(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028197
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】マイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N35/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132441
(22)【出願日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】22190899
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ワウター・ヨハネス・パッティエ
(72)【発明者】
【氏名】エマド・サロフィム
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ツェダー
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC02
2G058GA01
2G058GD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法と試料処理システム。
【解決手段】マイクロ流体チップ112は、パーティションのアレイ114を備える。a)撮像装置116を使用することによって試料を含むマイクロ流体チップ112を撮像することにより、画像データを生成するステップと、b)パーティションの少なくとも1つの領域についてのマスクをデータ処理ユニット118に提供するステップと、c)画像データ、画像データから抽出された特徴、または画像データから抽出された値のうちの1つまたは複数にマスクを適用することによってマスクされたデータを生成するステップであって、マスクに応じてアレイ114の各パーティションをマスクすることを含むマスクの適用、によってマスクされたデータを生成するステップと、d)マスクされたデータを使用して試料についての分析結果を生成するステップとを含む、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体チップ(112)の欠陥パーティションを補償するための方法であって、前記マイクロ流体チップ(112)が、パーティションの少なくとも1つのアレイ(114)を備え、前記方法が、以下のステップ:
a)少なくとも1つの撮像装置(116)を使用することによって前記マイクロ流体チップ(112)を撮像することにより、試料を含む前記マイクロ流体チップ(112)の画像データを生成するステップと、
b)パーティションの少なくとも1つの領域についての少なくとも1つのマスク(136、137)を少なくとも1つのデータ処理ユニット(118)に提供するステップと、
c)前記データ処理ユニット(118)を使用することにより、前記画像データ、前記画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または前記画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数に前記マスク(136、137)を適用することによってマスクされたデータを生成するステップであって、前記マスクを適用することが、前記マスクに応じて前記アレイ(114)の各パーティションをマスクすることを含む、前記マスク(136、137)を適用することによってマスクされたデータを生成するステップと、
d)前記マスクされたデータを使用して前記試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記マスク(136、137)が、前記アレイの包含パーティション、排除パーティション、および/または重み付けパーティションについてのデータセットである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マスク(136、137)が、パーティションのリストおよび/またはパーティションの範囲を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マスク(136、137)が、アレイ固有のマスクまたはロットごとのマスクである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マスク(136、137)を提供することが、前記マスク(136、137)を取得することおよび/または前記マスク(136、137)を生成することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マスク(136、137)が、事前決定されるか、または前記アレイが前記分析に使用されている間にオンラインで生成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、デジタルポリメラーゼ連鎖反応アッセイを実施することを含み、第1の蛍光チャネルが前記試料の分析に使用され、第2の蛍光チャネルが前記マスク(136、137)の事前決定または生成に使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マスク(136、137)が、ハードディスク、サーバ、クラウド、USBディスク、CD、バーコード、2Dバーコード、QRコード(登録商標)、RFIDなどのデータキャリア上のデータ;前記アレイ(114)のプロデューサまたはプロバイダによって提供されるダウンロード可能ファイル;例えば、テキスト、1Dバーコードまたは2Dバーコード、RFIDとして機械可読または人間可読である前記アレイ(114)上に提供されるデータ;前記アレイ(114)を有するアセンブリであるキャリア上など、前記アレイ(114)に取り付けられた部分上に提供されるデータとして;参照によって、例えば、前記アレイ(114)に貼付された、もしくは前記アレイ(114)に取り付けられた、もしくは前記アレイ(114)とともに配送された、人間可読タグもしくは機械可読タグを提供することによって、または固有のIDもしくは識別番号などの参照を提供し、この参照を使用して前記マスク(136、137)を取得することによって、例えば、前記参照によってクラウドもしくはサーバなどのリモートデータストレージ場所から前記マスクデータを検索することによって、例えば、対応する製造ロットに関連する前記マスク(136、137)を検索するために、例えば、製造ロット番号を使用して、前記マスクデータを検索することによって、検索され得るデータ;生データをリモートストレージにアップロードすることであって、前記リモートストレージから前記データが前記データ処理ユニットによって取得され得る、アップロードすることによって;一次ストレージ場所からのマスクデータを二次ストレージ場所にプッシュすることによって;マスクデータを前記データ処理ユニット上にホストすることによって、のうちの1つまたは複数として提供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マスク(136、137)がアルゴリズム的に定義されたマスクであり、前記マスク(136、137)のマスクパラメータおよびパーティションインデックスが、前記データ処理ユニット(118)のソフトウェアに記憶され、少なくとも1つの対応する識別子が、前記マイクロ流体チップのバーコードに記憶されるか、またはマスクパラメータが、前記マイクロ流体チップのバーコードに直接記憶され、前記マスクの前記パーティションのインデックスが、モデルおよび前記バーコードからの前記パラメータに基づいて前記データ処理ユニットのソフトウェアによって計算される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、有効パーティションの割合および/または有効パーティションの数が、前記マスク(136、137)を適用した後に、有効パーティションの所定の最小割合および/または有効パーティションの最小数よりも低い場合、分析にフラグを立てることを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法がコンピュータ実装される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのマイクロ流体チップ(112)上で試料を処理するように構成された試料処理システム(110)であって、前記試料処理システム(110)が、請求項1から11のいずれか一項に記載の、マイクロ流体チップ(112)の欠陥パーティションを補償するための方法を実行するように構成され、前記マイクロ流体チップ(112)が、パーティションの少なくとも1つのアレイ(114)を備え、前記試料処理システム(110)が、前記マイクロ流体チップ(112)を撮像することによって試料を含む前記マイクロ流体チップ(112)の画像データを生成するように構成された少なくとも1つの撮像装置(116)を備え、前記試料処理システム(110)が、前記マイクロ流体チップ(112)についての少なくとも1つのマスク(136、137)を提供するように構成された少なくとも1つのデータ処理ユニット(118)を備え、前記データ処理ユニット(118)が、前記画像データ、前記画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または前記画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数に前記マスク(136、137)を適用することによってマスクされたデータを生成するように構成され、前記マスク(136、137)を適用することが、前記マスク(136、137)に応じて前記アレイ(114)の各パーティションをマスクすることを含み、前記試料処理システム(110)が、前記マスクされたデータを使用して前記試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するように構成されている、試料処理システム(110)。
【請求項13】
命令を備えるコンピュータプログラムであって、請求項12に記載の試料処理システム(110)によって前記プログラムが実行されると、前記命令が、前記試料処理システム(110)に、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項14】
命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体であって、請求項12に記載の試料処理システム(110)によって前記命令が実行されると、前記命令が、前記試料処理システム(110)に、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
命令を備える非一時的コンピュータ可読媒体であって、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記命令が、前記1つまたは複数のプロセッサに、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、マイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法およびその方法を実行するための試料処理システムに関する。さらに、本発明は、本方法を実行するためのコンピュータプログラムおよびコンピュータ可読記憶媒体に関する。本方法および装置は、具体的には、医療または化学検査室の分野、特に自動インビトロ診断(IVD)試料処理の分野において使用され得る。しかしながら、本発明の他の応用分野が可能である。
【背景技術】
【0002】
背景技術
多数の単一分析を使用して分析結果を生成する多数の分析が存在する。その目的のために、関心のある分析物を含有する溶液は、多数の個々の反応パーティションに物理的に分配される。例は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)、d-等温核酸増幅であるが、配列決定、デジタル細胞培養などのアレイ内またはアレイ上で他の分析が行われてもよい。そのような多数の単一分析は、しばしば、いわゆる(パーティションの)アレイにおいて行われる。有効な結果および/または高い適合率もしくは高い精度もしくは高い信頼性を有する結果を生成するために、アレイの「要素」または「パーティション」とも呼ばれる、アレイ内の全ての単一分析の全て、または少なくとも有意な比率が同じように動作することが重要である。したがって、アレイの有効要素のみが分析において使用もしくは考慮されるか、または結果を計算するために使用されることを確実にすることが重要である。
【0003】
そのようなアレイは、例えば、射出成形、光構造化、マイクロエンボス加工、印刷、自己組織化などの微細構造化に使用される技術を用いて製造されることが多く、これらの技術は、全て、100%の収率ではなく製造するリスクを有する。換言すれば、正しい結果をもたらさないアレイ内の要素の一部が常に存在し得る。
【0004】
射出成形マイクロ流体デバイスは、製造プロセスの性質に起因して、固有の空間位置での製造プロセスにおける品質問題に悩まされることがある。これらの種類の品質問題または欠陥は、製造プロセスの開発中に明らかになる。プロセスの最適化は、そのような欠陥を排除するはずであるが、製造収率を増加させ、製造コストを低減するために一定量の欠陥を受け入れることが合理的であり得る。これらの構造的欠陥がそれらのマイクロ流体デバイスに対して行われる分析の分析結果に悪影響を及ぼす場合、これらの影響を補償するための方法が定義される必要がある。パーティションのマイクロ流体アレイにおいて行われる診断デジタルアッセイの場合、最高の結果品質を維持することが重要である。このため、欠陥のある領域を分析から適切に除外する方法が非常に重要である。また、結果の品質は、個々の反応の数に依存し、可能な限り大きくなければならないため、欠陥のない大きな領域を除外しないことが非常に重要である。
【0005】
そのような欠陥認識システムの一般的なタイプは、マイクロ流体領域全体に適用されるパターン認識および/または人工知能に基づく。しかしながら、これらのシステムは、一定量の偽陽性および偽陰性の結果をもたらす傾向がある。射出成形プロセスによる影響領域は、サイズおよび位置に関して少なくとも部分的に非常によく知られているため、射出成形部品の全体に適用される任意のパターン認識方法は、影響領域に偽陰性を生じさせ、影響領域に偽陽性を生じさせない可能性がある。
【0006】
さらに、パターン認識または人工知能方法を適用して患部を認識することは、例えばロット間の成形部品から不規則なパターンをもたらすことがある。欠陥に起因して除外すべきロット固有の領域の情報が射出成形部品自体、例えばバーコード上に符号化されなければならない場合、その情報を記憶するサイズは、数バイトに制限されることがあり、これは、複雑なデータ(例えば、大量のx,y座標またはインデックス)の符号化を不可能にする。
【0007】
例えば、欧州特許第2761585号明細書は、生物学的機器を較正するための方法を記載している。本方法は、少なくとも1つの生物学的試料アレイの画像を取得するステップと、画像内の第1の関心領域を決定するステップであって、第1の関心領域が、少なくとも1つの生物学的アレイ上の第1の複数の位置を含む、画像内の第1の関心領域を決定するステップと、第1の関心領域内で、少なくとも1つの生物学的アレイ上の第1の複数の位置のそれぞれに関連付けられた複数の画像要素を識別するステップと、を含む。
【0008】
米国特許第9434987号明細書は、互いに反対側の第1の面および第2の面を有する支持体と、分析される生物学的溶液を受け入れるように適合された複数のウェルであって、第1の面上で支持体内に延在する複数のウェルと、各ウェルの内側に延在する少なくとも1つの生体適合性層と、ウェルの外側の第1の面上に延在する反射防止層と、各ウェルの内側に延在する反射層と、を含む、光学分析用のカートリッジを記載している。
【0009】
米国特許出願公開第2019/0113457号明細書は、マルチウェル装置のウェルに分配し、複数のZ平面からそのようなウェルを撮像するための方法、装置、アセンブリ、およびシステムを記載している。マルチZ撮像の使用によって識別されたマルチウェル装置の細胞含有ウェルを処理するための方法、装置、アセンブリおよびシステムも提供される。
【0010】
米国特許第8927465号明細書は、マイクロアレイを作製するためのプロセスを記載している。この方法は、少なくとも1つの基準を有する基材上にマイクロビーズの集団を堆積させるステップを含む。集団は、少なくとも2つの部分集団、好ましくは複数の部分集団から構成され、それぞれが少なくとも1つの標的分析物との特異的結合能を有する既知の活性薬剤を含む。前記亜集団は、連続して、互いに離散した周期で堆積される。プロセスはまた、各亜集団の堆積後に基材の画像を作成するステップを含む。次いで、基準を参照として使用して画像が比較され、それによって各マイクロビーズの位置を決定し、各画像間の差に基づいて亜集団およびその既知の活性剤を識別する。マイクロアレイを使用するためのシステムにも開示されている。
【0011】
米国特許出願公開第2019/0244345号明細書は、トレイ上の流体物質の不適切な分注を検出するように動作する自動分析機器を記載している。機器は、レセプタクル部分およびレセプタクル部分の周りの周囲部分を含むトレイの少なくとも一部の画像をキャプチャする画像キャプチャ装置を含む。次いで、機器は、画像内のトレイの少なくとも一部の周囲部分を識別し、トレイの少なくとも一部の周囲部分に対応する画像の色成分を評価し、色成分の少なくとも1つに基づいてトレイの少なくとも一部の周囲部分に流体物質が存在するかどうかを決定する。
【0012】
他の技術分野では、米国特許第10891520号明細書、米国特許第10964004号明細書、国際公開第2020/255498号パンフレット、米国特許出願公開第2017/0323435号明細書、米国特許第10891725号明細書、米国特許出願公開第2020/0020094号明細書、米国特許第10600175号明細書に記載されているような、欠陥認識のためのさらなる技術が知られている。
【発明の概要】
【0013】
解決すべき課題
したがって、上述した技術的課題に少なくとも部分的に対処する方法および装置を提供することが望ましい。具体的には、信頼性の高い単一の分析のアレイ内の無効な要素を考慮することを可能にするマイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法、および自動処理システムが提案されるものとする。
【0014】
具体的には、マイクロ流体チップを使用して分析結果を生成する方法および手段が提案されるものとし、マイクロ流体チップは、分析結果を著しく損なうことなく、例えば、準最適な製造プロセスに起因して、欠陥パーティションのかなりの割合を有する。そうでなければ、この方法および手段を使用しなければ、かなりの割合の欠陥パーティションを有するこれらのマイクロ流体チップは、これを使用することができず、廃棄する必要があり、またはこれを使用する場合、これらのマイクロ流体チップによって生成された結果を損なう。
【0015】
概要
この課題は、独立請求項の特徴を有するマイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法および試料処理システムによって対処される。単独で、または任意の組み合わせで実現されてもよい有利な実施形態は、従属請求項ならびに明細書全体に記載されている。
【0016】
以下において使用される場合、「有する(have)」、「備える(comprise)」、もしくは「含む(include)」という用語、またはそれらの任意の文法的変形は、包括的に使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つまたは複数の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で、且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つまたは複数のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0017】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在してもよいことを示す「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」という用語または同様の表現は、通常、それぞれの特徴または要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を指すとき、それぞれの特徴または要素が1回または1回を超えて存在してもよいという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」という表現は繰り返されない。
【0018】
さらに、以下において使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、特許請求の範囲を、いかなる方法によっても制約することを意図されていない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態では」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関していかなる制限も伴わず、本発明の範囲に関していかなる制限も伴わず、そのようなやり方で導入される特徴を本発明の他の任意の特徴または任意ではない特徴と組み合わせる可能性に関していかなる制限も伴わない任意の特徴であるように意図される。
【0019】
第1の態様では、マイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法が提案される。マイクロ流体チップは、パーティションの少なくとも1つのアレイを備える。
【0020】
本明細書で使用される「マイクロ流体チップ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのマイクロ流体デバイスを備える少なくとも1つの基材を指し得る。マイクロ流体チップは、マイクロ流体チップのマイクロ流体構造内でピコリットルからミリリットルの範囲の体積を取り扱うように構成され得る。マイクロ流体チップは、複数のマイクロ流体デバイスを備えてもよい。マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの入口開口部および少なくとも1つの出口開口部を備えてもよい。マイクロ流体デバイスは、前記入口開口部と前記出口開口部とを接続し、入口開口部から流路を通って出口開口部への流れ方向を画定する流路であってもよく、またはそれを備えてもよい。マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの上層および少なくとも1つの下層を備えてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの基材と、例えばプレートまたは箔の形態の少なくとも1つのカバーとを備えてもよい。上層および下層は、互いに取り付け可能であってもよい。流路は、上層と下層との間に配置されてもよい。例えば、マイクロ流体チップは、欧州特許第3610947号明細書または欧州特許第3714977号明細書に記載されているように設計されてもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、マイクロ流体パーティションまたは要素とも呼ばれる「パーティション」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常および通例の意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、マイクロウェルまたはナノセルを指し得る。マイクロ流体チップは、数百または数千のウェルを特徴とするウェルプレート、例えばマイクロウェルプレートまたはナノウェルプレートであってもよい。パーティションは、上層または下層によって提供されてもよい。マイクロ流体デバイスは、パーティションのアレイを備えてもよい。マイクロ流体デバイスは、マイクロアレイとも呼ばれることがある。パーティションのアレイは、流体を導入または排出するために、流路、入口および出口と流体連通していてもよい。アレイは、長方形グリッドなどのグリッドおよび/またはパーティションのマトリックスであってもよい。例えば、長方形グリッドは、交互配置されてもよく、例えば、グリッドは、六角形のグリッドであってもよい。他のアレイも可能である。マイクロ流体チップは、パーティションの少なくとも1つのアレイを備える。例えば、マイクロ流体チップは、複数のパーティションのアレイを備えてもよい。例えば、各アレイのパーティションの量は、同じであってもよい。パーティションのそれぞれの位置は、x座標インデックスおよびy座標インデックスのタプルおよび/または絶対インデックスによって記述され得る。アレイは、行および列を含み得る。アレイは、m行およびn列を有する長方形であってもよく、m、nは、独立して正の整数である。パーティションの体積は、0.1から5nlの範囲で最も好ましく、0.01から50nlではより好ましく、0.001から1ulでは最も好ましくない場合がある。
【0022】
マイクロ流体チップは、例えば射出成形、光構造化、マイクロエンボス加工、印刷、自己組織化などのマイクロ構造化に使用される技術を使用して製造され得る。本方法は、マイクロ流体チップを提供することを含み得る。本方法は、少なくとも1つの製造プロセスを含み得る。マイクロ流体チップは、マイクロ構造化に使用される少なくとも1つの技術を使用して製造され得る。マイクロ流体チップは、射出成形、光構造化、マイクロエンボス加工、印刷、自己組織化などからなる群から選択される少なくとも1つの技術を使用して製造され得る。例えば、製造プロセスは、射出成形を含む。
【0023】
パーティションのそれぞれは、反応領域を構成してもよい。マイクロ流体チップは、パーティションのアレイを使用して多数の単一の分析のために構成され得る。本明細書で使用される「単一分析」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの一般に任意の生化学的、化学的、物理的または生物学的反応を指し得る。多数の単一分析は、多数の並行反応を含み得る。生化学的反応の例は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)、d-等温核酸増幅およびd-酵素反応、デジタル酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ならびに配列決定およびデジタル細胞培養などの他の分析であり得る。例えば、マイクロ流体チップは、dPCRチップであってもよい。
【0024】
本方法は、試料がマイクロ流体チップに充填される少なくとも1つのパーティションステップを含み得る。例えば、関心のある分析物を含む溶液は、パーティションに物理的に分配され、物理的に分離されてもよく、パーティションのそれぞれの間で(有意な)拡散が起こらない。本方法は、前記試料を分析するために少なくとも1つの試薬を前記マイクロ流体チップ上に提供することをさらに含み得る。例えば、マイクロ流体チップは、マイクロ流体デバイスによって例えば反応混合物の形態で各パーティションに提供される試料のデジタルPCRまたは生化学的アッセイのために構成されている。本明細書で使用される「試料」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、関心のある分析物を含有すると疑われる物質を指し得る。試料は、血液、唾液、接眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞などを含む生理液などの任意の生物学的供給源に由来することができる。試料は、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈、溶解など、使用前に前処理され得る;処理の方法は、濾過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活性化、および試薬の添加を含むことができる。試料は、例えば、別の溶液で希釈された後、または試薬と混合された後、例えば、臨床化学アッセイ、イムノアッセイ、凝固アッセイ、核酸検査などのような1つ以上の診断アッセイを実施するために、供給源から得られたまま、または試料の特性を改変するための前処理後に直接使用され得る。したがって、本明細書で使用される「試料」という用語は、元の試料に使用されるだけでなく、ピペッティングされ、希釈され、試薬と混合され、濃縮され、精製され、増幅されたなど、既に処理された試料に関する。本明細書で使用される場合、「分析物」という用語は、検出または測定される化合物、分子(例えば、核酸)または微生物を指し得る。本明細書で使用される「試薬」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試料の処理に必要な組成物を指し得る。試薬は、特に分析物(分子)がパーティションに存在する場合、例えば反応を起こすために、または検出を可能にするために、試料および/または他の試薬と混合する必要がある任意の液体、例えば溶媒または化学溶液であり得る。試薬は、例えば、水を含む希釈液であってもよく、有機溶媒を含んでもよく、洗浄剤を含んでもよく、緩衝剤であってもよい。試薬はまた、例えば試料、別の試薬または希釈液によって溶解されるように適合された乾燥試薬であってもよい。用語のより厳密な意味での試薬は、例えば、試料中に存在する1つ以上の分析物に結合するまたは化学的に変換することができる反応物、典型的には化合物または薬剤を含む液体溶液であってもよい。反応物の例は、酵素、酵素基質、共役色素、タンパク質結合分子、核酸結合分子、プライマーおよびプローブ、抗体、キレート剤、プロモータ、阻害剤、エピトープ、抗原などである。例えば、dPCRアッセイを行うために、分析物およびdPCR試薬(dNTP、プライマー、プローブ、ポリメラーゼ、緩衝物質および界面活性剤を含む)を含む試料が、例えば水性dPCR反応混合物をマイクロアレイの入口開口部にピペッティングすることによって、マイクロ流体チップに導入される。
【0025】
本方法は、試料処理システム、例えば、以下のさらなる態様に記載されるような処理システムによって実行され得る。試料処理システムは、試料に対して少なくとも1つの処理ステップを実行するように構成され得る。試料処理システムは、試料を処理するための多数の処理ステップからなるワークフローを実行するように構成され得る。本明細書で使用される「試料を処理する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試料の任意の処理、ならびに試料の分析に必要な任意の物体およびデータの取り扱いを指し得る。それは、試料を移送すること、アリコートすること、単離すること、精製すること、インキュベートすること、反応させること、または試薬を試料と組み合わせること、分析することなどを含み得る。本明細書で使用される「処理ステップ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試料を処理するための、例えばワークフローの、少なくとも1つの物理的に実行されるステップを指し得る。ワークフローは、少なくとも1つ、通常は複数の処理ステップを含む。例えば、ワークフローは、dPCR法を行うための一連のステップを含み得る。試料処理システムは、少なくとも1つの分析処理システムを備え得る。試料処理は、分析前処理システムおよび/または分析後処理システムをさらに備えてもよい。試料処理システムは、1つまたは複数の分析前、分析および分析後機器などの少なくとも1つの機器を備えてもよい。分析前機器は、通常、試料の予備処理に使用され得る。分析機器は、例えば、測定可能な信号を生成するために試料または試料の一部および試薬を使用するように設計され得、それに基づいて分析物が存在するかどうか、および必要に応じてどの濃度で存在するかを判定することができる。分析後機器は、通常、試料の保管などの試料の後処理に使用され得る。試料処理システムは、試料をマイクロ流体チップにピペッティングするためのピペッティング装置、試料をアリコートするためのアリコート装置、試料を遠心分離するための遠心分離装置、試料を加熱するための加熱装置、試料を冷却するための冷却装置、試料を混合するための混合装置、試料の分析物を単離するための分離装置、試料を貯蔵するための貯蔵装置、試料を保管するための保管装置のうちの1つまたは複数を備え得る。
【0026】
試料処理システムは、試料を分析するための少なくとも1つの機器を備え得る。分析は、試料に対して少なくとも分析試験を実行することを含んでもよい。本方法は、前記マイクロ流体チップ上の前記試料を分析するための機器を提供することを含み得る。例えば、機器は、例えばマイクロアレイを蛍光撮像するための少なくとも1つの撮像装置であってもよく、またはそれを備えてもよい。本明細書で使用される「分析する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試料中の少なくとも1つの分析物および/または試料および/または分析物の少なくとも1つのパラメータを決定するなどの少なくとも1つの分析試験を実行することを指し得る。分析は、試料の定量的および/または定性的結果などの少なくとも1つの分析結果を生成することを含み得る。この分析結果は、別個の標的分析物の濃度についての結果、分析物の有無についての結果、別個のコピー数変異についての結果、別個の遺伝子変異についての結果、遺伝子発現についての結果、遺伝子編集に関連する結果などのうちの1つまたは複数であり得る。
【0027】
例えば、処理システムは、試料をピペッティングし、試料を試薬と混合し、反応混合物をマイクロ流体デバイスに移送し、試料をマイクロ流体チップのパーティションに分配し、1つのインキュベーションステップまたはインキュベーションステップのセットを実行し、例えば、いわゆる「PCRプロファイル」(複数のインキュベーションステップのセットである)を実行し、その後、マイクロアレイを蛍光撮像し、画像データから試料の分析結果を計算するように構成され得る。
【0028】
本方法は、コンピュータ実装されてもよい。本明細書で使用される「コンピュータ実装」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/または少なくとも1つのコンピュータネットワークを含む方法を指し得る。コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークは、本発明にかかる方法の方法ステップのうちの少なくとも1つを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備え得る。好ましくは、方法ステップのそれぞれは、コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークによって実行される。本方法は、完全に自動的に、具体的にはユーザ相互作用なしに実行されてもよい。本明細書で使用される「自動的に」および「自動化」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定するものではないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって、特に手動の動作および/またはユーザとの対話なしに完全に実施されるプロセスを指し得る。試料処理システムは、自動処理システムであってもよい。試料処理システムは、試料を自動的に処理するように構成されてもよい。
【0029】
上記で概説したように、マイクロ流体チップは、製造プロセスの性質に起因して、固有の空間位置における製造プロセスにおいて品質問題を被ることがあることが知られている。製造プロセスは、マイクロ流体チップの欠陥および/または無効パーティションをもたらすことがある。これらの欠陥および/または無効パーティションは、それらの欠陥パーティションに対して分析が実行される場合、分析結果に悪影響を及ぼす。しかしながら、製造歩留まりを高め、製造コストを低減するためには、一定量の欠陥を受け入れることが有益であり得る。本発明にかかる方法は、欠陥のある領域を分析から確実に除外することを可能にし得る。本発明にかかる方法は、有効パーティション(欠陥のないパーティション)を有する大きな領域を除外しないことをさらに可能にし得る。欠陥のない大きな領域を除外することは、分析結果の品質が領域の分析、すなわち個々の反応の数が可能な限り多いことに依存するため、不利な場合がある。欠陥の位置は、予め知られていてもよい。例えば、固有の製造プロセスによって製造されたマイクロ流体チップの欠陥の通常の位置は、実験的研究または観察などから事前決定されてもよい。例えば、射出点から最も遠い領域や、異なるタイプの成形パターンの境界領域が影響を受ける可能性が高い。また、スタンパ欠陥またはスタンパ摩耗は、その後に製造される部品の品質に影響を及ぼす可能性がある。したがって、本発明にかかる方法は、デフォルトでそのような領域を除外することを提案する。本明細書で使用される「欠陥パーティションを補償する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、例えば、分析から欠陥パーティションを除外すること、および/または欠陥パーティションから取得されたデータを補正することによって、試料の分析のために欠陥パーティションを考慮に入れることを指し得る。
【0030】
方法ステップは、所与の順序で実行されてもよく、または異なる順序で実行されてもよい。さらに、列挙されていない1つ以上の追加の方法ステップが存在してもよい。さらに、1つ、複数、さらには全ての方法ステップが繰り返し実行されてもよい。
【0031】
本方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1つの撮像装置を使用することによってマイクロ流体チップを撮像することにより、試料を含むマイクロ流体チップの画像データを生成するステップと、
b)パーティションの少なくとも1つの領域についての少なくとも1つのマスクを少なくとも1つのデータ処理ユニットに提供するステップと、
c)データ処理ユニットを使用することにより、画像データ、画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数にマスクを適用することによってマスクされたデータを生成するステップであって、マスクを適用することが、マスクに応じてアレイの各パーティションをマスクすることを含む、マスクを適用することによってマスクされたデータを生成するステップと、
d)マスクされたデータを使用して試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するステップと、を含む。
【0032】
本明細書で使用される「画像データ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、カメラチップの画素などの撮像装置からの複数の電子読み取り値など、少なくとも1つの撮像装置を使用することによって記録されたデータを指し得る。本明細書で使用される「撮像」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、パーティションのアレイの2次元または3次元表現を提供することを指し得る。撮像は、光学的情報、例えば空間分解された2次元または3次元の光学的情報の記録またはキャプチャのうちの1つまたは複数を含み得る。撮像は、パーティションのアレイの少なくとも1つの画像を生成することを含み得る。「撮像データ」という用語はまた、データ取得中またはデータ取得後に処理されているデータを指し得る。データ処理は、光学補正、フラットフィールド補正、画像スティッチング、画素ビニング、ならびに特に(例えば、各パーティションの輝度値のテーブルをもたらす)個々のパーティションに関連する画素値の平均化および統合を含み得る。
【0033】
本明細書で使用される「撮像装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。用語は、具体的には、限定されないが、空間的に分解された1次元、2次元、または3次元の光学情報を記録または撮像するように構成された少なくとも1つの撮像素子を有する装置を指し得る。撮像装置は、少なくとも1つのカメラ、少なくとも1つのCCDカメラ、少なくとも1つのCMOSカメラ、少なくとも1つのRGBカメラ、少なくとも1つのデジタルカメラ、走査顕微鏡の少なくとも1つのカメラ、蛍光顕微鏡の少なくとも1つのカメラからなる群から選択される少なくとも1つの装置であり得る。撮像装置は、一般に、画素などの画像センサの1次元または2次元アレイを備え得る。撮像装置は、少なくとも1つのカメラチップまたは撮像チップに加えて、1つまたは複数の光学素子、例えば1つまたは複数のレンズ、プリズム、ミラーおよび/またはピンホールなどのさらなる要素を備え得る。例として、撮像装置は、カメラに対して固定的に調整される少なくとも1つのレンズを有する固定焦点カメラであってもよい。あるいは、しかしながら、撮像装置はまた、自動または手動で調整され得る1つ以上の可変レンズを備えてもよい。撮像装置はまた、撮像領域を照明するために照明を備えてもよい。双方の光路において、照射経路および検出経路には、例えば蛍光測定を行うように設計された光学フィルタが存在し得る。また、例えば、様々な励起波長および発光波長において蛍光を検出するために、いくつかのフィルタを切り替える手段が設けられてもよい。撮像装置は、少なくとも1つのアレイから多数の画像を取得するために、1つまたは複数の段、例えばx/y段を備えてもよい。撮像装置は、オートフォーカスのための手段を備えてもよい。撮像装置は、測定に対する周囲光の影響を抑制するために遮光手段を備えてもよい。
【0034】
本方法は、画像データを処理することを含み得る。処理は、画像データから特徴および/または値を抽出することを含み得る。
【0035】
本方法は、画像データを前処理することを含み得る。前処理は、以下のうちの1つまたは複数を含み得る:少なくとも1つの画像補正;フィルタリング;少なくとも1つの関心領域の選択;背景補正;色チャネルへの分解;色相、彩度、および輝度チャネルへの分解;周波数分解;閾値処理;2値画像の作成、フラットフィールド補正、蛍光クロストーク補償、光学的歪みの補正、複数の画像のスティッチング、画像の平均化、画素誤差の除外、および画素の輝度値がリスト化されている少なくとも1つの画像ファイルからの導出、全てのパーティションについての蛍光値がリスト化されているパーティションデータテーブル。画像データの前処理は、前処理手順を定義したプログラムに基づいて自動的に実行されることが好ましい。
【0036】
本明細書で使用される「プロセッサ」または「処理装置」とも呼ばれる「データ処理ユニット」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、コンピュータまたはシステムの基本的な動作を実行するように構成された任意の論理回路、および/または一般に、計算または論理動作を実行するように構成された装置を指し得る。特に、データ処理ユニットは、コンピュータまたはシステムを駆動する基本的な命令を処理するように構成されてもよい。例として、データ処理ユニットは、少なくとも1つの算術論理演算装置(ALU)、数値演算コプロセッサまたは数値コプロセッサなどの少なくとも1つの浮動小数点ユニット(FPU)、複数のレジスタ、具体的にはALUにオペランドを供給し、演算結果を記憶するように構成されたレジスタ、ならびにL1およびL2キャッシュメモリなどのメモリを含んでもよい。特に、データ処理ユニットは、マルチコアプロセッサであってもよい。具体的には、データ処理ユニットは、中央処理装置(CPU)であってもよく、またはそれを備えてもよい。追加的または代替的に、データ処理ユニットは、マイクロプロセッサであってもよく、またはそれを備えてもよく、したがって、具体的には、プロセッサの要素は、1つの単一集積回路(IC)チップに含まれてもよい。追加的または代替的に、データ処理ユニットは、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)および/または1つまたは複数のテンソル処理ユニット(TPU)および/または専用機械学習最適化チップなどの1つまたは複数のチップであってもよく、またはそれを備えてもよい。データ処理ユニットは、具体的には、ソフトウェアプログラミングなどによって、1つまたは複数の評価動作を実行するように構成されてよい。データ処理ユニットは、サーバまたはクラウドベースのソリューションであってもよい。
【0037】
本明細書で使用される「マスク」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、マスクデータとも呼ばれる、アレイの包含または除外または重み付けパーティションのうちの1つまたは複数のためのデータセットを指し得る。マスクは、アレイの各パーティションの重み付け係数を含み得る。マスクは、アレイの全ての有効パーティションを保持しながら、アレイの無効パーティションを完全に除外し得る。重み付けは、重み付け係数を適用することを含み得る。重み付け係数は、0と1との間の値であってもよい。マスクは、アレイ固有のマスクまたはロットごとのマスクであってもよい。マスクは、単一のパーティションまたはパーティションのセットに関するさらなる情報を含み得る。マスクは、さらなる情報、例えば、パーティションを除外する理由に関する情報および/またはパーティションが1つまたは複数の波長のみについて除外される情報を含み得る。
【0038】
マスクは、パーティションのリストおよび/またはパーティションの範囲を含み得る。パーティションの範囲は、アレイの行のリスト、アレイの列のリスト、リムサイズ、アレイ領域のリスト、長方形もしくは三角形などの所定の幾何学的図形のリスト、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含み得る。例えば、マスクは、「簡略化されたマスク」であってもよい。無効パーティションの範囲は、例えば、アレイの行または列全体をリスト化して完全に除外することによって、またはリムサイズ、例えば、全てのマイクロ流体チップから除外されなければならないいくつかの特徴を提供することによって、または所定のマスクを提供することによって定義され得る。これは、例えば、マスクを記憶するためのデータの削減、マスクを処理するための労力の削減、マスクを取り扱うための労力の削減を可能にし得る。
【0039】
マスクを提供することは、マスクを取得することおよび/またはマスクを生成することを含んでもよい。マスクは、事前決定されてもよく、またはアレイが分析に使用されている間にオンラインで生成されてもよい。マスクは、オフラインまたはオンラインのいずれかで生成されてもよい。
【0040】
本明細書で使用される「オフライン」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、アレイが分析に使用される前の時点、例えばアレイの製造時、または、多かれ少なかれ製造直後であるが、常に分析前にマスクを生成することを指し得る。マスクは、製造後の全てのアレイの検査、製造ロットの試料の検査、アレイを使用しながらの目視検査、品質管理の実施および/または観察などによるアレイが分析に使用される前の検査のうちの1つまたは複数によって事前決定され得る。例えば、製造後に全てのアレイを検査する際にマスクが生成されてもよい。成形アーチファクトなどの欠陥がマスクに追加されることがある。任意に、周囲領域が除外されるマスクに追加されることがある。この例では、アレイごとのマスクが生成されてもよい。例えば、製造ロットの試料を検査する際にマスクが生成されてもよく、試料は、ロットを表す。この例では、ロットごとに1つのマスクが生成されてもよい。例えば、マスクは、アレイが分析に使用される直前に、例えば目視検査によって検査時に生成されてもよい。
【0041】
本方法は、マスクを事前決定した後、有効パーティションの割合が有効パーティションの事前定義された最小割合よりも低い場合、マイクロ流体チップまたはマイクロ流体チップのバッチの少なくとも1つのサブセットを使用から除外することを含み得る。有効パーティションの最小割合は、必要な分析性能に依存し得る。多くのアプリケーションは、5%、さらには10または15%の無効パーティションを容易に許容し得る。一部のシステムは、50%を超える無効パーティションを許容することさえある。割合に加えて、またはその代わりに、必要な有効パーティションの絶対最小数が使用されてもよい。例えば、マスキングプロセスが2’000未満の有効パーティションをもたらす場合、アレイは、無効化され得る。
【0042】
本明細書で使用される「オンライン」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、アレイの使用中に少なくとも部分的に生成されるマスクの生成を指し得る。例えば、アレイを使用しながら品質管理を実行および/または観察することによってマスクが生成されてもよく、それによって品質管理の信号は、例えば別個の蛍光チャネルにおいて別個に検出可能であり、品質管理の結果は、アレイの要素を検証するために十分に知られている。例えば、本方法は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応アッセイを行うことを含む。第1の蛍光チャネルが試料の分析に使用されてもよく、第2の蛍光チャネルがマスクの事前決定または生成に使用されてもよい。
【0043】
マスクは、アルゴリズム的に定義されたマスクであってもよい。以下では、アルゴリズム的に定義されたマスクの2つの実施形態について説明する。これらの実施形態は、小さいパラメータセットを使用して、体系的な射出成形欠陥によって影響を受けるより小さいまたはより大きい領域をマスクするための高い柔軟性を提供する符号化方式を提供することを可能にする。欠陥領域の形状は、長方形もしくは三角形、またはそれらの組み合わせなどの単純な幾何学的図形によって特徴付けられ得る。影響領域の範囲は、依然として射出成形ロット間で異なり得るが、これは、一般的なマスクのアルゴリズム変更、例えば係数によるスケーリングによって補償され得る。また、例えばスタンパの摩耗の増加およびその後の露出部における欠陥領域の増加に起因して、射出成形実行内に異なるマスクを適用することは、アルゴリズム的手法によって可能であり得る。例えば、射出成形欠陥の影響を受ける領域は、主に長方形アレイの縁部および角部に位置し得る。例えば、状況に応じて、欠陥は、全てのレーンに均等に影響を及ぼし得るか、または全てのレーンに独立して影響を及ぼし得る。
【0044】
例えば、マスクのマスクパラメータおよびパーティションインデックスは、データ処理ユニットのソフトウェアに記憶されてもよく、少なくとも1つの対応する識別子は、マイクロ流体チップのバーコードに記憶されてもよい。本明細書で使用される「識別子」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、マスクを識別する1つまたは複数の情報項目を、例えば可読形式で、特に機械可読形式で記憶するように構成された要素または要素の組み合わせを指し得る。識別子は、光学的識別子、電子的識別子、磁気的識別子、または機械的識別子のうちの少なくとも1つを含み得る。例として、識別子、具体的には光学的識別子は、マイクロ流体チップに直接適用されることによって、および/または少なくとも1つのラベルもしくはタグを介してマイクロ流体チップに取り付けられることによって、マイクロ流体チップに直接または間接的に取り付けられたバーコード、QRコード(登録商標)または別のタイプのコードの1つまたは複数などの、1次元もしくは2次元コードおよび/または読み取り可能な情報タグのうちの少なくとも1つであり得るか、またはそれらを備え得る。識別子に記憶された情報は、適切な読み取り装置を使用して読み取られ得る。この例は、より複雑なマスク形状を可能にし得るが、事前定義されたマスクのセットに対してのみである。試料処理システム上のソフトウェアを常に更新することはできないと仮定する。例えば、マスク構成は、バーコードに、例えば3桁の数字(000-999)として記憶されてもよい。それにより、1000個の異なるマスクが可能になる。次いで、マスク構成は、機器のソフトウェアに記憶されてもよい。例えば、符号化は、数字の代わりに文字を使用して実行されてもよい。例えば、マスクは、レーンごとに一連のパーティション座標(またはパーティションインデックス)として記憶されてもよい。マスク内の各パーティションは、分析から除外される。この例は、最高の柔軟性を可能にし得るが、大部分の貯蔵空間を必要とする。例えば、マスクは、一連の単純な幾何学的図形として、例えば長方形および三角形のセットとして記憶されてもよい。長方形は、例えば、左上および右下の2つの角部によって定義され得、長方形をスパンアップするために2つのパーティションインデックスのみを必要とする。同様に、三角形は、3つのパーティションインデックスのみによってスパンアップされ得る。これらの幾何学的形状内の全てのパーティションは、その後にマスクされてもよい。
【0045】
例えば、マスクパラメータは、マイクロ流体デバイスのバーコードに直接記憶されてもよく、マスクのパーティションのインデックスは、モデルおよびバーコードからのパラメータに基づいてデータ処理ユニットのソフトウェアによって計算される。この例は、パラメータによって定義されるアルゴリズムモデル内の可能性の範囲内でのみ、任意の種類のマスクを可能にし得る。マスクを定義するこの例は、射出成形プロセス内の欠陥の原理的性質が位置および幾何学的形状の点で周知であるが、範囲は様々とすることができる場合に、最高の柔軟性を提供し得る。いずれの場合も、各ロットの製造中に患部の範囲が評価されなければならない場合があり、その後のマスキングのための情報は、各マイクロ流体チップ、例えばそのバーコードに符号化されなければならない。例えば、マスクは、パラメータ化され、パラメータのセットとしてバーコードに記憶されてもよい。パラメータモデルは、試料処理システムのソフトウェアに記憶されてもよく、装置バーコードから読み取られたパラメータを使用してマスクを再構築してもよい。
【0046】
マスクは、ハードディスク、サーバ、クラウド、USBディスク、CD、バーコード、2Dバーコード、QRコード、RFIDなどのデータキャリア上のデータ;アレイのプロデューサまたはプロバイダによって提供されるダウンロード可能ファイル;例えば、テキスト、1Dバーコードまたは2Dバーコード、RFIDとして機械可読または人間可読であるアレイ上に提供されるデータ;アレイを有するアセンブリであるキャリア上など、アレイに取り付けられた部分上に提供されるデータとして;参照によって、例えば、アレイに貼付された、もしくはアレイに取り付けられた、もしくはアレイとともに配送された、人間可読タグもしくは機械可読タグを提供することによって、または固有のIDもしくは識別番号などの参照を提供し、この参照を使用してマスクを取得することによって、例えば、参照によってクラウドもしくはサーバなどのリモートデータストレージ場所からマスクデータを検索することによって、例えば、対応する製造ロットに関連するマスクを検索するために、例えば、製造ロット番号を使用してマスクデータを検索することによって、検索され得るデータ;リモートストレージに生データをアップロードすることであって、リモートストレージからデータがデータ処理ユニットによって取得され得る、アップロードすることによって;一次ストレージ場所からのマスクデータを二次ストレージ場所にプッシュすることによって;マスクデータをデータ処理ユニット上にホストすることによって、のうちの1つまたは複数として提供され得る。
【0047】
本明細書で使用される「バーコード」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、異なる幅を有する平行線のシーケンスなどの光学情報のバイナリシーケンス、数字および/または数字および/または文字の配列などの情報を符号化するバイナリシーケンスなどのバイナリ光学情報を指し得る。したがって、バーコードは、背景と比較して高いコントラストを有する単一の着色された線のシーケンスであってもよい。具体的には、バーコードは、白い背景上に黒い線を含んでもよい。
【0048】
本明細書で使用される「QRコード」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、2値画素の2次行列、数字および/または数字および/または文字の配列などの情報を符号化する行列を指し得る。2次行列の画素は、背景と比較して高いコントラストを有し得る。具体的には、行列の画素は、白色背景上に配置された黒色の正方形を含んでもよい。さらに、QRコードは、QRコードの読み取り装置が行列を整列させることを可能にする向きの指示を含んでもよい。
【0049】
本明細書で使用される「RFIDタグ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、NFC規格を使用するなどして、無線周波数電磁放射線を使用することによって読み取り装置とデータ情報を交換するように構成されたラベルを指し得る。RFIDタグは、無線周波数信号を受信および放射するように構成されたアンテナと、データ情報を記憶するように構成されたマイクロチップなどの電子チップとをさらに備え得る。具体的には、RFIDタグは、電子導電コイルおよび任意に少なくとも1つのマイクロチップを有する可撓性基板であってもよい。
【0050】
例えば、マスクは、ハードディスク、サーバ、クラウド、USBディスク、CD、バーコード、2Dバーコード、QRコード、RFIDなどのデータキャリア上のデータとして提供されてもよい。
【0051】
例えば、マスクは、アレイのプロデューサおよび/またはプロバイダによって提供されるダウンロード可能ファイルとして提供されてもよい。
【0052】
例えば、マスクは、例えば、テキスト、1Dバーコードまたは2Dバーコード、RFIDなどの機械または人間が読み取り可能な、アレイ上に提供されるデータとして提供されてもよい。
【0053】
例えば、マスクは、アレイを有するアセンブリであるキャリア上など、アレイに取り付けられた部品上に提供されるデータとして提供されてもよい。
【0054】
例えば、マスクは、参照によって、例えば、アレイに適用された、またはアレイに取り付けられた、またはアレイとともに配信された人間可読タグまたは機械可読タグを提供し、参照(固有ID、または識別番号)を提供することによって検索され得るデータとして提供されてもよい。本明細書で使用される「識別番号」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、固有のマスクの識別情報を符号化する数字および/または文字のアレイまたはシーケンスの1つまたは複数を指し得る。識別番号は、固有のマスクに対して固有であり得る。したがって、それぞれの識別番号にしたがって固有のマスクを識別することが可能であり得る。この参照は、例えば製造ロット番号を使用することによってマスクデータを検索することによってマスクデータを取得するために、例えば参照によってリモートデータストレージ場所(例えばクラウドまたはサーバなど)からマスクデータを取得することによって、対応する製造ロットに関連するマスクを検索するために使用され得る。
【0055】
例えば、マスクは、生データをリモートストレージにアップロードすることによって提供されてもよく、リモートストレージからデータがマスキングおよびデータ処理のためにデータ処理ユニットによって取得され得る。
【0056】
例えば、マスクは、マスクデータを一次ストレージ場所から二次ストレージ場所にプッシュすることによって提供されてもよく、マスクデータは、アレイデータに使用および/または処理または適用されている。
【0057】
例えば、マスクは、アレイデータにマスクを適用するデータ処理ユニット上にマスクデータをホストすることによって提供されてもよく、データ処理ユニットは、サーバまたはクラウドベースのソリューションである。
【0058】
本明細書で使用される「マスクを適用する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、(最適に前処理された)画像データを含める、除外する、および/または重み付けすることによってマスクされたデータを生成することを指し得る。マスクの適用は、マスクに応じてアレイの各パーティションをマスクすることを含む。
【0059】
本方法は、マスクされたデータを後処理することを含み得る。後処理プロセスでは、前処理ステップにおいて割り当てられていない場合、前処理ステップ(例えば、ビニング、スティッチング、蛍光クロストーク補償など)のセクションにおいて述べたように同様のステップが実行されてもよい。
【0060】
本方法は、マスクを適用した後に、有効パーティションの割合が有効パーティションの所定の最小割合よりも低い場合に分析にフラグを立てることを含み得る。追加的または代替的に、本方法は、マスクを適用した後に、有効パーティションの数が事前定義された有効パーティションの最小数よりも少ない場合に分析にフラグを立てることを含み得る。有効パーティションのこの最小割合は、使用ケース(分析物のタイプ)および品質要件に依存し得る。多くのアプリケーションは、5、10、さらには15%の無効パーティションを許容することができる。本方法は、少なくとも1つのユーザインターフェースを介してフラグに応じた少なくとも1つの情報をユーザに提供することを含み得る。本明細書で使用される「ユーザインターフェース」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、限定されないが、データまたはコマンドの1つ以上の交換などのために、一方向または双方向に情報を交換する目的などのために、その環境と相互作用するように構成された要素またはユニットを指し得る。例えば、ユーザインターフェースは、ユーザと情報を共有し、ユーザによって情報を受信するように構成されてもよい。ユーザインターフェースは、ディスプレイなどのユーザと視覚的に相互作用する機能、またはユーザと音響的に相互作用話する機能であってもよい。ユーザインターフェースは、例として、以下のうちの1つまたは複数を含み得る:グラフィカルユーザインターフェース、無線および/または有線データインターフェースなどのデータインターフェース。
【0061】
前記マスクされたデータを使用して試料についての分析結果を生成することは、マスクされたデータを評価することを含み得る。本明細書で使用される「評価する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、マスクされたデータを処理し、例えば、少なくとも1つの画像評価アルゴリズムを処理し、そこから定量的および/または定性的結果などの少なくとも1つの代表的な結果を導出するための方法の適用を指し得る。この分析結果は、別個の標的分析物の濃度についての結果、分析物の有無についての結果、別個のコピー数変異についての結果、別個の遺伝子変異についての結果、遺伝子発現についての結果、遺伝子編集に関連する結果などのうちの1つまたは複数であり得る。
【0062】
例えば、本方法は、以下のステップ:
- アレイを提供するステップと、
- 試料を提供するステップと、
- 必要に応じて、前記アレイ上の/前記アレイ内の前記試料を分析するための少なくとも1つの試薬を提供するステップと、
- 必要に応じて、前記アレイ上の/前記アレイ内の前記試料を分析するための機器を提供するステップと、
- アレイによって試料からデータを生成するステップと、
- 必要に応じて、アレイから受信したデータを前処理するステップと、
- アレイに関連するマスクを取得または生成することなどを提供するステップと、
- 試料からの(必要に応じて前処理された)データをマスクするステップと、
- 必要に応じて、マスクされたデータを後処理するステップと、
- 前記マスクされたデータから試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するステップと、を含み得る。
【0063】
さらなる態様では、少なくとも1つのマイクロ流体チップ上で試料を処理するように構成された試料処理システムが開示される。試料処理システムは、上記で与えられたまたは以下にさらに詳細に与えられる実施形態のうちの1つまたは複数などにかかる、本発明にかかるマイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法を実行するように構成されている。詳細、オプションおよび定義については、本方法の説明を参照し得る。
【0064】
本明細書で使用される「システム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、限定されないが、全体を形成する相互作用または相互依存する構成要素部分の任意のセットを指し得る。具体的には、構成要素は、少なくとも1つの共通の機能を果たすために互いに相互作用し得る。システムの構成要素は、独立して取り扱われてもよく、または結合され得るかもしくは接続可能であってもよい。
【0065】
マイクロ流体チップは、パーティションの少なくとも1つのアレイを備える。試料処理システムは、マイクロ流体チップを撮像することによって試料を含むマイクロ流体チップの画像データを生成するように構成された少なくとも1つの撮像装置を備える。試料処理システムは、マイクロ流体チップに少なくとも1つのマスクを提供するように構成された少なくとも1つのデータ処理ユニットを備える。データ処理ユニットは、画像データ、画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数にマスクを適用することによってマスクされたデータを生成するように構成されている。マスクの適用は、マスクに応じてアレイの各パーティションをマスクすることを含む。試料処理システムは、前記マスクされたデータを使用して試料の少なくとも1つの分析結果を生成するように構成されている。
【0066】
本明細書においてさらに開示および提案されるものは、機器がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる実施形態のうちの1つ以上において本発明にかかる方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムである。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読データキャリア」および「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、具体的には、コンピュータ実行可能命令が記憶されたハードウェア記憶媒体などの非一時的データ記憶手段を指し得る。コンピュータ可読データキャリアまたは記憶媒体は、具体的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み出し専用メモリ(ROM)などの記憶媒体であってもよく、またはそれを備えてもよい。
【0068】
したがって、具体的には、上述したような方法ステップa)からd)の1つ、1つよりも多い、または全ては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行されてもよい。
【0069】
本明細書においてさらに開示および提案されるものは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる実施形態のうちの1つ以上において本発明にかかる方法を実行するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品である。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。
【0070】
本明細書においてさらに開示および提案されるのは、コンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリなどのコンピュータまたはコンピュータネットワークにロードした後、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは2つ以上にかかる方法を実行し得るデータ構造が記憶されたデータキャリアである。
【0071】
本明細書においてさらに開示および提案されるものは、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のプロセッサに本発明にかかる方法を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体である。
【0072】
本明細書においてさらに開示および提案されるものは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる実施形態のうちの1つ以上にかかる方法を実行するために、機械可読キャリアに記憶されたプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品である。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体上に存在し得る。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0073】
最後に、本明細書において開示および提案されるものは、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは複数にかかる方法を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0074】
本発明のコンピュータ実装態様を参照すると、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは複数にかかる方法のうちの1つまたは複数の方法ステップまたは全ての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行され得る。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれかは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行され得る。一般に、これらの方法ステップは、試料の提供および/または実際の測定を実行する特定の態様などの手作業を必要とする方法ステップを通常除いて、任意の方法ステップを含み得る。
【0075】
具体的には、本明細書では、さらに以下が開示される:
- プロセッサが、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合された少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワーク、
- データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造、
- プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合されたコンピュータプログラム、
- コンピュータプログラムがコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- プログラム手段がコンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に記憶された、先行する実施形態にかかるプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークの主記憶部および/または作業記憶部にロードされた後、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合された、記憶媒体、
- コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体上に記憶され得るか、または記憶される、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品。
【0076】
したがって、本明細書に提示される方法および手段は、
- 製造コスト、製造労力を節約し、最適化ループの数を低減し、製造パラメータの制御を容易にし、
- ロットの解放を容易にし、
- そのようなマイクロ流体チップを製造するための射出成形ツールの使用時間を延長し、
- 続いて、分析結果を生成するためにこれらのチップを使用するコストを削減し、
- そうでなければ品質が悪いために廃棄されなければならないであろう廃棄されるマイクロ流体チップの数を削減することを可能にし得る。
【0077】
上記の全てにおいて、たとえそれらが完全ではなく、欠陥パーティションのかなりの割合を有する場合であっても、分析結果を著しく損なうことがなく、またはそのようなマイクロ流体チップによって生成された分析結果(適合率、精度など)の品質を損なうことがない。
【0078】
要約すると、さらに可能な実施形態を除外することなく、以下の実施形態が想定され得る。
【0079】
実施形態1.マイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法であって、マイクロ流体チップが、パーティションの少なくとも1つのアレイを備え、方法が、以下のステップ:
a)少なくとも1つの撮像装置を使用することによってマイクロ流体チップを撮像することにより、試料を含むマイクロ流体チップの画像データを生成するステップと、
b)パーティションの少なくとも1つの領域についての少なくとも1つのマスクを少なくとも1つのデータ処理ユニットに提供するステップと、
c)データ処理ユニットを使用することにより、画像データ、画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数にマスクを適用することによってマスクされたデータを生成するステップであって、マスクを適用することが、マスクに応じてアレイの各パーティションをマスクすることを含む、マスクを適用することによってマスクされたデータを生成するステップと、
d)マスクされたデータを使用して試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するステップと、を含む、方法。
【0080】
実施形態2.マスクが、アレイの包含パーティション、排除パーティション、および/または重み付けパーティションについてのデータセットである、先行する実施形態に記載の方法。
【0081】
実施形態3.重み付けが、重み付け係数を適用することを含み、重み付け係数が、0と1との間の値である、先行する実施形態に記載の方法。
【0082】
実施形態4.マスクが、パーティションのリストおよび/またはパーティションの範囲を含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
実施形態5.パーティションの範囲が、アレイの行のリスト、アレイの列のリスト、リムサイズ、アレイ領域のリスト、長方形もしくは三角形などの所定の幾何学的図形のリスト、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0084】
実施形態6.マスクが、アレイ固有のマスクまたはロットごとのマスクである、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
実施形態7.マスクを提供することが、マスクを取得することおよび/またはマスクを生成することを含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
実施形態8.アレイが分析に使用されている間に、マスクが事前決定されるか、またはオンラインで生成される、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
実施形態9.マスクが、製造後の全てのアレイの検査、製造ロットの試料の検査、アレイを使用しながらの目視検査、品質管理の実施および/または観察などによるアレイが分析に使用される前の検査のうちの1つまたは複数によって事前決定される、先行する実施形態に記載の方法。
【0088】
実施形態10.方法が、マスクを事前決定した後、有効パーティションの割合が有効パーティションの事前定義された最小割合よりも低い場合、マイクロ流体チップまたはマイクロ流体チップのバッチの少なくとも1つのサブセットを使用から除外することを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0089】
実施形態11.方法が、デジタルポリメラーゼ連鎖反応アッセイを実施することを含み、第1の蛍光チャネルが試料の分析に使用され、第2の蛍光チャネルがマスクの事前決定または生成に使用される、3つの先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
実施形態12.マスクが、ハードディスク、サーバ、クラウド、USBディスク、CD、バーコード、2Dバーコード、QRコード、RFIDなどのデータキャリア上のデータ;アレイのプロデューサまたはプロバイダによって提供されるダウンロード可能ファイル;例えば、テキスト、1Dバーコードまたは2Dバーコード、RFIDとして機械可読または人間可読であるアレイ上に提供されるデータ;アレイを有するアセンブリであるキャリア上など、アレイに取り付けられた部分上に提供されるデータとして;参照によって、例えば、アレイに貼付された、もしくはアレイに取り付けられた、もしくはアレイとともに配送された、人間可読タグもしくは機械可読タグを提供することによって、または固有のIDもしくは識別番号などの参照を提供し、この参照を使用してマスクを取得することによって、例えば、参照によってクラウドもしくはサーバなどのリモートデータストレージ場所からマスクデータを検索することによって、例えば、対応する製造ロットに関連するマスクを検索するために、例えば、製造ロット番号を使用してマスクデータを検索することによって、検索され得るデータ;リモートストレージに生データをアップロードすることであって、リモートストレージからデータがデータ処理ユニットによって取得され得る、アップロードすることによって;一次ストレージ場所からのマスクデータを二次ストレージ場所にプッシュすることによって;マスクデータをデータ処理ユニット上にホストすることによって、のうちの1つまたは複数として提供される、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
実施形態13.マスクがアルゴリズム的に定義されたマスクであり、マスクのマスクパラメータおよびパーティションインデックスが、データ処理ユニットのソフトウェアに記憶され、少なくとも1つの対応する識別子が、マイクロ流体チップのバーコードに記憶されるか、またはマスクパラメータが、マイクロ流体チップのバーコードに直接記憶され、マスクのパーティションのインデックスが、モデルおよびバーコードからのパラメータに基づいてデータ処理ユニットのソフトウェアによって計算される、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
実施形態14.方法が、有効パーティションの割合および/または有効パーティションの数が、マスクを適用した後に、有効パーティションの所定の最小割合および/または有効パーティションの最小数よりも低い場合、分析にフラグを立てることを含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
実施形態15.方法が、マイクロ流体チップを提供することを含み、方法が、少なくとも1つの製造プロセスを含み、製造プロセスが射出成形を含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
実施形態16.方法が、試料がマイクロ流体チップに充填される少なくとも1つのパーティションステップを含み、方法が、前記試料を分析するための少なくとも1つの試薬を前記マイクロ流体チップ上に提供することを含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
実施形態17.方法が、前記マイクロ流体チップ上の前記試料を分析するための機器を提供することを含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
実施形態18.方法が、画像データを前処理することを含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
実施形態19.方法が、マスクされたデータを後処理することを含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
実施形態20.データ処理ユニットが、サーバまたはクラウドベースのソリューションである、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0099】
実施形態21.方法がコンピュータ実装される、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
実施形態22.少なくとも1つのマイクロ流体チップ上で試料を処理するように構成された試料処理システムであって、試料処理システムが、先行する実施形態のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法を実行するように構成され、マイクロ流体チップが、パーティションの少なくとも1つのアレイを備え、試料処理システムが、マイクロ流体チップを撮像することによって試料を含むマイクロ流体チップの画像データを生成するように構成された少なくとも1つの撮像装置を備え、試料処理システムが、マイクロ流体チップについての少なくとも1つのマスクを提供するように構成された少なくとも1つのデータ処理ユニットを備え、データ処理ユニットが、画像データ、画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数にマスクを適用することによってマスクされたデータを生成するように構成され、マスクを適用することが、マスクに応じてアレイの各パーティションをマスクすることを含み、試料処理システムが、前記マスクされたデータを使用して試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するように構成されている、試料処理システム。
【0101】
実施形態23.命令を備えるコンピュータプログラムであって、先行する実施形態に記載の試料処理システムによってプログラムが実行されると、命令が、試料処理システムに、方法に言及する先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を備えるコンピュータプログラム。
【0102】
実施形態24.実施形態23に記載の試料処理システムによって命令が実行されると、試料処理システムに、方法に言及する先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体。
【0103】
実施形態25.1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のプロセッサに、方法に言及する先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体。
【図面の簡単な説明】
【0104】
さらなる任意の特徴および実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてより詳細に開示される。ここで、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、独立した方式で、ならびに任意の実行可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されない。実施形態は、図に概略的に示されている。ここで、これらの図の同一の参照符号は、同一または機能的に匹敵する要素を指す。
【0105】
図では以下のとおりである:
【
図1】試料処理システムの実施形態を概略図で示している。マイクロ流体チップは、4つのパーティションのアレイを備える。
【
図2】マイクロ流体チップの欠陥パーティションを補償するための方法の実施形態を示している。
【
図3A】マイクロ流体チップの実施形態を示している。
【
図3B】マイクロ流体チップの実施形態を示している。
【
図5A】マイクロ流体チップ上のマスクパラメータおよびパーティションインデックスの実施形態を示している。
【
図5B】マイクロ流体チップ上のマスクパラメータおよびパーティションインデックスの実施形態を示している。
【
図5C】マイクロ流体チップ上のマスクパラメータおよびパーティションインデックスの実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0106】
実施形態の詳細な説明
図1は、試料処理システム110の例示的な実施形態を概略図で示している。試料処理システムは、少なくとも1つのマイクロ流体チップ112上で試料(図示せず)を処理するように構成されている。マイクロ流体チップ112は、パーティションの少なくとも1つのアレイ114を備える。この例では、マイクロ流体チップ112は、パーティションのアレイ114のレーンとしても示されるパーティションの4つの長方形アレイ114を備える。しかしながら、パーティションのアレイ114の他の幾何学的形態および/またはマイクロ流体チップに含まれる別の数のパーティションのアレイも実現可能である。
【0107】
試料処理システムは、マイクロ流体チップ112を撮像することによって試料を含むマイクロ流体チップ112の画像データを生成するように構成された少なくとも1つの撮像装置116を備える。試料処理システムは、マイクロ流体チップ116に少なくとも1つのマスクを提供するように構成された少なくとも1つのデータ処理ユニット118をさらに備える。
図1の矢印120によって示されるように、撮像装置116およびデータ処理ユニット118は、例えばデータ交換インターフェースを介して、データ、具体的には画像データを一方向または双方向に交換するように構成され得る。データ処理ユニットは、例として、サーバまたはクラウドベースのソリューションであってもよい。
【0108】
データ処理ユニット118は、画像データ、画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数にマスクを適用することによってマスクされたデータを生成するように構成されている。マスクの適用は、マスクに応じてアレイ114の各パーティションをマスクすることを含む。試料処理システム110は、前記マスクされたデータを使用して試料の少なくとも1つの分析結果を生成するように構成されている。
【0109】
試料処理システム110は、
図2に示す方法の実施形態などにかかる、本発明にかかるマイクロ流体チップ112の欠陥パーティションを補償するための方法を実行するようにさらに構成されている。したがって、方法の説明については、
図2の説明を参照する。
【0110】
図2は、マイクロ流体チップ112の欠陥パーティションを補償するための方法の例示的な実施形態を示している。
図1に示すように、マイクロ流体チップ112は、パーティションの少なくとも1つのアレイ、例えばパーティションの複数のアレイ114を備える。本方法は、具体的には、
図1に示される試料処理システム110によって実行され得る。
【0111】
本方法は、試料がマイクロ流体チップ112内に充填される少なくとも1つのパーティションステップ(参照符号122によって示される)を含み得る。例えば、関心のある分析物を含む溶液は、パーティションに物理的に分配されてもよい。本方法は、前記試料を分析するための少なくとも1つの試薬を前記マイクロ流体チップ112上に提供することをさらに含んでもよい。例えば、マイクロ流体チップ112は、マイクロ流体デバイスによって例えば反応混合物の形態で各パーティションに提供される試料のデジタルPCRまたは生化学的アッセイのために構成されている。
【0112】
本方法は、特に分析物がアレイのいずれかのパーティションに存在するかまたは存在しない場合に、化学的、生化学的、または生物学的もしくは物理的反応が起こる少なくとも1つの反応ステップ(参照符号123によって示される)を含み得る。例えば、d-PCRまたはd-等温核酸増幅反応またはd-酵素反応を行う。
【0113】
さらに、本方法は、以下のステップ:
a)(参照符号124によって示される)少なくとも1つの撮像装置116を使用することによってマイクロ流体チップ112を撮像することにより、試料を含むマイクロ流体チップ112の画像データを生成するステップと、
b)(参照符号126によって示される)パーティションの少なくとも1つの領域についての少なくとも1つのマスクを少なくとも1つのデータ処理ユニット118に提供するステップと、
c)(参照符号128によって示される)データ処理ユニット118を使用することにより、画像データ、画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数にマスクを適用することによってマスクされたデータを生成するステップであって、マスクを適用することが、マスクに応じてアレイ114の各パーティションをマスクすることを含む、マスクを適用することによってマスクされたデータを生成するステップと、
d)(参照符号130によって示される)前記マスクされたデータを使用して試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するステップと、を含む。
【0114】
マイクロ流体チップ112は、製造プロセスの性質に起因して、固有の空間位置における製造プロセスにおいて品質問題を被ることがあることが一般に知られている。製造プロセスは、マイクロ流体チップ112の欠陥および/または無効パーティションをもたらし得る。これらの欠陥および/または無効パーティションは、それらの欠陥パーティションに対して分析が実行される場合、分析結果に悪影響を及ぼす。欠陥および/または無効パーティションを有するマイクロ流体チップ112の例示的な実施形態が
図3Aおよび
図3Bに示されている。
図3Aおよび
図3Bでは、マイクロ流体チップ112の欠陥および/または無効パーティションは、参照符号132によって示され、欠陥のない領域は、参照符号134によって示されている。射出成形欠陥の影響を受ける領域132、134は、主に長方形アレイ114の縁部および角部に位置し得る。
図3Aに示すように、欠陥は、全てのレーンに等しく影響を及ぼし得るか、または
図3Bに示すように、全てのレーンに独立して影響を及ぼし得る。本発明にかかる方法、例えば
図2に示す実施形態にかかる方法は、欠陥132を有する領域を分析から確実に除外することを可能にし得る。本発明にかかる方法、例えば
図2に示す実施形態にかかる方法は、有効パーティション134(欠陥のないパーティション)を有する大きな領域を除外しないことをさらに可能にし得る。
【0115】
図2に戻ると、ステップb)(参照符号126によって示される)におけるマスクを提供することは、マスクを取得することおよび/またはマスクを生成することを含み得る。マスクは、事前決定されてもよく、またはアレイが分析に使用されている間にオンラインで生成されてもよい。マスクは、オフラインまたはオンラインのいずれかで生成されてもよい。
【0116】
例として、
図4は、所定のマスク136の例示的な実施形態を示している。マスクは、製造後の全てのアレイ114の検査、製造ロットの試料の検査、アレイ113を使用しながらの目視検査、品質管理の実施および/または観察などによるアレイ114が分析に使用される前の検査のうちの1つまたは複数によって事前決定され得る。例えば、マスクは、製造後に全てのアレイ114を検査する際に生成されてもよい。成形アーチファクトなどの欠陥がマスクに追加されることがある。任意に、周囲領域が除外されるマスクに追加されることがある。この例では、アレイ114ごとのマスクが生成されてもよい。例えば、製造ロットの試料を検査する際にマスクが生成されてもよく、試料は、ロットを表す。この例では、ロットごとに1つのマスクが生成されてもよい。例えば、マスクは、アレイが分析に使用される直前に、例えば目視検査によって検査時に生成されてもよい。
【0117】
所定のマスクの代わりに、またはそれに加えて、マスクは、アルゴリズム的に定義されたマスクであってもよい。アルゴリズム的に定義されたマスクの例示的な実施形態が
図5Aから
図5Cに示されている。具体的には、
図5Aから
図5Cは、マイクロ流体チップ112上のマスクパラメータおよびパーティションインデックスの異なる例示的な実施形態を示している。これらの実施形態は、小さいパラメータセットを使用して、体系的な射出成形欠陥によって影響を受けるより小さいまたはより大きい領域をマスクするための高い柔軟性を提供する符号化方式を提供することを可能にする。欠陥領域の形状は、長方形もしくは三角形、またはそれらの組み合わせなどの単純な幾何学的図形によって特徴付けられ得る。影響領域の範囲は、依然として射出成形ロット間で異なり得るが、これは、一般的なマスクのアルゴリズム変更、例えば係数によるスケーリングによって補償され得る。また、例えばスタンパの摩耗の増加およびその後の露出部における欠陥領域の増加に起因して、射出成形実行内に異なるマスクを適用することは、アルゴリズム的手法によって可能であり得る。
【0118】
マスク137のマスクパラメータおよびパーティションインデックスは、データ処理ユニット118のソフトウェアに記憶されてもよく、少なくとも1つの対応する識別子は、マイクロ流体チップ112のバーコード(図示せず)に記憶されてもよい。識別子に記憶された情報は、適切な読み取り装置を使用して読み取られ得る。この例は、より複雑なマスク形状を可能にし得るが、事前定義されたマスクのセットに対してのみである。試料処理システム110上のソフトウェアを常に更新することはできないと仮定する。例えば、マスク構成は、バーコードに、例えば3桁の数字(000-999)として記憶されてもよい。それにより、1000個の異なるマスクが可能になる。次いで、マスク構成は、機器のソフトウェアに記憶されてもよい。例えば、符号化は、数字の代わりに文字を使用して実行されてもよい。
【0119】
図5Aに示すように、マスクは、レーンごとに一連のパーティション座標(またはパーティションインデックス)として記憶されてもよい。マスク内の各パーティションは、分析から除外される。マイクロ流体チップ112のレーン4についての例示的なマスク137の一部が、
図5Aの拡大図に示されている。その中で、暗い点は、分析から除外されるパーティション座標(参照符号138によって示される)を示し、他のマークされていないパーティション座標が分析に使用される。この例では、マスク137は、レーン4について、以下のインデックスのパーティションのリスト:0、1、2、3、4、5、50、51、52、53、54、100、101、102、103、150、151、152、201、202、203、250、251、300、301、400を含み得る。この例は、最高の柔軟性を可能にし得るが、大部分の貯蔵空間を必要とする。
【0120】
代替的または追加的に、
図5Bに示すように、マスクは、一連の単純な幾何学的図形として、例えば長方形および三角形のセットとして記憶されてもよい。長方形は、例えば、左上および右下の2つの角部によって定義され得、長方形をスパンアップするために2つのパーティションインデックスのみを必要とする。同様に、三角形は、3つのパーティションインデックスのみによってスパンアップされ得る。これらの幾何学的形状内の全てのパーティションは、その後にマスクされてもよい。
図5Bの拡大図は、マイクロ流体チップ112のレーン4についての別の例示的なマスク137の一部を示している。この例では、マスク137は、左上のマスクされた領域に、パーティションのインデックス[0,153]および[200,301]における左上および右下の角部によって定義される2つの長方形を含む。
【0121】
別の例として、マスクパラメータは、マイクロ流体デバイスのバーコードに直接記憶されてもよく、マスク137のパーティションのインデックスは、モデルおよびバーコードからのパラメータに基づいてデータ処理ユニット118のソフトウェアによって計算される。この例は、パラメータによって定義されるアルゴリズムモデル内の可能性の範囲内でのみ、任意の種類のマスク137を可能にし得る。マスク137を定義するこの例は、射出成形プロセス内の欠陥の原理的性質が位置および幾何学的形状の点で周知であるが、範囲は様々とすることができる場合に、最高の柔軟性を提供し得る。いずれの場合も、各ロットの製造中に患部の範囲が評価されなければならない場合があり、その後のマスキングのための情報は、各マイクロ流体チップ112、例えばそのバーコードに符号化されなければならない。例えば、マスク137は、パラメータ化され、パラメータのセットとしてバーコードに記憶されてもよい。パラメータモデルは、試料処理システムのソフトウェアに記憶されてもよく、装置バーコードから読み取られたパラメータを使用してマスクを再構築してもよい。
【0122】
図5Cに示すように、パーティションの長方形アレイ114上の典型的な位置をカバーするマスク137は、アルゴリズム的に定義されるものとする。マスク137は、長方形、およびパーティションの長方形アレイ114の各角部の三角形として定義される、左、右、上および下の境界領域を覆うものとする。この例では、レーンごとに12個のパラメータが記憶されることになる。
図5Cに示すように、パラメータは、4つの長方形を定義するための4つのパラメータ、すなわち、左からの列の数(参照符号140によって示される)、上からの行の数(参照符号142によって示される)、右からの列の数(参照符号144によって示される)、および下からの行の数(参照符号146によって示される)と、4つの三角形を定義するための8つのパラメータ、すなわち、左からの列の数(参照符号148によって示される)、上からの行の数(参照符号150によって示される)、下からの行の数(参照符号152によって示される)、左からの列の数(参照符号154によって示される)、右からの列の数(参照符号156によって示される)、下からの行の数(参照符号158によって示される)と、上からの行の数(参照符号160によって示される)、および右からの列の数(参照符号162によって示される)と、を含む。三角形が二等辺三角形である場合、パラメータの数は、レーンごとに8つの値に低減され得る。さらに高い対称性の場合、マスクをパラメータ化するためにパラメータの数がさらに低減され得る。
【0123】
図2に戻ると、本方法は、マスクされたデータを用いてさらなる処理ステップを含み得る。例えば、本方法は、有効パーティションの数が、マスクを適用した後に、有効パーティションの事前定義された最小割合よりも低い場合、例えば、パーティションの15%超がマスキングのために失われている場合、分析にフラグを立てることを含み得る。代替的または追加的に、本方法は、少なくとも1つのユーザインターフェースを介してフラグに応じた少なくとも1つの情報をユーザに提供することを含んでもよい。代替的または追加的に、前記マスクされたデータを使用して試料の分析結果を生成することは、マスクされたデータを評価することを含んでもよい。
【0124】
以下の実施例は、提案された方法をさらに説明する。
【0125】
実施例1:バッチ固有マスクの提供および使用
ステップA:マイクロアレイのバッチ(ロット)を製造する
dPCR消耗品のバッチ、タイプ「A」が製造される。dPCR消耗品は、以下の態様を有する。
【表1】
【0126】
バッチは、2012個の消耗品のサイズを有していた。全ての消耗品は、1つのツール(金型)および1つの組立ラインから製造された。バッチの消耗品は、バッチIDおよびラン番号「0001」から「2012」であった。
【0127】
ステップB:バッチから試料を採取する
生成物から、バッチ放出について12個の試料が分析された:以下の試料が分析された:4つの試料:製造バッチの開始時から、4つの試料:製造バッチの途中から、4つの試料:製造バッチの終了時から。
【0128】
ステップC:バッチから試料を分析する
実施例「1」からの試料は、以下の方法のいずれかによって分析されている。
【表2】
【表3】
【0129】
ステップD:「マスク」、全ての有効/無効パーティションのリストを作成する
ステップBからステップCの試料からの結果を使用して、消耗品バッチ上の全ての無効パーティションまたは領域のリストを作成する。好ましくは、12個の試料間でOR演算が使用される(試料のいずれかにおける任意の無効パーティションがバッチについての無効パーティションに現れる)。
【0130】
ステップE:マスクを記憶する
このマスクが対応する製造バッチに関連することが明らかな方法で、無効パーティションのリスト(「マスク」)を記憶する。
【0131】
ステップF:バッチから消耗品を使用する
アッセイにおいて製造バッチ形態のステップAからの消耗品を使用する。全てのパーティションについての生データを生成する。
【0132】
ステップG:マスクを適用する
ステップEからのマスクを使用して無効部分を除去して生データを形成する。
【0133】
ステップH:使用済みのマスクされたデータ
ステップGからのマスクされたデータに基づいて結果を計算する。
【0134】
この例では、以下のステップが任意にさらに使用され得る:
- ステップAの消耗品は、バッチ固有識別子(BID)によってマークされ得る。BIDは、消耗品に直接貼付されてもよく、例えば、レーザマーキングされてもよく、またはラベルは、消耗品に取り付けられてBIDを担持してもよく、BIDを有するラベルは、消耗品のホルダに貼付されてもよい。BIDは、消耗品のパッケージまたはバッグにのみ貼付されてもよい。
- BIDは、対応する製造バッチに関連するマスクを取得するために後に使用される。
- ステップEからのマスクは、BIDを使用して後に取得され得るように記憶されてもよい。
- マスクは、製造QCの一部として生成され、消耗品の製造者によって生成されてもよい。
- マスクは、ローカルまたはリモートストレージ装置(例えば、クラウドドライブ)に記憶されてもよい。
- リモートストレージ装置は、マスクデータが消耗品の後のユーザ/消費者によって(のみ)アクセス可能であるように設定されてもよい。
- マスクはまた、例えば、使用前にスキャンされる必要がある1Dバーコードまたは2Dバーコード、QRコードとして紙で提供されてもよい。
- マスクはまた、消耗品の出荷を備えたCDまたはUSBスティックなどのモバイルストレージ装置上に提供されることもできる。
- マスクデータはまた、圧縮されてもよい。例えば、単一の無効パーティションのリストの代わりに無効な完全な領域をリスト化する。
- マスキング後に有効パーティションの最小割合が存在しない場合、使用から消耗品のバッチまたはサブセットを除外する。
- マスキング後に有効パーティションの最小割合が存在しない場合、分析にフラグを立てる。
【0135】
実施例2:制御ランからのマスクの提供および使用
ステップA:製造ロットからの消耗品のサブセットを定義する
研究において使用されている製造ロットからの54個の試料をサブセットとして定義する。
【0136】
ステップB:試料を定義する
4つの消耗品(上から54個)を試料として定義する。
【0137】
ステップC:試料を分析する
上記のような任意の方法によって、好ましくはQCキットによって、方法3AによってステップBからの4つの試料消耗品を分析し、0.1から0.5の範囲における所定の陽性率を有するdPCRデータを生成する。
【0138】
ステップD:全ての有効/無効パーティションのリスト(「マスク」)を作成する。
ステップCからの4つの試料からの結果を使用して、Cにおいて分析された4つの試料から、ステップAからの消耗品サブセットの全ての無効パーティションまたは領域のリストを作成する。- 好ましくは、4つの試料間でOR演算が使用される。4つの試料のいずれかの無効パーティションは、ステップAからの消耗品のサブセットについて、無効パーティションマスクに現れる。
【0139】
ステップE:マスクを記憶する
このマスクが消耗品の対応するサブセットに関連することが明らかな方法で、無効パーティションのリスト(「マスク」)を記憶する。
【0140】
マスクデータは、ローカルストレージ装置、ローカルネットワークドライブ、または非ローカルネットワークドライブ(クラウドストレージなど)にローカルに記憶され得る。データは、必要に応じてデータを容易に見つけられ、アクセスされ、取得され、適用され得るように記憶される。
【0141】
ステップF:
アッセイ(アッセイのセット)においてステップAからのサブセットからの消耗品を使用して、全てのパーティションについての生データを生成する。
【0142】
ステップG:
ステップEからのマスクを使用して無効部分を生データから除去する(ステップFおよびGはまた、1つのステップにおいて組み合わせられることもできる)。
【0143】
ステップH:
ステップGからのマスクされたデータに基づいて結果を計算する。
【0144】
実施例3:システムについてのマスクの提供および使用
ステップA:少なくとも1つの消耗品を有するシステムを開発する
- パーティションされた分析に使用される(例えば、dPCRに使用される)、少なくとも1つの消耗品を有するシステムを開発する。
- 消耗品の少なくとも1つのバッチを製造し、好ましくは消耗品の複数のバッチを製造する。
【0145】
ステップB:製造された消耗品から試料を採取する
消耗品の製造されたバッチからいくつかの試料を採取する。
【0146】
ステップC:試料を分析する
ステップBからの試料消耗品を、上記方法1Aから3Bと同様の任意の方法によって分析する。
【0147】
ステップD:全ての有効/無効パーティションのリスト(「マスク」)を作成する。
消耗品の全ての無効パーティションまたは領域のリストを作成する。消耗品の全ての無効パーティションをカバーするマスクを導出する。好ましくは、全ての試料間でOR演算が使用され得る。任意の試料内の無効パーティションは、ステップAにかかるシステムに対して、無効パーティションマスクに現れる。または、頻繁なエラーのみがマスクされるマスクを生成する。
【0148】
ステップE:マスクを記憶する
システムによって将来適用され得る方法で、無効パーティションのリスト(「マスク」)を記憶する。分析を行うシステムにマスクをローカルに記憶する。
【0149】
ステップF:
システムの消耗品を使用する。全てのパーティションについての生データを生成する。
【0150】
ステップG:
ステップDおよびEからのマスクを使用して無効部分を生データから除去する(ステップFおよびGはまた、1つのステップにおいて組み合わせられることもできる)。
【0151】
ステップH:
ステップGからのマスクされたデータに基づいて結果を計算する。
【0152】
実施例4:マスクの「オンライン」生成
ステップA:アレイ化されたdPCR消耗品を採取する
【0153】
ステップB:
2つの独立した蛍光チャネルにおいて蛍光を発生させるdPCR分析を行う。
1.未知試料を分析するためにFAMチャネルが使用される場合
2.HEXチャネルが使用されてアレイの品質を分析し、その後にマスクを決定する場合
【0154】
HEXチャネルでは、予想される結果を与える、既知の組成および濃度の標的が分析される(例えば、パターンを生成し、要素の平均50%が陽性の信号を有し、要素の平均50%が陰性の信号を生成する)。
【0155】
ステップC:全ての有効/無効パーティションのリスト(「マスク」)を作成する。
dPCR反応が行われた後、HEXチャネル内の陽性率をローカルに分析することにより、ローカルに分析された領域が規則的であるか否かを決定する。
【0156】
要素をマスクに追加する
- 観察された領域内の全ての要素が陽性である場合
- 観察された領域内の全ての要素が陰性である場合
- 陽性/陰性要素の割合が予想したものから大きく外れる場合
- 陽性または陰性の信号の輝度が予想される範囲内にない場合。
【0157】
ローカルに分析される領域は、例えば、5×5要素、または10×10要素、または3×8要素、または1×10要素のパッチとすることができる。
【0158】
ステップE:マスクを記憶する
システムによって将来適用され得る方法で、無効パーティションのリスト(「マスク」)を記憶する。例えば、分析を行うシステムにマスクをローカルに記憶する。
【0159】
ステップF:
Cからのマスクを使用してFAMチャネル内の生データから無効パーティションを除去する
【0160】
ステップH:
ステップFからのマスクされたデータに基づいて結果を計算する
【符号の説明】
【0161】
110 試料処理システム
112 マイクロ流体チップ
114 パーティションのアレイ
116 撮像装置
118 データ処理ユニット
120 矢印
122 パーティションステップ
123 反応ステップ
124 画像データの生成
126 少なくとも1つのマスクの提供
128 マスクの適用
130 少なくとも1つの分析結果の生成
132 欠陥および/または無効パーティションを有する領域
134 欠陥のない領域
136 事前定義されたマスク
137 マスク
138 分析から除外されるパーティション座標
140 左からの列
142 上からの列
144 右からの列
146 下からの列
148 左からの列
150 上からの列
152 下からの列
154 左からの列
156 右からの列
158 下からの列
160 上からの列
162 右からの列
【手続補正書】
【提出日】2023-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体チップ(112)の欠陥パーティションを補償するための方法であって、前記マイクロ流体チップ(112)が、パーティションの少なくとも1つのアレイ(114)を備え、前記方法が、以下のステップ:
a)少なくとも1つの撮像装置(116)を使用することによって前記マイクロ流体チップ(112)を撮像することにより、試料を含む前記マイクロ流体チップ(112)の画像データを生成するステップと、
b)パーティションの少なくとも1つの領域についての少なくとも1つのマスク(136、137)を少なくとも1つのデータ処理ユニット(118)に提供するステップと、
c)前記データ処理ユニット(118)を使用することにより、前記画像データ、前記画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または前記画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数に前記マスク(136、137)を適用することによってマスクされたデータを生成するステップであって、前記マスクを適用することが、前記マスクに応じて前記アレイ(114)の各パーティションをマスクすることを含む、前記マスク(136、137)を適用することによってマスクされたデータを生成するステップと、
d)前記マスクされたデータを使用して前記試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記マスク(136、137)が、前記アレイの包含パーティション、排除パーティション、および/または重み付けパーティションについてのデータセットである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マスク(136、137)が、パーティションのリストおよび/またはパーティションの範囲を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マスク(136、137)が、アレイ固有のマスクまたはロットごとのマスクである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マスク(136、137)を提供することが、前記マスク(136、137)を取得することおよび/または前記マスク(136、137)を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マスク(136、137)が、事前決定されるか、または前記アレイが前記分析に使用されている間にオンラインで生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、デジタルポリメラーゼ連鎖反応アッセイを実施することを含み、第1の蛍光チャネルが前記試料の分析に使用され、第2の蛍光チャネルが前記マスク(136、137)の事前決定または生成に使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マスク(136、137)が、ハードディスク、サーバ、クラウド、USBディスク、CD、バーコード、2Dバーコード、QRコード(登録商標)、RFIDなどのデータキャリア上のデータ;前記アレイ(114)のプロデューサまたはプロバイダによって提供されるダウンロード可能ファイル;例えば、テキスト、1Dバーコードまたは2Dバーコード、RFIDとして機械可読または人間可読である前記アレイ(114)上に提供されるデータ;前記アレイ(114)を有するアセンブリであるキャリア上など、前記アレイ(114)に取り付けられた部分上に提供されるデータとして;参照によって、例えば、前記アレイ(114)に貼付された、もしくは前記アレイ(114)に取り付けられた、もしくは前記アレイ(114)とともに配送された、人間可読タグもしくは機械可読タグを提供することによって、または固有のIDもしくは識別番号などの参照を提供し、この参照を使用して前記マスク(136、137)を取得することによって、例えば、前記参照によってクラウドもしくはサーバなどのリモートデータストレージ場所から前記マスクデータを検索することによって、例えば、対応する製造ロットに関連する前記マスク(136、137)を検索するために、例えば、製造ロット番号を使用して、前記マスクデータを検索することによって、検索され得るデータ;生データをリモートストレージにアップロードすることであって、前記リモートストレージから前記データが前記データ処理ユニットによって取得され得る、アップロードすることによって;一次ストレージ場所からのマスクデータを二次ストレージ場所にプッシュすることによって;マスクデータを前記データ処理ユニット上にホストすることによって、のうちの1つまたは複数として提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マスク(136、137)がアルゴリズム的に定義されたマスクであり、前記マスク(136、137)のマスクパラメータおよびパーティションインデックスが、前記データ処理ユニット(118)のソフトウェアに記憶され、少なくとも1つの対応する識別子が、前記マイクロ流体チップのバーコードに記憶されるか、またはマスクパラメータが、前記マイクロ流体チップのバーコードに直接記憶され、前記マスクの前記パーティションのインデックスが、モデルおよび前記バーコードからの前記パラメータに基づいて前記データ処理ユニットのソフトウェアによって計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、有効パーティションの割合および/または有効パーティションの数が、前記マスク(136、137)を適用した後に、有効パーティションの所定の最小割合および/または有効パーティションの最小数よりも低い場合、分析にフラグを立てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法がコンピュータ実装される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのマイクロ流体チップ(112)上で試料を処理するように構成された試料処理システム(110)であって、前記試料処理システム(110)が、請求項1から11のいずれか一項に記載の、マイクロ流体チップ(112)の欠陥パーティションを補償するための方法を実行するように構成され、前記マイクロ流体チップ(112)が、パーティションの少なくとも1つのアレイ(114)を備え、前記試料処理システム(110)が、前記マイクロ流体チップ(112)を撮像することによって試料を含む前記マイクロ流体チップ(112)の画像データを生成するように構成された少なくとも1つの撮像装置(116)を備え、前記試料処理システム(110)が、前記マイクロ流体チップ(112)についての少なくとも1つのマスク(136、137)を提供するように構成された少なくとも1つのデータ処理ユニット(118)を備え、前記データ処理ユニット(118)が、前記画像データ、前記画像データから抽出された少なくとも1つの特徴、または前記画像データから抽出された少なくとも1つの値のうちの1つまたは複数に前記マスク(136、137)を適用することによってマスクされたデータを生成するように構成され、前記マスク(136、137)を適用することが、前記マスク(136、137)に応じて前記アレイ(114)の各パーティションをマスクすることを含み、前記試料処理システム(110)が、前記マスクされたデータを使用して前記試料についての少なくとも1つの分析結果を生成するように構成されている、試料処理システム(110)。
【請求項13】
命令を備えるコンピュータプログラムであって、請求項12に記載の試料処理システム(110)によって前記プログラムが実行されると、前記命令が、前記試料処理システム(110)に、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項14】
命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体であって、請求項12に記載の試料処理システム(110)によって前記命令が実行されると、前記命令が、前記試料処理システム(110)に、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
命令を備える非一時的コンピュータ可読媒体であって、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記命令が、前記1つまたは複数のプロセッサに、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【外国語明細書】