(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028057
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】振動台ユニット、振動試験装置、および複合環境試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20240222BHJP
G01M 7/04 20060101ALI20240222BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G01M7/02 C
G01M7/04
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131403
(22)【出願日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000100676
【氏名又は名称】IMV株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】萬井 公一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 龍平
(72)【発明者】
【氏名】山内 佳門
(72)【発明者】
【氏名】島田 啓祐
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA12
2G050EA01
2G050EA02
2G050EB01
(57)【要約】
【課題】温度や湿度などの影響を受けにくくすることにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】振動台ユニット100は、振動発生機150に接続可能であるとともに、供試体Wを取り付け可能である振動台20と、振動台20を振動方向に案内する1または複数のリニアガイド30と、リニアガイド30を支持する支持部40と、支持部40に設けられるとともにリニアガイド30を包囲する外枠部51、および、外枠部51の振動台20側を覆うように配置される遮蔽部71、を有するガイド収容部50と、を備え、遮蔽部71に設けられたガイド用開口部73を介してリニアガイド30と振動台20とが接続されており、ガイド用開口部73の周囲には、振動台20と遮蔽部71との間隙を閉塞するとともに、遮蔽部71に対する振動台20の摺動を許容するシール部材90が設けられている、
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生機に接続可能であるとともに、供試体を取り付け可能である、振動台と、
直線レールと、該直線レールによって案内されるブロックとを有し、前記振動台を振動方向に案内する1または複数のリニアガイドと、
前記リニアガイドを支持する支持部と、
前記支持部に設けられるとともに前記リニアガイドを包囲する外枠部、および、該外枠部の前記振動台側を覆うように配置される遮蔽部、を有するガイド収容部と、
を備え、
前記遮蔽部に設けられたガイド用開口部を介して前記リニアガイドと前記振動台とが接続されており、
前記ガイド用開口部の周囲には、前記振動台と前記遮蔽部との間隙を閉塞するとともに、前記遮蔽部に対する前記振動台の摺動を許容するシール部材が設けられている、
振動台ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の振動台ユニットにおいて、
前記ガイド収容部は、前記リニアガイド毎に隔壁で区画されたガイド室が内部に設けられており、
前記ガイド用開口部は、前記ガイド室毎に設けられている、
振動台ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の振動台ユニットにおいて、
前記ガイド収容部は、前記外枠部と前記ガイド室との間、および隣接して設けられている複数の前記ガイド室の間に、緩衝室が配置されている、
振動台ユニット。
【請求項4】
請求項2に記載の振動台ユニットにおいて、
前記ガイド室には、該ガイド室内の露点を低下させるための気体を供給および排出する、換気装置が設けられている、
振動台ユニット。
【請求項5】
請求項1に記載の振動台ユニットにおいて、
前記シール部材は、
耐摩耗性および低摩擦性を有するシート状材と、
前記シート状材によって抱持される芯材と、を有し、
前記ガイド用開口部の周囲に沿って複数に分割された取付部材によって固定される、
振動台ユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の振動台ユニットと、
前記振動台に接続される振動発生機と、
を備えた、振動試験装置。
【請求項7】
環境試験および振動試験を同時に実行可能な複合環境試験装置であって、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の振動台ユニットと、
前記振動台に接続される振動発生機と、
環境試験条件に適合した環境を内部に作り出すことが可能な試験槽と、
を備え、
前記遮蔽部は、前記試験槽の内壁の一部を構成しており、
前記振動台は、前記試験槽の内部に配置されている、
複合環境試験装置。
【請求項8】
請求項7に記載の複合環境試験装置において、
前記遮蔽部は、前記試験槽の内部環境に対して断熱効果を有する断熱部を有し、
前記リニアガイドと前記振動台との間には、断熱効果を有するスペーサが配置されている、
複合環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動台ユニット、振動台ユニットを備えた振動試験装置、環境試験と振動試験を複合的に行うことができる複合環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用の部品等、種々の物品について振動試験を行うための振動試験装置が知られている。振動試験装置には供試体を取り付け可能な振動台が設けられており、供試体を取り付けた状態で振動台を振動させることにより、振動試験が行われる。振動試験装置によって実際の使用状態を模擬するように供試体を振動させることにより、物品の振動特性や安全性に関する評価を行うことができる。
【0003】
また、自動車部品等の物品を取り巻く実際の使用環境では、振動・衝撃・温度・湿度をはじめとする様々な気象環境と物理的環境がある。これらは複雑に絡み合った複合環境ストレスとして物品に大きく作用する。このため、従来、環境試験と振動試験を複合的に行うことができる複合環境試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された複合環境試験装置は、試験槽、試料取付部、および振動発生機を備えている。試験槽は、高温・低温および高湿・低湿等の環境試験条件に適合した環境を内部に作り出すことが可能である。供試体が取り付けられる試料取付部は、試験槽の内部に配置されている。振動発生機は試料取付部の下方に配置されており、試料取付部を垂直軸方向に振動させて、供試体に対して振動試験条件に適合した振動を与える。
【0005】
一方、複合環境試験装置ではないが、振動台とその下面のベースプレートとの間に高圧の潤滑油を供給し、油膜によって振動台を支持する流体軸受方式の振動試験装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-174404号公報
【特許文献2】特開2015-206728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来、直線レールとこの直線レールに沿って摺動するブロックとを有するリニアガイドが知られている。このようなリニアガイドを例えば上記特許文献2の振動台の軸受として用いることができれば、流体軸受方式よりも簡易な構成で振動台を支持することができると考えられる。
【0008】
しかしながら、リニアガイドには、適正に使用できる使用温度範囲が設定されている。使用温度範囲から外れた高温や低温の温度環境で使用するとリニアガイドの耐久性能が著しく低下する。また、例えば湿度の高い状態で温度を低下させると空気中の水分が結露して、レールに水分が付着したり、リニアガイドの摺動部に用いられている潤滑油に水分が混入しやすくなる。レールに水分が付着するとレールに錆が発生する場合があり、また、潤滑油に水滴や水蒸気が混入すると、潤滑油の油膜強度が低下して摺動部に磨耗が生じやすくなり、リニアガイドの耐久性能が低下する。このため、振動台を支持する機構としてリニアガイドを採用するためには、リニアガイドの使用環境を使用温度範囲内に保ち、空気中の水分量を少ない状態に保つ必要がある。
【0009】
しかしながら、複合環境試験装置では、試験槽の内部に高温・低温および高湿・低湿等の環境試験条件に適合した環境を作り出す必要があり、供試体が取り付けられる振動台はこのような環境が作り出される試験槽の内部に配置されている。振動台を支持するリニアガイドも、試験槽の内部の高温・低温および高湿・低湿等の影響を受けることとなり、リニアガイドの耐久性能が低下しやすくなる。このため、振動台を支持する軸受機構としてリニアガイドを採用することは困難であった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、温度や湿度などの影響を受けにくくすることにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させること、特に、複合環境試験のように振動台および供試体を高温・低温および高湿・低湿等の環境に置く場合においても、リニアガイドがこれらの影響を受けにくいようにして、リニアガイドの耐久性能を向上させることができる、振動台ユニット、振動試験装置、および複合環境試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明の振動台ユニットは、
振動発生機に接続可能であるとともに、供試体を取り付け可能である、振動台と、
直線レールと、該直線レールによって案内されるブロックとを有し、前記振動台を振動方向に案内する1または複数のリニアガイドと、
前記リニアガイドを支持する支持部と、
前記支持部に設けられるとともに前記リニアガイドを包囲する外枠部、および、該外枠部の前記振動台側を覆うように配置される遮蔽部、を有するガイド収容部と、
を備え、
前記遮蔽部に設けられたガイド用開口部を介して前記リニアガイドと前記振動台とが接続されており、
前記ガイド用開口部の周囲には、前記振動台と前記遮蔽部との間隙を閉塞するとともに、前記遮蔽部に対する前記振動台の摺動を許容するシール部材が設けられている(第1の構成)。
【0012】
上記構成によれば、ガイド用開口部の周囲には、振動台と遮蔽部との間隙を閉塞するとともに、遮蔽部に対する振動台の摺動を許容するシール部材が設けられている。
このため、ガイド収容部内と振動台とが隔離された状態となり、ガイド収容部内に配置されるリニアガイドが温度や湿度などの影響を受けにくくなる。これにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
特に、振動台ユニットが複合環境試験に用いられて、振動台および供試体を高温・低温および高湿・低湿等の環境に置く場合においても、リニアガイドがこれらの影響を受けにくくなり、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
【0013】
本発明の振動台ユニットの具体構成として、以下の構成が挙げられる。
上記第1の構成において、
前記ガイド収容部は、前記リニアガイド毎に隔壁で区画されたガイド室が内部に設けられており、
前記ガイド用開口部は、前記ガイド室毎に設けられてもよい(第2の構成)。
【0014】
上記構成によれば、ガイド収容部は、リニアガイド毎に隔壁で区画されたガイド室が内部に設けられている。
このため、ガイド収容部内のガイド室と振動台とが隔離された状態となり、ガイド室内に配置されるリニアガイドが温度や湿度などの影響を受けにくくなる。これにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
また、ガイド用開口部は、ガイド室毎に設けられているため、ガイド用開口部の開口面積を小さくすることができ、ガイド収容部内のガイド室と振動台とを隔離しやすくなる。
【0015】
上記第2の構成において、
前記ガイド収容部は、前記外枠部と前記ガイド室との間、および隣接して設けられている複数の前記ガイド室の間に、緩衝室が配置されてもよい(第3の構成)。
【0016】
上記構成によれば、ガイド収容部は、外枠部とガイド室との間、および隣接して設けられている複数のガイド室の間に、緩衝室が配置されている。
このため、ガイド収容部の外側とガイド室とが緩衝室によってさらに隔離された状態となり、ガイド室内に配置されるリニアガイドが温度や湿度などの影響を受けにくくなる。これにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
【0017】
上記第2の構成において、
前記ガイド室には、該ガイド室内の露点を低下させるための気体を供給および排出する、換気装置が設けられてもよい(第4の構成)。
【0018】
上記構成によれば、ガイド室の内部には、ガイド室内の露点を低下させるための気体が換気装置によって供給および排出される。
このため、ガイド室内に配置されるリニアガイドが温度や湿度などの影響を受けにくくなり、特に結露が抑制される。これにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
【0019】
上記第1の構成において、
前記シール部材は、
耐摩耗性および低摩擦性を有するシート状材と、
前記シート状材によって抱持される芯材と、を有し、
前記ガイド用開口部の周囲に沿って複数に分割された取付部材によって固定されてもよい(第5の構成)。
【0020】
上記構成によれば、シール部材として、耐摩耗性および低摩擦性を有するシート状材と芯材を用いている。
このため、ガイド用開口部の形状に合わせてシール部材を配置することができる。また、取付部材が複数に分割されているため、シール部材の取付が容易である。
【0021】
本発明の振動試験装置は、
上記第1から第5のいずれかの構成の振動台ユニットと、
前記振動台に接続される振動発生機と、
を備える(第6の構成)。
【0022】
上記構成によれば、振動発生機に接続される振動台ユニットは、ガイド収容部内と振動台とが隔離された状態となり、ガイド収容部内に配置されるリニアガイドが温度や湿度などの影響を受けにくくなる。これにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
このため、振動台の軸受としてリニアガイドを用いることができ、振動試験装置を簡易な構成にすることができる。
【0023】
本発明の複合環境試験装置は、
上記第1から第5のいずれかの構成の振動台ユニットと、
前記振動台に接続される振動発生機と、
環境試験条件に適合した環境を内部に作り出すことが可能な試験槽と、
を備え、
前記遮蔽部は、前記試験槽の内壁の一部を構成しており、
前記振動台は、前記試験槽の内部に配置されている(第7の構成)。
【0024】
上記構成によれば、試験槽の内部に配置されている振動台とガイド収容部内とが隔離された状態となる。このため、複合環境試験において、振動台および供試体が高温・低温および高湿・低湿等の環境に置かれた場合においても、リニアガイドがこれらの影響を受けにくくなり、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
【0025】
上記第7の構成において、
前記遮蔽部は、前記試験槽の内部環境に対して断熱効果を有する断熱部を有し、
前記リニアガイドと前記振動台との間には、断熱効果を有するスペーサが配置されてもよい(第8の構成)。
【0026】
上記構成によれば、遮蔽部には、断熱部が設けられ、リニアガイドと振動台との間には、断熱効果を有するスペーサが配置されている。
このため、ガイド収容部内と振動台とがより断熱された状態となり、ガイド収容部内に配置されるリニアガイドが温度の影響を受けにくくなる。これにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の振動台ユニット、振動試験装置、および複合環境試験装置によれば、温度や湿度などの影響を受けにくくすることにより、振動台を支持するリニアガイドの耐久性能を向上させることができ、特に、複合環境試験のように振動台および供試体を高温・低温および高湿・低湿等の環境に置く場合においても、リニアガイドがこれらの影響を受けにくくすることで、リニアガイドの耐久性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る複合環境試験装置をX軸方向から見た側面図である。
【
図2】
図2は、複合環境試験装置をZ軸方向から見た平面図である。
【
図4】
図4は、振動台および遮蔽部を除いた振動台ユニットの平面図である。
【
図5】
図5は、振動台を除いた振動台ユニットの平面図である。
【
図6】
図6は、
図5のA‐A線において切断した断面図である。
【
図7】
図7は、
図5のB‐B線において切断した断面図である。
【
図11】
図11は、シール部材をガイド用開口部の周囲に取り付ける状態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、ガイド用開口部の周囲にシール部材を取り付けた状態を示すとともに、シール部材の重複部を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る振動台ユニット100、振動試験装置200、および複合環境試験装置400について詳しく説明する。
【0030】
図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0031】
以下の説明では、Z軸方向を鉛直方向とし、Y軸方向を水平方向とし、X軸方向をYZ平面に垂直な水平方向とする。なお、以下では、+Z軸方向を複合環境試験装置400の上方、-Z軸方向を下方、+Y軸方向を複合環境試験装置400の前方、-Y軸方向を後方、+X軸方向を複合環境試験装置400の右方、-X軸方向を左方として説明する場合がある。
【0032】
[全体構成]
まず、複合環境試験装置400の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る複合環境試験装置400をX軸方向から見た側面図である。
図2は、複合環境試験装置400をZ軸方向から見た平面図である。
【0033】
図1および
図2に示すように、複合環境試験装置400は、供試体Wに対して環境試験と振動試験を複合的に行うことができる試験装置である。複合環境試験装置400は、振動台ユニット100、振動発生機150、および試験槽300を備えている。本実施形態に係る振動台ユニット100は、供試体Wを上部に取り付け可能な振動台20を有している。振動台20は、振動発生機150に接続されており、水平方向(Y軸方向)に加振される。振動台ユニット100と振動発生機150は、振動試験装置200を構成している。振動台20に供試体Wを取り付けた状態で振動台20を振動させることにより、試験槽300の内部で振動試験を行うことができる。
【0034】
試験槽300は、内部に試験空間310を有しており、高温・低温および高湿・低湿等の環境試験条件に適合した環境を試験空間310内に作り出すことが可能である。試験空間310を環境試験条件に適合する環境にした状態で、振動試験を行うことにより、供試体Wに振動・衝撃・温度・湿度等の様々な環境ストレスが作用した状態で、供試体Wの振動特性や安全性に関する評価を行うことができる。
図1では、試験槽300の一部を破断して、試験空間310内が見えるようにしている。
図2では、試験槽300の上部(試験槽本体330)を移動させて、試験槽300の底部(試験槽基部320)および振動台ユニット100が見えるようにしている。
【0035】
図1、
図2では、複合環境試験装置400は、供試体WをY軸方向(水平方向)に振動させる状態を示しているが、必要に応じて振動発生機150の姿勢を切り替えて、供試体WをZ軸方向(鉛直方向)に振動させることも可能である。供試体WをZ軸方向(鉛直方向)に振動させる場合、振動発生機150と振動台20の接続を解除し、振動発生機150の姿勢を切り替えて振動軸L1(
図3参照)を鉛直上方に向けるとともに、試験槽300の位置を振動発生機150の上方に移動させる。以下の説明では、振動軸L1の向きをY軸方向に向け、供試体WをY軸方向(水平方向)に振動させる場合について説明する。
【0036】
図1に示すように、振動台ユニット100は、振動台20、リニアガイド30、支持部40、およびガイド収容部50を有している。振動台ユニット100は、基台11に支持されており、基台11は、床面Fに固定されている。振動台ユニット100は、試験槽300の底部の一部を構成するように配置されており、振動台20およびガイド収容部50の上面が試験空間310内に露出している。このため、振動台20およびガイド収容部50の上面は、試験空間310内に作り出された高温・低温および高湿・低湿等の環境に晒されることとなる。
【0037】
振動台20は、振動台ユニット100の上部において水平に配置されている。振動台20は、金属板で構成されており、供試体取付部21および挿通部23を有している(
図2参照)。供試体取付部21は、供試体Wを取り付け可能な部分であり、試験空間310内に配置されている。挿通部23は、供試体取付部21から振動発生機150側に延びており、試験槽300に設けられている挿通開口部327を介して、試験槽300の内部から外部に突出している。挿通部23の端部は、接続部159を介して振動発生機150に接続されている。挿通開口部327は、振動台20の水平方向の振動を許容するとともに、試験空間310の気密性を保つように構成されている。
【0038】
リニアガイド30は、振動台20を水平方向に支持するとともに、振動発生機150によるY軸方向の振動方向に振動台20を案内する。リニアガイド30は、振動台20(供試体取付部21)の大きさや幅に応じて1または複数基が設けられる。本実施形態では、リニアガイド30は、3基設けられている(
図2参照)。リニアガイド30は、ガイドレール31と、ガイドレール31によって案内されるブロック33とを有している。
【0039】
支持部40は、振動台ユニット100の底部を構成する部分である。支持部40は、リニアガイド30およびガイド収容部50を支持している。支持部40は、金属板で構成されており、基台11によって支持されている。
【0040】
ガイド収容部50は、リニアガイド30の側部および上部を包囲する部材である。本実施形態では、ガイド収容部50は、支持部40に取り付けられており、支持部40を底部とする略箱状に構成されている。ガイド収容部50は、試験槽300の試験空間310からリニアガイド30を隔離して、リニアガイド30が温度や湿度などの影響を受けにくくするために設けられている。
【0041】
振動発生機150は、基台170によって支持されており、振動軸L1(
図3参照)をY軸方向(水平方向)に向けた状態に配置されている。基台170は床面Fに固定されている。振動発生機150を支持する基台170は、振動台ユニット100を支持する基台11と一体に構成されてもよい。振動発生機150は、振動台20に供試体Wを保持した状態で振動台20を振動させることにより、振動試験を行うことができる。本実施形態の振動発生機150は動電型振動発生機であり、駆動制御部によって振動発生機150に印加する電流および電圧を制御することにより、振動発生機150の駆動を制御して、所望の周波数、振幅、速度、加速度、振動パターンなど、振動試験に必要な振動を供試体Wに加えることができる。
【0042】
試験槽300は、本実施形態では、略立方体の外形を有している。試験槽300は、上下方向に2分割となるように構成されており、試験槽基部320および試験槽本体330を有している。試験槽基部320および試験槽本体330は、ともに断熱性を有する断熱壁で構成されている。試験槽基部320は、振動台ユニット100のガイド収容部50を取り囲むように配置され、基台11に支持されている。試験槽本体330は、移動装置(図示せず)に支持されており、上下方向および前後方向に移動可能である。試験槽本体330が試験槽基部320の上部に載置されることで、
図1に示すように、試験槽基部320および試験槽本体330によって、内部に試験空間310が構成される。
図2では、試験槽本体330を移動させた状態を平面視で示しており、試験槽300の底部(試験槽基部320)および振動台ユニット100が見えている。
【0043】
試験槽基部320は、試験槽底部321および載置壁部323を有している。試験槽底部321は、平面形状が略方形であり、中央部にガイド収容部50を突出させるための底部開口部325が形成されている(
図2参照)。試験槽底部321の上面、およびガイド収容部50の上面は、試験空間310の底部を構成している。
【0044】
試験槽底部321の周縁部には、載置壁部323が立設されている。載置壁部323には、挿通開口部327を構成するために上方が開放された凹部が形成されている。載置壁部323の上部に試験槽本体330が載置されることにより、凹部の上方が閉じられて挿通開口部327が構成される。載置壁部323の上部には、試験槽本体330が載置された状態で試験槽本体330との気密性を確保するためのパッキンが設けられている。
【0045】
試験槽本体330は、天壁部331および側壁部333を有している。天壁部331は、平面形状が試験槽底部321と同形状であり略方形である。側壁部333は、試験槽本体330の前面部、後面部、右面部および左面部を構成している。本実施形態では、試験槽本体330の右面部(
図1の紙面手前側)に開閉扉(図示せず)が設けられている。開閉扉は、試験槽300の内部の振動台20に供試体Wを取り付ける作業等を行うために設けられている。
【0046】
試験槽300には、環境生成装置(図示せず)が接続されている。環境生成装置は、試験空間310内に高温・低温および高湿・低湿等の環境試験条件に適合した環境を作り出す装置である。環境生成装置には、加熱部、冷却部、加湿部、送風機、制御部等が設けられている。また、試験槽300の内部には、試験空間310の状態を検知する温度センサ、湿度センサ等が設けられている。
【0047】
ここで振動発生機150の構成の一例について説明する。
図3は、振動発生機150の断面図である。
図3に示すように、本実施形態の振動発生機150は動電型振動発生機であり、2つの励磁コイル151a,151b、ヨーク152およびドライブコイル153を備えている。ヨーク152は、強磁性体によって形成された第1~第3の3つのヨーク部152a、152b、152cを一体的に組み合わせてなり、第1ヨーク部152aの外周面と第2ヨーク部152bの内周面との間に、磁気ギャップが形成されている。
【0048】
第2ヨーク部152bの内周面には、その中心軸(振動軸L1)の方向に離隔した状態で励磁コイル151a,151bが並んで取り付けられている。励磁コイル151a,151bは、第3ヨーク部152cと、第1ヨーク部152aの外鍔152dとによって位置決めされている。3つのヨーク部152a、152b、152cの材料としては、高透磁率で高強度の磁性材料、例えばSS400等の低炭素鋼を用いることができる。
【0049】
ドライブコイル153は、非磁性体からなる筒体154の基端側(
図3における左端部)の外周面に巻回されている。ドライブコイル153は、励磁コイル151a,151bとヨーク152との間の磁気ギャップ内に、励磁コイル151a,151bおよびヨーク152とは非接触の状態で挿入されている。なお、筒体154の材料としては、非磁性体の高強度の金属(例えばアルミニウム合金)や、合成樹脂(例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics))等を用いることができる。
【0050】
ドライブコイル153および筒体154は、振動軸L1の方向である前後方向に進退可能に設けられている。すなわち、駆動制御部によって電力増幅器を介して励磁コイル151a,151bに直流電流を供給することにより、励磁コイル151a,151bを取り巻くヨーク152内に磁気回路(静磁場)が生成される。ヨーク152には上述したような磁気ギャップが形成されており、ここにも静磁場が生成される。
【0051】
そして、磁気ギャップ内に配置されたドライブコイル153に、駆動制御部によって所定周波数の交流電流を供給することで、この交流電流と静磁場との相互作用(ローレンツ力)により、ドライブコイル153が磁束の方向と直交する方向において、交互に向きの変化する力を受けるようになる。これによりドライブコイル153および筒体154は、交流電流の周波数に応じて前後方向に振動する。
【0052】
振動する筒体154の先端側(
図3の右端側)には、接続部159を介して振動台20が接続されており、ドライブコイル153および筒体154の振動に伴って前後方向に振動する。また、筒体154の内部には、ドライブコイル153および筒体154の水平方向のスライドを案内する案内棒157および複数のガイドローラ158が設けられている。ガイドローラ158は、第1ヨーク部152aの内壁面に支持されている。
【0053】
このように構成された振動発生機150は、駆動制御部によって制御されることにより、ドライブコイル153および筒体154を一体として振動軸L1の方向(前後方向:Y軸方向)に振動させることができる。この振動が接続部159を介して振動台20に伝達され、その上に取り付けられた供試体Wとともに振動し、供試体Wへの水平加振が行われる。
【0054】
続いて、振動台ユニット100の構成についてさらに詳細に説明する。
図4は、振動台20および遮蔽部71を除いた振動台ユニット100の平面図である。
図5は、振動台20を除いた振動台ユニット100の平面図である。
【0055】
振動台ユニット100は、振動台20、リニアガイド30、支持部40、およびガイド収容部50を有している(
図1参照)。
図4では、振動台ユニット100のうち、ガイド収容部50の上部に配置される振動台20が取り外され、さらにガイド収容部50を構成する遮蔽部71が取り外された状態を示している。このため
図4では、ガイド収容部50の内部が見えている。
図5では、
図4の状態に対して、ガイド収容部50の上部に遮蔽部71を取り付けた状態を示している。このため
図5では、遮蔽部71に設けられたガイド用開口部73を介してリニアガイド30が見えている。
【0056】
図4、
図5に示すように、ガイド収容部50は、外枠部51、ガイド室55、緩衝室61、および遮蔽部71を有している。
図4に示すように外枠部51およびガイド室55は、支持部40に取り付けられている。外枠部51は、平面視で略方形の枠状の部材である(
図6、
図7参照)。外枠部51は、板金で形成されており、支持部40に対して立設された外壁部53によって、3基のリニアガイド30および3基のガイド室55の外側を包囲している。
【0057】
各ガイド室55は、平面視で略長方形の枠状の部材である。ガイド室55は、それぞれ支持部40に対して立設された隔壁57によって区画されている。各ガイド室55は、それぞれ隔壁57によってリニアガイド30を包囲している(
図6、
図7参照)。ガイド室55は、板金で形成されており、外枠部51を構成する外壁部53と、ガイド室55を構成する隔壁57のそれぞれの高さは同等である。
【0058】
外枠部51と各ガイド室55との間、および隣接して設けられているガイド室55の間には、緩衝室61が構成されている。緩衝室61は、外枠部51と各ガイド室55との間、および隣接して設けられているガイド室55の間の間隙によって形成されている。つまり、外枠部51の外壁部51と各ガイド室55の隔壁57によって緩衝室61が区画されている。
【0059】
図5に示すように、遮蔽部71は、外枠部51の振動台20側を覆うように配置されている。具体的には、遮蔽部71は、外枠部51を構成する外壁部53と、ガイド室55を構成する隔壁57を跨ぐように載置され、外壁部53および隔壁57のそれぞれの上部に対して固定されている(
図7参照)。
【0060】
遮蔽部71には、ガイド用開口部73が設けられている。ガイド用開口部73は、ガイド室55毎に設けられており、それぞれリニアガイド30に対応する位置に設けられている。このため、ガイド用開口部73を介してリニアガイド30と振動台20とを接続することが可能である(
図6参照)。本実施形態では、遮蔽部71は、3分割されており、ガイド室55毎に設けられている。
【0061】
このように、外枠部51の上部が遮蔽部71によって遮蔽されることにより、各ガイド室55、および緩衝室61は、互いに独立した区画となる。各ガイド室55の内部に配置されているリニアガイド30は、ガイド用開口部73を介して振動台20と接続されている他は、ガイド収容部50の外側の空間、すなわち試験空間310から隔離された状態となる。
【0062】
このため、ガイド室55内に配置されるリニアガイド30が試験空間310や振動台20からの温度や湿度などの影響を受けにくくなる。これにより、リニアガイド30の耐久性能を向上させることができる。また、ガイド用開口部73は、ガイド室55毎に設けられているため、ガイド用開口部73の開口面積を小さくすることができ、ガイド収容部50内のガイド室55と振動台20とを隔離しやすくなる。
【0063】
また、緩衝室61は、遮蔽部71によって遮蔽されることにより、ガイド収容部50の外側の空間、および各ガイド室55に対して気密性が保たれた区画となる。このため、ガイド収容部50の外側とガイド室55とが緩衝室61によってさらに隔離された状態となり、ガイド室55内に配置されるリニアガイド30が温度や湿度などの影響を受けにくくなる。これにより、リニアガイド30の耐久性能をより向上させることができる。
【0064】
ガイド用開口部73の周囲には、シール部材90が設けられている。シール部材90は、ガイド用開口部73の周囲において、リニアガイド30に接続される振動台20の下面と、遮蔽部71との間に生じる間隙を閉塞して、ガイド室55の気密性を保つものである。またシール部材90は、振動台20の下面に密着するが、シール部材90に対する振動台20の摺動を許容している。
【0065】
シール部材90により、ガイド収容部50内と振動台20とが隔離された状態となり、ガイド収容部50内に配置されるリニアガイド30が、試験空間310からの温度や湿度などの影響を受けにくくなる。これにより、リニアガイド30の耐久性能を向上させることができる。シール部材90については後に詳細に説明する。
【0066】
図6は、
図5のA‐A線において切断した断面図である。
図7は、
図5のB‐B線において切断した断面図である。
図6および
図7に示すように、リニアガイド30のガイドレール31は、支持スペーサ35を介して支持部40に固定されている。ガイドレール31には、それぞれ2台のブロック33が取り付けられている。各ブロック33は、スペーサ37を介して振動台20の下面に固定されている。ここでスペーサ37の素材として、断熱性を有する素材を用いることが好ましい。スペーサ37が断熱性を有することにより、試験空間310内に配置される振動台20からの低温または高温がブロック33やガイドレール31に伝熱されにくくなり、リニアガイド30の温度を使用温度範囲内に維持しやすくなる。スペーサ37の素材として、例えばエポキシガラスクロスを用いることができる。
【0067】
外枠部51を構成する外壁部53は、外壁部主体531、下部フランジ532、および上部フランジ533を有している。下部フランジ532がボルトで支持部40に固定されることにより、外壁部53は、支持部40に対して立設されている。上部フランジ533には、遮蔽部71が載置されるとともにボルトによって固定されている。
【0068】
ガイド室55を構成する隔壁57は、隔壁主体571、下部フランジ572、および上部フランジ573を有している。下部フランジ572がボルトで支持部40に固定されることにより、隔壁57は、支持部40に対して立設されている。上部フランジ573には、遮蔽部71が載置されるとともにボルトによって固定されている。
【0069】
外枠部51の上部フランジ533と、ガイド室55の上部フランジ573を跨ぐように遮蔽部71が取り付けられることにより、外壁部53、隔壁57および遮蔽部71によって区画された緩衝室61が構成される。緩衝室61の内部には、断熱性を高めるためにガラスウール63等が充填されている。遮蔽部71の上面および外壁部53の外面には、断熱部材65が取り付けられている。断熱部材65は、遮蔽部71からガイド室55に試験空間310からの低温または高温が伝導されることを抑制する。断熱部材65として、例えば、断熱性と耐熱性を有するシリコンスポンジを用いることができる。
【0070】
図6に示すように、各ガイド室55には、換気装置80が設けられている。換気装置80は、ガイド室55内を換気することによりガイド室55内の露点を低下させるとともに、各ガイド室55内の温度をリニアガイド30の使用温度範囲に保つために設けられている。
【0071】
本実施形態では、各ガイド室55の両端部の隔壁57に気体供給ノズル81が設けられており、気体供給装置(図示せず)から供給された気体が気体供給ノズル81を介して各ガイド室55内に供給される。各ガイド室55の底部(支持部40)には、気体排出孔83が設けられており、気体排出孔83から排出された気体は、気体回収装置(図示せず)に回収される。気体供給装置から供給される気体として、例えば、乾燥した空気や乾燥した窒素ガス等を用いることができる。気体回収装置で回収された気体は、乾燥処理等を経て、再利用されるようにしてもよい。
【0072】
換気装置80により、ガイド室55内に配置されるリニアガイド30が温度や湿度などの影響を受けにくくなり、特に結露が抑制される。これにより、リニアガイド30の耐久性能を向上させることができる。
【0073】
本実施形態では、各ガイド室55の両端部から気体を供給し、各ガイド室55の底部から気体を排出するようにしたが、気体の供給位置および排出位置はこれに限定されない。例えば、各ガイド室55の長手方向における一端部や、短手方向における側部から気体を供給するようにしてもよい。
【0074】
また、換気装置80によって各ガイド室55の内圧が、周辺よりもわずかに高くなることが好ましい。各ガイド室55の内圧を高くすることにより、各ガイド室55内に、試験空間310からの高温・低温および高湿・低湿等の空気を侵入させにくくすることができる。
【0075】
図8は、
図7における領域C付近の拡大図である。
図8に示すように、遮蔽部71のガイド用開口部73の周囲には、シール部材90が設けられている。シール部材90は、リニアガイド30に接続される振動台20の下面と、遮蔽部71との間に生じる間隙を閉塞して、試験槽300の試験空間310内に作り出される高温・低温および高湿・低湿等の環境から、ガイド室55の内部およびリニアガイド30を隔離している。また、振動台20は、振動発生機150によって遮蔽部71に対して水平方向に振動する。このため、シール部材90は、振動台20の摺動を許容できるよう、耐摩耗性および低摩擦性を有している。
【0076】
シール部材90は、ガイド用開口部73の開口端部側にできるだけ接近させた位置に配置されている。シール部材90によって取り囲まれる範囲をできるだけ小さくすることにより、振動台20から伝熱される低温または高温が、ガイド室55内に伝達されにくいようにしている。また、遮蔽部71の上面には、断熱部材65が取り付けられている。このため、シール部材90は、断熱部材65よりも上方に突出するように配置されている。
【0077】
図9は、
図8における領域D付近の拡大図である。
図9に示すように、シール部材90は、振動台20の下面に密着している。シール部材90は、ガイド用開口部73の周囲に沿って取付部材95および固定ボルト96によって遮蔽部71に対して固定されている。シール部材90のガイド用開口部73側の側面は、ガイド用開口部73に沿って固定された側面支持部97によって支持されている。シール部材90が取付部材95および側面支持部97によって挟まれた状態で固定されることにより、シール部材90が振動台20から下向きの荷重を受けても変形やヘタリを生じさせにくくなる。このため、シール部材90が振動台20の下面に均一な面圧で接触した状態を保つことができる。
【0078】
図10は、シール部材90の構成を示す図である。
図11は、シール部材90をガイド用開口部73の周囲に取り付ける状態を示す断面図である。
図10に示すように、本実施形態におけるシール部材90は、シート状材91および芯材93によって構成されている。シート状材91は、耐摩耗性、低摩擦性、および耐熱性を有する素材を用いることが好ましい。シート状材91として、フッ素樹脂の一種であるPTFE(Polytetrafluoroethylene)製シートを用いることができる。芯材93としては、おなじく耐摩耗性、低摩擦性、および耐熱性を有する素材を用いることが好ましく、例えばゴム素材で形成された芯材を用いることができる。
【0079】
図10(a)~
図10(c)を参照して、シート状材91および芯材93を用いてシール部材90を構成する手順の一例を説明する。
図10(a)は、ガイド用開口部73の周囲の長さよりも長尺のシート状材91を長手方向に沿った仮想の中心線で折り返した状態を示している。シート状材91の折り返し部分の内側には、芯材93を配置している。
図10(b)は、シート状材91の内面同士を重ね、折り返し部分の内側に芯材93を抱持させた状態を示している。
【0080】
図10(a)および
図10(b)に示すように、シート状材91には、長手方向に沿った所定の位置に予め貫通孔98および切り込み部99を複数形成している。貫通孔98は、シール部材90をガイド用開口部73の周囲に固定する際に固定ボルト96を挿通させるための孔である。貫通孔98は、固定ボルト96で固定する位置に対応させるように形成する。
【0081】
切り込み部99は、シール部材90をガイド用開口部73の湾曲部に合わせて湾曲させやすくするための切り込みである。切り込み部99は、ガイド用開口部73の湾曲部の位置に対応させて形成する。仮想線94は、シート状材91を重ねた部分を屈曲させる位置を示している(
図10c参照)。切り込み部99は、シート状材91の長辺の縁部から仮想線94まで形成している。
【0082】
シール部材90をガイド用開口部73の周囲に取り付ける際には、
図10(b)の状態から
図10(c)の状態に示すように、シート状材91を重ねた部分を屈曲させながらガイド用開口部73の周囲に取り付ける。
【0083】
続いて
図11を参照して、シール部材90を遮蔽部71のガイド用開口部73の周囲に取り付ける手順を説明する。
図11(a)に示すように、ガイド用開口部73の周縁部には、全周にわたって側面支持部97が設けられている。また、遮蔽部71の上面には断熱部材65が設けられている。側面支持部97と断熱部材65との間には、シール部材90を固定する取付部材95を取り付けるための空間が確保されている。この空間にシール部材90を載置した状態で、取付部材95を遮蔽部71に対して固定ボルト96を用いて固定する。これにより、
図11(b)に示すように、シール部材90は、取付部材95と遮蔽部71によって挟持された状態となって固定される。
【0084】
図12は、ガイド用開口部73の周囲にシール部材90を取り付けた状態を示すとともに、シール部材90の重複部90Aを拡大した平面図である。
図12に示すように、シール部材90の長さは、ガイド用開口部73の周囲の長さよりも長く設定されている。このため、シール部材90の両端部は、ガイド用開口部73の周縁部おいて端部を突き当てるのではなく、端部付近の側部同士が密着するように配置して重複部90Aを形成する。言い換えると重複部90Aは、シール部材90の両端部を互い違いに平行に配置した部分である。その状態で、取付部材95(95A)で固定することにより、取付部材95Aおよび側面支持部97によって重複部90Aを構成するシール部材90の端部の側面同士を強く密着するように挟持することができる。これにより、気密性を確保することができる。
【0085】
シール部材90を固定する取付部材95は、ガイド用開口部73の周囲に沿って複数に分割されている(
図5参照)。このため、シール部材90を短い間隔でガイド用開口部73の周囲に位置決めしながら、分割された取付部材95を用いて固定することができる。これにより、ガイド用開口部73の周囲に沿って、長尺のシール部材90を容易に取り付けることができる。
【0086】
図12に示すように、シール部材90の重複部90Aに配置する取付部材95(95A)は、重複部90A以外に配置する取付部材95とは構成が異なっている。重複部90Aでは、他の部分と異なりシール部材90が2重になって厚みが増している。取付部材95Aと側面支持部97との間隔を他の取付部材95と側面支持部97との間隔よりも広くするため(
図11参照)、取付部材95Aの幅LSAを、他の取付部材95の幅LSよりも小さくしている。また、取付部材95Aの厚みも、他の取付部材95の厚みよりも小さくしている。このように、取付部材95Aの幅LSAを小さくし、厚みを薄くすることにより、シール部材90の重複部90Aを取り付ける取付部材95Aの上面の高さは、他の取付部材95の上面と同じ高さとなっている。
【0087】
なお、重複部90Aは、ガイド用開口部73における直線部分において形成することが好ましい。直線部分であれば、重複部90Aを長くしやすく、また、シール部材90の端部付近の側部同士を均一な接触圧力で密着させやすいためである。
【0088】
図5に示すように、シール部材90の重複部90Aは、ガイド用開口部73ごとに形成される。それぞれのガイド用開口部73の重複部90Aは、他のガイド用開口部73に対向する位置に配置されることが好ましい。言い換えると、ガイド収容部50の外側に配置されるガイド用開口部73では、重複部90Aは、ガイド収容部50の内側に向けて配置されることが好ましい。このように重複部90Aを配置することにより、試験空間310内の雰囲気が重複部90Aから侵入しにくくなり、また、ガイド収容部50の外側に重複部90Aを露出させにくくすることができる。
【0089】
また、振動台ユニット100の許容偏心モーメントを増やすことを考慮すると、振動台20を支持するリニアガイド30の位置は、振動台20のなるべく外縁部付近に配置されることが好ましい。ガイド収容部50の外側に配置されるガイド用開口部73において、重複部90Aをガイド収容部50の内側に向けて配置することにより、ガイド収容部50の外側に重複部90Aを露出させないようしながら、リニアガイド30およびガイド用開口部73をできるだけ振動台20の外縁部付近に配置することができる。
【0090】
以上説明した本実施形態に係る複合環境試験装置400によれば、試験槽300の内部に配置されている振動台20とガイド収容部50内とが隔離された状態となる。このため、複合環境試験において、振動台20および供試体Wが高温・低温および高湿・低湿等の環境に置かれた場合においても、リニアガイド30がこれらの影響を受けにくくなり、振動台20を支持するリニアガイド30の耐久性能を向上させることができる。
【0091】
[変形例]
今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0092】
本実施形態における振動台ユニットの構成は一例にすぎず、他の種々の構成が考えられる。例えば、ガイド収容部の形状や構成は、本実施形態の外枠部51、ガイド室55、緩衝室61、および遮蔽部71の形状や構成に限定されない。また、シール部材90はシート状材91および芯材93によって構成されるとしたが、この構成に限定されない。例えば、シール部材は、PTFE素材を用いて一体的に構成されてもよいし、他の形状に形成してもよい。
【0093】
水平振動発生機150の構成も一例にすぎず、他の種々の構成の振動発生機を用いることができる。例えば水平振動発生機150の励磁コイルの数を変更してもよい。励磁コイルの代わりに永久磁石を用いてもよい。ヨークの組み合わせを他の組み合わせに変更してもよい。また、サーボモータ等を利用した動電型以外の振動発生機を用いてもよい。
【0094】
試験槽300の構成も一例にすぎず、他の種々の構成の試験槽を用いることができる。この場合、本実施形態に係る振動台ユニット100や振動試験装置200を他の構成の試験槽に組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0095】
本実施形態では、前後方向(Y軸方向)の水平振動発生機のみを備えた場合について説明したが、左右方向(X軸方向)の水平振動発生機をさらに備える構成としてもよい。この場合、振動台が前後方向(Y軸方向)および左右方向(X軸方向)に振動可能となるように、前後方向(Y軸方向)に向けられたY軸リニアガイドと、左右方向(X軸方向)に向けられたX軸リニアガイドを組み合わせて用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、振動台ユニット、振動台ユニットを備えた振動試験装置、環境試験と振動試験を複合的に行うことができる複合環境試験装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
100 振動台ユニット
200 振動試験装置
400 複合環境試験装置
150 振動発生機
20 振動台
30 リニアガイド
40 支持部
50 ガイド収容部
51 外枠部
71 遮蔽部
73 ガイド用開口部
90 シール部材
W 供試体