法によれば、管軸を中心に回転している管の外周面の所定位置に前記矯正機構が荷重をかけることによって、管には外周面に沿って均等な荷重がかかり、変形している管を全長にわたって矯正することができる。
【0017】
前記の方法によれば、管の前記所定位置に荷重をかけることで管の全長にわたって変形を矯正することから、変形箇所を矯正前に特定する検査や、変形の有無を判断する検査を省略できる。そのため、そのような検査機構を設置する必要がなく、矯正を行う設備を従前よりも縮小化させることができる。また、管の矯正工程内におけるそのような検査に要する時間を省略できるため、管矯正の作業効率の向上を図ることができる。
【0018】
更に、従来の矯正方法においては、変形箇所の検査結果に基づき管(を回転させて)の矯正位置を調整する必要があったが、前記の構成によれば、管を回転させながら矯正するため、従来のような管の矯正位置の調整作業が不要となり、作業時間を大幅に削減することができる。
【0019】
また前記の方法によれば、矯正機構の移動の速度を上述のように規定することにより、前記所定位置に対して加えていた荷重を緩慢に減少させることができる。このように荷重をゆっくり減少させることにより、管の変形に伴う残留応力が連続的に打ち消しあって残留応力をゼロに導くことができ、管をより真っ直ぐに矯正することができる。一方で、前記管の前記所定位置に対して荷重をかける第1工程では急速に、すなわち荷重を減少させる際の移動速度より速く荷重を加える。そのため、工程によって適した移動速度に調整することで、矯正に要する処理時間を最短にすることができる。
【0020】
また本発明の一態様に係る矯正方法は、前記の方法において、前記管は、一方の管端に受口を有し、前記受口と他方の管端との間に直管部を有しており、前記第1工程は、前段工程と、前記前段工程の後に行われる後段工程とを含み、前記前段工程では、前記受口と前記直管部との境界部分を前記所定位置として、前記境界部分に前記矯正機構を接触させ、前記後段工程では、前記管の管軸方向における中央部分を前記所定位置として、前記中央部分に前記矯正機構を接触させる。
【0021】
前記の方法によれば、受口を有する管において曲がり量が比較的大きい前記境界部分(首部と称されることもある)に対して先ず荷重をかけることにより、効果的に管の矯正を行うことができる。また、長さのある管においては管軸方向における中央部分が撓みやすいため、前記境界部分の荷重によって或る程度矯正された管の中央部分に対して荷重をかけることにより、より効果的に管の矯正が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、従前の矯正機構よりも作業効率を高めた管の矯正装置および矯正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る矯正装置を含む管矯正ラインの平面図である。
【
図2】
図1に示す矯正装置が矯正する対象の管の側面図であり、部分的に断面を示す。
【
図5】
図1に示す矯正装置の管回転部を管軸方向に見た側面図である。
【
図6】
図4に示す切断線A-A´における第2矯正部材40の矢視断面図である。
【
図7】
図1に示す矯正装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図8】管の製造ラインで製造され、矯正装置によって矯正される前の状態の管であり、曲がり変形が生じている状態の管の図である。
【
図9】曲がり変形の管に生じている残留応力と、矯正装置によって新たに係る応力(残留応力)との関係を、管の管軸に垂直な断面を用いて模式的に説明した図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る矯正方法のフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態の矯正装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態の矯正装置および矯正方法について、図面を用いて以下に説明する。なお、図面には、XYZ系の三次元座標を併せて示しており、XY平面は水平面を規定し、Z軸は鉛直方向(Z軸負方向が重力方向)を規定している。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る矯正装置1を含む管矯正ライン2を示した平面図である。
図1に示す管矯正ライン2は、管の製造ラインの一部に組み込むことが可能である。
図1に示す例では、管軸がX軸方向に延びた3本の管100が、搬送装置3によって管矯正ライン2をY軸正方向に順次搬送されている様子を示している。矯正装置1は、搬送装置3よりもY軸正方向側に配設されている。なお、搬送装置3の構成は、特に制限はなく、周知の構成を使用できる。
【0026】
<矯正対象の管>
ここで先ず、本実施形態の矯正装置1によって矯正される対象の管100について、
図2を用いて説明する。
図2では、説明の便宜上、一部分が破断図になっており、ハッチングを施した部分が管100の切断面を表す。
【0027】
管100は、
図2に示すように、一方の管端に受口100bが形成されており、他方の管端に挿し口100cが形成されている。受口100bと挿し口100cとの間には、略一直線に延びており、内周面の径が管軸に沿って略一定である直管部100aが形成されている。なお、挿し口100cは、内周面の径が管軸に沿って略一定であり、当該径が直管部100aの内周面の径と同一であるため、直管部100aの一部として含めることが可能である。
【0028】
受口100bは、他の管の挿し口を挿入する形状を有する。また、受口100bの内周面には、管100が他の管と連結された際に離脱することを防止するためのロックリングを装着するための環状溝が形成されている。受口100bおよび挿し口100cによって、管100を他の管と連結することができる。
【0029】
以上のような構成の管100としては、例えば、水道用耐震管等として利用される公知のダクタイル鉄管がある。しかし、これに限定されるものではない。このような構成の管100が、管の製造ラインで製造され、当該製造ラインの途中に設けられた管矯正ライン2に搬送されて搬送装置3によって矯正装置1まで搬送される。
【0030】
ところで、管100は、管軸が直線となっていることが理想的であるが、管の製造ラインにおいて曲がり(撓み)が発生する場合がある。また、ダクタイル鉄管のような管100は、断面が真円であることが理想的であるが、真円度が低下して楕円になっている場合がある。本明細書では、これら曲がり(撓み)および楕円を管100の変形と総称し、この変形を矯正するための装置として、矯正装置1を提供する。
【0031】
<矯正装置>
図3は、矯正装置1の側面図を示し、矯正装置1に管100が搬送されている状態の側面図である。矯正装置1は、管回転部11と、矯正機構12と、制御部13とを備えている。以下、これらの構成について説明する。
【0032】
(管回転部11)
管回転部11は、管100を管軸を中心として回転させる。管回転部11は、一例としては、回転ローラーが挙げられる。
図3に示すように、管回転部11は、管100の受口100b側と、挿し口100c側とにおいて、管100を下方から支持しつつ、管100の外周面に接触した状態で回転機構(回転ローラー)を回転させることにより、管100を管軸を中心として回転させる。
【0033】
図4は、
図3に示す二点破線の枠囲み内の拡大図であり、
図5は、
図4に示す管回転部11をX軸方向に見た側面図である。
【0034】
管回転部11は、
図5に示すように、2つの回転ローラー11a,11bと、これら2つの回転ローラー11a,11bを回転駆動させる駆動部11kとを具備している。2つの回転ローラー11a,11bは、X軸方向に沿って設けられた回転軸を互いに平行にして隣り合っており、回転ローラー11aのローラー面と回転ローラー11bのローラー面との境目に形成される谷部に、X軸方向に管軸を有する管100を載置する構成である。駆動部11kは、2つの回転ローラー11a,11bを同一方向に回転させる。これにより、管100を、管軸を中心に回転させることができる。
【0035】
このように2つの回転ローラー11a,11bを用いて管を回転させる構成とすれば、異なる管径を有する管であっても2つの回転ローラー11a,11bを共通して使用することができ、設備コストを抑えることが可能である。
図4および
図5にも、異なる管径を有する2種類の管を仮想的に示している。
【0036】
管回転部11による管100の回転速度(単位rpm)は、例えば20~95rpmとすることができ、好ましくは60~95rpmとすることができる。なお、管100の1回転当たりの時間で見れば、0.6~3秒/回転とすることができ、好ましくは0.6~1秒/回転とすることができる。
【0037】
(矯正機構12)
矯正機構12は、第1接触ローラー22(接触ローラー)を有する第1矯正部材20と、第2接触ローラー42(接触ローラー)を有する第2矯正部材40とを具備する。
【0038】
第1矯正部材20と第2矯正部材40とは、管100の管軸方向(X軸方向)に沿って異なる箇所に設けられている。具体的には、第1矯正部材20は、管100の管軸方向における中央部分100m(所定位置)に第1接触ローラー22を接触させるために、中央部分100mの近傍に配設されている。なお、第1接触ローラー22の配設位置は、中央部分100mの近傍に限らない。また、第2矯正部材40は、受口100bと直管部100aとの境界部分100p(
図2)(所定位置)に第2接触ローラー42を接触させるために、境界部分100pの近傍に配設されている。なお、境界部分100pは、首部と称されることもある。
【0039】
第1接触ローラー22および第2接触ローラー42は、管100の外周面の所定位置に接触可能であり、管回転部11による管100の回転に従動して回転可能である。第1接触ローラー22は、第1矯正部材20の下端部分に配設されており、第2接触ローラー42は、第2矯正部材40の下端部分に配設されている。
【0040】
図6は、
図4に示す切断線A-A´における第2矯正部材40の矢視断面図であり、第2矯正部材40を第2接触ローラー42の位置でYZ平面に沿って切断した様子である。
図6には、説明の便宜上、管回転部11の回転ローラー11a,11bを併せて示す。なお、第1矯正部材20と第2矯正部材40とは同一構成であるため、ここでは、第2矯正部材40の構成のみを説明し、第1矯正部材20の構成については説明を省略する。
【0041】
第2矯正部材40は、第2接触ローラー42と、ローラー支持部43と、矯正駆動部44とを備える。
【0042】
第2接触ローラー42は、
図6に示すように、Y方向に並んで2つ配されている。各第2接触ローラー42は、従動ローラーであり、管回転部11によって回転する管100に各第2接触ローラー42の外周面を当接させることによって、X軸方向に延設されている回転軸を中心にそれぞれ回転する。Y軸方向に並んだ2つの第2接触ローラー42は、管100の回転に従動して回転しながら、管100の外周面のうちの管軸より上の領域を、Y方向に挟持するような配置となっている。これにより、管回転部11に載置させた管100が上方に位置がずれないように支持している。
【0043】
第2接触ローラー42の周面は、荷重に耐えられる材質から構成される。具体的な材質としては、鉄が挙げられるが、これに限らず硬度が極めて高い材料であれば使用可能である(例えば硬質樹脂等)。更に第2接触ローラー42の周面形状は、管100の外周面への接触によって、外周面を傷付けないよう円弧状に構成することが好ましい。
【0044】
ローラー支持部43は、第2接触ローラー42を支持する。ローラー支持部43には、矯正駆動部44に連結されている。
【0045】
矯正駆動部44は、ローラー支持部43をZ軸に沿って正負方向に移動させることによって、Z軸に沿って正負方向に第2接触ローラー42を移動させる。矯正駆動部44は、制御部13による制御を受けて、ローラー支持部43を移動させる。
【0046】
第1矯正部材20および第2矯正部材40は何れも、下端に接触ローラーを具備し、当該接触ローラーを上下動させるラムであると換言することができる。
【0047】
(制御部13)
制御部13は、矯正機構12の位置、すなわち第1矯正部材20および第2矯正部材40の位置、を移動制御する。具体的には、制御部13は、管回転部11によって回転している状態の管100の先述した所定位置のそれぞれに対し、第1接触ローラー22および第2接触ローラー42を接触させて、各所定位置に所定の大きさの荷重が加わるよう、第1矯正部材20および第2矯正部材40の位置を制御する。更に、制御部13は、矯正機構12(第1接触ローラー22および第2接触ローラー42)を移動させるにあたり、先述した所定位置に至るまで移動の移動速度と、所定の大きさの荷重を加えた後に当該所定位置から退避するための移動の移動速度とを制御する。
【0048】
制御部13は、第1矯正部材20および第2矯正部材40の位置を互いに独立して制御するが、制御内容として同一であるため、以下では、第1矯正部材20の位置の移動制御について説明し、第2矯正部材40の位置の移動制御については特に説明しない限り第1矯正部材20の位置の移動制御と同様であるため説明を省略する。
【0049】
図7は、制御部13の構成を示すブロック図である。制御部13は、第1矯正部材20の第1接触ローラー22の位置を制御する位置調整部131と、先述の移動速度に関し、第1接触ローラー22の位置を移動させる速度を調整する移動速度調整部132とを備えている。なお、本実施形態では、位置調整部131と、移動速度調整部132とに構成を分けているが、本発明の一態様はこれに限定されず、本実施形態で説明する機能を実現する構成であればよい。
【0050】
位置調整部131は、第1接触ローラー22の位置に関して、規定の位置になるよう調整する。第1接触ローラー22の位置としては、次に挙げる位置がある;
・管100の上方の位置であり、管100の中央部分100m(所定位置)に向けて第1接触ローラー22の移動を開始する位置(移動開始位置)
・管100の中央部分100m(所定位置)の外周面に対して接触を開始する位置(接触位置)
・上述した所定の大きさの荷重が管100に対してかかるときの位置(荷重位置)
・荷重をかけた後に管100の中央部分100m(所定位置)の外周面に対して非接触状態となる位置(解除位置)
・管100の中央部分100m(所定位置)近傍から退避した管100の上方の位置(退避位置)。
【0051】
位置調整部131は、所定のタイミングで、第1接触ローラー22が、移動開始位置、接触位置、荷重位置、解除位置、退避位置の順で位置するように調整する。
【0052】
位置調整部131は、第1接触ローラー22が荷重位置にあるとき、所定期間、当該位置にある状態を維持する。所定期間とは、一例として、少なくとも管100の一回転分の時間である。
【0053】
位置調整部131によって第1接触ローラー22が荷重位置にあるとき、管100の中央部分100mには、所定の大きさの荷重が及んでいる。一例としては、荷重は、1.5~3トンである。
【0054】
これら既定の位置については、搬送装置3によって管矯正ライン2より上流から順に搬送される全ての管100に共通のものであってよい。しかしながら、全ての管100に共通ではなく、管100毎に管の状態を何らかの検知手段によって検知して、その検知結果に基づいて決定されるものであってもよい。検知手段を用いる例としては、管100に所定の大きさの荷重がかかっているかを、第1矯正部材20の荷重を検知することによって特定して、更に第1矯正部材20を更に押し込む必要があるかを判定し、正確な荷重位置を特定する態様があり得る。
【0055】
移動速度調整部132は、位置調整部131によって位置調整される規定の位置から他の規定の位置まで移動する移動速度を制御する。すなわち、先述した規定の位置に基づけば、
・移動開始位置から接触位置までの移動速度V1
・接触位置から荷重位置までの移動速度V2
・荷重位置から解除位置までの移動速度V3
・解除位置から退避位置までの移動速度V4
の各移動速度V1~V4を、移動速度調整部132が調整する。
【0056】
具体的には、移動速度調整部132は、上述の移動速度V2と移動速度V3との関係が、
V2>V3
となるように制御する。
【0057】
また、矯正装置1による矯正作業の効率化を考慮すれば、移動速度調整部132は、移動速度V1および移動速度V4を移動速度V1~V4のうちで最速に設定する。
【0058】
また、矯正装置1による矯正作業の効率化を考慮すれば、移動速度調整部132は、移動速度V1と移動速度V2との関係を、
V1≧V2
となるように制御する。
【0059】
要するに、移動速度V3が移動速度V1,V2,V4よりも遅くなるよう設定する。移動速度V3は、一例として、管100の1回転あたり5~7mm/秒とすることができるが、これに限らない。
【0060】
なお、制御部13は、上述した規定の位置に関して、第1接触ローラー22の位置を三次元的に特定しながら制御するのではない。一例として制御部13は、第1接触ローラー22の或る位置(例えば移動開始位置にある第1接触ローラー22の位置)を予め特定して、その位置からは、規定の移動速度と経過時間とを計測することによって、上述した規定の位置に第1接触ローラー22が位置するようにしている。
【0061】
制御部13は、上述と同様の処理を、第2矯正部材40に対して行うが、第1矯正部材20の矯正処理の開始のタイミングと、第2矯正部材40の矯正処理の開始のタイミングとは、後述するように異なる。なお、第1矯正部材20と第2矯正部材40とでは、上述した各移動速度の少なくとも一つが互いに異なる速度であってもよいが、移動速度V1~V4の関係性については、上述と同一であることが好ましい。なお、
図3では、第1矯正部材20および第2矯正部材40のそれぞれに対して制御部13を設けているが、この態様に限らず、1つの制御部13によって第1矯正部材20および第2矯正部材40を制御してもよい。なお、第2矯正部材40の第2接触ローラー42に関しては、管100の境界部分100pに対して、所定の大きさの荷重として例えば3~6トンの荷重をかけるように構成されている。
【0062】
<矯正の原理>
図8および
図9を用いて、管100の矯正原理を説明する。
図8は、管100の変形の一例である曲がりが生じている管100の図である。管を製造する際の熱処理等により
図8に示すように管100の中央部分に曲がりが生じている場合、管100には、矢印の方向に変形が生じるような残留応力がかかっている。
【0063】
本実施形態の矯正装置1は、このような管100を管回転部11によって回転させている間に、矯正機構12によって管100の外周面から管軸に向かって第1接触ローラー22を押し込む。このとき、
図8に示した残留応力よりもはるかに強い負荷で押し込む。これにより、
図9に示すように、管100の外周面に沿って均一な残留応力がかかった状態となる。そして、負荷を緩慢な速度で除いていくことによって、
図9の右側に示すように管軸を挟んで対称となる位置の残留応力同士が互いに打ち消し合ってほぼゼロになる。これにより、管100は、管の全長にわたって真っ直ぐに矯正される。管の曲がり量に関する情報は、過去に同等の製造ラインで製造された管から知り得るため、その情報を用いて押し込む量(距離)が設定される。
【0064】
本実施形態が矯正対象とする管100は、
図2に示したように受口100bを有している。このタイプの管100の場合、首部と称されることもある境界部分100pの曲がり量が大きいため、境界部分100pを、第2矯正部材40の第2接触ローラー42によって強い負荷で押し込むことで、効果的に管を全長にわたって真っ直ぐに矯正できるという知見を本発明者らは見出している。
【0065】
<矯正方法>
本実施形態における矯正方法は、上述の矯正装置1を用いて行う。
図10は、本実施形態の矯正方法の処理フローである。なお、矯正装置の処理フローは、制御部13(
図3)による制御フローと換言できる。
【0066】
上述のように、矯正機構12の第1矯正部材20と第2矯正部材40とは独立して制御することができるが、管100の受口100b側に位置する境界部分100pに対して(中央部分100mよりも)先に押し込むほうが良いことから、
図10に示すように、受口100b側の第2矯正部材40の処理フローを先行させている。なお、以下の処理フローは、管100が管軸を中心に回転している状態で行われる。
【0067】
具体的には、ステップS11として、制御部13によって、受口100b側の第2矯正部材40のZ軸負方向(第1方向)への移動を開始する。なお、管100の回転開始のタイミングは、ステップS11の前であっても、ステップS11と同時であっても、ステップS11の直後であってもよい。制御部13(移動速度調整部132)は、所定の移動速度V1で第2矯正部材40を下降させる。
【0068】
次にステップS12として、制御部13によって、第2矯正部材40の第2接触ローラー42が、管100の外周面の境界部分100pと接触して、更に、Z軸負方向(第1方向)に移動することで、管100を押し込んで管100に所定の大きさの荷重がかかる。このとき、制御部13(移動速度調整部132)は、接触位置から荷重位置まで所定の移動速度V2で第2矯正部材40を移動(下降)させる。一例として、第2矯正部材40の第2接触ローラー42は、境界部分100pに対して、6トンの荷重を付与する。
【0069】
次にステップS13として、制御部13は、第2矯正部材40の第2接触ローラー42が、管100に対して所定の荷重を付与している状態で所定の時間維持する。これにより、管100が、境界部分100pを中心として矯正される。
【0070】
次にステップS14として、制御部13は、第2矯正部材40の第2接触ローラー42による荷重の付与を解除するべく、第2矯正部材40のZ軸正方向(第2方向)への移動(上昇)を開始する。このとき、制御部13(移動速度調整部132)は、荷重位置から管100と第2接触ローラー42との接触が解除される解除位置まで、所定の移動速度V3で第2矯正部材40を移動(上昇)させる。所定の移動速度V3は、第2矯正部材40の移動速度V1,V2,V4よりも遅い。
【0071】
次にステップS15として、制御部13は、第2矯正部材40の第2接触ローラー42を解除位置から更に移動させて、退避位置まで移動させる。このとき、制御部13(移動速度調整部132)は、解除位置から退避位置まで所定の移動速度V4で第2矯正部材40を移動させる。退避位置は、Z軸方向に解除位置と同軸上にあってもよく、これに代えて、例えば
図4において点線で示すように、第2矯正部材40がY軸に沿った中心軸を中心として、遠心端側の第2接触ローラー42を回動させてもよく、回動後の位置を退避位置としてもよい。
【0072】
以上が第2矯正部材40側の処理フローである。この処理フローに遅れて、管100の中央部分100mに対して荷重を付与する第1矯正部材20の処理フローが始まる。
【0073】
第1矯正部材20の処理フローの各ステップは、上述のステップS11~S15と同じである。第1矯正部材20が、制御部13によって、Z軸負方向(第1方向)への移動を開始するステップS21は、一例として、上述のステップS12と同時期に行う。しかし、これに限らない。
【0074】
次にステップS22として、制御部13によって、第1矯正部材20の第1接触ローラー22が、管100の外周面の中央部分100mと接触して、更に、Z軸負方向(第1方向)に移動することで、管100を押し込んで管100に所定の大きさの荷重がかかる。このとき、制御部13(移動速度調整部132)は、接触位置から荷重位置まで所定の移動速度V2で第1矯正部材20を移動(下降)させる。一例として、第1矯正部材20の第1接触ローラー22は、中央部分100mに対して、3トンの荷重を付与する。
【0075】
次にステップS23として、制御部13は、第1矯正部材20の第1接触ローラー22が、管100に対して所定の荷重を付与している状態で所定の時間維持する。これにより、管100が、中央部分100mを中心として矯正される。
【0076】
次にステップS24として、制御部13は、第1矯正部材20の第1接触ローラー22による荷重の付与を解除するべく、第1矯正部材20のZ軸正方向(第2方向)への移動(上昇)を開始する。このとき、制御部13(移動速度調整部132)は、荷重位置から管100と第1接触ローラー22との接触が解除される解除位置まで、所定の移動速度V3で第1矯正部材20を移動(上昇)させる。所定の移動速度V3は、第1矯正部材20の移動速度V1,V2,V4よりも遅い。
【0077】
次にステップS25として、制御部13は、第1矯正部材20の第1接触ローラー22を解除位置から更に移動させて、退避位置まで移動させる。このとき、制御部13(移動速度調整部132)は、解除位置から退避位置まで所定の移動速度V4で第2矯正部材40を移動させる。
【0078】
以上の各ステップが完了すると、管100の回転を停止させて、一連の矯正方法の処理が完了する。なお、
図10では、第2矯正部材40側の各ステップと、第1矯正部材20側の各ステップとにおいて、それぞれの次ステップへの進行タイミングが揃っているが、これに限らない。
【0079】
このように、本実施形態の矯正方法は、管を管軸を中心として回転させる工程(ステップS0)と、回転中の管100の外周面の所定位置に矯正機構12の第1接触ローラー22および第2接触ローラー42を接触させて、矯正機構12を所定方向(第1方向、Z軸負方向)に移動させることによって、境界部分100pおよび中央部分100m(所定位置)に所定の大きさの荷重を加える第1工程(ステップS12,S22)と、当該第1工程の後に、矯正機構12を当該所定方向(第1方向、Z軸負方向)とは反対方向(第2方向、Z軸正方向)に移動させることによって、当該荷重を徐々に減少させる第2工程(ステップS14,S24)と、を含み、当該第2工程(ステップS14,S24)の矯正機構12の移動の速度V3を、第1工程の矯正機構12の移動の速度V2よりも遅くする。
【0080】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態によれば、矯正装置1を用いて上述のように管100を矯正することにより、第1接触ローラー22および第2接触ローラー42の位置(Z軸方向における位置)を制御し、回転している管100の外周面の所定位置(中央部分100mおよび境界部分100p)に当該接触ローラーによって荷重をかける。これにより、管100には外周面に沿って均等な荷重がかかり、変形している管100を全長にわたって矯正することができる。なお、本実施形態では、変形の一例として曲がりを挙げているが、断面が真円でなく楕円に変形した管100であっても、以上の矯正装置1を用いることにより管100を全長にわたって矯正することができる。
【0081】
また、管の中央部分100mおよび境界部分100pに第1接触ローラー22および第2接触ローラー42によって荷重をかけることで該管の変形を管の全長にわたって矯正することから、変形箇所を矯正前に特定する検査や、変形の有無を判断する検査を省略できる。そのため、そのような検査機構を設置する必要がなく、矯正を行う設備を従前よりも縮小化することができる。また、管の矯正工程内におけるそのような検査に要する時間を省略できるため、管矯正の作業効率の向上を図ることができる。なお、変形の有無を判断する検査機構を、矯正装置1の下流に追加することも可能である。
【0082】
更に、従来の矯正方法においては、変形箇所の検査結果に基づき管(を回転させて)の矯正位置を調整する必要があったが、前記の構成によれば、管回転部11により管を回転させながら矯正するため、従来のような管の矯正位置の調整作業が不要となり、作業時間が大幅に削減することができる。
【0083】
また前記の構成によれば、前記所定位置に接触する構造が管の回転に従動して回転する接触ローラーであるため、荷重を加える際に管の外周面を傷つけずに荷重を加えることができる。
【0084】
また本実施形態の矯正方法によれば、矯正機構の移動の速度を上述のように規定することにより、前記所定位置に対して加えていた荷重を緩慢に減少させることができる。このように荷重をゆっくり減少させることにより、管の変形に伴う残留応力が連続的に打ち消しあって残留応力をゼロに導くことができ、管を全長にわたってより真っ直ぐに矯正することができる。一方で、前記管の前記所定位置に対して荷重をかける第1工程では急速に、すなわち荷重を減少させる際の移動速度より速く荷重を加える。そのため、工程によって適した移動速度に調整することで、矯正に要する処理時間を最短にすることができる。
【0085】
また、本実施形態の矯正方法によれば、先述した第1工程(ステップS12,S22)は、前段工程(ステップS12)と、前段工程(ステップS12)の後に行われる後段工程(ステップS22)とを含み、前段工程(ステップS12)では、受口100bと直管部100aとの境界部分100pを所定位置として、前記境界部分100pに前記矯正機構を接触させ、後段工程(ステップS22)では、管100の管軸方向における中央部分100mを所定位置として、中央部分100mに矯正機構12を接触させる。これにより、受口を有する管において曲がり量が比較的大きい境界部分100pに対して先ず荷重をかけることにより、効果的に管の矯正を行うことができる。また、長さのある管においては管軸方向における中央部分100mが撓みやすいため、境界部分100pの荷重によって或る程度矯正された管の中央部分100mに対して荷重をかけることにより、より効果的に管100の矯正が可能となる。
【0086】
<変形例>
上述の実施形態では、管回転部11に管100を載置し、その管100の上方から矯正機構12が下降して管100の外周面に第1および第2接触ローラー22,42を接触させた状態で更に下方に矯正機構12が移動して管100を下方に押し込む態様である。しかし、本発明の一態様は、管の管軸の向きは
図1に示すような水平方向に限らず、また、矯正機構12の移動方向もZ軸方向に限らない。
【0087】
図11に一変形例を示す。
図11は、管軸をX軸と平行にして管100の外周面を四方から支持する管回転部11を具備した態様を示している。管回転部11は、管100を上下方向および左右方向から支持できるよう、4つの回転ローラー11a、11b、11c、11dを備える。このように四方から管100を挟むようにして支持しているため、管100は、矯正機構(
図11では第1接触ローラー22を示す)がどの方向に荷重を掛けても管の曲がりを矯正することが可能であり、
図11に示す変形例では、Z軸正方向に第1接触ローラー22が管100に対して荷重を付与している。この変形例においても、管100は全長にわたって変形が矯正される。
【0088】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 矯正装置
2 管矯正ライン
3 搬送装置
11 管回転部
11a,11b,11c,11d 回転ローラー
11k 駆動部
12 矯正機構
13 制御部
20 第1矯正部材(矯正機構)
22 第1接触ローラー(接触ローラー)
40 第2矯正部材(矯正機構)
42 第2接触ローラー(接触ローラー)
43 ローラー支持部
44 矯正駆動部
100a 直管部
100b 受口
100c 挿し口(他方の管端)
100m 中央部分
100p 境界部分
131 位置調整部
132 移動速度調整部
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の軸方向全体の変形を矯正する矯正装置であって、
前記管を管軸を中心として所定の回転速度で回転させる管回転部と、
前記管の外周面の所定位置に接触可能であり、前記管の前記回転に従動して回転可能な接触ローラーを具備した矯正機構と、
前記管の外周面の所定位置に対する前記管の径方向への前記接触ローラーの押し込み量と、前記接触ローラーの位置とを制御する制御部であって、前記接触ローラーの位置を規定の位置から他の規定の位置まで管の径方向に沿って移動させる速度を調整する移動速度調整部を有する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記管回転部によって前記所定の回転速度で回転している状態の前記管の前記所定位置に対し、前記接触ローラーを接触させて前記所定位置に所定の大きさの荷重が加わるよう、前記接触ローラーの位置を制御するものであり、
前記制御部は、前記接触ローラーの位置が前記規定の位置になるように調整する位置調整部を有し、
前記規定の位置としては、
前記所定の大きさの荷重が管に対してかかるときの荷重位置と、
前記所定の大きさの荷重をかけた後に管の所定位置の外周面に対して非接触状態となる解除位置と、を少なくとも含み、
前記移動速度調整部が、前記位置調整部が予め調整した前記荷重位置から前記解除位置まで移動する際の前記接触ローラーの移動速度を、他の区間を移動する際の前記接触ローラーの移動速度よりも遅い緩慢な速度であって、前記接触ローラーの前記管に対する押し込みにより前記管に生じた負荷を除き、管軸を挟んで対称となる位置の残留応力同士を互いに打ち消し合いほぼゼロにして、前記管の軸方向全長にわたって真っ直ぐに矯正することができる速度に、調整する、
ことを特徴とする矯正装置。
【請求項2】
管の変形を矯正する矯正装置であって、
前記管を管軸を中心として回転させる管回転部と、
前記管の外周面の所定位置に接触可能であり、前記管の前記回転に従動して回転可能な接触ローラーを具備した矯正機構と、
前記矯正機構の位置を移動制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記管回転部によって回転している状態の前記管の前記所定位置に対し、前記接触ローラーを接触させて前記所定位置に所定の大きさの荷重が加わるよう、前記矯正機構の位置を制御するものであり、
前記管は、一方の管端に受口を有し、前記受口と他方の管端との間に直管部を有しており、
前記矯正機構は、前記接触ローラーとして第1接触ローラーを具備した第1矯正部材と、前記第1矯正部材とは前記管の管軸方向に沿って異なる箇所に設けられ、前記第1接触ローラーとは異なる第2接触ローラーを前記接触ローラーとして具備した第2矯正部材とを有し、
前記第1矯正部材は、前記管の管軸方向における中央部分を前記所定位置として、前記中央部分に前記第1接触ローラーを接触させ、
前記第2矯正部材は、前記受口と前記直管部との境界部分を前記所定位置として、前記境界部分に前記第2接触ローラーを接触させる、
ことを特徴とする矯正装置。
【請求項3】
管を管軸を中心として回転させる工程と、
回転中の前記管の外周面の所定位置に矯正機構を接触させて、前記矯正機構を所定方向に移動させることによって、前記所定位置に所定の大きさの荷重を加える第1工程と、
前記第1工程の後に、前記矯正機構を前記所定方向とは反対方向に移動させることによって、前記荷重を徐々に減少させる第2工程と、
を含み、
前記第2工程の前記矯正機構の前記移動の速度を、前記第1工程の前記矯正機構の前記移動の速度よりも遅くする、
ことを特徴とする矯正方法。
【請求項4】
前記管は、一方の管端に受口を有し、前記受口と他方の管端との間に直管部を有しており、
前記第1工程は、前段工程と、前記前段工程の後に行われる後段工程とを含み、
前記前段工程では、前記受口と前記直管部との境界部分を前記所定位置として、前記境界部分に前記矯正機構を接触させ、
前記後段工程では、前記管の管軸方向における中央部分を前記所定位置として、前記中央部分に前記矯正機構を接触させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の矯正方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の軸方向全体の変形を矯正する矯正装置であって、
前記管を管軸を中心として所定の回転速度で回転させる管回転部と、
前記管の外周面の所定位置に接触可能であり、前記管の前記回転に従動して回転可能な接触ローラーを具備した矯正機構と、
前記管の外周面の所定位置に対する前記管の径方向への前記接触ローラーの押し込み量と、前記接触ローラーの位置とを制御する制御部であって、前記接触ローラーの位置を規定の位置から他の規定の位置まで管の径方向に沿って移動させる速度を調整する移動速度調整部を有する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記管回転部によって前記所定の回転速度で回転している状態の前記管の前記所定位置に対し、前記接触ローラーを接触させて前記所定位置に所定の大きさの荷重が加わるよう、前記接触ローラーの位置を制御するものであり、
前記制御部は、前記接触ローラーの位置が前記規定の位置になるように調整する位置調整部を有し、
前記規定の位置としては、
前記所定の大きさの荷重が管に対してかかるときの荷重位置と、
前記所定の大きさの荷重をかけた後に管の所定位置の外周面に対して非接触状態となる解除位置と、を少なくとも含み、
前記移動速度調整部が、前記位置調整部が予め調整した前記荷重位置から前記解除位置まで移動する際の前記接触ローラーの移動速度を、他の区間を移動する際の前記接触ローラーの移動速度よりも遅い緩慢な速度であって、前記接触ローラーの前記管に対する押し込みにより前記管に生じた負荷を除き、管軸を挟んで対称となる位置の残留応力同士を互いに打ち消し合いほぼゼロにして、前記管の軸方向全長にわたって真っ直ぐに矯正することができる速度に、調整する、
ことを特徴とする矯正装置。
【請求項2】
前記管は、一方の管端に受口を有し、前記受口と他方の管端との間に直管部を有しており、
前記矯正機構は、前記接触ローラーとして第1接触ローラーを具備した第1矯正部材と、前記第1矯正部材とは前記管の管軸方向に沿って異なる箇所に設けられ、前記第1接触ローラーとは異なる第2接触ローラーを前記接触ローラーとして具備した第2矯正部材とを有し、
前記第1矯正部材は、前記管の管軸方向における中央部分を前記所定位置として、前記中央部分に前記第1接触ローラーを接触させ、
前記第2矯正部材は、前記受口と前記直管部との境界部分を前記所定位置として、前記境界部分に前記第2接触ローラーを接触させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の矯正装置。
【請求項3】
管の軸方向全体の変形を矯正する矯正方法であって、
前記管を管軸を中心として所定の回転速度で回転させる管回転工程と、
前記管の外周面の所定位置に接触可能であり、前記管回転工程による前記管の前記回転に従動して回転可能な接触ローラーを制御する制御工程と、
を含み、
前記制御工程では、前記管の外周面の所定位置に対する前記管の径方向への前記接触ローラーの押し込み量と、前記接触ローラーの位置とを制御し、更に、前記接触ローラーの位置を規定の位置から他の規定の位置まで管の径方向に沿って移動させる速度を調整し、
前記制御工程では、前記管回転工程によって前記所定の回転速度で回転している状態の前記管の前記所定位置に対し、前記接触ローラーを接触させて前記所定位置に所定の大きさの荷重が加わるよう、前記接触ローラーの位置を制御し、
前記制御工程では、前記接触ローラーの位置が前記規定の位置になるように調整し、
前記規定の位置としては、
前記所定の大きさの荷重が管に対してかかるときの荷重位置と、
前記所定の大きさの荷重をかけた後に管の所定位置の外周面に対して非接触状態となる解除位置と、を少なくとも含み、
前記制御工程では、予め調整した前記荷重位置から前記解除位置まで移動する際の前記接触ローラーの移動速度を、他の区間を移動する際の前記接触ローラーの移動速度よりも遅い緩慢な速度であって、前記接触ローラーの前記管に対する押し込みにより前記管に生じた負荷を除き、管軸を挟んで対称となる位置の残留応力同士を互いに打ち消し合いほぼゼロにして、前記管の軸方向全長にわたって真っ直ぐに矯正することができる速度に、調整する、
ことを特徴とする矯正方法。