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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028134
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】建物自動化システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20240222BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240222BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240222BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20240222BHJP
   F24F 110/64 20180101ALN20240222BHJP
   F24F 110/70 20180101ALN20240222BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F7/007 B
F24F110:10
F24F110:20
F24F110:64
F24F110:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023111200
(22)【出願日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】22190857
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャラランポス アンゲロプロス
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BD02
3L056BD03
3L260BA02
3L260BA12
3L260BA42
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA17
3L260CA32
3L260CA33
3L260CA35
3L260CB62
3L260EA07
3L260FA02
(57)【要約】
【課題】省エネルギー及び熱的に快適な内部環境を確保するための建物自動化システムの制御方法を提案する。
【解決手段】本発明は、建物自動化システムの制御方法であって、少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値を計測するステップと、計測済み室内環境良質度パラメータ値について、それぞれの計測済み室内環境良質度パラメータ値から無次元の室内環境良質度指数を計算するステップと、室内環境良質度指数の加重和として制御指数を計算するステップと、所定の上側閾値指数を規定し、所定の上側閾値指数を制御指数が下回ると制御手順を開始するステップ、又は、所定の下側閾値指数を規定し、所定の下側閾値指数を制御指数が上回ると制御手順を開始するステップとを含み、制御手順が、少なくとも1つの、多数の、又は全ての室内環境良質度指数が各々、それぞれの第1所定範囲内にあるようにBASを制御するステップを包含する、方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物自動化システム、BASの制御方法であって、
少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値を計測するステップと、
前記計測済み室内環境良質度パラメータ値について、前記それぞれの計測済み室内環境良質度パラメータ値から無次元の室内環境良質度指数を計算するステップと、
前記室内環境良質度指数の加重和として制御指数を計算するステップと、
所定の上側閾値指数を規定し、前記所定の上側閾値指数を前記制御指数が下回ると制御手順を開始するステップ、又は、
所定の下側閾値指数を規定し、前記所定の下側閾値指数を前記制御指数が上回ると前記制御手順を開始するステップであって、
前記制御手順は、少なくとも1つの、多数の、又は全ての室内環境良質度指数が各々それぞれの第1所定範囲内にあるように前記BASを制御するステップを包含する、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記BASが、暖房換気空調HVACシステムを包含する又は暖房換気空調システムである、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記加重和の重みがユーザ嗜好から推論される、方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値を計測する前記ステップが、
前記少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値の各々の時系列を或る時間周期にわたって取得するステップと、
前記良質度パラメータ値の各々の、前記時系列にわたる代表値を決定するステップと、
前記代表値を前記計測済み室内環境良質度パラメータとして設定するステップと
を含む方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記室内環境良質度指数が0~100の間にわたる、方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の方法であって、室内環境良質度パラメータPの各計測済み室内環境良質度パラメータ値Aについて、前記それぞれの計測済み室内環境良質度パラメータ値Aから無次元の前記室内環境良質度指数Kを計算するステップが、
前記それぞれの室内環境パラメータPの値の可能な範囲を、隣接する良質度カテゴリに分割するステップと、
前記室内環境良質度指数KAPを、KAP=(A-BQP)/(CQP-BQP)*(DQP-EQP)+EQPになるように計算するステップであって、
ここに、CQPは前記良質度カテゴリQの上限であり、BQPは前記良質度カテゴリQの下限であり、
は、前記計測済み室内環境良質度パラメータ値Aが入る前記良質度カテゴリであり、
QPは前記良質度カテゴリQの前記指数の上限であり、
QPは前記良質度カテゴリQの前記指数の下限である、ステップと
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記良質度カテゴリの前記指数の前記上限と前記指数の前記下限とが等しく離間する、及び/又は、1つの良質度カテゴリの前記指数の上限が、前記隣接する良質度カテゴリのうちの1つの前記指数の前記下限である、方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記室内環境良質度指数の各々の時系列を或る時間周期にわたって取得するステップと、
前記良質度指数の各々の、前記時系列にわたる前記代表値の前記平均値として前記制御指数を計算するステップと
を更に含む方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の方法であって、少なくとも1つの室内環境良質度パラメータについて、1つのカテゴリの上限が、前記隣接する高めの良質度カテゴリの前記下限である、及び/又は、1つのカテゴリの下限が、前記隣接する低めの良質度カテゴリの前記上限である、方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記室内環境良質度パラメータ値のうちの少なくとも1つが、単一のセンサの計測値である又は同じ種類の多数のセンサの計測値の平均である、方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記計測済み室内環境良質度パラメータ値のうちの1つを計測する少なくとも1つのセンサが、前記BASを制御するコントローラと無線で通信する、方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記室内環境良質度パラメータのうちの1つと同じ種類である少なくとも1つの室外環境良質度パラメータ値を計測するステップを更に含み、
前記制御手順は、
追加の換気が必要になる場合、及び
前記室外環境パラメータの各々が、それぞれの所定範囲内の値を有する場合、及び
前記室外環境パラメータと前記同じ種類の前記室内環境良質度パラメータが、前記同じそれぞれの所定範囲内にある場合に、
室外環境からの空気が室内環境へと送られるように前記BASを制御するステップ
を更に包含する、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記少なくとも2つの室内環境パラメータ、及び前記少なくとも1つの室外環境パラメータが、空気温度、相対湿度、総揮発性有機化合物、二酸化炭素、及び粒子状物質を含む群から選択される、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、前記少なくとも2つの室内環境パラメータ、及び前記少なくとも1つの室外環境パラメータが、空気温度、相対湿度、総揮発性有機化合物、二酸化炭素、及び粒子状物質を含む群から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物自動化システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人は平均して時間の約90%を室内で過ごす。世界保健機関は、あらゆる人間が衛生的な室内空気を吸う権利を認めており、空気良質度に関する指針を公開している。人が室内で呼吸する空気の良質度は、健康、幸福度、及び生産性に直接影響し、健全な建物の最も重要な側面の1つを構成する。人々を保護するために、室内環境良質度パラメータの許容範囲及び閾値に関する多くの基準が、エネルギー効率、熱的快適性、及び室内空気良質度の向上に関する条項を組み合わせて策定されてきた。
【0003】
省エネルギーと室内環境良質度の向上とは相互に関連しているが、その両方を同時に達成することは可能である。熱、湿度、及び室内空気良質度の側面が、建物内での幸福度及び生産性に作用するが、これらの側面は、適切な快適状態を維持するためのエネルギー費用にも作用すると考えられる。
【0004】
故に、室内環境のパフォーマンスを査定し、それに応じて建物自動化システムの制御を調整し、室内環境を維持及び/又は向上するために、これらの室内環境良質度パラメータを評価することが重要である。建物自動化システム装置の大半は、検出される温度及び湿度情報に応じて自動的に作動することが可能であり、例えば、温度が過度に高ければ冷房モードが自動的に選択され、温度が過度に低ければ暖房モードが自動的に選択され、湿度が過度に高ければ除湿モードが自動的にオンになる。ところが、建物自動化システムのほとんどは単一のセンサに頼って制御措置を講じており、このセンサが温度及び湿度しか計測しない。残りの室内空気良質度パラメータ、例えば粒子状物質、総揮発性有機化合物、及び/又はCOは、ほとんどの場合、無視される。
【0005】
建物自動化システムの新規の制御技法を展開する際には、センサからの利用可能なデータを全て組み込み、室内空気良質度が高レベルの、熱的に快適な内部環境を確保することが不可欠である。このような内部環境は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、一層注目されている。室内環境の査定にあたって室内空気良質度及び熱的快適性のパラメータ全てを包含することの重要性を強調した研究があるが、建物自動化システムの制御にこの情報を使用する仕方に関する知見には依然としてギャップがある。
【0006】
室内環境の良質度は、熱的快適性及び/又は室内空気良質度を制御する建物システムの設計及び作動に依存する。エネルギー費用及び炭素排出量を低く抑えつつ許容レベルを提供し維持することはエネルギーを必要とする作業であり、建物の設計者、所有者、及びユーザが、省エネルギーの責務と快適性の提供との間で適正なバランスを取る必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、室内環境を査定するための制御指数を計算する技法を提供することである。制御指数は、室内空気良質度と熱的快適性の両方を考慮することになる。この制御指数は、その後、本発明の一部として展開される制御アルゴリズムに通知するために使用されることになる。システム作動、環境条件(室外温度、相対湿度等)、ならびに様々な室内条件に関するリアルタイムデータが現在利用可能であることを前提として、省エネルギー及び熱的に快適な内部環境を確保するための建物自動化システムの制御方法を提案する。室内条件というのは、空気温度、相対湿度、粒子状物質、総揮発性有機化合物、COを包含するが、これに限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の方法により達成される。従属請求項は好適な実施形態である。
【0009】
本発明は、建物自動化システム、BAS(:Building Automation System)の制御方法に関する。建物自動化システムとは、空気を移動、入れ替え、冷房、及び/又は暖房することのできる、及び/又は、建物内部の空気の物理的特性を全体的に変化させることのできるシステムである。幾つかの実施形態において、BASは、暖房換気空調(HVAC:heating ventilation air-conditioning)システムと、熱回収を伴う機械換気(MVHR:mechanical ventilation with heat recovery)用ユニットと、加湿器と、空気清浄機と、フィルタ付きファンとを包含することができ、又はそれらである。
【0010】
本発明による方法の最初のステップにおいて、少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値が計測される。室内環境良質度パラメータというのは、各々、計測可能な空気の物理的特性のことを述べている。この意味では、空気の組成又は空気の成分量も空気の物理的特性と見なすことができる。
【0011】
用語「室内環境良質度パラメータ値」とは、対応する室内環境良質度パラメータの計測値のことを述べている。
【0012】
空気の物理的特性は、概して、例えば人間により知覚される快適性、及び/又は空気良質度に作用することがある。従って、室内環境良質度パラメータは、例えば個人により知覚される快適性、及び/又は空気良質度に関連させることができる。この意味での快適性及び空気良質度とは、満足度、幸福度の尺度、及び/又は人間の健康に対する好影響もしくは悪影響と理解することができる。上述の快適性、及び/又は空気良質度については、以下で、用語「空気の良質度」をも使用することにする。
【0013】
本発明の次のステップでは、計測済み室内環境良質度パラメータ値について、無次元の室内環境良質度指数が計算される。室内環境良質度指数は数値化することができる。室内環境良質度指数は、例えば、対応する計測済み室内環境良質度パラメータ値と、この室内環境良質度パラメータの原因となる空気の良質度とを関連させることができる。
【0014】
室内環境良質度指数は、好ましくは、対応する室内環境良質度パラメータ値から、空気の良質度に比例又は反比例するように計算することができる。好ましくは、室内環境良質度指数は、異なる室内環境良質度パラメータを互いに比較することを可能にする。
【0015】
好ましくは、全ての室内環境良質度指数が、同じ範囲内の値を有することができる。このことは、異なる室内環境良質度を比較可能にすることができる。
【0016】
本発明による方法の更なるステップにおいて、制御指数が、室内環境良質度指数の加重和として計算される。加重和とは、好ましくは、全ての環境良質度指数にそれぞれの重みを乗算した後、それらを合計した和のことである。
【0017】
制御指数は、空気の全体的な良質度を定量化することができるのであり、注視する全ての室内環境良質度指数を考慮に入れることができる。これは、制御指数が、空気の全体的な良質度の尺度を与えることができるということを意味する。後のステップでは、制御指数を使用して、快適性、及び/又は空気良質度を向上する手段を講じるべきであるかどうかを決めることができる。
【0018】
加重和の重み付け次第で、制御指数に寄与する各パラメータの影響度、つまり、人間により知覚される空気良質度、満足度、幸福度に対する全体的な快適性、及び/又は人間の健康に対する好影響もしくは悪影響の度合いを決定することができる。好ましくは、重みは無次元である。重みは、0より大きい数値とすることができる。好ましくは、重みの合計を1に等しくすることができる。重み付けにより、好ましくは、1つの又は幾つかの室内環境良質度パラメータを、他の室内環境良質度パラメータよりも重要視することができる。
【0019】
好ましくは、加重和の重みはユーザ嗜好から推論される。幾つかの実施形態において、1人以上のユーザは、注視する室内環境良質度パラメータごとに、各重みを別々に設定することができる。幾つかの実施形態において、1人以上のユーザは、室内環境良質度パラメータの各々の重要性に対し、その優先度に関する情報を提供することができる。その際、この情報を使用して、加重和の重みを推論することができる。室内環境良質度指数が、意図的に、異なる範囲内の値を有するように計算される場合、重みはそのことを補償するように使用することもできる。このようにして、環境良質度指数は比較可能なものにすることができる。
【0020】
好ましくは、制御指数により定量化されるものとしての空気の全体的な良質度が低い場合のみに、BASは、空気の物理的特性を変化させるような手段を講じるべきである。従って、本発明による方法は、所定の上側閾値指数を規定し、この所定の上側閾値指数を制御指数が下回ると制御手順を開始するステップ、又は、所定の下側閾値指数を規定し、この所定の下側閾値指数を制御指数が上回ると制御手順を開始するステップを更に含む。制御指数の値が高いほど空気の良質度が高いことを示すように制御指数を空気良質度に比例するよう計算すれば、上側閾値指数を規定することができる。好ましくは、制御指数の値が低いほど空気の良質度が高いことを示すように制御指数を空気良質度に反比例するよう計算すれば、下側閾値を規定することができる。
【0021】
制御手順は、少なくとも1つの、多数の、又は全ての室内環境良質度指数が各々それぞれの第1所定範囲内にあるようにBASを制御するステップを包含する。第1所定範囲は、少なくとも1つの、多数の、又は全ての室内環境良質度指数ごとに個々に設定することができる。つまり、1つの室内環境良質度指数用に、特定の第1所定範囲を設定してもよく、別の室内環境良質度パラメータ用に、別の特定の第1所定範囲を設定するなどしてもよい。好ましくは、BASは、その少なくとも1つの、多数の、又は全ての室内環境良質度指数が各々そのそれぞれの第1所定範囲内にあるように、空気を移動させ、入れ替え、冷房し、暖房し、及び/又は空気の物理的特性を変化させる。
【0022】
好ましくは、BASは、少なくとも1つの、多数の、又は全ての環境良質度指数がその所定範囲内にあるように、空気を移動し、入れ替え、冷房し、及び/又は暖房し、或いは空気の物理的特性を変化させることができる。
【0023】
或る特定の時間周期にわたって高い良質度の空気を確保するために、本発明による方法は、好ましくは、この時間周期中に何度も実行することができる。時間周期の長さ、この時間周期中に本方法が実行される速さ、及び/又は、この時間周期中に本方法が実行される回数を、予め定めておくか、又はユーザにより設定されることができる。或る時間周期中に本方法が実行される速さは、好ましくは、一定の速さとすることができる。任意で、時間周期の長さを未規定にしておくことができ、ユーザにより実行が停止されるまで、本方法は規定の速さで何度も実行される。
【0024】
有利な実施形態において、少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値を計測するステップは、少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値の各々の時系列を或る時間周期tにわたって取得するステップと、良質度パラメータ値の各々の、時系列にわたる代表値を決定するステップと、それぞれの代表値を計測済み室内環境良質度パラメータとして設定するステップとを含むことができる。室内環境良質度パラメータの時系列は、好ましくは、時間周期t内の異なる時点にて計測される少なくとも2つの計測値を含有する。好ましくは、時系列の計測値の計測は、一定の速さにて実行される。好ましくは、時間周期tの長さは室内環境良質度パラメータごとに異なっていてもよい。
【0025】
室内環境良質度指数は例えば0~100の間にわたることができる。室内環境良質度指数が知覚良質度に比例するように計算される際、室内環境良質度指数の最高値、例えば100は、知覚良質度が最高であることを示し得る。別の場合では、室内環境良質度指数が知覚良質度に反比例するように計算される際、室内環境良質度指数の最低値、例えば0は、知覚良質度が最高であることを示し得る。
【0026】
幾つかの実施形態において、室内環境良質度パラメータ、室内環境良質度パラメータ値、室内環境良質度指数、及び/又は制御指数を、1人以上のユーザに示すことができる。BASは、室内環境良質度パラメータ、室内環境良質度パラメータ値、室内環境良質度指数、及び/又は制御指数を表示することのできるディスプレイを含むことができる。
【0027】
好適な実施形態において、室内環境良質度パラメータの値Pの可能な範囲は、1つ以上の良質度カテゴリQに分割することができる。各室内環境良質度パラメータの値の範囲は、好ましくは、異なる数の良質度カテゴリに分割することができる。各良質度カテゴリは、それぞれの室内環境良質度パラメータの値の可能な範囲の少なくとも1つの間隔により規定されてもよい。各良質度カテゴリは上限CQP及び下限BQPを含むことができる。
【0028】
計測済み室内環境良質度パラメータ値Aが良質度カテゴリQ内に入るという表現は、Aが、この特定の良質度カテゴリQの下限BQPより大きく、この特定の良質度カテゴリQの上限CQPより小さいことを述べている。
【0029】
各良質度カテゴリQは、室内良質度パラメータ指数の上限EQP、及び室内良質度パラメータ指数の下限DQPを更に含む。この上限及び下限は、良質度カテゴリQの上限及び下限に関係づけられた空気の良質度のことを述べている。指数の上限EQPは、空気の良質度が指数の下限DQPよりも高いことを表している。室内環境良質度指数が空気の良質度に比例するように計算されると、EQPの数値はDQPの数値より大きくなる。室内環境良質度指数が空気の良質度に反比例するように計算されると、EQPの数値はDQPの数値より小さくなる。
【0030】
室内環境良質度指数KAPは好ましくは、以下、
AP=(A-BQP)/(CQP-BQP)*(DQP-EQP)+EQP
のように計算することができ、
ここに、BQP、CQP、DQP、EQPは、Aが入る良質度カテゴリQの、上述した上限及び下限である。
【0031】
幾つかの有利な実施形態において、少なくとも1つの室内環境パラメータの各良質度カテゴリの室内環境良質度指数の上限と室内環境良質度指数の下限とは、等しく離間することができる。これは、差(EQP-DQP)と差(EQ’P-DQ’P)とが等しいことを意味することができる。ここに、QとQ’とは、同じパラメータPの良質度カテゴリが異なる。別法として又は追加として、1つの良質度カテゴリの室内環境良質度指数の上限は、隣接する良質度カテゴリのうちの1つの室内環境良質度指数の下限とすることができる。
【0032】
好ましくは、本発明による方法は、室内環境良質度指数の各々の時系列を或る時間周期にわたって取得するステップと、良質度指数の各々の、時系列にわたる代表値を計算するステップとを更に含む。良質度指数の各々のこれらの代表値を、以下で平均化済み室内環境良質度指数として表す。その際、制御指数は、平均化済み室内環境良質度指数全ての加重和として計算することができる。任意で、加重和が平均化済み室内環境良質度指数全ての平均値を表すように、重みは全て、平均化済み室内環境良質度指数の数で割れば1に等しくなるようにすることができる。
【0033】
幾つかの実施形態において、上述したように室内環境良質度パラメータPごとに決定された室内環境良質度指数KAPは、制御指数の計算に使用する前に更に処理することができる。この処理の最初のステップにおいて、室内環境良質度指数KAPの各々の時系列を或る時間周期Tにわたって取得することができる。次のステップでは、室内環境良質度パラメータ値A又は室内環境良質度指数KAPが良質度カテゴリQ内に入る時間量として、時間割合tQPを決定することができる。更なる処理ステップにおいて、室内環境良質度指数KAPの時系列の、時間割合tQPにわたって得られる代表値として、代表値VtQPを決定することができる。次のステップにおいて、これらの代表値VtQPの加重和Sをパラメータごとに計算することができ、それぞれの時間割合tQPが重みとして使用される。その後に、Sは時間割合tQP全ての和で割ることができる。それぞれの室内環境パラメータPの全tQPの和は、Tに等しくなるようにすることができる。この結果を、それぞれの室内環境良質度パラメータPに対応する室内環境良質度指数として使用することができる。その際、制御指数は、これらの室内環境良質度指数全ての加重和として計算することができる。任意で、これらの全室内環境良質度指数の平均値を加重和が表すよう、重みは全て、これらの室内環境良質度指数の数で割れば1に等しくなるようにすることができる。
【0034】
本発明の好適な実施形態において、少なくとも1つの室内環境良質度パラメータについて、1つのカテゴリの上限を、隣接する高めの良質度カテゴリの下限とすることができる、及び/又は、少なくとも1つの室内環境良質度パラメータについて、1つのカテゴリの下限を、隣接する低めの良質度カテゴリの上限とすることができる。
【0035】
任意で、室内環境良質度パラメータ値のうちの少なくとも1つを、単一のセンサの計測値、又は、同じ種類の多数のセンサの計測値の平均とすることができる。同じ種類のセンサとは、同じ物理的特性を計測できるセンサ、即ち、同じ室内環境良質度パラメータの値を得ることのできるセンサのことである。好ましくは、同じ物理的特性を計測するセンサとは、同じ型のセンサのことである。任意で、これらのセンサは、同じ物理的特性を計測できる限りにおいて、異なる型のセンサとすることができる。
【0036】
幾つかの好ましい実施形態において、室内環境良質度パラメータ値を計測するセンサのうちの少なくとも1つは、好ましくは、BASを制御するコントローラと無線で通信することができる、及び/又は、計測済み室内環境良質度パラメータ値を無線で送信することができる。
【0037】
建物は、BASにより個々に対処することのできる1つ以上の熱区間を含んでもよい。熱区間とは、建物の、局所的に制限された領域とすることができる。2つ以上の熱区間がある場合、好ましくは、これらの熱区間は互いに強く影響しないように配置することができる。これは、大量の空気が、建物自動化システムにより搬送されることなく1つの熱区間から別の熱区間へ移動することはないこと、及び/又は、異なる熱区間が熱的に互いから隔離されていることを意味することができる。幾つかの場合、熱区間を建物の外に配置することもできる。
【0038】
有利な実施形態において、各室内環境良質度パラメータを、或る熱区間に局所的に制限することができる。この場合、室内環境良質度パラメータ値は、この局所的に制限された熱区間内の空気の、それぞれの物理量の計測値とすることができる。室内環境パラメータ値は、1つ以上の適切なセンサを用いて得ることができる、及び/又は、BASに転送することができる。
【0039】
任意で、異なる熱区間について、それぞれの計測済み室内環境良質度パラメータ値から、環境良質度指数を計算することもできる。従って、好ましくは、1つの、多数の、又は全ての熱区間について、それぞれの環境良質度指数を使用することによっても、制御指数を計算してもよい。この場合、制御指数は、1つの、多数の、又は全ての熱区間の各々における全体的な空気の良質度の尺度を提供することができる。
【0040】
有利な実施形態において、本方法は、室内環境良質度パラメータのうちの1つと同じ種類である、即ち同じ物理的特性を計測する少なくとも1つの室外環境良質度パラメータ値を計測するステップを更に含むことができる。同じ種類というのは、同じ物理的特性のことである。従って、室外環境良質度パラメータは、計測可能な空気の物理的特性とすることができる。室外環境良質度パラメータ値は、対応する室外環境良質度パラメータの計測値とすることができる。室外環境良質度パラメータは、好ましくは、建物の外で、即ち室外環境において計測することができる。室内環境良質度パラメータは、建物内部で、即ち室内環境において計測することができる。
【0041】
室外環境として、有利には、室外環境良質度パラメータを計測することのできる熱区間を規定することができる。室内環境良質度パラメータを計測することのできる熱区間は、有利には、室内環境として規定することができる。従って、室外環境は、室内環境とは異なる熱区間とすることができる。好ましい実施形態において、室外環境良質度パラメータは建物の外で計測することができるのであり、室外環境というのも建物の外のことである。任意で、室外環境良質度パラメータは建物内部で計測することができるが、室内環境パラメータとは別の熱区間内にある。
【0042】
好ましくは、制御手順は、室外環境からの空気が特定の条件下で室内環境へと送られるようにBASを制御するステップを更に包含することができる。このことは省エネルギーに役立てることができる。
【0043】
好ましくは、室外環境から室内環境へと空気が送られるために満たされるべき少なくとも3つの条件がある。第一に、室内環境良質度パラメータのうちの少なくとも1つをその第1所定範囲内に保つために追加の換気が必要になることがある。追加の換気とは、好ましくは、それぞれの熱区間内で空気が入れ替わるべきであること、及び/又は、空気がそれぞれの熱区間の内外へ移動されるべきであることを意味する。
【0044】
第二に、室外環境パラメータの各々は、好ましくはそれぞれの所定範囲内の値を有する。これらの所定範囲は、好ましくは、これらの範囲内のパラメータを有する空気を室内環境へと送ることで室内環境における空気良質度は損なわれないように設定される。
【0045】
第3の要件とは、好ましくは、室外環境パラメータと同じ種類の室内環境良質度パラメータも、同じそれぞれの所定範囲内にあるべきであるということである。
【0046】
好ましくは、少なくとも2つの室内環境パラメータ、及び少なくとも1つの室外環境パラメータは、空気温度、相対湿度、総揮発性有機化合物、二酸化炭素、及び、例えば直径2.5マイクロメートル未満の粒子状物質PM2.5、又は直径10マイクロメートル未満の粒子状物質PM10としての粒子状物質を含む群から選択される。
【0047】
本発明の主題、及びその好適な実施形態を3つの図において図説する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本方法の第1実施形態の流れ図を示す。
図2】本方法の第2実施形態の流れ図を示す。
図3】本発明の主制御論理の概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、建物自動化システム、BASを制御するための、本発明の一実施例のブロック図を示す。BASは、暖房換気空調、HVAC、システムと、熱回収を伴う機械換気用ユニットと、加湿器と、空気清浄機と、フィルタ付きファンとを包含してもよい。
【0050】
本実施例には、熱区間内で計測される5つの室内環境良質度パラメータ、つまり、
熱区間内の空気の温度、
熱区間内の空気の相対湿度RH、
熱区間内の空気のCOレベル、
熱区間内の空気中に含有される粒子状物質PM2.5の量、及び
熱区間内の空気中の総揮発性有機化合物、TVOCの量
がある。
【0051】
室内環境良質度パラメータ値は、室内環境パラメータのそれぞれの物理的量を計測することにとって適切な少なくとも1つのセンサを用いて計測することができる。例えば、温度は温度センサを用いて計測することができ、相対湿度は湿度センサを用いて計測することができ、COレベルはCOセンサを用いて計測することができ、粒子状物質の量は適切な粒子センサを用いて計測することができ、総揮発性有機化合物の量は適切な総揮発性有機化合物センサを用いて計測することができる。
【0052】
ブロックEで表す最初のステップは、優先レベルのデフォルトオプションがユーザにより選択されたかどうかを点検する。図3のブロックCを参照のこと。次のステップでは、これが選択された場合には続いてブロックFが実行され、選択されていない場合にはブロックGが実行される。ブロックF及びブロックGは、計測済み室内環境良質度パラメータ値から制御指数を計算するための2つの異なる方法を表す。
【0053】
本方法はブロックFにおいて、ステップF1、F2、F3、及びF4を含む。ステップF1では、室内環境良質度パラメータごとに室内環境良質度パラメータ値が計測される。ステップF2では、各計測済み室内環境良質度パラメータ値から、無次元の室内環境良質度指数が計算される。室内環境良質度指数ごとに時系列を創成するために、これらのステップF1及びF2は特定の回数、反復される。次のステップF3では、各時系列から代表値が決定され、この代表値がそれぞれの室内環境良質度指数として渡される。本実施例において、室内環境良質度指数とは、(温度の室内環境パラメータである)Itemperature、(相対湿度の室内環境パラメータである)IRH、(COレベルの室内環境パラメータである)ICO2、(粒子状物質の量に関連する室内環境パラメータである)IPM2.5、及び、(総揮発性有機化合物の量に関連する室内環境パラメータである)ITVOCである。ステップF4では、全ての代表値の加重和、即ち平均値が計算され、この加重和が制御指数Icalculatedとして渡される。
【0054】
本方法はブロックGにおいて、ステップG1、G2、及びG3を含む。ステップG1では、室内環境良質度パラメータごとに室内環境良質度パラメータ値が計測される。ステップG2では、各計測済み室内環境良質度パラメータ値から、無次元の室内環境良質度指数が計算される。室内環境良質度指数とは、Itemperature、IRH、ICO2、IPM2.5、及びITVOCである。次のステップG3では、全ての室内環境良質度指数の加重和が計算され、この加重和が制御指数Icalculatedとして渡される。重みは、図3のブロックCにおいて、ユーザ嗜好から決定することができる。
【0055】
ブロックHで表す次のステップでは、ブロックF又はブロックGのいずれかにより計算された計算済み制御指数Icalculatedをユーザに示すことができる。その後、制御指数はブロックIに渡される。ブロックIは本方法の更なるステップを表す。このステップでは、制御指数Icalculatedが、所定の上側閾値指数Iselected-indoor qualityと比較される。
【0056】
続いて、制御指数が上側閾値指数Iselected-indoor qualityより大きい場合、ブロックUのステップが実行される。ブロックUでは、時間が選択済みスケジュール内にあるかどうかを点検するステップが遂行される。時間は、ユーザにより選択することができる。時間が選択済みスケジュール内にある場合、ブロックEのステップが再度実行される。時間が選択済みスケジュール内にない場合、ユーザ嗜好を得るためのステップA、B、C、Dが遂行される。図3にこれらのステップを示して以下で詳細に述べることにする。この意味での時間とは、最後のユーザ嗜好が得られてから経過した時間量のことである。
【0057】
制御指数が上側閾値指数より小さい場合、ブロックK、M、O、P、Q、及びSのステップを含む制御手順が連続的に実行される。これらのブロックの各々において、BASは、室内環境良質度指数のうちの1つがそれぞれの第1所定範囲内にあるように制御される。
【0058】
ブロックKは、温度に関連する室内環境良質度指数Itemperatureが、Ilowerlimit,range及びIupperlimit,rangeにより設定された範囲内にあるかどうかを点検するためのステップを遂行する。Itemperatureがこの範囲内にない場合、ブロックLで表すステップが実行される。このステップは、温度の事前規定済み第1設定点を満たすようにHVAC/機械暖房及び冷房システムを作動させるステップを含む。任意で、ブロックLのステップを遂行した後にブロックKを再度実行することができる。Itemperatureが事前規定済み範囲内にある場合、ブロックMで表すステップが実行される。
【0059】
ブロックMは、相対湿度に関連する室内環境良質度指数IRHが、IRH_lowerlimit,range及びIRH_upperlimit,rangeにより設定された範囲内にあるかどうかを点検するステップを遂行する。IRHがこの範囲内にない場合、ブロックNで表すステップが実行される。このステップは、相対湿度の事前規定済み第2設定点を満たすように加湿器を作動させるステップを含む。任意で、ブロックNのステップを遂行した後にブロックMが再度実行されてもよい。IRHが事前規定済み範囲内にある場合、ブロックOで表すステップが実行される。
【0060】
ブロックOは、COレベルに関連する室内環境良質度指数ICO2が、ICO2_lowerlimit,range及びICO2_upperlimit,rangeにより設定された範囲内にあるかどうかを点検するステップを遂行する。ICO2がこの範囲内にない場合、ブロックPで表すステップが実行される。このステップは、換気率を増加するステップを含む。ブロックPのステップを遂行した後にブロックOが再度実行されてもよい。ICO2が事前規定済み範囲内にある場合、ブロックQで表すステップが実行される。
【0061】
ブロックQは、粒子状物質のレベルに関連する室内環境良質度指数IPM2.5が、IPM2.5_lowerlimit,range及びIPM2.5_upperlimit,rangeにより設定された範囲内にあるかどうかを点検するステップを遂行する。IPM2.5がこの範囲内にない場合、ブロックRで表すステップが実行される。このステップは、空気清浄機、及び/又はフィルタ付きファンをオンに切り替えるステップを含む。任意で、ブロックRのステップを遂行した後にブロックQが再度実行されてもよい。IPM2.5が事前規定済み範囲内にある場合、ブロックSで表すステップが実行される。
【0062】
ブロックSは、総揮発性有機化合物の量に関連する室内環境良質度指数ITVOCが、ITVOC_lowerlimit,range及びITVOC_upperlimit,rangeにより設定された範囲内にあるかどうかを点検するステップを遂行する。ITVOCがこの範囲内にない場合、ブロックTで表すステップが実行される。このステップは、換気率を増加するステップと、空気清浄機、及び/又はフィルタ付きファンをオンに切り替えるステップとを含む。任意で、ブロックTのステップを遂行した後にブロックSを再度実行することができる。ITVOCが事前規定済み範囲内にある場合、ブロックUで表すステップが実行される。
【0063】
ブロックUにより遂行されるステップは上述したとおりである。
【0064】
図2は、建物自動化システム、BASを制御するための、本発明の第2実施形態のブロック図を示す。BASは、暖房換気空調、HVAC、システムと、熱回収を伴う機械換気、MVHR用ユニットと、加湿器と、空気清浄機と、フィルタ付きファンとを包含する。
【0065】
第2実施形態では、第1実施形態におけるものと同じ5つの室内環境良質度パラメータが、第1熱区間内で計測される。第1熱区間を室内環境として表す。室内環境良質度パラメータとは、
室内環境内部の空気の温度、
室内環境内部の空気の相対湿度RH、
室内環境内部の空気のCOレベル、
室内環境内部の空気中に含有される粒子状物質PM2.5の量、及び
室内環境内部の空気中の総揮発性有機化合物、TVOCの量
である。
【0066】
追加として、室内環境良質度パラメータのうちの1つと同じ種類である2つの室外環境良質度パラメータが、第2熱区間内で計測される。以下では、第2熱区間を室外環境として表す。室外環境パラメータとは、
室外環境における空気の温度、及び
室外環境における空気の相対湿度RH
である。
【0067】
第2実施形態において遂行されるステップは、2つのブロックP及びTにおけるステップ以外は全て、第1実施形態におけるものと同じである。第1実施形態のブロックPは第2実施形態ではブロックP1、P2、及びP3に置き換え、第1実施形態のブロックTは第2実施形態ではブロックT1、T2、T3に置き換える。
【0068】
ブロックP1において遂行されるステップは、ICO2がその所定範囲内にないことをブロックOが判定する場合に実行される。ブロックP1のステップは、それぞれの範囲が事前規定済みである室内環境値と室外環境値との間での幾つかの比較を包含する。温度の室外環境パラメータ値Toutdoorと温度の室内環境パラメータ値Tindoorとが両方とも所定の温度範囲内にあり、相対湿度の室外環境パラメータ値RHoutdoorが所定の相対湿度範囲内にある場合、ブロックP3のステップが遂行される。そうでない場合、ブロックP2のステップが遂行される。温度範囲は、上限Tcoolingsetpoint及び下限Theatingsetpointにより規定される。相対湿度範囲は、上限RHupper_limit_range及び下限RHlower_limit_rangeにより規定される。
【0069】
ブロックP2において遂行されるステップは、熱回収モードにおいて機械換気熱回収を作動させ、自然換気を回避するステップである。自然換気とは、室外環境からの空気を室内環境へと移動できるようにすることである。
【0070】
ブロックP3において遂行されるステップは、自然換気を利用する又はMVHRを迂回モードにおいて作動させるステップを包含する。
【0071】
ブロックT1において遂行されるステップは、ITVOCがそのそれぞれの所定範囲内にないことをブロックSが判定する場合に実行される。T1のステップは、P1において遂行されるステップと同じである。室内及び室外環境パラメータがそのそれぞれの範囲内にある場合、T3のステップが遂行される。そうでない場合、T2のステップが遂行される。
【0072】
T2は、熱回収モードにおいてMVHRのみを作動させ、自然換気を回避するステップを包含する。T3は、利用可能な場合に自然換気を作動させる又はMVHRのみを迂回モードにおいて作動させ、空気清浄機、及び/又はフィルタ付きファンをオンに切り替えるステップを包含する。
【0073】
図3は、BASのユーザにとって利用可能な、本発明の主制御論理を図説する概念図を示す。ブロックAでは、ユーザ/占有者が、望ましいスケジュールについての情報を与えることになる。望ましいスケジュールとは、ユーザがその嗜好を更新するように求められる時間周期のことである。このスケジュールは、ブロックUにおいて使用される。
【0074】
ブロックBでは、ユーザ/占有者は、その空間で達成したい室内良質度のレベルに関する自身の嗜好を与えることになる。この実施形態では、このレベルにより、ユーザは上側閾値指数Iselected-indoor qualityを規定することができ、この上側閾値指数は、ブロックIにおいて、BASが空気良質度を向上するための手段を講じているかどうかを決めるのに使用される。
【0075】
ブロックCでは、ユーザは、自身にとってどのパラメータがより重要であるかという嗜好を提供することができる。ユーザは、嗜好を設定せず優先レベルのデフォルトオプションを使用するように決めることもできる。このことは後に、ブロックEにおいて点検される。ブロックEはこの情報を基に、ブロックG又はブロックFのどちらが実行されるのかを決める。ユーザが嗜好を設定すれば、これらのユーザ嗜好から重みを推論することができ、この重みをブロックGにおいて、室内環境良質度指数の加重和としての制御指数を計算するのに使用することができる。デフォルトオプションが選択される場合は、ブロックFが実行されることになる。
【0076】
ユーザ嗜好は、室内環境良質度パラメータに対する優先度の設定を包含することができる。この場合、例えば、優先度が最高である室内環境良質度パラメータ用の重みを1に設定することができ、優先度が2番目に高い室内環境良質度パラメータの重みを1/2に設定することができ、優先度が3番目に高い重みを1/3に設定することができる。重みは全て、これらの重み全ての和が1に等しくなるような仕方でも設定することができる。
【0077】
5つの室内環境良質度パラメータに関する幾つかの実施形態において、優先度が最高である室内環境良質度パラメータの重みを0.44とすることができ、優先度が2番目に高い室内環境良質度パラメータの重みを0.22とすることができ、優先度が3番目の室内環境良質度パラメータの重みを0.14とすることができ、優先度が4番目の室内環境良質度パラメータの重みを0.11とすることができ、優先度が最低である室内環境良質度パラメータの重みを0.09とすることができる。
【0078】
最後に、ユーザ/占有者は、自身にとって室内空気良質度と省エネルギーのどちらが重要であるかについての情報を提供することになる。ユーザにとって室内空気良質度の方が重要である場合、上述した第1実施形態のステップが遂行されることになる。ユーザにとって省エネルギーの方が重要である場合、上述した第2実施形態のステップが遂行されることになる。
【0079】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0080】
(付記1)
建物自動化システム、BASの制御方法であって、
少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値を計測するステップと、
前記計測済み室内環境良質度パラメータ値について、前記それぞれの計測済み室内環境良質度パラメータ値から無次元の室内環境良質度指数を計算するステップと、
前記室内環境良質度指数の加重和として制御指数を計算するステップと、
所定の上側閾値指数を規定し、前記所定の上側閾値指数を前記制御指数が下回ると制御手順を開始するステップ、又は、
所定の下側閾値指数を規定し、前記所定の下側閾値指数を前記制御指数が上回ると前記制御手順を開始するステップであって、
前記制御手順は、少なくとも1つの、多数の、又は全ての室内環境良質度指数が各々それぞれの第1所定範囲内にあるように前記BASを制御するステップを包含する、ステップと
を含む方法。
(付記2)
付記1に記載の方法であって、前記BASが、暖房換気空調HVACシステムを包含する又は暖房換気空調システムである、方法。
(付記3)
付記1又は2に記載の方法であって、前記加重和の重みがユーザ嗜好から推論される、方法。
(付記4)
付記1~3のいずれか一つに記載の方法であって、少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値を計測する前記ステップが、
前記少なくとも2つの室内環境良質度パラメータ値の各々の時系列を或る時間周期にわたって取得するステップと、
前記良質度パラメータ値の各々の、前記時系列にわたる代表値を決定するステップと、
前記代表値を前記計測済み室内環境良質度パラメータとして設定するステップと
を含む方法。
(付記5)
付記1~4のいずれか一つに記載の方法であって、前記室内環境良質度指数が0~100の間にわたる、方法。
(付記6)
付記1~5のいずれか一つに記載の方法であって、室内環境良質度パラメータPの各計測済み室内環境良質度パラメータ値Aについて、前記それぞれの計測済み室内環境良質度パラメータ値Aから無次元の前記室内環境良質度指数Kを計算するステップが、
前記それぞれの室内環境パラメータPの値の可能な範囲を、隣接する良質度カテゴリに分割するステップと、
前記室内環境良質度指数KAPを、KAP=(A-BQP)/(CQP-BQP)*(DQP-EQP)+EQPになるように計算するステップであって、
ここに、CQPは前記良質度カテゴリQの上限であり、BQPは前記良質度カテゴリQの下限であり、
は、前記計測済み室内環境良質度パラメータ値Aが入る前記良質度カテゴリであり、
QPは前記良質度カテゴリQの前記指数の上限であり、
QPは前記良質度カテゴリQの前記指数の下限である、ステップと
を含む方法。
(付記7)
付記6に記載の方法であって、前記良質度カテゴリの前記指数の前記上限と前記指数の前記下限とが等しく離間する、及び/又は、1つの良質度カテゴリの前記指数の上限が、前記隣接する良質度カテゴリのうちの1つの前記指数の前記下限である、方法。
(付記8)
付記1~7のいずれか一つに記載の方法であって、
前記室内環境良質度指数の各々の時系列を或る時間周期にわたって取得するステップと、
前記良質度指数の各々の、前記時系列にわたる前記代表値の前記平均値として前記制御指数を計算するステップと
を更に含む方法。
(付記9)
付記1~8のいずれか一つに記載の方法であって、少なくとも1つの室内環境良質度パラメータについて、1つのカテゴリの上限が、前記隣接する高めの良質度カテゴリの前記下限である、及び/又は、1つのカテゴリの下限が、前記隣接する低めの良質度カテゴリの前記上限である、方法。
(付記10)
付記1~9のいずれか一つに記載の方法であって、前記室内環境良質度パラメータ値のうちの少なくとも1つが、単一のセンサの計測値である又は同じ種類の多数のセンサの計測値の平均である、方法。
(付記11)
付記1~10のいずれか一つに記載の方法であって、前記計測済み室内環境良質度パラメータ値のうちの1つを計測する少なくとも1つのセンサが、前記BASを制御するコントローラと無線で通信する、方法。
(付記12)
付記1~11のいずれか一つに記載の方法であって、
前記室内環境良質度パラメータのうちの1つと同じ種類である少なくとも1つの室外環境良質度パラメータ値を計測するステップを更に含み、
前記制御手順は、
追加の換気が必要になる場合、及び
前記室外環境パラメータの各々が、それぞれの所定範囲内の値を有する場合、及び
前記室外環境パラメータと前記同じ種類の前記室内環境良質度パラメータが、前記同じそれぞれの所定範囲内にある場合に、
室外環境からの空気が室内環境へと送られるように前記BASを制御するステップ
を更に包含する、方法。
(付記13)
付記11又は12に記載の方法であって、前記少なくとも2つの室内環境パラメータ、及び前記少なくとも1つの室外環境パラメータが、空気温度、相対湿度、総揮発性有機化合物、二酸化炭素、及び粒子状物質を含む群から選択される、方法。
図1
図2
図3
【外国語明細書】