(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028221
(43)【公開日】2024-03-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20240222BHJP
【FI】
G06Q40/12 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133435
(22)【出願日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2022130711
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】307021210
【氏名又は名称】HRソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】武井 繁
(72)【発明者】
【氏名】大藪 貴之
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB65
(57)【要約】
【課題】労働者を雇用する雇用主が複数存在する場合であっても、労働者が振込先として希望するデジタルアカウントで、且つ、労働者の希望する態様で、デジタルマネーにて給与を受け取ることができるようにする。
【解決手段】情報処理装置は、労働者の給与額の振込をデジタルマネーで行う際の振込先である少なくとも1つ以上のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウント記憶手段と、前記振込に関する振込条件に対する要求を前記労働者から受け付ける振込条件受付手段と、前記振込条件を記憶する振込条件記憶手段と、少なくとも1つの雇用主から得られる前記給与額を合計した合計給与額を算出する給与額算出手段と、前記振込条件に基づいて、前記合計給与額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する振込制御手段と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
労働者の給与額の振込をデジタルマネーで行う際の振込先である少なくとも1つ以上のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウント記憶手段と、
前記振込に関する振込条件に対する要求を前記労働者から受け付ける振込条件受付手段と、
前記振込条件を記憶する振込条件記憶手段と、
少なくとも1つの雇用主から得られる前記給与額を合計した合計給与額を算出する給与額算出手段と、
前記振込条件に基づいて、前記合計給与額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する振込制御手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記振込条件には、前記振込のタイミングと、前記振込先ごと振込額の比率と、前記振込先の優先順位と、前記雇用主ごとの前記振込先の特定と、のうち1以上が含まれる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記労働者を特定可能な識別情報であって、前記雇用主に関わらず共通である共通識別情報と、前記雇用主毎に特有の個別識別情報と、前記雇用主と、を対応付けて記憶する識別情報記憶手段を更に有し、
前記給与額算出手段は、前記識別情報記憶手段に記憶された前記共通識別情報と前記個別識別情報との対応に基づいて、複数の前記雇用主からの前記合計給与額を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記給与額算出手段は、前記デジタルアカウント毎に前記給与額を合計した前記合計給与額を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記給与額算出手段は、前記雇用主から得られる、前記労働者の勤怠に関する勤怠情報に基づいて、前記雇用主から得られる前記給与額を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記振込条件受付手段は、前記振込条件として、更に前払い額を含む前記給与額の前払い依頼を受け付け、
前記振込制御手段は、前記前払い額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記合計給与額に基づいて、前記労働者が負担する税金の額及び社会保険料の額の少なくとも一方を含む労働者負担額を算出する負担額算出手段を更に有し、
前記振込制御手段は、前記振込条件と、前記合計給与額と、前記労働者負担額とに基づいて、前記デジタルアカウントに対する前記振込を制御する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記合計給与額、前記税金、及び前記社会保険料の額に基づいて、税務申告に用いられる帳票を生成する帳票生成手段を更に有する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
生成された前記帳票に含まれる情報に基づいて、税務申告書類を生成する申告書生成手段を更に有する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記振込制御手段によって所定期間に振り込まれる前記合計給与額の累積合計給与額を算出する累積合計給与額算出手段を更に有する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記所定期間に振り込まれる前記合計給与額の前記累積合計給与額には、既に振り込まれた前記給与額、労働債権は発生したが未だ振り込まれていない前記給与額、働くことが決まっている労働に対する想定給与額が含まれる、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記累積合計給与額算出手段は、前記労働者の現在の前記給与額と、前記労働者が居住する地域の最低賃金とのうち少なくとも一方に基づいて、前記想定給与額を算出する、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記累積合計給与額と、配偶者控除又は扶養控除の対象となる合計所得金額の上限金額と、を比較して、前記労働者が更に労働できる労働可能時間を算出する労働時間算出手段を更に有する、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記労働時間算出手段は、前記労働者が居住する地域、及び前記労働者が居住することが見込まれる地域の各々で前記合計給与額が前記配偶者控除又は前記扶養控除の対象になる範囲で前記労働可能時間を算出する、
請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
労働者の給与額の振込をデジタルマネーで行う際の振込先である1つ以上のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウント記憶ステップと、
前記振込に関する振込条件に対する要求を前記労働者から受け付ける振込条件受付ステップと、
前記振込条件を記憶する振込条件記憶ステップと、
少なくとも1つの雇用主から得られる前記給与額を合計した合計給与額を算出する給与額算出ステップと、
前記振込条件に基づいて、前記合計給与額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する振込制御ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項16】
労働者の給与額の振込をデジタルマネーで行う際の振込先である1つ以上のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウント記憶ステップと、
前記振込に関する振込条件に対する要求を前記労働者から受け付ける振込条件受付ステップと、
前記振込条件を記憶する振込条件記憶ステップと、
少なくとも1つの雇用主から得られる前記給与額を合計した合計給与額を算出する給与額算出ステップと、
前記振込条件に基づいて、前記合計給与額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する振込制御ステップと、
を含む処理をコンピュータにより実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
労働者に配布した電子マネーカードに雇用主が入金することにより、労働者が給与の全部又は一部の前払いを受けることができる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、給与のデジタル払いが注目されている。給与のデジタル払いでは、労働者は、スマートフォンの決済アプリケーションや電子マネーを利用して給与を受け取ることができる。給与のデジタル払いの場合、労働者にとっては、自身が所有するスマートフォン等で給与を受け取ることができる。近年では、副業や、複数の職場にて働く複業という働き方があるが、このような場合であっても、労働者は雇用主毎の複数の口座を準備する必要が無い。また、雇用主から支払われた給与を自身のスマートフォン等に貯めることができるので、必要な時に必要な額を引き出すことができる。このため、給与のデジタル払いを望む労働者の要求は年々大きくなっていた。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、労働者を雇用する雇用主が複数存在する場合であっても、労働者が振込先として希望するデジタルアカウントで、且つ、労働者の希望する態様で、デジタルマネーにて給与を受け取ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、労働者の給与額の振込をデジタルマネーで行う際の振込先である少なくとも1つ以上のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウント記憶手段と、前記振込に関する振込条件に対する要求を労働者から受け付ける振込条件受付手段と、前記振込条件を記憶する振込条件記憶手段と、少なくとも1つの雇用主から得られる前記給与額を合計した合計給与額を算出する給与額算出手段と、前記振込条件に基づいて、前記合計給与額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する振込制御手段と、を有する情報処理装置である。
【0007】
本発明の一態様の上記情報処理装置に対応する情報処理方法、及びプログラムも、本発明の一態様の情報処理方法、及びプログラムとして提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、労働者を雇用する雇用主が複数存在する場合であっても、労働者が振込先として希望するデジタルアカウントで、且つ、労働者の希望する態様で、デジタルマネーにて給与を受け取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る情報処理システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る管理サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】管理サーバ、労働者端末、及び雇用主端末における機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】管理サーバの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の情報処理システムの利用態様の具体例を示すイメージ図である。
【
図6】振込条件に支払用途を含めた場合の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[概要]
以下、本実施形態について、図面を用いて説明する。
本実施形態にかかる情報処理システムにおいては、情報処理装置である管理サーバを通してデジタルアカウントについての入金の制御が行われる。情報処理システムは、労働者の有する労働者端末、雇用主の有する雇用主端末、金融機関サーバ、及び、資金移動業者サーバと連携し、労働者の要求に基づいて、複数の雇用主からの給与の振込先を制御する。個別の雇用主からの給与、労働者の勤怠、給与前払い額、税金などの労働者負担額、既払い金、未払金、想定賃金等の情報に基づいて、振込は制御される。
「デジタルアカウント」とは、労働者の給与の振込をデジタルマネーで行う際の振込先となるアカウントであり、デジタルマネーの取扱いが可能な金融機関の口座番号を含む。
【0011】
[システム構成]
図1は、本実施形態に係る情報処理システムSの全体構成の一例を示す図である。
情報処理システムSは、1以上の企業又は店舗に勤務している者、又は勤務していた者(以下、「労働者」と呼ぶ。)に対する、労働者を雇用している者、又は雇用していた者(以下、「雇用主」と呼ぶ。)からの給与の振込をデジタルマネーで行うことを可能にする情報処理システムである。デジタルマネーとは、スマートフォン等の端末にインストールされたアプリケーションプログラムにより支払いや受取り等を可能にする価値のことをいい、当該アプリケーションプログラムにより支払いや受取りが可能な現金も含まれる。
【0012】
情報処理システムSは、管理サーバ1と、労働者端末2-1乃至2-n(nは1以上の整数値)と、雇用主端末3-1乃至3-m(mは1以上の整数値)と、金融機関サーバ4と、資金移動業者サーバ5とがネットワークNを介して接続されることで構成される。ネットワークNは、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、VPN(Vertual Private Network)等である。
【0013】
以下、労働者端末2-1乃至2-nの各々を個別に説明する必要がない場合には、これらをまとめて「労働者端末2」と呼び、雇用主端末3-1乃至3-mの各々を個別に説明する必要がない場合には、これらをまとめて「雇用主端末3」と呼ぶ。
【0014】
複数の雇用主、例えば企業、のデジタルアカウント或いは金融機関に有する口座から金融機関のデジタルアカウント或いは金融機関に有する口座に労働者の給与が振り込まれる(以下、この振込のことを「第1振込」と呼ぶ場合がある)。更に、労働者の給与は、労働者の口座に振り込まれる(以下、この振込のことを「第2振込」と呼ぶ場合がある)。情報処理システムSは、当該第1振込及び/又は第2振込の振込条件を管理、制御する。情報処理システムSは、労働者に対して労働者端末2を通して、給与に関する利便性を供与する。
労働者の給与の振込に関する条件は振込条件と称される。
【0015】
<管理サーバ1>
管理サーバ1は、情報処理システムSの全体を管理するサーバとしての情報処理装置である。管理サーバ1は、労働者端末2と、雇用主端末3と、金融機関サーバ4と、資金移動業者サーバ5との各々から送信されてくる各種の情報を取得し、各種の処理を行うことを可能とする。また、管理サーバ1は、労働者端末2と、雇用主端末3と、金融機関サーバ4と、資金移動業者サーバ5との各々に向けて各種の情報を送信し、各種の処理を実行させることを可能とする。
【0016】
<労働者端末2>
労働者端末2は、労働者が情報処理システムSを利用するために操作する情報処理装置であり、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等で構成される。労働者端末2は、情報処理システムSを利用可能にする所定のアプリケーションプログラムを実行可能とする。労働者端末2は、取得した各種の情報や、労働者の操作により入力された各種の情報等に基づいて、各種の処理を行うことを可能とする。また、労働者端末2は、管理サーバ1に向けて各種の情報を送信することを可能とする。
【0017】
<雇用主端末3>
雇用主端末3は、雇用主が情報処理システムSを利用するために操作する情報処理装置であり、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等で構成される。雇用主端末3は、情報処理システムSを利用可能にする所定のアプリケーションプログラムを実行可能とする。雇用主端末3は、取得した各種の情報や、雇用主の操作により入力された各種の情報等に基づいて、各種の処理を行うことを可能とする。また、雇用主端末3は、管理サーバ1に向けて各種の情報を送信することを可能とする。
【0018】
<金融機関サーバ4>
金融機関サーバ4は、金融機関が行う各種の業務を管理するサーバとしての情報処理装置である。金融機関サーバ4は、管理サーバ1から送信されてくる各種の情報を取得し、各種の処理を行うことを可能とする。また、管理サーバ1は、金融機関サーバ4に向けて各種の情報を送信することを可能とする。例えば、管理サーバ1は、金融機関サーバ4に向けて労働者のデジタルアカウントを送信する。
【0019】
また、金融機関サーバ4は、管理サーバ1からの振込の指示に基づく振込処理を行い、振込処理の結果を管理サーバ1に向けて送信する。具体的には、金融機関サーバ4は、雇用主の口座から労働者の給与が振り込まれると(第1振込)、その額を一時的にプールし、設定されている振込条件に従い振り分け等を行うことで労働者の口座に振り込む(第2振込)。
【0020】
<資金移動業者サーバ5>
資金移動業者サーバ5は、資金移動業者が行う各種の業務を管理するサーバとしての情報処理装置である。資金移動業者サーバ5は、管理サーバ1から送信されてくる各種の情報を取得し、各種の処理を行うことを可能とする。また、資金移動業者サーバ5は、管理サーバ1に向けて各種の情報を送信することを可能とする。例えば、資金移動業者サーバ5は、労働者毎に資金移動アカウントを付与して管理する。
【0021】
[ハードウェア構成]
<管理サーバ1>
図2は、本実施形態に係る管理サーバ1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
管理サーバ1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20とを備えている。
【0022】
CPU11は、ROM12に記憶されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。CPU11、ROM12、及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。
【0023】
入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19、及びドライブ20が接続されている。出力部16は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種の情報を画像や音声として出力する。入力部17は、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成され、各種情報の入力を受け付ける。記憶部18は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。通信部19は、インターネット等で構成された上述のネットワークNを介して他の装置との間で通信を行う。
【0024】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等からなるリムーバブルメディア21が適宜装着される。ドライブ20によりリムーバブルメディア21から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。また、リムーバブルメディア21は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0025】
<労働者端末2、雇用主端末3、金融機関サーバ4、及び資金移動業者サーバ5>
また、図示はしないが、労働者端末2、雇用主端末3、金融機関サーバ4、及び資金移動業者サーバ5は、
図2に示す管理サーバ1のハードウェア構成と同様の構成を有する。即ち、労働者端末2、雇用主端末3、金融機関サーバ4、及び資金移動業者サーバ5は、
図2のCPU11、ROM12、RAM13、バス14、入出力インターフェース15、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19、ドライブ20、及びリムーバブルメディア21の各々に対応する、CPU、ROM、RAM、バス、入出力インターフェース、出力部、入力部、記憶部、通信部、ドライブ、及びリムーバブルメディアの各々を有する。
【0026】
[機能的構成]
<管理サーバ1>
図3は、管理サーバ1、労働者端末2、及び雇用主端末3における機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
管理サーバ1のCPU11においては、動作する際に、情報取得部31と、デジタルアカウント記録部32と、振込条件受付部33と、情報記録部34(給与情報記録部341、振込条件記録部342、識別情報記録部343、給与額記録部344)と、算出部35(給与額算出部351、負担額算出部352、労働時間算出部353、累積合計給与額算出部354)と、振込制御部36と、生成部37(帳票生成部371、申告書生成部372)と、送信制御部38とが機能する。
【0027】
また、管理サーバ1の記憶部18においては、各種のデータベースが設けられている。データベースは、例えば、労働者のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウントDB41、労働者の給与情報を記憶する給与情報DB42、設定された振込条件を記憶する振込条件DB43、労働者の識別情報を記憶する識別情報DB44、労働者の給与額(労働者各々の給与額及び合計給与額)を記憶する給与額DB45などである。
【0028】
労働者の識別情報には、労働者を雇用する複数の雇用主に関わらず共通である共通識別情報と、労働者を雇用する雇用主毎に特有の個別識別情報とが含まれる。
【0029】
情報取得部31は、各種の情報を取得する。例えば、情報取得部31は、労働者端末2、雇用主端末3、金融機関サーバ4、及び資金移動業者サーバ5の各々から送信されてくる各種の情報を取得する。
労働者端末2から送信されてくる情報としては、例えば、振込条件を設定するための入力情報、労働者端末2に個々の雇用主からの給与額を表示するための入力情報、労働者端末2に合計給与額を表示するための入力情報、労働者端末2に労働者が負担する額(以下、「労働者負担額」と呼ぶ。)、例えば税金の額及び社会保険料の額等、を表示するための入力情報、税務申告に用いられる帳票を出力するための入力情報、税務申告書類を出力するための入力情報、労働者端末2に労働可能時間を表示させるための入力情報などが挙げられる。
雇用主端末3から送信されてくる情報としては、例えば、労働者の給与情報、労働者の雇用主から受け取った給与額を雇用主端末3に表示させるための入力情報、雇用主端末3に労働者負担額を表示させるための入力情報などが挙げられる。
また、金融機関サーバ4や資金移動業者サーバ5から送信されてくる情報としては、例えば、労働者のデジタルアカウントや振込処理の結果などが挙げられる。
【0030】
デジタルアカウント記録部32は、金融機関サーバ4及び資金移動業者サーバ5の各々から提供されるデジタルアカウントをデジタルアカウントDB41に記録する。デジタルアカウント記録部32は、記憶部18のデジタルアカウントDB41にデジタルアカウントを記録する制御を行う。デジタルアカウントは、上述したように、労働者の給与の振込をデジタルマネーで行う際の振込先となるアカウントである。デジタルアカウントは、例えば、金融機関により管理される労働者の口座番号と、資金移動サービスを提供する資金移動業者により管理される労働者のアカウント(以下、「資金移動アカウント」と呼ぶ。)とを含む。資金移動アカウントには、労働者の給与が振り込まれるデジタルアカウントや、振り込まれる給与を他のデジタルマネーに変換して記憶するアカウントが含まれる。
【0031】
振込条件受付部33は、労働者の給与の振込条件を受け付ける。
【0032】
例えば、振込条件受付部33は、労働者端末2からの振込条件の設定の指示要求に基づいて、その労働者の振込条件を受け付ける。
【0033】
具体的には、振込条件受付部33は、振込条件として、雇用主からの労働者の給与の振込のタイミング、振込先ごとの振込額の振り分け(例えば、デジタルアカウントごと、振込先ごとの振込額の比率など)、振込先デジタルアカウントの優先順位、雇用主ごとの給与の振込の特定(例えば、雇用主毎に支払先を変える対応等)などを受け付ける。
【0034】
また、振込条件受付部33は、労働者の給与の振込条件として、労働者の給与に関する前払額と、前借額との各々を受け付ける。なお、受け付けた振込条件に基づいた振込の制御の具体例は、
図5及び
図6を参照して後述される。
【0035】
情報記録部34は、各種の情報を記録する。情報記録部34では、例えば、給与情報記録部341と、振込条件記録部342と、識別情報記録部343と、給与額記録部344とが機能する。給与情報記録部341は、労働者の給与情報を記録する。具体的には、給与情報記録部341は、情報取得部31により取得された労働者の給与情報を記憶部18の給与情報DB42に記録する。給与情報には、労働者の共通識別情報及び個別識別情報が対応付けられている。
【0036】
振込条件記録部342は、労働者の給与の振込条件を記録する。具体的には、振込条件記録部342は、振込条件受付部33により受け付けられた振込条件を記憶部18の振込条件DB43に記録する。振込条件には、労働者の共通識別情報及び個別識別情報が対応付けられている。
【0037】
識別情報記録部343は、労働者の識別情報を識別情報DB44に記録する。具体的には、識別情報記録部343は、労働者の共通識別情報と個別識別情報とを対応付けて、記憶部18の識別情報DB44に記録する。識別情報DB44は、労働者を特定可能な識別情報であって、主に関わらず共通である共通識別情報と、前記雇用主毎に特有の個別識別情報と、前記雇用主と、を対応付けて記憶する。識別情報記録部343は、労働者の共通識別情報として、例えば、日本の市区町村に住民票を持つ者に割り当てられた12桁の個人番号であるマイナンバー(登録商標)を用いてもよい。
【0038】
給与額記録部344は、労働者の給与額を記録する。具体的には、給与額記録部344は、労働者の各雇用主から受け取った給与額及び複数の雇用主から受け取った給与額の合計給与額を、記憶部18の給与額DB45に記録する。労働者の各雇用主から受け取った給与額及び合計給与額には、労働者の共通識別情報及び個別識別情報が対応付けられている。
【0039】
算出部35は、各種の情報に基づいて、各種の額を算出する。算出部35では、例えば、給与額算出部351と、負担額算出部352と、労働時間算出部353と、累積合計給与額算出部354とが機能する。
【0040】
給与額算出部351は、労働者の給与額を算出する。具体的には、給与額算出部351は、情報取得部31により取得された労働者の給与情報に基づいて、1以上の雇用主の各々から労働者に対して個別に支払われる給与額を算出する。
【0041】
また、給与額算出部351は、算出した給与額を合計した給与額(以下、「合計給与額」と呼ぶ。)を算出する。具体的には、給与額算出部351は、識別情報DB44に記憶された労働者の共通識別情報と個別識別情報との対応に基づいて、複数の雇用主からの合計給与額を算出する。
【0042】
また、給与額算出部351は、労働者のデジタルアカウント毎に給与額を合計した合計給与額を算出する。
【0043】
また、給与額算出部351は、労働者の給与額として算出されることが想定される額(以下、「個別想定額」と呼ぶ。)を算出する。例えば、給与額算出部351は、労働者の現在の賃金の額と、労働者が居住する地域の最低賃金の額とのうち少なくとも一方に基づいて、個別想定額を算出する。
【0044】
また、給与額算出部351は、算出した個別想定額を合計した給与額(以下、「合計想定額」と呼ぶ。)を算出する。具体的には、給与額算出部351は、労働者の共通識別情報又は個別識別情報に対応付けられた個別想定額を合計することで合計想定額を算出する。また、給与額算出部351は、雇用主から得られる労働者の給与情報と、雇用主から得られる労働者の勤怠に関する勤怠情報とに基づいて、労働者の各雇用主から得られる給与額を算出する。
【0045】
負担額算出部352は、給与額算出部351により算出された各雇用主から受け取った給与額及び合計給与額に基づいて、労働者が負担する額(以下、「労働者負担額」と呼ぶ。)を算出する。労働者負担額としては、例えば、労働者が負担する税金の額や社会保険料の額などが挙げられる。
【0046】
労働時間算出部353は、給与額算出部351により算出された各雇用主から受け取った給与額及び後述する累積合計給与額を含む合計給与額に基づいて、税務申告における所定の控除の対象になる合計給与額の範囲で労働者が更に労働できる時間(以下、「労働可能時間」と呼ぶ。)を算出する。具体的には、労働時間算出部353は、労働者が居住する地域、及び労働者が居住することが見込まれる地域の各々で、その労働者の合計給与額が税務申告における所定の控除の対象になる範囲で労働可能時間を算出する。「税務申告における所定の控除」としては、例えば、配偶者控除、扶養控除などが挙げられる。
【0047】
累積合計給与額算出部354は、振込制御部36によって所定期間に振り込まれる合計給与額の累積合計給与額を算出する。当該所定期間に振り込まれる合計給与額の累積合計給与額には、既に振り込まれた給与額、労働債権は発生したが未だ振り込まれていない給与額、働くことが決まっている労働に対する想定給与額が含まれる。また、雇用主毎に累積合計給与額が算出されてもよい。当該累積合計給与額は、給与額算出部351で算出される合計給与額と並行して算出されることがこのましい。累積合計給与額算出部354は、労働者の現在の給与額と、前記労働者が居住する地域の最低賃金とのうち少なくとも一方に基づいて、想定給与額を算出する。また、算出された累積合計給与額は、労働時間算出部353による上記の労働可能時間を算出するのにも使用される。
【0048】
より具体的に説明する。労働者は、1つ以上の企業から、時間給、日雇い、週単位労働、歩合給、プロジェクト給など、多種多様な給与形態の元で働く。労働者は、配偶者控除又は扶養控除の対象となる合計所得金額の上限金額以下の収入となるように働くことを志向する傾向にある。このような状況のもと、所定期間内での累積合計給与額が必要となる。労働者は、累積合計給与額と当該上限金額とを比較して、累積合計給与額が当該上限金額を上回らないように働く。累積合計給与額算出部354は、当該比較の基となる累積合計給与額を算出する。なお、上述の労働時間算出部353が、当該累積合計給与額と当該上限金額とを比較して、前記労働者が更に労働できる労働可能時間を算出する。
【0049】
また、所定の1企業からの累積合計給与額が必要となる。例えば、労働者は、短期契約の更改時に所定の期間での給与額を把握できる。また、想定される将来受け取る給与額の累計が分かれば、集中的に仕事をするべきか、多少余裕を持って仕事ができるのか、などの目安にもなる。
【0050】
振込制御部36は、振込条件受付部33により受け付けた振込条件と、給与額算出部351により算出された労働者の合計給与額と、労働者負担額とに基づいて、デジタルアカウントに対する労働者の給与の振込(第2振込)を制御する。
【0051】
また、振込制御部36は、振込条件受付部33により受け付けられた振込条件と、給与額算出部351により算出された労働者の合計給与額と、負担額算出部352により算出された労働者負担額とに基づいて、デジタルアカウントに対する労働者の給与の振込(第2振込)を制御する。
【0052】
振込制御部36は、前払い額及び/又は前借額を、デジタルアカウントに振り込むよう制御する。なお、上述したように、当該前払い額を含む給与額の前払い依頼は、振込条件受付部33により受け付けられる。
【0053】
生成部37は、各種の情報を生成する。生成部37では、帳票生成部371と、申告書生成部372とが機能する。
【0054】
帳票生成部371は、負担額算出部352により算出された労働者負担額に基づいて、税務申告に用いられる帳票を生成する。
【0055】
申告書生成部372は、管理サーバ1は、帳票生成部371により生成された帳票に含まれる情報に基づいて、税務申告書類を生成する。帳票生成部371は、算出した労働者負担額に基づいて、税務申告に用いられる帳票を生成する。帳票生成部371により生成される帳票としては、例えば、源泉徴収票などが挙げられる。また、帳票生成部371は、生成した帳票に含まれる情報に基づいて、税務申告書類を生成する。帳票生成部371により生成される税務申告書類としては、例えば、確定申告書などが挙げられる。
【0056】
送信制御部38は、通信部19を介して各種の情報を送信する制御を行う。具体的には、送信制御部38は、労働者端末2、雇用主端末3、金融機関サーバ4、及び資金移動業者サーバ5の各々に向けて各種の情報を送信する制御を行う。例えば、送信制御部38は、労働者端末2及び雇用主端末3の各々の表示部に各種の情報を表示させるための制御情報を、労働者端末2及び雇用主端末3の各々に向けて送信する制御を行う。
【0057】
<労働者端末2>
労働者端末2のCPUにおいては、動作する際に、情報取得部51と、表示制御部52と、送信制御部53とが機能する。
【0058】
情報取得部51は、各種の情報を取得する。
【0059】
例えば、情報取得部51は、例えば、タッチパネル或いはキーボード等に代表される入力部により入力が受け付けられた情報を取得する。入力部により入力が受け付けられる情報としては、例えば、振込条件を設定するために入力された情報、表示部に各雇用主から受け取った給与額を表示させるために入力された情報、表示部に合計給与額を表示させるために入力された情報、表示部に労働者負担額を表示させるために入力された情報、税務申告に用いられる帳票を出力するために入力された情報、税務申告書類を出力するために入力された情報、労働可能時間を表示させるために入力された情報などが挙げられる。
【0060】
また、情報取得部51は、労働者端末2に向けて送信されてきた情報を取得する。労働者端末2に向けて送信されてくる情報としては、例えば、各雇用主から受け取った給与額を表示させるための制御情報、合計給与額を表示させるための制御情報、税務申告に用いられる帳票のデータ、税務申告書類のデータなどが挙げられる。
【0061】
表示制御部52は、各種の情報を表示させる制御を行う。具体的には、表示制御部52は、各種の情報を出力部のディスプレイ等に表示させる制御を行う。例えば、表示制御部52は、情報取得部51により取得された、労働者の各雇用主から受け取った給与額を表示させるための制御情報に基づいて、各雇用主から受け取った給与額を表示させる制御を行う。また、表示制御部52は、合計給与額を表示させるための制御情報に基づいて、合計給与額を表示させる制御を行う。
【0062】
また、表示制御部52は、労働者負担額を表示させるための制御情報に基づいて、労働者負担額を表示させる制御を行う。また、表示制御部52は、税務申告に用いられる帳票のデータを表示させる制御を行う。また、表示制御部52は、税務申告書類のデータを表示させる制御を行う。また、表示制御部52は、労働可能時間を表示させるための制御情報に基づいて、労働可能時間を表示させる制御を行う。
【0063】
送信制御部53は、通信部29を介して各種の情報を送信する制御を行う。例えば、送信制御部53は、各種の入力情報を管理サーバ1に向けて送信する制御を行う。管理サーバ1に向けて送信される入力情報としては、例えば、振込条件を設定するための入力情報、自己の労働者端末2に各雇用主から受け取った給与額を表示させるための入力情報、自機に合計給与額を表示させるための入力情報、自機に労働者負担額を表示させるための入力情報、税務申告に用いられる帳票を出力するための入力情報、税務申告書類を出力するための入力情報、自機に労働可能時間を表示させるための入力情報などが挙げられる。
【0064】
<雇用主端末3>
雇用主端末3のCPUにおいては、動作する際に、情報取得部71と、表示制御部72と、送信制御部73とが機能する。
【0065】
情報取得部71は、各種の情報を取得する。例えば、情報取得部71は、入力部により入力が受け付けられた情報を取得する。入力部により入力が受け付けられる情報としては、例えば、労働者の各雇用主から受け取った給与額を表示させるために入力された情報、労働者負担額を表示させるために入力された情報などが挙げられる。また、情報取得部71は、雇用主端末3に向けて送信されてきた情報を取得する。雇用主端末3に向けて送信されてくる情報としては、例えば、労働者の各雇用主から受け取った給与額を表示させるための制御情報、労働者負担額を表示させるための制御情報などが挙げられる。
【0066】
表示制御部72は、各種の情報を表示させる制御を行う。具体的には、表示制御部72は、各種の情報を出力部のディスプレイ等に表示させる制御を行う。例えば、表示制御部72は、情報取得部71により取得された、労働者の各雇用主から受け取った給与額を表示させるための制御情報に基づいて、労働者の各雇用主から受け取った給与額をディスプレイ等に表示させる制御を行う。また、表示制御部72は、情報取得部71により取得された、労働者負担額を表示させるための制御情報に基づいて、労働者負担額をディスプレイ等に表示させる制御を行う。表示制御部72は、労働者負担額と、合計給与額から労働者負担額を差し引いた額とをディスプレイ等に表示させる制御を行う。
【0067】
送信制御部73は、通信部39を介して各種の情報を送信する制御を行う。例えば、送信制御部73は、各種の入力情報を管理サーバ1に向けて送信する制御を行う。管理サーバ1に向けて送信される入力情報としては、例えば、労働者の各雇用主から受け取った給与額を自己の雇用主端末3に表示させるための入力情報、労働者負担額を自機に表示させるための入力情報などが挙げられる。
【0068】
[処理の流れ]
図4は、管理サーバ1の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
デジタルアカウント記録部32は、金融機関サーバ4及び資金移動業者サーバ5の各々から提供されるデジタルアカウントをデジタルアカウントDB41に記録する(ステップS1)。振込条件受付部33は、労働者端末2から送信される振込条件を受け付け(ステップS2)、振込条件記録部342は、振込条件とデジタルアカウントとを対応付けてデータベースに記録する(ステップS3)。識別情報記録部343は、労働者を特定可能な共通識別情報と個別識別情報とを対応付けて識別情報DB44に記録する(ステップS4)。
【0069】
雇用主端末3から労働者の給与情報が送信されてくると(ステップS5でYES)、給与額算出部351は、その給与情報に基づいて、労働者の各雇用主から受け取った給与額を算出する(ステップS6)。これに対して、労働者の給与情報が送信されてきていない場合(ステップS5:NO)、給与額算出部351は、労働者の給与情報が送信されてくるまでステップS5の判断処理を繰り返す。
【0070】
給与額記録部344は、労働者の共通識別情報又は個別識別情報に各雇用主から受け取った給与額を対応付けて、給与額DB45に記録する(ステップS7)。給与額算出部351は、ステップS6で算出した各雇用主から受け取った給与額を合計した合計給与額を算出する(ステップS8)。労働者端末2から個別想定額を算出させるための指示が出されると(ステップS9:YES)、給与額算出部351は、個別想定額を算出し(ステップS10)、ステップS8で算出した合計給与額と加算した合計想定額を算出する(ステップS11)。これに対して、個別想定額を算出させるための指示が出されていない場合(ステップS9でNO)、ステップS12に進む。
【0071】
負担額算出部352は、算出された給与額に基づいて、労働者負担額を算出する(ステップS12)。帳票生成部371は、ステップS12で算出した労働者負担額に基づいて、税務申告に用いられる帳票を生成する(ステップS13)。申告書生成部372は、ステップS13で生成した帳票に含まれる情報に基づいて、税務申告書類を生成する(ステップS14)。
【0072】
労働時間算出部353は、ステップS8で算出した労働者の合計給与額に基づいて、労働可能時間を算出する(ステップS15)。振込制御部36は、ステップS2で設定された振込条件と、ステップS8で算出された合計給与額と、ステップS12で算出された労働者負担額とに基づいて、デジタルアカウントに対する労働者の給与の振込(第2振込)を制御する(ステップS16)。
【0073】
[具体例]
<情報処理システムSの利用態様>
図5は、
図1の情報処理システムSの利用態様の具体例を示す模式図である。
図5には、労働者W1と、労働者W1の雇用主である企業K1乃至K3と、金融機関B1乃至B4と、資金移動業者P1及びP2と、情報処理システムSとが示されている。
【0074】
図5に示す情報処理システムSは、管理サーバ1と、労働者W1が操作する労働者端末2と、企業K1乃至K3の各々に設置された雇用主端末3-1乃至3-3と、金融機関B1乃至B4の各々が行う各種の業務を管理する金融機関サーバ4と、資金移動業者P1及びP2の各々が行う各種の業務を管理する資金移動業者サーバ5とを含むように構成されている。
【0075】
金融機関B1には、企業K1のデジタルアカウントD1と、企業K2のデジタルアカウントD2とが開設されている。金融機関B2には、デジタルアカウントではない企業K3の口座C3が開設されている。金融機関B3には、労働者W1のデジタルアカウントD3及びD4が開設されている。金融機関B4には、労働者W1のデジタルアカウントD5が開設されている。
【0076】
金融機関B1に開設されている企業K1のデジタルアカウントD1には、企業K1の口座C1が対応付けられている。また、金融機関B1に開設されている企業K2のデジタルアカウントD2には、企業K2の口座C2が対応付けられている。
【0077】
金融機関B3に開設されている労働者W1のデジタルアカウントD3には、労働者W1の口座C4と、資金移動業者P1により管理されている、労働者W1の資金移動アカウントA1とが対応付けられている。金融機関B3に開設されている労働者W1のデジタルアカウントD4には、資金移動業者P2により管理されている、労働者W1の資金移動アカウントA2が対応付けられている。金融機関B4に開設されているデジタルアカウントD5には、労働者W1の口座C5と、資金移動業者P1により管理されている労働者W1の資金移動アカウントA3とが対応付けられている。
【0078】
企業K1からの第1振込は、金融機関B1のデジタルアカウントD1に対応付けられている口座C1から金融機関サーバ4に対して行われる。企業K2からの第1振込は、金融機関B1のデジタルアカウントD2に対応付けられている口座C2から金融機関サーバ4に対して行われる。企業K3からの第1振込は、金融機関B2の口座C3から金融機関サーバ4に対して行われる。
【0079】
企業K1乃至K3の各々からの第1振込を受けた金融機関サーバ4は、設定された振込条件に従って、金融機関B3のデジタルアカウントD3、金融機関B3のデジタルアカウントD4、及び金融機関B4のデジタルアカウントD5の各々に対する第2振込を行う。設定される振込条件としては、上述のように、第2振込のタイミング、第2振込の振込額の振り分け、第2振込先のデジタルアカウントの優先順位、雇用主ごとの振込(第1振込ごと)の対応などが挙げられる。
【0080】
<振込条件の具体例1>
具体的には、振込条件として、第2振込のタイミングが設定される場合には、例えば、日給、週休、5日ごと、未払いの給与が5万円となったときに振り込む、といった振込条件が設定される。また、振込条件として、第2振込の振込額の振り分けが設定される場合には、例えば、デジタルアカウントD3の資金移動アカウントA1に対しては2万円相当のデジタルマネーで振り込み、残りは口座C4に現金で振り込む、といった振込条件が設定される。
【0081】
また、振込条件として、例えば、第2振込先のデジタルアカウントの優先順位が設定される。振込条件は、例えば、「デジタルアカウントD4の資金移動アカウントA2は常に5万円相当のデジタルマネー残高とする」、「前回の第2振込時の残高と比較し、マイナス額が大きい口座を優先する」等である。また、振込条件として、雇用主ごとの振込(第1振込ごと)の対応が設定される場合には、例えば、企業K1からの給与は口座C5へ、企業K2からの給与はデジタルアカウントD4の資金移動アカウントA2に振り込む、といった振込条件が設定される。
【0082】
<振込条件の具体例2>
図6は、振込条件に支払用途を含めた場合の具体例を示す図である。
図6に示す例において、労働者W2は、企業K11乃至K14の各々から給与を得ており、金融機関B11にデジタルアカウントD11を持ち、金融機関B12にデジタルアカウントD12を持っている。このうち、金融機関B11のデジタルアカウントD11には、金融機関B11の口座C11と、資金移動業者P11の資金移動アカウントA11とが対応付けられている。また、金融機関B12のデジタルアカウントD12には、金融機関B12の口座C12と、資金移動業者P12の資金移動アカウントA12とが対応付けられている。
【0083】
このような場合、労働者W2は、労働者端末2を操作することで、例えば以下のような内容の振込条件を設定することができる。即ち、労働者W2は、企業K11及びK12の各々からの給与は、デジタルアカウントD11の口座C11に振り込まれるようにして、口座C11からの支払用途は、コンビニエンスストアの支払いとする、といった設定をすることができる。また、労働者W2は、企業K13からの給与は、デジタルアカウントD12の口座C12と、デジタルアカウントD11の資金移動アカウントA11とに振り分けて振り込まれるようにして、口座C12からの支払用途は、自動車の修理代の支払いとし、資金移動アカウントA11からの支払用途は、電気料金の支払いとする、といった設定をすることができる。また、労働者W2は、企業K14からの給与は、デジタルアカウントD12の口座C12と、デジタルアカウントD12の資金移動アカウントA12とに振り分けて振り込まれるようにして、資金移動アカウントA12からの支払用途は、コンビニエンスストアの支払いと、スーパーマーケットの支払いとに振り分ける、といった設定をすることができる。
【0084】
このような振込条件の設定は、機械学習の結果に基づいて選定されるようにしてもよい。例えば、ある振込条件のもと、残高が0になる口座がないかを結果としてフィードバックする。例えば、非常に暑い夏が到来した場合に、振込条件として、電気料金を支払うデジタルアカウントに予め多めの額を振り込むというように振込条件を改良する。例えば、各種支払いの支払期日や支払額、各種のポイントの割合、クーポン等による推奨や選定も可能である。更に、位置情報に基づいて、労働者W2がどの場所で支払いをしているかをチェックできるようにしてもよい。
【0085】
[本実施形態の有利な効果]
上述の実施形態によれば、労働者を雇用する雇用主が複数存在する場合であっても、労働者が振込先として希望するデジタルアカウントで、且つ、労働者の希望する態様で、デジタルマネーにて給与を受け取ることが可能となる。
【0086】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0087】
例えば、情報処理システムSを構成する管理サーバ1、労働者端末2、雇用主端末3、金融機関サーバ4、及び資金移動業者サーバ5の各々による上述の処理は一例である。また、情報処理システムS全体として上述の処理を実現させる機能が備わっていればよい。このため、上述の処理を実現させる機能のうち一部又は全部が情報処理システムS内で分担されてもよいし協働されてもよい。
【0088】
例えば、管理サーバ1の機能の一部又は全部は情報処理システムS内の他の情報処理装置の機能となり得る。また、情報処理システムS内の他の情報処理装置の機能の一部又は全部は管理サーバ1の機能となり得る。更に、管理サーバ1の機能の一部又は全部を図示せぬ他のサーバ等に移譲してもよい。これにより、情報処理システムS全体としての処理が促進され、また、処理を補完し合うことが可能となる。
【0089】
例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。換言すると、上述の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に上述の例に限定されない。
【0090】
また、機能ブロックの存在場所も、特に限定されず、任意でよい。例えば、管理サーバ1の機能ブロックは他の装置等に移譲されてもよい。他の装置の機能ブロックがサーバ等に移譲されてもよい。また、一つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0091】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記憶媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0092】
このようなプログラムを含む記憶媒体は、ユーザ等にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザ等に提供される記憶媒体等で構成される。プログラムはネットワークを介して配信可能であることから、記憶媒体は、ネットワークに接続された、或いは接続可能なコンピュータに搭載、或いはアクセス可能なものであってもよい。
【0093】
なお、本明細書において、記憶媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0094】
換言すると、本発明が適用される情報処理装置は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
(1)即ち、本発明が適用される情報処理装置(例えば
図1の管理サーバ1)は、労働者の給与額の振込をデジタルマネーで行う際の振込先である少なくとも1つ以上のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウント記憶手段(例えば、
図3のデジタルアカウントDB41)と、
前記振込に関する振込条件に対する要求を前記労働者から受け付ける振込条件受付手段(例えば、
図3の振込条件受付部33)と、
前記振込条件を記憶する振込条件記憶手段(例えば、
図3の振込条件DB)と、
少なくとも1つの雇用主から得られる前記給与額を合計した合計給与額を算出する給与額算出手段(例えば、
図3の給与額算出部351)と、
前記振込条件に基づいて、前記合計給与額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する振込制御手段(例えば、
図3の振込制御部36)と、
を有する。
これにより、労働者を雇用する雇用主が複数存在する場合であっても、労働者が振込先として希望するデジタルアカウントで、且つ、労働者の希望する態様で、デジタルマネーにて給与を受け取ることができる。
【0095】
(2)また、情報処理装置において、前記振込条件には、前記振込のタイミングと、前記振込先ごと振込額の比率と、前記振込先の優先順位と、前記雇用主ごとの前記振込先の特定と、のうち1以上が含まれてもよい。
これにより、労働者は、自身が希望する振込の態様で、デジタルマネーにて給与を受け取ることができる。
【0096】
(3)また、情報処理装置は、前記労働者を特定可能な識別情報であって、前記雇用主に関わらず共通である共通識別情報と、前記雇用主毎に特有の個別識別情報と、前記雇用主と、を対応付けて記憶する識別情報記憶手段(例えば、
図3の識別情報DB44)を更に有し、
前記給与額算出手段は、前記識別情報記憶手段に記憶された前記共通識別情報と前記個別識別情報との対応に基づいて、複数の前記雇用主からの前記合計給与額を算出するとよい。
これにより、労働者は、実際に受け取っている給与全体を把握することができる。
【0097】
(4)また、前記給与額算出手段は、前記デジタルアカウント毎に前記給与額を合計した前記合計給与額を算出するとよい。
これにより、複数の雇用主からの給与をデジタルマネーとして1つにまとめ、1以上のデジタルアカウントに振り分けて振り込むことができる。
【0098】
(5)また、情報処理装置において、前記給与額算出手段は、前記雇用主から得られる、前記労働者の勤怠に関する勤怠情報に基づいて、前記雇用主から得られる前記給与額を算出するとよい。
これにより、労働者の勤怠評価を給与額に反映させることができる。
【0099】
(6)また、情報処理装置において、前記振込条件受付手段は、前記振込条件として、更に前払い額を含む給与額の前払い依頼を受け付け、
前記振込制御手段は、前記前払い額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御するとよい。
これにより、労働者は、給与の前払いや前借り等のイレギュラーな振込を要求できる。
【0100】
(7)また、情報処理装置は、前記合計給与額に基づいて、前記労働者が負担する税金の額及び社会保険料の額の少なくとも一方を含む労働者負担額を算出する負担額算出手段(例えば、
図3の負担額算出部352)を更に有し、
前記振込制御手段は、前記振込条件と、前記合計給与額と、前記労働者負担額とに基づいて、前記デジタルアカウントに対する前記振込を制御するとよい。
これにより、労働者が負担する税金や社会保険料の額の算出を一括して行うことができる。
【0101】
(8)また、情報処理装置は、前記合計給与額、前記税金、及び前記社会保険料の額に基づいて、税務申告に用いられる帳票を生成する帳票生成手段(例えば、
図3の帳票生成部371)を更に有するとよい。
これにより、税務申告に用いられる帳票類の作成を一括して行うことができる。
【0102】
(9)また、情報処理装置は、生成された前記帳票に含まれる情報に基づいて、税務申告書類を生成する申告書生成手段(例えば、
図3の申告書生成部372)を更に有するとよい。
これにより、税務申告書類の作成を一括して行うことができる。
【0103】
(10)また、情報処理装置は、前記振込制御手段によって所定期間に振り込まれる合計給与額の累積合計給与額を算出する累積合計給与額算出手段(
図3の累積合計給与額算出部354)を更に有するとよい。
これにより、労働者は、例えば、所定期間に限定しての自己の労働を把握でき、給与の妥当性をチェックすることができる。
【0104】
(11)また、情報処理装置において、前記所定期間に振り込まれる合計給与額の累積合計給与額には、既に振り込まれた給与額、労働債権は発生したが未だ振り込まれていない給与額、働くことが決まっている労働に対する想定給与額が含まれとよい。
これにより、労働者は、自身が取得するデジタル給与の累計を確認することができる。また、行うことが決まっている(例えば、アルバイトのシフトが入っている)労働に対する対価が算出されるので、労働者は、給与の前借額等を知得できる。
【0105】
(12)また、情報処理装置において、前記累積合計給与額算出手段は、前記労働者の現在の給与額と、前記労働者が居住する地域の最低賃金とのうち少なくとも一方に基づいて、前記想定給与額を算出するとよい。
これにより、個別想定額を算出する際、労働者の現在の賃金の額や、労働者が居住する地域の最低賃金を額が考慮されるので、労働者が現在おかれている状況に応じた個別想定額の算出が可能となる。
【0106】
(13)また、情報処理装置は、前記累積合計給与額と、配偶者控除又は扶養控除の対象となる合計所得金額の上限金額と、を比較して、前記労働者が更に労働できる労働可能時間を算出する労働時間算出手段(例えば、
図3の労働時間算出部353)を更に有するとよい。
これにより、労働者が労働可能時間を計算する手間が省かれる。
【0107】
(14)また、情報処理装置において、前記労働時間算出手段は、前記労働者が居住する地域、及び前記労働者が居住することが見込まれる地域の各々で前記合計給与額が前記配偶者控除又は前記扶養控除の対象になる範囲で前記労働可能時間を算出するとよい。
これにより、例えば、労働者が引越し等により居住地域を変更する場合であっても、労働可能時間を計算する手間が省かれるとよい。
【0108】
(15)また、情報処理方法は、労働者の給与額の振込をデジタルマネーで行う際の振込先である1つ以上のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウント記憶ステップと、
前記振込に関する振込条件に対する要求を前記労働者から受け付ける振込条件受付ステップと、
前記振込条件を記憶する振込条件記憶ステップと、
少なくとも1つの雇用主から得られる前記給与額を合計した合計給与額を算出する給与額算出ステップと、
前記振込条件に基づいて、前記合計給与額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する振込制御ステップと、
を含む情報処理方法である。
【0109】
(16)また、プログラムは、労働者の給与額の振込をデジタルマネーで行う際の振込先である1つ以上のデジタルアカウントを記憶するデジタルアカウント記憶ステップと、
前記振込に関する振込条件に対する要求を前記労働者から受け付ける振込条件受付ステップと、
前記振込条件を記憶する振込条件記憶ステップと、
少なくとも1つの雇用主から得られる前記給与額を合計した合計給与額を算出する給与額算出ステップと、
前記振込条件に基づいて、前記合計給与額を、前記デジタルアカウントに振り込むよう制御する振込制御ステップと、
を含む処理をコンピュータにより実行させるプログラムである。
【符号の説明】
【0110】
1:管理サーバ、2:労働者端末、3:雇用主端末、4:金融機関サーバ、5:資金移動業者サーバ、31:情報取得部、32:デジタルアカウント記録部、33:振込条件受付部、35:算出部、351:給与額算出部、36:振込制御部、38:送信制御部、41:デジタルアカウントDB、42:給与情報DB、43:振込条件DB、N:ネットワーク。