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特開2024-28202締結組立体及び締結組立体を備える締結システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028202
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】締結組立体及び締結組立体を備える締結システム
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20240222BHJP
   F16B 1/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F16B5/02 E
F16B1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132600
(22)【出願日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】2022109857772
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】リウ ウェイピン
(72)【発明者】
【氏名】リー チーリー
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001JA03
3J001KA14
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】締結組立体及び締結組立体を備える締結システムを改良する。
【解決手段】補償要素及び隔離部材を備える締結組立体が提供される。補償要素は、受け穴を有する本体と、本体の第1の端部に設けられるとともに保持穴を有する保持フランジとを備える。隔離部材は、金属から作製され、チャネルを画定するスリーブ部分を備える。補償要素の本体の第2の端部から挿入された締結要素は、チャネルに入り、チャネル内で1つ以上の横方向に移動することができる。スリーブ部分は、保持穴に挿入され、保持穴と協働して隔離部材を補償要素内に保持する。締結要素は、スリーブ部分を介して補償要素を第2の部品に締結し、スリーブ部分は、締結要素が補償要素の保持フランジに及ぼす軸方向締結力に耐えるように構成される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結要素(120)と協働することによって、第1の部品(130)を第2の部品(140)に締結する締結組立体(110)であって、
本体(310)及び保持フランジ(320)を備える補償要素(210)であって、前記本体(310)は、互いに対向する第1の端部(361)及び第2の端部(362)を有し、前記第1の端部(361)及び前記第2の端部(362)を貫通する受け穴(315)を有し、前記保持フランジ(320)は、前記本体(310)の前記第1の端部(361)に設けられ、前記保持フランジ(320)は、前記受け穴(315)の穴壁から内向きに延在し、前記受け穴(315)と軸方向接続する保持穴(325)を有し、前記補償要素(210)は、前記第1の部品(130)に接続可能であるとともに、長手方向(Y)における公差を補償するように前記第1の部品(130)に対して前記長手方向(Y)において移動可能であるように構成される、補償要素と、
金属から作製される隔離部材(220)であって、前記隔離部材(220)は、スリーブ部分(410)を備え、前記スリーブ部分(410)はチャネル(415)を画定し、前記チャネル(415)は、前記補償要素(210)の前記本体(310)の前記第2の端部(362)から挿入された前記締結要素(120)が、前記チャネル(415)に入り、前記長手方向(Y)に対して垂直な1つ以上の横方向(X、Z)における公差を補償するように、前記チャネル(415)内で前記1つ以上の横方向(X、Z)において移動することが可能であるように構成される、隔離部材と、
を備え、
前記スリーブ部分(410)は、前記保持穴(325)に挿入され、前記保持穴(325)と協働して、前記隔離部材(220)を前記補償要素(210)上に保持し、
前記締結要素(120)は、前記スリーブ部分(410)を通して前記補償要素(210)を前記第2の部品(140)に締結し、前記スリーブ部分(410)は、前記締結要素(120)が前記補償要素(210)の前記保持フランジ(320)に及ぼす軸方向締結力に耐えるように構成される、締結組立体。
【請求項2】
請求項1に記載の締結組立体(100)であって、
前記スリーブ部分(410)は、互いに対向する第1の軸方向端部(413)及び第2の軸方向端部(416)を有し、前記第1の軸方向端部(413)及び前記第2の軸方向端部(416)のうちの一方は、前記締結要素(120)が及ぼす圧力に耐え、前記第1の軸方向端部(413)及び前記第2の軸方向端部(416)のうちの他方は、前記第2の部品(140)が及ぼす圧力に耐える、締結組立体。
【請求項3】
請求項1に記載の締結組立体(100)であって、
前記隔離部材(220)は、前記スリーブ部分(410)の前記第1の軸方向端部(413)から外向きに突出するフランジ部分(420)を更に備え、
前記フランジ部分(420)は、前記補償要素(210)の前記保持フランジ(320)の外側及び内側のうちの一方の上に位置決めされ、前記スリーブ部分(410)の前記第2の軸方向端部(416)は、前記保持フランジ(320)の前記保持穴(325)内に延在し、前記保持フランジ(320)の前記外側及び前記内側のうちの他方に向かって延在して、この側上で前記保持フランジ(320)の表面と同一平面上になるか又は前記表面をわずかに越える、締結組立体。
【請求項4】
請求項1に記載の締結組立体(110)であって、
複数の保持リブ(335)が前記保持穴(325)の前記穴壁上に設けられ、前記スリーブ部分(410)の外面が、前記保持リブ(335)と締まり嵌めされ、前記隔離部材(220)を前記補償要素(210)上に保持する、締結組立体。
【請求項5】
請求項4に記載の締結組立体(110)であって、
前記複数の保持リブ(335)は、前記保持穴(325)の周方向に均一に配置され、前記保持リブ(335)のそれぞれは、前記長手方向(Y)に延在する、締結組立体。
【請求項6】
請求項1に記載の締結組立体(110)であって、
前記補償要素(210)の前記本体(310)は円筒形状を有し、前記本体(310)の外面には、螺旋溝(350)が設けられ、前記本体(310)は、前記螺旋溝(350)を通して前記補償要素(210)を前記第1の部品(130)に接続し、
前記補償要素(210)は、前記本体(310)の前記第1の端部(361)及び前記第2の端部(362)にそれぞれ設けられる第1の止め構造部及び第2の止め構造部を備え、前記第1の止め構造部及び前記第2の止め構造部は、前記補償要素(210)が前記第1の部品(130)の穴に挿入され、前記締結組立体(110)を前記第1の部品(130)に予め組み付けるために、前記補償要素(210)が前記第1の部品(130)の前記穴から落下することを阻止することが可能であるように構成される、締結組立体。
【請求項7】
請求項6に記載の締結組立体(110)であって、
前記第1の止め構造部及び前記第2の止め構造部のうちの一方は、前記螺旋溝(350)の端部に設けられる第1の止めブロック(352)であり、前記第1の止め構造部及び前記第2の止め構造部のうちの他方は、偏向可能アーム(355)及び前記偏向可能アーム(355)上に設けられる第2の止めブロック(356)を備える、締結組立体。
【請求項8】
請求項7に記載の締結組立体(110)であって、
前記偏向可能アーム(355)は、前記螺旋溝(350)に対して概ね平行に延在する、締結組立体。
【請求項9】
第1の部品(130)を第2の部品(140)に締結する締結システム(100)であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の締結組立体(110)と、
締結要素(120)と、
前記第2の部品(140)上に設けられるナット具(145)と、
を備え、
前記締結要素(120)は、前記ナット具(145)と係合して、前記第1の部品(130)を前記第2の部品(140)に締結する、締結システム。
【請求項10】
前記締結要素(120)の頭部(122)と前記保持フランジ(320)との間にクランプされる金属ワッシャー(150)、
を更に備える、請求項9に記載の締結システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、包括的には、締結組立体に関し、より詳細には、第1の部品を第2の部品に締結するように構成されるとともに、公差を補償することが可能な締結組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
公差補償機能を有する締結組立体は、2つの部品を締結している間に製造及び取付けによって生じる公差を補償することができる。この締結組立体は、典型的には、ねじ付き締結要素を備え、部品は、ねじ付き締結要素にトルクを印加することによって締結される。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様によれば、本開示は、締結要素と協働して第1の部品を第2の部品に締結するように構成される締結組立体を提供する。締結組立体は、補償要素及び隔離部材を備える。補償要素は、本体及び保持フランジを備え、本体は、互いに対向する第1の端部及び第2の端部を有し、第1の端部及び第2の端部を貫通する受け穴を有する。保持フランジは、本体の第1の端部に設けられ、保持フランジは、受け穴の穴壁から内向きに延在し、受け穴と軸方向接続する保持穴を有し、補償要素は、第1の部品に接続可能であるとともに、長手方向における公差を補償するように第1の部品に対して長手方向において移動可能であるように構成される。隔離部材は、金属から作製される。隔離部材は、スリーブ部分を備え、スリーブ部分はチャネルを画定し、チャネルは、補償要素の本体の第2の端部から挿入された締結要素が、チャネルに入り、長手方向に対して垂直な1つ以上の横方向における公差を補償するように、1つ以上の横方向において移動することが可能であるように構成される。スリーブ部分は、保持穴に挿入され、保持穴と協働して、隔離部材を補償要素上に保持する。締結要素は、スリーブ部分を通して補償要素を第2の部品に締結し、スリーブ部分は、締結要素が補償要素の保持フランジに及ぼす軸方向締結力に耐えるように構成される。
【0004】
第1の態様の締結組立体によれば、スリーブ部分は、互いに対向する第1の軸方向端部及び第2の軸方向端部を有する。第1の軸方向端部及び第2の軸方向端部のうちの一方は、締結要素が及ぼす圧力に耐え、第1の軸方向端部及び第2の軸方向端部のうちの他方は、第2の部品が及ぼす圧力に耐える。
【0005】
第1の態様の締結組立体によれば、隔離部材は、スリーブ部分の第1の軸方向端部から外向きに突出するフランジ部分を更に備える。フランジ部分は、補償要素の保持フランジの外側及び内側のうちの一方の上に位置決めされ、スリーブ部分の第2の軸方向端部は、保持フランジの保持穴内に延在し、保持フランジの外側及び内側のうちの他方に向かって延在して、この側上で保持フランジの表面と同一平面上になるか又は表面をわずかに越える。
【0006】
第1の態様の締結組立体によれば、複数の保持リブが保持穴の穴壁上に設けられ、スリーブ部分の外面が、保持リブと締まり嵌めされ、隔離部材を補償要素上に保持する。
【0007】
第1の態様の締結組立体によれば、複数の保持リブは、保持穴の周方向に均一に配置され、保持リブのそれぞれは、長手方向に延在する。
【0008】
第1の態様の締結組立体によれば、補償要素の本体は円筒形状であり、本体の外面には、螺旋溝が設けられ、本体は、螺旋溝を通して補償要素を第1の部品に接続する。補償要素は、本体の第1の端部及び第2の端部にそれぞれ設けられる第1の止め構造部及び第2の止め構造部を備え、第1の止め構造部及び第2の止め構造部は、補償要素が第1の部品の穴に挿入され、締結組立体を第1の部品に予め組み付けるために、補償要素が第1の部品の穴から落下することを阻止することが可能であるように構成される。
【0009】
第1の態様の締結組立体によれば、第1の止め構造部及び第2の止め構造部のうちの一方は、螺旋溝の端部に設けられる第1の止めブロックであり、第1の止め構造部及び第2の止め構造部のうちの他方は、偏向可能アーム及び偏向可能アーム上に設けられる第2の止めブロックを備える。
【0010】
第1の態様の締結組立体によれば、偏向可能アームは、螺旋溝に対して実質的に平行に延在する。
【0011】
本開示の第2の態様によれば、本開示は、第1の部品を第2の部品に締結するように構成される締結システムを提供する。締結システムは、第1の態様に係る締結組立体と、締結要素と、第2の部品上に設けられるナット具とを備える。締結要素は、ナット具と係合して、第1の部品を第2の部品に締結する。
【0012】
第2の態様の締結システムによれば、金属ワッシャーが更に含まれる。金属ワッシャーは、締結要素の頭部と保持フランジとの間にクランプされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本開示の一実施形態に係る締結システムの斜視図である。
図1B図1Aに示す締結システムの部分分解図である。
図1C図1Aに示す締結システムの組付けプロセスを示す図である。
図2A】本開示の一実施形態に係る締結システムの斜視図である。
図2B図2Aに示す締結組立体の分解図である。
図3A】第1の視点から見た、図2Aに示す締結組立体の補償要素の斜視図である。
図3B】第2の視点から見た、図2Aに示す締結組立体の補償要素の斜視図である。
図3C】軸方向に沿った図2Aに示す締結組立体の断面図である。
図4A】第1の視点から見た、図2Aに示す締結組立体の隔離部材の斜視図である。
図4B】第2の視点から見た、図2Aに示す締結組立体の隔離部材の斜視図である。
図5】軸方向に沿った図2Aに示す締結組立体の断面図である。
図6】軸方向に沿った本開示の別の実施形態に係る締結組立体の断面図である。
図7】第1の部品が予め組み付けられた図2Aに示す締結組立体の斜視図である。
図8】使用状態のシステムを示す、軸方向に沿った図1Aに示す締結システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の様々な具体的な実施形態について、本明細書の一部をなす添付の図面を参照しながら以下で説明する。本開示においては「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」、「頂」、及び「底」等の向きを示す用語を用いて本開示の様々な例における構造部分及び要素を説明しているが、これらの用語は、本明細書において、例示を容易にすることのみのために使用されるとともに、添付の図面において示される例示的な向きに基づいて決定されることが理解される。本開示において開示される実施形態は異なる方向に配置することができることから、方向を示すこれらの用語は、単に説明に役立てるためのものであり、限定として考慮されるべきものではない。
【0015】
本開示の実施形態は、締結要素(例えば、ねじ)と協働して、第1の部品(例えば、車両の隠しドアハンドルモジュール)を第2の部品(例えば、車両ドア)に締結するように構成される締結組立体を提供し、締結組立体は、公差補償機能も有し、したがって、部品の製造及び取付けによって生じる公差を補償することができる。本開示の実施形態は、上述した締結組立体を備える締結システムを更に提供する。
【0016】
図1A図1Cは、本開示の一実施形態に係る締結システム100の全体構造を示している。その中でも、図1Aは、締結システム100の斜視図であり、図1Bは、締結システム100の部分分解図であり、図1Cは、締結システム100の組付けプロセスを示す図である。図1A図1Cに示すように、締結システム100は、第1の部品130を第2の部品140に締結するように構成される。第1の部品130は、例えば、車両の隠しドアハンドルモジュールであり、本開示の締結システムをより明確に示すために、第1の部品130及び第2の部品140は、図面において構造を簡略化して示されている。締結システム100は、締結組立体110と、締結要素120と、金属ワッシャー150とを備える。締結要素120は、例えば、頭部122及びシャフト部分125を有するナットである。締結組立体110は、第1の部品130に予め組み付けることができ、第2の部品140には、ナット具145が設けられ、締結要素120は、締結組立体110を通過して第2の部品140のナット具145と係合し、締結組立体110の一部をワッシャー150と第2の部品140との間でクランプすることにより、締結システム100を介して第1の部品130を第2の部品140に締結することができる。締結作業中、締結組立体110は、長手方向Yにおける公差を補償するように、長手方向Yにおいて第1の部品130に対して移動することができ、締結要素120は、長手方向Yに対して垂直な1つ以上の横方向X、Zにおける公差を補償するように、締結組立体110内で1つ以上の横方向X、Zにおいて移動することができる。したがって、締結システム100は、締結作業中に製造からもたらされる様々な方向における公差を補償することができるとともに、第1の部品130を第2の部品140に締結することができる。第1の部品130上に取付け位置が2つ以上あるとき、各位置に締結システムが必要となるため、公差を補償する上述の機能が特に重要であり、製造公差が補償されない位置がある場合、部品を他の位置に位置合わせすることができず、結果として、その位置で締結作業を行うことができないおそれがある。
【0017】
図2A図5は、一実施形態に係る図1Aの締結システム100の締結組立体110の具体的な構造を示している。図2A及び図2Bは、それぞれ斜視図及び分解図で締結組立体110の全体構造を示している。図2A及び図2Bに示すように、締結組立体110は、補償要素210及び隔離部材220を備え、隔離部材220は、補償要素210上に保持される。補償要素210は、プラスチック材料から作製され、隔離部材220は、金属材料から作製される。
【0018】
図3A図3Cは、締結組立体110の補償要素210の具体的な構造を示している。その中でも、図3A及び図3Bは、それぞれ異なる視点での補償要素210の斜視図であり、図3Cは、軸方向に沿った補償要素210の断面図である。図3A図3Cに示すように、補償要素210は、円筒形本体310と、円筒形本体310上に設けられる保持フランジ320とを備える。本体310は、締結要素120を受ける受け穴315を有する。本体310は、それぞれ2つの軸方向端部に第1の端部361及び第2の端部362を更に備える。保持フランジ320は、本体310の第1の端部361に設けられ、受け穴315の穴壁から内向きに延在する。保持フランジ320は、受け穴315と軸方向接続する保持穴325を有する。したがって、保持フランジ320は環状であり、保持穴325の径方向寸法は、受け穴315の径方向寸法よりも小さい。複数の保持リブ335が、保持穴325の穴壁上に設けられ、各保持リブ335は、実質的に長手方向Yに延在し、複数の保持リブは、保持穴325の円周に沿って均一に配置される。保持フランジ320は、互いに対向する内面322及び外面324を有する。
【0019】
補償要素210には、その本体310の外面に螺旋溝350が設けられる。螺旋溝350は、第1の部品130の穴に設けられる突出部(図7に示すような突出部720)と協働して、補償要素210を第1の部品130と接続し、補償要素210が第1の部品130に対して長手方向Yに移動することを可能にするように構成される。補償要素210は、それぞれ第1の端部361及び第2の端部362に第1の止め構造部及び第2の止め構造部を備え、第1の止め構造部及び第2の止め構造部は、補償要素210が第1の部品130の穴に挿入され、締結組立体110を第1の部品130に予め組み付けるために、補償要素210が第1の部品130の穴から落下することを阻止することを可能にするように構成される。図面に示す実施形態において、第1の止め構造部は、螺旋溝350の端部に設けられる第1の止めブロック352である。第1の止めブロック352は、螺旋溝350内にあり、すなわち、螺旋溝350内の第1の部品130の突出部720の移動経路内にあり、したがって、第1の部品130の突出部720が螺旋溝350から外れて移動することを阻止することができる。第2の止め構造部は、螺旋溝350の外側に設けられる偏向可能アーム355と、偏向可能アーム355上に設けられる第2の止めブロック356を備える。偏向可能アーム355は、その近位端部が本体310に接続され、第2の止めブロック356は、偏向可能アーム355の遠位端部の外面上に設けられる。偏向可能アーム355は、本体310上に開口を設けることによって形成され、螺旋溝350に対して実質的に平行に延在する。
【0020】
偏向可能アーム355は、圧力下でその近位端部の周りに本体310の受け穴315に向かって偏向させることができるため、偏向可能アーム355上の第2の止めブロック356は、その阻止位置から移動させることができる。したがって、補償要素210は、偏向可能アーム355が設けられる端部(第2の端部362)から第1の部品130の穴に挿入することができる。加えて、第2の止めブロック356は、偏向可能アーム355の逆戻りによって阻止位置に復帰することができ、これにより、第1の部品130が補償要素210のうち補償要素210の本体310の第2の端部362から分離することを阻止する。第1の止めブロック352は、第1の部品130が、補償要素210のうち補償要素210の本体310の第1の端部361から分離することを、第1の部品130の穴に配置される突出部720と協働することによって阻止することができる。これにより、第1の止め構造部及び第2の止め構造部は、第1の部品130への補償要素210の接続に影響を与えないだけでなく、補償要素210が第1の部品130の穴から落下することを阻止することもでき、したがって、締結組立体110を第1の部品130上に予め組み付けることを可能にする。
【0021】
図示の実施形態において、第1の止め構造部は、螺旋溝に配置される止めブロックであり、第2の止め構造部は、偏向可能アームと、偏向可能アーム上に配置される止めブロックとを備えるが、他の実施形態において、第1の止め構造部及び第2の止め構造部の形態は入れ替えることができる。第1の止め構造部及び第2の止め構造部の数は、それぞれ1つ以上とすることができる。第1の止め構造部の数は、螺旋溝350の数に関連し、1つの第1の止め構造部を、各螺旋溝350の端部に設けることができる。第2の止め構造部の数が2つ以上である場合、第2の止め構造部は、本体310の軸の周りに均一に配置される。
【0022】
図4A及び図4Bは、締結組立体110の隔離部材220の具体的な構造を示している。その中でも、図4Aは、第1の視点から見た隔離部材220の斜視図であり、図4Bは、第2の視点から見た隔離部材220の斜視図である。図4A及び図4Bに示すように、隔離部材220は、金属から作製され、スリーブ部分410及びフランジ部分420を備える。スリーブ部分410は、チャネル415を画定し、互いに対向する第1の軸方向端部413及び第2の軸方向端部416を有する。チャネル415は、補償要素210の本体310の第2の端部362から挿入された締結要素120が、チャネル415に入り、長手方向Yに対して垂直な1つ以上の横方向X、Zにおける公差を補償するように、チャネル415内で1つ以上の横方向X、Zにおいて移動することが可能であるように構成される。いくつかの実施形態において、スリーブ部分410は円筒形であり、締結要素120のシャフト部分125の外径よりも大きい内径を有する。フランジ部分420は、スリーブ部分410の第1の軸方向端部413から外向きに突出し、概ね環状の構造を形成する。
【0023】
図5は、軸方向に沿った締結組立体110の断面図であり、締結組立体110の補償要素210及び隔離部材220の組付け関係を示している。図5に示すように、隔離部材220のフランジ部分420は、補償要素210の保持フランジ320の外側上にあり、保持フランジ320の外面324に当接する。スリーブ部分410の第2の軸方向端部416は、保持フランジ320の保持穴325内に延在し、保持フランジ320の内側に向かって延在して、保持フランジ320の内面322と同一平面上になる又はこの表面をわずかに越える。隔離部材220のスリーブ部分410の外面が、保持フランジ320の保持穴325の穴壁上に設けられる保持リブ335と締まり嵌めされ、これにより、隔離部材220を補償要素210上に保持することができる。隔離部材220を補償要素210上に保持することができるため、補償要素210の本体310上の螺旋溝350が第1の部品130と協働することによって、締結組立体110(補償要素210及び隔離部材220を備える)を第1の部品130上に予め組み付けることができる。
【0024】
図6は、軸方向に沿った本開示の別の実施形態に係る締結組立体610の断面図である。図6に示す実施形態に係る締結組立体610も、補償要素620及び隔離部材630を備え、補償要素620は、図2A図5に示す実施形態に係る補償要素210と構造的に同一であり、隔離部材630は、図2A図5に示す実施形態に係る隔離部材220と構造的に同一である。図6に示す実施形態に係る締結組立体610と、図2A図5に示す実施形態に係る締結組立体110との間の差異は、補償要素への隔離部材の取付け方向が異なることのみである。図2A図5に示す実施形態に係る締結組立体110において、隔離部材220は、補償要素210の本体310の第1の端部361から(すなわち、図5に示す右から左の方向)補償要素620に挿入され、フランジ部分420は、保持フランジ320の外側上に位置する。一方、図6に示す実施形態に係る締結組立体610において、隔離部材630は、補償要素620の本体621の第2の端部362から(すなわち、図6に示す左から右の方向)補償要素620に挿入され、フランジ部分632は、保持フランジ622の内側上に位置する。締結組立体610において、フランジ部分632は、保持フランジ622の内面642に当接し、スリーブ部分631の第2の軸方向端部655は、保持フランジ622の保持穴内に延在し、保持フランジ622の外側に向かって延在して、保持フランジ622の外面644と同一平面上になる又はこの表面をわずかに越える。
【0025】
本開示に係る隔離部材は、フランジ部分を備えず、スリーブ部分のみを備えることができることに留意されたい。フランジ部分は、隔離部材が補償要素から1つの方向(図5に示すように右から左の方向、及び図6に示すように左から右の方向)に外れることを防止するように構成されるが、隔離部材のスリーブ部分が補償要素の保持穴上の保持リブとスリーブ部分の外面を介して締まり嵌めされるため、隔離部材を補償要素上に有効に保持することができ、隔離部材は、フランジ部分が設けられない場合であっても補償要素から外れにくい。
【0026】
図7は、第1の部品130と予め組み付けられた図2Aに示す締結組立体110の斜視図である。図7に示すように、第1の部品130の穴壁上の突出部720は、補償要素210の本体310の螺旋溝350内に延在し、螺旋溝350に沿って移動することができる。第1の止めブロック352及び第2の止めブロック356がそれぞれ補償要素210の本体310の2つの軸方向端部に配置されるため、補償要素210は、第1の部品130の穴から落下しない。さらに、第2の止めブロック356が偏向可能アーム355上に設けられるため、第2の止めブロック356が本体310の一方の端部にあるものの、補償要素210は、依然として、第2の止めブロック356が設けられる本体310の端部から第1の部品130の穴に挿入することができる。これにより、本開示の締結組立体110は、第1の部品130の穴から落下せずに、穴に予め組み付けることができる。締結組立体110を第1の部品130に予め組み付けることにより、締結組立体110及び第1の部品130は、予め組み付けられたユニットを形成することができ、これは、第1の部品130の製造者が、最終的な組立に使用することができる組立体をエンドユーザーに直接提供するために有益である。例えば、第1の部品130が車両の隠しドアハンドルモジュールである場合、隠しドアハンドルモジュールの製造者は、締結組立体を締結組立体の製造者から購入し、自身が製造するドアハンドルモジュール上に締結組立体を組み付け、その後、これを車両製造者に販売することができる。このようにして、車両製造者は、最終的な組立のために1つの供給者から組立体を得ることができ、これにより、製造管理及び様々なリソースの最適な割当てが容易になる。第1の部品130上に予め組み付けられた締結組立体110は、第1の部品130から外れにくく、したがって、これにより、第1の部品130及び締結組立体110によって形成される予め組み付けられたユニットを輸送して最終組付け位置に取り付けることが容易になる。
【0027】
図8は、軸方向に沿った図1Aに示す締結システム100の断面図であり、使用状態のシステムを示している。図8に示すように、締結システム100が適所に取り付けられている場合、締結要素120のシャフト部分125は、第2の部品140のナット具145内に延在し、シャフト部分125及びナット具145は、ねじ係合によって接続され、隔離部材220は、締結要素120が及ぼす軸方向締結力によってワッシャー150と第2の部品140との間にしっかりとクランプされ、これにより、第1の部品130は第2の部品140に締結される。締結システム100が適所に取り付けられている場合、補償要素210も第2の部品140に締結されるが、締結要素120が及ぼす軸方向締結力は、主に、補償要素210の保持フランジ320の代わりに、隔離部材220のスリーブ部分410が耐えるものであり、すなわち、締結要素120は、隔離部材220のスリーブ部分410を介して補償要素210を第2の部品140に締結し、隔離部材220のスリーブ部分410は、締結要素が及ぼす圧力及び第2の部品が及ぼす圧力を2つの端部において耐えることができる。したがって、締結要素120が及ぼす軸方向締結力は、プラスチックから作製される補償要素210が耐えるものではないか、又は、補償要素210は、少量の軸方向締結力しか耐えず、これにより、補償要素210の耐用寿命が延びる。比較例として、締結組立体に隔離部材が設けられず、補償要素のみを有する場合、締結要素が及ぼす軸方向力は、補償要素の保持フランジが直接耐える。使用時間が増すにつれて、プラスチックから作製される補償要素は、軸方向締結力の作用下でクリープし、締結要素はもはや締結状態ではなくなる。
【0028】
当業者であれば、本開示の図示の実施形態に係る締結システムは、金属ワッシャーを備えるが、いくつかの他の実施形態において、締結システムは、金属ワッシャーを備えなくてもよく、締結要素の頭部の径方向サイズをより大きく設定するだけで済むことを理解することができる。金属ワッシャーを設けることで、標準部品としての締結要素の選択が容易になり得る。
【0029】
本開示は、上記に概説した実施形態の例と併せて説明したが、既知の又は現在の若しくは近いうちに予期される様々な代替、変更、変形、改良、及び/又は実質的な均等物が、少なくとも当業者には明らかとなり得る。さらに、本明細書に記載される技術的効果及び/又は技術的問題は、限定ではなく例示であり、したがって、本明細書における本開示は、他の技術的問題を解決する及び他の技術的効果を有するように使用することができ、及び/又は他の技術的問題を解決することができる。したがって、上述した本開示の実施形態の例は、限定ではなく例示であることが意図される。本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。したがって、本開示は、全ての既知の又は以前に開示された代替、変更、変形、改良、及び/又は実質的な均等物を包含するように意図される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8