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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028079
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】薄型平面光学素子及び光学機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20240222BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240222BHJP
   G02B 5/18 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
G02B3/00 A
G02B5/00 Z
G02B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191320
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】202210999310.3
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522468537
【氏名又は名称】江蘇敏而精密科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林新
【テーマコード(参考)】
2H042
2H249
【Fターム(参考)】
2H042AA05
2H042AA20
2H042AA21
2H249AA04
2H249AA14
(57)【要約】
【課題】光学レンズの体積や重量に影響を与えず、かつ量産プロセスにおいて高生産効率・低コストを実現することが可能な薄型平面光学素子を提供する。
【解決手段】平面的なメタレンズを備える薄型平面光学素子が提案される。メタレンズは、2次元的なピラーのアレイを有する。メタレンズは、基板とその上に1個のピラーを配して一体化した構造体をナノセルとして有する。基板とピラーは同一の材料で構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的なメタレンズを備える薄型平面光学素子であって、
前記メタレンズは、2次元的なピラーのアレイを有し、
前記メタレンズは、基板と前記基板の上にピラーを設け、前記基板と前記ピラーを一体化した構造体をナノセルとして有し、
前記基板と前記ピラーは同一の材料で構成されている、
薄型平面光学素子。
【請求項2】
前記メタレンズは、2次元的なアレイ状に配置された複数のメタレンズである、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項3】
前記ナノセルの配置は、前記メタレンズの中心から前記メタレンズの外縁に向かって密度が大きくなる、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項4】
前記ピラーの半径は、前記メタレンズの中心から前記メタレンズの外縁に向かうほど大きくなる、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項5】
前記ピラーの高さは一定であり、かつ前記ピラーの半径が異なる複数の前記ナノセルを有し、
前記メタレンズ上において、複数の前記ナノセルを異なる位置に配置することで、光位相を変化させる、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項6】
前記材料は、樹脂材料である、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項7】
前記材料は、高耐熱樹脂材料である、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項8】
前記材料は、光硬化性樹脂である、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の薄型平面光学素子を含む光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平面的なメタレンズを備える薄型平面光学素子に関するものであり、特に、この種の光学素子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光集束レンズなどの従来の光学レンズは、像を作るときに生じる収差(像のぼけ、歪み等)の影響を低減するため、複数のレンズを用いる必要があった。このため、従来の光学レンズを備える装置は大きくなってしまっていた。
【0003】
近年、小型の光学部品を開発するための有力なプラットフォームの1つとして、メタサーフェスが登場している。メタサーフェスとは、原子より大きいが、電磁波の波長に対しては微小なサイズの構造体を原子や分子に見立てて配列することで、自然界には存在しない電磁的性質(誘電率、透磁率)を実現できる材料のことである。メタレンズは、光の特性の制御に優れたメタサーフェスによるレンズであり、メタレンズの平面構造内に多様な機能を持たせることが出来る。
【0004】
ウェハレベル光学(WLO)は、高生産効率、高精度、低コストで光学素子を大量に生産するコンテンポラリーな技術であり、いかに簡潔かつ効率的なプロセスでWLOを実現するかということが重要な課題となっている。このため、ウェハ上の光学素子の解析・設計は注目されており、画期的な極めて薄い平面的なメタレンズは、WLOの製造に適切な光学素子として期待されている。
【0005】
しかしながら、既存のメタレンズは、光の特性の制御に優れているものの、改善が望まれる点があった。例えば、特許文献1に記載の既存のメタレンズは、メタレンズの基板材料が、溶融石英、サファイア、ホウケイ酸ガラスまたは希土類酸化物ガラスであり、メタレンズの基板材料に接続されるピラー材料が二酸化チタンであるものが開示されている。特許文献1に記載されているような既存のメタレンズでは、光学レンズの体積や重量に影響を及ぼしていた。また、例えば、特許文献2に記載の光学素子の製造方法では、生産効率が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2020-537193号公報
【特許文献2】特許第4226061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、光学レンズの体積や重量に影響を与えず、かつ量産プロセスにおいて高生産効率・低コストを実現することが可能な薄型平面光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を有する。
メタレンズを製造する時間とコストを従来よりも低減することが可能な、新規なメタレンズを備えた薄型平面光学素子を提案する。
本開示によれば、以下の薄型平面光学素子が提供される。
本開示の薄型平面光学素子は、平面的なメタレンズを備える薄型平面光学素子であって、前記メタレンズは、2次元的なピラーのアレイを有し、前記メタレンズは、基板と前記基板の上にピラーを設け、前記基板と前記ピラーを一体化した構造体をナノセルとして有し、前記基板と前記ピラーは同一の材料で構成されている。
【0009】
前記メタレンズは、2次元的なアレイ状に配置された複数のメタレンズを含んでよい。
【0010】
前記ナノセルの配置は、前記メタレンズの中心から前記メタレンズの外縁に向かって密度が大きくなっていてもよい。
【0011】
前記ピラーの半径は、前記メタレンズの中心から前記メタレンズの外縁に向かうほど大きくなっていてもよい。
【0012】
前記ピラーの高さは一定であり、かつ前記ピラーの半径が異なる複数の前記ナノセルを有し、メタレンズ上において、複数の前記ナノセルを異なる位置に配置することで、光位相を変化させてもよい。
【0013】
前記材料は、樹脂材料であってもよい。
【0014】
前記材料は、高耐熱樹脂材料であってもよい。
【0015】
前記材料は、光硬化性樹脂であってもよい。
【0016】
前記光学素子を含む光学機器であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、光学レンズの体積や重量に影響を与えず、かつ量産プロセスにおいて高生産効率・低コストを実現することが可能な薄型平面光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るウェハレベルレンズアレイを示した図である。
図2】実施形態に係るメタレンズを示した図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】メタレンズの基本構成(ナノセル)を示した斜視図である。
図5】メタレンズの基本構成(ナノセル)を示した上面図である。
図6】メタレンズの基本構成(ナノセル)を示した側面図である。
図7】光伝搬面(x-z)内の異なるピラー半径の光強度分布を示した図である。
図8】光伝搬面(x-z)内の異なるピラー半径の光強度分布を示した図である。
図9】光伝搬面(x-z)内の異なるピラー半径の光強度分布を示した図である。
図10】位相シフトをピラー半径に対して示した図である。
図11】位相シフトをピラー位置に対して示した図である。
図12】集光位置での強度分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明する。本開示は、以下に記載の実施形態に限定されるものではなく、本開示の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。本開示の一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。本明細書において数値範囲を示す「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。
【0020】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【実施例0021】
以下に実施例を示して本開示を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本開示の解釈が限定されるものではない。例えば、本開示はウェハレベルレンズアレイに適用されているが、これには限られない。個別のメタレンズに本開示を適用することができる。
【0022】
図1は、本開示の実施形態に係るウェハレベルレンズアレイ(薄型平面を有する光学素子)を示した図である。図1では、基板上に展開したメタレンズの2次元的アレイを示しているが、簡潔にするために、いくつかの構成要素が省略される場合があることに留意すべきである。
【0023】
ウェハレベルレンズアレイは、基板1と、基板1に配列された複数のメタレンズ10の2次元的アレイとを備えている。ウェハレベルレンズアレイは、複数の平面的なメタレンズ10によって構成されている。図1において、個々のメタレンズ10は円形で示されているが、円形の形状に限定されない。本開示の実施形態に係るウェハレンズアレイの大きさは、非限定的に、8インチ又は12インチである。本開示の実施形態の一例として複数のメタレンズ10の2次元的アレイは格子状に配列するとしたが、これには限定されない。
【0024】
図2は、複数のメタレンズ10のうちの任意の1つを拡大したものであり、本開示の実施形態に係るメタレンズ10を示した図である。図2に示す点線21及び点線22の交点11は、メタレンズ10の中心11である。
【0025】
図3は、図2の点線20の部分を拡大させた図である。メタレンズ10は、2次元的なピラーのアレイを有する。メタレンズ10は、基板1とその上に1個のピラーを設けて一体化した構造体をナノセル30(基本構成)として有する。したがって、メタレンズ10は、2次元的なナノセル30のアレイを有する。実施形態の一例を示す図3において、ナノセル30の2次元的アレイはメタレンズ10上で格子状に配列されているが、これには限定されない。
【0026】
図3に示す通り、個々のナノセル30の半径は、メタレンズ10上のナノセルの位置に応じて異なる。具体的には、メタレンズ10の中心11(図2参照)からメタレンズ10の外縁に向かうほどナノセル30の半径は大きくなる。ナノセル30の半径が大きくなるにつれて、メタレンズ10上のナノセル30の密度も大きくなる。つまり、メタレンズ10の中心11に近いほど、各ナノセル30の間に隙間が存在するが、メタレンズ10の中心11に遠いほど、各ナノセル30の間の隙間は無くなる。メタレンズ10上のナノセル30の密度は、メタレンズ10の単位面積当たりのピラーの断面積の割合で評価することができる。
【0027】
図4は、メタレンズ10の基本構成であるナノセル30を示した斜視図である。メタレンズ10は、図4に示される基本構成であるナノセル30がX軸方向及びY軸方向に沿って格子状に周期的に配列されている。一例として、ナノセル30はZ軸方向から見て正方形の形状であるが、正方形の形状に限らない。ナノセル30は、1つの柱状のピラー31が形成されている。ピラー31は、本開示の実施形態の一例として円柱状としたが、ピラー31の形状は円柱形状に限らない。
【0028】
図4に示す通り、ピラー31は、凸状の形状となるように、基板1の上面2から突出している。後述の通り、ピラー31と基板1は同一の材料で構成されており、別々の部品を接続させたものではなく、ピラー31と基板1は一体化している。ピラー31と基板1を一体化することにより、量産プロセスの工程数を減らすことが出来るため、既存のメタレンズのように、ピラーと基板を別々の材料で構成するよりも生産効率を向上させることが出来る。メタレンズ10は、格子状に周期的に配列された複数のピラー31によって構成されている。
【0029】
図5は、メタレンズ10の基本構成であるナノセル30を示した上面図である。図5に示す通り、ピラー31は、ナノセル30の上面2の中央部において、基板1の上面2から突出している。
【0030】
本開示の実施形態に係るナノセル30を構成する基板1とピラー31は、同一の材料で構成されている。好ましくは、同一の材料とは、同一の樹脂材料である。樹脂材料は、有機無機混合の特殊樹脂、又は一般樹脂である。例えば、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ポリスチレン・スチロール樹脂(PS)等である。いかなる種類の樹脂材料でもよいが、好ましくは屈折率が1.5~1.9程度の樹脂材料がよい。
【0031】
また、好ましくは、同一の材料とは、高耐熱樹脂材料である。高耐熱樹脂材料は、有機無機混合の特殊樹脂、又は一般高耐熱樹脂である。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)等である。
【0032】
また、好ましくは、同一の材料とは、光硬化性樹脂である。光硬化性樹脂は、有機無機混合の特殊樹脂、又は一般光硬化性樹脂、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤、各種添加剤(安定剤、フィラー、顔料など)から構成される組成物である。
【0033】
図6は、メタレンズの基本構成であるナノセルを示した側面図である。本開示の実施形態に係るピラー31の高さhは、一定の値に設定されている。例えば、高さhは、0.8μm~1.5μmの範囲のうちから選択された一定の値に設定される。このように高さを一定の値に保つのは、メタレンズ10の平面性を維持するためである。また、高さを一定の値に保つことにより、生産効率を向上させることが出来る。
【0034】
ピラー31の半径rは、メタレンズ10上におけるナノセル30が配置される位置に応じて異なる。このように、ピラー31の半径rをメタレンズ10上におけるナノセル30が配置される位置に応じて異ならせることで、ナノセル30の位置毎に位相変化を制御することができる。つまり、メタレンズ10上において、高さhが一定であり、半径rが異なるピラー31を有する複数のナノセル30の配置を異ならせることで、メタレンズ10が生み出すトータルの位相変化を最適に制御することが出来る。
【0035】
図7は、光伝搬面(x-z)内の異なるピラー半径の光強度分布を示した図である。図7の縦軸は光の伝搬方向であり、負の値は光の伝搬方向とは逆方向を意味する。図7におけるメタレンズ10のピラー31の半径は0.05μm(50nm)である。ピラーの高さhは一定の値である。メタレンズ10の基板1とピラー31は一体化されており、かつ同一の材料で構成されている。図7において、点線40で囲った部分は伝搬方向に最大光強度を示した位置である。
【0036】
図8は、光伝搬面(x-z)内の異なるピラー半径の光強度分布を示した図である。図8の縦軸は光の伝搬方向であり、負の値は光の伝搬方向とは逆方向を意味する。図8におけるメタレンズ10のピラー31の半径は0.15μm(150nm)である。ピラーの高さhは一定の値である。メタレンズ10の基板1とピラー31は一体化されており、かつ同一の材料で構成されている。図8において、点線41で囲った部分は伝搬方向に最大光強度を示した位置である。
【0037】
図9は、光伝搬面(x-z)内の異なるピラー半径の光強度分布を示した図である。図9の縦軸は光の伝搬方向であり、負の値は光の伝搬方向とは逆方向を意味する。図9におけるメタレンズ10のピラー31の半径は0.25μm(250nm)である。ピラーの高さhは一定の値である。メタレンズ10の基板1とピラー31は一体化されており、かつ同一の材料で構成されている。図9において、点線42で囲った部分は伝搬方向に最大光強度を示した位置である。
【0038】
図7図9に示したシミュレーション結果から、メタレンズ10の基板1とピラー31が一体化されており、かつ同一の材料で構成されていても、ピラー31の半径rが0.25μm(250nm)まででは、伝搬方向に最大光強度を示すことが分かった。しかしながら、ピラー31の半径rの値はこれらの値に限らない。
【0039】
図10は、位相シフトをピラーの半径に対して示した図である。ピラー31の高さhを一定の値とし、ピラー31の半径rを変数とする位相分布関数(r)を持つメタレンズ10の位相変化の特性を示している。ピラー31の半径rの変化が、位相変化の特性に影響を与えることを示している。ここでのピラー31の高さhは、1.3μmである。また、メタレンズ10の基板1とピラー31は一体化されており、かつ同一の材料で構成されている。
【0040】
図11は、位相シフトをピラーの位置に対して示した図である。ピラーの位置とは、メタレンズ10上における、ピラー31を有するナノセル30の位置である。図11は、メタレンズ10上におけるナノセル30の位置の変化が、位相変化の特性に影響を与えることを示している。ここでのピラー31の高さhは、1.3μmである。また、メタレンズ10の基板1とピラー31は一体化されており、かつ同一の材料で構成されている。
【0041】
図12は、本開示の実施形態における集光位置での強度分布を示した図である。図12は、メタレンズ10の結像面での光強度分布を示している。このシミュレーション結果から、メタレンズ10の基板1とピラー31は一体化されており、かつ同一の材料で構成されていても、視野の中心に最大光強度を得ることが分かった。本開示の実施形態に係るメタレンズ10の位相変化によっても、通常のレンズのように結像面での集光効果を得ることが出来た。このことにより、通常の3D屈折レンズを用いた光学系にも極めて薄い2Dの平面的なメタレンズを利用することが可能となる。そして、様々な微小空間においても、多機能光学系を実現することが可能となる。
【0042】
本開示の実施形態に係る光学素子は、例えば、超薄型光学系、医療内視鏡、ドットプロジェクト光学系、スマートフォン用の顔認証センサー用レンズ、距離検出用LiDAR、自動運転用LiDAR、微小型カメラ用レンズなどのような、光学機器に適用可能である。
【0043】
以上より、本開示の実施形態に係る光学素子は、メタレンズを構成しているナノセルの基板とピラーを同一の材料で構成することにより、光学レンズの体積や重量に影響を与えず、かつ量産プロセスにおいて高生産効率・低コストを実現することが可能である。
【0044】
本願発明者が見出したところによると、特許第4226061号公報に記載された技術(Casting Process)を適用することにより、本開示の薄型平面光学素子を作製することができる。
【0045】
以上で詳細な説明を終えるが、説明した実施形態は例示にすぎず、当業者は、本開示の趣旨から逸脱することなく、さまざまな変更、変形が自明である。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 上面
10 メタレンズ
11 メタレンズの中心
20 点線
21 点線
22 点線
30 ナノセル構造体
31 ピラー
40 点線
41 点線
42 点線
h 高さ
r 半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的なメタレンズを備える薄型平面光学素子であって、
前記メタレンズは、2次元的なピラーのアレイを有し、
前記メタレンズは、基板と前記基板の上にピラーを設け、前記基板と前記ピラーを一体化した構造体をナノセルとして有し、
前記基板と前記ピラーは同一の材料で構成されており
前記ピラーの高さは一定であり、かつ前記ピラーの半径が異なる複数の前記ナノセルを有し、
前記ピラーの半径は、前記メタレンズの中心から前記メタレンズの外縁に向かうほど大きくなり、
前記メタレンズの中心に近いほど、前記メタレンズの円周方向で隣接する各ナノセルの間に隙間が存在し、前記メタレンズの中心に遠いほど、前記メタレンズの円周方向で隣接する各ナノセルの間の隙間は無くなる、
薄型平面光学素子。
【請求項2】
前記メタレンズは、2次元的なアレイ状に配置された複数のメタレンズである、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項3】
前記ナノセルの配置は、前記メタレンズの中心から前記メタレンズの外縁に向かって密度が大きくなる、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項4】
前記ピラーの高さは、0.8μm~1.5μmの範囲のうちから選択された一定の値に設定される、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項5】
前記メタレンズ上において、複数の前記ナノセルを異なる位置に配置することで、光位相を変化させる、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項6】
前記材料は、樹脂材料である、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項7】
前記材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドである、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項8】
前記材料は、光硬化性樹脂である、請求項1に記載の薄型平面光学素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の薄型平面光学素子を含む光学機器。