(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028139
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】樹脂膜、樹脂膜の作成方法、表示装置、光学部材および偏光部材
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240222BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20240222BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240222BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240222BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B1/111
B32B7/023
B32B27/18 Z
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114734
(22)【出願日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2022130694
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】大山 毅
(72)【発明者】
【氏名】横手 恵紘
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ネウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ビョンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンギ
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA04
2H042BA12
2H042BA15
2H042BA20
2K009AA04
2K009AA05
2K009BB24
2K009CC09
2K009DD02
2K009EE00
4F100AA20A
4F100AA20B
4F100AA20H
4F100AA27C
4F100AA27H
4F100AJ06A
4F100AJ06H
4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK36A
4F100AK36H
4F100AK46A
4F100AK46H
4F100AK51A
4F100AK52A
4F100AK52H
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA04
4F100CA18A
4F100CA18B
4F100CC02A
4F100CC02B
4F100CC02C
4F100DD07A
4F100DE01A
4F100DE01C
4F100DE01H
4F100DE04B
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB41
4F100JB14A
4F100JB14B
4F100JB14C
4F100JN01
4F100JN06
4F100JN06B
4F100JN06C
4F100JN10E
4F100JN18B
4F100JN18C
4F100JN21
4F100JN26A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】防眩性と鮮鋭度との双方が良好な樹脂膜等を提供する。
【解決手段】樹脂膜は、アンチグレア層16と、低屈折率層17とを備える。低屈折率層17は、アンチグレア層16に積層される。また、低屈折率層17は、1.40以下の屈折率を有する。アンチグレア層16は、散乱粒子162と、バインダ161とを含む。散乱粒子162は、表面に凹凸163が形成されている。バインダ161は、散乱粒子162を分散する樹脂からなる。また、アンチグレア層16は、平坦部16aと、突出部16bとを含む。突出部16bは、平坦部16aから散乱粒子162が突出している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸が形成された散乱粒子と、当該散乱粒子を分散する樹脂からなるバインダとを含むアンチグレア層と、
前記アンチグレア層に積層され、1.40以下の屈折率を有する低屈折率層と
を備え、
前記アンチグレア層は、平坦部と、当該平坦部から前記散乱粒子が突出している突出部とを有する樹脂膜。
【請求項2】
前記アンチグレア層は、前記低屈折率層が積層される方向から見て、前記突出部の面積に対する前記平坦部の面積の比率(平坦部の面積/突出部の面積)が、2.0以上30以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項3】
前記散乱粒子は、平均粒子径が1μm以上10μm以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項4】
前記散乱粒子は、BET法で算出した比表面積が5m2/g以上である請求項3に記載の樹脂膜。
【請求項5】
前記散乱粒子は、粒径が20μm以上である粒子の割合が1質量%以下である請求項3に記載の樹脂膜。
【請求項6】
前記散乱粒子は、粒度分布の変動係数が30%以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項7】
前記散乱粒子は、平均粒子径が異なる複数の粒子を含む請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項8】
前記散乱粒子は、前記複数の粒子の平均粒子径の差が2.0μm以下である請求項7に記載の樹脂膜。
【請求項9】
前記アンチグレア層は、前記バインダの屈折率と前記散乱粒子の屈折率との差が0.15以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項10】
前記アンチグレア層は、前記バインダと前記散乱粒子との界面が相溶している請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項11】
前記アンチグレア層は、前記バインダの屈折率が1.50以上1.60以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項12】
前記アンチグレア層は、前記散乱粒子の屈折率が1.44以上1.60以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項13】
前記散乱粒子は、シリカ粒子、PMMA粒子、メラミン粒子、酢酸セルロース粒子のうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項14】
前記散乱粒子は、シリコーン粒子を含む請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項15】
前記アンチグレア層は、さらに平均粒子径が100nm以下のナノ粒子を含む請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項16】
前記アンチグレア層は、さらに前記バインダから突出しない粒子を含む請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項17】
前記低屈折率層は、屈折率が1.34以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項18】
前記低屈折率層は、中空粒子と、当該中空粒子を分散する樹脂とを含む請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項19】
前記低屈折率層の平均膜厚が80nm以上120nm以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項20】
前記アンチグレア層と前記低屈折率層との間に、1.60以上の屈折率を有する高屈折率層をさらに備える請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項21】
外部ヘイズ値が20%以上である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項22】
内部ヘイズ値が15%以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項23】
前記低屈折率層側から入射角60°で測定したグロス値が10以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項24】
前記低屈折率層側から入射角85°で測定したグロス値が50以下である請求項1に記載の樹脂膜。
【請求項25】
平坦部と、当該平坦部から突出した突出部とを有するアンチグレア層と、
前記アンチグレア層に積層され、1.40以下の屈折率を有する低屈折率層とを備え、
前記アンチグレア層は、前記低屈折率層が積層される方向から見て、前記突出部の面積に対する前記平坦部の面積の比率(平坦部の面積/突出部の面積)が、2.0以上30以下であり、且つ、当該突出部における表面粗さが、当該平坦部における表面粗さより大きい樹脂膜。
【請求項26】
表面に凹凸が形成された散乱粒子と、当該散乱粒子を分散する樹脂からなるバインダとを用いて、平坦部と、当該平坦部から前記散乱粒子が突出している突出部とを有するアンチグレア層を作成するアンチグレア層作成工程と、
前記アンチグレア層上に、1.40以下の屈折率を有する低屈折率層を作成する低屈折率層作成工程と
を含む樹脂膜の作成方法。
【請求項27】
前記低屈折率層作成工程は、前記低屈折率層をウェットコーティング法により製膜する請求項26に記載の樹脂膜の作成方法。
【請求項28】
画像の表示を行う表示手段と、
前記表示手段の表面に設けられ、請求項1乃至25のいずれか1項に記載の樹脂膜と
を有する表示装置。
【請求項29】
基材と、
前記基材上に設けられ、請求項1乃至25のいずれか1項に記載の樹脂膜と
を有する光学部材。
【請求項30】
前記基材は、可視光波長領域における内部ヘイズ値の最大値が0.5%以下である請求項29に記載の光学部材。
【請求項31】
光を偏光させる偏光手段と、
前記偏光手段上に設けられ、請求項1乃至25のいずれか1項に記載の樹脂膜と
を有する偏光部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂膜等に関する。より詳しくは、表示装置の表示手段の表面に設ける樹脂膜等に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)等の表示装置が知られている。また、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD:Electroluminescence Display)、フィールドエミッションディスプレイ(FED:Field Emission Display)等の表示装置が知られている。これらの表示装置では、画像表示面に反射防止部材を設けることで、画像の視認性を高めている。
反射防止部材としては、凹凸形状を有するアンチグレア層上に、低屈折率層等の反射防止層を積層したものが存在する。
【0003】
特許文献1には、基材上に、防眩層及び低屈折率層を有する防眩性反射防止部材が開示されている。この防眩性反射防止部材では、防眩層が、バインダー樹脂および粒子を有し、凹凸形状を備えた層である。また、この防眩性反射部材では、低屈折率層が、防眩層の凸部上の膜厚が薄い一方で、平坦部上の膜厚が厚い。そして、低屈折率層の膜厚さをΔdと定義した際に、Δdの値が7.0nm以上40.0nm以下の範囲となっている。
【0004】
特許文献2には、防眩層の上に積層された低屈折率層(反射防止層)を有する光学積層体が開示されている。この光学積層体では、低波長領域の反射率を抑制するために、防眩層表面および低屈折率層表面のスキューネスRskを0未満とし、防眩層および低屈折率層の表面形状を、谷が多く、かつ細長く急峻な谷を有する表面形状(細長く急峻な山が少ない形状)としている。
【0005】
特許文献3には、基材の表層に、凹凸構造を有し、防眩機能を有するアンチグレア層と、反射防止層とが積層された防眩・反射防止部材が開示されている。この防眩・反射防止部材では、アンチグレア層上にスパッタリング法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された多層膜からなる反射防止層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2021/182424号
【特許文献2】特開2022-15702号公報
【特許文献3】特開2018-97379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アンチグレア層および低屈折率層を備える樹脂膜による防眩性を高め、表示手段に対する外部光等の映り込みを抑制するためには、アンチグレア層表面の凹凸を大きくすることが好ましい。その一方で、アンチグレア層表面の凹凸が大きい場合、アンチグレア層上に積層される低屈折率層の塗工性が低下し、均一な厚さを有する低屈折率層を得ることが難しくなる場合がある。この場合、表示手段に表示される画像が白くぼけた状態となって鮮鋭度が低下する場合がある。
本発明は、防眩性と鮮鋭度との双方が良好な樹脂膜等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂膜は、アンチグレア層と、低屈折率層とを備える。低屈折率層は、アンチグレア層に積層される。また、低屈折率層は、1.40以下の屈折率を有する。アンチグレア層は、散乱粒子と、バインダとを含む。散乱粒子は、表面に凹凸が形成されている。バインダは、散乱粒子を分散する樹脂からなる。また、アンチグレア層は、平坦部と、突出部とを含む。突出部は、平坦部から散乱粒子が突出している。
【0009】
ここで、アンチグレア層は、低屈折率層が積層される方向から見て、突出部の面積に対する平坦部の面積の比率(平坦部の面積/突出部の面積)が、2.0以上30以下であるようにすることができる。
また、散乱粒子は、平均粒子径が1μm以上10μm以下であるようにすることができる。
また、散乱粒子は、BET法で算出した比表面積が5m2/g以上であるようにすることができる。
また、散乱粒子は、粒径が20μm以上である粒子の割合が1質量%以下であるようにすることができる。
また、散乱粒子は、粒度分布の変動係数が30%以下であるようにすることができる。
また、散乱粒子は、平均粒子径が異なる複数の粒子を含むようにすることができる。
また、散乱粒子は、複数の粒子の平均粒子径の差が2.0μm以下であるようにすることができる。
また、アンチグレア層は、バインダの屈折率と散乱粒子の屈折率との差が0.15以下であるようにすることができる。
また、アンチグレア層は、バインダと散乱粒子との界面が相溶するようにすることができる。
また、アンチグレア層は、バインダの屈折率が1.50以上1.60以下であるようにすることができる。
また、アンチグレア層は、散乱粒子の屈折率が1.44以上1.60以下であるようにすることができる。
また、散乱粒子は、シリカ粒子、PMMA粒子、メラミン粒子、酢酸セルロース粒子のうちの少なくとも1つを含むようにすることができる。
また、散乱粒子は、シリコーン粒子を含むようにすることができる。
また、アンチグレア層は、さらに平均粒子径が100nm以下のナノ粒子を含むようにすることができる。
また、アンチグレア層は、さらに前記バインダから突出しない粒子を含むようにすることができる。
また、低屈折率層は、屈折率が1.34以下であるようにすることができる。
また、低屈折率層は、中空粒子と、樹脂とを含む。樹脂は、中空粒子を分散する。
また、低屈折率層の平均膜厚が80nm以上120nm以下であるようにすることができる。
また、アンチグレア層と低屈折率層との間に、高屈折率層をさらに備えるようにすることができる。高屈折率層は、1.60以上の屈折率を有する。
また、外部ヘイズ値が20%以上であるようにすることができる。
また、内部ヘイズ値が15%以下であるようにすることができる。
また、低屈折率層側から入射角60°で測定したグロス値が10以下であるようにすることができる。
また、低屈折率層側から入射角85°で測定したグロス値が50以下であるようにすることができる。
【0010】
また、本発明の樹脂膜は、アンチグレア層と、低屈折率層とを備える。低屈折率層は、アンチグレア層に積層される。また、低屈折率層は、1.40以下の屈折率を有する。アンチグレア層は、平坦部と、平坦部から突出した突出部とを有する。また、アンチグレア層は、低屈折率層が積層される方向から見て、突出部の面積に対する平坦部の面積の比率(平坦部の面積/突出部の面積)が、2.0以上30以下である。さらに、アンチグレア層は、突出部における表面粗さが平坦部における表面粗さより大きい。
【0011】
また、本発明の樹脂膜の作成方法は、アンチグレア層作成工程と、低屈折率層作成工程とを含む。アンチグレア層作成工程は、散乱粒子と、バインダとを用いて、平坦部と、突出部とを有するアンチグレア層を作成する。散乱粒子は、表面に凹凸が形成されている。バインダは、散乱粒子を分散する樹脂からなる。突出部は、平坦部から散乱粒子が突出している。低屈折率層作成工程は、1.40以下の屈折率を有する低屈折率層を作成する。
ここで、低屈折率層作成工程は、低屈折率層をウェットコーティング法により製膜することができる。
【0012】
また、本発明の表示装置は、画像の表示を行う表示手段と、表示手段の表面に設けられる上記樹脂膜とを備える。
また、本発明の光学部材は、基材と、基材上に設けられる上記樹脂膜とを備える。
ここで、基材は、可視光波長領域における内部ヘイズ値の最大値が0.5%以下であるようにすることができる。
また、本発明の偏光部材は、光を偏光させる偏光手段と、偏光手段上に設けられる上記樹脂膜とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防眩性と鮮鋭度との双方が良好な樹脂膜等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、本実施の形態が適用される表示装置について説明した図である。(b)は、
図1(a)のIb―Ib断面図であり、本実施の形態が適用される液晶パネルの構成の一例を示したものである。
【
図2】反射防止フィルムについて示した図であり、反射防止フィルムを各層の積層方向に沿って切断した断面図である。
【
図3】反射防止フィルムにおけるアンチグレア層の拡大図である。
【
図4】(a)~(b)は、反射防止フィルムの変形例について示した図である。
【
図5】(a)~(b)は、異方拡散層の他の形態を説明する図である。
【
図6】反射防止フィルムの他の変形例について示した図である。
【
図7】(a)~(b)は、本実施の形態が適用される偏光板の構成例について示した図である。
【
図8】(a)は、反射防止フィルムの作成方法の一例を示したフローチャートであり、(b)は、反射防止フィルムにおけるアンチグレア層および低屈折率層の作成方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定するものではない。またその要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。さらに使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0016】
<表示装置1の説明>
図1(a)は、本実施の形態が適用される表示装置1について説明した図である。
図示する表示装置1は、例えばPC(Personal Computer)用の液晶ディスプレイ、あるいは液晶テレビなどである。表示装置1は、液晶パネル1aに画像を表示する。
【0017】
<液晶パネル1aの説明>
図1(b)は、
図1(a)のIb―Ib断面図であり、本実施の形態が適用される液晶パネル1aの構成の一例を示したものである。
液晶パネル1aは、画像の表示を行う表示手段の一例である。本実施の形態の液晶パネル1aは、例えば、VA型液晶パネルである。図示する液晶パネル1aは、バックライトユニット11と、偏光フィルム12aとを有する。また、液晶パネル1aは、位相差フィルム13aと、液晶14と、位相差フィルム13bと、偏光フィルム12bとを有する。さらに、液晶パネル1aは、反射防止フィルム10を有する。そして、これらは、この順で、液晶パネル1aの内部側から表面側に向けて積層する構造となっている。なお、以下では、偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとを区別しない場合には、単に偏光フィルム12と表記することがある。同様に、位相差フィルム13aと位相差フィルム13bとを区別しない場合には、単に位相差フィルム13と表記することがある。
また、詳細については、後述するが、反射防止フィルム10は、基材15と、アンチグレア層16と、低屈折率層17とが、この順で、液晶パネル1aの内部側から表面側に向けて積層する構造となっている。本実施形態では、反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16と低屈折率層17との積層体が、樹脂膜の一例である。また、アンチグレア層16および低屈折率層17に加えて基材15を含む反射防止フィルム10も、樹脂膜の一例である。
【0018】
バックライトユニット11は、液晶14に対し光を照射する。バックライトユニット11は、例えば、冷陰極蛍光ランプや白色LED(Light Emitting Diode)、青色LED等の光源を有する。また、バックライトユニット11は、光の均一性を制御する拡散シートやプリズムシート、色を制御する量子ドット色変換シート等を有していてもよい。
偏光フィルム12aおよび偏光フィルム12bは、光を偏光させる偏光手段の一例である。偏光フィルム12aと偏光フィルム12bとは、偏光方向が互いに直交するようになっている。偏光フィルム12aおよび偏光フィルム12bは、例えば、ポリビニルアルコール(PVA:poly-vinyl alcohol)にヨウ素化合物分子を含ませた樹脂フィルムを備える。そしてこれをトリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)からなる樹脂フィルムで挟み接着したものである。ヨウ素化合物分子を含ませることで光が偏光する。
【0019】
位相差フィルム13a、13bは、液晶パネル1aの視野角依存性を補償する。液晶14を透過した光は、直線偏光から楕円偏光に偏光状態が変化する。例えば、黒表示させた場合、液晶パネル1aを鉛直方向から見たときは、黒色に見える。一方、液晶パネル1aを斜め方向から見たときは、液晶14のリタデーションが発生する。また、偏光フィルム12の軸が90°ではなくなる。そのため、光抜けが生じて、コントラストが低下するという問題が生じる。即ち、液晶パネル1aに視野角依存性が生じる。位相差フィルム13a、13bは、この楕円偏光を直線偏光に戻す機能を有する。これにより、位相差フィルム13a、13bは、液晶パネル1aの視野角依存性を補償することができる。
【0020】
液晶14には、図示しない電源が接続され、この電源により電圧を印加すると液晶14の配列方向が変化する。そして液晶14は、これにより、光の透過状態を制御する。
VA型液晶パネルの場合、液晶14に電圧を印加していないとき(電圧OFF)は、液晶分子が、図中垂直方向に配列する。そして、バックライトユニット11から光を照射すると、まず、偏光フィルム12aを光が通過して偏光となる。そして、偏光は、液晶14をそのまま通過する。さらに、偏光フィルム12bは、偏光方向が異なるため、この偏光を遮断する。この場合、液晶パネル1aを見るユーザは、この光を視認できない。即ち、液晶14に電圧を印加しない状態では、液晶の色は、「黒」となる。
【0021】
対して、液晶14に最大電圧を印加しているときは、液晶分子が、図中水平方向に配列する。そして、偏光フィルム12aを通過した偏光は、液晶14の作用により偏光の方向が90°回転する。そのため、偏光フィルム12bは、この偏光を遮断せず、透過させる。この場合、液晶パネル1aを見るユーザは、この光を視認できる。即ち、液晶14に最大電圧を印加している状態では、液晶の色は、「白」となる。また、電圧は、電圧OFFと最大電圧の間とすることもできる。この場合、液晶14は、図中上下方向と図中上下方向に対する垂直方向との間の状態となる。即ち、液晶14は、上下方向および垂直方向の双方に交差する方向である斜め方向に配列する。この状態では、液晶の色は、「グレー」となる。よって、液晶14に印加する電圧をOFFから最大電圧の間で調整することで、黒、白の他に、中間階調が表現できる。そして、液晶パネル1aは、これにより画像を表示する。
なお、図示はしていないが、カラーフィルタを使用することでカラー画像を表示することもできる。
【0022】
<反射防止フィルム10の説明>
続いて、反射防止フィルム10を構成する各層について説明する。
図2は、反射防止フィルム10について示した図であり、反射防止フィルム10を各層の積層方向に沿って切断した断面図である。
図3は、反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の拡大図である。
反射防止フィルム10は、上述したように、液晶パネル1a(
図1参照)の偏光フィルム12b(
図1参照)上に設けられる。反射防止フィルム10は、基材15と、基材15上に積層されるアンチグレア層16と、アンチグレア層16上に積層される低屈折率層17とを備える。
【0023】
<基材15の説明>
基材15は、アンチグレア層16および低屈折率層17を形成するための支持体である。基材15は、光の透過率が高い材料であることが好ましく、全光線透過率が85%以上である透明基材であることが好ましい。基材15としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)が用いられる。また、基材15としては、これらに限られるものではなく、ポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:polymethyl methacrylate)、シクロオレフィンポリマー(COP:cycloolefin polymer)等を使用することもできる。さらにまた、基材15としてPETを用いる場合、大きな複屈折率を有するようにPETを延伸したフィルムである超複屈折率フィルム(SRF:super reflection film)を使用してもよい。ただし、本実施の形態では、偏光フィルム12bに貼り合わせた際の着色むらやモアレの発生を抑制する観点から、基材15としては、TACやPETからなるフィルムをより好適に使用することができる。基材15は、例えば、20μm以上200μm以下の厚さを有する。また、アンチグレア層16との密着性を確保するため、基材15の表面には易接着層が形成されていてもよい。基材15の表面に易接着層が形成されている場合、易接着層の屈折率は、アンチグレア層16の後述するバインダ161の屈折率との差が小さいことが好ましい。
【0024】
また、基材15は、可視光領域(波長380nm以上780nm以下の範囲)における内部ヘイズ値の上限値が、0.8%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがより好ましい。また、基材15の視光領域における内部ヘイズ値の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.05%以上であることが好ましい。基材15の可視光領域における内部ヘイズ値が高い場合、反射防止フィルム10の拡散反射成分(SCE)が上昇し、反射防止フィルム10のSCI(Specular Component Include)や反射色度(a*/b*)が悪化するおそれがある。この傾向は、アンチグレア層16に散乱性の高い粒子(後述する散乱粒子162)を用いた場合に、特に顕著となる。なお、反射防止フィルム10のSCEとは、反射防止フィルム10の正反射成分を除いた反射率である。
基材15の内部ヘイズ値は、例えば、基材15の屈折率に近い液体を介して基材15をガラスに挟んだ状態で、ヘイズを測定することにより得ることができる。また、基材15の内部ヘイズ値の波長依存性は、分光ヘイズメーター(例えば、日本電色工業社製SH7000)を用いて測定することができる。
【0025】
<アンチグレア層16の説明>
アンチグレア層16は、外部からの光を散乱させ、液晶パネル1aへの光の映り込みを抑制して、反射防止フィルム10の防眩性を高めるための層である。
本実施形態のアンチグレア層16は、バインダ161と、散乱粒子162とを含む。詳細については後述するが、アンチグレア層16は、例えば、バインダ161と散乱粒子162とを含む塗布溶液から形成することが可能である。また、アンチグレア層16は、バインダ161および散乱粒子162の他に、重合開始剤、連鎖移動剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、紫外線吸収剤、増粘剤、酸化防止剤、難燃剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
本実施形態のアンチグレア層16は、
図2および
図3に示すように、主にバインダ161からなり平坦な表面形状を有する平坦部16aと、平坦部16aの表面から散乱粒子162の一部が突出することで形成された突出部16bとを有している。なお、突出部16bは、平坦部16aの表面から、図中上方、すなわち液晶パネル1aの表面側に突出している。
【0026】
バインダ161は、散乱粒子を分散する樹脂を含む。バインダ161を構成する樹脂としては、硬化性樹脂を用いることができる。硬化性樹脂の中でも、アンチグレア層16の機械的強度を高める観点および良好な光特性を得る観点から、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。
光硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの光硬化性樹脂として、より具体的には、1または複数の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。複数の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、複数の不飽和結合を有するオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
また、バインダ161の樹脂としては、後述する低屈折率層17のバインダ171として例示する樹脂と同様のものを用いてもよい。
【0027】
バインダ161の屈折率は、1.50以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましい。また、バインダ161の屈折率は、1.60以下であることが好ましい。
なお、詳細については後述するが、バインダ161の屈折率は、散乱粒子162の屈折率との差が小さいことが好ましい。
【0028】
散乱粒子162は、
図3に示すように、主にバインダ161によって構成される平坦部16aから突出した状態で存在する。この突出形状により、外部からの光が散乱される。さらに散乱粒子162は、表面に凹凸163が形成されている。散乱粒子162の表面に形成された凹凸163により、外部からの光がより散乱されやすくなる。
散乱粒子162の平均粒子径は、アンチグレア層16において、バインダ161により形成される平坦部16aの表面から散乱粒子162の一部が突出して突出部16bが形成される範囲に設定される。したがって、散乱粒子162の平均粒子径は、バインダ161に対する散乱粒子162の配合量、平坦部16aの厚さ等によっても異なるが、例えば、1μm以上10μm以下とすることができる。散乱粒子162の平均粒子径が1μm未満である場合、平坦部16aの表面から散乱粒子162が突出しにくくなり、突出部16bにより光を散乱させることによる映り込みを抑制する効果が不十分となりやすい。一方、散乱粒子162の平均粒子径が10μmを超える場合、アンチグレア層16における突出部16bの面積が大きくなって、アンチグレア層16に対する低屈折率層17の塗工性が低下するおそれがある。
また、散乱粒子162は、粗大粒子を含まないほうが好ましい。具体的には、散乱粒子162は、粒径20μm以上の粒子が1質量%以下であることが好ましく、粒径16μm以上の粒子が0.5質量%以下であることがより好ましく、粒径12μm以上の粒子が0.2質量%以下であることがさらに好ましい。散乱粒子162が粗大粒子を多く含むと、アンチグレア層16に対する低屈折率層17の塗工性が低下し、低屈折率層17に粗大粒子を中心とした斑点状の外観不良が発生しやすくなる。散乱粒子162の粒度分布は、コールターカウンター等を用いて測定することができる。
【0029】
また、散乱粒子162は、粒度分布が狭いほうが好ましい。具体的には、散乱粒子162の粒度分布を測定した際の変動係数(CV値)が35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。変動係数の下限については特に限定されないが、例えば、5%以上であることが好ましい。散乱粒子162の粒度分布の変動係数が35%を上回ると、散乱粒子162を含むアンチグレア層16表面の凹凸が不均一となる。この場合、アンチグレア層16に対する低屈折率層17の塗工性が低下し、低屈折率層17を塗工した際に斑点状の塗工不良が発生しやすくなる。また、散乱粒子162の粒度分布の変動係数が35%を上回ると、反射防止フィルム10の表面の耐摩耗性が低下しやすい。
【0030】
さらに、アンチグレア層16は、平均粒子径の異なる2種類以上の散乱粒子162を含んでもよい。また、アンチグレア層16は、散乱粒子162に加えて、散乱粒子162とは平均粒子径が異なり、表面に凹凸163が形成されていない他の粒子を含んでもよい。
アンチグレア層16が平均粒子径の異なる2種類以上の粒子を含む場合、これらの平均粒子径の差は、3.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.5μm以下がさらに好ましい。また、アンチグレア層16が平均粒子径の異なる2種類以上の粒子を含む場合、これらの平均粒子径の差は、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。平均粒子径の差を上記の範囲内とすることで、反射防止フィルム10のSCIの悪化を招くことなく、防眩性を向上させることができる。また、反射防止フィルム10の反射色度を低減させることができる。
【0031】
なお、本実施形態の説明において、平均粒子径は、個数平均一次粒子径を意味する。散乱粒子162の平均一次粒子径は、散乱粒子162を分散させた粒子分散液の乾燥膜のSEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)およびSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)を用いた観察像により測定することが可能である。なお、散乱粒子162は表面に凹凸163を有するため、平均一次粒子径は、上記の観察像において、散乱粒子162の表面の凹凸163のうちの凸部を散乱粒子162の外周面と近似して測定する。
【0032】
散乱粒子162の表面に形成される凹凸163の表面粗さ、すなわち、アンチグレア層16の突出部16bにおける表面粗さは、アンチグレア層16の平坦部16aにおける表面粗さよりも大きい。
また、平坦部16aの表面粗さ(Ra)は、平坦部16aに対する低屈折率層17の塗工性を向上させる観点から、小さいほど好ましい。
平坦部16aおよび突出部16bにおける表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて測定することができる。
【0033】
散乱粒子162の表面に形成される凹凸163は、散乱粒子162の比表面積によって規定することができる。散乱粒子162の表面に形成される凹凸163の形状が複雑で凹凸163による光の散乱性が大きいほど、散乱粒子162の比表面積が大きくなる。本実施形態では、散乱粒子162の比表面積は、5m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、80m2/g以上がさらに好ましい。また、散乱粒子162の比表面積の上限値は特に定めるものではないが、500m2/g以下を例示することができる。比表面積が5m2/g未満の散乱粒子162を用いた場合、反射防止フィルム10の防眩性を確保するために、アンチグレア層16に散乱粒子162を多量に配合する必要がある。この場合、アンチグレア層16における突出部16bの面積が大きくなって、アンチグレア層16に対する低屈折率層17の塗工性が低下するおそれがある。散乱粒子162の比表面積は、例えば、粒子への気体分子の吸着量から粒子の比表面積を測定するBET法により算出することができる。
【0034】
散乱粒子162の配合量は、散乱粒子162の平均粒子径等によっても異なるが、アンチグレア層16の固形分に対して、2質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。散乱粒子162の配合量が2質量%未満である場合、突出した散乱粒子162の密度が低下し、突出部16bの面積が小さくなる。この場合、アンチグレア層16において、突出部16bにより光を散乱させることによる映り込みを抑制する効果が不十分となりやすい。一方、散乱粒子162の配合量が40質量%を超える場合、アンチグレア層16における突出部16bの面積が大きくなって、アンチグレア層16に対する低屈折率層17の塗工性が低下するおそれがある。
ここで、反射防止フィルム10を表示装置1に用いる場合、アンチグレア層16に含まれる散乱粒子162は、表示装置1に表示される画像のコントラストの低下を招く場合がある。表示装置1において画像の高コントラストが要求される場合には、アンチグレア層16における散乱粒子162の配合量は、上述した範囲よりもさらに少ないほうが好ましい。具体的には、散乱粒子162の配合量は、アンチグレア層16の固形分に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
散乱粒子162としては、無機粒子を用いてもよく、有機粒子を用いてもよい。散乱粒子162としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、PMMA粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子、メラミン粒子、ナイロン粒子、酢酸セルロース粒子、シリコーン粒子、PTFE粒子などが挙げられる。このうち、屈折率および機械強度の観点から、シリカ粒子、PMMA粒子、メラミン粒子、酢酸セルロース粒子、シリコーン粒子のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、散乱粒子162の形状は、特に限定されず、例えば、球状、楕円体状、針状、不定形状等が挙げられるが、球状であることが好ましい。散乱粒子162が球状である場合、散乱粒子162がバインダ161に均一に分散されやすくなり、アンチグレア層16において突出部16bが偏在しにくくなる。
【0036】
散乱粒子162の屈折率は、1.44以上であることが好ましい。また、散乱粒子162の屈折率は、1.60以下であることが好ましい。
また、アンチグレア層16では、バインダ161の屈折率と散乱粒子162の屈折率との差が小さいことが好ましい。具体的には、バインダ161の屈折率と散乱粒子162の屈折率との差が0.15以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましい。バインダ161の屈折率と散乱粒子162の屈折率との差が小さいことで、バインダ161と散乱粒子162との界面での光の散乱を低減できる。これにより、アンチグレア層16の内部ヘイズ値の上昇を抑制することができ、反射防止フィルム10にした際のSCI(Specular Component Include)を小さくしやすくなる。
【0037】
また、同様の観点から、アンチグレア層16は、バインダ161と散乱粒子162との界面(
図3にて符号Xで示す部分)が相溶していることが好ましい。これにより、バインダ161と散乱粒子162との界面での屈折率が連続して変化し、界面での後方散乱を低減することができる。そして、内部ヘイズをさらに小さくしやすくなる。
相溶している部分では、散乱粒子162の表面に形成された凹凸163が小さくなるものの、バインダ161の表面から突出した散乱粒子162の凹凸163は維持される。したがって、アンチグレア層16では、バインダ161と散乱粒子162との界面が相溶している場合であっても、散乱粒子162の凹凸163により光を散乱させる作用は維持される。
バインダ161と散乱粒子162との界面を相溶させる方法としては、相溶化剤を配合する方法が挙げられる。また、詳しくは後述するが、アンチグレア層16を作成する塗布溶液の塗布(塗工)時に、散乱粒子162の成分を溶解する溶剤を配合する方法が挙げられる。バインダ161と散乱粒子162との界面が相溶していることは、アンチグレア層16の断面を走査電子顕微鏡(SEM)等で観察することにより確認できる。
【0038】
上述したように、アンチグレア層16は、平坦な表面形状を有する平坦部16aと、平坦部16aの表面から散乱粒子162の一部が突出することで形成された突出部16bとを有している。そして、突出部16bには、散乱粒子162に由来する凹凸163が形成されている。
ここで、一般に、アンチグレア層16による防眩性を高くするためには、アンチグレア層16表面の凹凸を大きくし、外部ヘイズ値を高くすることが挙げられる。しかしながら、アンチグレア層16表面の凹凸を単純に大きくすると、アンチグレア層16上に積層する低屈折率層17等の塗工性が低下する。例えば、アンチグレア層16表面の凹凸が大きいと、アンチグレア層16上にウェットコーティング法などによって低屈折率層17を均一に塗工することが困難になる。この場合、低屈折率層17によって、アンチグレア層16と低屈折率層17との界面での光の反射量が低減されにくくなる。そして、液晶パネル1aに表示される画像が白くぼけた状態となり、画像の鮮鋭度が下がる場合がある。
なお、スパッタリング法や蒸着法などでコーティングを行う場合、表面の凹凸が大きいアンチグレア層16上に対しても均一な低屈折率層17を作成することが可能である。しかしながら、これらの方法で形成可能な低屈折率層17は屈折率が高いため、十分な反射防止特性を確保するためには高屈折率層との積層(例えば4層)が必要となる。その結果、反射防止フィルム10を斜めから観察した際に着色が見られる。また、製造コストも大幅に上がってしまう。
【0039】
これに対し、本実施形態では、アンチグレア層16が上述した構成を有することで、アンチグレア層16の外部ヘイズ値を高めて、反射防止フィルム10の防眩性を高くすることができる。さらに、アンチグレア層16に対する低屈折率層17の塗工性の低下を抑制することができる。
すなわち、アンチグレア層16には、散乱粒子162の一部が突出することで、複数の突出部16bが形成されている。そして、それぞれの突出部16bの表面には、散乱粒子162に由来する凹凸163が形成されている。付言すると、突出部16bの表面粗さは、平坦部16aの表面粗さよりも大きい。これにより、例えば突出部16bの表面に凹凸163が形成されない場合と比べて、アンチグレア層16の外部ヘイズ値が高くなり、アンチグレア層16の表面にて外部からの光が散乱しやすくなる。この結果、液晶パネル1aへの光の映り込みが抑制され、反射防止フィルム10の防眩性を高めることができる。
【0040】
また、アンチグレア層16には、表面形状が平坦な平坦部16aが形成されている。これにより、アンチグレア層16の平坦部16a上に低屈折率層17を作成することで、アンチグレア層16に対する低屈折率層17の塗工性の低下が抑制される。付言すると、ウェットコーティング法を用いて低屈折率層17を作成する場合であっても、低屈折率層17を均一に塗工することが可能となる。この結果、低屈折率層17によって液晶パネル1aの反射率を低下させ、液晶パネル1aに表示される画像の鮮鋭度を高めることが可能となる。
【0041】
アンチグレア層16は、低屈折率層17が積層される方向(上方)から見た場合に、突出部16bの面積に対する平坦部16aの面積の比率(平坦部16aの面積/突出部16bの面積)が、2.0以上30以下であることが好ましく、5.0以上20以下であることがより好ましい。
突出部16bの面積に対する平坦部16aの面積の比率が2.0未満である場合、アンチグレア層16において表面形状が平坦な部分の面積が小さくなるため、低屈折率層17の塗工性が低下するおそれがある。また、突出部16bの面積に対する平坦部16aの面積の比率が30を超える場合、突出部16bの面積が相対的に小さくなるため、突出部16bの表面に形成された凹凸163により光を散乱しにくくなる場合がある。
【0042】
アンチグレア層16における平坦部16aの膜厚は、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上6μm以下がより好ましい。平坦部16aの膜厚が1μm未満である場合、平坦部16aを構成するバインダ161による散乱粒子162の保持力が低くなりやすい。また、鉛筆硬度などのアンチグレア層16に必要な機械特性が不十分となる。一方、平坦部16aの膜厚が10μmを超える場合、散乱粒子162が平坦部16aの表面から突出しにくくなり、突出部16bが形成されにくくなる。この場合、アンチグレア層16において、突出部16bにより光を散乱させることによる映り込みを抑制する効果が不十分となりやすい。
また、突出部16bにおいて散乱粒子162が平坦部16aの表面から突出する高さは、例えば、散乱粒子162の粒子径の20%以上80%以下であり、30%以上70%以下であることが好ましい。
【0043】
なお、本実施形態のアンチグレア層16では、突出部16bの表面に低屈折率層17が積層されず、散乱粒子162の表面の凹凸163が露出しているが、これに限られない。散乱粒子162の表面の凹凸163が低屈折率層17によって被覆されていてもよい。
【0044】
また、アンチグレア層16は、さらに、平均粒子径が小さい粒子を含んでいてもよい。平均粒子径が小さい粒子とは、アンチグレア層16におけるバインダ161の厚み(すなわち、平坦部16aの膜厚)よりも平均粒子径が小さい粒子を意味する。以下、この平均粒子径が小さい粒子を微小粒子と表記する。微小粒子の材質としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレン、ポリアクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、シリコーン、フッ素樹脂、シリカ、アルミナ等が挙げられる。本実施形態では、微小粒子を配合することで、散乱粒子162の過度な凝集が抑制された均一なアンチグレア層16を形成することが可能となる。
【0045】
アンチグレア層16の平坦部16aの膜厚をTとすると、微小粒子の平均粒子径は、0.1T以上0.9T以下が好ましく、0.2T以上0.8T以下がより好ましく、0.3T以上0.7T以下がさらに好ましい。また、具体的な微小粒子の平均粒子径としては、0.5μm以上3.0μm以下が好ましく、0.8μm以上2.3μm以下がより好ましい。微小粒子の平均粒子径が上記範囲を下回ると、アンチグレア層16への入射光の後方散乱が大きくなり、反射率が悪化する。また、微小粒子の平均粒子径が上記範囲を上回ると、バインダ161の表面に微小粒子が突出してしまい、低屈折率層17を均一に塗工することが困難になる。この場合、低屈折率層17によって液晶パネル1aの反射率を低下させることが困難になる。
【0046】
また、アンチグレア層16は、さらに、ナノ粒子を含んでいてもよい。ナノ粒子とは、平均粒子径が100nm以下の粒子である。ナノ粒子の材質としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化インジウム等が挙げられるが、中でもバインダ161との屈折率の差が小さいシリカが好ましい。本実施形態のアンチグレア層16では、ナノ粒子がバインダ161内に含まれることで、バインダ161の比重および粘度が増加し、アンチグレア層16における散乱粒子162同士の凝集を防ぐことができる。
ナノ粒子の含有量は、アンチグレア層16の固形分に対して、1質量%以上40質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下がより好ましい。ナノ粒子の含有量を上記の範囲内にすることで、アンチグレア層16においてナノ粒子同士の凝集を発生させることなく、ナノ粒子による上記の効果を得ることができる。
【0047】
<低屈折率層17の説明>
低屈折率層17は、液晶パネル1aの反射率を低減させるための層である。本実施形態では、低屈折率層17は、アンチグレア層16における平坦部16a上に積層されている。
低屈折率層17は、相対的に屈折率が小さい層である。具体的には、低屈折率層17は、屈折率が1.40以下であることが必要である。また、低屈折率層17は、屈折率が、1.20以上1.34以下であることが好ましい。低屈折率層17の屈折率がこの範囲であることで、液晶パネル1aでの反射率をより低減することができる。
低屈折率層17は、単層で形成しても多層で形成してもよいが、製造コストの観点からなるべく少ない層数で形成することが好ましい。
【0048】
低屈折率層17の厚さは、50nm以上500nm以下であり、80nm以上120nm以下であることが好ましい。付言すると、低屈折率層17の厚さ(平均膜厚)は、アンチグレア層16における散乱粒子162の粒径、およびアンチグレア層16の突出部16bの高さと比べて、十分に小さいことが好ましい。
【0049】
低屈折率層17は、バインダ171と、バインダ171中に分布する中空粒子の一例としての中空シリカ粒子172とを含む。また、図示は省略するが、低屈折率層17は、バインダ171の表面側(
図2における上側)に主に分布する表面改質剤をさらに含む。
【0050】
バインダ171は、3次元架橋構造となっており、中空シリカ粒子172同士を連結する。バインダ171は、主成分として樹脂を含む。樹脂としては、含フッ素樹脂を含んでいてもよい。この場合、樹脂は、全て含フッ素樹脂でもよく、一部が含フッ素樹脂であってもよい。含フッ素樹脂は、フッ素を含む樹脂であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。また、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)である。さらに、例えば、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)である。含フッ素樹脂は、屈折率が低い。そのため、含フッ素樹脂を使用することで、低屈折率層17が、より低屈折率になりやすく、反射率をより低減することができる。
【0051】
また、含フッ素樹脂は、光硬化性含フッ素樹脂であることがさらに好ましい。光硬化性含フッ素樹脂は、下記一般式(1)~(2)で示す光重合性含フッ素モノマーが光重合したものである。そして、構造単位Mを、0.1モル%以上100モル%以下含む。また構造単位Aを、0モル%を超え99.9モル%以下含む。さらに数平均分子量が30,000以上1,000,000以下である。
【0052】
【0053】
一般式(1)中、構造単位Mは、一般式(2)で示す含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。また、構造単位Aは、一般式(2)で示す含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である。
一般式(2)中、X1およびX2は、HまたはFである。また、X3はH、F、CH3またはCF3である。X4およびX5は、H、FまたはCF3である。Rfは、炭素数1以上40以下の含フッ素アルキル基または炭素数2以上100以下のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基に、Y1が1個以上3個以下結合している有機基である。なおY1は末端にエチレン性炭素-炭素二重結合を有する炭素数2以上10以下の1価の有機基である。また、aは0、1、2または3であり、bおよびcは、0または1である。
光重合性含フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のOPTOOL AR-110を例示することができる。また、ダイセルオルネクス社製のEBECRYL8110、共栄社化学社製のLINCシリーズなどを例示することができる。
また、フッ素原子を含まないバインダの具体例としては、共栄社化学製のライトアクリレートPOB-A、NP-A、DCP-A、TMP-A、UA-306I、UA-306Hが挙げられる。さらに、新中村化学社製のNKエステルA-DOD-N、A-200、A-BPE-4が挙げられる。またさらに、東亞合成社製のアロニックスM-315、M-306、M-408が挙げられる。またさらに、日本化薬社製のKAYARAD DPHA、DPEA-12などが挙げられる。これらのバインダは、膜強度を向上させる上で有効である。
【0054】
中空シリカ粒子172は、外殻層を有し、外殻層の内部は中空または多孔質体となっている。外殻層及び多孔質体は、主に酸化ケイ素(SiO2)にて構成する。また外殻層の表面側には、光重合性基および水酸基が多数結合している。光重合性基と外殻層とは、Si-O-Si結合及び水素結合のうち、少なくとも一方の結合を介して結合している。光重合性基としては、アクリロイル基及びメタクリロイル基を挙げることができる。すなわち、中空シリカ粒子172は、光重合性基として、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうち少なくとも一方を含む。光重合性基は、電離放射線硬化性基とも称する。中空シリカ粒子172は少なくとも光重合性基を有していればよく、これらの官能基の数、種類は特に限定しない。
【0055】
中空シリカ粒子172の平均一次粒子径は、35nm以上120nm以下であることが好ましい。また、中空シリカ粒子172の平均一次粒子径は、40nm以上90nm以下であることがより好ましい。平均一次粒子径が35nm未満の場合、中空シリカ粒子172の空隙率が小さくなりやすい。そのため、低屈折率層17の屈折率を下げる効果が生じにくくなる。また、中空シリカ粒子172の平均一次粒子径が120nmを超える場合、低屈折率層17の表面の凹凸が顕著になりやすい。そのため、防汚性や耐擦傷性が低下しやすい。
【0056】
中空シリカ粒子172の平均一次粒子径は、粒子分散液の乾燥膜のSEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)およびSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)を用いた観察像により測定することが可能である。
【0057】
中空シリカ粒子172の配合量は、低屈折率層17の中で30質量%以上65質量%以下であることが好ましい。中空シリカ粒子172の配合量が30質量%未満であると、低屈折率層17の屈折率が高くなり、反射防止フィルム10の反射率が高くなりやすい。また、中空シリカ粒子172の配合量が65質量%を超えると、膜強度が低下しやすくなる。さらに、付着物が目立ちやすく、拭き取りがしにくくなる。
【0058】
また、中空シリカ粒子172は、中空シリカ粒子172の粒径に対する頻度曲線(粒度分布曲線)に複数の極大値を有するようにすることができる。つまり、この場合、中空シリカ粒子172は、粒径分布の異なる複数のものからなる。例えば、中空シリカ粒子172の平均一次粒子径が、30nm、60nm、75nmのものの中から複数選択し、混合して使用する。
【0059】
表面改質剤は、バインダ171の表面側に主に分布し、低屈折率層17の表面を改質する。即ち、表面改質剤は、低屈折率層17の表面側に偏析している。なお、表面改質剤は、バインダ171の内部に存在しても、低屈折率層17の機能を損なうものではない。
本実施の形態では、表面改質剤は、撥油性の表面改質剤および親油性の表面改質剤を含む。
【0060】
撥油性の表面改質剤は、バインダ171等に配合し表面に偏析することで、膜表面の撥油性を向上させる役割を担う。撥油性の表面改質剤の効果は、オレイン酸等の接触角を測定することで確認することができる。この場合、撥油性の表面改質剤の添加時と未添加時との膜表面の接触角の差(添加時の接触角-未添加時の接触角)により、効果を確認できる。この場合、撥油性の表面改質剤を添加すると接触角は、大きくなる。そして、接触角の差が、10°以上のものが好ましい。また、接触角の差が、20°以上のものがより好ましく、30°以上のものがさらに好ましい。
【0061】
撥油性の表面改質剤は、光重合性基を有するフッ素系化合物であることが好ましい。
具体的な撥油性の表面改質剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKY-1203、KY-1207が挙げられる。また、例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC-HPが挙げられる。さらに、例えば、DIC株式会社製のメガファックF-477、F-554、F-556、F-570、RS-56、RS-58、RS-75、RS-78、RS-90が挙げられる。またさらに、例えば、株式会社フロロテクノロジー製のFS-7024、FS-7025、FS-7026、FS-7031、FS-7032が挙げられる。またさらに、例えば、第一工業製薬株式会社製のH-3593、H-3594が挙げられる。さらに、例えば、AGC株式会社製のSURECO AF Seriesが挙げられる。そして、例えば、株式会社ネオス製のフタージェントF-222F、M-250、601AD、601ADH2が挙げられる。
【0062】
親油性の表面改質剤は、バインダ171等に配合し表面に偏析することで、膜表面の親油性を向上させる役割を担う。親油性の表面改質剤の効果は、オレイン酸等の接触角を測定することで確認することができる。この場合、親油性の表面改質剤の未添加時と添加時との膜表面の接触角の差(未添加時の接触角-添加時の接触角)により、効果を確認できる。この場合、親油性の表面改質剤を添加すると接触角は、小さくなる。そして、接触角の差が、3°以上のものが好ましい。また、接触角の差が、5°以上のものがより好ましく、7°以上のものがさらに好ましい。
【0063】
具体的な親油性の表面改質剤としては、例えば、三洋化成工業株式会社製のメルクリア350Lが挙げられる。また、例えば、株式会社ネオス製のフタージェント730LM、602A、650A、650ACが挙げられる。
【0064】
低屈折率層17は、皮脂等の付着物が付着しても、付着物が目立ちにくい。また、付着物の拭き取り除去が容易である。これは、中空シリカ粒子172を多く含有させても同様である。
【0065】
<反射防止フィルム10の特性>
続いて、アンチグレア層16と低屈折率層17とが積層された反射防止フィルム10の特性について説明する。
反射防止フィルム10は、内部ヘイズ値と外部ヘイズ値とを合わせたヘイズ値(トータルヘイズ値)が、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。反射防止フィルム10のヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して測定することができる。また、反射防止フィルム10は、ヘイズ値が80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。反射防止フィルム10のヘイズ値が20%未満である場合、反射防止フィルム10の防眩性が不十分となり、液晶パネル1aに光の映り込みが生じやすくなる。
【0066】
また、反射防止フィルム10は、外部ヘイズ値が、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。外部ヘイズ値は、反射防止フィルム10の表面形状に由来し、外部ヘイズ値が大きいほど反射防止フィルム10の表面で光が散乱しやすくなる。本実施形態では、外部ヘイズ値は、アンチグレア層16の突出部16b、および突出部16b(散乱粒子162)の表面に形成された凹凸163に由来する。
反射防止フィルム10の外部ヘイズ値が15%以上であることで、液晶パネル1aへの光の映り込みが抑制され、反射防止フィルム10の防眩性をより高めることができる。
反射防止フィルム10の外部ヘイズ値は、トータルヘイズ値から、後述する方法で測定した内部ヘイズ値を減算して得ることができる。
【0067】
さらに、反射防止フィルム10は、内部ヘイズ値が、15%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。内部ヘイズ値は、反射防止フィルム10を構成する各層の組成等に由来し、内部ヘイズ値が小さいほど、反射防止フィルム10内で光が散乱しにくくなる。
反射防止フィルム10の内部ヘイズ値が15%以下であることで、反射防止フィルム10内で光が散乱することによって液晶パネル1aに表示される画像の鮮鋭度が低下することが抑制される。
反射防止フィルム10の内部ヘイズ値は、反射防止フィルム10の表面に露出する突出部16bの凹凸163を、アンチグレア層16(散乱粒子162)を溶解することなく、且つ屈折率がほぼ同一な液体で充填して平坦にした状態で、JIS K7136:2000に準拠して測定することができる。
【0068】
また、反射防止フィルム10は、低屈折率層17側から入射角60°で測定したグロス値が10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
さらに、反射防止フィルム10は、低屈折率層17側から入射角85°で測定したグロス値が50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
反射防止フィルム10のグロス値が低いほど、反射防止フィルム10の表面にて光が散乱しやすくなり、液晶パネル1aへの光の映り込みが抑制される。本実施形態では、反射防止フィルム10の低屈折率層17側から入射角60°で測定したグロス値を10以下とし、低屈折率層17側から入射角85°で測定したグロス値を50以下とすることで、反射防止フィルム10の防眩性をより高めることができる。
【0069】
<異方拡散層18を備える変形例についての説明>
続いて、反射防止フィルム10の変形例について説明する。反射防止フィルム10の層構造は、
図2に示したものに限られない。
図4(a)~(b)は、反射防止フィルム10の変形例について示した図である。
図4(a)~(b)では、
図2と同様の構成については同じ符号を用い、ここでは詳細な説明は省略する。
図4(a)~(b)に示す反射防止フィルム10は、基材15(基材15a、15b)、アンチグレア層16および低屈折率層17に加えて、異方拡散層18を備えている点で、
図2に示した反射防止フィルム10とは異なっている。
【0070】
図4(a)に示す反射防止フィルム10は、基材15、異方拡散層18、アンチグレア層16および低屈折率層17が、この順で積層されている。
また、
図4(b)に示す反射防止フィルム10は、基材15a、異方拡散層18、基材15b、アンチグレア層16および低屈折率層17が、この順で積層されている。付言すると、
図4(b)に示す例では、異方拡散層18が粘着性を有しており、基材15aと基材15bとが異方拡散層18を介して貼り合わされている。
【0071】
異方拡散層18は、光を異方拡散させる層である。ここで、「異方拡散」とは、特定方向に強い光拡散性を有する性質である。そして、「異方拡散層」は、特定方向に強い光拡散性を有する拡散層である。異方拡散層を有する部材にレーザ光等の等方的な光(円形状の光)を照射した場合、その透過光は、直線状または楕円状となる。
【0072】
異方拡散層18は、少なくとも、樹脂部181と、異方性粒子182とを備える。
樹脂部181は、異方性粒子182を分散する樹脂からなる。よって、樹脂部181は、異方性粒子182を、長軸方向が一方向に沿って配列するように固定する分散層であると言うこともできる。
異方性粒子182は、異方形状を有し、樹脂部181内で長軸方向が一方向に沿うように配列する。この場合、
図4(a)~(b)に示すように、異方性粒子182は、長軸方向が、異方拡散層18の面内方向に沿って配列する。
【0073】
樹脂部181は、上述したように樹脂からなる。樹脂部181の屈折率が1.45以上1.65以下であることが好ましい。異方拡散層18の正反射光成分を除いた反射率であるSCE(Specular Component Exclude)は、1.0%以下であることが好ましい。樹脂部181の屈折率を、この範囲とすることで、SCEが1.0%以下になりやすくなる。対して、この範囲を外れると、SCEが1.0%を越えやすくなる。
【0074】
樹脂部181を構成する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を使用することができる。また、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂を使用することができる。
なお、
図4(b)に示す例のように、異方拡散層18が粘着性を有する場合、樹脂部181を構成する樹脂として粘着性を有する樹脂を選択すればよい。
【0075】
異方性粒子182は、異方形状であり、本実施の形態では、楕円球形状をなす。そして、異方性粒子182は、この形状に起因して、長軸方向の屈折率と短軸方向の屈折率とが異なる。これにより、異方拡散層18に、異方拡散性が発現する。また、異方性粒子182の有する屈折率と、樹脂部181との屈折率は、異なる。なお、異方性粒子182の形状は、異方形状であれば、特に限られるものではない。例えば、紡錘形状、針状形状、繊維状形状、円筒形状、円盤形状などであってもよい。
【0076】
ここで、異方性粒子182の長軸方向の屈折率をnax、短軸方向の屈折率をnay、樹脂部181の屈折率をnbとする。異方性粒子182による異方拡散方向が短軸方向である場合、異方性粒子182の長軸方向の屈折率naxと樹脂部181の屈折率nbとの差は、小さい方が好ましい。また、異方性粒子182による異方拡散方向が長軸方向である場合、異方性粒子182の短軸方向の屈折率nayと樹脂部181の屈折率nbとの差は、小さい方が好ましい。つまり、異方拡散方向の垂直方向の異方性粒子182の屈折率nax、nayと、樹脂部181の屈折率nbとの差は、小さい方が好ましい。
さらに具体的には、下記(I)および(II)の関係の少なくとも一方が成り立つことが好ましい。異方性粒子182と樹脂部181との屈折率を以下の範囲内とすることで、異方拡散方向と垂直な方向の後方散乱を抑制する。そして、異方拡散層18のSCEを低くすることが可能となる。
【0077】
(I)|nb-nax|<0.04かつ0.04<|nb-nay|<0.50
(II)|nb-nay|<0.04かつ0.04<|nb-nax|<0.50
【0078】
また、異方拡散層18のSCEを、1.0%以下にするため、異方拡散層18の長さやアスペクト比が下記の範囲であることが好ましい。そしてこの範囲を外れると、SCEが1.0%を越えやすくなる。
即ち、異方性粒子182は、長軸方向の長さが、0.5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、異方性粒子182は、長軸方向の長さが、1μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
そして、異方性粒子182は、短軸方向の長さが、0.05μm以上30μm以下であることが好ましい。また、異方性粒子182は、短軸方向の長さが、0.1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
異方性粒子182を、このようなサイズにすることで、良好な異方拡散性を確保しつつ、異方性粒子182と樹脂部181との界面での後方散乱を抑制し、異方拡散層のSCEを低減しやすくなる。
【0079】
さらに、異方性粒子182の長軸方向の長さと短軸方向の長さとの比であるアスペクト比が、10以上であることが好ましい。また、アスペクト比が、20以上であることがさらに好ましい。異方性粒子182のアスペクト比をこの範囲とすることで、ディスプレイの視野角特性を向上させることが可能な異方拡散性を確保しやすくなる。
【0080】
また、同様の観点から、異方性粒子182と樹脂部181との界面が相溶していることが好ましい。これにより、両者の界面での屈折率が、連続して変化し、後方散乱を低減することが可能となる。そして、SCEをさらに小さくしやすくなる。なお、この場合、異方性粒子182と樹脂部181と境界は、相溶しているため、曖昧である。しかしこの場合でも異方性粒子182は、樹脂部181中に粒子として存在することは、明らかである。界面の相溶化の方法としては、相溶化剤を配合する方法が挙げられる。界面が相溶していることは、異方拡散層18の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で確認することができる。
【0081】
異方性粒子182は、例えば、金属酸化物、炭酸塩化合物、水酸化化合物およびリン酸塩化合物のうち少なくとも1つを含む。金属酸化物は、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などである。また、異方性粒子182は、例えば、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、炭化窒素、塩基性硫酸マグネシウムなどの化合物である。また、異方性粒子182は、ガラスファイバ、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂などである。
【0082】
異方拡散層18は、ヘイズ値が20%以上80%以下であることが好ましい。また、ヘイズ値が30%以上65%以下であることがさらに好ましい。これにより、異方拡散層18をディスプレイに搭載した際にぎらつきの少ないシャープな画質を確保することが可能となる。
【0083】
なお、異方拡散層18の異方拡散性は、変角光度計(ゴニオフォトメーター)で測定することが可能である。光線を異方拡散層18に対し入射角0°(垂直方向)で照射した際の透過光を、受光角を変化させながら取得する。そしてこれにより、透過散乱光の強度分布状態を測定する。これを異方拡散方向と異方拡散方向に対して垂直な方向とで取得することで異方拡散性を定量的に評価することが可能となる。本実施の形態では、異方拡散性は、異方拡散度(ADV)にて評価する。異方拡散度は、以下の数式により算出できる。そして、異方拡散層18は、異方拡散度(ADV)が3以上であることが好ましい。また、ADVは、15以上であることがより好ましく、25以上であることがさらに好ましい。
【0084】
ADV=(変角光度計で測定した異方拡散方向の5°透過光量)/(変角光度計で測定した異方拡散方向と垂直方向の5°透過光量)
【0085】
ここで、異方拡散層18は、光を異方拡散することができれば、
図4(a)~(b)に示したような樹脂部181と異方性粒子182とを有する形態には限定されない。
図5(a)~(b)は、異方拡散層18の他の形態を説明する図である。
図5(a)に示す異方拡散層18は、空孔183aを含有するコア層183と、コア層183を保護するためのスキン層184とを有する。コア層183内の空孔183aは、略直線状の形状を有するクレーズであり、クレーズ加工等により形成される。この異方拡散層18では、コア層183を構成する樹脂と空孔183aとの界面で入射光が異方的に拡散し、反射防止フィルム10の視野角の拡大に寄与する。このような異方拡散層18の具体例としては、国際公開第2019/156003号の実施例1~5等が挙げられる。
【0086】
また、
図5(b)に示す異方拡散層18は、層内に凹凸状の界面185を有する。界面185は、例えば屈折率の異なる樹脂により形成される。このような異方拡散層18では、界面185で入射光が異方的に拡散し、反射防止フィルム10の視野角の拡大に寄与する。このような異方拡散層18の具体例としては、特開2020-16881号公報に記載された例が挙げられる。
【0087】
<高屈折率層19を備える変形例についての説明>
続いて、反射防止フィルム10の他の変形例について説明する。
図6は、反射防止フィルム10の他の変形例について示した図である。なお、
図6では、
図2と同様の構成については同じ符号を用い、ここでは詳細な説明は省略する。
図6に示す反射防止フィルム10は、基材15、アンチグレア層16、高屈折率層19および低屈折率層17が、この順で積層されている。付言すると、
図6に示す反射防止フィルム10は、高屈折率層19を備えている点で、
図2に示した反射防止フィルム10とは異なっている。
【0088】
高屈折率層19は、液晶パネル1aの反射率をさらに低減させるための層である。
高屈折率層19は、低屈折率層17の下層、付言すると、アンチグレア層16の平坦部16aと低屈折率層17との間に設けられる。
高屈折率層19は、バインダと高屈折率粒子とを含む。高屈折率層19は、例えば、バインダと高屈折率粒子とを含んだ塗布溶液から形成することが可能である。高屈折率層19は、単層で形成しても多層で形成してもよいが、製造コストの観点からなるべく少ない層数で形成することが好ましい。
【0089】
液晶パネル1aの反射率をより低減させるためには、高屈折率層19の屈折率は高くすることが好ましい。高屈折率層19の屈折率としては、1.55以上1.80以下が好ましく、1.60以上1.75以下とすることがより好ましい。
また、高屈折率層19の厚みの上限としては、500nm以下が好ましい。また、350nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。そして、高屈折率層19の厚みの下限としては、50nm以上が好ましい。また、80nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましい。
【0090】
高屈折率粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、チタン酸バリウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、硫化亜鉛などが挙げられる。耐久安定性の観点から、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)が特に好ましい。
【0091】
高屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、1nm以上200nm以下が好ましい。また、3nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下がさらに好ましい。
高屈折率粒子の平均一次粒子径は、粒子分散液の乾燥膜のSEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)およびSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)を用いた観察像により測定することが可能である。
【0092】
上記高屈折率粒子は、凝集を抑制する観点で分散安定化処理が施されていることが好ましい。分散安定化の手段としては、粒子を表面処理したものを用いたり、分散剤を添加したりする手段が挙げられる。また、高屈折率粒子よりも表面電荷量の少ない別の粒子を添加する手段も挙げられる。
【0093】
高屈折率粒子の含有量は、バインダ100質量部に対して、20質量部以上500質量部以下であることが好ましい。また、50質量部以上400質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上300質量部以下であることがさらに好ましい。
【0094】
ただし、高屈折率粒子の含有量を低減するためにバインダの屈折率は1.50以上1.70以下程度であることが好ましい。
高屈折率層19は、バインダ、高屈折率粒子の他に必要に応じて、他の成分を含有してもよい。例えば、重合開始剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤等の添加剤および希釈溶媒を含んでいてもよい。レベリング剤や界面活性剤等の添加により高屈折率層19の表面状態を制御する、その結果、上層の性能を改善することが可能となる。この場合、上層は、例えば、低屈折率層17である。
【0095】
なお、図示は省略するが、
図6に示した高屈折率層19は、
図4(a)~(b)、
図5(a)~(b)に示した異方拡散層18を有する反射防止フィルム10に適用してもよい。付言すると、
図4(a)~(b)、
図5(a)~(b)に示した異方拡散層18を有する反射防止フィルム10は、
図6と同様に、アンチグレア層16と低屈折率層17との間に、さらに高屈折率層19を備えてもよい。
【0096】
<偏光板についての説明>
また、本実施形態のアンチグレア層16および低屈折率層17は、偏光板の表面フィルムとして使用することができる。
図7(a)~(b)は、本実施の形態が適用される偏光板の構成例について示した図である。なお、
図7(a)~(b)では、
図2と同様の構成については同じ符号を用い、ここでは詳細な説明は省略する。
図7(a)に示す偏光板は、基材15a、接着層21aおよび偏光フィルム12がこの順で積層されている。さらにその上に、接着層21b、基材15b、アンチグレア層16および低屈折率層17が積層する。なお、この場合、基材15および接着層21は、それぞれ2層形成されるが、同じ材料から構成されていてもよく、異なる材料から構成されていてもよい。
この場合、基材15a上に偏光フィルム12を接着層21aにより貼り合わせる。そして、さらにその上に、基材15b、および低屈折率層17からなる樹脂膜を、接着層21bにより貼り合わせる。接着層21a、21bは、例えば、UV(ultraviolet)接着剤による層である。また、接着層21a、21bは、PSA(Pressure Sensitive Adhesive:感圧接着剤)であってもよい。さらに、接着層21a、21bは、OCA(Optical Clear Adhesive)であってもよい。またさらに、接着層21a、21bは、OCR(Optical Clear Resin)であってもよい。そしてこの中でも、UV接着剤を好適に用いることができる。
【0097】
また、
図7(b)に示す偏光板は、基材15a、接着層21aおよび偏光フィルム12が積層する。そして、その上に、接着層21bおよび基材15cが積層する。さらにその上に、接着層21c、基材15b、および低屈折率層17が積層する。つまり、
図7(b)に示す偏光板は、
図7(a)の偏光板に比較して、基材15c、接着層21cが加わる点が異なる。この場合、例えば、接着層21a、21bを、UV接着剤による層とし、接着層21cをPSAによる層とすることができる。
【0098】
なお、図示は省略するが、アンチグレア層16および低屈折率層17を偏光板に適用する場合に、上述した異方拡散層18(
図4(a)~(b)、
図5(a)~(b)参照)や高屈折率層19(
図6参照)をさらに付加してもよい。
【0099】
<反射防止フィルム10の作成方法の説明>
次に、反射防止フィルム10の作成方法について説明する。ここでは、
図2に示したような層構造を有する反射防止フィルム10の作成方法を例に挙げて説明する。
図8(a)は、反射防止フィルム10の作成方法の一例を示したフローチャートであり、
図8(b)は、反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16および低屈折率層17の作成方法を示したフローチャートである。
【0100】
まず、基材15上に、アンチグレア層16を作成する(ステップ101:アンチグレア層作成工程)。例えば、基材15上に、アンチグレア層16の基となる塗布溶液を塗工することで、アンチグレア層16を作成する。
次に、アンチグレア層16上に、低屈折率層17を作成する(ステップ102:低屈折率層作成工程)。例えば、アンチグレア層16上に、低屈折率層17の基となる塗布溶液を塗工することで、低屈折率層17を作成する。この例では、アンチグレア層16における平坦部16a上に、低屈折率層17を作成する。
【0101】
アンチグレア層16および低屈折率層17の各層は、いずれもウェットコーティング法を用いて、以下のように作成することができる。
まず、各層を形成するための塗布溶液を準備する(ステップ201:準備工程)。ここで、「準備」とは、塗布溶液を作成することで準備する場合の他、塗布溶液を購入して準備する場合も含む。
【0102】
塗布溶液は、固形分と溶媒とからなる。
アンチグレア層16を作成する場合、固形分は、バインダ161の基となるモノマー、オリゴマーおよびポリマーを含む。固形分は、散乱粒子162を含む。モノマーおよび/またはオリゴマーは、重合することで、バインダ161に含まれる樹脂となる。本実施の形態では、重合は、光重合や熱重合等である。以下では、このモノマーおよび/またはオリゴマーを、「バインダ成分」と言うことがある。
低屈折率層17を作成する場合、固形分は、バインダ171の基となるバインダ成分を含む。また、固形分は、中空シリカ粒子172および表面改質剤を含む。
また、各層の固形分として、重合開始剤を含む。また、固形分として、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、レベリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。
そしてそれぞれの固形分を溶媒に投入し、攪拌することで、各層ごとの塗布溶液を作成する。
【0103】
溶媒は、固形分を分散する。溶媒としては、例えば、塩化メチレン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンを使用することができる。また、MEK(メチルエチルケトン:methyl ethyl ketone)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、エタノール、メタノール、ノルマルプロピルアルコールを使用することができる。さらに、イソプロピルアルコール、Tert-ブチルアルコール、1-ブタノール、ミネラルスピリット、オレイン酸、シクロヘキサノンを使用することができる。またさらに、NMP(N-メチル-2-ピロリドン:N-methylpyrrolidone)、DMP(フタル酸ジメチル:dimethyl phthalate)、ジメチルカーボネート、ジオキソランを使用することができる。
塗布溶液の固形分濃度は、例えば2質量%以上80質量%以下とすることができる。
アンチグレア層16の塗布溶液は、散乱粒子162の平均粒子径や配合量等に応じて、アンチグレア層16において平坦部16aと突出部16bとの面積比が所望の範囲となるように固形分濃度を設定する。
また、低屈折率層17の塗布溶液は、塗工時の膜厚均一性が確保されるよう、アンチグレア層16と比べて固形分濃度を低くすることが好ましい。
【0104】
次に、塗布溶液を塗布(塗工)し、塗布膜を作成する(ステップ202:塗布工程)。塗布を行う方法は、特に限られるものではないが、ダイ方式やマイクログラビア方式で塗布する方法で行うことができる。また、塗布溶液を滴下し、回転させ、遠心力で、均一な厚さの膜状体を作成する方法を採用することもできる。塗布溶液は加温した状態で塗工してもよい。
【0105】
具体的には、基材15上にアンチグレア層16の塗布溶液を塗布(塗工)し、アンチグレア層16の基となる塗布膜を作成する。
また、アンチグレア層16上に低屈折率層17の塗布溶液を塗布(塗工)し、低屈折率層17の基となる塗布膜を作成する。ここで、アンチグレア層16では、散乱粒子162が突出した突出部16bが一部の領域に形成されており、突出部16b以外の部分は表面が平坦な平坦部16aとなっている。これにより、低屈折率層17の塗布溶液を、アンチグレア層16の平坦部16aに対して均一に塗布することが可能となる。
【0106】
続いて、塗布した塗布膜を乾燥させる(ステップ203:乾燥工程)。乾燥は、室温で放置して、溶媒を揮発させる方法や、加熱または真空引きなどにより溶媒を強制的に除去する方法により行うことができる。
【0107】
続いて、紫外線や熱等のエネルギーを塗布膜に照射し、塗布膜中のバインダ成分を光重合させる(ステップ204:光重合工程)。これにより、塗布膜中のバインダ成分が硬化し、アンチグレア層16のバインダ161、低屈折率層17のバインダ171となる。
以上の工程により、アンチグレア層16および低屈折率層17の各層を作成することができる。なお、乾燥工程と光重合工程は、塗布した塗布溶液を硬化させる硬化工程として捉えることができる。
【0108】
以上説明したように、本実施の形態の反射防止フィルム10は、アンチグレア層16が、平坦な表面形状を有する平坦部16aと、平坦部16aの表面から散乱粒子162の一部が突出することで形成された突出部16bとを有している。そして、突出部16bには、散乱粒子162に由来する凹凸163が形成されている。
このような構成を有することで、アンチグレア層16の作用により、反射防止フィルム10の防眩性を高くすることができる。さらに、アンチグレア層16に対する低屈折率層17の塗工性の低下を抑制して、低屈折率層17の作用により、液晶パネル1aに表示される画像の鮮鋭度を高めることが可能となる。
【0109】
なお、上述した例では、アンチグレア層16の突出部16bは、バインダ161の表面から散乱粒子162の一部が突出することで形成されているが、これに限られない。例えば、アンチグレア層16が散乱粒子162を有しない場合には、バインダ161が平坦部16aと、平坦部16aから突出し表面に凹凸形状が形成された突出部16bとを備えていればよい。この場合、アンチグレア層16は、突出部16bの面積に対する平坦部16aの面積の比率(平坦部16aの面積/突出部16bの面積)が、2.0以上30以下であり、且つ、突出部16bにおける表面粗さが、平坦部16aにおける表面粗さよりも大きければよい。
このようなアンチグレア層16は、例えば、平坦部16aと突出部16bとに対応する部分を有する型(モールド)を用いて、バインダ161を構成する樹脂を、インプリント技術により加工して作成できる。
【0110】
また、上述した例では、反射防止フィルム10は、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17が積層された層構造を有していたが、反射防止フィルム10は、必ずしも基材15を有していなくてもよい。
また、上述した例では、表示装置1は、液晶パネル1aにアンチグレア層16および低屈折率層17を形成する場合を示した。ただし、これに限るものではなく、例えば、有機ELやブラウン管に形成してもよい。
またこれらの層を、ガラスやプラスチックなどの材料からなるレンズなどの表面に形成してもよい。この場合、レンズ等は基材の一例である。また、アンチグレア層16および低屈折率層17を形成したレンズ等は、光学部材の一例である。
【実施例0111】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0112】
〔アンチグレア層16の作成〕
先ず、アンチグレア層16の作成方法について説明する。ここでは、表1~表3に示す組成で、アンチグレア層16の基となる塗布溶液A-1~A-21を作成した。
【0113】
(塗布溶液A-1)
塗布溶液A-1は、バインダ161の基となるバインダ成分、散乱粒子162を含む。また、塗布溶液A-1は、光重合開始剤、表面改質剤、消泡剤、および溶媒を含む。
バインダ成分としては、共栄社化学株式会社製のUA-306Hと、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30とを使用した。また、散乱粒子162として、積水化成品工業株式会社製のテクポリマーMBPシリーズ(表面に凹凸を有するPMMA粒子。平均粒子径:4μm、屈折率:1.49、比表面積:110m2/g)を使用した。さらに、光重合開始剤として、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア184を使用した。さらにまた、レベリング剤として、DIC株式会社製のメガファックF-556を使用した。また、消泡剤として、ALTANA社製のBYK-066Nを使用した。これらは、塗布溶液A-1の固形分であり、配合比(質量配合比)は、表1に示した通りである。
そして、これらの固形分を、溶媒であるトルエンおよびイソプロピルアルコールの混合液に投入し、ホモジナイザーを用いて5分間攪拌処理を行い、塗布溶液A-1を得た。この際、得られる塗布溶液A-1の固形分濃度が50質量%となるようにした。溶媒の配合比は、表1に示した通りである。
【0114】
(塗布溶液A-2)
散乱粒子162として、宇部興産株式会社製のPOMP605(表面に凹凸を有するナイロン粒子。平均粒子径:5μm、屈折率:1.54、比表面積:230m2/g)を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-2を得た。
塗布溶液A-2における固形分および溶媒の配合比は、表1に示した通りである。
【0115】
(塗布溶液A-3)
散乱粒子162として、綜研化学株式会社製のMR-7GCP(表面に凹凸を有するPMMA粒子。平均粒子径:7μm、屈折率:1.49、比表面積:210m2/g)を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-3を得た。
塗布溶液A-3における固形分および溶媒の配合比は、表1に示した通りである。
【0116】
(塗布溶液A-4)
散乱粒子162として、AGCエスアイテック株式会社製のサンラブリー(表面に凹凸を有するシリカ粒子。平均粒子径:5μm、屈折率:1.45、比表面積:100m2/g)を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-4を得た。
塗布溶液A-4における固形分および溶媒の配合比は、表1に示した通りである。
【0117】
(塗布溶液A-5)
散乱粒子162として使用した積水化成品工業株式会社製のテクポリマーMBPシリーズの配合比を変更した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-5を得た。
塗布溶液A-5における固形分および溶媒の配合比は、表1に示した通りである。
【0118】
(塗布溶液A-6)
散乱粒子162として使用した積水化成品工業株式会社製のテクポリマーMBPシリーズの配合比を変更し、レベリング剤として、株式会社ネオス製のフタージェントFTX-218を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-6を得た。
塗布溶液A-6における固形分および溶媒の配合比は、表1に示した通りである。
【0119】
(塗布溶液A-7)
バインダ成分として、共栄社化学株式会社製のUA-306Iと、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30とを使用し、表面改質剤として、株式会社ネオス製のフタージェントFTX-218を使用し、溶媒として、トルエンおよびメチルイソブチルケトンの混合液を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-7を得た。
塗布溶液A-7における固形分および溶媒の配合比は、表1に示した通りである。
【0120】
(塗布溶液A-8)
バインダ成分として、共栄社化学株式会社製のUA-306Hおよび日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30に加えて、大阪ガスケミカル株式会社製のOGSOL EA-0200を使用し、消泡剤を使用しなかった以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-8を得た。
塗布溶液A-8における固形分および溶媒の配合比は、表2に示した通りである。
【0121】
(塗布溶液A-9)
レベリング剤として、株式会社ネオス製のフタージェントFTX-218を使用し、さらに、日産化学株式会社製のオルガノシリカゾルPGM-AC-2140Yを添加した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-9を得た。
塗布溶液A-9における固形分および溶媒の配合比は、表2に示した通りである。
【0122】
(塗布溶液A-10)
散乱粒子162として、積水化成品工業株式会社製のテクポリマーMBPシリーズと、綜研化学株式会社製のMR-7GCPとを使用し、レベリング剤として、株式会社ネオス製のフタージェントFTX-218を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-10を得た。
塗布溶液A-10における固形分および溶媒の配合比は、表2に示した通りである。
【0123】
(塗布溶液A-11)
散乱粒子162として、綜研化学株式会社製のMX-500(表面が平滑な真球のPMMA粒子。平均粒子径:5μm、屈折率:1.49、比表面積:0.6m2/g)を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-11を得た。
塗布溶液A-11における固形分および溶媒の配合比は、表2に示した通りである。
【0124】
(塗布溶液A-12)
散乱粒子162として使用した綜研化学株式会社製のMX-500の配合比を変更した以外は塗布溶液A-11と同様にして、塗布溶液A-12を得た。
塗布溶液A-12における固形分および溶媒の配合比は、表2に示した通りである。
【0125】
(塗布溶液A-13)
散乱粒子162を使用しなかった以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-13を得た。
塗布溶液A-13における固形分および溶媒の配合比は、表2に示した通りである。
【0126】
(塗布溶液A-14)
散乱粒子162として、根上工業株式会社製のART PEARL TE-812T(多孔質アクリル/ウレタン粒子。平均粒子径:6μm、屈折率:1.52、比表面積:55m2/g)を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-14を得た。
塗布溶液A-14における固形分および溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0127】
(塗布溶液A-15)
バインダ成分として、共栄社化学株式会社製のUA-306Iと、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30とを使用し、散乱粒子162として、日興リカ株式会社製のNH-RAS06(表面に凹凸を有するシリコーン/アルミナ粒子。平均粒子径:6μm、屈折率:1.43~1.50、比表面積:70m2/g)を使用し、溶媒として、1-メトキシ-2-プロパノールおよびシクロヘキサノンの混合液を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-15を得た。
塗布溶液A-15における固形分および溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0128】
(塗布溶液A-16)
散乱粒子162として、日興リカ株式会社製のSilcrusta MKN03(表面に凹凸を有するシリコーン/PMMA粒子。平均粒子径:3μm、屈折率:1.43~1.50、比表面積:90m2/g)を使用し、溶媒として、1-メトキシ-2-プロパノールおよびシクロヘキサノンの混合液を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-16を得た。
塗布溶液A-16における固形分および溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0129】
(塗布溶液A-17)
散乱粒子162として、日興リカ株式会社製のNH-RAS06および日興リカ株式会社製のSilcrusta MKN03を使用し、溶媒として、メチルイソブチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノールおよびシクロヘキサノンの混合液を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-17を得た。
塗布溶液A-17における固形分および溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0130】
(塗布溶液A-18)
散乱粒子162として、日興リカ株式会社製のSilcrush A3500(表面に凹凸を有するシリコーン粒子。平均粒子径:3.7μm、屈折率:1.42、比表面積:50m2/g)を使用し、溶媒として、メチルイソブチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノールおよびシクロヘキサノンの混合液を使用し、消泡剤を使用しなかった以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-17を得た。
塗布溶液A-18における固形分および溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0131】
(塗布溶液A-19)
散乱粒子162として、日興リカ株式会社製のSilcrusta MKN03を使用し、日産化学株式会社製のオルガノシリカゾルPGM-AC-2140Yを添加し、溶媒として、メチルイソブチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノールおよびシクロヘキサノンの混合液を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-19を得た。
塗布溶液A-19における固形分および溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0132】
(塗布溶液A-20)
散乱粒子162として、根上工業株式会社製のART PEARL TE-812Tを使用し、散乱粒子162以外のその他の粒子として、綜研化学株式会社製SX-130H(単分散ポリスチレン粒子、平均粒子径:1.3μm)を使用し、溶媒として、メチルイソブチルケトンおよび1-メトキシ-2-プロパノールの混合液を使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-20を得た。
塗布溶液A-20における固形分および溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0133】
(塗布溶液A-21)
バインダ成分として、共栄社化学株式会社製のUA-306Hのみを用い、散乱粒子162として、日興リカ株式会社製のSilcrusta MKN03を使用し、散乱粒子162以外のその他の粒子として、綜研化学株式会社製SX-130Hを使用した以外は塗布溶液A-1と同様にして、塗布溶液A-21を得た。
塗布溶液A-21における固形分および溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
〔低屈折率層17の作成〕
次に、低屈折率層17の作成方法について説明する。ここでは、表4に示す組成で、低屈折率層17の基となる塗布溶液B-1、B-2を作成した。
【0138】
(塗布溶液B-1)
塗布溶液B-1は、バインダ171の基となるバインダ成分、中空シリカ粒子172を含む。また、塗布溶液B-1は、中実シリカ粒子を含む。さらに、塗布溶液B-1は、光重合開始剤、表面改質剤、消泡剤、および溶媒を含む。
バインダ成分としては、ダイキン工業株式会社製のAR-100と、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30とを使用した。また、中空シリカ粒子172としては、平均粒子径が75nmのものを使用した。さらに、中実シリカ粒子としては、平均粒子径が10nmのものを使用した。さらにまた、光重合開始剤としては、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア184を使用した。また、表面改質剤としては、信越化学工業株式会社製のKY-1203、DIC株式会社製のメガファックRS-58、および株式会社ネオス製のフタージェント650Aを使用した。さらに、消泡剤としては、ALTANA社製のBYK-066Nを使用した。これらは、塗布溶液B-1の固形分であり、配合比は、表4に示した通りである。
そして、これらの固形分を、溶媒であるメチルイソブチルケトンおよびn-ブチルアルコールの混合液に投入し、5分間攪拌処理を行い、塗布溶液B-1を得た。この際、得られる塗布溶液B-1の固形分濃度が2.5質量%となるようにした。溶媒の配合比は、表3に示した通りである。
【0139】
(塗布溶液B-2)
バインダ成分として、日本化薬株式会社製のKAYARAD PET-30と、新中村化学株式会社製のNKエステルA-200とを使用し、中空シリカ粒子172として平均粒子径が60nmのものを使用し、光重合開始剤として、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア127を使用し、表面改質剤として、信越化学工業株式会社製のKY-1203およびDIC株式会社製のメガファックRS-90を使用し、溶媒として、メチルイソブチルケトンおよびtert-ブチルアルコールの混合液を使用した以外は塗布溶液B-1と同様にして、塗布溶液B-2を得た。
塗布溶液B-2における固形分濃度および溶媒の配合比は、表4に示した通りである。
【0140】
【0141】
〔高屈折率層19の作成〕
次に、高屈折率層19の作成方法について説明する。ここでは、表5に示す組成で、高屈折率層19の基となる塗布溶液C-1を作成した。
【0142】
(塗布溶液C-1)
塗布溶液C-1は、バインダの基となるバインダ成分、高屈折率粒子を含む。また、塗布溶液C-1は、光重合開始剤、表面改質剤、および溶媒を含む。
バインダ成分としては、日本化薬株式会社製のKAYARAD DPHAを使用した。また、高屈折率粒子としては、酸化ジルコニアのナノ粒子(平均粒子径:10nm)を使用した。さらに、光重合開始剤としては、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア184を使用した。これらは塗布溶液C-1の固形分であり、配合比は、表5に示した通りである。
そして、これらの固形分を、溶媒であるメチルイソブチルケトンに投入し、5分間攪拌処理を行い、塗布溶液を得た。この際、得られる塗布溶液C-1の固形分濃度が8質量%となるようにした。
【0143】
【0144】
〔反射防止フィルム10の作成〕
続いて、得られた各塗布溶液を用いて、反射防止フィルム10を作成した。
(実施例1)
PETからなる基材15(東洋紡株式会社製のコスモシャインSRF、厚さ80μm)上に、塗布溶液A-1を、ワイヤバーを用いて塗工した。続いて、90℃で2分間加熱乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照度100mW/cm2で3秒間照射して塗布溶液A-1を硬化させた。これにより、基材15上に、膜厚3.3μmのアンチグレア層16を形成した。
【0145】
続いて、得られたアンチグレア層16上に、塗布溶液B-1を、ワイヤバーを用いて塗工した。続いて、50℃で3分間加熱乾燥した後、窒素ガス環境下(酸素濃度0.1%未満)で、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照度100mW/cm2で3秒間照射して塗布溶液B-1を硬化させた。これにより、アンチグレア層16上に、膜厚98nmの低屈折率層17を形成した。
以上により、基材15と、アンチグレア層16と、低屈折率層17とがこの順で積層された反射防止フィルム10を得た。
【0146】
(実施例2)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-2を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.8μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0147】
(実施例3)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-3を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は4.6μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0148】
(実施例4)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-4を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は4.6μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0149】
(実施例5)
アンチグレア層16の膜厚を変更した以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は2.7μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0150】
(実施例6)
アンチグレア層16の膜厚を変更した以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は4.2μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0151】
(実施例7)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-5を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は5.0μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0152】
(実施例8)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-6を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は6.0μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0153】
(実施例9)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-7を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0154】
(実施例10)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-8を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0155】
(実施例11)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-9を用い、低屈折率層17の作成に塗布溶液B-2を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0156】
(実施例12)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-10を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0157】
(実施例13)
塗布溶液A-1を用い、実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16を作成した。続いて、塗布溶液C-1を用い、実施例1の低屈折率層17の作成と同様にして、アンチグレア層16上に高屈折率層19を作成した。続いて、塗布溶液B-1を用い、実施例1と同様にして、高屈折率層19上に低屈折率層17を作成した。
以上により、基材15と、アンチグレア層16と、高屈折率層19と、低屈折率層17とがこの順で積層された反射防止フィルム10を得た。得られた反射防止フィルム10のけるアンチグレア層16の膜厚は3.3μmであり、高屈折率層19の膜厚は145μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0158】
(実施例14)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-14を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は4.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0159】
(実施例15)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-15を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は4.5μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0160】
(実施例16)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-16を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は1.8μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0161】
(実施例17)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-17を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は4.5μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0162】
(実施例18)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-18を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は2.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0163】
(実施例19)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-19を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は1.9μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0164】
(実施例20)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-20を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は4.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0165】
(実施例21)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-21を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は1.9μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0166】
(実施例22)
PETからなる基材15(TORAY社製のLumirror、厚さ50μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0167】
(実施例23)
TACからなる基材15(FUJIFILM社製のFUJITAC、厚さ60μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0168】
(実施例24)
PMMAからなる基材15(大倉工業社製のOXIS、厚さ40μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.3μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0169】
(比較例1)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-11を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は2.5μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0170】
(比較例2)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-12を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は2.5μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0171】
(比較例3)
アンチグレア層16の膜厚を変更した以外は比較例2と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は3.7μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0172】
(比較例4)
アンチグレア層16の膜厚を変更した以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は6.0μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。なお、比較例4のアンチグレア層16では、アンチグレア層16の膜厚が厚く、散乱粒子162がバインダ161内に埋没しており、突出部16bが形成されていなかった。
【0173】
(比較例5)
アンチグレア層16の作成に塗布溶液A-13を用いた以外は実施例1と同様にして、基材15上にアンチグレア層16および低屈折率層17を形成し、反射防止フィルム10を得た。
得られた反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の膜厚は2.5μmであり、低屈折率層17の膜厚は98nmであった。
【0174】
〔評価方法〕
実施例1~実施例21および比較例1~比較例5で得られた反射防止フィルム10について、以下の項目について評価を行った。
(アンチグレア層16におけるバインダ161および散乱粒子162の屈折率)
アンチグレア層16におけるバインダ161および散乱粒子162のそれぞれについて、屈折率を測定した。具体的には、株式会社アタゴ製のアッベ屈折計(DR-A1)を用いて、バインダ161および散乱粒子162の屈折率を測定した。このとき、同一サンプル内で、n=3点で屈折率を測定し、平均値を採用した。
【0175】
(アンチグレア層16の膜厚)
アンチグレア層16の膜厚を測定した。具体的には、株式会社日立ハイテク製の走査電子顕微鏡(SU8600)を用いて、反射防止フィルム10におけるアンチグレア層16の断面を2000倍で観察し、バインダ161で形成された平坦部16aの膜厚を測定した。このとき、同一サンプル内で、n=20点で膜厚を測定し、平均値を採用した。
【0176】
(低屈折率層17および高屈折率層19の屈折率および膜厚)
低屈折率層17および高屈折率層19の屈折率および膜厚を、J.W.Woollam社製の分光エリプソメーター(VUV-VASE)を用いて測定した。このとき、同一サンプル内で、n=3点で屈折率および膜厚を測定し、平均値を採用した。
【0177】
(トータルヘイズ値)
反射防止フィルム10のトータルヘイズ値を、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH5000Wを用いて、JIS K7136:2000に準拠して測定した。このとき、同一サンプル内で、n=3点でトータルヘイズ値を測定し、平均値を採用した。
【0178】
(内部ヘイズ値および外部ヘイズ値)
アンチグレア層16の表面に形成された凹凸163を、アンチグレア層16と屈折率がほぼ同一な液体モノマーで充填して平坦にした状態で、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH5000Wを用いて、内部ヘイズ値を測定した。このとき、同一サンプル内でn=3点で内部ヘイズ値を測定し、平均値を採用した。
また、トータルヘイズ値から内部ヘイズ値を減算した値を外部ヘイズ値とした。
【0179】
(入射角85°でのグロス値)
反射防止フィルム10の入射角85°でのグロス値を測定した。具体的には、反射防止フィルム10の裏面(基材15)上に黒色のPETフィルムを貼り付け、BYK社製のグロスメータを用いて、反射防止フィルム10の表面(低屈折率層17)側から入射角85°でのグロス値を測定した。
【0180】
(アンチグレア層16における平坦部16aおよび突出部16bの面積)
アンチグレア層16における平坦部16aおよび突出部16bの面積を、株式会社キーエンス製のレーザ顕微鏡VK-X1100を用いて測定した。具体的には、倍率150倍の対物レンズを使用し、アンチグレア層16表面の97μm×73μmの領域の形状データを取得した。取得した形状データにおける高さ情報を用いて、平坦部16aと突出部16bとを区別し、それぞれの面積を算出した。
そして、突出部16bの面積に対する平坦部16aの面積の比率(平坦部16aの面積/突出部16bの面積)を算出した。
【0181】
(SCI反射率)
反射防止フィルム10のSCI反射率を測定した。具体的には、反射防止フィルム10の裏面(基材15)上に黒色のPETフィルムを貼り付け、コニカミノルタ株式会社製のCM-2600dを用いて、反射防止フィルム10のSCI反射率を測定した。
反射防止フィルム10のSCI反射率は小さいほど好ましく、具体的には、1.8%以下であることが好ましい。
【0182】
(映り込み評価)
反射防止フィルム10を、粘着フィルムを用いて55インチサイズのディスプレイに貼り合わせた。また、ディスプレイから斜め45°に2m離れたところに白熱電球を備えたランプを配置した。そして、ディスプレイを点灯して映像を表示させた状態で、ディスプレイの正面方向に1m離れた場所からディスプレイを目視にて観察し、ディスプレイへの白熱電球の映り込み、およびディスプレイに表示される映像の視認性を評価した。
評価は以下の基準で行った。
A:外光の映り込みが非常に少なく、映像の視認性に優れる。
B:多少外光の映り込みが確認できるが、映像の視認性への影響はほとんどない。
C:外光の映り込みが目立ち、表示される映像の視認性の低下が確認される。
D:外光の映り込みが激しく、映像の視認性が悪い。
そして、評価がAまたはBの場合を合格とし、評価がCまたはDの場合を不合格とした。
【0183】
(外観評価)
明視野下の条件で、反射防止フィルム10を貼り付けたディスプレイの外観を目視にて観察し、評価した。ディスプレイは、映り込み評価に用いたのと同様のものを用い、外観の観察は、ディスプレイが非点灯の状態で行った。
評価は以下の基準で行った。
A:光沢感のない黒が感じられる。
B:光沢感のある黒が若干感じられる。
C:散乱光による白みが若干感じられる。
D:散乱光による白みが感じられる。
そして、評価がAまたはBの場合を合格とし、評価がCまたはDの場合を不合格とした。
【0184】
〔評価結果〕
実施例1~実施例21および比較例1~比較例5の反射防止フィルム10の評価結果について、表6~表9に示す。
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
表6~表8に示すように、実施例1~実施例21の反射防止フィルム10では、映り込み評価および外観評価の結果がいずれもAまたはBであり、合格の範囲となった。
【0190】
これに対し、アンチグレア層16に含まれる散乱粒子162が表面に凹凸を有していない比較例1~比較例3の反射防止フィルム10は、映り込み評価および外観評価の少なくとも一方の結果が不合格となった。
また、アンチグレア層16の膜厚(平坦部16aの膜厚)が厚く、散乱粒子162がバインダ161から突出せずに突出部16bが形成されていない比較例4の反射防止フィルム10は、外観評価の結果は合格であるものの、映り込み評価の結果が不合格であった。
さらに、アンチグレア層16が散乱粒子162を含まない比較例5の反射防止フィルム10は、外観評価の結果は合格であるものの、映り込み評価の結果が不合格であった。
【0191】
また、実施例1~実施例13を比べると、入射角85°でのグロス値が40以下である実施例1~実施例5、実施例7~実施例13の反射防止フィルム10は、入射角85°でのグロス値が40を超える実施例6の反射防止フィルム10と比べて、映り込み評価の結果が良好であることが確認された。
さらに、突出部16bの面積に対する平坦部16aの面積の比率(平坦部16aの面積/突出部16bの面積)が2.0以上30以下である実施例1~実施例7、実施例9~実施例13の反射防止フィルム10は、突出部16bの面積に対する平坦部16aの面積の比率(平坦部16aの面積/突出部16bの面積)が2.0未満である実施例8の反射防止フィルム10と比べて、外観評価の結果が良好であることが確認された。
【0192】
〔基材15の違いによる評価〕
基材15が互いに異なる実施例1、実施例22~実施例24で得られた反射防止フィルム10について、以下の項目について評価、比較を行った。
(基材15の内部ヘイズ値)
実施例1、実施例22~実施例24で用いた基材15の可視光領域における内部ヘイズ値を、日本電色工業株式会社製の分光ヘイズメーターSH7000を用いて測定した。実施例1の基材15(東洋紡株式会社製のコスモシャインSRF)については、可視光領域として波長440nmでの内部ヘイズ値を測定した。また、実施例22の基材15(TORAY社製のLumirror)、実施例23の基材15((FUJIFILM社製のFUJITAC)、および実施例24の基材15(大倉工業社製のOXIS)については、可視光領域として波長380nmでの内部ヘイズ値を測定した。
【0193】
(SCI反射率、反射色度(a*/b*))
実施例1、実施例22~実施例24で得られた反射防止フィルム10のSCI反射率および反射色度(a*/b*)を、コニカミノルタ株式会社製のCM-2600dを用いて測定した。
上述したように、反射防止フィルム10のSCI反射率が小さいほど好ましい。また、反射防止フィルム10の反射色度(a*/b*)は、絶対値が小さいほど好ましい。
【0194】
実施例1、実施例22~実施例24の反射防止フィルム10の評価結果について、表10に示す。
【0195】
【0196】
表10に示すように、基材15の可視光領域における内部ヘイズ値が0.5%以下である実施例22~実施例24の反射防止フィルム10では、基材15の可視光領域の内部ヘイズ値が0.5%を超える実施例1の反射防止フィルム10と比較して、SCI(Specular Component Include)、反射色度(a*/b*)の絶対値が小さくなることが確認された。
1…表示装置、1a…液晶パネル、10…反射防止フィルム、11…バックライト、12…偏光フィルム、13…位相差フィルム、14…液晶、15…基材、16…アンチグレア層、16a…平坦部、16b…突出部、17…低屈折率層、18…異方拡散層、19…高屈折率層、161…バインダ、162…散乱粒子、163…凹凸