IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大気社の特許一覧

<>
  • 特開-塗装装置 図1
  • 特開-塗装装置 図2
  • 特開-塗装装置 図3
  • 特開-塗装装置 図4
  • 特開-塗装装置 図5
  • 特開-塗装装置 図6
  • 特開-塗装装置 図7
  • 特開-塗装装置 図8
  • 特開-塗装装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028135
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 16/40 20180101AFI20240222BHJP
   B05B 16/60 20180101ALI20240222BHJP
   B05B 14/43 20180101ALI20240222BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20240222BHJP
【FI】
B05B16/40
B05B16/60
B05B14/43
B01D46/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113132
(22)【出願日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2022131240
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】関川 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】三輪 朋孝
【テーマコード(参考)】
4D058
4D073
【Fターム(参考)】
4D058JA04
4D058JA33
4D058JB48
4D058KB05
4D058KB11
4D058LA01
4D058LA07
4D058SA15
4D058SA20
4D073AA01
4D073BB03
4D073DC02
4D073DC19
4D073DD02
4D073DD25
(57)【要約】
【課題】従来技術に比べて塗料ミストの捕捉能力を低減することなく、塗装ブースの床面高さを低くすることができる塗装装置を提供する。
【解決手段】塗装作業が行われる上部槽10aと、上部槽の下方に配された下部槽10bと、を有する塗装ブース10と、下部槽10bから排出された空気から塗料ミストを捕捉するフィルタモジュール3と、下部槽10bから空気が流入する前室流入口、および、前室流入口の開口よりも高さが高い開口が設けられフィルタモジュール3へ空気を流出する前室流出口、を有する前室2と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装作業が行われる上部槽と、該上部槽の下方に配された下部槽と、を有する塗装ブースと、
前記下部槽の側方に配され当該下部槽から排出された空気から塗料ミストを捕捉するフィルタモジュールと、
前記下部槽と前記フィルタモジュールの間に配され、前記下部槽から空気が流入する前室流入口、および、前記前室流入口の開口よりも高さが高い開口が設けられ前記フィルタモジュールへ空気を流出する前室流出口、を有する前室と、を備えることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記前室流入口と前記前室流出口との間の距離が、前記前室流出口の開口の高さの20%以上である請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記前室流入口の上縁および下縁の少なくとも一つに、前記前室に流入する空気を上方に案内する案内部を有する請求項1または2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記フィルタモジュールが、前記前室に対して着脱自在に構成されている請求項1または2に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記下部槽と前記前室流入口とを接続するダクトをさらに備える請求項1に記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブースの下部槽の側方に接続されるフィルタユニットを備える塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体などの被塗装物を塗装する塗装ブースでは、被塗装物に付着しなかった塗料ミストを含む排気が発生する。そのため塗装ブースには、排気に含まれる塗料ミストを捕捉するためのフィルタが設けられる。
【0003】
ダンボール等の比較的安価な材料で形成されたフィルタエレメントが使い捨てで使用されている。特表2016-538118号公報(特許文献1)および特表2014-527462号公報(特許文献2)には、使い捨てのフィルタを塗装ブースの床下に設置する装置が開示されている。塗料ミストを含む排気が空気より重いことから、重力を利用して塗料ミストを床下に案内し、その床下において捕捉することが効果的だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016-538118号公報(または国際公開第2015/062976号)
【特許文献2】特表2014-527462号公報(または国際公開第2013/013780号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2は、塗装ブースの床下に、発生する塗料ミストを十分に捕捉しうる量のフィルタを設置するための高さを確保する必要があった。これに伴って被塗装物を床面高さ以上に持ち上げる必要が生じていた。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、従来技術に比べて塗料ミストの捕捉能力を低減することなく、塗装ブースの床面高さを低くすることができる塗装装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る塗装装置は、塗装作業が行われる上部槽と、該上部槽の下方に配された下部槽と、を有する塗装ブースと、前記下部槽の側方に配され当該下部槽から排出された空気から塗料ミストを捕捉するフィルタモジュールと、前記下部槽と前記フィルタモジュールとの間に配され、前記下部槽から空気が流入する前室流入口、および、前記前室流入口の開口よりも高さが高い開口が設けられ前記フィルタモジュールへ空気を流出する前室流出口、を有する前室と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、塗装ブースの下部槽からフィルタユニットに進入した空気が上下方向に拡散する空間として機能する前室を設けてあるので、フィルタユニットを下部槽の側方に設けながらも、十分な容量のフィルタを設置することができる。これによって、従来技術に比べて塗料ミストの捕捉能力を低減することなく、塗装ブースの床面高さを低くすることができる。
【0009】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る塗装装置を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るフィルタモジュール着脱時の動きを示す図である。
図3】第1の実施形態に係るフィルタモジュール着脱時の動きを示す図である。
図4】第1の実施形態に係るフィルタモジュール着脱時の動きを示す図である。
図5】第1の実施形態に係るフィルタユニットの使用状態を示す図である。
図6】第1の実施形態に係るフィルタユニットの部分拡大図である。
図7】第1の実施形態に係るフィルタモジュールの車輪の配置を示す上面透視図である。
図8】第2の実施形態に係るフィルタユニットの使用状態を示す図である。
図9】第2の実施形態に係るフィルタモジュールを取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る塗装装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る塗装装置を、塗装ブース10と、塗装ブース10に接続されるフィルタユニット1と、を備える塗装装置100に適用した例について説明する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
(塗装装置および塗装ブースの構成)
塗装装置100は、塗装ブース10、フィルタユニット1、流入ダクト4(ダクトの一例である。)、排出ダクト5、およびレール6、を備える。塗装ブース10は、グレーチング床12の上方に配され塗装装置11による塗装作業が行われる上部槽10aと、グレーチング床12の下方に配されフィルタユニット1に接続されている下部槽10bと、を有する(図1)。塗装ブース10内には、上方から下方へ向かう下降気流が形成されており、被塗装物に付着しなかった塗料を含む空気が上部槽10aから下部槽10bへ案内される。
【0013】
塗装ブース10は、いわゆる低床型の塗装ブースであり、従来の塗装ブースと比較して塗装ブース10が設置された面からグレーチング床12までの高さが低い。これにともなって、下部槽10bの高さが従来に比べて低くなっている。本実施形態では床面から下部槽10bの高さが1200mmである。下部槽10bの高さは設置場所等の事情を考慮して適宜設定されうる。なお、他の部位について記載している寸法にも同様に、実施形態の理解を助けるための例示に過ぎない。
【0014】
(フィルタユニットの構成)
本実施形態に係るフィルタユニット1は、前室2と、フィルタモジュール3と、を備える(図1)。図2図4は、フィルタユニット1のフィルタモジュール3を着脱する際の動きを示し、図5はフィルタユニット1の使用状態(フィルタモジュール3が装着された状態)を示している。
【0015】
塗装ブース10の下部槽10bから排出された空気は、流入ダクト4を経由して前室2に入り、その後フィルタモジュール3へ案内される。フィルタモジュール3において塗料が吸着されて清浄化された空気が、排出ダクト5を通って塗装装置100の外に排出される。後述するように、フィルタモジュール3は、複数のフィルタエレメント31および複数のバグフィルタ32を収容する箱状の部材である。
【0016】
本実施形態では、下部槽10bの高さが従来に比べて低い。ここで、フィルタモジュール3の高さを下部槽10bの高さと同等にすると、フィルタモジュール3内に設置されるフィルタエレメント31の数が従来に比べて減って、フィルタモジュール3のろ過能力が不足するおそれがある。そのためフィルタモジュール3(特にフィルタエレメント31の数)は、下部槽10bの高さと無関係に、必要なろ過能力に応じて設計される必要がある。下部槽10bと下部槽10bより高さが高いフィルタモジュール3とを接続する構成において、下部槽10bとフィルタモジュール3とを直接に接続するのではなく、下部槽10bとフィルタモジュール3との高さの違いを調整するための部位としてフィルタユニット1に前室2を設けてある。なお、前室2とフィルタモジュール3は一対一の関係で設けてもよいし、複数のフィルタモジュールと接続する共通の前室2を設けてもよい。後者の場合、前室2が図1の紙面奥行き方向に拡がりを有する。
【0017】
前室2は、下部槽10bから前室2へ空気が流入する前室流入口21と、前室2からフィルタモジュール3へ空気が流出する前室流出口22と、を有する。前室流入口21は、流入ダクト4に固定して接続されている。前室流出口22は、フィルタモジュール3と着脱自在に接続されている。前室流出口22には、前室流出口22を開閉する扉(不図示)が設けられている。
【0018】
本実施形態では、前室流入口21の開口の高さは下部槽10bの高さに対応して1000mmである。前室流出口22の開口の高さはフィルタモジュール3の高さに対応して2000mmである。すなわち、前室流入口21の開口の高さは、前室流出口22の開口の高さより低い。
【0019】
前室流入口21と前室流出口22との間の距離は800mmであり、前室流出口22の開口の高さの40%である。前室流入口21と前室流出口22との間の距離は、空気の進行方向における前室2の長さである。前室2が空気の進行方向においてある程度の長さがあるため、前室流入口21から前室2に流入した空気は、前室流出口22からフィルタモジュール3へ流出するまでの間に高さ方向において拡散する。これによって、高さ方向に複数設けられているフィルタエレメント31に対して空気を分配できる。前室流入口21の開口の高さに対して前室流出口22の開口の高さが高い構成において、前室流入口21と前室流出口22との間の距離を前室流出口22の開口の高さの20%以上の長さを確保することが好ましい。
【0020】
前室流入口21の開口の上縁23には、丸め加工が施されている。また、前室流入口21の開口の下縁24には、傾斜面が設けられている。これらの丸め加工および傾斜面は、いずれも、流入ダクト4から前室2に流入した空気を上方に案内する案内部としての役割を果たす。上縁23および下縁24が案内部として機能することで、前室2に流入した空気が高さ方向に拡散しやすい。
【0021】
フィルタモジュール3は、複数のフィルタエレメント31および複数のバグフィルタ32を収容する箱状の部材である(図5)。なお、フィルタエレメント31とバグフィルタ32との間に他のフィルタを設けてもよい。また、フィルタモジュール3は、前室2に接続され前室2から空気が入るフィルタ入口33と、排出ダクト5に接続されフィルタモジュール3から排出ダクト5へ空気を出すフィルタ出口34と、塗装ブース10が設置された面より一段低い床面を走行するための床面走行輪35と、レール6上を走行するためのレール走行輪36と、を有する。
【0022】
フィルタモジュール3は、前室2に対して着脱自在である。フィルタモジュール3を前室2に装着する操作はフィルタモジュール3を前室2の方向に走行させて行われる。このことを念頭に、以下の説明において前後方向に言及するときは、フィルタモジュール3を前室2に近づける方向(図1図5の右から左に向かう方向)を「前」と定義し、その逆を「後」と定義する。また、フィルタモジュール3が前室2に装着され、フィルタユニット1が使用可能な状態にあるときのフィルタモジュール3の位置を、「装着位置」と称する。
【0023】
フィルタエレメント31は、いわゆるダンボールフィルタであり、使い捨て使用が想定されている。本実施形態では、フィルタモジュール3のフィルタ入口33の側に、高さ方向においてフィルタエレメント31が四段に設置される。フィルタエレメント31を交換する際は、フィルタモジュール3を前室2から取り外した状態で、使用済のフィルタエレメント31を取り出し、新しいフィルタエレメント31を取り付ける。
【0024】
バグフィルタ32は、たとえばオレフィン系繊維製のフィルタである。バグフィルタ32も必要に応じて交換されるが、その交換頻度はフィルタエレメント31より低い。
【0025】
フィルタ入口33は、塗装ブース10から前室2を介してフィルタモジュール3に流入する空気の入口として機能する部位であり、フィルタモジュール3の前面に開口して設けられる。フィルタ入口33は、フィルタモジュール3が装着位置にあるときに、前室2の前室流出口22と位置合わせされる。前室2の前室流出口22とフィルタモジュール3のフィルタ入口33とを気密に接続するため、フィルタ入口33の縁にパッキン(不図示)が装着されている。
【0026】
フィルタ出口34は、フィルタモジュール3から排出ダクト5へ排出する空気の出口として機能する部位であり、フィルタモジュール3の上面に開口して設けられる。フィルタ出口34は、フィルタモジュール3が装着位置にあるときに、排出ダクト5と位置合わせされる。フィルタ出口34に設けられたフランジ341が、排出ダクト5に設けられたフランジ収容部51に収容されることにより、フィルタ出口34は排出ダクト5に位置合わせされる。フランジ収容部51は、たとえば、フランジ341の出入口となる第一の辺(図5右側)の他の三辺(図5紙面手前側の第二の辺、左側の第三の辺、および紙面奥側の第四の辺)に沿って配置されたCチャンネル材からなり、当該Cチャンネル材の溝部分にフランジ341を収容する。
【0027】
また、フィルタモジュール3が装着位置にあるときに、フランジ341を収容している状態のフランジ収容部51の、フランジ341の出入口となる第一の辺(図5右側)を封止する封止部材342が設けられている(図5図6)。封止部材342は、フィルタモジュール3の後面から上方に立設するように設けられている。フィルタモジュール3を装着位置まで押し込んだときに、フランジ収容部51の出入口部分に封止部材342が当接するようになっている。すなわち封止部材342は、フィルタ出口34と排出ダクト5との接続部分を封止する。封止部材342によってフランジ収容部51の出入口部分を封止することで、フィルタモジュール3の減圧度が低下しにくくなる。
【0028】
床面走行輪35は、塗装ブース10が設置された面より一段低い床面を走行するための車輪であり、前輪35aおよび後輪35bがそれぞれ二つずつ設けられている(図5図7)。レール走行輪36は、レール6上を走行するための車輪であり、前輪36aおよび後輪36bがそれぞれ二つずつ設けられている。レール走行輪36の前輪36aの下部であってレール6と接触するレール接触部361、レール走行輪36の後輪36bの下部であってレール6と接触するレール接触部362(図5)は、床面走行輪35の下部であって床面接触部351(図2)より高い位置にあり、レール接触部361、362と床面接触部351との高さの差が、床面を基準とするレール6の高さより大きい。
【0029】
床面走行輪35およびレール走行輪36の水平面に投影した配置は図7に示すとおりである。床面走行輪35の前輪35aは、フィルタモジュール3が装着位置にあるときにレール6の内側に位置する箇所に設けられている。床面走行輪35の後輪35bは、フィルタモジュール3の後端の左右の角に設けられている。レール走行輪36は、前輪36aおよび後輪36bが、2本のレール6の軌間に合わせた間隔で設けられている。また、前輪36aおよび後輪36bはフィルタモジュール3に対してフィルタモジュール3の進行方向前方(図7左側)に偏って配置されている。
【0030】
レール6は、前室流出口22を基端として前室流出口22から離れる方向に延びるように設けられている。レール6は、前室流出口22に近い基端側部分61と、前室流出口22から離れた遠端側部分62とを有する。基端側部分61の床面からの高さは、遠端側部分62の床面からの高さより高い。また、基端側部分61と遠端側部分62との間に第1の傾斜部分63が設けられている。遠端側部分62の端部と床面とを接続する第2の傾斜部分64が設けられている。なお、基端側部分61と遠端側部分62との高さの違いに対応して前輪36aのレール接触部と後輪36bのレール接触部との高さ位置が異なる。
【0031】
レール6の各部の働きを、フィルタモジュール3を装着する手順に沿って説明する。フィルタモジュール3を、フィルタユニット1から完全に離脱している第一の状態(図2)から前室2に向けて押すと、レール走行輪36の前輪36aが第1の傾斜部分63に当接するとともに、レール走行輪36の後輪36bが第2の傾斜部分64に当接した第二の状態(図3)になる。フィルタモジュール3をさらに押すと、前輪36aおよび後輪36bがそれぞれ第1の傾斜部分63、第2の傾斜部分64を登り、基端側部分61および遠端側部分62に載るとともに、フランジ341がフランジ収容部51の出入口に進入した第三の状態(図4)になる。第三の状態において、レール走行輪36がレール6に載ることで床面走行輪35は床面と離間する。なお、フィルタモジュール3の重心がフィルタエレメント31およびバグフィルタ32が設置されている進行方向前方側に存在し、当該重心の下方に前輪36aおよび後輪36bが配置されているので、フィルタモジュール3が安定した姿勢で傾斜部分63、64を登ることができる。
【0032】
さらにフィルタモジュール3を押すと、前輪36aおよび後輪36bがそれぞれ基端側部分61および遠端側部分62の上を走行する。前輪36aのレール接触部361と後輪36bのレール接触部362との高さ位置の差と、基端側部分61と遠端側部分62との高さの差と、が実質的に等しいため、フィルタモジュール3(特にフランジ341)の水平を保ったまま、フィルタモジュール3を押すことができる。これによって、フランジ341を正しい姿勢でフランジ収容部51に収容できる。
【0033】
また、左右双方のレール走行輪36が2本のレール6により案内されるので、前室2の前室流出口22に対してまっすぐにフィルタモジュール3を移動させることができる。これによって、前室2の前室流出口22とフィルタモジュール3のフィルタ入口33とを正対させることができ、前室流出口22とフィルタ入口33とが気密に接続された第四の状態(図5)が実現される。
【0034】
なお、フィルタモジュール3を取り外すときは上記の装着手順の逆の手順で行う。すなわち、第四の状態(図5)、第三の状態(図4)、第二の状態(図3)、第一の状態(図2)の順にフィルタモジュール3を移動させる。
【0035】
フィルタモジュール3の装着位置を画定する構造体として、枠体7が設けられている。本実施形態では、枠体7はフィルタモジュール3の装着位置を囲んで設けられた枠状の部材である。また、フィルタモジュール3と枠体7との相対位置を固定して、フィルタモジュール3を装着位置に固定するための部材として、係合対71(71a、71b)および規制部材72が設けられている。
【0036】
係合対71は、枠体7に取り付けられた係合片71aと、フィルタモジュール3の側面に取り付けられた係合片71bと、を有し、係合片71aに係合片71bを挿入して係合することによって、フィルタモジュール3と枠体7との相対位置が固定される。係合対71は、フィルタモジュール3および枠体7の左右にそれぞれ設けられている。係合対71は、たとえばドアキャッチである。
【0037】
規制部材72は、フィルタモジュール3に設けられたハンドルロックと、枠体7に取り付けられたロック受け部と、の組合せである。ハンドルロックとロック受け部とを係合させることで、装着位置にあるフィルタモジュール3が枠体7に固定される。規制部材72は、フィルタモジュール3の左右二箇所の後端部分、およびこれに対応する枠体7の左右に設けられている。
【0038】
また、レール6と枠体7とを接続する接続部材73が設けられている。レール6が接続部材73を介して枠体7に固定されているため、レール6が撓むことを防止できる。接続部材73は、フィルタモジュール3が装着位置に移動したときに後輪35bより前方(図7左側)に配置されているので、後輪35bと接触しない。また、前輪35aは二本のレール6の内側を走行するので、フィルタモジュール3を前室2に装着するときに接続部材73と接触しない。
【0039】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態に係る塗装装置100Aは、第1の実施形態のレール6に替えてレール6Aを備える(図8図9)。レール6Aは、前室2の前室流出口22を基端として当該前室流出口22から離れる方向に延びる主レール65と、主レール65の遠端に対して着脱自在の延長レール66と、を有する。主レール65は、上記の実施形態におけるレール6に対応する位置に設けられているが、全長にわたって高さが略一定である点で第1の実施形態のレール6と異なる。
【0040】
フィルタモジュール3を装着位置に固定して、フィルタユニット1を使用するときは、主レール65に延長レール66を装着せず、主レール65上にフィルタモジュール3を載置した第五の状態で使用する(図9)。一方、フィルタモジュール3を装着位置から取り外すとき、または装着位置に装着するときは、主レール65に延長レール66を装着し、主レール65および延長レール66上を走行させて、フィルタモジュール3を移動させる(図8)。
【0041】
本実施形態は、延長レール66を設けてフィルタモジュール3が装着位置にあるときの高さで略水平に走行する距離を確保することで、フランジ341を正しい姿勢でフランジ収容部51に収容できるようにしてある。なお、本実施形態は、フィルタモジュール3を床面に下ろすことを想定しておらず、フィルタモジュール3を延長レール66上に引き出した第六の状態(図8)でフィルタエレメント31の交換等を行う。延長レール66に替えて傾斜部分を有する延長レール(不図示)を設置して、フィルタモジュール3を床面に下ろす構成としてもよい。また、延長レール66に引き出したフィルタモジュール3を、延長レール66に載せたままハンドリフター等の運搬機器によって延長レール66ごと移動させることもできる。
【0042】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0043】
上記の実施形態では、塗装ブース10の下部槽10bと前室2(前室流入口21)とが流入ダクト4とを介して接続されている構成としたが、塗装ブースの下部槽と前室の前室流入口とが直結される構成であってもよい。
【0044】
上記の実施形態では、封止部材342を、フィルタモジュール3の後面から上方に立設させる構成としたが、封止部材342をフランジ収容部51に取り付ける構成であってもよい。この場合、封止部材342は、揺動や平行移動などによって、フランジ収容部51の、フランジ341の出入口となる一辺(図5右側)を開放状態と閉鎖状態とに変更することができる。
【0045】
上記の実施形態では、フィルタモジュール3が着脱自在である構成としたが、フィルタモジュール自体がフィルタユニットに固定されており、フィルタエレメントのみが交換可能な構成であってもよい。
【0046】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 :フィルタユニット
2 :前室
21 :前室流入口
22 :前室流出口
23 :上縁
24 :下縁
3 :フィルタモジュール
10 :塗装ブース
10b :下部槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9