(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028166
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電子変圧器及びその三相四線式電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H02M7/06 A
H02M7/06 M
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129303
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】202210991062.8
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】596039187
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳思維
(72)【発明者】
【氏名】郭文皓
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006CA07
5H006CA13
5H006CB01
5H006CC02
5H006CC08
5H006HA08
(57)【要約】
【課題】電子変圧器を提供する。
【解決手段】第1相電源と第1出力端との間に接続される第1順方向整流回路と、第2相電源と第1出力端子との間に接続される第2順方向整流回路と、第3相電源と第1出力端子との間に接続される第3順方向整流回路と、中性線と第2出力端子との間に接続される逆方向整流回路と、を備え、第1順方向整流回路、第2順方向整流回路及び第3順方向整流回路は、各々第1相電源、第2相電源及び第3相電源に対して半波整流を行い、整流された第1~第3相電源を発生させ、整流された第1~第3相電源を第1出力端子に重ね合わせて出力電圧とするように配置される電子変圧器。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1相電源と第1出力端子との間に接続される第1順方向整流回路と、
第2相電源と前記第1出力端子との間に接続される第2順方向整流回路と、
第3相電源と前記第1出力端子との間に接続される第3順方向整流回路と、
中性線と第2出力端子との間に接続される逆方向整流回路と、
を備え、
前記第1順方向整流回路、前記第2順方向整流回路及び前記第3順方向整流回路は、各々前記第1相電源、前記第2相電源及び前記第3相電源に対して半波整流を行い、整流された第1相電源、整流された第2相電源及び整流された第3相電源を発生させ、前記整流された第1相電源、前記整流された第2相電源及び前記整流された第3相電源を前記第1出力端子に重ね合わせて出力電圧とするように配置される電子変圧器。
【請求項2】
前記第1出力端子と前記第2出力端子との間に接続され、電力を蓄積すると共に前記出力電圧をスムージングするために配置されるコンデンサを更に備える請求項1に記載の電子変圧器。
【請求項3】
前記出力電圧は、負荷に供給され、前記第2出力端子にリターン電流を発生させ、前記逆方向整流回路は、前記リターン電流に対して半波整流を行って整流されたリターン電流を発生させ、前記中性線を介して前記整流されたリターン電流を電源供給装置まで伝送するように配置される請求項1に記載の電子変圧器。
【請求項4】
前記第1順方向整流回路、前記第2順方向整流回路、前記第3順方向整流回路及び前記逆方向整流回路の何れも並列接続された2つ~5つのダイオードを含む、請求項1に記載の電子変圧器。
【請求項5】
前記第1順方向整流回路における各ダイオードのカソードが前記第1相電源に接続され、前記第2順方向整流回路における各ダイオードのカソードが前記第2相電源に接続され、前記第3順方向整流回路における各ダイオードのカソードが前記第3相電源に接続され、前記第1順方向整流回路、前記第2順方向整流回路及び前記第3順方向整流回路における各ダイオードのアノードが前記第1出力端子に接続され、前記逆方向整流回路における各ダイオードのアノードが前記中性線に接続され、且つ前記逆方向整流回路における各ダイオードのカソードが前記第2出力端子に接続される請求項4に記載の電子変圧器。
【請求項6】
前記第1順方向整流回路、前記第2順方向整流回路、前記第3順方向整流回路の何れのダイオードの数と前記逆方向整流回路のダイオードの数の比は、1:3である請求項1に記載の電子変圧器。
【請求項7】
前記第1順方向整流回路、前記第2順方向整流回路及び前記第3順方向整流回路における各ダイオードは、それぞれ前記逆方向整流回路における各ダイオードに隣接して設けられる請求項6に記載の電子変圧器。
【請求項8】
前記第1順方向整流回路、前記第2順方向整流回路及び前記第3順方向整流回路の何れも並列接続されたK個のダイオードを含み、前記逆方向整流回路は3組の並列接続されたK個のダイオードを含み、且つKは2~5の正整数である請求項6に記載の電子変圧器。
【請求項9】
前記第1順方向整流回路における各ダイオードのカソードが前記第1相電源に接続され、前記第2順方向整流回路における各ダイオードのカソードが前記第2相電源に接続され、前記第3順方向整流回路における各ダイオードのカソードが前記第3相電源に接続され、前記第1順方向整流回路、前記第2順方向整流回路及び前記第3順方向整流回路における各ダイオードのアノードが前記第1出力端子に接続され、前記逆方向整流回路における各ダイオードのアノードが前記中性線に接続され、且つ前記逆方向整流回路における各ダイオードのカソードが前記第2出力端子に接続される請求項8に記載の電子変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子変圧器に関し、特に電子変圧器及びその三相四線式電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子変圧器又はコイル型変圧器は、電力電子変換技術と電磁誘導原理に基づく高周波電気エネルギー変換技術を組み合わせ、電力特徴の電気エネルギーを別の電力特徴の電気エネルギーに変換することを実現する設備である。しかしながら、三相交流電圧を直流電圧に変換する際に、従来のコイル型変圧器は、熱損失量が多く、電力消費量が多く、取り付けにくく、効率が低く、輸送が不便であるなどの欠点を有する。これに鑑み、業界では従来のコイル型変圧器の代わりになれる小型電子変圧器の開発に取り組んでいる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様は、第1相電源と第1出力端子との間に接続される第1順方向整流回路と、第2相電源と前記第1出力端子との間に接続される第2順方向整流回路と、第3相電源と前記第1出力端子との間に接続される第3順方向整流回路と、中性線と第2出力端子との間に接続される逆方向整流回路と、を備え、前記第1順方向整流回路、前記第2順方向整流回路及び前記第3順方向整流回路が、前記第1相電源、前記第2相電源及び前記第3相電源に対して半波整流を行い、整流された第1相電源、整流された第2相電源及び整流された第3相電源を発生させ、前記整流された第1相電源、前記整流された第2相電源及び前記整流された第3相電源を前記第1出力端子に重ね合わせて出力電圧とするように配置される電子変圧器である。
【0004】
本開示の別の態様は、第1相電源、第2相電源及び第3相電源を提供するように配置され、中性線を含む電源供給装置と、負荷と、前記電源供給装置と前記負荷の間に接続され、前記第1相電源、前記第2相電源及び前記第3相電源を前記負荷への出力電圧に変換するように配置される以上に記載の電子変圧器と、を備える三相四線式電源システムである。
【0005】
本開示の電子変圧器及びその三相四線式電源システムは、3つの順方向整流回路によりそれぞれ三相電源に対して半波整流を行い、第1出力端子に、均等に割り当てられる出力電流を発生させる。また、負荷に発生したリターン電流は、逆方向整流回路により整流された後、中性線を介して電源供給装置にリターンし、電源供給装置、電子変圧器と負荷の間に完全な電流ループが構成され、且つ、順方向出力電流と逆方向リターン電流の操作が対称で均等であるため、三相四線式電源システムの操作効率を高めることができる。従って、本開示は、電流の割り当てが均等でないことで所定の素子が迅速に損傷されるという問題を解決した。なお、本開示は、後続製品に使用するために三相三線構造に配置する必要がなく、本開示の電子電圧器は、従来の電子変圧器の設計に比べてより簡素化されている。本開示の電子変圧器及びその三相四線式電源システムは、以下のメリットを有する。(1)出力電圧が安定的である。(2)出力電流の割り当てが均等である。(3)回路設計が簡素化され、レイアウト面積が小さくコストが低い。(4)操作温度が安定的で時間の経過につれて上昇することはない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
実施例及びその利点をより完全に把握するために、添付される図面に合わせて行った下記の記載を参照する。
【
図2】
図1の電子変圧器の三相入力電圧及び3つのノード電圧の波形図である。
【
図3】
図1の電子変圧器の第1出力端子における出力電流の波形図である。
【
図4】本開示の実施例による三相四線式電源システムの模式図である。
【
図5】本開示の実施例による電子変圧器の模式図である。
【
図6】
図5に示す電子変圧器の出力電圧の波形図である。
【
図7】
図5に示す電子変圧器の出力電流の波形図である。
【
図8】
図5に示す電子変圧器の100%負荷及び150%負荷の操作条件での温度変化図である。
【
図9】本開示の実施例による電子変圧器の模式図である。
【
図10】本開示の実施例による電子変圧器の模式図である。
【
図11】
図10に示す電子変圧器及び三相四線式電源システムのレイアウト模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施例を詳しく検討する。しかしながら、実施例により多くの適用可能な概念が提供され、これらの概念が様々な特定の内容で実施可能であることが理解されるであろう。
【0008】
本開示において、「接続」に関する説明は、一般的に、素子が他の素子を介して間接に別の素子に接続されること、又は素子が他の素子を介せずに直接に別の素子に接続されることを指す。
【0009】
図1は、三相四線式電源システム(以下、システムと略称される)1の模式図である。システム1は、電源供給装置VSと、電子変圧器10と、負荷LDと、を備える。電源供給装置VSは、それぞれ3本の活線を介して三相電源R、S、Tを電子変圧器10に伝送する。電子変圧器10は、3つのブリッジ整流回路を介してそれぞれ第1相電源R、第2相電源S及び第3相電源Tを整流し、負荷LDに給電する。電子変圧器10は、前段のブリッジ変圧回路及び後段の六相インバータを含む。操作時に、ノードL1、L2、L3の前に、ブリッジ変圧回路は、第1相電源R、第2相電源S及び第3相電源Tに対して整流変換を行うために用いられ、ノードL1、L2、L3の後、六相インバータは、二次整流を行い、コンデンサ15は、第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2との間に接続され、電力の蓄積及び整流された電圧のスムージング、平滑化(即ち、スムージングした)後の電圧を負荷LDに提供するために用いられる。
【0010】
しかしながら、電子変圧器10において、ブリッジ変圧回路の設計によって電圧の割り当てが均等でない現象が引き起こされる。具体的には、第1相電源R及び第2相電源Sを受ける2つのブリッジ整流回路の何れも、ノードL1に接続され、第3相電源Tを受けるブリッジ整流回路は、ノードL2に接続され、中性線Nは、ノードL3に直接接続される。従って、第1相電源R及び第2相電源Sからの変換電圧は、同時にノードL1を介して六相インバータに伝達され、第3相電源Tからの変換電圧は、ノードL2を介して六相インバータに伝達され、中性線Nは、ノードL3を介して六相インバータに接続されるが、電源供給装置VSは、中性線Nに何の電力も提供しない。割り当てが均等でない電圧が六相インバータに伝達されて整流される場合、不均等な電流が発生する。電子変圧器10の操作時間の経過につれて、所定の素子(例えば、ノードL1に接続されるダイオード)は、頻繁に大電流に遭うことで発熱し、他の素子より速く損傷される。また、電力システムにおける三相電源R、S、Tの配線は、順番に繋がっていない可能性があるため、大電流に遭って発熱する素子が一定でなく、将来製品が故障する時の修理難易度が増える。
【0011】
図2は、
図1の電子変圧器10の三相電源R、S、T及びノードL1、L2、L3の電圧波形図である。三相電源R、S、Tは、大きさが等しく、周波数が同じであり、位相の差が互いに120度である交流電圧であり、その線間電圧は、例えば380ボルトであってよく、相電圧は、例えば220ボルトであってよいが、これらに限定されない。第1相電源R及び第2相電源Sからの変換電圧は、同時にノードL1を介して伝達されるため、ノードL1は、2倍の電流ストレスを受けることになる。第3相電源Tからの変換電圧は、ノードL2を介して伝達されるため、ノードL2は、正常な電流ストレスを受けることになる。電源供給装置VSは、中性線Nに電力を提供しないため、ノードL3の電圧は、負荷LDからの逆方向電圧となる。
図2から分かるように、ノードL1、L2、L3に割り当てられた電圧及び電流は均等ではない。
【0012】
図3は、
図1の電子変圧器10の第1出力端子OUT1における電流の波形図である。電流I31、I32、I33は、それぞれノードL1、L2、L3からダイオードを経て出力端子OUT1まで流れる電流である。第1出力端子OUT1では、電流I31は、第1相電源R及び第2相電源Sの変換電圧に基づいて発生したものであるため、二相のこぎり波を有し、電流I32は、第3相電源Tの変換電圧に基づいて発生したものであるため、一相のこぎり波を有し、電流I33は、中性線Nの変換電圧に基づいて発生したものであるため、常にゼロ電流に維持されて何れの相ののこぎり波も有しない。上記から分かるように、電子変圧器10には、操作時に電流が均等でない問題がある。電子変圧器10を長期使用する場合、電流I31を発生させるための所定の素子は、頻繁に大電流に遭うことで発熱して昇温し、他の素子より速く損傷される。また、
図1の電子変圧器10は、多くの電子素子を配置する必要があるため、大きいレイアウト面積が必要とされる。
【0013】
図4は、本開示の実施例による三相四線式電源システム4の模式図である。三相四線式電源システム4は、電源供給装置VSと、電子変圧器40と、負荷LDと、を備える。電子変圧器40は、電源供給装置VSと負荷LDとの間に接続され、電源供給装置VSから第1相電源R、第2相電源S及び第3相電源Tを受けると共に整流変換を行うために用いられ、コンデンサにより電力を蓄積してスムージングした後に負荷LDに給電する。
【0014】
構造的には、電子変圧器40は、第1順方向整流回路41と、第2順方向整流回路42と、第3順方向整流回路43と、逆方向整流回路44と、コンデンサ45と、を備える。第1順方向整流回路41は、電源供給装置VSの第1相電源Rと第1出力端子OUT1との間に接続され、第2順方向整流回路42は、電源供給装置VSの第2相電源Sと第1出力端子OUT1との間に接続され、第3順方向整流回路43は、電源供給装置VSの第3相電源Tと第1出力端子OUT1との間に接続され、逆方向整流回路44は、電源供給装置VSの中性線Nと第2出力端子OUT2との間に接続される。コンデンサ45は、第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2との間に接続される。第2出力端子OUT2は接地する。
【0015】
操作時に、第1順方向整流回路41、第2順方向整流回路42及び第3順方向整流回路43は、それぞれ第1相電源R、第2相電源S及び第3相電源Tに対して半波整流を行い、整流された第1相電源R'、整流された第2相電源S'及び整流された第3相電源T'を発生させ、整流された第1相電源R'、整流された第2相電源S'及び整流された第3相電源T'を第1出力端子OUT1に重ね合わせるように配置される。コンデンサ45は、第1出力端子OUT1に重ね合わせられている電圧を平滑化し(即ち、スムージング)、出力電圧Vdcとして負荷LDに提供する。第1順方向整流回路41、第2順方向整流回路42及び第3順方向整流回路43は、それぞれ第1相電源R、第2相電源S及び第3相電源Tに対して半波整流を行うため、電流の割り当てが均等である。従って、本開示の電子変圧器40及びその三相四線式電源システム4は、所定の素子が頻繁に大電流(即ち、電流の割り当てが均等でない)に遭うことで迅速に損傷されるという問題を解決した。
【0016】
続いて、負荷LDが出力電圧Vdcを受けた後、負荷LDに発生したリターン電流Ireは、更に第2出力端子OUT2を介して電子変圧器40に流れる。逆方向整流回路44は、リターン電流Ireに対して半波整流を行い、整流されたリターン電流Ire'を発生させ、中性線Nを介して電源供給装置VSに送り戻すように配置される。
【0017】
簡単に言えば、電子変圧器40は、第1順方向整流回路41、第2順方向整流回路42及び第3順方向整流回路43によりそれぞれ第1相電源R、第2相電源S及び第3相電源Tに対して半波整流を行い、整流された第1相電源R'、整流された第2相電源S'及び整流された第3相電源T'を第1出力端子OUT1に重ね合わせてから、コンデンサ45により第1出力端子OUT1に重ね合わせられている電圧を平滑化し(即ち、スムージング)、出力電圧Vdcとして負荷LDに提供する。続いて、逆方向整流回路44は、負荷LDに発生したリターン電流Ireに対して半波整流を行い、中性線Nを介して整流されたリターン電流Ire'を電源供給装置VSに送り戻す。
【0018】
換言すれば、電源供給装置VSにより発生した三相電源R、S、Tは、それぞれ電子変圧器40の3つの順方向整流回路41、42、43により整流された後、第1出力端子OUT1を介して出力電流Ioutとして集まって負荷LDに流れ、続いて、負荷LDに発生したリターン電流Ireは、電子変圧器40の逆方向整流回路44により整流された後、中性線Nを介して電源供給装置VSにリターンする。このように、電源供給装置VS、電子変圧器40と負荷LDの間に完全な電流ループが構成され、且つ、順方向出力電流Ioutと逆方向リターン電流Ireの操作が対称で均等であるため、三相四線式電源システム4の操作効率を高めることができる。
【0019】
図5は、本開示の実施例による電子変圧器50の模式図である。電子変圧器50は、
図4の三相四線式電源システム4に用いられ、電子変圧器40の代わりとされてよい。構造的には、電子変圧器50は、第1順方向整流回路51と、第2順方向整流回路52と、第3順方向整流回路53と、逆方向整流回路54と、コンデンサ55と、を備える。第1順方向整流回路51はダイオードD1、D2を含み、第2順方向整流回路52はダイオードD3、D4を含み、第3順方向整流回路53はダイオードD5、D6を含み、逆方向整流回路54はダイオードD7、D8を含む。
【0020】
本実施例において、各整流回路51、52、53、54は、並列接続された2つのダイオードを含む(例えば整流回路51におけるダイオードD1、D2は並列接続される)。第1順方向整流回路51における各ダイオードD1、D2のカソードが第1相電源Rに接続され、第2順方向整流回路52における各ダイオードD3、D4のカソードが第2相電源Sに接続され、第3順方向整流回路53における各ダイオードD5、D6のカソードが第3相電源Tに接続され、第1順方向整流回路51、第2順方向整流回路52及び第3順方向整流回路53における各ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6のアノードが第1出力端子OUT1に接続される。逆方向整流回路54における各ダイオードD7、D8のアノードが中性線Nに接続され、且つ逆方向整流回路54における各ダイオードD7、D8のカソードが第2出力端子OUT2に接続される。コンデンサ55は、第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2との間に接続される。電子変圧器50と40の操作方法は類似するため、ここで繰り返して説明しない。
【0021】
各整流回路51、52、53、54がK個の同じダイオードD1、D2、…、DKを有すれば、このK個のダイオードD1、D2、…、DKが並列接続された後の総電流I_TOTAL、総電力P_TOTAL及び総抵抗R_TOTALは、以下の関数(1)、(2)、(3)で表されてよい(ただし、「*」は乗算記号を表す)ことに留意されたい。
それぞれダイオードD1、D2、…DKを流れる電流I_D1、I_D2、…、I_DKの何れもI_Dとされ、ダイオードD1、D2、…、DKの抵抗率の何れもR_Dとされる。各整流回路において、関数(1)、(2)、(3)から分かるように、総電力P_TOTALは、ダイオードの数Kに反比例する(総電流が変わらないように維持されるため)。つまり、整流回路の総電力の損失は、並列接続されたダイオードの数Kの増加につれて低下する。
【0022】
K個のダイオードが並列接続された後に各ダイオードを流れる電流の大きさは、以下の表1で表されてよい。
【0023】
表1から分かるように、数Kが5及び6である場合に対応する2つの電流の差は3%であり、電流の低下幅が顕著ではない。電子変圧器50の消費電力及びレイアウト面積などの仕様を総合的に考慮すれば、幾つかの実施例において、各整流回路51、52、53、54内における並列接続されたダイオードの数Kは、2つ~5つであってよい。また、
図1に示す多くの電子素子(即ち、3つのブリッジ整流回路、六相インバータ)が配置されている電子変圧器10に比べ、
図4に示す電子変圧器40に少ない電子素子が配置されているため、レイアウト面積を節約することができる。
【0024】
一実施例において、各ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8は、PN接合ダイオード又は高速整流ダイオードである。
【0025】
図6は、
図5に示す電子変圧器50の出力電圧Vdcの波形図である。電圧と電流が均等であるアーキテクチャでは、電力を蓄積してスムージングする適切なコンデンサ55を選択することは、従来の二段整流を行う電子変圧器に対して、出力電圧が依然として比較的安定的であり、メリットを有する。
【0026】
図7は、
図5に示す電子変圧器50の出力電流Ioutの波形図であり、電流I71、I72、I73は、それぞれ順方向整流回路51、52、53から出力された電流である。電流I71、I72、I73は、第1出力端子OUT1に集まり、電子変圧器50の出力電流Ioutを形成する。
図7から分かるように、三相電源R、S、Tが順方向整流回路51、52、53を均等に通過して半波整流されるため、均等に割り当てられた電流I71、I72、I73を発生させることができる。従って、本開示の電子変圧器50は、所定の素子が頻繁に大電流(即ち、電流の割り当てが均等でない)に遭うことで迅速に損傷されるという問題を解決した。
【0027】
図8は、
図5に示す電子変圧器50の100%負荷及び150%負荷の操作条件での温度変化図であり、曲線81、82は、それぞれ100%負荷及び150%負荷の温度変化に対応する。
図8から分かるように、電源投入初期に瞬間的に最大温度まで昇温した以外に、操作時間の経過につれて、全負荷(100%負荷)の操作条件で、電子変圧器50の温度は、常に時間につれて徐々に上昇することなく所定の範囲(例えば摂氏71度~77度)内に保つことができる。また、過負荷(150%負荷)の操作条件で、電子変圧器50の温度は、時間につれて徐々に上昇することなく所定の範囲(例えば摂氏78度~84度)内に保つことができる。従って、本開示の電子変圧器50は、温度が安定的で時間の経過につれて上昇しない利点を有する。
【0028】
電子変圧器50のテスト条件及び結果は、以下の表2に纏めることができる。
【0029】
図9は、本開示の実施例による電子変圧器90の模式図である。電子変圧器90は、
図4の三相四線式電源システム4に用いられ、電子変圧器40の代わりとされてよい。構造的には、電子変圧器90は、第1順方向整流回路91と、第2順方向整流回路92と、第3順方向整流回路93と、逆方向整流回路94と、コンデンサ95と、を備える。第1順方向整流回路91はダイオードD91を含み、第2順方向整流回路92はダイオードD92を含み、第3順方向整流回路93はダイオードD93を含み、逆方向整流回路94はダイオードD94、D95、D96を含む。
【0030】
幾つかの実施例において、1つの順方向整流回路のダイオードの数と1つの逆方向整流回路のダイオードの数の比は、1:3である。即ち、第1順方向整流回路、第2順方向整流回路及び第3順方向整流回路の何れも、並列接続されたK個のダイオードを含み、逆方向整流回路は、3組の並列接続されたK個のダイオードを含む。例えば、本実施例において、順方向整流回路91(又は92、93)は1つのダイオードD91(又はD92、D93)を含み、逆方向整流回路94は3つのダイオードD94、D95、D96を含むため、ダイオードの数の比は1:3である。換言すれば、3つの順方向整流回路91、92、93に含まれるダイオードの数(即ち、3つの順バイアスダイオードD91、D92、D93)は、1つの逆方向整流回路94に含まれるダイオードの数(即ち、3つの逆バイアスダイオードD94、D95、D96)に等しい。
【0031】
図9の構造では、長期から見れば、3つの順方向ダイオードD94、D95、D96を流れる平均電流は、それぞれ(1/3)*Ioutであり、3つの逆方向ダイオードD94、D95、D96を流れる平均電流は、それぞれ(1/3)*Ireである。従って、出力電流Ioutは、3つの順方向ダイオードD94、D95、D96に均等に割り当てられ、リターン電流Ireも、3つの逆バイアスダイオードD94、D95、D96に均等に割り当てられ、このように、所定の素子が頻繁に大電流に遭う(即ち、電流の割り当てが均等でない)ことで迅速に損傷されるという問題を解決したため、電子変圧器90の操作温度をより安定的にすることができる。
【0032】
図5の実施例から分かるように、並列接続されたダイオードの数Kの増加につれて、各ダイオードの電流が下り、各ダイオードの損失が下る。従って、幾つかの実施例において、並列接続されたダイオードの数Kが2である場合、順方向整流回路91、92、93は、それぞれ並列接続された2つのダイオードを含み、逆方向整流回路94は、並列接続された6つのダイオードを含み、このように類推される。
【0033】
図10は、本開示の実施例による電子変圧器99の模式図である。電子変圧器99と90は同じ素子を含み、素子の間の接続関係も同じである。電子変圧器99と90の相違点は、ダイオードD91とD94、D92とD95、D93とD96が隣接して設けられることである。各順方向及び逆方向ダイオードにとって、順方向電流(1/3)*Iout及び逆方向電流(1/3)*Ireは、大きさが等しく方向が逆であり、1つの順方向ダイオードと1つの逆方向ダイオードとその線が隣接して設けられると、差動ペア(Differential pair)が構成され、このようにすれば、三相電源の電力伝送効率を高めることができる。
【0034】
図11は、
図10に示す電子変圧器99及び三相四線式電源システム11のレイアウト模式図である。三相四線式電源システム11は、XY平面に形成され、第1表面SF1及び第2表面SF2を含む回路基板110を備える。構造的には、電源供給装置VS、順方向整流回路91のダイオードD91(順方向整流回路92、93のダイオードD92、D93が図示されていない)、第1電源Rを伝達するための活線(第2相電源S及び第3相電源Tを伝達するための活線が図示されていない)及び負荷LDは、第1表面SF1に設けられ、逆方向整流回路94のダイオードD94(ダイオードD95、D96が図示されていない)及び中性線Nは、第2表面SF2に設けられている。第1スルーホール111は、回路基板110に形成され、Z方向に延伸して、電源供給装置VSと中性線Nを接続するように配置される。第2スルーホール112は、回路基板110に形成され、Z方向に延伸して、負荷LDと中性線Nを接続するように配置される。一実施例において、コネクタは、電源供給装置VSを接続するように回路基板110に設けられてよく、別のコネクタは、負荷LDを接続するように回路基板110に設けられてよいため、電源供給装置VS及び負荷LDは外部装置であってよい。
【0035】
図11の構造では、順方向ダイオードD91に発生した順方向電流(1/3)*Ioutは、活線を介して負荷LDに提供された後、負荷LDに発生した逆方向電流(1/3)*Ireは逆方向ダイオードD94に提供されてから、中性線Nを介して電源供給装置VSにリターンする。このように、電源供給装置VS、電子変圧器99と負荷LDの間に完全な電流ループCLが構成され、且つ、順方向出力電流と逆方向リターン電流の操作が対称で均等であるため、三相四線式電源システム11の操作効率を高めることができる。
【0036】
一実施例において、第1表面SF1に設けられている三相電源R、S、Tを伝達するための活線及び順方向ダイオード(D91、D92、D93を含む)のXY平面への投影と、第2表面SF2に設けられている中性線N及び逆方向ダイオード(D94、D95、D96を含む)のXY平面への投影は、互いに重なる。この構造では、電流ループCLの面積は、回路基板110のZ方向における厚さと中性線N(又は活線)のX方向における線長さに近似し、電流ループCLの面積が最小値に近似するようにして、電流ループCLに発生した電磁放射(即ち、エネルギー損失)を最小化する。他の実施例において、回路基板110が多層板(例えば4層、6層又はより多くの層)である場合、三相電源R、S、Tを伝達するための活線及び中性線Nのうちの少なくとも1つは、回路基板110の内層に形成されてよく、このようにすれば、電流ループCLの面積を更に減少させることができ、電流ループCLに発生した電磁放射(即ち、エネルギー損失)を低減するように、回路基板110の表層により電磁遮蔽を実現してもよい。
【0037】
以上を纏めると、本開示の電子変圧器及びその三相四線式電源システムは、3つの順方向整流回路によりそれぞれ三相電源に対して半波整流を行い、第1出力端子に、均等に割り当てられる出力電流を発生させる。従って、本開示は、所定の素子が頻繁に大電流(即ち、電流の割り当てが均等でない)に遭うことで迅速に損傷されるという問題を解決した。また、負荷に発生したリターン電流は、逆方向整流回路により整流された後、中性線を介して電源供給装置にリターンし、電源供給装置、電子変圧器と負荷の間に完全な電流ループが構成され、且つ、順方向出力電流と逆方向リターン電流の操作が対称で均等であるため、三相四線式電源システムの操作効率を高めることができる。本開示の電子変圧器及びその三相四線式電源システムは、以下のメリットを有する。(1)出力電圧が安定的である。(2)出力電流の割り当てが均等である。(3)回路設計が簡素化され、レイアウト面積が小さくコストが低い。(4)操作温度が安定的で時間の経過につれて上昇することはない。
【0038】
本開示は、実施例により前述の通りに開示されたが、当業者であれば、本開示の精神と範囲から逸脱しない限り、何らかの変更や修飾を加えることができる。従って、本開示の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0039】
1、4、11 三相四線式電源システム
10、40、50、90、99 電子変圧器
41、51、91 第1順方向整流回路
42、52、92 第2順方向整流回路
43、53、93 第3順方向整流回路
44、54、94 逆方向整流回路
45、55、95 コンデンサ
81、82 曲線
110 回路基板
CL 電流ループ
D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D91、D92、D93、D94、D95、D96 ダイオード
Iout 出力電流
Ire、Ire' リターン電流
L1、L2、L3 ノード
LD 負荷
N 中性線
OUT1 第1出力端子
OUT2 第2出力端子
R、R' 第1相電源
S、S' 第2相電源
T、T' 第3相電源
Vdc 出力電圧
VS 電源供給装置