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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028171
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/57 20230101AFI20240222BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240222BHJP
   H10K 30/82 20230101ALI20240222BHJP
   H10K 30/85 20230101ALI20240222BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20240222BHJP
【FI】
H10K30/57
H10K30/40
H10K30/82
H10K30/85
H10K30/86
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129758
(22)【出願日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】202210991928.5
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523303633
【氏名又は名称】天合光能股分有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】譚 海仁
(72)【発明者】
【氏名】夏 ▲ルイ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 紅江
(72)【発明者】
【氏名】羅 皓文
(72)【発明者】
【氏名】張 学玲
(72)【発明者】
【氏名】徐 冠超
(72)【発明者】
【氏名】陳 奕峰
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA11
5F251DA03
5F251DA04
5F251DA16
5F251DA18
5F251FA02
5F251FA08
5F251GA04
5F251GA15
5F251XA01
5F251XA54
5F251XA55
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】第1電池と、第2電池とを備え、第1電池の第1光電変換層10と第2電池の第2光電変換層20との間に、第1電荷輸送層31と、透明導電層32と、第2電荷輸送層33と、多結晶シリコン層34とが設けられ、第2電荷輸送層が、多結晶シリコン層と透明導電層との間に設けられ、前記第2電荷輸送層と前記多結晶シリコン層との電荷輸送特性が同じである太陽電池に関する。本発明に係る太陽電池では、第1光電変換層と第2光電変換層との間に、第1電荷輸送層、透明導電層、第2電荷輸送層及び多結晶シリコン層が順次設けられ、特に、第2電荷輸送層の設置は、多結晶シリコン層を保護することができ、同一種類の電荷を効果的に輸送することができ、界面又は薄膜内部での再結合現象の発生を回避し、電池効率を効果的に向上させることができる。
【効果】本願の太陽電池は、構造が簡単で、製造プロセスが簡便で、コストが低いなどの特徴を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
第1バンドギャップを有する第1光電変換材料を含む第1光電変換層を備える第1電池と、
第2バンドギャップを有する第2光電変換材料を含む第2光電変換層を備える第2電池と、を備え、
前記第1バンドギャップは、前記第2バンドギャップと等しくなく、
前記第1光電変換層と前記第2光電変換層との間には、第1電荷輸送層と、透明導電層と、第2電荷輸送層と、多結晶シリコン層とがこの順に設けられ、
前記第2電荷輸送層は、前記多結晶シリコン層と前記透明導電層との間に設けられ、
前記第2電荷輸送層は、前記多結晶シリコン層と同じ電荷輸送特性を有する
太陽電池。
【請求項2】
前記多結晶シリコン層の多結晶シリコンはp型多結晶シリコンであり、
前記第2電荷輸送層の構成材料は、p型電荷輸送材料である
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1電荷輸送層の構成材料は、n型電荷輸送材料である
請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記多結晶シリコン層の多結晶シリコンはn型多結晶シリコンであり、
前記第2電荷輸送層の構成材料は、n型電荷輸送材料である
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1電荷輸送層の構成材料は、p型電荷輸送材料である
請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記p型電荷輸送材料は、NiOx(xは0.1~10)、CuFeO2、CuAlO2、CuSCN、Cu2O、WO3、CuI2、MoS2、FeS2、P3HT、Spiro-meoTAD、Poly-TBD、PFN、PEDOT:PSS、PTAA、Spiro-TTBから選択される1つ又は複数を含み、
前記n型電荷輸送材料は、TiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、In2O3、CdS、CdSe、BaSnO3、Nb2O5、C60、PCBMから選択される1つ又は複数を含む
請求項3または請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1電荷輸送層の厚さは、前記第2電荷輸送層の厚さよりも大きい
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第1電荷輸送層の厚さは1-500nmである
請求項7に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第2電荷輸送層は、前記多結晶シリコン層の第2光電変換層から離れた表面に貼り合わされ、且つ前記多結晶シリコン層の上に位置し、
前記透明導電層は、前記第2電荷輸送層の第2光電変換層から離れた表面に貼り合わされ、且つ前記第2電荷輸送層の上に位置する
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記透明導電層の厚さは、1-1000nmであり、
前記透明導電層の材料がTiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、GZO、AZO、IZO、FTO、ITO、BaSnO3、TiドープSnO2、ZnドープSnO2から選択される1種又は複数種を含む
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第1光電変換材料はペロブスカイト、アモルファスシリコン、GaInP、CdTe、銅インジウムガリウムセレン薄膜から選択され、
前記第2光電変換材料は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、GaAs、CdTe、ペロブスカイトから選択される
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第1光電変換材料はバンドギャップが1.40-2.3eVであるペロブスカイト材料であり、前記第1光電変換層の厚さは1-5000nmである
請求項11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第2光電変換材料は、単結晶シリコンである
請求項11に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記太陽電池は、入光面から積層設置された上部金属電極、上部透明導電層、第3電荷輸送層、前記第1光電変換層、前記第1電荷輸送層、前記透明導電層、前記第2電荷輸送層、前記多結晶シリコン層、トンネル層、前記第2光電変換層、パッシベーション層、及び底部金属電極を含み、
ここで、前記第3電荷輸送層の構成材料は、前記第2電荷輸送層の構成材料と同じ電荷輸送特性を有する
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第3電荷輸送層の厚さは、前記第2電荷輸送層の厚さより大きい
請求項14に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記第3電荷輸送層の厚さは、1-500nmである
請求項15に記載の太陽電池。
【請求項17】
前記第1光電変換層の厚さは100-1000nmであり、前記第1光電変換材料はバンドギャップが1.40-2.3eVであるペロブスカイトであり、
前記第2光電変換層の厚さは1-200μmであり、前記第2光電変換材料はn型単結晶シリコンである
請求項14に記載の太陽電池。
【請求項18】
前記ペロブスカイトの材料は、3次元ABX3構造を有し、ここで、AはCH(NH2)2+、CH3NH3+、C(NH2)3+、Cs+及びRb+のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、Bは、Pb2+、Sn2+及びSr2+のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、Xは、Br-、I-及びCl-のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む
請求項17に記載の太陽電池。
【請求項19】
前記上部透明導電層の厚さは0.1-1000nmであり、前記透明導電層の厚さは0.1-1000nmであり、前記上部透明導電層と前記透明導電層の材料はそれぞれTiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、GZO、AZO、IZO、FTO、ITO、BaSnO3、TiドープSnO2、ZnドープSnO2から選ばれる1種又は複数種を含み、
前記上部金属電極及び底部金属電極の材料は、Au、Ag、Al及びCuのうちの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記第3電荷輸送層の厚さは1-500nmであり、前記第2電荷輸送層の厚さは1-100nmであり、前記第3電荷輸送層と前記第2電荷輸送層の構成材料はそれぞれTiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、In2O3、CdS、CdSe、BaSnO3、Nb2O5、C60、PCBMから選ばれる1種又は複数種を含み、
前記第1電荷輸送層の厚さは1-500nmであり、構成材料が、NiOx(xは0.1~10)、CuFeO2、CuAlO2、CuSCN、Cu2O、WO3、CuI2、MoS2、FeS2、P3HT、Spiro-meoTAD、Poly-TBD、PFN、PEDOT:PSS、PTAA、Spiro-TTBから選択される1つ又は複数を含み、
前記第1電荷輸送層の厚さは、前記第2電荷輸送層の厚さよりも大きく、
前記多結晶シリコン層の厚さは1nm-100μmであり、材料がn型多結晶シリコンであり、
前記パッシベーション層の厚さは0.1-500μmであり、材料がSiO2、窒化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸窒化ケイ素のうちの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記トンネル層の厚さは0.1-100nmである
請求項14に記載の太陽電池。
【請求項20】
太陽電池を製造する方法であって、
第2バンドギャップを有する第2光電変換材料を含む第2光電変換層を有する第2電池を形成することと、
前記第2光電変換層に、多結晶シリコン層、第2電荷輸送層、透明導電層及び第1電荷輸送層を順次形成することと、
前記第2バンドギャップと等しくない第1バンドギャップを有する第1光電変換材料を含む第1光電変換層を有する第1電池を形成することとを含み、
ここで、前記第2電荷輸送層は、熱蒸着法、原子層堆積法、快速プラズマ堆積法又は溶液法によって形成される
太陽電池を製造する方法。
【請求項21】
前記透明導電層は、物理気相成長法により形成される
請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンエネルギーとして現在広く使用されており、特に、カーボンニュートラル及び省エネルギーが国際社会の主流の傾向になるにつれて、太陽光発電は、クリーンエネルギーの重要な一環として、より多くの関心が得られている。しかしながら、現在の太陽電池の光利用効率は依然として理想状態に達しておらず、依然として太陽電池の構造を合理的に設計し、電池効率を向上させる必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様において、本願の太陽電池は、第1バンドギャップを有する第1光電変換材料を含む第1光電変換層を備える第1電池と、第2バンドギャップを有する第2光電変換材料を含む第2光電変換層を備える第2電池と、を備え、前記第1バンドギャップは、前記第2バンドギャップと等しくなく、前記第1光電変換層と前記第2光電変換層との間には、第1電荷輸送層と、透明導電層と、第2電荷輸送層と、多結晶シリコン層とがこの順に設けられ、前記第2電荷輸送層は、前記多結晶シリコン層と前記透明導電層との間に設けられ、前記第2電荷輸送層は、前記多結晶シリコン層と同じ電荷輸送特性を有する。
【0004】
別の態様において、本願の太陽電池を製造する方法は、第2バンドギャップを有する第2光電変換材料を含む第2光電変換層を有する第2電池を形成することと、前記第2光電変換層に、多結晶シリコン層、第2電荷輸送層、透明導電層及び第1電荷輸送層を順次形成することと、前記第2バンドギャップと等しくない第1バンドギャップを有する第1光電変換材料を含む第1光電変換層を有する第1電池を形成することとを含み、ここで、前記第2電荷輸送層は、熱蒸着法、原子層堆積法、快速プラズマ堆積法又は溶液法によって形成される。
【発明の効果】
【0005】
本願の太陽電池は、第1光電変換層と第2光電変換層との間に、第1電荷輸送層、透明導電層、第2電荷輸送層及び多結晶シリコン層が順次設けられ、特に、第2電荷輸送層の設置は、多結晶シリコン層を保護することができ、同一種類の電荷を効果的に輸送することができ、界面又は薄膜内部での再結合現象の発生を回避し、電池効率を効果的に向上させることができる。本願の太陽電池は、構造が簡単で、製造プロセスが簡便で、コストが低いなどの特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本願の太陽電池の一実施形態の構造を示す模式図である。
図2】実施例1及び比較例1で得られた太陽電池の電流密度-電圧の曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面と実施例により本願をさらに詳しく説明する。これらの説明により、本願の特徴及び利点は、より明確になる。
【0008】
ここで、用語「例示的」は、「例または実施例として使用される、あるいは説明的」ということを意味する。ここで、「例示的」として説明されるいずれかの実施例は、必ずしも他の実施例より優れていると解釈される必要はない。図面は実施例の種々の態様を示しているが、特に記載のない限り、図面は縮尺通りに描かれている必要はない。
【0009】
また、以下に説明する本願の異なる実施形態に係る技術的特徴は、互いに矛盾しない限り互いに結合することができる。
【0010】
本出願は、太陽電池を提供する。太陽電池は、第1バンドギャップを有する第1光電変換材料を含む第1光電変換層を備えた第1電池と、第2のバンドギャップを有する第2の光電変換材料を含む第2の光電変換層を備えた第2電池と、を含む。第1バンドギャップは、第2バンドギャップと等しくない。第1光電変換層と第2光電変換層との間には、第1電荷輸送層と、透明導電層と、第2電荷輸送層と、多結晶シリコン層とがこの順に設けられる。第2電荷輸送層は、多結晶シリコン層と透明導電層との間に設けられ、電荷輸送特性が多結晶シリコン層と同じである。第1電荷輸送層は、第1光電変換層と透明導電層との間に設けられ、電荷輸送特性が第2電荷輸送層と逆である。
【0011】
図1は、本願の太陽電池の一実施形態を示す。以下、図1を参照して本願の太陽電池をさらに説明する。
【0012】
本願の太陽電池は積層構造であり、第1電池と第2電池と、第1電池及び第2電池の光電変換層との間の中間構造とを備える。
【0013】
第1電池は、第1バンドギャップを有する第1光電変換材料を含む第1光電変換層10を含む。第2電池は、第2バンドギャップを有する第2光電変換材料を含む第2光電変換層20を含む。第1光電変換層10が第2光電変換層20の上方に位置するように、第1電池は第2電池の上方に位置する。一実施形態において、第1光電変換材料の第1バンドギャップは、第2光電変換材料の第2バンドギャップよりも大きくてもよい。もちろん、第1光電変換材料の第1バンドギャップは、第2光電変換材料の第2バンドギャップよりも小さくてもよい。ただし、第1光電変換材料の第1バンドギャップは、第2光電変換材料の第2バンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0014】
一実施形態において、第1光電変換材料はペロブスカイト、アモルファスシリコン、GaInP、CdTe、銅インジウムガリウムセレン薄膜から選択され、好ましくは、第1光電変換材料はペロブスカイトである。
【0015】
一実施形態において、第2光電変換材料は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、GaAs、CdTe、ペロブスカイトから選択され、好ましくは、第2光電変換材料は、単結晶シリコンである。第2光電変換層20の厚さは、1-500μm、例えば1-200μmであってもよい。
【0016】
本願には、ペロブスカイトは、ABX3であってもよく、ここで、Aは、FA、MA、Cs+及びRb+のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、Bは、Pb2+、Sn2+及びSr2+のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含み、Xは、Br-、I-及びCl-のいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。ペロブスカイト層のバンドギャップは、1.40-2.3eVであってもよい。ペロブスカイト材料からなるペロブスカイト層の厚さは1-5000nmであってもよく、例えば、ペロブスカイト層の厚さは100-1000nmであってもよく、例えば、厚さは100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm又は1000nmであってもよい。
【0017】
第1電池及び第2電池の光電変換層10、20の間の中間構造は、少なくとも、第1電荷輸送層31と、透明導電層32と、第2電荷輸送層33と、多結晶シリコン層34とを含む。特に、第1光電変換材料がペロブスカイト材料であり、第2光電変換材料が単結晶シリコンである実施形態において、第1電荷輸送層31、透明導電層32、第2電荷輸送層33及び多結晶シリコン層34を上から下へ(入射面を上として)順次設けることができる。
【0018】
以下、第1電荷輸送層31、透明導電層32、第2電荷輸送層33及び多結晶シリコン層34についてそれぞれ説明する。
【0019】
一実施形態において、多結晶シリコン層34の多結晶シリコンはn型多結晶シリコンであり、厚さは1nm-100μmである。一実施形態において、多結晶シリコン層34の多結晶シリコンはp型多結晶シリコンであり、厚さは1nm-100μmである。当該多結晶シリコン層34の形成方法は、低圧化学気相成長法(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、LPCVD)又はプラズマ強化化学気相成長法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、PECVD)を含むことができる。
【0020】
本願において、第2電荷輸送層33は、多結晶シリコン層34と透明導電層32との間に設けられ、第2電荷輸送層33の厚さは、透明導電層32の厚さよりも小さく、且つ、第2電荷輸送層33と多結晶シリコン層34との電荷輸送特性は同じである。第1電荷輸送層31は、第1光電変換層10と透明導電層32との間に設けられ、第1電荷輸送層31と第2電荷輸送層33との電荷輸送特性は、逆である。
【0021】
一実施形態において、第2電荷輸送層33は、多結晶シリコン層34の第2光電変換層20から離れた表面に貼り合わされ、且つ多結晶シリコン層34の上に位置する。多結晶シリコン層34に第2電荷輸送層33を形成する際、多結晶シリコン層34へのダメージを避けるために、比較的温和なプロセスで当該第2電荷輸送層33を製造することができる。本願において、第2電荷輸送層33の厚さは、0.1-100nm、例えば1-50nm、1-20nmであってもよい。第2電荷輸送層33は、多結晶シリコン層34の表面を保護するとともに、電荷輸送の役割も果たすことができる。第2電荷輸送層33の製造方法は、熱蒸着法、原子層堆積法(ALD)、快速プラズマ堆積法又は溶液法などを含んでもよい。第2電荷輸送層33により、薄膜を堆積する際の多結晶シリコン層34の損傷を低減して、界面を最適化し、積層電池の効率を向上させる目的を達成することができる。
【0022】
本願において、第2電荷輸送層33の電荷輸送特性は、多結晶シリコン層34の性質に応じて調整することができる。多結晶シリコン層34の多結晶シリコンがp型多結晶シリコンである場合、第2電荷輸送層33の構成材料はp型電荷輸送材料であり、多結晶シリコン層34の多結晶シリコンがn型多結晶シリコンである場合、第2電荷輸送層33の構成材料はn型電荷輸送材料である。このようにすれば、電荷輸送類型の整合性を維持することができ、同一種類の電荷を効果的に輸送し、界面又は薄膜内部での再結合現象の発生を回避することができる。
【0023】
本願において、p型電荷輸送材料は、NiOx(xは0.1~10)、CuFeO2、CuAlO2、CuSCN、Cu2O、WO3、CuI2、MoS2、FeS2、P3HT、Spiro-meoTAD、Poly-TBD、PFN、PEDOT:PSS、PTAA、Spiro-TTBから選択される1つ又は複数であってもよい。n型電荷輸送材料は、TiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、In2O3、CdS、CdSe、BaSnO3、Nb2O5、C60、PCBMから選択される1種または複数種であってもよい。
【0024】
本願において、透明導電層32は、第2電荷輸送層33の上方に設けられる。一実施形態において、透明導電層32は、第2電荷輸送層33の第2光電変換層20から離れた表面に貼り合わされ、且つ第2電荷輸送層33の上に位置する。一実施形態において、透明導電層32の厚さは1-1000nmであってもよく、例えば、1-100nm、例えば20nmである。
【0025】
一実施形態において、透明導電層32の材料は、TiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、GZO、AZO、IZO、FTO、ITO、BaSnO3、TiドープSnO2、ZnドープSnO2から選ばれる1種又は複数種であってもよく、好ましくは、横方向導電が比較的強い材料、例えばITO、IZOなどであってもよい。その製造方法は、物理気相成長法、溶液法、熱蒸着法、電子ビーム熱蒸着法、原子層堆積法であってもよいが、一般的に物理気相成長法を採用することができる。
【0026】
本願において、透明導電層32の材料は、第2電荷輸送層33の材料と異なる。本願において、第1光電変換層10と第2光電変換層20との間には、第1電荷輸送層31がさらに含まれる。この第1電荷輸送層31は、通常、透明導電層32の上方に設けられる。一実施形態において、第1電荷輸送層31は、透明導電層32の第2光電変換層20から離れた表面に貼り合わされ、且つ透明導電層32の上に位置する。
【0027】
第1電荷輸送層31及び第2電荷輸送層33は、いずれも電荷輸送層であるが、製造方法、厚さ等において異なる要求がある。本願において、第1電荷輸送層31の厚さは、1-500nm、例えば1-100nm、例えば30nmであってもよい。一実施形態において、第1電荷輸送層31の厚さは、第2電荷輸送層33の厚さよりも大きくてもよい。
【0028】
第1電荷輸送層31と第2電荷輸送層33の電荷輸送特性は逆である。第2電荷輸送層33の構成材料がn型電荷輸送材料である場合、第1電荷輸送層31の構成材料はp型電荷輸送材料であり、第2電荷輸送層33の構成材料がp型電荷輸送材料である場合、第1電荷輸送層31の構成材料はn型電荷輸送材料である。このようにすることで、第1電池と第2電池の電流の整合性を得て、第1光電変換層10を含む第1電池が下向きに輸送する電荷の種類と、第2光電変換層20を含む第2電池が上向きに輸送する電荷の種類とが逆になれる。
【0029】
本願において、p型電荷輸送材料は、NiOx(xは0.1~10)、CuFeO2、CuAlO2、CuSCN、Cu2O;WO3、CuI2、MoS2、FeS2、P3HT、Spiro-meoTAD、Poly-TBD、PFN、PEDOT:PSS、PTAA、Spiro-TTBから選択される1つ又は複数であってもよい。n型電荷輸送材料は、TiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、In2O3、CdS、CdSe、BaSnO3、Nb2O5、C60、PCBMから選択される1種または複数種であってもよい。
【0030】
第1電荷輸送層31の製造方法は、溶液法、熱蒸着法、スパッタリング法または原子層堆積法などであってもよい。
【0031】
図1に示すように、太陽電池は、入光面から積層設置された下記の層を含む:上部金属電極11、上部透明導電層12、第3電荷輸送層13、第1光電変換層10、第1電荷輸送層31、透明導電層32、第2電荷輸送層33、多結晶シリコン層34、トンネル層21、第2光電変換層20、拡散シリコン層22、パッシベーション層23、及び底部金属電極24。
【0032】
本願において、多結晶シリコン層34と第2光電変換層(単結晶シリコン層)20との間にトンネル層21が存在してもよい。トンネル層21の形成方法は、高温熱酸化法、硝酸酸化法及びオゾン酸化法を含む。トンネル層21の厚さは、0.1-100nmであってもよい。
【0033】
本願において、第2光電変換層(単結晶シリコン層)20のトンネル層21から離れた面に、拡散シリコン層22が形成されてもよく、拡散シリコン層22の電荷輸送特性は、第2光電変換層(単結晶シリコン層)20の電荷輸送特性と逆である。一実施形態において、第2光電変換層(単結晶シリコン層)20はn型単結晶シリコンであり、拡散シリコン層22はp型単結晶シリコンである。
【0034】
拡散シリコン層22のトンネル層21から離れた表面には、パッシベーション層23が設けられていてもよい。パッシベーション層23の厚さは0.1-500μmであってもよく、材料はSiO2、窒化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸窒化ケイ素のうちの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0035】
拡散シリコン層22には、少なくとも1つの底部金属電極24が挿設されている。底部金属電極24の材料は、Au、Ag、Al及びCuのうちの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0036】
これにより、第2光電変換層20を含む第2電池が形成される。
【0037】
第1光電変換層10の上に第3電荷輸送層13を形成してもよい。第3電荷輸送層13及び第1電荷輸送層31がそれぞれ第1光電変換層10から異なる種類の電荷を抽出して外部回路に輸送することができる。第3電荷輸送層13の構成材料は、第2電荷輸送層33の構成材料と同じ電荷輸送特性を有し、第1電荷輸送層31の構成材料の電荷輸送特性とは逆である。第2電荷輸送層33の構成材料がn型電荷輸送材料である場合、第3電荷輸送層13の構成材料はn型電荷輸送材料であり、第2電荷輸送層33の構成材料がp型電荷輸送材料である場合、第3電荷輸送層13の構成材料はp型電荷輸送材料である。
【0038】
本願において、p型電荷輸送材料は、NiOx(xは0.1~10)、CuFeO2、CuAlO2、CuSCN、Cu2O;WO3、CuI2、MoS2、FeS2、P3HT、Spiro-meoTAD、Poly-TBD、PFN、PEDOT:PSS、PTAA、Spiro-TTBから選択される1つ又は複数であってもよい。n型電荷輸送材料は、TiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、In2O3、CdS、CdSe、BaSnO3、Nb2O5、C60、PCBMから選択される1種または複数種であってもよい。
【0039】
第3電荷輸送層13の厚さは、1-500nmであり、第2電荷輸送層33の厚さよりも厚い。第3電荷輸送層13の製造方法は、溶液法、熱蒸着法、スパッタリング法、原子層堆積法などであってもよい。
【0040】
第3電荷輸送層13の上に、上部透明導電層12を形成してもよい。一実施形態において、上部透明導電層12の厚さは、0.1-1000nmであってもよく、材料は、TiO2、SnO2、ZnO、ZrO2、GZO、AZO、IZO、FTO、ITO、BaSnO3、TiドープSnO2、ZnドープSnO2から選択される1種又は複数種であってもよい。その製造方法は、スパッタリング法、溶液法、熱蒸着法、電子ビーム熱蒸着法、原子層堆積法であってもよいが、一般的にスパッタリング法を採用することができる。
【0041】
上部透明導電層12に少なくとも1つの上部金属電極11を形成してもよい。上部金属電極11の材料は、Au、Ag、Al及びCuのうちの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0042】
これにより、第1光電変換層10を含む第1電池を形成することができる。
【0043】
必要に応じて、第2電池と第1電池の各層の間に他の層を設けることにより、界面を調節又は不動態化し、デバイスの効率を向上させることができる。例えば、第3電荷輸送層13と第1光電変換層10との間にバッファ層14を形成してもよい。バッファ層14の材料は、酸化モリブデン、LiF、C60、SnO2、TiO2、SiO2などのうちの1種または少なくとも2種の組み合わせを含むことができる。バッファ層14の形成方法は、ALD、PECVD、スピンコート法、スパッタリング法及び熱蒸着法のうちの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。さらに、例えば、上部透明導電層12に反射低減層(図示せず)を形成してもよく、反射低減層の材料は、LiF、MgF2、Si3N4、SiO2又はジメチルシロキサンポリマーなどを含んでもよく、その形成方法は、蒸着法、スパッタリング法及びALDのうちの1種又は少なくとも2種の組み合わせを含んでもよい。
【0044】
本出願は、太陽電池を製造する方法を提供する。方法は、第2バンドギャップを有する第2光電変換材料を含む第2光電変換層を有する第2電池を形成することと、第2光電変換層に、多結晶シリコン層、第2電荷輸送層、透明導電層及び第1電荷輸送層を順次形成することと、第2バンドギャップと等しくない第1バンドギャップを有する第1光電変換材料を含む第1光電変換層を有する第1電池を形成することとを含む。
【0045】
第1電池、第2電池の間の第2光電変換層、多結晶シリコン層および第1電荷輸送層などを形成する方法は、当技術分野で公知の種々の方法を用いることができる。しかしながら、本願において、第2電荷輸送層が熱蒸着法、原子層堆積法、快速プラズマ堆積法又は溶液法などの温和な方法によって形成されることで、多結晶シリコン層に薄膜を堆積する際に損傷を低減して、界面を最適化し、積層電池の効率を向上させる目的を達成することができる。一実施形態において、透明導電層は、物理気相成長法によって形成される。
【0046】
実施例1.
(1)厚さが180μmのN型単結晶シリコンを基板として、テクスチャ程度(texture degree)が2-3μmになるように、通常のテクスチャリング(texturing)を行い、フッ化水素酸及びRCA洗浄を行う。
(2)拡散炉設備を用いて単結晶シリコン基板の表面にリン拡散を行い、p型エミッタを形成する。
(3)単結晶シリコン基板の裏面にLPCVD法により厚さが1nmの極薄トンネル酸化シリコン及びリンドープアモルファスシリコンを製造し、高温活性化により厚さが100nmのn型多結晶シリコンを形成する。
(4)PECVD装置を用いてp型エミッタに厚さが75nmの窒化シリコン層を堆積する。
(5)p型エミッタ側にAg電極をスクリーン印刷により形成する。
(6)原子層堆積法により、n型多結晶シリコンに厚さが5nmの電荷輸送層SnO2を堆積する。
(7)電荷輸送層SnO2に、マグネトロンスパッタリング法により、厚さが15nmの透明導電層ITOを堆積する。
(8)マグネトロンスパッタリング法によりITOに厚さが40nmの電荷輸送層NiOを堆積する。
(9)NiO層に厚さが50nmである2PACzをブレードコーティング法により堆積する。
(10)バンドギャップが約1.69eVであり、厚さが600nmであるペロブスカイト光吸収層Cs0.15FA0.85Pb(I0.7Br0.3)3をブレードコーティング法により製造する。
(11)熱蒸着法により、ペロブスカイト層に厚さが5nmのバッファ層C60を堆積する。
(12)原子層堆積法により、バッファ層に厚さが20nmの電子輸送層SnO2を堆積する。
(13)マグネトロンスパッタリング装置を用いて、SnO2に、厚さが100nmの透明導電層IZOを堆積する。
(14)熱蒸着法を用いて厚さが100nmのAg金属ゲート線層を製造し、電池の製造を完成する。
【0047】
比較例1.
以上の(6)を含まないことを除いて、製造過程は実施例1と同じで電池を製造する。(7)において、マグネトロンスパッタリング法によりn型多結晶シリコンに直接に、厚さが15nmの透明導電層ITOを堆積する。
【0048】
試験
実施例1及び比較例1の積層電池を、光源強度が100mW/cm2のAM 1.5G標準模擬太陽光の下に置き、電池の電流密度-電圧の曲線を測定し、電池の開放電圧Voc、短絡電流密度Jsc、充填因子FFを取得することにより、電池の光電変換効率を算出した結果を表1に示す。実施例1及び比較例1で得られた積層電池の電流密度-電圧の曲線を図2に示す。
【0049】
実施例1において、第2電荷輸送層SnO2を追加することにより、積層電池の全てのパラメータが明らかに向上し、光電変換効率が18.71%から23.99%に向上したことがわかる。効率の向上は、積層電池がより多くの光を電気に変換することに寄与するとともに、システムのコストも低減する。
【0050】
【表1】
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
図1
図2