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特開2024-2809感光性着色組成物、赤外光カットフィルター、感光性着色組成物の製造方法、および、赤外光カットフィルターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002809
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】感光性着色組成物、赤外光カットフィルター、感光性着色組成物の製造方法、および、赤外光カットフィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20231228BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20231228BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20231228BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/033
G02B5/22
C08F220/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102236
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】明野 康剛
(72)【発明者】
【氏名】岩田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】平井 友梨
(72)【発明者】
【氏名】原 脩人
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 明宏
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA09
2H148CA12
2H225AC33
2H225AC63
2H225AD06
2H225AE13P
2H225AN39P
2H225AN92P
2H225AN94P
2H225AN98P
2H225BA12P
2H225BA17P
2H225CA15
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
4J100AJ02Q
4J100AL08P
4J100AL10R
4J100BC43P
4J100CA05
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA37
(57)【要約】
【課題】感光性着色組成物から形成された赤外光カットフィルターにおける吸光度の低下と、パターンの形状における精度の低下とを抑えることを可能とした感光性着色組成物、赤外光カットフィルター、感光性着色組成物の製造方法、および、赤外光カットフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】感光性着色組成物は、着色剤と、光重合開始剤と、光重合性モノマーと、アクリル共重合体とを含む。アクリル共重合体において、アクリル共重合体の総重量に対して、第1繰り返し単位の重量と、第2繰り返し単位の重量と、第3繰り返し単位の重量の総和が、87.5重量%以上100重量%以下であり、第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
700nm以上1100nm以下の波長帯域内に吸収極大を有した染料である着色剤と、
光重合開始剤と、
光重合性モノマーと、
アクリル共重合体と、を含み、
前記アクリル共重合体は、
下記式(1)によって表され、エポキシ基を含む第1繰り返し単位と、
下記式(2)によって表され、アクリル酸またはメタクリル酸に由来する第2繰り返し単位と、
下記式(3)によって表され、芳香環を含む第3繰り返し単位とを含み、
前記アクリル共重合体において、
前記アクリル共重合体の総重量に対して、前記第1繰り返し単位の重量と、前記第2繰り返し単位の重量と、前記第3繰り返し単位の重量の総和が、87.5重量%以上100重量%以下であり、
前記第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、
前記第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、
前記第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である
【化1】
ただし、式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3はエポキシ基である。
【化2】
ただし、式(2)において、R4は水素原子またはメチル基である。
【化3】
ただし、式(3)において、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基、または、炭素数1以上のオキシアルキレン基である。R7は水素原子または所定の置換基である。式(3)において、R7が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。
感光性着色組成物。
【請求項2】
前記アクリル共重合体の重量に対する前記光重合性モノマーの重量の比が、0.4以上0.7以下であり、
前記光重合性モノマーの重量に対する前記光重合開始剤の重量の比が、0.03以上0.08以下である
請求項1に記載の感光性着色組成物。
【請求項3】
前記アクリル共重合体の平均分子量は、8,000以上30,000以下である
請求項1または2に記載の感光性着色組成物。
【請求項4】
23℃におけるアルカリ現像液に対する溶解速度が、20nm/秒以上である
請求項1または2に記載の感光性着色組成物。
【請求項5】
前記着色剤は、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、ジイモニウム色素、ジチオール金属錯体系色素、ナフタロシアニン色素、および、オキソノール色素から構成される群から選択されるいずれかである
請求項1または2に記載の感光性着色組成物。
【請求項6】
前記着色剤は、前記シアニン色素である
請求項5に記載の感光性着色組成物。
【請求項7】
700nm以上1100nm以下の波長帯域内に吸収極大を有した染料である着色剤と、
アクリル共重合体と、
前記アクリル共重合体とは異なる重合体と、を含み、
前記アクリル共重合体は、
下記式(1)によって表され、エポキシ基を含む第1繰り返し単位と、
下記式(2)によって表され、アクリル酸またはメタクリル酸に由来する第2繰り返し単位と、
下記式(3)によって表され、芳香環を含む第3繰り返し単位とを含み、
前記アクリル共重合体において、
前記アクリル共重合体の総重量に対して、前記第1繰り返し単位の重量と、前記第2繰り返し単位の重量と、前記第3繰り返し単位の重量の総和が、87.5重量%以上100重量%以下であり、
前記第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、
前記第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、
前記第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である
【化4】
ただし、式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3はエポキシ基である。
【化5】
ただし、式(2)において、R4は水素原子またはメチル基である。
【化6】
ただし、式(3)において、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基、または、炭素数1以上のオキシアルキレン基である。R7は水素原子または所定の置換基である。式(3)において、R7が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。
赤外光カットフィルター。
【請求項8】
着色剤、光重合開始剤、光重合性モノマー、および、アクリル共重合体を混合することを含み、
前記着色剤は、700nm以上1100nm以下の波長帯域内に吸収極大を有した染料であり、
前記アクリル共重合体は、
下記式(1)によって表され、エポキシ基を含む第1繰り返し単位と、
下記式(2)によって表され、アクリル酸またはメタクリル酸に由来する第2繰り返し単位と、
下記式(3)によって表され、芳香環を含む第3繰り返し単位とを含み、
前記アクリル共重合体において、
前記アクリル共重合体の総重量に対して、前記第1繰り返し単位の重量と、前記第2繰り返し単位の重量と、前記第3繰り返し単位の重量の総和が、87.5重量%以上100重量%以下であり、
前記第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、
前記第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、
前記第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である
【化7】
ただし、式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3はエポキシ基である。
【化8】
ただし、式(2)において、R4は水素原子またはメチル基である。
【化9】
ただし、式(3)において、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基、または、炭素数1以上のオキシアルキレン基である。R7は水素原子または所定の置換基である。式(3)において、R7が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。
感光性着色組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の感光性着色組成物の製造方法によって製造された感光性着色組成物を基材に塗布して塗膜を形成すること、
前記塗膜の一部に光を照射することによって前記塗膜を露光すること、
露光後の前記塗膜を現像すること、および、
現像後の前記塗膜を加熱することによって、前記塗膜を硬化させること、を含む
赤外光カットフィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性着色組成物、赤外光カットフィルター、感光性着色組成物の製造方法、および、赤外光カットフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラは、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー、および、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーなどの固体撮像素子を備えている。固体撮像素子は、赤外光カットフィルターを備えている。赤外光カットフィルターは、赤外光カットフィルターに入射した赤外光を吸収することによって、赤外光カットフィルターに対して光の入射側とは反対側に値する光電変換素子に赤外光が入射することを抑える。これにより、光電変換素子での可視光の検出精度が高められる。そのため、固体撮像素子が検出する可視領域の光に含まれるノイズが低減され、結果として、固体撮像素子によって撮像された画像での色の再現性が高められる。
【0003】
固体撮像素子には、可視光だけでなく赤外光を検出することが可能な固体撮像素子も提案されている。固体撮像素子が、赤外光の検出と可視光の検出との両方を検出することが可能である場合には、当該固体撮像素子は、上述した赤外光カットフィルターと、赤外光透過フィルターとを備えている。
【0004】
赤外光カットフィルターは、以下の方法によって形成される。例えば、赤外光カットフィルターは、赤外光を吸収する無機物をガラスに添加することによって形成される。また例えば、赤外光カットフィルターは、ガラス板上に赤外光を吸収する物質を塗布することによって形成される。また例えば、赤外光カットフィルターは、赤外光を吸収する色素を含む着色樹脂組成物を用いて形成される。着色樹脂組成物を用いる方法は、ガラスを用いる方法に比べて、赤外光カットフィルターの加工性、および、薄膜化の観点において有利である(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-20000号公報
【特許文献2】特許第6395293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、着色樹脂組成物が含む着色剤には、着色樹脂組成物中における分散性が高い染料を用いることが可能である。分散性の高い染料を用いることによって、着色樹脂組成物から形成された赤外光カットフィルターの表面がざらつくことや、着色剤から形成された粒子に起因した凹凸が赤外光カットフィルターの表面に形成されることが抑えられる。
【0007】
一方で、着色樹脂組成物内において、染料が、その染料の近傍に位置する染料と会合することによって、染料に本来期待される波長帯域とは異なる波長帯域の光を吸収することがある。これによって、着色樹脂組成物を用いて形成された赤外光カットフィルターにおいて、着色剤に本来期待される波長帯域での吸光度が低下することがある。
【0008】
また、着色樹脂組成物を用いて赤外光カットフィルターを形成する際には、着色樹脂組成物を硬化させるために、着色樹脂組成物を用いて形成した塗膜が加熱される。着色剤として染料を用いた場合には、赤外光カットフィルターに求められるパターンの形状における精度が低下する場合がある。例えば、赤外光カットフィルターに対して矩形孔を形成する場合には、赤外光カットフィルターと矩形孔を画定する側面とが形成する角部が丸みを帯びる熱だれが生じる場合がある。固体撮像素子が備える赤外光カットフィルターは微細であるから、熱だれによって赤外光カットフィルターの膜厚が減少し、これによって赤外光カットフィルターの性能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための感光性着色組成物は、700nm以上1100nm以下の波長帯域内に吸収極大を有した染料である着色剤と、光重合開始剤と、光重合性モノマーと、アクリル共重合体と、を含む。前記アクリル共重合体は、下記式(1)によって表され、エポキシ基を含む第1繰り返し単位と、下記式(2)によって表され、アクリル酸またはメタクリル酸に由来する第2繰り返し単位と、下記式(3)によって表され、芳香環を含む第3繰り返し単位とを含み、前記アクリル共重合体において、前記アクリル共重合体の総重量に対して、前記第1繰り返し単位の重量と、前記第2繰り返し単位の重量と、前記第3繰り返し単位の重量の総和が、87.5重量%以上100重量%以下であり、前記第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、前記第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、前記第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である。
【0010】
【化1】
【0011】
ただし、式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3はエポキシ基である。
【0012】
【化2】
【0013】
ただし、式(2)において、R4は水素原子またはメチル基である。
【0014】
【化3】
【0015】
ただし、式(3)において、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基、または、炭素数1以上のオキシアルキレン基である。R7は水素原子または所定の置換基である。式(3)において、R7が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。
【0016】
上記感光性着色組成物によれば、アクリル共重合体において、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、および、第3繰り返し単位がそれぞれ上述した範囲内に含まれるから、加熱処理に起因した硬化膜の熱だれが抑えられ、これによって、硬化膜に形成されたパターンの形状における精度が低下することが抑えられる。また、感光性着色組成物において着色剤の会合が抑制され、これによって、着色剤において吸収が期待される波長での吸光度の低下が抑えられる。
【0017】
上記感光性着色組成物において、前記アクリル共重合体の重量に対する前記光重合性モノマーの重量の比が、0.4以上0.7以下であり、前記光重合性モノマーの重量に対する前記光重合開始剤の重量の比が、0.03以上0.08以下であってもよい。
【0018】
上記感光性着色組成物によれば、アクリル共重合体の重量に対する光重合性モノマーの重量の比が0.4以上0.7以下の範囲内に含まれ、かつ、光重合性モノマーの重量に対する光重合開始剤の重量の比が0.03以上0.08以下の範囲内に含まれることによって、パターンの形状における精度を高めることが可能である。また、感光性着色組成物において着色剤の会合が抑制され、これによって、着色剤において吸収が期待される波長での吸光度の低下が抑えられる。
【0019】
上記感光性着色組成物において、前記アクリル共重合体の平均分子量は、8,000以上30,000以下であってもよい。この感光性着色組成物によれば、アクリル共重合体の平均分子量が8,000以上30,000以下の範囲内に含まれるから、感光性着色組成物を用いて硬化膜を形成した際に、硬化膜が含む着色剤において吸収が期待される波長において硬化膜が有する吸光度の低下をより抑えることが可能である。
【0020】
上記感光性着色組成物において、23℃におけるアルカリ現像液に対する溶解速度が、20nm/秒以上であることを含んでもよい。この感光性着色組成物によれば、溶解速度が20nm/秒以上であることによって、微細なパターンを形成する場合でも、パターンの形状における精度を高めることが可能である。
【0021】
上記感光性着色組成物において、前記着色剤は、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、ジイモニウム色素、ジチオール金属錯体系色素、ナフタロシアニン色素、および、オキソノール色素から構成される群から選択されるいずれかであってよい。
【0022】
上記感光性着色組成物において、前記着色剤は、前記シアニン色素であってよい。この感光性着色組成物によれば、溶媒に対する着色剤の溶解性を高めること、および、着色剤のモル吸光係数を高めることが可能である。
【0023】
上記課題を解決するための赤外光カットフィルターは、700nm以上1100nm以下の波長帯域内に吸収極大を有した染料である着色剤と、アクリル共重合体と、前記アクリル共重合体とは異なる重合体と、を含む。前記アクリル共重合体は、上記式(1)によって表され、エポキシ基を含む第1繰り返し単位と、上記式(2)によって表され、アクリル酸またはメタクリル酸に由来する第2繰り返し単位と、上記式(3)によって表され、芳香環を含む第3繰り返し単位とを含む。前記アクリル共重合体において、前記アクリル共重合体の総重量に対して、前記第1繰り返し単位の重量と、前記第2繰り返し単位の重量と、前記第3繰り返し単位の重量の総和が、87.5重量%以上100重量%以下であり、前記第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、前記第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、前記第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である。
【0024】
上記課題を解決するための感光性着色組成物の製造方法は、着色剤、光重合開始剤、光重合性モノマー、および、アクリル共重合体を混合することを含む。前記着色剤は、700nm以上1100nm以下の波長帯域内に吸収極大を有した染料である。前記アクリル共重合体は、上記式(1)によって表され、エポキシ基を含む第1繰り返し単位と、上記式(2)によって表され、アクリル酸またはメタクリル酸に由来する第2繰り返し単位と、上記式(3)によって表され、芳香環を含む第3繰り返し単位とを含む。前記アクリル共重合体において、前記アクリル共重合体の総重量に対して、前記第1繰り返し単位の重量と、前記第2繰り返し単位の重量と、前記第3繰り返し単位の重量の総和が、87.5重量%以上100重量%以下であり、前記第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、前記第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、前記第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である。
【0025】
上記課題を解決するための赤外光カットフィルターの製造方法は、上記感光性着色組成物の製造方法によって製造された感光性着色組成物を基材に塗布して塗膜を形成すること、前記塗膜の一部に光を照射することによって前記塗膜を露光すること、露光後の前記塗膜を現像すること、および、現像後の前記塗膜を加熱することによって、前記塗膜を硬化させること、を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、感光性着色組成物から形成された赤外光カットフィルターにおける吸光度の低下と、パターンの形状における精度の低下とを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】固体撮像素子の一実施形態における層構造を示す分解斜視図である。
図2】アクリル共重合体の製造例1から製造例10におけるアクリルモノマーの配合比を示す表である。
図3】実施例1から実施例18、および、比較例1から比較例3の感光性着色組成物における配合比を示す表である。
図4】実施例1から実施例18、および、比較例1から比較例3に対する評価結果を示す表である。
図5】第1繰り返し単位の重量、第2繰り返し単位の重量、および、第3繰り返し単位の重量の関係を示す三角ダイアグラムである。
図6】第1比率と第2比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2を参照して、感光性着色組成物、赤外光カットフィルター、感光性着色組成物の製造方法、および、赤外光カットフィルターの一実施形態を説明する。
[固体撮像素子]
図1を参照して、固体撮像素子を説明する。図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。
【0029】
図1が示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外光用光電変換素子11Pを備える。各色用の光電変換素子11R,11G,11Bは、その光電変換素子11R,11G,11Bに対応付けられた特定の波長を有する可視光の強度を測定する。各赤外光用光電変換素子11Pは、赤外光の強度を測定する。
【0030】
固体撮像素子10は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外光用光電変換素子11Pを備える。なお、図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の繰り返し単位が示されている。
【0031】
固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用フィルター、赤外光パスフィルター12P、赤外光カットフィルター13、バリア層14、複数の可視光用マイクロレンズ、および、赤外光用マイクロレンズ15Pを備える。
【0032】
可視光用カラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0033】
赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pに対して光の入射側に位置する。赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を赤外光用光電変換素子11Pに対してカットする。これによって、赤外光用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度が高められる。赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、例えば近赤外光である。
【0034】
赤外光カットフィルター13は、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光カットフィルター13は、貫通孔13Hを備える。赤外光カットフィルター13が広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔13Hが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。一方で、赤外光カットフィルター13が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12B上に位置する。
【0035】
赤外光カットフィルター13は、着色剤を含む。着色剤は、近赤外光に含まれるいずれかの波長において、赤外光の吸収率における最大値を有する。そのため、赤外光カットフィルター13によれば、赤外光カットフィルター13を通過する近赤外光を確実に吸収することが可能である。これにより、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が、赤外光カットフィルター13によって十分にカットされる。赤外光カットフィルター13は、例えば、300nm以上3μm以下の厚さを有することが可能である。
【0036】
バリア層14は、赤外光カットフィルター13の酸化源の透過を抑制する。酸化源は、酸素および水などである。バリア層14が有する酸素透過率は、例えば、5.0cc/m/day/atm以下であることが好ましい。酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠した値である。酸素透過率が5.0cc/m/day/atm以下に定められるから、バリア層14によって赤外光カットフィルター13に酸化源が到達することが抑制されるため、赤外光カットフィルター13が酸化源によって酸化されにくくなる。そのため、赤外光カットフィルター13の耐光性が向上可能である。
【0037】
バリア層14を形成する材料は、無機化合物である。バリア層14を形成する材料は、珪素化合物であることが好ましい。バリア層14を形成する材料は、例えば、窒化珪素、酸化珪素、および、酸窒化珪素からなる群から選択される少なくとも一つであってよい。
【0038】
マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ15R、緑色用マイクロレンズ15G、青色用マイクロレンズ15B、および、赤外光用マイクロレンズ15Pから構成される。赤色用マイクロレンズ15Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に位置する。緑色用マイクロレンズ15Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に位置する。青色用マイクロレンズ15Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光用マイクロレンズ15Pは、赤外光パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。
【0039】
各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、外表面である入射面15Sを備える。各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、入射面15Sに入る光を各光電変換素子11R,11G,11B,11Pに向けて集めるための屈折率差を外気との間において有する。各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、透明樹脂を含む。
【0040】
[感光性着色組成物]
本開示の感光性着色組成物は、着色剤、光重合開始剤、光重合性モノマー、および、アクリル共重合体を含んでいる。着色剤は、700nm以上1100nm以下の波長帯域内に吸収極大を有している。アクリル共重合体は、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、および、第3繰り返し単位を含んでいる。第1繰り返し単位は、下記式(1)によって表され、エポキシ基を含む。第2繰り返し単位は、下記式(2)によって表され、アクリル酸またはメタクリル酸に由来する。第3繰り返し単位は、下記式(3)によって表され、芳香環を含む。
【0041】
【化4】
【0042】
ただし、式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3はエポキシ基である。
【0043】
【化5】
【0044】
ただし、式(2)において、R4は水素原子またはメチル基である。
【0045】
【化6】
【0046】
ただし、式(3)において、R5は水素原子またはメチル基であり、R6は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基、または、炭素数1以上のオキシアルキレン基である。R7は水素原子または所定の置換基である。式(3)において、R7が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。
【0047】
アクリル共重合体において、アクリル共重合体の総重量に対して、第1繰り返し単位の重量と、第2繰り返し単位の重量と、第3繰り返し単位の重量との総和が、87.5重量%以上100重量%以下である。第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である。
【0048】
アクリル共重合体において、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、および、第3繰り返し単位がそれぞれ上述した範囲内に含まれるから、加熱処理に起因した硬化膜の熱だれが抑えられ、これによって、硬化膜に形成されたパターンの形状における精度が低下することが抑えられる。また、感光性着色組成物において着色剤の会合が抑制され、これによって、着色剤において吸収が期待される波長での吸光度の低下が抑えられる。
【0049】
第1繰り返し単位が有するエポキシ基と第2繰り返し単位が有するカルボキシル基とは、感光性着色組成物を硬化させた硬化膜を形成する際の加熱工程において架橋構造を形成する。そのため、感光性着色組成物から形成された塗膜の耐熱性が高められる。これにより、赤外光カットフィルターに求められるパターンの形状における精度の低下が抑えられる。特に、赤外光カットフィルターに対して矩形孔を形成する場合には、赤外光カットフィルターと矩形孔を画定する側面とが形成する角部が丸みを帯びる熱だれが生じることが抑えられる。
【0050】
また、第2繰り返し単位が有するカルボキシル基が酸性を呈するから、感光性着色組成物から形成された塗膜は、アルカリ現像液に溶解する。そのため、感光性着色組成物が光重合開始剤および光重合性モノマーを含むことによって、塗膜のパターニングが可能である。
【0051】
また、第3繰り返し単位が有する芳香環は、着色剤とその着色剤の近傍に位置する他の着色剤との間に位置することによって、着色剤の会合を抑える程度の距離を着色剤間に形成することが可能である。これにより、着色剤において吸収が期待される波長での吸光度の低下、言い換えれば透過率の上昇が抑えられる。結果として、感光性着色組成物を用いて形成された硬化膜における吸光度の低下が抑えられる。
【0052】
以下、感光性着色組成物が含む材料を詳しく説明する。
[着色剤]
上述したように、着色剤は、700nm以上1100nm以下の波長帯域に吸収極大を有する。着色剤において、着色剤が吸収極大を有する波長でのモル吸光係数ε(mol-1・L・cm-1)が以下の式を満たすことが好ましい。
ε≧3.0×10
【0053】
固体撮像素子などの小型化および軽量化に伴い、固体撮像素子に用いられる赤外光カットフィルターには、数百nm以上数μm以下の膜厚を有することが求められている。
着色剤のモル吸光係数が3.0×10以上であれば、薄膜化された赤外光カットフィルターにおいて求められる吸光度を実現可能な感光性着色組成物の調整が可能である。例えば、1μmの厚さを有した光学フィルターにおいて、着色剤が吸収極大を有する波長での透過率が10%以下となるように着色樹脂組成物を調整することが可能である。また、感光性着色組成物の全量において着色剤の割合を小さくすることが可能である分、感光性樹脂組成物が、多くの共重合体および溶媒などを含むことが可能である。なお、感光性着色組成物が、着色剤、共重合体、および、溶媒以外の他の成分を含むことも可能である。他の成分は、例えば架橋剤または重合性モノマーであってよい。
【0054】
これに対して、着色剤のモル吸光係数が3.0×10よりも小さい場合には、感光性着色組成物が所定の吸光度を示すために多くの着色剤を含む必要があり、これにより、感光性着色組成物が、所望とする粘度を有することが可能な程度の共重合体を含むことが難しいことがある。結果として、所望とする厚さを有した塗膜、ひいては赤外光カットフィルターを形成することが難しい。
【0055】
着色剤は、例えば、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、ジイモニウム色素、ジチオール金属錯体系色素、ナフタロシアニン色素、オキソノール色素、および、ピロメテン色素のいずれかであってよい。なお、これらの色素は、いずれも染料である。
【0056】
なお、感光性樹脂組成物の着色剤には、顔料を用いることも可能である。しかしながら、顔料を用いた場合には、感光性樹脂組成物中での顔料の分散性が低いから、顔料を分散させること、および、顔料が分散した状態を保持することが難しい。そのため、顔料は感光性樹脂組成物中で凝集しやすく、また、感光性着色組成物の粘度が上昇しやすい。この点、着色剤として染料を用いた場合には、感光性樹脂組成物中での凝集が抑えられ、また、感光性着色組成物における粘度の上昇が抑えられる。
【0057】
また、感光性着色組成物が顔料を含む場合には、顔料の熱安定性が高く、これによって、硬化膜の耐熱性が高められる。そのため、感光性着色組成物が顔料を含む場合には、パターンの形状における精度が低下しない。
【0058】
着色剤は、溶媒に対する溶解性が高い点、および、モル吸光係数が高い点においてシアニン色素であることが好ましい。シアニン色素は、ポリメチン、および、ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含む。シアニン色素は、下記式(4)に示される構造を有してよい。
【0059】
【化7】
【0060】
上記式(4)において、Xは、1つのメチンまたはポリメチンである。メチンが含む炭素原子に結合された水素原子は、ハロゲン原子、または、有機基に置換されてもよい。ポリメチンは、ポリメチンを形成する炭素を含む環状構造を有してもよい。環状構造は、ポリメチンを形成する複数の炭素において、連続する3つの炭素を含むことができる。ポリメチンが環状構造を有する場合には、ポリメチンの炭素数は5以上であってよい。各窒素原子は、五員環または六員環の複素環に含まれている。複素環は、縮環されてもよい。上記式(4)において、Yは、アニオンである。
【0061】
また、シアニン色素は、下記式(5)に示される構造を有してもよい。
【0062】
【化8】
【0063】
上記式(5)において、nは1以上の整数である。nは、ポリメチン鎖に含まれる繰り返し単位の数を示している。R10およびR11は水素原子、または、有機基である。R12およびR13は、水素原子または有機基である。R12およびR13は、炭素数1以上の直鎖状アルキル基、または、分岐鎖状アルキル基であることが好ましい。各窒素原子は、五員環または六員環の複素環に含まれている。複素環は、縮環されてもよい。
【0064】
なお、式(4)において、ポリメチンが環状構造を含む場合には、環状構造は、例えば、環状構造がエチレン性二重結合などの不飽和結合を少なくとも一つ有し、かつ、当該不飽和結合がポリメチン鎖の一部として電子共鳴する環状構造であってよい。こうした環状構造は、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロオクタジエン環、および、ベンゼン環などであってよい。これらの環状構造は、いずれも置換基を有してもよい。
【0065】
また、式(5)において、nが1である化合物はシアニンであり、nが2である化合物はカルボシアニンであり、nが3である化合物はジカルボシアニンである。式(5)において、nが4である化合物はトリカルボシアニンである。
【0066】
R10およびR11の有機基は、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、および、アルケニル基であってよい。アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、および、デシル基などであってよい。アリール基は、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、および、ナフチル基などであってよい。アラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などであってよい。アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、および、オクテニル基などであってよい。
【0067】
なお、各有機基が有する水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子またはシアノ基によって置換されてもよい。ハロゲン原子は、フッ素、臭素、および、塩素などであってよい。置換後の有機基は、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、および、シアノエチル基などであってよい。
【0068】
R12またはR13は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、および、デシル基などであってよい。
【0069】
各窒素原子が含まれる複素環は、例えば、ピロール、イミダゾール、チアゾール、および、ピリジンなどであってよい。
こうしたシアニン色素が含むカチオンは、例えば、下記式(6)および下記式(7)によって表される構造を有してよい。
【0070】
【化9】
【0071】
【化10】
【0072】
なお、シアニン色素が含むカチオンは、例えば、下記式(8)から式(47)に示される構造を有してもよい。すなわち、シアニン色素が含む各窒素原子は、以下に示される環状構造中に含まれてもよい。
【0073】
【化11】
【0074】
【化12】
【0075】
【化13】
【0076】
【化14】
【0077】
【化15】
【0078】
【化16】
【0079】
【化17】
【0080】
【化18】
【0081】
【化19】
【0082】
【化20】
【0083】
【化21】
【0084】
【化22】
【0085】
【化23】
【0086】
【化24】
【0087】
【化25】
【0088】
【化26】
【0089】
【化27】
【0090】
【化28】
【0091】
【化29】
【0092】
【化30】
【0093】
【化31】
【0094】
【化32】
【0095】
【化33】
【0096】
【化34】
【0097】
【化35】
【0098】
【化36】
【0099】
【化37】
【0100】
【化38】
【0101】
【化39】
【0102】
【化40】
【0103】
【化41】
【0104】
【化42】
【0105】
【化43】
【0106】
【化44】
【0107】
【化45】
【0108】
【化46】
【0109】
【化47】
【0110】
【化48】
【0111】
【化49】
【0112】
【化50】
【0113】
式(4)のYは、例えば、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸アニオン([(CPF)(FAP)である。FAPは、下記式(48)によって示される構造を有する。
【0114】
【化51】
【0115】
感光性着色組成物を用いて赤外光カットフィルターが形成される際には、感光性着色組成物を含む塗液が200℃程度に加熱され、これによって、塗膜から硬化膜である赤外光カットフィルターが形成される。シアニン色素が200℃程度に加熱された場合には、加熱後におけるシアニン色素の構造が加熱前におけるシアニン色素の構造から変わることによって、シアニン色素の吸光度が変化することがある。
【0116】
この点で、FAPは、シアニン色素におけるポリメチン鎖の近傍に位置することが可能な分子量および分子構造を有するため、シアニン色素のポリメチン鎖が、シアニン色素の加熱によって切断されることが抑えられる。それゆえに、シアニン色素の加熱に起因してシアニン色素が有する赤外光の吸光度が変化することが抑えられ、結果として、感光性着色組成物から形成される硬化膜の吸光度が変化することが抑制される。
【0117】
[アクリル共重合体]
上述したように、感光性着色組成物はアクリル共重合体を含んでいる。アクリル共重合体は、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、および、第3繰り返し単位を含んでいる。第1繰り返し単位は、エポキシ基を含む第1アクリルモノマーに由来する。これにより、アクリル共重合体は側鎖にエポキシ基を含む。第2繰り返し単位は、第2アクリルモノマーであるアクリル酸(CHHCOOH)またはメタクリル酸(CHC(CH)COOH)に由来する。第3繰り返し単位は、芳香環を含む第3アクリルモノマーに由来する。これにより、アクリル共重合体は、側鎖に芳香環を含む。アクリル共重合体において、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、および、第3繰り返し単位の総和が、87.5重量%以上であり、好ましくは95重量%、より好ましくは100重量%である。
【0118】
第1繰り返し単位は、下記式(1)によって示される構造を有する。
【0119】
【化52】
【0120】
上述したように、第1繰り返し単位において、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基、または、炭素数1以上のオキシアルキレン基である。R2は、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、および、ブチレン基などであってよい。R3は、エポキシ基である。
【0121】
第1アクリルモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2‐メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどであってよい。アクリルモノマーが有する反応性の観点から、第1アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジルであることがより好ましく、メタクリル酸グリシジルであることが特に好ましい。なお、これらのアクリルモノマーは、入手が容易である点でも好ましい。
【0122】
第3繰り返し単位は、下記式(3)によって示される構造を有する。
【0123】
【化53】
【0124】
第3アクリルモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、o‐フェノキシフェニルエチル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸2ナフチル、(メタ)アクリル酸9‐アントリルメチルなどであってよい。色素の分光特性における変化を抑える観点では、第3アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸フェニルであることがより好ましく、メタクリル酸フェニルであることが特に好ましい。
【0125】
アクリル共重合体は、上述したように以下の条件を満たす。
(条件1)アクリル共重合体において、第1繰り返し単位の重量、第2繰り返し単位の重量、および、第3繰り返し単位の重量の総和が87.5重量%以上100重量%である。
【0126】
(条件2)第1繰り返し単位が、10.0重量%以上20.0重量%以下である。
(条件3)第2繰り返し単位が、12.5重量%以上20.0重量%以下である。
(条件4)第3繰り返し単位が、65重量%以上である。
【0127】
アクリル共重合体のガラス転移温度は、70℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が70℃以上であれば、本開示の感光性着色組成物を用いて硬化膜を形成した際に、形成された硬化膜が含む着色剤において吸収が期待される波長での分光特性の劣化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0128】
アクリル共重合体の平均分子量は、8,000以上30,000以下であることが好ましく、10,000以上20,000以下であることがより好ましい。アクリル共重合体の平均分子量は、重量平均分子量である。アクリル共重合体の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法によって測定することが可能である。
【0129】
アクリル共重合体の平均分子量が8,000以上30,000以下の範囲内に含まれるから、感光性着色組成物を用いて硬化膜を形成した際に、硬化膜が含む着色剤において吸収が期待される波長において硬化膜が有する吸光度の低下をより抑えることが可能である。
【0130】
また、アクリル共重合体の平均分子量が30,000以下の範囲内に含まれることによって、感光性着色組成物を用いた塗膜のパターニングが容易である。特に、塗膜に対してホールパターンとして矩形孔を形成する場合には、ホールパターンにおいてアルカリ現像液が循環しにくいから、現像工程に時間を要する。この場合であっても、アクリル共重合体の分子量が30,000以下の範囲内に含まれることによって、ホールパターンの矩形性における精度が低下することが抑えられる。なお、ホールパターンの矩形性とは、硬化膜の厚さ方向における断面において、硬化膜の表面とホールパターンを確定する側面とが形成する角度が矩形状を有することを意味する。硬化膜の表面とホールパターンを確定する側面とが形成する角度が直角に近いほど、ホールパターンの矩形性は高い。
【0131】
アクリル共重合体の酸価は、80KOHmg/g以上130KOHmg/g以下の範囲内に含まれることが好ましい。酸価が80KOHmg/g以上であることによって、感光性着色組成物におけるアルカリ現像液への溶解性の低下が抑えられる。これにより、現像工程に要する時間が長くなることが抑えられ、結果として、感光性着色組成物を用いた赤外光カットフィルターの生産性が低下することが抑えられる。また、酸価が130KOHmg/g以下であることによって、赤外光カットフィルターにおいて、赤外光の吸収能が低下することが抑えられる。本開示におけるアクリル共重合体の酸価は、1gのアクリル共重合体を中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)の量(mg)として測定される値である。アクリル共重合体の酸化は、水酸化カリウム溶液を用いた滴定により求めることができる。
【0132】
アクリル共重合体の製造には、上述した第1アクリルモノマー、第2アクリルモノマー、および、第3アクリルモノマーに加えて、さらに他のモノマーが用いられてもよい。第1アクリルモノマー、第2アクリルモノマー、および、第3アクリルモノマー以外のモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリルアミド化合物、および、マレイミド化合物などであってよい。
【0133】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n‐ブチル、(メタ)アクリル酸iso‐ブチル、(メタ)アクリル酸tert‐ブチル、(メタ)アクリル酸n‐ヘキシル、(メタ)アクリル酸n‐オクチル、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどであってよい。芳香族アルケニル化合物は、例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレンなどであってよい。シアン化ビニル化合物は、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどであってよい。アクリルアミド化合物は、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどであってよい。マレイミド化合物は、例えば、N‐シクロヘキシルマレイミド、N‐フェニルマレイミドなどであってよい。
【0134】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン系光重合、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤であってよい。
【0135】
アセトフェノン系光重合は、例えば、4‐フェノキシジクロロアセトフェノン、4‐t‐ブチル‐ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1‐(4‐イソプロピルフェニル)‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルフォリノフェニル)‐ブタン‐1‐オン、および、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オンなどであってよい。
【0136】
ベンゾイン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、および、ベンジルジメチルケタールなどであってよい。
【0137】
チオキサンソン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4‐フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、および、4‐ベンゾイル‐4’‐メチルジフェニルサルファイドなどであってよい。
【0138】
チオキサンソン系光重合開始剤は、例えば、チオキサンソン、2‐クロルチオキサンソン、2‐メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、および2、4‐ジイソプロピルチオキサンソンなどであってよい。
【0139】
トリアジン系光重合開始剤は、例えば、2,4,6‐トリクロロ‐s‐トリアジン、2‐フェニル4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐メトキシフェニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐トリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐ピペロニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐スチリル‐クロロメチル)‐s‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐スチリル‐s‐トリアジン、2‐(ナフト‐1‐イル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(4‐メトキシ‐ナフト‐1‐イル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2,4‐トリクロロメチル(ピペロニル)‐6‐トリアジン、および、2,4‐トリクロロメチル(4’‐メトキシスチリル)‐6‐トリアジンなどであってよい。
【0140】
オキシムエステル系光重合開始剤は、例えば、3‐ベンゾイルオキシイミノブタン‐2‐オン、3‐アセトキシイミノブタン‐2‐オン、3‐プロピオニルオキシイミノブタン‐2‐オン、2‐アセトキシイミノペンタン‐3‐オン、2‐アセトキシイミノ‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、2‐ベンゾイルオキシイミノ‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、3‐(4‐トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン‐2‐オン、および、2‐エトキシカルボニルオキシイミノ‐1‐フェニルプロパン‐1‐オンなどであってよい。
【0141】
なお、オキシムエステル系光重合開始剤は、例えば、IRGACURE OXE01(BASF社製)、IRGACURE OXE02(BASF社製)(IRGACUREは登録商標)、TR‐PBG‐304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI‐930((株)ADEKA製)(アデカアークルズは登録商標)であってもよい。
光重合開始剤には、上述した光重合開始剤のうちの1種以上を用いることが可能である。
【0142】
[光重合性モノマー]
光重合性モノマーは、例えば、官能基数が3以上のアクリルモノマーであってよい。官能基数が3以上のアクリルモノマーは、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO(プロピレンオキサイド)変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=2)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=2)トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性シトリアクリレートなどであってよい。
【0143】
官能基数が3以上のアクリルモノマーは、3官能アクリルモノマー、EO変性3官能アクリルモノマー、または、PO変性3官能アクリルモノマーであることが好ましい。EO変性あるいはPO変性によれば、親水性が付与され、これによって感光性着色樹脂組成物を用いて形成された硬化膜の現像性を高めることが可能である。
【0144】
また、光重合性モノマーは、アミノ基を含み、かつ、官能基数が2以上の(メタ)アクリレートであってもよい。アミノ基を含む光重合性モノマーは、光重合反応を阻害する酸素を補足することが可能であるから、光重合性モノマーがアミノ基を含むことによって、酸素に起因した重合反応の阻害を抑えることができる。さらに、アミノ基を含む光重合性モノマーが2官能以上であることによって、重合反応の速度が高まるから、重合反応の阻害をより抑えることが可能である。これにより、塗膜が露光された際に塗膜の硬化が進みやすくなるから、塗膜においてパターンの形状における精度が高められる。
【0145】
なお、アミノ基を含む2官能以上の(メタ)アクリレートは、例えば、EBECRYL80(ダイセル・オルネクス社製)、EBECRYL7100(ダイセル・オルネクス社製)、CN371 NS(アルケマ社製)、CN550(アルケマ社製)、CN551(アルケマ社製)、Laromer 83F(BASA社製)、Laromer 84F(BASA社製)などであってよい。
感光性着色組成物は、上述した光重合性モノマーを2種以上含んでよい。
【0146】
[溶媒]
感光性着色組成物は、溶媒を含んでいる。溶媒によれば、着色剤とアクリル共重合体とを含む感光性着色組成物の粘度を調整することが可能である。これにより、感光性着色組成物を用いて硬化膜を形成する際に、感光性着色組成物を含む塗液の塗布が行いやすくなる。
【0147】
溶媒は、着色剤および共重合体に対する相溶性を有すること、硬化膜の形成工程において揮発することが可能な程度に高い揮発性を有すること、および、溶媒が揮発した際に硬化膜にむらを生じさせないことを満たすことが好ましい。溶媒は、エステル系溶媒、アルコールエーテル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、アミド系溶媒、および、アルコール系溶媒などであってよい。
【0148】
エステル系溶媒は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t‐ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、および、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどであってよい。アルコールエーテル系溶媒は、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3‐メトキシ‐1‐ブタノール、および、3‐メトキシ‐3-メチル‐1‐ブタノールなどであってよい。ケトン系溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンなどであってよい。芳香族系溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、および、キシレンなどであってよい。アミド系溶媒は、例えば、ホルムアミド、および、ジメチルホルムアミドなどであってよい。アルコール系溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、s‐ブタノール、t‐ブタノール、ジアセトンアルコール、および、2‐メチル‐2‐ブタノールなどであってよい。
【0149】
[添加剤]
感光性着色組成物は、必要に応じて添加剤を含んでもよい。添加剤は、例えば、重合禁止剤、界面活性剤、貯蔵安定剤のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0150】
重合禁止剤は、例えば、キノン系重合禁止剤、ヒンダードフェノール系重合禁止剤、ニトロソアミン系重合禁止剤、フェノチアジン系重合禁止剤のいずれかであってよい。なお、感光性着色組成物は、2種以上の重合禁止剤を含んでよい。
【0151】
界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤であってよい。アニオン性界面渇せ一剤は、ラウリル硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどであってよい。
【0152】
ノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、および、ポリエチレングリコールモノラウレートなどであってよい。
【0153】
カチオン性界面活性剤は、例えば、アルキル4級アンモニウム塩、および、そのエチレンオキサイド付加物などであってよい。両性界面活性剤は、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、および、アルキルイミダゾリンなどであってよい。感光性着色組成物は、2種以上の界面活性剤を含んでよい。
【0154】
貯蔵安定剤は、ベンジルトリメチルクロライド、4級アンモニウムクロライド、有機酸、有機酸のメチルエーテル、t‐ブチルピロカテコール、有機ホスフィン、亜リン酸塩などであってよい。4級アンモニウムクロライドは、例えばジエチルヒドロキシアミンなどであってよい。有機酸は、例えば乳酸およびシュウ酸などであってよい。有機ホスフィンは、例えばトリエチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンなどであってよい。
【0155】
[感光性着色組成物の組成]
感光性着色組成物は、条件5および条件6を満たすことが好ましい。
(条件5)アクリル共重合体の重量に対する光重合性モノマーの重量の比が、0.4以上0.7以下である。
(条件6)光重合性モノマーの重量に対する光重合開始剤の重量の比が、0.03以上0.08以下である。
【0156】
アクリル共重合体の重量に対する光重合性モノマーの重量の比における下限値は、0.45であることが好ましく、0.5であることがより好ましい。また、アクリル共重合体の重量に対する光重合性モノマーの重量の比における上限値は、0.65であることが好ましく、0.6であることがより好ましい。
【0157】
アクリル共重合体の重量に対する光重合性モノマーの重量の比が0.4以上0.7以下の範囲内に含まれることによって、パターンの形状における精度を高めることが可能である。詳細には、当該重量比が0.4以上であることによって、微細なパターンを形成することが可能な程度に現像速度を高めることが可能である。また、当該重量比が0.7以下であることによって、着色感光性組成物を用いて形成された硬化膜において、吸収が期待される波長での透過率が高まることが抑えられる。
【0158】
光重合性モノマーの重量に対する光重合開始剤の重量の比における下限値は、0.03であることが好ましい。光重合性モノマーの重量に対する光重合開始剤の重量の比における上限値は、0.06であることが好ましい。
【0159】
光重合性モノマーの重量に対する光重合開始剤の重量の比が0.03以上0.08以下の範囲内に含まれることによって、パターンの形状における精度を高めることが可能である。当該重量比が0.03以上であることによって、感光性着色組成物を用いて形成された硬化膜と基材との密着性が高められるから、微細なパターンを形成する場合でも、現像工程において硬化膜が剥がれることが抑えられる。また、当該重量比が0.08以下であることによって、着色感光性組成物を用いて形成された硬化膜において、吸収が期待される波長での透過率が高まることが抑えられる。
【0160】
感光性着色組成物において、溶媒の重量(WS)に対する着色剤の重量(WC)の百分率(WC/WS×100)は、0.6重量%以上30重量%以下であることが好ましい。上述したように、固体撮像素子に用いられる赤外光カットフィルターには、数百nm以上数μm以下の厚さを有することが求められている。薄い赤外光カットフィルターによって所望とする吸光度を実現するためには、赤外光カットフィルターを形成するための感光性着色組成物において、所定量以上の着色剤が溶媒に溶解していることが必要とされる。
【0161】
この点で、着色剤の重量の百分率が0.6重量%以上であることによって、薄膜化された赤外光カットフィルターが、赤外光カットフィルターとして十分な吸光度を有することが可能である。また、着色剤の重量の百分率が30重量%以下であることによって、赤外光カットフィルターの形成時に溶媒が揮発しても、着色剤が、赤外光カットフィルターの表面に析出することが抑えられる。
【0162】
なお、着色剤が溶媒に溶解していることによって、赤外光カットフィルターを形成した際に、着色剤が析出することが抑えられ、これによって赤外光カットフィルターの透明度が低くなることが抑えられる。また、着色剤を含む析出物に起因する凹凸が赤外光カットフィルターの表面に生じることが抑えられ、これによって、赤外光カットフィルターの厚さにばらつきが生じることが抑えられる。
【0163】
感光性着色組成物において、感光性着色組成物の全固形分において、アクリル共重合体の含有量は、30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。アクリル共重合体の含有量における下限値は、40重量%であることがより好ましい。アクリル共重合体の上限値は、65重量%であることがより好ましい。
【0164】
[赤外光カットフィルター]
赤外光カットフィルターは、着色剤、アクリル共重合体、および、アクリル重合体を含んでいる。赤外光カットフィルターは、感光性着色組成物を硬化させることによって得られた硬化膜である。着色剤は、700nm以上1100nm以下の波長帯域内に吸収極大を有する。
【0165】
アクリル共重合体は、上述した第1繰り返し単位と、第2繰り返し単位と、第3繰り返し単位とを含んでいる。アクリル共重合体において、アクリル共重合の総重量が100重量%であり、第1繰り返し単位の重量が、10重量%以上20重量%以下であり、第2繰り返し単位の重量が、12.5重量%以上20重量%以下であり、かつ、第3繰り返し単位の重量が、65重量%以上である。
【0166】
アクリル共重合体において、第1繰り返し単位の重量、第2繰り返し単位の重量、および、第3繰り返し単位の重量の総和が100重量%であることが好ましい。
アクリル共重合体とは異なる重合体は、感光性樹脂組成物が含む光重合性モノマーが重合した重合体である。当該重合体は、アクリル重合体であることが好ましい。アクリル重合体は、例えば、3官能アクリルモノマー、EO変性3官能アクリルモノマー、PO変性3官能アクリルモノマー、または、アミノ基を含む2官能以上の(メタ)アクリレートの単独重合体でもよい。あるいは、アクリル重合体は、3官能アクリルモノマー、EO変性3官能アクリルモノマー、PO変性3官能アクリルモノマー、および、アミノ基を含む2官能以上の(メタ)アクリレートにおいて、2種以上のアクリルモノマーから形成されたアクリル共重合体であってもよい。
【0167】
[アクリル共重合体の製造方法]
上述した第1アクリルモノマー、第2アクリルモノマー、および、第3アクリルモノマーを少なくとも含むモノマー混合物を用いて、第1アクリルモノマー、第2アクリルモノマー、および、第3アクリルモノマーを重合させることによって、アクリル共重合体を得ることができる。アクリルモノマーの重合方法には、例えば、ラジカル重合を用いることができる。ラジカル重合は、溶液重合、懸濁重合、および、乳化重合などを含む。このうち、溶液重合を用いて、第1アクリルモノマー、第2アクリルモノマー、および、第3アクリルモノマーを重合させることが好ましい。溶液重合によれば、共重合体の重量平均分子量を調整しやすい。
【0168】
溶液重合において用いることが可能な重合溶媒は、アクリルモノマーと重合開始剤とを溶解することが可能な溶媒である。重合溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。
【0169】
重合溶媒の重量(WS)に対するアクリルモノマーの総重量(WM)の百分率(WM/WS×100)は、10重量%以上60重量%以下であることが好ましく、20重量%以上50重量%以下であることがより好ましい。百分率が20重量%以上であることによって、モノマーの残存を抑え、かつ、得られるアクリル共重合体の分子量の低下を抑えることが可能である。また、百分率が60重量%以下であることによって、溶液の発熱を制御しやすくなる。
【0170】
なお、重合溶液におけるアクリルモノマーの濃度以外にも、重合溶液におけるラジカル重合開始剤の濃度を調整することによって、アクリル共重合体の分子量を制御することが可能である。
【0171】
重合開始剤は、例えば、有機過酸化物、および、アゾ系重合開始剤などであってよい。有機過酸化物は、例えば、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエートなどであってよい。アゾ系重合開始剤は、例えば、2,2’‐アゾビスイソブチロニトリルなどであってよい。重合反応では、例示した重合開始剤のうち、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。重合対象であるモノマーの組み合わせ、および、重合反応の条件などに応じて、重合開始剤の使用量を適宜設定することができる。
【0172】
重合溶媒にモノマーを投入する際には、例えば、モノマーの全量を一度に重合溶媒に投入してもよい。あるいは、モノマーの一部を重合溶媒に投入し、かつ、残りのモノマーを重合溶媒に滴下してもよい。あるいは、モノマーの全量を重合溶媒に滴下することによって、重合溶媒にモノマーを投入してもよい。重合溶媒にモノマーを投入する際には、モノマーの全量における少なくとも一部を重合溶媒に滴下することが好ましい。これにより重合溶媒に対してモノマーの全量を一度に投入する場合に比べて、重合反応における発熱を制御しやすい。
【0173】
重合溶媒に重合開始剤を投入する際には、例えば、重合開始剤の全量を一度に重合溶媒に投入してもよい。あるいは、重合開始剤の一部を重合溶媒に投入し、かつ、残りの重合開始剤を重合溶媒に滴下してもよい。あるいは、重合開始剤の全量を重合溶媒に滴下してもよい。なお、重合開始剤およびモノマーを重合溶媒に滴下することが好ましい。この場合には、重合反応の制御が容易である。また、重合溶媒に対するモノマーの滴下が終了した後に重合開始剤の滴下を行うことが好ましい。これにより、残存モノマーの量を低減することが可能である。この場合には、モノマーを重合溶媒に滴下する期間と、重合開始剤を重合溶媒に滴下する期間とが重ならなくてもよいし、モノマーを重合溶媒に滴下する期間の少なくとも一部が、重合開始剤を重合溶媒に滴下する期間と重なってもよい。
【0174】
重合温度の至適な範囲は、重合溶媒の種類などに依存する。重合温度は、例えば、50℃以上110℃以下の範囲に含まれる温度であってよい。重合時間の至適な範囲は、重合開始剤の種類、および、重合温度などに依存する。例えば、重合開始剤として1,1,3,3‐テトラメチルブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエートを用い、かつ、重合温度を95℃に設定した場合には、重合時間は6時間程度であることが好ましい。
【0175】
なお、重合反応によって得られたアクリル共重合体を含む反応液に対して、重合反応以外の処理を行うことなく、当該アクリル共重合体を感光性着色組成物の製造に用いてもよい。あるいは、重合反応後の反応液からアクリル共重合体を単離してもよい。アクリル共重合体の単離には、濾取、および、精製などを用いることが可能である。
【0176】
重合反応後の反応液において、アクリル共重合体の重量と、アクリル共重合体を構成するためのアクリルモノマーの重量との和(W(M+P))に対するアクリルモノマーの重量(WM)の百分率(WM/W(M+P)×100)は、20%以下であることが好ましい。なお、重合反応後の反応液が含むアクリルモノマーは、アクリル共重合体の生成に用いられなかった残存モノマーである。残存モノマーが20%よりも多い場合に比べて、感光性着色組成物を用いて硬化膜を形成した際に、硬化膜の吸光度が変化しにくくなる。
【0177】
なお、アクリル共重合体の重量と、アクリルモノマーの重量との和(W(M+P))に対するアクリルモノマーの重量(WM)の百分率(WM/W(M+P)×100)は、10%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。アクリル共重合体の重量、および、アクリルモノマーの重量は、アクリル共重合体を含む反応液の分析結果に基づき定量することが可能である。反応液の分析方法は、例えば、ガスクロマトグラフィー量分析法(GC‐MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)、および、赤外分光法(IR)などであってよい。
【0178】
アクリル共重合体の重量とアクリルモノマーの重量との和(W(M+P))に対するアクリルモノマーの重量(WM)の割合を変更する方法は、例えば、重合時間を変更する方法、および、重合温度を変更する方法などであってよい。また、アクリル共重合体の重量とアクリルモノマーの重量との和(W(M+P))に対するアクリルモノマーの重量(WM)の割合を変更する方法は、重合反応の開始時におけるアクリルモノマーおよび重合開始剤の濃度を変更する方法などであってよい。アクリル共重合体の重量とアクリルモノマーの重量との和(W(M+P))に対するアクリルモノマーの重量(WM)の割合を変更する方法は、重合反応後の精製条件を変更する方法などであってよい。このうち、重合時間を変更する方法は、残存モノマーの重量の割合を変更する制御の精度が高いため好ましい。
【0179】
[感光性着色組成物の製造方法]
感光性着色組成物の製造方法は、着色剤、光重合開始剤、光重合性モノマー、および、アクリル共重合体を混合することを含む。例えば、上述した着色剤、光重合開始剤、光重合性モノマー、アクリル共重合体、および、溶媒を混合装置を用いて混合することによって、感光性着色組成物を製造することが可能である。なお、感光性着色組成物の製造方法は、着色剤、アクリル共重合体、光重合開始剤、光重合性モノマー、および、溶媒を混合して混合液を生成する工程の後に、混合液を濾過する工程を含んでもよい。混合液を濾過する工程によれば、環境中の異物および不溶物などを感光性着色組成物から除去することが可能である。混合液の濾過には、濾過フィルターを用いることが可能である。
【0180】
[赤外光カットフィルターの製造方法]
赤外光カットフィルターの製造方法は、感光性着色組成物を基材に塗布して塗膜を形成すること、塗膜の一部に光を照射することによって塗膜を露光すること、露光後の塗膜を現像すること、および、現像後の塗膜を加熱することによって、塗膜を硬化させること、を含んでいる。
【0181】
基材は、例えば、透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス板、シリコンウエハー、および、撮像素子などであってよい。感光性着色組成物の塗布には、例えば、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、オフセットコーター、および、スプレーなどを用いることができる。
【0182】
感光性着色組成物の塗布によって形成された塗膜を加熱することによって、感光性着色組成物から溶媒が除去される。塗膜の加熱には、ホットプレート、および、オーブンなどを用いることができる。次いで、露光マスクを用いて塗膜の一部に光を照射することによって、塗膜を露光する。続いて、露光後の塗膜を現像液を用いて現像することによって、所定のパターンを有した赤外光カットフィルターを得ることができる。
【0183】
なお、上述したように、赤外光カットフィルターの製造には、溶媒の重量に対する着色剤の重量の百分率が0.6重量%以上30重量%以下である感光性着色組成物を用いることが好ましい。また、赤外光カットフィルターの製造には、吸収極大を有する波長でのモル吸光係数εが3.0×10以上である着色剤を含む感光性着色組成物を用いることが好ましい。
【0184】
また、23℃におけるアルカリ現像液に対する塗膜の溶解速度、すなわち感光性着色組成物の溶解速度が、20nm/秒以上であることが好ましい。溶解速度が20nm/秒以上であることによって、微細なパターンを形成する場合でも、パターンの形状における精度を高めることが可能である。特に、塗膜が広がる平面と対向する視点から見て、四角形状を有する未露光部を形成し、これによってホールパターンを形成する場合には、ホールパターンにおいてアルカリ現像液が循環しにくい。そのため、溶解速度が20nm/秒を下回る場合には、塗膜の現像に時間を要するから、ホールパターンの形状における精度が低下する、すなわち、ホールパターンの矩形性が低下する。また、塗膜の現像に時間を要するから、赤外光カットフィルターの生産性が低下する。この場合であっても、溶解速度が20nm/秒以上であることによって、ホールパターンの矩形性が低下すること、および、赤外光カットフィルターの生産性が低下することが抑えられる。
【0185】
現像液は、アルカリ性の現像液であってよい。アルカリ現像液は、例えば、無機アルカリ現像液でもよいし、有機アルカリ現像液でもよい。無機アルカリ現像液は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液などであってよい。有機アルカリ現像液は、例えばテトラヒドロキシアンモニウム水溶液などであってよい。現像液は、界面活性剤を含んでもよい。これにより、塗膜に対する現像液の濡れ性が高められる。
【0186】
なお、塗膜の溶解速度は、以下の方法で測定することが可能である。まず、感光性着色組成物をシリコンウエハー上に塗布し、これによって塗膜を形成する。次いで、塗膜を90℃で2分間プレベークし、これによって、5.0μm±0.25μmの厚さを有したプレベーク膜を形成する。続いて、アルカリ現像液にプレベーク膜を30秒間浸漬する。この際に、アルカリ現像液の温度を23±1℃に設定する。次いで、浸漬後におけるプレベーク膜の厚さを測定する。以下の式により、溶解速度を算出することができる。
溶解速度 = (浸漬前の厚さ-浸漬後の厚さ)/浸漬時間
溶解速度の測定には、例えば、溶解速度モニター装置を用いることができる。
【0187】
[製造例]
図2を参照して、アクリル共重合体の製造例を説明する。なお、生成された共重合体における各モノマーに由来する繰り返し単位での重量比が、共重合体の生成時における各モノマーの重量比に等しい。
【0188】
[製造例1]
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート、および、窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(200.0g)を投入し、次いで、フラスコ内を窒素置換して、フラスコ内を窒素雰囲気にした。グリシジルメタクリレート(24.0g)、メタクリル酸(24.0g)、フェニルメタクリレート(112.0g)を混合したモノマー溶液、および、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(40.0g)と1,1,3,3‐テトラメチルブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエート(日油(株)製、パーオクタO)(パーオクタは登録商標)(24.0g)とを混合した重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。
【0189】
フラスコ内を95℃まで昇温し、次いで、モノマー溶液および重合開始剤溶液を同時にそれぞれ3時間かけてフラスコ内に滴下した。その後、95℃においてモノマー溶液と重合開始剤溶液との混合液を2時間反応させ、次いで、重合開始剤である1,1,3,3‐テトラメチルブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエート(0.6g)を混合液に加えた。さらに、重合開始剤を添加した混合液を95℃において3時間反応させた後、ポリマー濃度が20重量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて混合液を希釈することで、20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は、8,000であることが認められた。
【0190】
[製造例2]
製造例1において、モノマー溶液をグリシジルメタクリレート(16.0g)、メタクリル酸(20.0g)、フェニルメタクリレート(124.0g)の混合溶液に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例2の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は8,000であることが認められた。
【0191】
[製造例3]
製造例1において、モノマー溶液をグリシジルメタクリレート(24.0g)、メタクリル酸(32.0g)、フェニルメタクリレート(104.0g)の混合溶液に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例3の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は8,000であることが認められた。
【0192】
[製造例4]
製造例1において、モノマー溶液をグリシジルメタクリレート(32.0g)、メタクリル酸(20.0g)、フェニルメタクリレート(108.0g)の混合溶液に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例4の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は8,000であることが認められた。
【0193】
[製造例5]
製造例1において、製造例1の1,1,3,3‐テトラメチルブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエートの重量を9.6gに変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例5の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は20,000であることが認められた。
【0194】
[製造例6]
製造例1において、1,1,3,3‐テトラメチルブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエートの重量を40.0gに変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例6の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は5,000であることが認められた。
【0195】
[製造例7]
製造例1において、製造例1の1,1,3,3‐テトラメチルブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエートの重量を4.8gに変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例7の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は35,000であることが認められた。
【0196】
[製造例8]
製造例1において、モノマー溶液をグリシジルメタクリレート(36.0g)、メタクリル酸(12.0g)、フェニルメタクリレート(112.0g)の混合溶液に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例8の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は8,000であることが認められた。
【0197】
[製造例9]
製造例1において、モノマー溶液をグリシジルメタクリレート(12.0g)、メタクリル酸(20.0g)、フェニルメタクリレート(128.0g)の混合溶液に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例9の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は8,000であることが認められた。
【0198】
[製造例10]
製造例1において、モノマー溶液をグリシジルメタクリレート(24.0g)、メタクリル酸(40.0g)、フェニルメタクリレート(96.0g)の混合溶液に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例10の20重量%ポリマー溶液を得た。ポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量は8,000であることが認められた。
【0199】
[重量平均分子量]
各製造例のポリマー溶液に含まれるアクリル共重合体の重量平均分子量を以下の方法によって求めた。
【0200】
各製造例の20重量%ポリマー溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて重量平均分子量(Mw)を求めた。重量平均分子量を求める際の条件を以下のように設定した。
【0201】
装置:HLC‐8220、東ソー(株)製
カラム:LF‐804、shodex社製
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0202】
[実施例]
[感光性着色組成物の調製]
図3が示すように、製造例1から製造例10の共重合体を用いて、実施例1から実施例18、および、比較例1から比較例3の感光性着色組成物を調製した。この際に、以下に記載の材料を用いた。なお、図3において、第1比率は、アクリル共重合体の重量に対する光重合性モノマーの重量の比であり、第2比率は、光重合性モノマーの重量に対する光重合開始剤の重量の比である。
【0203】
(a)着色剤
(b)アクリル共重合体
(c)光重合性モノマー:TMPTA系アクリレート
(アロニックスM-350、東亞合成(株)製)(アロニックスは登録商標)
(d)光重合開始剤:オキシムエステル系重合開始剤(Irgacure OXE02、BASF社製)
(Irgacureは登録商標)
(e)溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)
【0204】
実施例1から実施例18、および、比較例1から比較例3の各々について、図3が示す配合比で上述した材料(a)から(d)を準備した。次いで、全ての材料が混合された混合溶液を生成した後に、混合溶液が均一になるように1時間攪拌した。続いて、0.45μmのフィルターをもちいて混合溶液を濾過した。これによって、各実施例および各比較例の感光性着色組成物を得た。
【0205】
この際に、実施例1から実施例7、実施例11から実施例18、および、比較例1から比較例3の感光性着色組成物では、着色剤として上記式(6)で表されるシアニン色素を用いた。実施例8では、着色剤として上記式(33)で表されるシアニン色素を用いた。実施例9では、着色剤としてフタロシアニン色素(FDN-003、山田化学工業(株)製)を用いた。実施例10では、着色剤としてジイモニウム色素(Dye1451、ORGANICA社製)を用いた。
【0206】
[分光特性の評価方法]
以下の方法によって、各実施例および各比較例の感光性着色組成物から得られた硬化膜の分光特性を評価した。
【0207】
分光特性を評価するための評価用基板を作成する際には、まず、各実施例および各比較例の感光性着色組成物を透明基板上に塗布することによって塗膜を形成した。次いで、塗膜を乾燥させた後、露光機(FPA-5510iZ、キヤノン(株)製)を用い、かつ、露光量を8000J/cmに設定し露光した。続いて、230℃で3分間にわたって塗膜を加熱することによって塗膜を硬化させた。これにより、各実施例および各比較例の感光性着色組成物について、1.5μmの厚さを有した硬化膜を得た。
【0208】
分光特性を評価する際には、分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、350nmから1150nmの各波長を有した光に対する各実施例および各比較例の硬化膜における透過率を測定した。これにより、各硬化膜について、透過率のスペクトルを得た。各硬化膜における透過率のスペクトルは、700nm以上1100nm以下の範囲内において最も低い透過率を有する。700nm以上1100nm以下の範囲内における最も低い透過率が25%以下である硬化膜は、固体撮像素子が備える赤外光カットフィルターに適用される上で、好ましい赤外光の吸収能を有する。
【0209】
[矩形性の評価方法]
以下の方法によって、各実施例および各比較例の感光性着色組成物から得られた硬化膜の矩形性を評価した。
【0210】
矩形性を評価する際には、まず、シリコンウエハー上に平坦化層を形成した。次いで、平坦化層上に、各実施例および各比較例の感光性着色組成物をスピンコーターを用いて塗布、これによって塗膜を形成した。この際に、スピンコーターの回転速度を1000rpmに設定した。次に、ホットプレートを用いて塗膜をプレベークした。この際に、90℃で2分間にわたって塗膜を加熱した。
【0211】
その後、2.0μm角の四角形状を有した透光部を複数備える露光マスクを用いて、塗膜を露光した。この際に、露光機(FPA-5510iZ、キヤノン(株)製)を用い、かつ、露光量を2000J/cmに設定した。次いで、アルカリ現像液(OD-260C、(株)ADEKA製)を用いて、露光後の塗膜を現像し、続いて、現像後の塗膜を水洗した後に、塗膜を乾燥させた。これにより、2.0μm角のホールパターンを複数有した塗膜を得た。次に、ホールパターンを有する塗膜を有したシリコンウエハーをホットプレートを用いて加熱することによって、塗膜を硬化させた。この際に、230℃で3分間にわたってシリコンウエハーを加熱した。これにより、1.5μmの厚さを有した硬化膜を得た。
【0212】
硬化膜の厚さ方向に沿って硬化膜を切断し、これによって評価用断面を作成した。次いで、走査型電子顕微鏡(s-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて評価用断面を30000倍で観察することにより、ホールパターンにおける矩形性を評価した。この際に、硬化膜の表面とホールパターンを確定する側面とが形成する角度が75°以上95°未満の範囲内に含まれる場合に、ホールパターンの矩形性が良好であると判断した。
【0213】
[溶解速度の評価方法]
各実施例および各比較例の感光性着色組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハー上に塗布し、これによって塗膜を形成した。この際に、シリコンウエハーの回転速度を、加熱後の膜厚が5.0±0.25μmとなるような回転速度に設定した。次いで、ホットプレートを用いてシリコンウエハーを加熱することによって、塗膜が硬化された硬化膜を得た。この際に、シリコンウエハーを90℃で2分間加熱することによって、塗膜をプレベークした。その後、23±1℃に設定したアルカリ現像液(OD-260C、(株)ADEKA製)を用いてプレベークした塗膜を30秒間現像した。現像前における塗膜の厚さから現像後の塗膜の厚さを減算した減算値を現像時間で除算することによって、塗膜の溶解速度を算出した。
【0214】
[評価結果]
透過率、矩形性、および、溶解速度の評価結果は、図4が示す通りであった。
図4が示すように、感光性着色組成物の溶解速度は、実施例1、実施例5、実施例6、実施例8から10、実施例17、および、実施例18において40nm/秒であり、実施例2、実施例4、および、比較例2において25nm/秒であることが認められた。また、感光性着色組成物の溶解速度は、実施例3において60nm/秒であり、実施例7、実施例11、実施例12、および、実施例15において20nm/秒であることが認められた。また、感光性着色組成物の溶解速度は、実施例13、実施例14、実施例16、および、比較例3において、70nm/秒であることが認められた。また、感光性樹脂組成物の溶解速度は、比較例1において15nm/秒であることが認められた。このように、実施例の感光性着色組成物では、溶解速度が20nm/秒以上70nm/秒以下の範囲内に含まれることが認められた。
【0215】
硬化膜の透過率は、実施例1から実施例4、実施例8から実施例10、および、実施例12において15.0%であり、実施例5において11.5であり、実施例6において、17.5%であり、実施例7および実施例11において10.0%であることが認められた。硬化膜の透過率は、実施例13において20.0%であり、実施例14において24.0%であることが認められた。硬化膜の透過率は、実施例15および実施例17において、12.5%であり、実施例16および実施例18において22.5%であることが認められた。硬化膜の透過率は、比較例1および比較例3において28.0%であり、比較例2において12.5%であることが認められた。このように、実施例の感光性着色組成物を硬化させた硬化膜によれば、透過率が10.0%以上24.0%以下の範囲内に含まれることが認められた。すなわち、各実施例の感光性着色組成物を硬化させた硬化膜は、固体撮像素子用の赤外光カットフィルターに適用される上で好ましい透過率を有することが認められた。
【0216】
矩形性の評価結果は、実施例1から実施例4、実施例6、実施例8から実施例10、実施例14、実施例16、実施例18、および、比較例3において、80°であることが認められた。矩形性の評価結果は、実施例5において85°であり、実施例7、実施例11から実施例13、実施例15、および、実施例17において75°であることが認められた。なお、比較例2では、ホールパターンが形成されていないことが認められた。また、比較例3ではホールパターンが形成されているものの、ホールパターンに融着が生じていることが認められた。すなわち、塗膜の加熱時に塗膜が溶けることによって、ホールパターンの一部が他の一部に付着していることが認められた。
【0217】
このように、感光性着色組成物に含まれるアクリル共重合体が上述した条件1から条件4を満たすことによって、硬化膜の透過率が低められ、かつ、ホールパターンの矩形性が高められることが認められた。これに対して、条件2から条件4のうちの1つでも満たされない場合には、硬化膜の透過率を低めることと、ホールパターンの矩形性を高めることとの両立ができないことが認められた。
【0218】
また、実施例1、および、実施例5から実施例7における評価結果の比較から、アクリル共重合体の重量平均分子量が5,000以上35,000以下の範囲内では、重合平均分子量が大きいほど硬化膜の透過率が低められ、かつ、重合平均分子量が8,000以上の範囲内では、透過率が15%以下であることが認められた。これに対して、アクリル共重合体の重量平均分子量が5,000以上20,000以下の範囲内では、矩形性の評価結果が80°以上である一方で、35,000である場合には、矩形性の評価結果が75°であることが認められた。これらの結果から、硬化膜の透過率をより低め、かつ、ホールパターンの矩形性をより高める観点では、アクリル共重合体の平均分子量が8,000以上30,000以下の範囲内に含まれることが好ましく、8,000以上20,000以下の範囲内に含まれることがより好ましいといえる。
【0219】
また、実施例1、および、実施例8から実施例10における評価結果の比較から、感光性着色組成物が含む着色剤が、式(6)によって表されるシアニン色素、式(33)によって表されるシアニン色素、フタロシアニン色素、および、ジイモニウム色素のいずれであっても、アクリル共重合体が条件1から条件4を満たすことによって、硬化膜の透過率を低めることと、ホールパターンの矩形性を高めることとの両立が可能であることが認められた。
【0220】
また、実施例1、および、実施例11から実施例14における評価結果の比較から、硬化膜の透過率を低め、かつ、ホールパターンの矩形性を高める観点では、実施例1における第1比率および第2比率が最も好ましいことが認められた。これに対して、第1比率が実施例1の第1比率よりも小さい場合には、第2比率が実施例1の第2比率よりも大きい場合であれ小さい場合であれ、ホールパターンの矩形性が低められることが認められた。また、第1比率が実施例1の第1比率よりも大きい場合で、かつ、第2比率が実施例1の第2比率よりも小さい場合に、硬化膜の透過率が低め、かつ、ホールパターンの矩形性が低められることが認められた。一方で、第1比率が実施例1の第1比率よりも大きい場合で、かつ、第2比率が実施例1の第2比率よりも大きい場合に、ホールパターンの矩形性は維持されるものの、硬化膜の透過率が高められることが認められた。
【0221】
図5は、第1繰り返し単位の重量、第2繰り返し単位の重量、および、第3繰り返し単位の重量の関係を示す三角ダイアグラムである。なお、図5において、製造例1から製造例4における3つの繰り返し単位の関係が、白抜きの丸でそれぞれ示されている。これに対して、図5において、製造例8における3つの繰り返し単位の関係が黒塗りの丸で示されている。また、図5において、製造例9における3つの繰り返し単位の関係が相対的に密度の低い網点が付された丸で示され、かつ、製造例10における3つの繰り返し単位の関係が相対的に密度の高い網点が付された丸で示されている。
【0222】
図5が示すように、アクリル共重合体の配合比が、製造例8のプロットと製造例10のプロットを結ぶ直線に対して直交する方向において、当該直線に対して製造例9が含まれる領域とは反対側の領域に含まれることで、硬化膜の透過率が低下する傾向を有するといえる。また、アクリル共重合体の配合比が、製造例8のプロットと製造例9のプロットとを結ぶ直線に対して直交する方向において、当該直線に対して製造例10が含まれる領域とは反対側の領域に含まれることによって、ホールパターンの矩形性が低下する傾向を有するといえる。
【0223】
図6は、第1比率と第2比率との関係を示すグラフである。なお、図6では、各プロットの近傍に、当該プロットにおける第1比率と第2比率とを満たす感光性着色組成物を用いて形成された硬化膜での透過率の評価結果および矩形性の評価結果が記載されている。
【0224】
図6が示すように、矩形性の評価結果が75°以上であり、かつ、透過率の評価結果が22.5%以下であることを満たす上では、第1比率と第2比率とが、図6において破線で囲まれる領域内に含まれることが好ましいといえる。すなわち、実施例11と実施例12とを結ぶ第1直線、実施例12と実施例18とを結ぶ第2直線、実施例18と実施例16とを結ぶ第3直線、実施例16と実施例13とを結ぶ第4直線、および、実施例13と実施例11とを結ぶ第5直線とに囲まれる領域内に、第1比率と第2比率とが含まれることが好ましい。第1比率が0.4以上0.7以下であり、かつ、第2比率が0.03以上0.08以下である場合には、第1比率および第2比率が第1直線から第5直線によって囲まれる領域内に含まれるから、硬化膜における透過率が低められ、かつ、矩形性が高められる。
【0225】
以上説明したように、感光性着色組成物、赤外光カットフィルター、感光性着色組成物の製造方法、および、赤外光カットフィルターの製造方法の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0226】
(1)アクリル共重合体において、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、および、第3繰り返し単位がそれぞれ上述した範囲内に含まれるから、加熱処理に起因した硬化膜の熱だれが抑えられ、これによって、硬化膜に形成されたパターンの形状における精度が低下することが抑えられる。また、感光性着色組成物において着色剤の会合が抑制され、これによって、着色剤において吸収が期待される波長での吸光度の低下が抑えられる。
【0227】
(2)アクリル共重合体の重量に対する光重合性モノマーの重量の比が0.4以上0.7以下の範囲内に含まれ、かつ、光重合性モノマーの重量に対する光重合開始剤の重量の比が0.03以上0.08以下の範囲内に含まれることによって、パターンの形状における精度を高めることが可能である。
【0228】
(3)アクリル共重合体の平均分子量が8,000以上30,000以下の範囲内に含まれるから、感光性着色組成物を用いて硬化膜を形成した際に、硬化膜が含む着色剤において吸収が期待される波長において硬化膜が有する吸光度の低下をより抑えることが可能である。
【0229】
(4)溶解速度が20nm/秒以上であることによって、微細なパターンを形成する場合でも、パターンの形状における精度を高めることが可能である。
(5)シアニン色素を用いることによって、溶媒に対する着色剤の溶解性を高めること、および、着色剤のモル吸光係数を高めることが可能である。
【0230】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[バリア層]
・バリア層14は、赤外光カットフィルター13とマイクロレンズ15R、15G,15B,15Pとの間に限らず、各マイクロレンズ15R、15G,15B,15Pの外表面に配置されてもよい。
【0231】
・固体撮像素子10は、バリア層14とバリア層14の下層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層14とバリア層14の下層との密着性がアンカー層によって高められる。また、固体撮像素子10は、バリア層14とバリア層14の上層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層とバリア層の上層との密着性をアンカー層によって高められる。アンカー層を形成する材料は、例えば、多官能アクリル樹脂、あるいは、シランカップリング剤などである。
【0232】
・バリア層14の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、相互に異なる化合物からなる層の積層構造でもよい。
【0233】
・バリア層14は、赤外光カットフィルター13の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面が形成する段差を埋める平坦化層として機能してもよい。
・固体撮像素子用フィルター10Fはバリア層14を備えていなくてもよい。この場合であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0234】
[その他]
・各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、赤外光パスフィルター12Pと相互に等しい大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
【0235】
・カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルターを含む三色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルター、ブラック用フィルターを含む四色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、透明用フィルター、イエロー用フィルター、赤色用フィルター、ブラック用フィルターを含む四色用フィルターでもよい。
【0236】
・各色用フィルター12R,12G,12Bは、赤外光パスフィルター12Pと互いに等しい厚さを有してもよいし、互いに異なる厚さを有してもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
【0237】
・赤外光カットフィルター13を形成する材料は、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、および、帯電防止剤など添加物であって、赤外光カットフィルター13が、赤外光を吸収する機能以外の他の機能を兼ね備えるための添加物を含むことが可能である。
【0238】
・固体撮像素子10において、赤外光カットフィルター13に対して入射面15Sの側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m/day/atm以下であってもよい。例えば、積層構造は、平坦化層や密着層などの他の機能層であって、各マイクロレンズとともに、その酸素透過率が5.0cc/m/day/atm以下であってもよい。
【0239】
・固体撮像素子10は、複数のマイクロレンズに対して光の入射面側にバンドパスフィルターを備えてもよい。バンドパスフィルターは可視光と近赤外光の特定の波長を有する光のみを透過するフィルターであり、赤外光カットフィルター13と類似の機能を備える。すなわち、バンドパスフィルターにより各色用光電変換素子11R,11G,11Bが検出し得る不要な赤外光をカットすることができる。それによって、各色用光電変換素子11R,11G,11Bによる可視光の検出精度、および、赤外光用光電変換素子11Pの検出対象である850nmあるいは940nm帯域の波長を有した近赤外光の検出精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0240】
10…固体撮像素子
13…赤外光カットフィルター
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
11R…赤色用光電変換素子
11G…緑色用光電変換素子
11B…青色用光電変換素子
11P…赤外線用光電変換素子
12R…赤色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12B…青色用フィルター
12P…赤外光パスフィルター
13…赤外光カットフィルター
13H…貫通孔
14…バリア層
15R…赤色用マイクロレンズ
15G…緑色用マイクロレンズ
15B…青色用マイクロレンズ
15P…赤外線用マイクロレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6