IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントラル硝子株式会社の特許一覧

特開2024-28150感光性樹脂組成物、樹脂膜、硬化物、隔壁、有機電界発光素子、ディスプレイ、硬化物の製造方法、含フッ素樹脂及びポリマーブレンド
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028150
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、樹脂膜、硬化物、隔壁、有機電界発光素子、ディスプレイ、硬化物の製造方法、含フッ素樹脂及びポリマーブレンド
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20240222BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240222BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240222BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240222BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20240222BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20240222BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240222BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240222BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20240222BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/004 501
H10K59/122
H10K85/10
H10K59/38
H10K71/12
C08F2/50
C08F8/00
C08F20/10
C08F290/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124550
(22)【出願日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2022130135
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】服部 啓太
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】兼子 譲
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
4J011
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC15
2H225AC31
2H225AC42
2H225AC44
2H225AC47
2H225AC49
2H225AC53
2H225AC58
2H225AC63
2H225AC74
2H225AC79
2H225AD06
2H225AD15
2H225AM25P
2H225AM27P
2H225AN39P
2H225AN72P
2H225BA13P
2H225CA24
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD97
3K107EE24
3K107FF14
3K107FF18
4J011QA22
4J011QB03
4J011QB20
4J011SA61
4J011SA64
4J011SA65
4J011TA04
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J100AB07R
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08T
4J100AL09Q
4J100AS06S
4J100BA03Q
4J100BA03T
4J100BA10R
4J100BB18P
4J100BB18Q
4J100BB18S
4J100BB18T
4J100CA03
4J100CA04
4J100CA06
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA62
4J100HC45
4J100HC51
4J100HE14
4J100JA38
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD061
4J127BD461
4J127BE041
4J127BE04X
4J127BE111
4J127BE11X
4J127BE161
4J127BE16X
4J127BE241
4J127BE24X
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG071
4J127BG07X
4J127BG081
4J127BG08X
4J127BG101
4J127BG10X
4J127BG171
4J127BG17X
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB282
4J127CB371
4J127CC111
4J127CC161
4J127CC162
4J127CC332
4J127DA26
4J127DA46
4J127DA47
4J127DA61
4J127EA12
4J127EA15
4J127FA00
4J127FA17
(57)【要約】
【課題】 良好な硬化性と撥液性を有する感光性樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び下記一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、上記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有する。
[化1]
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び下記一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、
前記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、前記樹脂(E)を30~550質量部含有する感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、前記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
【請求項2】
前記樹脂(E)が架橋部位を有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、
前記樹脂(E)が、下記一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有する樹脂である、感光性樹脂組成物。
【化2】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、前記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
【請求項4】
前記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、前記樹脂(E)を30~550質量部含有する請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記架橋部位を有する構成単位として、下記一般式(5)で表される構成単位を含む、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】
(一般式(5)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表し、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、nは1~3の整数を表し、rは0又は1を表す。)
【請求項6】
前記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、前記樹脂(E)を30~550質量部含有する請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂(E)が、下記一般式(1-1)で表される構成単位と、下記一般式(5)で表される構成単位とを含む樹脂である請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

(一般式(1-1)中、Raは、一般式(1)中のRaと同じであり、Rcは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(該炭化水素基及び含フッ素アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。Rdは、2価又は3価の有機基であって、当該有機基は、環状構造を含んでいてもよい直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、芳香環基、又はそれらの複合置換基から選ばれる基であって、水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。tは1又は2を表す。一般式(5)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表し、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、nは1~3の整数を表し、rは0又は1を表す。)
【請求項8】
前記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、前記樹脂(E)を30~550質量部含有する請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂(E)が、下記一般式(1-1)で表される構成単位と、下記一般式(5)で表される構成単位と、下記一般式(6)で表される構成単位と、を含む樹脂である請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【化5】
(一般式(1-1)中、Raは、一般式(1)中のRaと同じであり、Rcは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(該炭化水素基及び含フッ素アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。Rdは、2価又は3価の有機基であって、当該有機基は、環状構造を含んでいてもよい直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、芳香環基、又はそれらの複合置換基から選ばれる基であって、水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。tは1又は2を表す。一般式(5)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表し、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、nは1~3の整数を表し、rは0又は1を表す。一般式(6)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~15の直鎖状、炭素数3~15の分岐鎖状又は炭素数3~15の環状のアルキル基を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されている。)
【請求項10】
前記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、前記樹脂(E)を30~550質量部含有する請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂(E)のフッ素原子含有率が15~60質量%である、請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
感光性樹脂組成物の全固形分に対する前記アルカリ可溶性樹脂(C)の含有量が10~70質量%である、請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
感光性樹脂組成物の全固形分に対する前記含フッ素樹脂(D)の含有量が0.01~10質量%である、請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
感光性樹脂組成物の全固形分に対する前記樹脂(E)の含有量が0.01~10質量%である、請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記アルカリ可溶性樹脂(C)と前記含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率の差が15~60質量%である請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
前記樹脂(E)に含まれる前記一般式(1)で表される構造の含有量が、前記樹脂(E)を構成する構成単位の合計量を100モル%として、0.1モル%以上、50モル%未満である請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項17】
前記一般式(1)で表される構造がヘキサフルオロイソプロパノール基である請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項18】
前記樹脂(E)の重量平均分子量が5,000以上、40,000以下である請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項19】
さらに光ラジカル増感剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項20】
隔壁の形成に用いられる、請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物より得られる樹脂膜。
【請求項22】
請求項21に記載の樹脂膜を硬化させた硬化物。
【請求項23】
請求項22に記載の硬化物で構成される隔壁。
【請求項24】
請求項23に記載の隔壁と、前記隔壁により区画される領域に配置される発光層又は波長変換層とを備える有機電界発光素子。
【請求項25】
請求項23に記載の隔壁を備えるディスプレイ。
【請求項26】
硬化物の製造方法であって、
請求項1又は3に記載の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜を得る成膜工程と、
前記樹脂膜に高エネルギー線を露光する露光工程と、を含む硬化物の製造方法。
【請求項27】
下記一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有する含フッ素樹脂。
【化6】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、前記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
【請求項28】
架橋部位を有する構成単位として、下記一般式(5)で表される構成単位を含む、請求項27に記載の含フッ素樹脂。
【化7】
(一般式(5)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表し、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、nは1~3の整数を表し、rは0又は1を表す。)
【請求項29】
フッ素原子含有率が15~60質量%である、請求項27に記載の含フッ素樹脂。
【請求項30】
前記一般式(1)で表される構造の含有量が、前記樹脂を構成する構成単位の合計量を100モル%として、0.1モル%以上、50モル%未満である請求項27に記載の含フッ素樹脂。
【請求項31】
重量平均分子量が5,000以上、40,000以下である請求項27に記載の含フッ素樹脂。
【請求項32】
請求項27~31のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂を含む、ポリマーブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、樹脂膜、硬化物、隔壁、有機電界発光素子、ディスプレイ、硬化物の製造方法、含フッ素樹脂及びポリマーブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ、量子ドットディスプレイ等の表示素子を製造する際、発光等の機能を有する有機層の形成方法としてインクジェット法が知られている。インクジェット法にはいくつか方法があり、具体的には、基板上に形成した凹凸を有するパターン膜の凹部にノズルより滴下したインクを固化する方法、又はインクに濡れる部位である親液部とインクを弾く部位である撥液部として、予め基板上に形成したパターン膜上にインクの液滴を滴下し、親液部にのみインクを付着させる方法などを挙げることができる。
【0003】
特に、前者に挙げたパターン膜の凹部にノズルから滴下したインクを固化させる方法において、このような凹凸を有するパターン膜を作製するため、主に2つの方法を採用できる。1つは、基板上に塗布した感光性レジスト膜の表面をパターン状に露光することで露光部と未露光部を形成し、いずれかの部位を現像液で溶解し除去するフォトリソグラフィ法であり、もう1つは印刷技術を用いるインプリント法である。
【0004】
形成した凹凸を有するパターン膜の凸部はバンク(隔壁)と呼ばれ、バンクはパターン膜の凹部にインクを滴下した際、インク同士が混じらないための障壁として働く。この障壁としての効果を高めるため、パターン膜凹部は基板表面が露出し、その基板表面はインクに対し親液性で、かつ、バンク上面はインクに対し撥液性であることが求められている。
【0005】
このようなバンクを形成するための樹脂として、含フッ素樹脂が撥インク剤として用いられている。含フッ素樹脂を用いることにより撥液性が向上する。
【0006】
特許文献1には、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂、及び撥液剤を含有する感光性樹脂が開示されている。また、当該感光性樹脂を硬化させた硬化物が隔壁を構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2021/090836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
撥液性の向上のため、フッ素原子含有率の高い含フッ素樹脂を撥液剤として感光性樹脂組成物に添加することが知られている。しかし、フッ素原子含有率の高い含フッ素樹脂は、フッ素を含まない溶媒や化合物との相溶性が低く、各成分が偏在する場合がある。そのような感光性樹脂組成物の樹脂硬化物は、硬化不良や撥液不良が起きることがあり、改善の余地があった。本開示は、良好な硬化性と撥液性を有する感光性樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討した結果、撥液剤とエチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂等が偏在することで部分的に硬化不良が起こるため、撥液剤の硬化物中への保持が難しくなり、撥液性の達成が難しくなることを見出した。そして、特定の基を有する樹脂を添加することで上記課題を解決できることを見出し、本開示に至った。
【0010】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施形態が含まれる。
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、上記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有する。
【0011】
【化1】
【0012】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
【0013】
本開示の第二の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、上記樹脂(E)が、一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有する樹脂である。
【0014】
【化2】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、前記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
【0015】
本開示の樹脂膜は、上記第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物より得られる。
本開示の硬化物は、上記樹脂膜を硬化させたものである。
本開示の隔壁は、上記硬化物で構成される。
【0016】
本開示の有機電界発光素子は、上記隔壁と、上記隔壁により区画される領域に配置される発光層又は波長変換層とを備える。
本開示のディスプレイは、上記隔壁を備える。
【0017】
本開示の硬化物の製造方法は、上記第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜を得る成膜工程と、上記樹脂膜に高エネルギー線を露光する露光工程とを含む。
【0018】
本開示の含フッ素樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有する。
【0019】
【化3】
【0020】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
【0021】
本開示のポリマーブレンドは、上記含フッ素樹脂を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
良好な硬化性と撥液性を有する感光性樹脂組成物及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示を詳細に説明する。本開示は以下の実施態様に限定されるものではなく、本開示の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて適宜実施することができる。
なお本明細書において、「バンク」と「隔壁」とは同義語であり、別途注釈のない限り、インクジェット法における凹凸を有するパターン膜の凸部を意味する。
【0024】
以下では、本開示の感光性樹脂組成物のうち、第一の感光性樹脂組成物について説明する。
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、上記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有することを特徴とする。
【0025】
【化4】
【0026】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。ここで任意の数は1以上である。)
【0027】
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含むことにより各成分が偏在する問題を解決し、フッ素原子含有量が多い撥液剤を用いても撥液性や硬化性が改善された硬化物や隔壁を作製することができる。上記「撥液剤」は、本開示の第一の感光性樹脂組成物における含フッ素樹脂(D)である。以下では、「一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)」を「樹脂(E)」と記載することがある。
【0028】
<エチレン性不飽和化合物(A)>
本開示の第一の感光性樹脂組成物がエチレン性不飽和化合物(A)を含むと、光照射による第一の感光性樹脂組成物の硬化が促進され、より短時間での硬化が可能となる。エチレン性不飽和化合物(A)としては、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物を用いることが出来る。ベンゼン環の二重結合のような共役安定化された二重結合は、エチレン性不飽和基に該当しない。反応性向上の観点から、エチレン性不飽和化合物(A)は、その末端にエチレン性不飽和基を有することが好ましい。エチレン性飽和化合物(A)はフッ素原子を含まない。
エチレン性不飽和化合物(A)の具体例としては、多官能アクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社製の製品名:A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、AD-TMP)、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社製の製品名:A-200、A-400、A-600)、ウレタンアクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社製の製品名:UA-122P、UA-4HA、UA-6HA、UA-6LPA、UA-11003H、UA-53H、UA-4200、UA-200PA、UA-33H、UA-7100、UA-7200)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0029】
多官能アクリレート化合物として、好ましいものを以下に例示する。
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
上記例示のうち、Vは、「-O-C(CH)H-CH-」で示す構成単位がm1個、「-O-CH-C(CH)H-」で示す構成単位がn1個、ブロック共重合又はランダム共重合した構造であり、m1+n1=2、3、7、12である。Vは、「-O-C(CH)H-CH-」で示す構成単位がm2個、「-O-CH-C(CH)H-」で示す構成単位がn2個、ブロック共重合又はランダム共重合した構造であり、m2+n2=7である。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
エチレン性不飽和化合物(A)の含有量は、後述のアルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び樹脂(E)との合計を100質量部として、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以上200質量部以下である。エチレン性不飽和化合物(A)の含有量が10質量部よりも少ないと架橋効果が充分得られない傾向があり、300質量部を超えると解像性や感度が低下する傾向がある。
【0036】
<光重合開始剤(B)>
本開示の第一の感光性樹脂組成物において、光重合開始剤(B)は、電磁波や電子線等の高エネルギー線により、重合性二重結合を有する単量体を重合させるものであれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤(B)として、光ラジカル開始剤又は光酸開始剤を用いることができ、これらは単独で用いてもよいし、光ラジカル開始剤及び光酸開始剤を併用してもよいし、2種以上の光ラジカル開始剤及び/又は2種以上の光酸開始剤を混合して用いてもよい。また、光重合開始剤と併せて添加剤を使用することにより、場合によってリビング重合を行うことも可能である。当該添加剤は公知のものを使用することができる。
【0037】
光ラジカル開始剤としては、具体的に、分子内の結合が電磁波又は電子線の吸収によって開裂してラジカルを生成する分子内開裂型や、3級アミンやエ-テル等の水素供与体を併用することによってラジカルを生成する水素引き抜き型などに分類でき、いずれを使用してもよい。上記に挙げた型以外の光ラジカル開始剤を用いることもできる。
【0038】
光ラジカル開始剤として、具体的には、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ジケトン系、アシルホスフィンオキシド系、キノン系、アシロイン系、チオキサントン系などを挙げることができる。
【0039】
ベンゾフェノン系としては、具体的に、ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。中でも、2-ベンゾイル安息香酸、4-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0040】
アセトフェノン系としては、具体的に、アセトフェノン、2-(4-トルエンスルホニルオキシ)-2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。中でも、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノンが好ましい。
【0041】
ジケトン系としては、具体的に、4,4’-ジメトキシベンジル、ベンゾイルギ酸メチル、9,10-フェナントレンキノンなどが挙げられる。中でも、4,4’-ジメトキシベンジル、ベンゾイルギ酸メチルが好ましい。
【0042】
アシルホスフィンオキシド系としては、具体的に、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0043】
キノン系としては、具体的に、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、カンファーキノン、1,4-ナフトキノンなどが挙げられる。中でも、カンファーキノン、1,4-ナフトキノンが好ましい。
【0044】
アシロイン系としては、具体的に、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。中でも、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルが好ましい。
【0045】
チオキサントン系としては、具体的に、2,4-ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0046】
光ラジカル開始剤として、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ジケトン系が好ましく、ベンゾフェノン系がより好ましい。
【0047】
市販の光ラジカル開始剤の中で、好ましいものとして、ビーエーエスエフ株式会社製の製品名:イルガキュア127、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア907、イルガキュア2959、イルガキュアOXE-01、イルガキュアOXE-04、ダロキュア1173、ルシリンTPO、日本化薬社製の製品名:DETXsなどが挙げられる。中でもイルガキュア651、イルガキュア369がより好ましい。
【0048】
光酸開始剤は、具体的に、芳香族スルホン酸、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)(1-メチルエチルベンゼン)鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ペンタフルオロフェニルボレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンの対からなるオニウム塩である。
中でも、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートが特に好ましい。
【0049】
市販の光酸開始剤としては、例えば、サンアプロ株式会社製の製品名:CPI-100P、CPI-110P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、ダウ・ケミカル日本株式会社製の製品名:サイラキュア光硬化開始剤UVI-6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6976、株式会社ADEKA製の製品名:アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、アデカオプトマーSP-300、日本曹達株式会社製の製品名:CI-5102、CI-2855、三新化学工業株式会社製の製品名:サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L、サンエイドSI-110L、サンエイドSI-180L、サンエイドSI-110、サンエイドSI-180、ランベルティ社製の製品名:エサキュア1064、エサキュア1187、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の製品名:イルガキュア250などが挙げられる。
【0050】
本開示の第一の感光性樹脂組成物における光重合開始剤(B)の含有量は、エチレン性不飽和化合物(A)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び樹脂(E)の合計を100質量部として0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上20質量部以下である。光重合開始剤(B)の含有量が0.1質量部よりも少ないと架橋効果が充分得られない傾向があり、30質量部を超えると解像性や感度が低下する傾向がある。
【0051】
<アルカリ可溶性樹脂(C)>
本開示の第一の感光性樹脂組成物がアルカリ可溶性樹脂(C)を含むと、本開示の第一の感光性樹脂組成物から得られるバンクの形状を良好にすることができる。アルカリ可溶性樹脂(C)は、フッ素原子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、アルカリ可溶性樹脂(C)は、フッ素原子を含まない樹脂であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(C)は、アルカリ可溶性であればその種類は特に限定されないが、後述の含フッ素樹脂(D)、一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)以外の樹脂である。
アルカリ可溶性樹脂(C)としては、アルカリ溶解性ノボラック樹脂を挙げることができる。
アルカリ溶解性ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒存在下で縮合して得ることができる。
【0052】
フェノール類としては、具体的に、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール、4-メチル-カテコール、ピロガロール、フロログルシノール、チモール、イソチモールなどを例示することができる。これらフェノール類は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
アルデヒド類としては、具体的に、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α-フェニルプロピルアルデヒド、β-フェニルプロピルアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-メチルベンズアルデヒド、m-メチルベンズアルデヒド、p-メチルベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒドなどを例示することができる。
酸触媒としては、具体的に、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、ジエチル硫酸、p-トルエンスルホン酸などを例示することができる。これら酸触媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
他に、アルカリ可溶性樹脂(C)として、酸変性エポキシアクリレート系を挙げることができる。市販の酸変性エポキシアクリレート系として、例えば、日本化薬株式会社製の製品名:CCR-1218H、CCR-1159H、CCR-1222H、CCR-1291H、CCR-1235、PCR-1050、TCR-1335H、UXE-3024、ZAR-1035、ZAR-2001H、ZAR-2050H、ZAR-2051H、ZFR-1185及びZCR-1569Hなどを使用することができる。
【0055】
アルカリ可溶性樹脂(C)成分の質量平均分子量は、第一の感光性樹脂組成物の現像性及び解像性の観点から1,000~50,000が好ましい。
【0056】
本開示の第一の感光性樹脂組成物の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂(C)の含有量は、10~70質量%であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(C)の含有量が70質量%を超えると、後述の含フッ素樹脂(D)が有するインクに対する撥液性が充分得られない傾向がある。
【0057】
<含フッ素樹脂(D)>
本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、フッ素原子を有する炭化水素からなる構成単位を有する。含フッ素樹脂(D)は、後述の一般式(1)の構造を含まない。含フッ素樹脂(D)は、ラジカル発生基を含まない。本明細書において、ラジカル発生基は光が当たることによりラジカルを発生する基である。
【0058】
本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記一般式(2)で示される構造を有していてもよく、下記一般式(3)で表される構造を有していてもよい。
【0059】
【化9】
(一般式(2)中、Rbは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されている。ここで任意の数は1以上である。Rは水素原子、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状又は炭素数3~6の環状のアルキル基を表す。)
【0060】
【化10】
(一般式(3)中、Rbは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されている。ここで任意の数は1以上である。Rは、水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。Rは水素原子、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状又は炭素数3~6の環状のアルキル基を表す。)
【0061】
一般式(3)において、Rは水素原子、メチル基が好ましい。また、Rとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができ、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
また、一般式(2)又は一般式(3)中のRbは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、n-ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、n-ノナフルオロブチル基、イソノナフルオロブチル基、tert-ノナフルオロブチル基が好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、n-ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基がより好ましく、フッ素原子、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0062】
本開示の第一の感光性樹脂組成物における含フッ素樹脂(D)に含まれる一般式(3)で表される構成単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0063】
【化11】
【0064】
【化12】
【0065】
一般式(3)で表される構成単位の含フッ素樹脂(D)中の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全構成単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上30モル%以下が特に好ましい。
【0066】
一般式(3)の構成単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。一方で、一般式(3)の構成単位の含有量が5モル%より少ないと、第一の感光性樹脂組成物から作製した硬化物をUVオゾン処理又は酸素プラズマ処理する場合に、耐性が低下する傾向がある。
【0067】
含フッ素樹脂(D)が一般式(3)で表される構成単位を有すると、UVオゾン処理又は酸素プラズマ処理する場合に耐性を有するため、好ましい態様の一つである。
【0068】
また、本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記一般式(4)で表される構造を含んでいてもよい。
【0069】
【化13】
【0070】
一般式(4)において、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0071】
一般式(4)において、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表す。中でも、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-であることが好ましい。
【0072】
が、-O-C(=O)-NH-であるとき、UVオゾン処理後又は酸素プラズマ処理後のインクに対する撥液性がより優れるため、好ましい態様の一つである。
【0073】
一般式(4)において、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されてもよい。
【0074】
2価の連結基Aは、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカニレン基を挙げることができる。
【0075】
2価の連結基Aは、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキレン基である場合、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、イソヘキシレン基などを挙げることができる。
【0076】
2価の連結基Aは、炭素数3~10の環状のアルキレン基である場合、例えば、2置換のシクロプロパン、2置換のシクロブタン、2置換のシクロペンタン、2置換のシクロヘキサン、2置換のシクロヘプタン、2置換のシクロオクタン、2置換のシクロデカン、2置換の4-tert-ブチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0077】
これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基で置換されている場合、該水酸基置換アルキレン基として、例えば、ヒドロキシエチレン基、1-ヒドロキシ-n-プロピレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、1-ヒドロキシ-n-ブチレン基、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)、ヒドロキシ-イソブチレン基(-CHCH(CHOH)CH-)、ヒドロキシ-tert-ブチレン基(-C(CHOH)(CH)CH-)などを挙げることができる。
【0078】
また、これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、-O-C(=O)-CHで置換されている場合、該置換アルキレン基として、上記に例示した水酸基置換アルキレン基の水酸基が-O-C(=O)-CHに置き換わったものを挙げることができる。
【0079】
中でも、2価の連結基Aは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、シクロヘキシル基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)が好ましく、エチレン基、プロピレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)がより好ましく、エチレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基が特に好ましい。
3価の連結基Aとしては、-C(CH-)CHなどを挙げることができ、4価の連結基Aとしては、C(CH-)などを挙げることができる。
【0080】
一般式(4)において、Yは2価の連結基を表し、-O-又は-NH-を表し、-O-であることがより好ましい。
【0081】
一般式(4)において、uは1~3の整数を表し、uは1であることが特に好ましい。
一般式(4)において、nは1~3の整数を表し、nは1であることが特に好ましい。
芳香環の置換位置はそれぞれ独立に、オルト位、メタ位、パラ位を表し、パラ位であることが好ましい。
【0082】
一般式(4)で表される構成単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。なお、芳香環の置換位置はパラ位のものを例示するが、それぞれ独立に置換位置がオルト位、メタ位であってもよい。
【0083】
【化14】
【0084】
【化15】
【0085】
【化16】
【0086】
【化17】
【0087】
一般式(4)で表される構成単位の含フッ素樹脂(D)中の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全構成単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上30モル%以下が特に好ましい。
【0088】
一般式(4)の構成単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。一方で、一般式(4)の構成単位の含有量が5モル%より少ないと、UVオゾン処理又は酸素プラズマ処理する場合に耐性が低下する傾向がある。
【0089】
ここで本開示の一般式(4)で表される構成単位が有する効果について、明確ではないが、第一の感光性樹脂組成物から作製した硬化物がUVオゾン処理又は酸素プラズマ処理に対する耐性を有する、と推察する。ただし、本開示の効果はここに記述する効果に限定されるものではない。
【0090】
含フッ素樹脂(D)は、前述の通り、上記一般式(3)で表される構成単位と上記一般式(4)で表される構成単位を含む共重合体と、上記一般式(3)で表される構成単位と上記一般式(4)で表される構成単位を含む別種の共重合体との混合体(ブレンド)であってもよい。特に、含フッ素樹脂(D)が、一般式(4)におけるWが-O-C(=O)-NH-である構成単位を含む含フッ素樹脂と、一般式(4)におけるWが-C(=O)-NH-である構成単位を含む含フッ素樹脂との混合体であることは本開示の好ましい態様の一つである。
【0091】
また、本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記一般式(5)で表される構造を含んでいてもよい。
【0092】
【化18】
【0093】
一般式(5)において、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0094】
一般式(5)において、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表す。中でも、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-であることが好ましい。
【0095】
が、-O-C(=O)-NH-であるとき、本開示の含フッ素樹脂(D)のUVオゾン処理後又は酸素プラズマ処理後のインクに対する撥液性がより優れるため、特に好ましい態様の一つである。
【0096】
一般式(5)において、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されてもよい。
一般式(5)において、Aは、2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されてもよい。
【0097】
2価の連結基A、Aは、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカニレン基を挙げることができる。
【0098】
2価の連結基A、Aは、それぞれ独立に、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキレン基である場合、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、イソヘキシレン基などを挙げることができる。
【0099】
2価の連結基A、Aは、それぞれ独立に、炭素数3~10の環状のアルキレン基である場合、例えば、2置換のシクロプロパン、2置換のシクロブタン、2置換のシクロペンタン、2置換のシクロヘキサン、2置換のシクロヘプタン、2置換のシクロオクタン、2置換のシクロデカン、2置換の4-tert-ブチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0100】
これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基で置換されている場合、該水酸基置換アルキレン基として、例えば、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、1-ヒドロキシ-n-プロピレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、1-ヒドロキシ-n-ブチレン基、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)、ヒドロキシ-イソブチレン基(-CHCH(CHOH)CH-)、ヒドロキシ-tert-ブチレン基(-C(CHOH)(CH)CH-)などを挙げることができる。
【0101】
また、これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、-O-C(=O)-CHで置換されている場合、該置換アルキレン基として、上記に例示した水酸基置換アルキレン基の水酸基が-O-C(=O)-CHに置き換わったものを挙げることができる。
【0102】
中でも、2価の連結基A、Aは、それぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、シクロヘキシル基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)が好ましく、エチレン基、プロピレン基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)がより好ましく、エチレン基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)が特に好ましい。
3価の連結基Aとしては、-C(CH-)CHなどを挙げることができ、4価の連結基Aとしては、C(CH-)などを挙げることができる。
【0103】
一般式(5)において、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、-O-であることがより好ましい。
【0104】
一般式(5)において、nは1~3の整数を表し、nは1であることが特に好ましい。
【0105】
一般式(5)において、rは0又は1を表す。rが0のとき(-C(=O)-)は単結合を表す。
【0106】
一般式(5)で表される構成単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0107】
【化19】
【0108】
【化20】
【0109】
【化21】
【0110】
【化22】
【0111】
【化23】
【0112】
一般式(5)で表される構成単位の含フッ素樹脂(D)中の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全構成単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上30モル%以下が特に好ましい。
【0113】
一般式(5)の構成単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。一方で、一般式(5)の構成単位の含有量が5モル%より少ないと、含フッ素樹脂(D)より得られる樹脂膜又はバンクの基板に対する密着性が低下する傾向がある。
【0114】
一般式(5)で表される構成単位が有する効果について、明確ではないが、含フッ素樹脂(D)が一般式(5)で表される構成単位を含むことで、得られる樹脂膜又はバンクが基板に対する密着性を向上する、と推察する。ただし、本開示の効果はここに記述する効果に限定されるものではない。
【0115】
含フッ素樹脂(D)は、上記一般式(3)で表される構成単位と上記一般式(5)で表される構成単位を含む共重合体と、上記一般式(3)で表される構成単位と上記一般式(5)で表される構成単位を含む別種の共重合体との混合体(ブレンド)であってもよい。特に、含フッ素樹脂(D)が、一般式(5)におけるWが-O-C(=O)-NH-である構成単位を含む含フッ素樹脂と、一般式(5)におけるWが-C(=O)-NH-である構成単位を含む含フッ素樹脂との混合体であることは、本開示の好ましい態様の一つである。
【0116】
また、本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記一般式(6)で表される構造を含んでいてもよい。
【0117】
【化24】
【0118】
一般式(6)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0119】
一般式(6)中、Rは炭素数1~15の直鎖状、炭素数3~15の分岐鎖状又は炭素数3~15の環状のアルキル基を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されており、構成単位中のフッ素原子含有率は30質量%以上である。ここで任意の数は1以上である。
【0120】
が直鎖状のアルキル基であるとき、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基又は炭素数10~14の直鎖状アルキル基の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されているものを例示することができる。
【0121】
が直鎖状のアルキル基である場合、上記一般式(6)で表される構成単位は下記一般式(6-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0122】
【化25】
【0123】
一般式(6-1)中、Rは、一般式(6)のRと同義である。
【0124】
一般式(6-1)中、Xは水素原子又はフッ素原子である。
【0125】
一般式(6-1)中、pは1~4の整数である。qは1~14の整数である。pは1~2の整数で、qは2~8の整数で、Xはフッ素原子であることが特に好ましい。
【0126】
一般式(6)で表される構成単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0127】
【化26】
【0128】
【化27】
【0129】
【化28】
【0130】
【化29】
【0131】
一般式(6)で表される構成単位の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全構成単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上30モル%以下が特に好ましい。
【0132】
一般式(6)の構成単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。
【0133】
一般式(6)で表される構成単位は、UVオゾン処理後又は酸素プラズマ処理後のインクに対する撥液性を与える構成単位である。そのため、インクに対する高撥液性を追求したいという場合には、含フッ素樹脂(D)に一般式(6)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0134】
また、本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記一般式(7)で表される構造を含んでいてもよい。
【0135】
【化30】
【0136】
一般式(7)中、R10は水素原子又はメチル基を表す。
【0137】
一般式(7)中、Bはそれぞれ独立に、水酸基、カルボキシル基、-C(=O)-O-R11(R11は炭素数1~15の直鎖状、炭素数3~15の分岐鎖状又は炭素数3~15の環状のアルキル基を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されており、R11中のフッ素原子含有率は30質量%以上である)又は-O-C(=O)-R12(R12は炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状又は炭素数3~6の環状のアルキル基を表す。)を表す。また、mは0~3の整数を表す。ここで任意の数は1以上である。
【0138】
一般式(7)で表される構成単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0139】
【化31】
【0140】
【化32】
【0141】
一般式(7)で表される構成単位の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全構成単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、20モル%以上40モル%以下が特に好ましい。
【0142】
一般式(7)の構成単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。
【0143】
一般式(7)において、Bが水酸基又はカルボキシル基である場合、一般式(7)で表される構成単位は、アルカリ現像液に対する溶解性を有する。そのため、含フッ素樹脂(D)に、Bが水酸基又はカルボキシル基である場合の一般式(7)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0144】
また、本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記一般式(8)で表される構造を含んでいてもよい。
【0145】
【化33】
【0146】
一般式(8)において、R13は、水素原子又はメチル基を表す。
【0147】
一般式(8)において、Aは、2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されてもよい。
【0148】
2価の連結基Aは、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカニレン基を挙げることができる。
【0149】
2価の連結基Aは、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキレン基である場合、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、イソヘキシレン基などを挙げることができる。
【0150】
2価の連結基Aは、炭素数3~10の環状のアルキレン基である場合、例えば、2置換のシクロプロパン、2置換のシクロブタン、2置換のシクロペンタン、2置換のシクロヘキサン、2置換のシクロヘプタン、2置換のシクロオクタン、2置換のシクロデカン、2置換の4-tert-ブチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0151】
これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基で置換されている場合、該水酸基置換アルキレン基として、例えば、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、1-ヒドロキシ-n-プロピレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、1-ヒドロキシ-n-ブチレン基、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)、ヒドロキシ-イソブチレン基(-CHCH(CHOH)CH-)、ヒドロキシ-tert-ブチレン基(-C(CHOH)(CH)CH-)などを挙げることができる。
【0152】
また、これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、-O-C(=O)-CHで置換されている場合、該置換アルキレン基として、上記に例示した水酸基置換アルキレン基の水酸基が-O-C(=O)-CHに置き換わったものを挙げることができる。
【0153】
中でも、2価の連結基Aは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、シクロヘキシル基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)が好ましく、エチレン基、プロピレン基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)がより好ましく、エチレン基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)が特に好ましい。
【0154】
一般式(8)において、Yは、2価の連結基を表し、-O-又は-NH-を表し、-O-であることがより好ましい。
【0155】
一般式(8)において、rは0又は1を表す。rが0のとき(-C(=O)-)は単結合を表す。
【0156】
一般式(8)において、Eは、水酸基、カルボキシル基又はオキシラン基を表す。
がオキシラン基であるとき、例えば、エチレンオキシド基、1,2-プロピレンオキシド基、1,3-プロピレンオキシド基などを挙げることができる。中でも、エチレンオキシド基であることが好ましい。
【0157】
一般式(8)において、sは0又は1を表す。sが0のとき、(-Y-A-)は単結合を表す。rが0、かつ、sが0のときは、構成単位の主鎖にEが結合した構造となる。
【0158】
一般式(8)で表される構成単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0159】
【化34】
【0160】
一般式(8)において、Eが水酸基又はカルボキシル基である場合、一般式(8)で表される構成単位は、含フッ素樹脂(D)のアルカリ現像液に対する溶解性を付与する。そのため、本開示の含フッ素樹脂(D)に、Eが水酸基又はカルボキシル基である場合の一般式(8)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0161】
含フッ素樹脂(D)は、架橋部位を有していてもよい。本開示において、「架橋部位」は、他のモノマーと重合反応可能な部位を意味する。架橋部位としては、例えば光重合性基が挙げられ、好ましくは重合体の側鎖に導入されている。含フッ素樹脂(D)は、例えばモノマーを重合して上述の一般式(3)、(6)~(8)に示す構造からなる構成単位を有する含フッ素樹脂前駆体を得、次いで含フッ素樹脂前駆体と光重合性基誘導体とを反応させることにより重合体の側鎖に光重合性基を導入して、上述の一般式(4)、(5)に示す構造からなる構成単位を有する含フッ素樹脂(D)を合成することができる。
含フッ素樹脂前駆体に導入する光重合性基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基が好ましく、アクリル基がより好ましい。
光重合性基としてアクリル基を導入する場合、光重合性基誘導体としては、例えばアクリル基を有するイソシアネートモノマー、アクリル基を有するエポキシモノマー等のアクリル酸誘導体が挙げられる。
アクリル基を有するイソシアネートモノマーとしては、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリラート、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。好ましくは2-イソシアナトエチルアクリラートである。
アクリル基を有するエポキシモノマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE、三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0162】
含フッ素樹脂前駆体が有する水酸基と光重合性基誘導体との付加反応により、含フッ素樹脂前駆体に光重合性基が導入される。
含フッ素樹脂(D)における光重合性基の割合は、含フッ素樹脂(D)を構成する構成単位の合計量を100モル%として、10モル%以上、70モル%以下であることが好ましい。含フッ素樹脂(D)が光重合性基を1つ有する構成単位のみで形成されている場合、含フッ素樹脂(D)の光重合性基の含有量は、100モル%である。光重合性基の割合が10モル%未満であると、樹脂膜や隔壁の強度が低下する傾向がある。光重合性基の割合が70モル%を超えると、塗布による樹脂膜の形成が困難になることがある。より好ましくは15~60モル%である。
【0163】
本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)の分子量は、ポリスチレンを標準物質とした高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した質量平均分子量で、好ましくは1,000以上、1,000,000以下、より好ましくは2,000以上、500,000以下であり、特に好ましくは3,000以上、100,000以下である。分子量が1,000より小さいと形成する樹脂膜又はバンクの強度が低下する傾向にあり、分子量が1,000,000より大きいと溶媒への溶解性が不足し塗布による樹脂膜の形成が困難になることがある。
【0164】
含フッ素樹脂(D)の分散度(Mw/Mn)は、1.01~5.00が好ましく、1.01~4.00がより好ましく、1.01~3.00が特に好ましい。
【0165】
含フッ素樹脂(D)は、ランダム共重合体であってもよいし、交互共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。それぞれの特性を局所的にではなく適度に分散させる観点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0166】
本開示の第一の感光性樹脂組成物における含フッ素樹脂(D)の好ましい態様は以下の通りである。
<態様1>
次の一般式(3)で表される構成単位、一般式(5)で表される構成単位、一般式(6-1)で表される構成単位及び一般式(7)で表される構成単位を含む含フッ素樹脂(D)
一般式(3):R及びRは水素原子、Rbはそれぞれ独立に、フッ素原子、ジフルオロメチル基又はトリフルオロメチル基
一般式(5):R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、Wは-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-、A、Aはそれぞれ独立に、エチレン基、Y及びYは-O-、nは1、rは1
一般式(6-1):Rはメチル基、pは2の整数、qは4~8の整数、Xはフッ素原子
一般式(7):R10は水素原子、Bはアセトキシ基、水酸基又はカルボキシル基、mは1
【0167】
<態様2>
次の一般式(5)で表される構成単位、一般式(6)で表される構成単位、一般式(6-1)で表される構成単位及び一般式(8)で表される構成単位を含む含フッ素樹脂(D)
一般式(5):R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、Wは-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-、A、Aはそれぞれ独立に、エチレン基、Y及びYは-O-、nは1、rは1
一般式(6):Rはメチル基、Rは炭素数3~15の分岐鎖状のパーフルオロアルキル基
一般式(6-1):Rはメチル基、pは2の整数、qは4~8の整数、Xはフッ素原子
一般式(8):R13はメチル基、Aはエチレン基、Yは-O-、rは1、sは0又は1、Eは水酸基又はカルボキシル基
【0168】
<態様3>
次の一般式(5)で表される構成単位及び一般式(6-1)で表される構成単位を含む含フッ素樹脂(D)
一般式(5):R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、Wは-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-、A、Aはそれぞれ独立に、エチレン基、Y及びYは-O-、nは1、rは1
一般式(6-1):Rはメチル基、pは2の整数、qは4~8の整数、Xはフッ素原子
【0169】
本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率は、20~60質量%であることが望ましく、25~60質量%であることがより望ましい。
フッ素原子含有率がこの範囲内であれば、溶媒に溶解し易い。含フッ素樹脂(D)がフッ素原子を含むことで、撥液性に優れる樹脂膜又はバンクを得ることができる。
【0170】
なお、本明細書において、「樹脂のフッ素原子含有率」は、NMR(核磁気共鳴分光法)により測定された樹脂を構成するモノマーのモル割合、樹脂を構成するモノマーの分子量、モノマーに含まれるフッ素の含有量から算出した値を意味する。
ここで一例として、含フッ素樹脂(D)が、1,1-ビストリフルオロメチルブタジエン、4-ヒドロキシスチレン及び2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートを重合してなる樹脂である場合のフッ素原子の含有量の測定方法を説明する。
(i)まず、含フッ素樹脂(D)をNMR測定することにより、各組成の割合を算出する(モル割合)。
(ii)含フッ素樹脂(D)の各組成のモノマーの分子量(Mw)と、モル割合を掛け、得られた値を足し合わせ、合計値を求める。その合計値から各組成の重量割合(wt%)を算出する。
なお、1,1-ビストリフルオロメチルブタジエンの分子量は190であり、4-ヒドロキシスチレンの分子量は120であり、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートの分子量は432である。
(iii)次に、フッ素を含有する組成において、モノマー中のフッ素原子含有量を計算する。
(iv)各成分における「モノマー中のフッ素原子含有量÷モノマー分子量(Mw)×重量割合(wt%)」の値を算出し、得られた数値を合算する。
(v)「上記(iv)で得られた数値」/「上記(ii)で得られた合計値」を算出し、含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率を算出する。
【0171】
本開示の第一の感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性樹脂(C)と含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率の差が15~60質量%であることが好ましく、20~55質量%であることがより好ましく、25~45質量%であることがさらにより好ましい。フッ素原子含有率の差が上記範囲であると、アルカリ可溶性樹脂(C)と含フッ素樹脂(D)の偏在が解消される。
【0172】
本開示の第一の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は1種又は2種以上を用いることができる。
本開示の第一の感光性樹脂組成物の全固形分に対する含フッ素樹脂(D)の含有量は、0.01~40質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。当該範囲であると樹脂膜の撥水撥油性や基材密着性が良好となる。
【0173】
<樹脂(E)>
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む。なお樹脂(E)は含フッ素樹脂であるが、上記の含フッ素樹脂(D)とは異なる樹脂である。樹脂(E)は、ラジカル発生基を含まない。本明細書において、ラジカル発生基は光が当たることによりラジカルを発生する基である。
【0174】
【化35】
【0175】
一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。ここで任意の数は1以上である。
炭素数1~6の直鎖状のアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、へプタフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。炭素数3~6の分岐鎖状のアルキル基としては、へプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ノナフルオロイソブチル基、ノナフルオロ-tert-ブチル基等が挙げられる。炭素数3~6の環状のアルキル基としては、ペンタフルオロシクロプロピル基等が挙げられる。Raとして好ましくは炭素数1~6の直鎖状アルキル基であり、より好ましくはトリフルオロメチル基である。
一般式(1)で表される構造の具体例としては、ジフルオロメタノール基、テトラフルオロエタノール基、ヘキサフルオロイソプロパノール基、トリフルオロプロパノール基等が挙げられ、ヘキサフルオロイソプロパノール基が好ましい。
【0176】
樹脂(E)は、一般式(1)で表される構造を有する構成単位を含むことが好ましい。一般式(1)で表される構造は、樹脂(E)の側鎖に含まれることが好ましい。一般式(1)で表される構造を有する構成単位としては、例えば下記一般式(1-1)で表される構成単位が挙げられる。
【0177】
【化36】
【0178】
一般式(1-1)中、Raは、一般式(1)中のRaと同じである。
Rcは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(該炭化水素基及び含フッ素アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキル基(該アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状構造を取り得る)、フェニル基、トルイル基が挙げられ、メチル基が特に好ましい。含フッ素アルキル基としては炭素数1~6の含フッ素アルキル基が挙げられ、トリフルオロメチル基が好ましい。これらの中でも、Rcが水素、メチル基の場合は、一般式(1-1)で表される構造を得るための重合性単量体の原料がアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体となり、大量規模の入手が容易なため、特に好ましい。
Rdは、2価(t=1のとき)又は3価(t=2のとき)の有機基であって、当該有機基は、環状構造を含んでいてもよい直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、芳香環基又はそれらの複合置換基から選ばれる基であって、水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。脂肪族炭化水素基としては炭素数1~20のものを挙げることができる。芳香環基としては、ベンゼン環に2個又は3個の結合手がついているものを挙げることができる。「複合置換基」とは、1つのRdの中に、脂肪族炭化水素ユニットと芳香環ユニットとが、直列又は並列関係で含まれるものを言う。中でもRdとして、下記の官能基のものは、優れた物性を持つ重合体の原料になり得るため、好ましい(式中の点線は、結合手を表す)。
【0179】
【化37】
【0180】
【化38】
【0181】
tは1又は2を表す。
樹脂(E)において、一般式(1)で表される構造は、芳香環に直接結合していないことが好ましい。一般式(1)で表される構造は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基に直接結合していることが好ましい。
【0182】
樹脂(E)は、架橋部位を有することが好ましい。樹脂(E)が架橋部位を有すると、第一の感光性樹脂組成物の各成分の偏在がさらに解消されるからである。
架橋部位としては、上記の含フッ素樹脂(D)の架橋部位として例示した光重合性基等が挙げられ、重合体の側鎖に導入されていることが好ましい。樹脂(E)は、下記一般式(5)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0183】
【化39】
【0184】
上記一般式(5)は、含フッ素樹脂(D)について例示したものと同じである。
【0185】
樹脂(E)は、下記一般式(1-1)で表される構成単位と、下記一般式(5)で表される構成単位とを含む樹脂であることが好ましい。
【0186】
【化40】
【0187】
樹脂(E)は、下記一般式(1-1)で表される構成単位と、以下一般式(5)で表される構成単位の他に、さらに下記一般式(6)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0188】
【化41】
【0189】
上記一般式(6)は、含フッ素樹脂(D)について例示したものと同じである。
【0190】
樹脂(E)は、さらに、含フッ素樹脂(D)について例示した一般式(3)で表される構成単位、一般式(7)で表される構成単位等を含んでいてもよい。
【0191】
樹脂(E)は、一般式(1)で表される構造の含有量が、樹脂(E)を構成する構成単位の合計量を100モル%として、0.1モル%以上、50モル%未満であることが好ましい。樹脂(E)が一般式(1)で表される構造を1つ有する構成単位のみで形成されている場合、樹脂(E)の一般式(1)で表される構造の含有量は、100モル%である。一般式(1)で表される構造の含有量が0.1モル%未満であると、本開示の第一の感光性樹脂組成物において各成分を充分に相溶させる効果が充分得られない場合がある。50モル%以上であると、撥液性が低下する場合がある。一般式(1)で表される構造の含有量が0.1モル%以上、50モル%未満であると、充分な撥液性、相溶性を保持しつつさらに、密着性、耐熱性、アルカリ溶解性などの他の物性を付与することも可能となる。より好ましくは1モル%以上、50モル%未満である。
【0192】
樹脂(E)における、一般式(1)で表される構造を有する構成単位以外の構成単位(以下では、他の単量体とも記載する)の含有量は、樹脂(E)中、99.9モル%以下であることが好ましい。他の単量体に由来する構成単位が99.9モル%を超えると、本開示の第一の感光性樹脂組成物において各成分の偏在が解消しない場合がある。より好ましくは99モル%以下である。また、樹脂(E)における他の単量体に由来する構成単位は、50モル%以上が好ましい。
樹脂(E)における各単量体に由来する構成単位のモル比は、NMR(核磁気共鳴分光法)の測定値から決定することができる。
【0193】
樹脂(E)は、重量平均分子量が1,000以上、50,000以下であることが好ましい。樹脂(E)の重量平均分子量が上記の範囲外であると、各成分の偏在が充分改善されない場合がある。より好ましくは5,000以上、40,000以下、さらに好ましくは5,000以上、30,000以下である。
樹脂(E)の分散度(重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比;Mw/Mn)は、1.01~5.00が好ましく、1.10~4.00がより好ましく、1.30~3.00が特に好ましい。
本開示において、樹脂(E)の重量平均分子量と分散度は、ポリスチレンを標準物質とした高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィで得られる値である。
【0194】
樹脂(E)は、フッ素原子含有率が15~60質量%であることが好ましい。樹脂(E)のフッ素原子含有率が上記範囲であると、本開示の第一の感光性樹脂組成物において各成分の偏在を解消することができる。より好ましくは15~40質量%であり、さらにより好ましくは18~36質量%である。
【0195】
樹脂(E)は、一般式(1)で表される構造を有する単量体等を重合して得ることができる。
一般式(1)で表される構造を有する単量体としては、例えばメタクリル酸-5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル、4-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシ-2-プロパニル)スチレン(4-HFA-ST)、3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシ-2-プロパニル)スチレン(3,5-HFA-ST)、2,4-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシ-2-プロパニル)シクロヘキシルメタクリレート、3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシ-2-プロパニル)シクロヘキシルメタクリレート、2,4,6-トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシ-2-プロパニル)シクロヘキシルメタクリレート、1,3-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシ-2-プロパニル)イソプロピルメタクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種又は2種以上用いることができる。好ましくはメタクリル酸-5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル、3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシ-2-プロパニル)シクロヘキシルメタクリレート、1,3-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシ-2-プロパニル)イソプロピルメタクリレートである。
【0196】
樹脂(E)は、例えば、単量体を溶媒に溶解して重合開始剤を加え、必要に応じて加熱して反応させる方法によって合成することができる。該反応においては、必要に応じて連鎖移動剤を存在させるのが好ましい。単量体、溶媒、重合開始剤及び連鎖移動剤は反応開始時に全量添加してもよいし、連続して添加してもよい。
【0197】
上記合成方法における溶媒としては特に制限されず、ケトン類、アルコール類、多価アルコール類及びその誘導体、エーテル類、エステル類、芳香族系溶媒、フッ素系溶剤等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0198】
ケトン類としては、具体的に、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプチルシクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等を挙げることができる。
アルコール類としては、具体的に、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、tert-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、n-オクタノール、n-デカノール、s-アミルアルコール、t-アミルアルコール、イソアミルアルコール、2-エチル-1-ブタノール、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール等を挙げることができる。
【0199】
多価アルコール類及びその誘導体としては、具体的に、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテルなどを挙げることができる。
【0200】
エーテル類としては、具体的に、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどを挙げることができる。
エステル類としては、具体的に、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトンなどを挙げることができる。
芳香族系溶媒としては、キシレン、トルエンなどを挙げることができる。
【0201】
フッ素系溶剤としては、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールなどを挙げることができる。
【0202】
重合開始剤としては、公知の有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。有機過酸化物、無機過酸化物は、還元剤と組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
【0203】
連鎖移動剤としては、n-ブチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2-メルカプトエタノール等のメルカプタン類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化アルキル類等を挙げることができる。
【0204】
樹脂(E)が架橋部位を有する場合は、重合により重合体の側鎖に架橋部位が導入される単量体を一般式(1)で表される構造を有する単量体ともに重合する方法が挙げられる。また、架橋部位を有する含フッ素樹脂(D)の合成と同様に、単量体を重合して一般式(1)で表される構造を有する構成単位と一般式(8)で表される構成単位とを有する樹脂(E)の前駆体を得、次いで樹脂(E)の前駆体と光重合性基誘導体とを反応させることにより重合体の側鎖に光重合性基を導入する方法が挙げられる。
【0205】
樹脂(E)は、1種単独でもよいし、2種以上を混合したものであってもよい。
【0206】
本開示の第一の感光性樹脂組成物において、樹脂(E)の含有量は、第一の感光性樹脂組成物の全固形分に対して0.01~10質量%であることが好ましい。樹脂(E)の含有量が上記範囲であると、本開示の第一の感光性樹脂組成物において各成分の偏在を解消することができる。より好ましくは0.03~5質量%であり、さらにより好ましくは0.03~1.0質量%である。
【0207】
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、樹脂(E)を30~550質量部含有し、好ましくは40~520質量部である。樹脂(E)の含有量が上記範囲であると、本開示の第一の感光性樹脂組成物において各成分の偏在を解消することができる。
【0208】
<溶媒>
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、溶媒を含むことが好ましい。溶媒は含フッ素樹脂(D)が可溶であれば特に制限されず、例えば上記の樹脂(E)の合成で例示した溶媒と同じもの等が挙げられる。好ましくは、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンである。
【0209】
本開示の第一の感光性樹脂組成物における溶媒の量は、アルカリ可溶性樹脂(C)と含フッ素樹脂(D)との合計を100質量部として、50質量部以上、2,000質量部以下となる範囲であることが好ましい。より好ましくは100質量部以上、1,000質量部以下である。溶媒の量を調整することによって、形成される樹脂膜の膜厚を調整することができ、上記範囲内であれば、特にバンクを得るために適した樹脂膜の膜厚を得ることができる。
【0210】
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、さらに光ラジカル増感剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0211】
<光ラジカル増感剤>
本開示の第一の感光性樹脂組成物が光ラジカル増感剤を含むと、本開示の第一の感光性樹脂組成物の露光感度をより向上させることができる。光ラジカル増感剤は、光線又は放射線を吸収して励起状態となる化合物であることが好ましい。光ラジカル増感剤は励起状態となることで、光重合開始剤と接触した際、電子移動、エネルギー移動又は発熱等を生じ、これにより、光重合開始剤は分解し酸を生成し易くなる。光ラジカル増感剤は、350nm~450nmの領域に吸収波長を有すればよく、多核芳香族類、キサンテン類、キサントン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アクリドン類、アントラキノン類、スクアリウム類、スチリル類、ベーススチリル類、又はクマリン類を挙げることができる。
【0212】
多核芳香族類としては、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン,3,7-ジメトキシアントラセン、又は9,10-ジプロピルオキシアントラセンを例示することができる。
【0213】
キサンテン類としては、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガルを例示することができる。
キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、又はイソプロピルチオキサントンを例示することができる。
【0214】
シアニン類としては、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニンを例示することができる。
メロシアニン類としては、メロシアニン、カルボメロシアニンを例示することができる。
チアジン類としては、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルーを例示することができる。
【0215】
アクリジン類としては、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビンを例示することができる。
アクリドン類としては、アクリドン、10-ブチル-2-クロロアクリドンを例示することができる。
【0216】
アントラキノン類としては、アントラキノンを例示することができる。
スクアリウム類としては、スクアリウムを例示することができる。
ベーススチリル類としては、2-[2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]ベンゾオキサゾールを例示することができる。
【0217】
クマリン類としては、7-ジエチルアミノ4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ4-メチルクマリン、又は2,3,6,7-テトラヒドロ-9-メチル-1H,5H,11H[l]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オンを例示することができる。
これら光ラジカル増感剤は、単独、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0218】
本開示の第一の感光性樹脂組成物に使用する光ラジカル増感剤としては、露光感度向上の効果が大きいことより、好ましくは、多核芳香族類、アクリドン類、スチリル類、ベーススチリル類、クマリン類、又はキサントン類であり、特に好ましくはキサントン類である。キサントン類の中でもジエチルチオキサントン及びイソプロピルチオキサントンが好ましい。
【0219】
光ラジカル増感剤の含有量は、含フッ素樹脂(D)100質量部に対して好ましくは0.1質量部~8質量部であり、より好ましくは1質量部~4質量部である。光ラジカル増感剤の含有量を上述の範囲とすることで、感光性樹脂組成物の露光感度を向上させ、本開示の第一の感光性樹脂組成物を露光した後のパターン形成膜において撥液部位と親液部位の境界が明確となり、インク塗布後のインクパターンのコントラストが向上し、精緻なパターンが得られる。
【0220】
<連鎖移動剤>
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、上述の樹脂(E)の合成に用い得るものと同じ化合物等を挙げることができる。
【0221】
<紫外線吸収剤>
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、必要に応じて紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としてはサリチル酸系、ベンゾフェノン系、トリアゾール系等を挙げることができる。
紫外線吸収剤の含有量は、第一の感光性樹脂組成物中に好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは1~3質量%である。
【0222】
<重合禁止剤>
本開示の第一の感光性樹脂組成物に使用する重合禁止剤としては特に限定されないが、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、6-t-ブチル-2,4-キシレノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルピロカテコール、2,5-ビステトラメチルブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、p-メトキシフェノール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1,2-ベンゾキノン、1,3-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノン、ロイコキニザリン、フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン、テトラエチルチウラムジスルフィド、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル又は1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジンを例示することができる。
【0223】
市販される重合禁止剤としては、精工化学株式会社製のN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン(商品名、ノンフレックスF)、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(商品名、ノンフレックスH)、4,4’-ビス(a,a-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名、ノンフレックスDCD)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(商品名、ノンフレックスMBP)、N-(1-メチルヘプチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(商品名、オゾノン35)又は富士フイルム和光純薬工業株式会社製のアンモニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシアミン(商品名、Q-1300)又はN-ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩(商品名、Q-1301)を例示することができる。
【0224】
本開示の第一の感光性樹脂組成物における全固形分中の重合禁止剤の含有割合は0.001~20質量%が好ましく、0.005~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲であると、感光性樹脂組成物の現像残渣が低減され、パターン直線性が良好である。
【0225】
本開示の第一の感光性樹脂組成物は、必要に応じ、その他添加剤を含んでもよい。その他添加剤として、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、増粘剤、密着剤、酸化防止剤などの感光性樹脂組成物に通常用いられる種々の添加剤を挙げることができる。これらのその他添加剤は公知のものであってもよい。
【0226】
次に、本開示の感光性樹脂組成物のうち、第二の感光性樹脂組成物について説明する。第二の感光性樹脂組成物については、第一の感光性樹脂組成物と異なる点のみ説明する。
本開示の第二の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、上記樹脂(E)が、上記一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有する樹脂である。
第二の感光性樹脂組成物は、含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有することが好ましい。
第二の感光性樹脂組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)、樹脂(E)やその他に使用しうる化合物等の具体的な種類や配合量は、第一の感光性樹脂組成物について説明したものと同じである。
【0227】
本開示の第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物は、隔壁の形成に用いられることが好ましい。
【0228】
本開示の樹脂膜は、上記の第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物より得られるものである。本開示の樹脂膜は、上記の第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物を公知の方法により成膜して作製することができる。
本開示の硬化物は、上記の樹脂膜を硬化させたものである。本開示の硬化物は、上記第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜を得る成膜工程と、上記樹脂膜に高エネルギー線を露光する露光工程とを含む硬化物の製造方法により得ることができる。成膜工程及び露光工程での具体的な操作については、後述の隔壁を形成する方法と同じである。上記の硬化物の製造方法も、本開示の一つである。
【0229】
本開示の第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物により得られる硬化物は、上記の樹脂(E)を含むことにより、良好な硬化性と撥液性を有している。本開示の硬化物は、隔壁として用いることが好ましく、有機ELディスプレイや量子ドットディスプレイ等の隔壁として用いることが特に好ましい。
本開示の硬化物で構成される隔壁も本開示の一つである。
また、本開示の隔壁と、上記隔壁により区画される領域に配置される発光層又は波長変換層とを備える有機電界発光素子も本開示の一つである。
また、本開示の隔壁を備える波長変換層も本開示の一つである。
さらに、本開示の隔壁を備えるディスプレイも本開示の一つである。
【0230】
次に、本開示の第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する方法について説明する。
当該隔壁を形成する方法は、(1)成膜工程と、(2)露光工程と、(3)現像工程とを含んでいてもよい。
各工程について以下に説明する。
【0231】
(1)成膜工程
まず、上記本開示の第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより上記第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物を含フッ素樹脂膜とする。
加熱の条件は特に限定されないが、80~100℃、60~200秒であることが好ましい。
これにより、第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物に含まれる溶媒等を除去することができる。
【0232】
基板は、シリコンウエハ、金属、ガラス、ITO基板などを用いることができる。
また、基板上には予め有機系あるいは無機系の膜が設けられていてもよい。例えば、反射防止膜、多層レジストの下層があってもよく、それにパターンが形成されていてもよい。また、基板を予め洗浄してもよい。例えば、超純水、アセトン、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)などを用いて洗浄することができる。
【0233】
基板に本開示の第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、スピンコーター等、公知の方法を用いることができる。
【0234】
(2)露光工程
次に、所望のフォトマスクを露光装置にセットし、高エネルギー線を、該フォトマスクを介して上記含フッ素樹脂膜に露光する。
高エネルギー線は、紫外線、ガンマ線、X線、及びα線からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0235】
高エネルギー線の露光量は、1mJ/cm以上、200mJ/cm以下であることが好ましく、10mJ/cm以上、100mJ/cm以下であることがより好ましい。
【0236】
(3)現像工程
次に、露光工程後の含フッ素樹脂膜をアルカリ水溶液で現像して含フッ素樹脂パターン膜とする。
すなわち、含フッ素樹脂膜露光部又は膜未露光部のいずれかをアルカリ水溶液に溶解させることにより、含フッ素樹脂パターン膜とする。
【0237】
アルカリ水溶液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)水溶液等を使用することができる。
アルカリ水溶液がテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液である場合、その濃度は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、2質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0238】
現像方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、ディップ法、パドル法、スプレー法などが挙げられる。
【0239】
現像時間(現像液が含フッ素樹脂膜に接触する時間)は、10秒以上3分間以下であることが好ましく、30秒以上2分間以下であることがより好ましい。
【0240】
現像した後、必要に応じて、脱イオン水などを用いて、含フッ素樹脂パターン膜を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄方法及び洗浄時間については、10秒以上3分間以下であることが好ましく、30秒以上2分間以下であることがより好ましい。
【0241】
このようにして製造された隔壁はディスプレイ用のバンクとして使用することができる。
【0242】
本開示の含フッ素樹脂は、上記一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有する。本開示の含フッ素樹脂は、上記第一の感光性樹脂組成物又は第二の感光性樹脂組成物に含まれる、一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)の一種である。
【0243】
本開示の含フッ素樹脂は、架橋部位を有する構成単位として、上記一般式(5)で表される構成単位を含むことが好ましい。
本開示の含フッ素樹脂は、フッ素原子含有率が15~60質量%であることが好ましい。
本開示の含フッ素樹脂は、一般式(1)で表される構造の含有量が、樹脂を構成する構成単位の合計量を100モル%として、0.1モル%以上、50モル%未満であることが好ましい。
本開示の含フッ素樹脂は、重量平均分子量が5,000以上、40,000以下であることが好ましい。
【0244】
本開示の含フッ素樹脂は、一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有することにより、組成物中の各成分の偏在を解消する相溶化材として作用していると考えられる。例えば本開示の含フッ素樹脂を樹脂組成物に導入して用いることにより、各成分の偏在が改善された樹脂膜や隔壁(バンク)等の成形品を作製することができる。本開示の含フッ素樹脂は、フッ素原子含有量の差が15~60質量%である2種以上の樹脂を含有する組成物に特に好適に用いることができる。
本開示の含フッ素樹脂は、界面活性剤としての作用も有するので、界面活性剤として用いることも可能である。
【0245】
本開示の含フッ素樹脂を含むポリマーブレンドも、本開示の一つである。本開示の含フッ素樹脂とともにポリマーブレンドに含まれる樹脂の種類は特に限定されず、例えばオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の1種又は2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0246】
本明細書には、以下の発明が開示されている。
〔1〕エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び下記一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、上記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有する感光性樹脂組成物。
【0247】
【化42】
【0248】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
〔2〕上記樹脂(E)が架橋部位を有する上記〔1〕に記載の感光性樹脂組成物。
〔3〕エチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)、含フッ素樹脂(D)及び一般式(1)で表される構造を有する樹脂(E)を含む感光性樹脂組成物であって、上記樹脂(E)が、下記一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有する樹脂である、感光性樹脂組成物。
【0249】
【化43】
【0250】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
〔4〕上記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有する上記〔3〕に記載の感光性樹脂組成物。
〔5〕上記架橋部位を有する構成単位として、下記一般式(5)で表される構成単位を含む、上記〔3〕に記載の感光性樹脂組成物。
【0251】
【化44】
【0252】
(一般式(5)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表し、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、nは1~3の整数を表し、rは0又は1を表す。)
〔6〕上記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有する上記〔5〕に記載の感光性樹脂組成物。
〔7〕上記樹脂(E)が、下記一般式(1-1)で表される構成単位と、下記一般式(5)で表される構成単位とを含む樹脂である上記〔3〕に記載の感光性樹脂組成物。
【0253】
【化45】
【0254】
(一般式(1-1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。Rcは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(該炭化水素基及び含フッ素アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。Rdは、2価又は3価の有機基であって、当該有機基は、環状構造を含んでいてもよい直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、芳香環基、又はそれらの複合置換基から選ばれる基であって、水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。tは1又は2を表す。一般式(5)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表し、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、nは1~3の整数を表し、rは0又は1を表す。)
〔8〕上記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有する上記〔7〕に記載の感光性樹脂組成物。
〔9〕上記樹脂(E)が、下記一般式(1-1)で表される構成単位と、下記一般式(5)で表される構成単位と、下記一般式(6)で表される構成単位と、を含む樹脂である上記〔3〕に記載の感光性樹脂組成物。
【0255】
【化46】
【0256】
(一般式(1-1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。Rcは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(該炭化水素基及び含フッ素アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。Rdは、2価又は3価の有機基であって、当該有機基は、環状構造を含んでいてもよい直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、芳香環基、又はそれらの複合置換基から選ばれる基であって、水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。tは1又は2を表す。一般式(5)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表し、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、nは1~3の整数を表し、rは0又は1を表す。一般式(6)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~15の直鎖状、炭素数3~15の分岐鎖状又は炭素数3~15の環状のアルキル基を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されている。)
〔10〕上記含フッ素樹脂(D)を100質量部とした場合に、上記樹脂(E)を30~550質量部含有する上記〔9〕に記載の感光性樹脂組成物。
〔11〕上記樹脂(E)のフッ素原子含有率が15~60質量%である、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔12〕感光性樹脂組成物の全固形分に対する上記アルカリ可溶性樹脂(C)の含有量が10~70質量%である、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔13〕感光性樹脂組成物の全固形分に対する上記含フッ素樹脂(D)の含有量が0.01~10質量%である、上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔14〕感光性樹脂組成物の全固形分に対する上記樹脂(E)の含有量が0.01~10質量%である、上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔15〕上記アルカリ可溶性樹脂(C)と上記含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率の差が15~60質量%である上記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔16〕上記樹脂(E)に含まれる上記一般式(1)で表される構造の含有量が、上記樹脂(E)を構成する構成単位の合計量を100モル%として、0.1モル%以上、50モル%未満である上記〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔17〕上記一般式(1)で表される構造がヘキサフルオロイソプロパノール基である上記〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔18〕上記樹脂(E)の重量平均分子量が5,000以上、40,000以下である上記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔19〕さらに光ラジカル増感剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔20〕隔壁の形成に用いられる、上記〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
〔21〕上記〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物より得られる樹脂膜。
〔22〕 上記〔21〕に記載の樹脂膜を硬化させた硬化物。
〔23〕上記〔22〕に記載の硬化物で構成される隔壁。
〔24〕上記〔23〕に記載の隔壁と、上記隔壁により区画される領域に配置される発光層又は波長変換層とを備える有機電界発光素子。
〔25〕上記〔23〕に記載の隔壁を備えるディスプレイ。
〔26〕硬化物の製造方法であって、上記〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜を得る成膜工程と、上記樹脂膜に高エネルギー線を露光する露光工程と、を含む硬化物の製造方法。
〔27〕下記一般式(1)で表される構造を有する構成単位と、架橋部位を有する構成単位とを有する含フッ素樹脂。
【0257】
【化47】
【0258】
(一般式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、上記アルキル基は任意の数の水素原子がフッ素原子に置換されている。)
〔28〕架橋部位を有する構成単位として、下記一般式(5)で表される構成単位を含む、上記〔27〕に記載の含フッ素樹脂。
【0259】
【化48】
【0260】
(一般式(5)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表し、Aは2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されていてもよく、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、nは1~3の整数を表し、rは0又は1を表す。)
〔29〕フッ素原子含有率が15~60質量%である、上記〔27〕又は〔28〕に記載の含フッ素樹脂。
〔30〕上記一般式(1)で表される構造の含有量が、上記樹脂を構成する構成単位の合計量を100モル%として、0.1モル%以上、50モル%未満である上記〔27〕~〔29〕のいずれかに記載の含フッ素樹脂。
〔31〕重量平均分子量が5,000以上、40,000以下である上記〔27〕~〔30〕のいずれかに記載の含フッ素樹脂。
〔32〕上記〔27〕~〔31〕のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂を含む、ポリマーブレンド。
【実施例0261】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限られない。
【0262】
[重合体の各構成単位のモル比の測定]
重合体における各構成単位のモル比は、H-NMR、19F-NMR又は13C-NMRの測定値から決定した。
【0263】
[重合体の分子量の測定]
重合体の重量平均分子量Mwと分子量分散度(数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比;Mw/Mn)は、高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCということがある。東ソー株式会社製、形式HLC-8320GPC)を使用し、ALPHA-MカラムとALPHA-2500カラム(ともに東ソー株式会社製)を1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて測定した。検出器には、屈折率差測定検出器を用いた。
【0264】
1.含フッ素樹脂(D)(撥液剤)の合成
[撥液剤前駆体1の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、1,1-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ブタジエン(セントラル硝子株式会社製。以下、BTFBEと表記する)を2.7g(0.014mol)、4-アセトキシスチレン(東京化成工業株式会社品。以下、p-AcO-Stと表記する)を2.3g(0.014mol)、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(東京化成工業株式会社品。以下、MA-C6Fと表記する)を18.2g(0.042mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業株式会社品。以下、HEMAと表記する)を3.9g(0.03mol)、メチルエチルケトン(以下MEKと表記する)を47.2g採取し、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(東京化成工業株式会社品。以下、AIBNと表記する)を0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン200gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤前駆体1を24.0g、収率89%で得た。
【0265】
<NMR測定結果>
撥液剤前駆体1の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる構成単位:p-AcO-Stによる構成単位:MA-C6Fによる構成単位:HEMAによる構成単位=14:14:42:30であった。
【0266】
【化49】
【0267】
<GPC測定結果>
Mw=9,200、Mw/Mn=1.5
【0268】
[撥液剤1の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、撥液剤前駆体1を20g(水酸基当量0.03mol)、トリエチルアミンを0.21g(水酸基当量0.0021mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと表記する)を60g、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品。製品名:カレンズAOI)を4.26g(水酸基当量0.030mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤1を21.6g、収率90%で得た。
【0269】
【化50】
【0270】
13C-NMR測定結果>
撥液剤1において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(BTFBEによる構成単位、p-AcO-Stによる構成単位、MA-C6Fによる構成単位、)の組成比は、用いた撥液剤前駆体1から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位より撥液剤1中のフッ素原子含有率は38.6質量%であった。
【0271】
<GPC測定結果>
Mw=13,100、Mw/Mn=1.7
【0272】
[撥液剤前駆体2の合成]
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを3.8g(0.02mol)、p-AcO-Stを3.2g(0.02mol)、2-(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート(東京化成工業株式会社品。以下、MA-C4Fと表記する)を16.6g(0.05mol)、HEMA(東京化成工業株式会社品)を5.2g(0.04mol)、MEKを60g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン250gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤前駆体2を26.0g、収率90%で得た。
【0273】
<NMR測定結果>
撥液剤前駆体2の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる構成単位:p-AcO-Stによる構成単位:MA-C4Fによる構成単位:HEMAによる構成単位=15:16:38:31であった。
【0274】
【化51】
【0275】
<GPC測定結果>
Mw=9,200、Mw/Mn=1.4
【0276】
[撥液剤2の合成]
攪拌機付き100mlガラス製フラスコ内に、撥液剤前駆体2を26g(水酸基当量0.038mol)、トリエチルアミンを0.21g(水酸基当量0.0021mol)、PGMEAを20g採取し、カレンズAOIを5.4g(水酸基当量0.038mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン100gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤2を26.7g、収率85%で得た。
【0277】
【化52】
【0278】
13C-NMR測定結果>
撥液剤2において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(BTFBEによる構成単位、p-AcO-Stによる構成単位、MA-C4Fによる構成単位)の組成比は、用いた撥液剤前駆体2から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位より撥液剤2中のフッ素原子含有率は31.6質量%であった。
【0279】
<GPC測定結果>
Mw=13,100、Mw/Mn=1.5
【0280】
[撥液剤前駆体3の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、MA-C6Fを25.9g(0.06mol)、HEMA(東京化成工業株式会社品)を5.2g(0.04mol)、MEKを62g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン250gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤前駆体3を28g、収率90%で得た。
【0281】
<NMR測定結果>
撥液剤前駆体3の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、MA-C6Fによる構成単位:HEMAによる構成単位=60:40であった。
【0282】
【化53】
【0283】
<GPC測定結果>
Mw=10,800、Mw/Mn=1.6
【0284】
[撥液剤3の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、撥液剤前駆体3を28g(水酸基当量0.05mol)、トリエチルアミンを0.45g(水酸基当量0.0045mol)、PGMEAを60g採取し、カレンズAOIを7.1g(水酸基当量0.050mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤3を30g、収率85%で得た。
【0285】
【化54】
【0286】
13C-NMR測定結果>
撥液剤3において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(MA-C6Fによる構成単位)の組成比は、用いた撥液剤前駆体3から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位より撥液剤3中のフッ素原子含有率は40.6質量%であった。
【0287】
<GPC測定結果>
Mw=14,300、Mw/Mn=1.7
【0288】
[撥液剤4]
DIC社製「RS-72A」(フッ素原子含有量8質量%)
[撥液剤5]
ネオス社製「フタージェント601ADH2」(フッ素原子含有量19質量%)
【0289】
2.樹脂(E)の合成
[フッ素樹脂前駆体1の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを2.9g(0.015mol)、p-AcO-Stを2.4g(0.015mol)、MA-C6Fを13.0g(0.03mol)、HEMAを3.9g(0.03mol)、メタクリル酸-5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル(セントラル硝子株式会社製。以下、MA-BTHB-OHと表記する)を3.0g(0.01mol)、MEKを50.0g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン300gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂前駆体1を22.6g、収率90%で得た。
【0290】
<NMR測定結果>
フッ素樹脂前駆体1の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる構成単位:p-AcO-Stによる構成単位:MA-C6Fによる構成単位:HEMAによる構成単位:MA-BTHB-OHによる構成単位=15:15:30:30:10であった。構成単位よりフッ素樹脂前駆体1中のフッ素原子含有率は40.9質量%であった。
【0291】
【化55】
【0292】
<GPC測定結果>
Mw=7,800、Mw/Mn=1.4
【0293】
[フッ素樹脂1の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、フッ素樹脂前駆体1を22g(水酸基当量0.03mol)、トリエチルアミンを0.21g(水酸基当量0.0021mol)、PGMEAを60g採取し、カレンズAOIを4.26g(水酸基当量0.03mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂1を22.3g、収率85%で得た。
【0294】
【化56】
【0295】
13C-NMR測定結果>
フッ素樹脂1において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(BTFBEによる構成単位、p-AcO-Stによる構成単位、MA-C6Fによる構成単位、MA-BTHB-OHによる構成単位)の組成比は、用いたフッ素樹脂前駆体1から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位よりフッ素樹脂1中のフッ素原子含有率は35.2質量%であった。
【0296】
<GPC測定結果>
Mw=10,100、Mw/Mn=1.5
【0297】
[フッ素樹脂前駆体2の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを2.9g(0.015mol)、p-AcO-Stを2.4g(0.015mol)、MA-C4Fを10.0g(0.03mol)、HEMAを3.9g(0.03mol)、MA-BTHB-OHを3.0g(0.01mol)、MEKを44.0g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン300gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂前駆体2を20.1g、収率90%で得た。
【0298】
<NMR測定結果>
フッ素樹脂前駆体2の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる構成単位:p-AcO-Stによる構成単位:MA-C4Fによる構成単位:HEMAによる構成単位:MA-BTHB-OHによる構成単位=15:15:30:30:10であった。構成単位よりフッ素樹脂前駆体2中のフッ素原子含有率は36.1質量%であった。
【0299】
【化57】
【0300】
<GPC測定結果>
Mw=7,700、Mw/Mn=1.4
【0301】
[フッ素樹脂2の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、フッ素樹脂前駆体2を20g(水酸基当量0.03mol)、トリエチルアミンを0.21g(水酸基当量0.0021mol)、PGMEAを60g採取し、カレンズAOIを4.26g(水酸基当量0.03mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂2を21.3g、収率87%で得た。
【0302】
【化58】
【0303】
13C-NMR測定結果>
フッ素樹脂2において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして98:2であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(BTFBEによる構成単位、p-AcO-Stによる構成単位、MA-C4Fによる構成単位、MA-BTHB-OHによる構成単位)の組成比は、用いたフッ素樹脂前駆体2から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位よりフッ素樹脂2中のフッ素原子含有率は30.5質量%であった。
【0304】
<GPC測定結果>
Mw=9,100、Mw/Mn=1.4
【0305】
[フッ素樹脂前駆体3の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、HEMAを7.2g(0.055mol)、MA-BTHB-OHを13.3g(0.045mol)、MEKを40.0g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン300gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂前駆体3を18.1g、収率90%で得た。
【0306】
<NMR測定結果>
フッ素樹脂前駆体3の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、HEMAによる構成単位:MA-BTHB-OHによる構成単位=55:45であった。構成単位よりフッ素樹脂前駆体3中のフッ素原子含有率は25.1質量%であった。
【0307】
【化59】
【0308】
<GPC測定結果>
Mw=6,700、Mw/Mn=1.3
【0309】
[フッ素樹脂3の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、フッ素樹脂前駆体3を18g(水酸基当量0.055mol)、トリエチルアミンを0.30g(水酸基当量0.0050mol)、PGMEAを60g採取し、カレンズAOIを7.42g(水酸基当量0.055mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂3を21g、収率84%で得た。
【0310】
【化60】
【0311】
13C-NMR測定結果>
フッ素樹脂3において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして98:2であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(MA-BTHB-OHによる構成単位)の組成比は、用いたフッ素樹脂前駆体3から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位よりフッ素樹脂3中のフッ素原子含有率は18.4質量%であった。
【0312】
<GPC測定結果>
Mw=8,100、Mw/Mn=1.4
【0313】
[フッ素樹脂4]
上記のフッ素樹脂前駆体1をフッ素樹脂4とした。構成単位よりフッ素樹脂4(フッ素樹脂前駆体1)中のフッ素原子含有率は40.9質量%であった。
【0314】
[フッ素樹脂5]
上記のフッ素樹脂前駆体2をフッ素樹脂5とした。構成単位よりフッ素樹脂5(フッ素樹脂前駆体2)中のフッ素原子含有率は36.1質量%であった。
【0315】
[フッ素樹脂前駆体6の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを1.0g(0.005mol)、p-AcO-Stを8.0g(0.015mol)、MA-C6Fを4.3g(0.01mol)、HEMAを3.9g(0.03mol)、MA-BTHB-OHを1.5g(0.005mol)、MEKを50.0g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン300gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂前駆体6を16.06g、収率90%で得た。
【0316】
<NMR測定結果>
フッ素樹脂前駆体6の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる構成単位:p-AcO-Stによる構成単位:MA-C6Fによる構成単位:HEMAによる構成単位:MA-BTHB-OHによる構成単位=5:50:10:30:5であった。構成単位よりフッ素樹脂前駆体6中のフッ素原子含有率は19.3質量%であった。
【0317】
【化61】
【0318】
<GPC測定結果>
Mw=8,900、Mw/Mn=1.5
【0319】
[フッ素樹脂6の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、フッ素樹脂前駆体6を11g(水酸基当量0.015mol)、トリエチルアミンを0.11g(水酸基当量0.001mol)、PGMEAを60g採取し、カレンズAOIを2.13g(水酸基当量0.015mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂6を11.2g、収率90%で得た。
【0320】
【化62】
【0321】
13C-NMR測定結果>
フッ素樹脂6において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(BTFBEによる構成単位、p-AcO-Stによる構成単位、MA-C6Fによる構成単位、MA-BTHB-OHによる構成単位)の組成比は、用いたフッ素樹脂前駆体6から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位よりフッ素樹脂6中のフッ素原子含有率は14.4質量%であった。
【0322】
<GPC測定結果>
Mw=10,500、Mw/Mn=1.5
【0323】
[フッ素樹脂前駆体7の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを2.0g(0.010mol)、p-AcO-Stを0.5g(0.003mol)、MA-C6Fを34.5g(0.079mol)、HEMAを0.39g(0.003mol)、MA-BTHB-OHを1.5g(0.005mol)、MEKを100.0g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン500gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂前駆体7を35.2g、収率90%で得た。
【0324】
<NMR測定結果>
フッ素樹脂前駆体7の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる構成単位:p-AcO-Stによる構成単位:MA-C6Fによる構成単位:HEMAによる構成単位:MA-BTHB-OHによる構成単位=10:3:79:3:5であった。構成単位よりフッ素樹脂前駆体7中のフッ素原子含有率は56.1質量%であった。
【0325】
【化63】
【0326】
<GPC測定結果>
Mw=8,800、Mw/Mn=1.5
【0327】
[フッ素樹脂7の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、フッ素樹脂前駆体7を30g(水酸基当量0.003mol)、トリエチルアミンを0.21g(水酸基当量0.00021mol)、PGMEAを100g採取し、カレンズAOIを0.42g(水酸基当量0.03mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン500gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂7を28.5g、収率95%で得た。
【0328】
【化64】
【0329】
13C-NMR測定結果>
フッ素樹脂7において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(BTFBEによる構成単位、p-AcO-Stによる構成単位、MA-C6Fによる構成単位、MA-BTHB-OHによる構成単位)の組成比は、用いたフッ素樹脂前駆体7から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位よりフッ素樹脂7中のフッ素原子含有率は55.2質量%であった。
【0330】
<GPC測定結果>
Mw=9,100、Mw/Mn=1.5
【0331】
[フッ素樹脂前駆体8の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを2.9g(0.015mol)、p-AcO-Stを2.4g(0.015mol)、MA-C6Fを13.0g(0.03mol)、HEMAを3.9g(0.03mol)、MA-BTHB-OHを3.0g(0.01mol)、MEKを100.0g採取し、AIBNを3.41g(0.020mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温81℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン400gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂前駆体8を20.1g、収率80%で得た。
【0332】
<NMR測定結果>
フッ素樹脂前駆体8の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる構成単位:p-AcO-Stによる構成単位:MA-C6Fによる構成単位:HEMAによる構成単位:MA-BTHB-OHによる構成単位=15:15:30:30:10であった。構成単位よりフッ素樹脂前駆体8中のフッ素原子含有率は40.9質量%であった。
【0333】
【化65】
【0334】
<GPC測定結果>
Mw=4,100、Mw/Mn=1.3
【0335】
[フッ素樹脂8の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、フッ素樹脂前駆体8を11g(水酸基当量0.03mol)、トリエチルアミンを0.11g(水酸基当量0.0021mol)、PGMEAを30g採取し、カレンズAOIを2.13g(水酸基当量0.03mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂8を11.2g、収率85%で得た。
【0336】
【化66】
【0337】
13C-NMR測定結果>
フッ素樹脂8において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(BTFBEによる構成単位、p-AcO-Stによる構成単位、MA-C6Fによる構成単位、MA-BTHB-OHによる構成単位)の組成比は、用いたフッ素樹脂前駆体8から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位よりフッ素樹脂8中のフッ素原子含有率は35.2質量%であった。
【0338】
<GPC測定結果>
Mw=4,500、Mw/Mn=1.4
【0339】
[フッ素樹脂前駆体9の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを2.9g(0.015mol)、p-AcO-Stを2.4g(0.015mol)、MA-C6Fを13.0g(0.03mol)、HEMAを3.9g(0.03mol)、MA-BTHB-OHを3.0g(0.01mol)、MEKを40.0g採取し、AIBNを0.21g(0.00125mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温70℃に昇温し終夜反応させた。反応系にn-ヘプタン300gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂前駆体9を22.1g、収率90%で得た。
【0340】
<NMR測定結果>
フッ素樹脂前駆体9の各構成単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる構成単位:p-AcO-Stによる構成単位:MA-C6Fによる構成単位:HEMAによる構成単位:MA-BTHB-OHによる構成単位=15:15:30:30:10であった。構成単位よりフッ素樹脂前駆体9中のフッ素原子含有率は40.9質量%であった。
【0341】
【化67】
【0342】
<GPC測定結果>
Mw=38,200、Mw/Mn=1.8
【0343】
[フッ素樹脂9の合成]
攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、フッ素樹脂前駆体9を22g(水酸基当量0.03mol)、トリエチルアミンを0.21g(水酸基当量0.0021mol)、PGMEAを60g採取し、カレンズAOIを4.26g(水酸基当量0.03mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としてフッ素樹脂9を21.1g、収率80%で得た。
【0344】
【化68】
【0345】
13C-NMR測定結果>
フッ素樹脂9において、カレンズAOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋部位と反応しない各構成単位(BTFBEによる構成単位、p-AcO-Stによる構成単位、MA-C6Fによる構成単位、MA-BTHB-OHによる構成単位)の組成比は、用いたフッ素樹脂前駆体9から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。構成単位よりフッ素樹脂9中のフッ素原子含有率は35.2質量%であった。
【0346】
<GPC測定結果>
Mw=45,300、Mw/Mn=1.9
【0347】
3.感光性樹脂組成物の調製
以下に実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の調製で用いた各成分を示す。
<エチレン性不飽和化合物(A)>
エチレン性不飽和化合物:日本化薬社製「DPHA」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
<光重合開始剤(B)>
光重合開始剤1:BASF社製「Irgacure OXE-01」
光重合開始剤2:日本化薬社製「DETXs」(2,4-ジエチルチオキサントン)
光重合開始剤3:BASF社製「Irgacure OXE-04」
<アルカリ可溶性樹脂(C)>
アルカリ可溶性樹脂:日本化薬社製「ZAR-2050H」(特殊BIS-A型エポキシアクリレート、フッ素原子を含まない。)
<添加剤>
密着剤:日本化薬社製「KAYAMER PM-21」
<連鎖移動剤>
連鎖移動剤:昭和電工社製 「カレンズMT-PE1」
【0348】
[感光性樹脂基礎組成液の調製]
連鎖移動剤としてカレンズMT-PE1を2.0質量部、エチレン性不飽和化合物(A)としてDPHAを27.0質量部、アルカリ溶解性樹脂(C)としてZAR-2050Hを18.0質量部、密着剤としてPM-21を1.0質量部、溶媒としてPGMEAを50質量部配合し、得られた溶液を0.2μmのメンブランフィルターで濾過することにより、感光性樹脂基礎組成液を調製した。
【0349】
[感光性樹脂組成物の調製]
感光性樹脂基礎組成液とその他の材料の割合が表1~4に記載の値となるように感光性樹脂基礎組成液及び上述の各成分を加え、攪拌、溶解させて、実施例1~26及び比較例1~16の感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、後述する方法で評価を行った。
【0350】
4.表面のフッ素成分量
実施例1~26及び比較例1~16の感光性樹脂組成物を用いて塗布膜を作成し、塗布膜表面のフッ素成分量を算出し、評価及び比較した。結果を表1、2に示す。
【0351】
[塗布膜の形成]
10cm四方の無アルカリ基板を超純水、次いでアセトンにより洗浄後、UVオゾン処理装置を用い、当該基板に対するUVオゾン処理を5分間行った。次いで、実施例1~26及び比較例1~16の感光性樹脂組成物を用いて、得られたUVオゾン処理後の基板上にスピンコーターを用い回転数1,000rpmで塗布し、ホットプレート上で100℃で150秒間加熱し、膜厚1μmの塗布膜を作成した。
【0352】
[フッ素成分量の評価及び比較]
塗布膜についてX線光電子分光法(XPSと略す)を用い表面のF1sスペクトルを測定し、強度を比較した。XPS測定は日本電子社製JPS-9000MCを用いて行った。塗布膜のムラを確認するため測定は場所を変え10カ所行い、平均、最大値、最小値、及び、最大値と最小値の差を示した。記載の条件で測定したスペクトルの値が大きい程、膜表面にフッ素を含む共有結合が多く含まれる。このことから、スペクトルの測定値が小さい膜より、大きい膜の方が膜表面にフッ素原子を多く含むといえる。
【0353】
【表1】
【0354】
【表2】
【0355】
実施例1~26、比較例1~16の塗布膜の表面にいずれもフッ素に由来するピークが観測され、強度が1600~3300cpsであった。フッ素樹脂1~9を含む実施例1~26は、塗布膜の表面で観測されるフッ素由来のピークの最大値と最小値の差は大きくても400であり、比較例1~10及び14~16に比べ最大値と最小値の差が小さいことが確認できた。このことよりフッ素樹脂1~9を含むことで、塗布膜表面のフッ素成分量がより均一になっていることが分かった。
含フッ素樹脂(D)を含まない比較例11~13は、含フッ素樹脂(D)を含む実施例1~26、比較例1~10、比較例14~16と比べて、塗布膜の表面で観測されるフッ素由来のピーク強度が小さかった。塗布膜表面のフッ素成分量は、含フッ素樹脂(D)が影響することが分かった。
架橋部位を有するフッ素樹脂1~3及び6~9を用いた実施例1~20及び23~26は、架橋部位を含有しないフッ素樹脂4又はフッ素樹脂5を用いた実施例21、22と比較して、塗布膜の表面で観測されるフッ素由来のピークの最大値と最小値の差がより小さかった。
【0356】
5.バンクの評価
[バンクの形成]
10cm四方のITO基板を超純水、次いでアセトンにより洗浄後、前述のUVオゾン処理装置を用い、当該基板に対するUVオゾン処理を5分間行った。次いで、検討用樹脂組成物実施例1~26、比較例1~16を用いて、得られたUVオゾン処理後の基板上にスピンコーターを用い回転数1,000rpmで塗布し、ホットプレート上で80℃150秒間、加熱し、膜厚1μmの含フッ素樹脂膜及び比較含フッ素樹脂膜を形成した。マスクアライナ(ズース・マイクロテック株式会社製品)を用いて、ラインアンドスペースが5μmのマスクを介し、得られた樹脂膜にi線(波長365nm)を照射し、露光を行った。
得られた露光後の硬化膜に対して現像液溶解性、バンク性能の評価(感度、解像度)、及び接触角の測定を行った。
【0357】
[現像液溶解性]
ITO基板上の露光後の硬化膜を、アルカリ現像液に室温で80秒間浸漬し、アルカリ現像液に対する溶解性を評価した。アルカリ現像液には、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(以下、TMAHということがある)を用いた。バンクの溶解性は、浸漬後のバンクの膜厚を接触式膜厚計で測定することによって評価した。バンクが完全に溶解している場合を「可溶」、レジスト膜が未溶解で残っている場合を「不溶」とした。
【0358】
[バンク性能(感度、解像度)]
上記ラインアンドスペースのパターンであるバンクを形成する際の最適露光量Eop(mJ/cm)を求め、感度の指標とした。
また、得られたバンクパターンをレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VX-1100)(3000倍)で観察し解像度を評価した。ラインエッジラフネスが確認できないものを「優」、僅かに確認されるものを「良」、顕著であるものを「不可」とした。
【0359】
[接触角]
上記工程により得られた硬化膜を有する基板を、230℃で60分間、加熱を行った後、硬化膜表面の水及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角は接触角計(共和界面化学株式会社製GMs-601)を用いて、塗膜上の20か所にて測定した。
【0360】
【表3】
【0361】
【表4】
【0362】
実施例1~26と、比較例1~16の感光性樹脂組成物から作製したバンク(硬化膜)の現像液溶解性、バンク性能及び接触角を比較した結果、現像液溶解性については、全ての実施例及び比較例で未露光部が可溶であり、露光部が不溶であったので、本開示の感光性樹脂組成物は硬化性が優れていた。バンク性能のうち、感度は、実施例及び比較例のいずれも150~200mJ/cmであり、解像度が「良」又は「優」であった。バンクの解像度については、比較例1~16と比較して、実施例1~26の方が同等か優れていることがわかった。撥液性については、フッ素樹脂1~9を含む実施例1~26では、接触角の最大値と最小値の差が小さかった。
フッ素原子含有率が低いフッ素樹脂6を用いた実施例23は、他の実施例と比較して、接触角がやや小さかった。
フッ素原子含有率がやや高いフッ素樹脂7を用いた実施例24は、他の実施例と比較して、ラインエッジラフネスが僅かに確認され(「良」)、接触角の最大値と最小値の差がやや大きかった。
分子量がやや小さいフッ素樹脂8を用いた実施例25は、他の実施例と比較して、接触角がやや小さかった。
分子量がやや大きいフッ素樹脂9を用いた実施例26は、ラインエッジラフネスが僅かに確認された。
含フッ素樹脂(D)を含まない比較例11~13は、含フッ素樹脂(D)を含む実施例1~26、比較例1~10、比較例14~16と比べて、接触角が小さかった。
樹脂(E)の含有量が多い比較例14、15、及び、樹脂(E)の含有量が少ない比較例16は、実施例と比較して接触角の最大値と最小値の差が大きかった。