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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028175
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/12 20060101AFI20240222BHJP
   B32B 7/05 20190101ALI20240222BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240222BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240222BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240222BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240222BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B7/05
C09J201/00
C09J11/06
B32B3/30
G01N37/00 101
B81B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130122
(22)【出願日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2022131370
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜樹子
(72)【発明者】
【氏名】水野 瑞穂
【テーマコード(参考)】
3C081
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
3C081AA17
3C081BA06
3C081BA11
3C081BA23
3C081CA32
3C081CA40
3C081DA10
3C081DA31
3C081EA27
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AD00A
4F100AD00C
4F100AG00A
4F100AG00C
4F100AH03B
4F100AH06B
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00B
4F100DD01A
4F100DD01C
4F100DD04A
4F100DD05C
4F100EH46B
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB90
4F100YY00B
4J040GA05
4J040GA13
4J040GA14
4J040GA31
4J040MA10
4J040NA22
4J040PA30
4J040PA33
(57)【要約】
【課題】本発明は、基材面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士の接着性に優れた積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、凹凸構造を有する第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する第1基材と、前記第1基材の前記第1主面側に配置された第3主面を有する第2基材と、を備え、前記第1主面が有する前記凹凸構造は、少なくとも1の凹部と、少なくとも1の平坦部とを含み、前記第1主面の前記平坦部と前記第3主面とは、分子接合層を介して結合されており、少なくとも1の凹部のそれぞれについて、前記凹部の開口が規定する開口面と凹部の側面及び底面とで画される空間の断面積をXとし、前記開口面から前記凹部内に侵入した前記第2基材の断面積をYとしたとき、0.4≧Y/X>0である積層体に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸構造を有する第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する第1基材と、
前記第1基材の前記第1主面側に配置された第3主面を有する第2基材と、を備え、
前記第1主面が有する前記凹凸構造は、少なくとも1の凹部と、少なくとも1の平坦部とを含み、
前記第1主面の前記平坦部と前記第3主面とは、分子接合層を介して結合されており、
少なくとも1の凹部のそれぞれについて、前記凹部の開口が規定する開口面と凹部の側面及び底面とで画される空間の断面積をXとし、前記開口面から前記凹部内に侵入した前記第2基材の断面積をYとしたとき、Y/Xが以下の式を満たす積層体。
0.4≧Y/X>0
【請求項2】
前記分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2のいずれか少なくとも1つを有する化合物を含有し、
前記第1反応性基RG1がアミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2とを有する化合物を含有し、
前記第1反応性基RG1がアミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記化合物はトリアジン環をさらに有し、前記第1反応性基RG1を含む基及び前記第2反応性基RG2を含む基が前記トリアジン環に結合している、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記分子接着剤が下記の一般式[I]で表される化合物を含む、請求項3に記載の積層体。
【化1】

[一般式[I]中、Eは、2価の連結基を表し、Fは、OHまたはOH生成基を表す。
及びQは、それぞれ独立に、Nまたは-NR(R)を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
【請求項6】
前記平坦部および前記第3主面は、炭化水素基、カルボニル基、カルボキシル基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を有し、前記第1基材と前記第2基材とが前記分子接合層を介して共有結合により結合されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記分子接合層の厚みが2μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記凹凸構造は検体を流す流路を形成する、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記流路がマイクロ流路である、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体を製造する方法であって、
前記第1基材の前記平坦部および第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に分子接着剤を付与する工程と、
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程と、
を包含する、製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体を製造する方法であって、
前記第1基材の前記平坦部および前記第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に、下記一般式[I’]で表される化合物を含む分子接着剤を付与する工程と、
前記分子接着剤に光を照射する工程と、
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程と、
を包含する、製造方法。
【化2】

[一般式[I’]中、Eは、2価の連結基を表し、FはOHまたはOH生成基を表す。
Qは、Nまたは-NR(R)を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
【請求項12】
前記第1基材の前記平坦部および前記第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に分子接着剤を付与する工程の後、前記分子接着剤を30~90℃で乾燥させる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程において、前記第1基材及び前記第2基材の少なくとも一方の側から加熱する、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ基板内に液体や気体等からなる流体の微細な流路、バルブ、流体の導入口、排出口等を形成した小型デバイスであるマイクロ流路積層体(マイクロ化学チップ等ともいう)が開発されており、多様な物質の分離分析、センサー、化学反応等の多様な用途への応用が図られている。
【0003】
マイクロ流路積層体は、流路の幅、深さ等が詳細に設計されることで、極少量の検体であっても、分析、検出が可能となる。しかし、積層体形成の際、層同士を接合する等のために接着剤や粘着剤等の接着材料を用いると、接着材料の流路への浸入のため、極小に設計された流路の形状を保持するのが困難であるという問題があった。また、検体が接着剤や粘着剤に含まれる薬品の影響を受けてしまう問題もあった。
【0004】
上記問題に鑑み、接着剤や粘着剤ではなく、分子接着剤が用いられたマイクロ流路積層体も開発されている。例えば、特許文献1には、マイクロ化学チップの流路上に微細気泡が発生・滞留するのを抑制する被覆層を基材シートに接合するためにシランカップリング剤等の分子接着剤を用いる方法が記載されている。また特許文献2には、マイクロ化学チップを構成するシート同士をシランカップリング剤等の分子接着剤により接合する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6764222号公報
【特許文献2】特許第5866470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、分子接着剤を用いたマイクロ流路積層体においては、シート材料としてSiゴム等のゴム材料を用いるものが主流であるところ、ゴム材料は弾性率が低いため、微細な流路を形成することが困難であった。一方、高弾性率材料同士の分子接着では、材料同士を反応のために接近させることが難しいため高温高圧条件での接着が必要であるが、その場合、検体を流す流路を形成する凹凸構造の保持が難しかった。
【0007】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士の接着性に優れた積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、基材の材料や分子接着剤の種類、及び分子接合層の形成条件等を適切に選択、設定することにより、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士の接着性に優れた積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
〔1〕
凹凸構造を有する第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する第1基材と、
前記第1基材の前記第1主面側に配置された第3主面を有する第2基材と、を備え、
前記第1主面が有する前記凹凸構造は、少なくとも1の凹部と、少なくとも1の平坦部とを含み、
前記第1主面の前記平坦部と前記第3主面とは、分子接合層を介して結合されており、
少なくとも1の凹部のそれぞれについて、前記凹部の開口が規定する開口面と凹部の側面及び底面とで画される空間の断面積をXとし、前記開口面から前記凹部内に侵入した前記第2基材の断面積をYとしたとき、Y/Xが以下の式を満たす積層体。
0.4≧Y/X>0
〔2〕
前記分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2のいずれか少なくとも1つを有する化合物を含有し、
前記第1反応性基RG1がアミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種である、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕
前記分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2とを有する化合物を含有し、
前記第1反応性基RG1がアミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種である、〔1〕に記載の積層体。
〔4〕
前記化合物はトリアジン環をさらに有し、前記第1反応性基RG1を含む基及び前記第2反応性基RG2を含む基が前記トリアジン環に結合している、〔3〕に記載の積層体。
〔5〕
前記分子接着剤が下記の一般式[I]で表される化合物を含む、〔3〕に記載の積層体。
【0010】
【化1】
【0011】
[一般式[I]中、Eは、2価の連結基を表し、Fは、OHまたはOH生成基を表す。
及びQは、それぞれ独立に、Nまたは-NR(R)を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
〔6〕
前記平坦部および前記第3主面は、炭化水素基、カルボニル基、カルボキシル基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を有し、前記第1基材と前記第2基材とが前記分子接合層を介して共有結合により結合されている、〔1〕に記載の積層体。
〔7〕
前記分子接合層の厚みが2μm以下である、〔1〕に記載の積層体。
〔8〕
前記凹凸構造は検体を流す流路を形成する、〔1〕に記載の積層体。
〔9〕
前記流路がマイクロ流路である、〔8〕に記載の積層体。
〔10〕
〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の積層体を製造する方法であって、
前記第1基材の前記平坦部および第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に分子接着剤を付与する工程と、
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程と、
を包含する、製造方法。
〔11〕
〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の積層体を製造する方法であって、
前記第1基材の前記平坦部および前記第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に、下記一般式[I’]で表される化合物を含む分子接着剤を付与する工程と、
前記分子接着剤に光を照射する工程と、
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程と、
を包含する、製造方法。
【0012】
【化2】
【0013】
[一般式[I’]中、Eは、2価の連結基を表し、FはOHまたはOH生成基を表す。
Qは、Nまたは-NR(R)を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
〔12〕
前記第1基材の前記平坦部および前記第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に分子接着剤を付与する工程の後、前記分子接着剤を30~90℃で乾燥させる、〔10〕に記載の製造方法。
〔13〕
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程において、前記第1基材及び前記第2基材の少なくとも一方の側から加熱する、〔10〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士の接着性に優れた積層体およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層体を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る積層体を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る積層体の凹凸構造を示す概略断面図である。
図4図4の(1)、(2)、(3)及び(4)は、本発明の実施例における積層体の作製方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際の装置等のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0017】
≪積層体≫
本発明の実施形態に係る積層体は、
凹凸構造を有する第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する第1基材と、
前記第1基材の前記第1主面側に配置された第3主面を有する第2基材と、を備え、
前記第1主面が有する前記凹凸構造は、少なくとも1の凹部と、少なくとも1の平坦部とを含み、
前記第1主面の前記平坦部と前記第3主面とは、分子接合層を介して結合されており、
少なくとも1の凹部のそれぞれについて、前記凹部の開口が規定する開口面と凹部の側面及び底面とで画される空間の断面積をXとし、前記開口面から前記凹部内に侵入した前記第2基材の断面積をYとしたとき、Y/Xが以下の式を満たすことを特徴とする。
0.4≧Y/X>0
【0018】
本発明の実施形態に係る積層体は、第1基材の第1主面に凹凸構造が形成されている。一方、第2基材の第3主面には凹凸構造が形成されていても、形成されていなくてもよい。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層体を示す概略断面図である。第1の実施形態は、第1基材のみ凹凸構造を有し、第2基材は凹凸構造を有しない態様である。
本実施形態に係る積層体100は、凹凸構造を有する第1主面11sおよび前記第1主面11sと反対側の第2主面12sを有する第1基材10と、前記第1基材10の前記第1主面11s側に配置された第3主面31sを有する第2基材30と、を備える。第2基材30は第3主面31sと反対側に第4主面32sを有している。
第1主面11sが有する凹凸構造は、少なくとも1の凹部13と、少なくとも1の平坦部10sを含む。第1主面11sが複数の凹部13を有する場合は、複数の凹部13のうちの隣接する凹部13の間に上記平坦部10sを有する。第3主面31sは平坦であって、第1主面11sと第3主面31sとは、分子接合層20を介して結合されている。
【0020】
第1基材10の第1主面11sが有する少なくとも1の凹部13のそれぞれと、第2基材30の第3主面31sとによって少なくとも1の内部空間13aが画定される。内部空間13aは、典型的には、内部に空気が充填された空隙部であり、例えばマイクロ流路積層体において、検体を流す流路を形成する。
【0021】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る積層体を示す概略断面図である。第2の実施形態は、第1基材および第2基材の両方が凹凸構造を有する態様である。
本実施形態に係る積層体200は、凹凸構造を有する第1主面41sおよび前記第1主面41sと反対側の第2主面42sを有する第1基材40と、前記第1基材40の前記第1主面41s側に配置された凹凸構造を有する第3主面61sを有する第2基材60と、を備える。第2基材60は第3主面61sと反対側に第4主面62sを有している。
【0022】
第1主面41sが有する凹凸構造は、少なくとも1の凹部43と、少なくとも1の平坦部40sを含む。第1主面41sが複数の凹部43を有する場合は、複数の凹部43のうちの隣接する凹部43の間に上記平坦部40sを有する。
第3主面61sが有する凹凸構造は、少なくとも1の凹部63と、少なくとも1の平坦部60sを含む。第3主面61sが複数の凹部63を有する場合は、複数の凹部63のうちの隣接する凹部63の間に上記平坦部60sを有する。
第1主面41sの平坦部40sと第3主面61sの平坦部60sとは、分子接合層50を介して結合されている。
【0023】
第1基材40の第1主面41sが有する少なくとも1の凹部43のそれぞれと、第2基材60の第3主面61sの平坦部60sのそれぞれによって少なくとも1の内部空間43aが画定される。また、第1基材40の第1主面41sが有する平坦部40sのそれぞれと、第2基材60の第3主面61sの少なくとも1の凹部63のそれぞれによって少なくとも1の内部空間63aが画定される。内部空間43aおよび内部空間63aは、典型的には、内部に空気が充填された空隙部であり、例えばマイクロ流路積層体において、検体を流す流路を形成する。
【0024】
なお、図2に示す積層体では、内部空間43aと内部空間63aが、図の横方向に沿って交互に形成されているが、第2の実施形態においては当該態様に限定されるものではなく、第1基材における隣接する凹部43の間に、第2基材における隣接する凹部63を有しない箇所があってもよい。
【0025】
<第1基材、第2基材>
以下では、第1の実施形態を例にとり第1基材および第2基材について説明するが、特段の記載が無い限り、第2の実施形態においても第1の実施形態における説明が同様に当てはまるものとする。
【0026】
第1基材10および第2基材30(以下、これらをまとめて単に基材ともいう)は、後述する分子接合層20に含まれる化合物と強固に化学結合することが好ましい。すなわち、少なくとも第1主面11sの平坦部10sおよび第3主面31sが分子接合層20を介して化学結合を形成することができるように、基材の材料は選択されることが好ましい。
【0027】
上記の観点から、基材の材料は、第1主面11sの平坦部10sおよび第3主面31sが、炭化水素基、カルボニル基、カルボキシル基、および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を有し、接着剤分子と共有結合を形成するように、選択されるのが好ましい。このような基材を使用することにより、分子接合層との間で高い接着力を得ることができ、基材と分子接合層との間が剥離するのを防止することができる。
【0028】
また、微細な凹凸構造を形成、保持が可能な基材を実現するために、後述する分子接着剤の種類および分子接合層の形成条件に対して、凹部13への侵入の程度の小さい、すなわち高い剛性を有する第2基材30を選択することが好ましい。また、第2基材30が凹部13への侵入の程度が小さくても、第1基材10の耐熱性が十分でないと、凹部13が変形することがある。したがって、分子接着剤の種類および分子接合層の形成条件に対して、凹部13が変形しない剛性(耐熱性)を有する第1基材10を選択することが好ましい。
このように、第1基材および第2基材の材料を適切に選択することにより、基材における凹凸構造の形状を維持でき、後述する凹部の形状に関するパラメータ(Y/X)を特定範囲とすることが可能となる。
【0029】
凹部13に侵入の程度の小さい、すなわち高い剛性を有する第2基材30の材料として、例えば、23℃(室温)における貯蔵弾性率が1×10Pa以上5×1010Pa以下の材料を好適に用いることができる。より好ましくは23℃(室温)における貯蔵弾性率が1×10Pa以上5×1010Pa以下の材料であり、さらに好ましくは1×10Pa以上5×1010Pa以下の材料である。
上記貯蔵弾性率は、回転式粘弾性測定レオメーター(ARES-G2,TA Instruments製)を用いて、当該材料を幅1cm、長さ5cmの短冊状にカットしたものをサンプルとして使用し、23℃(室温)、昇温速度10℃/min、チャック間距離20mm、周波数1.0Hzの条件で測定される。
【0030】
第1基材および第2基材の形状は、特に限定されず、任意の形状であってよく、例えば、シート(フィルム)や筐体等であってもよい。第1基材および第2基材の表面は平面であっても曲面であってもよい。
【0031】
第1基材および第2基材の材料としては、例えば、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、オレフィン系アイオノマー樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム、金属、ガラス、セラミック等が挙げられる。
【0032】
アクリル樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系単量体の単独重合体、(メタ)アクリル系単量体の共重合体、(メタ)アクリル系単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。
(メタ)アクリル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;が挙げられる。
(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、エチレン;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;等が挙げられる。
加工性および積層体における凹凸構造の保持の観点から、アクリル樹脂の中でもポリメチルメタアクリレート(PMMA)が好ましい。
【0033】
アクリル樹脂以外としては、例えば、具体的には、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルサルファイド)等が挙げられる。なかでも、加工性および積層体における凹凸構造の保持の観点から、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルサルファイド)が挙げられ、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)がより好ましい。
【0034】
ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムのいずれであってもよい。上記ゴムとして、例えば、ニトリルゴム(NBR)、メチルメタクリレート-ブタジエンゴム(MBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(AU)、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、ニトリルゴム(NBR)、メチルメタクリレート-ブタジエンゴム(MBR)、シリコーンゴムが好ましい。また、これらのゴムが架橋されてなる架橋ゴムがより好ましい。
【0035】
金属としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、チタン、これらのうちの1以上を含む合金等より選択される金属を含む材料が挙げられる。これらの中でも、銅、アルミニウム、又はチタンを含む材料が好ましく、アルミニウム、又はチタンを含む材料が好ましい。
【0036】
ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0037】
セラミックとしては、例えば、アルミナセラミック、ジルコニアセラミック、窒化ケイ素セラミック、窒化アルミニウムセラミック、炭化ケイ素セラミックなどが挙げられる。
【0038】
なかでも、第1基材や第2基材の凹部が変形しない剛性(耐熱性)を有する材料として、例えば硬化性樹脂の硬化物が好ましい。硬化性樹脂の硬化物は、架橋構造を有するので、熱変形しにくい。したがって、分子接着剤を介して基材同士を加熱・加圧して接着する際に、第1基材や第2基材の凹部が変形することを抑制することができる。なお、予備的な実験を行い、接着時の変形を予測して凹部を形成してもよい。
【0039】
必要に応じて、第1主面11sの平坦部10sおよび第3主面31s(第2実施形態の第3主面61sの平坦部60sを含む)を表面改質されていてもよい。表面改質としては、例えば、コロナ処理によって水酸基を導入することが挙げられる。また、第1主面11sの平坦部10s、および第3主面31s(第2実施形態の第3主面61sの平坦部60sを含む)の平坦性は、例えば、原子間力顕微鏡で測定した表面粗さRaが20nm以下であることが好ましく、10nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましい。
【0040】
本発明の実施形態において、内部空間の形成および加工性の観点で第1基材の厚さは第2基材の厚さよりも大きい方が好ましい。すなわち、凹凸構造を有する第1基材の厚さが大きい方が、後述する加圧・加熱工程による凹凸構造保持の観点から好ましい。
第1基材の厚さは100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることがさらに好ましく、また、10cm以下であることが好ましく、5cm以下であることがより好ましく、1cm以下であることがさらに好ましい。また、第2基材の厚さは10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、また、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0041】
また、本実施形態において、第1基材および第2基材の少なくとも一方の融点(Tm)は、接着時の取り扱いの観点から40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、接着工程の観点から200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
【0042】
<分子接合層>
以下では、分子接合層について、第1の実施形態を例にとり説明するが、特段の記載が無い限り、第2の実施形態においても、第1の実施形態における説明が同様に当てはまるものとする。
【0043】
第1基材の第1主面における少なくとも1の平坦部と、第2基材の第3主面の少なくとも一部とは、分子接合層を介して、結合されている。
分子接合層は、通常の接着剤のように分子間力で基材に接着されるのではなく、共有結合等の化学結合により基材と分子接合層とが化学的に結合する。このため、第1基材と第2基材とが異種の材料であったり、難接着材料であっても、接着強度に優れ、密着性の高い積層体を形成することができる。
ここで、化学結合とは、共有結合、配位結合、イオン結合を含み、分子間力は含まない。
【0044】
分子接合層は分子接着剤により形成することができる。
分子接着剤は、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと共有結合を形成することができる第1反応性基RG1(以下、第1反応性基RG1、またはRG1ともいう)を有する化合物と、第2基材30の第3主面31sと共有結合を形成することができる第2反応性基RG2(以下、第2反応性基RG2、またはRG2ともいう)を有する化合物のいずれか少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、分子接着剤は、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2のいずれか少なくとも1つを有する化合物を含んでいてもよい。
また、第1反応性基RG1と第2反応性基とは互いに異なってよい。
【0045】
なお、以下では、分子接合層を構成する個々の分子を接着剤分子ということがある。また、第1基材10および第2基材30と化学結合を形成する前または後の状態にかかわらず、分子接着剤または接着剤分子というものとする。ただし、分子接着剤は、接着剤分子以外の成分(例えば、重合開始剤)を含有し得る。
【0046】
上述のように、接着剤分子が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2とを有するとき、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとは、1つの接着剤分子と、この接着剤分子が有する第1反応性基RG1と平坦部10sとによって形成された化学結合と、この接着剤分子が有する第2反応性基RG2と第3主面31sとによって形成された化学結合によって結合されてもよい。
【0047】
第1反応性基RG1または第2反応性基RG2が、それ自身と反応し化学結合を形成し得る場合(例えば、第2反応性基RG2同士が反応し化学結合を形成し得る場合)、複数の接着剤分子が、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとの間の化学結合に介在し得る。例えば、接着剤分子が、複数のシラノール基および/またはアルコキシシリル基を有している場合は、接着剤分子が、シラノール基および/またはアルコキシシリル基同士の反応によって化学結合を形成し得る。このとき、例えば、分子接合層の数十から数百の接着剤分子が、第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとの間の化学結合に介在し得る。もちろん、第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとの間の化学結合に介在する最少の接着剤分子は、単分子層であり得る。
【0048】
第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとの距離、すなわち、分子接合層の厚みは、0.5nm以上であってよく、1nm以上が好ましい。また、内部空間への分子接着剤の混入を防ぐ観点から、2μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下がさらに好ましく、100nm以下が特に好ましく、50nm以下が最も好ましい。
分子接着剤は、このような化学結合を形成する接着剤分子を多数含んでいるが、接着剤分子の緻密な層を形成するとは限らない。第1主面11sの平坦部10sおよび第3主面31sにおける化学結合を形成する反応点が少ないと、接着剤分子はまばらに存在することもある。
【0049】
また、接着剤分子の第1反応性基RG1が、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sおよび第2基材30の第3主面31sの両方と化学結合を形成してもよい。このとき、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと第1反応性基RG1で化学結合を形成した接着剤分子(以下、第1接着剤分子という)と、第2基材の第3主面31sと第1反応性基RG1で化学結合を形成した接着剤分子(以下、第2接着剤分子という)とは、第1接着剤分子の第2反応性基RG2と第2接着剤分子の第2反応性基RG2とが化学結合を形成することによって、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとが、化学結合で結合されることになる。このとき、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとの間に、2つの接着剤分子が存在することになる。また、上述したように、第1反応性基RG1または第2反応性基RG2が、それ自身と反応し化学結合を形成し得る場合、第1接着剤分子および第2接着剤分子のいずれでもない、1または2以上の第3接着剤分子が、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとの間の化学結合に介在し得る。したがって、第1基材10の第1主面11sの平坦部10sと第2基材30の第3主面31sとの距離は、2nm以上であってよく、500nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。
【0050】
接着剤分子は、例えば、アミノ基、アジド基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、エポキシ基、シラノール基、およびアルコキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を有することが好ましく、アミノ基、アジド基、シラノール基、およびアルコキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を有することがより好ましく、アミノ基またはアジド基と、シラノール基またはアルコキシシリル基とを有することが更に好ましい。アルコキシシリル基は加水分解反応によってシラノール基を生成する。上記接着剤分子を用いることにより、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士を強固に接着することが可能となる。
【0051】
また、分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2とのいずれか少なくとも1つを有する化合物を含有し、前記第1反応性基RG1がアミノ基、アジド基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士を強固に接着することが可能となる。
【0052】
また、分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2とを有する化合物を含有し、前記第1反応性基RG1がアミノ基、アジド基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。より好ましくは、分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2とのいずれか少なくとも1つを有する化合物を含有し、前記第1反応性基RG1がアミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種である。さらに好ましくは、分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2とを有する化合物を含有し、前記第1反応性基RG1がアミノ基、及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種である。これにより、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士を強固に接着することが可能となる。分子接合層を形成する分子接着剤が、1分子中に第1反応性基RG1を2以上有する化合物を含有することも好ましい。これにより、基材同士をより強固に接着することが可能となる。
【0053】
また、接着剤分子は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の接着剤分子は混合して用いてもよく、2種以上の接着剤分子を用いてそれぞれ形成した分子接合層を積層して用いてもよい。
例えば、分子接合層は、第1反応性基RG1としてアミノ基を含有し、第2反応性基RG2としてシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種を含有する接着剤分子を含有する分子接着剤と、第1反応性基RG1としてアジド基を含有し、第2反応性基RG2としてシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種を含有する接着剤分子を含有する分子接着剤との2種の分子接着剤を用いて形成してもよい。これにより、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士をより強固に接着することが可能となる。
【0054】
接着剤分子は、トリアジン環をさらに有し、第1反応性基RG1を含む基及び第2反応性基RG2を含む基がトリアジン環に結合するのが好ましい。第1反応性基RG1がアミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種であるとき、第1反応性基で第1および第2基材の表面と化学結合を形成し、第2反応性基同士で化学結合を形成してもよい。
【0055】
接着剤分子としては、好ましくは、下記の一般式[I]で表わされる化合物である。すなわち、分子接着剤が下記の一般式[I]で表される化合物を含むことが好ましい。
【0056】
【化3】
【0057】
[一般式[I]中、Eは、2価の連結基を表し、Fは、OHまたはOH生成基を表す。
及びQは、それぞれ独立に、Nまたは-NR(R)を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
【0058】
一般式[I]中、Eが表す2価の連結基としては、特に限定されないが、例えば、2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基を挙げることができる。
一般式[I]中、Eにおける2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~12の分岐若しくは鎖状若しくは環状の炭化水素基を挙げることができ、炭素数が1~12の鎖状の炭化水素基であることが好ましい。中でも炭素数が1~6の直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられ、エチレン基が好ましい。
【0059】
Eが表すヘテロ原子を含む2価の連結基としては、例えば、-O-、-N(R201)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-より選択される少なくとも一種を含む2価の連結基を挙げることができ、-O-、-N(R201)-、-C(=O)-O-、又は-C(=O)-と2価の炭化水素基を組み合わせた基であることが好ましく、*-O-E101-、*-N(R201)-E101-、*-C(=O)-O-E101-、*-C(=O)-E101-がより好ましく、*-N(R201)-E101-がさらに好ましい。
201は、水素原子、アルキル基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表し、水素原子を表すことが好ましい。
101は上述のEにおける2価の炭化水素基を表し、好ましいものも同様である。
*-はトリアジン環に結合する結合手を表す。
201が表す-R-Si(R’)(OA)3-nにおけるAは、後述するAと同様であり、好ましいものも同様である。
【0060】
一般式[I]におけるOH生成基は、水酸基を含む基、または水若しくは水酸基を含む化合物と反応して水酸基を生成する基である。
OH生成基としては、例えば、-Si(R’)(F1)3-n、ハロゲン原子、またはアルコキシ基を表すことが好ましく、-Si(R’)(F1)3-nであることがより好ましい。F1は水酸基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、水酸基またはアルコキシ基を表すことが好ましい。
すなわち、Fはシラノール基またはアルコキシシリル基を含むことが好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、ヨウ素を挙げることができ、塩素が好ましい。
【0061】
及びRが表す炭素数が1~24の炭化水素基は、炭素数が1~12の炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1~6のアルキル基であることがさらに好ましい。
201、R及びRが表すアミノアルキル基としては、炭素数が1~12のアミノアルキル基が好ましく、炭素数が1~6のアミノアルキル基がより好ましく、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基、アミノペンチル基、アミノヘキシル基が好ましく、アミノエチル基(-CHCHNH)が特に好ましい。
Rが表す炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基は、炭素数が1~10の鎖状の2価の炭化水素基であることが好ましい。中でも炭素数が1~6の直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられ、エチレン基が好ましい。
【0062】
R’及びAが表す炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、エチル基を表すことが好ましい。
nは0~2の整数を表し、nは0であることが好ましい。
【0063】
上記一般式[I]で表されるトリアジン環を有する接着剤分子のうち、アミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種と、シラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種とを有する接着剤分子が好ましい。この接着剤分子のアミノ基またはアジド基はトリアジン環に結合している。
【0064】
トリアジン環に結合しているアミノ基またはアジド基の数は、例えば、1個または2個である。OHまたはOH生成基は、好ましくは、2価の連結基を介して、間接的に、トリアジン環(C原子)に結合している。間接的に結合しているアルコキシシリル基は、例えば、1個または2個以上である。
【0065】
トリアジン環(電子局在化共役系骨格)に結合したアジド基は、ナイトレンへの分解エネルギーが高い。従って、近紫外線、可視光による影響が起き難い。このため、紫外線露光の作業性が改善される。トリアジン環に結合したナイトレンは、そうではないナイトレンに比べて、安定である。ナイトレン同士の結合が抑制される。C-H結合に対する水素引抜き活性や不飽和結合に対する付加活性が増強する。すなわち、少ない露光量で効果的な反応が可能である。
【0066】
前記アルコキシシリル基は、トリアジン環(電子局在化共役系骨格)に対して、スペーサ(例えば、アミノ基、オキシ基および/または炭化水素基)を介して結合している。このため、接着剤分子が樹脂表面に結合した場合、他方の樹脂表面との接触において、化学結合を生成する為のエントロピー効果が高まる。エントロピー効果の向上は、樹脂の表面同士(第1基材の表面と第2基材の表面)の接触後、界面反応における頻度因子の増大に反映させる。そして、スペーサの長さが長すぎると、コストが高くなる。かつ、接着剤分子の吸収量の減少が生ずる。従って、適度な長さのスペーサが好ましい。このような観点から、下記の一般式[Io]、[Ia]、[Ib]で表される接着剤分子が好ましい。
【0067】
【化4】
【0068】
【化5】
【0069】
【化6】
【0070】
[R101は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
102は、-R-Si(R’)n(OA)3-nを表す。
201は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
【0071】
一般式[Io]、[Ia]、[Ib]におけるアミノアルキル基、R、R’、A、及びnは、それぞれ一般式[I]におけるアミノアルキル基、R、R’、A、及びnと同義であり、好ましいものも同様である。
【0072】
一般式[Io]、[Ia]、[Ib]において、R101はアミノアルキル基を表すことが好ましく、R201は水素原子を表すことが好ましい。
【0073】
界面反応における頻度因子項の増大の観点から、1分子中に存在するシラノール基、アルコキシシリル基、アミノ基又はアジド基等の反応性基の数は多い方が好ましい。しかしながら、コスト等の観点から、その数にも制約がある。すなわち、前記一般式[Io]、[Ia]、[Ib]で表わされる接着剤分子が好ましい。
【0074】
前記一般式[Io]、[Ia]、[Ib]におけるアルコキシシリル基は、ほとんどの場合、OH生成基(OH前駆体)である。OH生成基をOH基に変性するため、例えば水(中性水、酸性水、アルカリ水)で処理してもよい。その他にも、コロナ放電処理やプラズマ処理をしてもよい。但し、水処理が好ましい。
【0075】
分子接着剤が含む、反応性基を有する化合物として、より具体的には、下記の化合物を例示することができる。
【0076】
アミノ基を有する化合物としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(フェニルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、トリメチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、下記(11)~(16)の化合物等が挙げられる。
【0077】
アジド基を有する化合物としては、(11-アジドウンデシル)トリメトキシシラン、(11-アジドウンデシル)トリエトキシシラン、下記(17)~(19)の化合物等が挙げられる。
【0078】
メルカプト基を有する化合物としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等が挙げられる。
【0079】
イソシアネート基を有する化合物としては、3-(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネート、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート等が挙げられる。
【0080】
ウレイド基を有する化合物としては、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0081】
エポキシ基を有する化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
分子接着剤が第1反応性基RG1を1分子中に2以上有する化合物としては、例えば、下記(11)~(19)の化合物が挙げられる。
【0083】
(11):N,N’-ビス(2-アミノエチル)-6-(3-トリヒドロキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン
(12):N,N’-ビス(2-アミノエチル)-6-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン
(13):N,N’-ビス(2-アミノエチル)-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン
(14):N,N’-ビス(2-アミノメチル)-6-(3-トリヒドロキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン
(15):N,N’-ビス(2-アミノメチル)-6-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン
(16):N,N’-ビス(2-アミノメチル)-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン
(17):6-(3-トリヒドロキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアジド
(18):6-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアジド
(19):6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアジド
【0084】
【化7】
【0085】
【化8】
【0086】
第1反応性基RG1および第2反応性基RG2を有する化合物としては、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士を強固に接着するという観点から、上記(11)~(19)の化合物が好ましく、その中でも、(11)N,N’-ビス(2-アミノエチル)-6-(3-トリヒドロキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン又は(19)6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアジドの化合物が特に好ましい。
【0087】
基材の接着処理(表面処理および改質処理等)は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0088】
まず、接着剤分子を含む処理液(溶液または分散液)が用意される。用いられる溶媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、セルソルブ、カルビトール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ブタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、フタル酸メチル)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ブチルエーテル、エチルブチルエーテル、アニソール)、塩化メチレン等の含ハロゲン化合物系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等である。異なる種類の接着剤分子の混合物を用いてもよい。接着剤分子の含有量は0.05~10質量%であってよい。好ましくは0.10~1質量%である。これは、接着剤分子の含有量が少なすぎると、効果が乏しいからである。逆に、基材との反応量は限られており、多すぎても意味が乏しい。このような観点から、上記の割合が好ましい。
【0089】
処理液中には、必要に応じて、表面張力の調整の観点から、界面活性剤が添加される。例えば、ノニオン系界面活性剤(例えば、長鎖アルキル鎖とポリエチレングリコールからなるノニオン系界面活性剤)、カチオン系界面活性剤(例えば、第4級アンモニウム塩)、又はアニオン系界面活性剤(例えば、有機カルボン酸塩、スルホン酸塩)が用いられる。
【0090】
処理液中に基材が浸漬され、または、処理液が基材に噴霧されることにより、接着剤分子(分子接着剤)が基材の表面に付着する。
【0091】
接着剤分子がアジド基を含む場合、例えば、下記一般式[I’]で表される化合物(上記一般式[I]におけるQがNのもの)を含む分子接着剤を用いる場合、その後、基材に光(紫外線)が照射される。
【0092】
【化9】
【0093】
[一般式[I’]中、Eは、2価の連結基を表し、FはOHまたはOH生成基を表す。
Qは、Nまたは-NR(R)を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
【0094】
特に、基材に接着剤分子を結合させたい箇所にのみ光は照射される。このためには、適宜なパターンのマスクが使用されてもよい。光(紫外線)照射によって、接着剤分子のアジド基が分解し、ナイトレンが生成する。このナイトレンが基材表面の官能基(例えば、-CH,-CH-,-CH<,-CH=CH-)を攻撃する。そして、水素引抜きラジカル付加あるいはラジカル付加反応が起き、接着剤分子と基材表面との間で化学結合が生じる。未照射箇所では、化学結合が起きない。
【0095】
光(紫外線)照射には、例えばUV照射装置(例えば、高圧水銀UVランプ、低圧水銀UVランプ、蛍光式UVランプ(ショートARCキセノンランプ、ケミカルランプ)、メタルハライドランプ)が用いられる。そして、例えば200~450nmの紫外線が照射される。照射光量が少な過ぎると、反応が進み難い。逆に、照射光量が多すぎると、基材の劣化のおそれがある。従って、好ましい照射光量(光源波長:254nm)は1mJ/cm~5J/cmであり、より好ましくは5mJ/cm~1J/cmである。
【0096】
基材が複雑な形状の場合において、UV光を基材に均一に照射する為には、反射板の使用が有効である。反射板としては、例えば鏡、表面研磨された金属箔、AI鏡面箔、SUS鏡面箔、銀めっき鏡面板などが挙げられる。反射板の形状、寸法、材質などは、反射効率の観点から、適宜、選択される。
【0097】
<凹凸構造>
本発明の実施形態の積層体は、少なくとも1の凹部のそれぞれについて、前記凹部の開口が規定する開口面と凹部の側面及び底面とで画される空間の断面積をXとし、前記開口面から前記凹部内に侵入した前記第2基材の断面積をYとしたときに、Y/Xが以下の式を満たす。
0.4≧Y/X>0
以下、図3を参照して、積層体100が有する凹部13(内部空間13a)の形状について説明する。
【0098】
積層体100は、少なくとも1の内部空間13aを有している。少なくとも1の内部空間13aは、第1基材10の第1主面11sが有する少なくとも1の凹部13のそれぞれと、第2基材の第3主面31sとによって画定される。図3においても分子接合層20を図示しているが、分子接合層20の物理的な長さ(厚さ)は無視できるほど小さい。
【0099】
一方、第2基材30が、第1基材10と接着する際の加熱・加圧によって変形し、第2基材30が凹部13内に侵入することがある。しかしながら、本発明の実施形態の積層体では、基材の材料や分子接着剤の種類、及び分子接合層の形成条件等を適切に選択、設定することにより、第2基材30が凹部13内に侵入することを抑制でき、基材表面の凹凸構造が保持されることを見出したものである。基材の材料や分子接着剤の種類の選択については上述したとおりである。また、分子接合層の形成条件等については、後述の製造方法の項にて説明する。
【0100】
具体的には、本発明の実施形態の積層体における少なくとも1の凹部のそれぞれについて、凹部13の開口13opが規定する開口面13OP(図3中の凹部13の開口13op内の破線)と、凹部の側面S1及びS2及び底面Bと、で画される空間の断面積をXとし、凹部13内に侵入した第2基材の断面積をYとしたときにY/Xが以下の式を満たす。
0.4≧Y/X>0
【0101】
Y/Xが0.4以下であることは、深さ方向に対して第2基材30が凹部13内に侵入する割合が小さいことを意味する。Y/Xは0.4以下であり、0.3以下が好ましく、0.1以下がより好ましい。
【0102】
本発明の実施形態の積層体がマイクロ流路積層体である場合、凹凸構造のサイズはマイクロスケールとなる。このような、マイクロスケールの凹凸構造で形成される流路をマイクロ流路という。そのため、開口面13OPから凹部13の最深部までの距離は、通常5~1000μmであり、好ましくは5~500μmであり、より好ましくは5~200μmである。500~1000μmであってもよく、200~500μmであってもよい。また、開口面13OPの幅の長さは、通常1~1000μmであり、好ましくは1~500μmであり、より好ましくは1~200μmである。500~1000μmであってもよく、200~500μmであってもよい。
【0103】
<接着評価>
本発明の実施形態の積層体は、基材の材料や分子接着剤の種類、及び分子接合層の形成条件等を適切に選択、設定しているため、良好な接着性を有する。
本発明の実施形態の積層体は、エタノール溶液に1週間浸漬したときに第1基材と第2基材との接着が保持されているものが好ましい。具体的には、室温(23℃)環境下、エタノールの入った容器内に1週間浸漬した積層体を、エタノール浴から取り出し、周囲に付着したエタノールを乾いた布で拭き取った後、第1基材又は第2基材の表面に指を触れ、第1基材と第2基材の積層方向および積層方向と垂直の方向に押圧したときに、第1基材と第2基材が剥離せず、第1基材と第2基材の接着が保持されているものが好ましい。
【0104】
≪積層体の製造方法≫
積層体100は、例えば、以下の製造方法で製造され得る。
本発明の実施形態による製造方法は、第1基材10の平坦部10sおよび第2基材30の第3主面31sの少なくとも一方に分子接着剤を付与する工程(工程A)と、平坦部10sと第3主面31sとを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程(工程B)とを包含する。
【0105】
<分子接着剤を付与する工程(工程A)>
本工程では、第1基材10の平坦部10sおよび第2基材30の第3主面31sの少なくとも一方に分子接着剤を付与する。
分子接着剤としては、上述の分子接合層の項で説明したものを用いることができ、上記一般式[I’]で表わされる化合物を含むものを用いることが好ましい。その場合は、前記分子接着剤に光(紫外線)を照射する工程(工程C)をさらに含む。光(紫外線)の照射については、上述の分子接合層の項で説明したとおりである。
【0106】
分子接着剤は、例えば、以下のようにして、第1基材の平坦部および第2基材の第3主面の少なくとも一方に付与され得る。例えば、分子接着剤を含有する分子接着剤溶液を調製し、この溶液を基材上に塗布し、次いで、得られた塗膜の乾燥処理や、分子接着剤を基材に固定する処理を行う。
【0107】
分子接着剤溶液を調製する際に用いる溶媒は特に限定されない。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、セルソルブ、カルビトール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、フタル酸メチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン等の含ハロゲン化合物系溶媒;ブタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ブチルエーテル、エチルブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;水;等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
分子接着剤溶液中の分子接着剤の濃度は特に限定されない。その濃度は、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.10~1質量%である。接着剤分子の濃度を0.05質量%以上とすることで、分子接着剤を基材上に効率よく付与することができる。また10質量%以下とすることで分子接着剤溶液の意図しない反応を抑制することができ、溶液の安定性に優れる。
【0109】
分子接着剤溶液の塗布方法としては特に限定されず、公知の塗布方法を使用することができる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコ_卜法、ロ_ルナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ディップコート法、カーテンコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。なかでもバーコート法、グラビアコート法が好ましい。
【0110】
分子接着剤溶液を塗布した後は、通常、得られた塗膜を乾燥するために、自然乾燥や乾燥機構への投入による乾燥処理を行う。これらの中でも、乾燥機構への投入による乾燥処理を行うことが生産性の向上の観点から好ましい。
【0111】
本発明の実施形態においては、分子接着剤の乾燥熱を調整することで接着熱を低温化することが好ましい。具体的には、乾燥機構で調整される乾燥温度は、好ましくは30~110℃、より好ましくは30~90℃、よりさらに好ましくは30~80℃である。乾燥時間によっては、30~70℃であってもよい。これにより、分子接着剤の接着熱を低温化でき、分子接着剤の失活を抑制できる。
乾燥時間は、通常1秒~120分、好ましくは10秒~10分、より好ましくは20秒~10分、特に好ましくは30秒~10分である。乾燥温度によっては、20秒~5分であってもよく、30秒~3分であってもよい。
【0112】
乾燥機構としては、例えば、エアーオーブン等のバッチ式の乾燥機構や、ヒートロールおよびホットエアースルー機構(開放式の乾燥炉内を被乾燥体が移動、通過しながら、送風を受けつつ加熱・乾燥される設備等)等の連続式の乾燥機構等が挙げられる。なお、これら乾燥機構の一部としても用いることができる装置、例えば、高周波加熱、オイルヒーター等の熱媒循環式ヒーター、及び遠赤外線式ヒーター等のヒーター自体も乾燥機構として用いることができる。これらの中でも生産性の向上の観点からホットエアースルー機構が好ましい。
【0113】
また、本工程における第1基材10の平坦部10sおよび第2基材30の第3主面31sの少なくとも一方に分子接着剤を付与する前に、当該分子接着剤を付与する面に対し、洗浄処理又は表面処理を実施する前処理工程を有していてもよい。前処理は、第1基材および第2基材のいずれか一方にのみ行ってもよく、両方に行ってもよい。前処理工程により、第1基材と第2基材とをより強固に接合させることができる。
【0114】
洗浄処理としては、アルカリ脱脂処理等が挙げられる。
アルカリ脱脂処理は、アルカリ洗浄液で洗浄した後、表面を蒸留水で洗浄し、乾燥させる処理である。
表面処理としては、例えば、コロナ処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理等が挙げられる。
【0115】
コロナ処理としては、例えば、コロナ処理機により常圧空気中で放電する方式が挙げられる。例えば、コロナ処理は、高周波電源のコロナ表面処理装置を用いて、基材の表面に放電照射することにより実施される。コロナ処理における放電量は、10~500W・min/mが好ましく、30~300W・min/mがより好ましく、50~200W・min/mがさらに好ましい。放電量は、放電出力強度(kW)やコロナ処理の処理速度(m/min)を適宜調整することにより上記範囲とすることができる。放電出力強度は、好ましくは0.05kW以上であり、より好ましくは0.08kW以上であり、さらに好ましくは0.1kW以上である。
【0116】
スパッタエッチング処理は、例えば、ガスに由来するエネルギー粒子を基材の表面に衝突させる。基材における当該粒子が衝突した部分において、基材の表面に存在する原子または分子が放出されて反応性基が形成され、これにより接着性が向上する。
スパッタエッチング処理は、例えば、基材をチャンバーに収容し、次いでチャンバー内を減圧した後、雰囲気ガスを導入しながら高周波電圧を印加することによって実施できる。
【0117】
雰囲気ガスは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン等の希ガス、窒素ガスおよび酸素ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
印加する高周波電圧の周波数は、例えば1~100MHz、好ましくは5~50MHzである。
高周波電圧を印加する際のチャンバー内の圧力は、例えば0.05~200Pa、好ましくは1~100Paである。スパッタエッチングのエネルギー(処理時間と印加した電力との積)は、例えば1~1000J/cm、好ましくは2~200J/cmである。
【0118】
プラズマ処理は、例えば、プラズマ放電機により常圧空気中で放電する方式が挙げられる。基材をプラズマ装置内にセットし、所定のガスでプラズマ照射することにより行われ得る。 プラズマ処理の条件は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な条件に設定され得る。
上記プラズマ処理は、大気圧下で行われるプラズマ処理であってもよく、減圧下で行われるプラズマ処理であってもよい。プラズマ処理時の圧力(真空度)は、例えば0.05Pa~200Paであり、好ましくは0.5Pa~100Paである。
【0119】
プラズマ処理に用いる高周波電源の周波数は、例えば1MHz~100MHzであり、好ましくは5MHz~50MHzである。
プラズマ処理時のエネルギー量は、好ましくは0.1J/cm~100J/cmであり、より好ましくは1J/cm~20J/cmである。
プラズマ処理時間は、好ましくは1秒~5分であり、より好ましくは5秒~3分である。
プラズマ処理時のガス供給量は、好ましくは1sccm~150sccmであり、より好ましくは10sccm~100sccmである。
【0120】
上記プラズマ処理に用いる反応ガスとしては、例えば、水蒸気、空気、酸素、窒素、水素、アンモニア、アルコール(例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール)等のガスが挙げられる。このような反応ガスを用いれば、接着性に優れる基材を得ることができる。また、反応ガスと併用して、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスが用いられ得る。
【0121】
表面処理の種類は、基材を構成する材料に応じて適宜選択することができる。
【0122】
<加圧・加熱工程(工程B)>
次に、平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する。本工程により、分子接着剤が基材上に固定され、分子接合層が形成される。
本発明の実施形態においては、微細な凹凸構造を形成、保持が可能な積層体を実現するために、分子接着剤の反応性基の種類、第1基材の材料の種類、第2基材の材料の種類等に応じて、加熱および加圧の条件を適切に設定することが重要である。
【0123】
加熱は、第1基材側から加熱してもよいし、第2基材側から加熱してもよいし、その両方から加熱してもよい。なかでも、凹凸構造の形状保持の観点から、第1基材側または第2基材側のいずれか一方から加熱するのが好ましく、第2基材側からのみ加熱するのがより好ましい。
加熱温度は、好ましくは40~250℃、より好ましくは60~200℃、さらに好ましくは80~120℃である。特に、第1基材側から加熱する場合の加熱温度は、好ましくは40~250℃、より好ましくは60~200℃、さらに好ましくは90~110℃である。また、第2基材側から加熱する場合の加熱温度は、好ましくは40~250℃、より好ましくは60~200℃、さらに好ましくは80~110℃である。
加熱時間は、好ましくは1秒~120分、より好ましくは1分~60分、さらに好ましくは1分~30分である。
【0124】
加熱方法としては特に限定されず、上述の乾燥機構と同様の機構及び装置を用いることができる。
【0125】
また、加圧圧力は、好ましくは0.01MPa以上50MPa以下、より好ましくは0.1MPa以上5MPa以下である。加圧時間は、好ましくは0.1分以上200分以下である。
加圧方法としては特に限定されず、公知の加熱プレス機(例えば、新東工業社製、精密恒温プレス機CYPT-10等)を用いることができる。
【0126】
微細な凹凸構造を形成、保持が可能な基材を実現するという観点で、最も好ましい加熱の態様としては、第2基材側からのみ加熱温度80~100℃で5~10分加熱する態様であり、最も好ましい加圧の態様としては、加圧圧力を0.5~1.5MPaで5~10分加圧する態様である。加熱と加圧は同時に行ってもよく、加熱後に加圧してもよく、加圧後に加熱をしてもよく、加熱と加圧を同時に行うことが好ましい。
【0127】
以上説明したように、本明細書には次の事項が開示されている。
〔1〕
凹凸構造を有する第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する第1基材と、
前記第1基材の前記第1主面側に配置された第3主面を有する第2基材と、を備え、
前記第1主面が有する前記凹凸構造は、少なくとも1の凹部と、少なくとも1の平坦部とを含み、
前記第1主面の前記平坦部と前記第3主面とは、分子接合層を介して結合されており、
少なくとも1の凹部のそれぞれについて、前記凹部の開口が規定する開口面と凹部の側面及び底面とで画される空間の断面積をXとし、前記開口面から前記凹部内に侵入した前記第2基材の断面積をYとしたとき、Y/Xが以下の式を満たす積層体。
0.4≧Y/X>0
〔2〕
前記分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2のいずれか少なくとも1つを有する化合物を含有し、
前記第1反応性基RG1がアミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種である、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕
前記分子接合層を形成する分子接着剤が、第1反応性基RG1と、第2反応性基RG2とを有する化合物を含有し、
前記第1反応性基RG1がアミノ基及びアジド基からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2反応性基RG2がシラノール基及びアルコキシシリル基から選択される少なくとも1種である、〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
〔4〕
前記化合物はトリアジン環をさらに有し、前記第1反応性基RG1を含む基及び前記第2反応性基RG2を含む基が前記トリアジン環に結合している、〔3〕に記載の積層体。
〔5〕
前記分子接着剤が下記の一般式[I]で表される化合物を含む、〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の積層体。
【0128】
【化10】
【0129】
[一般式[I]中、Eは、2価の連結基を表し、Fは、OHまたはOH生成基を表す。
及びQは、それぞれ独立に、Nまたは-NR(R)を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
〔6〕
前記平坦部および前記第3主面は、炭化水素基、カルボニル基、カルボキシル基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を有し、前記第1基材と前記第2基材とが前記分子接合層を介して共有結合により結合されている、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の積層体。
〔7〕
前記分子接合層の厚みが2μm以下である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体。
〔8〕
前記凹凸構造は検体を流す流路を形成する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の積層体。
〔9〕
前記流路がマイクロ流路である、〔8〕に記載の積層体。
〔10〕
〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の積層体を製造する方法であって、
前記第1基材の前記平坦部および第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に分子接着剤を付与する工程と、
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程と、
を包含する、製造方法。
〔11〕
〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の積層体を製造する方法であって、
前記第1基材の前記平坦部および前記第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に、下記一般式[I’]で表される化合物を含む分子接着剤を付与する工程と、
前記分子接着剤に光を照射する工程と、
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程と、
を包含する、製造方法。
【0130】
【化11】
【0131】
[一般式[I’]中、Eは、2価の連結基を表し、FはOHまたはOH生成基を表す。
Qは、Nまたは-NR(R)を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1~24の炭化水素基、アミノアルキル基、または-R-Si(R’)(OA)3-nを表す。
Rは、炭素数が1~12の鎖状の2価の炭化水素基を表す。
R’は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
Aは、複数存在する場合はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1~4の鎖状の炭化水素基を表す。
nは0~2の整数を表す。]
〔12〕
前記第1基材の前記平坦部および前記第2基材の前記第3主面の少なくとも一方に分子接着剤を付与する工程の後、前記分子接着剤を30~90℃で乾燥させる、〔10〕または〔11〕に記載の製造方法。
〔13〕
前記平坦部と前記第3主面とを対向させた状態で加圧しつつ加熱する工程において、前記第1基材及び前記第2基材の少なくとも一方の側から加熱する、〔10〕~〔12〕のいずれかに記載の製造方法。
【実施例0132】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0133】
<断面観測>
ミクロトーム切削により、積層体の断面試料を作製し、得られた断面試料について光学顕微鏡あるいは走査電子顕微鏡を用いて断面を観測し、凹部の断面積XおよびYを計測した。上記凹部の断面積XおよびYは、断面中に観測される凹部のうち、任意に選択した3個の凹部における断面積XおよびYを平均することで求めた。
なお、断面積XおよびYとは以下のとおりであり、本明細書中に記載の定義と同義である。
X:凹部の開口が規定する開口面と凹部の側面及び底面とで画される空間の断面積
Y:開口面から凹部内に侵入した第2基材の断面積
【0134】
<接着評価>
積層体を、室温(23℃)環境下で、エタノールの入った容器内に1週間浸漬し、エタノール浴から取り出し、周囲に付着したエタノールを乾いた布で拭き取った後、第1基材(第1シート)又は第2基材(第2シート)の表面に指を触れ、第1基材と第2基材の積層方向および積層方向と垂直の方向に押圧したときに、第1基材と第2基材が剥離せず、第1基材と第2基材の接着が保持されているものを〇、第1基材と第2基材が剥離したものを×とした。
【0135】
<積層体の作製>
以下に記載の方法で実施例1~12、及び比較例1~3の積層体を作製した。
(実施例1)
第1基材(第1シート)として凹凸構造を有するPMMA(ポリメチルメタアクリレート,Asicon社製、製品名 十字型流路チップ,1.5mm厚)、及び、第2基材(第2シート)として凹凸構造を有しないPMMA(ポリメチルメタアクリレート,三菱ケミカル社製、HBS006,125μm厚)を用意した。
まず、第1基材の凹凸構造を有する主面に対し、分子接着剤として6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアジドの0.5質量%エタノール溶液を塗布し、塗布面についてドライヤー乾燥した後、クォークテクノロジー製UV-LED照射装置を用いてUV照射(265nm,100mJ/cm)することで、第1基材の主面上に分子接合層を成膜した。
次に、第2基材の片方の主面に対し、放電量122W・min/mの条件でコロナ処理を行った。そして、コロナ処理した主面に対し、分子接着剤として6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアジドの0.5質量%エタノール溶液を塗布し、塗布面についてドライヤー乾燥した後、クォークテクノロジー製UV-LED照射装置を用いてUV照射(265nm,100mJ/cm)した。
その後、さらに分子接着剤としてN,N’-ビス(2-アミノエチル)-6-(3-トリヒドロキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンの0.5質量%水溶液を塗布し、乾燥機にて80℃10分間乾燥することで、第2基材の主面上に分子接合層を成膜した。
そして、新東工業社製の精密恒温プレス機CYPT-10を用いて、第1基材および第2基材の分子接合層同士を対向させ、表1に記載の温度、圧力、時間で、加圧・加熱し、実施例1の積層体を得た。なお、加熱は第2基材側からのみ行った。
【0136】
(実施例2~8)
表1に記載の温度、圧力、時間で、加圧・加熱した点を除いては、実施例1と同様の方法で積層体を作製した。なお、実施例2、3において加熱は第1基材(第1シート)側および第2基材(第2シート)側の両方から行い、実施例4~8において加熱は第2基材(第2シート)側からのみ行った。
【0137】
(実施例9~11、比較例3)
第1基材(第1シート)および第2基材(第2シート)は実施例1~8と同じものを用意した。
まず、第1基材の凹凸構造を有する主面に対し、放電量122W・min/mの条件でコロナ処理を行った。
次に、第2基材の片方の主面に対し、放電量122W・min/mの条件でコロナ処理を行った。そして、コロナ処理した主面に対し、分子接着剤としてN,N’-ビス(2-アミノエチル)-6-(3-トリヒドロキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンの0.5質量%水溶液を塗布し、乾燥機にて80℃10分間乾燥することで、第2基材の主面上に分子接合層を成膜した。
そして、新東工業社製の精密恒温プレス機CYPT-10を用いて、第1基材のコロナ処理面と第2基材の分子接合層とを対向させ、表1に記載の温度、圧力、時間で、加圧・加熱し、実施例9~11及び比較例3の積層体を得た。なお、実施例9~11において加熱は第2基材側からのみ行い、比較例3において加熱は第1基材および第2基材側の両方から行った。
【0138】
(実施例12)
第2基材(第2シート)として、凹凸構造を有しないPET(東レ社製、ルミラーT60 125μm厚)を用い、表1に記載の温度、圧力、時間で、加圧・加熱した点を除いては、実施例1と同様の方法で積層体を作製した。なお、加熱は第2基材側からのみ行った。
【0139】
(比較例1)
第1基材(第1シート)として凹凸構造を有するPMMA(ポリメチルメタアクリレート,Asicon社製、製品名 十字型流路チップ,1.5mm厚)、及び、第2基材(第2シート)として凹凸構造を有しないSiゴム(十川ゴム社製、K-125、1mm厚)を用意した。
まず、第1基材の凹凸構造を有する主面に対し、分子接着剤として6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアジドの0.5質量%エタノール溶液を塗布し、塗布面についてドライヤー乾燥した後、クォークテクノロジー製UV-LED照射装置を用いてUV照射(265nm,100mJ/cm)することで、第1基材の主面上に分子接合層を成膜した。
次に、第2基材の片方の主面に対し、放電量122W・min/mの条件でコロナ処理を行った。
そして、新東工業社製の精密恒温プレス機CYPT-10を用いて、第1基材の分子接合層と第2基材のコロナ処理面とを対向させ、表1に記載の温度、圧力、時間で、加圧・加熱し、実施例9~11及び比較例2の積層体を得た。なお、実施例9、10において加熱は第2基材側からのみ行い、実施例11及び比較例2において加熱は第1基材および第2基材側の両方から行った。
【0140】
(比較例2)
第1基材(第1シート)および第2基材(第2シート)は実施例1~11と同じものを用意した。
TMP-A(ライトアクリレート,共栄社化学社製)とFA513AS(ファンクリル,昭和電工マテリアルズ社製)のモノマー重量比が1:1となるように混合して得た混合溶液100質量部に対し、光ラジカル開始剤としてOmnirad907(IGM Resins B.V.製)及びKAYACURE DETX-S(日本化薬社製)を2質量部ずつ溶解した。得られた溶液を、第1基材および第2基材(凹凸構造側)間に介在させ、ラミネーターで余剰の溶液を除去した後、メタルハライドランプ照射(3000mJ/cm)することで、比較例1の積層体を得た。
【0141】
以上をまとめた結果を表1に示す。なお、図4に積層体作製方法の概略図を示しており、表1中の層構成の番号は図4における番号に対応する。
【0142】
【表1】
【0143】
実施例の積層体はいずれも、0.4≧Y/X>0であり、かつ接着評価も良好であり、基材表面の凹凸構造が保持されつつ、基材同士の接着性に優れた積層体が得られた。
一方、分子接着剤を用いて作製した比較例1の積層体において、接着不十分であった。
これは熱および加圧圧力が比較的低いことが原因であると考えられる。また、基材同士の接着力も低い結果となった。
また、UV接着剤を用いて作製した比較例2の積層体は、Y/Xが1.00となっており、基材表面の凹凸構造が保持されなかった。これは、UV接着剤を用いて基材同士の接着を行ったため、接着試薬が流路を埋めたことが原因であると考えられる。
また、分子接着剤を用いて作製した比較例3の積層体においても、Y/Xが1.00となっており、基材表面の凹凸構造が保持されなかった。これは加熱温度が比較的高いことが原因であると考えられる。
【0144】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
100,200 積層体
10,40 第1基材
30,60 第2基材
20,50 分子接合層
11s,41s 第1主面
12s,42s 第2主面
31s,61s 第3主面
32s,62s 第4主面
10s,40s 第1主面の平坦部
13,43 第1主面の凹部
63 第3主面の凹部
60s 第3主面の平坦部
13a,43a,63a 内部空間
図1
図2
図3
図4