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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002812
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A01C11/02 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102242
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】坂垣内 貴保
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】田村 得雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 吉城
(72)【発明者】
【氏名】水谷 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 創
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA06
2B060AA09
2B060AC01
2B060AC03
2B060AD09
2B060AE03
2B060BA04
2B060BB02
2B060BB03
2B060BB05
2B060CB02
2B060CB18
2B060CC08
(57)【要約】
【課題】苗移植機において、植え付けた苗に対する作溝アームの干渉を抑制することを可能とし、良好な植付け性を得ることを可能とする。
【解決手段】苗載台上に載置した苗マットを植付爪によって一部ずつ切り取って連続的に苗を圃場に植え付けていく苗移植機であって、植付爪72の近傍に設けられ、植付爪72に対して相対移動するように設けられた作溝アーム200と、植付爪72による苗の植付ピッチに対応するために、植付爪72に対する作溝アーム200の動軌跡を変更させる軌跡変更装置270と、を備えた。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台上に載置した苗マットを植付爪によって一部ずつ切り取って連続的に苗を圃場に植え付けていく苗移植機であって、
前記植付爪の近傍に設けられ、前記植付爪に対して相対移動するように設けられた作溝アームと、
前記植付爪による苗の植付ピッチに対応するために、前記植付爪に対する前記作溝アームの動軌跡を変更させる軌跡変更装置と、を備えた
ことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記作溝アームは、前記植付爪の動作に連動して前記植付爪に対する相対的な位置姿勢を変化させるように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記軌跡変更装置は、前記植付爪を含む植付爪装置に対して前記作溝アームを支持するリンク機構により構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記リンク機構は、一端側を前記植付爪装置側に回動可能に支持させるとともに他端側を前記作溝アーム側に回動可能に支持させた2つのリンクアームを含み、
前記軌跡変更装置は、前記2つのリンクアームの前記作溝アーム側に対する支持部間の距離を変更することにより、前記植付爪に対する前記作溝アームの動軌跡を変更する
ことを特徴とする請求項3に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記作溝アームは、前記植付爪に対する相対的な位置姿勢として、前記植付爪が苗マットを切り取るタイミングでの位置姿勢である待機姿勢と、圃場に対する苗の植付けに際して前記植付爪に対して前方に移動した作溝姿勢と、を有し、前記作溝姿勢から、前記植付爪による圃場に対する苗の植付け終了後、前記待機姿勢に戻る循環動作を行うように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項6】
前記作溝アームは、前記作溝姿勢にある状態で、先端を前記植付爪よりも前方に突出させ、前記植付爪に先行して圃場表面に入るように設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の苗移植機。
【請求項7】
前記作溝アームは、少なくとも先端部を圃場表面より下方に位置させた動作範囲では、圃場に植え付けられた苗に干渉しないように設けられている
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗植付装置によって圃場に対して連続的に苗植え作業を行う苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗植付装置によって圃場に対して連続的に苗植え作業を行う苗移植機において、後下がりの傾斜状の苗載台上に載せられた板状の苗マットを横送りおよび縦送りしながら、苗植付装置が有する植付爪によって苗マットを連続的に一部ずつ掻き取って(切り取って)苗を植えていく構成を備えたものがある。このような苗移植機において、植付爪による苗の植付けに際してマルチフィルムに移植用の孔を開けるとともに圃場に苗を移植するための移植穴を掘削(作溝)するための作溝アームを備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。なお、マルチフィルムは、圃場において土壌の保湿や保温、雑草の抑制等を目的として被覆されたフィルムである。
【0003】
特許文献1には、植付爪に対してその下側に、揺動アームを介して、作溝アームである苗保持兼穴掘りアームを設けた構成が開示されている。苗保持兼穴掘りアームは、先端部にマルチフィルム穴開け刃を有し、揺動アームによって植付爪に対して回動可能に設けられている。苗保持兼穴掘りアームは、植付爪により取り出されたポット苗を底面から支持しながらポット苗とともに移動し、ポット苗が圃場面に達すると後側に回動し、マルチフィルム穴開け刃によりマルチフィルムに移植用の孔を開けるとともに土壌に移植穴を掘削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-330607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成において、作溝アーム(苗保持兼穴掘りアーム)は、植付爪に対してブラケット等を介して設けられており、植付爪とともに保持したポット苗が圃場面に達してから、ポット苗の下側を開放するように回動する。このような構成によれば、植付爪に対する作溝アームの相対的な位置についての自由度が低くなるため、マルチフィルムに開ける穴の位置や土壌に対する移植穴の掘削位置に関し、例えば株間の変更等、苗の植付条件の変更に対応することが困難となる。なお、株間は、前後方向に所定の間隔をあけて連続的に植え付けられる苗間の間隔である。
【0006】
苗の植付条件の変更への対応が不十分であると、苗の植付精度の低下や、土壌に対する作溝のトルクの増大や、植え付けた苗に対する作溝アームの干渉といった問題が生じる場合がある。植え付けた苗に作溝アームが接触することは、苗を損傷させたり苗の植付姿勢を悪化させたりする原因となり得る。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、植え付けた苗に対する作溝アームの干渉を抑制することができ、良好な植付け性を得ることができる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る苗移植機は、苗載台上に載置した苗マットを植付爪によって一部ずつ切り取って連続的に苗を圃場に植え付けていく苗移植機であって、前記植付爪の近傍に設けられ、前記植付爪に対して相対移動するように設けられた作溝アームと、前記植付爪による苗の植付ピッチに対応するために、前記植付爪に対する前記作溝アームの動軌跡を変更させる軌跡変更装置と、を備えたものである。
【0009】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記作溝アームは、前記植付爪の動作に連動して前記植付爪に対する相対的な位置姿勢を変化させるように設けられているものである。
【0010】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記軌跡変更装置は、前記植付爪を含む植付爪装置に対して前記作溝アームを支持するリンク機構により構成されているものである。
【0011】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記リンク機構は、一端側を前記植付爪装置側に回動可能に支持させるとともに他端側を前記作溝アーム側に回動可能に支持させた2つのリンクアームを含み、前記軌跡変更装置は、前記2つのリンクアームの前記作溝アーム側に対する支持部間の距離を変更することにより、前記植付爪に対する前記作溝アームの動軌跡を変更するものである。
【0012】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記作溝アームは、前記植付爪に対する相対的な位置姿勢として、前記植付爪が苗マットを切り取るタイミングでの位置姿勢である待機姿勢と、圃場に対する苗の植付けに際して前記植付爪に対して前方に移動した作溝姿勢と、を有し、前記作溝姿勢から、前記植付爪による圃場に対する苗の植付け終了後、前記待機姿勢に戻る循環動作を行うように設けられているものである。
【0013】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記作溝アームは、前記作溝姿勢にある状態で、先端を前記植付爪よりも前方に突出させ、前記植付爪に先行して圃場表面に入るように設けられているものである。
【0014】
本発明に係る苗移植機は、前記苗移植機において、前記作溝アームは、少なくとも先端部を圃場表面より下方に位置させた動作範囲では、圃場に植え付けられた苗に干渉しないように設けられているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、苗移植機において、植え付けた苗に対する作溝アームの干渉を抑制することができ、良好な植付け性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る苗移植機の全体構成を示す左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る苗移植機の全体構成を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る苗移植機の動力伝達構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る苗移植装置の構成を示す後方斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る苗移植装置の構成を示す背面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る苗植付装置の構成を示す前方斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る苗移植装置の下部の構成を示す後方斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る苗マットを示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係る苗マットを示す平面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る苗マットを示す側面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび植付爪装置の構成を示す斜視図である。
図12】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび植付爪装置の構成を示す左側面図である。
図13】本発明の一実施形態に係るガイドレールおよび植付爪装置の構成を示す平面図である。
図14】本発明の一実施形態に係るガイドレールの構成およびガイドレールに対する苗マットの支持構成を示す左側面図である。
図15】本発明の一実施形態に係る植付爪装置の動作のうち苗マットの掻取り動作についての説明図である。
図16】本発明の一実施形態に係る植付爪装置の動作のうち苗ブロックの植付け動作についての説明図である。
図17】本発明の一実施形態に係る植付ユニットの一例を示す斜視図である。
図18】本発明の一実施形態に係る植付爪装置、作溝姿勢の作溝アームおよびリンク機構を示す左側面図である。
図19】本発明の一実施形態に係る植付ユニットの一例を示す平面図である。
図20】本発明の一実施形態に係る植付爪装置、待機姿勢の作溝アームおよびリンク機構を示す左側面図である。
図21】本発明の一実施形態に係る作溝アームを示す斜視図である。
図22】本発明の一実施形態に係る作溝アームの一部を示す左側面断面図である。
図23】本発明の一実施形態に係るカムプレートを示す図である。
図24】本発明の一実施形態に係るロータリケースに対する植付爪装置の相対回転にともなう作溝アームの動作についての説明図である。
図25】本発明の一実施形態に係るロータリケースに対する植付爪装置の相対回転にともなう作溝アームの動作についての説明図である。
図26】本発明の一実施形態に係るロータリケースに対する植付爪装置の相対回転にともなう作溝アームの動作についての説明図である。
図27】本発明の一実施形態に係るロータリケースに対する植付爪装置の相対回転にともなう作溝アームの動作についての説明図である。
図28】本発明の一実施形態に係るロータリケースに対する植付爪装置の相対回転にともなう作溝アームの動作についての説明図である。
図29】本発明の一実施形態に係る植付爪装置および作溝アームについての動作説明のグラフを示した図である。
図30】本発明の一実施形態に係る植付ユニットの動作についての説明図である。
図31】本発明の一実施形態に係る植付ユニットの動作についての説明図である。
図32】本発明の一実施形態に係る植付ユニットの動作についての説明図である。
図33】本発明の一実施形態に係る植付ユニットの動作についての説明図である。
図34】本発明の一実施形態に係る植付ユニットの動作についての説明図である。
図35】本発明の一実施形態に係る植付ユニットの動作についての説明図である。
図36】本発明の一実施形態に係る植付爪装置、作溝姿勢の作溝アームおよびリンク機構を示す左側面図である。
図37】本発明の一実施形態に係る植付爪装置、待機姿勢の作溝アームおよびリンク機構を示す左側面図である。
図38】本発明の一実施形態に係る作溝アームの動作態様についての説明図である。
図39】本発明の一実施形態に係る植付爪および作溝アームの動軌跡の一例を示す図である。
図40】本発明の一実施形態に係る植付爪および作溝アームの動軌跡の一例を示す図である。
図41】本発明の一実施形態に係る植付爪および作溝アームの動軌跡の一例を示す図である。
図42】本発明の他の実施形態に係る植付爪装置、作溝姿勢の作溝アームおよびリンク機構を示す左側面図である。
図43】本発明の他の実施形態に係る植付ユニットの一例を示す平面図である。
図44】本発明の他の実施形態に係る植付爪装置、待機姿勢の作溝アームおよびリンク機構を示す左側面図である。
図45】本発明の他の実施形態に係る作溝アームを示す斜視図である。
図46】本発明の他の実施形態に係る作溝アームの一部を示す左側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、植付爪による苗の植付けに際して圃場に溝を形成するための作溝アームに関する構成を工夫することにより、植付爪による良好な植付け性を得ようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1から図7を用いて、本実施形態に係る苗移植機1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、苗移植機1の前方に向かって左側(図2における下側)および右側(図2における上側)を、それぞれ苗移植機1における左側および右側とする。
【0019】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る苗移植機1は、運転者であるオペレータを乗車させて走行しながら苗植え作業を行う乗用型の苗移植機であり、例えばキャベツ、タマネギ、トマト等の野菜の苗を圃場に対して順次移植するために用いられる。苗移植機1は、走行部を構成する走行機体2と、植付部を構成する苗移植装置3とを備える。苗移植装置3は、複数のリンクを含んで構成されたリンク装置4を介して走行機体2の後部に昇降可能に連結されている。苗移植装置3は、図示せぬ油圧シリンダの動作によって走行機体2に対して昇降する。
【0020】
走行機体2は、機体フレーム5と、左右の前輪6と、左右の後輪7とを有する。機体フレーム5は、複数のフレーム部材により枠組み状に構成されており、水平状のフレーム部分を構成する前フレーム部11と、前フレーム部11の後側において階段状に1段上がった段部をなす後フレーム部12とを有する。左右の前輪6は、前フレーム部11の下側に設けられており、左右の後輪7は、後フレーム部12の後下側に設けられている。左右の前輪6および左右の後輪7により、機体フレーム5が圃場に対して支持される。
【0021】
走行機体2において、前フレーム部11の上側には、車体カバー等により構成された水平状の床部13が設けられている。床部13上には、走行機体2および苗移植装置3を運転・操作するための運転部8が設けられている。後部の左右中央部には、シートマウントである座席支持台9が設けられており、座席支持台9上に運転用の座席10が設けられている。座席10の下方には、図示せぬ燃料タンクが設けられている。
【0022】
床部13上における前部には、座席10に着座したオペレータにより操作される操作部14が設けられている。操作部14には、座席10の前方に位置する操向ハンドル15等を配置したダッシュボード16、変速ペダル18等の各種操作ペダル、変速レバーや植付クラッチレバー等の各種操作レバー等が設けられている。操向ハンドル15は、ダッシュボード16から上側に突出したハンドル支軸15aの上端部に取り付けられている。
【0023】
床部13の前部の左右中央部であって操向ハンドル15の前下方には、駆動源としてのエンジン20が設けられている(図1参照)。エンジン20は、ボンネット17で覆われている。エンジン20は、前フレーム部11の前部の下側に設けられたエンジンサポートフレーム部21に対してブラケットや防振ゴム等を介して搭載されている(図1参照)。エンジンサポートフレーム部21は、正面視でU字状をなす前後2本のサポートフレーム21aを含む。エンジン20は、例えばディーゼルエンジンであり、出力軸の軸方向を左右方向とする向きで設けられている。
【0024】
エンジン20の後方には、ギア群やクラッチやブレーキ等を含んで構成された動力伝達機構を内蔵したミッションケース22が設けられている。ミッションケース22の左側には、無段変速機の一例であるHST23が取り付けられている。
【0025】
図3に示すように、エンジン20の動力は、エンジン20の出力軸20aから、プーリおよびベルト等により構成されたベルト伝動機構24を介して、HST23の入力軸23aに伝達される。入力軸23aに伝達された動力は、HST23からミッションケース22内の動力伝達機構に入力される。ここで、「HST」とは、油圧ポンプを駆動させることで発生させた油圧を油圧モータで再び回転力に変換する方式を採用した油圧式無段変速装置である。
【0026】
ミッションケース22の左右両側には、フロントアクスルケース25が取り付けられている。フロントアクスルケース25の下端部には前車軸26が回転可能に支持されており、前車軸26のフロントアクスルケース25からの左右外側への延出部分に、前輪6が取り付けられている。フロントアクスルケース25内には、ミッションケース22から左右両側に延出した前輪駆動軸の回転動力を前車軸26に伝達する動力伝達機構が設けられている。
【0027】
ミッションケース22の後方には、リアアクスルケース28が設けられている。リアアクスルケース28は、ミッションケース22の後部から延出した伝動軸27によりミッションケース22の動力の伝達を受ける。HST23からミッションケース22内の動力伝達機構に入力された動力は、伝動軸27を回転駆動させる。
【0028】
リアアクスルケース28は、左右両側に、ケース本体部に対して後向きに突出した張出しケース部28aを有する。左右のケース部28aには、後車軸29が回転可能に支持されており、後車軸29の張出しケース部28aからの左右外側への延出部分に、後輪7が取り付けられている。リアアクスルケース28内には、ミッションケース22から伝動軸27により入力された回転動力を左右の後車軸29に伝達する動力伝達機構が設けられている。
【0029】
また、ミッションケース22は、その後部から動力取出軸であるPTO出力軸31を後側に延出している。HST23から動力の入力を受けたミッションケース22内の動力伝達機構は、PTO出力軸31を回転駆動させる。
【0030】
PTO出力軸31の回転動力は、PTO伝動軸32を介して、株間変速ケース33の入力軸34に伝達される。PTO伝動軸32は、PTO出力軸31および入力軸34それぞれに対してユニバーサルジョイント等により連結されている。株間変速ケース33内には、増減速ギアや変速機構等により構成された変速装置36が設けられている。入力軸34に伝達された動力は、株間変速ケース33内の変速装置36により変速され、株間変速ケース33から後側に延出した植付駆動軸35により、苗移植装置3に伝達される。
【0031】
苗移植装置3は、植付駆動軸35により動力の伝達を受ける動力伝達機構を内蔵した植付ミッションケース40と、リンク装置4の後側に連結された植付フレーム41に設けられた苗載台42と、植付ミッションケース40から伝達される動力により駆動する苗植付装置43とを備えている。本実施形態では、左右一対の苗植付装置43を備えている。なお、苗植付装置43は、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0032】
苗載台42には、複数の苗マット100が載置される。苗載台42は、表面側(後上側)に、苗マット100の載置を受ける載置面を有し、載置面を後下がりの傾斜状とするように設けられている。本実施形態に係る苗移植機1は、4条植えの構成を備えており、左右方向に並んだ4つの苗載台部46を有する。なお、図示においては、左から2番目の苗載台部46のみに苗マット100を載置した状態が示されているが、実際の植付け作業においては全ての苗載台部46に苗マット100が載置される。
【0033】
各苗載台部46は、板状の部材により構成され苗マット100の載置面部をなす台本体部46aと、台本体部46aの左右の縁部に沿って設けられた低い壁状のガイド部46bとを有する。ガイド部46bは、台本体部46aにおける苗マット100の載置面部に対する突条部分であり、台本体部46aの延伸方向の全体にわたって設けられている。苗載台42は、各苗載台部46の台本体部46aにおいて、セットされた苗マット100を間欠的に縦方向(下方)に移動させる縦送り構造を有する。
【0034】
各苗載台部46には、送出ベルト47が設けられている。本実施形態では、各苗載台部46において、横並びで2列の送出ベルト47が設けられている。送出ベルト47は、背面視で上下方向に沿う方向を送り方向とする無端状のベルトであり、台本体部46aの下部をなすように設けられている。送出ベルト47は、苗マット100の載置を受ける側を下側に移動させるように周回駆動するように構成されており、苗マット100を間欠的に縦送りする。
【0035】
苗載台42の下側には、機体の左右方向に直線状に延伸したガイドレール48が設けられている。ガイドレール48は、苗載台42の下縁部に沿うように設けられており、苗載台42の左右方向の幅よりも長い寸法を有する。ガイドレール48は、苗移植装置3において、植付フレーム41に対して所定の支持部材により支持され固定状態で設けられている。ガイドレール48は、苗載台42に載せられた苗マット100を下側から支持する。
【0036】
苗載台42は、各苗載台部46上に載置された苗マット100を、各植付ユニットに対して供給する。苗載台42は、苗マット100を左右方向(車幅方向)に横送りさせるため、図示せぬ駆動機構により左右方向に往復移動可能に構成されている。つまり、苗載台42は、ガイドレール48に対して、機体の左右方向に往復移動するように設けられている。また、苗載台42は、左右方向の往復移動について移動端に達したタイミングで、送出ベルト47の送り動作により、各苗載台部46上の苗マット100を下方に縦送りするように構成されている。苗載台42の左右方向の移動において、苗載台42上に載置された苗マット100は、ガイドレール48に下側から支持された状態でガイドレール48に沿って移動することになる。
【0037】
苗載台42の下方の位置には、植付フレーム41の一部を構成する横フレーム45が設けられている。横フレーム45は、四角筒状の外形を有する直線状のフレーム部材であり、左右方向に延伸するように横設されている。横フレーム45は、苗移植装置3において左右方向の略全体にわたる範囲に設けられている。
【0038】
横フレーム45上の中央部に、植付ミッションケース40が設けられている。植付ミッションケース40は、その後部を横フレーム45の後側に位置させるように張出し状に設けられており、後側への張出部を有する。横フレーム45の後側に、左右の苗植付装置43が設けられている。左右の苗植付装置43は、苗移植装置3の左右方向の中心に対して左右対称的に構成されている。
【0039】
苗植付装置43は、ロータリ式の植付装置であり、植付伝動ケース51と、植付伝動ケース51の左右両側に設けられた2つのロータリケース52と、各ロータリケース52に対して設けられた植付爪装置50とを有する。つまり、苗移植装置3は、4つの植付爪装置50を有し、4条植えの構成に対応している。植付伝動ケース51の左右両側において、ロータリケース52および植付爪装置50によって植付ユニットが構成されている。
【0040】
植付伝動ケース51は、前後方向を長手方向とした筒状の外形を有し、前端部を横フレーム45の後壁部に対して固定させており、横フレーム45の後側から後方に向けて延伸している。左右の植付伝動ケース51間には、左右方向を軸方向とした植付伝動軸55が設けられている。
【0041】
植付伝動軸55は、複数の軸体を継手等により同軸状に連結した軸であり、植付ミッションケース40に対して回転可能に支持されている。植付伝動軸55は、植付ミッションケース40の後部から左右両側に延出し、左右の植付伝動ケース51の前部において各植付伝動ケース51に対して回転可能に支持されている。植付伝動軸55は、植付ミッションケース40内に設けられた動力伝達機構による動力の伝達を受ける。植付伝動軸55により、植付ミッションケース40と左右の植付伝動ケース51との各ケース内の動力伝動機構同士が連動連結されている。
【0042】
植付伝動ケース51の後部の左右両側に、左右一対のロータリケース52が設けられている。ロータリケース52は、植付伝動ケース51の後端部に対して左右方向を軸方向とする駆動軸52aにより回転可能に取り付けられている。ロータリケース52は、長手状の外形を有し、長手方向の中央部を植付伝動ケース51に対して軸支させている。ロータリケース52の左右外側には、植付爪装置50が取り付けられている。
【0043】
植付爪装置50は、ロータリケース52の長手方向の一端側の部分に対して、左右方向を回転軸方向とした回転軸50aを中心に回転可能に支持されている(図3参照)。植付爪装置50は、植付伝動ケース51に対するロータリケース52の回転動作に連動するようにロータリケース52に対して連結されている。植付爪装置50は、ロータリケース52の回転にともなって所定の植付け動作をするように構成されている。植付爪装置50は、植付け動作することにより、苗載台42に載置された苗マット100を順次一部ずつ(一株ずつ)掻き取って圃場に植え付ける。苗移植機1の機体の前進にともない、1つの植付爪装置50により1条分の苗の植付けが行われる。
【0044】
ガイドレール48には、苗マット100の被掻取り部分を位置させるとともに植付爪装置50の移動経路を確保する取口部49が設けられている(図13参照)。取口部49は、ガイドレール48の長手方向について、各植付爪装置50に対応する位置に設けられている。したがって、取口部49は、ガイドレール48において4箇所に設けられている。取口部49は、後側を開放側とするとともに平面視で矩形状に沿う形状を有する切欠き状の部分である。
【0045】
以上のような構成を備えた苗移植装置3は、植付ミッションケース40において、植付駆動軸35からの動力の入力を受ける。植付ミッションケース40に入力された駆動力は、植付ミッションケース40内の動力伝達機構によって植付伝動軸55に伝達される。植付伝動軸55の回転駆動力は、左右の苗植付装置43に分配され、植付伝動ケース51内に設けられた複数の伝動軸やギア等を介して、植付伝動ケース51の左右両側のロータリケース52の駆動軸52aに伝達される。駆動軸52aの回転駆動により、左右のロータリケース52が回転動作し、植付ユニットによる苗の連続的な植付け動作が行われる。
【0046】
苗移植機1の動力伝達系において、ロータリケース52の駆動軸52aに入力される回転動力は、HST23により、運転部8に設けられた変速ペダル18等の変速操作部材の操作量に応じて、走行機体2の走行速度とともに変速する。したがって、ロータリケース52の回転速度、つまり苗移植装置3の植付け速度は、走行機体2の走行速度に応じて変化する。詳細には、機体の走行速度が高速となるほど、ロータリケース52の回転周期は短くなり、機体の走行速度が低速となるほど、ロータリケース52の回転周期は長くなる。これにより、走行機体2の走行速度にかかわらず、苗の植付け間隔(株間)が一定となる。
【0047】
また、株間に関し、図3に示すように、株間変速ケース33内の変速装置36により、ロータリケース52の回転速度を変更することができ、これにより、株間を変更することができる。株間は、例えば植え付ける作物の種類や圃場の状態等に応じて変更される。株間変速ケース33内には、植付クラッチ37が設けられている。植付クラッチ37の操作により、変速装置36から植付駆動軸35への回転動力の断続が操作される。植付クラッチ37の接続/切断の切換え動作は、運転部8に設けられた植付クラッチレバーの操作により操作される。なお、植付クラッチ37の動作は、苗移植機1が備えるコントローラによっても制御可能となっている。
【0048】
苗移植装置3が備える4つの各植付ユニットの後方には、左右一対の覆土輪61が設けられている。覆土輪61は、円錐台状の外形を有し、外周面を圃場に対する作用面として回転自在に支持されている。一対の覆土輪61は、底面側同士を対向させる向きで、各覆土輪61の外周面の下側を略水平とするように傾斜状に設けられており、背面視で略「V」字状をなすように配置されている。
【0049】
覆土輪61は、平面視で苗植付装置43を囲むように枠状に構成された覆土輪支持フレーム62の後辺部62aに対して支持部材を介して支持されている。覆土輪支持フレーム62は、前側の端部を横フレーム45に対して支持させた状態で設けられている。一対の覆土輪61により、植付爪装置50による苗の植付けが行われた部分に対して植付けの直後に覆土輪61が作用することで鎮圧が行われる。
【0050】
また、苗移植装置3においては、植付フレーム41の下部の左右両側に、苗移植装置3を地面に対して支持するスタンド64が設けられている。スタンド64は、略「L」字状に屈曲形成されたパイプ状の部材により構成されており、一側の端部を、横フレーム45に対して支持金具等を介して前後方向を軸方向として回動可能に支持させている。スタンド64は、略水平状の収納状態から、一方の辺部を地面に沿わせるように立った状態となることで、地面に対して苗移植装置3を支持する使用状態となる。なお、図示においては、収納状態のスタンド64を示しており、図5において使用状態のスタンド64を二点鎖線で示している。
【0051】
苗マット100について、図8から図10を参照して説明する。苗マット100は、複数の種子を所定の配列で播種させたものである。苗マット100に播種される種子は、例えばキャベツ、タマネギ、トマト等の野菜の種子である。ただし、種子は、水稲種子であってもよい。苗移植機1による苗の植付けに際し、苗マット100は、種子から苗を成長させた状態で用いられる。
【0052】
図8から図10に示すように、苗マット100は、略矩形板状の外形を有し、全体として平板状に形成されている。苗マット100においては、矩形状の平面視外形における長手方向(図9における上下方向)を縦方向とし、同外形における短手方向(図9における左右方向)を横方向とする。縦方向と横方向とは、苗マット100の平面視において互いに直交する方向となる。
【0053】
苗マット100は、一方の板面側を表面部101とし、他方の板面側を裏面部102とする。苗マット100は、表面部101に、縦方向に所定の間隔を隔てて横方向に沿って形成された複数の表面側溝部103を有する。苗マット100は、横方向の両側の面部である側面部100aと、縦方向の両側の面部である端面部100bとを有する。
【0054】
表面側溝部103は、V字溝であり、苗マット100の側面視でV字状をなす一対の溝形成面103aにより形成されている。表面側溝部103は、その深さD1を、例えば苗マット100の厚さT1の1/3~1/2程度の寸法とするように形成されている。なお、苗マット100は、横方向視(側面視)での外形形状を横方向の全体について略一定としており、表面側溝部103の両端を苗マット100の側面部100aに開放させている。
【0055】
苗マット100において、表面部101側の表面側溝部103により区画された部分が、行ブロック部104となる。行ブロック部104は、表面部101側において、縦方向の両側の表面側溝部103により、相対的に突出した突条部をなしている。表面部101側において、行ブロック部104に複数の播種穴105が形成されている。
【0056】
図8から図10に示す例では、苗マット100は、横方向に沿う行ブロック部104を縦方向に20行分つなげたものとなっている。なお、図10において、隣り合う行ブロック部104間の境界を仮想線B1で示している。
【0057】
各行ブロック部104において、複数の播種穴105は、横方向に沿って1列に所定の間隔で設けられている。播種穴105は、例えば略円柱形状の穴部である。播種穴105には、一または複数の種子が入れられる。各行ブロック部104は、仮想平面A1に沿う上面104aを有する。播種穴105は、行ブロック部104の上面104aに臨んで開口している。
【0058】
播種穴105内の種子から成長した苗106は、播種穴105から伸び出て、表面部101から延出した状態となる。また、苗マット100は、播種穴105内の種子から裏面部102側において根が伸びることを許容する材料により形成されている。苗マット100を形成する材料は、有機物によって構成される繊維材料である有機質繊維資材を含む。有機質繊維資材は、例えば、ココピート、ピートモス、籾殻等である。また、苗マット100を形成する材料は、バインダー、土壌改良資材、肥料、土等を含むものであってもよい。なお、図8および図9においては苗106の図示を省略している。
【0059】
苗マット100においては、1つの播種穴105の形成部位が、植付爪装置50の植付け動作により1回に掻き取られる(切り取られる)1株分の単位ブロック部108となる。単位ブロック部108は、平面視で播種穴105を中心部とした略正方形状の範囲の部分であり、植付爪装置50によって苗マット100の厚さ方向の全体にわたって掻き取られることで、苗マット100から分離され、略直方体形状あるいは略立方体形状の苗ブロック110(図15C参照)となる。あくまでも一例であるが、苗ブロック110は、一辺の長さを約30mm程度とした略立方体形状を有する。
【0060】
図8から図10に示す例では、各行ブロック部104において横方向に10個の播種穴105が形成されており、各行ブロック部104は、植付爪装置50により掻き取られることで苗ブロック110となる単位ブロック部108が10個分つながった部分となっている。なお、図8および図9において、苗マット100の端に位置する1つの行ブロック部104について、隣り合う単位ブロック部108間の境界を仮想線B2で示している。
【0061】
また、苗マット100は、裏面部102に、縦方向に所定の間隔を隔てて横方向に沿って形成された複数の裏面側溝部107を有する。裏面側溝部107は、縦方向について、表面側溝部103に対応した位置に形成されている。したがって、裏面側溝部107は、表面側溝部103とともに、縦方向に隣り合う行ブロック部104間の繋がり部分の、苗マット100の厚さ方向(図10における上下方向)の寸法を短くしている。
【0062】
裏面側溝部107は、U字溝であり、苗マット100の側面視でU字状をなす一対の側面および湾曲状の上湾曲面により形成されている。裏面側溝部107は、その深さD2を、例えば苗マット100の厚さT1の1/4~1/3程度の寸法とするように形成されている。裏面側溝部107は、両端を苗マット100の側面部100aに開放させている。なお、裏面側溝部107の形状はU字溝に限定されない。
【0063】
複数の行ブロック部104は、苗マット100の裏面部102側において、複数の裏面側溝部107により、表面部101側と同様のピッチで区画されている。行ブロック部104は、裏面部102側において、縦方向の両側の裏面側溝部107により、相対的に突出した突条部をなしている。各行ブロック部104は、仮想平面A1と平行な仮想平面A2に沿う下面104bを有する。
【0064】
裏面側溝部107は、送出ベルト47上に載置される苗マット100において、送出ベルト47に設けられた係止用の複数の突条部47a(図7参照)の嵌合を受ける部分となる。突条部47aは、送出ベルト47の表面から突出した部分であり、左右方向に沿って直線状に形成されている。突条部47aは、例えば矩形状に沿う横断面形状を有する。複数の突条部47aの縦方向の間隔は、苗マット100における複数の裏面側溝部107の縦方向の間隔に対応している。裏面側溝部107は、突条部47aを嵌合させるように突条部47aよりもわずかに幅広に形成されている。
【0065】
苗マット100は、送出ベルト47上に載置された状態において、各裏面側溝部107に突条部47aを嵌合させることで、送出ベルト47に係止された状態となる。これにより、苗マット100は、縦送り動作として周回駆動する送出ベルト47に対して滑ることなく、送出ベルト47による縦送りの作用を確実に受けることができる。つまり、苗載台42は、送出ベルト47により、苗マット100を確実にガイドレール48側へと縦送りすることができる。また、各裏面側溝部107に突条部47aを嵌合させることによる送出ベルト47に対する苗マット100の係止作用により、苗マット100が自重により縦方向に圧縮されることを防止することができる。
【0066】
以上のような苗マット100は、苗移植装置3において、植付爪装置50によって次のようにして掻き取られて圃場に植え付けられる。すなわち、ガイドレール48により支持された部分となる下端の行ブロック部104の左右一側の端部である始端に位置する単位ブロック部108から、苗載台42の左右一方側への移動により、左右他側に向けて順次掻き取られる。つまり、苗マット100は、植付爪装置50による1回の掻取りを受ける周期で、横方向について1つの単位ブロック部108分の距離だけガイドレール48に沿って移動し、順次新たな単位ブロック部108が被掻取り位置である取口部49上に位置することになる。
【0067】
下端の行ブロック部104が始端側から順次掻き取られ、下端の行ブロック部104の左右他側の端部である終端の単位ブロック部108が掻き取られたタイミングで、送出ベルト47の動作により、苗マット100が行ブロック部104の一行分下側へと送られ(縦送りされ)、苗マット100は新たに下端に位置することになった行ブロック部104の端面部100b側からガイドレール48に支持された状態となる。つまり、新たな行ブロック部104が被掻取り部分としてガイドレール48上に位置した状態となる。そして、直前での終端側が始端側となり、折り返して左右他方側へ移動する苗載台42により苗マット100が移動しながら、単位ブロック部108が順次掻き取られる。
【0068】
このように、苗マット100は、苗載台42の左右往復移動による横送り、および送出ベルト47の間欠的な動作による縦送りにより、下側から上側にかけて左右方向に往復する順番で、所定の軌跡を描いて回転する植付爪装置50によって単位ブロック部108毎に掻き取られる。
【0069】
苗マット100において、ガイドレール48に支持される側となる端面部100bは、溝形成面103aと、裏面側溝部107の幅方向の略半分の形状に対応した溝形成面107aと、溝形成面103aと溝形成面107aとの間の中間面109aとを有する。苗マット100は縦方向について行ブロック部104を単位として周期的な形状を有することから、端面部100bの形状は、植付爪装置50による掻取りを受ける前の苗マット100における下側の端面部100bと、少なくとも一行の行ブロック部104が掻き取られた後の苗マット100における端面部100bとで略同じとなっている。植付爪装置50による掻取りを受けた状態の端面部100bにおいては、中間面109aが、植付爪装置50による切断面となる。
【0070】
このように、苗移植機1が用いる苗マット100は、苗載台42の載置面側と反対側の面である表面側(表面部101側)に、植付爪72による切取りの単位に対応するとともに縦送り方向に直交する方向に延伸した溝部として表面側溝部103を有する。
【0071】
植付爪装置50の構成について、図6図11から図13を用いて説明する。なお、図11から図13においては、説明の便宜上、後述する作溝アーム200およびその支持機構等の図示を省略している。図6図11から図13に示すように、植付爪装置50は、アーム部71と、アーム部71に固定された状態で設けられた植付爪72と、アーム部71に対して移動可能に設けられた押出部材73と、植付爪72に対向するように設けられた保持部材としての保持板74と、保持板74を支持する保持板支持部75と、保持板74の下側に設けられた掘削爪76とを有する。
【0072】
植付爪装置50は、ロータリケース52に対する連結部分を基部70とし、アーム部71や植付爪72等を基部70から所定の方向に向けて直線状に延出させた延出部を有し、植付爪72の先端を延出部の先端としている。以下では、植付爪装置50における延出部の延出方向(図12における矢印C1の方向)に沿う向きを「爪延出方向」とする。また、植付爪装置50において、爪延出方向についての植付爪72の先端側を前側とし、その反対側を後側とする。
【0073】
アーム部71は、植付爪装置50の爪延出方向を筒軸方向とした略筒状の部分である。アーム部71は、基部70と一体の部分として基部70から爪延出方向に延出している。
【0074】
植付爪72は、略矩形板状の爪基部81と、爪基部81の長手方向の一側から爪延出方向に延出した2つの爪本体部82とを有し、先端側を二股状とした構成を有する。植付爪72は、全体として略一定の幅を有し、幅方向を左右方向とするとともに、長手方向を爪延出方向に沿わせた向きで設けられている。
【0075】
爪基部81は、扁平な略「U」字状の横断面形状をなす屈曲板状の部分であり、平面部と左右両側の側壁部とを有する。爪基部81の前端部の上側から、爪本体部82が爪延出方向に延出している。
【0076】
植付爪72は、爪基部81において爪延出方向に間隔をあけて設けられた2箇所の固定部によりアーム部71の上側に固定されている。植付爪72の固定部は、アーム部71から上側に突出するとともに爪基部81の平面部を貫通した雄ネジ部83にナット84を螺合させた締結固定部である。
【0077】
一対の爪本体部82は、爪基部81の幅方向の両縁部から爪延出方向に沿って直線状に延出している。一対の爪本体部82は、互いの間に略一定幅の間隔をあけて平行状に形成されており、一対の爪本体部82の間には空間部85が形成されている。
【0078】
各爪本体部82は、先端部を先鋭状に形成された先鋭部82aとしている。一対の爪本体部82は、左右方向について略対称の形状を有する。各爪本体部82は、上面部82bと左右外側の側面部82cとにより、略「L」字状の横断面形状をなしている。左右の爪本体部82の側面部82c間の間隔は、苗ブロック110の横方向の寸法と略同じとなっている。つまり、苗マット100における単位ブロック部108の横方向の寸法は、左右の側面部82c間の間隔と略同じとなっている。
【0079】
押出部材73は、アーム部71の前側に設けられており、アーム部71に対して、爪延出方向に沿って往復移動するように設けられている。押出部材73は、植付爪72の一対の爪本体部82の下側に設けられている。押出部材73は、プッシュロッド86と、プッシュロッド86の先端側に設けられた押圧片87とを有する。
【0080】
プッシュロッド86は、アーム部71をシリンダ部としてアーム部71とともにシリンダ機構を構成するロッド部であり、アーム部71の先端から爪延出方向に沿って延出している。プッシュロッド86は、アーム部71からの突出量を変化させるようにアーム部71に対して往復移動する。プッシュロッド86は、先端部をロッド本体部に対して上側に向けて直角状に屈曲させた屈曲部86aとしている。
【0081】
押圧片87は、平板状の支持板部87aと、支持板部87aの幅方向の両側に設けられた左右の側壁部87bと、前壁部87cとを有する。前壁部87cは、プッシュロッド86の軸方向視で支持板部87aおよび左右の側壁部87bの形状に対応して、上側を開放側とした切欠部87d(図13参照)によりプッシュロッド86の軸方向視で略「U」字状をなす形状を有する。
【0082】
押圧片87においては、前壁部87cの前側の壁面が、苗ブロック110に対する押圧面87eとなる。押圧片87においては、支持板部87a上における左右の側壁部87b間に、前側を切欠部87dにより開放させた空間部95が形成されている。押圧片87は、アーム部71に対してプッシュロッド86と一体的に移動する。
【0083】
押圧片87は、支持板部87aにプッシュロッド86の屈曲部86aを貫通させた状態で、プッシュロッド86に溶接等によって固定されている。押圧片87は、側壁部87bにおいて、後部に対して前部の上下方向の寸法を大きくした形状を有する。押圧片87は、左右の側壁部87bの前部の上縁部を、爪本体部82に沿わせるとともに略「L」字状の横断面形状を有する爪本体部82の内側に位置させている。
【0084】
押出部材73は、アーム部71に対する移動について、後端位置である保持位置(図16A参照)と、前端位置である押出位置(図16B参照)との間で往復移動する。
【0085】
押出部材73の保持位置は、植付爪装置50における押出部材73の待機位置であって、植付爪装置50が苗ブロック110を保持する状態での位置である。押出部材73が保持位置にある状態で、押圧片87は、爪延出方向について爪本体部82の中間部に位置する。
【0086】
押出部材73の押出位置は、アーム部71に対する押出部材73の前進端の位置であって、植付爪装置50が苗ブロック110を押し出した(放出した)状態での位置である。押出部材73が押出位置にある状態で、押圧片87は、爪延出方向について前端を爪本体部82の先鋭部82aと略同じ位置に位置させる。
【0087】
保持板74は、側面視で所定の屈曲形状を有する板状の部材であり、弾性変形を可能としている。保持板74は、幅方向を左右方向とした向きで、アーム部71における植付爪72の固定側と反対側である下側から爪延出方向に向けて延出している。保持板74は、一対の爪本体部82の下側において、爪本体部82に対向するように設けられている。保持板74は、例えば数ミリメートル程度の厚さの板金等によって形成されている。
【0088】
保持板74は、側面視での屈曲形状をなす部分として、後側(アーム部71側)から前側(爪本体部82の先端側)にかけて順に、基部板部74a、傾斜板部74b、および先端屈曲部74cを有する。保持板74は、爪突出方向について、先端の位置を、爪本体部82の先端の位置と略一致させている。
【0089】
基部板部74aは、爪延出方向に沿って延伸した部分であり、爪本体部82と平行状の部分である。基部板部74aは、保持板74の長手方向の略半分をなしている。傾斜板部74bは、基部板部74aに対して鈍角をなすように屈曲した部分である。側面視において基部板部74aと傾斜板部74bとがなす角度は例えば140°程度である。保持板74は、傾斜板部74bにより、後側から前側にかけて徐々に爪本体部82との間の間隔を狭くしている。
【0090】
先端屈曲部74cは、傾斜板部74bに対して直角状あるいは鈍角をなすように屈曲した部分である。側面視において傾斜板部74bと先端屈曲部74cとがなす角度は例えば100°程度である。保持板74は、先端屈曲部74cにより、爪本体部82との間の間隔を後側から前側にかけて徐々に広げている。
【0091】
保持板74は、傾斜板部74bと先端屈曲部74cとによる上側(爪本体部82側)に凸の稜線部74dを、爪本体部82の先端部近傍に位置させている。左右の爪本体部82と保持板74の稜線部74dとの間の間隔は、苗ブロック110の縦方向の寸法よりもわずかに小さくなっている。つまり、苗マット100における単位ブロック部108の縦方向の寸法は、爪本体部82と稜線部74dとの間の間隔に対してわずかに大きくなっている。
【0092】
保持板74は、爪本体部82により掻き取られた苗ブロック110を、爪本体部82とともに挟み込んで保持する板バネとして機能する。つまり、保持板74は、その自然状態に対して弾性変形によって爪本体部82との間の間隔を広げた状態で、付勢力を持って一対の爪本体部82とともに苗ブロック110を挟持する。保持板74は、保持板支持部75に固定された状態で支持されている。
【0093】
保持板支持部75は、左右方向を板厚方向とした板状の部材により構成されており、植付爪装置50の基部70に対して、左右方向について植付伝動ケース51側と反対側に取り付けられている。保持板支持部75は、ボルト88によって基部70に締結固定されている。
【0094】
保持板支持部75は、上縁部を、アーム部71の下方近傍に位置させている。保持板支持部75の前部の上縁部に、保持板74が固定されている。保持板74は、基部板部74aの左右一側(植付伝動ケース51側)に、基部板部74aに対して直角状に屈曲した固定面部74eを有する。保持板74は、固定面部74eを保持板支持部75の左右一側に沿わせた状態で、掘削爪76および保持板支持部75を貫通するボルト89とこれに螺合するナット90によって前後2箇所で保持板支持部75に締結固定されている。なお、保持板74は、アーム部71に対して直接取り付けられたものであってもよい。
【0095】
掘削爪76は、保持板74の下側に位置するとともに、左右方向について保持板支持部75に対して植付伝動ケース51側と反対側に位置している。掘削爪76は、一対の爪本体77と、一対の爪本体77間に設けられた連結部78とを有する。
【0096】
爪本体77は、左右方向を板厚方向とした板状の部材であり、保持板支持部75から爪延出方向の前方に向けて延出している。爪本体77は、側面視において基部側から先端側にかけて徐々に幅狭とした先鋭形状を有する。爪本体77は、爪延出方向について、後端部の位置を保持板74の後端部と略同じ位置に位置させるとともに、先端部を、保持板74の先端よりも前方に位置させている。
【0097】
掘削爪76は、一対の爪本体77の後部を、保持板74の基部板部74aの下側に沿わせた状態で設けられている。掘削爪76は、左右方向について、一対の爪本体77を、保持板74の左右の縁端よりもわずかに内側に位置させている。連結部78は、一対の爪本体77の後部間に介在しており、左右の爪本体77間のスペーサとして機能している。
【0098】
掘削爪76は、その後部を保持板支持部75に固定させた状態で設けられている。掘削爪76は、保持板支持部75に対する保持板74の固定に用いられる2本のボルト89によって、保持板支持部75に対して保持板74とともに共締めされた状態で固定されている。ボルト89は、一対の爪本体77およびこれらの間に介在する連結部78を貫通するとともに、保持板支持部75および保持板74の固定面部74eを貫通し、ナット90に螺合している。
【0099】
掘削爪76は、植付爪装置50による苗ブロック110の植付けに際し、保持板74に先行して圃場を掘削し、圃場に対する保持板74の接触抵抗を軽減することで保持板74を保護する機能を有する。また、掘削爪76は、保持板74に先行して圃場に達することで、保持板74にマルチフィルムが絡むことを抑制する機能を有する。マルチフィルムは、例えば0.004~0.02mmの膜厚のものである。
【0100】
ガイドレール48の構成について、図11から図14を用いて説明する。ガイドレール48は、苗載台42の下側に設けられており、苗載台42上に載置された苗マット100の下側の端面部100bの接触を受けて苗マット100を支持することで、植付爪72の軌道に対して苗マット100の位置を規定する。
【0101】
ガイドレール48は、所定の屈曲形状を有する板状の部材により、長手方向の略全体にわたって両側の端面の形状(側面視形状)と同じ一定の横断面形状をなすように構成されている。ガイドレール48は、側面視形状をなす部分として、概略的に、苗載台42の載置面に沿うように後下がりに傾斜した前傾斜面部121と、前傾斜面部121とともに側面視で略「V」字状をなす後傾斜面部122とを有し、これらの面部によって樋状に構成されている。
【0102】
ガイドレール48は、平面視における前側の部分をなす第1レール部材123と、平面視における後側の部分をなす第2レール部材124とを複数の連結部材125により連結させた構成を有する。第1レール部材123により、前傾斜面部121の上側の部分が形成されており、第2レール部材124により、前傾斜面部121の下側の部分と後傾斜面部122とが形成されている。
【0103】
連結部材125は、第1レール部材123と第2レール部材124の端面同士の合わせ部120に跨るように、前傾斜面部121の裏側(苗マット100の載置側と反対側)に位置している。連結部材125は、左右方向を長手方向とした幅狭の板状部材であり、左右方向に複数設けられている。連結部材125は、第1レール部材123の後縁部および第2レール部材124の前縁部のそれぞれを貫通する固定ネジ126の螺挿を受けることで、第1レール部材123と第2レール部材124を互いに連結させている。なお、ガイドレール48は、一体のレール部材により構成されたものであってもよい。
【0104】
ガイドレール48は、長手方向の複数箇所(4箇所)に、苗マット100のうち植付爪72により切り取られる部分(単位ブロック部108)を位置させる切欠状の取口部49を有する。図13に示すように、取口部49は、後側を開放側とした切欠き形状をなす部分として、左右方向に互いに対向する左右の側縁部49aと、左右方向に沿う前縁部49bとを有する。また、取口部49の開口縁部の左右両側の角部には、側縁部49aに対する傾斜辺をなす面取部49cが形成されている。左右の面取部49cにより、取口部49の開口端部の左右幅が拡開状に広がっている。取口部49は、平面視での前後方向について前傾斜面部121および後傾斜面部122の全体にわたる範囲に切欠き状に形成されている。
【0105】
図13に示すように、取口部49の左右の幅寸法G1、つまり左右の側縁部49a間の間隔は、所定の幅を有する植付爪72の幅寸法G2と略同じとなっている。詳細には、ガイドレール48は、取口部49の幅寸法G1について、植付爪72の幅寸法G2に対してわずかに大きい寸法を有する。図13に示すように、植付爪装置50は、左右方向について、植付爪72の左右の側面を、取口部49の左右の側縁部49aに対して所定の隙間G3分内側に位置させるように設けられている。隙間G3の大きさは、例えば数ミリメートル(例えば3mm)である。なお、植付爪装置50は、左右方向について所定の位置を保持しながら植付け動作を行うように構成されており、植付爪装置50の植付け動作において、隙間G3の大きさは保持される。
【0106】
ガイドレール48は、苗マット100の下側の端面部100bの接触を受ける接触支持面部130と、接触支持面部130に対して凹状溝131を形成し苗マット100の下側の端面部100bとの間に空間132をなす溝形成部133とを有する。そして、接触支持面部130は、苗マット100の表面側溝部103を形成する溝形成面103aに沿う形状を有する。接触支持面部130は、溝形成面103aに沿う部分として、傾斜支持面部134を有する。
【0107】
接触支持面部130は、後傾斜面部122のうち、ガイドレール48の幅方向(平面視で前後方向に沿う方向)の後側の部分である。接触支持面部130は、概略的に後上がりの傾斜状の面部をなす後傾斜面部122における後上側の部分として設けられている。
【0108】
接触支持面部130において、傾斜支持面部134は、苗載台42上に載置されたセット状態の苗マット100の下側の端面部100bの溝形成面103aの接触を受ける部分となる。傾斜支持面部134は、苗マット100の表面側溝部103の形状等に応じて、セット状態の苗マット100の下側の端面部100bにおける溝形成面103aと平行または略平行となるように傾斜している。
【0109】
接触支持面部130は、傾斜支持面部134の後側に、ガイドレール48の後側の縁端部をなす縁端面部135を有する。接触支持面部130は、傾斜支持面部134と縁端面部135により、側面視で鈍角状をなす屈曲面部として形成されている。
【0110】
図14に示す例では、傾斜支持面部134は、側面視での苗載台42の載置面の傾斜方向(矢印H1参照、以下「載置面傾斜方向」という。)に対する垂直方向に対してなす角度θ1が約30°となるように傾斜している。ただし、傾斜支持面部134の傾斜角度は限定されるものではなく、苗マット100の表面側溝部103の形状等に対応して適宜定められる。
【0111】
以下では、側面視において載置面傾斜方向に直交する方向を載置面直交方向(図14、矢印H2参照)とする。載置面傾斜方向は、苗マット100の縦送り方向に対応している。また、セット状態の苗マット100の縦方向が載置面傾斜方向に対応し、セット状態の苗マット100の厚さ方向が載置面直交方向に対応する。
【0112】
溝形成部133は、後傾斜面部122の前下側の部分と、前傾斜面部121の後下側の部分とにより形成されている。溝形成部133は、後傾斜面部122により形成された部分として、側面視で載置面傾斜方向に沿う面部である後溝側面部136と、側面視で載置面直交方向に沿う面部である溝底面部137とを有する。
【0113】
また、溝形成部133は、前傾斜面部121により形成された部分として、側面視で載置面傾斜方向に沿う前溝側面部138を有する。前溝側面部138は、前傾斜面部121の下端側の部分であって、載置面直交方向について後溝側面部136に対向した部分である。後溝側面部136および前溝側面部138は、それぞれ溝底面部137の載置面直交方向の両側において溝底面部137に対して角部を湾曲面部(R形状部)として直角状をなすように屈曲した部分である。
【0114】
このように、溝形成部133は、後溝側面部136および前溝側面部138並びに溝底面部137により、セット状態の苗マット100側を開放側とするとともに側面視で略矩形状に沿う略U字状の溝部を形成している。後溝側面部136の上側に傾斜支持面部134の下側が繋がっている。後溝側面部136と傾斜支持面部134は、側面視で鈍角状の屈曲面部を形成している。
【0115】
前溝側面部138の上側は、前傾斜面部121の上部として側面視で載置面傾斜方向に沿って延設されている。前傾斜面部121の上縁部に対しては、角部を湾曲面部として直角状をなすように前側に屈曲状に形成された支持縁部139が設けられている。
【0116】
図14に示すように、ガイドレール48に支持された苗マット100は、ガイドレール48に対して、端面部100bにおける溝形成面103aを傾斜支持面部134の内側面134aに接触させるとともに、溝形成面103aよりも下側(下面104b側)の部分を、凹状溝131内に臨ませた状態で支持されている。つまり、苗マット100は、端面部100bについて、傾斜支持面部134に接触する溝形成面103aによりガイドレール48に支持されるとともに、中間面109aおよび溝形成面107aを、空間132を介して溝底面部137に対向させた状態となる。傾斜支持面部134の内側面134aは、横送りされる苗マット100に対する摺動面つまりガイド面となる。
【0117】
ガイドレール48において、後側の縁部をなす縁端面部135は、側面視において、苗マット100に対して載置面直交方向について上面104aよりも上側に延出した部分となる。また、ガイドレール48において、前傾斜面部121の表面121aが、下端の行ブロック部104の下面104bの接触を受ける面となる。前傾斜面部121は、載置面傾斜方向について、少なくとも一行分の行ブロック部104の全体を含む長さ(幅)を有する。
【0118】
以上のように、ガイドレール48は、側面視での屈曲形状をなす部分として、下部を前溝側面部138とする前傾斜面部121と、前溝側面部138とともに凹状溝131を形成する後溝側面部136および溝底面部137と、接触支持面部130をなす傾斜支持面部134および縁端面部135とを有する。
【0119】
ガイドレール48において、凹状溝131の取口部49に対する開口端部には、凹状溝131の凹みを無くしたまたは凹状溝131の凹みを小さくした切断補助部140が設けられている。切断補助部140は、各取口部49の左右両側に設けられており、各取口部49の左右両側の切断補助部140は、左右方向について対称的に構成されている。なお、図14においては切断補助部140の図示を省略している。
【0120】
切断補助部140は、取口部49の左右両側において、凹状溝131の深さ分、凹状溝131を部分的に底上げした部分である。切断補助部140は、ガイドレール48における凹状溝131の取口部49に対する開口端部に、切断補助部材150を取り付けることにより設けられている。切断補助部材150は、略矩形板状ないしブロック状の金属製の部材であり、凹状溝131に嵌った状態で、ガイドレール48に固定されている。
【0121】
図11および図13に示すように、切断補助部材150は、平面視で矩形状の外形を有し、長手方向を凹状溝131の延伸方向とする向きで設けられている。切断補助部材150は、長手方向の一側の端面である第1端面151と、長手方向の他側の端面である第2端面152とを有する。切断補助部材150は、その幅方向の寸法を、凹状溝131の幅の寸法と略同じとしており、凹状溝131の後溝側面部136と前溝側面部138との間に嵌合した態様で設けられている。また、切断補助部材150は、水平状の上面156を有する。
【0122】
切断補助部材150は、1本のネジ161によりガイドレール48に固定されている。ネジ161は、ガイドレール48の下側から、凹状溝131の溝底面部137を貫通し、切断補助部材150に形成されたネジ孔158に螺挿されている。ネジ孔158は、切断補助部材150の厚さ方向に貫通形成されている。溝底面部137には、ネジ161を貫通させるための孔部137bが形成されている(図14参照)。
【0123】
切断補助部材150は、第1端面151を、ガイドレール48の取口部49側とする向きで設けられている。切断補助部材150は、第1端面151を、取口部49の側縁部49aをなす端面と面一状とするように設けられている。
【0124】
以上のようにガイドレール48の凹状溝131に対して切断補助部材150を取り付けた構成において、上面156により、凹状溝131の底面137aをその溝深さ分底上げした切断補助面が形成されている。つまり、切断補助部140は、凹状溝131において凹みを無くした部分であり、切断補助部140においては、切断補助部材150により、切断補助部材150の厚さ分、凹状溝131の底面137aに対する底上げ面として上面156が形成されている。なお、底面137aは、溝底面部137の内側面である。
【0125】
本実施形態では、切断補助部材150は、凹状溝131の深さと略同じ厚さを有し、凹状溝131における切断補助部材150の配設部位においては、凹状溝131の深さ方向の略全体が切断補助部材150により埋まっている。つまり、切断補助部材150の配設部位においては、切断補助部材150により凹状溝131の開口端部が塞がれ、凹状溝131の凹みが無くなっている。なお、切断補助部140は、ガイドレール48に切断補助部材150を取り付けた構成ではなく、ガイドレール48自体の形状部分として設けられてもよい。
【0126】
以上のような構成を備えた植付爪装置50の動作について、図15および図16を用いて説明する。なお、図15および図16においては、説明の便宜上、後述する作溝アーム200およびその支持機構等の図示を省略している。図15A図15C、並びに図16Aおよび図16Bに示すように、植付爪装置50は、ロータリケース52(図6参照)の駆動軸52aによる回転にともなって、ガイドレール48上に支持された苗マット100からの苗ブロック110の取出し(掻取り)、苗ブロック110を一時的に保持した状態での搬送、および苗ブロック110の植付けを繰り返し行うように連続的に回動する。
【0127】
図15Aは、植付爪装置50が苗マット100を掻き取る直前の状態を示している。図15Aに示すように、植付爪装置50は、苗マット100を下側から支持したガイドレール48に対して爪本体部82を上後側から近付ける。植付爪装置50は、ガイドレール48に支持された苗マット100の下端の行ブロック部104の1つの単位ブロック部108を掻取り対象とし、その単位ブロック部108に爪本体部82を近付ける。掻取り対象の単位ブロック部108は、ガイドレール48の取口部49上に位置している。
【0128】
図15Bに示すように、植付爪装置50は、苗マット100に対し、爪本体部82の先端を、掻取り対象の単位ブロック部108の上側の表面側溝部103から切り込ませる。
【0129】
そして、植付爪装置50が振り下ろされる態様で前下側に移動することで、図15Cに示すように、植付爪72により単位ブロック部108が掻き取られ、苗ブロック110として植付爪装置50に保持された状態となる。ここで、単位ブロック部108は、一対の爪本体部82と保持板74との間に挟まれながら掻き取られる。単位ブロック部108の掻取りにおいて、爪本体部82と保持板74との先端部間の間隔を広げた先端屈曲部74cによってガイド作用が得られる。また、掻取り対象の単位ブロック部108は、爪本体部82の先端を受け入れる表面側溝部103の溝形状によりガイド作用を受ける。
【0130】
苗マット100の掻取りにおいて、植付爪装置50は、ガイドレール48に対して、側面視で爪本体部82の先端部の移動軌跡について所定の軌跡E1(図12参照)を描きながら苗マット100に作用する。軌跡E1は、ガイドレール48の近傍において上側を凸側とした湾曲形状を有し、全体としてループ状となる。爪本体部82の先端部は、側面視において、隣り合う行ブロック部104間の境界(図10、仮想線B1)の近傍を通過する。
【0131】
また、苗マット100の掻取りにおいて、ガイドレール48の取口部49に対する開口端部に切断補助部140が設けられていることから、良好な切断性(切削性)を得ることができる。すなわち、切断補助部140により、上側から植付爪72による作用を受ける苗マット100の下側において、苗マット100の逃げ空間となる凹状溝131の空間132を埋めることができ、凹状溝131の形成部位においても苗マット100を下側から支持することができるので、苗マット100の逃げが防止され、良好な剪断作用を得ることができる。これにより、安定した掻取りを行うことが可能となる。
【0132】
図15Cに示すように、植付爪72により掻き取られた苗ブロック110は、一対の爪本体部82と保持板74との間に挟持されて保持される。一対の爪本体部82とともに苗ブロック110を保持する保持板74においては、稜線部74dが苗ブロック110に対する主な当接部分となる。例えば、苗ブロック110の保持状態において、保持板74の弾性変形により、一対の爪本体部82と保持板74との間の間隔が、苗ブロック110の保持前の状態と比べて広がる。
【0133】
植付爪装置50に保持された状態の苗ブロック110の後側には、押圧片87が位置している。また、植付爪装置50において、左右の爪本体部82間の空間部85および押圧片87の空間部95(図11参照)は、保持された状態の苗ブロック110の苗106を位置させる空間部分となり、植付爪装置50に対する苗106の干渉が避けられる。
【0134】
図16Aに示すように、苗ブロック110を保持した状態の植付爪装置50は、植付爪72の先端部を下側に向けながら下方に移動する。そして、図16Bに示すように、植付爪装置50は、植付爪72の先端部を圃場表面である圃場面91より下側の圃場内に位置させる所定のタイミングで、押出部材73により苗ブロック110を押し出す(放出する)。植付爪装置50は、アーム部71に対して押出部材73を前側に移動させることで、押出部材73により苗ブロック110を爪延出方向に向けて押し出す(矢印F1参照)。苗ブロック110は、押出部材73による押出しの勢いをともなって放出され圃場に対して所定の植付け深さで植え付けられる。
【0135】
押出部材73による苗ブロック110の押出しにおいて、押出部材73は、押圧片87の押圧面87eを苗ブロック110への接触面として苗ブロック110に押圧作用する。苗ブロック110に対する押圧面87eの接触面は、苗マット100における上面104aに相当する面となる。また、押出部材73は、アーム部71に対して付勢力をもって前側に移動し、苗ブロック110を弾き出す態様で押し出す。また、苗ブロック110は、圃場に植え付けられる際、保持板74により後側から覆われているため、圃場に対する衝突から保護される。
【0136】
また、植付爪装置50は、圃場面91に作用するに際し、保持板74に先行して掘削爪76により圃場面91の掘削を行う。これにより、圃場面91に対する保持板74の接触抵抗が軽減されて保持板74が保護されるとともに、保持板74にマルチフィルムが絡むことが抑制される。
【0137】
圃場に苗ブロック110を植え付けた植付爪装置50は、押出位置にある押出部材73を徐々に保持位置に戻しながら、圃場面91に対して上昇するように移動する。そして、植付爪装置50は、植付爪72をガイドレール48の後上側に位置させる位置に戻り、次の掻取り対象の単位ブロック部108の掻取りおよび苗の植付けを行う。このように、植付爪装置50は、爪本体部82の先端部についてループ状の軌跡E1を描くように回動しながら、1サイクルで1つの単位ブロック部108の掻取りおよび苗ブロック110の植付けを行い、機体の前進にともなって一列に所定の株間で連続的な苗の植付けを行う。
【0138】
苗マット100においては、下端の行ブロック部104、つまりガイドレール48上に位置する行ブロック部104が、左右のいずれかの方向に向かう苗マット100の横送りの一行程における掻取り対象となる。苗マット100を左右一方へ横送りしながらの植付爪装置50による連続的な植付け動作により、下端に位置する行ブロック部104の単位ブロック部108がすべて掻き取られた所定のタイミングで、送出ベルト47により苗マット100が一行分縦送りされる。
【0139】
苗マット100の縦送り後、新たに下端に位置した行ブロック部104について、苗マット100を左右他方へ横送りしながらの単位ブロック部108の連続的な掻取りが順次行われる。このように、苗マット100は、横送りによって左右方向に往復移動しながら、間欠的に縦送りされ、植付爪装置50により、下側の行ブロック部104から順次掻き取られていく。
【0140】
以上のように、苗移植機1は、苗載台42上に載置した苗マット100を機体の左右方向に沿う横送り方向に送るとともに、間欠的に苗マット100を平面視で機体の前後方向に沿う縦送り方向に送りながら、植付爪72によって苗マット100を一部ずつ切り取って連続的に苗106を圃場に植え付けていくように構成されている。
【0141】
以上のような構成を備えた苗移植機1は、図6図16から図21に示すように、苗移植装置3において、植付爪72による苗の植付けに際して圃場に溝を形成したりマルチフィルムをカットしたりといった圃場に対する前処理をするための構成として、作溝アーム200を備えている。作溝アーム200は、4つの植付爪装置50のそれぞれに対応して設けられており、苗移植装置3は、4つの作溝アーム200を有する。作溝アーム200および作溝アーム200に対して設けられた後述のリンク機構300およびカム機構400は、植付伝動ケース51の左右両側に植付爪装置50を配置した構成において、植付伝動ケース51側を中心側として左右対称的に構成されている。
【0142】
作溝アーム200は、植付爪装置50に取り付けられた状態で設けられている。作溝アーム200は、長手状に構成されており、長手方向を爪延出方向に沿わせるように設けられている。作溝アーム200は、植付爪装置50に対し、植付爪72の近傍に設けられている。
【0143】
作溝アーム200は、リンク機構300により、植付爪装置50に対して移動可能に支持された状態で設けられている。これにより、作溝アーム200は、植付爪72に対して相対移動するように設けられている。
【0144】
作溝アーム200は、全体として後側を開放側とした略「U」字状をなすように構成されており、植付爪装置50を左右側方および前方から囲むように設けられている。作溝アーム200は、略「U」字状の外形をなす部分として、アーム本体部201と、アーム先端部202と、補助アーム部203とを有する。作溝アーム200を構成するこれらの部分は、所定の形状を有する板状の部分として設けられている。
【0145】
作溝アーム200は、その構成部材として、支持プレート204と、カッター部材205とを有する。支持プレート204およびカッター部材205は、互いに連結固定され、一体的な作溝アーム200を構成している。
【0146】
支持プレート204は、作溝アーム200の側面視での延伸方向を長手方向とした略矩形状の板状部材であり、作溝アーム200の支持基部をなしている。詳細には、支持プレート204は、後部に対して前部を幅狭の部分としており、側面視形状(板面形状)として、後側から前側にかけて緩やかな先窄み形状を有する。
【0147】
カッター部材205は、平面視で略「U」字状をなす屈曲板状の部材であり、作溝アーム200の本体部分をなしている。カッター部材205は、略「U」字状をなす面部として、外側面部205aと、前側面部205bと、内側面部205cとを有する(図21参照)。
【0148】
アーム本体部201は、植付爪72に対して左右方向の一側にずれた位置に設けられている。アーム本体部201の配置に関し、植付爪72に対する左右方向の一側は、左右方向について植付伝動ケース51側と反対側である。なお、作溝アーム200の説明においては、左右方向について、植付伝動ケース51側(図19における上側)を内側、植付伝動ケース51側と反対側(図19における下側)を外側とする。アーム本体部201は、左右方向を板厚方向とした板状の部分であり、支持プレート204と、カッター部材205の外側面部205aとにより形成されている。
【0149】
カッター部材205は、外側面部205aの後端部を、支持プレート204の前端部に対して外側から重ねた状態で支持プレート204に固定されている。外側面部205aは、後端部において支持プレート204の前端部に対して略同じ幅を有し、アーム本体部201の前後中間部において支持プレート204とともに連続的な形状をなしている。
【0150】
また、アーム本体部201の前部をなすカッター部材205の外側面部205aは、側面視で前後中央部において頂部205dをなす略山形の屈曲形状を有する(図18参照)。外側面部205aは、側面視において、支持プレート204に対する連結側である基部側に対して前側を幅狭とした形状を有する。
【0151】
アーム先端部202は、アーム本体部201の先端側に設けられている。アーム先端部202は、植付爪装置50の掘削爪76の先端よりも前方に位置している。アーム先端部202は、カッター部材205の外側面部205aに対して左右内側に向けて直角状をなすように屈曲した板状の部分であり、カッター部材205の前側面部205bにより形成されている。このように、アーム先端部202は、左右方向の一端側である左右外側をアーム本体部201の先端部につなげており、左右外側をアーム本体部201の先端部に連接させた部分となっている。
【0152】
アーム先端部202は、側面視において爪延出方向に垂直な方向に対して前下がりとなる向きに傾斜した傾斜面部となっている。アーム先端部202は、側面断面視で直線状をなす板状部分となっている(図22参照)。図22は、作溝アーム200の左右中央位置の左側面断面図である。図22に示すように、アーム先端部202は、側面断面視で所定の方向(矢印Y1参照)を延伸方向とした直線状をなしている。
【0153】
アーム先端部202は、下縁部を、アーム本体部201および補助アーム部203の先端部に対して下側に突出した先端突出部202aとしている。アーム先端部202は、下縁部において、一対の斜辺部202bによって頂部202cをなす下側に凸の山形状を有する。頂部202cは、一対の斜辺部202bにより形成された鈍角状の角部となっている。
【0154】
補助アーム部203は、植付爪72に対して左右方向の他側、つまり植付伝動ケース51側(内側)にずれた位置に設けられている。つまり、補助アーム部203は、左右方向について、植付爪72に対してアーム本体部201側と反対側に位置している。補助アーム部203は、左右方向を板厚方向とし、カッター部材205の前側面部205bに対して後側に向けて直角状をなすように屈曲した板状の部分であり、カッター部材205の内側面部205cにより形成されている。このように、補助アーム部203は、一端側である前端側をアーム先端部202の左右方向の他端側である左右内側につなげており、前端側をアーム先端部の左右内側に連接させた部分となっている。
【0155】
補助アーム部203は、カッター部材205の外側面部205aに対して比較的幅狭の部分であり、略一定の幅を有し、側面視において、外側面部205aの前部と略同じ方向に傾斜するとともに略直線状に延伸している。補助アーム部203は、後端部の上側に鋭角状をなす先鋭部203aを有する。補助アーム部203は、図19に示す状態において、先鋭部203aを植付爪72の左右内側(図19における上側)の爪本体部82に対して左右内側の後部近傍に位置させている。
【0156】
カッター部材205は、支持プレート204に対して、固定部材としての2本のボルト206により固定されている。2本のボルト206は、カッター部材205の外側面部205aと支持プレート204の重なり部分において、アーム本体部201の幅方向の両側に位置している。ボルト206は、外側面部205aの後端部に形成された孔部205eを貫通し、支持プレート204の前端部に形成されたネジ孔に螺挿されている。
【0157】
ボルト206を貫通させる孔部205eは、支持プレート204からのカッター部材205の延出方向に沿う方向を長手方向とした長孔となっている。これにより、支持プレート204に対するカッター部材205の延出方向についての固定位置の調整が可能となっている。支持プレート204に対するカッター部材205の固定位置の調整は、アーム先端部202を植付爪72の先端部に対して近接・離間させる方向の位置調整となる。
【0158】
リンク機構300について説明する。リンク機構300は、植付爪装置50を構成する保持板支持部75に対して、作溝アーム200を前後方向に往復移動可能に支持している。保持板支持部75は、植付爪装置50の基部70を構成するケース体70aに対してボルト88により複数箇所で固定されている。保持板支持部75は、側面視で略矩形状ないし略台形状の外形を有し、下側の縁部を、基部70を構成するケース体70aより下側に突出させた下方突出部75aとしている(図18参照)。保持板支持部75は、アーム部71の下方に位置している。
【0159】
リンク機構300は、2つのリンクアームとして、前側に位置する第1リンクアームとしての前アーム301と、後側に位置する第2リンクアームとしての後アーム302とを含む。前アーム301および後アーム302は、左右方向を板厚方向とした直線状の板状部材である。
【0160】
前アーム301および後アーム302は、長手方向の一端側を植付爪装置50側の保持板支持部75に回動可能に支持させるとともに他端側を作溝アーム200側に回動可能に支持させている。両アーム301,302は、互いに略同じ長さを有し、互いに略平行となるように設けられている。両アーム301,302は、保持板支持部75に対して左右外側の位置、かつ作溝アーム200を構成する支持プレート204に対して左右内側の位置に設けられている。つまり、両アーム301,302は、左右方向について、保持板支持部75と支持プレート204との間に位置している。
【0161】
前アーム301および後アーム302は、それぞれ、アームの下端部を、保持板支持部75の下方突出部75aの前後に設けられた前ボス部303および後ボス部304に対して、軸状の軸支部材305等により、図示せぬ軸受部材を介して回動可能に支持させている。前ボス部303および後ボス部304は、保持板支持部75の板状の本体部分に対して左右両側に円筒状に突出した部分である。前ボス部303に対する前アーム301の下端部の軸支部を前固定軸支部311とし、後ボス部304に対する後アーム302の下端部の軸支部を後固定軸支部312とする(図18参照)。
【0162】
前アーム301は、アームの上端部を、支持プレート204の略中央部に設けられたボス部306に対して、軸支部材である軸支ボルト307等により、図示せぬ軸受部材を介して回動可能に支持させている。ボス部306は、支持プレート204の板状の本体部分に対して左右両側に円筒状に突出した部分であり、支持プレート204においてカッター部材205の外側面部205aの固定を受ける部分の後方の位置に設けられている。ボス部306に対する前アーム301の上端部の軸支部を前移動軸支部313とする(図18参照)。
【0163】
後アーム302は、アームの上端部を、支持プレート204に取り付けられた連結プレート310に対して回動可能に支持させている。つまり、後アーム302の上端部は、支持プレート204に対して、連結プレート310を介して軸支されている。
【0164】
連結プレート310は、略角丸長方形状ないし略楕円形状の板状部材であり、支持プレート204の後端部の左右内側に位置し、長手方向を支持プレート204の幅方向とする向きで設けられている。連結プレート310は、側面視で支持プレート204の外形の範囲内に全体を位置させるように設けられている。連結プレート310は、略中央部にボス部321を有する。
【0165】
後アーム302は、アームの上端部を、連結プレート310のボス部321に対して、軸支部材である軸支ボルト322等により、図示せぬ軸受部材を介して回動可能に支持させている。ボス部321は、連結プレート310の板状の本体部分に対して左右両側に円筒状に突出した部分である。支持プレート204には、連結プレート310のボス部321との干渉を避けるための逃げ孔204aが貫通形成されている。ボス部321に対する後アーム302の上端部の軸支部を後移動軸支部314とする(図18参照)。
【0166】
連結プレート310は、その長手方向の両端部において、固定部材としてのボルト323により2箇所で支持プレート204に固定されている。ボルト323は、支持プレート204の後部に形成された孔部204bを貫通し、連結プレート310に形成されたネジ孔に螺挿されている。ボルト323による固定部は、連結プレート310の長手方向についてボス部321の両側に位置する。
【0167】
ボルト323を貫通させる孔部204bは、側面視における作溝アーム200の長手方向に沿う方向を長手方向とした長孔となっている。これにより、支持プレート204に対する連結プレート310の固定位置の調整が可能となっている。支持プレート204に対する連結プレート310の固定位置の調整は、支持プレート204における後移動軸支部314の位置の調整となる。
【0168】
すなわち、支持プレート204に対する連結プレート310の固定位置が調整されることで、前移動軸支部313の回動軸Q3と後移動軸支部314の回動軸Q4との間の軸間距離L1(図20参照)が調整される。ボス部321に対する逃げ孔204aは、支持プレート204における孔部204bによる連結プレート310の位置調整の範囲でボス部321が支持プレート204に干渉しない長さを有するとともに孔部204bと長手方向を揃えた長孔として形成されている。
【0169】
以上のように前アーム301および後アーム302の2本のアームを含むリンク機構300は、前固定軸支部311、後固定軸支部312、前移動軸支部313および後移動軸支部314の4つの軸支部の軸心を節点とする4節リンクの態様で、作溝アーム200を保持板支持部75に対して移動可能に連結支持している。リンク機構300は、前アーム301および後アーム302について、植付爪装置50側に対しての位置が固定である前固定軸支部311および後固定軸支部312に対し、両アーム301,302を回動させることで、作溝アーム200側に設けられた前移動軸支部313および後移動軸支部314を移動させる。
【0170】
前アーム301および後アーム302は、それぞれ前固定軸支部311および後固定軸支部312の軸支部を中心として回動することで、作溝アーム200を植付爪装置50に対して前後に往復移動させる。作溝アーム200の往復移動において、前固定軸支部311と後固定軸支部312の軸心間の距離(前固定軸支部311の回動軸Q1と後固定軸支部312の回動軸Q2との間の距離)、および前移動軸支部313と後移動軸支部314の軸心間の距離(回動軸Q3と回動軸Q4との間の距離)は一定となる。
【0171】
以上のようにリンク機構300によって移動可能に支持された作溝アーム200は、その往復動作における位置姿勢、つまり植付爪72に対する相対的な位置姿勢として、待機姿勢(図20参照)と、作溝姿勢(図18参照)とを有する。作溝アーム200の待機姿勢は、植付爪72が苗マット100を切り取るタイミングでの位置姿勢である。作溝アーム200の作溝姿勢は、圃場に対する苗(苗ブロック110)の植付けに際して植付爪72に対して前方に移動した位置姿勢である。なお、図19は、作溝アーム200が作溝姿勢にある状態を示している。
【0172】
リンク機構300は、作溝アーム戻しバネ330により、作溝アーム200を作溝姿勢側へと付勢している。作溝アーム戻しバネ330は、いわゆるトーションバネであり、コイル状の部分の両端側に延出部330a,330bを有する(図18参照)。作溝アーム戻しバネ330は、前固定軸支部311において、コイル状の部分を前ボス部303に外嵌させた状態で設けられている。
【0173】
作溝アーム戻しバネ330は、一方の延出部330aを、後側に延出させて後ボス部304に対して上側から当接させるとともに、他方の延出部330bを、前アーム301に係止させている。他方の延出部330bは、先端部を屈曲させて前アーム301の中間部の後側に当接させることで、前アーム301に係止されている。
【0174】
作溝アーム戻しバネ330は、延出部330a,330b同士を遠ざける方向の付勢力により、保持板支持部75に対して、前アーム301を、作溝アーム200が前側に移動する方向、つまり左側面視で左回転方向に付勢している(図18、矢印J1参照)。これにより、作溝アーム200が、植付爪装置50に対して作溝位置側に付勢される。
【0175】
作溝アーム200は、ロータリケース52の回転にともなって所定の植付け動作を行う植付爪装置50のロータリケース52に対する相対的な回転動作に連動して、植付爪装置50に対して往復移動する。作溝アーム200は、ロータリケース52に対する植付爪装置50の相対的な回転動作について1回転を1サイクルとした周期的な往復動作を行う。図19には、植付伝動ケース51に対するロータリケース52の回転中心であって駆動軸52a(図3参照)の軸心に一致する回転軸であるケース側回転軸O1と、ロータリケース52に対する植付爪装置50の回転中心であって回転軸50a(図3参照)の軸心に一致する回転軸である爪側回転軸O2とを示している。
【0176】
作溝アーム200は、カム機構400により、爪側回転軸O2を中心としたロータリケース52に対する植付爪装置50の相対的な回転動作(以下「植付爪装置50の相対回転」という。)に連動して往復移動する。すなわち、カム機構400は、植付爪装置50の相対回転を、リンク機構300の前アーム301および後アーム302の往復回動動作に変換することで、作溝アーム200を往復動作させる。
【0177】
作溝アーム200は、カムとしてのカムプレート410を含むカム機構400により、植付爪72の動作に連動して、植付爪72に対する相対的な位置姿勢を変化させる。カムプレート410は、植付爪72を含む植付爪装置50を回転可能に支持するロータリケース52に対して設けられ植付爪装置50の回転にともなって植付爪72に対する作溝アーム200の相対位置を変化させる。
【0178】
カムプレート410は、略円板状の部材であり、ロータリケース52に対して図示せぬ固定部材によって固定状態で設けられている。つまり、カムプレート410は、ロータリケース52と一体的に回転する部分となる。カムプレート410は、板厚方向を左右方向とする向きで、ロータリケース52と、植付爪装置50のケース体70aとの間に介在している(図19参照)。
【0179】
図23に示すように、カムプレート410は、円形状の外周側の一部を略直線状に切除した態様の外形(板面形状)を有する。カムプレート410は、左右方向に沿う中心軸P1の軸方向視でカムプレート410の外形をなす外周面を、後述するガイドローラ402に対する作用面となるカム面411としている。カムプレート410の中心軸P1の位置は、植付爪装置50の爪側回転軸O2(図19参照)と一致している。なお、図23は、カム面411の形状の一例を示している。
【0180】
図23に示すように、カム面411は、第1円弧カム面部412と、中心軸P1の位置に対して第1円弧カム面部412の反対側に設けられた第2円弧カム面部413とを有する。第1円弧カム面部412および第2円弧カム面部413は、いずれもカムプレート410の中心軸P1の位置を中心とした円弧形状を有する。カムプレート410は、中心軸P1を通る所定の直線P2に対して線対称の形状を有する。
【0181】
本実施形態では、第2円弧カム面部413が沿う円周形状の半径は、第1円弧カム面部412が沿う円周形状の半径の約1/3程度である。また、第1円弧カム面部412は、中心軸P1を中心とした円周方向について約260°の角度範囲にわたって形成されている。また、第2円弧カム面部413は、中心軸P1を中心とした円周方向について約45°の角度範囲にわたって形成されている。
【0182】
カム面411において、第1円弧カム面部412と第2円弧カム面部413の端部間には、直線状のカム面部である直線状カム面414が形成されている。直線状カム面414は、直線P2の両側に位置している。直線状カム面414は、第1円弧カム面部412と第2円弧カム面部413の端部同士を滑らかにつないでいる。
【0183】
また、カム機構400は、植付爪装置50側に設けられた構成として、カムプレート410に作用するガイドローラ402と、保持板支持部75に対してガイドローラ402を支持するローラ支持アーム403とを有する。
【0184】
ローラ支持アーム403は、保持板支持部75に対して左右内側に設けられている。ローラ支持アーム403は、アーム状の部材であって、一端側を、前アーム301を支持する前ボス部303に対して、ボルト状の軸支部材404等により、図示せぬ軸受部材を介して回動可能に支持されている(図19参照)。
【0185】
ローラ支持アーム403は、前アーム301と回動軸を一致させるとともに、回動方向について前アーム301との位置関係を保持するように設けられている。つまり、ローラ支持アーム403および前アーム301は、前ボス部303による前固定軸支部311において同軸上に軸支され、回動軸Q1の軸回りに一体的に回動するように互いに固定状態で設けられている。
【0186】
ガイドローラ402は、円筒状の回転体であり、ローラ支持アーム403の先端部の右側に位置し、ローラ支持アーム403に対して所定の軸支部材により左右方向を回転軸方向として回転自在に支持されている。ガイドローラ402は、ローラ支持アーム403により、カムプレート410に対して下側から接触する位置に支持されている。
【0187】
図18に示すように、前ボス部303から上側に延伸した前アーム301に対し、ローラ支持アーム403は、後側に延伸している。前アーム301とローラ支持アーム403は、回動軸Q1の軸方向視で約80~90°の角度をなすように設けられている。前アーム301とローラ支持アーム403がなす角度は、前固定軸支部311の回動軸Q1と前移動軸支部313の回動軸Q3とを結ぶ直線と、回動軸Q1とガイドローラ402の回転中心である回動軸Q5とを結ぶ直線とがなす角度β1である(図20参照)。
【0188】
ガイドローラ402は、作溝アーム戻しバネ330による前アーム301に対する付勢力により、ローラ支持アーム403を介してカムプレート410に押し付けられる方向に付勢されている。これにより、ガイドローラ402は、植付爪装置50の相対回転にともない、カム面411に沿って移動する。
【0189】
以上のような構成によれば、カムプレート410に対するガイドローラ402の接触位置について、植付爪装置50の相対回転にともなうカム面411によるカムプレート410の中心軸P1からの距離の変化に応じて、ガイドローラ402がカムプレート410の中心軸P1に対して近接・離間する方向に移動する。このガイドローラ402の移動が、回動軸Q1を中心としたローラ支持アーム403および前アーム301の一体的な回動となる。前アーム301が回動することで、リンク機構300が動作し、作溝アーム200が所定の動作を行う。このように、リンク機構300においては、前アーム301が、植付爪装置50の相対回転にともなってカム機構400により動力の伝達を受けて往復回動する駆動アームとなり、作溝アーム200を往復移動させるようにリンク機構300を動作させる。
【0190】
図24から図28を用いて、植付爪装置50の相対回転にともなうカム機構400、リンク機構300および作溝アーム200の動作について説明する。図24から図28においては、便宜上、植付爪装置50の相対回転として、固定位置にある植付爪装置50に対するロータリケース52の回転、つまり爪側回転軸O2(カムプレート410の中心軸P1)を中心とした植付爪装置50に対するロータリケース52の角度位置の変化を示している。図24から図28に示すように、植付爪装置50の相対回転において、ロータリケース52は、左側面視で植付爪装置50に対して左回りに回転する(矢印M1参照)。
【0191】
ガイドローラ402がカムプレート410の第1円弧カム面部412に接触した状態が、作溝アーム200の待機姿勢に対応し、ガイドローラ402がカムプレート410の第2円弧カム面部413に接触した状態が、作溝アーム200の作溝姿勢に対応している。すなわち、植付爪装置50の相対回転において、ガイドローラ402が第1円弧カム面部412に接触した状態となることで、作溝アーム200が待機姿勢となり、ガイドローラ402が第2円弧カム面部413に接触した状態となることで、作溝アーム200が作溝姿勢となる。
【0192】
図24は、作溝アーム200が待機姿勢にある状態を示している。図24に示す状態において、ガイドローラ402は、植付爪装置50に対するカムプレート410の回転方向について第1円弧カム面部412の始端部の近傍位置に接触している。
【0193】
図25は、図24に示す状態から、植付爪装置50に対してロータリケース52が約100°相対回動した状態を示している。図25に示すように、植付爪装置50の相対回転において、ガイドローラ402が第1円弧カム面部412に接触している間は、リンク機構300の回動位置が保持され、作溝アーム200の待機姿勢の状態が保持される。
【0194】
植付爪装置50の相対回転が進み、カムプレート410に対するガイドローラ402の接触位置が第1円弧カム面部412から、一方の直線状カム面414(カムプレート410に対するガイドローラ402の移動方向の後側の直線状カム面414)に移動することで、作溝アーム200が作溝姿勢側へと移動し始める。すなわち、ガイドローラ402が第1円弧カム面部412から直線状カム面414に相対的に移動することで、ガイドローラ402がカムプレート410の中心軸P1(爪側回転軸O2)へと近づき、ローラ支持アーム403がガイドローラ402を上昇させる方向に回動する(図26、矢印M2参照)。これにより、リンク機構300が前アーム301を前側へと傾ける方向に回動し、作溝アーム200が前側、つまり作溝姿勢となる側へと徐々に移動する。
【0195】
そして、図27に示すように、ガイドローラ402が直線状カム面414の終端部から第2円弧カム面部413に達することで、作溝アーム200が作溝姿勢となる。図27および図28に示すように、ガイドローラ402が第2円弧カム面部413に位置している状態では、作溝アーム200は、作溝姿勢を保持する。
【0196】
そして、植付爪装置50の相対回転が進み、カムプレート410に対するガイドローラ402の接触位置が第2円弧カム面部413から、他方の直線状カム面414(カムプレート410に対するガイドローラ402の移動方向の前側の直線状カム面414)に移動することで、作溝アーム200が待機姿勢側へと移動し始める。すなわち、ガイドローラ402が直線状カム面414から第1円弧カム面部412に相対的に移動することで、ガイドローラ402がカムプレート410の中心軸P1(爪側回転軸O2)から遠ざかり、ローラ支持アーム403がガイドローラ402を下降させる方向に回動する(図28、矢印M3参照)。これにより、リンク機構300が前アーム301を後側へと傾ける方向に回動し、作溝アーム200が後側、つまり待機姿勢となる側へと徐々に移動する。
【0197】
そして、ガイドローラ402が直線状カム面414の終端部から第1円弧カム面部412に達することで、作溝アーム200が待機姿勢に戻る(図24参照)。以上のような動作が、植付爪装置50の相対回転にともなって繰り返し行われる。
【0198】
以上のように、作溝アーム200は、リンク機構300およびカム機構400により、植付爪72の動作となる植付爪装置50の相対回転に連動して植付爪72に対する位置姿勢を変化させるように設けられている。このような構成によれば、カムプレート410のカム面411の形状により、植付爪装置50の相対回転に連動する作溝アーム200の動作態様が調整される。具体的には、カム面411の形状を調整することで、例えば、作溝アーム200が待機姿勢から作溝姿勢側への移動を開始するタイミングや、作溝アーム200が待機姿勢に戻るタイミング等の調整が可能となる。
【0199】
以上のような構成を備えた植付ユニットの動作について、図29から図35を用いて説明する。植付ユニットの動作には、植付爪装置50による苗ブロック110の植付け動作、並びに植付け動作に連動した作溝アーム200による作溝およびマルチフィルム250のカットの動作が含まれる。
【0200】
図30から図35は、植付ユニットの左側面図であり、機体の進行方向は各図における左方向(矢印N1参照)である。また、図30から図35の各図においては、圃場に対する植付ユニットの機体進行方向の変位を示すため、便宜上、苗ブロック110については、圃場に植え付けられた状態のみを示している。
【0201】
図30から図35の各図において一点鎖線で示す軌跡E1は、植付爪72の先端部、つまり爪本体部82の先端部が描く軌跡である。軌跡E1は、縦長略楕円形状の閉じた(ループ状の)軌跡となっている。詳細には、軌跡E1は、前側を凸状に膨出させるとともに後側を扁平状とした略楕円形状を有する。
【0202】
また、植付爪72の軌跡E1は、圃場に対して前進移動する苗移植機1の機体における軌跡である。つまり、軌跡E1は、植付爪72について機体の前進にともなう圃場に対する移動を加味していないものであり、機体側を基準とした静止系の軌跡である。
【0203】
図30から図35に示すように、機体の前進にともなって前方に移動する植付ユニットにおいて、ロータリケース52の駆動軸52aは、圃場面91に対して略一定の高さ位置を保持する。つまり、機体の前進にともなう植付ユニットの動作中、ケース側回転軸O1は、圃場面91に対して平行状の軌跡E2を描く(図30参照)。
【0204】
図29は、植付爪装置50および作溝アーム200についての動作説明のグラフを示している。図29に示すグラフにおいて、横軸は、爪側回転軸O2を中心とした植付爪装置50の相対回転における植付爪装置50の位相[deg]、つまり植付爪装置50とロータリケース52との相対的な角度位置を示している。
【0205】
図29において、実線で示すグラフGr1は、植付爪装置50の位相の変化にともなう作溝アーム200の位置の変化、つまりカムプレート410によるローラ支持アーム403の回動量(アーム回動量)[deg]の一例を示している。また、破線で示すグラフGr2は、植付爪装置50の位相の変化にともなう植付爪72の高さの変化の一例を示している。ここで、植付爪72の高さ(植付爪高さ)は、圃場面91に対応する所定の基準高さに対する植付爪72の先端部の高さであり、例えば所定の高さ位置を基準(0[mm])として±の数値で表される。
【0206】
まず、図30に示すように、ロータリケース52のケース側回転軸O1を中心とした回転および植付爪装置50の相対回転にともない、植付爪72による単位ブロック部108の掻取りが行われる。図30に示す植付ユニットの状態は、図29に示すグラフにおいて、植付爪装置50の位相の「掻取」の範囲における状態である。
【0207】
「掻取」の範囲において、作溝アーム200は、待機姿勢の状態となっている。つまり、ガイドローラ402は、カムプレート410に対して第1円弧カム面部412に接触している。カム機構400の動作において、作溝アーム200が待機姿勢にある状態でのローラ支持アーム403の位置を基準位置、つまり回動量0[deg]とする。このように、作溝アーム200が待機姿勢にある状態での所定のタイミングで、植付爪72による苗マット100の掻取りが行われる。
【0208】
また、「掻取」の範囲における植付爪高さについて、植付爪72はその昇降範囲における上昇端の高さ位置h1またはその近傍に位置する。なお、植付爪高さの変化を示すグラフGr2は、正弦波のような曲線を描いている。
【0209】
植付爪72による単位ブロック部108の掻取りが行われた後、図31に示すように、植付爪装置50は、植付爪72をガイドレール48の前下方へと移動させるように回動する。図31に示す植付ユニットの状態は、図29に示すグラフにおいて、植付爪装置50の位相の「下降」の範囲における状態である。
【0210】
「下降」の範囲において、グラフGr2に示されるように、植付爪高さは徐々に下降する。また、「下降」の範囲において、植付爪装置50の位相が所定の第1位相t1となったタイミングで、待機姿勢にある作溝アーム200が作溝姿勢側への移動を開始する。すなわち、ガイドローラ402が第1円弧カム面部412から一方の直線状カム面414へ移動し、グラフGr1に示されるように、アーム回動量が増加し始める。
【0211】
「下降」の範囲の過程では、アーム回動量が徐々に増加し、植付爪装置50の位相が所定の第2位相t2となったタイミングで、アーム回動量が最大値U1となる。つまり、作溝アーム200が作溝姿勢となる。
【0212】
作溝アーム200が作溝姿勢となった状態で植付爪装置50の相対回動が進むことで、図32に示すように、作溝姿勢の作溝アーム200の先端部が圃場面91に達し、作溝アーム200の貫入(作溝)が開始される。作溝アーム200の貫入のタイミングは、図29に示すグラフにおいて、植付爪装置50の位相が所定の第3位相t3となったタイミングに対応する。第3位相t3より、植付爪装置50の位相が「土貫入」の範囲となる。「土貫入」の範囲においては、植付爪装置50による苗の植付けに際し、圃場における苗の植付け箇所に対して、作溝アーム200により、マルチフィルム250のカットや作溝が行われる。
【0213】
図32に示すように、作溝アーム200は、圃場に対する貫入において、その先端部をなすアーム先端部202の下縁部から圃場面91に接触する。上述のとおり、アーム先端部202は、側面断面視で直線状をなす板状部分となっている(図22参照)。そして、作溝アーム200は、アーム先端部202を圃場面91に対して立った状態で差し込ませる。
【0214】
このように、作溝アーム200は、圃場面91に入るタイミングでアーム先端部202を圃場面91に対して立った状態とするように設けられている。ここで、アーム先端部202についての圃場面91に対して立った状態は、図32に示すように側面断面視において直線状をなすアーム先端部202の延伸方向V1と圃場面91がなす角度α1が45°以上となる状態である。図32に示す例では、角度α1は約60°となっている。
【0215】
「土貫入」の範囲において、グラフGr2に示されるように、「下降」の範囲から引き続き植付爪高さは徐々に下降し、植付爪72がその昇降範囲における下降端の高さ位置h2またはその近傍の位置に達したタイミングで、植付爪装置50による苗ブロック110の植付けが行われる。図33に示す植付ユニットの状態は、図29に示すグラフにおいて、植付爪装置50の位相の「植付」の範囲における状態である。
【0216】
すなわち、図33に示すように、苗ブロック110を保持した状態の植付爪装置50により、植付爪72の先端部が圃場面91より下側の圃場内に位置する所定のタイミングで、押出部材73により苗ブロック110が押し出される(矢印R1参照)。植付爪装置50は、苗ブロック110の植付けを行った後、植付爪72が上昇端の高さ位置h1となるまで徐々に上昇する(図34図35参照)。
【0217】
一方、作溝姿勢の作溝アーム200は、「土貫入」の範囲において、植付爪装置50の位相が所定の第4位相t4となるタイミングで、待機姿勢側への移動を開始する。すなわち、ガイドローラ402が第2円弧カム面部413から他方の直線状カム面414へ移動し、グラフGr1に示されるように、アーム回動量が減少し始める。そして、植付爪装置50の位相に関し、「土貫入」の途中から、「植付」、その後の「収納」の範囲にわたってアーム回動量が減少し、作溝アーム200は、植付爪装置50の位相が所定の第7位相t7となるタイミングで、待機姿勢に戻る。第7位相t7のタイミングが、植付爪装置50の位相の「収納」の終点となる。
【0218】
そして、植付爪72が上昇端の高さ位置h1に戻るとともに、作溝アーム200が待機状態に戻った状態から、上述のとおり植付爪72による単位ブロック部108の掻取りが行われる。以上のような植付ユニットの動作がサイクル動作として機体の前進にともなって連続的に行われる。
【0219】
図29のグラフGr1に示す例では、作溝アーム200は、第4位相t4のタイミングから徐々に収納位置側へと移動し、植付爪装置50の位相が所定の第5位相t5となるタイミングで、「植付」の範囲において一時的に停止する。その後、植付け終了後の所定の第6位相t6となるタイミングから、収納位置側への移動を開始する。
【0220】
このように、作溝アーム200は、作溝姿勢から、第5位相t5から第6位相t6の間の停止状態である作溝終了姿勢を経て、待機姿勢に戻るように設けられている。つまり、作溝アーム200は、作溝姿勢から待機姿勢に戻る退避動作として、第4位相t4から第5位相t5までの第1の退避動作と、第6位相t6から第7位相t7までの第2の退避動作との2段階の退避動作を行うように設けられている。
【0221】
このような2段階の退避動作を作溝アーム200に行わせる場合、カムプレート410において、カム面411の位相について、他方の(図23において左側の)直線状カム面414の形成部位に、第3円弧カム面部(図示略)が設けられることになる。第3円弧カム面部は、カムプレート410の中心軸P1の位置を中心とした円弧形状を有する面部である。第3円弧カム面部が沿う円周形状の半径は、第1円弧カム面部412が沿う円周形状の半径よりも小さく、第2円弧カム面部413が沿う円周形状の半径よりも大きい寸法となる。
【0222】
以上のような植付ユニットの動作において、作溝アーム200は、作溝姿勢から、植付爪72による圃場に対する苗の植付け終了後、待機姿勢に戻る循環動作を行うように設けられている。すなわち、作溝アーム200が待機姿勢から作溝姿勢側に移動し始めたタイミングから、作溝アーム200が待機姿勢に戻るタイミングまでの間において、植付爪装置50による苗の植付けが行われる。
【0223】
また、植付ユニットの動作において、作溝アーム200は、作溝姿勢にある状態で、先端を植付爪72よりも前方に突出させ、植付爪72に先行して圃場面91に入るように設けられている。植付ユニットは、植付爪装置50による苗の植付けに際し、図32に示すように、先に、作溝アーム200を圃場に作用させて作溝を行い、その後、植付爪72を圃場に作用させ、図33に示すように、作溝アーム200による作溝が終了したタイミングで、苗の植付け、つまり苗ブロック110の押出しを行う。
【0224】
また、作溝アーム200の作溝動作に関し、作溝アーム200は、少なくとも先端部を圃場面91より下方に位置させた動作範囲では、圃場に植え付けられた苗である苗ブロック110に干渉しないように設けられている。具体的には、図32図33および図34に示すように、作溝アーム200は、植付爪装置50により圃場における所定の植付位置に植え付けられる苗ブロック110(仮想配置した苗ブロック110)または圃場に植え付けられた苗ブロック110に対し、アーム先端部202が苗ブロック110の下側をくぐるように設けられている。
【0225】
図32図33および図34には、作溝アーム200のアーム先端部202の軌跡E3を二点鎖線で示している。軌跡E3は、アーム先端部202の下縁部の軌跡を示している。軌跡E3により示されるように、作溝アーム200は、圃場面91に対し、仮想配置した苗ブロック110の前方の位置からアーム先端部202を貫入させる(図32図33)。その後、アーム先端部202は、仮想配置した苗ブロック110の下側へと移動し、仮想配置した苗ブロック110の後側に達したタイミングで、苗ブロック110が実際に植え付けられる(図33、矢印R1参照)。
【0226】
軌跡E3によると、植え付けられた苗ブロック110の後下側にアーム先端部202の先端を位置させた作溝アーム200は、アーム先端部202を上方に向けて移動させ、圃場面91から離脱させる(図34)。その後、作溝アーム200は、アーム先端部202を、上方に移動させながら苗ブロック110の上方において緩やかに苗ブロック110の前方側へと移動させる。軌跡E3は、苗ブロック110の上方において、植付爪72の軌跡E1に対して外側から内側に向かい、軌跡E1と交差している(図34、交点R2参照)。
【0227】
このように、作溝アーム200は、側面視において、圃場に植え付けられる苗ブロック110が位置する部分および実際に植え付けられた苗ブロック110(以下「苗ブロック相当部分」)に対し、アーム先端部202を苗ブロック相当部分の前側から苗ブロック相当部分の下方を隙間をもって通過させて後側に回り込ませる態様で移動させる。つまり、作溝アーム200は、下降動作から上昇動作への折り返し部分において、軌跡E3を苗ブロック相当部分に干渉させないように、苗ブロック相当部分の周囲をUターンさせる態様でアーム先端部202を移動させる。図29のグラフに示す例では、作溝アーム200は上述のとおり2段階の退避動作を行うことで、苗ブロック110に対する接触を確実に回避している。
【0228】
また、作溝アーム200の動作に関し、作溝アーム200は、先端部の動軌跡として、最下端に位置する植付爪72に対し、植付爪72が保持板74とともに保持している苗である苗ブロック110を押し出すスペースを確保する軌跡E3を描くように設けられている。
【0229】
作溝アーム200によれば、アーム先端部202の軌跡に沿って圃場の土が排除されて作溝される。そして、作溝アーム200は、圃場に作用することによる土の排除部分、つまり作溝部分が、植付爪装置50から放出された苗ブロック110が位置することになるスペース部分となるように、圃場に対して作用する。作溝アーム200のアーム先端部202の軌跡E3において、下端側の略「U」字状をなす折返し部分により囲まれた範囲内の位置が、作溝アーム200による作溝が終了したタイミングにおいて、苗ブロック110の放出先のスペースとして確保される。
【0230】
以上のような構成を備えた苗移植機1は、植付ユニットにおいて、植付爪72による苗の植付ピッチに対応するために、植付爪72に対する作溝アーム200の動軌跡を変更させる軌跡変更装置270を備えている。なお、植付爪72による苗の植付ピッチは、圃場に対して前後方向に所定の間隔をあけて連続的に植え付けられる苗間の間隔、つまり株間である。
【0231】
株間は、上述のとおり株間変速ケース33内の変速装置36(図3参照)により変速するロータリケース52の回転速度によって変更される。本実施形態では、変速装置36は、比較的大きい株間寸法(例えば40cm)と、比較的小さい株間寸法(例えば24cm)の2段階に株間を切り換えるように構成されている。株間の大きさにかかわらず作溝アーム200の軌跡が一定であると、苗の植付性能が低下したり、土壌に対する作溝のトルクが大きくなって負荷が大きくなったりする場合がある。そこで、軌跡変更装置270により、株間に応じて、作溝アーム200の軌跡が変更される。
【0232】
軌跡変更装置270は、植付爪72を含む植付爪装置50に対して作溝アーム200を支持するリンク機構300により構成されている。リンク機構300は、上述のとおり4つの軸支部の軸心(回動軸)を節点とした4節リンクの態様で動作するように構成されており、リンク機構300における軸支部の軸心間の距離を変更することにより、リンク機構300の動作をともなって待機姿勢と作溝姿勢との間で往復移動する作溝アーム200の動軌跡を変更するように構成されている。
【0233】
軌跡変更装置270としてのリンク機構300は、前アーム301および後アーム302の2つのリンクアームの作溝アーム200側に対する支持部間の距離を変更することにより、植付爪72に対する作溝アーム200の動軌跡を変更するように構成されている。本実施形態においては、前移動軸支部313の回動軸Q3と後移動軸支部314の回動軸Q4との間の軸間距離L1(図20参照)が、2つのリンクアームの作溝アーム200側に対する支持部間の距離に対応している。
【0234】
軸間距離L1は、前移動軸支部313に対する後移動軸支部314の位置の調整により変化する。後移動軸支部314の位置は、上述のとおり支持プレート204に対する連結プレート310の固定位置により、後移動軸支部314の上下2箇所でボルト323を貫通させる孔部204bの長さの範囲で無段階に調整される。後移動軸支部314の位置調整機構が、軌跡変更装置270としてのリンク機構300において作溝アーム200の軌跡変更のための機構として機能する。
【0235】
図18および図20に示す植付ユニットは、支持プレート204に連結プレート310を固定するためのボルト323を孔部204bの後端部に位置させ、前移動軸支部313に対して後移動軸支部314を離した状態(最離間状態)となっている。つまり、図18および図20に示す植付ユニットは、軸間距離L1を最も長くした状態となっている。なお、図18は、作溝アーム200が作溝姿勢にある状態を示しており、図20は、作溝アーム200が待機姿勢にある状態を示している。軸間距離L1は、作溝アーム200の姿勢にかかわらず一定の値に保持される。
【0236】
一方、図36および図37に示す植付ユニットは、ボルト323を孔部204bの前端部に位置させ、前移動軸支部313に対して後移動軸支部314を近付けた状態(最近接状態)となっている。つまり、図36および図37に示す植付ユニットは、軸間距離L1を最も短くした状態となっている。なお、図36は、作溝アーム200が作溝姿勢にある状態を示しており、図37は、作溝アーム200が待機姿勢にある状態を示している。以下では、図18および図20に示すように軸間距離L1を長くした状態を「軸支部離間状態」とし、図36および図37に示すように軸間距離L1を短くした状態を「軸支部近接状態」とする。
【0237】
軸間距離L1が変化することにより、植付ユニットにおいて往復動作する作溝アーム200の動作態様が変化する。図38Aは、軸支部離間状態での作溝アーム200の動作態様を示しており、図38Bは、軸支部近接状態での作溝アーム200の動作態様を示している。図38Aおよび図38Bの各図において、作溝姿勢の作溝アーム200が実線で示されており、待機姿勢の作溝アーム200Aが一点鎖線で示されており、待機姿勢と作溝姿勢との間にある作溝アーム200Bが二点鎖線で示されている。
【0238】
図38Aおよび図38Bに示すように、軸間距離L1が変化することにより、植付ユニットにおいて往復動作する作溝アーム200の動作範囲が変化する。すなわち、図38Aに示す軸支部離間状態に対し、図38Bに示す軸支部近接状態となることで、作溝アーム200の側面視での動作範囲が広くなる。軸支部近接状態においては、作溝アーム200の動作範囲について、主に図における上下方向の動作範囲が広くなる。このように作溝アーム200の動作態様を変化させる軸支部離間状態および軸支部近接状態のいずれかの状態が、株間に応じて用いられる。
【0239】
図39は、植付ユニットが軸支部近接状態であって、株間が比較的大きい株間寸法S1(例えば、40cm)の場合における植付爪72および作溝アーム200の動軌跡を示している。図39において、一点鎖線で示す軌跡W1は、植付爪72の先端部、つまり爪本体部82の先端部が描く軌跡である。また、破線で示す軌跡W2は、作溝アーム200のアーム先端部202の先端突出部202aが描く軌跡である。
【0240】
植付爪72の軌跡W1および作溝アーム200の軌跡W2は、前進移動する苗移植機1の機体とともに圃場に対して前進移動しながら所定の動作を行う植付爪72および作溝アーム200それぞれの軌跡である。つまり、軌跡W1および軌跡W2は、植付爪72および作溝アーム200それぞれについて機体の前進にともなう圃場に対する移動を加味したものであり、圃場側を基準とした軌跡である。
【0241】
上述のとおり機体側を基準とした場合にループ状の軌跡(図30、軌跡E1参照)を描く植付爪72は、圃場に対して前進することで、図39の軌跡W1で示すように、前進しながらの下降動作による前下がりの曲線をなす軌跡と、前進しながらの上昇動作による前上がりの曲線をなす軌跡とを繰り返し描くことになる。軌跡W1は、下降動作から上昇動作への折り返し部分において縦に細長いループ状の軌跡部分W1aを有する。
【0242】
機体側を基準とした場合にループ状の軌跡を描くように周期的に動作する植付爪72について、圃場に対する前進移動を加味した軌跡W1における1周期分の距離が、株間寸法S1に相当する。つまり、植付爪72は、機体の前進にともなって所定の植付け動作を行うことで、図39に示す軌跡W1を描く動作を繰り返すことになる。
【0243】
作溝アーム200の軌跡W2は、植付爪72の動作に、植付爪72に対する作溝アーム200の相対的な動作である周期的な往復動作を含んだ軌跡となる。作溝アーム200の軌跡W2は、概略的には、植付爪72の軌跡W1と同様に、前下がりの軌跡部分と、前上がりの軌跡部分と、折り返し部分のループ状の軌跡部分W2aとを有する。軌跡W2におけるループ状の軌跡部分W2aは、上述のとおり苗ブロック相当部分に干渉しないように、苗ブロック相当部分の周囲をUターンさせる態様でアーム先端部202を移動させる作溝アーム200の軌跡E3に対応する部分を含んでいる(図33図34参照)。
【0244】
したがって、作溝アーム200の軌跡W2において、ループ状の軌跡部分W2aの中に苗ブロック相当部分が位置することになる。そして、作溝アーム200の軌跡W2のループ状の軌跡部分W2aについては、苗ブロック相当部分に対して干渉しない程度に苗ブロック相当部分の近くを通ることが好ましい。つまり、作溝アーム200の軌跡W2における折り返し部分の軌跡部分W2aについては、苗ブロック相当部分に対して干渉しないように必要最小限のループ形状を描くことが好ましい(図39において破線円X1で囲んだ部分参照)。
【0245】
図40は、植付ユニットが軸支部近接状態であって、株間が比較的小さい株間寸法S2(例えば、24cm)の場合における植付爪72および作溝アーム200の動軌跡を示している。
【0246】
株間が比較的小さい場合は、機体の前進移動の移動量に対する植付爪72の植付け動作の移動量が多くなる(動作が速くなる)。このため、図40に示すように、株間が比較的大きい場合(図39)と比べて、株間寸法S2に相当する1周期分の距離が短くなり、植付爪72の軌跡W1におけるループ状の軌跡部分W1aが大きくなる。
【0247】
したがって、図40に示すように、株間が比較的小さい場合の作溝アーム200の軌跡W2について、内部に苗ブロック相当部分を位置させるループ状の軌跡部分W2aが大きくなる。つまり、作溝アーム200の軌跡W2は、苗ブロック相当部分に対して迂回するような軌跡を描いている(図40において破線円X2で囲んだ部分参照)。
【0248】
作溝アーム200の軌跡W2の苗ブロック相当部分の周りの軌跡部分が大きくなることは、圃場に対する作溝アーム200による掘削部分、つまり苗を移植するための移植穴が大きくなることに対応する。移植穴が大きくなると、苗の植付性能が低下したり、作溝アーム200による作溝のトルクが大きくなって負荷が大きくなったりするという問題が生じ得る。
【0249】
そこで、株間が比較的小さい場合は、リンク機構300における後移動軸支部314の位置調整機構により、植付ユニットの状態を、作溝アーム200の動作範囲が比較的広い軸支部近接状態(図38B参照)から、作溝アーム200の動作範囲が比較的狭い軸支部離間状態(図38A参照)に切り換えることが行われる。これにより、作溝アーム200の軌跡W2の苗ブロック相当部分の周りの軌跡部分が小さくなる。
【0250】
図41は、植付ユニットが軸支部離間状態であって、株間が比較的小さい株間寸法S2(例えば、24cm)の場合における植付爪72および作溝アーム200の動軌跡を示している。図41に示すように、植付ユニットが軸支部離間状態となることで、株間が比較的小さい場合の作溝アーム200の軌跡W2について、ループ状の軌跡部分W2aが小さくなる。つまり、図39に示す作溝アーム200の軌跡W2と同様に、作溝アーム200の軌跡W2における折り返し部分の軌跡部分W2aについて、苗ブロック相当部分に対して干渉しないように必要最小限のループ形状が描かれることになり、移植穴が必要以上に大きくなることが防止される(図41において破線円X3で囲んだ部分参照)。
【0251】
このように、株間変速ケース33内の変速装置36(図3参照)により変更される株間の大きさに応じて、植付ユニットの軸支部近接状態および軸支部離間状態のいずれかの状態が用いられることで、作溝アーム200の軌跡W2の最適化が図られる。なお、株間が比較的大きい株間寸法S1(例えば、40cm)の場合に植付ユニットを軸支部離間状態とすると、作溝アーム200の軌跡W2のループ形状部分が小さくなり、苗ブロック相当部分への干渉が生じやすくなる。
【0252】
以上のような構成を備えた本実施形態に係る苗移植機1によれば、苗移植機1において、植え付けた苗に対する作溝アーム200の干渉を抑制することができ、良好な植付け性を得ることができる。
【0253】
苗移植機1が備えた植付ユニットは、作溝アーム200の位置姿勢として、苗マット100を切り取るタイミングでの待機姿勢と、植付爪72に対して前方に移動した作溝姿勢とをとるように構成されている。このような構成によれば、作溝アーム200の姿勢変更により、ガイドレール48との干渉を避けつつ、植付爪72による苗の植付けタイミングより前に、作溝アーム200による作溝を開始することが可能となる。これにより、植付爪72に対する作溝アーム200の相対的な位置の自由度を向上させることができるため、苗の植付条件の変更に対応することが可能となる。したがって、苗の植付精度を向上させることができるとともに、土壌に対する作溝のトルクの増大や、植え付けた苗に対する作溝アーム200の干渉といった不具合を解消することができ、良好な植付け性を得ることができる。
【0254】
また、作溝アーム200は、作溝姿勢から、植付爪による苗の植付け終了後に待機姿勢に戻る循環動作を行うように設けられている。このような構成によれば、苗の植付け終了後に植付爪72に対する作溝アーム200の相対的な位置姿勢を遷移させることができ、苗の植付けに適した作溝動作を行うことが可能となる。特に、上述のとおり作溝アーム200が2段階の退避動作を行うように構成することにより、苗の植付けにより適した作溝動作を行うことが可能となる。また、作溝アーム200が作溝終了後に待機姿勢に戻ることにより、植付爪72による次の単位ブロック部108の掻取りにおいて、例えば作溝アーム200がガイドレール48と干渉すること等、作溝アーム200が邪魔になることを防止することができる。
【0255】
また、作溝アーム200は、作溝姿勢で先端を植付爪72よりも前方に突出させ植付爪72に先行して圃場表面に入るように設けられている。このような構成によれば、植付爪72による苗の植付けに際して作溝アーム200による作溝が行われるため、確実に作溝アーム200により作溝された部分に苗の植付けを行うことができ、植付け抵抗を低減することができる。苗の植付け抵抗が低減することにより、植付爪72およびその支持構成について植付け抵抗に対して必要な強度の確保を容易に行うことができる。これにより、植付ユニット延いては苗植付装置43の小型軽量化を図ることができる。また、圃場面91にマルチフィルム250が張られている圃場の場合、植付爪72が圃場表面に入る前に作溝アーム200によりマルチフィルム250が切開されて作溝が行われるため、スムーズで安定した苗の植付けを行うことができる。
【0256】
また、作溝アーム200は、アーム先端部202を圃場表面より下方に位置させた動作範囲では、圃場に植え付けられた苗ブロック110に干渉せずにかつ苗ブロック110の近傍を通るような軌跡(図32、軌跡E3参照)を描くように設けられている。このような構成によれば、作溝アーム200の先端が苗ブロック110に干渉しない最低限の深さで作溝することで、作溝のトルクおよび植付爪装置50の駆動トルクを低減することができ、植付ユニット延いては苗植付装置43の小型軽量化を図ることができる。また、これらのトルク低減により、植付爪装置50の駆動力および駆動系の強度の確保を容易に行うことができる。また、作溝アーム200による作溝深さが必要以上に深くなることを抑制することができるので、圃場における苗ブロック110の植付け姿勢を安定させることができ、良好な植付け性を得ることができる。
【0257】
また、作溝アーム200は、植付爪72の動作に連動して位置姿勢を変化させるように設けられている。このような構成によれば、株間変速ケース33内の変速装置36による株間の変更による植付爪72の動作の変速にともなって作溝アーム200の動作も自動的に変速されるため、株間を変更した場合における作溝アーム200の動作タイミングの調節を不要とすることができる。
【0258】
また、作溝アーム200は、カムプレート410を含むカム機構400により、植付爪72の動作に連動して位置姿勢を変化させるように設けられている。このような構成によれば、簡単な構成により、作溝アーム200を植付爪72の動作に連動させるための動作として、植付爪装置50の相対回転を利用することができる。これにより、駆動源等を別途設けることなく、苗植付装置43の構成のコンパクト化を図りながら、作溝アーム200を植付爪72の動作に連動させることができる。
【0259】
また、作溝アーム200は、圃場表面に入るタイミングで板状部分であるアーム先端部202を圃場表面に対して立った状態とするように構成されている。このような構成によれば、作溝アーム200が圃場に突入する際の圃場表面に対する接触面積を小さくすることができるので、作溝アーム200による作溝のトルクおよび植付爪装置50の駆動トルクを低減することができ、苗植付装置43の小型軽量化を図ることができる。特に、作溝アーム200は、側面断面視でアーム先端部202がなす直線状の延伸方向(図22、矢印Y1参照)を作溝動作における先端突出部202aの軌跡に沿わせることにより、作溝アーム200による作溝のトルクおよび植付爪装置50の駆動トルクを効果的に低減することができる。また、圃場面91にマルチフィルム250が張られている圃場の場合、アーム先端部202によってマルチフィルム250をスムーズにカットすることができるので、スムーズで安定した苗の植付けを行うことができる。
【0260】
また、作溝アーム200は、アーム先端部202の下部において、下側に凸の山形状を有する。このような構成によれば、マルチフィルム250に対するアーム先端部202の下端部の接触部が起点となってマルチフィルム250をカットすることができ、作溝アーム200によるマルチフィルム250に対するスムーズなカット作用を得ることができる。
【0261】
また、作溝アーム200は、アーム先端部202の動軌跡として、最下端に位置する植付爪72に対し、植付爪72が保持している苗ブロック110を押し出すスペースを確保する軌跡を描くように設けられている。このような構成によれば、作溝アーム200による作溝深さを、苗ブロック110の押出しに必要な最低限の深さとすることで、作溝アーム200による作溝のトルクを低減することができ、作溝アーム200における強度の確保を容易に行うことができる。また、作溝アーム200により作溝された部分に対して確実に苗ブロック110を植え付けることができるので、良好な植付け性を得ることができる。
【0262】
また、作溝アーム200は、植付爪72に対して左右方向の一側にずれた位置に設けられたアーム本体部201と、アーム本体部201の先端側に設けられたアーム先端部202とを有する。このような構成によれば、作溝アーム200のアーム本体部201が植付爪72に対して左右方向に偏倚しているため、側面視においてアーム本体部201が植付爪72に重なるように作溝アーム200をレイアウトすることができる。これにより、作溝アーム200の土中に入る部分の体積を低減することができるので、作溝アーム200による作溝のトルクを低減することができ、作溝アーム200における強度の確保を容易に行うことができる。また、作溝アーム200の作溝動作においてアーム本体部201が植付爪72に干渉することがなくなるため、植付爪72との関係で作溝アーム200の動きの自由度を高くすることができ、作溝アーム200の作溝動作を理想的な動作に近付けることが可能となる。
【0263】
また、作溝アーム200は、左右方向について植付爪72に対してアーム本体部201と反対側にずれた位置に設けられた補助アーム部203を有し、アーム本体部201、アーム先端部202および補助アーム部203によって略「U」字状に構成されている。このような構成によれば、作溝アーム200による良好な作溝作用を得ることができる。また、圃場面91にマルチフィルム250が張られている圃場の場合、アーム本体部201および補助アーム部203によって植付爪72の左右両側からマルチフィルム250をカットすることができる。これにより、植付爪72の植付け部分のマルチフィルム250を確実にカットして除去する(剥がす)ことができるので、マルチフィルム250の切れ残りを抑制することができ、良好な植付け性を得ることができる。
【0264】
また、苗移植機1は、株間の変更に対応するために、植付爪72に対する作溝アーム200の動軌跡を変更させる手段としての軌跡変更装置270を備えている。このような構成によれば、土壌条件や苗条件等に合わせて作溝アーム200の軌跡を最適な軌跡に調整することができるので、様々な条件での植付性能を確保することができる。
【0265】
また、軌跡変更装置270によれば、例えば上述した株間寸法S1(例えば40cm)、株間寸法S2(例えば24cm)のような株間の長短を切り換えることによっても、作溝アーム200のアーム先端部202が略一定の軌跡を描くように軌跡を変更することができる。これにより、移植穴が必要以上に大きくなることを抑制することができるため、良好な植付性能、植付精度を得ることができ、また、作溝アーム200による作溝負荷がむやみに大きくなることを抑制することができる。このように、軌跡変更装置270によれば、作溝アーム200の軌跡について株間に合わせて最適な軌跡に設定することができるので、例えば上述のとおり株間を比較的小さくした場合において作溝アーム200の軌跡が必要以上に大きくなる(図40、破線円X2で囲んだ部分参照)等の不具合を抑制することができる。
【0266】
また、軌跡変更装置270は、植付爪装置50に対して作溝アーム200を支持するリンク機構300により構成されている。このような構成によれば、リンク機構のリンク比を変更することにより作溝アーム200の軌跡を変更することができるので、軌跡の変更を容易に行うことが可能となる。
【0267】
また、軌跡変更装置270としてのリンク機構300は、前アーム301および後アーム302の各リンクアームの作溝アーム200側に対する支持部間の距離である軸間距離L1(図20参照)を変更することにより、作溝アーム200の軌跡を変更するように構成されている。このような構成によれば、簡単な構成により軌跡変更装置270を実現することができる。また、一方のリンクアームの支持位置を変更するという容易な操作によって作溝アーム200の軌跡を変更することができる。また、軸間距離L1の調整機構によれば、リンクアームの支持位置を視認することによって作溝アーム200の軌跡の変更状態を容易に確認することができる。
【0268】
また、リンク機構300は、後移動軸支部314が設けられた連結プレート310の作溝アーム200に対する固定位置によって軸間距離L1が調整されるように構成されている。このような構成によれば、部品を交換することなく、作溝アーム200の軌跡を容易に変更することができる。また、連結プレート310を作溝アーム200に固定するためのボルト323は、植付爪装置50に対して左右外側から操作可能に設けられているため、ボルト323について良好な操作性を得ることができ、作溝アーム200の軌跡を容易に変更することができる。
【0269】
なお、本実施形態では、軸間距離L1の調整機構は、作溝アーム200においてボルト323を貫通させる孔部204bを長孔として無段階の調整が可能に構成されているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、作溝アーム200においてボルト323を貫通させる孔部を、後移動軸支部314の位置調整方向について所定の間隔をあけて複数設けた構成であってもよい。具体的には、例えば、上述のとおり40cmと24cmの株間に対応する場合、ボルト323を貫通させる孔部として、軸支部近接状態に対応した孔部と軸支部離間状態に対応した孔部との2つの孔部が支持プレート204に形成されることになる。このような構成によれば、軸間距離L1をあらかじめ設定された値に段階的に調整することが可能となり、株間の長短の切換え状態に対応した適切な軸間距離L1に設定することが可能となる。
【0270】
また、植付爪装置50は、保持板74の下側に掘削爪76を有する。このような構成によれば、掘削爪76が保持板74に先行して圃場を掘削することから、例えば圃場が比較的硬い土の場合等であっても、圃場に対する保持板74の接触抵抗を軽減することができ、保持板74の変形や損傷を抑制することができる。また、圃場にマルチフィルム250がある場合、掘削爪76により、保持板74にマルチフィルムが絡むことを抑制することができる。
【0271】
[他の実施形態]
本発明に係る植付ユニットの他の実施形態について、図42から図46を用いて説明する。本実施形態では、上述した実施形態と共通のまたは対応する構成については同一の名称または同一の符号を用い、重複する内容についての説明を適宜省略する。本実施形態に係る植付ユニットは、作溝アームの構成の点で、上述した実施形態に係る植付ユニットと異なっている。
【0272】
本実施形態に係る作溝アーム500は、長手状に構成されており、長手方向を爪延出方向に沿わせるように設けられている。作溝アーム500は、植付爪装置50に対し、植付爪72の近傍に設けられている。また、作溝アーム500は、リンク機構300により植付爪装置50に対して移動可能に支持され、植付爪72に対して相対移動するように設けられている。
【0273】
作溝アーム500は、全体として平面視で略「T」字状をなすように構成されており、植付爪装置50の左右外側に位置する部分と、植付爪装置50の下側に位置する部分とを有する。作溝アーム500は、略「T」字状の外形をなす部分として、アーム本体部501と、アーム先端部502とを有する。作溝アーム500を構成するこれらの部分は、所定の形状を有する板状の部分として設けられている。
【0274】
作溝アーム500は、その構成部材として、作溝アーム500の支持基部をなす支持プレート204と、カッター部材505とを有する。作溝アーム500は、支持プレート204および支持プレート204による植付爪装置50に対する支持構成を、上述した実施形態の作溝アーム200と共通としている。支持プレート204およびカッター部材505は、互いに連結固定され、一体的な作溝アーム500を構成している。
【0275】
カッター部材505は、平面視で略「T」字状をなす屈曲板状の部材であり、作溝アーム500の本体部分をなしている。カッター部材505は、略「T」字状をなす面部として、アーム部505aと、前面部505bとを有する(図45参照)。
【0276】
アーム部505aは、左側面視で角側を後下側とした略「L」字状の屈曲形状を有する。アーム部505aは、略「L」字状の側面視形状における後側の辺部をなす基部505cと、基部505cの下端部から前方かつ左右内側に向けて延出した中間傾斜面部505dと、基部505cの先端側から前方に向けて延出した先端側アーム部505eとを有する。先端側アーム部505eの前側に、前面部505bが設けられている。アーム部505aにおいては、中間傾斜面部505dおよび先端側アーム部505eにより、略「L」字状の側面視形状における下側の辺部が形成されている。
【0277】
アーム本体部501は、植付爪72に対して左右方向の外側にずれた位置に設けられた部分である本体後部506、および左右方向について植付爪72の幅の範囲内の位置に設けられた部分である本体前部507を含む。アーム本体部501は、概略的に左右方向を板厚方向とした板状の部分であり、支持プレート204と、カッター部材505のアーム部505aとにより形成されている。
【0278】
カッター部材505は、基部505cの上部を、支持プレート204の前端部に対して外側から重ねた状態で支持プレート204に固定されている。基部505cは、上下方向に長い長手状の形状を有し、後部を支持プレート204の前端部から下方に延出させている。
【0279】
カッター部材505は、支持プレート204に対して、2本のボルト206により固定されている。2本のボルト206は、カッター部材505の基部505cと支持プレート204の重なり部分において、支持プレート204の前部の幅方向の両側に位置している。ボルト206は、基部505cの上部に形成された孔部505fを貫通し、支持プレート204の前端部に形成されたネジ孔に螺挿されている。
【0280】
ボルト206を貫通させる孔部505fは、支持プレート204からのカッター部材505の延出方向に沿う方向を長手方向とした長孔となっている。これにより、支持プレート204に対するカッター部材505の延出方向についての固定位置の調整が可能となっている。
【0281】
アーム本体部501のうち、本体後部506は、左右方向について植付爪72よりも外側に位置する部分である。したがって、本体後部506は、図43に示すように、支持プレート204と、カッター部材505の基部505cと、中間傾斜面部505dの後部とにより形成された部分となっている。
【0282】
また、アーム本体部501のうち、本体前部507は、左右方向について植付爪72の幅の範囲内に位置する部分である。したがって、本体前部507は、図43に示すように、カッター部材505の中間傾斜面部505dの前部と、先端側アーム部505eとにより形成された部分となっている。
【0283】
このように、アーム本体部501は、本体前部507において、植付爪72、および植付爪72の下方に位置する保持板74や掘削爪76等に対して左右方向の位置を共通としており、これらの構成に対して平面視で一部を重ねるように設けられている。そして、本体前部507は、植付爪72や保持板74等に対して下方に位置している。
【0284】
カッター部材505の先端側アーム部505eは、左右方向を板厚方向とし、平面視で前後方向に沿う直線状をなすとともに、側面視で略一定の幅を有する板状の部分である。先端側アーム部505eは、左右方向について植付爪72の略中央部に位置している。先端側アーム部505eは、作溝アーム500が作溝姿勢にある状態で、前側の大部分を植付爪72の先端よりも前方に位置させている。なお、図43は、作溝アーム500が作溝姿勢にある状態を示している。
【0285】
以上のように本体後部506および本体前部507を有するアーム本体部501は、後側から前側にかけて、植付爪装置50の左右外側に位置する部分の前部において基部505cにより下側に延び、中間傾斜面部505dによって徐々に左右内側(図43において上側)に向かい、植付爪72の下方において先端側アーム部505eを前方に延出させた形状を有する。
【0286】
アーム先端部502は、アーム本体部501の先端側に設けられている。アーム先端部502は、作溝アーム500が作溝姿勢の状態において掘削爪76の先端より前方に位置し(図42参照)、作溝アーム500が待機姿勢の状態において掘削爪76の先端の下方に位置している(図44参照)。アーム先端部502は、アーム本体部501の前部をなすカッター部材505の先端側アーム部505eに対して左右両側に張り出した板状の部分であり、カッター部材505の前面部505bにより形成されている。
【0287】
アーム先端部502は、側面視において爪延出方向に垂直な方向に対して前下がりとなる向きに傾斜した傾斜面部となっている。アーム先端部502は、側面断面視で直線状をなす板状部分となっている(図46参照)。図46は、作溝アーム500の前部の断面図であり、先端側アーム部505eの左右方向(板厚方向)の中央位置での左側面断面図である。図46に示すように、アーム先端部502は、側面断面視で所定の方向(矢印Z1参照)を延伸方向とした直線状をなしている。
【0288】
アーム先端部502は、下縁部を、アーム本体部501の先端部に対してわずかに下側に突出した先端突出部502aとしている。アーム先端部502は、下縁部において、一対の斜辺部502bによって頂部502cをなす下側に凸の山形状を有する。頂部502cは、一対の斜辺部502bにより形成された鈍角状の角部となっている。
【0289】
本実施形態に係る作溝アーム500を備えた構成によれば、マルチフィルム250に対するカット幅wd1(図43参照)を、上述した略「U」字状の作溝アーム200のカット幅wd2(図19参照)よりも狭くすることができる。ここで、作溝アーム500のカット幅wd1は、アーム先端部502の左右幅の寸法であり、作溝アーム200のカット幅wd2は、外側面部205aの外側の側面と内側面部205cの内側の側面との間の左右方向の寸法である。これにより、作溝アーム500によりマルチフィルム250をカットした状態において、マルチフィルム250の切れ端の幅を短くすることができ、切れ端が植え付けた苗に干渉することを抑制することができる。
【0290】
なお、マルチフィルム250の切れ端は、作溝アーム500のアーム本体部501によりマルチフィルム250を前後方向に直線状に切り裂いた状態において植え付けた苗の左右両側にフィルムの本体側につながった状態で(観音開きの態様で)残存するフィルムの残り片である。この点、U字状の作溝アーム200によれば、マルチフィルム250は、アーム本体部201および補助アーム部203により前後方向にカットされるため、マルチフィルム250の切れ端としては、後側がフィルムの本体側につながった幅広の残り片が残存することになる。
【0291】
また、T字状の作溝アーム500によれば、U字状の作溝アーム200と比べて、後に寄せる土の量を少なくすることができ、植え付けた苗の周りの覆土を比較的多くすることができる。
【0292】
また、U字状の作溝アーム200の場合、アーム本体部201および補助アーム部203を植付爪72に対して左右外側に配置した構成であるため、作溝アーム200を植付爪72に近付けることができる。これにより、マルチフィルム250のカット長(前後方向の長さ)を比較的短くすることができ、マルチフィルム250の穴の長さを短くすることができる。
【0293】
これに対し、T字状の作溝アーム500の場合、アーム本体部501の前部を植付爪72の左右中央部の下方に配置した構成であるため、植付爪装置50の構成部材との干渉を避けるべく、作溝アーム500が植付爪72から比較的離れた位置に設けられる。このため、マルチフィルム250のカット長を比較的長くすることができ、マルチフィルム250の穴の長さを長くすることができる。
【0294】
また、作溝アーム500は、上述したU字状の作溝アーム200と同様に、圃場表面に入るタイミングでアーム先端部502を圃場表面に対して立った状態とするように構成されているため、作溝のトルクおよび植付爪装置50の駆動トルクを低減することができる。特に、側面断面視でアーム先端部502がなす直線状の延伸方向(図46、矢印Z1参照)を作溝動作における先端突出部502aの軌跡に沿わせることにより、作溝のトルク等を効果的に低減することができる。また、アーム先端部502によってマルチフィルム250をスムーズにカットすることができ、特に、アーム先端部502の下部の山形状により、マルチフィルム250に対するスムーズなカット作用を得ることができる。
【0295】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る苗移植機は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0296】
本技術は、以下のような構成を取ることができる。なお、以下に記載の構成は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
(1)
苗載台上に載置した苗マットを植付爪によって一部ずつ切り取って連続的に苗を圃場に植え付けていく苗移植機であって、
前記植付爪の近傍に設けられ、前記植付爪に対して相対移動するように設けられた作溝アームと、
前記植付爪による苗の植付ピッチに対応するために、前記植付爪に対する前記作溝アームの動軌跡を変更させる軌跡変更装置と、を備えた
ことを特徴とする苗移植機。
(2)
前記作溝アームは、前記植付爪の動作に連動して前記植付爪に対する相対的な位置姿勢を変化させるように設けられている
ことを特徴とする前記(1)に記載の苗移植機。
(3)
前記軌跡変更装置は、前記植付爪を含む植付爪装置に対して前記作溝アームを支持するリンク機構により構成されている
ことを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の苗移植機。
(4)
前記リンク機構は、一端側を前記植付爪装置側に回動可能に支持させるとともに他端側を前記作溝アーム側に回動可能に支持させた2つのリンクアームを含み、
前記軌跡変更装置は、前記2つのリンクアームの前記作溝アーム側に対する支持部間の距離を変更することにより、前記植付爪に対する前記作溝アームの動軌跡を変更する
ことを特徴とする前記(3)に記載の苗移植機。
(5)
前記作溝アームは、前記植付爪に対する相対的な位置姿勢として、前記植付爪が苗マットを切り取るタイミングでの位置姿勢である待機姿勢と、圃場に対する苗の植付けに際して前記植付爪に対して前方に移動した作溝姿勢と、を有し、前記作溝姿勢から、前記植付爪による圃場に対する苗の植付け終了後、前記待機姿勢に戻る循環動作を行うように設けられている
ことを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の苗移植機。
(6)
前記作溝アームは、前記作溝姿勢にある状態で、先端を前記植付爪よりも前方に突出させ、前記植付爪に先行して圃場表面に入るように設けられている
ことを特徴とする前記(5)に記載の苗移植機。
(7)
前記作溝アームは、少なくとも先端部を圃場表面より下方に位置させた動作範囲では、圃場に植え付けられた苗に干渉しないように設けられている
ことを特徴とする前記(1)~(6)のいずれか1つに記載の苗移植機。
【符号の説明】
【0297】
1 苗移植機
3 苗移植装置
42 苗載台
50 植付爪装置
52 ロータリケース
72 植付爪
91 圃場面
100 苗マット
110 苗ブロック
200 作溝アーム
201 アーム本体部
202 アーム先端部
203 補助アーム部
270 軌跡変更装置
300 リンク機構
301 前アーム(リンクアーム)
302 後アーム(リンクアーム)
313 前移動軸支部
314 後移動軸支部
400 カム機構
410 カムプレート(カム)
500 作溝アーム
501 アーム本体部
502 アーム先端部
506 本体後部
507 本体前部
図1
図2
図3
図4
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