(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028038
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】推定装置および製造条件最適化システム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240222BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240222BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G06N20/00
G05B19/418 Z
G05B23/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131348
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中野 可也
【テーマコード(参考)】
3C100
3C223
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA57
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C100BB33
3C223AA11
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF05
3C223FF26
3C223GG01
(57)【要約】
【課題】関係式を推定する推定装置と推定された関係式を利用するコントローラとの間での演算子の不整合を防止する。
【解決手段】推定装置(10)は、所定のコントローラ(21)が利用可能な演算子からなる演算子群を取得する取得処理と、入力値(x1~xn)と出力値(y)との関係を表す関係式(F)であって、前記取得処理にて取得された演算子群から選択された演算子により構成される関係式を推定する推定処理と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
所定のコントローラが利用可能な演算子からなる演算子群を取得する取得処理と、
入力値と出力値との関係を表す関係式であって、前記入力値及び前記出力値の各々に対応する変数、及び、前記取得処理にて取得された演算子群から選択された演算子により構成される関係式を推定する推定処理と、を実行する、
ことを特徴とする推定装置。
【請求項2】
前記推定処理において、前記プロセッサは、DSR(Deep Symbolic Regression)を用いて前記関係式を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記推定処理にて推定された関係式を前記所定のコントローラに提供する提供処理を更に実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記所定のコントローラは、製造装置に内蔵されたPLC(Programmable Logic Controller)であり、
前記入力値は、製造条件を表す値であり、
前記出力値は、前記製造装置を用いて前記製造条件の下で製造された製品の品質、又は、前記製造装置を用いて前記製造条件の下で製品を製造したときの歩留まりを表す値である、
ことを特徴とする請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記製造条件と前記品質又は前記歩留まりとの組み合わせを、前記製造装置又は前記製造装置と同種の製造装置から収集する収集処理を更に実行し、
前記推定処理において、前記プロセッサは、前記収集処理にて収集した組み合わせを教師データとして前記関係式を推定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
1又は複数の製造装置と、推定装置と、を含む製造条件最適化システムであって、
推定装置は、(1)前記製造装置に内蔵された所定のコントローラが利用可能な演算子からなる演算子群を取得する取得処理と、(2)製造条件を表す入力値と前記製造装置を用いて前記製造条件の下で製造された製品の品質、又は、前記製造装置を用いて前記製造条件の下で製品を製造したときの歩留まりを表す出力値との関係を表す関係式であって、前記入力値及び前記出力値の各々に対応する変数、及び、前記取得処理にて取得された演算子群から選択された演算子により構成される関係式を推定する推定処理と、(3)前記推定処理にて推定された関係式を前記所定のコントローラに提供する提供処理と、を実行し、
前記製造装置は、前記推定装置から取得した関係式を用いて、前記製造条件の最適化を行う、
ことを特徴とする製造条件最適化システム。
【請求項7】
前記推定装置は、前記製造条件と前記品質又は前記歩留まりとの組み合わせを、前記製造装置から収集する収集処理を更に実行し、
前記推定処理において、前記推定装置は、前記収集処理にて収集した組み合わせを教師データとして前記関係式を推定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造条件最適化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置および製造条件最適化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
何らかの条件(入力値)に対して得られる結果(出力値)との関係を表す関係式を推定することがある。特許文献1は、予測モデルを用いて、入力データから出力データを予測する装置を開示する。
【0003】
ここで、例えば、関係式が製造条件と製造結果の関係を表すような場合、関係式が、製品の製造のために用いられることがある。このような場合、製造装置を制御するコントローラに関係式を入力することが必要となる。
【0004】
しかし、コントローラ等の自由度が小さく、関係式中に使用可能な演算子が限定されることがある。このときには、推定した関係式を用いることが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、関係式を推定する推定装置と推定された関係式を利用するコントローラとの間での演算子の不整合を防止するための推定装置および製造条件最適化システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、所定のコントローラが利用可能な演算子からなる演算子群を取得する取得処理と、入力値と出力値との関係を表す関係式であって、前記入力値及び前記出力値の各々に対応する変数、及び、前記取得処理にて取得された演算子群から選択された演算子により構成される関係式を推定する推定処理と、を実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、関係式を推定する推定装置と推定された関係式を利用するコントローラとの間での演算子の不整合を防止するための推定装置および製造条件最適化システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る製造条件最適化システムの構成を表す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る製造条件最適化方法の一例を表すフロー図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る製造条件最適化システムの構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る製造条件最適化システム1の構成を表す図である。製造条件最適化システム1は、製造条件を最適化するためのシステムであり、推定装置10、及び製造装置20(1)、20(2)を有する。以下では、製造装置20(1)、20(2)を製造装置20とも表す。
【0011】
推定装置10は、プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、入出力IF(インタフェース)14、通信IF15、及びバス16を備えている。プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、入出力IF14、通信IF15は、バス16を介して相互に接続されている。
【0012】
プロセッサ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。
【0013】
一次メモリ12として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ12は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ13として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、FDD(Floppy(登録商標)Disk Drive)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ13は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ13は、推定装置10に内蔵されていてもよいし、入出力IF14又は通信IF15を介して推定装置10と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、推定装置10における記憶を2つのメモリ(一次メモリ12及び二次メモリ13)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、推定装置10における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ12として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ13として利用すればよい。
【0014】
二次メモリ13には、製造条件最適化プログラムP1及びモデルM1が格納(不揮発記憶)されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている製造条件最適化プログラムP1及びモデルM1を一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された製造条件最適化プログラムP1に含まれる命令に従って、後述する製造条件最適化方法S1に含まれる各ステップを実行する。一次メモリ12上に展開されたモデルM1は、後述する製造条件最適化方法S1をプロセッサ11が実行する際に利用される。
【0015】
入出力IF14には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力IF14としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力IF14に接続される入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、又は、これらの組み合わせが挙げられる。また、入出力IF14に接続される出力デバイスとしては、ディスプレイ、プリンタ、又は、これらの組み合わせが挙げられる。推定方法においてユーザに提供する情報は、これらの出力デバイスを介して推定装置10から出力される。
【0016】
通信IF15には、ネットワークを介して、他のコンピュータが有線接続又は無線接続される。通信IF15としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。
【0017】
製造装置20は、コントローラ21、センサ22を有し、物品(製品)を製造、または加工する。すなわち、製造は、物品を製造する狭義の製造のみではなく、物品の加工等、物品に何らかの変化を与える処理をも含む広義の概念で捉えられる。製造装置20として、例えば、熱処理装置(熱処理炉)、送風装置(送風機)、プレス装置(プレス機)、および水槽装置(水槽)を挙げることができる。熱処理装置は、コントローラ21として、温調PLCを、センサ22として、温度計、圧力計などを有し、物品を熱処理して、鍛造品、鋳造品などを製造する。送風装置は、コントローラ21として、モータ制御PLCを、センサ22として、風速計、温度計などを有し、モータを制御して送風を行うことで、製造現場での換気、集塵を行い、製品の製造に寄与する。プレス装置は、コントローラ21として、プレス制御PLCを、センサ22として、圧力計、振動計などを有し、物品をプレスして、プレス製品を製造する。水槽装置は、コントローラ21として、ポンプ制御PLCを、センサ22として、水量計などを有し、ポンプを制御して、物品が配置される槽内の水量を調節することで、製品の製造に寄与する。
【0018】
コントローラ21は、製造装置20を制御するための機器、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)である。コントローラ21は、次の式(1)に示される入力値x1~xn(xi)と、出力値(y)との関係を表す関係式Fを用いて、製造装置20を制御することができる。
y=F(x1,…,xn) ……式(1)
【0019】
入力値x1~xnは、例えば、製造条件を表す値である。例えば、製造装置20が、熱処理装置の場合、製造条件として、炉内雰囲気温度、保持時間、熱処理される物品の炭素等量を挙げることができる。また、製造装置20が、送風装置の場合、製造条件として、風速、ダクト内圧力、ダクト内温度、大気圧を挙げることができる。出力値yは、製造された製品の評価結果、例えば、(1)所定の製造条件の下で製造された製品の品質、又は、(2)製造装置20を用いて所定の製造条件の下で製品を製造したときの歩留まりを表す値である。後述のように、コントローラ21は、関係式Fを用いて、製造条件を最適化し、最適化された製造条件での製品の製造を制御できる。
【0020】
関係式Fは、入力値x1,…,xn及び出力値yの各々に対応する変数(x1,…,xn、y)、及び、演算子により構成される。ここで、演算子は、所定の演算子群から選択される範囲に限定され、全ての演算子が自由に用いられる訳ではない。例えば、製造装置20が、熱処理装置の場合、所定の演算子群として、「+」、「×」、および「log」を挙げることができる。また、製造装置20が、送風装置の場合、所定の演算子群として、「+」、「×」、および「÷」を挙げることができる。
【0021】
コントローラ21は、所定の演算子群を表すテーブルT1および入力値x1,…,xn及び出力値yの組み合わせを表すテーブルT2を記憶するメモリを有する。
【0022】
センサ22は、製造装置20での製品の製造条件(入力値x1~xn)および評価結果(出力値y)に関わる検出、測定を行うための機器である。
【0023】
(製造条件最適化システム1の動作)
製造条件最適化システム1は、後述のように、製造条件最適化方法を実行し、最適化された製造条件で製品を製造する。このために、推定装置10(プロセッサ11)は、製造条件に対応する入力値x1~xnと、製造された製品の評価結果に対応する出力値yとの関係を表す関係式Fを推定し、製造装置20(コントローラ21)は、関係式Fを用いて製造条件を最適化し、製品を製造する。以下、推定装置10(プロセッサ11)の動作を説明する。
【0024】
既述のように、プロセッサ11は、製造条件に対応する入力値x1~xnと、製造された製品の評価結果に対応する出力値yとの関係を表す関係式Fを推定する。この推定にモデルM1が用いられる。
【0025】
モデルM1として、回帰分析用のAIのモデルを用いることができる。自然言語処理に適用されるニューラルネットワーク(RNN、LSTM、Transformer)を用いて、単語から文章を組み立てるように、数値や演算子を組み立てることができる。このモデルの一例として、DSR(Deep Symbolic Regression)のモデルを挙げることができる。
【0026】
モデルM1は、入力値x1,…,xnと出力値yの組み合わせを教師データとする学習(例えば、深層強化学習)によって形成される。例えば、学習データおよび評価データをそれぞれ、入力値x1,…,xnと出力値yの組み合わせとして、用意する。入力値x1,…,xnと出力値yの組み合わせを複数用意し、学習データと評価データにランダムに分割することで、学習データおよび評価データとすることができる。
【0027】
具体的には、回帰式の誤差を小さくし、かつ、式の複雑さを抑制するように、強化学習を行った。式の複雑さを抑制するのは、過適合(オーバーフィッティング)を回避するためである。すなわち、式が複雑過ぎると、学習済の入出力値に過剰に適合し、未学習の入出力値(例えば、テスト/検証用の入出力値)に対して適合しない状態(過適合)に陥り易くなる。
【0028】
このため、生成された回帰式の誤差の小ささを収益の指標とし、かつ、式の複雑化に対して罰則を与えるようにした。この手法として、例えば、CVaR最適化、ベイズ最適化、パレート最適化のいずれかを用いることができる。CVaR最適化は、式の誤差が一定を超えるリスクを面積として評価し、この面積を小さくする手法である。ベイズ最適化は、式の誤差の取り得る範囲の揺らぎを最小化して、未知の誤差ができるだけ小さくなるようにする手法である。パレート最適化は、誤差を最小化しつつ、複雑さも同時に最小化する手法である。
【0029】
誤差を示す指標として、例えば、次の(1)~(9)のいずれかを用いることができる。
(1)相関係数(Correlation coefficient: R)
(2)決定係数(Coefficient of determination: R2)
(3)平均絶対誤差(Mean Absolute Error: MAE)
(4)平均二乗誤差(Means Squared Error:MSE)
(5)平均二乗対数誤差(Means Squared Logarithmic Error:MSLE)
(6)平方根平均二乗誤差(Root Mean Squared Error: RMSE)
(7)平方根平均二乗対数誤差(Root Mean Squared Logarithmic Error: RMSLE)
(8)平均絶対パーセント誤差(Mean Absolute Percentage Error: MAPE)
(9)平方根平均二乗パーセント誤差(Root Mean Squared Percentage Error:RMSPE)
【0030】
強化学習においては、例えば、次のような工程を経る。学習データ(入力値x1,…,xnと出力値y)に対応する仮の関係式Fを設定する。このとき、関係式Fを構成する演算子は、演算子群の範囲に制限される。この設定は、自然言語処理と同様の形式を利用できる。
【0031】
この仮の関係式(回帰式)Fに対して、式の誤差を小さくし、かつ、式の複雑さを抑制するように、深層強化学習を行う。学習データを用いて、モデルM1を形成し、評価データ(入力値x1,…,xnと出力値y)を用いて、モデルM1を評価することで、汎化されたモデルM1を形成する。この深層強化学習においても、関係式Fを構成する演算子は、演算子群の範囲に制限される。
【0032】
推定装置10(プロセッサ11)は、形成されたモデルM1を用いて、入力値x1,…,xn、出力値y、から関係式Fを推定することができる。推定された関係式Fを構成する演算子も演算子群の範囲に制限される。
【0033】
なお、推定装置10(プロセッサ11)は、推定された関係式Fを適宜に簡素化する。関係式Fは、無意味な項や無意味に複雑な表現を含む等、見かけ上、複雑になっている場合もある。このため、無意味な項や無意味に複雑な表現を簡素化することで人間が分かりやすく、コントローラ21で扱いやすい関係式Fを得ることができる。例えば、「(x1+x1)・x1・x2」は、「2・x12・x2」に簡素化され、「(x1/x1)・x1・x2」は、「x1・x2」に簡素化される。
【0034】
(製造条件最適化方法)
以下、製造条件最適化方法の詳細を説明する。
図2は、製造条件最適化方法の一例を表すフロー図である。製造条件最適化方法は、取得処理(ステップS11)、収集処理(ステップS12)、推定処理(ステップS13)、提供処理(ステップS14)、最適化処理(ステップS15)、製造処理(ステップS16)、および評価処理(ステップS17)を含む。このうち、取得処理(ステップS11)、収集処理(ステップS12)、推定処理(ステップS13)、提供処理(ステップS14)は、どちらかと言えば、推定装置10側での処理であり、最適化処理(ステップS15)、製造処理(ステップS16)、および評価処理(ステップS17)は、どちらかと言えば、製造装置20側での処理である。
【0035】
A.推定装置10での処理
推定装置10は、1または複数のプロセッサ11を備え、製造条件最適化方法を実行する。
【0036】
(1)取得処理(ステップS11)
取得処理において、推定装置10(プロセッサ11)は、コントローラ21が関係式Fに利用可能な演算子からなる演算子群の情報を取得する。例えば、製造装置20(コントローラ21)は、入出力IF14または通信IF15を介して、テーブルT1に記憶される所定の演算子群の情報を推定装置10に提供する。これに替えて、製造条件最適化システム1のオペレータが、入出力IF14を介して、所定の演算子群の情報を推定装置10(プロセッサ11)に入力してもよい。
【0037】
(2)収集処理(ステップS12)
収集処理において、推定装置10(プロセッサ11)は、関係式Fの入力値x1~xn(製造条件を表す値)と出力値y(製品の品質又は歩留まり)との組み合わせを、製造装置20から収集する。例えば、製造装置20(コントローラ21)は、入出力IF14または通信IF15を介して、テーブルT2に記憶される入力値x1,…,xn及び出力値yの組み合わせの情報を推定装置10に提供する。これに替えて、製造条件最適化システム1のオペレータが、入出力IF14を介して、入力値x1,…,xn及び出力値yの組み合わせの情報を推定装置10(プロセッサ11)に入力してもよい。
【0038】
(3)推定処理(ステップS13)
推定処理において、推定装置10(プロセッサ11)は、関係式Fを推定する。この関係式Fは、入力値x1~xn(例えば、製造条件を表す値)と出力値y(例えば、製品の品質又は歩留まり)との関係を表す。関係式Fは、入力値x1~xn及び出力値yの各々に対応する変数x1~xn、y、及び取得処理(ステップS11)にて取得された演算子群から選択された演算子により構成される。関係式Fの推定には、DSR(Deep Symbolic Regression)を用いることができる。
【0039】
強化学習が完了している場合、プロセッサ11は、入力値x1~xn、出力値y、および演算子群の情報をモデルM1に入力することで、関係式Fを得ることができる。一方、強化学習が未了の場合、関係式Fの推定と強化学習とを並行して行い、収集処理(ステップS12)にて収集した入力値x1~xn(製造条件を表す値)と出力値yの組み合わせを教師データとして関係式Fを推定してもよい。
【0040】
(4)提供処理(ステップS14)
提供処理において、推定装置10(プロセッサ11)から製造装置20(コントローラ21)に推定処理にて推定された関係式Fが提供される。
【0041】
B.製造装置20での処理
製造装置20(コントローラ21)は、製造条件最適化方法を実行する。
【0042】
(5)最適化処理(ステップS15)
最適化処理において、製造装置20(コントローラ21)は、推定装置10(プロセッサ11)から取得した関係式Fを用いて、製造条件の最適化を行う。例えば、コントローラ21は、関係式(y=F(x1,…、xn))に基づき、製品の品質、または歩留まり(出力値y)を向上するための製造条件(入力値x1~xn)を導出する。
【0043】
(6)製造処理(ステップS16)
製造処理においいて、製造装置20(コントローラ21)は、最適化された製造条件(入力値x1~xn)に基づき、製品を製造する。
【0044】
(7)評価処理(ステップS17)
評価処理においいて、製造された製品が評価され、品質または歩留まり(出力値y)が求められる。この評価は、製造装置20の内または外に備えられる評価装置を用いることができる。このようにして求められた入力値x1~xnと出力値yの組み合わせは、例えば、コントローラ21のテーブルT2に蓄積することができる。
【0045】
このように蓄積された入力値x1~xnと出力値yの組み合わせは、推定装置10(プロセッサ11)に収集され(2回目以降のステップS12)、製造条件最適化方法を繰り返し実行することができる。
【0046】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図3は、本発明の実施形態2に係る製造条件最適化システム1の構成を表す図である。実施形態2に係る製造条件最適化システム1は、製造条件を最適化するためのシステムであり、推定装置10、製造システムFA(1)~FA(n)、ネットワークNEを有する。製造システムFA(1)~FA(n)は、それぞれ、製造装置20(1)~20(m)を有し、ネットワークNEによって、推定装置10の通信IF15に接続される。製造装置20(1)~20(m)は、実施形態1と同様、コントローラ21、センサ22を有する。
【0047】
実施形態2では、推定装置10(プロセッサ11)は、ネットワークNEを介して、製造システムFA(1)~FA(n)の製造装置20(1)~20(m)それぞれに対して、製造条件を最適化することができる。
【0048】
[まとめ]
【0049】
態様1に係る推定装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、所定のコントローラが利用可能な演算子からなる演算子群を取得する取得処理と、入力値と出力値との関係を表す関係式であって、前記入力値及び前記出力値の各々に対応する変数、及び、前記取得処理にて取得された演算子群から選択された演算子により構成される関係式を推定する推定処理と、を実行する、ことを特徴とする。
【0050】
態様2に係る推定装置は、態様1において、前記プロセッサは、DSR(Deep Symbolic Regression)を用いて前記関係式を推定する、ことを特徴とする。
【0051】
態様3に係る推定装置は、態様1または2において、前記プロセッサは、前記推定処理にて推定された関係式を前記所定のコントローラに提供する提供処理を更に実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の推定装置。
【0052】
態様4に係る推定装置は、態様1から3において、前記所定のコントローラは、製造装置に内蔵されたPLC(Programmable Logic Controller)であり、前記入力値は、製造条件を表す値であり、前記出力値は、前記製造装置を用いて前記製造条件の下で製造された製品の品質、又は、前記製造装置を用いて前記製造条件の下で製品を製造したときの歩留まりを表す値である、ことを特徴とする。
【0053】
態様5に係る推定装置は、態様1から4において、前記プロセッサは、前記製造条件と前記品質又は前記歩留まりとの組み合わせを、前記製造装置又は前記製造装置と同種の製造装置から収集する収集処理を更に実行し、前記推定処理において、前記プロセッサは、前記収集処理にて収集した組み合わせを教師データとして前記関係式を推定する、ことを特徴とする。
【0054】
態様6に係る推定装置は、1又は複数の製造装置と、推定装置と、を含む製造条件最適化システムであって、推定装置は、(1)前記製造装置に内蔵された所定のコントローラが利用可能な演算子からなる演算子群を取得する取得処理と、(2)製造条件を表す入力値と前記製造装置を用いて前記製造条件の下で製造された製品の品質、又は、前記製造装置を用いて前記製造条件の下で製品を製造したときの歩留まりを表す出力値との関係を表す関係式であって、前記入力値及び前記出力値の各々に対応する変数、及び、前記取得処理にて取得された演算子群から選択された演算子により構成される関係式を推定する推定処理と、(3)前記推定処理にて推定された関係式を前記所定のコントローラに提供する提供処理と、を実行し、前記製造装置は、前記推定装置から取得した関係式を用いて、前記製造条件の最適化を行う、ことを特徴とする。
【0055】
態様7に係る推定装置は、態様6において、前記推定装置は、前記製造条件と前記品質又は前記歩留まりとの組み合わせを、前記製造装置から収集する収集処理を更に実行し、前記推定処理において、前記推定装置は、前記収集処理にて収集した組み合わせを教師データとして前記関係式を推定する、ことを特徴とする。
【0056】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…製造条件最適化システム、10…推定装置、11…プロセッサ、M1…モデル、P1…製造条件最適化プログラム、20…製造装置、21…コントローラ、22…センサ