(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002810
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】信号処理デバイス
(51)【国際特許分類】
H04B 1/40 20150101AFI20231228BHJP
H04B 1/00 20060101ALI20231228BHJP
H04J 1/14 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H04B1/40
H04B1/00 253
H04J1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102238
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】三木 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰宏
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011BA03
5K011DA15
5K011DA21
5K011EA03
5K011JA01
5K011KA04
(57)【要約】
【課題】無線端末などに使用される信号処理デバイスにおいて、複数周波数の信号を含む通信信号から各周波数の信号を簡易な構成で正しく検出できるようにする。
【解決手段】信号処理デバイス44は、複数周波数の信号を含む通信信号を検波する第1検波部4421と、第1周波数の第1信号が除かれた前記通信信号を前記第1検波部4421とは逆の極性で検波する第2検波部4422と、を備え、前記第1検波部4421の検波出力と前記第2検波部4422の検波出力とを合成出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数周波数の信号を含む通信信号を検波する第1検波部と、
第1周波数の第1信号が除かれた前記通信信号を前記第1検波部とは逆の極性で検波する第2検波部と、を備え、
前記第1検波部の検波出力と前記第2検波部の検波出力とを合成出力する、
信号処理デバイス。
【請求項2】
前記第2検波部は、前記第1信号が除かれた前記通信信号を、前記第1検波部で検波される前記通信信号との位相差が絶対値で0度を超え90度以下の範囲で、前記第1信号が除かれた前記通信信号を検波する、請求項1に記載の信号処理デバイス。
【請求項3】
前記第1検波部で検波される前記通信信号の信号レベルが前記第2検波部で検波される前記通信信号の信号レベルよりも小さい、請求項1に記載の信号処理デバイス。
【請求項4】
前記第1検波部は、他端が接地された抵抗器の一端を介して前記通信信号がアノードに入力される第1検波素子を有し、
前記第2検波部は、前記第1信号の通過を阻止する帯域阻止フィルタを介して前記通信信号がカソードに入力される第2検波素子を有し、
前記第1検波素子のカソードと前記第2検波素子のアノードとが電気的に接続されている、請求項3に記載の信号処理デバイス。
【請求項5】
前記第1検波素子と前記第2検波素子とが同一特性のダイオードである、
請求項4に記載の信号処理デバイス。
【請求項6】
前記第1検波部の検波出力と前記第2検波部の検波出力との合成出力を、アクティブフィルタを兼ねる増幅器で増幅するとともに、増幅後の合成出力を所定の閾値でデジタル信号に変換するA/D変換部を備える、請求項1に記載の信号処理デバイス。
【請求項7】
前記通信信号のうち、検波前の前記第1信号と、前記第1周波数と異なる第2周波数の第2信号及び第3周波数の第3信号と、を分波する分波部を備え、
前記分波部は、検波前の前記第1信号を通過させる第1フィルタと、
前記第2信号及び前記第3信号を通過させる第2フィルタと、
前記第3信号だけを通過させる第3フィルタとを有し、
前記第2フィルタの所定部位から所定負荷を介して前記第3信号を含む前記通信信号が前記第3フィルタへ分配入力される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の信号処理デバイス。
【請求項8】
前記第2フィルタは、検波前の前記第1信号と前記第2信号が入力される第1LC直列回路と、前記第3信号が入力される第2LC直列回路と、前記第1LC直列回路の出力と前記第2LC直列回路の出力との接続部位にその一端が電気的に接続され他端が接地されたLC並列回路とを有し、
前記第3信号を含む前記通信信号を、前記接続部位からダンピング抵抗を介して前記第3フィルタへ分配入力する、
請求項7に記載の信号処理デバイス。
【請求項9】
前記第2フィルタは、前記通信信号が入出力される入出力端子と、前記第3信号が入力される入力端子とを有し、前記接続部位から前記入出力端子をみた電気定数と前記接続部位から前記入力端子をみた電気定数が同一又は略同一である、請求項8に記載の信号処理デバイス。
【請求項10】
前記第2フィルタは、前記通信信号が入出力される入出力端子と、前記第3信号が入力される入力端子とを有し、前記接続部位から前記入出力端子に至る前記第3信号の信号レベルと前記入力端子から前記接続部位に至る信号レベルとが同一又は略同一である、請求項8に記載の信号処理デバイス。
【請求項11】
前記第2フィルタの周波数-振幅特性がバターワース特性である、
請求項8に記載の信号処理デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載される無線端末及びその構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、V2X(Vehicle to Everything)サービスでは、車両に搭載される無線端末(アンテナ、通信機器及びその構成部品)の高機能化が進んでいる。V2Xサービスは、5.9GHz帯を使用したサービスが先行しているが、今後は、26GHz帯,28GHz帯,60GHz帯の使用したサービスも検討されている。
V2Xサービスに関する先行技術として、例えば、特許文献1に開示された技術がある。この技術では、無線通信の基地局が、V2Xサービスを使用する車両側の無線端末に対して、V2Xサービスのためのプロビジョニング、すなわちネットワークや設備などのリソースを必要なタイミングで提供できるように予測し、準備しておく。すなわち、基地局がV2Xサポート情報をブロードキャストすると、それを受信した車両側の無線端末がV2X端末情報を送信する。基地局は、V2X端末情報を受信すると、その車両側の無線端末のためのV2Xサービスのリソース割り当てを行う。車両が移動中であるため、車両側の無線端末は、V2Xサポート情報を正しく受信し、迅速にV2X端末情報を送信する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両などの移動体側の無線端末は、それを設置する箇所及びスペースが限られているのが通常である。そのため、無線端末は、1つ又は複数のアンテナを、複数の周波数の通信信号を用いる車載通信機器で共用することが多い。無線端末では、また、通信信号の送信と受信とを切替可能にしたり、送信時は複数の信号を変調して信号線路に重畳し、受信時は信号線路から各変調波を分波して元の信号を検波することも行われている。通信方式も、回路部品の増加を回避する必要があるときにはシリアル通信方式が採用される。近年は、車載通信機器においてもデジタル信号が多用されており、この場合、当該車載通信機器に接続される無線端末に、受信時に検波信号をデジタル信号に変換する手段が設けられる。
【0005】
車両などの移動体側の無線端末において、信号線路を複数の通信信号で共用する際の問題の一つは、受信側で当該通信信号の予期し得ない誤検出が生じやすい点と、それを回避するために回路構成を簡略にできない点である。例えば、シリアル通信方式で受信した複数の変調波を分波し、各分波信号を直接検波する場合、分波信号の波形が乱れて元の信号が誤検出(誤検波)されやすくなる。分波信号の誤検出(誤検波)は、元の信号を利用する車載通信機器による誤動作を招く。
【0006】
特に、V2Xサービスで使用されるような高周波数帯では、設計外の周波数の輻射ノイズを含む目的外信号が信号線路に混入しやすい。そのため、複数周波数の通信信号を1本の信号線路や電子回路を共用することは、V2Xサービスで使用されるような高周波数帯では困難である。このような高周波数帯では、使用する通信信号の数に応じた回路基板を作成するとともに、各回路基板に形成される信号線路に狭帯域整合回路や負荷変動抑制回路等を設けるのが一般的である。そのため、回路設計のコストが嵩むだけでなく、回路面積を縮小することもできない。
【0007】
本発明の課題の一つは、複数周波数の信号を含む通信信号から各周波数の信号を簡易な構成で正しく検出することができる無線端末の構成部品を提供することにある。本発明の他の課題は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、複数周波数の信号を含む通信信号を検波する第1検波部と、第1周波数の第1信号が除かれた前記通信信号を前記第1検波部とは逆の極性で検波する第2検波部と、を備え、前記第1検波部の検波出力と前記第2検波部の検波出力とを合成出力する、信号処理デバイスである。
この信号処理デバイスによれば、複数周波数の信号を含む通信信号から各周波数の信号、例えば第1周波数の第1信号を簡易な構成で正しく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】無線端末が有する信号処理デバイスの構成図である。
【
図3】過渡応答が生じているパルス信号とA/D変換後のデジタル信号の波形例を示す図である。
【
図7】負荷抵抗の存在の有無による目的外信号の信号レベルの差異を示す図である。
【
図8】負荷抵抗の存在の有無による目的外信号の極性の差異を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、車両に取り付けられる無線端末に適用した場合の実施の形態例を説明する。
図1は、本実施形態に係る無線端末1の構成図である。無線端末1は、ECU(Electronic Control Unit)2とアンテナ3に接続される双方向増幅器4とを有する通信機器である。ECU2は、車内通信ネットワークの制御、及び/又は、車両の駆動制御を行うコントロールユニットである。アンテナ3は、外部通信システムとの間でV2Xサービスを行うための通信(以下、「V2X通信」という)を可能にするアンテナである。双方向増幅器4は、ECU2及びアンテナ3とは別体の筐体に収容される。筐体には、ECU2と接続するためのユニット端子11と、アンテナ3と接続するためのアンテナ端子12とが設けられている。ECU2とユニット端子11、アンテナ3とアンテナ端子12は、それぞれRF(Radio Frequency)ケーブル、例えば同軸ケーブルを介して接続される。
【0011】
双方向増幅器4は、FEM(Front End Module)41、MCU(Micro Controller Unit)42、電源回路(P.S.)43及び信号処理デバイス44を有する。FEM41は、アンテナ3とECU2との間で通信信号を通じて受け渡される各種情報でRF処理を担う。FEM41は、例えば、チューナ、送受信切替スイッチ、デュプレクサ、送信時に機能するパワーアンプ、受信時に機能するローノイズアンプなどをモジュール化して構成される。MCU42は、FEM41及び信号処理デバイス44が所定の動作を行うように制御する制御手段の一つである。MCU42は、FEM41からECU2宛の情報を信号処理デバイス44へ伝達する。MCU42は、また、ECU2からFEM41宛の情報を信号処理デバイス44へ伝達する。
【0012】
ECU2、ユニット端子11及びRFケーブルの芯線とFEM41との間の信号線路を本明細書では主信号ライン401と呼ぶ。主信号ライン401には、直流成分をカットするカットコンデンサC0が介挿されている。主信号ライン401には、信号処理デバイス44も接続される。主信号ライン401には、また、RF成分をカットするRFカットインダクタL0を介して電源回路(P.S.)43が接続されている。電源回路(P.S.)43は、ECU2から供給される電力を、双方向増幅器4を駆動するための電力に変換する。そのため、主信号ライン401には、ECU2から供給される電力とRFの通信信号とが重畳している。なお、電源回路(P.S.)43は、FEM41、MCU42及び信号処理デバイス44に対して、ECU2からの電力を変換無しに直接供給する構成であってもよい。
【0013】
信号処理デバイス44は、以下の3つの通信信号をシリアル通信方式で伝送する。
・ECU2からFEM41に向かうTx/Rx信号
・ECU2からFEM41に向かうCONTROL信号
・FEM41からECU2に向かうLOG信号
【0014】
Tx/Rx信号は、V2X通信におけるアップリンク/ダウンリンク(送信系/受信系)の切換制御やMCU42のCal応答(通信チャネル確立のための応答)等に使用される単パルス信号である。この単パルス信号のパルス幅は、数μSec~数mSecの時間幅となる。Tx/Rx信号は、上記役割をもつことから必要以上の遅延や誤検出が許されない重要な信号である。Tx/Rx信号は、ECU2が、RF信号よりも低い第1周波数f1のサブ搬送波を所定の変調方式で変調して信号処理デバイス44へ送信する。信号処理デバイス44は、この変調波を検波してTx/Rx信号を復調し、MCU42へ送信する。MCU42は、Tx/Rx信号を用いてFEM41を制御する。
以後の説明では、変調されたTx/Rx信号を「f1変調波」、f1変調波を検波することで得られる信号を「f1検波信号」と呼ぶ場合がある。
【0015】
CONTROL信号は、MCU42を通じてFEM41の設定内容を変えるためのデータ列(パルスの組み合わせ態様で情報を表すパルス列)信号である。このデータ列信号は、第2周波数f2の搬送波を所定の変調方式で変調して搬送される。CONTROL信号は、ECU2により出力される。つまり、ECU2は、RF信号よりも低い第2周波数f2のサブ搬送波を所定の変調方式で変調して信号処理デバイス44へ送信する。信号処理デバイス44は、この変調波を検波してCONTROL信号を復調し、MCU42へ送信する。MCU42は、CONTROL信号を用いてFEM41の設定内容を変える。
以後の説明では、変調されたCONTROL信号を「f2変調波」、f2変調波を検波することで得られる信号を「f2検波信号」と呼ぶ場合がある。
【0016】
LOG信号は、フィードバック情報である送信電力,温度,Keep-alive応答(通信接続切断を防止するための定期的な応答)等を表すデータ列信号である。MCU42は、CONTROL信号を受け取った後、LOG信号を信号処理デバイス44へ送信する。信号処理デバイス44は、このLOG信号をRF信号よりも低い第3周波数f3のサブ搬送波を所定の変調方式で変調してECU2へ送信する。このように、CONTROL信
号とLOG信号とは、時間的に分離されており、重複することがない。
以後の説明では、変調されたLOG信号を「f3変調波」、f3変調波を検波することで得られる信号を「f3検波信号」と呼ぶ場合がある。
【0017】
第1周波数f1は、Tx/Rx信号で送受信系を高速に切換制御するために遅延を極力小さくする必要がある。そのため、できるだけ高い周波数が使用される。これに対して、第2周波数f2と第3周波数f3は、第1周波数f1よりも低い周波数に設定される。各周波数f1,f2,f3は、全て異なる3周波が標準であるが、第2周波数f2と第3周波数f3を同じ周波数とした2周波であってもよい。2周波にすることで、回路構成が簡素化され、コストを低減させることができる。
各信号の搬送波の周波数条件は、以下のいずれかとなる。
f2<f3<f1
f3<f2<f1
f2=f3<f1
以下の説明では、RF信号が5.9GHzであり、第1周波数f1が64~128MHzのいずれか、例えば125MHzであるものとする。また、第2周波数f2と第3周波数f3は、4MHz~32MHzのいずれか、例えば16MHzであるものとする。つまり、本実施形態では、まず、2周波である場合の例について説明する。
【0018】
Tx/Rx信号はf1変調波として、CONTROL信号はf2変調波として、それぞれECU2から双方向増幅器4の主信号ライン401に到達する。LOG信号は、双方向増幅器4で変調されたf3変調波として主信号ライン401に到達する。変調方式は、ECU2と双方向増幅器4との間で共通であればよく、ASK(Amplitude Shift Keying)、PWM(Pulse Width Modulation)その他の任意の変調方式を採用可能である。
本実施形態では、ASK-OOK(on-off-keying)を採用した場合の例を説明する。ASK-OOKは、ASKの中で「信号を出す/出さない」によって変調する方式であり、検波(復調)も信号の有無だけで足り、シンプルな回路構成で実現できる利点がある。
【0019】
信号処理デバイス44について詳しく説明する。
図2は、信号処理デバイス44の構成例を示す図である。信号処理デバイス44は、分波部441、検波部442、A/D変換部443、変調部444を有する。但し、MCU42が変調機能を有する場合、変調部444は不要となる。
【0020】
分波部441は、f
1変調波、f
2変調波及びf
3変調波を分波する。分波が十分でないと、後段の検波部442における検波信号の波形に乱れが生じ、さらにその後段のA/D変換部443の出力信号が、送信元の信号(Tx/Rx信号、CONTROL信号)と異なる内容になってしまうことがある。このことを
図3を参照して説明する。
【0021】
図3は、過渡応答が生じているパルス信号とA/D変換後のデジタル信号の波形例を示す図である。
図3において、縦軸は直流電圧(V)、横軸は時間(T)である。
パルス信号の場合、定常状態から信号レベルが急激に変化するため、リングバックやステップなどの過渡応答301,302が生じやすい。分波部441で分波したパルス信号の波形を検波部442がそのまま検波したとする。このとき、A/D変換部443の基線(デジタル変換の閾値電圧、以下同じ)がパルス信号の立ち上がり時又は立ち下がり時の過渡応答301,302の振幅中心値付近にあると、パルス信号が誤検出されてしまう。つまり、
図3に破線で示す1つのパルス信号(正信号)303が、
図3に実線で示す2つのパルスからなるデータ列信号(信号割れ)の誤信号304として検出される。MCU42でこの誤信号404が処理されると、FEM41が誤動作してしまう。
【0022】
誤信号は、過渡応答301,302だけでなく、目的外信号の混入によっても生じることがある。分波部441は、過渡応答301,302の抑圧や目的外信号の排除を簡易な構成で実現する。以後の説明では、主信号ライン401から分岐入力されて信号処理デバイス44と繋がる信号線路を、共通経路402と称する。
【0023】
分波部441の具体的な構成例を
図4に示す。分波部441は、RFフィルタ4410、第1フィルタ4411、第2フィルタ4412及び第3フィルタ4413を有する。本実施形態では、どのフィルタも、能動素子を用いたアクティブ構成ではなく、パッシブ素子だけのパッシブ構成とする。そのため、能動素子への制御信号の追加等によって回路構成が複雑となることを防止することができる。
【0024】
RFフィルタ4410は、RF信号に対して高インピーダンスになるRF信号遮断用インダクタL1と、直流成分をカットする直流成分カット用コンデンサC1とを有するLC直列回路であり、主信号ライン401と共通経路402との接続部との間に介挿される。RF信号遮断用インダクタL1のインダクタンスは、例えば10nHであり、直流成分カット用コンデンサC1のキャパシタンスは、例えば1μFである。
【0025】
第1フィルタ4411は、第1周波数f1の通信信号(f1変調波を含む)を通過させるフィルタである。本例では、第1フィルタ4411を、約80MHz以上の周波数の通信信号を通過させるHPF(高域通過フィルタ)で構成する。具体的には、その一端が、主信号ライン401からみてRFフィルタ4410を経た後の共通線路402との接続点P1に導通接続されるキャパシタC11と、その一端がキャパシタC11の他端に接続され、その他端が接地されたインダクタL11と、その一端がキャパシタC11の他端及びインダクタL11の一端に接続されたキャパシタC12と、その一端がキャパシタC12の他端に接続され、その他端が接地されたインダクタL12とで、CLCL型のHPFを構成する。キャパシタC12の他端及びインダクタL12の一端との接続点P3は、検波部442に接続される。
【0026】
第2フィルタ4412は、第2周波数f2の通信信号(f2変調波を含む)と第3周波数f3の通信信号(f3変調波を含む)を通過させるフィルタである。本例では、第2フィルタ4412を、約16MHzの周波数の第2信号を通過させるBPF(帯域通過フィルタ)で構成する。第3フィルタ4413は、第2周波数f2の通信信号(f2変調波を含む)を通過させるフィルタである。本例では、第3フィルタ4413を、約70MHz以下の周波数の信号を通過させるLPF(低域通過フィルタ)で構成する。第2フィルタ4412と第3フィルタ4413は、ダンピング抵抗R1を介して信号が分配される分配型フィルタを構成している。
【0027】
第2フィルタ4412は、例えば、主信号ライン401からみてRFフィルタ4410を経た位置に存在する共通線路402との接続点P2と、変調部444又はMCU42との接続点P5との間を結ぶ信号線路に介挿される。具体的には、第2フィルタ4412は、接続点P2と導通するキャパシタC21とインダクタL21とからなるCL直列回路と、接続点P5と導通するキャパシタC22とインダクタL22とからなるLC直列回路と、その一端がCL直列回路とLC直列回路との間に接続され、その他端が接地されたインダクタL23とキャパシタC23とからなるLC並列回路とを有する。
【0028】
CL直列回路及びLC直列回路とLC並列回路の一端との接続部位を接続点Aとする。接続点Aは、接続点P2からの電気長と接続点P5からの電気長とがほぼ均等になる部位、あるいは、接続点P2をみたインピーダンスと接続点P5をみたインピーダンスとがほぼ均等になる部位、あるいは、接続点P2側の位相差と接続点P5側の位相差がほぼ均等になる部位であることが望ましい。
【0029】
接続点Aには、ダンピング抵抗R1の一端が接続されている。ダンピング抵抗R1の他端は、第3フィルタ4413に接続されている。第3フィルタ4413は、その一端がダンピング抵抗R1の他端に接続され、その他端が検波部442との接続点P4に接続されている。第3フィルタ4413は、ダンピング抵抗R1の他端と接続点P4との間に介挿された2つのインダクタL31、L32と、 一端が2つのインダクタL31、L32の間に接続され、他端が接地されたキャパシタC31と、一端がインダクタL32と接続点P4との間に接続され、他端が接地されたキャパシタC32とを有するLCLC型のLPFとして構成することができる。
【0030】
第2フィルタ4412は、第2周波数f2と第3周波数f3を通過域とすればよい。振幅特性はバターワース特性に設定する。バターワース特性は、通過域が一般的なBPF等に比べてより平坦となる特性であり、マックスフラット等とも呼ばれる。振幅特性をバターワース特性にすることで、負荷変動(終端状態によるパッシブ素子のリアクタンス変動等)に起因するf2変調波又はf3変調波の信号レベルの変動を抑えることができる。
【0031】
なお、第3フィルタ4413は、他型式のパッシブ構成のLPFやHPFを用いてもよい。また、分配型フィルタの動作をより安定させる(設計通りに動作させる)観点からは、接続点P2と接続点P4との間,接続点P2と接続点P5との間,接続点P4と接続点P5との間のそれぞれの通過帯域がほぼ同等になるように設定することが望ましい。
【0032】
ここで、ダンピング抵抗R1について、詳しく説明する。ダンピング抵抗R1は、第3フィルタ4413と第2フィルタ4412との間の反射波を抑える役割のほか、第2フィルタ4412を通過する信号と第3フィルタ4413を通過する信号の分配レベルを調整する役割を併せ持つ。
【0033】
上述した負荷変動によって、f
2変調波又はf
3変調波の位相が変わり、f
2変調波又はf
3変調波の波形が設計通りにならないことがある。また、分波された信号線路間の反射波バランス(信号レベルの偏差)や電気的な経路差、フィルタ間の結合等の影響により、リングバックやステップ等の過度応答が起こることもある。これらの現象は、
図3で示した通り、信号波形に乱れを生じさせるが、これらの現象を回避しようとすると、各変調波の経路ごとに緻密な調整・整合が必要となり、時間とコストがかかる。
本実施形態では、ダンピング抵抗R
1による信号レベルの配分調整だけで、これらの現象を抑制する。ダンピング抵抗R
1の抵抗値は約100Ωであるが、30Ω以上200Ω以下の範囲であれば、信号波形の乱れを抑制することができる。ダンピング抵抗R
1は、可変抵抗器であってもよいが、上記現象を抑制できる範囲が判明している場合は、固定抵抗器であってもよい。
【0034】
ダンピング抵抗R1で分波される信号レベルの配分は、接続点P2-接続点P4の経路の信号レベル<接続点P2-P5の経路の信号レベルであればよい。また、接続点P2-接続点P4の経路と接続点P4-接続点P5の経路とで、信号レベルが均等になるように配分してもよい。このように、接続点Aに、共振周波数以外の周波数で信号レベルを低下させるLC並列回路とダンピング抵抗R1とが接続されていることから、第3フィルタ4413と第2フィルタ4412との間の反射波バランスを調整することができ、予期し得ない現象の発生が抑制される。
【0035】
また、同一周波数(f2=f3)時の信号レベルの分配は、T型あるいはπ型の抵抗分配回路と違って終端の負荷の影響を受けないので、ダンピング抵抗R1の抵抗値を変えるだけで、信号の分配レベルを容易に調整することができる。そのため、V2X通信用の高周波帯においても負荷変動の影響を受けにくい分波部441を実現することができる。
【0036】
以上の説明は、第2周波数f2と第3周波数f3とが同一であることを前提としたものである。第2周波数f2と第3周波数f3とが異なる周波数の場合は、第2フィルタ4412の共振周波数を、LC直列回路で略第3周波数f3、LC並列回路で略第2周波数f2にすればよい。なお、LC直列回路、CL直列回路及びLC並列回路のインダクタとキャパシタの位置は、入れ替えてもよい。
【0037】
このように、分波部441では、過度応答の防止回路のような、複雑で緻密な反射波の整合・調整回路を別途設けることがなくなる。そのため、V2X通信で用いられる高周波帯においても、簡易な構成で、複数周波数を正しく分波することができる。また、2周波のみならず、3周波の場合であっても、複雑な回路変更なしに対応が可能なので、設計・開発コストを抑えることができる。
以後の説明では、分波されたf1変調波の信号線路を「f1経路」、f2変調波の信号線路を「f2経路」、f3変調波の信号線路を「f3経路」と呼ぶことがある。
【0038】
f
1経路を伝送する信号の一例を
図5に示す。縦軸は直流電圧(V)、横軸は時間(T)である。RFフィルタ4410及び第1フィルタ4411のパッシブ素子が設計値通りであれば、f
1経路を伝送する信号はf
1変調波だけとなる。しかし、現実には、第1フィルタ4411を構成するパッシブ素子のバラツキやf
1経路への目的外信号の回り込み等により、f
1経路には、
図5に例示されるように、目的外信号が重畳されることがある。そのため、f
1経路とf
2経路との間、f
1経路とf
3経路との間のアイソレーション(分離)を十分に確保する必要が生じる。なお、
図5の例では、f
1変調波の信号レベルが目的外信号よりも格段に大きいが、目的外信号の信号レベルの方がf
1変調波の信号レベルに近いか、大きい場合もある。検波部442は、このような場合であってもf
1変調波の誤検波を確実に防止する。
【0039】
図6を参照して、検波部442の具体的な構成例について説明する。検波部442は、第1検波部4421、第2検波部4422及び第3検波部4423を有する。第1検波部4421は、分波部441から出力されるf
1経路の第1信号を検波する。第2検波部4422は、第1信号からf
1変調波が除かれた第2信号を第1検波部4421とは逆の極性で検波する。検波部442は、第1検波部4421の検波出力と第2検波部4422の検波出力とを合成出力する。つまり、2つの検波出力が合成されたf
1検波信号(Tx/Rx信号)をA/D変換部443へ出力する。第3検波部4423は、分波部441の分配型フィルタで分波されたf
2変調波を検波してf
2検波信号(CONTROL信号)をA/D変換部443へ出力する。
【0040】
第1検波部4421は、分波部441のf1経路に接続された接続点P3と導通する直流成分カット用コンデンサC2と、他端が接地された負荷抵抗R2と、第1検波素子D1と、それぞれ他端が接地された放電用抵抗R3及び平滑コンデンサC5とを有する。放電用抵抗R3と平滑コンデンサC5は、検波波形の訛を改善するために設けられる。第1信号は、直流成分カット用コンデンサC2と他端が接地された負荷抵抗R2の一端とを介して第1検波素子D1のアノードに供給される。第1検波素子D1を通過する信号の極性は正(ハイアクティブ)である。
【0041】
負荷抵抗R2は、第1信号の直流成分及び検波で生じる直流成分をグランド(接地線)に流すことで、A/D変換の基線が0Vに近づく抵抗値に設定される。本例では、負荷抵抗R2を4.3kΩに設定した。なお、負荷抵抗R2は、チョークコイルに代えることができる。また、整合用に整合回路を挿入してもよい。
【0042】
第2検波部4422は、その一端が分波部441のf1経路に接続された接続点P3と導通する第4フィルタ4424と、第1検波素子D1とは逆極性で接続された第2検波素子D2とを有する。第4フィルタ4424は、第1周波数f1に対して高インピーダンスとなる共振回路、例えばインダクタL41とキャパシタC42とからなるLC並列回路であり、その他端は、第2検波素子D2のカソードに接続される。第2検波素子D2のアノードは、第1検波素子D1のカソード、放電用抵抗R3の一端及び平滑コンデンサC5の一端に接続される。
【0043】
第1検波素子D1と第2検波素子D2は高周波帯で使用可能なダイオードであり、同一特性であることが望ましい。第2検波部4422の第4フィルタ4424のインダクタL41とキャパシタC42の値は、第1検波素子D1のカソードと第2検波素子D2のアノードとの接続部位において、両者の位相差が90度となる値に設定される。但し、この位相差は、絶対値で0度を超え90度以下の範囲とする。両者の位相差が絶対値で90度を超え、180度に近づくと、第1検波素子D1と第2検波素子D2との極性が同じになるおそれがあるためである。なお、両者の位相差の微調整のため、第4フィルタ4424の前後に位相器(リアクタンス素子)を別途挿入してもよい。また、第2検波素子D2と第4フィルタ4424の間に目的外信号の整合用に整合回路を挿入してもよい。
【0044】
第3検波部4423は、分波部441のf2経路との接続点P4と導通する直流成分カット用コンデンサC3と、他端が接地された負荷抵抗R4と、第3検波素子D3と、検波波形の訛の改善用の放電用抵抗R5及び平滑コンデンサC6とを有する。負荷抵抗R4は、f2経路に存在し、あるいは検波で生じる直流成分をグランドに流すことで、A/D変換部443の基線が0V電位に近づく抵抗値に設定される。平滑コンデンサC6のキャパシタンスは、例えば30pFである。第3検波素子D3は、第1検波素子D1及び第2検波素子D2と同一特性のダイオードを用いることができる。
【0045】
第1検波素子D
1を通過する信号は、上述の通り、f
1変調波のほか目的外信号を含む複数周波数の第1信号であり、A/D変換部443の基線に対して正極性である。
目的外信号に着目すると、負荷抵抗R
2が存在しない場合、その信号レベルは、
図7右図のように目的外信号の信号レベル(V)は所定値となるが、負荷抵抗R
2が存在することにより、その信号レベル(V)は、
図7左図のように抑圧される。他方、第2検波素子D
2を通過する目的外信号は、第4フィルタ4421で整合がとられているばかりでなく、負荷抵抗も存在しないことから、信号の信号レベル(V)は第1検波素子D
1を通過する目的外信号よりも大きい。
【0046】
つまり、第1検波部4421で検波される通信信号の信号レベルは、第2検波部4422で検波される通信信号の信号レベルよりも小さい。そのため、仮に負荷抵抗R
2を設けない場合、第1検波部4421と第2検波部4422の合成出力のうち、目的外信号の信号レベル(V)は、
図8右図のように、
図7右図に示した信号レベル(V)よりは小さいものの、正極性のままである。これに対して、本実施形態のように負荷抵抗R
2が存在する場合、第1検波部4421と第2検波部4422の合成出力のうち、目的外信号の信号レベル(V)は、
図8左図のように、極性がA/D変換部443の基線に対して負極性となる。
【0047】
A/D変換部443は、図示しない増幅器とコンパレータ(信号変換部)とを有する。増幅器には汎用のオペアンプを使用することができる。オペアンプは、検波部442から出力されるf1検波信号及びf2検波信号に含まれる高調波成分を除去するアクティブ・フィルタ(能動素子により制御される低域通過フィルタ)として使用することができる。コンパレータは、任意に設定される閾値(基線の電圧値)と比較して、f1検波信号をTx/Rx信号に、f2検波信号をCONTROL信号に、それぞれ変換して、MCU42へ入力する。本例の場合、もともとの信号がパルス信号なので、A/D変換部443における信号変換は、閾値を超えた信号の包絡線成形が主たる処理内容となる。
【0048】
図9は、A/D変換部443に入力されるf
1検波信号の波形例を示す図である。f
1検波信号は、Tx/Rx信号のほか、目的外信号が含まれている。Tx/Rx信号には検波波形に過度応答などに起因する波形の乱れはなく、目的外信号はTx/Rx信号と極性が逆となっている。そのため、Tx/Rx信号に対してA/D変換部443の基線を0Vに近づけることができ、A/D変換の範囲を広くとることができる。その結果、目的外信号の信号レベル(V)が変動したり、Tx/Rx信号の信号レベル(V)が低下しても、Tx/Rx信号を正しくA/D変換することができ、高い通信品質を維持することができる。また、妨害検出回路を追加したり、信号分別処理、妨害信号認識処理など複雑な検出処理が不要となり、コストを抑えることができる。
【0049】
図10は、A/D変換部443に入力されるf
2検波信号の波形例を示す図である。f
2検波信号は、CONTROL信号のほかに、LOG信号だけが目的外信号として混在している。しかも両信号は同極性である。但し、LOG信号とCONTROL信号とは時間的に分離されているので、干渉等は生じない。
【0050】
RF帯では、従来、使用する通信信号の数に応じた回路基板を作成し、各回路基板に形成される信号線路に狭帯域整合回路や負荷変動抑制回路等が設けられることは、上述した通りである。しかし、本実施形態では、分波部441において分配型フィルタ(第2フィルタ4412のA点から分配される第3フィルタ4413)を採用したことにより、回路面積の縮小が可能となった。また、検波部442において、f1変調波、f2変調波及びf3変調波の十分なアイソレーションが可能になった。そのため、分波部441の各フィルタ4411,4412,4413、検波部442の回路部品が近接していても、アイソレーションを十分かつ簡易に確保することができるようになった。
【0051】
[変形例]
本実施形態では、V2Xサービスで使用される周波数のうち第1周波数の第1信号がTx/Rx信号の変調波(f1変調波)を含み、第2周波数の第2信号がCONTROL信号の変調波(f2変調波)を含み、第3周波数の第3信号がLOG信号の変調波(f3変調波)を含む例について説明したが、使用する周波数及び信号の種類は、これらに限定されない。本実施形態では、また、車両に搭載される無線端末1の双方向増幅器4、特に、信号処理デバイス44の構成例について説明したが、信号処理デバイス44は、車両に搭載される無線端末1以外の通信機器又はアンテナ装置あるいは携帯通信端末においても使用することができる。
【0052】
[実施例]
次に、信号処理デバイス44の実施例について説明する。
図11は、信号処理デバイス44の実施例を示す図である。本実施例の信号処理デバイス44は、少なくとも分波部441と検波部442とを1枚の回路基板100で実現することができる。回路基板100には、1つの入出力端子101と、2つの出力端子102,103と、1つの入力端子104とが設けられる。電子回路要素の符号は、便宜上、
図4及び
図6に示したものと同じ符号を付してある。
【0053】
入出力端子101には、主信号ライン401に接続される。出力端子102は、A/D変換部のTx/Rx信号端子に接続される。出力端子103は、A/D変換部のCONTROL信号端子に接続される。入力端子104は、変調部444の出力端子又はMCU42のLOG信号端子に接続される。入出力端子101、出力端子102,103、入力端子104に接続される電子回路は、
図4及び
図6に示した回路部品と信号線路とにより構成される。信号線路は分布定数線路であり、回路部品は、分布定数部品又は集中定数部品を用いることができる。回路基板100は、例えばFR-4規格の高周波プリント基板を用いることができるが、同機能の高周波プリント基板を用いてもよい。
【0054】
本実施例によれば、信号線路を複数の通信信号で共用する際の信号線路の負荷変動や目的外信号の混入と、それらに起因する各通信信号の誤検出を1枚の回路基板100だけで回避することができるので、これを実装した装置が小型軽量となり、製造コストの上昇を抑えることができる。なお、回路基板100に、AD変換部443、あるいは、変調部444をも実装する構成であってもよい。
【0055】
本実施形態及び本実施例による開示は、以下の各態様の発明を含んでいる。
[態様1]
態様1の発明は、複数周波数の信号を含む通信信号を検波する第1検波部と、第1周波数の第1信号が除かれた前記通信信号を前記第1検波部とは逆の極性で検波する第2検波部と、を備え、前記第1検波部の検波出力と前記第2検波部の検波出力とを合成出力する、信号処理デバイスである。
態様1の発明によれば、第1検波部の検波出力から第1周波数の第1信号以外の通信信号についての第2検波部の検波出力が逆極性で合成される(相殺される)で、目的外信号の第1信号に与える影響を小さくすることができる。
【0056】
[態様2]
態様2の発明は、態様1の発明において、前記第2検波部は、前記第1信号が除かれた前記通信信号を、前記第1検波部で検波される前記通信信号との位相差が絶対値で0度を超え90度以下の範囲で、前記第1信号が除かれた前記通信信号を検波する信号処理デバイスである。
態様2の発明によれば、負荷変動等によって第1検波部の検波出力と第2検波部の検波出力の極性が互いに同じになる余地を排除することができる。
【0057】
[態様3]
態様3の発明は、態様1の発明において、前記第1検波部で検波される前記通信信号の信号レベルが前記第2検波部で検波される前記通信信号の信号レベルよりも小さい信号処理デバイスである。
態様3の発明によれば、逆極性の目的外信号の検波出力が第1信号と同じ極性となる目的外信号の検波出力(第1検波部の検波出力)よりも信号レベルが大きくなるので、合成出力される目的外信号の信号レベルが必ず第1信号と逆極性になる。そのため、第1信号についてのA/D変換の範囲が広くなり、結果的に第1信号についての通信感度を高めることができる。また、目的外信号を処理する回路が不要となるため、設計・開発コストを抑えることができる
【0058】
[態様4]
態様4の発明は、態様3の発明において、前記第1検波部は、他端が接地された抵抗器の一端を介して前記通信信号がアノードに入力される第1検波素子を有し、前記第2検波部は、前記第1信号の通過を阻止する帯域阻止フィルタを介して前記通信信号がカソードに入力される第2検波素子を有し、前記第1検波素子のカソードと前記第2検波素子のアノードとが電気的に接続されている信号処理デバイスである。
態様4の発明によれば、目的外信号の第1信号に与える影響を小さくすること、及び第2検波部による第1信号の信号レベル低下を確実に抑制し、安価な回路部品の組み合わせにより、簡易に実現することができる。
【0059】
[態様5]
態様5の発明は、態様4の発明において、前記第1検波素子と前記第2検波素子とが同一特性のダイオードである信号処理デバイスである。
態様5の発明によれば、前記第1検波素子の検波出力と前記第2検波素子の検波出力とがバラツキなく設計値通りとなり、回路設計コストの低減化と、特性の安定化を図ることができる。
【0060】
[態様6]
態様6の発明は、態様1の発明において、前記第1検波部の検波出力と前記第2検波部の検波出力との合成出力を、アクティブフィルタを兼ねる増幅器で増幅するとともに、増幅後の合成出力を所定の閾値でデジタル信号に変換するA/D変換部を備える信号処理デバイスである。
態様6の発明によれば、簡素な構成で第1信号から高調波を除去して、元の信号波形により忠実な第1信号に変換することができる。
【0061】
[態様7]
態様7の発明は、態様1から5のいずれか1つの態様において、前記通信信号のうち、検波前の前記第1信号と、前記第1周波数と異なる第2周波数の第2信号及び第3周波数の第3信号と、を分波する分波部を備え、前記分波部は、検波前の前記第1信号を通過させる第1フィルタと、前記第2信号及び前記第3信号を通過させる第2フィルタと、前記第3信号だけを通過させる第3フィルタとを有し、前記第2フィルタの所定部位から所定負荷を介して前記第3信号を含む前記通信信号が前記第3フィルタへ分配入力される信号処理デバイスである。
態様7の発明によれば、第2フィルタと第3フィルタとで1つの分配型フィルタを構成するので、2周波のみならず、3周波の場合であっても、複雑な回路変更なしに対応することが可能となる。これにより、設計・開発コストを抑えることができる。
【0062】
[態様8]
態様8の発明は、態様7の発明において、前記第2フィルタは、検波前の前記第1信号と前記第2信号が入力される第1LC直列回路と、前記第3信号が入力される第2LC直列回路と、前記第1LC直列回路の出力と前記第2LC直列回路の出力との接続部位にその一端が電気的に接続され他端が接地されたLC並列回路とを有し、前記第3信号を含む前記通信信号を、前記接続部位からダンピング抵抗を介して前記3フィルタへ分配入力する信号処理デバイスである。
態様8の発明によれば、LC回路すなわちインダクタとキャパシタと抵抗器という汎用なパッシブ素子だけで、第2フィルタと第3フィルタとで1つの分配フィルタを構成して反射バランスを容易に調整することができ、回路設計コストの低減化が可能となる。
【0063】
[態様9]
態様9の発明は、態様8の発明において、前記第2フィルタは、前記通信信号が入出力される入出力端子と、前記第3信号が入力される入力端子とを有し、前記接続部位から前記入出力端子(P2)をみた電気定数と前記接続部位から前記入力端子をみた電気定数が同一又は略同一である信号処理デバイスである。
態様9の発明によれば、分配型フィルタを構成したことによる第2信号と第3信号との反射バランスを容易にとることができる。
【0064】
[態様10]
態様10の発明は、態様8の発明において、前記第2フィルタは、前記通信信号が入出力される入出力端子と、前記第3信号が入力される入力端子とを有し、前記接続部位から前記入出力端子に至る前記第3信号の信号レベルと前記入力端子から前記接続部位に至る信号レベルとが同一又は略同一である信号処理デバイスである。
態様10の発明によれば、分配型フィルタを構成したことによる第2信号と第3信号との反射バランスを容易にとることができる。
【0065】
[態様11]
態様11の発明は、態様8の発明において、前記第2フィルタの周波数-振幅特性がバターワース特性である信号処理デバイスである。
態様11の発明によれば、分配型フィルタを構成したことにより生じやすい負荷変動や反射波の発生と、それに起因する信号レベルの変動とを抑えることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 無線端末
44 信号処理デバイス
441 分波部
442 検波部
4421 第1検波部
4422 第2検波部
4423 第3検波部
443 A/D変換部
4410 RFフィルタ
4411 第1フィルタ
4412 第2フィルタ
4413 第3フィルタ
4424 第4フィルタ
D1 第1検波素子
D2 第2検波素子