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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028208
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】車両衝突試験方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240222BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G08G1/00 C
G08G1/16 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132755
(22)【出願日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0102537
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523313344
【氏名又は名称】ティーユーヴィー シュード コリア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジェ ウン
(72)【発明者】
【氏名】シム、ミン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ビョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チェ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジャ ヒョン
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181EE02
5H181FF10
5H181LL01
5H181LL04
(57)【要約】
【課題】先行車を追従する追従車の衝突試験に関し、衝突試験方法を生成し、生成された衝突試験方法によってより正確でかつ安全な車両衝突試験方法を提供する。
【解決手段】本発明による車両衝突試験方法は、ターゲット車両の速度及び目標加速度を設定する段階と、前記ターゲット車両の設定された速度及び目標加速度に対応して対象車両の速度及び加速度を観測する段階と、前記ターゲット車両の減速以後、第1の臨界時間超えの場合は、前記対象車両を減速させて、衝突余裕時間(TTC:Time to Collision)を算出する段階と、前記算出された衝突余裕時間が、第1の臨界時間よりも長い、第2の臨界時間未満であれば、前記対象車両の情報を含めて危険シナリオとして保存する段階と、を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット車両の速度及び目標加速度を設定する段階と、
前記ターゲット車両の設定された速度及び目標加速度に対応して対象車両の速度及び加速度を観測する段階と、
前記ターゲット車両の減速以後、第1の臨界時間超えの場合は、前記対象車両を減速させて、衝突余裕時間(TTC:Time to Collision)を算出する段階と、
前記算出された衝突余裕時間が、第1の臨界時間よりも長い、第2の臨界時間未満であれば、前記対象車両の情報を保存する段階と、
を含み、
前記算出された衝突余裕時間が、第1の臨界時間よりも長い、第2の臨界時間未満であれば、前記対象車両の情報を保存する段階は、
前記ターゲット車両の速度を区間間隔で分けて設定する段階と、
前記ターゲット車両の加速度を区間間隔で分けて設定する段階と、
設定された前記ターゲット車両の速度に対する区間間隔と設定されたターゲット車両の加速度に対する区間間隔との組み合わせにより複数のシナリオを選定する段階と、
複数のシナリオに対して算出された衝突余裕時間が第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして選定する段階と、を含む、車両衝突試験方法。
【請求項2】
複数のシナリオに対して算出された衝突余裕時間が第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして選定する段階は、
予め設定した時間間隔ごとに前記対象車両の衝突余裕時間を算出する段階と、
算出された衝突余裕時間の中で最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階と、を含む、請求項1に記載の車両衝突試験方法。
【請求項3】
算出された衝突余裕時間の中で最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階は、
前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして保存する段階と、
前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間超過の場合、非選択シナリオとして保存する段階と、を含む、請求項2に記載の車両衝突試験方法。
【請求項4】
前記第1の臨界時間は、前記対象車両の危険決定判断時間及びペダル切り替え(transfer)の機械的時間を考慮して設定される、請求項1に記載の車両衝突試験方法。
【請求項5】
前記第1の臨界時間は、前記対象車両の速度が前記ターゲット車両の速度を同一に追従する走行状況下で算出されたことを特徴とする、請求項4に記載の車両衝突試験方法。
【請求項6】
前記対象車両の速度が前記ターゲット車両の速度と異なる走行状況の場合には、前記第1の臨界時間が補正されることを特徴とする、請求項5に記載の車両衝突試験方法。
【請求項7】
前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして保存する段階は、前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満であり、前記対象車両が停止するか、前記対象車両と前記ターゲット車両の変位とが等しい場合に、前記対象車両の走行情報を保存する段階、をさらに含む、請求項3に記載の車両衝突試験方法。
【請求項8】
前記対象車両の走行情報を保存する段階は、前記対象車両の加速度、及び予め設定した時間間隔ごとに算出された衝突余裕時間を含む複数の変数のパラメータをマトリックス形態で保存される、請求項7に記載の車両衝突試験方法。
【請求項9】
算出された衝突余裕時間のうち最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階は、
前記選択シナリオまたは前記非選択シナリオとして保存された対象車両の走行情報をマトリックス形態で保存する段階と、
前記保存された対象車両の走行情報に基づいて前記対象車両の運転習慣を分析する段階と、をさらに含む請求項3に記載の車両衝突試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突試験方法に関し、より詳しくは、先行車を追従する追従車の衝突試験に関し、衝突試験方法を生成し、生成された衝突試験方法によってより正確でかつ安全な車両試験方法を開発するための車両衝突試験方法に関する。
本出願は、国土交通部・国土交通科学技術振興院の支援により行われた(課題番号21AMDP-C160637-01)。
【背景技術】
【0002】
最近、運転者の不注意で発生する事故を防止するために運転者に車両の走行情報を伝達するとともに、運転者の便宜のための自律走行のために多様な運転支援システム(DAS:Driver Assistance Systems)が開発されている。
【0003】
一例として、車両のバンパーに装着された電磁石を通じて他の車両との距離を獲得し、獲得された他の車両との距離が一定距離以内であれば、衝突状況と判断して電磁石に電源を供給することで磁力を発生させ、これにより車両が衝突状況時に自動で制動されるようにする技術が挙げられる。
【0004】
また他の例として、車両に設けられて車両の周辺の映像を獲得し、獲得された映像を基盤で車両の走行を制御するビジョン技術が挙げられる。
【0005】
このような自律走行技術は、運転者の安全と密接した関連がある。例えば、自律走行技術を利用した先行車を追従する追従車は、先行車の停止または減速を、遅滞なく感知して衝突を未然に防止して適宜対応することができる技術は必須である。したがって、自律走行車両の衝突を備える、または衝突に対する安全度を測定するための試験が多様に開発されている。
【0006】
このような衝突試験は、もっぱら自律走行の性能のみを試すものではなく、運転者の意図で車両が停止する場合にも車両の性能を試すことができる。それゆえ、車両の衝突に関連する多様な要因を考慮した試験状況(シナリオ)を選定及び開発して、開発された試験技法の正確性と有効性に対する検討が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の技術的課題は、先行車を追従する追従車の衝突試験方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の技術的課題は、車両衝突試験方法のあらゆる可能なシナリオを選定して、選定されたシナリオを適用した試験方法の正確性を高めることである。
【0009】
また、本発明の技術的課題は、車両衝突試験方法上のあらゆる可能なシナリオを選定して、選定されたシナリオを適用して各車両の衝突に対する安全度を測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するためになされた本発明の一態様によれば、ターゲット車両の速度及び目標加速度を設定する段階と、前記ターゲット車両の設定された速度及び目標加速度に対応して対象車両の速度及び加速度を観測する段階と、前記ターゲット車両の減速以後、第1の臨界時間超えの場合は、前記対象車両を減速させて、衝突余裕時間(TTC:Time to Collision)を算出する段階と、前記算出された衝突余裕時間が、第1の臨界時間よりも長い、第2の臨界時間未満であれば、前記対象車両の情報を保存する段階と、を含む、車両衝突試験方法を提供することができる。
【0011】
また、前記算出された衝突余裕時間が、第1の臨界時間よりも長い、第2の臨界時間未満であれば、前記対象車両の情報を保存する段階は、前記ターゲット車両の速度を区間間隔で分けて設定する段階と、前記ターゲット車両の加速度を区間間隔で分けて設定する段階と、設定された前記ターゲット車両の速度に対する区間間隔と設定されたターゲット車両の加速度に対する区間間隔との組み合わせにより複数のシナリオを選定する段階と、複数のシナリオに対して算出された衝突余裕時間が第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして選定する段階と、を含むことができる。
【0012】
また、複数のシナリオに対して算出された衝突余裕時間が第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして選定する段階は、予め設定した時間間隔ごとに前記対象車両の衝突余裕時間を算出する段階と、算出された衝突余裕時間の中で最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階と、を含むことができる。
【0013】
また、算出された衝突余裕時間の中で最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階は、前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして保存する段階と、前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間超過の場合、非選択シナリオとして保存する段階と、を含むことができる。
【0014】
また、前記第1の臨界時間は、前記対象車両の危険決定判断時間及びペダル切り替え(transfer)の機械的時間を考慮して設定されることができる。
【0015】
また、前記第1の臨界時間は、前記対象車両の速度が前記ターゲット車両の速度を同一に追従する走行状況下で算出されたことを特徴とすることができる。
【0016】
また、前記対象車両の速度が前記ターゲット車両の速度と異なる走行状況の場合には、前記第1の臨界時間が補正されることを特徴とすることができる。
【0017】
また、前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして保存する段階は、前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満であり、前記対象車両が停止するか、前記対象車両と前記ターゲット車両の変位とが等しい場合に、前記対象車両の走行情報を保存する段階、をさらに含むことができる。
【0018】
また、前記対象車両の走行情報を保存する段階は、前記対象車両の加速度、及び予め設定した時間間隔ごとに算出された衝突余裕時間を含む複数の変数のパラメータをマトリックス形態で保存されることができる。
【0019】
また、算出された衝突余裕時間のうち最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階は、前記選択シナリオまたは前記非選択シナリオとして保存された対象車両の走行情報をマトリックス形態で保存する段階と、前記保存された対象車両の走行情報に基づいて前記対象車両の運転習慣を分析する段階と、をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態に係る車両衝突試験方法によれば、先行車を追従する追従車の衝突試験の安全性を高めることができる。
【0021】
また、本発明の実施形態に係る車両衝突試験方法によれば、車両衝突試験方法のあらゆる可能なシナリオを選定し、選定されたシナリオを適用した試験方法の正確度を高めることができる。
【0022】
また、本発明の実施形態に係る車両衝突試験方法によれば、車両衝突試験方法上のあらゆる可能なシナリオを選定し、選定されたシナリオを適用して各車両の衝突に対する安全度を測定することができる。
【0023】
ただし、本発明の効果は、前記した効果に限定されるものではなく、本発明の思想及び領域から外れない範囲内で多様に拡張されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態に係るターゲット車両およびターゲット車両を追従する対象車両を示した概路図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る車両衝突試験方法における衝突余裕時間(TTC)要因および車両速度(V)要因を考慮したシナリオの危険度を示したグラフである。
図3】本発明の一実施の形態に係る車両衝突試験方法によって生成された各シナリオ別に車両速度(TSV及びVUT)、減加速度、及び最小TTCを示したグラフである。
図4】本発明の一実施の形態に係る衝突試験方法における臨界TTC未満のシナリオ別危険度を示したグラフである。
図5】本発明の一実施の形態に係る衝突試験方法によって生成された各シナリオ別の車両速度(TSV及びVUT)、減加速度、及び最小TTCを示したグラフであって、危険水準にあたるシナリオを陰影表示したグラフである。
図6】本発明の一実施の形態に係る車両衝突試験方法における運転者モデル(Driver Model)を説明するグラフである。
図7】本発明の一実施の形態に係る衝突試験方法のフローチャートである。
図8】本発明の一実施の形態に係る衝突試験方法によるシナリオ選択過程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【0026】
本発明は、多様な変更を加えることができ、いろいろな形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示して本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係るターゲット車両およびターゲット車両を追従する対象車両を示した概路図である。
【0028】
図1は、ターゲット車両(TSV)2、及び該ターゲット車両を追従する対象車両(VUT)1を示した。図1ではターゲット車両2と対象車両1とが単一車線を走行することと仮定した。
【0029】
一般に、ターゲット車両を追従する対象車両は、衝突を未然に防止するために一定した距離を置いて走行する。これは、自律走行で車両が運転される場合だけでなく、運転者の意志で走行する状況でも同様である。
【0030】
例えば、ターゲット車両2と同一速度で対象車両1が走行中であるとき、ターゲット車両2が減速すると、対象車両1の接近速度が一定している時、対象車両1がターゲット車両2にぶつかるまでの所要時間の衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)を考慮して車間距離を設定するようになる。
【0031】
具体的に、図2は、本発明の一実施の形態に係る車両衝突試験方法における衝突余裕時間(TTC)要因および車両速度(V)要因を考慮したシナリオの危険度を示したグラフである。
【0032】
図2における、X軸は、衝突余裕時間[sec]を意味し、Y軸は、車両速度[m/s]を意味する。車両速度とは、車両衝突試験方法内で設定するようになるターゲット車両2の速度を意味する。車両衝突試験方法内で試験の対象になる対象車両1は、設定されたターゲット車両2の速度を追従するので、ターゲット車両2と対象車両1の速度は、車両速度(V)で同一であることと仮定する。
【0033】
図2では、2つの要因だけを考慮したシナリオを表示したが、車両衝突試験方法において考慮される要因は、TTC及び車両速度以外に減加速度(m/s)、道路傾斜(%)、対象車両1およびターゲット車両2の初期相対距離など、多様な要因が追加されることができる。
【0034】
図2を具体的に見ると、「回避できないシナリオ(Not avoidable scenarios)10」は、黒色領域で表示した。TTCが小さいほど、車両速度が大きいほど「回避できないシナリオ」にあたるようになる。「失敗シナリオ(Failure scenarios)20」は、「回避できないシナリオ」よりは安全であるが、安全であると認められないシナリオであり、これは灰色で表示した領域である。「クリティカルシナリオ(critical scenarios)30」は、比較的安全であると認められるシナリオであって、これは淡灰色で表示した。最後に、白色領域は「通常シナリオ(Nominal Scenarios)40」であって、衝突状況と認められない一般的な走行状況を表示した。
【0035】
これらのシナリオは、考慮すべき要因(factors)の種類と各要因別の当該区間の個数に応じて、その組み合わせが多様に生成されることができる。
【0036】
一例として、車両速度(V)は、10km/hrから110km/hrの範囲で10km/hrごとに11個の区間で設定されることができる。他の一例として、ターゲット車両の減速度は、0m/sから8.33m/sの範囲で、1m/sごとに9個の区間で設定されることができる。したがって、車両速度とターゲット車両の減速度の要因を組み合わせたシナリオは、11*9、すなわち99個のシナリオが生成されることができる。
【0037】
たとえば、車両衝突試験方法では99個のシナリオに対するサンプリングを行うことができる。サンプリングは、臨界TTCを設定し、当該臨界TTC以下のシナリオに対して最終的に選択シナリオとして選定することが可能である。
【0038】
たとえば、前述した99個のシナリオの中で、臨界TTCを1.5[sec]に選定した場合、最終サンプリングされた選択シナリオは22個に縮めることができる。臨界TTCを決定することは、図6図8において後述する。
【0039】
次に、図3は、本発明の一実施の形態に係る車両衝突試験方法によって生成された各シナリオ別車両速度(TSV及びVUT)、減加速度、及び最小TTCを示したグラフである。
【0040】
図3における、X軸は、ターゲット車両2及び対象車両1の速度[m/s]を意味し、Y軸は、目標減加速度[m/s]を意味し、Z軸は、最小TTCを意味する。図2と同様に、車両衝突試験方法内における試験の対象となる対象車両1は、設定されたターゲット車両2の速度を追従するので、ターゲット車両2と対象車両1の速度は、車両速度(V)で等しいことと仮定する。
【0041】
図3の各点は、前述したシナリオの組み合わせに対応するように表示した。すなわち、10km/hrから110km/hrの範囲で、10km/hrごとに生成された11個の区間別車両速度と、0m/sから8.33m/sの範囲で1m/sごとに生成された9個の区間別ターゲット車両の減速度の組み合わせに対する99個のシナリオ、および、各シナリオに対応する最小TTCを示した。
【0042】
車両衝突試験方法では99個のシナリオに対するサンプリングを行うことができる。サンプリングは、臨界TTCを設定し、当該臨界TTC以下のシナリオの中で最終的に一部を選択シナリオとして選定することが可能である。
【0043】
図4は、本発明の一実施の形態に係る衝突試験方法における臨界TTC未満のシナリオ別危険度を示したグラフである。たとえば、図4は、臨界TTCを1.5に設定した場合に、臨界TTC未満の選択シナリオに対するグラフである。ここで、X軸は車両速度を意味し、Y軸は減加速度を意味する。
【0044】
すなわち、前述した99個のシナリオの中で、臨界TTCを1.5[sec]に選定した場合、最終サンプリングされた選択シナリオは22個となる。
【0045】
また、図4ではシナリオごとに危険度を異なるように表示した。
具体的に、22個のシナリオに対して、危険度が高いシナリオであるほど、濃く表示されたことを確認することができる。図4では、24個のポイント(pt)が表示されているが、この中2個のポイントは衝突を回避できないシナリオであるため、最終シナリオ数の計数には含まれない。
【0046】
すなわち、車両速度が早いほど、臨界TTC未満の衝突余裕時間を持つシナリオが少なく、相対的に危険度は低くなり、車両速度が遅いほど、臨界TTC未満の衝突余裕時間を持つシナリオが多く、相対的に危険度が大きくなることが分かる。
【0047】
次に、図5は、本発明の一実施の形態に係る衝突試験方法によって生成された各シナリオ別に車両速度(TSV及びVUT)、減加速度、及び最小TTCを示したグラフであって、最大減速度にあたるシナリオを陰影表示したグラフである。
【0048】
すなわち、図4図5から、車両衝突試験方法において、最大減速度を持つか、または車両速度が最低速度を持つようになる場合であれば、臨界TTCよりも小さい値で選択シナリオに選定される可能性が高くなることを確認することができる。
【0049】
次いで、図6では運転者モデルについて説明する。運転者モデルの場合、図1に示された対象車両1がターゲット車両2を追従するように、高速道路内での走行を一例として挙げられる。運転者モデルは、対象車両1がターゲット車両2と一定した安全距離(safe distance)を置いて走行中であるとき、ターゲット車両2の突然な減速(sudden deceleration)に因る自動減速機能を観察するためのシナリオを選定するためである。
【0050】
図6に示されているように、実際に対象車両1を運転者が運転すると仮定する時、実際に運転者が危険認知時点p1にターゲット車両2の減速を初めて認知したとしても、危ないと決定を下す時点p3までは、続いてアクセルペダルを踏むようになる。
【0051】
したがって、危ないという決定を下す時点p3を経てアクセルペダルを解除する区間p3~p4と、アクセルペダルからブレーキペダルへの運転者の足移動区間p4~p5を経て、p5時点からブレーキペダルが結合し始める。
【0052】
また、運転者のブレーキペダルの加圧は、p5時点から行われるが、ブレーキ作動開始区間であるp5~p6を経て実際の減速はp6時点から対象車両1の減速が行われるようになる。
【0053】
したがって、危険認知区間は、実際にターゲット車両2が減速を開始してから始まるので、衝突余裕時間TTCは下記の式1で算出されることができる。
【0054】
(数1)
TTC=drel/vrel=drel/(Vvut-Vtsv
【0055】
ここで、TTCとは、衝突余裕時間を意味し、drelは、ターゲット車両(tsv)2と対象車両(vut)1との間の距離を意味し、vrelは、ターゲット車両(tsv)2と対象車両(vut)1との間の相対速度を意味し、Vtsvは、ターゲット車両(tsv)2の速度、Vvutは、対象車両(vut)1の速度を意味する。
【0056】
車両衝突試験方法において、TTCは、0.01[sec]時間間隔ごとに算出されることができる。この時、算出されたTTCが危険シナリオに属する場合、当該情報を保存することが可能である。
【0057】
車両衝突試験方法は、システム、またはコンピューターで読み取り可能な記録媒体に格納されたプログラム上で動作されることが可能である。たとえば、車両衝突試験方法が動作されるシステム内の制御部(図示せず)は、車両衝突試験方法を総括的に制御する。また、車両衝突試験方法が動作されるシステムは、ストレージ部(storage)を含むものであって、マトリックス形式でデータ値を保存する。
【0058】
すなわち、ストレージ部は、キャッシュ、ROM(Read Only Memory)、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、及びフラッシュメモリー(Flash memory)のような不揮発性メモリー素子またはRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリー素子またはハードディスクドライブ(HDD;Hard Disk Drive)、CD-ROMのような記憶媒体の中で少なくとも一つで具現されることができ、これらに限定されない。
【0059】
すなわち、ストレージ部は、前述した制御部と別個のチップで具現されたメモリーであってもよく、プロセッサと単一チップで具現されてもよい。
【0060】
以上では、車両衝突試験方法のシナリオについて説明した。以下では、図6で説明した運転者モデルで説明されたTTC、それぞれの危険認知、危険決定、危険対応区間と車速を考慮した変数選定を通じてシナリオ動作方法について説明する。
【0061】
図7は、本発明の一実施の形態に係る衝突試験方法のフローチャートである。
【0062】
まず、図7に示されているように、シナリオを算出するために変数を設定する(ステップ700)。例えば、車両衝突試験方法で考慮される要因は、TTC及び車両速度以外に、減加速度[m/s]、道路傾斜[%]、対象車両1およびターゲット車両2の初期相対距離など、多様な変数がこれにあたることができる。
【0063】
次に、変数の組み合わせを算出する(ステップ710)。例えば、11区間で車両速度(V)を区間設定し、目標減加速度は、9個で区間設定するようになると、車両速度と目標の減加速度とを組み合わせたシナリオは、すなわち、99個のシナリオが生成されることができる。
【0064】
最後に、算出されたシナリオを適用した結果値を保存する。一例として、前述の99個のシナリオに対しては、99個のシナリオに応じた結果値を保存する(ステップ720)。ここで、図7は、シナリオ導出について説明しているが、導出されたシナリオに基づく結果値を保存するステップ720は、後述する図8で詳細に説明する。
【0065】
次に、図8は、本発明の一実施の形態に係る衝突試験方法によるシナリオを説明するフローチャートである。
【0066】
図8では、一実施の形態に係る衝突試験方法によって、減加速度及び車両速度を利用して生成された99個のシナリオの適用過程を説明する過程を示したフローチャートである。
【0067】
衝突試験方法では、対象車両1の動作を試験するためのものであって、ターゲット車両2を制御する。ターゲット車両が減速すると(ステップ810の「はい」)、ターゲット車両の減速開始時点から予め設定した第1の臨界時間th1を超えると、対象車両が減速し始める(ステップ830)。
【0068】
臨界時間th1は、図6の運転者モデルで説明したように、ターゲット車両2が減速し始めても、実際に運転者、あるいは、自律走行システムがターゲット車両2の減速を危険と認知する危険決定時間および危険対応時間が所要された以後、実際に減速が行われることを考慮した時間である。つまり、危険を認知して危険決定と判断する時間と、実際にブレーキペダルが踏まれるまでの機械的時間とを考慮して設定されることができる。
【0069】
図8における臨界時間th1は、ターゲット車両2と対象車両1とが等しい速度で走行中であるとき、ターゲット車両2が減速し始めることを仮定して、危険決定判断時間と、ブレーキペダルが踏まれるまでの機械的時間を遂行する機械的時間とを考慮して決定するのが可能である。
【0070】
ただし、臨界時間th1は、ターゲット車両2の同じ速度ではない場合には、臨界時間th1を補正して設定することも可能である。
【0071】
一例として、ターゲット車両2が加速走行中であり、対象車両1も加速走行中であるとき、ターゲット車両2が減速をする場合であれば、臨界時間th1に補正値を足して第1の臨界時間を設定してもよい。この時、補正値は、ターゲット車両2の加速程度と、対象車両1の加速走行の程度に応じて、細分化して設定されることが可能である。この時、ターゲット車両2と対象車両1の加速程度、すなわち加速度の大きさを比較して細分化してもよい。
【0072】
また、これと異なり、ターゲット車両2が加速走行であるが、対象車両1は減速をする場合であれば、臨界時間th1に負(-)の補正値を与えて、第1の臨界時間を設定することも可能である。
【0073】
次に、対象車両の減速が行われ始め(ステップ830)、TTCを算出する(ステップ840)。具体的に、一実施の形態に係る車両衝突試験方法によれば、TTCは0.01[sec]時間間隔ごとに算出されることができる。
【0074】
したがって、毎時間(0.01sec間隔)ごとに算出されたTTCを、予め設定した第2の臨界時間th2と比較する(ステップ850)。具体的に、第2の臨界時間th2は、第1の臨界時間th1よりも長く設定されることができる。
【0075】
もし、算出されたTTCが第2の臨界時間未満であり(ステップ850の「はい」)、対象車両が止まった場合であれば(ステップ860の「はい」)、選択シナリオ(危険)であって、当該変数のパラメーターをマトリックス形式で保存する。
【0076】
前記ステップ860では、対象車両が止まった場合(すなわち、対象車両速度が0である場合)に対する実施形態として説明したが、対象車両が止まった場合だけではなく、対象車両1の変位(location)とターゲット車両2の変位とが同じ場合も、選択シナリオとして選択され得る。
【0077】
選択シナリオとして選択された場合は危険状況であって、保存されたマトリックス形式によって別途の出力値を生成するのが可能である。
【0078】
例えば、対象車両1に車両衝突試験方法を導入して保存される選択シナリオ及び非選択シナリオを分析し、それぞれのシナリオに対する保存頻度を考慮したビッグデータとして対象車両1の運転習慣を分析し得る。
【0079】
これと異なり、もし算出されたTTCが第2の臨界時間よりも長ければ(ステップ850の「いいえ」)、TTCが危なくないもので、当該シナリオは非選択シナリオとして当該変数のパラメーターをマトリックス形式で保存することも可能である。
【0080】
また、選択シナリオまたは非選択シナリオとしてマトリックス形式で保存することによって、個別シナリオに対する変数をすべて保存することで、個別シナリオのそれぞれに対して最小TTC値と比較して、各シナリオ別の優先順位を導出することもできる。
【0081】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者なら、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明に開示された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためではなく、説明するためのものであって、これらの実施形態によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、下記請求範囲によって解釈されなければならなく、それと同等な範囲内に属するすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0082】
1 対象車両
2 ターゲット車両
10 回避できないシナリオ
20 失敗シナリオ
30 クリティカルシナリオ
40 通常シナリオ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両衝突試験に適したシナリオを選定する車両衝突試験方法であって、
ターゲット車両の速度及び目標加速度を設定する段階と、
前記ターゲット車両の設定された速度及び目標加速度に対応して対象車両の速度及び加速度を観測する段階と、
前記ターゲット車両の減速以後、第1の臨界時間超えの場合は、前記対象車両を減速させて、衝突余裕時間(TTC:Time to Collision)を算出する段階と、
前記算出された衝突余裕時間が、第1の臨界時間よりも長い、第2の臨界時間未満であれば、前記対象車両の情報を保存する段階と、
を含み、
前記算出された衝突余裕時間が、第1の臨界時間よりも長い、第2の臨界時間未満であれば、前記対象車両の情報を保存する段階は、
前記ターゲット車両の速度を区間間隔で分けて設定する段階と、
前記ターゲット車両の加速度を区間間隔で分けて設定する段階と、
設定された前記ターゲット車両の速度に対する区間間隔と設定されたターゲット車両の加速度に対する区間間隔との組み合わせにより複数のシナリオを選定する段階と、
複数のシナリオに対して算出された衝突余裕時間が第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして選定する段階と、を含み、
前記第1の臨界時間は、前記ターゲット車両の減速に対応して対象車両が減速し始めるまでに要する時間であり、前記対象車両の危険決定判断時間及びペダル切り替え(transfer)の機械的時間を考慮して予め設定される時間であり、
前記衝突余裕時間は、下記の式:
(数1)
TTC=d rel /v rel =d rel /(V vut -V tsv
(ただし、d rel は、ターゲット車両(tsv)と対象車両(vut)との間の距離であり、v rel は、ターゲット車両(tsv)と対象車両(vut)との間の相対速度であり、V tsv は、ターゲット車両(tsv)の速度、V vut は、対象車両(vut)の速度である)
で算出され、
前記対象車両の情報は、前記対象車両の速度、加速度、予め設定された時間間隔ごとに算出される衝突余裕時間を含む、車両衝突試験方法。
【請求項2】
複数のシナリオに対して算出された衝突余裕時間が第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして選定する段階は、
予め設定した時間間隔ごとに前記対象車両の衝突余裕時間を算出する段階と、
算出された衝突余裕時間の中で最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階と、を含む、請求項1に記載の車両衝突試験方法。
【請求項3】
算出された衝突余裕時間の中で最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階は、
前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして保存する段階と、
前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間超過の場合、非選択シナリオとして保存する段階と、を含む、請求項2に記載の車両衝突試験方法。
【請求項4】
前記第1の臨界時間は、前記対象車両の速度が前記ターゲット車両の速度を同一に追従する走行状況下で算出されたことを特徴とする、請求項3に記載の車両衝突試験方法。
【請求項5】
前記対象車両の速度が前記ターゲット車両の速度と異なる走行状況の場合には、前記第1の臨界時間が補正されることを特徴とする、請求項4に記載の車両衝突試験方法。
【請求項6】
前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満の場合、選択シナリオとして保存する段階は、前記最小衝突余裕時間が前記第2の臨界時間未満であり、前記対象車両が停止するか、前記対象車両と前記ターゲット車両の変位とが等しい場合に、前記対象車両の走行情報を保存する段階、をさらに含む、請求項3に記載の車両衝突試験方法。
【請求項7】
前記対象車両の走行情報を保存する段階は、前記対象車両の加速度、及び予め設定した時間間隔ごとに算出された衝突余裕時間を含む複数の変数のパラメータをマトリックス形態で保存される、請求項6に記載の車両衝突試験方法。
【請求項8】
算出された衝突余裕時間のうち最小衝突余裕時間を選択シナリオとして選定する段階は、
前記選択シナリオまたは前記非選択シナリオとして保存された対象車両の走行情報をマトリックス形態で保存する段階と、
前記保存された対象車両の走行情報に基づいて前記対象車両の運転習慣を分析する段階と、をさらに含む請求項3に記載の車両衝突試験方法。