(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028188
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/097 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
F16H3/097
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023131835
(22)【出願日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】22191074.8
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ・ヘドマン
【テーマコード(参考)】
3J528
【Fターム(参考)】
3J528EA09
3J528EA25
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB79
3J528EB95
3J528FB03
3J528FC32
3J528FC42
3J528FC65
3J528GA07
3J528GA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】変速機の長さを長くすることなく、追加のギヤ比を与えることができる変速機を提供する。
【解決手段】車両用の変速機は、インプットシャフト(1)、メインシャフト(2)、及びカウンターシャフト(3)であって、メインシャフトはインプットシャフトと同軸であり、カウンターシャフトはインプットシャフト及びメインシャフトと平行である。第1プライマリギヤプレーン及び第2プライマリギヤプレーン(P1、P2)と、少なくとも1つのセカンダリギヤプレーン(S1、S2、S3)を含む。変速機は、メインシャフトと平行に配置されたリバースシャフト(4)をさらに含み、第1プライマリギヤプレーンは第1リバースシャフト歯車(41)を含み、第2プライマリギヤプレーンは、第2リバースシャフト歯車(42)を含み、第2リバースシャフト歯車は、変速機のリバースギヤを係合するように、第1リバースシャフト歯車に選択的に回転連結可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)用の変速機(120)であって、
インプットシャフト(1)、メインシャフト(2)、及びカウンターシャフト(3)であって、前記メインシャフト(2)は前記インプットシャフト(1)と同軸であり、前記カウンターシャフト(3)は前記インプットシャフト(1)及び前記メインシャフト(2)と平行である、前記インプットシャフト(1)、前記メインシャフト(2)、及び前記カウンターシャフト(3)と、
前記インプットシャフト(1)と前記カウンターシャフト(3)との間のトルク伝達用に配置された第1プライマリギヤプレーン及び第2プライマリギヤプレーン(P1、P2)と、
前記カウンターシャフト(3)と前記メインシャフト(2)との間のトルク伝達用に配置された少なくとも1つのセカンダリギヤプレーン(S1、S2、S3)と、
を含み、
前記変速機(120)は前記メインシャフト(2)と平行に配置されたリバースシャフト(4)をさらに含み、前記第1プライマリギヤプレーン(P1)は前記リバースシャフト(4)に配置された第1リバースシャフト歯車(41)を含み、前記第2プライマリギヤプレーン(P2)は前記リバースシャフト(4)に配置された第2リバースシャフト歯車(42)を含み、前記第2リバースシャフト歯車(42)は前記変速機(120)のリバースギヤを係合するように、前記第1リバースシャフト歯車(41)に選択的に回転連結可能である、変速機。
【請求項2】
前記第1プライマリギヤプレーン(P1)は、前記インプットシャフト(1)と同軸に配置された第1インプット歯車(11)、及び前記カウンターシャフト(3)に配置された第1カウンターシャフト歯車(31)を含み、
前記第2プライマリギヤプレーン(P2)は、前記インプットシャフト(1)と同軸に配置された第2インプット歯車(12)、及び前記カウンターシャフト(3)に配置された第2カウンターシャフト歯車(32)を含む、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記第1リバースシャフト歯車(41)及び前記第1カウンターシャフト歯車(31)は互いに噛み合い係合しており、前記第2リバースシャフト歯車(42)及び前記第2インプット歯車(12)は互いに噛み合い係合している、または
前記第2リバースシャフト歯車(42)及び前記第2カウンターシャフト歯車(32)は互いに噛み合い係合しており、前記第1リバースシャフト歯車(41)及び前記第1インプット歯車(11)は互いに噛み合い係合している、請求項2に記載の変速機。
【請求項4】
前記第1カウンターシャフト歯車及び前記第2カウンターシャフト歯車(31’、32)のうちの1つは前記カウンターシャフト(3)に回転固定され、前記第1カウンターシャフト歯車及び前記第2カウンターシャフト歯車(31、32’)のうちのもう1つは、フォワードギヤを係合するように前記カウンターシャフト(3)に回転可能に配置され、かつ前記カウンターシャフト(3)に選択的に回転連結可能である、回転可能なカウンターシャフト歯車(31、32’)である、請求項2または3に記載の変速機。
【請求項5】
前記第1リバースシャフト歯車及び前記第2リバースシャフト歯車(41、42)を互いに/互いから選択的に回転連結及び回転連結解除するように構成されたリバースギヤ係合装置(43)、ならびに前記回転可能なカウンターシャフト歯車(31、32’)を前記カウンターシャフト(3)に/前記カウンターシャフト(3)から選択的に回転連結及び回転連結解除するように構成されたカウンターシャフトギヤ係合装置(33)をさらに含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項6】
前記カウンターシャフトギヤ係合装置(33)は、前記リバースギヤ係合装置(43)が中立位置にある場合にのみ、前記回転可能なカウンターシャフト歯車(31、32’)を前記カウンターシャフト(3)に回転連結するように構成され、
前記リバースギヤ係合装置(43)は、前記カウンターシャフトギヤ係合装置(33)が中立位置にある場合にのみ、前記第1リバースシャフト歯車及び前記第2リバースシャフト歯車(41、42)を互いに回転連結するように構成される、請求項5に記載の変速機。
【請求項7】
前記リバースギヤ係合装置及び前記カウンターシャフトギヤ係合装置(43、33)は、単一アクチュエータ(50)により同様に可動であるように配置される、請求項5または6に記載の変速機。
【請求項8】
前記リバースギヤ係合装置及び前記カウンターシャフトギヤ係合装置(43、33)は、共通中立位置に選択的に可動であり、前記共通中立位置では、前記第1リバースシャフト歯車及び前記第2リバースシャフト歯車(41、42)は互いから回転連結解除され、前記回転可能なカウンターシャフト歯車(31)は前記カウンターシャフト(3)から回転連結解除される、請求項5~7のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項9】
前記第1リバースシャフト歯車(41)のギヤ歯数は、前記第1リバースシャフト歯車(41)の理論上のギヤ歯数と、少なくとも1つのギヤ歯だけ、例えば1~3つのギヤ歯数だけ異なり、
前記理論上のギヤ歯数は、前記第1インプット歯車(11)及び前記第1カウンターシャフト歯車(31)のギヤ歯数と、前記第1プライマリギヤプレーン(P1)の前記歯車(11、31、41)間の中心間距離(amr、amc、acr)とから決定される、請求項2に記載の変速機。
【請求項10】
前記第2リバースシャフト歯車(42)のギヤ歯数は、前記第2リバースシャフト歯車(42)の理論上のギヤ歯数と、少なくとも1つのギヤ歯だけ、例えば1~3つのギヤ歯数だけ異なり、
前記理論上のギヤ歯数は、前記第2インプット歯車(12)及び前記第2カウンターシャフト歯車(32)のギヤ歯数と、前記第2プライマリギヤプレーン(P2)の前記歯車(12、32、42)間の中心間距離(amr、amc、acr)とから決定される、請求項9に記載の変速機。
【請求項11】
前記第1リバースシャフト歯車(41)の前記ギヤ歯数は、前記第1リバースシャフト歯車(41)の前記理論上のギヤ歯数より少なく、前記第2リバースシャフト歯車(42)の前記ギヤ歯数は、前記第2リバースシャフト歯車(42)の前記理論上のギヤ歯数よりも多い、または
前記第1リバースシャフト歯車(41)の前記ギヤ歯数は、前記第1リバースシャフト歯車(41)の前記理論上のギヤ歯数より多く、前記第2リバースシャフト歯車(42)の前記ギヤ歯数は、前記第2リバースシャフト歯車(42)の前記理論上のギヤ歯数よりも少ない、請求項10に記載の変速機。
【請求項12】
前記第1カウンターシャフト歯車及び前記第2カウンターシャフト歯車(31’、32)のうちの1つは、前記カウンターシャフト(3)に回転固定され、前記第1カウンターシャフト歯車及び前記第2カウンターシャフト歯車(31、32’)のうちのもう1つは、フォワードギヤを係合するように前記カウンターシャフト(3)に回転可能に配置され、かつ前記カウンターシャフト(3)に選択的に回転連結可能である、回転可能なカウンターシャフト歯車(31、32’)であり、
前記回転可能なカウンターシャフト歯車(31、32’)は、前記リバースシャフト歯車(41、42)の前記ギヤ歯数が前記理論上のギヤ歯数よりも多い前記プライマリギヤプレーン(P1、P2)のうちの1つに位置している、請求項11に記載の変速機。
【請求項13】
前記少なくとも1つのセカンダリギヤプレーン(S1、S2、Sr)は、少なくとも第1セカンダリギヤプレーン(S1)、第2セカンダリギヤプレーン(S2)、及び好ましくは第3セカンダリギヤプレーン(S3)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項14】
請求項5~8のいずれか1項に記載の変速機(120)を制御するための変速機制御ユニット(200)であって、前記変速機(120)のダイレクトフォワードギヤが係合される場合、中立位置に前記カウンターシャフトギヤ係合装置(33)を制御するように構成される、変速機制御ユニット(200)。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の変速機(120)を含む車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機、変速機制御ユニット及び車両に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス、及び建設機械などの大型車両に適用することができる。本発明はトラックに関して説明するが、このタイプの車両に限定されず、バス、トレーラ、ホイールローダ、パワーショベルなどの他の車両にも使用されてもよい。
【背景技術】
【0003】
エンジンの減速、つまりエンジンをトルクの高い、低い回転速度で動作させると、一般にドライバビリティが向上し、燃料消費量が減少する。したがって、大型車両では、燃料を節約し排出物を減少させるために、エンジンの減速がますます一般的になってきている。このような減速では、発進性を維持するために、車両の変速機のギヤ比の適用範囲を広げる必要がある。したがって、追加のギヤを必要とする。しかし、そのような追加のギヤは、変速機を長く、重く、そしてより高価にするリスクがある。さらに、変速機内のシャフトの長さを長くすると、シャフトは、弱くなり、負荷がかかったときにたわみやすくなる。これを考慮すると、任意選択の追加のギヤを設けることができる、変速機の長さに中立な設計を達成することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明の主な目的は、従来の変速機と比較して少なくともいくつかの態様では改良されている車両用の変速機を提供することである。特に、変速機の長さを長くすることなく、追加のギヤ比を与えることができ、減速したエンジンでの使用に適しているような変速機を提供することが目的である。別の目的は、いかなる追加のハウジングモジュールなども必要としないような変速機を提供することである。さらに別の目的は、1より高いリバースギヤ比を与えることができる変速機を提供することである。
【0005】
本発明の第1態様によれば、少なくとも主な目的は、請求項1に記載の変速機によって達成される。したがって、
インプットシャフト、メインシャフト、及びカウンターシャフトであって、メインシャフトはインプットシャフトと同軸であり、カウンターシャフトはインプットシャフト及びメインシャフトと平行である、インプットシャフト、メインシャフト、及びカウンターシャフトと、
インプットシャフトとカウンターシャフトとの間のトルク伝達用に配置された第1プライマリギヤプレーン及び第2プライマリギヤプレーンと、
カウンターシャフトとメインシャフトとの間のトルク伝達用に配置された少なくとも1つのセカンダリギヤプレーンと、
を含む、車両用の変速機が提供される。
【0006】
変速機は、メインシャフトと平行に配置されたリバースシャフトをさらに含み、第1プライマリギヤプレーンは、リバースシャフトに配置された第1リバースシャフト歯車を含み、第2プライマリギヤプレーンは、リバースシャフトに配置された第2リバースシャフト歯車を含み、第2リバースシャフト歯車は、変速機のリバースギヤを係合するように、第1リバースシャフト歯車に選択的に回転連結可能である。
【0007】
メインシャフトと平行に配置されたリバースシャフトを設け、上述のようにリバースシャフトに少なくとも2つの歯車を配置することにより、いくつかのリバースギヤ比を与える比較的空間効率の良い変速機が得られる。
【0008】
本発明による変速機はスプリッタタイプのものであり、すなわち、インプットシャフトとカウンターシャフトとの間のトルク伝達用に2つのプライマリギヤプレーンを含む。さらに、カウンターシャフトとメインシャフトとの間のトルク伝達用に1つまたは複数のセカンダリギヤプレーンを含む。各プライマリギヤプレーンは、プライマリギヤ係合装置を使用してインプットシャフトに選択的に回転連結可能である、それぞれのインプット歯車を含むことができる。プライマリギヤ係合装置は、リバースギヤ係合装置及びカウンターシャフトギヤ係合装置と組み合わせて、フォワードギヤかリバースギヤかいずれかでインプットシャフトからカウンターシャフトへのトルク伝達用のトルク経路を選択するために使用される。
【0009】
変速機は、リバースギヤを係合する場合、インプットシャフトからカウンターシャフトに偶数のギヤ噛み合い、例えば2または4のギヤ噛み合いを介してトルクを伝達すると、カウンターシャフトがインプットシャフトと同じ方向に回転するように構成される。したがって、トルクはリバースシャフトを介して伝達される。それにより、少なくとも1つのセカンダリギヤプレーンのうちの1つでは単一のギヤ噛み合いを介してカウンターシャフトからメインシャフトにトルクを伝達する場合、メインシャフト及びインプットシャフトは反対方向に回転する。
【0010】
シャフトに「配置される」歯車とは、歯車がシャフトと同軸であり、シャフトに回転可能に配置されるか、シャフトに恒久的に固定されるかいずれかを意図する。回転可能に配置される場合、歯車は、スリーブなどのギヤ係合装置を使用してシャフトに回転連結することが可能である。
【0011】
「回転連結される」という用語は、「共通の回転用に連結される」ことを意図したものである。
【0012】
本明細書では、2つの回転部品の「駆動連結」とは、部品間でトルクを伝達することができ、部品の回転速度が比例することを意図する。2つの歯車が駆動連結されると、歯車間でトルクを伝達することができる。これは、歯車が噛み合い係合していることによって、または第1歯車が第2歯車と噛み合い係合しており、その第2歯車が第3歯車と噛み合い連結していることによって、または第1歯車が第2歯車と噛み合い係合しており、第2歯車が第3歯車に強固に連結され、第3歯車が第4歯車と噛み合い連結していることによって達成され得る。したがって、駆動連結するために、2つの歯車が噛み合い係合している必要はない。歯車のうちの1つが回転すると、歯車のうちのもう1つが必ず回転することになればよい。
【0013】
任意選択で、第1プライマリギヤプレーンは、インプットシャフトと同軸に配置された第1インプット歯車と、カウンターシャフトに配置された第1カウンターシャフト歯車とを含み、第2プライマリギヤプレーンは、インプットシャフトと同軸に配置された第2インプット歯車と、カウンターシャフトに配置された第2カウンターシャフト歯車とを含む。例えば、第2インプット歯車はインプットシャフトに同軸で配置されてもよい。
【0014】
任意選択で、第1リバースシャフト歯車及び第1カウンターシャフト歯車は、互いに噛み合い係合しており、第2リバースシャフト歯車及び第2インプット歯車は互いに噛み合い係合している。本明細書では、変速機は、トップフォワードギヤがダイレクトギヤである、ダイレクトギヤ変速機として構成され得る。
【0015】
代替に、第2リバースシャフト歯車及び第2カウンターシャフト歯車は、互いに噛み合い係合していてもよく、第1リバースシャフト歯車及び第1インプット歯車は互いに噛み合い係合していてもよい。本明細書では、変速機は、トルクがカウンターシャフトを介して伝達されるトップフォワードギヤを備えた、オーバードライブ変速機として構成され得る。
【0016】
本明細書では、噛み合い係合とは、恒久的な噛み合い係合を意図する。
【0017】
上記の構成の両方では、変速機は、インプットシャフトからリバースシャフトを介してカウンターシャフトにトルクを伝達することで、カウンターシャフト及びインプットシャフトが同じ方向に回転するために、偶数のギヤ噛み合いが設けられるように構成される。したがって、単一のギヤ噛み合いを使用してトルクをカウンターシャフトからメインシャフトに伝達すると、リバースギヤが得られる。
【0018】
任意選択で、第1及び第2カウンターシャフト歯車のうちの1つは、カウンターシャフトに回転固定され、第1及び第2カウンターシャフト歯車のうちのもう1つは、フォワードギヤを係合するようにカウンターシャフトに回転可能に配置され、カウンターシャフトに選択的に回転連結可能になった回転可能なカウンターシャフト歯車である。回転可能なカウンターシャフト歯車がカウンターシャフトに回転連結されない場合、リバースギヤが係合され得る。
【0019】
任意選択で、変速機は、第1リバースシャフト歯車及び第2リバースシャフト歯車を互いに/互いから選択的に回転連結及び回転連結解除するように構成されたリバースギヤ係合装置と、回転可能なカウンターシャフト歯車をカウンターシャフトに/カウンターシャフトから選択的に回転連結及び連結解除するように構成されたカウンターシャフトギヤ係合装置とをさらに含む。
【0020】
任意選択で、カウンターシャフトギヤ係合装置は、リバースギヤ係合装置が中立位置にある場合にのみ、回転可能なカウンターシャフト歯車をカウンターシャフトに回転連結するように構成され、リバースギヤ係合装置は、カウンターシャフトギヤ係合装置が中立位置にある場合にのみ、第1及び第2リバースシャフト歯車を互いに回転連結するように構成される。その中立位置では、カウンターシャフトギヤ係合装置は、回転可能なカウンターシャフト歯車を、カウンターシャフトから回転連結解除し、カウンターシャフトに対して回転することができるようにする。同様に、その中立位置では、リバースギヤ係合装置は、第1及び第2リバースシャフト歯車を、リバースシャフト歯車のうちの1つをリバースシャフトから回転連結解除することなどによって、互いから回転連結解除する。
【0021】
任意選択で、リバースギヤ係合装置及びカウンターシャフトギヤ係合装置は、単一アクチュエータによって同様に可動であるように配置、例えば、共通シフトロッドに設けられた2つのシフトフォークによって可動であることなどによって、単一アクチュエータによって可動であるように配置される。
【0022】
任意選択で、リバースギヤ係合装置及びカウンターシャフトギヤ係合装置は、共通中立位置に選択的に可動であり、この共通中立位置では、第1リバースシャフト歯車及び第2リバースシャフト歯車は互いから回転連結解除され、回転可能なカウンターシャフト歯車はカウンターシャフトから回転連結解除される。
【0023】
任意選択で、第1リバースシャフト歯車のギヤ歯数は、第1リバースシャフト歯車の理論上のギヤ歯数と、少なくとも1つのギヤ歯だけ、例えば1~3つのギヤ歯数だけ異なり、理論上のギヤ歯数は、第1インプット歯車及び第1カウンターシャフト歯車のギヤ歯数と、第1プライマリギヤプレーンの歯車間の中心間距離とから決定される。
【0024】
任意選択で、第2リバースシャフト歯車のギヤ歯数は、第2リバースシャフト歯車の理論上のギヤ歯数と、少なくとも1つのギヤ歯だけ、例えば1~3つのギヤ歯数だけ異なり、理論上のギヤ歯数は、第2インプット歯車及び第2カウンターシャフト歯車のギヤ歯数と、第2プライマリギヤプレーンの歯車間の中心間距離とから決定される。
【0025】
任意選択で、第1リバースシャフト歯車のギヤ歯数は、第1リバースシャフト歯車の理論上のギヤ歯数より少なく、第2リバースシャフト歯車のギヤ歯数は、第2リバースシャフト歯車の理論上のギヤ歯数よりも多い。本明細書では、回転可能なカウンターシャフト歯車は、第2プライマリギヤプレーンに位置する第2カウンターシャフト歯車であることが好ましいことがある。この構成は、リバースギヤでは、車両が推進していると、動力がインプットシャフトから第2プライマリギヤプレーン、続いて第1プライマリギヤプレーンを介してカウンターシャフトに流れる場合に有益である。第2リバースシャフト歯車のギヤ歯数が比較的多いということは、ギヤ歯数が少ない構成と比較して、リバースシャフトが比較的緩徐に回転することを意味する。したがって、より大きい減速が可能である。第1リバースシャフト歯車のギヤ歯数が比較的少ないことでも、同じ効果がある。
【0026】
代替に、第1リバースシャフト歯車のギヤ歯数は、第1リバースシャフト歯車の理論上のギヤ歯数より多くなり得、第2リバースシャフト歯車のギヤ歯数は、第2リバースシャフト歯車の理論上のギヤ歯数よりも少なくなり得る。本明細書では、回転可能なカウンターシャフト歯車は、第1プライマリギヤプレーンに位置する第1カウンターシャフト歯車であることが好ましいことがある。この構成は、リバースギヤでは、車両が推進していると、動力がインプットシャフトから第1プライマリギヤプレーン、続いて第2プライマリギヤプレーンを介してカウンターシャフトに流れる場合に有益である。この場合、リバースギヤで大きい減速を得るには、第1リバースシャフト歯車のギヤ歯数を比較的多くすることが有益である。
【0027】
任意選択で、回転可能なカウンターシャフト歯車は、リバースシャフト歯車のギヤ歯数が理論上のギヤ歯数より多い、プライマリギヤプレーンの1つに位置している。
【0028】
任意選択で、少なくとも1つのセカンダリギヤプレーンは、少なくとも第1セカンダリギヤプレーン、及び第2セカンダリギヤプレーン、及び好ましくは第3セカンダリギヤプレーンを含む。第3セカンダリギヤプレーンは、クローラギヤを設けるために配置され得る。「クローラギヤ」は、他のギヤよりも大きい減速比を有する低速フォワードギヤとして理解され、低速での操縦または時折の上り坂での発進など、使用頻度の低い低速フォワードギヤとして設計される。
【0029】
任意選択で、変速機は、メインシャフトをハイレンジギヤまたはローレンジギヤでアウトプットシャフトに選択的に駆動連結するように構成されたレンジギヤをさらに含む。レンジギヤは、遊星歯車セットまたはパラレルシャフト歯車セットを含むことができる。
【0030】
本発明の第2態様によれば、第1態様による変速機を制御するための変速機制御ユニットが設けられ、変速機はカウンターシャフトギヤ係合装置を含む。変速機制御ユニットは、変速機のダイレクトフォワードギヤが係合される場合、カウンターシャフトギヤ係合装置を中立位置に制御するように構成される。これにより、カウンターシャフト及び/またはカウンターシャフト歯車が非駆動状態になる、すなわち、インプットシャフトから駆動が連結解除される。したがって、ダイレクトフォワードギヤでは、カウンターシャフトギヤ係合装置を中立位置に設定することによって、変速機のウェットサンプ内でカウンターシャフト歯車の回転に起因するスプラッシュロスを低減することができる。変速機制御ユニットは、アクチュエータと、アクチュエータを制御し、車両の他のシステム及び制御ユニットなどと通信するための電子回路とをさらに含むことができる。
【0031】
本発明の第3態様によれば、第1態様による変速機を含む車両が提供される。車両は、第2態様による変速機制御ユニットをさらに含み得る。車両は、例えば、トラック、バス、または作業機械などの大型車両であってもよい。車両は、燃焼機関によって駆動されてもよく、及び/または1つまたは複数の電動機を備える部分または完全電動車両であってもよい。本発明による車両の利点及び有利な特徴は、本発明の第1態様の上記の説明から明らかになる。
【0032】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【0033】
添付の図面を参照して、例として挙げた本発明の実施形態を以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態による車両を概略的に示す。
【
図2a】本発明の第1実施形態による変速機を概略的に示す。
【
図2b】
図2aの変速機のシャフトを側面図で概略的に示す。
【
図3】
図2aの変速機での例示的な動力流れを示す。
【
図4】
図2aの変速機での他の例示的な動力流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面は、本発明の実施形態を例示する図であり、従って、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。示され説明された実施形態が例示的なものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。また、本発明をより良く説明し例示するために、図面の一部の詳細が誇張されている場合があることにも留意されたい。説明全体を通して、別段に示されない限り、同様の参照文字は同様の要素を指す。
【0036】
図1は、本発明の一態様の例示的な実施形態による車両100を示す。車両100は、本明細書では大型車両、より具体的には1つまたは複数のトレーラ(図示せず)を牽引するための牽引車両またはトラクタである。上述のように、車両は、バス、ホイールローダ、パワーショベル、乗用車などを含むがこれらに限定されない、任意のタイプの車両であり得る。
【0037】
車両100は、本明細書では内燃機関(ICE)である推進ユニット110と、推進ユニット110に駆動連結されている、または連結可能である、本発明の例示的な実施形態による変速機120とを備える。変速機120を制御するために変速機制御ユニット200が設けられる。変速機120は、推進ユニット110から、車両100の駆動輪180を駆動する駆動車軸170に変速機120を連結するプロペラシャフト160にトルクを伝達するように配置される。駆動輪180は、本明細書では車両100の後輪である。この実施形態では駆動輪180が示されているが、パワーショベルのクローラ部材など、任意の他のタイプの地面係合手段を使用できることを理解されたい。
【0038】
当然、車両は多くの異なる構成を有し得る。一例として、車両は、ICEに加えて、またはICEの代わりに、1つまたは複数の電気推進ユニットを備えることができる。さらに、変速機120は、車両の前部に設けられる必要はなく、例えば、車両の後車軸と組み合わされてもよい。
【0039】
図2aは、本発明の第1実施形態による変速機120を示す。変速機120は、推進ユニット110(
図2aには図示せず)などの推進ユニットに駆動連結される、または連結可能であるインプットシャフト1を備える。メインシャフト2はインプットシャフト1と同軸に延在し、メインシャフト2の第1端部2aはインプットシャフト1のポケット1aに回転可能に受容される。カウンターシャフト3及びリバースシャフト4は互いに平行で、かつインプットシャフト1及びメインシャフト2と平行に延在する。シャフト1、2、3、4は、図では点線領域として示されるベアリングを使用して変速機ハウジング60に取り付けられる。
【0040】
変速機120は、2つのプライマリギヤプレーンP1、P2と、いくつかのセカンダリギヤプレーンS1、S2、S3と、を有するスプリッタタイプの変速機である。したがって、第1及び第2プライマリギヤプレーンP1、P2は、インプットシャフト1とカウンターシャフト3との間のトルク伝達用に配置される。第1プライマリギヤプレーンP1は、インプットシャフト1と同軸に配置された第1インプット歯車11と、カウンターシャフト3に回転可能に配置された第1カウンターシャフト歯車31とを備える。図示の第1実施形態では、第1インプット歯車11は、メインシャフト2に回転可能に配置される。第1プライマリギヤプレーンP1は、リバースシャフト4に回転可能に配置された第1リバースシャフト歯車41をさらに備える。
【0041】
第2プライマリギヤプレーンP2は、インプットシャフト1と同軸に配置された第2インプット歯車12と、カウンターシャフト3に配置されて固定された第2カウンターシャフト歯車32とを備える。図示の第1実施形態では、第2インプット歯車12は、インプットシャフト1に回転可能に配置される。第2プライマリギヤプレーンP2は、リバースシャフト4に配置されて固定された第2リバースシャフト歯車42をさらに備える。
【0042】
第1プライマリギヤプレーンP1では、点線で示されるように、第1リバースシャフト歯車41及び第1インプット歯車11が互いに噛み合い係合している。第1リバースシャフト歯車41は、第1カウンターシャフト歯車31とは噛み合い係合していない。第1カウンターシャフト歯車31は、第1インプット歯車11と噛み合い係合している。したがって、第1インプット歯車11は、第1カウンターシャフト歯車31及び第1リバースシャフト歯車41の両方と噛み合い係合している。
【0043】
第2プライマリギヤプレーンP2では、第2リバースシャフト歯車42及び第2カウンターシャフト歯車32が互いに噛み合い係合している。さらに第2カウンターシャフト歯車32は第2インプット歯車12と噛み合い係合している。第2インプット歯車12は、第2リバースシャフト歯車42と噛み合い係合していない。したがって、第1カウンターシャフト歯車32は、第1リバースシャフト歯車42及び第2インプット歯車12の両方と噛み合い係合している。
【0044】
第1、第2及び第3セカンダリギヤプレーンS1、S2、S3は、カウンターシャフト3とメインシャフト2との間のトルク伝達用にさらに配置され、第3セカンダリギヤプレーンS3は、変速機120のクローラギヤに対応するギヤ比を与える。第1、第2及び第3セカンダリギヤプレーンS1、S2、S3は、メインシャフト2に回転可能に配置された第1、第2及び第3メイン歯車21、22、23をそれぞれ備える。さらに第1、第2及び第3セカンダリギヤプレーンS1、S2、S3は、カウンターシャフト3に配置され、回転固定された第1、第2及び第3セカンダリカウンターシャフト歯車34、35、36をそれぞれ備え、各メイン歯車21、22、23は、セカンダリカウンターシャフト歯車35、35、36のそれぞれ1つと噛み合い係合している。当然、1つ、2つ、または4つのセカンダリギヤプレーンなど、3つを下回る、または3つを上回るセカンダリギヤプレーンが設けられてもよい。
【0045】
第1インプット歯車11及び第2インプット歯車12のうちの1つをインプットシャフト1に選択的に回転連結するために、第1ギヤ係合装置13が設けられる。第1ギヤ係合装置13は、第1インプット歯車11をインプットシャフト1に回転連結する第1位置(右側)と、第2インプット歯車12をインプットシャフト2に回転連結する第2位置(左側)と、インプットシャフト1から第1及び第2インプット歯車11、12の両方を回転連結解除する、
図2aに示されるような中立位置(中間)との間で可動である。また第1ギヤ係合装置13は、中立位置に設置可能ではなく、第1位置と第2位置との間でのみ可動であってもよい。
【0046】
第2ギヤ係合装置14は、第2インプット歯車11及び第2メイン歯車22のうちの1つをメインシャフト2に選択的に回転連結するために設けられる。
図2aに示されるように、中立位置では、第2ギヤ係合装置14は、第1インプット歯車11及び第2メイン歯車22の両方をメインシャフト2から回転連結解除する。第3ギヤ係合装置15は、第1メイン歯車21及び第3メイン歯車23のうちの1つをメインシャフト2に選択的に回転連結するために設けられる。また第3ギヤ係合装置15は、
図2aに示されるように、中立位置に設置可能である。
【0047】
変速機120は、第1及び第2リバースシャフト歯車41、42を互いに/互いから選択的に回転連結及び回転連結解除するためのリバースギヤ係合装置43をさらに備える。これにより、第2リバースシャフト歯車42は、変速機120のリバースギヤを係合するように、第1リバースシャフト歯車41に選択的に回転連結可能である。リバースシャフト歯車41、42が回転連結される場合にのみ、リバースギヤが係合され得る。図示の実施形態では、リバースギヤ係合装置43は、リバースギヤ係合装置43の軸方向位置に応じて、第1及び第2リバースシャフト歯車41、42を互いに/互いから回転連結及び連結解除する。
【0048】
カウンターシャフトギヤ係合装置33は、回転可能な第1カウンターシャフト歯車31をカウンターシャフト3に/カウンターシャフト3から選択的に回転連結及び回転連結解除するために設けられる。カウンターシャフトギヤ係合装置33が第1カウンターシャフト歯車31をカウンターシャフト3に回転連結する場合、フォワードギヤを係合することができるが、以下でさらに説明されるように、中立位置ではカウンターシャフトギヤ係合装置33とダイレクトフォワードギヤを係合させることも可能である。図示の実施形態では、カウンターシャフトギヤ係合装置33及びリバースギヤ係合装置43は、単一アクチュエータ50によって同様に可動であるように配置、例えば、共通シフトロッド(図示せず)に設けられた2つのシフトフォーク(図示せず)によって可動であることにより、単一アクチュエータ50によって可動であるように配置される。このようにして、カウンターシャフトギヤ係合装置33及びリバースギヤ係合装置43は、以下の間で同様に可動である。
【0049】
(i)
図2aの右側の第1位置。そこでは第1リバースシャフト歯車41がリバースシャフト4から回転連結解除されることにより、リバースシャフト歯車41、42が互いから回転連結解除され、第1カウンターシャフト歯車31が第2セカンダリカウンターシャフト歯車35に回転連結される。第1位置では、変速機120は、フォワードギヤでのトルク伝達用に構成される。
【0050】
(ii)
図2aの左側の第2位置。そこでは第1リバースシャフト歯車41がリバースシャフト4に回転連結されることにより、リバースシャフト歯車41、42が互いに回転連結され、第1カウンターシャフト歯車31が第2セカンダリカウンターシャフト歯車35から回転連結解除される。
【0051】
(iii)第1位置と第2位置との間の中間にある中立位置。そこではリバースシャフト歯車41、42だけでなく、第1カウンターシャフト歯車31及び第2セカンダリカウンターシャフト歯車35が互いから回転連結解除される。
【0052】
ギヤ係合装置13、14、15、33、43は、例えば、クラッチスリーブ、クラッチカラー、係合スリーブなどと呼ばれることがあるスリーブ部材であってもよい。ギヤシフトは、例えば電気、油圧、または空気圧アクチュエータを使用してシフトフォークを動かす、変速機制御ユニット200から制御され得る。
【0053】
第1実施形態による変速機120における動力流れを
図3~
図4に概略的に示す。
【0054】
図3では、変速機120は、第1ギヤ係合装置13を第1位置に設置し、第2ギヤ係合装置14を第2位置、すなわち、左側に設置することによって、ダイレクトフォワードギヤの形態でトップフォワードギヤに設定される。第3ギヤ係合装置15だけでなく、カウンターシャフトギヤ係合装置33及びリバースギヤ係合装置43が中立位置に設置されることにより、カウンターシャフト3及びこれに固定されている歯車32、34、35、36は、インプットシャフト1に駆動連結されない。トルクは、点線矢印で示されるように、インプットシャフト1から第1ギヤ係合装置13、第1インプット歯車11、及び第2ギヤ係合装置14を介してメインシャフト2に伝達される。
【0055】
図4には、3つの異なるリバースギヤ比での動力流れが示される。
図4に示されるすべてのリバースギヤは、第1ギヤ係合装置13をその第1位置に設置し、カウンターシャフトギヤ係合装置33及びリバースギヤ係合装置43をそれらの第2位置に設置することによって得られる。そこでは、第1リバースシャフト歯車41はリバースシャフト4に回転連結され、第1カウンターシャフト歯車31はカウンターシャフト3から回転連結解除される。これにより、トルクは、太い点線矢印で示されるように、インプットシャフト1からカウンターシャフト3に、第1ギヤ係合装置13、第1インプット歯車11、第1リバースシャフト歯車41、リバースギヤ係合装置43、リバースシャフト4、第2リバースシャフト歯車42、及び第2カウンターシャフト歯車32を介して伝達される。つまり、2つのギヤ噛み合いを介して、第1プライマリギヤプレーンP1、続いて第2プライマリギヤプレーンP2の順にトルクが伝達される。カウンターシャフト3とメインシャフト2との間のトルク伝達のギヤ比は、第2及び第3ギヤ係合装置14、15の位置を調整することにより設定される。図示の実施形態では、3つのリバースギヤ比は、それぞれ第1セカンダリギヤプレーンS1、第2セカンダリギヤプレーンS2、及び第3セカンダリギヤプレーンS3を使用することにより与えられる。例示のみを目的として、第2及び第3ギヤ係合装置14、15がそれらの中立位置で示されているが、それらの実際の位置は、当然、適切なギヤ比を選択するように調整されよう。太い点線矢印は、第1セカンダリギヤプレーンS1を介した第1リバースギヤの動力流れを示し、細い破線は、第2セカンダリギヤプレーンS2を介した第2リバースギヤの動力流れを示し、細い点線は、第3セカンダリギヤプレーンS3を介した、すなわち、リバースクローラギヤを使用した、第3リバースギヤの動力流れを示す。
【0056】
図2bは、インプットシャフト1及びメインシャフト2、カウンターシャフト3及びリバースシャフト4を側面図、すなわち、シャフト1、2、3、4の長手方向軸に垂直な平面で概略的に示す。
図2bは、インプットシャフト1及びメインシャフト2とリバースシャフト4との間の第1中心間距離a
mr、インプットシャフト1及びメインシャフト2とカウンターシャフト3との間の第2中心間距離a
mc、及びリバースシャフト4とカウンターシャフト3との間の第3中心間距離a
crを示す。各プライマリギヤプレーンP1、P2では、リバースシャフト歯車41、42の理論上のギヤ歯数z
41,th、z
42,thは、中心間距離a
mr、a
mc、a
cr、及びインプット歯車11、12の既知のギヤ歯数z
11、z
12、及びカウンターシャフト歯車31、32の既知のギヤ歯数z
31、z
32から、以下の式1及び式2で決定することができる。
【数1】
【0057】
理論上のギヤ歯数は必ずしも整数ではない。第1実施形態では、第1リバースシャフト歯車41の実際のギヤ歯数は、第1リバースシャフト歯車41の理論上のギヤ歯数より多く、第2リバースシャフト歯車42の実際のギヤ歯数は、第2リバースシャフト歯車42の理論上のギヤ歯数よりも少ないことが好ましい。これにより、
図4に示されるように、第1プライマリギヤプレーンP1から第2プライマリギヤプレーンP2へのトルク伝達にリバースシャフト41を使用すると、ギヤ比が大きくなることが可能になる。プライマリギヤプレーンP1、P2ごとに、理論上の数と実際の数との間の差は、少なくとも1つのギヤ歯、たとえば1~3つのギヤ歯であることが好ましい。
【0058】
第2実施形態による変速機120が
図5に示されている。第2実施形態による変速機120は、第2プライマリギヤプレーンP2の第2カウンターシャフト歯車32’がカウンターシャフト3に回転可能に配置され、第1カウンターシャフト歯車31’がカウンターシャフト3に固定されるという点で第1実施形態とは異なる。したがって本明細書では、カウンターシャフトギヤ係合装置33’は、第2カウンターシャフト歯車32’をカウンターシャフト3に選択的に回転連結して、変速機120のフォワードギヤを係合するように配置される。第1実施形態と同様に、第1リバースシャフト歯車41は、リバースシャフト4に回転可能に配置され、そこに、リバースギヤ係合装置43を使用して選択的に回転連結可能である。リバースギヤ係合装置43は、共通のアクチュエータ50を用いてカウンターシャフトギヤ係合装置33’と同様に可動である。したがって、
図6に示される右側の第1位置では、第1リバースシャフト歯車41はリバースシャフト4に回転連結され、第2カウンターシャフト歯車32’はカウンターシャフト3から回転連結解除される。リバースギヤを係合できることで、トルクは、第2プライマリギヤプレーンP2、続いて第1プライマリギヤプレーンP1を介してインプットシャフト1からカウンターシャフト3に伝達される、すなわち、4つのギヤ噛み合いを用いて、すなわち、第2インプット歯車12から第2カウンターシャフト歯車32’、第2カウンターシャフト歯車32’から第2リバースシャフト歯車42、第1リバースシャフト歯車41から第1インプット歯車11、及び第1インプット歯車11から第1カウンターシャフト歯車31’に伝達される。
【0059】
図6は、第2実施形態による変速機120を介した4つの異なるリバースギヤ比における動力流れを示す。すべてのリバースギヤは、第1ギヤ係合装置13を左側のその第2位置に設置することによって得られる。第2実施形態では、4つのリバースギヤ比が与えられる。3つのギヤ比は、それぞれ第1セカンダリギヤプレーンS1、第2セカンダリギヤプレーンS2、及び第3セカンダリギヤプレーンS3を使用することにより達成される。第2ギヤ係合装置14を使用して第1インプット歯車11をメインシャフト2に回転連結することによって、追加のギヤ比が達成される。例示のみを目的として、第2及び第3ギヤ係合装置14、15がそれらの中立位置で示されているが、それらの実際の位置は、当然、適切なギヤ比を選択するように調整されよう。太い点線矢印は第1セカンダリギヤプレーンS1を介した第1リバースギヤの動力流れを示し、細い破線は第2セカンダリギヤプレーンS2を介した第2リバースギヤの動力流れを示し、実線は追加のリバースギヤでの動力流れを示し、細い点線は第3セカンダリギヤプレーンS3を介した、すなわち、リバースクローラギヤを使用した、第3リバースギヤの動力流れを示す。
【0060】
第2実施形態では、
図3に示される第1実施形態と同じ方法でダイレクトフォワードギヤを実現することができる。共通のアクチュエータ50は、ダイレクトフォワードギヤでは、カウンターシャフトギヤ係合装置33’及びリバースギヤ係合装置43を、第2カウンターシャフト歯車32’とリバースシャフト4のいずれも回転しない共通の中立位置に設置することができる。
【0061】
リバースシャフト歯車41、42の理論上のギヤ歯数は、第2実施形態では、第1実施形態と同じ方法で決定されることができ、そのうえ実際のギヤ歯数は、第2実施形態では、理論上のギヤ歯数とは異なるように設定することができる。ただし、第2実施形態では、第1リバースシャフト歯車41の実際のギヤ歯数を理論上のギヤ歯数よりも少なくし、第2リバースシャフト歯車42の実際のギヤ歯数を理論上のギヤ歯数よりも多くするように設けることが有利である。これは、
図6に示されるように、第2プライマリギヤプレーンP2に続いて第1プライマリギヤプレーンP1を介したリバースギヤ比での動力流れによるものである。
【0062】
変速機120の第3実施形態を
図7に示す。第3実施形態による変速機120は、オーバードライブ変速機であり、プライマリギヤプレーンP1、P2の構成で第1実施形態と異なる。第1プライマリギヤプレーンP1では、第1インプット歯車11及び第1カウンターシャフト歯車31は噛み合い係合している。第1リバースシャフト歯車41及び第1カウンターシャフト歯車31も互いに噛み合い係合している。第1インプット歯車11は、第1リバースシャフト歯車41と噛み合い係合していない。
【0063】
第2プライマリギヤプレーンP2では、点線で示されるように、第2リバースシャフト歯車42及び第2インプット歯車12は互いに噛み合い係合している。第2リバースシャフト歯車42は、第2カウンターシャフト歯車32と噛み合い係合していない。第2カウンターシャフト歯車32は第2インプット歯車12と噛み合い係合している。
【0064】
図7に示される第3実施形態による変速機120では、第1インプット歯車11をメインシャフト2に回転連結し、第2インプット歯車12をインプットシャフト1に回転連結することによって、すなわち、第1ギヤ係合装置13と第2ギヤ係合装置14との両方をそれらの第2位置、すなわち、左側に設置し、リバースギヤ係合装置43を、第1リバースシャフト歯車41をリバースシャフト4に回転連結しない位置に設置し、カウンターシャフトギヤ係合装置33を、第1カウンターシャフト歯車31を第2セカンダリカウンターシャフト歯車35及びカウンターシャフト3に回転連結する位置に設置することによって、トップフォワードギヤを得ることができる。換言すれば、共通アクチュエータ50は右側のその第1位置に設置することができる。トップフォワードギヤでは、トルクはインプットシャフト1から第2プライマリギヤプレーンP2、続いて第1プライマリギヤプレーンP1を介して、すなわち、2つのギヤ噛み合いを介してメインシャフト2に伝達される。
【0065】
第3実施形態による変速機120は、トップフォワードギヤよりも大きい減速を提供するダイレクトフォワードギヤに設定することもできる。変速機120をダイレクトフォワードギヤに設定するには、第1ギヤ係合装置13を第1位置、すなわち、右側に設置し、第2ギヤ係合装置14を第2位置、すなわち、左側に設置する。第3ギヤ係合装置15だけでなく、カウンターシャフトギヤ係合装置33及びリバースギヤ係合装置43を中立位置に設置することにより、カウンターシャフト3及びこれに固定されている歯車32、34、35、36はインプットシャフト1に駆動連結されない。
【0066】
3つの異なるギヤ比におけるリバースギヤは、第3実施形態では、第1ギヤ係合装置13をその第1位置に設置し、共通アクチュエータ50を第2位置に設置し、第1リバースシャフト歯車41をリバースシャフト4に回転連結し、第1カウンターシャフト歯車31をカウンターシャフト3から回転連結解除することによって得ることができる。この構成は、
図7に示される。したがって、トルクは、インプットシャフト1から第1プライマリギヤプレーンP1、続いて第2プライマリギヤプレーンP2を介して、すなわち、4つのギヤ噛み合いを介して、カウンターシャフト3に伝達される。
【0067】
第3実施形態では、第1リバースシャフト歯車41の実際のギヤ歯数は、第1リバースシャフト歯車41の理論上のギヤ歯数より多いことが好ましく、第2リバースシャフト歯車42の実際のギヤ歯数は、第2リバースシャフト歯車42の理論上のギヤ歯数よりも少ないことが好ましい。各プライマリギヤプレーンP1、P2では、リバースシャフト歯車41、42での理論上のギヤ歯数z
41,th、z
42,thは、第3実施形態では、中心間距離a
mr、a
mc、a
cr(
図2bを参照)、インプット歯車11、12の既知のギヤ歯数z
11、z
12、及びカウンターシャフト歯車31、32の既知のギヤ歯数z
31、z
32から、以下の式3及び式4で決定することができる。
【数2】
【0068】
第4実施形態による変速機120が
図8に示されている。この実施形態は、第3実施形態と同様であり、そこから第2実施形態が第1実施形態とは異なるのと同じ方法で異なり、すなわち、第2プライマリギヤプレーンP2の第2カウンターシャフト歯車32’がカウンターシャフト3に回転可能に配置され、第1カウンターシャフト歯車31’がカウンターシャフト3に固定されるという点で異なる。したがって本明細書では、カウンターシャフトギヤ係合装置33’は、第2カウンターシャフト歯車32’をカウンターシャフト3に選択的に回転連結して、変速機120のフォワードギヤを係合するように配置される。リバースギヤ係合装置43は、共通のアクチュエータ50を用いてカウンターシャフトギヤ係合装置33’と同様に可動である。したがって、右側の第1位置では、第1リバースシャフト歯車41は、リバースシャフト4に回転連結され、第2カウンターシャフト歯車32’は、カウンターシャフト3から回転連結解除される。リバースギヤを係合できることで、トルクは、インプットシャフト1からカウンターシャフト3へ、第2プライマリギヤプレーンP2、続いて第1プライマリギヤプレーンP1を介して、すなわち、2つのギヤ噛み合いを介して伝達される。
【0069】
第4実施形態による変速機120もまた、第3実施形態について上述されたものと同じ方法でダイレクトフォワードギヤに設定することができ、トップフォワードギヤよりも大きい減速を提供する。共通アクチュエータ50は、ダイレクトフォワードギヤでは、カウンターシャフトギヤ係合装置33’及びリバースギヤ係合装置43を、第2カウンターシャフト歯車32’もリバースシャフト4も回転しない共通の中立位置に設置することができる。
【0070】
第4実施形態では、第1リバースシャフト歯車41の実際のギヤ歯数を理論上のギヤ歯数よりも少なくし、第2リバースシャフト歯車42の実際のギヤ歯数を理論上のギヤ歯数よりも多くするように設けることが有利である。理論上のギヤ歯数は、第3実施形態に関連して説明されているように、式3及び式4から決定することができる。
【0071】
変速機制御ユニット200は、変速機120を制御するように、特にギヤ係合装置13、14、15、33、43を制御するように構成される。変速機制御ユニット200は、図示の実施形態のいずれか1つによる変速機120のダイレクトフォワードギヤが係合される場合、カウンターシャフトギヤ係合装置33を中立位置に制御するように構成される。これにより、カウンターシャフト3及び/または第2カウンターシャフト歯車32、32’がインプットシャフト1から駆動連結解除される。図示の実施形態では、これにより、本来であればこれらの部品の回転によって生じるスプラッシュロスが低減される。
【0072】
変速機制御ユニット200は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタルシグナルプロセッサ、または別のプログラマブルデバイスを含む電子制御ユニットであってもよい。したがって、変速機制御ユニット200は、電子回路及び接続部(図示せず)だけでなく処理回路(図示せず)を含み、変速機制御ユニット200が車両100の異なる部品または車両100の異なる制御ユニット、例えば、様々なセンサ、システム及び制御ユニット、特に、車両100のエンジン制御ユニットなど、車両100内の電気系統またはサブシステムを制御する1つまたは複数の電子制御ユニット(ECU)と通信することができるようになる。変速機制御ユニット200は、ハードウェアかソフトウェアかいずれかの内に、または部分的にハードウェアもしくはソフトウェアの内に、モジュールを含んでもよく、CANバス及び/または無線通信機能などの既知の通信バスを使用して通信してもよい。処理回路は、汎用プロセッサまたは専用プロセッサであってもよい。変速機制御ユニット200は、コンピュータプログラムコード及びデータを格納するための非一時的なメモリを含んでもよい。したがって、当業者であれば、変速機制御ユニット200が多くの異なる構成によって具現化され得ることが理解される。本明細書では単一ユニットとして示されているが、変速機制御ユニット200は、相互に通信するように構成された、いくつかの異なる制御ユニットから形成されてもよい。変速機制御ユニット200は、ギヤ係合装置13、14、15、33、43を制御するための電気、空気圧、または油圧アクチュエータなどのアクチュエータと、アクチュエータを制御し、車両100の他のシステム及び制御ユニットと通信するなどのための電子回路とをさらに含むことができる。例えば、共通アクチュエータ50は、変速機制御ユニット200の一部を形成してもよく、またはそれによって制御されてもよい。
【0073】
図示した実施形態のすべてでは、メインシャフト2を、少なくとも2つのギヤ比のうちの1つでアウトプットシャフト(図示せず)に駆動連結するためのレンジギヤ(図示せず)を設けることができる。レンジギヤは、単に一例として、遊星歯車セットを備えてもよい。
【0074】
当然ながら、本発明は、これまで説明し、図面に示した実施形態に限定されず、むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び修正を行うことができることを認識されよう。
【外国語明細書】