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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000281
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ミリ波反射板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098990
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小野 真聖
(72)【発明者】
【氏名】松村 隆紀
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA04
5J020BA06
5J020BD04
5J020DA03
5J020DA04
5J020DA09
(57)【要約】
【課題】入射したミリ波を複数の方向に反射できるミリ波反射板を提供する。
【解決手段】ミリ波反射板1は、面状の誘電体20と、誘電体の第一面上に設けられた、寸法または形状の異なる2種類以上の金属パターン11、12、13と、誘電体において、第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層とを備える。金属パターンの配置態様は、金属パターン11、12、13を含む複数の金属パターンを有するスーパーセル10を、向きを揃えて隙間なく配置した基本配置に対応した位置に配置され、かつ基本配置から80%以下の数の金属パターンが除かれた状態である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の誘電体と、
前記誘電体の第一面上に設けられた、寸法または形状の異なる2種類以上の金属パターンと、
前記誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層と、
を備え、
前記金属パターンの配置態様は、前記金属パターンを含む複数の金属パターンを有するスーパーセルを、向きを揃えて隙間なく配置した基本配置に対応した位置に配置され、かつ前記基本配置から80%以下の数の金属パターンが除かれた状態である、
ミリ波反射板。
【請求項2】
前記配置態様は、前記基本配置から20%以上の数の金属パターンが除かれた状態である、
請求項1に記載のミリ波反射板。
【請求項3】
前記スーパーセルの平面視形状は長方形であり、
前記金属パターンの配置態様は、前記長方形の短辺方向に隙間なく並べられた前記スーパーセルの列を、前記長方形の長辺方向に前記長辺の整数倍の間隔をあけて複数配置した態様である、
請求項1に記載のミリ波反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波帯の電波を反射するミリ波反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波に対応した各種無線機器の実用化に際し、電波の不感地帯の発生が問題となっている。ミリ波帯の電波は、普及が進んでいるVHF波、UHF波と比較して著しく減衰しやすく、直進性も高いという特徴がある。この為、ミリ波帯の電波は、回折による障害物背後への回り込みが難しい。
【0003】
ミリ波帯の電波の不感地帯を解消するものとして、ミリ波帯の電波を反射する反射板(以下、「ミリ波反射板」と称する。)が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載のマルチビームリフレクトアレイは、上記ミリ波反射板として機能し得る。このマルチビームリフレクトアレイは、面状の誘電体の一方の面に所定の角度にミリ波を反射する反射単位を多数有し、他方の面にグランドとして機能とする金属層を有する。各反射単位は、形状の異なる複数の金属パターンで構成される。
【0005】
反射単位が設けられた側の面に入射したミリ波は、各金属パターンと、金属層との両方で反射される。この反射波どうしが干渉することにより、ミリ波は入射時と異なる位相に反射される。
さらに、異なる金属パターンに基づく干渉波は、位相が異なるため、二次干渉を生じる。したがって、反射単位を構成する複数の金属パターンの形状を適宜設定することにより、入射したミリ波の反射方向を所望の向きに設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/031539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のマルチビームリフレクトアレイは、特定の一方向に電波を強く反射する特徴を有する。このため、解消できる不感地帯が少なく、広範囲に電波を伝搬させたい際に効果が限定的となる問題がある。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、入射したミリ波を複数の方向に反射できるミリ波反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、面状の誘電体と、誘電体の第一面上に設けられた、寸法または形状の異なる2種類以上の金属パターンと、誘電体において、前記第一面と反対側の第二面上に設けられた金属層とを備えるミリ波反射板である。
金属パターンの配置態様は、第二面上に設けられた金属パターンを含む複数の金属パターンを有するスーパーセルを、向きを揃えて隙間なく配置した基本配置に対応した位置に配置され、かつ基本配置から80%以下の数の金属パターンが除かれた状態である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るミリ波反射板は、入射したミリ波を複数の方向に反射でき、不感地帯の効果的な解消に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るミリ波反射板の模式部分断面図である。
図2】同ミリ波反射板の斜視図である。
図3】一般的なミリ波反射板の斜視図であり、スーパーセルの基本配置を示している。
図4】同ミリ波反射板の反射特性を示す図である。
図5】金属パターンの配置態様の一例を示す模式図である。
図6図5に示す例の反射特性を示す図である。
図7】(a)、(b)、および(c)は、いずれも本発明の変形例に係るミリ波反射板の模式部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るミリ波反射板1を示す模式部分断面図である。図1に示すように、ミリ波反射板1は、面状の誘電体20と、誘電体20上に設けられたスーパーセル10および金属層30とを備えている。
【0013】
図2に、ミリ波反射板1の斜視図を示す。スーパーセル10は、誘電体20の第一面20a上に複数設けられており、形状の異なる複数の金属パターンを有する。
本実施形態において、スーパーセル10は、大きさの異なる十字型の金属パターン11、12、13の三つの金属パターンを有しており、金属パターン11、12、13が一方向に並べて配置されている。金属パターンの形状や数、配置等は、図2に示した態様に限られず適宜設定でき、環状や、特許文献1に記載されたマッシュルーム構造のような立体形状等であってもよい。
【0014】
誘電体20の材質は、誘電体であれば特に制限はない。誘電体20の好適な例として、ガラスクロスに合成樹脂を含浸させたものや、各種合成樹脂からなるフィルム等を挙げることができる。中でも、低損失な電気特性を有する誘電体がより好適であり、高純度ガラス(石英ガラス)、フッ素系樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリオレフィン、等が例示できる。これらは単体で使用してもよく複数種類を混合したり積層したりして使用してもよい。
【0015】
金属層30は、誘電体20において第一面20aと反対側の第二面20bに設けられ、第二面20bの概ね全体を覆っている。
誘電体20、スーパーセル10、および金属層30は、例えば、誘電体の両面に金属箔が接合された材料を用いて、金属箔をエッチング等でパターニングして複数のスーパーセルを形成することにより製造できる。
【0016】
本実施形態において、スーパーセル10および金属層30は、銅からなるが、材質は銅には限られず、金や銀、アルミニウム等も使用できる。さらに、本実施形態における金属層は、金属を主成分としていればよく、抵抗値として10-6Ω・m以下程度の導電性を保持する範囲で金属以外の物質を含んでもよい。例えば、銀混入ペースト、銅混入ペースト、ITO等の導電性金属酸化物等も用途に応じて適用可能である。
【0017】
スーパーセル10にミリ波が入射すると、その一部は金属パターン11、12、13で反射され、他の一部は、誘電体20を通り金属層30で反射される。これらの反射波の位相差と、スーパーセル10における金属パターンの態様とにより、入射したミリ波は設定された反射特性に従った反射波としてミリ波反射板1から出射される。
したがって、向きを揃えて複数のスーパーセル10を配置することにより、ミリ波反射板は、第一面20a全体として、スーパーセル10に設定された反射特性にしたがってミリ波を反射できる。本実施形態において長方形であるスーパーセルの外形寸法は、反射対象とするミリ波のパラメータにより、概ね一定の範囲内に定められる。
上記を踏まえ、通常のミリ波反射板においては、図3に示すように、反射面上に複数のスーパーセル10が向きを揃えて隙間なく配置される。以降の説明において、図3に示すようなスーパーセルの配置を、「基本配置」と称することにする。
【0018】
発明者らは、ミリ波反射板の反射特性に関して種々検討を進める過程で、上記基本配置に則って配置された複数の金属パターンの一部を除去あるいは省略したミリ波反射板においては、スーパーセル10の反射特性に基づいた反射に加えて、この反射特性とは異なる反射が生じ、その結果ミリ波反射板に拡散反射性を付与できることを見出した。
【0019】
例えば、図2に一部を示す例において、スーパーセル10は、その短辺方向においては隙間なく連続配置されているが、その長辺方向においてはスーパーセル1つ分の間隔を空けて複数配置されている。つまり、図2に示す例は、基本配置から1列ごとにすべての行のスーパーセルに相当する金属パターンが除かれた配置態様であると言える。詳細は後に実験例でも示すが、図2に示されるような金属パターンの配置態様では、基本配置では生じえない角度にミリ波の反射ピークが生じ、ミリ波反射板が拡散反射特性を獲得する。
【0020】
金属パターンの一部を除去あるいは省略することによりミリ波反射板が拡散反射性を獲得する機序については、一部明らかでない点もあるが、基本的には以下のような作用によると考えられる。
金属パターンが存在しない部位に入射したミリ波は、誘電体20を通り金属層30で反射されるが、金属パターンとの干渉は生じないため、金属層30における正反射のみが発生する。この反射波と、スーパーセル10の反射特性に基づいた反射波とがさらに干渉することにより、正反射と、反射特性に基づく反射角度との間に、両者のいずれとも異なる反射ピークが生じると考えられる。
【0021】
上述した拡散反射現象について、実験例を用いて説明する。
(実験例1)
誘電体の両面に銅箔が設けられた60.6mm×60.6mmの銅張積層板を準備した。誘電体はフッ素樹脂含浸ガラスクロス(厚さ800μm)であり、銅箔の厚さはいずれも35μm、総厚は870μmである。このような構成の入手可能な銅張積層板としては、例えば中興化成工業社製のCGP-500がある。
【0022】
銅張積層板の一方の面にエッチングを施し、二次元マトリクス状に配列されたスーパーセルを複数形成した。スーパーセルは、十字型の3つの金属パターンで構成される。小パターンは、幅1.1mm、縦横寸法1.4mmである。中パターンは、幅1.4mm、縦横寸法3.0mmである。大パターンは、幅1.4mm、縦横寸法3.8mmである。3つのパターンを小、中、大の順に等ピッチで5.05mm×15.15mmの区画内に配置し、これをスーパーセルの単位とした。このスーパーセルは、垂直に入射した28GHz帯のミリ波を、小パターンから大パターンに向かう方向に45°傾けて反射するよう設計されている。
【0023】
上記構成のスーパーセルを、12行4列の二次元マトリクス状に形成した。もう一方の面は、エッチングをせずにそのまま金属層として用いた。
以上により、実験例1に係るミリ波反射板を作製した。実験例1に係るミリ波反射板100の外観を図3に示す。ミリ波反射板100は、全面にスーパーセルが同じ向きで隙間なく配置され、上述した「基本配置」となっている。
【0024】
(実験例2)
短辺方向に隙間なく並んだスーパーセルの列を、長辺方向にスーパーセル1つ分の間隔を空けて2列形成した。その他の点は実験例1と同様の手順により、実験例2に係るミリ波反射板を作製した。実験例2に係るミリ波反射板の外観は、図2とほぼ同様である。実験例2に係るミリ波反射板は、「基本配置」に対して50%の金属パターンを有し、小、中、大の各金属パターンは同数存在する。
【0025】
実験例1および2に係るミリ波反射板に対し、以下の手順でミリ波の反射特性を評価した。
(反射特性評価)
各例に係るミリ波反射板を、スーパーセル側が凸の曲面となるように木製の角材に取り付け、電波暗室環境内に固定した。ホーンアンテナからの送信波を曲面形状の反射鏡で反射して28GHzの平面波を生成し、ミリ波反射板に対して垂直に照射した。
ミリ波反射板に対して遠方界となる位置に設置した受信アンテナで、ミリ波反射板からの反射波を計測した。この受信アンテナは、ロボット上に設置され、ミリ波反射板から一定の遠方界距離を保ったまま周回できるよう構成されており、広い角度範囲で反射波を計測できる。遠方界の距離は2D^2/λで算出可能である。ロボット上受信アンテナはミリ波反射板に向かって右側180°分周回した後、左側180°分周回する。これにより、ミリ波反射板の正面2°を除く358°分の範囲におけるミリ波反射板からの反射波の強度を測定した。
【0026】
次に、有限要素法を用いた解析ソフト「高周波3次元電磁界解析ソフトウェア HFSS(FEM ソルバー)」を用いて各例の測定結果を解析した。条件は以下の通りとした。
入射電波の設定
入射角:0°
偏波:TE波
周波数:28GHz
入射位置:ミリ波反射板のスーパーセル側表面から法線方向に15mm離れた位置
解析モデルの設定
ミリ波反射板各部寸法:上記の通り
導体:銅、導電率5.8×10
誘電体:誘電率2.6、誘電正接0.0025
【0027】
図4に、解析結果を示す。実験例1では、正面を0°とした際に、45°および-45°のみに主要な反射ピークを認めたが、一部の金属パターンを有さない実験例2では、45°および-45°の反射強度が若干低下する一方で、その間の0°、22.5°、および-22.5°に十分な大きさの新たな反射ピークを生じた。
以上より、基本配置に則って配置された複数の金属パターンの一部を除去あるいは省略することで、正反射とスーパーセルの設定仕様に基づく反射角度以外の複数の方向にミリ波を拡散反射できることが示された。
【0028】
発明者らがさらに検討を進めたところ、拡散反射を生じさせる金属パターンの除去あるいは省略の態様は、上述したものには限定されないことも明らかになった。
【0029】
まず、金属パターンは、スーパーセル単位で除去あるいは省略されなくてもよく、スーパーセルを構成する金属パターンの一部が除去あるいは省略される態様であってもよいことが分かった。
例えば、図5に示す例では、基本配置に対して金属パターンを2列残し、5列除去することを繰り返した配置となっている。これにより、すべての金属パターンが揃ったスーパーセルは存在せず、残った2列の金属パターンの組も、左側では金属パターン11と金属パターン12の組であるのに対し、右側では金属パターン12と金属パターン13の組であり、一致していない。
図5に示す金属パターンの配置においては、完全なスーパーセルは一つも存在しないが、残存する金属パターンは、いずれも基本配置に対応した位置に存在する。このような金属パターンの態様であっても、上記解析ソフトを用いたシミュレーションでは、図6に示すように、22.5°および-22.5°に十分な大きさの新たな反射ピークが認められ、好適な拡散反射性を示した。
【0030】
発明者らの検討では、2列残した後に空ける列の数が9になると、拡散反射が認められなくなった。残す列および空ける数等を様々に変えて検討した結果、除去あるいは省略する金属パターンの割合は、基本配置に対して80%以下が好ましいと考えられた。
一方、除去あるいは省略される金属パターンが少なすぎると、異なる反射ピークが生じないか、生じても不十分となり、拡散反射性を発揮しない可能性が高くなる。発明者らの上記検討では、基本配置に対して概ね20%以上であることが好ましいと考えられたが、これは、必須ではなく、実際に拡散反射性が発揮されていれば基本配置に対して20%未満であってもよい。
なお、本発明においては、最も大きい反射ピークとの差が10dBsm(デシベルスクエアメートル)以内のピークが正反射および反射特性に基づく反射角度のいずれとも異なる位相に存在しない状態を、「拡散反射していない」と定義する。
【0031】
さらに、金属パターンを除去あるいは省略した結果、残存する金属パターンが1種類だけになると、除去あるいは省略する金属パターンの割合が上記範囲内であっても、拡散反射しなくなった。したがって、残存する金属パターンは、少なくとも2種類以上必要であることがわかった。発明者らの検討では、2種類の金属パターンにおいて、少ない方の金属パターンの数が多い方の金属パターンの40%以上存在すれば、良好な拡散反射性を示しやすいことが分かっている。
スーパーセルを構成する金属パターンが3種類以上である場合でも、そのうちの少なくとも2種類が残存するように金属パターンを除去あるいは省略すれば、ミリ波反射板に拡散反射性を付与できる。その際、残存させる金属パターンの組み合わせには特に制限はなく、適宜選択できる。この場合は、3種類以上のパターンのうち、最も差の少ない2種類において上記の比率が満足されれば、良好な拡散反射性を示しやすい。
2種類の金属パターンは、必ずしも並べて配置される必要はなく、離間して配置されてもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係るミリ波反射板は、入射したミリ波を、スーパーセルの反射特性に基づく角度以外の複数の角度に反射させることができ、設置した空間内にミリ波を効果的に充溢させることができる。
【0033】
なお、本発明においては、残存するすべての金属パターンが、ある共通の基本配置に鑑みて矛盾ない配置となっていることが大前提であり、これによってスーパーセルの反射特性に基づいたミリ波の反射が維持されていると考えられる。したがって、スーパーセルを構成する複数種類の金属パターンを、何の制約もなく自由に配置できるわけではないことに留意する必要がある。
【0034】
本発明に係る金属パターンの配置態様の典型は、平面視長方形のスーパーセルをこの長方形の長辺または短辺の一方が延びる方向に隙間なく並べた列を、長辺または短辺の他方に当該他方の整数倍の間隔を空けて複数配置した態様である。このような典型の具体例としては、図2に示す例において間隔をスーパーセル2つ分とした態様や、スーパーセルを長辺方向に隙間なく並べた列を、短辺方向にスーパーセルの短辺の3倍の間隔を空けて複数配置した態様等が挙げられる。
なお、この場合でも空ける部分の大きさがすべて同一である必要はなく、例えばスーパーセル2つ分空けた部分とスーパーセル1つ分空けた部分とが混在してもよい。
【0035】
以上、本発明について、実施形態および実施例を用いて説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0036】
例えば、金属パターンが除去あるいは省略された部位は、必ずしもスーパーセルの長辺方向や短辺方向に連続していなくてもよい。
図7の(a)に示す変形例のミリ波反射板1A、および(b)に示す変形例のミリ波反射板1Bでは、金属パターンが除去あるいは省略された部位が斜め方向に連続しており、スーパーセルの長辺方向および短辺方向のいずれにも長く延びていない。しかし、ミリ波反射板1Aおよび1Bのいずれにおいても、スーパーセルを構成する複数の金属パターンが全種類存在しており、除去あるいは省略された金属パターンの割合は75%であるため、好適な拡散反射性を示す。
図7の(c)に示す変形例のミリ波反射板1Cでは、金属パターンが除去あるいは省略された部位が金属パターン一つ分ずつ市松模様状に散らばっており、いずれの方向にも連続していない。しかし、スーパーセルを構成する複数の金属パターンが全種類存在しており、除去あるいは省略された金属パターンの割合は50%であるため、やはり好適な拡散反射性を示す。
【0037】
さらに、ミリ波反射板のある領域においては図7に示した態様とし、他の領域においては図2に示した態様とする等により、複数種類の金属パターンの配置態様が組み合わされてもよい。これにより、反射波の干渉がさらに多様になり、反射波の3次元的な拡散反射が実現できる。
【0038】
本発明における金属パターンの配置態様は、上述した金属パターンの種類数や、除去あるいは省略する割合を満たしてさえいれば、除去あるいは省略された部位が全く法則性なく不規則に分布していてもよい。
【0039】
本発明に係るミリ波反射板において、金属層は、必ずしも第二面上に隙間なく設けられなくてもよい。たとえば、小さな開口を有するメッシュ状であったり、スーパーセルの区画に対応した線状の欠損部位などを有したりしてもよい。ただし、金属層のない部分においては、入射したミリ波が反射されずに透過するため、金属層のない部分が多すぎると反射性能に影響する可能性がある。この観点からは、金属層のない部分の最大連続長を、反射対象周波数の1/4λ未満とすることが好ましい。メッシュ状とする場合は、開口の寸法を調節することで、所定波長の電波を反射せずに透過させることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1、1A、1B、1C ミリ波反射板
10 スーパーセル
11、12、13 金属パターン
20 誘電体
20a 第一面
20b 第二面
30 金属層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7