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特開2024-28053位置情報生成プログラム、位置情報生成方法および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028053
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】位置情報生成プログラム、位置情報生成方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/38 20060101AFI20240222BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240222BHJP
   G09G 5/377 20060101ALI20240222BHJP
   H04N 21/431 20110101ALI20240222BHJP
   H04N 21/442 20110101ALI20240222BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240222BHJP
   G06T 13/80 20110101ALI20240222BHJP
【FI】
G09G5/38 Z
G09G5/00 550C
G09G5/36 520M
G09G5/00 510Z
H04N21/431
H04N21/442
H04N7/18 U
G06T13/80 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131386
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 智由
(72)【発明者】
【氏名】半野 宏和
【テーマコード(参考)】
5B050
5C054
5C164
5C182
【Fターム(参考)】
5B050AA08
5B050BA18
5B050DA04
5B050EA07
5B050EA19
5C054FC12
5C054FE12
5C054FE26
5C054HA05
5C054HA16
5C164UB10S
5C164UB41P
5C164UB88P
5C164YA30
5C182AB14
5C182AC03
5C182AC12
5C182BA23
5C182BC01
5C182CA21
5C182CB41
5C182CB54
5C182CC04
(57)【要約】
【課題】位置情報の時間変化のシームレスな表示を実現することを課題とする。
【解決手段】オーバーレイ装置は、レースが行われるコースを移動する移動体に取り付けられたセンサにより第1の周期で測定される位置情報の時系列データを取得する。オーバーレイ装置は、第1の周期に対応する位置情報の時系列データから、位置情報の描画処理が実行される第2の周期に対応する位置情報の時系列データを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
レースが行われるコースを移動する移動体に取り付けられたセンサにより第1の周期で測定される位置情報の時系列データを取得し、
前記第1の周期に対応する位置情報の時系列データから、位置情報の描画処理が実行される第2の周期に対応する位置情報の時系列データを生成する、
処理を実行させることを特徴とする位置情報生成プログラム。
【請求項2】
前記生成する処理は、
前記第2の周期で前記描画処理が実行される描画時刻と、前記取得する処理による位置情報の取得から前記位置情報の描画処理が開始されるまでの時間差とに基づいて、描画対象として取得済みである位置情報を参照する参照時刻を特定し、
前記参照時刻以降に取得された第1の位置情報が存在する場合、前記第1の位置情報と、前記参照時刻の時点で取得済みである第2の位置情報との線形補間を実行することにより、前記参照時刻における位置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置情報生成プログラム。
【請求項3】
前記生成する処理は、
前記参照時刻以降に取得された第1の位置情報が存在しない場合、前記参照時刻の時点で取得済みである前記第2の位置情報を複製することにより、前記参照時刻における位置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の位置情報生成プログラム。
【請求項4】
前記取得する処理は、
前記第1の周期で取得される位置情報に欠落が発生する場合、最後に取得に成功した第1の位置情報と、前記第1の位置情報よりも以前に取得に成功した第2の位置情報とから求まる移動速度に基づいて、欠落時の位置情報を予測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置情報生成プログラム。
【請求項5】
前記描画処理は、前記レースが撮像される映像データに重ねて表示させるオーバーレイ画像であって、先頭の移動体に対応するシンボルを一端にマッピングすると共に、前記先頭の移動体の位置情報に対する相対位置に基づいて前記先頭の移動体以外の他の移動体に対応するシンボルを他端に向けてシフトさせてマッピングするオーバーレイ画像を生成する処理である、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置情報生成プログラム。
【請求項6】
前記第2の周期は、前記映像データのフレームレートに対応する、
ことを特徴とする請求項5に記載の位置情報生成プログラム。
【請求項7】
コンピュータが、
レースが行われるコースを移動する移動体に取り付けられたセンサにより第1の周期で測定される位置情報の時系列データを取得し、
前記第1の周期に対応する位置情報の時系列データから、位置情報の描画処理が実行される第2の周期に対応する位置情報の時系列データを生成する、
処理を実行することを特徴とする位置情報生成方法。
【請求項8】
レースが行われるコースを移動する移動体に取り付けられたセンサにより第1の周期で測定される位置情報の時系列データを取得し、
前記第1の周期に対応する位置情報の時系列データから、位置情報の描画処理が実行される第2の周期に対応する位置情報の時系列データを生成する、
制御部を有することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報生成プログラム、位置情報生成方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送やビデオ通話などでは、映像データの上に別の映像データを重ねて表示するオーバーレイ技術が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-197365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オーバーレイ技術は、視点等が異なる各映像データを用いて、レース状況をリアルタイムに表示するテレビ放送などに使用されることがある。例えば、レース状況の映像データと、選手等の表示対象の位置関係を直線で表した位置データとをオーバーレイ表示することがある。
【0005】
しかしながら、上記技術では、位置データの更新頻度が選手等の位置を測定するセンサのサンプリング周波数に依存するので、たとえ映像データのフレームレートが高くとも、位置データ上の選手等のシンボルの時間変化を滑らかに表示することが困難である。
【0006】
なお、ここでは、選手等の位置情報が表示される利用シーンの例として、オーバーレイ表示を例に挙げたが、他の利用シーン、例えばレースが行われるコースが模式化されたマップ上に位置情報が表示される場合にも同様の課題が生じ得る。
【0007】
一つの側面では、本発明は、位置情報の時間変化のシームレスな表示を実現できる位置情報生成プログラム、位置情報生成方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の案では、位置情報生成プログラムは、コンピュータに、レースが行われるコースを移動する移動体に取り付けられたセンサにより第1の周期で測定される位置情報の時系列データを取得し、前記第1の周期に対応する位置情報の時系列データから、位置情報の描画処理が実行される第2の周期に対応する位置情報の時系列データを生成する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によれば、位置情報の時間変化のシームレスな表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1にかかるシステムの全体構成を説明する図である。
図2図2は、実施例1にかかるオーバーレイ表示の例を説明する図である。
図3図3は、実施例1にかかるオーバーレイ装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、設定データDBに記憶される情報の例を示す図である。
図5図5は、リサンプリングを説明する図である。
図6図6は、リサンプリングされる位置を説明する図である。
図7図7は、位置情報の消失を説明する図である。
図8図8は、オーバーレイ画像上のマッピング位置を説明する図である。
図9図9は、コース設定を説明する図である。
図10図10は、コース設定の読み込み後の事前準備を説明する図である。
図11図11は、競走馬が位置する区間の特定を説明する図である。
図12図12は、競走馬が直線区間に位置する場合の位置情報の算出を説明する図である。
図13図13は、競走馬が曲線区間に位置する場合の位置情報の算出を説明する図である。
図14図14は、オーバーレイ画像の例を説明する図である。
図15図15は、位置情報生成の処理の流れを示すフローチャートである。
図16図16は、オーバーレイ画像生成の処理の流れを示すフローチャートである。
図17図17は、ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本願に係る位置情報生成プログラム、位置情報生成方法および情報処理装置の実施例について説明する。各実施例には、あくまで1つの例や側面を示すに過ぎず、このような例示により数値や機能の範囲、利用シーンなどは限定されない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0012】
<全体構成>
図1は、実施例1にかかるシステムの全体構成を説明する図である。図1に示すシステムは、テレビ局等が放送するレースの映像データに重畳させるオーバーレイ画像を生成するシステムの一例である。
【0013】
本実施例では、コースで移動する移動体の一例である競走馬による競馬を例にして説明するが、これに限定されるものではなく、例えば陸上競技、競輪、競艇、カーレース、トライアスロン、競歩、学校の徒競走など、直線と曲線とを含むコースで行われる各種レースを対象とすることができる。また、生成されるオーバーレイ画像は、テレビ放送に限定されるものではなく、例えばインターネット放送、SNS(Social Networking Service)などを用いたライブ放送などの各種放送に適用することができる。
【0014】
図1に示すように、このシステムは、測位衛星1、基準局2、各競走馬もしくは各騎手などの移動体に取り付けられた複数のセンサ3、位置測位装置4、オーバーレイ装置10を有し、各装置はネットワークNを介して接続される。なお、ネットワークNには、有線や無線を問わず様々なネットワークを採用することができ、例えば閉域LTE(Long Term Evolution)サービスが提供される携帯電話網を採用することができる。
【0015】
測位衛星1は、位置測定に用いられる電波をセンサ3に送信する人工衛星の一例である。基準局2は、競走馬の位置特定の際に基準位置となる装置であり、例えば競馬場において緯度と経度とが予め分かっている場所に設置される。各センサ3は、衛星電波を受信して位置測定を実行する測位センサの一例であり、いわゆる観測点に対応する。このように、図1には、移動体の位置測定を実現する測位システムの例として、RTK(Real Time Kinematic)-GNSS(Global Navigation Satellite System)が示されている。
【0016】
位置測位装置4は、各競走馬等に取り付けられた各センサ3から位置情報を収集して保持する情報処理装置の一例である。オーバーレイ装置10は、オーバーレイ画像を生成して出力する情報処理装置の一例である。
【0017】
このようなシステム構成において、基準局2は、閉域LTEサービスが提供される携帯電話網を介して、位置測位装置4と常時通信して定期的に位置補正用の各種データを位置測位装置4に送信する(S1)。位置測位装置4は、基準局2から送信されるデータをもとに補正情報を生成し、閉域LTEサービスを介して各センサ3に配信する(S2)。
【0018】
各センサ3は、測位衛星1から衛星情報を受信し(S3)、位置測位装置4から配信された補正情報と、測位衛星1から受信した衛星情報とを用いて、GPS(Global Positioning System)時刻に同期した正確な時刻と自己の位置情報を算出して位置測位装置4に送信する(S4)。
【0019】
位置測位装置4は、各センサ3からデータ(時刻、位置情報)を受信し(S5)、受信データを本体に格納したり、受信データを画面に表示させたりするとともに、受信データをオーバーレイ装置10に提供する(S6)。
【0020】
そして、オーバーレイ装置10は、位置測定装置4から受信した各センサ3の受信データ(時刻、位置情報)を用いて、直線と曲線とを考慮した各競走馬の位置を正確に算出し、各競走馬の位置を相対的に表したオーバーレイ画像を生成する(S7)。
【0021】
このようにオーバーレイ画像を生成する際、オーバーレイ装置10は、オーバーレイ画像上で競走馬や選手等のシンボルの時間変化を滑らかに表示する側面から、次のような位置情報のリサンプリング処理を実行する。すなわち、オーバーレイ装置10は、各センサ3により第1の周期、例えば0.1秒周期で取得される位置情報の時系列データを、映像データが表示されるフレームレート、例えば30fpsもしくは60fpsに対応する第2の周期の位置情報の時系列データにリサンプリングする。
【0022】
このような第2の周期の位置情報の時系列データに基づいて、オーバーレイ装置10は、オーバーレイ画像を生成する。例えば、オーバーレイ装置10は、直線区間と曲線区間とを有するコース上に、位置情報が既知である複数のチェックポイントと、複数のチェックポイントを順番に結ぶ各直線を設定する。オーバーレイ装置10は、第2の周期で、上記のリサンプリングにより競走馬ごとに得られた第1の位置情報を取得し、各競走馬の第1の位置情報を各直線に近似させた各第2の位置情報を算出する。オーバーレイ装置10は、複数のチェックポイントの位置情報と各第2の位置情報を用いて、各競走馬の相対的な位置を特定する。
【0023】
このようにしてオーバーレイ装置10が生成したオーバーレイ画像は、テレビ放送を行う映像システム等に送信された後、映像システムによって、レースのリアルタイム状況を撮像したレースの映像データに重畳されてテレビ放送される。
【0024】
図2は、実施例1にかかるオーバーレイ表示の例を説明する図である。図2に示すように、テレビ放送では、レースのリアルタイムの状況であるレース映像50aに、オーバーレイ装置10が生成したオーバーレイ画像51が重畳されたレースの映像データ50が放送される。
【0025】
なお、ここでは、リサンプリングされた第2の周期の位置情報の時系列データの利用シーンの例として、オーバーレイ表示を例に挙げたが、他の利用シーン、例えばレースが行われるコースが模式化されたマップ上に位置情報が表示される場合にも適用できる。
【0026】
<機能構成>
図3は、実施例1にかかるオーバーレイ装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、オーバーレイ装置10は、通信部11、記憶部12、制御部20を有する。
【0027】
通信部11は、他の装置との間の通信を制御する処理部であり、例えば通信インタフェースなどにより実現される。例えば、通信部11は、位置測定装置4から各センサ3の受信データ(時刻、位置情報)などを受信し、映像システムなどの指定された宛先に、制御部20により生成されるオーバーレイ画像を送信する。
【0028】
記憶部12は、各種データや制御部20が実行するプログラムなどを記憶する処理部であり、例えばメモリやプロセッサなどにより実現される。この記憶部12は、位置情報DB13、設定データDB14、オーバーレイ画像DB15を記憶する。
【0029】
位置情報DB13は、競走馬等の移動体に対応するセンサ3の位置情報を記憶するデータベースである。例えば、位置情報DB13は、競走馬ごとに、位置測定装置4から取得した時刻順で、位置測定装置4から取得した位置情報を記憶する。さらに、位置情報DB13は、競走馬ごとに、当該競走馬に対応するセンサ3から第1の周期で取得される位置情報の時系列データがリサンプリングされた第2の周期の位置情報の時系列データを記憶する。さらに、位置情報DB13は、後述する制御部20がオーバーレイ画像生成のために算出した競走馬の位置情報も記憶する。例えば、位置情報DB13は、競走馬ごとに、時系列で、制御部20が算出した位置情報を記憶する。
【0030】
設定データDB14は、各競走馬の位置情報の特定に利用する、予め設定された各種設定情報を記憶するデータベースである。ここで記憶される情報は、管理者等が格納してもよく、制御部20が処理開始に指定された格納先が読み出してもよい。また、ここで記憶される情報は、競馬場ごとに設定される。
【0031】
図4は、設定データDB14に記憶される情報の例を示す図である。図4に示すように、設定データDB14は、センサ情報、チェックポイント情報、区間情報などを記憶する。
【0032】
センサ情報は、各競走馬に取り付けられた各センサ3に関する情報である。例えば、センサ情報は、「センサID、馬名、馬番、帽色」などを記憶する。「センサID」は、各センサ3を識別する情報である。「馬名」は、センサ3が取り付けられた競走馬(出走馬)の名前である。「馬番」は、出走馬に割り当てられた番号である。「帽色」は、騎手がレースの際かぶるヘルメットの色である。図4の例では、馬番が1で帽色が白色である馬名AAの競走馬にセンサID=S01のセンサ3が取り付けられていることが示される。すなわち、センサID=S01のセンサ3が測定する位置情報が、馬名AAの競走馬の位置情報である。
【0033】
チェックポイント情報は、レース中の競走馬の進行方向や位置特定に用いる、コース上に設定したチェックポイントに関する情報である。例えば、チェックポイント情報は、「チェックポイント、位置情報」などを記憶する。ここで記憶される「チェックポイント」は、コース上に設定されたチェックポイントを識別する情報であり、「位置情報」は、各チェックポイントの位置情報(緯度経度)である。図4の例では、チェックポイントp1は、「緯度=X1、経度=Y1」の位置に設置されていることが示されている。
【0034】
区間情報は、チェックポイント間の区間に関する情報である。例えば、チェックポイント情報は、「区間、情報」などを記憶する。ここで記憶される「区間」は、どのチェックポイント間かを示す情報であり、「情報」は、区間が直線か曲線かを示す情報である。図4の例では、チェックポイントp1とp2の間の区間が直線であり、チェックポイントp2とp3の間の区間が曲線であることが示されている。
【0035】
図3に戻り、オーバーレイ画像DB15は、テレビ放送されるレース映像に重畳させるオーバーレイ画像のデータを記憶するデータベースである。例えば、オーバーレイ画像DB15は、生成された時系列順でオーバーレイ画像を記憶する。
【0036】
制御部20は、オーバーレイ装置10全体を司る処理部であり、例えばプロセッサなどにより実現される。この制御部20は、位置情報取得部21、位置情報生成部22、位置算出部23、画像生成部24、画像出力部25を有する。なお、位置情報取得部21、位置情報生成部22、位置算出部23、画像生成部24、画像出力部25は、プロセッサが有する電子回路やプロセッサが実行するプロセスなどにより実現される。
【0037】
位置情報取得部21は、各センサ3が測定した各競走馬の位置情報を取得する処理部である。例えば、位置情報取得部21は、位置測定装置4によりセンサ3ごとに第1の周期で収集される位置情報を、位置測定装置4から取得する。そして、位置情報取得部21は、センサ3ごとに取得した位置情報を位置情報DB13に格納する。
【0038】
位置情報生成部22は、センサ3により第1の周期で測位された位置情報の時系列データからレース映像等の映像データのフレームレートに対応する第2の周期の位置情報の時系列データを生成する処理部である。
【0039】
このように位置測定装置4から取得される位置情報は、緯度経度により表現される地理座標であるので、メートル座標へ変換することができる。この際、経緯度1分あたりの距離の算出や、経緯度からの単位変換については公知の技術を用いることができる。一例を挙げると、位置情報生成部22は、位置情報取得部21から取得した各センサ3の位置情報であって度単位の緯度経度を、式(1)と式(2)とを用いて、メートル座標に変換する。
【0040】
緯度1度あたりの距離(メートル)=Ry/360・・・式(1)
ただし、Ryは、地球の子午線周囲(メートル)であり、例えば40,009,000である。
経度1度あたりの距離(メートル)=Rx×cosθ/360・・・式(2)
ただし、Rxは、地球の赤道周囲(メートル)であり、例えば40,075,000である。θは、競馬場の緯度(ラジアン)であり、コース設定ファイルの最大緯度と最小緯度の平均値を使用する。なお、ラジアンは、度×π/180で算出される。
【0041】
このようなメートル座標へ変換される第1の周期の位置情報の時系列データを用いて、位置情報生成部22は、第2の周期の位置情報の時系列データへリサンプリングする。
【0042】
図5は、リサンプリングを説明する図である。図5には、位置測位装置4のDB、位置情報取得部21および位置情報生成部22の時系列の動作がタームチャートとして表されている。なお、図5には、K個のセンサ3のうち1つのセンサ3に関する動作が抜粋して示されている。
【0043】
図5に示すように、位置測位装置4のDBは、センサ3により第1の周期、例えば0.1秒周期で測定される位置情報が格納される。時系列に言えば、位置測位装置4のDBには、0.1秒周期でP1、P2、P3、P4、P5の順に各々の位置情報が格納される。
【0044】
このように位置測位装置4のDBに格納される位置情報は、0.05秒周期で位置情報取得部21により取得される。すなわち、時系列に言えば、位置情報取得部21は、0.05秒周期でP0、P1、P1、P2、P2、P3、P4の順に各々の位置情報を取得する。このように位置測位装置4のDBから位置情報を取得した際、位置情報取得部21は、当該位置情報と共に当該位置情報を取得した時刻も併せて記録する。以下、位置情報取得部21が位置測位装置4のDBから位置情報を取得した時刻のことを指して「取得時刻」と記載する場合がある。
【0045】
このとき、位置測位装置4のDBから前回と同一の位置情報が取得された場合、位置情報取得部21は、前回と同一の位置情報を破棄する。例えば、図5には、位置情報取得部21が位置測位装置4のDBから位置情報を取得する取得動作に対応させて、位置測位装置4のDBのタイムチャートから位置情報取得部21のタイムチャートへ向けて線が描画されている。
【0046】
このうち、前回と同一の位置情報が取得されて当該位置情報が破棄される線は位置情報取得部11のタイムチャートの側に接続されず、その末尾には四角のマークがプロットされている。その一方で、前回と同一でない位置情報が取得されて当該位置情報が格納される場合、それに対応する線は、位置測位装置4のDBのタイムチャートから位置情報取得部11のタイムチャートへ向かって接続される矢印として描画されている。
【0047】
時系列に言えば、位置測位装置4のDBから取得された位置情報P0は、前回に取得された位置情報P0と同一であるので破棄される。その0.05秒後に位置測位装置4のDBから取得された位置情報P1は、前回に取得された位置情報P0と異なるので、位置情報DB13などへ格納される。その0.05秒後に位置測位装置4のDBから取得された位置情報P1は、前回に取得された位置情報P1と同一であるので破棄される。その0.05秒後に位置測位装置4のDBから取得された位置情報P2は、前回に取得された位置情報P1と異なるので、位置情報DB13などへ格納される。その0.05秒後に位置測位装置4のDBから取得された位置情報P2は、前回に取得された位置情報P2と同一であるので破棄される。その0.05秒後に位置測位装置4のDBから取得された位置情報P3は、前回に取得された位置情報P2と異なるので、位置情報DB13などへ格納される。その後、トラブル等により0.1秒以上の期間が経過後に位置測位装置4のDBから取得された位置情報P4は、前回に取得された位置情報P3と異なるので、位置情報DB13などへ格納される。
【0048】
このように位置測位装置4のDBから位置情報取得部21へ位置情報が取得される状況の下、位置情報生成部22は、第2の周期、例えば映像データが描画される30fpsや60fpsに対応する周期で次のような動作を行う。
【0049】
すなわち、位置情報生成部22は、位置情報取得部21による位置情報の取得からオーバーレイ画像の描画が開始されるまでの時間差に基づいて、オーバーレイ画像の描画対象として取得済みの位置情報を参照する参照時刻を特定する。これは、センサ3から取得される位置情報に基づいてオーバーレイ画像がリアルタイムで生成される場合であっても、位置情報取得部21による位置情報の取得と、オーバーレイ画像の生成とは完全に同期するとは限らず、遅延が発生し得るからである。
【0050】
例えば、第2の周期でオーバーレイ画像の描画が開始されるタイミングのうち図5に示す描画時刻Txを一例に挙げる。この場合、描画遅延に対応する時間差τを0.1秒としたとき、位置情報生成部22は、描画時刻Txから描画遅延に対応する時間差τ(=0.1秒)を減算することにより参照時刻T(=Tx-0.1)を特定する。
【0051】
続いて、位置情報生成部22は、描画時刻Txの時点で位置情報取得部21により取得された最新の位置情報P3の取得時刻Taq_Lastが参照時刻T以降であるか否か、すなわち参照時刻T<最新の取得時刻Taq_Lastであるか否かを判定する。
【0052】
図5に示すように、参照時刻T<最新の取得時刻Taq_Lastである場合、位置情報生成部22は、次のように動作する。すなわち、位置情報生成部22は、最新の取得時刻Taq_Lastの位置情報P3と、最新の取得時刻Taq_Lastの1つの前の取得時刻Taq_LastPreviousの時点で取得済みである位置情報P2とに基づいて、参照時刻Tの位置情報Pを算出する。
【0053】
図6は、リサンプリングされる位置を説明する図である。図6には、図5に示す最新の取得時刻Taq_Lastの位置情報P3と、最新の取得時刻Taq_Lastの1つの前の取得時刻Taq_LastPreviousの時点で取得済みである位置情報P2とが模式化されて示されている。
【0054】
図6に示すように、位置情報生成部22は、図6に示す式(3)にしたがって、最新の取得時刻Taq_Lastの位置情報P3と、最新の取得時刻Taq_Lastの1つの前の取得時刻Taq_LastPreviousの位置情報P2との間で線形補間を実行する。これにより、参照時刻Tの位置情報Pを算出することができる。
【0055】
このように位置情報P2および位置情報P3から新たに生成された位置情報Pが参照時刻Tにおける位置情報として位置情報DB13へ格納される。これにより、センサ3のサンプリング周波数に対応する第1の周期よりも高い第2の周期で位置情報をアップサンプリングできる。なお、ここでは、一例として、線形一次式の線形補間を例に挙げたが、線形補間の他、非線形補間、例えばスプライン補間やラグランジュ補間などを適用することもできるのは言うまでもない。
【0056】
図5の説明に戻り、第2の周期でオーバーレイ画像の描画が開始されるタイミングの他の一例として図5に示す描画時刻Tyを一例に挙げる。この場合、位置情報P3が取得された取得時刻が最新の取得時刻Taq_Lastとなるので、参照時刻T<最新の取得時刻Taq_Lastとはならない。よって、位置情報生成部22は、最新の取得時刻Taq_Lastの位置情報P3を参照時刻Tの位置情報Pとして複製する。このように位置情報P3が複製された位置情報Pが参照時刻Txにおける位置情報として位置情報DB13へ格納される。
【0057】
ここで、位置情報取得部21は、センサ3やオーバーレイ装置10で異常やトラブルが発生することがあるので、位置情報を必ずしも第1の周期で取得できるとは限らず、あるサンプリング時刻や取得時刻で位置情報が消失する場合がある。
【0058】
図7は、位置情報の消失を説明する図である。図7には、位置情報取得部21が位置情報の取得に成功した時刻が黒丸でプロットされる一方で、位置情報取得部21が位置情報の取得に失敗した時刻が白丸でプロットされている。なお、図7では、t1~t4の各時刻の関係がt2=t1+0.05、t3=t2+0.05、t4=t3+0.05であることとする。
【0059】
例えば、図7に示すように、位置情報取得部21による位置情報の取得は、時刻t1および時刻t2で成功してから、時刻t3および時刻t4で失敗する。
【0060】
このように位置情報の消失が発生する場合、位置情報取得部21は、最後に取得に成功した位置情報と、その1つ前に取得に成功した位置情報とに基づいて最新の位置情報を予測することができる。
【0061】
例えば、図7に示す時刻t3の位置情報Pを予測する場合、位置情報生成部22は、時刻t1から時刻t2への移動速度に基づいて時刻t3の位置情報を予測できる。例えば、時刻t1の位置情報を(X1,Y1)とし、時刻t2の位置情報を(X2,Y2)としたとき、位置情報取得部21は、下記の式(4)~下記の式(7)にしたがって時刻t3の位置情報(X3,Y3)を算出できる。
【0062】
=(X2-X1)/(t2-t1)・・・式(4)
X3=X2+v(t3-t2)・・・式(5)
=(Y2-Y1)/(t2-t1)・・・式(6)
Y3=Y2+v(t3-t2)・・・式(7)
【0063】
さらに、図7に示す時刻t4の位置情報Pを予測する場合にも、位置情報取得部21は、時刻t1から時刻t2への移動速度に基づいて位置情報Pを予測できる。具体的には、位置情報取得部21は、下記の式(8)および下記の式(9)にしたがって時刻t4の位置情報P(X4,Y4)を算出できる。
【0064】
X4=X3+v(t4-t3)・・・式(8)
Y4=Y3+v(t4-t3)・・・式(9)
【0065】
このように予測された位置情報を用いて、位置情報生成部22は、参照時刻Tの位置情報を生成することができる。このとき、位置情報の消失が発生してから経過する時間が大きくなるほど位置情報の予測精度が低下する。このため、位置情報の消失から特定の時間以上経過する場合、位置情報取得部21は、位置情報の予測を中止し、位置情報が消失したセンサに対応する競走馬の位置情報をオーバーレイ画像の描画対象から除外することもできる。
【0066】
ここで、オーバーレイ画像では、直線と曲線を含むコース全体が直線コースへ近似された上でコースの進行方向をxとし、コースの幅方向をyとする座標系に従って位置算出部23により競走馬ごとに算出される位置情報がオーバーレイ画像にマッピングされる。
【0067】
例えば、x方向では、先頭の競走馬に対応するシンボルをオーバーレイ画像の右端にマッピングし、先頭の競走馬の位置情報に対する相対位置に基づいて他の競走馬に対応するシンボルを左側にシフトさせてマッピングする。また、y方向では、コースの幅方向の中心位置からの相対位置に基づいて各競走馬のシンボルを上方向または下方向にシフトさせてマッピングされる。
【0068】
この場合、取得済みの位置情報から求まる移動速度に基づいて位置情報を予測すると、コースの進行方向に比べてコースの幅方向の誤差が大きくなる傾向がある。このようにコースの幅方向の誤差が大きくなると、オーバーレイ画像にマッピングされる競走馬のシンボルがコースの内ラチまたは外ラチを超えて表示されてしまう場合がある。
【0069】
このような側面から、位置情報取得部21に位置情報を予測させる代わりに、オーバーレイ画像の生成時に取得済みの位置情報がオーバーレイ画像にマッピングされたマッピング位置から消失後に対応するマッピング位置を算出する場合、コースの幅方向のマッピング位置を位置情報の消失時点から固定とすることもできる。
【0070】
図8は、オーバーレイ画像上のマッピング位置を説明する図である。図8には、図7に示す時刻t1~t4に対応する参照時刻の位置情報がオーバーレイ画像上でマッピングされるマッピング位置が示されている。
【0071】
図8に示すように、時刻t3のマッピング位置(x3,y3)は、時刻t1のマッピング位置を(x1,y1)とし、時刻t2のマッピング位置を(x2,y2)としたとき、下記の式(10)~下記の式(12)にしたがって算出できる。
【0072】
=(x2-x1)/(t2-t1)・・・式(10)
x3=x2+v(t3-t2)・・・式(11)
y3=y2・・・式(12)
【0073】
さらに、時刻t4のマッピング位置(x4,y4)は、下記の式(13)および下記の式(14)にしたがって算出できる。
【0074】
x4=x3+v(t4-t3)・・・式(13)
y4=y3・・・式(14)
【0075】
図3の説明に戻り、位置算出部23は、位置情報生成部22により競走馬ごとに生成される位置情報(正確な時刻を含む)を用いて、直線区間と曲線区間とを考慮した各競走馬の位置を正確に算出する処理部である。
【0076】
ここで、位置算出部23は、位置情報生成部22が動作する第2の周期で連動して動作する。より詳細には、位置算出部23は、各センサ3のメートル座標を用いて、競走馬がどの区間に位置するかの特定、チェックポイントを用いた進行方向の算出、競走馬が直線区間に位置する場合の横位置と走行距離の算出、競走馬が曲線区間に場合の横位置と走行距離の算出などを実行する。このようにして、位置算出部23は、各競走馬(センサ3)の位置を算出する。なお、詳細は、後述する。また、横位置とは、競馬でいう横のポジションを示し、進行方向(縦のポジション)と垂直の方向である。
【0077】
画像生成部24は、位置算出部23により算出された各競走馬の位置情報を用いて、オーバーレイ画像を生成する処理部である。具体的には、画像生成部24は、位置情報生成部22により位置情報が第2の周期で生成される時刻ごとに、位置算出部23により算出された各競走馬の位置情報を用いて、各競走馬の相対位置を特定する。そして、画像生成部24は、各競争馬の相対位置を直線状に表したオーバーレイ画像を生成する。その後、画像生成部24は、時系列順でオーバーレイ画像をオーバーレイ画像DB15に格納する。
【0078】
画像出力部25は、オーバーレイ画像を出力する処理部である。具体的には、画像出力部25は、オーバーレイ画像DB15に記憶されるオーバーレイ画像を時系列で読み出して、順次、映像システムに送信する。
【0079】
<具体例>
図9から図13を用いて、位置算出部23が、式(1)と式(2)を用いて各センサ3の緯度経度をメートル座標に変換した後に実行する各競走馬の位置算出について説明する。すなわち、後述される位置算出は、メートル座標で実行される。また、位置算出部23は、各競走馬について、位置情報生成部22により位置情報が第2の周期で生成されるたびに、後述する位置算出を実行する。また、位置算出部23は、各競走馬について算出される位置を、センサ3により測定された時刻によって結びつけることができるので、ある時刻における各競走馬の位置を特定することができる。
【0080】
(設定)
まず、位置算出部23は、レースのコース設定を設定データDB14等から読み込む。図9は、コース設定を説明する図である。図9に示すように、位置算出部23は、コース上に設定されたチェックポイントp1、p2、p3、p4、p5、p6の緯度経度を読み込む。なお、チェックポイントp1は、スタート地点に設定され、チェックポイントp6は、ゴール地点に設定される。なお、各チェックポイントは、コースの最も内側に設定する必要はなく、コース上で緯度経度が既知である場所でよく、設置する位置を限定するものではない。
【0081】
また、位置算出部23は、チェックポイント間の区間の情報を読み込む。具体的には、位置算出部23は、チェックポイントp1-p2の区間1を「直線」、チェックポイントp2-p3の区間2を「曲線」、チェックポイントp3-p4の区間3を「曲線」、チェックポイントp4-p5の区間4を「曲線」、チェックポイントp5-p6の区間5を「直線」として読み込む。なお、チェックポイントの数は一例であり、例えば曲線区間を細かく設定するために、曲線区間に多くのチェックポイントを設定することもできる。
【0082】
(事前準備)
次に、位置算出部23は、コース設定後の事前準備を実行する。図10は、コース設定の読み込み後の事前準備を説明する図である。図10に示すように、位置算出部23は、各チェックポイントを順番に結ぶ直線を設定する。具体的には、位置算出部23は、チェックポイントp1-p2を結ぶ直線d1を設定し、チェックポイントp2-p3を結ぶ直線d2を設定し、チェックポイントp3-p4を結ぶ直線d3を設定し、チェックポイントp4-p5を結ぶ直線d4を設定し、チェックポイントp5-p6を結ぶ直線d5を設定する。
【0083】
続いて、位置算出部23は、各チェックポイントの境界線を算出する。具体的には、位置算出部23は、直線区間の一端である各チェックポイントについて、当該直線区間と垂直かつチェックポイントを通る直線を境界線に設定する。また、位置算出部23は、曲線区間上に位置する各チェックポイントについて、各直線のうち当該チェックポイントを一端とする2つの直線がなす角度を2分割する方向で当該チェックポイントを通る直線を境界線に設定する。
【0084】
例えば、位置算出部23は、チェックポイントが並ぶ方向(コースと平行方向もしくは進行方向)に対して前もしくは後ろが直線区間であるチェックポイントp1、p2、p5、p6それぞれについて、その直線区間と垂直かつそのチェックポイントを通る直線を境界線とする。すなわち、位置算出部23は、チェックポイントp1に対して境界線b1、チェックポイントp2に対して境界線b2、チェックポイントp5に対して境界線b5、チェックポイントp6に対して境界線b6を設定する。
【0085】
また、位置算出部23は、前と後ろの両方が曲線区間であるチェックポイントについては、前後の直線の角度を2分割する方向でチェックポイントp3とp4を通る直線を境界線とする。すなわち、位置算出部23は、チェックポイントp3については、直線d2と直線d3とがなる角度を2分割する直線を境界線b3に設定する。同様に、位置算出部23は、チェックポイントp4については、直線d3と直線d4とがなる角度を2分割する直線を境界線b4に設定する。
【0086】
続いて、位置算出部23は、各チェックポイントの進行方向を算出する。具体的には、位置算出部23は、直線区間の一端であるチェックポイントに対して、次のチェックポイントへ向かう単位ベクトルを進行方向に設定する。位置算出部23は、曲線区間上のチェックポイントに対して、境界線により分けられる領域のうち次のチェックポイントを含む領域側で境界線と垂直な方向の単位ベクトルを進行方向に設定する。
【0087】
例えば、位置算出部23は、チェックポイントp1については、次のチェックポイントp2へ向かう単位ベクトルv1を進行方向に設定し、チェックポイントp2については、境界線b2と次のチェックポイントp3側の垂直な方向の単位ベクトルv2を進行方向に設定する。位置算出部23は、チェックポイントp3については、境界線b3と次のチェックポイントp4側の垂直な方向の単位ベクトルv3を進行方向に設定し、チェックポイントp4については、境界線b4と次のチェックポイントp5側の垂直な方向の単位ベクトルv4を進行方向に設定する。位置算出部23は、チェックポイントp5については、次のチェックポイントp6へ向かう単位ベクトルv5を進行方向に設定する。なお、最終チェックポイントp6について進行方向の設定は不要である。
【0088】
続いて、位置算出部23は、境界線の交点を曲線区間の中心点として算出する。例えば、位置算出部23は、チェックポイントp2とp3とを両端とする曲線区間2について、チェックポイントp2の境界線b2と、チェックポイントp3の境界線b3との交点c2を、曲線区間2の中心点として算出する。同様に、位置算出部23は、チェックポイントp3とp4とを両端とする曲線区間3について、チェックポイントp3の境界線b3と、チェックポイントp4の境界線b4との交点c3を、曲線区間3の中心点として算出する。また、位置算出部23は、チェックポイントp4とp5とを両端とする曲線区間4について、チェックポイントp4の境界線b4と、チェックポイントp5の境界線b5との交点c4を、曲線区間4の中心点として算出する。
【0089】
(競走馬が位置する区間の特定)
次に、位置算出部23は、競走馬がどの区間に位置するかを特定する。図11は、競走馬が位置する区間の特定を説明する図である。具体的には、位置算出部23は、競走馬がチェックポイントp1からスタートすることから、最初は区間1に各競走馬が位置すると特定する。その後、位置算出部23は、競走馬がどのチェックポイントの境界線を通過したかにより、次の区間に競走馬が入ったか否かを判定する。具体的には、位置算出部23は、次のチェックポイントから競走馬へ向かうベクトルと、次のチェックポイントの進行方向を示すベクトル(以下では進行方向ベクトルと記載する場合がある)との内積が正の値の場合に、競走馬が次にチェックポイントの区間に入ったと判定する。
【0090】
例えば、図11に示すように、位置算出部23は、競走馬の現在位置がh1の場合、チェックポイントp1の次のチェックポイントp2からh1に向かうベクトルvh1と、チェックポイントp2の進行方向ベクトルv2との内積を算出する。この場合、位置算出部23は、vh1とv2とのなす角が90度以上であることから、内積(vh1×v2)は0未満となり、競走馬は境界線b2を通過しておらず区間1に位置すると判定する。
【0091】
一方、位置算出部23は、競走馬の現在位置がh2の場合、チェックポイントp1の次のチェックポイントp2からh1に向かうベクトルvh2と、チェックポイントp2の進行方向ベクトルv2との内積を算出する。この場合、位置算出部23は、vh1とv2とのなす角が90度未満であることから、内積(vh1×v2)は0より大きくなり、競走馬は境界線b2を通過し区間2に位置すると判定する。
【0092】
(競走馬の位置算出)
次に、位置算出部23は、競走馬が走行距離と横位置とを算出する。具体的には、位置算出部23は、各競争場のセンサ3により測定された第1の位置情報を、コース上に設定したチェックポイント間のいずれかの直線に近似させた各第2の位置情報に変換する。そして、位置算出部23は、複数のチェックポイントの位置情報と各競走馬に対応する各第2の位置情報を用いて、各競争場の相対的な位置を特定する。
【0093】
例えば、位置算出部23は、競走馬が直線区間に位置する場合は、位置する直線区間の直線との位置関係に基づき、走行距離と横位置とを算出する。一方で、位置算出部23は、競走馬が曲線区間に位置する場合は、位置する曲線区間に設定された直線に競走馬の位置を近似させて、近似させた位置とチェックポイントとの位置関係に基づき、走行距離と横位置とを算出する。
【0094】
図12は、競走馬が直線区間に位置する場合の位置情報の算出を説明する図である。位置算出部23は、走行距離として、競走馬が通過済みである最新のチェックポイントから競走馬へのベクトルと最新のチェックポイントの進行方向ベクトルとの内積により走行距離を算出する。また、位置算出部23は、横位置として、競走馬が通過済みである最新のチェックポイントから競走馬へのベクトルと最新のチェックポイントの進行方向ベクトルを90度回転させたベクトルとの内積により、進行方向に対して垂直方向の横位置を算出する。
【0095】
例えば、図12に示すように、競走馬がチェックポイントp1-p2間の直線区間1のh1に位置する場合、位置算出部23は、チェックポイントp1から競走馬の位置h1へのベクトルvh1と、チェックポイントp1の進行方向ベクトルv1との内積(vh1×v1)により算出される値を、走行距離と算出する。すなわち、位置算出部23は、チェックポイントp1から直線区間d1上のxまでの距離を走行距離と算出する。
【0096】
また、位置算出部23は、チェックポイントp1から競走馬の位置h1へのベクトルvh1と、チェックポイントp1の進行方向ベクトルv1を右に(進行方向に対して時計周りに)90度回転させたベクトルv1´との内積により、競走馬の横位置を算出する。すなわち、位置算出部23は、直線区間d1上のxからh1までの距離を横位置と算出する。なお、ここでは、一例として、オーバーレイ画像の画面描画時、競走馬が右に進んでいく右向きを基準としており、画面のy座標は下向きが正のため、進行方向ベクトルを右に回転させている。
【0097】
図13は、競走馬が曲線区間に位置する場合の位置情報の算出を説明する図である。位置算出部23は、走行距離として、競走馬と中心点とを結んだ直線と、曲線区間の両端のチェックポイント間を結んだ直線との交点を算出し、競走馬が通過済みである最新のチェックポイントから交点への距離を走行距離として算出する。また、位置算出部23は、横位置として、上記交点と競走馬までの距離を算出し、進行方向に向かってチェックポイント間の直線のどの位置にいるかにより、横位置を決定する。
【0098】
例えば、図13に示すように、競走馬がチェックポイントp3-p4間の曲線区間3のh3に位置する場合、位置算出部23は、競走馬の位置h3から区間3の中心点c3への直線と、区間3内に設定された直線d3との交点xを算出する。そして、位置算出部23は、競走馬が通過済みである最新のチェックポイントp3から交点xまでの距離を走行距離と算出する。
【0099】
また、位置算出部23は、交点xから競走馬の位置h3までの距離を算出する。そして、位置算出部23は、チェックポイントp3からp4へのベクトルと、チェックポイントp3から競走馬の位置h3へのベクトルとの外積を算出し、競走馬h3の位置が直線d3の内側に位置するか外側に位置するかを判定する。なお、図13におけるh3は、外側に位置する例を示しており、外側とは、直線からコースの中心とは反対側の領域を指す。そして、位置算出部23は、外積が負の値である場合、直線d3の左側に位置すると判定し、算出された上記距離に「-1」を乗算した値を横位置とする。一方、位置算出部23は、外積が正の値である場合、直線d3の右側に位置すると判定し、算出された上記距離をそのまま横位置とする。
【0100】
上述したように、位置算出部23は、直線と曲線とを有するコース上に設定したチェックポイントp1からp6を用いて、コース全体を直線d1、d2、d3、d4、d5によるコースに近似する。そして、位置算出部23は、各競走馬がどの直線のどの位置に位置するかを算出することで、各時刻における各競走馬の位置を算出する。また、位置算出部23は、各チェックポイントおよび各チェックポイントの進行方向を用いて、チェックポイントを通過した時刻とチェックポイントからどの距離に位置するかを特定することで、競走馬の順番(現在の順位)を特定する。
【0101】
このようにして、位置算出部23は、時刻ごとに、各競走馬のメートル座標や走行距離などを含む位置情報を算出して、画像生成部24に出力する。
【0102】
(オーバーレイ画像の生成)
その後、画像生成部24は、時刻ごとに位置算出部23から入力される各競走馬の位置情報を用いて、オーバーレイ画像を生成する。図14は、オーバーレイ画像の例を説明する図である。図14に示すように、画像生成部24は、ある時刻におけるオーバーレイ画像を生成する場合に、先頭の競走馬を特定し、先頭の競走馬からの各競走馬の相対位置を特定する。なお、位置算出部23は、よりゴールに近いチェックポイントを通過している競走馬が上の順位となるように各競走馬をソートするとともに、通過したチェックポイントが同じ場合は、その区間内で進行方向の距離が大きい競走馬が上の順位となるようにソートすることで、先頭馬を判定する。
【0103】
そして、画像生成部24は、各競走馬の相対位置を各競走馬の帽色や馬番を用いて表したオーバーレイ画像を生成する。このようにして生成された各時刻におけるオーバーレイ画像(画像データ)は、画像出力部25により映像システムに送信され、映像システムによって、レース映像に重畳されることでオーバーレイ表示が行われる。
【0104】
<処理の流れ>
図15は、位置情報生成の処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、あくまで一例として、レース映像のフレームレートに対応する第2の周期で実行される。
【0105】
図15に示すように、位置情報生成部22は、センサ3の個数Kに対応する回数の分、下記のステップS101から下記のステップS105までの処理を反復するループ処理1を実行する。なお、図15には、ステップS101からステップS105までの処理が反復される例を挙げたが、ステップS101からステップS105までの処理は並列して実行されてもよい。
【0106】
すなわち、位置情報生成部22は、描画時刻TLenderingCurrentと、描画遅延に対応する時間差に基づいて、オーバーレイ画像の描画対象として取得済みの位置情報を参照する参照時刻Tを特定する(S101)。
【0107】
続いて、位置情報生成部22は、描画時刻TLenderingCurrentの時点で位置情報取得部21により取得された最新の位置情報の取得時刻Taq_Lastが参照時刻以降であるか否か、すなわち参照時刻T<最新の取得時刻Taq_Lastであるか否かを判定する(S102)。
【0108】
ここで、参照時刻T<最新の取得時刻Taq_Lastである場合(S102:Yes)、位置情報生成部22は、次のように動作する。すなわち、位置情報生成部22は、最新の取得時刻Taq_Lastの位置情報と、最新の取得時刻Taq_Lastの1つの前の取得時刻Taq_LastPreviousの位置情報との間で線形補間を実行することにより、参照時刻Tの位置情報Pを算出する(S103)。
【0109】
一方、参照時刻T<最新の取得時刻Taq_Lastでない場合(S102:No)、位置情報生成部22は、次のように動作する。すなわち、位置情報生成部22は、最新の取得時刻Taq_Lastの位置情報を参照時刻Tの位置情報Pとして複製する(S104)。
【0110】
その後、位置情報生成部22は、ステップS103またはステップS104で得られた描画時刻TLenderingCurrentに対応する位置情報Pを位置情報DB13へ保存する(S105)。
【0111】
このようなループ処理1が反復されることにより、競走馬ごとに描画時刻TLenderingCurrentの位置情報が生成されることになる。さらに、図15に示す処理が第2の周期で実行されることにより、センサ3により第1の周期で測位された位置情報の時系列データがレース映像等の映像データのフレームレートに対応する第2の周期の位置情報の時系列データへリサンプリングされる。
【0112】
図16は、オーバーレイ画像生成の処理の流れを示すフローチャートである。図16に示すように、オーバーレイ装置10の位置算出部23は、処理開始が指示されると(S201:Yes)、設定データDB14から設定情報を読み込む(S202)。
【0113】
続いて、位置算出部23は、各チェックポイントの境界線を算出し(S203)、各チェックポイントの進行方向を算出し(S204)、各曲線区間の中心点を算出する(S205)。
【0114】
このようにして事前準備が終了した後、位置算出部23は、位置測位装置4から位置情報が取得されると(S206:Yes)、各競走馬が位置する区間を特定する(S207)。続いて、位置算出部23は、各競走馬について走行距離を含む位置情報を算出する(S208)。
【0115】
そして、画像生成部24は、先頭馬および各競走馬の相対位置を特定し、相対位置が表されるオーバーレイ画像を生成する(S209)。その後、画像出力部25は、生成されたオーバーレイ画像を映像システム等の宛先に出力する(S210)。
【0116】
ここで、レースが継続中は(S211:No)、S206以降が繰り返され、レースが終了すると(S211:Yes)、オーバーレイ画像生成の処理が終了される。
【0117】
(効果)
上記実施例によれば、オーバーレイ装置10は、センサ3により第1の周期で測位された位置情報の時系列データをレース映像等の映像データのフレームレートに対応する第2の周期の位置情報の時系列データへリサンプリングする。したがって、オーバーレイ装置10は、競走馬等の位置情報の時間変化のシームレスな表示を実現できる。
【実施例0118】
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0119】
(数値等)
上記実施例で用いた数値例、競走馬数、コースの形状、チェックポイントや基準局2等の設定位置や数等は、あくまで一例であり、任意に変更することができる。また、各フローチャートで説明した処理の流れも矛盾のない範囲内で適宜変更することができる。
【0120】
また、オーバーレイ装置10が生成した各競争馬の位置関係を直線上で表した画像は、オーバーレイ表示以外にも用いることができる。例えば、当該画像は、レースの解析、コースの設計、当該画像のみの表示など、様々な用途に用いることができる。
【0121】
(システム)
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0122】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、位置測位装置4とオーバーレイ装置10とを同一の装置で実現することもできる。
【0123】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0124】
(ハードウェア)
図17は、ハードウェア構成例を説明する図である。図17に示すように、オーバーレイ装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図17に示した各部は、バス等で相互に接続される。なお、これら以外にもディスプレイやタッチパネルなどを有することができる。
【0125】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他の装置との通信を行う。HDD10bは、図3に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0126】
プロセッサ10dは、図3に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、図3等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、オーバーレイ装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、位置情報取得部21、位置情報生成部22、位置算出部23、画像生成部24、画像出力部25等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、位置情報取得部21、位置情報生成部22、位置算出部23、画像生成部24、画像出力部25等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0127】
このように、オーバーレイ装置10は、プログラムを読み出して実行することでオーバーレイ方法を実行する情報処理装置として動作する。また、オーバーレイ装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施例でいうプログラムは、オーバーレイ装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、上記実施例が同様に適用されてもよい。
【0128】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布されてもよい。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行されてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10 オーバーレイ装置
11 通信部
12 記憶部
13 位置情報DB
14 設定データDB
15 オーバーレイ画像DB
20 制御部
21 位置情報取得部
22 位置情報生成部
23 位置算出部
24 画像生成部
25 画像出力部
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