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  • 特開-温熱具 図1
  • 特開-温熱具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028075
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】温熱具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/03 20060101AFI20240222BHJP
   A61F 7/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61F7/08 314
A61F7/08 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180760
(22)【出願日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2022130020
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514293008
【氏名又は名称】株式会社東亜産業
(72)【発明者】
【氏名】劉 凱鵬
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA01
4C099CA19
4C099EA05
4C099GA02
4C099HA01
4C099HA08
4C099JA03
4C099LA09
(57)【要約】
【課題】
別途電源等の動力源、消耗品を必要とせず、手軽で経済的にも環境的にも有利であるとともに、より所望の温度に近い温度で継続的に温熱することができ、健康・環境面でも好適な蓄熱材料を使用した温熱具を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る温熱具1は、袋状の外装部材11と、外装部材11に内包される蓄熱材料12と、を備え、蓄熱材料12は凝固温度が30℃以上である、トリステアリン、トリパルチン、トリミリスチンまたは分子量1000以上のポリエチレングリコールのいずれか一種類以上を含む相転移素材が使用されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の一部に対して使用される温熱具であって、
袋状の外装部材と、
前記外装部材に内包される蓄熱材料と、を備え、
前記蓄熱材料に相転移素材が使用される、
ことを特徴とする温熱具。
【請求項2】
前記相転移素材は、凝固温度が30℃以上である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の温熱具。
【請求項3】
前記相転移素材は、トリステアリン、トリパルチン、トリミリスチン、飽和脂肪酸または分子量1000以上のポリエチレングリコールのいずれか一種類以上を含む、
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の温熱具。
【請求項4】
前記外装部材がリング状、円板状または多角形状である、
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の温熱具。
【請求項5】
前記外装部材がポリウレタン系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムを含む素材よりなる、
ことを特徴とする、請求項4に記載の温熱具。
【請求項6】
前記蓄熱材料が、鉄系化合物、炭化ケイ素、二酸化チタンのうちいずれか一種類以上を含む、
ことを特徴とする、請求項1、2のいずれか一項に記載の温熱具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の一部に対して使用される温熱具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体の一部を局所的に温めるための温熱具としては、例えば電気的な発熱によるもの(例えば特許文献1参照)、湯たんぽのような、高温の湯を入れた容器によるもの(例えば特許文献2参照)、いわゆる使い捨てカイロのような、内包した発熱材料の化学反応によるもの(例えば特許文献3参照)等がある。
【0003】
これらはそれぞれ、温熱具とは別に電源などの動力源が必要である、外気の気温が低い場合にすぐに湯が冷めてしまうことで温熱効果の持続時間が短い、再利用ができず都度廃棄されるため経済的や環境保護的に好ましくない、といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-043517号公報
【特許文献2】登録実用新案第3208011号公報
【特許文献3】特開2022-014551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、別途電源等の動力源、消耗品を必要とせず、手軽で経済的にも環境的にも有利な温熱具を提供することを目的とする。
【0006】
また、より所望の温度に近い温度で継続的に温熱することができ、さらに健康面・環境面でも好ましい蓄熱材料を使用した温熱具を提供する。
【0007】
また、人体の目的の部分を有効に温熱することが可能な温熱具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、人体の一部に対して使用される温熱具であって、袋状の外装部材と、前記外装部材に内包される蓄熱材料と、を備え、前記蓄熱材料に相転移素材が使用される、ことを特徴とする温熱具である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の温熱具であって、前記相転移素材は、凝固温度が30℃以上である、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載の温熱具であって、前記相転移素材は、トリステアリン、トリパルチン、トリミリスチンまたは分子量1000以上のポリエチレングリコール、飽和脂肪酸のいずれか一種類以上を含む、ことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の温熱具であって、前記外装部材がリング状、円板状または多角形状である、ことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1または4のいずれか一項に記載の温熱具であって、前記外装部材がポリウレタン系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムを含む素材よりなる、ことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1、2のいずれか一項に記載の温熱具であって、前記蓄熱材料が、鉄系化合物、炭化ケイ素、二酸化チタンのうちいずれか一種類以上を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、相転移素材の潜熱を利用して人体を温めることで、別途電源等の動力源を必要としない、手軽な温熱具を得ることが可能となる。また、消耗品を使用せずに、繰り返し使用できるので、経済的にも環境的にも有利な温熱具を得ることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、蓄熱材料として、高い凝固温度を有するトリステアリンや、分子量により凝固温度が変化するポリエチレングリコールを、単独または混合して使用することで、凝固温度が30℃以上の、より所望の温度に近い蓄熱材料を使用した温熱具を得ることが可能となる。また、蓄熱材料が潜熱に相当するエネルギーを放出するまでは、ほぼ一定の温度で温熱することができるので、従来よりも長時間温熱効果を持続することが可能となる。さらに、人体や環境に害の少ない素材を使用することで、健康・環境面で好適な温熱具を得ることが可能となる。
【0011】
請求項4、5に記載の発明によれば、多種多彩な形状と大きさの温熱具を形成することができるので、人体の目的の部分を有効に温熱することが可能となる。
【0012】
請求項6に記載の発明によれば、蓄熱材料が電子レンジのマイクロ波による発熱特性を有する材料を含むことで、電子レンジを使用した場合の発熱性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る、温熱具の概略の正面図(a)、と側面断面(X-X)図(b)である。
図2】本発明の別の実施形態に係る、温熱具の概略の正面図(a)、と側面断面(X-X)図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面におい て、図面中の各部の構成の大きさ、間隔、数、その他詳細は、視認と理解の助けのために 、実際の物に比べて大幅に簡略化して表現している。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る人体の一部に対して使用される温熱具1の概略の正面図(a)と側面図(b)である。本実施の形態では温熱具1は、袋状の外装部材11と、外装部材11に内包される蓄熱材料12から構成されている。
【0016】
外装部材11は、蓄熱材料12を密封でき、かつ柔らかく、かつ所望の温度以上の耐熱性を有する素材であるポリウレタン系熱可塑性エラストマーまたはシリコーンゴムで構成される袋状の物体であり、本実施の形態では、正面視では一辺が5~15cmの矩形状をしたポリウレタン系熱可塑性エラストマーであり、全体としては厚さが1~3cmのパット状の形状をしている。ここで、シリコーンゴムを使用する場合には、耐熱性の高いものを使用することが好ましく、使用前に二次加硫を行ったものを使用することが好ましい。
【0017】
外装部材11の内部には、その素材として相転移素材が使用される蓄熱材料12が収納されている。ここで、相転移素材(「相変化材料」ともいわれる)とは、物質が液体と固体の間で相転移する際に必要とされるエネルギーである潜熱を利用した温度調整用の素材であり、周囲の温度にかかわらず、物質が潜熱を得る(または放出する)までは固体(液体)の状態を一定の温度を保つ性質を利用して、対象物を冷却(温熱)することが可能である。すなわち、溶融(凝固)温度がT℃の素材では、周囲の温度がそれより高い(低い)場合に、素材が潜熱に相当するエネルギーを得る(放出する)までは、固体(液体)の状態でT℃以上を維持し、対象物を冷却(温熱)するという性質を有する。本実施の形態に係る蓄熱材料12は、凝固温度が30℃以上である相転移素材を使用した。これにより、液体状態の蓄熱材料12がその潜熱に相当するエネルギーを放出して固体に相転移するまでは、温熱具1は概ね凝固温度以上の温度を維持する。
【0018】
具体的な蓄熱材料12に含まれる相転移素材としては、本実施の形態では、トリステアリン、トリパルチン、トリミリスチン、ステアリン酸等の飽和脂肪酸または分子量1000以上のポリエチレングリコールのいずれか一種類以上を含む素材を使用した。ここで、トリステアリンは融点が73℃、トリパルチンの融点は66℃であり、トリミリスチンの融点は57℃でありステアリン酸の融点は70℃であり、他の物質と適度に混合することで、凝固温度が30℃以上の相転移素材を構成することができる。例えば、トリステアリン80~90wt%、トリパルチン5~15wt%、トリミリスチン3~5wt%を混合した素材では、液体状態で約40℃を維持する。また、ポリエチレングリコールはその分子量の増加と共に融点も上昇する傾向にあり、例えば分子量1000では約40℃、1540では45℃、2000では55℃、4000では58℃、6000では62℃、20000では60℃であり、所望の温度に近い融点の分子量のポリエチレングリコールを使用することで、蓄熱材料12として使用できる。また、これらの物質は、人体や環境への害が少ないので、健康面や環境面においても好適である。
【0019】
さらに、蓄熱材料12が、例えば鉄系化合物、炭化ケイ素、二酸化チタン等の電子レンジのマイクロ波による発熱特性を有する材料(以下「発熱材料」という)を含む場合、電子レンジでの加熱性を向上させることができるので好ましい。ここで、発熱材料は、熱伝導の均一性の観点から、蓄熱材料12の内部にできるだけ均等に分散したほうが好ましいので、その形状は、粒子状であることが好ましい。また、この場合の粒子のサイズはある程度小さい方が均一分散の観点から好ましい。具体的には平均粒子径で100nm以下であることが好ましく、10~50nm以下であることがさらに好ましい。また、添加量は蓄熱材料中への分散と発熱量を考えると、例えば1~15wt%が好ましく、3~10%がさらに好ましい。
【0020】
温熱具1は使用前に、湯煎または電子レンジ等で融点以上に加熱し、蓄熱材料12を溶解させたうえで、人体の温めたい部分に装着したり把持したりする。これにより、蓄熱材料12が潜熱に相当するエネルギーを放出するまでは、液体状態で凝固温度に近い温度を維持する。
【0021】
この発明によれば、相転移素材の潜熱を利用して人体を温めることで、別途電源等の動力源を必要としない、手軽な温熱具1を得ることが可能となる。また、消耗品を使用せずに、繰り返し使用できるので、経済的にも環境的にも有利な温熱具1を得ることが可能となる。
【0022】
また、蓄熱材料12として、高い凝固温度を有するトリステアリン等、分子量により凝固温度が変化するポリエチレングリコール等を、単独または混合して使用することで、凝固温度が30℃以上の、より所望の温度に近い蓄熱材料12を使用した温熱具1を得ることが可能となる。また、蓄熱材料が潜熱に相当するエネルギーを放出するまでは、ほぼ一定の温度で温熱することができるので、従来よりも長時間温熱効果を持続することが可能となる。さらに、人体や環境に害の少ない素材を使用することで、健康・環境面で好適な温熱具1を得ることが可能となる。
【0023】
また、多種多彩な形状と大きさの温熱具1を形成することができるので、人体の目的の部分を有効に温熱することが可能となる。
【0024】
また、蓄熱材料12が電子レンジのマイクロ波による発熱特性を有する材料を含むことで、電子レンジを使用した場合の加熱性を向上させることが可能となる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本願発明の範囲は以上の実施の形態に
限られるものではなく、これと同視しうる他の形態に対しても及ぶ。
【0026】
例えば、外装部材11は、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーやシリコーンゴムに限らず、蓄熱材料12を密封でき、かつ柔らかくかつ所望の温度以上の耐熱性を有する素材であれば、その他の素材でもよい。また、外装部材の外に、毛糸状やスポンジ状の材質で形成したカバーをとりつけることで、より保温性能を向上させることが可能となる。
【0027】
また、外装部材11は、矩形状に限らず、リング状、円板状その他多角形状、立体形状など、任意の形状と大きさで形成してもよい。例えば、図2の温熱具2のように、端部を有するリング形状である場合には、首元や手首に装着することで、特定の部位を局所的に温熱することが可能である。
【0028】
また、トリステアリン等や分子量の異なるポリエチレングリコール等、その他の物質を混合して凝固点を変化させることで、より所望の使用温度に近づけることが可能となる。
【0029】
また、飽和脂肪酸としては、実施の形態中に挙げたステアリン酸の他に、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸が30℃以上の融点を有するため好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1、2 温熱具
11、21 外装部材
12、22 蓄熱材料

図1
図2